(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】試料精製装置、分析システム、試料精製方法、制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 1/04 20060101AFI20240903BHJP
B03B 5/30 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
G01N1/04 M
B03B5/30
(21)【出願番号】P 2022533024
(86)(22)【出願日】2020-10-28
(86)【国際出願番号】 JP2020040343
(87)【国際公開番号】W WO2022003995
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2020111223
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和輝
(72)【発明者】
【氏名】上田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】山形 秀文
(72)【発明者】
【氏名】井上 信介
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼▲崎▼ 真二
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109655321(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109540641(CN,A)
【文献】特表2020-508867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/04
B03B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合試料を精製する試料精製装置であって、
重液を用いて前記混合試料を比重差によって分離するための容器と、
前記重液を前記容器に導入するための重液導入部と、
前記重液導入部よりも鉛直方向で上方に位置する前記容器の最上部に設けられ、前記容器内の液体のうち前記重液の導入によって生じた上澄み液を前記容器の外部にオーバーフローさせるための排出部と、
前記排出部から排出された前記上澄み液を導く排出経路と、
前記排出部よりも
前記鉛直方向で下方に設けられ、前記排出部からオーバーフローして前記排出経路によって導かれた前記上澄み液から前記混合試料のうちの前記重液よりも比重の軽い成分を回収するための回収部とを備え
、
前記容器の水平断面積は、当該容器の少なくとも所定の高さから前記排出部までの間において前記上方に向かうにつれて連続的に小さく構成されている、試料精製装置。
【請求項2】
前記混合試料に含まれる夾雑物を処理するための分解剤を前記容器に導入するための分解剤導入部と、
前記容器内の廃液を排出するための廃液排出部と、
前記分解剤導入部、前記重液導入部、および前記廃液排出部の各々に設けられ、かつ、液体の出入りを切り替える少なくとも1つの切替部と、
前記少なくとも1つの切替部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記少なくとも1つの切替部を制御することで、
前記混合試料が収容された前記容器に前記分解剤導入部から前記分解剤を導入し、
前記分解剤によって前記夾雑物が処理された後の前記容器内の前記廃液を前記廃液排出部から排出し、
前記容器に前記重液導入部から前記重液を導入する、請求項1に記載の試料精製装置。
【請求項3】
前記分解剤導入部および前記重液導入部の各々に設けられた前記少なくとも1つの切替部は、前記廃液排出部に設けられた前記少なくとも1つの切替部と異なる、請求項2に記載の試料精製装置。
【請求項4】
前記容器内を洗浄するためのリンス液を前記容器に導入するためのリンス液導入部と、
前記リンス液導入部に設けられ、かつ、液体の出入りを切り替える少なくとも1つの切替部とを備え、
前記制御部は、前記リンス液導入部に設けられた前記少なくとも1つの切替部を制御することで、廃液が排出された前記容器に前記リンス液導入部から前記リンス液を導入する、請求項2または請求項3に記載の試料精製装置。
【請求項5】
前記重液導入部に設けられた前記少なくとも1つの切替部は、前記リンス液導入部に設けられた前記少なくとも1つの切替部と共用されている、請求項4に記載の試料精製装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記重液の導入によって生じた前記上澄み液が前記容器の外部に排出した後、前記少なくとも1つの切替部を制御することで、
前記重液が導入された前記容器内の廃液を前記廃液排出部から排出し、
廃液が排出された前記容器に前記リンス液導入部から前記リンス液を導入し、
前記リンス液が導入された前記容器内の廃液を前記廃液排出部から排出する、請求項4に記載の試料精製装置。
【請求項7】
前記容器内の前記混合試料を撹拌する撹拌部を備え、
前記制御部は、前記撹拌部を制御することで、前記分解剤が導入された前記容器内の前記混合試料を撹拌する、請求項2に記載の試料精製装置。
【請求項8】
前記容器内の前記混合試料を加熱する加熱部を備え、
前記制御部は、前記加熱部を制御することで、前記分解剤が導入された前記容器内の前記混合試料を加熱する、請求項7に記載の試料精製装置。
【請求項9】
前記容器に設けられ、かつ、前記少なくとも1つの切替部との間で液体が出入する少なくとも1つのポートを備え、
前記少なくとも1つのポートは、フィルタを含む、請求項2に記載の試料精製装置。
【請求項10】
前記容器内の前記混合試料の温度を測定する温度センサを備え、
前記制御部は、前記温度センサの測定値に基づき前記加熱部を制御する、請求項8に記載の試料精製装置。
【請求項11】
前記容器内の前記混合試料を冷却する冷却部と、
前記容器内の前記混合試料の温度を測定する温度センサとを備え、
前記制御部は、前記温度センサの測定値に基づき前記冷却部を制御する、請求項8に記載の試料精製装置。
【請求項12】
前記容器内の前記混合試料を撮影するカメラを備え、
前記制御部は、前記カメラによって取得された前記混合試料の撮影画像に基づき前記加熱部を制御する、請求項8に記載の試料精製装置。
【請求項13】
前記容器内の前記混合試料を冷却する冷却部と、
前記容器内の前記混合試料を撮影するカメラとを備え、
前記制御部は、前記カメラによって取得された前記混合試料の撮影画像に基づき前記冷却部を制御する、請求項8に記載の試料精製装置。
【請求項14】
水を前記容器に導入するための水導入部と、
前記水導入部に設けられ、かつ、液体の出入りを切り替える少なくとも1つの切替部とを備え、
前記制御部は、前記分解剤導入部から前記分解剤が導入される前に、前記水導入部に設けられた前記少なくとも1つの切替部を制御することで、前記容器に前記水導入部から前記水を導入する、請求項2に記載の試料精製装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記分解剤導入部に設けられた前記少なくとも1つの切替部を制御することで、前記混合試料が収容された前記容器に前記分解剤導入部から前記分解剤を一定周期で所定量ごとに導入する、請求項2に記載の試料精製装置。
【請求項16】
請求項1に記載の前記試料精製装置と、
前記試料精製装置の前記回収部によって回収された前記成分を分析する分析装置とを備える、分析システム。
【請求項17】
容器を備えた試料精製装置を用いて混合試料を精製する試料精製方法であって、
前記試料精製方法は、コンピュータが実行する処理として、
前記容器に前記混合試料を比重差によって分離させるための重液を導入することで、前記重液の導入によって生じた上澄み液を前記容器の最上部に設けられた排出部から排出経路を介して外部にオーバーフローさせるステップと、
前記排出部からオーバーフローして前記排出経路によって導かれた前記上澄み液から前記混合試料のうちの前記重液よりも比重の軽い成分を回収するステップとを含
み、
前記容器の水平断面積は、当該容器の少なくとも所定の高さから前記排出部までの間において鉛直方向で上方向に向かうにつれて連続的に小さく構成されている、試料精製方法。
【請求項18】
容器を備えた試料精製装置を用いて混合試料を精製するための制御プログラムであって、
前記制御プログラムは、コンピュータに、
前記容器に前記混合試料を比重差によって分離させるための重液を導入することで、前記重液の導入によって生じた上澄み液を前記容器の最上部に設けられた排出部から排出経路を介して外部にオーバーフローさせるステップと、
前記排出部からオーバーフローして前記排出経路によって導かれた前記上澄み液から前記混合試料のうちの前記重液よりも比重の軽い成分を回収するステップとを実行させ
、
前記容器の水平断面積は、当該容器の少なくとも所定の高さから前記排出部までの間において鉛直方向で上方向に向かうにつれて連続的に小さく構成されている、制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試料精製装置、分析システム、試料精製方法、および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回収対象の成分を回収するために、当該成分が含まれた混合試料を精製することが行われている。たとえば、非特許文献1および非特許文献2には、海中から収集した混合試料を精製することで当該混合試料に含まれるマイクロプラスチックを回収する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】「GUIDELINES FOR THE MONITORING AND ASSESSMENT OF PLASTIC LITTER IN THE OCEAN」、GESAMP Reports and Studies No.99、米国海洋大気局(NOAA)、[令和2年6月17日検索]、インターネット<URL:https://environmentlive.unep.org/media/docs/marine_plastics/une_science_dvision_gesamp_reports.pdf>
