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<図1>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】物体検知システム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/524 20060101AFI20240903BHJP
   G01S 15/04 20060101ALI20240903BHJP
   H04R 23/00 20060101ALI20240903BHJP
   G01S 15/93 20200101ALN20240903BHJP
【FI】
G01S7/524 Q
G01S15/04
H04R23/00 310
G01S15/93
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2023503361
(86)(22)【出願日】2021-10-13
(86)【国際出願番号】 JP2021037868
(87)【国際公開番号】W WO2022185595
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2021033499
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 晋一
(72)【発明者】
【氏名】浅田 隆昭
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-90433(JP,A)
【文献】特開2017-181157(JP,A)
【文献】特開2014-232069(JP,A)
【文献】特開昭57-206869(JP,A)
【文献】米国特許第6680603(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/52 - 7/64
15/00 - 15/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電により発熱して音波を発生する音波発生装置と、
前記音波発生装置からの音波を利用して対象空間の物体の検知をする物体検知処理を実行する処理回路と、
を備え、
前記物体検知処理は、
前記対象空間における前記物体の探索範囲を設定する設定処理と、
前記音波発生装置が前記設定処理で設定された探索範囲に関連付けられた目標音圧で音波を発生するように前記音波発生装置を制御する送波処理と、
前記対象空間からの音波を受信する受波装置から前記受波装置で受信した音波を示す受波信号を取得し、前記受波信号に基づいて前記物体があるかどうかを判定する判定処理と、
を含
前記目標音圧は、前記探索範囲が前記音波発生装置から遠くなるほど、大きく、
前記判定処理は、前記受波信号の大きさが閾値以上である場合に前記物体があると判定し、
前記目標音圧は、前記物体からの反射波の大きさが、前記閾値より大きい規定値以上となるように設定され、
前記判定処理は、前記送波処理後に設定される不感帯においては、前記受波信号に基づいて前記物体があるかどうかを判定せず、
前記不感帯は、前記設定処理で設定された探索範囲に応じて設定され、
前記不感帯は、前記探索範囲が前記音波発生装置から遠くなるほど、長く設定される、
物体検知システム。
【請求項2】
前記設定処理は、前記判定処理によって前記物体がないと判定された場合に、前記探索範囲を変更する、
請求項に記載の物体検知システム。
【請求項3】
前記設定処理は、前記判定処理によって前記物体がないと判定された場合に、前記探索範囲が前記音波発生装置から遠ざかるように前記探索範囲を変更する、
請求項に記載の物体検知システム。
【請求項4】
前記設定処理は、前記判定処理によって前記物体がないと判定された前記探索範囲が前記音波発生装置から最も遠い場合に、前記探索範囲が前記音波発生装置に近付くように前記探索範囲を変更する、
請求項に記載の物体検知システム。
【請求項5】
前記判定処理は、前記物体があると判定した場合に前記受波信号に基づいて前記物体までの距離を決定する、
請求項1~のいずれか一つに記載の物体検知システム。
【請求項6】
前記設定処理は、前記判定処理によって前記物体までの距離が決定された場合に、前記判定処理で決定された前記物体までの距離に基づいて前記探索範囲を設定する、
請求項に記載の物体検知システム。
【請求項7】
前記音波発生装置は、
直流電源により充電されるキャパシタ、及び、通電により発熱して音波を発生する音波源に前記キャパシタから電力を供給する駆動用スイッチング素子を有する駆動回路と、
前記駆動回路のキャパシタの両端間電圧を調整することによって前記音波発生装置からの音波の音圧を調整する調整回路と、
を備え、
前記送波処理は、
前記調整回路により、前記音波発生装置からの音波の音圧が前記目標音圧となるように前記キャパシタの両端間電圧を調整し、
前記駆動回路の駆動用スイッチング素子を駆動して前記音波源から音波を発生させる、
請求項1~のいずれか一つに記載の物体検知システム。
【請求項8】
前記調整回路は、
前記直流電源と前記キャパシタとの間に電気的に接続されるインダクタと、
前記インダクタと前記直流電源との直列回路に並列に電気的に接続される調整用スイッチング素子と、
を有し、
前記調整回路は、前記調整用スイッチング素子のオン期間により前記キャパシタの両端間電圧を調整する、
請求項に記載の物体検知システム。
【請求項9】
前記調整回路は、ダイオードを有し、
前記ダイオードのアノードは前記インダクタに電気的に接続され、
前記ダイオードのカソードは前記キャパシタに電気的に接続される、
請求項に記載の物体検知システム。
【請求項10】
前記調整用スイッチング素子は、前記駆動用スイッチング素子のオン期間はオンであり、前記駆動用スイッチング素子と同時にオンに切り替えられる、
請求項又はに記載の物体検知システム。
【請求項11】
前記音波発生装置は、
通電により発熱して音波を発生する音波源に所定のキャパシタから電力を供給する駆動用スイッチング素子を有する駆動回路と、
電圧が異なる複数の直流電源によりそれぞれ充電される複数のキャパシタの少なくとも一つを前記所定のキャパシタとして選択することによって前記音波発生装置からの音波の音圧を調整する調整回路と、
を備え、
前記送波処理は、
前記調整回路により、前記複数のキャパシタから前記目標音圧に対応するキャパシタを前記所定のキャパシタとして選択し、
前記駆動回路の駆動用スイッチング素子を駆動して前記音波源から音波を発生させる、
請求項1~のいずれか一つに記載の物体検知システム。
【請求項12】
前記音波発生装置は、
それぞれ通電により発熱して異なる音圧の音波を発生する複数の音波源と、
直流電源により充電されるキャパシタ、及び、所定の音波源に前記キャパシタから電力を供給する駆動用スイッチング素子を有する駆動回路と、
前記複数の音波源の少なくとも一つを前記所定の音波源として選択することによって前記音波発生装置からの音波の音圧を調整する調整回路と、
を備え、
前記送波処理は、
前記調整回路により、前記複数の音波源から前記目標音圧に対応する音波源を前記所定の音波源として選択し、
前記駆動回路の駆動用スイッチング素子を駆動して前記所定の音波源から音波を発生させる、
請求項1~のいずれか一つに記載の物体検知システム。
【請求項13】
前記送波処理は、前記駆動用スイッチング素子のスイッチングによって前記音波発生装置から一連の音波を発生させ、
前記駆動用スイッチング素子のスイッチングの周波数は、20kHz以上である、
請求項12のいずれか一つに記載の物体検知システム。
【請求項14】
通電により発熱して音波を発生する音波発生装置と、
前記音波発生装置からの音波を利用して対象空間の物体の検知をする物体検知処理を実行する処理回路と、
を備え、
前記物体検知処理は、
前記対象空間における前記物体の探索範囲を設定する設定処理と、
前記音波発生装置が前記設定処理で設定された探索範囲に関連付けられた目標音圧で音波を発生するように前記音波発生装置を制御する送波処理と、
前記対象空間からの音波を受信する受波装置から前記受波装置で受信した音波を示す受波信号を取得し、前記受波信号に基づいて前記物体があるかどうかを判定する判定処理と、
を含み、
前記音波発生装置は、
直流電源により充電されるキャパシタ、及び、通電により発熱して音波を発生する音波源に前記キャパシタから電力を供給する駆動用スイッチング素子を有する駆動回路と、
前記駆動回路のキャパシタの両端間電圧を調整することによって前記音波発生装置からの音波の音圧を調整する調整回路と、
を備え、
前記送波処理は、
前記調整回路により、前記音波発生装置からの音波の音圧が前記目標音圧となるように前記キャパシタの両端間電圧を調整し、
前記駆動回路の駆動用スイッチング素子を駆動して前記音波源から音波を発生させる、
物体検知システム。
【請求項15】
前記調整回路は、
