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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】無線電力伝送システムおよび受電器
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/27 20160101AFI20240903BHJP
【FI】
H02J50/27
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023536712
(86)(22)【出願日】2022-07-14
(86)【国際出願番号】 JP2022027673
(87)【国際公開番号】W WO2023002906
(87)【国際公開日】2023-01-26
【審査請求日】2023-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2021118873
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 洋昌
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-89209(JP,A)
【文献】特開2005-303528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
適宜な導電率を有する電磁波遮蔽部材によって全体が包囲された構造体と、少なくとも1つの送電部と、少なくとも1つの受電部と、を備え、前記構造体における共振モードを利用する無線電力伝送システムであって、
前記受電部は、誘電体基板と整流回路と受電アンテナとを備える受電器から構成され、
前記受電アンテナは、前記誘電体基板の上で同一平面内に配置される受電アンテナ配線を含み、
前記受電アンテナ配線の一端は、前記整流回路に接続されており、
前記受電アンテナ配線の前記整流回路に接続されている一端とは異なる他端は、開放端となっており、
前記誘電体基板の平面形状は、線対称な2N角形(Nは2以上の整数)であり、
前記受電アンテナ配線は、前記誘電体基板の隣接した異なるN辺に沿って配置されており、
前記受電器は、前記誘電体基板の上に配置されるヘリカルアンテナをさらに備え、
前記ヘリカルアンテナは、前記受電アンテナ配線の他端またはその近傍で前記受電アンテナ配線と電気的に接続されている、無線電力伝送システム。
【請求項2】
適宜な導電率を有する電磁波遮蔽部材によって全体が包囲された構造体と、少なくとも1つの送電部と、少なくとも1つの受電部と、を備え、前記構造体における共振モードを利用する無線電力伝送システムであって、
前記受電部は、誘電体基板と整流回路と受電アンテナとを備える受電器から構成され、
前記受電アンテナは、前記誘電体基板の上で同一平面内に配置される受電アンテナ配線を含み、
前記受電アンテナ配線の一端は、前記整流回路に接続されており、
前記受電アンテナ配線の前記整流回路に接続されている一端とは異なる他端は、開放端となっており、
前記誘電体基板の平面形状は、線対称な2N角形(Nは2以上の整数)であり、
前記受電アンテナ配線は、前記誘電体基板の隣接した異なるN辺に沿って配置されており、
前記受電器は、前記誘電体基板と直交する方向に配置される立体アンテナをさらに備え、
前記立体アンテナは、前記受電アンテナ配線の他端またはその近傍で前記受電アンテナ配線と電気的に接続されている、無線電力伝送システム。
【請求項3】
適宜な導電率を有する電磁波遮蔽部材によって全体が包囲された構造体と、少なくとも1つの送電部と、少なくとも1つの受電部と、を備え、前記構造体における共振モードを利用する無線電力伝送システムであって、
前記受電部は、誘電体基板と整流回路と受電アンテナとを備える受電器から構成され、
前記受電アンテナは、前記誘電体基板の上で同一平面内に配置される受電アンテナ配線を含み、
前記受電アンテナ配線の一端は、前記整流回路に接続されており、
前記受電アンテナ配線の前記整流回路に接続されている一端とは異なる他端は、開放端となっており、
前記誘電体基板の平面形状は、線対称な2N角形(Nは2以上の整数)であり、
前記受電アンテナ配線は、前記誘電体基板の隣接した異なるN辺に沿って配置されており、
前記受電器は、前記誘電体基板の上に配置されるヘリカルアンテナと、前記誘電体基板と直交する方向に配置される立体アンテナと、をさらに備え、
前記ヘリカルアンテナおよび前記立体アンテナは、各々、前記受電アンテナ配線の他端またはその近傍で前記受電アンテナ配線と電気的に接続されている、無線電力伝送システム。
【請求項4】
前記ヘリカルアンテナの中心軸は、前記受電アンテナ配線が延伸する方向と直交している、請求項またはに記載の無線電力伝送システム。
【請求項5】
前記誘電体基板の平面形状は、矩形であり、
前記受電アンテナ配線は、前記誘電体基板の隣接した異なる2辺に沿って配置されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の無線電力伝送システム。