【文献】「Guidelines for Harmonizing Ocean Surface Micro plastic Monitoring Methods」、Version 1.0、[online]、2019年5月、環境省、[令和2年6月17日検索]、インターネット<URL:http://www.env.go.jp/en/water/marine_litter/guidelines/guidelines.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1および非特許文献2に開示された試料精製方法によりマイクロプラスチックを回収する場合、混合試料を精製する際の各工程において作業者による手作業が必要である。さらに、複数の容器間で混合試料を移す作業も必要となる。作業工程によっては数日要するものもあり、管理が大変である上に作業者の手間も掛かり、各作業者の技量に応じて成分の回収における精度にばらつきが生じる虞もあった。
【0005】
本開示は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、精度良く混合試料を精製する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に従う混合試料を精製する試料精製装置は、重液を用いて混合試料を比重差によって分離するための容器と、重液を容器に導入するための重液導入部と、重液導入部よりも鉛直方向で上方に位置する容器の最上部に設けられ、容器内の液体のうち重液の導入によって生じた上澄み液を容器の外部にオーバーフローさせるための排出部と、排出口から排出された上澄み液を回収部へ導く排出経路と、排出部よりも鉛直方向で下方に設けられ、排出部からオーバーフローして排出経路によって導かれた上澄み液から混合試料のうちの重液よりも比重の軽い成分を回収するための回収部とを備え、容器の水平断面積は、当該容器の少なくとも所定の高さから排出部までの間において上方に向かうにつれて連続的に小さく構成されている。
【0007】
本開示のある局面に従う分析システムは、上記の試料精製装置と、試料精製装置の回収部によって回収された成分を分析する分析装置とを備える。
【0008】
本開示の別の局面に従う容器を備えた試料精製装置を用いて混合試料を精製する試料精製方法は、コンピュータが実行する処理として、容器に混合試料を比重差によって分離させるための重液を導入することで、重液の導入によって生じた上澄み液を容器の最上部に設けられた排出部から排出経路を介して外部にオーバーフローさせるステップと、排出部からオーバーフローして排出経路によって導かれた上澄み液から混合試料のうちの重液よりも比重の軽い成分を回収するステップとを含み、容器の水平断面積は、当該容器の少なくとも所定の高さから排出部までの間において鉛直方向で上方向に向かうにつれて連続的に小さく構成されている。
【0009】
本開示の別の局面に従う容器を備えた試料精製装置を用いて混合試料を精製するための制御プログラムは、コンピュータに、容器に混合試料を比重差によって分離させるための重液を導入することで、重液の導入によって生じた上澄み液を容器の最上部に設けられた排出部から排出経路を介して外部にオーバーフローさせるステップと、排出部からオーバーフローして排出経路によって導かれた上澄み液から混合試料のうちの重液よりも比重の軽い成分を回収するステップとを実行させ、容器の水平断面積は、当該容器の少なくとも所定の高さから排出部までの間において鉛直方向で上方向に向かうにつれて連続的に小さく構成されている。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、一の容器を用いた連続的な作業によって混合試料を精製することができるため、作業者の手間を極力掛けることなく精度良く混合試料を精製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施の形態に係る試料精製装置を模式的に示す図である。
【
図2】本実施の形態に係る試料精製装置の内部構成を模式的に示す図である。
【
図3】本実施の形態に係る試料精製装置を用いた試料精製方法を説明するための図である。
【
図4】本実施の形態に係る試料精製装置を用いた試料精製方法を説明するための図である。
【
図5】本実施の形態に係る試料精製装置を用いた試料精製方法を説明するための図である。
【
図6】本実施の形態に係る試料精製装置を用いた試料精製方法を説明するための図である。
【
図7】本実施の形態に係る試料精製装置を用いた試料精製方法を説明するための図である。
【
図8】本実施の形態に係る試料精製装置を用いた試料精製方法を説明するための図である。
【
図9】本実施の形態に係る試料精製装置を用いた試料精製方法を説明するための図である。
【
図10】本実施の形態に係る試料精製装置を用いた試料精製方法を説明するための図である。
【
図11】本実施の形態に係る試料精製装置を用いた試料精製方法を説明するための図である。
【
図12】本実施の形態に係る試料精製装置を用いた試料精製方法を説明するための図である。
【
図13】本実施の形態に係る試料精製装置を用いた試料精製方法を説明するための図である。
【
図14】本実施の形態に係る試料精製装置を用いた試料精製方法を説明するための図である。
【
図15】本実施の形態に係る試料精製装置を用いた試料精製方法を説明するための図である。
【
図16】本実施の形態に係る試料精製装置を用いた試料精製方法を説明するための図である。
【
図17】本実施の形態に係る試料精製装置が実行する試料精製処理を説明するためのフローチャートである。
【
図18】本実施の形態に係る試料精製装置の容器の形状を説明するための図である。
【
図19】本実施の形態に係る試料精製装置の容器の形状を説明するための図である。
【
図20】本実施の形態に係る分析システムを模式的に示す図である。
【
図21】第2の実施の形態に係る試料精製装置を模式的に示す図である。
【
図22】第3の実施の形態に係る試料精製装置を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一の符号を付して、その説明は原則的に繰り返さない。
【0013】
[試料精製装置の構成]
図1は、本実施の形態に係る試料精製装置1を模式的に示す図である。本実施の形態に係る試料精製装置1は、コンピュータ500の制御によって混合試料を精製することで、当該混合試料に含まれる回収対象となる成分を回収する処理を実行する。「精製」とは、混合物を純物質にすることを含み、本実施の形態においては、収集された混合試料から、回収対象となる純物質(成分)を取得することを含む。
【0014】
試料精製装置1によって精製される「混合試料」は、回収対象となる成分を含むものであればいずれのものでもよく、たとえば、「混合試料」として、海中または海岸から収集される海水および砂、食品および化粧品などの加工品などが挙げられる。本実施の形態においては、「混合試料」として、海中または海岸から収集される海水および砂を例示する。なお、以下では、「混合試料」を単に「試料」とも称する。
【0015】
試料精製装置1の回収対象となる「成分」は、本実施の形態に係る試料精製装置1によって回収される成分であればいずれのものでもよく、たとえば、マイクロプラスチックが「成分」として挙げられる。マイクロプラスチックは、たとえば、長さが5mm以下の微細なプラスチック粒子である。本実施の形態においては、「成分」として、海中または海岸から収集される海水および砂に含まれるマイクロプラスチックを例示する。
【0016】
図1に示すように、試料精製装置1は、試料を精製するための試料精製器100と、試料精製器100を制御するコンピュータ500とを備える。
【0017】
試料精製器100は、容器50と、複数の配管11~配管15と、複数のポンプ31~ポンプ34と、複数のポート61~ポート64と、電磁弁41と、恒温スターラー71と、撹拌子72と、ペルチェ素子75と、温度センサ80と、カメラ90と、排出管25と、検出フィルタ21と、容器210とを備える。
【0018】
容器50は、試料を収容することが可能である。容器50は、カメラ90が容器50の外部からその内部を観察できるように、ガラスなどの透明部材で形成されている。容器50の透過率は、少なくとも容器50に収容された試料がカメラ90によって撮影可能な透過率に設定されている。
【0019】
配管11は、容器110に接続されており、夾雑物を処理するための酸化剤を、当該容器110から容器50に設けられたポート61に導入する。「夾雑物」は、混合試料のうち回収対象の成分以外の異物である。本実施の形態においては、「夾雑物」として、有機物の性質を有する有機夾雑物を例示する。
【0020】
「酸化剤」は、夾雑物を処理させるものであればいずれのものでもよい。本実施の形態においては、「酸化剤」は、有機夾雑物を分解する。たとえば、「酸化剤」として、過酸化水素水(H2O2)、過酸化水素水(H2O2)と酸化鉄(II)(FeO)との混合物などが挙げられる。「混合試料」が海水および砂である場合、「有機夾雑物」として、海水または砂に混じった木くずおよびプランクトンなどが挙げられる。
【0021】
配管12は、容器120に接続されており、比重差により試料を分離するための重液を、当該容器120から容器50に設けられたポート62に導入する。
【0022】
「重液」は、比重差により試料を分離するものであればいずれのものでもよい。本実施の形態においては、「重液」は、無機物の性質を有する無機夾雑物を比重差で沈降させる。たとえば、「重液」として、塩化ナトリウム(NaCl)、ヨウ化ナトリウム(Nal)、塩化亜鉛(ZnCl2)などが挙げられる。「混合試料」が海水および砂である場合、「無機夾雑物」として、砂、ガラス、および石などが挙げられる。「重液」の比重は、試料精製装置1の回収対象となる「成分」の比重よりも大きく、かつ、「無機夾雑物」の比重よりも小さく設定される。たとえば、試料精製装置1の回収対象となる「成分」がマイクロプラスチックであり、「無機夾雑物」が砂、ガラス、および石などの場合、「重液」の比重は、マイクロプラスチックの比重よりも大きく、かつ、砂、ガラス、および石などの比重よりも小さく設定されればよい。具体的には、「重液」の比重は、約1.5~約1.7に設定されればよい。
