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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】制御装置及び電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240903BHJP
【FI】
H02M7/48 M
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023562793
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(86)【国際出願番号】 JP2022026318
(87)【国際公開番号】W WO2024004154
(87)【国際公開日】2024-01-04
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺島 大貴
(72)【発明者】
【氏名】深澤 一誠
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/269929(WO,A1)
【文献】国際公開第2023/053289(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータの出力側の交流回路から分岐したコンデンサ回路に配置され、故障時に回路から切り離される少なくとも一つの交流コンデンサと、
前記コンデンサ回路に配置され、前記交流コンデンサに流れる各相の交流電流の電流値をそれぞれ取得する電流センサと、
を有する電力変換装置の制御装置であって、
前記電流センサから、前記交流コンデンサに流れる前記各相の交流電流の電流値をそれぞれ取得し、取得した前記各相の交流電流の電流値に基づいて、前記各相の交流電流の基本波成分の振幅の値をそれぞれ算出する振幅算出部と、
前記振幅算出部によって算出された前記各相の交流電流の基本波成分の振幅の値と、所定の判定値とをそれぞれ大小比較して、前記各相の交流電流の基本波成分の振幅の値のうち少なくともいずれかの相の振幅の値が、前記所定の判定値よりも小さいときは、前記交流コンデンサの故障と判定する故障判定部と、
を備え
前記振幅算出部は、前記各相の交流電流の電流値と、系統側の系統電圧に基づいて調整された位相角に基づく値と、をそれぞれ乗算して算出された前記各相の交流電流の所定の電流成分に基づいて、前記各相の交流電流の基本波成分の振幅の値をそれぞれ算出す
ことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置において、
前記振幅算出部は、前記各相の交流電流の所定の電流成分から、所定のローパスフィルタを用いて抽出された直流成分に基づいて、前記各相の交流電流の基本波成分の振幅の値を算出する
ことを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の制御装置において、
系統側の交流スイッチが投入された状態であれば、前記故障判定部により前記交流コンデンサの故障と判定されたときは、前記電力変換装置を停止させるとともに前記交流スイッチを開放させる動作指示を出力する動作制御部をさらに備える
ことを特徴とする制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の制御装置において、
系統側の交流スイッチが開放された状態で前記電力変換装置の始動時に行われる前記インバータの出力電圧と前記系統側の系統電圧とを同期させる同期制御時に、前記故障判定部により前記交流コンデンサの故障と判定されたときは、前記電力変換装置を停止させる動作指示を出力する動作制御部をさらに備える
ことを特徴とする制御装置。
【請求項5】
電力を変換して交流電力を出力するインバータと、
前記インバータの出力側の交流回路から分岐したコンデンサ回路に設けられた、故障時に回路から切り離される少なくとも一つの交流コンデンサと、
前記コンデンサ回路に配置され、前記交流コンデンサに流れる各相の交流電流の電流値をそれぞれ取得する電流センサと、
前記交流回路における前記コンデンサ回路への分岐点よりも系統側に配置され、前記系統側に向けて流れる前記交流電流を遮断可能な交流スイッチと、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の制御装置と、
を備えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
インバータの出力側の交流回路から分岐したコンデンサ回路に配置され、故障時に回路から切り離される少なくとも一つの交流コンデンサと、
前記インバータの出力側の前記交流回路における、前記インバータと前記コンデンサ回路への分岐点との間において、交流リアクトルと直列に配置され、前記交流回路に流れる各相の交流電流の電流値をそれぞれ取得する電流センサと、
を有する電力変換装置の制御装置であって、
系統側の交流スイッチが開放された状態で前記電力変換装置の始動時に行われる前記インバータの出力電圧と前記系統側の系統電圧とを同期させる同期制御時に、前記電流センサから、前記交流コンデンサに流れる前記各相の交流電流の電流値をそれぞれ取得し、取得した前記各相の交流電流の電流値に基づいて、前記各相の交流電流の基本波成分の振幅の値をそれぞれ算出する振幅算出部と、
前記振幅算出部によって算出された前記各相の交流電流の基本波成分の振幅の値と、所定の判定値とをそれぞれ大小比較して、前記各相の交流電流の基本波成分の振幅の値のうち少なくともいずれかの相の振幅の値が、前記所定の判定値よりも小さいときは、前記交流コンデンサの故障と判定する故障判定部と、
前記同期制御時に、前記故障判定部により前記交流コンデンサの故障と判定されたときは、前記交流コンデンサの故障情報を発報する故障情報発報部と、
を備え
前記振幅算出部は、前記各相の交流電流の電流値と、前記系統側の系統電圧に基づいて調整された位相角に基づく値と、をそれぞれ乗算して算出された前記各相の交流電流の所定の電流成分に基づいて、前記各相の交流電流の基本波成分の振幅の値をそれぞれ算出す
ことを特徴とする制御装置。
【請求項7】
請求項に記載の制御装置において、
前記振幅算出部は、前記各相の交流電流の所定の電流成分から、所定のローパスフィルタを用いて抽出された直流成分に基づいて、前記各相の交流電流の基本波成分の振幅の値を算出する
ことを特徴とする制御装置。
【請求項8】
請求項に記載の制御装置において、
前記同期制御時に、故障情報発報部により前記交流コンデンサの故障が発報されたときは、前記電力変換装置を停止させる動作指示を出力する動作制御部をさらに備える
ことを特徴とする制御装置。
【請求項9】
電力を変換して交流電力を出力するインバータと、
前記インバータの出力側の交流回路から分岐したコンデンサ回路に設けられた、故障時に回路から切り離される少なくとも一つの交流コンデンサと、
前記インバータの出力側の前記交流回路における、前記インバータと前記コンデンサ回路への分岐点との間において、交流リアクトルと直列に配置され、前記交流回路に流れる各相の交流電流の電流値をそれぞれ取得する電流センサと、
前記交流回路における前記分岐点よりも前記系統側に配置され、前記系統側に向けて流れる前記交流電流を遮断可能な交流スイッチと、
請求項から請求項のいずれか1項に記載の制御装置と、
を備えることを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置及び電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、系統連系運転が開始される前(交流スイッチが投入される前)に電圧合わせ運転が行われ、その後に系統連系運転が開始される(交流スイッチが投入される)電力変換装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
電圧合わせ運転は、系統連系運転が開始される前に、電力変換装置の出力電圧と系統電圧とを同期させる制御であり、例えば、電力変換装置の交流出力電圧の振幅と位相とを、系統電圧の振幅と位相とに合わせることにより行われる。なお、電圧合わせ運転は、例えば、交流自動電圧調整器(AC-AVR:Alternating-Current-Automatic Voltage Regulator)によって行われる。以下、本明細書において、電圧合わせ運転は、「同期制御」とも称される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本特開2017-212838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電力変換装置の交流出力のフィルタとして用いられるコンデンサには、異常過熱があった場合にコンデンサ素子を回路から切り離すヒューズ機構を有するものがある。当該ヒューズ機構が働いた場合、当該交流コンデンサは、オープン故障状態となる。このような場合、通常、電力変換装置では、電圧合わせ運転のときに同期合わせ異常として故障が検出される。
【0006】
しかし、従来の電力変換装置では、交流コンデンサがオープン故障しているにもかかわらず、電圧合わせ運転時に故障が検出されないことがあった。この場合、電力変換装置では、電圧合わせ運転後に交流スイッチが投入されて系統連系運転が開始され、その後も故障が検出されることなく運転が継続されることがある。交流コンデンサがオープン故障した状態で運転された場合、電力変換装置は、系統側に大きな高調波を流出させてしまう恐れがあり、また、正常な交流コンデンサに電圧印加が集中するため、正常な交流コンデンサにまで故障が拡大してしまう恐れもあった。
【0007】
そこで、本件開示は、交流コンデンサに流れる各相の電流成分に基づいて故障を検出することで、故障情報の発報や電力変換装置の停止を行い、系統側への高調波の流出や正常な交流コンデンサへの故障拡大を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様に係る制御装置は、インバータの出力側の交流回路から分岐したコンデンサ回路に配置され、故障時に回路から切り離される少なくとも一つの交流コンデンサと、コンデンサ回路に配置され、交流コンデンサに流れる各相の交流電流の電流値をそれぞれ取得する電流センサと、を有する電力変換装置の制御装置であって、電流センサから、交流コンデンサに流れる各相の交流電流の電流値をそれぞれ取得し、取得した各相の交流電流の電流値に基づいて、各相の交流電流の基本波成分の振幅の値をそれぞれ算出する振幅算出部と、振幅算出部によって算出された各相の交流電流の基本波成分の振幅の値と、所定の判定値とをそれぞれ大小比較して、各相の交流電流の基本波成分の振幅の値のうち少なくともいずれかの相の振幅の値が、所定の判定値よりも小さいときは、交流コンデンサの故障と判定する故障判定部と、を備え、振幅算出部は、各相の交流電流の電流値と、系統側の系統電圧に基づいて調整された位相角に基づく値と、をそれぞれ乗算して算出された各相の交流電流の所定の電流成分に基づいて、各相の交流電流の基本波成分の振幅の値をそれぞれ算出することを特徴とする。
