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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】動力伝達装置の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/08 20060101AFI20240903BHJP
   B60K 6/442 20071001ALI20240903BHJP
   B60K 6/547 20071001ALI20240903BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20240903BHJP
   B60W 20/30 20160101ALI20240903BHJP
   F02D 29/00 20060101ALI20240903BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20240903BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20240903BHJP
   F16D 11/08 20060101ALI20240903BHJP
   F16D 23/10 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
B60W10/08 900
B60K6/442 ZHV
B60K6/547
B60W10/06 900
B60W20/30
F02D29/00 C
F02D29/00 G
B60L15/20 K
B60L50/16
F16D11/08
F16D23/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023556199
(86)(22)【出願日】2022-09-21
(86)【国際出願番号】 JP2022035061
(87)【国際公開番号】W WO2023074197
(87)【国際公開日】2023-05-04
【審査請求日】2023-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2021174271
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】矢倉 洋史
(72)【発明者】
【氏名】安部 洋則
(72)【発明者】
【氏名】荻野 大蔵
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-67161(JP,A)
【文献】国際公開第2020/152943(WO,A1)
【文献】特開2019-59324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/08
B60K 6/442
B60K 6/547
B60W 10/06
B60W 20/30
F02D 29/00
B60L 15/20
B60L 50/16
F16D 11/08
F16D 23/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源から車軸に至る動力伝達経路に設けられ、
前記駆動源から駆動トルクが伝達される駆動ギアと、前記駆動ギアの軸方向に引き抜き可能であって、前記駆動ギアと噛み合う一方、前記車軸から減速トルクが伝達される従動ギアと、を含み、
前記駆動ギアと前記従動ギアは互いに噛み合って回転することで、駆動ギア又は従動ギアのいずれか一方から他方に駆動トルク又は減速トルクが伝達され、前記駆動ギアから前記従動ギアが引き抜かれることで、前記駆動トルク又は前記減速トルクの伝達が遮断される、動力伝達装置の制御装置であって、
前記駆動源は、エンジンと、前記エンジンによって駆動されるジェネレータと、を含み、
前記動力伝達装置の制御装置は、前記駆動ギアと前記従動ギアとが噛み合って回転している場合において、前記駆動ギアから前記従動ギアを引き抜く時に、前記駆動ギアの軸線上において、前記ジェネレータのトルクが前記エンジンの駆動トルクに近づくように、前記ジェネレータを制御する制御装置であり、
アクセル全閉から予め設定されたアクセル開度に至るまでの間で前記駆動ギアから前記従動ギアを引き抜く場合には、発電を停止し、前記予め設定されたアクセル開度からアクセル全開に至るまでの間で前記駆動ギアから前記従動ギアを引き抜く場合には、アクセル開度に応じて発電量が増加するように、前記エンジンと前記ジェネレータを制御する一方、
前記ジェネレータから電力が供給される駆動用バッテリの電池残量が予め定められた閾値よりも少ない場合には、前記予め設定されたアクセル開度を全閉側に移動させ、前記電池残量が前記閾値よりも多い場合には、前記予め設定されたアクセル開度を全開側に移動させる、
動力伝達装置の制御装置。
【請求項3】
アクセルの全開時に前記駆動ギアから前記従動ギアを引き抜く場合には、前記ジェネレータが車両の必要電力を発電するとともに、前記駆動ギアの軸線上において、前記ジェネレータのトルクに前記エンジンのトルクを加算したトルクが0に近づくように、前記ジェネレータと前記エンジンを制御する
請求項1又は2に記載の動力伝達装置の制御装置。
【請求項4】
前記駆動源は、モータを含み、
前記駆動ギアと前記従動ギアとが噛み合って回転している場合において、前記駆動ギアから前記従動ギアを引き抜く時に、前記駆動ギアの軸線上において、前記モータの駆動トルクが前記車軸の減速トルクに近づくように、前記モータを制御する、
請求項3に記載の動力伝達装置の制御装置。
【請求項5】
