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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】排気浄化システム
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20240903BHJP
   F01N 3/18 20060101ALI20240903BHJP
   F01N 11/00 20060101ALI20240903BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
F01N3/08 D
F01N3/18 C
F01N11/00
B01D53/94 400
B01D53/94 ZAB
B01D53/94 241
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023129688
(22)【出願日】2023-08-09
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】柴田 慶子
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-31831(JP,A)
【文献】特開2008-31928(JP,A)
【文献】特開2016-79872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00
F01N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気ガスが流れる排気通路に設けられた酸化触媒と、
前記酸化触媒の上流側での前記排気ガス中の二酸化炭素の第1濃度と、前記酸化触媒の下流側での前記排気ガス中の二酸化炭素の第2濃度とを取得する第1取得部と、
前記第1濃度と前記第2濃度との濃度差が第1閾値よりも小さい場合には、前記排気通路内において前記酸化触媒の上流側にオゾンを噴射させる噴射制御部と、
を備える、排気浄化システム。
【請求項2】
前記噴射制御部は、前記濃度差が前記第1閾値より低い第2閾値よりも小さい場合に、前記濃度差が前記第2閾値以上である場合よりも、前記オゾンの噴射量を多くする、
請求項1に記載の排気浄化システム。
【請求項3】
前記噴射制御部は、前記オゾンの噴射後に前記濃度差が前記第1閾値以上になると、前記オゾンの噴射を停止させる、
請求項1に記載の排気浄化システム。
【請求項4】
前記オゾンを発生するオゾン発生部を更に備え、
前記噴射制御部は、前記濃度差が前記第1閾値よりも小さい場合には、前記オゾン発生部に前記オゾンを発生させ、発生した前記オゾンを前記排気通路内に噴射させる、
請求項1に記載の排気浄化システム。
【請求項5】
前記内燃機関の回転数と前記内燃機関に作用する負荷とを取得する第2取得部を更に備え、
前記噴射制御部は、前記第2取得部が取得した前記回転数及び前記負荷に対応した前記第1閾値を特定する、
請求項1に記載の排気浄化システム。
【請求項6】
前記オゾンを噴射する噴射部を更に備え、
前記排気通路において前記噴射部と前記酸化触媒の間の距離は、前記噴射部と前記内燃機関の間の距離よりも長い、
請求項1に記載の排気浄化システム。
【請求項7】
前記酸化触媒の上流側に設けられ、前記第1濃度を検出する第1検出部と、
前記酸化触媒の下流側に設けられ、前記第2濃度を検出する第2検出部と、を更に備え、
前記第1取得部は、前記第1検出部が検出した前記第1濃度と、前記第2検出部が検出した前記第2濃度とを取得する、
請求項1に記載の排気浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気ガスを浄化する排気浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
排気浄化システムは、排気ガスが流れる排気通路に設けられた酸化触媒(DOC)を有する。酸化触媒は、排気ガスに含まれる煤を酸化することで、下流側に設けられたフィルタに煤がたまることを抑制できる。
また、排気浄化システムの中には、酸化触媒の上流側に設けられたオゾン噴射部がオゾンを噴射して、COとNOを酸化させるものがある(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-31928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、酸化触媒の表面に硫黄やリン等が付着することで、酸化触媒の酸化性能が低下する場合がある。その対策として、特許文献1の技術を用いても、オゾン噴射部は、酸化性能の低下前と同じようにオゾンを噴射するため、煤の酸化が不十分となるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、酸化触媒の性能が低下しても排気ガス中の煤を適切に酸化させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様においては、内燃機関の排気ガスが流れる排気通路に設けられた酸化触媒と、前記酸化触媒の上流側での前記排気ガス中の二酸化炭素の第1濃度と、前記酸化触媒の下流側での前記排気ガス中の二酸化炭素の第2濃度とを取得する第1取得部と、前記第1濃度と前記第2濃度との濃度差が第1閾値よりも小さい場合には、前記排気通路内において前記酸化触媒の上流側にオゾンを噴射させる噴射制御部と、を備える、排気浄化システムを提供する。