前記直流電源と前記キャパシタとの間に電気的に接続されるインダクタと、
前記インダクタと前記直流電源との直列回路に並列に電気的に接続される調整用スイッチング素子と、
を有し、
前記調整回路は、前記調整用スイッチング素子のオン期間により前記キャパシタの両端間電圧を調整する、
請求項14に記載の物体検知システム。
【請求項16】
前記調整回路は、ダイオードを有し、
前記ダイオードのアノードは前記インダクタに電気的に接続され、
前記ダイオードのカソードは前記キャパシタに電気的に接続される、
請求項15に記載の物体検知システム。
【請求項17】
前記調整用スイッチング素子は、前記駆動用スイッチング素子のオン期間はオンであり、前記駆動用スイッチング素子と同時にオンに切り替えられる、
請求項15又は16に記載の物体検知システム。
【請求項18】
通電により発熱して音波を発生する音波発生装置と、
前記音波発生装置からの音波を利用して対象空間の物体の検知をする物体検知処理を実行する処理回路と、
を備え、
前記物体検知処理は、
前記対象空間における前記物体の探索範囲を設定する設定処理と、
前記音波発生装置が前記設定処理で設定された探索範囲に関連付けられた目標音圧で音波を発生するように前記音波発生装置を制御する送波処理と、
前記対象空間からの音波を受信する受波装置から前記受波装置で受信した音波を示す受波信号を取得し、前記受波信号に基づいて前記物体があるかどうかを判定する判定処理と、
を含み、
前記音波発生装置は、
通電により発熱して音波を発生する音波源に所定のキャパシタから電力を供給する駆動用スイッチング素子を有する駆動回路と、
電圧が異なる複数の直流電源によりそれぞれ充電される複数のキャパシタの少なくとも一つを前記所定のキャパシタとして選択することによって前記音波発生装置からの音波の音圧を調整する調整回路と、
を備え、
前記送波処理は、
前記調整回路により、前記複数のキャパシタから前記目標音圧に対応するキャパシタを前記所定のキャパシタとして選択し、
前記駆動回路の駆動用スイッチング素子を駆動して前記音波源から音波を発生させる、
物体検知システム。
【請求項19】
通電により発熱して音波を発生する音波発生装置と、
前記音波発生装置からの音波を利用して対象空間の物体の検知をする物体検知処理を実行する処理回路と、
を備え、
前記物体検知処理は、
前記対象空間における前記物体の探索範囲を設定する設定処理と、
前記音波発生装置が前記設定処理で設定された探索範囲に関連付けられた目標音圧で音波を発生するように前記音波発生装置を制御する送波処理と、
前記対象空間からの音波を受信する受波装置から前記受波装置で受信した音波を示す受波信号を取得し、前記受波信号に基づいて前記物体があるかどうかを判定する判定処理と、
を含み、
前記音波発生装置は、
それぞれ通電により発熱して異なる音圧の音波を発生する複数の音波源と、
直流電源により充電されるキャパシタ、及び、所定の音波源に前記キャパシタから電力を供給する駆動用スイッチング素子を有する駆動回路と、
前記複数の音波源の少なくとも一つを前記所定の音波源として選択することによって前記音波発生装置からの音波の音圧を調整する調整回路と、
を備え、
前記送波処理は、
前記調整回路により、前記複数の音波源から前記目標音圧に対応する音波源を前記所定の音波源として選択し、
前記駆動回路の駆動用スイッチング素子を駆動して前記所定の音波源から音波を発生させる、
物体検知システム。
【請求項20】
前記送波処理は、前記駆動用スイッチング素子のスイッチングによって前記音波発生装置から一連の音波を発生させ、
前記駆動用スイッチング素子のスイッチングの周波数は、20kHz以上である、
請求項14~19のいずれか一つに記載の物体検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、物体検知システムに関する。本開示は、より詳細には、音波を利用して物体の検知をする物体検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、物体検知装置(物体検知システム)を開示する。特許文献1の物体検知装置は、振動子から超音波を送信し振動子の振動に伴い受波信号を生成する超音波センサを複数用い、超音波センサ(受波装置)で受信した反射波(エコー)に基づいて、移動体の周囲に存在する物体を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-105703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
物体からの反射波は、物体が近ければ大きくなり、物体が遠ければ小さくなる。遠距離の物体を検出するためには超音波の音圧を大きくすることが考えられる。しかしながら、超音波の音圧が大きくなると、振動子で発生した超音波が直接的に超音波センサに入射することに起因する直達音(直達波)の影響が大きくなり、近距離の物体の検知がしにくくなる。
【0005】
本開示は、物体の検知範囲を広げることができる物体検知システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、物体検知システムであって、通電により発熱して音波を発生する音波発生装置と、音波発生装置からの音波を利用して対象空間の物体の検知をする物体検知処理を実行する処理回路とを備える。物体検知処理は、設定処理と、送波処理と、判定処理とを含む。設定処理は、対象空間における物体の探索範囲を設定する。送波処理は、音波発生装置が設定処理で設定された探索範囲に関連付けられた目標音圧で音波を発生するように音波発生装置を制御する。判定処理は、対象空間からの音波を受信する受波装置から受波装置で受信した音波を示す受波信号を取得し、受波信号に基づいて探索範囲に物体があるかどうかを判定する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の態様は、物体の検知範囲を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施の形態にかかる物体検知システムの構成例のブロック図
図2図1の物体検知システムが備える音波発生装置の構成例の回路図
図3図1の物体検知システムにおける駆動用スイッチング素子と調整用スイッチング素子との動作のタイミング図
図4】駆動信号と受波信号との関係を示す波形図
図5】反射波の大きさの説明図
図6図1の物体検知システムの動作のフローチャート
図7】変形例1の音波発生装置の構成例のブロック図
図8】変形例2の音波発生装置の構成例のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施の形態)
[1.概要]
図1は、本実施の形態にかかる物体検知システム1の構成例のブロック図である。物体検知システム1は、音波を利用して対象空間にある物体の検知を行うことができる。物体検知システム1は、例えば、移動体において障害物等の物体の検知に用いられる。移動体の例としては、自動車等の乗り物、ドローン等の無人飛行機、自律移動ロボット等が挙げられる。自律移動ロボットとしては、ロボットクリーナが挙げられる。
【0010】
図1に示すように、物体検知システム1は、通電により発熱して音波を発生する音波発生装置10と、音波発生装置10からの音波を利用して対象空間の物体の検知をする物体検知処理を実行する処理回路30とを備える。物体検知処理は、設定処理(図6のS11、S16~S19)と、送波処理(図6のS12)と、判定処理(図6のS13,S14)とを含む。設定処理は、対象空間における物体の探索範囲を設定する。送波処理は、音波発生装置10が設定処理で設定された探索範囲に関連付けられた目標音圧で音波を発生するように音波発生装置10を制御する。判定処理は、対象空間からの音波を受信する受波装置20から受波装置20で受信した音波を示す受波信号を取得し、受波信号に基づいて探索範囲に物体があるかどうかを判定する。
【0011】
図1の物体検知システム1は、音波発生装置10から出力される音波の音圧を、対象空間における物体の探索範囲に関連付けられた目標音圧に設定できる。つまり、物体までの距離に応じて音波の音圧を設定することが可能である。そのため、目標音圧を大きくすることで物体からの反射波を大きくできて、より遠い物体の検知が可能となる。一方で、目標音圧を小さくすることで、受波装置20への直達音の影響を低減して、より近い物体の検知が可能となる。以上述べたように、物体検知システム1によれば、物体の検知範囲を広げることができる。
【0012】
[2.詳細]
以下、物体検知システム1について図面を参照して説明する。図1に示すように、物体検知システム1は、音波発生装置10と、受波装置20と、処理回路30とを備える。
【0013】
[2-1.音波発生装置]
図1の音波発生装置10は、音波源11と、駆動回路12と、調整回路13と、制御回路14とを備える。
【0014】