【請求項6】
前記受電アンテナは、前記誘電体基板の外周に沿って配置される2本の前記受電アンテナ配線を含み、
各々の前記受電アンテナの他端は、前記誘電体基板の異なる辺に配置されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の無線電力伝送システム。
【請求項7】
前記受電アンテナは、前記誘電体基板の外周に沿って配置される1本の前記受電アンテナ配線を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の無線電力伝送システム。
【請求項8】
前記送電部は、モノポールモードで給電される、請求項1~のいずれか1項に記載の無線電力伝送システム。
【請求項9】
前記送電部は、マイクロストリップアンテナを備える、請求項に記載の無線電力伝送システム。
【請求項10】
適宜な導電率を有する電磁波遮蔽部材によって全体が包囲された構造体と、少なくとも1つの送電部と、少なくとも1つの受電部と、を備え、前記構造体における共振モードを利用する無線電力伝送システムの、前記受電部を構成する受電器であって、
前記受電器は、誘電体基板と整流回路と受電アンテナとを備え、
前記受電アンテナは、前記誘電体基板の上で同一平面内に配置される受電アンテナ配線を含み、
前記受電アンテナ配線の一端は、前記整流回路に接続されており、
前記受電アンテナ配線の前記整流回路に接続されている一端とは異なる他端は、開放端となっており、
前記誘電体基板の平面形状は、線対称な2N角形(Nは2以上の整数)であり、
前記受電アンテナ配線は、前記誘電体基板の隣接した異なるN辺に沿って配置されており、
前記受電器は、前記誘電体基板の上に配置されるヘリカルアンテナをさらに備え、
前記ヘリカルアンテナは、前記受電アンテナ配線の他端またはその近傍で前記受電アンテナ配線と電気的に接続されている、受電器。
【請求項11】
適宜な導電率を有する電磁波遮蔽部材によって全体が包囲された構造体と、少なくとも1つの送電部と、少なくとも1つの受電部と、を備え、前記構造体における共振モードを利用する無線電力伝送システムの、前記受電部を構成する受電器であって、
前記受電器は、誘電体基板と整流回路と受電アンテナとを備え、
前記受電アンテナは、前記誘電体基板の上で同一平面内に配置される受電アンテナ配線を含み、
前記受電アンテナ配線の一端は、前記整流回路に接続されており、
前記受電アンテナ配線の前記整流回路に接続されている一端とは異なる他端は、開放端となっており、
前記誘電体基板の平面形状は、線対称な2N角形(Nは2以上の整数)であり、
前記受電アンテナ配線は、前記誘電体基板の隣接した異なるN辺に沿って配置されており、
前記受電器は、前記誘電体基板と直交する方向に配置される立体アンテナをさらに備え、
前記立体アンテナは、前記受電アンテナ配線の他端またはその近傍で前記受電アンテナ配線と電気的に接続されている、受電器。
【請求項12】
適宜な導電率を有する電磁波遮蔽部材によって全体が包囲された構造体と、少なくとも1つの送電部と、少なくとも1つの受電部と、を備え、前記構造体における共振モードを利用する無線電力伝送システムの、前記受電部を構成する受電器であって、
前記受電器は、誘電体基板と整流回路と受電アンテナとを備え、
前記受電アンテナは、前記誘電体基板の上で同一平面内に配置される受電アンテナ配線を含み、
前記受電アンテナ配線の一端は、前記整流回路に接続されており、
前記受電アンテナ配線の前記整流回路に接続されている一端とは異なる他端は、開放端となっており、
前記誘電体基板の平面形状は、線対称な2N角形(Nは2以上の整数)であり、
前記受電アンテナ配線は、前記誘電体基板の隣接した異なるN辺に沿って配置されており、
前記受電器は、前記誘電体基板の上に配置されるヘリカルアンテナと、前記誘電体基板と直交する方向に配置される立体アンテナと、をさらに備え、
前記ヘリカルアンテナおよび前記立体アンテナは、各々、前記受電アンテナ配線の他端またはその近傍で前記受電アンテナ配線と電気的に接続されている、受電器。
【請求項13】
前記ヘリカルアンテナの中心軸は、前記受電アンテナ配線が延伸する方向と直交している、請求項10または12に記載の受電器。
【請求項14】
前記誘電体基板の平面形状は、矩形であり、
前記受電アンテナ配線は、前記誘電体基板の隣接した異なる2辺に沿って配置されている、請求項10~12のいずれか1項に記載の受電器。
【請求項15】
前記受電アンテナは、前記誘電体基板の外周に沿って配置される2本の前記受電アンテナ配線を含み、
各々の前記受電アンテナの他端は、前記誘電体基板の異なる辺に配置されている、請求項10~12のいずれか1項に記載の受電器。
【請求項16】
