(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】センサ装置
(51)【国際特許分類】
G01R 15/20 20060101AFI20240903BHJP
G01R 35/00 20060101ALI20240903BHJP
G01R 33/09 20060101ALI20240903BHJP
G01R 33/02 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
G01R15/20 B
G01R35/00 M
G01R33/09
G01R33/02 X
(21)【出願番号】P 2023520949
(86)(22)【出願日】2022-04-21
(86)【国際出願番号】 JP2022018493
(87)【国際公開番号】W WO2022239621
(87)【国際公開日】2022-11-17
【審査請求日】2023-09-25
(31)【優先権主張番号】P 2021082737
(32)【優先日】2021-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高▲瀬▼ 恭英
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-17700(JP,A)
【文献】特開2017-166890(JP,A)
【文献】国際公開第2015/146656(WO,A1)
【文献】特開2002-148131(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0250146(US,A1)
【文献】特開平3-225223(JP,A)
【文献】特開2004-310584(JP,A)
【文献】実開平5-40847(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/20
G01R 35/00
G01R 33/09
G01R 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出される物理量に応じて特性が変化するセンサ素子を少なくとも1つ備えるブリッジ回路と、
前記センサ素子の特性変化に応じて前記ブリッジ回路の検出信号出力端から出力されるセンサ検出信号を受信する検出信号受信回路と、
少なくともいずれか一方が状態を維持する時間に温度依存性を持つ第1出力状態と第2出力状態との各出力電圧を所定比で交互に出力する発振回路と、
前記発振回路の出力を平均化して平均化した電圧を前記ブリッジ回路のバイアス端に印加する平均化回路と
を備えるセンサ装置。
【請求項2】
前記発振回路は、
一端が所定の直流電位に接続された容量と、
前記発振回路の出力電圧が前記第1出力状態のときに所定のソース電流を前記容量の他端に注入する第1の制御電流源と、
前記発振回路の出力電圧が前記第2出力状態のときに所定のシンク電流を前記容量の他端から吸い出す第2の制御電流源と、
前記発振回路の出力状態に応じた基準電圧を生成する基準電圧生成回路と、
前記容量の他端の電圧と前記基準電圧生成回路から出力される前記基準電圧とを比較して前記発振回路の出力状態を前記第1出力状態または前記第2出力状態のいずれかに決定する比較回路と
を備えることを特徴とする請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
所定の前記ソース電流を調整する温度依存性調整信号が入力される第1の前記制御電流源に設けられる温度依存性調整入力端子、または、所定の前記シンク電流を調整する温度依存性調整信号が入力される第2の前記制御電流源に設けられる温度依存性調整入力端子の少なくとも一方と、
少なくともいずれか一方の前記温度依存性調整信号を記憶する記憶部と
を備えることを特徴とする請求項2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
第1レベル電圧および第2レベル電圧を生成する電圧レベル生成回路と、
前記発振回路が出力する前記第1出力状態の出力電圧を前記電圧レベル生成回路が生成する前記第1レベル電圧に変換し、前記発振回路が出力する前記第2出力状態の出力電圧を前記電圧レベル生成回路が生成する前記第2レベル電圧に変換する電圧レベル変換回路と
を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記電圧レベル生成回路は、電圧差が電源電圧に比例する前記第1レベル電圧および前記第2レベル電圧を生成することを特徴とする請求項4に記載のセンサ装置。
【請求項6】