【0023】
配管13は、容器130に接続されており、容器50内を洗浄するためのリンス液を、当該容器130から容器50に設けられたポート63に導入する。
【0024】
「リンス液」は、容器50内を洗浄するためのものであればいずれのものでもよく、たとえば、「リンス液」として、水が挙げられる。なお、本実施の形態において、配管13によって導入される「リンス液」は、容器50内を洗浄する役割の他、容器50に導入される酸化剤を薄める役割を有する。
【0025】
配管14は、容器140に接続されており、容器50内の廃液を、当該容器50に設けられたポート64から当該容器140に排出する。配管15は、容器150に接続されており、容器50内の廃液を、当該容器50に設けられたポート64から当該容器150に排出する。
【0026】
ポンプ31は、配管11と容器50との間に設けられ、コンピュータ500の制御によってバルブ31aが動作することで、容器110に収容された酸化剤を吸い込んでポート61に向けて導入する。ポンプ32は、配管12と容器50との間に設けられ、コンピュータ500の制御によってバルブ32aが動作することで、容器120に収容された重液を吸い込んでポート62に向けて導入する。ポンプ33は、配管13と容器50との間に設けられ、コンピュータ500の制御によってバルブ33aが動作することで、容器130に収容されたリンス液を吸い込んでポート63に向けて導入する。ポンプ34は、配管14および配管15の各々と容器50との間に設けられ、コンピュータ500の制御によってバルブ34aが動作することで、容器50内の廃液を吸い込んで容器140または容器150に向けてポート64から排出する。バルブ31a~バルブ34aの各々は、「切替部」の一例であり、ポンプ31~ポンプ34の各々に設けられた通路を開閉することで液体の出入を切り替える。
【0027】
「切替部」は、配管11~配管15の各々において液体の出入を切り替えるものであればいずれのものでもよい。たとえば、「切替部」は、ピストンなどの往復動により吸込・吐出を行うものであってもよいし、歯車などを回転運動させて吸込・吐出を行うものであってもよい。「液体」は、酸化剤、重液、リンス液、および廃液などを含む。
【0028】
ポート61~ポート64は、容器50の外周部分に形成され、液体が出入りするための出入り口である。ポート61~ポート64の各々の内部には、フィルタ(たとえば、後述する
図19に示すフィルタ163,164)が設けられており、試料に含まれる成分が外部に排出されないようになっている。
【0029】
電磁弁41は、配管14および配管15の各々とポンプ34との間に設けられ、コンピュータ500の制御によって動作することで、配管14とポンプ34との間の経路と、配管15とポンプ34との間の経路とで、廃液が通る経路を切り替える。
【0030】
恒温スターラー71は、「撹拌部」および「加熱部」の一例である。恒温スターラー71には容器50が載せられる。恒温スターラー71は、コンピュータ500の制御に基づき容器50内に設けられた撹拌子72を回転させることで、容器50に収容された試料を撹拌する。さらに、恒温スターラー71は、コンピュータ500の制御に基づき容器50に収容された試料を加熱する。「加熱部」は恒温スターラーに限らず、容器50内の試料を加熱することができる他の手段であってもよい。
【0031】
ペルチェ素子75は、「冷却部」の一例である。ペルチェ素子75は、コンピュータ500の制御に基づき容器50に収容された試料を冷却する。「冷却部」はペルチェ素子に限らず、容器50内の試料を冷却することができる他の手段であってもよい。
【0032】
温度センサ80は、たとえば容器50内の底面に設けられ、容器50に収容された試料の温度を測定する。温度センサ80の測定値Tは、コンピュータ500に出力される。
【0033】
カメラ90は、たとえば容器50の外部に設けられ、容器50に収容された試料を撮影する。カメラ90の撮影によって得られた画像データCは、コンピュータ500に出力される。カメラ90は、静止画に限らず、動画を撮影するものであってもよい。
【0034】
排出管25は、容器50の最上部に設けられた排出口20に接続されており、容器50からオーバーフローした試料の上澄み液を外部に排出する。排出口20は、「排出部」の一例である。排出管25は、「排出経路」の一例である。検出フィルタ21は、排出管25から排出された試料の上澄み液を濾過することで、上澄み液に含まれる回収対象の成分を回収する。検出フィルタ21を通過した上澄み液は、容器210によって回収される。好ましい実施形態では、検出フィルタ21は、回収対象のマイクロプラスチックをトラップできるフィルタである。当該フィルタの具体例は、SUS製(ステンレス製)の金網またはPTFE製(テフロン(登録商標)製)のメンブレンフィルタである。検出フィルタ21は、「回収部」の一例である。
【0035】
コンピュータ500は、汎用コンピュータで実現されてもよいし、試料精製器100を制御するための専用コンピュータで実現されてもよい。コンピュータ500は、試料精製器100における、バルブ31a~バルブ34aの各々、電磁弁41、および恒温スターラー71を制御する。
【0036】
具体的には、コンピュータ500は、バルブ31a~バルブ34aの各々において、モータ(図示は省略する)に電力を与えることで、モータを駆動する。モータの駆動力は、バルブ31a~バルブ34aを開閉させ、これによってポンプ31~ポンプ34が液体の吸込・吐出を行う。
【0037】
また、コンピュータ500は、電磁弁41のソレノイド(図示は省略する)に電流を流すことで、弁(図示は省略する)を開閉し、これによって廃液が通る経路を切り替える。
【0038】
コンピュータ500は、温度センサ80から取得した測定値Tおよびカメラ90から取得した画像データCの少なくともいずれか1つに基づき恒温スターラー71を制御することで、容器50に収容された試料を加熱する。コンピュータ500は、恒温スターラー71のモータ(図示は省略する)に電力を与えることで、モータを駆動する。モータの駆動力は、撹拌子72を回転させ、これによって容器50に収容された試料が撹拌される。加えて、コンピュータ500は、恒温スターラー71のヒーター(図示は省略する)に電力を与えることで、容器50に一定の熱を加える。
【0039】
コンピュータ500は、温度センサ80から取得した測定値Tおよびカメラ90から取得した画像データCの少なくともいずれか1つに基づきペルチェ素子75を制御することで、容器50に収容された試料を冷却する。
【0040】
図2は、本実施の形態に係る試料精製装置1の内部構成を模式的に示す図である。
図2に示すように、コンピュータ500は、主なハードウェア要素として、演算装置501と、メモリ502と、ネットワークコントローラ503と、表示装置504と、入力装置505と、データ読取装置506と、ストレージ510とを備える。
【0041】
演算装置501は、「制御部」の一例である。演算装置501は、各種のプログラムを実行することで、各種の処理を実行する演算主体である。たとえば、演算装置501は、後述する制御プログラム511を実行することで、試料精製器100における、バルブ31a~バルブ34aの各々、電磁弁41、および恒温スターラー71を制御するための試料精製処理(
図17で後述する)を実行する。
【0042】
演算装置501は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、およびGPU(Graphics Processing Unit)などで構成される。なお、演算装置501は、演算を行う演算回路(processing circuitry)で構成されてもよい。
【0043】
本実施の形態においては、「制御部」の一例としてコンピュータ500が備える演算装置501を例示するが、「制御部」は、ユーザが作成したプログラムに従って各構成をシーケンス制御するPLC(programmable logic controller)などのコントローラであってもよい。さらに、本実施の形態においては、「制御部」が試料精製器100と別体であったが、「制御部」は、試料精製器100と一体であってもよい。たとえば、試料精製器100に演算装置501に相当する装置が内蔵されてもよい。
【0044】
メモリ502は、演算装置501が任意のプログラムを実行するにあたって、プログラムコードやワークメモリなどを一時的に格納する記憶領域を提供する。メモリ502は、たとえば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)またはSRAM(Static Random Access Memory)などの揮発性メモリデバイスで構成される。
【0045】
ネットワークコントローラ503は、ネットワーク(図示は省略する)を介して、他の装置との間で送受信する。ネットワークコントローラ503は、たとえば、イーサネット(登録商標)、無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)などの任意の通信方式に対応する。
【0046】
表示装置504は、たとえば、LCD(Liquid Crystal Display)などで構成され、プログラムの設計画面および異常時のアラート画面などを表示する。
【0047】
入力装置505は、たとえば、キーボードおよびマウスなどで構成され、プログラムの設計時に、ユーザによって設計情報などの入力に用いられる。入力装置505は、演算装置501による試料精製処理の実行を開始するためのスタートスイッチで構成されてもよい。
【0048】
データ読取装置506は、記憶媒体507に格納されているデータを読み出すための装置である。記憶媒体507は、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、およびUSB(Universal Serial Bus)メモリなど、各種のデータを記憶することができるものであればいずれのものであってもよい。
