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  • 特許-決定装置、決定方法及びプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】決定装置、決定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/14 20060101AFI20240903BHJP
   B60W 30/095 20120101ALI20240903BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20240903BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
B60W30/14
B60W30/095
B60W40/04
G08G1/16 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022189811
(22)【出願日】2022-11-29
(65)【公開番号】P2024077707
(43)【公開日】2024-06-10
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】中俣 圭介
(72)【発明者】
【氏名】上田 広貴
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-176290(JP,A)
【文献】特開2019-043395(JP,A)
【文献】特開2017-061281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
B62D 6/00
G08G 1/00- 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両が追従している先行車と前記自車両との前記自車両の進行方向における縦距離を取得する取得部と、
前記縦距離が、前記自車両が旋回可能な最大曲率に対する前記先行車と前記自車両との前記進行方向に直交する横方向における横距離の横距離上限値の2倍の値の割合から前記横距離上限値の2乗を除いた値の平方根で表される判定距離以上である場合、前記自車両の位置及び前記先行車の位置を結ぶ線分の垂直二等分線と、前記自車両の位置を通り前記横方向に平行な直線との交点を中心とし、かつ前記交点と前記自車両の位置との距離を半径とする円の円弧の曲率を目標旋回曲率として決定し、前記縦距離が前記判定距離未満である場合、前記円弧の曲率よりも小さい曲率を前記目標旋回曲率として決定する決定部と、
を有する決定装置。
【請求項2】
前記決定部は、前記縦距離が前記判定距離未満である場合、前記進行方向に直交する横距離及び前記判定距離に応じた前記目標旋回曲率を決定する、
請求項1に記載の決定装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記自車両を通り前記進行方向に平行な直線と、前記自車両及び前記先行車を結ぶ線分とのなす角及び前記線分の長さに基づいて、前記縦距離及び前記横距離を取得する、
請求項1に記載の決定装置。
【請求項4】
前記決定部は、前記自車両が走行する道路の路面の状況に応じた前記最大曲率を決定する、
請求項1に記載の決定装置。
【請求項5】
自車両に搭載されたプロセッサが実行する、
前記自車両が追従している先行車と前記自車両との前記自車両の進行方向における縦距離を取得するステップと、
前記縦距離が、前記自車両が旋回可能な最大曲率に対する前記先行車と前記自車両との前記進行方向に直交する横方向における横距離の横距離上限値の2倍の値の割合から前記横距離上限値の2乗を除いた値の平方根で表される判定距離未満か否かを判定するステップと、
前記縦距離が前記判定距離以上である場合、前記自車両の位置及び前記先行車の位置を結ぶ線分の垂直二等分線と、前記自車両の位置を通り前記横方向に平行な直線との交点を中心とし、かつ前記交点と前記自車両の位置との距離を半径とする円の円弧の曲率を目標旋回曲率として決定するステップと、
前記縦距離が前記判定距離未満であれば所定の曲率よりも小さい曲率を前記目標旋回曲率として決定するステップと、
を有する決定方法。
【請求項6】
自車両に搭載されたプロセッサを、
自車両が追従している先行車と前記自車両との前記自車両の進行方向における縦距離を取得する距離取得部、
前記縦距離が、前記自車両が旋回可能な最大曲率に対する前記先行車と前記自車両との前記進行方向に直交する横方向における横距離の横距離上限値の2倍の値の割合から前記横距離上限値の2乗を除いた値の平方根で表される判定距離未満か否かを判定する判定部、及び
