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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】荷揚げ補助具および荷揚げ方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 7/12 20060101AFI20240903BHJP
【FI】
B65G7/12 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022134417
(22)【出願日】2022-08-25
(65)【公開番号】P2024031094
(43)【公開日】2024-03-07
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 一夫
(72)【発明者】
【氏名】神田 陽悦
(72)【発明者】
【氏名】高野 里奈
(72)【発明者】
【氏名】山部 恵里華
(72)【発明者】
【氏名】上田 祐史
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 純平
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-100476(JP,U)
【文献】特開2015-178394(JP,A)
【文献】実開平02-119487(JP,U)
【文献】特開平10-109880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空断面を有する長尺の筒状資材を複数本、束ね、その周面に帯状部材を巻き回してなる結束体を、その材軸方向における一方の端面にて下方から支持しつつ、縦向き姿勢で荷揚げする際に使用する筒状資材の荷揚げ補助具であって、
前記結束体の端面全体を覆う大きさの支持板材と、
前記結束体における前記筒状資材の配列形態に合わせて前記支持板材の表面側に突設され、前記各筒状資材の中空部内に挿入される複数箇所の突出部と、
を具備し、
前記各突出部は前記各筒状資材の端部が収まる溝部を隔てて互いに平行に突設されるとともに、
前記各筒状資材の端面に当接する前記溝部の底位置が、前記支持板材の一方から他方にかけて階段状の高低差を有するように形成され、
前記各突出部が前記各筒状資材に挿入されると、前記各筒状資材の端面が前記結束体の材軸方向に沿って階段状にずれた状態で、前記支持板材により支持される
ことを特徴とする荷揚げ補助具。
【請求項2】
請求項1に記載された荷揚げ補助具において、
前記筒状資材の周面に巻き回された帯状部材を前記支持板材側に引き寄せる引き寄せ装置を具備する
ことを特徴とする荷揚げ補助具。
【請求項3】
請求項2に記載された荷揚げ補助具において、
前記引き寄せ装置は、前記溝部の底位置が低い側に位置する前記帯状部材を前記支持板材側に引き寄せる
ことを特徴とする荷揚げ補助具。
【請求項4】
請求項2または3に記載された荷揚げ補助具において、
前記引き寄せ装置は、
前記帯状部材に掛止可能なフックを先端に有する弾性紐材と、
前記弾性紐材を巻き取るリールと、
前記リールを回転自在に収納するケーシングと、
前記リールを回転させる操作ハンドルと、
前記リールの繰り出し側への回転を規制して、前記フックを前記帯状部材に掛止させた前記弾性紐材を緊張状態に保持する緩み止め手段と、
を具備する
ことを特徴とする荷揚げ補助具。
【請求項5】
中空断面を有する長尺の筒状資材を複数本、束ね、その周面に帯状部材を巻き回してなる結束体を、その材軸方向における一方の端面にて下方から支持しつつ、縦向き姿勢で荷揚げする筒状資材の荷揚げ方法であって、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載された荷揚げ補助具を、前記結束体の一方の端面に当てがい、
前記各筒状資材の中空部内に前記突出部を挿入して、前記各筒状資材の端面を前記結束体の材軸方向に沿って階段状にずらすことにより、前記結束体の周面に巻き回した前記帯状部材を前記結束体の材軸直交面に対して斜めに引き伸ばした後、
前記結束体の端面を前記荷揚げ補助具の支持板材により下方から支持しながら前記結束体を荷揚げする