前記受電アンテナは、前記誘電体基板の外周に沿って配置される1本の前記受電アンテナ配線を含む、請求項10~12のいずれか1項に記載の受電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線電力伝送システムに関する。具体的には、本発明は、高周波電磁波を送電する送電器を用いる無線電力伝送システムに関する。本発明の無線電力伝送システムは、倉庫内、工場内、車両内部など、壁面で囲まれた空間内に配置されたデバイスなどへ高い送電効率で無線電力を供給する際に、受電器の設置方位の自由度を高めるための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IOT(Internet of Things)デバイスの爆発的な増加に伴って、これらのデバイスへの電力供給方法に課題が生じている。膨大なデバイスへの配線接続は困難であり、また、電池を電源とする場合には消耗した電池の交換に多大な労力を要する問題がある。これらの問題を解決するために、無線にて電力を伝送する技術が期待されている。
【0003】
特許文献1には、金属で囲まれた空間内を共振器に見立て、共振器固有の共振周波数で送電部から電磁波を照射し、共振器内の受電器へ送電する無線電力伝送システムが開示されている。特許文献1では、第一の受電器と第二の受電器が平行に対向されて配置されており、これを導体柱で接続する構造を有した受電器が開示されている。この構造によって送電部と受電部の見通しが悪くとも受電部に高効率で電力を送電できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-89209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
金属で囲まれた空間内を共振器に見立て、共振器固有の共振周波数で送電する無線電力伝送システムにおいて、既存の方法では受電器が高い設置自由度を持つことが可能となる、適切な送受電アンテナの設計が明らかとなっていない。
【0006】
特許文献1に記載の方式の場合、第一の受電器と第二の受電器が平行に対向されて配置されており、これを導体柱で接続する受電器の構造が示されている。文献中には受電可能な方位については記述がないために、受電可能な方位については明らかにされておらず、受電可能な方位を高める工夫が施されていない。また、第一の受電器と第二の受電器が立体的に配置されるために、IOTデバイスに取り付けるには厚すぎる課題がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、受電器の設置方位に高い自由度を有する無線電力伝送システムを提供することを目的とする。さらに、本発明は、上記無線電力伝送システムの受電部を構成する受電器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の無線電力伝送システムは、適宜な導電率を有する電磁波遮蔽部材によって全体が包囲された構造体と、少なくとも1つの送電部と、少なくとも1つの受電部と、を備え、上記構造体における共振モードを利用する無線電力伝送システムである。上記受電部は、誘電体基板と整流回路と受電アンテナとを備える受電器から構成される。上記受電アンテナは、上記誘電体基板の上で同一平面内に配置される受電アンテナ配線を含む。上記受電アンテナ配線の一端は、上記整流回路に接続されている。上記受電アンテナ配線の上記整流回路に接続されている一端とは異なる他端は、開放端となっている。上記誘電体基板の平面形状は、線対称な2N角形(Nは2以上の整数)であり、上記受電アンテナ配線は、上記誘電体基板の隣接した異なるN辺に沿って配置されている。
【0009】
本発明の受電器は、適宜な導電率を有する電磁波遮蔽部材によって全体が包囲された構造体と、少なくとも1つの送電部と、少なくとも1つの受電部と、を備え、上記構造体における共振モードを利用する無線電力伝送システムの、上記受電部を構成する受電器である。上記受電器は、誘電体基板と整流回路と受電アンテナとを備える。上記受電アンテナは、上記誘電体基板の上で同一平面内に配置される受電アンテナ配線を含む。上記受電アンテナ配線の一端は、上記整流回路に接続されている。上記受電アンテナ配線の上記整流回路に接続されている一端とは異なる他端は、開放端となっている。上記誘電体基板の平面形状は、線対称な2N角形(Nは2以上の整数)であり、上記受電アンテナ配線は、上記誘電体基板の隣接した異なるN辺に沿って配置されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、受電器の設置方位に高い自由度を有する無線電力伝送システムを提供することができる。さらに、本発明によれば、上記無線電力伝送システムの受電部を構成する受電器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る無線電力伝送システムの一例を示す構成図である。
図2】送電部3の一例である送電部3Aを示す模式図である。
図3】送電部3の別の一例である送電部3Bを示す模式図である。
図4】送電部3Bの変形例である送電部3Cを示す模式図である。
図5】受電部4の一例である受電部4Aを示す模式図である。
図6】受電部4の別の一例である受電部4Bを示す模式図である。
図7A】受電部4Aを用いた場合の規格化アンテナ長さL/λと電力伝送効率の関係を示すグラフである。
図7B図7Aの拡大図である。
