(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】情報処理装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04M 1/72463 20210101AFI20240903BHJP
G06F 15/02 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
H04M1/72463
G06F15/02
(21)【出願番号】P 2022074071
(22)【出願日】2022-04-28
(62)【分割の表示】P 2020154936の分割
【原出願日】2020-09-15
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】奥間 健太郎
【審査官】石井 則之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-311864(JP,A)
【文献】特開2005-328435(JP,A)
【文献】特開2015-012464(JP,A)
【文献】特開2007-264745(JP,A)
【文献】特開2017-174191(JP,A)
【文献】特開2001-119492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M 1/72463
G06F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部端末と通信する通信部と、
所定の外部端末からの機能制限モードへの移行を指示する移行指示情報に基づいて使用可能な機能を制限している状態で、前記機能制限モードの解除を指示する解除指示情報を外部端末から受信すると、前記移行指示情報を送信した前記所定の外部端末と前記解除指示情報を送信した前記外部端末とが一致するか否かの判定結果に基づいて、
前記機能制限モードに移行する以前に記憶部に記憶された、ユーザにより作成されたユーザデータの削除を制御する制御部と
、
を含むことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置において、
前記制御部は、前記移行指示情報を送信した前記所定の外部端末と前記解除指示情報を送信した前記外部端末とが一致すると判定した場合には、
前記機能制限モードに移行する以前に前記記憶部に記憶されたユーザデータを削除しないよう制御する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
請求項
1に記載の情報処理装置において、
前記制御部は、
前記移行指示情報を送信した前記所定の外部端末と前記解除指示情報を送信した前記外部端末とが一致しないと判定した場合には、前記機能制限モードに移行する以前に前記記憶部に記憶されたユーザデータを削除するよう制御する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項4】
請求項
3に記載の情報処理装置において、
前記制御部は、前記移行指示情報を送信した前記所定の外部端末と前記解除指示情報を送信した前記外部端末とが一致しないと判定した場合に、前記機能制限モードを解除するとともに、前記情報処理装置の機能を初期化する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項5】
請求項
3に記載の情報処理装置において、
表示部を更に備え、
前記制御部は、前記移行指示情報を送信した前記所定の外部端末と前記解除指示情報を送信した前記外部端末とが一致しないと判定した場合に、その判定結果を示す情報を前記表示部に表示させる
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項6】
請求項
5に記載の情報処理装置において、
前記制御部は、
前記判定結果を示す情報として、前記表示部の表示領域内における所定の部分の表示色を変化させる
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項7】
請求項
5に記載の情報処理装置において、
前記制御部は、
前記判定結果を示す情報として、前記表示部の表示を切り替える毎に、前記移行指示情報を送信した前記所定の外部端末とは異なる前記外部端末からの前記解除指示情報を受信したことを示す情報を前記表示部の表示領域内に表示させる
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項8】
請求項
3に記載の情報処理装置において、
音声出力部を更に備え、