【0010】
また、一態様に係る制御装置において、振幅算出部は、各相の交流電流の所定の電流成分から、所定のローパスフィルタを用いて抽出された直流成分に基づいて、各相の交流電流の基本波成分の振幅の値を算出してもよい。
【0011】
また、一態様に係る制御装置において、系統側の交流スイッチが投入された状態であれば、故障判定部により交流コンデンサの故障と判定されたときは、電力変換装置を停止させるとともに交流スイッチを開放させる動作指示を出力する動作制御部をさらに備えてもよい。
【0012】
また、一態様に係る制御装置において、系統側の交流スイッチが開放された状態で電力変換装置の始動時に行われるインバータの出力電圧と系統側の系統電圧とを同期させる同期制御時に、故障判定部により交流コンデンサの故障と判定されたときは、電力変換装置を停止させる動作指示を出力する動作制御部をさらに備えてもよい。
【0013】
一態様に係る電力変換装置は、電力を変換して交流電力を出力するインバータと、インバータの出力側の交流回路から分岐したコンデンサ回路に設けられた、故障時に回路から切り離される少なくとも一つの交流コンデンサと、コンデンサ回路に配置され、交流コンデンサに流れる各相の交流電流の電流値をそれぞれ取得する電流センサと、交流回路におけるコンデンサ回路への分岐点よりも系統側に配置され、系統側に向けて流れる交流電流を遮断可能な交流スイッチと、上記のいずれかに記載の制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0014】
別の態様に係る制御装置は、インバータの出力側の交流回路から分岐したコンデンサ回路に配置され、故障時に回路から切り離される少なくとも一つの交流コンデンサと、インバータの出力側の交流回路における、インバータとコンデンサ回路への分岐点との間において、交流リアクトルと直列に配置され、交流回路に流れる各相の交流電流の電流値をそれぞれ取得する電流センサと、を有する電力変換装置の制御装置であって、系統側の交流スイッチが開放された状態で電力変換装置の始動時に行われるインバータの出力電圧と系統側の系統電圧とを同期させる同期制御時に、電流センサから、交流コンデンサに流れる各相の交流電流の電流値をそれぞれ取得し、取得した各相の交流電流の電流値に基づいて、各相の交流電流の基本波成分の振幅の値をそれぞれ算出する振幅算出部と、振幅算出部によって算出された各相の交流電流の基本波成分の振幅の値と、所定の判定値とをそれぞれ大小比較して、各相の交流電流の基本波成分の振幅の値のうち少なくともいずれかの相の振幅の値が、所定の判定値よりも小さいときは、交流コンデンサの故障と判定する故障判定部と、同期制御時に、故障判定部により交流コンデンサの故障と判定されたときは、交流コンデンサの故障情報を発報する故障情報発報部と、を備え、振幅算出部は、各相の交流電流の電流値と、系統側の系統電圧に基づいて調整された位相角に基づく値と、をそれぞれ乗算して算出された各相の交流電流の所定の電流成分に基づいて、各相の交流電流の基本波成分の振幅の値をそれぞれ算出することを特徴とする。
【0016】
また、別の態様に係る制御装置において、振幅算出部は、各相の交流電流の所定の電流成分から、所定のローパスフィルタを用いて抽出された直流成分に基づいて、各相の交流電流の基本波成分の振幅の値を算出してもよい。
【0017】
また、別の態様に係る制御装置において、同期制御時に、故障情報発報部により交流コンデンサの故障が発報されたときは、電力変換装置を停止させる動作指示を出力する動作制御部をさらに備えてもよい。
【0018】
別の態様に係る電力変換装置は、電力を変換して交流電力を出力するインバータと、インバータの出力側の交流回路から分岐したコンデンサ回路に設けられた、故障時に回路から切り離される少なくとも一つの交流コンデンサと、インバータの出力側の交流回路における、インバータとコンデンサ回路への分岐点との間において、交流リアクトルと直列に配置され、交流回路に流れる各相の交流電流の電流値をそれぞれ取得する電流センサと、交流回路における分岐点よりも系統側に配置され、系統側に向けて流れる交流電流を遮断可能な交流スイッチと、上記のいずれかに記載の制御装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本件開示によれば、交流コンデンサに流れる各相の電流成分に基づいて故障を検出することで、故障情報の発報や電力変換装置の停止を行い、系統側への高調波の流出や正常な交流コンデンサへの故障拡大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態に係る制御装置及び電力変換装置の構成の一例について示す図である。
図2図1に示す電力変換装置において、交流コンデンサの実際の接続状況の一例を示す図である。
図3図1及び図2に示す電力変換装置における制御装置の構成の一例を示す図である。
図4図1から図3に示す制御装置の故障検出動作の一例を示す図である。
図5図1及び図2に示すACコンデンサにおいて、Δ結線のU-V間のACコンデンサにオープン故障が発生した状態を模式的に示す図である。
図6図5に示す場合における各相のコンデンサ電流のシミュレーション波形を示す図である。
図7図1から図6に示す電力変換装置の起動指令入力後における動作の一例を示す図である。
図8図1から図6に示す電力変換装置のインバータ連系運転中における動作の一例を示す図である。
図9】第2実施形態に係る制御装置及び電力変換装置の構成の一例について示す図である。
図10図9に示す電力変換装置における制御装置の構成の一例を示す図である。
図11図9及び図10に示す制御装置の故障検出動作の一例を示す図である。
図12図9から図11に示す電力変換装置の電圧合わせ運転(同期制御)の動作の一例を示す図である。
図13図1から図12に示した実施形態における制御装置が有する処理回路のハードウェア構成例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本件開示に係る制御装置及び電力変換装置の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0022】
<第1実施形態の構成>
図1は、第1実施形態に係る制御装置30及び電力変換装置1の構成の一例について示す図である。図1に示すとおり、電力変換装置1は、図1中左側の一端側で直流電源2と接続され、図1中右側の他端側(出力側)で交流電力系統3(以下、「系統3」とも称する。)と接続される。
【0023】
電力変換装置(PCS:Power Conditioning System)1は、例えば、直流電源2から供給される直流電力を交流電力に変換し、変換した交流電力を系統3側に出力する。なお、電力変換装置1は、直流電力を交流電力に変換するものには限られず、交流電力を交流電力に変換するものであってもよい。また、電力変換装置1は、太陽光発電(PV:Photovoltaics)用の電力変換装置(PV-PCS:Photovoltaics-Power Conditioning System)であってもよい。また、電力変換装置1は、蓄電池(ESS:Energy Storage System)用の電力変換装置(ESS-PCS:Energy Storage System-Power Conditioning System)であってもよい。以下、本明細書において、電力変換装置1は、「PCS1」とも称される。
【0024】
直流電源2は、電力変換装置1の一端側に接続され、電力変換装置1の一端側を介して電力変換装置1に直流電力を供給する。直流電源2は、例えば、太陽光パネルを備える太陽光発電装置(PV)や蓄電池(ESS)等であっても、風力発電機と交流直流コンバータ等からなる直流電源システム等であってもよい。また、電力変換装置1の一端側に接続されるのは直流電源2には限られず、電力変換装置1が交流電力を交流電力に変換するものである場合、交流電源であってもよい。
【0025】
交流電力系統(系統)3は、電力変換装置1の他端側である出力端に接続され、電力変換装置1から出力された交流電力を需要家の受電設備に供給するための、発電・変電・送電・配電を統合したシステムであり、例えば、不特定の負荷が接続されている。
【0026】
また、図1において、電力変換装置1は、インバータ回路11と、三相交流回路12と、交流リアクトル13と、交流スイッチ14と、コンデンサ回路15と、交流コンデンサ16とを有する。また、電力変換装置1は、電流センサ21と、第一電圧センサ22と、第二電圧センサ23と、制御装置30とを有する。
【0027】
電力変換装置1は、インバータ11の出力側に出力回路として三相交流回路12を有し、三相交流回路12には、交流リアクトル13と、交流スイッチ14とが設けられている。三相交流回路12は、交流リアクトル13と交流スイッチ14との間の分岐点12aを介してコンデンサ回路15に分岐しており、コンデンサ回路15は、交流コンデンサ16と接続されている。また、コンデンサ回路15において、分岐点12aと交流コンデンサ16との間には、電流センサ21が配置されている。また、交流回路12において、交流リアクトル13と分岐点12aとの間には、第一電圧センサ22が配置され、交流スイッチ14の系統3側には、第二電圧センサ23が配置されている。なお、制御装置30は、図中配線は省略するが、電力変換装置1の各要素と電気的に接続されている。
【0028】
インバータ回路(インバータ)11は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)等の複数のスイッチング素子で構築される。インバータ回路11は、一端側が直流電源2と接続され、出力側である他端側が交流リアクトル13と接続される。インバータ11は、例えば、後述のインバータ制御部32A(図10図11等参照)で生成されるスイッチング素子のゲート駆動信号(ゲート信号)であるパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)信号によって制御される。インバータ11は、直流電源2から供給される直流電力を一端側から取得し、パルス幅変調信号(ゲート信号)による制御に従い、取得した直流電力を交流電力に変換して、出力端である他端側から出力して三相交流回路12に供給する。以下、本明細書において、インバータ回路11は、単に「インバータ11」とも称される。また、本明細書において、パルス幅変調信号は、「PWM信号」とも称される。
