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特許7548456イオン発生器、イオン発生器用の放電ユニット、及び、イオン発生器の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】イオン発生器、イオン発生器用の放電ユニット、及び、イオン発生器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01T 19/04 20060101AFI20240903BHJP
   H01T 23/00 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
H01T19/04
H01T23/00
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023566260
(86)(22)【出願日】2022-11-30
(86)【国際出願番号】 JP2022044123
(87)【国際公開番号】W WO2023106174
(87)【国際公開日】2023-06-15
【審査請求日】2024-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2021201049
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】山田 辰也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 知樹
(72)【発明者】
【氏名】川田 秋一
(72)【発明者】
【氏名】清水 尚
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-86790(JP,A)
【文献】特開2006-340740(JP,A)
【文献】特開2001-189199(JP,A)
【文献】中国実用新案第201732981(CN,U)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0099891(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 19/04
H01T 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1層のセラミック層を含む絶縁基板と、
前記絶縁基板に設けられた複数の放電電極と、
前記絶縁基板の厚み方向において前記放電電極と対向する位置に、前記放電電極と空間を隔てて設けられた集電電極と、を備え、
前記セラミック層は、前記厚み方向に相対する第1主面及び第2主面のうち、前記第1主面が前記放電電極と前記集電電極との間の前記空間に接する第1セラミック層を含み、
前記放電電極の先端の幅は前記放電電極の底面の幅よりも狭く、かつ、前記放電電極の先端が前記第1セラミック層の前記第1主面から突出している、イオン発生器。
【請求項2】
前記放電電極の底面が前記絶縁基板の内部に埋設されている、請求項1に記載のイオン発生器。
【請求項3】
前記放電電極の底面は、前記第1セラミック層と、前記厚み方向において前記第1セラミック層の前記第2主面側に隣り合うセラミック層との界面の位置に設けられている、請求項2に記載のイオン発生器。
【請求項4】
前記絶縁基板には、少なくとも前記第1セラミック層を前記厚み方向に貫通する複数の第1貫通孔が設けられている、請求項1~3のいずれか1項に記載のイオン発生器。
【請求項5】
前記絶縁基板の一方主面は、前記第1セラミック層の前記第1主面に加えて、前記放電電極の先端よりも前記厚み方向において高い位置に存在するセラミック層の主面を含む、請求項1~のいずれか1項に記載のイオン発生器。
【請求項6】
前記セラミック層は、前記厚み方向において前記第1セラミック層の前記第1主面と対向する位置に設けられた第2セラミック層を更に含み、
前記第2セラミック層に前記集電電極が設けられ、かつ、前記集電電極の一部が前記第2セラミック層から露出している、請求項1~のいずれか1項に記載のイオン発生器。
【請求項7】
前記放電電極の先端に最も近い前記集電電極の露出部は、前記第2セラミック層と、前記厚み方向において前記第2セラミック層の前記放電電極側に隣り合うセラミック層との界面の位置に設けられている、請求項6に記載のイオン発生器。
【請求項8】
前記絶縁基板には、少なくとも前記第2セラミック層を前記厚み方向に貫通する複数の第2貫通孔が設けられている、請求項に記載のイオン発生器。
【請求項9】
前記放電電極の形状は、錐体、錐台又はこれらの組合せである、請求項1~のいずれか1項に記載のイオン発生器。
【請求項10】
前記放電電極は、前記厚み方向に積層され、かつ、互いに接合された複数の電極層を含み、
前記厚み方向に隣接する電極層において、前記放電電極の先端側に位置する電極層の底面の幅は、前記放電電極の底面側に位置する電極層の先端の幅よりも狭い、請求項1~のいずれか1項に記載のイオン発生器。
【請求項11】