前記制御部は、前記移行指示情報を送信した前記所定の外部端末と前記解除指示情報を送信した前記外部端末とが一致しないと判定した場合に、その判定結果を示す音を前記音声出力部に出力させる
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の情報処理装置において、
前記通信部は、無線通信により前記外部端末と通信する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項10】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の情報処理装置において、
前記情報処理装置は、使用可能な機能を制限することにより試験で使用することが可能な関数電卓
であり、前記ユーザデータとは、前記ユーザが作成した関数、プログラム、テキストデータの少なくとも何れかを含む
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項11】
外部端末と通信可能な情報処理装置が、
所定の外部端末からの機能制限モードへの移行を指示する移行指示情報に基づいて使用可能な機能を制限している状態で、前記機能制限モードの解除を指示する解除指示情報を外部端末から受信すると、前記移行指示情報を送信した前記所定の外部端末と前記解除指示情報を送信した前記外部端末とが一致するか否かの判定結果に基づいて、
前記機能制限モードに移行する以前に記憶部に記憶された、ユーザにより作成されたユーザデータの削除を制御する
ことを特徴とする制御方法。
【請求項12】
外部端末と通信可能な情報処理装置に、
所定の外部端末からの機能制限モードへの移行を指示する移行指示情報に基づいて使用可能な機能を制限している状態で、前記機能制限モードの解除を指示する解除指示情報を外部端末から受信すると、前記移行指示情報を送信した前記所定の外部端末と前記解除指示情報を送信した前記外部端末とが一致するか否かの判定結果に基づいて、
前記機能制限モードに移行する以前に記憶部に記憶された、ユーザにより作成されたユーザデータの削除を制御する
処理を実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、情報処理装置、制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、学校の授業等で教師及び生徒がタブレット型コンピュータやスマートフォン等の情報処理装置を利用することが進められている。例えば、特許文献1には、授業中における試験(テスト)をリアルタイムに、かつ教師と生徒の双方向での実施を可能にする学習支援システムが提案されている。
【0003】
また、近年の学力試験や検定試験等では、四則演算以外の科学技術計算に関する計算機能を有する、関数電卓と呼ばれる計算機の使用が許可されていることがある。学力試験等で関数電卓の使用を許可する場合、試験前にユーザが作成した関数やプログラム等を試験中に使用することや、試験前にユーザが用意したテキストや画像を試験中に閲覧すること等の不正を防止するために、試験中に使用可能な機能を制限することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の関数電卓では、使用可能な機能を制限した状態で試験を開始した後、試験中に機能の制限を解除する操作が行われ、試験で使用することが禁止されている機能を使用する不正が行われる可能性がある。
【0006】
以上のような実情を踏まえ、本発明の一側面に係る目的は、試験で使用することが禁止されている機能を使用する不正行為を防止することが可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、外部端末と通信する通信部と、所定の外部端末からの機能制限モードへの移行を指示する移行指示情報に基づいて使用可能な機能を制限している状態で、前記機能制限モードの解除を指示する解除指示情報を外部端末から受信すると、前記移行指示情報を送信した前記所定の外部端末と前記解除指示情報を送信した前記外部端末とが一致するか否かの判定結果に基づいて、前記機能制限モードに移行する以前に記憶部に記憶された、ユーザにより作成されたユーザデータの削除を制御する制御部と、を含むことを特徴とする情報処理装置である。
【0008】
本発明の一態様に係る制御方法は、外部端末と通信可能な情報処理装置が、所定の外部端末からの機能制限モードへの移行を指示する移行指示情報に基づいて使用可能な機能を制限している状態で、前記機能制限モードの解除を指示する解除指示情報を外部端末から受信すると、前記移行指示情報を送信した前記所定の外部端末と前記解除指示情報を送信した前記外部端末とが一致するか否かの判定結果に基づいて、前記機能制限モードに移行する以前に記憶部に記憶された、ユーザにより作成されたユーザデータの削除を制御することを特徴とする制御方法である。