音波源11は、通電により発熱して音波を発生する。より詳細には、音波源11は、空気を加熱して音波を発生させる熱励起型の素子である。音波源11は、いわゆるサーモホンである。音波源11は、例えば、発熱体と、基板と、一対の電極と、断熱層とを備える。発熱体は、電流を流すことによって発熱する抵抗体である。発熱体は、例えば、空気に接触するように基板に配置される。発熱体の周囲の空気は、発熱体の温度変化によって膨張又は収縮する。これにより、空気の圧力波即ち音波が発生する。断熱層は、発熱体から基板への熱伝導を抑制する。一対の電極は、音波源11の外部から発熱体に電流を流すための電極である。一対の電極は、発熱体の両側に設けられる。音波源11は、従来周知の構成を有していてよいから、音波源11の詳細な説明は省略する。
【0015】
図2は、音波発生装置10の構成例の回路図である。図2に示すように、音波源11は、直流電源V1とグランドとの間に電気的に接続される。
【0016】
直流電源V1は、各種の電源回路及び/又はバッテリ等で構成される。各種の電源回路は、例えばAC/DCコンバータ、DC/DCコンバータ、レギュレータ、バッテリを含む。直流電源V1の電圧値は、例えば、5Vである。
【0017】
駆動回路12は、音波源11が音波を発生するように音波源11に電力を供給する。駆動回路12は、図2に示すように、キャパシタC1と、駆動用スイッチング素子T1と、抵抗器R1とを備える。
【0018】
キャパシタC1は、音波源11に電力を供給するために用いられる。キャパシタC1は、直流電源V1と音波源11との接続点とグランドとの間に電気的に接続される。キャパシタC1は、例えば電解コンデンサ又はセラミックコンデンサである。
【0019】
駆動用スイッチング素子T1は、音波源11への電力の供給を制御することにより音波源11を駆動するために用いられる。駆動用スイッチング素子T1は、音波源11とグランドとの間に電気的に接続される。駆動用スイッチング素子T1は、例えば、n型のMOSFETである。駆動用スイッチング素子T1がオンであれば、音波源11に電力が供給される。図2では、矢印A1で示すように、キャパシタC1から音波源11に電流が流れ、音波源11に電力が供給される。駆動用スイッチング素子T1がオフであれば、音波源11に電力が供給されない。駆動用スイッチング素子T1がオンオフすることで、音波源11は音波を発生する。本開示において、「音波」は、1周期分の正弦波である。これに対して「一連の音波」は、複数周期分の正弦波である。
【0020】
抵抗器R1は、キャパシタC1と直流電源V1との間に電気的に接続される過電流保護素子を構成する。抵抗器R1は、直流電源V1から直接的に音波源11に流れる電流を制限する。抵抗器R1によれば、音波源11の過剰な発熱を防止できる。抵抗器R1の抵抗値は、例えば、50Ω以上5kΩ以下である。
【0021】
駆動回路12では、キャパシタC1から音波源11に電流が流れ、音波源11に電力が供給される。そのため、音波源11から出力される音波の音圧は、キャパシタC1の両端間電圧V2に依存する。
【0022】
調整回路13は、駆動回路12のキャパシタC1の両端間電圧V2を調整することによって音波発生装置10からの音波の音圧を調整する。調整回路13は、図2に示すように、インダクタL1と、調整用スイッチング素子T2と、ダイオードD1とを備える。インダクタL1は、直流電源V1とキャパシタC1との間に電気的に接続される。図2では、インダクタL1は、過電流保護素子である抵抗器R1と直流電源V1との間に電気的に接続される。調整用スイッチング素子T2は、インダクタL1と直流電源V1との直列回路に並列に電気的に接続される。調整用スイッチング素子T2は、例えば、n型のMOSFETである。インダクタL1、直流電源V1、及び調整用スイッチング素子T2は閉ループを構成する。調整用スイッチング素子T2がオンであれば、インダクタL1にエネルギが蓄積される。図2では、矢印A2に示すように、直流電源V1、インダクタL1、及び調整用スイッチング素子T2の閉ループに電流が流れ、インダクタL1にエネルギが蓄積される。調整用スイッチング素子T2がオンからオフになると、インダクタL1に誘導起電力が生じる。これにより、矢印A3に示すように、インダクタL1からキャパシタC1に電流が流れて、キャパシタC1が充電される。図2の調整回路13は、キャパシタC1を充電することが可能であり、これにより、キャパシタC1の両端間電圧V2の調整が可能である。インダクタL1に蓄積されるエネルギは、調整用スイッチング素子T2がオンである期間により調整される。ダイオードD1は、インダクタL1とキャパシタC1との間に電気的に接続される。特に、ダイオードD1のアノードはインダクタL1に電気的に接続され、ダイオードD1のカソードはキャパシタC1に電気的に接続される。ダイオードD1は、キャパシタC1からインダクタL1に電流が流れて意図せずにキャパシタC1が放電してしまう可能性を低減する。
【0023】
制御回路14は、駆動回路12及び調整回路13を制御するように構成される。制御回路14は、例えば、後述する駆動信号S1,S2を出力するための発振器を有する。制御回路14は、例えば、FPGA(field-programmable gate array)等の集積回路である。制御回路14は、音波源11が音波を発生するように駆動回路12の駆動用スイッチング素子T1のスイッチングを制御しながら、駆動回路12のキャパシタC1の両端間電圧V2が目標音圧に対応する値となるように調整回路13を制御する。
【0024】
制御回路14は、駆動回路12の駆動用スイッチング素子T1のスイッチング(オンオフ)を制御する。制御回路14は、駆動回路12の駆動用スイッチング素子T1を制御することによって、音波源11から音波を発生させる動作を実行する。図1に示すように、制御回路14は、駆動用スイッチング素子T1のスイッチングを制御するための駆動信号S1を出力する。本実施の形態において、駆動用スイッチング素子T1はMOSFETであり、駆動信号S1は駆動用スイッチング素子T1のゲートに入力される。駆動信号S1がハイレベルである間は、駆動用スイッチング素子T1がオンとなる。駆動信号S1がロウレベルである間は、駆動用スイッチング素子T1がオフとなる。図2では、駆動信号S1が直流電源として図示されている。
【0025】
制御回路14は、調整回路13の調整用スイッチング素子T2のスイッチング(オンオフ)を制御する。制御回路14は、調整回路13の調整用スイッチング素子T2を制御することによって、駆動回路12のキャパシタC1の両端間電圧V2を調整する動作を実行する。図1に示すように、制御回路14は、調整用スイッチング素子T2のスイッチングを制御するための駆動信号S2を出力する。本実施の形態において、調整用スイッチング素子T2はMOSFETであり、駆動信号S2は調整用スイッチング素子T2のゲートに入力される。駆動信号S2がハイレベルである間は、調整用スイッチング素子T2がオンとなる。駆動信号S2がロウレベルである間は、調整用スイッチング素子T2がオフとなる。図2では、駆動信号S2が直流電源として図示されている。
【0026】
次に、制御回路14による駆動回路12及び調整回路13の制御について図3を参照して詳細に説明する。図3は、音波発生装置10の動作を説明するタイミング図である。
【0027】
制御回路14は、駆動回路12を制御して音波源11から音波を発生させるために、駆動信号S1を駆動用スイッチング素子T1に出力する。図3に示すように、駆動信号S1は、パルス信号(インパルス信号)である。駆動信号S1のパルス幅は、例えば、2μs~25μsとすることができる。駆動信号S1において、パルス幅は、駆動用スイッチング素子T1のオン期間T1onに対応する。オン期間T1onは、駆動用スイッチング素子T1がオンの期間である。オン期間T1onにおいては、キャパシタC1から音波源11に電流が流れ、音波源11に電力が供給される。
【0028】
オン期間T1onにおいてキャパシタC1から音波源11に電力が供給されて音波源11から音波が出力される。制御回路14は、オン期間T1onの開始(例えば、図3の時刻t21)前に、調整回路13によりキャパシタC1の両端間電圧V2を調整する。制御回路14は、調整回路13を制御してキャパシタC1の両端間電圧V2を調整するために、駆動信号S2を調整用スイッチング素子T2に出力する。本実施の形態において、調整用スイッチング素子T2は、駆動用スイッチング素子T1のオン期間T1onはオンであり、駆動用スイッチング素子T1と同時にオンに切り替えられる。
【0029】