図8】受電部4Aの変形例1である受電部4Cを示す模式図である。
図9】受電部4Aの変形例2である受電部4Dを示す模式図である。
図10】受電部4Aの変形例3である受電部4Eを示す模式図である。
図11】本発明の実施例1に係る送電部3aの模式図である。
図12】開放空間においてダイポールモードで給電した場合の電界分布を示す模式図である。
図13】開放空間においてモノポールモードで給電した場合の電界分布を示す模式図である。
図14】閉空間においてダイポールモードで給電した場合の電界分布を示す模式図である。
図15】閉空間においてモノポールモードで給電した場合の電界分布を示す模式図である。
図16】本発明の実施例2に係る受電部4aの模式図である。
図17】本発明の実施例2に係る無線電力伝送システムにおける、受電アンテナ方位に対する電力伝送効率の関係を示すグラフである。
図18】本発明の実施例3に係る無線電力伝送システムにおける、受電アンテナ方位に対する電力伝送効率の関係を示すグラフである。
図19】受電器周囲の磁界分布を示す模式図である。
図20】本発明の実施例4に係る無線電力伝送システムにおける、受電アンテナ方位に対する電力伝送効率の関係を示すグラフである。
図21】本発明の実施例5に係る無線電力伝送システムにおける、受電アンテナ方位に対する電力伝送効率の関係を示すグラフである。
図22】本発明の実施例4~6に係る無線電力伝送システムにおける、受電アンテナ方位に対する電力伝送効率の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
本明細書において、要素間の関係性を示す用語(例えば「垂直」、「平行」、「直交」など)、および、要素の形状を示す用語は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
【0014】
図1は、本発明に係る無線電力伝送システムの一例を示す構成図である。図1において、無線電力伝送システム1は、適宜な導電率を有する電磁波遮蔽部材2によって全体が包囲された構造体を共振器に見立て、その内部に、少なくとも1つの送電部3と、少なくとも1つの受電部4と、を備える。すなわち、無線電力伝送システム1は無線電力伝送を実現する構造物の全体を指している。なお、構造体の形状は直方体形状に限定されるものではなく、例えば、ZX面が五角形である五角柱形状、ZX面が台形である四角柱形状、ZX面が半円である半円柱形状などであってもよい。
【0015】
無線電力伝送システム1は、構造体における共振モードを利用する。無線電力伝送システム1は電磁波遮蔽部材2で遮蔽された空間を有するため、共振器として考えることができる。共振器の水平方向の長さがa(X軸方向)およびb(Y軸方向)であり、垂直方向の長さがc(Z軸方向)である場合、共振周波数fは数式1のように決定することができる。
【0016】
[数式1]
=v/(2π×(μ×ε1/2)×{(mπ/a)+(nπ/b)+(pπ/c)1/2
【0017】
ここで、vは光速、μは比透磁率、εは比誘電率、m、n、pはそれぞれ整数を示している。
【0018】
電磁波遮蔽部材2は導電性を有していれば特に限定されないが、好ましくは銅、アルミニウム、鉄、ステンレス、ニッケルなどの金属材料が挙げられる。あるいは、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウムスズ(ITO)などの導電性酸化物材料、グラファイト、有機導電材料などが挙げられる。これらは上記部材からなる複数の層で構成されてもよい。また、導電性を有していれば合金または混合物であっても構わない。加えて、電力供給する周波数において電磁波遮蔽部材として動作するのであれば、形状は板状、メッシュ状、膜状、ポーラス状などであってもよい。また、電磁波遮蔽部材2は表面保護などの目的で、電磁波透過素材で被覆してあっても構わない。なお、電磁波遮蔽部材2における電磁波遮蔽は、無線電力伝送に供される周波数においてのみ電磁波を遮蔽できればよい。すなわち、無線電力伝送用周波数とは異なる周波数での通信に対して遮蔽しない使い方も可能である。
【0019】
図2は、送電部3の一例である送電部3Aを示す模式図である。送電部3Aなどの送電部3は、例えば、送電アンテナ取付部5と送電アンテナ配線6とを備える送電器から構成される。送電アンテナ取付部5は金属製であり、電磁波遮蔽部材2からなる壁面に対して概ね垂直に設置されることが好ましい。また、送電アンテナ取付部5は、それ自体が送電アンテナの一部として機能してもよい。送電アンテナ取付部5は、電磁波遮蔽部材2と電気的に接触しないように設置されつつ、電磁波遮蔽部材2を貫通して共振器(構造体)の外側に設置された送電回路に電気的に接続される。このとき、接続部と送電回路の接続には、適宜SMA(Sub Miniature Type A)端子などのコネクタを介してもよい。なお、上記送電回路と送電部3との間のインピーダンスを調整する整合回路は、共振器内外のどちらに設置しても構わない。
【0020】