前記縦距離が前記判定距離以上である場合、前記自車両の位置及び前記先行車の位置を結ぶ線分の垂直二等分線と、前記自車両の位置を通り前記横方向に平行な直線との交点を中心とし、かつ前記交点と前記自車両の位置との距離を半径とする円の円弧の曲率を目標旋回曲率として決定し、前記縦距離が前記判定距離未満の場合、前記円弧の曲率よりも小さい曲率を前記目標旋回曲率として決定する決定部として機能させるためのプログラム。
【請求項7】
自車両が追従している先行車と前記自車両との前記自車両の進行方向における縦距離を取得する取得部と、
前記自車両が走行する道路の路面状況に応じて定められた前記自車両が旋回可能な最大曲率に対する前記先行車と前記自車両との前記進行方向に直交する横方向における横距離の横距離上限値の2倍の値の割合から前記横距離上限値の2乗を除いた値の平方根で表される判定距離を決定し、前記縦距離が前記判定距離以上である場合、前記自車両の位置及び前記先行車の位置を結ぶ線分の垂直二等分線と、前記自車両の位置を通り前記横方向に平行な直線との交点を中心とし、かつ前記交点と前記自車両の位置との距離を半径とする円の円弧の曲率を目標旋回曲率として決定し、前記縦距離が前記判定距離未満である場合、前記円弧の曲率よりも小さい曲率を前記目標旋回曲率として決定する決定部と、
を有する決定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両の目標旋回曲率を決定する決定装置、決定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
自車両に先行する先行車に追従するように自車両を走行させる技術が開示されている。特許文献1には、車幅方向における先行車の移動量が閾値を超えたら、先行車が車線変更をしたと判定して先行車に追従する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2019/142312
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、自車両が先行車に近づいているときに、車線変更する先行車に追従すると、自車両の操舵角が大きくなって自車両が車幅方向に大きく移動してしまう。この場合、自車両が他車両に接触してしまう等、先行車に追従する際の安全性が低下するおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、先行車に追従する際の自車両の過剰な操舵を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様においては、自車両が追従している先行車と前記自車両との前記自車両の進行方向における縦距離を取得する取得部と、前記縦距離が、前記自車両が旋回可能な最大曲率に応じた判定距離未満である場合、所定の曲率よりも小さい目標旋回曲率を決定する決定部と、を有する決定装置を提供する。
【0007】
前記決定部は、前記自車両と前記先行車とを結ぶ線分を弦とする円弧の曲率よりも小さい前記目標旋回曲率を決定してもよい。
【0008】
前記決定部は、前記縦距離が前記判定距離以上である場合、前記円弧の曲率を前記目標旋回曲率として決定してもよい。
【0009】
前記決定部は、前記縦距離が、前記進行方向に直交する横方向における横距離の横距離上限値と前記最大曲率とにより定まる前記判定距離未満であれば、前記円弧の曲率よりも小さい前記目標旋回曲率を決定してもよい。
【0010】
前記決定部は、前記最大曲率に対する前記横距離上限値の2倍の値の割合から前記横距離上限値の2乗を除いた値の平方根で表される前記判定距離未満であれば、前記円弧の曲率よりも小さい前記目標旋回曲率を決定してもよい。
【0011】
前記決定部は、前記縦距離が前記判定距離未満であれば、前記先行車と前記自車両との前記自車両の進行方向に直交する横距離及び前記判定距離に応じた目標旋回曲率を決定してもよい。
【0012】
前記取得部は、前記自車両を通り前記進行方向に平行な直線と、前記自車両及び前記先行車を結ぶ線分とのなす角及び前記線分の長さに基づいて、前記縦距離及び前記横距離を取得してもよい。
【0013】
本発明の第2の態様においては、自車両に搭載されたプロセッサが実行する、前記自車両が追従している先行車と前記自車両との前記自車両の進行方向における縦距離を取得するステップと、前記縦距離が、前記自車両が旋回可能な最大曲率に応じた判定距離未満か否かを判定するステップと、前記縦距離が前記判定距離未満であれば所定の曲率よりも小さい目標旋回曲率を決定するステップと、を有する決定方法を提供する。
【0014】