前記センサ素子は、磁気感度を持つ抵抗素子であることを特徴とする請求項1から
請求項3のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ素子を備えるブリッジ回路の感度の温度特性を補償する機能を備えるセンサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のセンサ装置としては、例えば、特許文献1に開示されたブリッジ検出回路を備えるものがある。
【0003】
このセンサ装置は、1つの半導体磁気抵抗素子と3つの基準抵抗がブリッジ接続されたブリッジ回路から構成され、ブリッジ回路で検出される検出信号を増幅回路で増幅する。増幅回路で増幅された出力電圧は同期加算回路で一定電源電圧と同期加算されて、ブリッジ回路の電源入力端子に負帰還される。この負帰還によってブリッジ検出回路の感度の直線性が改善される。また、同期加算回路に入力される一定電源電圧が、トランジスタと抵抗によって構成される温度補償回路によって生成されることで、ブリッジ検出回路の感度の直線性補償に併せて温度補償が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の特許文献1に開示されたセンサ装置では、半導体磁気抵抗素子の温度特性と、温度補償回路を構成するトランジスタの温度特性とが相反する方向に働いて、感度の温度補償が行われる。このため、半導体磁気抵抗素子の温度依存性がトランジスタの温度特性と相反する方向で一致しない場合に、ブリッジ回路の感度の温度補償を行うことは難しい。また、半導体磁気抵抗素子の温度依存性がトランジスタの温度特性と相反する方向で一致する場合でも、温度補償のできる感度範囲は、トランジスタの温度特性で対応できる限られた範囲に限定されてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、
検出される物理量に応じて特性が変化するセンサ素子を少なくとも1つ備えるブリッジ回路と、
センサ素子の特性変化に応じてブリッジ回路の検出信号出力端から出力されるセンサ検出信号を受信する検出信号受信回路と、
少なくともいずれか一方が状態を維持する時間に温度依存性を持つ第1出力状態と第2出力状態との各出力電圧を所定比で交互に出力する発振回路と、
発振回路の出力を平均化して平均化した電圧をブリッジ回路のバイアス端に印加する平均化回路と
を備えて、センサ装置を構成した。
【0007】
本構成によれば、ブリッジ回路のバイアス端には、発振回路から所定比で出力されて平均化回路によって平均化される、第1出力状態と第2出力状態との各出力電圧の中間電圧が、バイアス電圧として印加される。各出力電圧の第1出力状態と第2出力状態とは少なくともいずれか一方が状態を維持する時間に温度依存性を持つため、このバイアス電圧は、第1出力状態と第2出力状態との時間比を表すデューティ比が、その分数の分母側に温度依存性を持つ。この温度依存性は、例えば、温度をT、温度係数をαとすると、1/(1+αT)と表される。したがって、センサ素子が温度に対して1次の温度依存性(1+αT)を持つ場合には、ブリッジ回路のバイアス端に上記のバイアス電圧を印加することで、ブリッジ回路の温度依存性は上記のバイアス電圧が持つ温度依存性によって相殺される。
【0008】
このため、各出力電圧の第1出力状態と第2出力状態との時間比を調整して所定のデューティ比を持つバイアス電圧をブリッジ回路のバイアス端に印加することで、従来のようにトランジスタといった特定の半導体素子の温度特性を利用せずに、ブリッジ回路の感度の温度補償を広い感度範囲にわたって任意に行えるようになる。
【発明の効果】
【0009】
このため、本発明によれば、ブリッジ回路の感度の温度補償を広い感度範囲にわたって任意に行えるセンサ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態によるセンサ装置の概略構成を示す回路図である。
【
図2】第1の実施形態によるセンサ装置を構成する発振回路から出力される発振信号の波形を示すグラフである。
【
図3】本発明の第2の実施形態によるセンサ装置の概略構成を示す回路図である。
【
図4】本発明の第3の実施形態によるセンサ装置の概略構成を示す回路図である。
【
図5】本発明の第4の実施形態によるセンサ装置の概略構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明のセンサ装置を実施するための形態について、説明する。
【0012】
図1は、本発明の第1の実施形態によるセンサ装置1Aの概略構成を示す回路図である。