図3は、駆動信号S2の例として、3種類の駆動信号S2-1~S2-3を示す。図3に示すように、駆動信号S2-1~S2-3は、パルス列の信号である。特に、駆動信号S2-1~S2-3のパルス幅は、調整用スイッチング素子T2のオン期間T2onに対応する。オン期間T2onは、調整用スイッチング素子T2がオンの期間である。駆動信号S2-1~S2-3は、オン期間T2onが異なる。駆動信号S2-1のオン期間T2onは時刻t11から時刻t12までであり、駆動信号S2-2のオン期間T2onは時刻t11から時刻t12より後の時刻t13までであり、駆動信号S2-3のオン期間T2onは時刻t11から時刻t13より後の時刻t14までである。オン期間T2onにおいては、直流電源V1からインダクタL1に電流が流れ、インダクタL1にエネルギが蓄積される。オン期間T2onの後に、調整用スイッチング素子T2がオフとなる。調整用スイッチング素子T2がオフになると、インダクタL1からキャパシタC1に電流が流れ、キャパシタC1が充電される。よって、オン期間T2onの長さによって、キャパシタC1の両端間電圧V2を調整することが可能である。駆動信号S2-1~S2-3の場合、駆動信号S2-1においてキャパシタC1の両端間電圧V2が最も低くなり、駆動信号S2-3においてキャパシタC1の両端間電圧V2が最も高くなる。
【0030】
図3に示すように、制御回路14は、駆動用スイッチング素子T1のオン期間T1onより前に調整用スイッチング素子T2をオンからオフに切り替える。これによって、キャパシタC1の両端間電圧V2を、調整用スイッチング素子T2のオン期間T2onに応じた電圧に設定できる。
【0031】
[2-2.受波装置]
受波装置20は、音波を受信し、受信した音波を示す受波信号を処理回路30に出力する。図1の受波装置20は、複数(図示例では2つ)のマイクロフォン21と、複数(図示例では2つ)の増幅回路22と、複数(図示例では2つ)のフィルタ23と、AD変換器24と、制御回路25とを備える。
【0032】
マイクロフォン21は、音波を電気信号に変換する電気音響変換素子である。マイクロフォン21は、音波を受信すると、受信した音波を示すアナログ形式の受波信号を出力する。マイクロフォン21は、音波源11から出力された後に、対象物で反射された音波を検出するために用いられる。増幅回路22は、マイクロフォン21からのアナログ形式の受波信号を増幅して出力する。フィルタ23は、音波の周波数帯域を含む通過帯域の信号を通過させる。フィルタ23は、例えば、バンドパスフィルタである。AD変換器24は、フィルタ23を通過したアナログ形式の受波信号を示すデジタル形式の受波信号に変換して制御回路25に出力する。マイクロフォン21、増幅回路22、フィルタ23、及びAD変換器24は、従来周知の構成であってよいから詳細な説明は省略する。
【0033】
制御回路25は、AD変換器24がデジタル形式の受波信号を制御回路25に出力するように、AD変換器24を制御する。制御回路25は、AD変換器24からのデジタル形式の受波信号を、処理回路30に出力する。制御回路25は、例えば、FPGA等の集積回路である。なお、制御回路14と制御回路25とは、1チップに集約されていてもよい。例えば、制御回路14と制御回路25とは単一のFPGAで実現されてよい。
【0034】
[2-3.処理回路]
処理回路30は、物体検知システム1の動作を制御する回路である。処理回路30は、例えば、1以上のプロセッサ(マイクロプロセッサ)と1以上のメモリとを含むコンピュータシステムにより実現され得る。1以上のプロセッサがプログラムを実行することで、処理回路30としての機能を実現する。
【0035】
処理回路30は、音波発生装置10からの音波を利用して対象空間の物体の検知をする物体検知処理を実行する。物体検知処理は、設定処理と、送波処理と、判定処理とを含む。
【0036】
設定処理は、対象空間における物体の探索範囲を設定する。対象空間は、物体の検知の対象となる空間である。対象空間において予め設定された物体までの距離の最小値から最大値までの範囲に関して、複数の探索範囲が設定される。本実施の形態において、物体までの距離は、例えば、音波発生装置10から物体までの距離である。探索範囲は、対象空間において物体の検知の対象となる範囲である。探索範囲は、物体までの距離の範囲で決定される。上述したように、対象空間には複数の探索範囲が設定されるが、複数の探索範囲は、互いに異なる距離の範囲である。複数の探索範囲は、部分的に重複してもよいが、一方の探索範囲が他方の探索範囲に包含されないほうがよい。複数の探索範囲は、例えば、第1探索範囲と、第2探索範囲と、第3探索範囲とを含む。第1探索範囲は、第1~第3探索範囲のうちで音波発生装置10に最も近い。第3探索範囲は、第1~第3探索範囲のうちで音波発生装置10から最も遠い。第2探索範囲は、第1探索範囲よりも音波発生装置10から遠く、第3探索範囲よりも音波発生装置10に近い。換言すれば、第1探索範囲は近距離の探索範囲、第2探索範囲は中距離の探索範囲、第3探索範囲は遠距離の探索範囲である。近距離は、例えば、物体までの距離が数cm程度の距離である。遠距離は、例えば、物体までの距離が数m程度の距離である。設定処理での探索範囲の設定の仕方については後記の「[4.設定処理での探索範囲の設定]」で説明する。
【0037】
送波処理は、音波発生装置10が設定処理で設定された探索範囲に関連付けられた目標音圧で音波を発生するように音波発生装置10を制御する。より詳細には、送波処理は、調整回路13により、音波発生装置10からの音波の音圧が目標音圧となるようにキャパシタC1の両端間電圧V2を調整し、駆動回路12の駆動用スイッチング素子T1を駆動して音波源11から音波を発生させる。送波処理では、例えば、処理回路30が制御回路14に指令を送ることで、制御回路14が駆動回路12及び調整回路13の制御を実行する。探索範囲と目標音圧との関連付けについては、後記の「[3.探索範囲と目標音圧との関連付け]」で説明する。
【0038】
判定処理は、対象空間からの音波を受信する受波装置20から受波装置20で受信した音波を示す受波信号を取得する。判定処理は、例えば、受波装置20からのデジタル形式の受波信号を取得する。対象空間に物体がある場合、対象空間からの音波は、音波発生装置10から出力された音波の物体での反射波(エコーともいう)を含む。判定処理は、取得した受波信号に基づいて対象空間に物体があるかどうかを判定する。本実施の形態では、判定処理は、受波信号に基づく判定値が閾値以上である場合に物体があると判定する。判定値は、例えば、受波信号の大きさ(振幅)である。閾値は、受波信号が示す音波に反射波が含まれているかどうかを判定するために用いられる。つまり、受波信号に基づく判定値が閾値以上である場合とは、物体での反射波が検知された場合である。判定処理は、探索範囲に物体があると判定した場合に受波信号に基づいて物体までの距離を決定する。判定処理は、例えば、音波発生装置10から音波を出力した時刻(送信時間)と物体での反射波が検知された時刻(受信時間)との時間差に基づいて、TOF(Time of Flight)技術により、物体までの距離を求める。音波を利用して物体の検知及び物体までの距離の測定等には、従来周知の技術を適用できるから、詳細な説明は省略する。
【0039】
[3.探索範囲と目標音圧との関連付け]
図4は、調整回路13を有していない比較例の物体検知システムにおける駆動信号S1と受波信号R1,R2との関係を示すタイミングチャートである。図4において、Vthは、判定処理で用いられる閾値である。受波信号R1は、物体が近距離にある場合に対応し、受波信号R2は、物体が遠距離にある場合に対応する。図4では、受波信号R1,R2は、駆動信号S1により音波発生装置10から出力される音波が受波装置20に直接的に入ることで生じる直達音RW10を含む。直達音RW10の大きさが閾値Vthを超えることによる誤検知を防止するために、不感帯が設定される。不感帯は、送波処理後に設定される。不感帯は、例えば、駆動信号S1の出力の時刻t31から、直達音RW10の大きさが閾値Vth以上にならなくなる時刻t32までの期間である。判定処理は、不感帯においては、受波信号に基づいて物体があるかどうかを判定しない。受波信号R1は、近距離の物体からの反射波RW11を含み、受波信号R2は、遠距離の物体からの反射波RW12を含む。図4から明らかなように、物体が近距離にあるほど、物体からの反射波が検知される受信時間は早くなる。不感帯を設定した場合には、受信時間が不感帯に含まれる距離については、物体の検知が行えない。そのため、より近距離の物体を検知するためには不感帯が短いほうがよい。直達音RW10の大きさ及び長さは、音波発生装置10から出力される音波の音圧が大きいほど大きくなる。つまり、直達音RW10の大きさが閾値Vth以上となる期間は、音波発生装置10から出力される音波の音圧により変化する。そのため、音波発生装置10から出力される音波の音圧を小さくして、直達音RW10の大きさが閾値Vth以上となる期間を短くすれば、不感帯も短くすることができる。したがって、近距離の物体を検知するためには、音波の音圧が小さいほうがよい。また、図4から明らかなように、物体からの反射波は、物体が近ければ大きくなり、物体が遠ければ小さくなる。実際に物体から反射波がある場合でも、反射波の大きさが閾値Vthを下回っている場合には、判定処理は、物体がないと判断することになる。つまり、反射波の大きさが閾値Vthを下回る距離については、物体の検知が行えない。ここで、音波発生装置10から出力される音波の音圧が大きくすれば、反射波をより大きくすることができる。よって、遠距離の物体を検知するためには、音波の音圧が大きいほうがよい。このように、近距離の物体を検知するためには、直達音RW10の大きさが閾値Vth以上となる期間を短くするために音波の音圧が小さいほうがよい。一方で、遠距離の物体を検知するためには、反射波の大きさが閾値Vth以上となる距離を長くするために音波の音圧が大きいほうがよい。以上の点から、目標音圧は、探索範囲が音波発生装置10から遠くなるほど、大きく設定される。第1~第3探索範囲に関しては、第1探索範囲に関連付けられた目標音圧が最も小さく、第3探索範囲に関連付けられた目標音圧が最も大きい。また、目標音圧が大きくなると、直達音RW10の大きさが閾値Vth以上となる期間が長くなるため、不感帯は、探索範囲が音波発生装置10から遠くなるほど、長く設定される。第1~第3探索範囲に関しては、第1探索範囲に関連付けられた不感帯が最も短く、第3探索範囲に関連付けられた不感帯が最も長い。