ことを特徴とする荷揚げ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、中空断面を有する長尺の筒状資材を複数本束ねて縦向き姿勢で荷揚げする際に使用する筒状資材の荷揚げ補助具と、その荷揚げ補助具を使用した荷揚げ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の内装工事では、床、壁、天井等に石膏ボードを張設するための下地材として、スタッド(メタルスタッド)と称される、中空角形断面を有する薄鋼板製の長尺資材がよく使用されている。このスタッドは通常、数本ないし十数本程度の単位で束ねられ、その周面にPPバンド等を巻き回して結束された状態で、工場から工事現場等に搬入される。このとき、薄鋼板製のスタッドは、PPバンドを強く締め付け過ぎると変形するので、変形しない程度の巻締力で結束されている。
【0003】
ところで、戸建て住宅等の小規模な建築現場では、建築資材等を荷揚げするための重機が敷地内に入れないことが多い。そのような建築現場でスタッドのような長尺の資材を上階に荷揚げする際には、階段を設置するために設けられた上階の床開口部等を通じて、下階にいる作業者が結束された資材を縦向きにしてその下部を持ち上げ、上階にいる作業者がその資材の束(以下、「結束体」という。)の上部を掴んで引き上げる、という態様の作業が発生する。しかし、この作業中に、結束体の中央付近に位置する資材が下方に抜け落ち、その下端部が下階にいる作業者に接触して怪我をさせるおそれがある。特に薄鋼板製のスタッドは、木材等に比べて滑りやすいので、このような事故が起こりやすい。
【0004】
長尺の資材等を束にして上方から吊り上げる「縦吊り」の搬送方法や、そのための装置、治具類としては、例えば特許文献1~5等に開示されたものが公知である。これらの文献には、束ねた資材の周面を緊縛する帯状部材や、束ねた資材の下端部を収納する容器状の部材の構成が開示されている。しかしながら、これらの文献に開示された搬送方法や装置、治具類は基本的に上方から吊り上げるものであって、下階側の作業者が資材の結束体の下部を支えて上階側の作業者に手渡しするような作業態様には配慮してはいないので、荷揚げ中の資材の下方にいる作業者にとっての作業性や安全性が十分に担保されているとは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開平2-119487号公報
【文献】実開平5-061185号公報
【文献】特開平10-109880号公報
【文献】特開2009-84031号公報
【文献】特開2015-178394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願が開示する発明は、前述のような事情に着目して想起されたものであり、上階側に吊上げ装置等を設置できないような工事現場において、下階側の作業者がスタッドその他の中空断面を有する筒状資材の結束体を縦向きにして持ち上げる際、その結束体の中央部分から資材が抜け落ちることを防ぎながら、結束体を容易に荷揚げすることのできる、安全性と使い勝手に優れた荷揚げ補助具と、その荷揚げ補助具を使用した荷揚げ方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の目的を達成するために、本願が開示する発明は、中空断面を有する長尺の筒状資材を複数本、束ね、その周面に帯状部材を巻き回してなる結束体を、その材軸方向における一方の端面にて下方から支持しつつ、縦向き姿勢で荷揚げする際に使用する筒状資材の荷揚げ補助具であって、前記結束体の端面全体を覆う大きさの支持板材と、前記結束体における前記筒状資材の配列形態に合わせて前記支持板材の表面側に突設され、前記各筒状資材の中空部内に挿入される複数箇所の突出部と、を具備し、前記各突出部は前記各筒状資材の端部が収まる溝部を隔てて互いに平行に突設されるとともに、前記各筒状資材の端面に当接する前記溝部の底位置が、前記支持板材の一方から他方にかけて階段状の高低差を有するように形成され、前記各突出部が前記各筒状資材に挿入されると、前記各筒状資材の端面が前記結束体の材軸方向に沿って階段状にずれた状態で、前記支持板材により支持される、との基本的構成を採用する。
【0008】
なお、この発明特定事項における「縦向き姿勢」とは、一方の端面が他方の端面よりも十分に高くなって資材が他方側に滑り落ちるおそれのある傾斜角度(目安として水平面に対し45度程度以上)の状態を便宜的に称したものであって、特に垂直またはそれに近い傾斜角度を特定するものではない。
【0009】
さらに、本願が開示する発明は、前述の構成に係る荷揚げ補助具において、前記筒状資材の周面に巻き回された帯状部材を前記支持板材側に引き寄せる引き寄せ装置を具備する、との付加的構成を採用する。