【0049】
ストレージ510は、試料精製処理などに必要な各種のデータを格納する記憶領域を提供する。ストレージ510は、たとえば、ハードディスクまたはSSD(Solid State Drive)などの不揮発性メモリデバイスで構成される。ストレージ510は、制御プログラム511と、制御用データ512と、OS(Operating System)513とを格納する。
【0050】
制御プログラム511は、試料精製処理の内容が記述されたプログラムであり、演算装置501によって実行される。制御プログラム511は、入力装置505を用いてユーザによって設計されてもよいし、データ読取装置506によって記憶媒体507から読み取られてもよいし、ネットワークコントローラ503によってサーバなどの他の装置からネットワークを介して取得されてもよい。
【0051】
制御用データ512は、演算装置501が制御プログラム511を実行する際に用いるデータである。たとえば、制御用データ512は、バルブ31a~バルブ34aの各々、電磁弁41、恒温スターラー71、ペルチェ素子75、温度センサ80、およびカメラ90を制御するためのデータを含む。制御用データ512は、入力装置505を用いてユーザによって入力されてもよいし、データ読取装置506によって記憶媒体507から読み取られてもよいし、ネットワークコントローラ503によってサーバなどの他の装置からネットワークを介して取得されてもよい。
【0052】
OS513は、演算装置501によって各種の処理を実行するための基本的な機能を提供する。
【0053】
[試料精製方法]
図3~
図16を参照しながら、試料精製装置1を用いた試料精製方法について説明する。
図3~
図16は、本実施の形態に係る試料精製装置1を用いた試料精製方法を説明するための図である。
【0054】
事前の準備として、作業者などのユーザは、容器110、容器120、容器130、容器140、容器150、容器210、および検出フィルタ21を用意する。ユーザは、容器110に酸化剤を収容するとともに、容器110に配管11を挿入する。ユーザは、容器120に重液を収容するとともに、容器120に配管12を挿入する。ユーザは、容器130にリンス液を収容するとともに、容器130に配管13を挿入する。ユーザは、容器140に配管14を挿入し、容器150に配管15を挿入する。この段階では、容器140および容器150は、各々、空の状態である。ユーザは、排出管25の出口付近に、排出管25側から順に検出フィルタ21および容器210を配置する。
【0055】
図3に示すように、ユーザは、試料精製装置1の容器50に試料(混合試料)を導入する。たとえば、ユーザは、複数の部材によって構成された容器50の一部を分離させることで容器50内を開放して、容器50内に試料を流し込む。その後、ユーザは、コンピュータ500の入力装置505を用いて開始操作を行うことで、コンピュータ500による試料精製器100の制御を開始する。
【0056】
コンピュータ500による制御が開始すると、
図4に示すように、コンピュータ500は、バルブ34aおよび電磁弁41を制御することで、ポート64および配管14を介して、容器50内の廃液を容器140に排出する。容器50内に収容された試料は、海水などの廃液を含んでおり、このような廃液が容器140に排出される。一方、試料に含まれる回収対象となるマイクロプラスチックなどは、ポート64に含まれるフィルタ164(
図19参照)によって外部に排出されず、容器50内に残る。
【0057】
次に、
図5に示すように、コンピュータ500は、ポンプ33を制御することで、配管13およびポート63を介して、容器130に収容された水を容器50に導入する。このとき、コンピュータ500は、ポンプ33の吸込量を制御することで、ユーザによって予め設定された量の水を容器50に導入する。たとえば、コンピュータ500は、バルブ33aの開放度合を調整することで、ポンプ33の吸込量を制御する。あるいは、コンピュータ500は、容器130または容器50に設けられた液面センサの検出値に基づき、ポンプ33の吸込量を制御してもよい。本実施の形態においては、容器50内を洗浄するために用いられるリンス液(水)が、容器50に導入される酸化剤を薄めるための溶媒として用いられる。なお、容器50内を洗浄するための水と、容器50に導入される酸化剤を薄めるための溶媒とが、別の容器に収容され、互いに異なる経路から容器50に導入されてもよい。この場合、酸化剤を薄めるための溶媒と、容器50内を洗浄するために用いられるリンス液とを異なる種類の液体で構成してもよい。
【0058】
次に、
図6に示すように、コンピュータ500は、バルブ31aを制御することで、配管11およびポート61を介して、容器110に収容された酸化剤を容器50に導入する。このとき、コンピュータ500は、ポンプ31の吸込量を制御することで、ユーザによって予め設定された量の酸化剤を容器50に導入する。たとえば、コンピュータ500は、ポンプ31のバルブ31aの開放度合を調整することで、ポンプ31の吸込量を制御する。あるいは、コンピュータ500は、容器110または容器50に設けられた液面センサの検出値に基づき、ポンプ31の吸込量を制御してもよい。
【0059】
ここで、容器50内の試料に酸化剤(たとえば、過酸化水素水など)の分解反応の触媒となる物質(たとえば、二酸化マンガン、よう素など)が含まれている場合、試料に酸化剤を直接的に加えると、酸化剤による分解反応が加速し、酸化反応時の発熱によって酸化剤が沸騰するおそれがある。このような事態が生じると、容器50から試料が噴き出したり、発熱によって試料の変性が引き起こされたりし、回収対象となる成分(たとえば、マイクロプラスチック)の回収量の評価および定性評価に影響が生じ得る。この点を鑑みて、本実施の形態においては、
図6に示すステップによって容器50に酸化剤が導入される前に、
図5に示すステップによって予め容器50に水が導入される。これにより、容器50に導入された酸化剤が容器50内で水と混ざって薄まることで、容器50に収容された試料が酸化剤と急激に反応することを極力回避することができる。
【0060】
次に、
図7に示すように、コンピュータ500は、恒温スターラー71を制御することで、容器50に一定の熱を加えながら容器50内に設けられた撹拌子72を回転させる。容器50の温度および撹拌子72の回転速度は、ユーザによって予め設定される。このようにして試料が撹拌されることで、酸化剤による酸化処理が行われ、試料に含まれる有機夾雑物が分解される。なお、試料の撹拌時においては、必ずしも加熱は必要ないが、加熱によって試料の温度を一定温度に保つことで酸化処理による分解が促進し易くなる。
【0061】
次に、
図8に示すように、コンピュータ500は、ペルチェ素子75を制御することで容器50に収容された試料を冷却し、酸化反応が起こり易いように試料の温度を調整する。
【0062】
具体的には、コンピュータ500は、温度センサ80によって測定された試料の温度を測定値Tとして取得する。コンピュータ500は、温度センサ80から取得した測定値Tに基づきペルチェ素子75を制御することで、試料の温度を調整する。たとえば、コンピュータ500は、測定値Tに基づき特定した容器50内の試料の温度が第1温度であるか否かを判定する。第1温度は、試料の酸化反応が好適に行われる温度であり、予めユーザによって設定可能である。コンピュータ500は、試料の温度が第1温度でない場合、試料の温度が第1温度となるように、ペルチェ素子75を制御することで容器50に収容された試料を冷却する。
【0063】
さらに、コンピュータ500は、カメラ90の撮影によって得られた試料の撮影画像を画像データCとして取得する。コンピュータ500は、カメラ90から取得した画像データCに基づきペルチェ素子75を制御することで、試料の温度を調整する。たとえば、コンピュータ500は、画像データCに基づき特定した容器50内の試料の状態が異常状態(たとえば、過剰な沸騰状態)であるか否かを判定する。コンピュータ500は、試料の状態が異常状態である場合、試料の状態が正常状態となるように、ペルチェ素子75を制御することで容器50に収容された試料を冷却する。コンピュータ500は、試料の液面の高さが予め設定された判定値を超えているか否かを判定することで、試料の状態が異常状態であるか否かを判定してもよいし、AI(Artificial Intelligence)を用いた画像認識によって試料の状態が異常状態であるか否かを判定してもよい。
【0064】
なお、コンピュータ500は、温度センサ80の測定値T、および、カメラ90の画像データCのうち、少なくともいずれか1つに基づきペルチェ素子75を制御してもよい。すなわち、コンピュータ500は、温度センサ80の測定値Tのみに基づきペルチェ素子75を制御してもよいし、カメラ90の画像データCのみに基づきペルチェ素子75を制御してもよいし、温度センサ80の測定値Tおよびカメラ90の画像データCの両方に基づきペルチェ素子75を制御してもよい。
【0065】
次に、
図9に示すように、コンピュータ500は、酸化反応の完了を検知した場合、恒温スターラー71を制御することで、容器50に収容された試料の加熱を停止するとともに、撹拌子72の回転を停止する。
【0066】
具体的には、コンピュータ500は、温度センサ80によって測定された試料の温度を測定値Tとして取得する。コンピュータ500は、温度センサ80から取得した測定値Tに基づき恒温スターラー71を制御することで、試料の加熱および撹拌を停止する。たとえば、コンピュータ500は、測定値Tに基づき特定した容器50内の試料の温度が第2温度を超えているか否かを判定する。第2温度は、試料の酸化反応が完了するときの温度であり、予めユーザによって設定可能である。酸化反応が行われている間は、酸化反応時の発熱によって、恒温スターラー71による加熱温度よりも試料の温度が上昇する傾向にある。このため、第2温度は、恒温スターラー71による加熱温度に設定され得る。コンピュータ500は、試料の温度が第2温度以下である場合、試料の酸化反応が完了したと判断して、恒温スターラー71を制御することで試料の加熱および撹拌を停止する。