【0040】
図5は、反射波の大きさの説明図である。所定の音圧の音波を音波発生装置10から出力させた場合、第1探索範囲に物体があれば反射波RW1が得られ、第2探索範囲に物体があれば反射波RW20が得られ、第3探索範囲に物体があれば反射波RW30が得られる。物体が音波発生装置10から遠いほど、反射波の大きさは小さくなる。図5において、Vthは、判定処理で用いられる閾値である。反射波RW1の大きさは閾値Vthより十分に大きいが、反射波RW30の大きさは閾値Vthよりわずかに大きい程度である。距離の測定を音波発生装置10から音波を出力した時刻から閾値Vthを超えた反射波が検知された時刻までで行う場合、物体までの距離が長くなるほど反射波の大きさは小さくなるから、物体までの距離が長くいほど、誤差の影響が大きくなり、物体の検知精度が低下する。閾値Vthをより低くした場合には、誤差の影響は小さくできるものの、反射波ではない雑音を反射波と誤検知する可能性がある。
【0041】
本実施の形態では、目標音圧は、物体からの反射波の大きさが規定値以上となるように設定される。規定値は、閾値Vthより大きい。特に、規定値は、誤差による影響を受けない程度に閾値Vthより大きいことが望ましい。規定値は、例えば、所定の音圧の音波を音波発生装置10から出力させた場合に第1探索範囲にある物体からの反射波RW1の大きさに対応する。第2探索範囲においては、大きさが規定値であって、反射波RW20より大きい反射波RW2が得られるように、目標音圧が設定される。第3探索範囲においては、大きさが規定値であって、反射波RW30より大きい反射波RW3が得られるように、目標音圧が設定される。このように複数の探索範囲の目標音圧が設定されることで、異なる探索範囲に対して同じ閾値Vthを用いることができ、しかも、距離による誤差の影響や雑音による誤検知の可能性を低減できて、物体の検知精度を向上できる。
【0042】
[4.設定処理での探索範囲の設定]
設定処理は、複数の探索範囲から使用する探索範囲を選択する。例えば、設定処理は、複数の探索範囲のうち音波発生装置10に最も近い探索範囲を初期探索範囲に選択する。設定処理は、判定処理によって物体がないと判定された場合に、探索範囲を変更する。設定処理は、判定処理によって物体がないと判定された場合に、探索範囲が音波発生装置10から遠ざかるように探索範囲を変更する。つまり、設定処理は、音波発生装置10の近くから遠くへと探索範囲を変更する。設定処理は、判定処理によって物体がないと判定された探索範囲が音波発生装置10から最も遠い場合に、探索範囲が音波発生装置10に近付くように探索範囲を変更する。例えば、設定処理は、複数の探索範囲から、音波発生装置10に最も近い探索範囲を選択する。設定処理は、判定処理によって物体までの距離が決定された場合に、判定処理で決定された物体までの距離に基づいて探索範囲を設定する。つまり、物体までの距離に基づいて探索範囲を設定することで、物体の検知の可能性を高くできる。また、対象空間において、物体を追跡することが可能である。
【0043】
[5.動作]
次に、図6を参照して、物体検知システム1の動作、特に物体検知処理時の物体検知システム1の動作について説明する。以下の説明では、複数の探索範囲は、上述した第1~第3探索範囲である。設定処理は、複数の探索範囲のうち音波発生装置10に最も近い探索範囲である第1探索範囲を初期探索範囲として選択する(S11)。送波処理は、音波発生装置10が設定処理で設定された第1探索範囲に関連付けられた目標音圧で音波を発生するように音波発生装置10を制御する(S12)。そして、判定処理により、第1探索範囲に物体があるかどうかが判定される(S13)。
【0044】
第1探索範囲に物体がある場合(S13;YES)、判定処理により物体までの距離が決定される(S14)。設定処理は、判定処理で決定された物体までの距離に基づいて探索範囲を設定する(S16)。例えば、設定処理は、複数の探索範囲から、判定処理で決定された物体までの距離が含まれる探索範囲を選択する。そして、送波処理は、音波発生装置10が設定処理で設定された探索範囲に関連付けられた目標音圧で音波を発生するように音波発生装置10を制御する(S12)。第1探索範囲に物体がない場合(S13;NO)、設定処理は、探索範囲を変更する。まず、設定処理は、判定処理によって物体がないと判定された探索範囲が音波発生装置10から最も遠いかどうかを判定する(S17)。現在の探索範囲が第1探索範囲であるから(S17:NO)、設定処理は、探索範囲が音波発生装置10から遠ざかるように探索範囲に変更する(S18)。設定処理は、探索範囲を第1探索範囲から第2探索範囲に変更する。この後に、S12及びS13が実行される。
【0045】
第2探索範囲に物体がある場合(S13;YES)、S14及びS16が実行される。第2探索範囲に物体がない場合(S13;NO)、設定処理は、判定処理によって物体がないと判定された探索範囲が音波発生装置10から最も遠いかどうかを判定する(S17)。現在の探索範囲が第2探索範囲であるから(S17:NO)、設定処理は、探索範囲が音波発生装置10から遠ざかるように探索範囲に変更する(S18)。設定処理は、探索範囲を第2探索範囲から第3探索範囲に変更する。この後に、S12及びS13が実行される。
【0046】
第3探索範囲に物体がある場合(S13;YES)、S14及びS16が実行される。第3探索範囲に物体がない場合(S13;NO)、設定処理は、判定処理によって物体がないと判定された探索範囲が音波発生装置10から最も遠いかどうかを判定する(S17)。現在の探索範囲が第3探索範囲であるから(S17:YES)、設定処理は、探索範囲が音波発生装置10に近付くように探索範囲に変更する(S19)。設定処理は、探索範囲を第3探索範囲から第1探索範囲に変更する。この後に、S12及びS13が実行される。
【0047】
このように、物体検知システム1は、設定処理によって探索範囲を変更しながら、物体の検知を実行する。物体検知システム1は、音波発生装置10から出力される音波の音圧を、対象空間における物体の探索範囲に関連付けられた目標音圧に設定できる。つまり、物体までの距離に応じて音波の音圧を設定することが可能である。そのため、目標音圧を大きくすることで物体からの反射波を大きくできて、より遠い物体の検知が可能となる。一方で、目標音圧を小さくすることで、受波装置20への直達音の影響を低減して、より近い物体の検知が可能となる。以上述べたように、物体検知システム1によれば、物体の検知範囲を広げることができる。
【0048】
[6.効果等]
以上述べた物体検知システム1は、通電により発熱して音波を発生する音波発生装置10と、音波発生装置10からの音波を利用して対象空間の物体の検知をする物体検知処理を実行する処理回路30とを備える。物体検知処理は、対象空間における物体の探索範囲を設定する設定処理と、音波発生装置10が設定処理で設定された探索範囲に関連付けられた目標音圧で音波を発生するように音波発生装置10を制御する送波処理と、対象空間からの音波を受信する受波装置20から受波装置20で受信した音波を示す受波信号R1,R2を取得し、受波信号R1,R2に基づいて物体があるかどうかを判定する判定処理とを含む。この構成によれば、物体の検知範囲を広げることができる。
【0049】
物体検知システム1において、目標音圧は、探索範囲が音波発生装置10から遠くなるほど、大きい。この構成によれば、物体の検知範囲を広げることができる。
【0050】
物体検知システム1において、判定処理は、受波信号の大きさが閾値Vth以上である場合に物体があると判定する。この構成によれば、物体の検知の処理を簡略化できる。