【0010】
前記引き寄せ装置は、前記溝部の底位置が低い側に位置する前記帯状部材を前記支持板材側に引き寄せる、ものとするのが好ましい。
【0011】
さらに、前記引き寄せ装置については、前記帯状部材に掛止可能なフックを先端に有する弾性紐材と、前記弾性紐材を巻き取るリールと、前記リールを回転自在に収納するケーシングと、前記リールを回転させる操作ハンドルと、前記リールの繰り出し側への回転を規制して、前記フックを前記帯状部材に掛止させた前記弾性紐材を緊張状態に保持する緩み止め手段と、を具備するように構成することができる。
【0012】
また、本願が開示する発明は、中空断面を有する長尺の筒状資材を複数本、束ね、その周面に帯状部材を巻き回してなる結束体を、その材軸方向における一方の端面にて下方から支持しつつ、縦向き姿勢で荷揚げする筒状資材の荷揚げ方法として、前述のように構成される荷揚げ補助具を、前記結束体の一方の端面に当てがい、前記各筒状資材の中空部内に前記突出部を挿入して、前記各筒状資材の端面を前記結束体の材軸方向に沿って階段状にずらすことにより、前記結束体の周面に巻き回した前記帯状部材を前記結束体の材軸直交面に対して斜めに引き伸ばした後、前記結束体の端面を前記荷揚げ補助具の支持板材により下方から支持しながら前記結束体を荷揚げする、との構成を採用する。
【発明の効果】
【0013】
スタッドのような中空断面を有する筒状資材の結束体を荷揚げする際、その結束体の一方の端面に前述のように構成された荷揚げ補助具を装着すると、各筒状資材の端面が結束体の材軸方向に沿って階段状にずれた状態で支持板材により支持される。これに伴って、結束体の周面に巻き回した帯状部材も結束体の材軸直交面に対して斜めになり、巻き回し長さが伸びて巻締力が増大する。すると、結束体を縦向きにしても筒状資材の中抜けが生じにくくなって、筒状資材の荷揚げ作業における安全性および作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本願が開示する発明に係る荷揚げ補助具を用いて荷揚げする筒状資材の例を示す斜視図である。
図2図1に示した筒状資材の結束体に適用される荷揚げ補助具の具体的構成を示す三面図(平面図・長辺側の側面図・短辺側の側面図)である。
図3図2に示した荷揚げ補助具の作用説明図である。
図4図2に示した荷揚げ補助具の使用態様説明図(1)である。
図5図2に示した荷揚げ補助具の使用態様説明図(2)である。
図6図2に示した荷揚げ補助具にPPバンドの引き寄せ装置を付加した実施形態を示す長辺側側面図である。
図7図6に示したPPバンドの引き寄せ装置の構成を示す分解斜視図である。
図8図7に示した引き寄せ装置の作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本願が開示する発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1は、この発明に係る荷揚げ補助具を用いて荷揚げする筒状資材の例を示している。例示した筒状資材は中空角形断面を有する薄鋼板製のスタッド1(1A、1B)であり、断面寸法の異なる2種類が用意されている。2種類のスタッド1A、1Bは、断面の短辺寸法がともにwで、長辺寸法がそれぞれdおよび2dである。断面が小さい方のスタッド1Aは10本ずつ2列5段に束ねられ、断面が大きい方のスタッド1Bは5本ずつ1列5段に束ねられている。端面を揃えて束ねられたスタッド1A、1Bは、周面の複数箇所に巻き回したPPバンド12等の帯状部材によって材軸直交方向に巻き締められている。このような形態で用意されたスタッド1の結束体10が建築現場等に搬入されて、適当な台木上に横置きされている。
【0017】
図2は、図1に示したスタッド1の結束体10に適用される荷揚げ補助具3の具体的な構成を示す。例示した荷揚げ補助具3は木製で、結束体10の端面全体を覆う(好ましくは端面全体よりもひと回り大きい)大きさの支持板材31と、支持板材31の表面側に突設された複数箇所の突出部32と、支持板材31の裏面側に取り付けられた適宜形状の把持部33と、を具備している。
【0018】
支持板材31は、結束体10全体の重量を支持する板体である。例示形態の支持板材31は角丸の矩形に形成されているが、結束体10の端面全体を支持することができれば、支持板材31の形状は、円形、楕円形、その他適宜の多角形であっても差し支えない。
【0019】