【0029】
三相交流回路12は、一端がインバータ11の出力端に接続され、他端が系統3と接続される。三相交流回路12は、例えば、電流又は電圧の位相を互いにずらした3系統の単相交流を組み合わせた三相交流電力を3本の電線・ケーブルを用いて供給する三相三線式の三相交流回路である。以下、本明細書において、三相交流回路12は、単に「交流回路12」とも称される。
【0030】
交流リアクトル13は、AC(alternating-current)リアクトルとも称され、インバータ11の出力側の交流回路12に直列に接続される。以下、本明細書において、交流リアクトル13は、「ACリアクトル13」とも称される。ACリアクトル13は、例えば、騒音を低減させる効果やサージ電圧を抑制させる効果を有する平滑要素である。ACリアクトル13は、例えば、分岐点12aを介してL型に接続された交流コンデンサ16とともにインバータ11の不図示のスイッチング素子がスイッチングするときに発生するリプル(振動)を低減させるLCフィルタ回路(フィルタ回路)を構成する。
【0031】
交流スイッチ(交流開閉器)14は、ACスイッチとも称され、交流回路12において、上述のLCフィルタ回路の分岐点12aよりも系統3側に直列に設けられる。以下、本明細書において、交流スイッチ14又は交流開閉器14は、「ACスイッチ14」とも称される。ACスイッチ14は、制御装置30や不図示の上位装置やオペレータからの投入指示又は開放指示に従って、交流回路12と系統3との間を投入(接続)又は開放する。ACスイッチ14は、系統3側に向けて流れる交流電流を遮断可能であり、ACスイッチ14が開放されるとインバータ11から供給される交流電力が系統3に流出することが遮断される。ACスイッチ14は、電力変換装置1に始動時(起動時)に、電力変換装置1が系統3側との電圧合わせ運転(同期制御)を行っているときは開放され、系統連系運転が開始されるときに投入される。
【0032】
コンデンサ回路15は、交流回路12におけるACリアクトル13と交流スイッチ14との間の分岐点12aを介して分岐された回路であり、一端が分岐点12aと接続され、他端側が交流コンデンサ16と接続される。また、コンデンサ回路15は、分岐点12aと交流コンデンサ16との間に、電流センサ21が配置される。
【0033】
交流コンデンサ16は、AC(alternating-current)コンデンサ、ACキャパシタ(alternating-current capacitor)、フィルタコンデンサとも称され、電気(電荷)を蓄え又は放出する電子部品である。以下、本明細書において、交流コンデンサ16は、「ACコンデンサ16」とも称される。ACコンデンサ16は、例えば、L型に接続されたACリアクトル13とともにインバータ11の不図示のスイッチング素子がスイッチングするときに発生させるリプル(振動)を低減させるLCフィルタ回路(フィルタ回路)を構成する。ACコンデンサ16は、ACリアクトル13とともにフィルタ回路を構成することで、系統3側に高調波(高調波電流)が流出することを抑制する。ACコンデンサ16は、故障した際に回路から切り離される少なくとも一つの交流コンデンサであればよい。
【0034】
ACコンデンサ16は、例えば、静電容量を稼ぐため又は定格電流を満たすために、コンデンサ回路15が複数に分岐して、複数のACコンデンサ16aが並列接続されて構成される。
【0035】
複数のACコンデンサ16aは、それぞれ保安機構16bを有する。なお、本実施形態において、ACコンデンサ16は、必ずしも複数並列接続されている必要は無く、ACコンデンサ16aと保安機構16bとを有するACコンデンサ16が少なくとも一つあれば良い。
【0036】
保安機構16bは、例えば、ヒューズ又はスイッチ等であり、ACコンデンサ16aの故障時や、ACコンデンサ16aに異常が発生してACコンデンサ16aの内圧が上昇したときなどに、当該ACコンデンサ16aを回路から切り離す役割を有する。なお、保安機構16bは、ACコンデンサ16aとは別体として設けられたヒューズ又はスイッチ等には限られず、ACコンデンサ16a自身に備えられた、故障した際に回路から切り離される機能等であってもよい。
【0037】
また、保安機構16bは、ACコンデンサ16aを個別に回路から切り離すものであってもよく、複数のACコンデンサ16aを有するACコンデンサ16の所定のパッケージ毎に回路から切り離すものであってもよい。すなわち、例えば、複数のACコンデンサ16aを有するACコンデンサ16の所定のパッケージが複数並列接続されている場合などでは、保安機構16bは、当該ACコンデンサ16の所定のパッケージ毎に配置されてもよい。
【0038】
電流センサ21は、コンデンサ回路15における分岐点12aと交流コンデンサ16との間において、電流センサ21が配置される。電流センサ21は、例えば、公知の交流電流計又は交流電流センサ等である。電流センサ21がコンデンサ回路15に配置されることにより、電流センサ21は、交流スイッチ14が開放されている電圧合わせ運転時(同期制御時)に、ACコンデンサ16に流れる電流を計測することができる。さらに、電流センサ21は、交流スイッチ14が投入されている系統連系運転時にも、ACコンデンサ16に流れる電流を計測することができる。
【0039】
図2は、図1に示す電力変換装置1において、交流コンデンサ16の実際の接続状況の一例を示す図である。図2において、図1と同一又は同様の構成については、同一の符号を付し、詳細な説明は、省略又は簡略化する。
【0040】
図2に示すとおり、交流回路12は、実際は、例えば、三相三線式の三相交流回路であり、ACコンデンサ16を始めとする各構成要素は、実際は三相交流回路12にそれぞれ設けられている。なお、図1及び他の図面では、図面の簡単のため、これらの交流回路12及びACコンデンサ16を始めとする各構成要素は、簡略化して示されている。
【0041】
図2において、ACコンデンサ16は、静電容量を稼ぐため又は定格電流を満たすために、三相交流回路12の各相(U相、V相、W相)のコンデンサ回路15が複数に分岐されて、複数並列接続されている。なお、図2において、コンデンサ回路15は、各相とも3つに分岐され、ACコンデンサ16は、各相とも3個並列接続されているが、分岐数や並列数は、これには限られない。例えば、コンデンサ回路15は、各相とも5つに分岐され、ACコンデンサ16は、各相とも5個並列接続されていてもよい。また、ACコンデンサ16は、三相で一塊のパッケージとなっており、一塊のACコンデンサパッケージが並列接続されていてもよい。
【0042】
また、図2における各ACコンデンサパッケージにおいて、ACコンデンサ16は、デルタ結線(Δ結線)されているが、スター結線(Y結線)されていてもよく、その他の結線方式であってよい。また、異なる結線方式のACコンデンサ16又はACコンデンサパッケージが混在して並列接続されていてもよい。すなわち、ACコンデンサ16の並列接続の方式は特に限定されない。また、図2において、保安機構16bは、ACコンデンサ16a毎に配置されているが、上述のとおり、ACコンデンサパッケージ毎に配置されていてもよい。なお、保安機構16bが配置される位置は、図2に示す位置には限られず、ACコンデンサ16又は16aが故障した際にこれらを回路から切り離すことが出来る場所であればどこでもよい。
【0043】
また、図2に示すとおり、電流センサ21は、コンデンサ回路15における三相の交流電流の電流値I、I、Iを検出可能に配置される。なお、電流センサ21が配置される位置は、図2に示される位置には限られず、各ACコンデンサパッケージに流れる三相の交流電流の電流値I、I、Iをそれぞれ検出可能な位置に配置されてもよい。すなわち、電流センサ21は、例えば、ACコンデンサパッケージ毎に配置されてもよい。電流センサ21によって検出された三相の交流電流の電流値I、I、Iは、制御装置30によって取得される。
【0044】
図1に戻り、第一電圧センサ22は、例えば、インバータ11の出力側の交流回路12におけるインバータ11とコンデンサ回路15への分岐点12aとの間に配置される。第一電圧センサ22は、例えば、公知の交流電圧計又は交流電圧センサ等であり、インバータ11の出力電圧の電圧値Vを検出する。第一電圧センサ22は、例えば、電圧合わせ運転(同期制御)時などに、インバータ11の出力電圧の電圧値Vを検出する。第一電圧センサ22によって検出された出力電圧の電圧値Vは、制御装置30によって取得される。なお、第一電圧センサ22が配置される位置は、インバータ11の出力電圧の電圧値Vが計測できる位置であればどこでもよく、図1に示される位置には限られない。
【0045】
第二電圧センサ23は、例えば、インバータ11の出力側の交流回路12における交流スイッチ14と系統3との間に配置される。第二電圧センサ23は、例えば、公知の交流電圧計又は交流電圧センサ等であり、三相の系統電圧の電圧値V、V、Vを検出する。第二電圧センサ23によって検出された電圧値V、V、Vは、制御装置30によって取得される。なお、第二電圧センサ23が配置される位置は、系統3側の三相の系統電圧の電圧値V、V、Vが計測できる位置であればどこでもよく、図1に示される位置には限られない。
【0046】
制御装置30は、例えば、電力変換装置1の内部又は外部に設けられ、図中配線等は省略されているが、インバータ11を始めとする電力変換装置1の各要素と、有線又は無線によって電気的に接続されている。なお、制御装置30は、不図示のインバータ制御回路の機能として実現されていてもよい。
【0047】
制御装置30は、例えば、プログラムを実行することにより動作するCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の後述のプロセッサ91(図13参照)を有する。制御装置30は、後述の記憶部40(図3等参照)やメモリ92(図13参照)等を有し、例えば、記憶部40又はメモリ92に記憶された所定のプログラムを実行することによりプロセッサ91を動作させて電力変換装置1の動作を統括的に制御する。なお、制御装置30は、例えば、不図示の上位装置や不図示の操作部を介したオペレータ等からの指示に従って動作してもよい。制御装置30は、電流センサ21で検出された三相の交流電流の電流値I、I、Iのうち、少なくともいずれかの相の電流値(例えばU相の電流値I)に基づいて、後述の検出ロジックを用いてACコンデンサ16の故障を検出する(図4図6等参照)。なお、不図示の上位装置は、例えば、複数台の電力変換装置1を統括的に監視及び制御するものであり、各電力変換装置1と有線又は無線で接続されている。
【0048】
図3は、図1及び図2に示す電力変換装置1における制御装置30の構成の一例を示す図である。
【0049】