【0009】
本発明の一態様に係るプログラムは、外部端末と通信可能な情報処理装置に、所定の外部端末からの機能制限モードへの移行を指示する移行指示情報に基づいて使用可能な機能を制限している状態で、前記機能制限モードの解除を指示する解除指示情報を外部端末から受信すると、前記移行指示情報を送信した前記所定の外部端末と前記解除指示情報を送信した前記外部端末とが一致するか否かの判定結果に基づいて、前記機能制限モードに移行する以前に記憶部に記憶された、ユーザにより作成されたユーザデータの削除を制御する処理を実行させることを特徴とするプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
上記の態様によれば、試験で使用することが禁止されている機能を使用する不正行為を防止することが可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】一実施形態に係る関数電卓の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】一実施形態に係る関数電卓が行う試験モード管理処理の一例を説明するフローチャートである。
【
図4】試験を行うときにモード制御端末及び関数電卓が行う処理を説明するシーケンス図である。
【
図5】試験中に関数電卓の試験モードの解除を試みた場合の関数電卓の処理の一例を説明するシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、本発明に係る情報処理装置の一例として、四則演算以外の科学技術計算に関する計算機能等を有する、関数電卓と呼ばれる計算機を挙げる。以下の説明では、関数電卓における周知の機能、構成、動作等についての詳細な説明は省略する。
【0013】
図1は、関数電卓の外観の一例を示す正面図である。
図1に例示した関数電卓1は、筐体の一表面に、キー配列部2と、ディスプレイ3とが設けられている。
【0014】
キー配列部2には、四則演算に用いるキー、三角関数等の所定の関数の演算に用いるキー等の複数のキーが配置されている。キー配列部2に配置されたキーの幾つかは、複数の機能が割り当てられており、シフトキーやファンクションキーと組み合わせることにより複数の機能のうちの1つの機能を選択することが可能になっている。ディスプレイ3は、キー配列部2のキーを利用して入力された演算式や演算の結果、メニュー画面等を表示する液晶ディスプレイ等の表示装置である。
【0015】
図1に例示した関数電卓1は、キー配列部2に配置されたキーを操作して関数やプログラムを作成し、作成した関数やプログラムをユーザデータとして関数電卓1に記憶させることができる。また、関数電卓1は、使用可能な機能を制限する(例えば、所定の関数やプログラム等を利用した演算処理の実行を禁止する)ことにより学力試験や検定試験等で使用することが可能なものである。以下の説明では、関数電卓1の状態に関し、機能が制限されていない状態を「通常モード」といい、学力試験等で使用する際の機能が制限された状態を「試験モード」という。試験モードは、後述する所定の外部端末(例えば、
図2のモード制御端末9)により使用可能な機能が制限された機能制限モードの一例である。
【0016】
図2は、一実施形態に係る関数電卓の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0017】
本実施形態に係る関数電卓1は、
図2に示すように、制御部100、記憶部110、入力部120、表示部130、及び通信部140を含む。入力部120は、上述したキー配列部2の複数のキーと対応し、表示部130は、上述したディスプレイ3と対応する。入力部120は、例えば、表示部130(ディスプレイ3)の表示領域に重ねて配置されたデジタイザ(位置検出器)を含んでもよい。
【0018】
制御部100は、関数電卓1全体の動作を制御する。制御部100は、入力情報処理部101、表示制御部102、及びモード管理部103を含む。入力情報処理部101は、入力部120により入力された入力情報に基づいて、数値演算やプログラムの作成等の各種の処理を行う。表示制御部102は、入力部120により入力された入力情報、入力情報処理部101の処理結果等の表示部130への表示を制御する。モード管理部103は、通常モードから試験モードへの移行(突入)及び試験モードの解除を管理する。制御部100の上述した各部の機能は、例えば、幾つかのプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等の汎用のプロセッサにより実現される。制御部100の上述した各部の機能の一部は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)、又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)等により実現されてもよい。