前記厚み方向に隣接する電極層の接合面において、前記放電電極の先端側に位置する電極層の外縁は、前記放電電極の底面側に位置する電極層の外縁よりも外側に位置しない、請求項10に記載のイオン発生器。
【請求項12】
前記セラミック層は、低温焼結セラミック材料を含有する、請求項1~のいずれか1項に記載のイオン発生器。
【請求項13】
少なくとも1層のセラミック層を含む絶縁基板と、
前記絶縁基板に設けられた複数の放電電極と、を備え、
前記セラミック層は、前記厚み方向に相対する第1主面及び第2主面のうち、前記第1主面が前記絶縁基板の一方主面を構成する第1セラミック層を含み、
前記放電電極の先端の幅は前記放電電極の底面の幅よりも狭く、かつ、前記放電電極の先端が前記第1セラミック層の前記第1主面から突出している、イオン発生器用の放電ユニット。
【請求項14】
少なくとも1層のセラミック層を含む絶縁基板と、前記絶縁基板に設けられた複数の放電電極と、前記絶縁基板の厚み方向において前記放電電極と対向する位置に、前記放電電極と空間を隔てて設けられた集電電極と、を備えるイオン発生器の製造方法であって、
未焼結の第1セラミック層を含む未焼結のセラミック層を準備する工程と、
前記未焼結のセラミック層が焼結する温度では実質的に焼結せず、未焼結の第1セラミック拘束層を含む未焼結のセラミック拘束層を準備する工程と、
前記厚み方向に相対する前記未焼結の第1セラミック拘束層の第1主面及び第2主面のうち、前記未焼結の第1セラミック拘束層の前記第1主面側の端部の幅が前記第2主面側の端部の幅よりも狭い複数の第1孔を、前記未焼結の第1セラミック拘束層の前記第2主面から前記第1主面に達するように、又は、前記未焼結の第1セラミック拘束層の前記第2主面から前記第1主面に達しないように形成する工程と、
前記未焼結の第1セラミック拘束層に形成された前記第1孔の内部に、未焼結の放電電極の少なくとも一部を形成する工程と、
前記厚み方向に相対する前記未焼結の第1セラミック層の第1主面及び第2主面のうち、前記未焼結の第1セラミック層の前記第1主面と前記未焼結の第1セラミック拘束層の前記第2主面とが対向するように、前記未焼結の第1セラミック層を含む前記未焼結のセラミック層と前記未焼結の第1セラミック拘束層を含む前記未焼結のセラミック拘束層とを積層することにより、複合積層体を作製する工程と、
前記未焼結のセラミック層が焼結する温度で前記複合積層体を焼成する工程と、を備える、イオン発生器の製造方法。
【請求項15】
前記未焼結の第1セラミック拘束層に形成された前記第1孔の内部に、未焼結の放電電極の一部を形成し、
前記未焼結の第1セラミック層の前記第1主面側の端部の幅が前記第2主面側の端部の幅よりも狭い複数の第2孔を、前記未焼結の第1セラミック層の前記第2主面から前記第1主面に達するように形成する工程と、
前記未焼結の第1セラミック層に形成された前記第2孔の内部に、未焼結の放電電極の一部を形成する工程と、を更に備え、
前記複合積層体を作製する工程では、前記未焼結の第1セラミック層に形成された前記未焼結の放電電極と前記未焼結の第1セラミック拘束層に形成された前記未焼結の放電電極とが前記厚み方向に重なるように、前記未焼結の第1セラミック層の前記第1主面と前記未焼結の第1セラミック拘束層の前記第2主面とを対向させる、請求項14に記載のイオン発生器の製造方法。
【請求項16】
前記未焼結のセラミック層は未焼結の第2セラミック層を更に含み、
前記未焼結の第2セラミック層に、一部が前記未焼結の第2セラミック層から露出するように、未焼結の集電電極を形成する工程と、を更に備え、
前記複合積層体を作製する工程では、前記未焼結の放電電極が形成された前記未焼結の第1セラミック拘束層の前記第1主面に、前記未焼結の集電電極が形成された前記未焼結の第2セラミック層を、直接的又は間接的に積層する、請求項14又は15に記載のイオン発生器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン発生器、イオン発生器用の放電ユニット、及び、イオン発生器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コロナ放電によるイオン発生器として、特許文献1には、絶縁基板と、上記絶縁基板上に並置された複数の放電電極と、上記放電電極と一定の間隔を隔てて設けられた共通電極と、上記放電電極と上記共通電極との間に両者を電気的に接続するように設けられた抵抗体と、を備え、上記放電電極は上記絶縁基板上に着脱可能に取り付けられており、上記放電電極と上記抵抗体とは互いに圧接されていること、を特徴とするイオン発生器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-86790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