本発明の第3の態様においては、自車両に搭載されたプロセッサを、自車両が追従している先行車と前記自車両との前記自車両の進行方向における縦距離を取得する距離取得部、前記縦距離が、前記自車両が旋回可能な最大曲率に応じた判定距離未満か否かを判定する判定部、及び前記縦距離が前記判定距離未満であれば所定の曲率よりも小さい目標旋回曲率を決定する決定部として機能させるためのプログラムを提供する。
【0015】
本発明の第4の態様においては、先行車と自車両との自車両の進行方向における縦距離を取得する取得部と、前記縦距離に応じた曲率を目標旋回曲率として決定する決定部と、を有し、前記決定部は、前記縦距離が判定距離以上である場合、第1の決定方法に基づいて前記目標旋回曲率を決定し、前記縦距離が判定距離未満である場合、前記第1の決定方法と異なる第2の決定方法に基づいて前記目標旋回曲率を決定し、前記第2の決定方法に基づいて決定される目標旋回曲率は、前記第1の決定方法に基づいて決定される目標旋回曲率よりも小さい、決定装置を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、先行車に追従する際の自車両の過剰な操舵を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態に係る決定装置の概要を説明するための図である。
図2】決定装置の構成を説明するための図である。
図3】決定部が決定した目標旋回曲率ρと、縦距離xdと、横距離ydとの関係を示す3次元のグラフである。
図4】比較例に係る装置が決定した目標旋回曲率と、縦距離と、横距離とを示す3次元のグラフである。
図5】目標旋回曲率を決定する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[決定装置の概要]
図1は、実施の形態に係る決定装置の概要を説明するための図である。実施の形態に係る決定装置1は、自車両2に搭載されている。自車両2は、自動運転車両である。自車両2は、自車両2に先行する先行車5に追従するように走行する。例えば、自車両2は、自車両2の位置D及び先行車5の位置Eを結ぶ線分DEを弦とする円弧Aの曲率に応じた操舵角になるように自車両2のステアリングホイールを制御することで、車幅方向Cにおける先行車5の移動に追従するように走行する。
【0019】
ところで、自車両2の進行方向Bにおける自車両2と先行車5との縦距離xdが短いと円弧Aの曲率が大きくなり、操舵角が大きくなる。操舵角が大きくなると、自車両2と他車両とが接触してしまうおそれがある。そのため、決定装置は、縦距離xdが判定距離未満になって円弧Aの曲率が所定の曲率よりも大きくなるならば、円弧Aの曲率よりも小さな目標旋回曲率を決定する。これにより、決定装置1は、円弧Aの曲率が大きくなっても、目標旋回曲率が大きくなりすぎることを抑制できる。その結果、自車両2は、円弧Aの曲率よりも小さな目標旋回曲率に応じた操舵角を決定できるので、操舵角が大きくなりすぎないようにできる。
【0020】
[決定装置1の構成]
図2は、決定装置1の構成を説明するための図である。自車両2は、センサ群3と、自車両2の操舵角を制御する操舵制御装置4とを搭載している。
【0021】
センサ群3は、自車両2の状態及び周辺環境を検出するセンサである。センサ群3は、例えば自車両2の状態として車速を検出する車速センサを含み、自車両2の車速を検出する。また、センサ群3は、周辺環境を検出するセンサとして、カメラ、レーダ、LIDAR(Light Detection and Ranging)等の外部センサを有する。センサ群3は、外部センサの出力値を決定装置1に出力する。
【0022】
決定装置1は、記憶部11及び制御部12を有する。記憶部11は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスク等を含む記憶媒体である。記憶部11は、制御部12が実行するプログラムを記憶する。
【0023】
制御部12は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含む計算リソースである。制御部12は、記憶部11に記憶されたプログラムを実行することにより、距離取得部121、判定部122及び決定部123としての機能を実現する。
【0024】
距離取得部121は、センサ群3の出力値に基づいて進行方向B(図1)における縦距離xd及び進行方向Bに直交する車幅方向Cにおける横距離yd(図1)を取得する。例えば、距離取得部121は、センサ群3のカメラが撮像した撮像画像を解析することにより、縦距離xd及び横距離ydを取得する。また、距離取得部121は、図1に示す角度α及び線分DEの長さLに基づいて、縦距離xd及び横距離ydを取得してもよい。角度αは、自車両2の位置Dを通り進行方向Bに平行な直線と線分DEとのなす角である。具体的には、距離取得部121は、センサ群3のレーダ又はLIDARが検出した検出値を用いて自車両2と先行車5との距離である線分DEの長さL及び角度αを特定し、長さL及び角度αを用いて縦距離xd及び横距離ydを取得する。