制御装置30は、記憶部40を有し、例えば、記憶部40又は後述のメモリ92(図13参照)に記憶された所定のプログラムを実行することにより、以下の各部として機能する。制御装置30は、位相角調整部31と、振幅算出部33と、故障判定部35と、動作制御部37として機能する。なお、上記の各機能は、制御装置30が有する後述の処理回路90(図13参照)における後述のプロセッサ91(図13参照)が実行するプログラムにより実現されても、後述のハードウェア93(図13参照)により実現されてもよい。位相角調整部31と、振幅算出部33と、故障判定部35と、動作制御部37とは、所定のプログラムを実行して、以下の処理を行う。
【0050】
位相角調整部31は、第二電圧センサ23から、系統3側の三相(U相、V相、W相)の系統電圧の測定値である電圧値V、V、Vを取得する。位相角調整部31は、例えば、任意の位相角θに基づいて、取得した系統電圧の電圧値V、V、Vを三相二相変換(dq変換)し、d軸電圧Vとq軸電圧Vとを求める。位相角調整部31は、求めたd軸電圧Vとq軸電圧Vとに対してPLL(Phase Locked Loop)制御を行い、q軸電圧Vが、d軸電圧Vに対して十分小さくなるように(0になるように)位相角θの変化率を調整する。これにより、位相角θの周波数と位相とは系統電圧の周波数と位相とに一致し、dq座標上において、系統電圧ベクトルの方向は、d軸方向に一致する。
【0051】
位相角調整部31は、調整された位相角θに基づいて、系統電圧の三相の電圧値V、V、Vに対して三相二相変換(dq変換)を行い、d軸成分とq軸成分とを出力する。これにより、dq座標軸上において、q軸は、d軸に対して90度位相が進んだ方向にとられることになる。位相角調整部31は、調整された位相角θに基づいて系統電圧の電圧値V、V、Vを三相二相変換(dq変換)し、d軸電圧Vとq軸電圧Vとを求める。位相角調整部31は、調整された位相角θを振幅算出部33に出力する。
【0052】
振幅算出部33は、電流センサ21から、ACコンデンサ16に流れる三相(U相、V相、W相)の各相の交流電流の測定値である電流値I、I、Iを取得する。なお、振幅算出部33は、電流センサ21から、三相(U相、V相、W相)の各相の交流電流の測定値である電流値I、I、Iのうち、少なくともいずれか一相の電流値のみを取得してもよい。そして、振幅算出部33は、取得した各相の電流値I、I、Iと、位相角調整部31によって調整された位相角θに基づく値sinθ,cosθと、を乗算して各相の所定の電流成分を算出する。そして、振幅算出部33は、算出した各相の所定の電流成分から、所定のローパスフィルタ(LPF:Low Pass Filter)を経由させて、各相の直流成分を抽出する。そして、振幅算出部33は、抽出した各相の直流成分に基づいて、各相の交流電流の周波数成分(基本波成分)の振幅の値を算出する。振幅算出部33は、算出した各相の交流電流の周波数成分(基本波成分)の振幅の値を故障判定部35に出力する。なお、上記の各相の交流電流の基本波成分の振幅の値の算出方法についての詳細は、後述する(図4図6等参照)。
【0053】
故障判定部(比較器)35は、振幅算出部33によって算出された各相の交流電流の周波数成分(基本波成分)の振幅の値と、記憶部40から取得した所定の判定値とをそれぞれ大小比較する。そして、故障判定部35は、振幅算出部33によって算出された各相の交流電流の振幅の値のうちの少なくともいずれか一つが、記憶部40から取得した所定の判定値よりも小さいときは、ACコンデンサ16が故障していると判定する。すなわち、例えば、複数のACコンデンサ16のうち、少なくとも一つがオープン故障した場合、故障したACコンデンサ16と接続される少なくともいずれか一つの相の振幅の値が正常時よりも小さくなる。このため、故障判定部35は、振幅算出部33によって算出された各相の振幅の値と、所定の判定値とを大小比較することにより、これを検出して故障と判定する。故障判定部35は、ACコンデンサ16が故障していると判定したときは、故障している旨の判定結果である「1」を動作制御部37に出力する。なお、故障判定部35は、例えば、不図示の上位装置等に故障している旨の判定結果である「1」を出力してもよく、電力変換装置1の不図示の表示部や操作部等に警報やアラーム等を出力してもよい。
【0054】
動作制御部37は、故障判定部35からACコンデンサ16が故障している旨の判定結果である「1」を取得した場合、交流スイッチ14の投入前の同期制御時であれば、電力変換装置1を停止するよう電力変換装置1の各部に動作指示を与える。一方、動作制御部37は、上記の場合において、系統連系運転中など、交流スイッチ14が投入されている状態であれば、電力変換装置1を停止するよう電力変換装置1の各部に動作指示を与えるとともに交流スイッチ14を開放させる動作指示を与える。
【0055】
記憶部40は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、その他の半導体メモリ等の揮発性又は不揮発性の記憶媒体である。記憶部40は、例えば、制御装置30の各部の動作に必要なプログラムを記憶するとともに、制御装置30の各部により、各種の情報の書き込みや読み出しが行われる。また、記憶部40は、例えば、電流センサ21等の各センサによって取得された値や、振幅算出部33による演算に用いられる各種の演算式や係数等や、故障判定部35による大小比較で用いられる所定の判定値等を記憶する。
【0056】
記憶部40は、例えば、不図示のバス(システムバス)等により、各種の情報の入出力が可能なように制御装置30の各部と接続されている。なお、記憶部40は、制御装置30の外部に設けられ、有線又は無線で制御装置30と接続されていてもよく、メモリカード、DVD(Digital Versatile Disc)等の外部記憶媒体等であっても、オンラインストレージ等であってもよい。また、記憶部40は、後述のメモリ92(図13参照)と共通であってもよい。
【0057】
<第1実施形態の動作>
図4は、図1から図3に示す制御装置30の故障検出動作の一例を示す図である。図4に示す動作は、電力変換装置1の始動時(起動指令受付)の電圧合わせ運転(同期制御)時又は電力変換装置1の系統連系運転中に開始される。すなわち、図4に示す動作は、系統3側のACスイッチ14が開放されている電力変換装置1の始動時の電圧合わせ運転(同期制御)時であるか、系統3側のACスイッチ14が投入されている電力変換装置1の系統連系運転中であるかに拘わらず開始される。なお、図4に示す動作は、常時行われても良く、所定の間隔毎に行われても、例えば、制御装置30や不図示の上位装置や不図示のオペレータからの指示に従って行われてもよい。
【0058】
ステップS11において、制御装置30の位相角調整部31は、第二電圧センサ23から、系統3側の三相(U相、V相、W相)の系統電圧の測定値である電圧値V、V、Vを取得し、ステップS12に処理を移行させる。
【0059】
ステップS12において、位相角調整部31は、取得した系統電圧の電圧値V、V、Vを、例えば、任意の位相角θに基づいて三相二相変換(dq変換)してd軸電圧Vとq軸電圧Vとを求め、ステップS13に処理を移行させる。
【0060】
ステップS13において、位相角調整部31は、求められたd軸電圧Vとq軸電圧Vとを取得し、ステップS14に処理を移行させる。
【0061】
ステップS14において、位相角調整部31は、取得されたd軸電圧Vとq軸電圧Vとに対してPLL(Phase Locked Loop)制御を行う。そして、位相角調整部31は、q軸電圧Vが、d軸電圧Vに対して十分小さくなるように(0になるように)位相角θの変化率を調整する。これにより、位相角θの周波数と位相とは系統電圧の周波数と位相とに一致し、dq座標上において系統電圧ベクトルの方向はd軸方向に一致することになる。位相角調整部31は、調整された位相角θを出力し、ステップS15に処理を移行させる。さらに、位相角調整部31は、調整された位相角θを振幅算出部33にも出力する。
【0062】
ステップS15において、位相角調整部31は、調整された位相角θに基づいて、三相の系統電圧の電圧値V、V、Vに対して三相二相変換(dq変換)を行い、d軸成分(d軸電圧V)とq軸成分(q軸電圧V)とを求める。これにより、dq座標軸上において、q軸は、d軸に対して90度位相が進んだ方向にとられることになる。そして、位相角調整部31は、ステップS13に処理を移行させ、電力変換装置1の運転中、ステップS13からS15の処理を繰り返す。
【0063】
ステップS31において、制御装置30の振幅算出部33は、電流センサ21から、ACコンデンサ16に流れる各相(U相、V相、W相)の交流電流の測定値である電流値I、I、Iをそれぞれ取得し、ステップS32に処理を移行させる。なお、電流センサ21は、常時又は所定の間隔毎に電流値I、I、Iを測定しており、振幅算出部33は、常時又は所定の間隔毎に電流値I、I、Iを取得している。
【0064】
なお、図4では、一例として、電流値Iについての処理動作の流れを示している。このため、以下、電流値Iを例にとって説明するが、他の電流値I、Iについても、同様の動作が実施される。
【0065】
ステップS32において、振幅算出部33は、ACコンデンサ16に流れる各相の交流電流の測定値である電流値I、I、Iと、ステップS14のPLL制御によって調整された位相角θに基づく値とを取得する。そして、振幅算出部33は、取得したACコンデンサ16に流れる各相の交流電流の測定値である電流値I、I、Iと、ステップS14のPLL制御によって調整された位相角θに基づく値とを乗算して、所定の電流成分を算出する。具体的には、電流値Iを例にとって説明すると、振幅算出部33は、電流値Iと、位相角θに基づく値であるsinθとを乗算して所定の電流成分であるIsinθを算出する。また、振幅算出部33は、電流値Iと、位相角θに基づく値であるcosθとを乗算して、所定の電流成分であるIcosθを算出する。そして、振幅算出部33は、ステップS33に処理を移行させる。
【0066】
なお、ステップS14では、位相角調整部31は、q軸電圧Vが、d軸電圧Vに対して十分小さくなるように(0になるように)位相角θを調整している。このため、ステップS14におけるPLL制御の結果、θの周波数と位相とは、系統電圧の周波数と位相とに一致し、dq座標上で系統電圧のベクトルの方向は、d軸方向に一致している。
【0067】
ステップS33において、振幅算出部33は、直流成分を抽出するための所定のローパスフィルタ(LPF)を用いて、ステップS32で求めた所定の電流成分であるIsinθから直流成分を抽出する。これにより、電流値Iのうちsinθと同位相の成分が抽出される。また、振幅算出部33は、直流成分を抽出するための所定のローパスフィルタ(LPF)を用いて、ステップS32で求めた所定の電流成分であるIcosθから直流成分を抽出する。これにより、電流値Iのうちcosθと同位相の成分が抽出される。そして、振幅算出部33は、ステップS34に処理を移行させる。