【0051】
物体検知システム1において、目標音圧は、物体からの反射波RW1,RW2,RW3の大きさが、閾値Vthより大きい規定値以上となるように設定される。この構成によれば、距離による誤差の影響や雑音による誤検知の可能性を低減できて、物体の検知精度を向上できる。
【0052】
物体検知システム1において、判定処理は、送波処理後に設定される不感帯においては、受波信号R1,R2に基づいて物体があるかどうかを判定しない。不感帯は、設定処理で設定された探索範囲に応じて設定される。この構成によれば、直達音RW10の大きさが閾値Vthを超えることによる誤検知を防止しながらも、物体の検知範囲を広げることができる。
【0053】
物体検知システム1において、不感帯は、探索範囲が音波発生装置10から遠くなるほど、長く設定される。この構成によれば、直達音RW10の大きさが閾値Vthを超えることによる誤検知を防止しながらも、物体の検知範囲を広げることができる。
【0054】
物体検知システム1において、設定処理は、判定処理によって物体がないと判定された場合に、探索範囲を変更する。この構成によれば、物体の検知の可能性を高くできる。
【0055】
物体検知システム1において、設定処理は、判定処理によって物体がないと判定された場合に、探索範囲が音波発生装置10から遠ざかるように探索範囲を変更する。この構成によれば、物体の検知の可能性を高くできる。
【0056】
物体検知システム1において、設定処理は、判定処理によって物体がないと判定された探索範囲が音波発生装置10から最も遠い場合に、探索範囲が音波発生装置10に近付くように探索範囲を変更する。この構成によれば、物体の検知の可能性を高くできる。
【0057】
物体検知システム1において、判定処理は、物体があると判定した場合に受波信号R1,R2に基づいて物体までの距離を決定する。この構成によれば、物体までの距離が得られる。
【0058】
物体検知システム1において、設定処理は、判定処理によって物体までの距離が決定された場合に、判定処理で決定された物体までの距離に基づいて探索範囲を設定する。この構成によれば、物体の検知の可能性を高くできる。
【0059】
物体検知システム1において、音波発生装置10は、直流電源V1により充電されるキャパシタC1、及び、通電により発熱して音波を発生する音波源11にキャパシタC1から電力を供給する駆動用スイッチング素子T1を有する駆動回路12と、駆動回路12のキャパシタC1の両端間電圧V2を調整することによって音波発生装置10からの音波の音圧を調整する調整回路13とを備える。送波処理は、調整回路13により、音波発生装置10からの音波の音圧が目標音圧となるようにキャパシタC1の両端間電圧V2を調整し、駆動回路12の駆動用スイッチング素子T1を駆動して音波源11から音波を発生させる。この構成によれば、音波発生装置10から出力される音波の音圧の調整が容易に行える。
【0060】
物体検知システム1において、調整回路13は、直流電源V1とキャパシタC1との間に電気的に接続されるインダクタL1と、インダクタL1と直流電源V1との直列回路に並列に電気的に接続される調整用スイッチング素子T2とを有する。調整回路13は、調整用スイッチング素子T2のオン期間T2onによりキャパシタC1の両端間電圧V2を調整する。この構成によれば、回路構成の簡素化が図れる。
【0061】
物体検知システム1において、調整回路13は、ダイオードD1を有し、ダイオードD1のアノードはインダクタL1に電気的に接続され、ダイオードD1のカソードはキャパシタC1に電気的に接続される。この構成によれば、キャパシタC1からインダクタL1に電流が流れて意図せずにキャパシタC1が放電してしまう可能性を低減できる。
【0062】
物体検知システム1において、調整用スイッチング素子T2は、駆動用スイッチング素子T1のオン期間T1onはオンであり、駆動用スイッチング素子T1と同時にオンに切り替えられる。この構成によれば、音波の音圧の調整が容易になる。
【0063】
(変形例)
本開示の実施の形態は、上記実施の形態に限定されない。上記実施の形態は、本開示の課題を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下に、上記実施の形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0064】
[1.変形例1]
図7は、変形例1の音波発生装置10Aの構成例の回路図である。音波発生装置10Aは、音波源11と、駆動回路12Aと、調整回路13Aとを備える。音波発生装置10Aは、音波発生装置10と同様に制御回路14を備えるが、図7では制御回路14の図示を省略している。
【0065】
駆動回路12Aは、通電により発熱して音波を発生する音波源11に所定のキャパシタから電力を供給する駆動用スイッチング素子T1を有する。駆動用スイッチング素子T1は、音波源11への電力の供給を制御するために用いられる。駆動用スイッチング素子T1は、音波源11とグランドとの間に接続される。駆動用スイッチング素子T1がオンであれば、音波源11に電力が供給される。駆動用スイッチング素子T1がオフであれば、音波源11に電力が供給されない。駆動用スイッチング素子T1がオンオフすることで、音波源11は音波を発生する。駆動用スイッチング素子T1は、例えば、n型のMOSFETである。
【0066】
調整回路13Aは、電圧が異なる複数(図示例では3)の直流電源V1-1~V1-3(以下、総称して符号V1を付す)によりそれぞれ充電される複数(図示例では3)のキャパシタC1-1~C1-3(以下、総称して符号C1を付す)の少なくとも一つを所定のキャパシタとして選択することによって音波発生装置10からの音波の音圧を調整する。図7に示すように、調整回路13Aは、複数のキャパシタC1-1~C1-3と、切替回路131とを備える。
【0067】
複数のキャパシタC1-1~C1-3は、電圧が異なる複数の直流電源V1-1~V1-3によりそれぞれ充電される。キャパシタC1は、音波源11に電力を供給するために用いられる。キャパシタC1は、直流電源V1と音波源11との接続点とグランドとの間に電気的に接続される。キャパシタC1は、直流電源V1により充電される。キャパシタC1は、例えば電解コンデンサ又はセラミックコンデンサである。
【0068】
切替回路131は、音波源11への電力の供給源を、複数のキャパシタC1から選択する。より詳細には、切替回路131は、音波発生装置10Aが設定処理で設定された探索範囲に関連付けられた目標音圧で音波を発生するように、複数のキャパシタC1の少なくとも一つを音波源11に電気的に接続する。例えば、キャパシタC1-1及び直流電源V1-1は、第1探索範囲に関連付けられた目標音圧を実現するために用いられる。キャパシタC1-2及び直流電源V1-2は、第2探索範囲に関連付けられた目標音圧を実現するために用いられる。キャパシタC1-3及び直流電源V1-3は、第3探索範囲に関連付けられた目標音圧を実現するために用いられる。
【0069】
切替回路131は、図7に示すように、複数(図示例では3)のスイッチSW1-1~SW1-3(以下、総称して符号SW1を付す)を備える。複数のスイッチSW1-1~SW1-3は、音波源11と複数のキャパシタC1-1~C1-3との間に電気的に接続される。切替回路131では、複数のスイッチSW1-1~SW1-3のうちの一つがオン、残りがオフとされる。これによって、複数のキャパシタC1-1~C1-3のうちの一つが音波源11に電気的に接続される。
【0070】
制御回路14は、駆動回路12A及び調整回路13Aの切替回路131を制御する。制御回路14は、切替回路131のスイッチSW1を制御することによって、音波発生装置10Aが設定処理で設定された探索範囲に関連付けられた目標音圧で音波を発生するように、複数のキャパシタC1の少なくとも一つを音波源11に電気的に接続する。
【0071】
物体検知システム1が音波発生装置10Aを備える場合、処理回路30は、音波発生装置10Aの制御回路14を制御して、以下の送波処理を実行する。送波処理は、調整回路13Aにより、複数のキャパシタC1から目標音圧に対応するキャパシタC1を所定のキャパシタとして選択し、駆動回路12Aの駆動用スイッチング素子T1を駆動して音波源11から音波を発生させる。
【0072】
このように、物体検知システム1は、音波発生装置10Aから出力される音波の音圧を、対象空間における物体の探索範囲に関連付けられた目標音圧に設定できる。つまり、物体までの距離に応じて音波の音圧を設定することが可能である。そのため、目標音圧を大きくすることで物体からの反射波を大きくできて、より遠い物体の検知が可能となる。一方で、目標音圧を小さくすることで、受波装置20への直達音の影響を低減して、より近い物体の検知が可能となる。以上述べたように、物体検知システム1によれば、物体の検知範囲を広げることができる。
【0073】