例示形態の突出部32は、木材からなる一塊のブロック体34の表面側に格子状の溝部35(35x、35y)を切削し、そのブロック体34の裏面を支持板材31の表面に接合して形成されている。溝部35は、結束体10におけるスタッド1の配列形態に合わせて、互いに隣接する各スタッド1の端部が収まる位置に切削されている。
【0020】
例示形態では、ブロック体34の長辺寸法pが、ブロック体34の短辺に平行な4本の溝部35xによって5分割され、各溝部35xの中心間隔がスタッド1の短辺寸法wに略合致している。
【0021】
ブロック体34の短辺寸法qは、断面の長辺寸法が2dであるスタッド1Bの内寸に対応するように設定されている。例示形態では、その短辺寸法qが、ブロック体34の長辺に平行な4本の溝部35yによって5分割されている。短辺寸法qを二等分する中央の溝部35yの両側部分は、断面の長辺寸法がdであるスタッド1Aの内寸に対応している。さらに、断面の長辺寸法が2d/3および2d/4であるスタッド(図示せず)に対応する位置にも、ブロック体34の長辺に平行な溝部35yが2列分ずつ形成されている。なお、例示形態では、ブロック体34の短辺側の側面に、溝部35xの略半分幅の外縁溝部36が形成されているが、長辺側の側面にはそれに対応する外縁溝部が形成されていない。
【0022】
このような突出部32を有する荷揚げ補助具3が、図3(a)に示すようにして、横置きされている結束体10の端面に当てがわれ、溝部35を隔てて互いに平行に切り出された各突出部32が各スタッド1の中空部内に挿入される。図2に示したように、すべての溝部35はブロック体34の裏面(支持板材31の表面)と直交するように切削されており、したがって、突出部32が挿入されたスタッド1は、その材軸方向を支持板材31の表面と直交させるようにして保持される。
【0023】
そして、この発明では、各スタッド1の端面に当接する溝部35の底位置(底面)が、支持板材31の一方から他方にかけて、階段状の高低差を有するように形成されている。詳細には、ブロック体34の短辺と平行に配置された溝部35xが、ブロック体34の長手方向に離隔する一段ごとに、溝部35の底位置が一定寸法sづつ変化するように切削されている。これにより、支持板材31の対向する両短辺間で、短辺方向の溝部35xの底位置が、支持板材31の長辺方向に沿って階段状に変化している。ブロック体34の長辺と平行に配置された溝部35yは、短辺方向の溝部35xの底位置に合わせて底面が傾斜するように切削されている。
【0024】
なお、例示形態では、短辺方向の溝部35xは各々一様の深さ(底位置が支持板材31の表面と平行)になり、長辺方向の溝部35yは、各々の底位置が同一の傾斜平面上に並ぶように形成されているが、これらの溝部35x、35yを、前記高低差と交差する方向、つまり支持板材31の対向する両長辺間でも階段状の高低差をなすように形成してもよい。また、例示形態では、短辺方向の溝部35xの底位置の高低差に合わせて、突出部32の天面も階段状に形成されているが、突出部32の天面は同じ高さで揃えられていても差し支えない。
【0025】
このように形成された突出部32が、端面を揃えて結束されたスタッド1の中空部内に挿入されると、図3(b)に示すように、各スタッド1が材軸方向に少しずつずれて、結束体10の端面が階段状になる。その端面の両短辺間での段差(4s)は、概ね数cmである。すると、それに伴って、結束体10の周面に巻き回されたPPバンド12も結束体10の材軸直交面に対して斜めに引っ張られ、巻き回し長さが伸びて巻締力が増大する。このようにして、横置きされた結束体10の端面に予め荷揚げ補助具3を装着しておけば、PPバンド12の巻締力が適度に増して、スタッド1同士の密着度合いが高まる。
【0026】
スタッド1を荷揚げする際には、図4に示すように、下階側の作業者41が、結束体10の端面に装着した荷揚げ補助具3を把持しながら結束体10を立て起こす。これにより、結束体10を安定した姿勢で上階側の作業者42に引き渡すことができる。
【0027】
そして、図5に示すように、上階側の作業者42が結束体10を引き取ったところで、下階側の作業者41が結束体10の端面から荷揚げ補助具3を取り外す。荷揚げ補助具3を外してもスタッド1同士がしっかりと密着しているので、スタッド1の中抜けが生じにくくなって、下階側の作業者41の安全性が担保される。取り外した荷揚げ補助具3は、下階側で繰り返し使用することができる。荷揚げ補助具3をこのように使用することで、スタッド1の荷揚げ作業における作業性および安全性を格段に向上させることができる。
【0028】