【0068】
ステップS34において、振幅算出部33は、ステップS33で抽出されたIsinθに含まれる直流成分(電流値Iのうちsinθと同位相の成分)を2乗した値を求める。また、振幅算出部33は、ステップS33で抽出されたIcosθに含まれる直流成分(電流値Iのうちcosθと同位相の成分)を2乗した値を求める。そして、振幅算出部33は、ステップS35に処理を移行させる。
【0069】
ステップS35において、振幅算出部33は、ステップS34で求められたIsinθの直流成分を2乗した値と、Icosθの直流成分を2乗した値との加算値を求め、ステップS36に処理を移行させる。
【0070】
ステップS36において、振幅算出部33は、ステップS35で求められた加算値(抽出された各成分の2乗和)の平方根であるコンデンサ電流IUabsを算出し、ステップS37に処理を移行させる。振幅算出部33は、ステップS31からステップS36の処理を実行し、抽出した各成分の2乗和の平方根を計算することで、電流値Iのうち位相角θの周波数成分(基本波成分)の振幅の値を計算することができる。また、振幅算出部33は、ステップS31からステップS36の処理を実行し、抽出した各成分の2乗和の平方根を計算することで、例えば、電流値Iがマイナスの値であったとしても、コンデンサ電流IUabsをプラスの値とすることができる。
【0071】
ステップS37において、振幅算出部33は、ステップS36で算出したコンデンサ電流IUabs(基本波成分振幅)を取得し、故障判定部(比較器)35に出力する。なお、振幅算出部33は、ステップS36で平方根をとる前のコンデンサ電流(ステップS35で求めた加算値)を故障判定部(比較器)35に出力してもよい。
【0072】
ステップS41において、制御装置30は、例えば、記憶部40に記憶されている所定の判定値IUtを取得し、故障判定部(比較器)35に出力する。なお、所定の判定値IUtは、各種の実験や、シミュレーションや、各種の条件や、所定の演算方法等に基づいて定められ、例えば、記憶部40に記憶されている。
【0073】
なお、所定の判定値IUtは、制御装置30や、不図示の上位装置や、オペレータ等の指示に基づくものであってもよい。また、所定の判定値IUtは、コンデンサ電流IUabsに多少の誤差があっても、当該誤差を許容してACコンデンサ16の故障を検出することができるように、例えば、1よりも小さい値である所定の故障検出レベルの値(例えば、0.8)が乗算されてもよい。なお、ステップS37で、平方根をとる前のコンデンサ電流(加算値)が出力されているときは、所定の判定値IUtは、2乗の計算を考慮したものとする必要がある。
【0074】
ステップS51において、故障判定部(比較器)35は、振幅算出部33により求められたコンデンサ電流IUabs(基本波成分振幅)と、記憶部40に記憶されている所定の判定値IUtとを取得する。そして、故障判定部(比較器)35は、これらを大小比較し、ACコンデンサ16が故障しているか否かを判定する。そして、故障判定部35は、コンデンサ電流IUabs(基本波成分振幅)が判定値IUtよりも小さいときは、ACコンデンサ16が故障していると判定する。すなわち、故障判定部35は、例えば、複数のACコンデンサ16のうち、少なくとも一つがオープン故障した場合、コンデンサ電流IUabs(基本波成分振幅)は正常時よりも小さくなるため、これを検出して故障と判定する。故障判定部35は、ACコンデンサ16が故障しているか否かを判定したときは、ステップS52に処理を移行させる。
【0075】
ステップS52において、故障判定部35は、ACコンデンサ16が故障していると判定したときは、故障している旨の判定結果である「1」を動作制御部37に出力する。なお、故障判定部35は、ACコンデンサ16が故障していないと判定したときは、故障していない旨の判定結果である「0」を動作制御部37に出力してもよく、故障していると判定されるまで何も出力しなくてもよい。
【0076】
なお、故障判定部35は、故障している旨の判定結果である「1」を後述の故障情報発報部36A(図10図11等参照)に対して出力してもよい。この場合、後述の故障情報発報部36A(図10図11等参照)は、例えば、不図示の上位装置等に故障情報を発報(出力)することや、電力変換装置1の不図示の表示画面や操作盤等に警報やアラーム等を発報することにより、故障情報を発報してもよい。
【0077】
図5は、図1及び図2に示すACコンデンサ16において、Δ結線のU-V間のACコンデンサ16aにオープン故障が発生した状態を模式的に示す図である。
【0078】
図5において、コンデンサ回路15には、三相の交流電流が流れており、電流センサ21によって、各相の電流値I、I、Iが取得されている。そして、図5では、Δ結線されたACコンデンサ16のU相とV相との間の(U-V間)のACコンデンサ16aにオープン故障が発生している。
【0079】
図6は、図5に示す場合における各相のコンデンサ電流のシミュレーション波形を示す図である。図6において、縦軸は電流(A)を示し、横軸は、時間(s)を示す。また、実線は、U相のコンデンサ電流IUabsを示し、破線は、V相のコンデンサ電流IVabsを示し、一点鎖線は、W相のコンデンサ電流IWabsを示す。すなわち、図6に示す図では、図5に示す電流センサ21によって取得された各相の電流値I、I、Iについて、図4で示したステップS31からステップS37の処理が実行された値が示されている。
【0080】
図6では、時間が0.5(s)進んだところで、図5に示すU相とV相との間の(U-V間)のACコンデンサ16aにオープン故障が発生している。このため、図6に示すように、時間が0.5(s)進むまでの正常時には、三相のコンデンサ電流IUabs、IVabs、IWabsは、いずれも0.65(A)付近の略一定値で推移している。
【0081】
一方、時間が0.5(s)進んだ時点のオープン故障発生時において、実線で示されるU相のコンデンサ電流IUabsと、破線で示されるV相のコンデンサ電流IVabsとが0.4(A)以下まで低下している。なお、図6に示すように、時間が0.5(s)進んだ時点のオープン故障発生時以降であっても、一点鎖線で示されるW相のコンデンサ電流IWabsは、そのまま0.65(A)付近の略一定値で推移している。
【0082】
これにより、例えば、0.4(A)から0.6(A)の間に判定値IUt、IVt、IWtを設定して、三相のコンデンサ電流IUabs、IVabs、IWabsと大小比較すれば、ACコンデンサ16が故障しているか否かを判定することが出来る。このため、本実施形態では、故障判定部35は、コンデンサ電流IUabs、IVabs、IWabsと、判定値IUt、IVt、IWtとを大小比較して、ACコンデンサ16(ACコンデンサ16aのいずれか)が故障しているか否かを判定している。
【0083】
なお、ステップS37で、平方根をとる前のコンデンサ電流(加算値)が出力されているときは、図6に示すグラフは縦軸方向に伸びると考えられる。このため、この場合、判定値IUt、IVt、IWtも、2乗の計算を考慮したもの(縦軸方向に伸びたものを考慮したもの)とする必要がある。
【0084】
また、Δ結線の場合と、Y結線の場合とで様相は異なるが、Y結線の場合であっても、いずれかの相の電流値は低下すると考えられるため、本実施形態に示す方法で、ACコンデンサ16が故障しているか否かを判定することができる。
【0085】
図4に戻り、ステップS71において、制御装置30の動作制御部37は、故障判定部35から、ACコンデンサ16が故障している旨の判定結果である「1」を取得したときは、電力変換装置1を停止するよう電力変換装置1の各部に動作指示を与える。なお、動作制御部37は、系統連系運転中など、交流スイッチ14が投入されている状態のときに、ACコンデンサ16が故障している旨の判定結果である「1」を取得した場合は、さらに交流スイッチ14を開放させる動作指示を与える。これにより、動作制御部37は、電力変換装置1を停止させ、正常なACコンデンサ16aへの故障拡大や系統3側への高調波の流出を抑制することができる。
【0086】
なお、動作制御部37は、不図示の上位装置や不図示のオペレータからの操作部を介した動作指示を受け付けたときに、電力変換装置1の停止(及び交流スイッチ14の開放)をさせる動作指示を与えてもよい。なお、動作制御部37は、同期制御時において、同期判定OKの情報を取得したときに、故障判定部35から、故障している旨の判定結果を取得していないときは、交流スイッチ14にスイッチ投入の動作指示を与え、系統連系運転を開始させてもよい。
【0087】
以上により、制御装置30は、図4に示す故障検出動作を終了する。なお、図4に示す故障検出動作は、上述のとおり、常時行われても良く、所定の間隔毎に行われても、例えば、制御装置30や不図示の上位装置や不図示のオペレータからの指示に従って行われてもよい。
【0088】
図7は、図1から図6に示す電力変換装置1の起動指令入力後における動作の一例を示す図である。図7(a)は、ACコンデンサ16が正常な場合における電力変換装置1の起動指令入力後の電圧合わせ運転(同期制御)中の状態を示す図である。図7(b)は、ACコンデンサ16の一部がオープン故障している場合における電力変換装置1の起動指令入力後の電圧合わせ運転(同期制御)中の状態を示す図である。
【0089】
なお、図7において、実際は、図2に示すように、インバータ11の出力側には三相分の交流回路12が接続されており、三相分のACリアクトル13、交流スイッチ14、ACコンデンサ16等が配置されている。また、ACコンデンサ16は、実際には、図2に示すように、各相に複数並列接続されている。しかし、図面の簡単のため、これらを含む各要素は、省略又は簡略化して示されている。
【0090】
図7(a)において、ACコンデンサ16が正常な場合、電力変換装置1は、停止状態から起動指令を受け付けた直後、インバータ11(インバータ回路11)を駆動させて電圧合わせ運転(同期制御)を行い、交流スイッチ14の前後の電圧を同期させようとする。このとき、交流スイッチ14が開放されているため、インバータ回路11から出力されている交流電力は、系統3側には流出していないが、ACコンデンサ16には、電流が流れている。
【0091】
この場合、コンデンサ回路15に配置された各相の電流センサ21によって各相のACコンデンサ16に流れるコンデンサ電流の電流値I、I、Iが常時検出されている。そして、このとき、制御装置30は、図4に示すステップS11からステップS51までの動作を常時行っている。この場合、通常は、ACコンデンサ16には、電流値I、I、Iの電流が流れている。この場合、上述のとおり、三相のコンデンサ電流IUabs、IVabs、IWabsは、略一定値で推移する。