前記車軸の減速トルクは、前記従動ギアから車軸に至る動力伝達経路のイナーシャと前記従動ギアの回転数変化率とを積算することで求める、請求項4に記載の動力伝達装置の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、動力伝達装置の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジンと、エンジンの出力側に配置され、エンジンが出力したトルクを駆動輪側へ伝達する自動変速機と、エンジンと自動変速機との間に配置されたジェネレータと、エンジンと自動変速機とのトルクの伝達を選択的に遮断するクラッチ機構と、自動変速機の出力側に配置され駆動輪にトルクを伝達する走行用モータとを備えたハイブリッド車両が開示されている。
【0003】
かかるハイブリッド車両は、エンジンを停止した状態で、走行用モータが出力するモータトルクを駆動輪に伝達して駆動力を発生させるEV走行モード、及び、クラッチ機構を解放した状態でエンジンを運転し、エンジントルクでジェネレータを駆動して発電させるとともに、走行用モータのモータトルクを駆動輪に伝達して駆動力を発生させるシリーズ走行モード、並びに、クラッチ機構を係合した状態でエンジンを運転し、エンジントルク及び走行用モータのモータトルクを駆動輪に伝達して駆動力を発生させるパラレル走行モードのいずれかの走行モードを設定することが可能である。
【0004】
したがって、ハイブリッド車両の走行中にパラレル走行モードからシリーズ走行モードに切り替える場合には、クラッチ機構の回転中にクラッチ機構を係合した状態から解放した状態に切り替える必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-67161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、クラッチ機構がギアクラッチで構成され、エンジントルク(駆動トルク)が伝達される駆動ギアと、駆動ギアの軸方向に引き抜き可能であって、駆動ギアと噛み合う従動ギアと、を含む場合には、駆動ギアと噛み合って回転している従動ギアを駆動ギアから引き抜くことで、クラッチ機構の回転中にクラッチ機構が係合した状態から解放した状態に切り替えられる。
【0007】
しかしながら、駆動ギアと従動ギアは各歯の幅方向にバックテーパ面が設けられている。バックテーパ面は、各歯の幅方向内側から外側に向けて歯が漸次厚くなり、歯と歯の間隙が漸次狭くなることで設けられている。このため、駆動ギアと従動ギアとが噛み合って回転している場合において、駆動ギアと従動ギアのトルク差が大きいと、駆動ギアから従動ギアを引き抜くために大きな力が必要となり、駆動ギアから従動ギアを引き抜くことが困難となる。
【0008】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、駆動ギアと従動ギアとが噛み合って回転している場合において、駆動ギアから従動ギアを引き抜くために必要な力を小さくできる動力伝達装置の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る車両の動力伝達装置の制御装置は、駆動源から車軸に至る動力伝達経路に設けられ、前記駆動源から駆動トルクが伝達される駆動ギアと、前記駆動ギアの軸方向に引き抜き可能であって、前記駆動ギアと噛み合う一方、前記車軸から減速トルクが伝達される従動ギアと、を含み、前記駆動ギアと前記従動ギアとが噛み合って回転することで、駆動ギア又は従動ギアのいずれか一方から他方に駆動トルク又は減速トルクが伝達され、前記駆動ギアから前記従動ギアが引き抜かれることで、前記駆動トルク又は前記減速トルクの伝達が遮断される、動力伝達装置の制御装置であって、前記駆動ギアと前記従動ギアとが噛み合って回転している場合において、前記駆動ギアから前記従動ギアを引き抜く時に、前記駆動ギアと前記従動ギアのトルク差が0に近づくように、前記駆動源を制御する。
【0010】
上記(1)の構成によれば、駆動ギアと従動ギアのトルク差が小さくなり、駆動ギアから従動ギアを引き抜くために必要な力を小さくできる。
【0011】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、前記駆動源は、エンジンと、前記エンジンによって駆動されるジェネレータと、を含み、前記駆動ギアと前記従動ギアとが噛み合って回転している場合において、前記駆動ギアから前記従動ギアを引き抜く時に、前記駆動ギアのトルクが前記従動ギアのトルクに近づくように、前記ジェネレータを制御する。
【0012】
上記(2)の構成によれば、駆動ギアと従動ギアのトルク差が小さくなるので、駆動ギアから従動ギアを引き抜くために必要な力を小さくできる。
【0013】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、前記駆動ギアと前記従動ギアとが噛み合って回転している場合において、前記駆動ギアから前記従動ギアを引き抜く時に、前記駆動ギアの軸線上において、前記ジェネレータのトルクが前記エンジンの駆動トルクに近づくように、前記ジェネレータを制御する。
【0014】
上記(3)の構成によれば駆動ギアと従動ギアのトルク差が小さくなるので、駆動ギアから従動ギアを引き抜くために必要な力を小さくできる。
【0015】
(4)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、前記駆動ギアと前記従動ギアとが噛み合って回転している場合において、前記駆動ギアから前記従動ギアを引き抜く時に、前記駆動ギアの軸線上において、前記ジェネレータのトルクが前記エンジンの駆動トルクに前記車軸の減速トルクを加算したトルクに近づくように、前記ジェネレータを制御する。
【0016】