なお、予め十分な個数の荷揚げ補助具3を用意できる場合は、結束体10を上階側の作業者42が引き取ったところで荷揚げ補助具3を取り外すのではなく、結束体10に荷揚げ補助具3を取り付けたまま上階へ荷揚げしても構わない。そして、上階側で荷揚げ補助具3を取り外し、まとめて下階側に戻して再利用する。
【0029】
前述のように構成される荷揚げ補助具3には、PPバンド12を結束体10の材軸直交面に対して斜めにするための補助的手段を付加することができる。図6図8は、かかる補助的手段を付加した荷揚げ補助具3の実施形態を示す。その補助的手段は、突出部32の側面に取り付けられたPPバンド12の引き寄せ装置5によって構成されている。引き寄せ装置5は、階段状の高低差を有するように形成された短辺方向の溝部35xのうち、低位置側の溝部35xに近いブロック体34の、短辺側の側面に取り付けられている。
【0030】
例示の引き寄せ装置5は、伸縮性を有する弾性紐材51がリール52に巻き取られて、略短円筒状のケーシング53内に収納されたものである。ケーシング53の一方の開口面は、その開口面に固定されたベース部54によって塞がれている。ベース部54はケーシング53の開口面よりもやや大きい略矩形に形成されて、荷揚げ補助具3のブロック体34の側面にビス止めされている。
【0031】
弾性紐材51には、例えばゴムバンド、あるいはナイロン、ポリウレタン、ポリエステル等の合成繊維材を伸縮可能に編成した紐材等が利用される。リール52に巻き取られた弾性紐材51は、ケーシング53の側面に形成された窓孔55を通じて外側に繰り出される。弾性紐材51の先端には、PPバンド12に掛止可能なフック56が取り付けられている。
【0032】
リール52は、円筒状の巻取コア521と、巻取コア521の両端部から径外方向に張り出す一対のフランジ522とを有し、ベース部54の中心部に突設された軸材57に巻取コア521が挿装されて回転自在に保持されている。
巻取コア521の一端部には操作スリーブ58が結合され、その操作スリーブ58がケーシング53の外側まで延設されている。操作スリーブ58の後端にはハンドル59が取り付けられており、このハンドル59を操作することでリール52を回転させることができる。
【0033】
巻取コア521の他端側には、爪車61がリール52と同心状に結合されている。爪車61の周縁部には、その周方向に沿って一方に傾斜する鋸状の爪歯62が形成されている。また、ケーシング53の窓孔55には、爪車61の爪歯62に係脱する止め爪63が、図示しない付勢部材等を介して揺動可能に取り付けられている。
【0034】
そして、図8に示すように、止め爪63が操作されない(a)の状態では止め爪63が爪歯62に係合するため、リール52は弾性紐材51の繰り出し側には回転できず、巻き取り側にのみ回転可能になる。また、止め爪63が解除側に操作された(b)の状態では、リール52が弾性紐材51の巻き取り側および繰り出し側のいずれにも回転可能になる。つまり、リール52と一体に回転する爪車61と、爪車61に係脱してリール52の繰り出し側への回転を間欠的に規制する止め爪63と、によって、弾性紐材51を緊張状態に保持する緩み止め手段が構成されている。
【0035】
このような緩み止め手段を備えた引き寄せ装置5を使用して、PPバンド12に掛止させたフック56を支持板材31側に引き寄せることにより、PPバンド12を結束体10の材軸直交面に対して確実に斜めにすることができる。結束体10から荷揚げ補助具3を取り外す際には、止め爪63を操作して弾性紐材51を緩め、フック56の掛止状態を解除する。かくして、結束体10の荷揚げ作業における安全性および作業性を一層、向上させることができる。
【0036】
なお、本願が開示する発明の技術的範囲は、例示した実施形態によって限定的に解釈されるべきものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて概念的に解釈されるべきものである。特許請求の範囲および明細書において使用している構成要素の名称は、発明を具体的に理解し易くするための便宜的なものであって、その名称が当該構成要素の概念や性状を必要以上に限定するものではない。本願が開示する発明の実施に際しては、特許請求の範囲において具体的に特定していない構成要素の詳細な形状、寸法、構造、材質、数量、他要素との結合形態、相対的な位置関係等を、例示形態と実質的に同等程度以上の作用効果が得られる範囲内で、適宜、改変することができる。
【0037】