【0092】
図7(b)において、ACコンデンサ16の一部がオープン故障している場合においても、電力変換装置1は、図7(a)と同様の動作を行っている。この場合、ACコンデンサ16の一部がオープン故障していると、上述のとおり、三相のコンデンサ電流IUabs、IVabs、IWabsの少なくともいずれかが減少するため、制御装置30によってACコンデンサ16の故障が検出される。
【0093】
すなわち、制御装置30は、ACコンデンサ16が故障していると判定し(S51)、ACコンデンサ16が故障している旨の判定結果である「1」を動作制御部37に出力する(S52)。この場合、動作制御部37は、電力変換装置1が電圧合わせ運転中に、ACコンデンサ16が故障している旨の判定結果である「1」を取得したことになる。この場合、動作制御部37は、電力変換装置1を停止させ(S71)、ACコンデンサ16への電圧印加を停止させる。
【0094】
これにより、電圧合わせ運転(同期制御)中に故障が検出された場合、系統連系運転前に電力変換装置1を停止させる(起動を防止する)ことができる。これにより、正常なACコンデンサ16aへの故障拡大や系統3側への高調波の流出を抑制することができる。
【0095】
図8は、図1から図6に示す電力変換装置1のインバータ連系運転中における動作の一例を示す図である。図8(a)は、ACコンデンサ16が正常な場合における電力変換装置1のインバータ連系運転中(系統連系運転中)の状態を示す図である。図(b)は、ACコンデンサ16の一部がオープン故障している場合における電力変換装置1のインバータ連系運転中(系統連系運転中)の状態を示す図である。なお、図8においても、図7と同様に、図面の簡単のため、各要素は、省略又は簡略化して示されている。
【0096】
図8(a)に示すように、電流センサ21は、コンデンサ回路15に配置されているため、電力変換装置1のACスイッチ14が投入され、かつ、インバータ回路11が駆動している場合でも、コンデンサ電流の電流値I、I、Iを検出することができる。
【0097】
この場合、電力変換装置1のACスイッチ14が投入され、かつ、インバータ回路11が駆動している場合でも、各相の電流センサ21によって各相のACコンデンサ16に流れるコンデンサ電流の電流値I、I、Iが常時検出される。この場合も、図7と同様に、制御装置30は、図4に示すステップS11からステップS51までの動作を常時行っている。この場合、図7と同様に、通常は、ACコンデンサ16には、電流値I、I、Iの電流が流れており、三相のコンデンサ電流IUabs、IVabs、IWabsは、略一定値で推移する。
【0098】
図8(b)において、ACコンデンサ16の一部がオープン故障している場合においても、電力変換装置1は、図8(a)と同様の動作を行っている。この場合、図7と同様に、ACコンデンサ16の一部がオープン故障していると、上述のとおり、三相のコンデンサ電流IUabs、IVabs、IWabsの少なくともいずれかが減少するため、制御装置30によってACコンデンサ16の故障が検出される。
【0099】
すなわち、図7と同様に、制御装置30は、ACコンデンサ16が故障していると判定し(S51)、ACコンデンサ16が故障している旨の判定結果である「1」を動作制御部37に出力する(S52)。この場合、動作制御部37は、電力変換装置1がインバータ連系運転中(系統連系運転中)に、ACコンデンサ16が故障している旨の判定結果である「1」を取得したことになる。この場合、動作制御部37は、交流回路12のACスイッチ14を開放させるとともに電力変換装置1を停止させ(S71)、ACコンデンサ16への電圧印加を停止させる。なお、このときの停止手段は、動作制御部37によるものには限られず、所定のソフト上で電力変換装置1の運転動作が止められてもよく、不図示のオペレータによる人の手でACスイッチ14が開放されてもよい。
【0100】
これにより、インバータ連系運転中(系統連系運転中)に故障が検出された場合でも、正常なACコンデンサ16aへの故障拡大や系統3側への高調波の流出を抑制することができる。
【0101】
<第1実施形態の作用効果>
以上、図1図8に示す第1実施形態によれば、故障判定部35は、振幅算出部33により求められたコンデンサ電流IUabs、IVabs、IWabs(基本波成分振幅)と、判定値IUt、IVt、IWtとを大小比較する。そして、故障判定部35は、コンデンサ電流IUabs、IVabs、IWabs(基本波成分振幅)が判定値IUt、IVt、IWtよりも小さいときは、ACコンデンサ16が故障していると判定し、判定結果を出力する(S51、S52)。すなわち、図1図8に示す第1実施形態では、ACコンデンサ16に流れる各相の電流成分に基づいて、ACコンデンサ16の故障が検出される。これにより、ACコンデンサ16の故障情報の発報や電力変換装置1の停止を行うことができ、系統3側への高調波の流出や正常なACコンデンサ16aへの故障拡大を抑制することができる。
【0102】
また、図1図8に示す第1実施形態によれば、電流センサ21が、コンデンサ回路15に配置されている。このため、電力変換装置1の電圧合わせ運転中(交流スイッチ14の開放時)であっても、系統連系運転中(交流スイッチ14の投入時)であっても、ACコンデンサ16に流れる電流(コンデンサ電流)の電流値I、I、Iを区別して測定することができる。これにより、図1図8に示す第1実施形態では、電力変換装置1の電圧合わせ運転中(交流スイッチ14の開放時)であっても、系統連系運転中(交流スイッチ14の投入時)であっても、ACコンデンサ16の故障か否かを判定することができる。また、これにより、電力変換装置1の電圧合わせ運転中(交流スイッチ14の開放時)であっても、系統連系運転中(交流スイッチ14の投入時)であっても、正常なACコンデンサ16aへの故障拡大や系統3側への高調波の流出を抑制することができる。
【0103】
また、図1図8に示す第1実施形態によれば、コンデンサ回路15に配置される電流センサ21は、ACコンデンサ16(コンデンサ回路15)に流れる小さな電流のみを測定するため、小さな定格電流のものを用いることができる。このため、交流回路12に配置されるような大きな定格電流の電流センサよりも、小さな定格電流である電流センサ21の方が、小さな電流であるコンデンサ電流を精度良く測定することができる。また、交流回路12に配置されるような大きな定格電流の電流センサよりも、小さな定格電流の電流センサ21の方が、小さくて安価なものを用いることができる。
【0104】
また、図1図8に示す第1実施形態によれば、電流センサ21は、コンデンサ回路15に配置されている。これにより、例えば、仕様として、電流センサが、交流回路12の交流スイッチ14よりも系統3側にのみ配置されていた場合であっても、ACコンデンサ16の故障判定や電力変換装置1の停止をすることができる。このため、このような場合であっても、系統3側への高調波の流出や正常なACコンデンサ16aへの故障拡大を抑制することができる。
【0105】
<第2実施形態の構成>
図9は、第2実施形態に係る制御装置30A及び電力変換装置1Aの構成の一例について示す図である。なお、図9において、図1図8に示す実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略又は簡略化する。なお、図9に示す構成は、図2と同様に、交流回路12は、実際は三相三線式の三相交流回路であり、ACコンデンサ16を始めとする各構成要素は、実際は三相交流回路12にそれぞれ設けられている。但し、図9においても、図1と同様に、図面の簡単のため、各要素は、簡略化して示されている。
【0106】
図9に示す実施形態では、図1図8に示す実施形態とは異なり、電流センサ21は、コンデンサ回路15には配置されておらず、電流センサ21Aが、交流回路12に配置されている。図9に示す実施形態では、交流スイッチ14が開放されている電圧合わせ運転時(同期制御時)にのみ、電流センサ21Aによって、ACコンデンサ16に流れる電流(コンデンサ電流)の電流値I、I、Iを測定することができる。
【0107】
電流センサ21Aは、インバータ11の出力側の交流回路12におけるインバータ11とコンデンサ回路15への分岐点12aとの間において、交流リアクトル13と直列に接続されるように配置される。電流センサ21Aは、例えば、公知の交流電流計又は交流電流センサ等であり、電力変換装置1Aにおける三相の出力電流の電流値I、I、Iを検出する。電流センサ21Aによって検出された電流値I、I、Iは、制御装置30Aによって取得される。
【0108】
なお、電流センサ21Aは、交流回路12において、ACリアクトル13と直列に接続されていればよく、接続順序は問われない。但し、電流センサ21Aは、交流回路12において、インバータ11と分岐点12aとの間に設けられる必要がある。電流センサ21Aが、当該位置に設けられることにより、交流スイッチ14が開放されている電圧合わせ運転時(同期制御時)に、ACコンデンサ16に流れる電流の電流値I、I、Iを計測することができる。なお、実際は、電流センサ21Aは、多くの電力変換装置1Aにおいて、仕様として上述の位置に既に配されているため、本実施形態では、既に配されている既存の電流センサ21Aを用いることができる。
【0109】
制御装置30Aは、電圧合わせ運転時(同期制御時)にのみ、電流センサ21Aによって測定された電流値I、I、Iによって、ACコンデンサ16の故障を検出することが出来る。なお、制御装置30Aの構成又は機能、及び動作の詳細は、後述する(図10図11等参照)。
【0110】
図10は、図9に示す電力変換装置1Aにおける制御装置30Aの構成の一例を示す図である。なお、図10においても、図1図8に示す実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略又は簡略化する。
【0111】
制御装置30Aは、記憶部40を有し、例えば、記憶部40又は後述のメモリ92(図13参照)に記憶された所定のプログラムを実行することにより、以下の各部として機能する。制御装置30Aは、位相角調整部31Aと、インバータ制御部32Aと、振幅算出部33と、故障判定部35Aと、故障情報発報部36Aと、動作制御部37Aとして機能する。位相角調整部31Aと、インバータ制御部32Aと、振幅算出部33と、故障判定部35Aと、故障情報発報部36Aと、動作制御部37Aとは、所定のプログラムを実行して、以下の処理を行う。
【0112】
位相角調整部31Aは、求めたd軸電圧Vとq軸電圧Vとをインバータ制御部32Aに出力する。位相角調整部31Aのその他の構成又は機能は、図1図8に示す実施形態における位相角調整部31と同様である。