【0007】
また、前記噴射制御部は、前記濃度差が前記第1閾値より低い第2閾値よりも小さい場合に、前記濃度差が前記第2閾値以上である場合よりも、前記オゾンの噴射量を多くすることとしてもよい。
【0008】
また、前記噴射制御部は、前記オゾンの噴射後に前記濃度差が前記第1閾値以上になると、前記オゾンの噴射を停止させることとしてもよい。
【0009】
また、前記オゾンを発生するオゾン発生部を更に備え、前記噴射制御部は、前記濃度差が前記第1閾値よりも小さい場合には、前記オゾン発生部に前記オゾンを発生させ、発生した前記オゾンを前記排気通路内に噴射させることとしてもよい。
【0010】
また、前記内燃機関の回転数と前記内燃機関に作用する負荷とを取得する第2取得部を更に備え、前記噴射制御部は、前記第2取得部が取得した前記回転数及び前記負荷に対応した前記第1閾値を特定することとしてもよい。
【0011】
また、前記オゾンを噴射する噴射部を更に備え、前記排気通路において前記噴射部と前記酸化触媒の間の距離は、前記噴射部と前記内燃機関の間の距離よりも長いこととしてもよい。
【0012】
また、前記酸化触媒の上流側に設けられ、前記第1濃度を検出する第1検出部と、前記酸化触媒の下流側に設けられ、前記第2濃度を検出する第2検出部と、を更に備え、前記第1取得部は、前記第1検出部が検出した前記第1濃度と、前記第2検出部が検出した前記第2濃度とを取得することとしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、酸化触媒の性能が低下しても排気ガス中の煤を適切に酸化できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一の実施形態に係る排気浄化システムSの構成を示す模式図である。
図2】制御装置100の詳細構成を示すブロック図である。
図3】制御装置100の動作例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<排気浄化システムの構成>
図1は、一の実施形態に係る排気浄化システムSの構成を示す模式図である。図1に示すように、排気浄化システムSは、エンジン10と、排気通路15と、酸化触媒20と、DPF(Diesel Particulate Filter)25と、尿素水噴射部30と、攪拌部35と、SCR(Selective Catalytic Reduction)触媒40と、ASC(Ammonia Slip Catalyst)45と、オゾン発生部50と、オゾン噴射部55と、制御装置100とを有する。排気浄化システムSは、トラック等の車両に搭載されており、エンジン10の排気ガスを浄化する。
【0016】
エンジン10は、燃料と吸気(空気)の混合気を燃焼、膨張させて、動力を発生させる内燃機関である。エンジン10は、例えばディーゼルエンジンである。
排気通路15は、エンジン10と接続された排気管である。エンジン10の排気ガスが、排気通路15を流れる。
【0017】
酸化触媒20は、排気通路15に設けられており、排気ガス中に含まれる煤を酸化する。例えば、酸化触媒20は、HCを酸化させることで、二酸化炭素(以下では、CO2と呼ぶ)と水に変換する。酸化触媒20は、例えば、セラミック製の担持体の表面に触媒成分等が担持された構成となっている。
【0018】
DPF25は、排気ガスに含まれる粒子状物質(PM)を捕集するフィルタである。DPF25は、酸化触媒20の下流側に設けられている。DPF25は、例えば金属やセラミックス製のハニカム体で構成されており、PMを隔壁の細孔や表面によって捕集する。
【0019】
尿素水噴射部30は、排気通路15内に尿素水を噴射する。尿素水噴射部30は、DPF25とSCR触媒40の間に設けられている。尿素水噴射部30が噴射した尿素水は、排気通路15を流れる排気ガスの熱によって加水分解し、アンモニアが生成される。アンモニアは、排気ガス中のNOxの還元反応を起こすために用いられる。
【0020】
攪拌部35は、尿素水噴射部30が噴射した尿素水を攪拌する。攪拌部35を設けることで、アンモニアが分散されやすくなる。攪拌部35は、尿素水噴射部30とSCR触媒40の間に設けられている。