【0025】
判定部122は、縦距離xdが判定距離T未満か否かを判定する。判定距離Tは、最大曲率ρmaxに応じた値である。最大曲率ρmaxは、自車両2が旋回可能な曲率であり、自車両2の仕様等に応じて定められている。具体的には、判定距離Tは、最大曲率ρmax及び横距離上限値ymaxに応じた値である。横距離上限値ymaxは、車両を運転するドライバが先行車5に追従するときの最大位置や、安全性等を考慮して定めればよい。横距離上限値ymaxの具体的な値は例えば1.25メートルであるが、これに限定するものではない。
【0026】
判定距離Tは、下記式(1)で表される。
【数1】
式(1)に示すとおり、判定距離Tは、最大曲率ρmaxに対する横距離上限値ymaxの2倍の値の割合から横距離上限値ymaxの2乗を除いた値の平方根で表される。
【0027】
決定部123は、縦距離xd及び横距離ydに基づいて、目標旋回曲率ρを決定する。決定部123は、縦距離xdが判定距離T以上であれば、線分DEを弦とする円弧Aの曲率ρを目標旋回曲率ρとして決定する。
【0028】
決定部123は、縦距離xdが判定距離T未満であれば、所定の曲率よりも小さい目標旋回曲率ρを決定する。具体的には、決定部123は、縦距離xdが判定距離T未満であれば、線分DEを弦とする円弧Aの曲率ρよりも小さい目標旋回曲率ρを決定する。円弧Aの曲率ρは、円弧Aの半径R(図1)の逆数で表される。半径Rは、図1に示す二等辺三角形FDEの辺FD及び辺FEの長さに等しい。線分DEの長さLと半径Rとの関係は、L=2Rsinαで表される。また、sinα=Y/Lであることを用いると、円弧Aの曲率ρは下記式(2)で表される。
【数2】
【0029】
決定部123は、縦距離xdが判定距離T以上である場合、式(2)のxに取得された縦距離xdを代入して、yに取得された横距離ydを代入して定まる円弧Aの曲率ρを目標旋回曲率ρと決定する。また、決定部123は、縦距離xdが判定距離T未満である場合、式(2)のxに取得された縦距離xdを代入して、yに取得された横距離ydを代入して定まる円弧Aの曲率ρよりも小さい目標旋回曲率ρを決定する。具体的には、決定部123は、自車両2の縦距離xdが判定距離T未満であれば、式(2)のxに判定距離Tを代入し、yに取得された横距離ydを代入して得られる曲率ρを、目標旋回曲率ρとして決定する。
【0030】
縦距離xdが判定距離T未満である場合、円弧Aの曲率ρは、判定距離Tに応じた曲率ρより大きい。したがって、決定部123は、判定距離Tに応じた曲率ρを、目標旋回曲率ρと決定することにより、円弧Aの曲率ρよりも小さい目標旋回曲率ρを決定することが可能となる。すなわち、決定部123は、縦距離xdが判定距離T以上である場合に、第1の決定方法に基づいて目標旋回曲率ρを決定し、縦距離xdが判定距離T未満である場合に、第1の決定方法で得られる曲率よりも小さい曲率を目標旋回曲率ρとして決定する第2の決定方法に基づいて目標旋回曲率ρを決定する。また、決定部123は、車速が所定値未満である場合に、目標旋回曲率ρを決定する処理を実行する。所定値は、例えば自車両2が渋滞している道路を走行中か否かを判定するための値であり、具体的な値は時速40キロメートルであるが、これに限定するものではない。
【0031】
図3は、決定部123が決定した目標旋回曲率ρと、縦距離xdと、横距離ydとの関係を示す3次元のグラフである。図3に示すとおり、決定部123は、縦距離xdが小さいほど、横距離ydが大きいほど、目標旋回曲率ρを大きくする。ただし、決定部123は、縦距離xdが判定距離Tよりも小さくなったら、縦距離xdが判定距離Tであるとみなして、目標旋回曲率ρを決定する。決定部123は、縦距離xdが判定距離T未満であれば、縦距離xdによらず、横距離yd及び判定距離Tに応じた目標旋回曲率ρを決定する。そのため、決定部123が決定した目標旋回曲率ρは、値M以上になっていない。このようにすることで、縦距離xdが判定距離Tよりも小さくなっても目標旋回曲率ρが大きくなりすぎないので、決定部123は、操舵制御装置4が過剰な操舵角δを設定してしまうことを抑制できる。
【0032】
図4は、比較例に係る装置が決定した目標旋回曲率ρと、縦距離xdと、横距離ydとを示す3次元のグラフである。比較例に係る装置は、縦距離xdが判定距離T未満になっても、式(2)のxに取得された縦距離xdを代入し、yに取得された横距離ydを代入して、目標旋回曲率ρを決定した。図4に示すとおり、比較例に係る装置が決定した目標旋回曲率ρは、自車両2が先行車5に近づくほど増大している。この場合、大きな操舵角δが決定されてしまい、車両が横方向に大きく移動してしまう。なお、比較例に係る装置が決定した目標旋回曲率ρは、縦距離xdが判定距離Tよりも小さいときに値M以上になるが、グラフに記載せず省略している。