上記(4)の構成によれば、車軸から従動ギアに伝達される減速トルクが大きくても、駆動ギアと従動ギアのトルク差が小さくなり、駆動ギアから従動ギアを引き抜くために必要な力を小さくできる。
【0017】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)の構成において、前記車軸の減速トルクは、前記従動ギアから車軸に至る動力伝達経路のイナーシャと前記従動ギアの回転数変化率とを積算することで求める。
【0018】
上記(5)の構成によれば、駆動ギアの軸線上において車軸の減速トルクを定量的に求めることができる。
【0019】
(6)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、アクセルの全閉時に前記駆動ギアから前記従動ギアを引き抜く場合には、前記駆動ギアの軸線上において、前記エンジンと前記ジェネレータのトルクが0に近づくように、前記エンジンと前記ジェネレータを制御する。
【0020】
上記(6)の構成によれば、車両の減速中に、駆動ギアの軸線上において、エンジンとジェネレータのトルクが0に近づき、駆動ギアと従動ギアのトルク差が小さくなり、駆動ギアから従動ギアを引き抜くために必要な力を小さくできる。
【0021】
(7)幾つかの実施形態では、上記(2)又は(6)の構成において、アクセルの全開時に前記駆動ギアから前記従動ギアを引き抜く場合には、前記ジェネレータが車両の必要電力を発電するとともに、前記駆動ギアの軸線上において、前記ジェネレータのトルクに前記エンジンのトルクを加算したトルクが0に近づくように、前記ジェネレータと前記エンジンを制御する。
【0022】
上記(7)の構成によれば、車両の加速中に、車両の必要電力を確保しつつ、駆動ギアと従動ギアのトルク差が小さくなり、駆動ギアから従動ギアを引き抜くために必要な力を小さくできる。
【0023】
(8)幾つかの実施形態では、上記(2)、(6)又は(7)のいずれかの構成において、アクセル全閉から予め設定されたアクセル開度に至るまでの間で前記駆動ギアから前記従動ギアを引き抜く場合には、発電を停止する一方、前記予め設定されたアクセル開度からアクセル全開に至るまでの間で前記駆動ギアから前記従動ギアを引き抜く場合には、アクセル開度に応じて発電量が増加するように、前記エンジンと前記ジェネレータを制御する。
【0024】
上記(8)の構成によれば、車両の減速中は、駆動ギアから従動ギアを引き抜くための力を小さくし、車両の加速中は、車両の必要電力を確保する。これにより、駆動ギアから従動ギアを引き抜く時の必要電力を確保しつつ、駆動ギアから従動ギアを引き抜くために必要な力を小さくできる。
【0025】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、前記駆動源は、モータを含み、前記駆動ギアと前記従動ギアとが噛み合って回転している場合において、前記駆動ギアから前記従動ギアを引き抜く時に、前記駆動ギアと前記従動ギアのトルク差が0に近づくように、前記モータを制御する。
【0026】
上記(9)の構成によれば、駆動ギアと従動ギアのトルク差が小さくなり、駆動ギアから従動ギアを引き抜くために必要な力を小さくできる。
【0027】
(10)幾つかの実施形態では、上記(9)の構成において、前記駆動ギアと前記従動ギアとが噛み合って回転している場合において、前記駆動ギアから前記従動ギアを引き抜く時に、前記駆動ギアの軸線上において、前記モータの駆動トルクが前記車軸の減速トルクに近づくように、前記モータを制御する。
【0028】
上記(10)の構成によれば、車軸から従動ギアに伝達される減速トルクが大きくても、駆動ギアと従動ギアのトルク差が小さくなり、駆動ギアから従動ギアを引き抜くための力を小さくできる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、駆動ギアと従動ギアのトルク差が小さくなり、駆動ギアから従動ギアを引き抜くために必要な力を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施形態1に係る動力伝達装置の制御装置が適用されるプラグインハイブリッド自動車のシステム構成図である。
図2】エンジンの駆動トルクが車軸に伝達される力行時における、駆動ギアと従動ギアの状態を示す模式図(展開図)である。
図3】車軸の減速トルクがモータに伝達される回生時における、駆動ギアと従動ギアの状態を示す模式図(展開図)である。
図4】実施形態1に係る動力伝達制御装置において制御される、アクセル開度と発電量上限との関係を示す図である。
図5】実施形態2に係る動力伝達装置の制御装置が適用される電気自動車のシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0032】
[実施形態1]
図1に示すように、実施形態1に係る動力伝達装置の制御装置4は、モータ11及びエンジン13を駆動源とするプラグインハイブリッド自動車(PHEV)1に適用される。プラグインハイブリッド自動車1は、モータ11及びエンジン13のほか、ジェネレータ15が搭載され、ジェネレータ15はエンジン13によって駆動される。さらに外部電源によって外部充電又はバッテリからの外部給電が可能である。
【0033】
モータ11及びジェネレータ15は、パワードライブユニット(PDU)21に接続され、パワードライブユニット21によって制御される。パワードライブユニット21は、モータ用のインバータ211とジェネレータ用のインバータ213とを含み、モータ用のインバータ211には、駆動用バッテリ19から電力が供給され、ジェネレータ用のインバータ213から駆動用バッテリ19に電力が供給される。これにより、モータ11はモータ用のインバータ211によって制御され、ジェネレータ15はジェネレータ用のインバータ213によって制御される。