【0019】
記憶部110は、関数電卓1の動作に関連する各種の情報を記憶する。記憶部110は、予め用意された関数やプログラム等のデータ(プリセットデータ)を格納する第1の記憶領域111と、関数電卓1のユーザが作成した関数、プログラム、及びテキスト等のデータ(ユーザデータ)を格納する第2の記憶領域112と、試験モードへの移行を指示したモード制御端末9の識別情報(移行指示端末ID)を格納する第3の記憶領域113とを含む。記憶部110は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含む。第3の記憶領域113は、例えば、プロセッサに内蔵されるバッファ等に設けられてもよい。
【0020】
通信部140は、BLE(Bluetooth Low Energy(登録商標))等の周知の近距離無線通信規格に従った無線通信により、モード制御端末9等の無線通信装置(外部端末)と通信を行う。モード制御端末9は、1つ以上の関数電卓1の試験モードへの移行及び試験モードの解除を遠隔で制御することが可能な無線通信端末である。モード制御端末9は、例えば、教師等の試験官により操作される。モード制御端末9は、関数電卓1であってもよいし、例えば、タブレット型コンピュータ等の汎用コンピュータやスマートフォンであってもよい。また、モード制御端末9は、例えば、試験モードへの移行及び試験モードの解除を遠隔で制御するための専用の無線通信端末であってもよい。また、モード制御端末9は、例えば、USB(Universal Serial Bus)ケーブル等の伝送ケーブルを介して、本実施形態で例示する関数電卓1とは異なる無線通信機能を含まない関数電卓と接続し、その関数電卓の試験モードへの移行及び試験モードの解除を制御することが可能であってもよい。
【0021】
本実施形態の関数電卓1は、通常モードでは、記憶部110の第1の記憶領域111に格納されたプリセットデータを利用した関数の演算等、関数電卓1において実行可能な全ての機能を実行することができる。また、本実施形態の関数電卓1は、通常モードでは、入力部120により入力された入力情報に基づいて関数やプログラムを作成し、その関数やプログラムを利用した演算等を行うことができる。更に、本実施形態の関数電卓1は、通常モードでは、入力情報に基づいて作成した関数やプログラムを記憶部110の第2の記憶領域112に格納し、必要に応じてそれら関数やプログラムを呼び出すこともできる。なお、本実施形態の関数電卓1は、上述した機能とは別の機能、例えば、科学技術計算に関連したテキストや画像等を閲覧すること等が可能であってもよい。
【0022】
本実施形態の関数電卓1を学力試験等で使用する場合には、不正防止の観点から、例えば、試験前に作成して記憶部110の第2の記憶領域112に格納されたユーザデータの使用(例えば、ユーザが作成した関数やプログラム等を使用した演算、テキストや画像等の閲覧)を禁止することが望まれる。このため、本実施形態の関数電卓1は、学力試験等で使用されるときには、モード制御端末9と連携して、
図3に例示したような試験モード管理処理を行う。
【0023】
図3は、一実施形態に係る関数電卓が行う試験モード管理処理の一例を説明するフローチャートである。
図3に例示した試験モード管理処理は、例えば、試験会場において関数電卓1の電源をオンにし、通信部140による無線通信を有効にした後で行われる。
【0024】
試験モード管理処理において、関数電卓1の制御部100のモード管理部103は、まず、モード制御端末9から試験モード移行コマンドを受信したか否かを判定する(ステップS1)。モード制御端末9からの試験モード移行コマンドは、
図4を参照して後述するように、モード制御端末9を識別する端末IDと、試験モードへの移行に関するモード情報とを含む。試験モード移行コマンドは、モード制御端末9からの試験モード(機能制限モード)への移行を指示する移行指示情報の一例である。試験モード移行コマンドを受信していない場合(ステップS1;NO)、モード管理部103は、ステップS1の判定を繰り返す。試験モード移行コマンドを受信すると(ステップS1;YES)、モード管理部103は、モード制御端末9の端末IDを保持し試験モードに移行する(ステップS2)。ステップS2において、モード管理部103は、例えば、モード制御端末9の端末IDを移行指示端末IDとして記憶部110の第3の記憶領域113に格納する。また、ステップS2において、モード管理部103は、例えば、試験モード移行コマンドに含まれるモード情報に基づいて試験モードで禁止する処理を特定し、入力情報処理部101が行う処理の監視及び制限を開始する。ステップS2の後、試験が開始されると、関数電卓1は、