【0021】
SCR触媒40は、アンモニアとNOxの還元反応を促進させる還元触媒である。SCR触媒40には、尿素水から生成されたアンモニアが吸着される。SCR触媒40は、吸着したアンモニアによってNOxを無害な窒素と水に還元し、NOxの排出を低減させる。
【0022】
ASC45は、SCR触媒40から脱離したアンモニアを分解する触媒である。ASC45が、例えばアンモニアを窒素や水に変換することで、アンモニアの排出を抑制できる。
【0023】
オゾン発生部50は、オゾンを発生する。オゾン発生部50は、一例として無声放電方式にてオゾンを発生する。無声放電方式においては、間に誘電体が設けられた平行電極に交流電圧を印加して、酸素からオゾンを生成する。オゾン発生部50は、発生したオゾンを、ポンプ等によって供給路52を介してオゾン噴射部55に供給する。
【0024】
オゾン噴射部55は、排気通路15内にオゾンを噴射する。オゾン噴射部55は、オゾン発生部50が発生したオゾンを噴射する。噴射されたオゾンは、排気ガス中の煤を酸化させる。本実施形態では、オゾン噴射部55は、酸化触媒20の酸化性能が低下した場合に、オゾンを噴射して煤を酸化させる。
【0025】
オゾン噴射部55は、排気通路15において酸化触媒20の上流側に位置する。例えば、排気通路15においてオゾン噴射部55と酸化触媒20の間の距離は、オゾン噴射部55とエンジン10の間の距離よりも長くてもよい。この場合には、オゾン噴射部55から噴射されたオゾンが酸化触媒20を通過するまでの距離が長くなるので、オゾンによって煤を酸化しやすくなる。ただし、上記に限定されず、オゾン噴射部55は、エンジン10よりも酸化触媒20の近くに配置されてもよい。
【0026】
濃度検出部60、61は、排気通路15に設けられており、排気ガス中のCO2の濃度を検出するセンサである。濃度検出部60は、排気通路15において酸化触媒20の上流側に位置し、濃度検出部61は、排気通路において酸化触媒20の下流側に位置している。具体的には、濃度検出部60は、オゾン噴射部55と酸化触媒20の間に位置し、濃度検出部61は、酸化触媒20とDPF25の間に位置している。濃度検出部60は、CO2の第1濃度を検出する第1検出部に該当し、濃度検出部61は、CO2の第2濃度を検出する第2検出部に該当する。
【0027】
濃度検出部60は、検出したCO2の第1濃度を制御装置100に出力し、濃度検出部60は、検出したCO2の第2濃度を制御装置100に出力する。酸化触媒20がCOを酸化するため、酸化触媒20の下流側に位置する濃度検出部61が検出する第2濃度は、酸化触媒20の上流側に位置する濃度検出部60が検出する第1濃度よりも高い。
【0028】
制御装置100は、排気浄化システムSの動作を制御する。例えば、制御装置100は、エンジン10の始動後に、濃度検出部60、61によるCO2の濃度の検出と、オゾン噴射部55によるオゾンの噴射とを制御する。
【0029】
ところで、酸化触媒20の活性点が排気ガス中の硫黄やリン等で被毒されることで、酸化触媒20の酸化性能が低下する場合がある。酸化触媒20の酸化性能が低下すると、酸化されなかった煤がDPF25にたまるおそれがある。
これに対して、本実施形態の制御装置100は、詳細は後述するが、酸化触媒20の前後のCO2の第1濃度と第2濃度の濃度差が閾値よりも小さい場合に、排気通路15にオゾンを噴射する。これにより、酸化触媒20の酸化性能が低下した場合に、オゾンによって煤を適切に酸化できる。
【0030】
<制御装置の詳細構成>
図2は、制御装置100の詳細構成を示すブロック図である。制御装置100は、記憶部110と、制御部120とを有する。
【0031】
記憶部110は、例えばROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含む。記憶部110は、制御部120が実行するためのプログラムや各種データを記憶する。例えば、記憶部110は、エンジン10の回転数及び負荷と、前述したCO2の濃度差である第1閾値とを対応づけて記憶している。すなわち、記憶部110は、回転数及び負荷の大きさ毎に第1閾値が定まっているマップを記憶している。
【0032】
制御部120は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。制御部120は、記憶部110に記憶されたプログラムを実行することにより、第1取得部122、第2取得部123、判定部124及び噴射制御部126として機能する。
【0033】
第1取得部122は、排気ガス中のCO2の濃度を取得する。第1取得部122は、酸化触媒20の上流側での排気ガス中のCO2の第1濃度と、酸化触媒20の下流側での排気ガス中のCO2の第2濃度とを取得する。
【0034】