送電アンテナ配線6は、プリント基板などの上に配線してもよいが、送電アンテナ取付部5を折り曲げて配線にしても構わない。送電アンテナ配線6は、電磁波遮蔽部材2からなる共振器の壁面に対して概ね水平になるように形成されることが好ましい。
【0021】
図2に示す送電部3Aのように、送電部3は、モノポールモードで給電されることが好ましい。この場合、構造体の空間内に電磁波を閉じ込め、共振させることによって、強い指向性を持った電界が得られる。電界ベクトルは一方向であるため、送電部に指向性アンテナを用いることで、無線電力伝送システム1の性能を向上させることができる。例えば、スリットアレーアンテナなどによって電界をチルトさせようとしても、伝送効率が低下するだけであり、電界はチルトしない。
【0022】
図3は、送電部3の別の一例である送電部3Bを示す模式図である。図4は、送電部3Bの変形例である送電部3Cを示す模式図である。図3に示す送電部3Bおよび図4に示す送電部3Cは、図2に示す送電部3Aと同様、モノポールモードで給電される。図3に示す送電部3Bおよび図4に示す送電部3Cのように、送電部3は、マイクロストリップアンテナを備えることが好ましい。図3および図4に示す送電アンテナ配線6aは、マイクロストリップアンテナ構造を有する。具体的には、誘電体基板7の両面に導体が存在し、裏面(図3および図4に示されていない側の面)はグランドに接続されており、おもて面は放射素子になっている。マイクロストリップアンテナは、裏面がグランドに接続されている構造であるため、前面だけに電界を強く放射させる特徴がある。したがって、電力伝送効率を高めることができる。このように、マイクロストリップアンテナを備える送電部3は、空洞共振器内で利用する用途には有効である。
【0023】
送電部3がマイクロストリップアンテナを備える場合、誘電体基板7のおもて面が放射素子になっており、裏面に導体が配置されない形態であってもよい。この場合、電磁波遮蔽部材2が上記裏面グランドと同じように機能する。また、おもて面を構成する放射素子が自立できるほどの厚さを持っている場合には、誘電体基板7を備えない構成としてもよい。
【0024】
なお、マイクロストリップアンテナは、図3に示すような直線偏波構造でもよく、図4に示すような円偏波構造でもよい。図4に示す送電アンテナ配線6aでは、スリット6bなどの縮退分離素子がある。
【0025】
図5は、受電部4の一例である受電部4Aを示す模式図である。受電部4Aなどの受電部4は、例えば、誘電体基板7と整流回路8と受電アンテナ9とを備える受電器から構成される。受電部4には、必要に応じてスイッチ、整合回路等が取り付けられてもよい。
【0026】
図5に示す受電部4Aでは、受電アンテナ9は、誘電体基板7の上で同一平面内に配置される2本の受電アンテナ配線9aおよび9bを含む。受電アンテナ配線9aおよび9bの一端は、整流回路8に接続されている。受電アンテナ配線9aおよび9bの整流回路8に接続されている一端とは異なる他端は、開放端となっている。
【0027】
受電アンテナ配線9aおよび9bは、誘電体基板7の外周に沿って配置されている。各々の受電アンテナ配線9aおよび9bの他端は、誘電体基板7の異なる辺に配置されている。すなわち、受電アンテナ配線9aおよび9bは、誘電体基板7の外周に沿って互いに反対方向に配置されている。誘電体基板7の外周に沿った部分の受電アンテナ配線9aおよび9bの長さは、誘電体基板7の外周の概ね半分の長さである。
【0028】
誘電体基板7の平面形状は矩形であり、受電アンテナ配線9aおよび9bは、誘電体基板7の隣接した異なる2辺に沿って配置されている。受電アンテナ配線9aおよび9bの他端は、誘電体基板7の端まで配置されている。ここで、「矩形」とは、長方形または正方形を意味する。
【0029】
受電アンテナ配線9aは、1箇所の屈曲部を有している。受電アンテナ配線9aの屈曲部は、1段でもよいし、2段以上でもよい。受電アンテナ配線9aの屈曲部には丸みが付いていてもよい。一方、受電アンテナ配線9bは、2箇所の屈曲部を有している。受電アンテナ配線9bの各屈曲部は、1段でもよいし、2段以上でもよい。受電アンテナ配線9bの各屈曲部には丸みが付いていてもよい。
【0030】
図6は、受電部4の別の一例である受電部4Bを示す模式図である。図6に示す受電部4Bでは、受電アンテナ9は、誘電体基板7の上で同一平面内に配置される1本の受電アンテナ配線9cを含む。受電アンテナ配線9cの一端は、整流回路8に接続されている。受電アンテナ配線9cの整流回路8に接続されている一端とは異なる他端は、開放端となっている。
【0031】
受電アンテナ配線9cは、誘電体基板7の外周に沿って配置されている。誘電体基板7の外周に沿った部分の受電アンテナ配線9cの長さは、誘電体基板7の外周の概ね半分の長さである。
【0032】
誘電体基板7の平面形状が矩形であり、受電アンテナ配線9cは、誘電体基板7の隣接した異なる2辺に沿って配置されている。受電アンテナ配線9cの他端は、誘電体基板7の端まで配置されている。
【0033】
受電アンテナ配線9cは、2箇所の屈曲部を有している。受電アンテナ配線9cの各屈曲部は、1段でもよいし、2段以上でもよい。受電アンテナ配線9cの各屈曲部には丸みが付いていてもよい。