例えば、この荷揚げ補助具3を適用し得る筒状資材は、薄鋼板製のスタッド1だけでなく、例えばアルミ合金製や合成樹脂製の押出形材等も包含する。さらに、その筒状資材の断面形状は、矩形だけでなく、例えば円形であってもよい。円形断面の場合は、支持板材31の平面形状を略正六角形として、突出部32が六角格子状に配列されるように溝部35を形成し、それらの溝部35の底位置が支持板材31の対向二辺間で階段状の高低差を有するように形成するなどして、同様の効果を得ることができる。
【0038】
筒状資材を結束する帯状部材についても、PPバンド12だけでなく、例えば金属製の薄板材や線材、その他適宜の部材を使用することができる。また、引き寄せ装置5の構成も、例示形態に限定されるものではなく、ゴムやバネ等の弾性部材を用いる従来公知の様々な引張機構を利用することができる。
【0039】
また、本明細書に開示した実施形態その他の事項は、以下の付記に示す技術的思想として把握することができる。
(付記1)
中空断面を有する長尺の筒状資材を複数本、束ね、その周面に帯状部材を巻き回してなる結束体を、その材軸方向における一方の端面にて下方から支持しつつ、縦向き姿勢で荷揚げする際に使用する筒状資材の荷揚げ補助具であって、
前記結束体の端面全体を覆う大きさの支持板材と、
前記結束体における前記筒状資材の配列形態に合わせて前記支持板材の表面側に突設され、前記各筒状資材の中空部内に挿入される複数箇所の突出部と、
を具備し、
前記各突出部は前記各筒状資材の端部が収まる溝部を隔てて互いに平行に突設されるとともに、
前記各筒状資材の端面に当接する前記溝部の底位置が、前記支持板材の一方から他方にかけて階段状の高低差を有するように形成され、
前記各突出部が前記各筒状資材に挿入されると、前記各筒状資材の端面が前記結束体の材軸方向に沿って階段状にずれた状態で、前記支持板材により支持される
ことを特徴とする荷揚げ補助具。
(付記2)
付記1に記載された荷揚げ補助具において、
前記筒状資材の周面に巻き回された帯状部材を前記支持板材側に引き寄せる引き寄せ装置を具備する
ことを特徴とする荷揚げ補助具。
(付記3)
付記2に記載された荷揚げ補助具において、
前記引き寄せ装置は、前記溝部の底位置が低い側に位置する前記帯状部材を前記支持板材側に引き寄せる
ことを特徴とする荷揚げ補助具。
(付記4)
付記2または3に記載された荷揚げ補助具において、
前記引き寄せ装置は、
前記帯状部材に掛止可能なフックを先端に有する弾性紐材と、
前記弾性紐材を巻き取るリールと、
前記リールを回転自在に収納するケーシングと、
前記リールを回転させる操作ハンドルと、
前記リールの繰り出し側への回転を規制して、前記フックを前記帯状部材に掛止させた前記弾性紐材を緊張状態に保持する緩み止め手段と、
を具備する
ことを特徴とする荷揚げ補助具。
(付記5)
中空断面を有する長尺の筒状資材を複数本、束ね、その周面に帯状部材を巻き回してなる結束体を、その材軸方向における一方の端面にて下方から支持しつつ、縦向き姿勢で荷揚げする筒状資材の荷揚げ方法であって、
付記1、2、3または4に記載された荷揚げ補助具を、横置きされた前記結束体の一方の端面に当てがい、
前記各筒状資材の中空部内に前記突出部を挿入して、前記各筒状資材の端面を前記結束体の材軸方向に沿って階段状にずらすことにより、前記結束体の周面に巻き回した前記帯状部材を前記結束体の材軸直交面に対して斜めに引き伸ばした後、
前記結束体を立て起こし、その端面を前記荷揚げ補助具の支持板材により下方から支持しながら前記結束体を荷揚げする
ことを特徴とする荷揚げ方法。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本願が開示する発明は、中空断面を有する長尺の筒状資材を複数本束ねて搬送する様々な作業現場において利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1(1A、1B) スタッド(筒状資材)
10 結束体
12 PPバンド(帯状部材)
3 荷揚げ補助具
31 支持板材
32 突出部
33 把持部
34 ブロック体
35(35x、35y) 溝部
36 外縁溝部
41 下階側の作業者
42 上階側の作業者
5 引き寄せ装置
51 弾性紐材
52 リール
521 巻取コア
522 フランジ
53 ケーシング
54 ベース部
55 窓孔
56 フック
57 軸材
58 操作スリーブ
59 ハンドル
61 爪車
62 爪歯
63 止め爪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8