第1取得部122は、濃度検出部60、61が検出したCO2の濃度を取得する。具体的には、第1取得部122は、濃度検出部60が検出した第1濃度と、濃度検出部61が検出した第2濃度とを取得する。第1取得部122は、エンジン10が動作を開始してから、所定間隔で第1濃度及び第2濃度を取得する。第1取得部122は、順次取得した第1濃度及び第2濃度を判定部124に出力する。
【0035】
第2取得部123は、エンジン10の状態や動作に関する情報を取得する。例えば、第2取得部123は、各種センサを含むエンジン検出部70が検出したエンジン10の回転数とエンジン10に作用する負荷に関する情報を、エンジン検出部70から取得する。例えば、第2取得部123は、エンジン10の動作を開始する際のエンジン10の回転数及び負荷を取得する。第2取得部123は、例えばアクセルペダルの踏み込み量等からエンジン10に作用する負荷を特定する。なお、第2取得部123は、エンジン10に作用する負荷の代わりに、エンジン10の回転によるトルクを取得してもよい。第2取得部123は、検出結果を判定部124に出力する。
【0036】
判定部124は、酸化触媒20の状態を判定する。具体的には、判定部124は、酸化触媒20の酸化性能が低下したか否かを判定する。判定部124は、第1取得部122が取得したCO2の第1濃度と第2濃度との濃度差に基づいて、酸化触媒20の酸化性能が低下したか否かを判定する。例えば、判定部124は、CO2の濃度差が第1閾値以上である場合には、酸化触媒20の酸化性能が低下していないと判定する。一方で、判定部124は、CO2の濃度差が第1閾値より小さい場合には、酸化触媒20の酸化性能が低下していると判定する。ここで、第1閾値は、予め設定された値であり、酸化触媒20が正常な酸化性能を発揮している場合の第1濃度及び第2濃度から求まる。
【0037】
判定部124は、第2取得部123が取得したエンジン10の回転状態に応じて、第1閾値を設定する。例えば、判定部124は、記憶部110に記憶されたマップを参照し、第2取得部123が取得したエンジン10の回転数及び負荷に対応する第1閾値を設定する。この場合、判定部124は、第1取得部122が取得した第1濃度と第2濃度の濃度差が、設定した第1閾値とを比較して、酸化触媒20の酸化性能が低下したか否かを判定する。エンジン10の回転状態によって排気ガス中の煤の発生度合いが異なるが、上記のように第1閾値を設定することで、酸化触媒20の酸化性能が低下したか否かを高精度に判定できる。なお、エンジン10の回転数及び負荷から第1閾値を特定する関数を記憶部110に記憶し、判定部124が当該関数を利用して第1閾値を特定してもよい。
【0038】
噴射制御部126は、オゾン発生部50によるオゾンの生成と、オゾン噴射部55によるオゾンの噴射とを制御する。噴射制御部126は、判定部124による判定結果に基づいて、オゾン発生部50によるオゾンの生成と、オゾン噴射部55によるオゾンの噴射とを制御する。
【0039】
本実施形態では、噴射制御部126は、CO2の第1濃度と第2濃度との濃度差が第1閾値よりも小さい場合には、排気通路15内において酸化触媒20の上流側にオゾンを噴射させる。酸化触媒20の酸化性能が低下した場合には、第2濃度が大きくならないため、第1濃度と第2濃度の濃度差が第1閾値よりも小さくなる。そこで、噴射制御部126は、濃度差が第1閾値よりも小さい場合には、酸化触媒20による煤の酸化の不足を補うべく、酸化触媒20の上流側にオゾンを噴射する。噴射されたオゾンは、酸化触媒20を通過する迄に煤を酸化することになり、酸化触媒20の性能低下を補うことができる。
【0040】
噴射制御部126は、濃度差が第1閾値よりも小さい場合には、オゾン発生部50によるオゾン生成と、オゾン噴射部55によるオゾン噴射の両方を行う。具体的には、噴射制御部126は、濃度差が第1閾値よりも小さい場合には、まずオゾン発生部50にオゾンを発生させる。そして、噴射制御部126は、オゾン発生部50が発生したオゾンを、排気通路15内に噴射させる。これにより、必要な量のオゾンを生成して噴射することができる。また、オゾン生成とオゾン噴射の両方を行うことで、オゾンを貯めておく貯留部が不要となる。
【0041】
噴射されたオゾンによって煤が酸化されると、濃度検出部61が検出する第2濃度が高くなる。そして、噴射制御部126は、オゾンの噴射後に濃度差が第1閾値以上になると、オゾンの噴射を停止させる。これにより、過剰にオゾンを噴射することを抑制できる。
【0042】
噴射制御部126は、CO2の第1濃度と第2濃度との濃度差の大きさに応じて、オゾンの噴射量を変化させてもよい。例えば、噴射制御部126は、CO2の濃度差が第1閾値より低い第2閾値よりも小さいと、オゾンの噴射量を多くする。すなわち、噴射制御部126は、第1濃度と第2濃度の濃度差が小さいほど、オゾンの噴射量を多くする。これにより、酸化触媒20の酸化性能の低下が大きいと、オゾンの噴射量を多くすることで、酸化触媒20の酸化性能を補うことができる。