【0067】
さらに、コンピュータ500は、カメラ90の撮影によって得られた試料の撮影画像を画像データCとして取得する。コンピュータ500は、カメラ90から取得した画像データCに基づき恒温スターラー71を制御することで、試料の加熱および撹拌を停止する。たとえば、酸化反応が行われている間は、酸化反応時の発熱による沸騰によって、試料の液面が安定しない傾向にある。コンピュータ500は、画像データCに基づき特定した容器50内の試料の状態が安定状態(たとえば、酸化反応が完了して試料の液面が安定した状態)であるか否かを判定する。コンピュータ500は、試料の状態が安定状態である場合、試料の酸化反応が完了したと判断して、恒温スターラー71を制御することで試料の加熱および撹拌を停止する。コンピュータ500は、試料の液面の高さが予め設定された判定値を超えているか否かを判定することで、試料の状態が安定状態であるか否かを判定してもよいし、AI(Artificial Intelligence)を用いた画像認識によって試料の状態が安定状態であるか否かを判定してもよい。
【0068】
なお、コンピュータ500は、温度センサ80の測定値T、および、カメラ90の画像データCのうち、少なくともいずれか1つに基づき恒温スターラー71を制御してもよい。すなわち、コンピュータ500は、温度センサ80の測定値Tのみに基づき恒温スターラー71を制御してもよいし、カメラ90の画像データCのみに基づき恒温スターラー71を制御してもよいし、温度センサ80の測定値Tおよびカメラ90の画像データCの両方に基づき恒温スターラー71を制御してもよい。
【0069】
次に、
図10に示すように、コンピュータ500は、バルブ34aおよび電磁弁41を制御することで、ポート64および配管14を介して、有機夾雑物が分解された後の試料に含まれる容器50内の廃液を容器140に排出する。一方、試料に含まれる回収対象となるマイクロプラスチックなどは、ポート64に含まれるフィルタ164によって外部に排出されず、容器50内に残る。
【0070】
次に、
図11に示すように、コンピュータ500は、ポンプ33を制御することで、配管13およびポート63を介して、容器130に収容されたリンス液を容器50に導入する。このとき、コンピュータ500は、ポンプ33の吸込量を制御することで、ユーザによって予め設定された量のリンス液を容器50に導入する。たとえば、コンピュータ500は、バルブ33aの開放度合を調整することで、ポンプ33の吸込量を制御する。あるいは、コンピュータ500は、容器130または容器50に設けられた液面センサの検出値に基づき、ポンプ33の吸込量を制御してもよい。
【0071】
次に、
図12に示すように、コンピュータ500は、バルブ34aおよび電磁弁41を制御することで、ポート64および配管14を介して、リンス液が導入された後の容器50内の廃液を容器140に排出する。これにより、リンス液によって容器50内が洗浄される。一方、試料に含まれる回収対象となるマイクロプラスチックなどは、ポート64に含まれるフィルタ164によって外部に排出されず、容器50内に残る。
【0072】
その後、コンピュータ500は、所定時間(たとえば、1日間)に亘って試料をそのまま放置することで試料を乾燥させる。次に、
図13に示すように、コンピュータ500は、バルブ32aを制御することで、配管12およびポート62を介して、容器120に収容された重液を容器50に導入する。このとき、コンピュータ500は、ポンプ32の吸込量を制御することで、ユーザによって予め設定された量の重液を容器50に導入する。たとえば、コンピュータ500は、バルブ32aの開放度合を調整することで、ポンプ32の吸込量を制御する。あるいは、コンピュータ500は、容器120または容器50に設けられた液面センサの検出値に基づき、ポンプ32の吸込量を制御してもよい。
【0073】
このようにして重液が試料に導入されることで、試料に含まれる無機夾雑物が比重差で容器50の底付近に沈降する。一方、比重分離された試料の液面は、容器50内を徐々に上昇し、やがて試料の上澄み液が容器50の排出口20に到達する。そして、試料の上澄み液は、排出口20および排出管25を介して外部に排出される。排出管25を介して排出された試料の上澄み液は、検出フィルタ21によって濾過され、廃液のみが容器210によって回収される。検出フィルタ21には、重液よりも比重の軽い成分であるマイクロプラスチックが残る。このような比重分離は、約1日間を要するため、その間、コンピュータ500は、試料に対する重液の導入を制御する。
【0074】
以上のように、本実施の形態に係る試料精製装置1によれば、一の容器50を用いた連続的な作業によって試料を精製することができる。具体的には、
図3~
図13に示すように、コンピュータ500によって試料精製器100が制御されることで、適切なタイミングおよび適切な時間に亘って自動的に、容器50に収容された試料に対して酸化剤および重液が導入され、また、容器50から廃液が排出される。このため、ユーザは、自ら、容器50に酸化剤および重液を導入し、また、容器50から廃液を排出する必要がない。これにより、ユーザの手間が掛かることも、各ユーザの技量に応じて成分の回収における精度にばらつきが生じる虞もなく、ユーザは、手間を極力掛けることなく精度良く試料を精製することができる。
【0075】
試料の精製によってマイクロプラスチックが回収された後、後処理によって容器50が洗浄される。具体的には、
図14に示すように、コンピュータ500は、バルブ34aおよび電磁弁41を制御することで、ポート64および配管15を介して、マイクロプラスチックが回収された後の容器50内の廃液を容器150に排出する。
【0076】
次に、
図15に示すように、コンピュータ500は、バルブ33aを制御することで、配管13およびポート63を介して、容器130に収容されたリンス液を容器50に導入する。このとき、コンピュータ500は、ポンプ33の吸込量を制御することで、ユーザによって予め設定された量のリンス液を容器50に導入する。たとえば、コンピュータ500は、バルブ33aの開放度合を調整することで、ポンプ33の吸込量を制御する。あるいは、コンピュータ500は、容器130または容器50に設けられた液面センサの検出値に基づき、ポンプ33の吸込量を制御してもよい。
【0077】
次に、
図16に示すように、コンピュータ500は、バルブ34aおよび電磁弁41を制御することで、ポート64および配管15を介して、リンス液が導入された後の容器50内の廃液を容器150に排出する。これにより、リンス液によって容器50内が洗浄される。
【0078】
以上のように、本実施の形態に係る試料精製装置1によれば、マイクロプラスチックを回収した後、コンピュータ500によって試料精製器100が制御されることで、使用した容器50が自動的に洗浄される。このため、ユーザは、自ら、容器50を洗浄する必要がなく、手間を極力掛けることがない。
【0079】
[試料精製処理]
図17は、本実施の形態に係る試料精製装置1が実行する試料精製処理を説明するためのフローチャートである。
図17に示す各ステップは、コンピュータ500の演算装置501が、OS513および制御プログラム511を実行することで実現される。なお、図中において、「S」は「STEP」の略称として用いられる。
【0080】
試料精製装置1の容器50に試料が導入された状態で、入力装置505を用いた開始操作を受け付けると、コンピュータ500は、
図17に示す試料精製処理を実行する。
図17に示すように、コンピュータ500は、まず、バルブ34aおよび電磁弁41を制御することで、容器50内の廃液を容器140に排出する(S1)。
【0081】
次に、コンピュータ500は、廃液の排出が完了したか否かを判定する(S2)。たとえば、コンピュータ500は、バルブ34aの開放度合、あるいは、容器140または容器50に設けられた液面センサの検出値に基づいて、廃液の排出が完了したか否かを判定する。
【0082】
コンピュータ500は、廃液の排出が完了していない場合(S2でNO)、S2の処理を繰り返す。一方、コンピュータ500は、廃液の排出が完了した場合(S2でYES)、バルブ33aを制御することで、容器130に収容された水を容器50に導入する(S3)。
【0083】
次に、コンピュータ500は、水の導入が完了したか否かを判定する(S4)。たとえば、コンピュータ500は、バルブ33aの開放度合、あるいは、容器130または容器50に設けられた液面センサの検出値に基づいて、水の導入が完了したか否かを判定する。
【0084】
コンピュータ500は、水の導入が完了していない場合(S4でNO)、S4の処理を繰り返す。一方、コンピュータ500は、水の導入が完了した場合(S4でYES)、バルブ31aを制御することで、容器110に収容された酸化剤を容器50に導入する(S5)。
【0085】
次に、コンピュータ500は、酸化剤の導入が完了したか否かを判定する(S6)。たとえば、コンピュータ500は、バルブ31aの開放度合、あるいは、容器110または容器50に設けられた液面センサの検出値に基づいて、酸化剤の導入が完了したか否かを判定する。
【0086】
コンピュータ500は、酸化剤の導入が完了していない場合(S6でNO)、S6の処理を繰り返す。一方、コンピュータ500は、酸化剤の導入が完了した場合(S6でYES)、恒温スターラー71を制御することで、試料に一定の熱を加えながら撹拌子72によって試料を撹拌する(S7)。
【0087】
次に、コンピュータ500は、温度センサ80の測定値T、および、カメラ90の画像データCのうち、少なくともいずれか1つに基づきペルチェ素子75を制御することで、容器50に収容された試料を冷却し、酸化反応が起こり易いように試料の温度を調整する(S8)。
【0088】
次に、コンピュータ500は、試料の酸化反応が完了したか否かを判定する(S9)。たとえば、コンピュータ500は、温度センサ80の測定値T、および、カメラ90の画像データCのうち、少なくともいずれか1つに基づき、試料の酸化反応が完了したか否かを判定する。なお、コンピュータ500は、タイマ(図示は省略する)による計測値に基づいて、試料の酸化反応が完了したか否かを判定してもよい。