【0034】
エンジン13は、エンジン制御ユニット(ENGECU)23に接続され、エンジン制御ユニット23によって制御される。
【0035】
プラグインハイブリッド自動車1は、駆動源(モータ11及びエンジン13)から車軸17(駆動輪18)に至る動力伝達経路にトランスアクスル(動力伝達装置)3が設けられている。トランスアクスル3は、トランスミッション、ファイナルギア31及びディファレンシャルギア32を一体化した動力伝達装置であり、トランスアクスル3には、モータ11からファイナルギア31に至る動力伝達経路33(以下「モータ動力伝達経路33」という)とエンジン13からファイナルギア31に至る動力伝達経路36(以下「エンジン動力伝達経路36」という)とが設けられている。
【0036】
モータ動力伝達経路33及びエンジン動力伝達経路36は、それぞれギア列で構成され、モータ11の駆動力はモータ動力伝達経路33を構成するギア列を通りファイナルギア31に伝達され、エンジン13の駆動力はモータ動力伝達経路33を構成するギア列を通りファイナルギア31に伝達される。
【0037】
モータ動力伝達経路33には第1クラッチ機構34が設けられているが、第1クラッチ機構34は必須ではない。第1クラッチ機構34は、例えば、ギアクラッチで構成され、第1アクチュエータ(ACT1)35によって操作されるが、これに限定されるものではない。そして、第1アクチュエータ35によって第1クラッチ機構34が接続された場合には、モータ11又はファイナルギア31(車軸17)のいずれか一方から他方に駆動トルク又は減速トルクが伝達され、第1アクチュエータ35によって第1クラッチ機構34が切断された場合には駆動トルク又は減速トルクの伝達が遮断される。これにより、第1クラッチ機構34が設けられたモータ動力伝達経路33は、モータ11を駆動源とする走行とモータ11を駆動源としない走行とが択一可能である。
【0038】
エンジン動力伝達経路36には第2クラッチ機構37が設けられている。第2クラッチ機構37は、ギアクラッチで構成され、第2アクチュエータ(ACT2)38によって操作される。そして、第2アクチュエータ38によって第2クラッチ機構37が接続された場合には、エンジン13又はファイナルギア31(車軸17)のいずれか一方から他方に駆動トルク又は減速トルクが伝達され、第2アクチュエータ38によって第2クラッチが遮断された場合には駆動トルク又は減速トルクの伝達が遮断される。これにより、第2クラッチ機構37が設けられたエンジン動力伝達経路36は、エンジン13を駆動源とする走行とエンジン13を駆動源としない走行とが択一可能である。
【0039】
上述した第1アクチュエータ35及び第2アクチュエータ38は、変速機制御ユニット(TCU)25に接続され、変速機制御ユニット25によって制御される。これにより、第1アクチュエータ35によって第1クラッチ機構34が接続され、第2アクチュエータ38によって第2クラッチ機構37が接続されることで、プラグインハイブリッド自動車1は、モータ11及びエンジン13を駆動源とするパラレル走行が可能となる。また、第1アクチュエータ35によって第1クラッチ機構34が接続され、第2アクチュエータ38によって第2クラッチ機構37が切断されることで、モータ11のみを駆動源とするEV走行、及び、モータ11を駆動源とし、ジェネレータ15で発電された電気がモータ11又は駆動バッテリに供給されるシリーズ走行が可能となる。そして、EV走行又はシリーズ走行からパラレル走行に切り替える場合には、第2アクチュエータ38によって第2クラッチ機構37が接続され、パラレル走行からEV走行又はシリーズ走行に切り替える場合には、第2アクチュエータ38によって第2クラッチ機構37が切断される。
【0040】
また、トランスアクスル3には、更に、エンジン13からジェネレータ15に至る動力伝達経路39(以下「発電動力伝達経路39」という)が設けられている。発電動力伝達経路39は、ギア列で構成され、エンジン13の駆動力は発電動力伝達経路39を通りジェネレータ15に伝達され、ジェネレータ15の発電負荷は発電動力伝達経路39を通りエンジン13に伝達される。
【0041】
図2及び図3に示すように、上述したギアクラッチは、エンジン13から駆動トルクが伝達される駆動ギア371と、駆動ギア371の軸方向に引き抜き可能であって、駆動ギア371と噛み合う一方、フィナンシャルギア(車軸17)から減速トルクが伝達される従動ギア373とを含んでいる。駆動ギア371と従動ギア373は互いに噛み合って回転することで、駆動ギア371又は従動ギア373の一方から他方に駆動トルク又は減速トルクが伝達され、駆動ギア371から従動ギア373が引き抜かれることで、駆動トルク及び減速トルクの伝達が遮断される。
【0042】
クラッチギアにおいて駆動ギア371と従動ギア373は各歯371a,373aの幅方向にテーパ面371a1,373a1とバックテーパ面371a3,373a3が設けられている。テーパ面371a1,373a1は、各歯371a,373aの幅方向外側から内側に向けて歯371a,373aが漸次厚くなり、歯371a(373a)と歯371a(373a)の間隔が漸次狭くなることで設けられている。バックテーパ面371a3,373a3は、テーパ面371a1,373a1の歯幅方向内側に設けられている。バックテーパ面371a3,373a3は、各歯371a,373aのテーパ面373a1,373a1から幅方向内側に向けて歯371a,373aが漸次薄くなり、歯371a(373a)と歯371a(373a)の間隔が漸次広くなることで設けられている。
【0043】