【0113】
インバータ制御部32Aは、位相角調整部31Aによって調整された位相角θに基づいて求められたd軸電圧Vとq軸電圧Vとを取得する。インバータ制御部32Aは、取得したd軸電圧Vとq軸電圧Vとに対し、所定のフィルタを経由させて、二相三相変換(逆変換)を行い、インバータ出力電圧指令値V 、V 、V を求める。インバータ制御部32Aは、求めたインバータ出力電圧指令値V 、V 、V に対してPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御を行い、ゲート信号を発生させる。
【0114】
インバータ制御部32Aは、発生させたゲート信号により、インバータ11の不図示のスイッチング素子を制御して、電力変換装置1Aの電圧合わせ運転(同期制御)を行わせる。なお、電力変換装置1Aが電圧合わせ運転(同期制御)中であるか否かの情報は、故障情報発報部36Aによって、インバータ制御部32Aから適宜取得される。
【0115】
故障判定部(比較器)35Aは、ACコンデンサ16が故障していると判定したときは、故障している旨の判定結果である「1」を故障情報発報部36Aに出力する。故障判定部35Aのその他の構成又は機能は、図1図8に示す実施形態における故障判定部35と同様である。
【0116】
故障情報発報部36Aは、電力変換装置1Aが電圧合わせ運転(同期制御)中であるか否かの情報を、インバータ制御部32Aから適宜取得する。故障情報発報部36Aは、故障判定部35AによってACコンデンサが故障していると判定されたときは、故障している旨の判定結果である「1」を故障判定部35Aから取得する。故障情報発報部36Aは、電力変換装置1Aが電圧合わせ運転(同期制御)中であるとの情報を取得しているときに、故障判定部35Aから、ACコンデンサ16が故障している旨の判定結果である「1」を取得したときは、故障情報を発報する。故障情報発報部36Aは、例えば、不図示の上位装置等に故障情報を出力することや、電力変換装置1Aの不図示の表示部や操作部等に警報やアラーム等を発報することにより、故障情報を発報する。また、故障情報発報部36Aは、動作制御部37Aにも故障情報を発報する。
【0117】
動作制御部37Aは、故障情報発報部36AからACコンデンサ16の故障情報の発報を取得したときは、電力変換装置1Aを停止するよう電力変換装置1Aの各部に動作指示を与え、交流スイッチ14の投入前に電力変換装置1Aを停止させる。なお、動作制御部37Aは、インバータ制御部32Aから同期判定OKの情報を取得したときに、故障情報発報部36AからACコンデンサ16の故障情報の発報を取得していないときは、交流スイッチ14投入の動作指示を与え、系統連系運転を開始させてもよい。
【0118】
<第2実施形態の動作>
図11は、図9及び図10に示す制御装置30Aの故障検出動作の一例を示す図である。なお、図11においても、図1図8に示す実施形態と同一の動作(処理)については同一の符号(処理ステップ番号)を付し、詳細な説明は省略又は簡略化する。
【0119】
図11に示す動作は、電力変換装置1Aの始動(起動指令受付)とともに開始される。すなわち、図11に示す動作は、系統3側のACスイッチ14が開放されている電力変換装置1Aの始動時(起動時)の電圧合わせ運転(同期制御)時に開始される。なお、図11に示す動作は、電圧合わせ運転(同期制御)時に常時行われても良く、所定の間隔毎に行われても、例えば、制御装置30Aや不図示の上位装置や不図示のオペレータからの指示に従って行われてもよい。
【0120】
ステップS12A及びステップS15Aにおいて、位相角調整部31Aは、求めたd軸電圧Vとq軸電圧Vとをインバータ制御部32Aにも出力する。ステップS12A及びステップS15Aにおけるその他の処理は、図1図8に示す実施形態におけるステップS12及びステップS15と同様である。
【0121】
ステップS21Aにおいて、制御装置30Aのインバータ制御部32Aは、最初はステップS12Aで出力されたd軸電圧Vとq軸電圧Vとを取得し、その後は、ステップS15Aで出力されたd軸電圧Vとq軸電圧Vとを取得する。インバータ制御部32Aは、取得したd軸電圧Vとq軸電圧Vとに、例えば所定のフィルタ処理を行い、ステップS22Aに処理を移行させる。なお、所定のフィルタ処理は、必須ではなく、行われなくてもよい。
【0122】
ステップS22Aにおいて、インバータ制御部32Aは、取得したd軸電圧Vとq軸電圧Vとに対し、二相三相変換(逆変換)を行い、インバータ出力電圧指令値V 、V 、V を求め、ステップS23Aに処理を移行させる。なお、系統電圧の電圧値V、V、Vに対し、一旦三相二相変換(dq変換)が行われ、その後に二相三相変換(逆変換)が行われるのは、三相の電圧値V、V、Vよりも、二軸のd軸電圧Vとq軸電圧Vとの方が、フィルタ処理が容易だからである。
【0123】
ステップS23Aにおいて、インバータ制御部32Aは、求めたインバータ出力電圧指令値V 、V 、V に対してPWM制御を行い、ゲート信号を発生させる。インバータ制御部32Aは、発生させたゲート信号により、インバータ11の不図示のスイッチング素子を制御して、電力変換装置1Aの電圧合わせ運転(同期制御)を行わせ、ステップS24Aに処理を移行させる。なお、上記の制御の結果、電圧合わせ運転(同期制御)時において、インバータ11の出力電圧の位相と振幅とは、系統電圧の位相と振幅とほぼ一致する。これにより、d軸電流Iはインバータ11の出力電圧と同位相の成分、q軸電流Iは、インバータ11の出力電圧に対して90度位相が進んだ成分となる。
【0124】
ステップS24Aにおいて、インバータ制御部32Aは、電力変換装置1Aが電圧合わせ運転(同期制御)中であるか否かの情報を出力する。電力変換装置1Aが電圧合わせ運転(同期制御)中であるか否かの情報は、故障情報発報部36Aによって適宜取得される。
【0125】
図12は、図9から図11に示す電力変換装置1Aの電圧合わせ運転(同期制御)の動作の一例を示す図である。図12(a)は、電力変換装置1Aが始動してから系統3側と同期されるまでの電圧合わせ運転(同期制御)時の状態を示す図である。図12(b)は、電力変換装置1Aが電圧合わせ運転(同期制御)を行った結果、系統3側と同期されたときの状態を示す図である。図12(c)は、電力変換装置1Aが電圧合わせ運転(同期制御)により系統3側と同期されたため、交流スイッチ14が投入されたときの状態を示す図である。
【0126】
図12において、左側は、回路状態が示される。図12の左側では、図9に示す電力変換装置1Aの一部の構成を省略した図が示されている。図12の左側において、交流スイッチ14の左側は、インバータ11の出力電圧が印加されており、交流スイッチ14の右側は、系統3側の系統電圧が印加されている。また、図12の左側において、矢印は、インバータ11から出力された電流経路を示す。図12の右側は、電圧波形が示される。図12の右側において、実線は、系統電圧の波形を示し、破線は、インバータ11の出力電圧の波形を示す。なお、インバータ11の出力電圧の電圧値Vは、第一電圧センサ22により検出され、三相の系統電圧の電圧値V、V、Vは、第二電圧センサ23により検出され、検出結果は、それぞれ制御装置30Aによって取得される(図9等参照)。
【0127】
図12(a)において、電力変換装置1Aが始動すると(起動指令を受け付けると)、インバータ11は、インバータ制御部32Aから出力されるゲート信号により制御され、電圧合わせ運転(同期制御)が開始される。始動時は、任意の位相角θに基づいたゲート信号によってインバータ11が制御されるため、インバータ11の出力電圧の電圧波形と系統電圧の電圧波形とは、最初はバラバラである(S12A、S21A~S23A)。
【0128】
図12(b)において、電圧合わせ運転(同期制御)を行った結果、同期判定がOKとなる。すなわち、位相角調整部31Aは、系統電圧から取得された三相の電圧値V、V、Vを基にPLL制御を行い、位相角θを調整している(S14)。そして、調整された位相角θに基づいたゲート信号によってインバータ11が制御されていくと、インバータ11の出力電圧の位相と振幅とは、系統電圧の位相と振幅とほぼ一致するようになる(S15A、S21A~S23A)。
【0129】
図12(c)において、同期判定がOKとなったときは、インバータ11の出力電圧の電圧波形と系統電圧の電圧波形とはほぼ一致するため、例えば動作制御部37Aの動作指示により、交流スイッチ14が投入され、系統連系運転が開始される。
【0130】
図11に戻り、ステップS52Aにおいて、制御装置30Aの故障判定部35Aは、ACコンデンサ16が故障していると判定したときは、故障している旨の判定結果である「1」を故障情報発報部36Aに出力する。なお、故障判定部35Aは、ACコンデンサ16が故障していないと判定したときは、故障していない旨の判定結果である「0」を故障情報発報部36Aに出力してもよく、故障していると判定されるまで何も出力しなくてもよい。
【0131】
ステップS61Aにおいて、制御装置30Aの故障情報発報部36Aは、電力変換装置1Aが電圧合わせ運転(同期制御)中であるか否かの情報を、インバータ制御部32Aから適宜取得する(S24A参照)。また、故障情報発報部36Aは、故障判定部35AによってACコンデンサが故障していると判定されたときは、故障している旨の判定結果である「1」を故障判定部35Aから取得する(S52A参照)。そして、故障情報発報部36Aは、電力変換装置1Aが電圧合わせ運転(同期制御)中との情報を取得しているときに、故障判定部35Aから、ACコンデンサ16が故障している旨の判定結果である「1」を取得したときは、ステップS62Aに処理を移行させる。
【0132】
ステップS62Aにおいて、故障情報発報部36Aは、電力変換装置1Aが電圧合わせ運転(同期制御)中であるとの情報を取得しているときに、ACコンデンサ16が故障している旨の判定結果である「1」を取得したときは、故障情報を発報する。故障情報発報部36Aは、例えば、不図示の上位装置等に故障情報を発報(出力)することや、電力変換装置1Aの不図示の表示画面や操作盤等に警報やアラーム等を発報することにより、故障情報を発報する。また、故障情報発報部36Aは、動作制御部37Aにも故障情報を発報(出力)する。
【0133】
ステップS71Aにおいて、制御装置30Aの動作制御部37Aは、故障情報発報部36AからACコンデンサ16の故障情報の発報を取得したときは、電力変換装置1Aを停止するよう電力変換装置1Aの各部に動作指示を与える。これにより、動作制御部37Aは、系統連系運転開始前(交流スイッチ14の投入前)に電力変換装置1Aを停止させる。これにより、正常なACコンデンサ16aへの故障拡大や系統3側への高調波の流出を抑制することができる。