【0013】
センサ装置1Aは、ブリッジ回路2、バイアス回路3および検出信号受信回路4から構成される。
【0014】
ブリッジ回路2は、センサを構成し、本実施形態では、4つのセンサ素子R1,R2,R3,R4がブリッジ接続されて構成されている。各センサ素子R1,R2,R3,R4は、検出する物理量に応じて特性が変化する、例えば、磁気感度を持つ抵抗素子から構成される。これらのセンサ素子R1,R2,R3,R4は、同図では抵抗に矢印を付した記号で表され、抵抗値が検出物理量に応じて変化することを示している。このような抵抗素子としては、磁気抵抗効果によって周囲の磁界変化に応じてその電気抵抗値が変化する、TMR(トンネル磁気抵抗効果:Tunnel magnetoresistance effect)素子や、AMR(異方性磁気抵抗効果:Anisotropic magnetoresistance effect)素子、ホール素子などがある。本実施形態では、ブリッジ回路2が4つのセンサ素子R1,R2,R3,R4から構成されている場合について説明するが、ブリッジ回路2は、少なくとも1つのセンサ素子を備えて構成されればよい。
【0015】
センサ素子R1とセンサ素子R3との接続点、および、センサ素子R2とセンサ素子R4との接続点はそれぞれバイアス端2a,2bを構成し、バイアス端2aにはバイアス回路3によってバイアス電圧Vbiasが印加され、バイアス端2bは接地される。また、センサ素子R1とセンサ素子R2との接続点、および、センサ素子R3とセンサ素子R4との接続点はそれぞれ検出信号出力端2c,2dを構成し、検出信号出力端2c,2dにはセンサ素子R1,R2,R3,R4で検出される物理量の変化がセンサ検出信号として現れる。各センサ素子R1,R2,R3,R4の抵抗値は等しく設定されている。
【0016】
検出信号受信回路4は、センサ素子R1,R2,R3,R4の特性変化に応じてブリッジ回路2の検出信号出力端2c,2dから出力されるセンサ検出信号を受信する。検出信号受信回路4は、例えば、検出信号出力端2c,2dから出力されるセンサ検出信号を受信して増幅する増幅回路から構成され、センサ検出信号を増幅した検出出力信号を出力する。
【0017】
バイアス回路3は、ブリッジ回路2の作動に要するバイアス電圧Vbiasを生成して、ブリッジ回路2を励起する。本実施形態では、バイアス回路3は、発振回路31と平均化回路32とから構成され、ブリッジ回路2を励起すると共に、ブリッジ回路2の感度の周囲温度変化による温度変動を相殺して、ブリッジ回路2の感度の温度特性を補償する。
【0018】
発振回路31は、例えば、
図2のグラフに示す波形の発振信号Vを出力する。同グラフの横軸は時間t、縦軸は発振回路31の出力電圧Vを表す。発振信号Vは、第1出力状態の出力電圧Vref1と第2出力状態の出力電圧Vref2とが、所定比で交互に繰り返す波形を持っている。出力電圧Vref1の第1出力状態の継続時間と、出力電圧Vref2の第2出力状態の継続時間との少なくともいずれか一方は温度依存性を持つ。発振信号Vのデューティ比Dは、第1出力状態の出力電圧Vref1の継続時間をt1、第2出力状態の出力電圧Vref2の継続時間をt2とすると、次の(1)式に表される。
D=t2/(t1+t2) …(1)
【0019】
平均化回路32は、例えばローパスフィルタによって構成され、発振回路31の出力電圧を平均化して、平均化した電圧をバイアス電圧Vbiasとしてブリッジ回路2のバイアス端2aに印加する。
【0020】
このような本実施形態によるセンサ装置1Aによれば、ブリッジ回路2のバイアス端2aには、発振回路31から所定比で出力されて平均化回路32によって平均化される、第1出力状態と第2出力状態との各出力電圧Vref1,Vref2の中間の電圧が、バイアス電圧Vbiasとして印加される。各出力電圧Vref1,Vref2の第1出力状態と第2出力状態とは少なくともいずれか一方が状態を維持する時間に温度依存性を持つため、このバイアス電圧Vbiasは、第1出力状態と第2出力状態との時間比を(1)式のように表すデューティ比Dに比例し、その分数の分母側に温度依存性を持つ。この温度依存性は、例えば、温度をT、温度係数をαとすると、1/(1+αT)と表される。
【0021】
したがって、センサ素子R1,R2,R3,R4が温度に対して1次の温度依存性(1+αT)を持つ場合には、ブリッジ回路2のバイアス端2aに上記のバイアス電圧Vbiasを印加することで、ブリッジ回路2の検出信号出力端2c,2dに現れるセンサ検出信号の温度依存性S、つまり、ブリッジ回路2の感度の温度依存性Sは、次の(2)式に表されるように、バイアス電圧Vbiasが持つ温度依存性1/(1+αT)によって相殺される。