【0034】
受電部4Aの受電アンテナ配線9aおよび9b、並びに、受電部4Bの受電アンテナ配線9cのように、誘電体基板の平面形状は、線対称な2N角形(Nは2以上の整数)であり、受電アンテナ配線は、誘電体基板の隣接した異なるN辺に沿って配置されていることを特徴とする。例えば、誘電体基板の平面形状が矩形である場合、誘電体基板の平面形状は、線対称な四角形(Nは2)であり、受電アンテナ配線は、誘電体基板の隣接した異なる2辺に沿って配置されている。
【0035】
受電アンテナ配線の一端から他端までの長さLは、IOTデバイスの電池充電に必要な最低限の送電効率を満たすために、共振周波数における電磁波の波長λとの関係でL/λ>0.011を満たすことが好ましい。IOTデバイスの駆動や、IOTデバイス用の電池への充電を行うためには、無線電力伝送効率が1%以上であることが望ましい。受電部4Aを用いた場合の規格化アンテナ長さL/λと電力伝送効率の関係を図7Aに示す。図7Aの拡大図である図7Bより、L/λ>0.011を満たすと、無線電力伝送効率が1%以上得られることが分かる。なお、受電部4Aにおいては、受電アンテナ配線9aの一端から他端までの長さと受電アンテナ配線9bの一端から他端までの長さを合計した長さがLに相当する。
【0036】
なお、送電効率を向上させることができるため、受電アンテナ配線の他端が誘電体基板の端まで配置されていることが好ましい。
【0037】
誘電体基板の平面形状は矩形に限定されるものではなく、誘電体基板7の平面形状が線対称な2N角形(Nは2以上の整数)であればよい。
【0038】
本明細書において、「線対称な2N角形」には、数学的に厳密な線対称な形状だけでなく、実質的に線対称と同視し得る形状も含まれる。例えば、一部の角が欠けた形状、一部の角に丸みが付いた形状であってもよい。
【0039】
図5に示す受電部4Aまたは図6に示す受電部4Bのような受電部4では、電界ベクトルの方向に受電アンテナが向くように受電アンテナ配線を同一平面内に配置することで、受電方位依存性の小さい特性を得ることができる。このような受電部4では、特許文献1のような複雑な切り替え回路は不要となる。
【0040】
図8は、受電部4Aの変形例1である受電部4Cを示す模式図である。図8に示す受電部4Cのように、受電部4を構成する受電器は、誘電体基板7の上に配置されるヘリカルアンテナ10をさらに備えてもよい。図8に示す受電部4Cでは、ヘリカルアンテナ10は、受電アンテナ配線9bの他端またはその近傍で受電アンテナ配線9bと電気的に接続されている。受電アンテナ配線9bの先端またはその近傍でヘリカルアンテナ10を誘電体基板7の上に配置することによって、受電アンテナ9の基板面に垂直に入射する電界に対して感度を持たせることが可能となる。
【0041】
ヘリカルアンテナ10の中心軸は、受電アンテナ配線9bが延伸する方向に対して傾斜していてもよいが、図8に示すように受電アンテナ配線9bが延伸する方向と直交していることが好ましい。
【0042】
図8に示す受電部4Cでは、受電アンテナ9は、図5と同様に2本の受電アンテナ配線9aおよび9bを含み、ヘリカルアンテナ10は、受電アンテナ配線9bの他端またはその近傍で受電アンテナ配線9bと電気的に接続されているが、ヘリカルアンテナ10は、受電アンテナ配線9aの他端またはその近傍で受電アンテナ配線9aと電気的に接続されていてもよい。また、受電アンテナ9は、図6と同様に1本の受電アンテナ配線9cを含んでもよく、その場合、ヘリカルアンテナ10は、受電アンテナ配線9cの他端またはその近傍で受電アンテナ配線9cと電気的に接続されていてもよい。
【0043】
図9は、受電部4Aの変形例2である受電部4Dを示す模式図である。図9に示す受電部4Dのように、受電部4を構成する受電器は、誘電体基板7と直交する方向に配置される立体アンテナ11をさらに備えてもよい。図9に示す受電部4Dでは、立体アンテナ11は、受電アンテナ配線9aの他端またはその近傍で受電アンテナ配線9aと電気的に接続されている。受電アンテナ配線9aの先端またはその近傍で立体アンテナ11を誘電体基板7に対して垂直となるように配置することによって、受電アンテナ9の基板面に垂直に入射する電界に対して感度を持たせることが可能となる。
【0044】
図9に示す受電部4Dでは、受電アンテナ9は、図5と同様に2本の受電アンテナ配線9aおよび9bを含み、立体アンテナ11は、受電アンテナ配線9aの他端またはその近傍で受電アンテナ配線9aと電気的に接続されているが、立体アンテナ11は、受電アンテナ配線9bの他端またはその近傍で受電アンテナ配線9bと電気的に接続されていてもよい。また、受電アンテナ9は、図6と同様に1本の受電アンテナ配線9cを含んでもよく、その場合、立体アンテナ11は、受電アンテナ配線9cの他端またはその近傍で受電アンテナ配線9cと電気的に接続されていてもよい。
【0045】