【0134】
なお、動作制御部37Aは、故障情報発報部36Aによる故障情報の発報を取得した不図示の上位装置や不図示のオペレータからの操作部を介した動作指示を受け付けたときに電力変換装置1Aを停止させてもよい。また、動作制御部37Aは、例えばインバータ制御部32Aから同期判定OKの情報を取得したときに、故障情報発報部36Aから故障情報の発報を取得していないときは、交流スイッチ14にスイッチ投入の動作指示を与え、系統連系運転を開始させてもよい。
【0135】
なお、図1図8に示した第1実施形態において、図7に示した電力変換装置1の起動指令入力後における動作は、図9図12に示した第2実施形態における電力変換装置1Aの起動指令入力後における動作についても適用可能である。図7に示した動作が、図9図12に示した第2実施形態における電力変換装置1Aに適用される場合、電流センサ21ではなく、電流センサ21Aによって三相のACコンデンサ16に流れるコンデンサ電流の電流値I、I、Iが検出される。
【0136】
また、制御装置30Aは、ACコンデンサ16が故障していると判定し(S51)、ACコンデンサ16が故障している旨の判定結果である「1」を故障情報発報部36Aに出力する(S52A)。この場合、故障情報発報部36Aは、電力変換装置1Aが電圧合わせ運転中に、ACコンデンサ16が故障している旨の判定結果である「1」を取得したことになるため(S61A)、故障情報を発報する(S62A)。この場合、動作制御部37Aは、電力変換装置1Aを停止させ(S71)、ACコンデンサ16への電圧印加を停止させる。
【0137】
これにより、図9図12に示した第2実施形態においても、電圧合わせ運転(同期制御)中に故障が検出された場合、系統連系運転前に電力変換装置1Aを停止させる(起動を防止する)ことができる。これにより、正常なACコンデンサ16aへの故障拡大や系統3側への高調波の流出を抑制することができる。
【0138】
<第2実施形態の作用効果>
以上、図9図12に示す第2実施形態によれば、図1図8に示す第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0139】
また、図9図12に示す第2実施形態では、電流センサ21Aは、インバータ11の出力側の交流回路12におけるインバータ11とコンデンサ回路15への分岐点12aとの間において、交流リアクトル13と直列に接続されるように配置される。このため、電流センサ21Aは、交流スイッチ14が開放されている電圧合わせ運転時(同期制御時)に、ACコンデンサ16に流れる電流を計測することができる。これにより、図9図12に示す第2実施形態によれば、制御装置30Aは、電圧合わせ運転(同期制御)中において、ACコンデンサ16のオープン故障を検出することができる。
【0140】
なお、図9図12に示す第2実施形態では、電流センサ21Aは、上述の位置に配置される。この場合、電流センサ21Aは、交流スイッチ14が投入されている系統連系運転中には、系統3側へ流れる電流と混同してしまう(区別することができない)ため、ACコンデンサ16に流れる電流のみを抽出することができない。但し、既存の電力変換装置1Aにおいては、電流センサ21Aは、仕様として、既に上述の位置に配されていることが多い。このため、図9図12に示す第2実施形態によれば、多くの既存の電力変換装置1Aにおいて、既に配置されている既存の電流センサ21Aを用いることができる。
【0141】
また、図9図12に示す第2実施形態では、制御装置30Aは、電圧合わせ運転時(同期制御時)に、ACコンデンサ16の故障を検出したときは、系統連系運転開始前(交流スイッチ14の投入前)に、故障情報を発報する(S62A)。また、図9図12に示す第2実施形態では、制御装置30Aは、電圧合わせ運転時(同期制御時)に、ACコンデンサ16の故障を検出したときは、系統連系運転開始前(交流スイッチ14の投入前)に、電力変換装置1Aを停止させる(S71A)。これにより、正常なACコンデンサ16aへの故障拡大や系統3側への高調波の流出を抑制することができる。
【0142】
<ハードウェア構成例>
図13は、図1から図12に示した実施形態における制御装置30、30Aが有する処理回路90のハードウェア構成例を示す概念図である。上述した各機能は処理回路90により実現される。一態様として、処理回路90は、少なくとも1つのプロセッサ91と少なくとも1つのメモリ92とを備える。他の態様として、処理回路90は、少なくとも1つの専用のハードウェア93を備える。
【0143】
処理回路90がプロセッサ91とメモリ92とを備える場合、各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、メモリ92に格納される。プロセッサ91は、メモリ92に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各機能を実現する。
【0144】
処理回路90が専用のハードウェア93を備える場合、処理回路90は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、又はこれらを組み合わせたものである。各機能は処理回路90で実現される。
【0145】
制御装置30、30Aが有する各機能は、それぞれ一部又は全部がハードウェアによって構成されてもよく、プロセッサが実行するプログラムとして構成されてもよい。すなわち、制御装置30、30Aは、コンピュータとプログラムとによっても実現可能であり、プログラムは、記憶媒体に記憶されることも、ネットワークを通して提供されることも可能である。
【0146】
<実施形態の補足事項>
以上、図1図13に示す実施形態によれば、図1図8に示す第1実施形態と、図9図12に示す第2実施形態とに分かれているが、これらの実施形態が組み合わされてもよい。すなわち、電力変換装置1又は1Aは、電流センサ21と電流センサ21Aの両方を備えていてもよい。そして、何れか一方又は両方の電流センサによって、ACコンデンサ16(コンデンサ回路15)に流れる電流(コンデンサ電流)が測定されてもよい。組み合わされた実施形態であっても、組み合わされる前の各実施形態が奏する各作用効果と同様の作用効果を奏することができる。
【0147】
また、図1図13に示す実施形態では、図4及び図11に示すステップS51において、ACコンデンサ16aの一部がオープン故障したら、故障判定部35又は35Aは、ACコンデンサ16の故障と判定する。しかし、例えば、故障判定部35又は35Aは、ACコンデンサ16aが1つのみ故障した場合はACコンデンサ16の故障と判定せず、2つ以上故障した場合にACコンデンサ16の故障と判定するようにしてもよい。このような方法は、例えば、ACコンデンサ16aが1つのみ故障した程度では電力変換装置1又は1Aに与える影響が少ない場合などに有効である。なお、故障判定部35又は35Aは、実態に即して、ACコンデンサ16aが3つ以上やそれ以上故障した場合にACコンデンサ16の故障を検出するようにしてもよい。
【0148】
また、図1図13に示す実施形態では、三相交流回路12における三相交流電流について適用される例について説明したが、これには限られない。本件開示は、例えば、単相交流回路(単相交流電流)やその他の多相交流回路(多相交流電流)についても適用可能である。
【0149】
また、図1図13に示す実施形態によれば、本件開示の一態様として、電力変換装置1、1A及びこれらが有する制御装置30、30Aを例に説明したが、これには限られない。本件開示は、制御装置30、30Aの各部における処理ステップが行われる交流コンデンサの故障検出方法としても実現可能である。
【0150】
また、本件開示は、制御装置30、30Aの各部における処理ステップをコンピュータに実行させる交流コンデンサの故障検出プログラムとしても実現可能である。
【0151】
また、本件開示は、交流コンデンサの故障検出プログラムが記憶された記憶媒体(非一時的なコンピュータ可読媒体)としても実現可能である。交流コンデンサの故障検出プログラムは、例えば、CD(Compact Disc)あるいはDVD(Digital Versatile Disc)、USB(Universal Serial Bus)メモリ等のリムーバブルメディア等に記憶して頒布することができる。なお、交流コンデンサの故障検出プログラムは、制御装置30、30Aが有する不図示のネットワークインタフェース等を介してネットワーク上にアップロードされてもよく、ネットワークからダウンロードされ、記憶部40等に格納されてもよい。
【0152】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲がその精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図するものである。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずである。したがって、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物に拠ることも可能である。
【符号の説明】
【0153】
1,1A…電力変換装置(PCS);2…直流電源;3…交流電力系統(系統);11…インバータ回路(インバータ);12…三相交流回路(交流回路);12a…分岐点;13…交流リアクトル(ACリアクトル);14…交流スイッチ(交流開閉器、ACスイッチ);15…コンデンサ回路;16…交流コンデンサ(ACコンデンサ);16a…交流コンデンサ(ACコンデンサ);16b…保安機構;21,21A…電流センサ;22…第一電圧センサ;23…第二電圧センサ;30,30A…制御装置;31,31A…位相角調整部;32A…インバータ制御部;33…振幅算出部;35,35A…故障判定部(比較器);36A…故障情報発報部;37,37A…動作制御部;40…記憶部;90…処理回路;91…プロセッサ;92…メモリ;93…ハードウェア;I…d軸電流;I…q軸電流;I…電流値;IUabs…コンデンサ電流;IUt…判定値;I…電流値;IVabs…コンデンサ電流;IVt…判定値;I…電流値;IWabs…コンデンサ電流;IWt…判定値;V…d軸電圧;V…電圧値;V…q軸電圧;V …インバータ出力電圧指令値;V…電圧値;V …インバータ出力電圧指令値;V…電圧値;V …インバータ出力電圧指令値;V…電圧値;θ…位相角
図1
図2
図3
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図6
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図10
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図12
図13