このため、図2に示すように、第2アクチュエータ38によって第2クラッチ機構37が接続され、エンジン13の駆動力(駆動トルク)がファイナルギア31(車軸17)に伝達される力行時において、駆動ギア371と従動ギア373のトルク差が大きいと、駆動ギア371のバックテーパ面371a3から従動ギア373のバックテーパ面373a3に掛かる力(押圧力)大きくなり、駆動ギア371から従動ギア373を引き抜くために大きな力が必要となり、駆動ギア371から従動ギア373を引き抜くことが難しい。また、図3に示すように、第2アクチュエータ38によって第2クラッチ機構37が接続され、ファイナルギア31(車軸17)の減速力がモータ11に伝達される回生時において、従動ギア373と駆動ギア371のトルク差が大きいと、従動ギア373のバックテーパ面373a3から駆動ギア371のバックテーパ面371a3に掛かる力(押圧力)が大きくなり、駆動ギア371から従動ギア373を引き抜くために大きな力が必要となり、駆動ギア371から従動ギア373を引き抜くことが難しい。
【0044】
したがって、駆動ギア371と従動ギア373が噛み合って回転している場合において、駆動ギア371から従動ギア373を引き抜く時に、駆動ギア371と従動ギア373のトルク差を小さくすることが求められる。換言すると、プラグインハイブリッド自動車1がパラレル走行している場合において、パラレル走行からシリーズ走行に切り替える時に、駆動ギア371と従動ギア373のトルク差を小さくすることが求められる。そこで、実施形態1に係る動力伝達装置の制御装置4は、駆動ギア371と従動ギア373が噛み合って回転している場合において、駆動ギア371から従動ギア373を引き抜く時に、駆動ギア371と従動ギア373のトルク差を小さくすることを目的としている。換言すると、プラグインハイブリッド自動車1がパラレル走行している場合において、パラレル走行からシリーズ走行に切り替える時に、駆動ギア371と従動ギア373のトルク差を小さくすることを目的としている。
【0045】
実施形態1に係る動力伝達装置の制御装置(PHEVECU)4は、例えば、演算装置、命令や情報を格納するレジスタ、周辺回路等から構成されるプロセッサ(図示せず)、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリ(図示せず)のほか入出力インターフェース(図示せず)によって構成される。
【0046】
図1に示すように、動力伝達装置の制御装置4には、上述したパワードライブユニット21及びエンジン制御ユニット23がCAN(Controller Area Network)40によって接続されているほか、アクセルペダルセンサ41、ブレーキペダルセンサ43が接続されている。
【0047】
アクセルペダルセンサ41は、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を検出するためのセンサであり、ブレーキペダルセンサ43は、ブレーキペダルの踏み込み量を検出するためのセンサである。
【0048】
動力伝達装置の制御装置4は、駆動ギア371と従動ギア373が噛み合って回転している場合において、駆動ギア371から従動ギア373を引き抜く時に、駆動ギア371と従動ギア373のトルク差が0に近づくように、駆動源(モータ11及びエンジン13)を制御する。このように、動力伝達装置の制御装置4が駆動源(モータ11及びエンジン13)を制御すれば、駆動ギア371と従動ギア373のトルク差が小さくなり、駆動ギア371から従動ギア373を引き抜くために必要な力を小さくできる。これにより、パラレル走行からシリーズ走行に切り替える時に、駆動ギア371と従動ギア373のトルク差を小さくできる。
【0049】
例えば、動力伝達装置の制御装置4は、駆動ギア371と従動ギア373が噛み合って回転している場合において、駆動ギア371から従動ギア373を引き抜く時に、ジェネレータ15が駆動ギア371のトルクを従動ギア373のトルクに近づけるように、パワードライブユニット21(ジェネレータ用のインバータ213)を制御する。このように、動力伝達装置の制御装置4がパワードライブユニット21を制御すれば、駆動ギア371のトルクが従動ギア373のトルクに近づくように、ジェネレータ15が制御される。これにより、駆動ギア371のトルクが従動ギア373のトルクに近づき、駆動ギア371と従動ギア373のトルク差が小さくなるので、駆動ギア371から従動ギア373を引き抜くために必要な力を小さくできる。
【0050】
例えば、動力伝達装置の制御装置4は、駆動ギア371と従動ギア373が噛み合って回転している場合において、駆動ギア371を引き抜く時に、駆動ギア371の軸線上において、ジェネレータ15がジェネレータ15のトルクをエンジン13の駆動トルクに近づけるように、パワードライブユニット21(ジェネレータ用のインバータ213)を制御してもよい。このように、動力伝達装置の制御装置4がパワードライブユニット21を制御すれば、駆動ギア371の軸線上において、ジェネレータ15のトルクがエンジン13の駆動トルクに近づくように、ジェネレータ15が制御される。これにより、車軸17(ファイナルギア31)から駆動ギア371に伝達される減速トルクが小さければ、駆動ギア371と従動ギア373のトルク差が小さくなるので、駆動ギア371から従動ギア373を引き抜くために必要な力を小さくできる。
【0051】