図3に例示した試験モード管理処理と並列に、試験モードにおいて許可された範囲内で、入力部120により入力された入力情報に基づく演算処理等を行うことができる。
【0025】
試験モードに移行した後、モード管理部103は、通信部140により外部端末からの試験モード解除コマンドを受信したか否かを判定する(ステップS3)。試験モード解除コマンドは、関数電卓1の試験モード(機能制限モード)の解除を指示する解除指示情報の一例である。試験モード解除コマンドを受信していない場合(ステップS3;NO)、モード管理部103は、ステップS3の判定を繰り返す。
【0026】
試験モード解除コマンドを受信すると(ステップS3;YES)、モード管理部103は、その解除コマンドの送信元端末IDがモード制御端末9の端末IDと一致するか否かを判定する(ステップS4)。ステップS4において、モード管理部103は、試験モード解除コマンドに含まれる送信元端末IDと、記憶部110の第3の記憶領域113に格納した移行指示端末IDとが一致するか否かを判定する。
【0027】
試験モード解除コマンドの送信元端末IDがモード制御端末9の端末IDと一致する場合(ステップS4;YES)、モード管理部103は、試験モードを解除し、関数電卓1を試験モード移行前の状態に戻し(ステップS5)、試験モード管理処理を終了する。ステップS5において、モード管理部103は、試験モードを解除して通常モードに戻るときに、試験モードに移行する前に使用可能であった機能の全てを使用可能にする。このため、ステップS5の処理の後、関数電卓1は、例えば、試験モード移行前に第2の記憶領域112に格納された関数を使用した演算等の、試験モード移行前に使用可能であって、試験モード中に使用が禁止されていた機能を実行することが可能となる。
【0028】
一方、試験モード解除コマンドの送信元端末IDがモード制御端末9の端末IDと一致しない場合(ステップS4;NO)、モード管理部103は、試験モードを解除し、データを初期化して(ステップS6)、試験モード管理処理を終了する。ステップS6において、モード管理部103は、例えば、試験モード移行前に第2の記憶領域112に格納された関数等のユーザデータを削除する。このため、モード制御端末9とは別の外部端末からの試験モード解除コマンドを受信した場合、関数電卓1のユーザは、試験モード移行前に第2の記憶領域112に格納された関数等を試験モード解除後に使用することができなくなる。
【0029】
このように、本実施形態の関数電卓1は、所定の外部端末(モード制御端末9)からの試験モード移行コマンドに基づいて使用可能な機能を制限している状態で、試験モード解除コマンドを外部端末から受信すると、その試験モード解除コマンドを送信した外部端末が試験モード移行コマンドを送信した外部端末と同一であるか否かを判定し、その判定結果に基づいて、試験モードの解除動作を制御する。
【0030】
図4は、試験を行うときにモード制御端末及び関数電卓が行う処理を説明するシーケンス図である。
図4には、2つの関数電卓のそれぞれが、
図3に例示した試験モード管理処理を行う場合のモード制御端末9及び各関数電卓1の動作の一例を示している。
【0031】
関数電卓1を使用可能な試験が行われる場合、試験会場内には、第1の関数電卓及び第2の関数電卓を含む複数の関数電卓1が存在する。試験開始前に、教師等の試験官がモード制御端末9に対して所定の操作をすると、
図4に例示したように、モード制御端末9は、BLE等の近距離無線通信により、試験会場内に存在する複数の関数電卓1のそれぞれに向けた試験モード移行コマンドQ1の送信を行う(ステップS11)。試験モード移行コマンドQ1は、モード制御端末9を識別する端末IDと、モード情報を含む。モード情報は、例えば、関数電卓1が試験モードに移行した場合に使用することを禁止する機能(又は使用可能な機能)を示す情報を含む。
【0032】