【0043】
噴射制御部126は、記憶部110を参照して、第2取得部123が取得したエンジン10の回転数及び負荷に対応した第1閾値を特定する。そして、噴射制御部126は、第1濃度と第2濃度の濃度差が、特定した第1閾値よりも小さい場合には、オゾンを噴射させる。上記のようにエンジン10の回転状態に応じた第1閾値に設定されることで、エンジン10の回転状態によって煤の発生度合いが異なっても、酸化触媒20の性能が低下したと高精度に判定できる場合にオゾンを噴射することになるので、オゾンを不必要に噴射することを抑制できる。
【0044】
<制御装置の動作例>
図3は、制御装置100の動作例を説明するためのフローチャートである。図3のフローチャートが示す処理は、エンジン10が始動したところから開始される(ステップS102)。
【0045】
次に、第1取得部122は、酸化触媒20の上流側のCO2の第1濃度と、酸化触媒20の下流側のCO2の第2濃度とを取得する(ステップS104)。具体的には、第1取得部122は、濃度検出部60が検出した第1濃度と、濃度検出部61が検出した第2濃度とを取得する。
【0046】
次に、判定部124は、CO2の第1濃度と第2濃度の濃度差が第1閾値よりも小さいか否かを判定する(ステップS106)。酸化触媒20の酸化性能が低下していない場合には、CO2の濃度差は第1閾値以上であるが、酸化触媒20の酸化性能が低下している場合には、CO2の濃度差が第1閾値よりも小さくなる。
【0047】
ステップS106において濃度差が第1閾値よりも小さいと判定された場合には(Yes)、別言すれば酸化触媒20の酸化性能が低下した場合には、噴射制御部126は、オゾン噴射部55にオゾンを排気通路15に噴射させる(ステップS108)。具体的には、噴射制御部126は、オゾン発生部50にオゾンを発生させ、発生したオゾンをオゾン噴射部55によって排気通路15に噴射する。これにより、噴射されたオゾンが、酸化触媒20を通過する間に煤を酸化するので、CO2の第2濃度が大きくなる。
【0048】
オゾンの噴射後、第1取得部122は、再度、酸化触媒20の上流側のCO2の第1濃度と、酸化触媒20の下流側のCO2の第2濃度とを取得する(ステップS110)。そして、判定部124は、再度取得した第1濃度と第2濃度の濃度差が第1閾値以上であるか否かを判定する(ステップS112)。
【0049】
ステップS112において濃度差が第1閾値よりも小さいと判定された場合には(No)、ステップS108に戻り、噴射制御部126は、オゾン噴射部55にオゾンを再度噴射させる。一方で、ステップS112において濃度差が第1閾値以上であると判定された場合には(Yes)、噴射制御部126は、オゾンを噴射しない。
【0050】
制御装置100は、エンジン10が動作を停止するまで(ステップS114:No)上述したステップS104~112の処理を繰り返す。これにより、エンジン10が動作している間、仮に酸化触媒20の酸化性能が低下しても、オゾンによって酸化をアシストできる。この結果、酸化触媒20の下流側での、SCR触媒においてNOxの浄化効率が低下することを抑制できる。
【0051】
<本実施形態における効果>
上述した実施形態の排気浄化システムSは、排気通路15に設けられた酸化触媒20の上流側でのCO2の第1濃度と、酸化触媒20の下流側でのCO2の第2濃度とを取得する。そして、排気浄化システムSは、第1濃度と第2濃度との濃度差が第1閾値よりも小さい場合には、排気通路15内において酸化触媒20の上流側にオゾンを噴射させる。
これにより、酸化触媒20の酸化性能が低下してCO2の濃度差が第1閾値よりも小さくなった場合には、排気通路15にオゾンが噴射されることになる。噴射されたオゾンは、煤を酸化することで、酸化触媒20の酸化性能の低下を補うことになる。この結果、酸化触媒20の下流側にあるDPF25に煤がたまることを抑制できる。
【0052】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0053】
10 エンジン
15 排気通路
20 酸化触媒
50 オゾン発生部
55 オゾン噴射部
60、61 濃度検出部
110 記憶部
122 第1取得部
123 第2取得部
126 噴射制御部
S 排気浄化システム
【要約】
【課題】酸化触媒の性能が低下しても排気ガス中の煤を適切に酸化させる。
【解決手段】排気浄化システムSは、エンジン10の排気ガスが流れる排気通路15に設けられた酸化触媒20と、酸化触媒20の上流側での排気ガス中の二酸化炭素の第1濃度と、酸化触媒20の下流側での排気ガス中の二酸化炭素の第2濃度とを取得する第1取得部122と、第1濃度と第2濃度との濃度差が第1閾値よりも小さい場合には、排気通路15内において酸化触媒20の上流側にオゾンを噴射させる噴射制御部126を備える。
【選択図】図1

図1
図2
図3