また、例えば、動力伝達装置の制御装置4は、駆動ギア371と従動ギア373が噛み合って回転している場合において、駆動ギア371から従動ギア373を引き抜く時に、駆動ギア371の軸線上において、ジェネレータ15がジェネレータ15のトルクをエンジン13の駆動トルクに車軸17の減速トルクを加算したトルクに近づけるように、パワードライブユニット21(ジェネレータ用のインバータ213)を制御する。このように、動力伝達装置の制御装置4がパワードライブユニット21を制御すれば、駆動ギア371の軸線上において、ジェネレータ15のトルクがエンジン13の駆動トルクに車軸17の減速トルクを加算トルクに近づくように、ジェネレータ15が制御される。これにより、車軸17(ファイナルギア31)から駆動ギア371に伝達される減速トルクが大きくても、駆動ギア371と従動ギア373のトルク差が小さくなるので、車軸17(ファイナルギア31)から駆動ギア371に伝達される減速トルクが大きくても、駆動ギア371から従動ギア373を引き抜くために必要な力を小さくできる。
【0052】
例えば、上述した車軸17の減速トルクは、従動ギア373から車軸17に至る動力伝達経路のイナーシャと駆動ギア371の回転数変化率を積算することで求める。このように求めれば、駆動ギア371の軸線上において車軸17の減速トルクを定量的に求めることができる。
【0053】
ところで、駆動ギア371と従動ギア373のトルク差を小さくするには、エンジン13及びジェネレータ15のトルクを0とすることが簡易である。しかしながら、エンジン13及びジェネレータ15のトルクを0とすると、ジェネレータ15が発電しないので、プラグインハイブリッド自動車1の加速中に十分な加速を得ることができない虞がある。
【0054】
そこで、例えば、アクセルの全閉時(アクセル開度が0)に駆動ギア371から従動ギア373を引き抜く場合、すなわち、アクセルの全閉時にパラレル走行からシリーズ走行に切り替える場合には、駆動ギア371の軸線上において、エンジン13とジェネレータ15のトルクが0に近づくように、動力伝達装置の制御装置4がエンジン制御ユニット23及びパワードライブユニット21を制御する。このように、動力伝達装置の制御装置4がエンジン制御ユニット23及びパワードライブユニット21を制御すれば、エンジン13とジェネレータ15のトルクが0に近づき、駆動ギア371と従動ギア373のトルク差が小さくなり、駆動ギア371から従動ギア373を引き抜くために必要な力を小さくできる。
【0055】
また、例えば、アクセルの全開時(アクセル開度が最大)に駆動ギア371から従動ギア373を引き抜く場合、すなわち、アクセルの全開時にパラレル走行からシリーズ走行に切り替える場合には、駆動ギア371の軸線上において、ジェネレータ15のトルクにエンジン13のトルクを加算したトルクが0に近づくように、動力伝達装置の制御装置4がエンジン制御ユニット23及びパワードライブユニット21を制御する。このように、動力伝達装置の制御装置4がエンジン制御ユニット23及びパワードライブユニット21を制御すれば、プラグインハイブリッド車両の加速中に、車両の必要電力を確保しつつ、駆動ギア371から従動ギア373を引き抜くために必要な力を小さくできる。
【0056】
また、例えば、図4に示すように、アクセル全閉から予め設定されたアクセル開度に至るまでの間で駆動ギア371から従動ギア373を引き抜く場合には、発電を停止する一方、予め設定されたアクセル開度からアクセル全開に至るまでの間で駆動ギア371から従動ギア373を引き抜く場合には、アクセル開度に応じて発電量が増加するように、動力伝達装置の制御装置4がパワードライブユニット21及びエンジン制御ユニット23を制御する。このように、動力伝達装置の制御装置4がエンジン制御ユニット23及びパワードライブユニット21を制御すれば、車両の減速中は、駆動ギア371から従動ギア373を引き抜くための力を小さくし、車両の加速中は、車両の必要電力を確保する。これにより、駆動ギア371から従動ギア373を引き抜く時の必要電力を確保しつつ、駆動ギア371から従動ギア373を引き抜くために必要な力を小さくできる。
【0057】
上記例において、動力伝達装置の制御装置4は、駆動用バッテリの電池残量が予め定められた閾値よりも少ない場合には、予め設定されたアクセル開度を全閉側に移動させ、駆動用バッテリの電池残量が閾値よりも多い場合には、予め設定されたアクセル開度を全開側に移動させてもよい。このようにすれば、駆動用バッテリの電池残量が閾値よりも少ない場合には、アクセル開度が小さい時から発電が開始され、駆動用バッテリの電池残量が閾値よりも多い場合には、アクセル開度が大きくなってから発電が開始される。これにより、駆動ギア371から従動ギア373を引き抜く時にプラグインハイブリッド自動車1が必要とする電力を確保しつつ、駆動ギア371から従動ギア373を引き抜くために必要な力を小さくできる。
【0058】
上述した実施形態1に係る動力伝達装置の制御装置4によれば、駆動ギア371と従動ギア373のトルク差が小さくなり、駆動ギア371から従動ギア373を引き抜くために必要な力を小さくできる。換言すると、パラレル走行からシリーズ走行への切り替え時に駆動ギア371から従動ギア373を引き抜くために必要な力を小さくできる。
【0059】
[実施形態2]
図5に示すように、実施形態2に係る動力伝達装置の制御装置8は、前輪駆動用のモータ(Frモータ)51及び後輪駆動用のモータ(Rrモータ)53を駆動源とする四輪駆動の電気自動車(EV)5に適用される。
【0060】
前輪駆動用のモータ51は、前輪駆動用のパワードライブユニット(FPDU)61に接続され、後輪駆動用のモータ53は、後輪駆動用のパワードライブユニット(RPDU)63に接続される。前輪駆動用のパワードライブユニット61及び後輪駆動用のパワードライブユニット63には、駆動用バッテリ59から電力が供給され、前輪駆動用のモータ51は前輪駆動用のパワードライブユニット61によって制御され、後輪駆動用のモータ53は後輪駆動用のパワードライブユニット63によって制御される。
【0061】