試験モード移行コマンドQ1を受信した関数電卓1は、それぞれ、受信した試験モード移行コマンドQ1に含まれる端末IDを移行指示端末IDとして記憶部110の第3の記憶領域113に格納して保持し、試験モードに移行する(ステップS2)。ステップS2の後、各関数電卓1は、試験モードで許可された機能のみを実行することができる。すなわち、試験を開始してから終了するまでの期間、各関数電卓1は、試験モードで許可された機能のみを実行することができる。このため、例えば、試験モード移行コマンドQ1のモード情報が第2の記憶領域112に格納された関数等のユーザデータの使用を禁止することを示す情報である場合、関数電卓1のユーザは、第2の記憶領域112に格納された関数を使用した演算等を試験中に関数電卓1に実行させることができなくなる。また、試験モード移行コマンドQ1のモード情報は、例えば、関数電卓1の記憶部110の第1の記憶領域111に格納された関数等のプリセットデータのうちの使用可能な関数を示す情報を含んでもよい。使用可能な関数を制限することにより、例えば、プリセットデータに含まれる関数やプログラムの数が異なる複数種類の関数電卓1において同じ機能のみを使用可能にすることができ、機種毎による不公平性を低減することができる。
【0033】
試験終了後、教師等の試験官がモード制御端末9に対して所定の操作をすると、モード制御端末9は、試験会場内に存在する複数の関数電卓1のそれぞれに向けた試験モード解除コマンドQ2の送信を行う(ステップS12)。
【0034】
試験モード解除コマンドQ2を受信した関数電卓1は、それぞれ、受信した試験モード解除コマンドQ2に含まれる端末IDを記憶部110の第3の記憶領域113に格納した移行指示端末IDと比較し、両者が一致すると判定する(ステップS4;YES)。これにより、各関数電卓1は、試験モードを解除し、自装置の状態を試験モード移行前の状態に戻す(ステップS5)。このため、例えば、試験モード移行コマンドQ1のモード情報が第2の記憶領域112に格納された関数等のユーザデータの使用を禁止することを示す情報である場合、関数電卓1のユーザは、試験終了後に第2の記憶領域112に格納された関数を使用した演算等を関数電卓1に実行させることができるようになる。
【0035】
また、本実施形態で例示したように、BLE等の近距離無線通信を利用して試験モード移行コマンドQ1及び試験モード解除コマンドQ2を送信することにより、試験会場内に存在する複数の関数電卓1に対する試験モードへの移行及び試験モードの解除を効率よく行うことができる。
【0036】
図5は、試験中に関数電卓の試験モードの解除を試みた場合の関数電卓の処理の一例を説明するシーケンス図である。
図5には、
図3に例示した試験モード管理処理を行う関数電卓1に対し、試験中にモード制御端末9とは別の無線通信端末から試験モード解除コマンドが送信された場合の動作の一例を示している。
【0037】
試験開始前に、教師等の試験官がモード制御端末9に対して所定の操作をすると、
図5に例示したように、モード制御端末9は、BLE等の近距離無線通信により、試験会場内に存在する関数電卓1に向けた試験モード移行コマンドQ1の送信を行う(ステップS11)。試験モード移行コマンドQ1を受信した関数電卓1は、受信した試験モード移行コマンドQ1に含まれる端末IDを移行指示端末IDとして記憶部110の第3の記憶領域113に格納して保持し、試験モードに移行する(ステップS2)。ステップS2の後、関数電卓1は、試験モードで許可された機能のみを実行することができる。このため、例えば、第2の記憶領域112に格納された関数等のユーザデータを使用することが試験モードで許可されていない場合、関数電卓1のユーザは、第2の記憶領域112に格納された関数を使用した演算等を試験中に関数電卓1に実行させることができなくなる。
【0038】
しかしながら、関数電卓1が上述したBLE等の近距離無線通信が可能である場合、
図5に例示したように、モード制御端末9とは別の無線通信端末から、試験官に気付かれないように試験用の関数電卓1に不正な試験モード解除コマンドQ3を送信することができてしまうことがある。このような不正な試験モード解除コマンドQ3を試験終了前に関数電卓1が受信し、試験終了前に試験モードを解除してしまうと、関数電卓1のユーザは、例えば、第2の記憶領域112に格納された関数を使用した演算等の、試験で使用することが禁止されている機能を試験中に関数電卓1に実行させることができてしまう。
【0039】
これに対し、本実施形態で例示した関数電卓1では、試験モード解除コマンドを受信したときに、その試験モード解除コマンドの送信元端末IDと、記憶部110の第3の記憶領域113に格納した移行指示端末IDとが一致するか否かを判定する(ステップS4)。不正な試験モード解除コマンドQ3の送信元端末IDは、正規の試験モード解除コマンドQ2(
図4参照)を送信するモード制御端末9の端末IDとは異なる。このため、不正な試験モード解除コマンドQ3を受信した場合、関数電卓1のモード管理部103は、端末IDが一致しないと判定する(ステップS4;NO)。この場合、モード管理部103は、試験モードを解除するとともにデータを初期化する(ステップS6)。このため、例えば、第2の記憶領域112に格納された関数等のユーザデータを使用することが試験モードで許可されていない場合、不正な試験モード解除コマンドQ3により試験モードを解除すると、第2の記憶領域112に格納されたユーザデータが初期化(削除)される。したがって、不正な試験モード解除コマンドQ3により試験モードを解除した場合、関数電卓1のユーザは、試験前に第2の記憶領域112に格納させた関数を使用した演算等を試験中に関数電卓1に実行させることができなくなる。