以上述べた物体検知システム1において、音波発生装置10Aは、通電により発熱して音波を発生する音波源11に所定のキャパシタC1から電力を供給する駆動用スイッチング素子T1を有する駆動回路12Aと、電圧が異なる複数の直流電源V1によりそれぞれ充電される複数のキャパシタC1の少なくとも一つを所定のキャパシタC1として選択することによって音波発生装置10Aからの音波の音圧を調整する調整回路13Aとを備える。送波処理は、調整回路13Aにより、複数のキャパシタC1から目標音圧に対応するキャパシタC1を所定のキャパシタC1として選択し、駆動回路12Aの駆動用スイッチング素子T1を駆動して音波源11から音波を発生させる。この構成によれば、音波発生装置10Aから出力される音波の音圧の調整が容易に行える。
【0074】
[2.変形例2]
図8は、変形例2の音波発生装置10Bの構成例の回路図である。音波発生装置10Bは、複数(図示例では3)の音波源11-1~11-3(以下、総称して符号11を付す)と、駆動回路12と、調整回路13Bとを備える。音波発生装置10Bは、音波発生装置10と同様に制御回路14を備えるが、図8では制御回路14の図示を省略している。
【0075】
複数の音波源11-1~11-3は、直流電源V1とグランドとの間に電気的に接続される。図8に示すように、複数の音波源11-1~11-3は、並列に接続される。
【0076】
駆動回路12は、直流電源V1により充電されるキャパシタC1、及び、所定の音波源11にキャパシタC1から電力を供給する駆動用スイッチング素子T1を有する。所定の音波源11は、複数の音波源11-1~11-3から選択される。駆動回路12は、所定の音波源11が音波を発生するように所定の音波源11に電力を供給する。また、駆動回路12は、抵抗器R1を備える。抵抗器R1は、キャパシタC1と直流電源V1との間に電気的に接続される過電流保護素子を構成する。
【0077】
調整回路13Bは、複数の音波源11-1~11-3の少なくとも一つを所定の音波源11として選択することによって音波発生装置10Bからの音波の音圧を調整する。図8に示すように、調整回路13Bは、キャパシタC1からの電力の供給先を複数の音波源11-1~11-3から選択する。より詳細には、調整回路13Bは、音波発生装置10Bが設定処理で設定された探索範囲に関連付けられた目標音圧で音波を発生するように、複数の音波源11-1~11-3の少なくとも一つをキャパシタC1に電気的に接続する。例えば、音波源11-1は、第1探索範囲に関連付けられた目標音圧を実現するために用いられる。音波源11-2は、第2探索範囲に関連付けられた目標音圧を実現するために用いられる。音波源11-3は、第3探索範囲に関連付けられた目標音圧を実現するために用いられる。
【0078】
調整回路13Bは、図8に示すように、複数(図示例では3)のスイッチSW2-1~SW2-3(以下、総称して符号SW2を付す)を備える。複数のスイッチSW2-1~SW2-3は、複数の音波源11-1~11-3とキャパシタCとの間に電気的に接続される。調整回路13Bでは、複数のスイッチSW2-1~SW2-3のうちの一つがオン、残りがオフとされる。これによって、複数の音波源11-1~11-3のうちの一つがキャパシタC1に電気的に接続される。
【0079】
制御回路14は、駆動回路12及び調整回路13Bを制御する。制御回路14は、調整回路13BのスイッチSW2を制御することによって、音波発生装置10Bが設定処理で設定された探索範囲に関連付けられた目標音圧で音波を発生するように、複数の音波源11の少なくとも一つをキャパシタC1に電気的に接続する。
【0080】
物体検知システム1が音波発生装置10Bを備える場合、処理回路30は、音波発生装置10Bの制御回路14を制御して、以下の送波処理を実行する。送波処理は、調整回路13Bにより、複数の音波源11から目標音圧に対応する音波源11を所定の音波源11として選択し、駆動回路12の駆動用スイッチング素子T1を駆動して所定の音波源11から音波を発生させる。
【0081】
このように、物体検知システム1は、音波発生装置10Bから出力される音波の音圧を、対象空間における物体の探索範囲に関連付けられた目標音圧に設定できる。つまり、物体までの距離に応じて音波の音圧を設定することが可能である。そのため、目標音圧を大きくすることで物体からの反射波を大きくできて、より遠い物体の検知が可能となる。一方で、目標音圧を小さくすることで、受波装置20への直達音の影響を低減して、より近い物体の検知が可能となる。以上述べたように、物体検知システム1によれば、物体の検知範囲を広げることができる。
【0082】
以上述べた物体検知システム1において、音波発生装置10Bは、それぞれ通電により発熱して異なる音圧の音波を発生する複数の音波源11と、直流電源V1により充電されるキャパシタC1、及び、所定の音波源11にキャパシタC1から電力を供給する駆動用スイッチング素子T1を有する駆動回路12と、複数の音波源11の少なくとも一つを所定の音波源11として選択することによって音波発生装置10Bからの音波の音圧を調整する調整回路13Bとを備える。送波処理は、調整回路13Bにより、複数の音波源11から目標音圧に対応する音波源11を所定の音波源11として選択し、駆動回路12の駆動用スイッチング素子T1を駆動して所定の音波源11から音波を発生させる。この構成によれば、音波発生装置10Bから出力される音波の音圧の調整が容易に行える。
【0083】
[3.その他の変形例]
一変形例では、音波発生装置10において、制御回路14は、駆動回路12を制御して音波源11から一連の音波を発生させるために、駆動信号S1を駆動用スイッチング素子T1に出力してよい。駆動用スイッチング素子T1のスイッチング周波数が、一連の音波の周波数に対応する。駆動用スイッチング素子T1のスイッチング周波数は、例えば、20kHz以上である。駆動用スイッチング素子T1のスイッチング周波数は、例えば、150kHz以下である。
【0084】
変形例1において、直流電源V1の数及びキャパシタC1の数は特に限定されない。調整回路13Aは、必要に応じて、2以上のキャパシタC1を音波源11に接続してよい。変形例1では、複数のキャパシタC1は音波源11に並列的に接続されているが、音波源11に直列的に接続されてよい。この場合、切替回路131によって、複数のキャパシタC1の直列接続の数を変えることで音波源11に印加される電圧を調整できる。変形例1の構成は、音波発生装置10及び音波発生装置10Bにも適用可能である。
【0085】
変形例2において、音波源11の数は特に限定されない。調整回路13Bは、必要に応じて、2以上の音波源11をキャパシタC1に接続してよい。変形例2では、複数の音波源11はキャパシタC1に並列的に接続されているが、キャパシタC1に直列的に接続されてよい。この場合、調整回路13Bによって、複数の音波源11の直列接続の数を変えることで音圧を調整できる。変形例2の構成は、音波発生装置10及び音波発生装置10Aにも適用可能である。
【0086】
一変形例では、抵抗器R1の代わりに別の過電流保護素子が用いられてよい。過電流保護素子の例としては、電流ヒューズ、ヒューズ抵抗及びバイメタル等が挙げられる。また、過電流保護素子は必須ではない。
【0087】
(態様)
上記実施の形態及び変形例から明らかなように、本開示は、下記の態様を含む。以下では、実施の形態との対応関係を明示するためだけに、符号を括弧付きで付している。
【0088】
第1の態様は、物体検知システム(1)であって、通電により発熱して音波を発生する音波発生装置(10;10A;10B)と、前記音波発生装置(10;10A;10B)からの音波を利用して対象空間の物体の検知をする物体検知処理を実行する処理回路(30)とを備える。前記物体検知処理は、前記対象空間における前記物体の探索範囲を設定する設定処理と、前記音波発生装置(10;10A;10B)が前記設定処理で設定された前記探索範囲に関連付けられた目標音圧で音波を発生するように前記音波発生装置(10;10A;10B)を制御する送波処理と、前記対象空間からの音波を受信する受波装置(20)から前記受波装置(20)で受信した音波を示す受波信号(R1,R2)を取得し、前記受波信号(R1,R2)に基づいて前記物体があるかどうかを判定する判定処理とを含む。この態様によれば、物体の検知範囲を広げることができる。
【0089】
第2の態様は、第1の態様に基づく物体検知システム(1)である。第2の態様において、前記目標音圧は、前記探索範囲が前記音波発生装置(10;10A;10B)から遠くなるほど、大きい。この態様によれば、物体の検知範囲を広げることができる。
【0090】
第3の態様は、第2の態様に基づく物体検知システム(1)である。第3の態様において、前記判定処理は、前記受波信号(R1,R2)の大きさが閾値(Vth)以上である場合に前記物体があると判定する。この態様によれば、物体の検知の処理を簡略化できる。