実施形態2に係る四輪駆動の電気自動車5は、前輪駆動用のモータ51から前輪56の車軸55に至る前輪動力伝達経路にトランスアクスル7が設けられている。トランスアクスル7は、トランスミッション、ファイナルギア71及びディファレンシャルギア72を一体化した動力伝達装置であり、モータからファイナルギア71に至る動力伝達経路73(以下「モータ動力伝達経路73」という)が設けられている。
【0062】
モータ動力伝達経路73は、ギア列で構成され、モータの駆動力はモータ動力伝達経路73を構成するギア列を通りファイナルギア71に伝達される。
【0063】
モータ動力伝達経路73にはクラッチ機構74が設けられている。クラッチ機構74は、ギアクラッチで構成され、アクチュエータ(ACT)75によって操作される。そして、アクチュエータ75によってクラッチが接続された場合には、モータ又はファイナルギア71(車軸55)のいずれか一方から他方に駆動トルク又は減速トルクが伝達され、アクチュエータ75によってクラッチが遮断された場合には駆動トルク又は減速トルクの伝達が遮断される。これにより、クラッチ機構74が設けられたモータ動力伝達経路73は、前輪駆動用のモータ51を駆動源とする走行(四輪駆動走行)と前輪駆動用のモータ51を駆動源としない走行(後輪駆動走行)とが択一可能である。
【0064】
上述したアクチュエータ75は、変速機制御ユニット(TCU)65に接続され、変速機制御ユニットによって制御される。これにより、アクチュエータ75によってクラッチ機構74が接続されることで、電気自動車5は四輪駆動による走行が可能となる。また、アクチュエータ75によってクラッチ機構74が切断されることで、電気自動車5は後輪駆動による走行が可能となる。そして、後輪駆動から四輪駆動に切り替える場合には、アクチュエータ75によってクラッチ機構74が接続され、四輪駆動から後輪駆動に切り替える場合には、アクチュエータ75によってクラッチ機構74が切断される。
【0065】
実施形態2に係る四輪駆動の電気自動車5は、後輪駆動用のモータ53から後輪58の車軸57に至る後輪動力伝達経路に、ファイナルギア77及びディファレンシャルギア78が設けられている。
【0066】
図2及び図3に示すように、上述したギアクラッチは、実施形態1に係るギアクラッチと同様に、前輪駆動用のモータ51から駆動トルクが伝達される駆動ギア371と、駆動ギア371の軸方向に引き抜き可能であって、駆動ギア371と噛み合う一方、ファイナルギア71(車軸55)から減速トルクが伝達される従動ギア373とを含んでいる。駆動ギア371と従動ギア373は互いに噛み合いあって回転することで、駆動ギア371又は従動ギア373の一方から他方に駆動トルク又は減速トルクが伝達され、駆動ギア371から従動ギア373が引き抜かれることで、駆動トルク及び減速トルクの伝達が遮断される。
【0067】
クラッチギアにおいて駆動ギア371と従動ギア373は各歯371a,373aの幅方向にテーパ面371a1,373a1とバックテーパ面371a3,373a3が設けられている。テーパ面371a1,373a1は、各歯371a,373aの幅方向外側から内側に向けて歯371a,373aが漸次厚くなり、歯371a(373a)と歯371a(373a)の間隔が漸次狭くなることで設けられている。バックテーパ面371a3,371a3は、テーパ面371a1,373a1の歯幅方向内側に設けられている。バックテーパ面371a3,373a3は、各歯371a,373aのテーパ面373a1,373a1から幅方向内側に向けて歯371a,373aが漸次薄くなり、歯371a(373a)と歯371a(373a)の間隔が漸次広くなることで設けられている。
【0068】
このため、図2に示すように、アクチュエータ75によってクラッチ機構74が接続され、前輪駆動用のモータ51の駆動力(駆動トルク)がファイナルギア71(車軸55)に伝達される力行時において、駆動ギア371と従動ギア373のトルク差が大きいと、駆動ギア371のバックテーパ面371a3から従動ギア373のバックテーパ面373a3に掛かる力(押圧力)大きくなり、駆動ギア371から従動ギア373を引き抜くために大きな力が必要となり、駆動ギア371から従動ギア373を引き抜くことが難しい。また、アクチュエータ75によってクラッチ機構74が接続され、ファイナルギア71(車軸)の減速力が前輪駆動用のモータ51に伝達される回生時において、従動ギア373と駆動ギア371のトルク差が大きいと、従動ギア373のバックテーパ面373a3から駆動ギア371のバックテーパ面371a3に掛かる力(押圧力)が大きくなり、駆動ギア371から従動ギア373を引き抜くために大きな力が必要となり、駆動ギア371から従動ギア373を引き抜くことが難しい。
【0069】
したがって、駆動ギア371と従動ギア373が噛み合って回転している場合において、駆動ギア371から従動ギア373を引き抜く時に、駆動ギア371と従動ギア373のトルク差を小さくすることが求められる。換言すると、電気自動車5が走行している場合において、四輪駆動から後輪駆動に切り替える時に、駆動ギア371と従動ギア373のトルク差を小さくすることが求められる。そこで、実施形態2に係る動力伝達装置の制御装置8は、駆動ギア371と従動ギア373が噛み合って回転している場合において、駆動ギア371から従動ギア373を引き抜く時に、駆動ギア371と従動ギア373のトルク差を小さくすることを目的としている。換言すると、電気自動車5が走行している場合において、四輪駆動から後輪駆動に切り替える時に、駆動ギア371と従動ギア373のトルク差を小さくすることを目的としている。
【0070】
実施形態2に係る動力伝達装置の制御装置(EVECU)8は、例えば、演算装置、命令や情報を格納するレジスタ、周辺回路等から構成されるプロセッサ(図示せず)、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリ(図示せず)のほか入出力インターフェース(図示せず)によって構成される。