S={1/(1+αT)}×(1+αT)=1 …(2)
【0022】
このため、本実施形態のセンサ装置1Aによれば、各出力電圧Vref1,Vref2の第1出力状態と第2出力状態との時間比を調整して所定のデューティ比Dに比例するバイアス電圧Vbiasをブリッジ回路2のバイアス端2aに印加することで、従来のようにトランジスタといった特定の半導体素子の温度特性を利用せずに、ブリッジ回路2の感度の温度補償を広い感度範囲にわたって任意に行えるようになる。
【0023】
図3は、本発明の第2の実施形態によるセンサ装置1Bの概略構成を示す回路図である。
図3において
図1と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0024】
第2の実施形態によるセンサ装置1Bは、発振回路31が、容量31a、第1の制御電流源31b、第2の制御電流源31c、基準電圧生成回路31dおよび比較回路31eを備えて構成される。その他の構成は第1の実施形態によるセンサ装置1Aと同様である。
【0025】
容量31aは、一端が所定の直流電位に接続され、他端が第1の制御電流源31bおよび第2の制御電流源31cに接続されている。第1の制御電流源31bは、発振回路31の出力電圧Vが電圧Vref1で第1出力状態のときに、所定のソース電流I1を容量31aの他端に注入する。第2の制御電流源31cは、発振回路31の出力電圧Vが電圧Vref2で第2出力状態のときに、所定のシンク電流I2を容量31aの他端から吸い出す。基準電圧生成回路31dは、発振回路31の出力状態に応じた基準電圧Va,Vbを生成する。つまり、基準電圧生成回路31dは、発振回路31の出力状態が第1出力状態のときに基準電圧Vaを生成し、発振回路31の出力状態が第2出力状態のときに基準電圧Vbを生成する。比較回路31eは、容量31aの他端の電圧と基準電圧生成回路31dから出力される基準電圧Va,Vbとを比較して、発振回路31の出力状態を第1出力状態または第2出力状態のいずれかに決定する。
【0026】
このような第2の実施形態のセンサ装置1Bでは、第1の制御電流源31bおよび第2の制御電流源31cは発振回路31の出力電圧Vで制御されており、発振回路31の出力が第1出力状態のときには、第1の制御電流源31bにより、容量31aの他端にソース電流I1が注入される。容量31aの他端にソース電流I1が注入されることで、容量3aの他端の電圧は、時間の経過に伴って上昇する。第1の制御電流源31bによる容量31aへのソース電流I1の注入によって容量3aの他端の電圧が上昇し、基準電圧生成回路31dが発振回路31の第1出力状態に応じて生成する基準電圧Vaに達すると、比較回路31eによって発振回路31の出力状態が第2出力状態に遷移する。基準電圧生成回路31dは発振回路31の出力電圧Vで制御されている。
【0027】
発振回路31の出力状態が第1出力状態から第2出力状態に切り替わると、第2の制御電流源31cにより、容量31aの他端からシンク電流I2が吸い出される。容量31aの他端からシンク電流I2が吸い出されることで、容量3aの他端の電圧は、時間の経過に伴って下降する。容量3aの他端の電圧が、この電圧降下により、基準電圧生成回路31dが発振回路31の第2出力状態に応じて生成する基準電圧Vbに達すると、比較回路31eによって発振回路31の出力状態が第1出力状態に遷移する。
【0028】
発振回路31の出力状態は、容量31aへの電流注入および容量31aからの電流吸出が行われて、上記の動作が繰り返されることで、第1出力状態と第2出力状態とに所定のデューティ比Dで交互に切り替わる。したがって、第2の実施形態のセンサ装置1Bによれば、簡単な回路構成で、温度に応じた所定のデューティ比Dに比例するバイアス電圧Vbiasをブリッジ回路2のバイアス端2aに印加することができる。
【0029】
このデューティ比Dは、センサ素子R1,R2,R3,R4が例えばTMR素子である場合、次のようにして算出することができる。TMR素子が印加される磁界Bに対して出力する電圧Voutは、TMR素子に印加される電圧Vbiasと、TMR素子の磁束感度δとの両方に比例し、次の(3)式に表される。
Vout=δ・Vbias・B …(3)
【0030】
また、磁束感度δが1次の温度係数Tc1[ppm/K]を持つ場合、TMR素子の温度変動を相殺して温度依存性のない出力電圧VoutをTMR素子から得るには、TMR素子に印加される電圧Vbiasが、次の(4)式に温度Tを関数として表される温度依存性を持つ電圧Vbias(T)であればよい。ここで、電圧V0はTMR素子に印加される電圧Vbiasの室温での値である。