図10は、受電部4Aの変形例3である受電部4Eを示す模式図である。図10に示す受電部4Eのように、受電部4を構成する受電器は、誘電体基板7の上に配置されるヘリカルアンテナ10と、誘電体基板7と直交する方向に配置される立体アンテナ11と、をさらに備えてもよい。図10に示す受電部4Eでは、ヘリカルアンテナ10は、受電アンテナ配線9bの他端またはその近傍で受電アンテナ配線9bと電気的に接続されており、立体アンテナ11は、受電アンテナ配線9aの他端またはその近傍で受電アンテナ配線9aと電気的に接続されている。ヘリカルアンテナ10および立体アンテナ11の両方を配置することによって、上述した性能を更に高めることが可能となる。
【0046】
ヘリカルアンテナ10の中心軸は、受電アンテナ配線9bが延伸する方向に対して傾斜していてもよいが、図10に示すように受電アンテナ配線9bが延伸する方向と直交していることが好ましい。
【0047】
図10に示す受電部4Eでは、受電アンテナ9は、図5と同様に2本の受電アンテナ配線9aおよび9bを含み、ヘリカルアンテナ10は、受電アンテナ配線9bの他端またはその近傍で受電アンテナ配線9bと電気的に接続されており、立体アンテナ11は、受電アンテナ配線9aの他端またはその近傍で受電アンテナ配線9aと電気的に接続されているが、ヘリカルアンテナ10は、受電アンテナ配線9aの他端またはその近傍で受電アンテナ配線9aと電気的に接続されていてもよく、立体アンテナ11は、受電アンテナ配線9bの他端またはその近傍で受電アンテナ配線9bと電気的に接続されていてもよい。また、受電アンテナ9は、図6と同様に1本の受電アンテナ配線9cを含んでもよく、その場合、ヘリカルアンテナ10は、受電アンテナ配線9cの他端またはその近傍で受電アンテナ配線9cと電気的に接続されていてもよく、立体アンテナ11は、受電アンテナ配線9cの他端またはその近傍で受電アンテナ配線9cと電気的に接続されていてもよい。
【0048】
本明細書において、「受電アンテナ配線の他端の近傍」とは、受電アンテナ配線の他端から、誘電体基板の外周の長さの10%以内の位置を意味する。
【0049】
なお、図5に示す受電部4A、図6に示す受電部4B、図8に示す受電部4C、図9に示す受電部4Dおよび図10に示す受電部4Eには図示されていないが、誘電体基板7上に通信モジュールが実装されていてもよく、センサモジュールを構成する回路が構成されていてもよい。すなわち、誘電体基板7をIOTデバイスの回路基板の一部として利用してもよい。
【0050】
以上のように送電部3および受電部4のアンテナを設計することによって、受電器の設置方位に高い自由度を有する無線電力伝送システムを実現できる。
【0051】
本発明の無線電力伝送システムは上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の応用、変更を加えることが可能である。
【実施例
【0052】
以下、本発明の無線電力伝送システムをより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0053】
[実施例1]
実施例1では、電磁波遮蔽部材2で構成される共振器(構造体)と、送電部3と、受電部4とを備える、図1に示す無線電力伝送システム1を考える。
【0054】
送電部3として、図11に示す送電部3aまたは図2に示す送電部3Aを利用する。図11に示す送電部3aは、ダイポールモードで給電される送電アンテナを備える。一方、図2に示す送電部3Aは、モノポールモードで給電される送電アンテナを備える。
【0055】
図11または図2に示すように送電アンテナの背面にのみ電磁波遮蔽部材2を持ち、それ以外の方位を開放した空間において、ダイポールモードで給電した場合の電界分布を図12に示し、モノポールモードで給電した場合の電界分布を図13に示す。図12および図13に示すように、いずれの場合も送電アンテナの周囲で渦を形成するように電界が形成される。
【0056】
図12および図13に示す配置において、すべての方位を電磁波遮蔽部材2で覆った場合の共振周波数における電界分布を図14および図15に示す。図11および図2に示す同じような送電アンテナの形状であっても、図14に示すダイポールモードで給電した場合と異なり、図15に示すモノポールモードで給電した場合には、極めて高い直進性を持つ電界分布になる。したがって、モノポールモードで給電を行うことによって、受電器内におけるアンテナ設計が容易となり、電力伝送効率を高めることができる。
【0057】
[実施例2]
実施例2では、図1に示す無線電力伝送システム1の共振器空間内において、実施例1の送電アンテナにモノポールモードで給電を行う条件における電力伝送効率を評価した。
【0058】
受電部4として、図5に示す受電部4Aまたは図16に示す受電部4aを利用する。図16に示す受電アンテナ構造は、いわゆるダイポールアンテナ構造である。
【0059】
このように準備された無線電力伝送システム1において、送電部3と受電部4との間の電力伝送効率を、解析シミュレーションソフトFemtet(登録商標)を利用して解析した。
【0060】