【0071】
動力伝達装置の制御装置8には、上述したパワードライブユニット61のほか、アクセルペダルセンサ81、ブレーキペダルセンサ83等の各種線が接続されている。
【0072】
アクセルペダルセンサ81は、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を検出するためのセンサであり、ブレーキペダルセンサ83は、ブレーキペダルの踏み込み量を検出するためのセンサである。
【0073】
動力伝達装置の制御装置8は、駆動ギア371と従動ギア373が噛み合って回転している場合において、駆動ギア371から従動ギア373を引き抜く時に、駆動ギア371と従動ギア373のトルク差が0に近づくように、駆動源(モータ51)を制御する。このように、動力伝達装置の制御装置8が駆動源を制御すれば、駆動ギア371と従動ギア373のトルク差が小さくなり、駆動ギア371から従動ギア373を引き抜くために必要な力を小さくできる。これにより、四輪駆動から後輪駆動に切り替える時に、駆動ギア371と従動ギア373のトルク差を小さくできる。
【0074】
例えば、動力伝達装置の制御装置8は、駆動ギア371と従動ギア373が噛み合って回転している場合において、駆動ギア371から従動ギア373を引き抜く時に、前輪駆動用のモータ51が駆動ギア371のトルクを従動ギア373のトルクに近づけるように、前輪駆動用のパワードライブユニット61を制御する。このように、動力伝達装置の制御装置8が前輪駆動用のパワードライブユニット61を制御すれば、駆動ギア371のトルクが従動ギア373のトルクに近づくように、前輪駆動用のモータ51が制御される。これにより、駆動ギア371のトルクが従動ギア373のトルクに近づき、駆動ギア371と従動ギア373のトルク差が小さくなるので、駆動ギア371から従動ギア373を引き抜くために必要な力を小さくできる。
【0075】
例えば、動力伝達装置の制御装置8は、駆動ギア371と従動ギア373が噛み合って回転している場合において、駆動ギア371から従動ギア373を引き抜く時に、駆動ギア371の軸線上において、モータがモータの駆動トルクを車軸の減速トルクに近づけるように、前輪駆動用のパワードライブユニット61を制御してもよい。このように動力伝達装置の制御装置8がパワードライブユニット61を制御すれば、駆動ギア371の軸線上において、前輪駆動用のモータ51の駆動トルクがファイナルギア71(車軸)の減速トルクに近づくように、前輪駆動用のモータ51が制御される。これにより、車軸(ファイナルギア71)から駆動ギア371に伝達される減速トルクが大きくても、駆動ギア371と従動ギア373のトルク差が小さくなるので、車軸(ファイナルギア71)から駆動ギア371に伝達される減速トルクが大きくても、駆動ギア371から従動ギア373を引き抜くために必要な力を小さくできる。
【0076】
上述した実施形態2に係る動力伝達装置の制御装置8によれば、駆動ギア371と従動ギア373のトルク差が小さくなり、駆動ギア371から従動ギア373を引き抜くために必要な力を小さくできる。還元すると、四輪駆動から二輪駆動への切り替え時に駆動ギア371から従動ギア373を引き抜くために必要な力を小さくできる。
【0077】
尚、上述した実施形態2に係る動力伝達装置の制御装置8は、前輪駆動用のモータ51を駆動源とする走行(四輪駆動走行)と前輪駆動用のモータ51を駆動源としない走行(後輪駆動走行)を切り替える四輪駆動の電気自動車5を例に説明したが、後輪駆動用のモータを駆動源とする走行(四輪駆動走行)と前輪駆動用のモータを駆動源としない走行(後輪駆動走行)を切り替える四輪駆動の電気自動車に適用可能である。
【0078】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【符号の説明】
【0079】
1 プラグインハイブリッド自動車(PHEV)
11 モータ
13 エンジン
15 ジェネレータ
17 車軸
18 駆動輪
21 パワードライブユニット(PDU)
211 モータ用のインバータ
213 ジェネレータ用のインバータ
23 エンジン制御ユニット(ENGECU)
25 変速機制御ユニット(TCU)
3 トランスアクスル(動力伝達装置)
31 ファイナルギア
32 ディファレンシャルギア
33 モータ動力伝達経路
34 第1クラッチ機構
35 第1アクチュエータ(ACT1)
36 エンジン動力伝達経路
37 第2クラッチ機構
371 駆動ギア
371a 歯
371a1 テーパ面
371a3 バックテーパ面
373 従動ギア
373a 歯
373a1 テーパ面
373a3 バックテーパ面
38 第2アクチュエータ(ACT2)
39 発電動力伝達経路
4 制御装置(PHEVECU)
40 CAN
41 アクセルペダルセンサ
43 ブレーキペダルセンサ
5 電気自動車(EV)
51 前輪駆動用のモータ(Frモータ)
53 後輪駆動用のモータ(Rrモータ)
55 車軸
56 前輪
57 車軸
58 後輪
59 駆動用バッテリ
61 前輪駆動用のパワードライブユニット(FPDU)
63 後輪駆動用のパワードライブユニット(RPDU)
65 変速機制御ユニット(TCU)
7 トランスアクスル
71 ファイナルギア
72 ディファレンシャルギア
73 モータ動力伝達経路
74 クラッチ機構
75 アクチュエータ(ACT)
77 ファイナルギア
78 ディファレンシャルギア
8 制御装置(EVECU)
80 CAN
81 アクセルペダルセンサ
83 ブレーキペダルセンサ
図1
図2
図3
図4
図5