Vbias(T)={1/(1+Tc1)}×V0 …(4)
【0031】
また、ソース電流I1およびシンク電流I2で容量31aを充放電することで、発振回路31から
図2に示す波形で出力される発振信号Vの、第1出力状態の時間t1は次の(5)式、第2出力状態の時間t2は次の(6)式に表される。ここで、C0は容量31aの容量値、τcdは比較回路31eにおける比較遅延時間である。
t1={C0(Vref2-Vref1)/I1}+τcd …(5)
t2={C0(Vref2-Vref1)/I2}+τcd …(6)
【0032】
したがって、発振回路31から
図2に示すように出力される発振信号Vのデューティ比Dは、(1)式から次の(7)式によって算出される。
D=t2/(t1+t2)
=[1+{τcd・I2/C0(Vref2-Vref1)}]/[1+I2/I1+{2τcd・I2/C0(Vref2-Vref1)}] …(7)
【0033】
ここで、簡単のため、比較回路31eにおける比較遅延時間τcdは十分小さいものとして0とすると、デューティ比Dは次の(8)式に表される。
D=1/(1+I2/I1) …(8)
【0034】
このデューティ比Dの発振信号Vを平均化回路32で平均化することで、デューティ比Dに比例したバイアス電圧Vbiasが得られる。(8)式において、シンク電流I2が温度に比例する電流であって第2の出力電圧Vref2の第2出力状態が温度依存性を持ち、ソース電流I1が温度依存性が無い電流であって第1の出力電圧Vref1の第1出力状態が温度依存性を持たない場合、デューティ比Dは、その分数の分母側に温度依存性1/(1+αT)を持つことになる。したがって、センサ素子R1,R2,R3,R4が温度に対して持つ1次の温度依存性(1+αT)、つまり、ブリッジ回路2の感度の温度依存性Sは、上述の(2)式に表されるように、バイアス電圧Vbiasが持つ温度依存性1/(1+αT)によって相殺される。
【0035】
したがって、第2の実施形態のセンサ装置1Bによっても、第1の実施形態によるセンサ装置1Aと同様な作用効果が奏され、従来のようにトランジスタといった特定の半導体素子の温度特性を利用せずに、ブリッジ回路2の感度の温度補償を広い感度範囲にわたって精度良くしかも簡単な回路構成で行えるようになる。
【0036】
図4は、本発明の第3の実施形態によるセンサ装置1Cの概略構成を示す回路図である。
図4において
図3と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0037】
第3の実施形態によるセンサ装置1Cは、第2の制御電流源31cに温度依存性調整入力端子31fが設けられ、バイアス回路3が記憶部33を備える。その他の構成は第2の実施形態によるセンサ装置1Bと同様である。第2の制御電流源31cに設けられた温度依存性調整入力端子31fには、シンク電流I2を調整する温度依存性調整信号Rが入力される。記憶部33はこの温度依存性調整信号Rを記憶する。
【0038】
第3の実施形態のセンサ装置1Cによれば、第2の制御電流源31cに設けられる温度依存性調整入力端子31fに記憶部33から入力する温度依存性調整信号Rを、ブリッジ回路2の個体のバラツキに応じたものにすることができる。温度依存性調整入力端子31fに入力する温度依存性調整信号Rをブリッジ回路2の個体のバラツキに応じたものにすることで、第2の制御電流源31cによって容量31aから吸い出されるシンク電流I2は、個体のバラツキを相殺する値に設定される。これにより、第2出力状態の継続時間t2の温度依存性が調整されて、発振信号Vのデューティ比Dが個体バラツキを含んだ温度依存性を相殺するデューティ比に調整される。
【0039】
したがって、第3の実施形態のセンサ装置1Cによれば、温度および個体のバラツキに応じたバイアス電圧Vbiasをブリッジ回路2のバイアス端2aに印加することができる。このため、第3の実施形態のセンサ装置1Cによっても、第1の実施形態によるセンサ装置1Aと同様な作用効果が奏され、従来のようにトランジスタといった特定の半導体素子の温度特性を利用せずに、ブリッジ回路2の感度の温度補償を広い感度範囲にわたって任意にしかも簡単な回路構成でかつ精度良く行えるようになる。
【0040】