【0089】
コンピュータ500は、試料の酸化反応が完了していない場合(S9でNO)、S9の処理を繰り返す。一方、コンピュータ500は、試料の酸化反応が完了した場合(S9でYES)、恒温スターラー71を制御することで試料の加熱および撹拌を停止する(S10)。その後、コンピュータ500は、バルブ34aおよび電磁弁41を制御することで、有機夾雑物が分解された後の試料に含まれる容器50内の廃液を容器140に排出する(S11)。
【0090】
次に、コンピュータ500は、廃液の排出が完了したか否かを判定する(S12)。たとえば、コンピュータ500は、バルブ34aの開放度合、あるいは、容器140または容器50に設けられた液面センサの検出値に基づいて、廃液の排出が完了したか否かを判定する。
【0091】
コンピュータ500は、廃液の排出が完了していない場合(S12でNO)、S12の処理を繰り返す。一方、コンピュータ500は、廃液の排出が完了した場合(S12でYES)、バルブ33aを制御することで、容器130に収容されたリンス液を容器50に導入する(S13)。
【0092】
次に、コンピュータ500は、リンス液の導入が完了したか否かを判定する(S14)。たとえば、コンピュータ500は、バルブ33aの開放度合、あるいは、容器130または容器50に設けられた液面センサの検出値に基づいて、リンス液の導入が完了したか否かを判定する。
【0093】
コンピュータ500は、リンス液の導入が完了していない場合(S14でNO)、S14の処理を繰り返す。一方、コンピュータ500は、リンス液の導入が完了した場合(S14でYES)、バルブ34aおよび電磁弁41を制御することで、リンス液が導入された後の容器50内の廃液を容器140に排出する(S15)。
【0094】
次に、コンピュータ500は、廃液の排出が完了したか否かを判定する(S16)。たとえば、コンピュータ500は、バルブ34aの開放度合、あるいは、容器140または容器50に設けられた液面センサの検出値に基づいて、廃液の排出が完了したか否かを判定する。
【0095】
コンピュータ500は、廃液の排出が完了していない場合(S16でNO)、S16の処理を繰り返す。一方、コンピュータ500は、廃液の排出が完了した場合(S16でYES)、バルブ32aを制御することで、容器120に収容された重液を容器50に導入する(S17)。
【0096】
次に、コンピュータ500は、重液の導入が完了したか否かを判定する(S18)。たとえば、コンピュータ500は、バルブ32aの開放度合、あるいは、容器120または容器50に設けられた液面センサの検出値に基づいて、重液の導入が完了したか否かを判定する。
【0097】
コンピュータ500は、重液の導入が完了していない場合(S18でNO)、S18の処理を繰り返す。
【0098】
このような重液の導入によって、試料に含まれる無機夾雑物が比重差で容器50の底付近に沈降する一方、試料の上澄み液が排出口20および排出管25を介して外部に排出される。そして、排出管25を介して排出された試料の上澄み液は、検出フィルタ21によって濾過され、検出フィルタ21によって、マイクロプラスチックが回収される。
【0099】
重液の導入が完了した場合(S18でYES)、すなわち、約1日に亘る比重分離によってマイクロプラスチックが回収された後、コンピュータ500は、バルブ34aおよび電磁弁41を制御することで、マイクロプラスチックが回収された後の容器50内の廃液を容器150に排出する(S19)。
【0100】
次に、コンピュータ500は、廃液の排出が完了したか否かを判定する(S20)。たとえば、コンピュータ500は、バルブ34aの開放度合、あるいは、容器150または容器50に設けられた液面センサの検出値に基づいて、廃液の排出が完了したか否かを判定する。
【0101】
コンピュータ500は、廃液の排出が完了していない場合(S20でNO)、S20の処理を繰り返す。一方、コンピュータ500は、廃液の排出が完了した場合(S20でYES)、バルブ33aを制御することで、容器130に収容されたリンス液を容器50に導入する(S21)。
【0102】
次に、コンピュータ500は、リンス液の導入が完了したか否かを判定する(S22)。たとえば、コンピュータ500は、バルブ33aの開放度合、あるいは、容器130または容器50に設けられた液面センサの検出値に基づいて、リンス液の導入が完了したか否かを判定する。
【0103】
コンピュータ500は、リンス液の導入が完了していない場合(S22でNO)、S22の処理を繰り返す。一方、コンピュータ500は、リンス液の導入が完了した場合(S22でYES)、バルブ34aおよび電磁弁41を制御することで、リンス液が導入された後の容器50内の廃液を容器150に排出し(S23)、本処理を終了する。
【0104】
このようなリンス液の導入および廃液の排出などの後処理によって、容器50内が洗浄される。
【0105】
以上のように、本実施の形態に係る試料精製装置1によれば、コンピュータ500が制御プログラム511を実行することで、適切なタイミングおよび適切な時間に亘って自動的に、容器50に収容された試料に対して酸化剤および重液を導入し、また、容器50から廃液を排出する。このため、ユーザは、自ら、容器50に酸化剤および重液を導入し、また、容器50から廃液を排出する必要がない。これにより、ユーザの手間が掛かることも、各ユーザの技量に応じて成分の回収における精度にばらつきが生じる虞もなく、ユーザは、手間を極力掛けることなく精度良く試料を精製することができる。
【0106】
さらに、本実施の形態に係る試料精製装置1によれば、コンピュータ500が制御プログラム511を実行することで、マイクロプラスチックを回収した後、使用した容器50を自動的に洗浄する。このため、ユーザは、自ら、容器50を洗浄する必要がなく、手間を極力掛けることがない。
【0107】
[試料精製装置の容器の形状]
図18および
図19は、本実施の形態に係る試料精製装置1の容器50の形状を説明するための図である。上述したように、試料精製装置1においては、試料精製器100の容器50を用いて試料精製することができるが、その容器50の形状は精度良く試料を精製するための工夫がなされている。
【0108】
具体的には、
図18および
図19に示すように、容器50は、本体部51~本体部54を含む。本体部51は、「第1本体部」の一例である。本体部52は、「第2本体部」の一例である。本体部53は、「第3本体部」の一例である。
【0109】
本体部54は、容器の最下部に位置し、底面155と側面154とを含む。本体部54の側面154は、円柱状の容器50の中心軸160を取り囲むように形成されており、その一部において、ポート63に繋がる孔部156と、ポート64に繋がる孔部157とが形成されている。ポート63の内部には、フィルタ163が設けられている。ポート64の内部には、フィルタ164が設けられている。ポート63(孔部156)およびポート64(孔部157)の各々は、本体部54の中央部分よりも下の位置であって、底面155に近い箇所に形成されている。なお、図示は省略するが、他のポート61および62の各々の内部においても、フィルタが設けられている。
【0110】
本体部51は、本体部54の上方に設けられ、本体部54の側面154に続いて形成される側面151を含む。側面151は、容器50の中心軸160を取り囲み、かつ、容器50の上方(排出口20側)から下方(底面155側)に向かって広がるように形成されている。
【0111】
本体部52は、本体部51の上方に設けられ、本体部51の側面151に続いて形成される側面152を含む。側面152は、容器50の中心軸160を取り囲み、かつ、本体部52の上部521および下部522から当該上部521と当該下部522との間に位置する部分に向かって膨張するように形成されている。言い換えると、側面152は、容器50の中心軸160から本体部52の外周側に向かって膨張するように形成されている。別の観点からみると、本体部52の水平断面積(または内径)は、本体部52の上部521および下部522の各々から当該上部521と当該下部522との間に位置する部分に向かうにつれて連続的に大きくなるように構成されている。
【0112】
本体部53は、本体部52の上方に設けられ、本体部52の側面152に続いて形成される側面153を含む。側面153は、容器50の中心軸160を取り囲み、かつ、容器50の下方(底面155側)から上方(排出口20側)に向かって先細りするようなテーパー状で形成されている。別の観点からみると、本体部53の水平断面積(または内径)は、排出口20が位置する上方向に向かうにつれて連続的に小さくなるように構成されている。このように、容器50の水平断面積(または内径)は、当該容器50の少なくとも所定の高さ(この例では本体部52の上部521が位置する高さ)から排出口20までの間において上方向に向かうにつれて連続的に小さく構成されている。なお、本実施の形態においては、本体部53の側面153が直線であるが、側面153は曲線であってもよく、本体部53の水平断面積(または内径)が排出口20が位置する上方向に向かうにつれて連続的に小さくなるように構成されればよい。
【0113】
排出口20は、容器50の底面155と対向する位置において、容器50の側面153に続いて形成された、排出管25に繋がる孔部である。排出口20の水平断面積(または内径)は、本体部52の上部521および下部522の各々の水平断面積(または内径)よりも小さい。
【0114】
本体部53は、本体部52と一体的に形成されている。本体部52と本体部51との間は分離可能であり、ユーザは、本体部52を本体部51から分離させることで容器50内を開放して、容器50内に試料を流し込むことができる。
【0115】