【0091】
第4の態様は、第3の態様に基づく物体検知システム(1)である。第4の態様において、前記目標音圧は、前記物体からの反射波(RW1,RW2,RW3)の大きさが、前記閾値(Vth)より大きい規定値以上となるように設定される。この態様によれば、距離による誤差の影響や雑音による誤検知の可能性を低減できて、物体の検知精度を向上できる。
【0092】
第5の態様は、第4の態様に基づく物体検知システム(1)である。第5の態様において、前記判定処理は、前記送波処理後に設定される不感帯においては、前記受波信号(R1,R2)に基づいて前記物体があるかどうかを判定しない。前記不感帯は、前記設定処理で設定された探索範囲に応じて設定される。この態様によれば、直達音(RW10)の大きさが閾値(Vth)を超えることによる誤検知を防止しながらも、物体の検知範囲を広げることができる。
【0093】
第6の態様は、第5の態様に基づく物体検知システム(1)である。第6の態様において、前記不感帯は、前記探索範囲が前記音波発生装置(10;10A;10B)から遠くなるほど、長く設定される。この態様によれば、直達音(RW10)の大きさが閾値(Vth)を超えることによる誤検知を防止しながらも、物体の検知範囲を広げることができる。
【0094】
第7の態様は、第1~第6の態様のいずれか一つに基づく物体検知システム(1)である。第7の態様において、前記設定処理は、前記判定処理によって前記物体がないと判定された場合に、前記探索範囲を変更する。この態様によれば、物体の検知の可能性を高くできる。
【0095】
第8の態様は、第7の態様に基づく物体検知システム(1)である。第8の態様において、前記設定処理は、前記判定処理によって前記物体がないと判定された場合に、前記探索範囲が前記音波発生装置(10;10A;10B)から遠ざかるように前記探索範囲を変更する。この態様によれば、物体の検知の可能性を高くできる。
【0096】
第9の態様は、第8の態様に基づく物体検知システム(1)である。第9の態様において、前記設定処理は、前記判定処理によって前記物体がないと判定された前記探索範囲が前記音波発生装置(10;10A;10B)から最も遠い場合に、前記探索範囲が前記音波発生装置(10;10A;10B)に近付くように前記探索範囲を変更する。この態様によれば、物体の検知の可能性を高くできる。
【0097】
第10の態様は、第1~第9の態様のいずれか一つに基づく物体検知システム(1)である。第10の態様において、前記判定処理は、前記物体があると判定した場合に前記受波信号(R1,R2)に基づいて前記物体までの距離を決定する。この態様によれば、物体までの距離が得られる。
【0098】
第11の態様は、第10の態様に基づく物体検知システム(1)である。第11の態様において、前記設定処理は、前記判定処理によって前記物体までの距離が決定された場合に、前記判定処理で決定された前記物体までの距離に基づいて前記探索範囲を設定する。この態様によれば、物体の検知の可能性を高くできる。
【0099】
第12の態様は、第1~第11の態様のいずれか一つに基づく物体検知システム(1)である。第12の態様において、前記音波発生装置(10)は、直流電源(V1)により充電されるキャパシタ(C1)、及び、通電により発熱して音波を発生する音波源(11)にキャパシタ(C1)から電力を供給する駆動用スイッチング素子(T1)を有する駆動回路(12)と、前記駆動回路(12)のキャパシタ(C1)の両端間電圧(V2)を調整することによって前記音波発生装置(10)からの音波の音圧を調整する調整回路(13)とを備える。前記送波処理は、前記調整回路(13)により、前記音波発生装置(10)からの音波の音圧が前記目標音圧となるように前記キャパシタ(C1)の両端間電圧(V2)を調整し、前記駆動回路(12)の駆動用スイッチング素子(T1)を駆動して前記音波源(11)から音波を発生させる。この態様によれば、音波発生装置(10)から出力される音波の音圧の調整が容易に行える。
【0100】
第13の態様は、第12の態様に基づく物体検知システム(1)である。第13の態様において、前記調整回路(13)は、前記直流電源(V1)と前記キャパシタ(C1)との間に電気的に接続されるインダクタ(L1)と、前記インダクタ(L1)と前記直流電源(V1)との直列回路に並列に電気的に接続される調整用スイッチング素子(T2)とを有する。前記調整回路(13)は、前記調整用スイッチング素子(T2)のオン期間(T2on)により前記キャパシタ(C1)の両端間電圧(V2)を調整する。この態様によれば、回路構成の簡素化が図れる。
【0101】
第14の態様は、第13の態様に基づく物体検知システム(1)である。第14の態様において、前記調整回路(13)は、ダイオード(D1)を有し、前記ダイオード(D1)のアノードは前記インダクタ(L1)に電気的に接続され、前記ダイオード(D1)のカソードは前記キャパシタ(C1)に電気的に接続される。この態様によれば、キャパシタ(C1)からインダクタ(L1)に電流が流れて意図せずにキャパシタ(C1)が放電してしまう可能性を低減できる。
【0102】
第15の態様は、第13又は第14の態様に基づく物体検知システム(1)である。第15の態様において、前記調整用スイッチング素子(T2)は、前記駆動用スイッチング素子(T1)のオン期間(T1on)はオンであり、前記駆動用スイッチング素子(T1)と同時にオンに切り替えられる。この態様によれば、音波の音圧の調整が容易になる。
【0103】
第16の態様は、第1~第11の態様のいずれか一つに基づく物体検知システム(1)である。第16の態様において、前記音波発生装置(10A)は、通電により発熱して音波を発生する音波源(11)に所定のキャパシタ(C1)から電力を供給する駆動用スイッチング素子(T1)を有する駆動回路(12A)と、電圧が異なる複数の直流電源(V1)によりそれぞれ充電される複数のキャパシタ(C1)の少なくとも一つを前記所定のキャパシタ(C1)として選択することによって前記音波発生装置(10A)からの音波の音圧を調整する調整回路(13A)とを備える。前記送波処理は、前記調整回路(13A)により、前記複数のキャパシタ(C1)から前記目標音圧に対応するキャパシタ(C1)を前記所定のキャパシタ(C1)として選択し、前記駆動回路(12A)の駆動用スイッチング素子(T1)を駆動して前記音波源(11)から音波を発生させる。この態様によれば、音波発生装置(10A)から出力される音波の音圧の調整が容易に行える。
【0104】
第17の態様は、第1~第11の態様のいずれか一つに基づく物体検知システム(1)である。第17の態様において、前記音波発生装置(10B)は、それぞれ通電により発熱して異なる音圧の音波を発生する複数の音波源(11)と、直流電源(V1)により充電されるキャパシタ(C1)、及び、所定の音波源(11)にキャパシタ(C1)から電力を供給する駆動用スイッチング素子(T1)を有する駆動回路(12)と、前記複数の音波源(11)の少なくとも一つを前記所定の音波源(11)として選択することによって前記音波発生装置(10B)からの音波の音圧を調整する調整回路(13B)とを備える。前記送波処理は、前記調整回路(13B)により、前記複数の音波源(11)から前記目標音圧に対応する音波源(11)を前記所定の音波源(11)として選択し、前記駆動回路(12)の駆動用スイッチング素子(T1)を駆動して前記所定の音波源(11)から音波を発生させる。この態様によれば、音波発生装置(10B)から出力される音波の音圧の調整が容易に行える。
【0105】
第18の態様は、第12~第17の態様のいずれか一つに基づく物体検知システム(1)である。第15の態様において、前記送波処理は、前記駆動用スイッチング素子(T1)のスイッチングによって前記音波発生装置(10;10A;10B)から一連の音波を発生させ、前記駆動用スイッチング素子(T1)のスイッチングの周波数は、20kHz以上である。この態様によれば、物体の検知精度を向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本開示は、音波発生装置に適用可能である。具体的には、音波を利用して物体の検知をする物体検知システムに、本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0107】
1 物体検知システム
10,10A,10B 音波発生装置
11 音波源
12,12A 駆動回路
13,13A,13B 調整回路
V1 直流電源
V2 両端間電圧
C1 キャパシタ
T1 駆動用スイッチング素子
T1on オン期間
L1 インダクタ
T2 調整用スイッチング素子
T2on オン期間
D1 ダイオード
20 受波装置
30 処理回路
R1,R2 受波信号
RW1,RW2,RW3 反射波
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8