【0033】
決定部123は、自車両2と先行車5との縦距離xdが判定距離T以上であれば円弧Aの曲率ρを目標旋回曲率ρに決定する。このように、決定部123は、自車両2と先行車5が離れていて目標旋回曲率ρが大きくなりすぎる恐れがないときには、円弧Aの曲率ρを目標旋回曲率ρに決定できる。
【0034】
操舵制御装置4は、決定部123が決定した目標旋回曲率ρに応じた操舵角δを決定する。具体的には、操舵制御装置4は、下記式(3)を用いて操舵角δを決定する。
δ=nlρ…(3)
式(3)のnは、操舵輸の回転角度に対するステアリングホイールの回転角度の比(ステアリングギアレシオ)である。式(3)のlは、自車両2の前輪軸と後輪軸との距離を表すホイールベースである。実施の形態に係る操舵制御装置4は、縦距離xdが判定距離T未満であれば、決定装置1が決定した目標旋回曲率ρが横距離ydのみに応じているため、縦距離xdが小さくなっても操舵角δを大きくしないようにできる。
【0035】
[目標旋回曲率ρを決定する処理]
図5は、目標旋回曲率ρを決定する処理の一例を示すフローチャートである。決定装置1は、自車両2の車速が所定値以下であれば、目標旋回曲率ρを決定する処理を実行し、車速が所定値よりも大きければ目標旋回曲率ρを決定する処理を実行しない。
【0036】
距離取得部121は、縦距離xdを取得する(ステップS1)。具体的には、距離取得部121は、センサ群3の出力値を解析することにより線分DEの長さ及び角度αを特定し、線分DEの長さ及び角度αに基づいて縦距離xd及び横距離ydを取得する。
【0037】
判定部122は、縦距離xdが判定距離T未満であるか否かを判定する(ステップS2)。決定部123は、縦距離xdが判定距離T未満であれば(ステップS2でYes)、横距離yd及び判定距離Tに応じた目標旋回曲率ρを決定する(ステップS3)。具体的には、決定部123は、式(2)のxに判定距離Tを代入し、yに取得された横距離ydを代入して、目標旋回曲率ρを決定する。
【0038】
決定部123は、縦距離xdが判定距離T以上であれば(ステップS2でNo)、縦距離xd及び横距離ydに応じた目標旋回曲率ρを決定する(ステップS4)。具体的には、決定部123は、式(2)のxに取得された縦距離xdを代入し、yに取得された横距離ydを代入して、目標旋回曲率ρを決定する。
【0039】
(変形例)
決定部123は、自車両2が走行する道路の路面状況に応じて最大曲率ρmax及び横距離上限値ymaxのうちの少なくともいずれかを小さくしてもよい。例えば、決定部123は、道路の路面の摩擦係数が小さくなるほど最大曲率ρmax及び横距離上限値ymaxのうちの少なくともいずれかを小さくする。具体例を挙げると、決定部123は、道路の路面が濡れている、凍っている又は積雪している場合の最大曲率ρmax及び横距離上限値ymaxを、道路の路面が乾いている場合の最大曲率ρmax及び横距離上限値ymaxよりも小さくする。
【0040】
なお、乾いている道路の摩擦係数は0.8前後、濡れている道路の摩擦係数は0.4以上0.6以下、積雪している道路の摩擦係数は0.2以上0.5以下、凍っている道路の摩擦係数は0.1以上0.2以下である。そのため、決定部123は、最大曲率ρmax及び横距離上限値ymaxを、乾いている道路、濡れている道路、積雪している道路、凍っている道路の順に小さくする。
【0041】
[決定装置1の効果]
以上説明したとおり、決定装置1は、自車両2の進行方向Bにおける自車両2と先行車5との縦距離xdが判定距離T未満であれば、自車両2と先行車5とを結ぶ線分DEを弦とする円弧Aの曲率よりも小さい目標旋回曲率ρを決定する。これにより、決定装置1は、自車両2が先行車5に近づいていても、目標旋回曲率ρを自車両2と先行車5とを結ぶ線分DEを弦とする円弧Aの曲率よりも小さくできる。つまり、決定装置1は、操舵制御装置4が決定する目標旋回曲率ρに応じた操舵角δを、円弧Aの曲率に応じた操舵角よりも小さくさせることができるので、自車両2の過剰な操舵を抑制できる。その結果、決定装置1は、自車両2が他車両と接触するおそれを低減して自車両2の安全性を高められる。
【0042】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0043】
1 決定装置
11 記憶部
12 制御部
121 距離取得部
122 判定部
123 決定部
2 自車両
3 センサ群
4 操舵制御装置
5 先行車
図1
図2
図3
図4
図5