なお、上記の第3の実施形態では、第2の制御電流源31cに温度依存性調整入力端子31fが設けられ、記憶部33が、その温度依存性調整入力端子31fに入力する温度依存性調整信号Rを記憶するように構成した。しかし、温度依存性調整入力端子31fは、所定のソース電流I1を調整する温度依存性調整信号Rが入力される第1の制御電流源31b、または、所定のシンク電流I2を調整する温度依存性調整信号Rが入力される第2の制御電流源31cの少なくとも一方に設けられればよい。また、記憶部33は、少なくともいずれか一方の温度依存性調整信号Rを記憶すればよい。
【0041】
このような変形例の構成では、第1の制御電流源31bに設けられる温度依存性調整入力端子31f、または、第2の制御電流源31cに設けられる温度依存性調整入力端子31fに記憶部33から入力する温度依存性調整信号Rを、ブリッジ回路2の個体のバラツキに応じたものにすることができる。各温度依存性調整入力端子31fに入力する温度依存性調整信号Rをブリッジ回路2の個体のバラツキに応じたものにすることで、ソース電流I1、または、シンク電流I2が、ブリッジ回路2の個体のバラツキを相殺するように設定される。これにより、第1出力状態または第2出力状態の継続時間t1またはt2が調整されて、バイアス電圧Vbiasの温度依存性がブリッジ回路2の個体のバラツキを相殺するように調整される。
【0042】
このため、この変形例によっても、第3の実施形態によるセンサ装置1Cと同様な作用効果が奏され、ブリッジ回路2の感度の温度補償を広い感度範囲にわたって任意にしかも簡単な回路構成でかつ精度良く行えるようになる。
【0043】
図5は、本発明の第4の実施形態によるセンサ装置1Dの概略構成を示す回路図である。
図5において
図4と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0044】
第4の実施形態によるセンサ装置1Dは、バイアス回路3が、電圧レベル生成回路34と電圧レベル変換回路35とを備える。その他の構成は第3の実施形態によるセンサ装置1Cと同様である。電圧レベル生成回路34は、第1レベル電圧V1、および、第1レベル電圧V1より電圧レベルの高い第2レベル電圧V2を生成する。電圧レベル変換回路35は、発振回路31が出力する第1出力状態の出力電圧Vref1を電圧レベル生成回路34が生成する第1レベル電圧V1に変換し、発振回路31が出力する第2出力状態の出力電圧Vref2を電圧レベル生成回路34が生成する第2レベル電圧V2に変換する。
【0045】
第4の実施形態のセンサ装置1Dによれば、発振回路31が出力する第1出力状態および第2出力状態の各出力電圧Vref1およびVref2は、電圧レベル変換回路35により、電圧レベル生成回路34が生成する第1レベル電圧V1および第2レベル電圧V2に変換される。したがって、ブリッジ回路2のバイアス端2aに印加されるバイアス電圧Vbiasの大きさは、第1レベル電圧V1および第2レベル電圧V2間の電圧差(=V2-V1)に比例したものとなる。このため、ブリッジ回路2の検出信号出力端2c,2dから出力されるセンサ検出信号、すなわち、ブリッジ回路2の感度の大きさも、第1レベル電圧V1および第2レベル電圧V2間の電圧差に比例したものとなる。
【0046】
このため、第4の実施形態のセンサ装置1Dによれば、ブリッジ回路2の感度の温度補償を広い感度範囲にわたって任意にしかも簡単な回路でかつ精度良く行えると共に、ブリッジ回路2の感度の大きさを、電圧レベル生成回路34が生成する第1レベル電圧V1および第2レベル電圧V2間の電圧差に比例したものとすることができる。
【0047】
上記の第4の実施形態において、電圧差が電源電圧VDDに比例する第1レベル電圧V1および第2レベル電圧V2を電圧レベル生成回路34が生成するように構成することで、平均化回路32から出力されるバイアス電圧Vbiasは、発振回路31から出力される発振信号Vのデューティ比Dが(8)式に示される場合、次の(9)式で表される。
Vbias=VDD/(1+I2/I1) …(9)
【0048】
このため、この変形例によれば、ブリッジ回路2の感度の大きさは、電源電圧VDDに比例したものとなる。このため、電源電圧VDDの変動に比例するレシオメトリックなブリッジ感度が得られるセンサ装置1Dを提供することができる。
【符号の説明】
【0049】
1A,1B,1C,1D…センサ装置
2…ブリッジ回路
2a,2b…バイアス端
2c,2d…検出信号出力端
3…バイアス回路
4…検出信号受信回路
31…発振回路
31a…容量
31b…第1の制御電流源
31c…第2の制御電流源
31d…基準電圧生成回路
31e…比較回路
31f…温度依存性調整入力端子
32…平均化回路
33…記憶部
34…電圧レベル生成回路
35…電圧レベル変換回路
R1,R2,R3,R4…センサ素子