【0040】
このように、本実施形態の関数電卓1は、試験モード移行コマンドの送信元であるモード制御端末9とは別の無線通信端末からの不正な試験モード解除コマンドQ3を受信した場合、試験モードを解除して通常モードに戻るものの、試験モード移行前にユーザによって作成された関数等のユーザデータを使用できないようにすることができる。このため、不正な試験モード解除コマンドQ3により試験中に関数電卓1の試験モードを解除し、試験で使用することが禁止されている機能を使用する不正行為を防止することができる。
【0041】
上述した実施形態は、発明の理解を容易にするために具体例を示したものであり、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る情報処理装置、制御方法、及びプログラムは、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
【0042】
例えば、上述した実施形態では、不正な試験モード解除コマンドQ3を受信した場合に関数電卓1の試験モードを解除するとともにデータを初期化する試験モード管理処理を例示した。しかしながら、不正な試験モード解除コマンドQ3を受信した場合に関数電卓1が行う処理は、これに限らず、別の処理であってもよい。例えば、関数電卓1は、不正な試験モード解除コマンドQ3を受信した場合に、試験モードを解除せずに、正規の試験モード解除コマンドQ2を受信するか又は所定の期間が経過するまで、試験モードを継続してもよい。所定の期間は、例えば、試験開始時刻から試験終了時刻までの期間以上とする。このような関数電卓1も、不正な試験モード解除コマンドQ3で試験モードが不正に解除されることによる、学力試験等での不正使用を制限することができる。また、不正な試験モード解除コマンドQ3による試験モードの解除が行われないため、例えば、悪意のある第三者が送信した不正な試験モード解除コマンドQ3による、ユーザ(受験者)が意図しない試験モードの解除を防ぐことができる。
【0043】
また、関数電卓1は、不正な試験モード解除コマンドQ3を受信した場合に、ディスプレイ3(表示部130)の表示を利用して、不正な試験モード解除コマンドQ3を受信したことを報知してもよい。例えば、関数電卓1は、不正な試験モード解除コマンドQ3を受信してから所定の期間が経過するまで、ディスプレイ3(表示部130)の外縁部の色を変更する、又は画面遷移のたびに試験モードが解除されたことを示す情報(ポップアップ)を表示する等の処理を行ってもよい。更に、発音素子やスピーカ等の音声出力部を備えた関数電卓1の場合、不正な試験モード解除コマンドQ3を受信したときにアラームを鳴らしてもよい。このようにディスプレイ3の表示やアラーム等で不正な試験モード解除コマンドQ3の受信を報知することにより、試験モードの不正な解除の試み、又は不正な解除を試験官に報知することができるため、学力試験等での不正使用を制限することができる。
【0044】
また、本発明に係る情報処理装置は、上述した実施形態で例示した関数電卓1に限らず、関数電卓1と同等の機能を有する他の電子装置、例えば、
図3に例示した試験モード管理処理を含むプログラムを実行することにより関数電卓として動作させることが可能な、タブレット型コンピュータ等の汎用コンピュータやスマートフォン等であってもよい。更に、本発明に係る情報処理装置は、関数電卓1のような複雑な関数やプログラムを使用した演算を行うことが可能な計算機に限らず、幾つかの機能の使用を制限(禁止)することにより、学力試験や検定試験等の特定の利用場面(利用シーン)で使用することが認められている他の装置であってもよい。
【0045】
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
外部端末と通信する通信部と、
所定の外部端末からの機能制限モードへの移行を指示する移行指示情報に基づいて使用可能な機能を制限している状態で、前記機能制限モードの解除を指示する解除指示情報を外部端末から受信すると、前記移行指示情報を送信した前記所定の外部端末と前記解除指示情報を送信した前記外部端末とが一致するか否かの判定結果に基づいて、前記機能制限モードの解除を制御する制御部と
を含むことを特徴とする情報処理装置。
[付記2]
付記1に記載の情報処理装置において、