以上のように、本実施の形態に係る試料精製装置1によれば、容器50の一部の側面153が、底面155側から排出口20側に向かってテーパー状に形成されており、言い換えると、容器50の水平断面積が当該容器50の少なくとも所定の高さから排出口20までの間において上方向に向かうにつれて連続的に小さく構成されている。このため、容器50の側面153と排出口20との境目を極力滑らかにすることができる。これにより、重液によって比重分離された試料の上澄み液が排出口20を介して外部に排出される際に、マイクロプラスチックが容器50内で滞留することを極力防止することができる。たとえば、容器50の側面と排出口20との境目が滑らかでなく角張っているような場合、重液によって比重分離された試料の上澄み液が当該角張った部分に当たって回収対象のマイクロプラスチックが容器50内に付着し、マイクロプラスチックが排出口20へと向かうことなく容器50内で滞留する虞がある。これに対して、本実施の形態に係る容器50のように容器50の側面153と排出口20との境目を極力滑らかにすることで、マイクロプラスチックが容器50内に付着して滞留してしまうことを極力防止することができる。したがって、ユーザは、精度良く試料を精製することができる。
【0116】
容器50の一部の側面152が、上部521および下部522から当該上部521と当該下部522との間に位置する部分に向かって膨張するように形成されているため、容器50内でマイクロプラスチックが付着して滞留することを極力防止することができる。さらに、容器50の一部(本体部52)の側面152が一旦膨張し、さらにその上方において容器50の一部(本体部53)の水平断面積が排出口20に向かうにつれて連続的に小さくなることで、重液の導入によって上昇した試料の上澄み液を本体部52で広げた後、本体部53の先細りした部分を利用して上澄み液を勢いよく排出口20に向かわせることができる。
【0117】
テーパー状に先細りした本体部53と、膨張するように形成された本体部52とが、一体的に形成されているため、容器50の強度を上げることができる。さらに、本体部53と本体部52との間に境目がないため、重液の導入によって上昇した試料の上澄み液が本体部53と本体部52との間の境目に付着することもなく、上澄み液をより効率良く排出口20に向かわせることができる。
【0118】
[分析システム]
図20は、本実施の形態に係る分析システム1000を模式的に示す図である。分析システム1000は、上述した本実施の形態に係る試料精製装置1と、分級装置600と、分析装置700とを備える。
【0119】
分級装置600は、試料精製装置1によって回収されたマイクロプラスチックを、粒子の大きさごとに分ける。分級装置600としては、たとえば、遠心分離を用いて粒子を分けるフィールドフローフラクショネーション装置などが挙げられる。
【0120】
分析装置700は、分級装置600によって分級されたマイクロプラスチックを分析する。分析装置700によって取得された分析結果は、画面(図示は省略する)に表示されるなどしてユーザによって取得される。
【0121】
上述したように構成された分析システム1000においては、コンピュータ500の制御に基づき、試料精製装置1がマイクロプラスチックを回収するとともに、その後、分級装置600がマイクロプラスチックを分級し、分析装置700がマイクロプラスチックを分析する。
【0122】
以上のように、本実施の形態に係る分析システム1000によれば、試料精製装置1に試料を導入してから、分析装置700によってマイクロプラスチックを分析するまでの一連の作業が、コンピュータ500の制御によって自動化されるため、ユーザの利便性が向上する。
【0123】
なお、分析システム1000は、分級装置600を備えることなく、分析装置700が、試料精製装置1によって回収されたマイクロプラスチックをそのまま取得して分析してもよい。
【0124】
[変形例]
以上、本実施の形態に係る試料精製装置1および分析システム1000について説明したが、これらの構成においては、さらに種々の変形、応用が可能である。以下、変形例について説明する。
【0125】
図21は、第2の実施の形態に係る試料精製装置1Aを模式的に示す図である。
図21に示すように、試料精製装置1Aの試料精製器100Aにおいては、重液を導入する配管12と、リンス液を導入する配管13とが、互いに共通するポート62に液体を導入してもよい。
【0126】
具体的には、ポンプ232(バルブ232a)および電磁弁242が、配管12および配管13の各々と容器50のポート62との間に設けられる。電磁弁242は、コンピュータ500Aの制御によって動作することで、配管12とポンプ232との間の経路と、配管13とポンプ232との間の経路とで、液体が通る経路を切り替える。
【0127】
これにより、配管12を介して容器120から吸い取られた重液は、電磁弁242およびポンプ232を介してポート62に導入される。また、配管13を介して容器130から吸い取られたリンス液は、電磁弁242およびポンプ232を介してポート62に導入される。
【0128】
以上のように、第2の実施の形態に係る試料精製装置1Aによれば、配管12と容器50のポート62との間に設けられたポンプ232(バルブ232a)が、配管13と容器50のポート62との間に設けられたポンプ232(バルブ232a)と共用されているため、試料精製装置1Aの部品点数を減らしてコストを抑えることができる。
【0129】
図22は、第3の実施の形態に係る試料精製装置1Bを模式的に示す図である。
図22に示すように、試料精製装置1Bの試料精製器100Bは、容器50の上方から試料を導入するように構成されてもよい。
【0130】
具体的には、試料精製器100Bは、容器50からオーバーフローした試料の上澄み液を検出フィルタ21に向けて排出する排出管25Aと、マイクロプラスチックを含む試料を外部から容器50に導入する導入管25Bとを備える。排出管25Aは、「排出経路」の一例であり、導入管25Bは、「導入経路」の一例である。電磁弁45が、排出管25Aおよび導入管25Bの各々と容器50の排出口20との間に設けられる。電磁弁45は、コンピュータ500Bの制御によって動作することで、排出管25Aと排出口20との間の経路と、導入管25Bと排出口20との間の経路とで、液体が通る経路を切り替える。
【0131】
これにより、コンピュータ500Bの制御によって、容器50からオーバーフローした試料の上澄み液は、電磁弁45および排出管25Aを介して検出フィルタ21に向けて排出される。また、コンピュータ500Bの制御によって、外部から導入された試料は、導入管25Bおよび電磁弁45を介して容器50に導入される。
【0132】
以上のように、第3の実施の形態に係る試料精製装置1Bによれば、排出口20を利用して、容器50の上方から試料を導入することができるため、より使い勝手の良い試料精製装置1Bをユーザに提供することができる。
【0133】
本実施の形態によれば、
図17に示すように、S5において容器50に酸化剤が導入される前に、S3において予め容器50に水が導入されるようになっていた。しかしながら、変形例に係る試料精製装置においては、コンピュータ500が、S3およびS4の処理を実行することなく、S5の処理においてバルブ31aを制御することで、容器110に収容された酸化剤を容器50に一定周期で所定量ごとに導入してもよい。つまり、変形例に係る試料精製装置は、容器50に収容された試料が酸化剤と急に混ざることを避けるために、容器50に収容された試料に対して、酸化剤を少量ずつ導入してもよい。このようにすれば、容器50に収容された試料が酸化剤と急激に反応することを極力回避することができる。
【0134】
コンピュータ500は、温度センサ80から取得した測定値Tに基づき、試料の酸化反応の進行が乏しいと判断した場合、バルブ31aを制御することで、容器110に収容された酸化剤を容器50に追加で導入してもよい。
【0135】
コンピュータ500は、カメラ90の撮影画像に基づき、試料の酸化反応の進行が乏しいと判断した場合、バルブ31aを制御することで、容器110に収容された酸化剤を容器50に追加で導入してもよい。
【0136】
[態様]
上述した複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0137】
(第1項) 一態様に係る混合試料を精製する試料精製装置は、重液を用いて前記混合試料を比重差によって分離するための容器と、前記混合試料に含まれる夾雑物を処理するための酸化剤を前記容器に導入するための第1配管と、前記重液を前記容器に導入するための第2配管と、前記容器内の液体のうち前記重液の導入によって生じた上澄み液を前記容器の外部に排出するための排出部と、前記排出部から排出された前記上澄み液を導入して前記混合試料のうち前記重液よりも比重の軽い成分を回収するための回収部と、前記第1配管および前記第2配管の各々に設けられ、かつ、液体の出入を切り替える少なくとも1つの切替部と、前記少なくとも1つの切替部を制御する制御部とを備える。
【0138】
第1項に記載の試料精製装置によれば、一の容器を用いた連続的な作業によって混合試料を精製することができるため、作業者などのユーザの手間を極力掛けることなく精度良く混合試料を精製することができる。
【0139】
(第2項) 第1項に記載の試料精製装置において、試料精製装置は、前記容器内の廃液を排出するための第3配管と、前記第3配管に設けられ、かつ、液体の出入りを切り替える少なくとも1つの切替部とを備え、前記制御部は、前記第1配管、前記第2配管、および前記第3配管の各々に設けられた前記少なくとも1つの切替部を制御することで、前記混合試料が収容された前記容器に前記第1配管からの前記酸化剤を導入し、前記酸化剤によって夾雑物が処理された後の前記容器内の廃液を前記第3配管から排出し、前記容器に前記第2配管からの前記重液を導入する。
【0140】
第2項に記載の試料精製装置によれば、制御部による切替部の制御によって、混合試料を精製することができるため、ユーザの手間を極力掛けることなく精度良く混合試料を精製することができる。
【0141】
(第3項) 第2項に記載の試料精製装置において、前記第1配管および前記第2配管の各々に設けられた前記少なくとも1つの切替部は、前記第3配管に設けられた前記少なくとも1つの切替部と異なる。
【0142】
第3項に記載の試料精製装置によれば、容器に向けて液体(酸化剤または重液)を導入する配管と、容器から外部に向けて廃液を排出する配管とで、液体が通過する切替部を異ならせることができるため、より精度良く混合試料を精製することができる。