本発明の実施例2に係る無線電力伝送システムにおける、受電アンテナ方位に対する電力伝送効率の関係を図17に示す。受電アンテナ方位のうち、受電アンテナ9を形成する面を受電アンテナ面方位、整流回路8から受電アンテナ9が延びる方向を受電アンテナ配線方位としてここでは定義する。例えば、図1に示す状態の受電部4では、受電アンテナ面方位がZX面、受電アンテナ配線方位がX方向である。
【0061】
図17より、図5に示す構造を有する受電アンテナの場合、YZ面(誘電体基板に垂直に電界が入射する方位)以外の受電アンテナ方位では、受電器の方位依存性が小さい。一方、図16に示す構造を有する受電アンテナの場合、YZ面だけでなく、ZX面/X方向およびXY面/X方向においても、ほとんど感度を持っていない。
【0062】
以上より、図5に示す受電アンテナを備える受電部4Aを利用することによって、特許文献1に記載されている配線構造を利用する必要がなくなり、同時に、受電許容方位を増やすことができる。
【0063】
[実施例3]
実施例3では、図2に示す送電部3Aに代えて、図3に示す送電部3Bまたは図4に示す送電部3Cを利用する。
【0064】
本発明の実施例3に係る無線電力伝送システムにおける、受電アンテナ方位に対する電力伝送効率の関係を図18に示す。
【0065】
図18より、図3または図4に示すような直進性の強いマイクロストリップアンテナ構造を有する送電部3B(直線偏波構造)または送電部3C(円偏波構造)を利用することで、図2に示すような直線構造を有する送電部3Aを利用するよりも、すべての受電アンテナ方位において高効率に電力を伝送することができる。
【0066】
[実施例4]
実施例1に示すように、モノポールモード給電を用いることで、直進性の高い電界分布が得られる。そのため、受電器をYZ面に向けると受電し難くなる。しかし、受電器周囲の磁界分布に注目すると、図19に示すように誘電体基板に平行な成分を持つ磁界分布が得られる。そこで、受電アンテナ配線の先端またはその近傍にヘリカルアンテナを配置することによって、YZ面に受電器を向けた場合においても、一部の電磁波を受電することが可能となる。
【0067】
実施例4では、図5に示す受電部4Aに代えて、図8に示す受電部4Cを利用する。また、送電部3として、図3に示す送電部3Bを利用する。
【0068】
本発明の実施例4に係る無線電力伝送システムにおける、受電アンテナ方位に対する電力伝送効率の関係を図20に示す。
【0069】
図20より、ヘリカルアンテナを備える図8に示す受電部4Cを利用する場合には、ヘリカルアンテナを備えない図5に示す受電部4Aを利用する場合に比べて、YZ面においても受電感度を持つようになる。
【0070】
[実施例5]
実施例1に示すように、モノポールモード給電を用いることで、直進性の高い電界分布が得られる。そのため、受電器をYZ面に向けると受電し難くなる。そこで、受電アンテナ配線の先端またはその近傍に、誘電体基板に対して垂直となるように立体アンテナを配置することによって、YZ面に受電器を向けた場合においても、電磁波を受電することが可能となる。
【0071】
実施例5では、図5に示す受電部4Aに代えて、図9に示す受電部4Dを利用する。また、送電部3として、図3に示す送電部3Bを利用する。
【0072】
本発明の実施例5に係る無線電力伝送システムにおける、受電アンテナ方位に対する電力伝送効率の関係を図21に示す。
【0073】
図21より、立体アンテナを備える図9に示す受電部4Dを利用する場合には、立体アンテナを備えない図5に示す受電部4Aを利用する場合に比べて、YZ面においても受電感度を持つようになる。
【0074】
[実施例6]
実施例1に示すように、モノポールモード給電を用いることで、直進性の高い電界分布が得られる。そのため、受電器をYZ面に向けると受電し難くなる。これに対して、実施例4に示すように、受電アンテナ配線の先端またはその近傍にヘリカルアンテナを配置したり、実施例5に示すように、受電アンテナ配線の先端またはその近傍に、誘電体基板に対して垂直となるように立体アンテナを配置したりすることによって、YZ面に対する受電感度を与えることができる。
【0075】
実施例6では、図5に示す受電部4Aに代えて、図10に示す受電部4Eを利用する。また、送電部3として、図3に示す送電部3Bを利用する。
【0076】
本発明の実施例4~6に係る無線電力伝送システムにおける、受電アンテナ方位に対する電力伝送効率の関係を図22に示す。
【0077】
図22より、ヘリカルアンテナおよび立体アンテナの両方を備える図10に示す受電部4Eを利用する場合には、すべての受電アンテナ方位に対してより強い受電感度を持つようになる。さらに、図10に示す受電部4Eを利用する場合には、ZX面およびXY面の方位依存性が小さくなっている。
【符号の説明】
【0078】
1 無線電力伝送システム
2 電磁波遮蔽部材
3、3A、3B、3C、3a 送電部
4、4A、4B、4C、4D、4E、4a 受電部
5 送電アンテナ取付部
6、6a 送電アンテナ配線
6b スリット
7 誘電体基板
8 整流回路
9 受電アンテナ
9a、9b、9c 受電アンテナ配線
10 ヘリカルアンテナ
11 立体アンテナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22