前記制御部は、前記移行指示情報を送信した前記所定の外部端末と前記解除指示情報を送信した前記外部端末とが一致すると判定した場合には、前記機能制限モードを解除する
ことを特徴とする情報処理装置。
[付記3]
付記2に記載の情報処理装置において、
前記制御部は、前記機能制限モードを解除するときに、前記機能制限モードに移行する前に使用可能であった機能の全てを使用可能にする
ことを特徴とする情報処理装置。
[付記4]
付記1又は2に記載の情報処理装置において、
前記制御部は、前記移行指示情報を送信した前記所定の外部端末と前記解除指示情報を送信した前記外部端末とが一致しないと判定した場合に、前記機能制限モードを解除するとともに、前記情報処理装置の機能を初期化する
ことを特徴とする情報処理装置。
[付記5]
付記4に記載の情報処理装置において、
前記情報処理装置のユーザにより作成されたユーザデータを格納する記憶部を更に含み、
前記制御部は、前記情報処理装置の機能を初期化するときに、前記記憶部の前記ユーザデータを削除する
ことを特徴とする情報処理装置。
[付記6]
付記1又は2に記載の情報処理装置において、
前記制御部は、前記移行指示情報を送信した前記所定の外部端末と前記解除指示情報を送信した前記外部端末とが一致しないと判定した場合に、前記機能制限モードを継続する
ことを特徴とする情報処理装置。
[付記7]
付記6に記載の情報処理装置において、
前記制御部は、前記移行指示情報を送信した前記所定の外部端末からの解除指示情報を受信した場合、又は前記移行指示情報を送信した前記所定の外部端末と前記解除指示情報を送信した前記外部端末とが一致しないと判定してから所定の期間が経過した場合に、前記機能制限モードを解除する
ことを特徴とする情報処理装置。
[付記8]
付記1又は2に記載の情報処理装置において、
表示部を更に備え、
前記制御部は、前記移行指示情報を送信した前記所定の外部端末と前記解除指示情報を送信した前記外部端末とが一致しないと判定した場合に、その判定結果を示す情報を前記表示部に表示させる
ことを特徴とする情報処理装置。
[付記9]
付記8に記載の情報処理装置において、
前記制御部は、前記表示部の表示領域内における所定の部分の表示色を変化させる
ことを特徴とする情報処理装置。
[付記10]
付記8に記載の情報処理装置において、
前記制御部は、前記表示部の表示を切り替える毎に、前記移行指示情報を送信した前記所定の外部端末とは異なる前記外部端末からの前記解除指示情報を受信したことを示す情報を前記表示部の表示領域内に表示させる
ことを特徴とする情報処理装置。
[付記11]
付記1又は2に記載の情報処理装置において、
音声出力部を更に備え、
前記制御部は、前記移行指示情報を送信した前記所定の外部端末と前記解除指示情報を送信した前記外部端末とが一致しないと判定した場合に、その判定結果を示す音を前記音声出力部に出力させる
ことを特徴とする情報処理装置。
[付記12]
付記1~11のいずれか1つに記載の情報処理装置において、
前記通信部は、無線通信により前記外部端末と通信する
ことを特徴とする情報処理装置。
[付記13]
付記1~12のいずれか1つに記載の情報処理装置において、
前記情報処理装置は、使用可能な機能を制限することにより試験で使用することが可能な関数電卓である
ことを特徴とする情報処理装置。
[付記14]
外部端末と通信可能な情報処理装置が、
所定の外部端末からの機能制限モードへの移行を指示する移行指示情報に基づいて使用可能な機能を制限している状態で、前記機能制限モードの解除を指示する解除指示情報を外部端末から受信すると、前記移行指示情報を送信した前記所定の外部端末と前記解除指示情報を送信した前記外部端末とが一致するか否かの判定結果に基づいて、前記機能制限モードの解除を制御する
ことを特徴とする制御方法。
[付記15]
外部端末と通信可能な情報処理装置に、
所定の外部端末からの機能制限モードへの移行を指示する移行指示情報に基づいて使用可能な機能を制限している状態で、前記機能制限モードの解除を指示する解除指示情報を外部端末から受信すると、前記移行指示情報を送信した前記所定の外部端末と前記解除指示情報を送信した前記外部端末とが一致するか否かの判定結果に基づいて、前記機能制限モードの解除を制御する
処理を実行させることを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0046】
1 関数電卓
2 キー配列部
3 ディスプレイ
9 モード制御端末
100 制御部
101 入力情報処理部
102 表示制御部
103 モード管理部
110 記憶部
111,112,113 記憶領域
120 入力部
130 表示部
140 通信部
Q1 試験モード移行コマンド
Q2,Q3 試験モード解除コマンド