【0143】
(第4項) 第2項または第3項に記載の試料精製装置において、前記試料精製装置は、前記容器内を洗浄するためのリンス液を前記容器に導入するための第4配管と、前記第4配管に設けられ、かつ、液体の出入りを切り替える少なくとも1つの切替部とを備え、前記制御部は、前記第4配管に設けられた前記少なくとも1つの切替部を制御することで、廃液が排出された前記容器に前記第4配管からの前記リンス液を導入する。
【0144】
第4項に記載の試料精製装置によれば、廃液が排出された容器にリンス液を導入することで、容器を洗浄することができる。
【0145】
(第5項) 第4項に記載の試料精製装置において、前記第2配管に設けられた前記少なくとも1つの切替部は、前記第4配管に設けられた前記少なくとも1つの切替部と共用されている。
【0146】
第5項に記載の試料精製装置によれば、試料精製装置の部品点数を減らしてコストを抑えることができる。
【0147】
(第6項) 第4項または第5項に記載の試料精製装置において、前記制御部は、前記重液の導入によって生じた前記上澄み液が前記容器の外部に排出した後、前記少なくとも1つの切替部を制御することで、前記重液が導入された前記容器内の廃液を前記第3配管から排出し、廃液が排出された前記容器に前記第4配管からの前記リンス液を導入し、前記リンス液が導入された前記容器内の廃液を前記第3配管から排出する。
【0148】
第6項に記載の試料精製装置によれば、回収対象の成分を回収した後、使用した容器が自動的に洗浄されため、ユーザは、自ら、容器を洗浄する必要がなく、手間を極力掛けることがない。
【0149】
(第7項) 第1項~第6項のいずれか1項に記載の試料精製装置において、前記試料精製装置は、前記容器内の前記混合試料を撹拌する撹拌部を備え、前記制御部は、前記撹拌部を制御することで、前記酸化剤が導入された前記容器内の前記混合試料を撹拌する。
【0150】
第7項に記載の試料精製装置によれば、容器に導入された混合試料と酸化剤とを均一に混ぜることができるため、より精度良く混合試料を精製することができる。
【0151】
(第8項) 第7項に記載の試料精製装置において、前記試料精製装置は、前記容器内の前記混合試料を加熱する加熱部を備え、前記制御部は、前記加熱部を制御することで、前記酸化剤が導入された前記容器内の前記混合試料を加熱する。
【0152】
第8項に記載の試料精製装置によれば、容器に導入された混合試料と酸化剤とを加熱しながら均一に混ぜることができるため、より精度良く混合試料を精製することができる。
【0153】
(第9項) 第1項~第8項のいずれか1項に記載の試料精製装置において、前記試料精製装置は、前記容器に設けられ、かつ、前記少なくとも1つの切替部との間で液体が出入する少なくとも1つのポートを備え、前記少なくとも1つのポートは、フィルタを含む。
【0154】
第9項に記載の試料精製装置によれば、混合試料に含まれる回収対象の成分が外部に排出されることを極力防止することができる。
【0155】
(第10項) 第8項に記載の試料精製装置において、前記試料精製装置は、前記容器内の前記混合試料の温度を測定する温度センサを備え、前記制御部は、前記温度センサの測定値に基づき前記加熱部を制御する。
【0156】
第10項に記載の試料精製装置によれば、試料の温度に基づき適切に試料を加熱することができるため、たとえば、試料を過剰に加熱して沸騰させてしまうことを極力防止することができる。さらに、作業者が試料の酸化反応の進行状況を常に観察する必要がないため、作業者などのユーザの手間を極力掛けることなく精度良く混合試料を精製することができる。
【0157】
(第11項) 第8項または第10項に記載の試料精製装置において、前記試料精製装置は、前記容器内の前記混合試料を冷却する冷却部と、前記容器内の前記混合試料の温度を測定する温度センサとを備え、前記制御部は、前記温度センサの測定値に基づき前記冷却部を制御する。
【0158】
第11項に記載の試料精製装置によれば、試料の温度に基づき試料の温度を適切な温度に調整することができるため、たとえば、試料を過剰に加熱して沸騰させてしまうことを極力防止することができる。さらに、作業者が試料の酸化反応の進行状況を常に観察する必要がないため、作業者などのユーザの手間を極力掛けることなく精度良く混合試料を精製することができる。
【0159】
(第12項) 第8項に記載の試料精製装置において、前記試料精製装置は、前記容器内の前記混合試料を撮影するカメラを備え、前記制御部は、前記カメラによって取得された前記混合試料の撮影画像に基づき前記加熱部を制御する。
【0160】
第12項に記載の試料精製装置によれば、試料の撮影画像から特定される試料の状態に基づき適切に試料を加熱することができるため、たとえば、試料を過剰に加熱して沸騰させてしまうことを極力防止することができる。さらに、作業者が試料の酸化反応の進行状況を常に観察する必要がないため、作業者などのユーザの手間を極力掛けることなく精度良く混合試料を精製することができる。
【0161】
(第13項) 第8項または第12項に記載の試料精製装置において、前記試料精製装置は、前記容器内の前記混合試料を冷却する冷却部と、前記容器内の前記混合試料を撮影するカメラとを備え、前記制御部は、前記カメラによって取得された前記混合試料の撮影画像に基づき前記冷却部を制御する。
【0162】
第13項に記載の試料精製装置によれば、試料の撮影画像から特定される試料の状態に基づき試料の温度を適切な温度に調整することができるため、たとえば、試料を過剰に加熱して沸騰させてしまうことを極力防止することができる。さらに、作業者が試料の酸化反応の進行状況を常に観察する必要がないため、作業者などのユーザの手間を極力掛けることなく精度良く混合試料を精製することができる。
【0163】
(第14項) 第2項に記載の試料精製装置において、前記試料精製装置は、水を前記容器に導入するための第4配管と、前記第4配管に設けられ、かつ、液体の出入りを切り替える少なくとも1つの切替部とを備え、前記制御部は、前記第1配管から前記酸化剤が導入される前に、前記第4配管に設けられた前記少なくとも1つの切替部を制御することで、前記容器に前記第4配管からの前記水を導入する。
【0164】
第14項に記載の試料精製装置によれば、容器に導入された酸化剤が容器内で水と混ざることで、容器に収容された試料が酸化剤と急激に反応することを極力回避することができる。
【0165】
(第15項) 第2項に記載の試料精製装置において、前記制御部は、前記第1配管に設けられた前記少なくとも1つの切替部を制御することで、前記混合試料が収容された前記容器に前記第1配管からの前記酸化剤を一定周期で所定量ごとに導入する。
【0166】
第15項に記載の試料精製装置によれば、容器に収容された試料に対して酸化剤が所定量ごとに導入されることで、容器に収容された試料が酸化剤と急激に反応することを極力回避することができる。
【0167】
(第16項) 一態様に係る分析システムは、第1項~第15項のいずれか1項に記載の前記試料精製装置と、前記試料精製装置の前記回収部によって回収された前記成分を分析する分析装置とを備える。
【0168】
第16項に記載の分析システムによれば、試料精製装置に混合試料を導入してから、分析装置によって回収対象の成分を分析するまでの一連の作業が、制御部の制御によって自動化されるため、ユーザの利便性が向上する。
【0169】
(第17項) 一態様に係る混合試料を精製する試料精製方法は、夾雑物を処理するための酸化剤を前記混合試料が収容された容器に導入するステップと、前記酸化剤によって夾雑物が処理された後の前記容器内の廃液を排出するステップと、廃液が排出された前記容器に当該容器内を洗浄するためのリンス液を導入するステップと、前記容器に前記混合試料を比重差によって分離させるための重液を導入することで、前記重液の導入によって生じた上澄み液を前記容器の外部に排出するステップとを含む。
【0170】
第17項に記載の試料精製方法によれば、一の容器を用いた連続的な作業によって混合試料を精製することができるため、作業者などのユーザの手間を極力掛けることなく精度良く混合試料を精製することができる。
【0171】
(第18項) 一態様に係る混合試料を精製するための制御プログラムは、コンピュータに、夾雑物を処理するための酸化剤を前記混合試料が収容された容器に導入するステップと、前記酸化剤によって夾雑物が処理された後の前記容器内の廃液を排出するステップと、廃液が排出された前記容器に当該容器内を洗浄するためのリンス液を導入するステップと、前記容器に前記混合試料を比重差によって分離させるための重液を導入することで、前記重液の導入によって生じた上澄み液を前記容器の外部に排出するステップとを実行させる。
【0172】
第18項に記載の制御プログラムによれば、一の容器を用いた連続的な作業によって混合試料を精製することができるため、作業者などのユーザの手間を極力掛けることなく精度良く混合試料を精製することができる。
【符号の説明】
【0173】
1,1A,1B 試料精製装置、11,12,13,14,15 配管、20 排出部、21 検出フィルタ、25,25A 排出管、25B 導入管、31,32,33,34,232 ポンプ、31a,32a,33a,34a,64a,232a バルブ、41,45,242 電磁弁、50,110,120,130,140,150,210 容器、51,52,53,54 本体部、61,62,63,64 ポート、71 恒温スターラー、72 撹拌子、75 ペルチェ素子、80 温度センサ、90 カメラ、100,100A,100B 試料精製器、151,152,153,154 側面、155 底面、156,157 孔部、160 中心軸、163,164 フィルタ、500,500A,500B コンピュータ、501 演算装置、502 メモリ、503 ネットワークコントローラ、504 表示装置、505 入力装置、506 データ読取装置、507 記憶媒体、510 ストレージ、511 制御プログラム、512 制御用データ、521 上部、522 下部、600 分級装置、700 分析装置、1000 分析システム。