イオン発生器においては、イオンの発生量を増やすために、放電部として機能する放電電極の数を多くすることが考えられる。しかしながら、特許文献1に記載のイオン発生器のように放電電極の数を多くすると、放電電極を配置する精度にばらつきが生じやすくなる。その結果、イオン発生器においては、放電電極と、特許文献1には図示されていない、集電部として機能する集電電極との間の距離にばらつきが生じやすくなる。イオン発生器においては、このように放電電極と集電電極との間の距離にばらつきが生じると、放電電極毎の放電開始電圧にばらつきが生じるおそれがある。これに対して、放電電極毎の放電開始電圧のばらつきを吸収するために、放電電極に過剰な電圧を印加することが考えられる。しかしながら、放電電極に過剰な電圧を印加すると、放電電極の劣化が早まるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、複数の放電電極が精度良く配置されたイオン発生器を提供することを目的とする。また、本発明は、上記イオン発生器用の放電ユニットを提供することを目的とする。更に、本発明は、上記イオン発生器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のイオン発生器は、少なくとも1層のセラミック層を含む絶縁基板と、上記絶縁基板に設けられた複数の放電電極と、上記絶縁基板の厚み方向において上記放電電極と対向する位置に、上記放電電極と空間を隔てて設けられた集電電極と、を備える。上記セラミック層は、上記厚み方向に相対する第1主面及び第2主面のうち、上記第1主面が上記放電電極と上記集電電極との間の上記空間に接する第1セラミック層を含む。上記放電電極の先端の幅は上記放電電極の底面の幅よりも狭く、かつ、上記放電電極の先端が上記第1セラミック層の上記第1主面から突出している。
【0007】
本発明のイオン発生器用の放電ユニットは、少なくとも1層のセラミック層を含む絶縁基板と、上記絶縁基板に設けられた複数の放電電極と、を備える。上記セラミック層は、上記厚み方向に相対する第1主面及び第2主面のうち、上記第1主面が上記絶縁基板の一方主面を構成する第1セラミック層を含む。上記放電電極の先端の幅は上記放電電極の底面の幅よりも狭く、かつ、上記放電電極の先端が上記第1セラミック層の上記第1主面から突出している。
【0008】
本発明のイオン発生器の製造方法は、少なくとも1層のセラミック層を含む絶縁基板と、上記絶縁基板に設けられた複数の放電電極と、上記絶縁基板の厚み方向において上記放電電極と対向する位置に、上記放電電極と空間を隔てて設けられた集電電極と、を備えるイオン発生器の製造方法である。本発明のイオン発生器の製造方法は、未焼結の第1セラミック層を含む未焼結のセラミック層を準備する工程と、上記未焼結のセラミック層が焼結する温度では実質的に焼結せず、未焼結の第1セラミック拘束層を含む未焼結のセラミック拘束層を準備する工程と、上記厚み方向に相対する上記未焼結の第1セラミック拘束層の第1主面及び第2主面のうち、上記未焼結の第1セラミック拘束層の上記第1主面側の端部の幅が上記第2主面側の端部の幅よりも狭い複数の第1孔を、上記未焼結の第1セラミック拘束層の上記第2主面から上記第1主面に達するように、又は、上記未焼結の第1セラミック拘束層の上記第2主面から上記第1主面に達しないように形成する工程と、上記未焼結の第1セラミック拘束層に形成された上記第1孔の内部に、未焼結の放電電極の少なくとも一部を形成する工程と、上記厚み方向に相対する上記未焼結の第1セラミック層の第1主面及び第2主面のうち、上記未焼結の第1セラミック層の上記第1主面と上記未焼結の第1セラミック拘束層の上記第2主面とが対向するように、上記未焼結の第1セラミック層を含む上記未焼結のセラミック層と上記未焼結の第1セラミック拘束層を含む上記未焼結のセラミック拘束層とを積層することにより、複合積層体を作製する工程と、上記未焼結のセラミック層が焼結する温度で上記複合積層体を焼成する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の放電電極が精度良く配置されたイオン発生器を提供することができる。また、本発明によれば、上記イオン発生器用の放電ユニットを提供することができる。更に、本発明によれば、上記イオン発生器の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施形態1のイオン発生器の一例を示す断面模式図である。
図2図2は、図1に示すイオン発生器を放電ユニット及び集電ユニットに分解した状態を示す断面模式図である。
図3A図3Aは、図1に示すイオン発生器を厚み方向において放電電極側から見た状態の一例を示す平面模式図である。
図3B図3Bは、図1に示すイオン発生器を厚み方向において集電電極側から見た状態の一例を示す平面模式図である。
図4A図4Aは、図1に示すイオン発生器を厚み方向において放電電極側から見た状態の別の一例を示す平面模式図である。
図4B図4Bは、図1に示すイオン発生器を厚み方向において集電電極側から見た状態の別の一例を示す平面模式図である。
図5図5A図5B図5C図5D図5E及び図5Fは、放電電極の形状の例を示す斜視模式図である。
図6図6は、本発明の実施形態1のイオン発生器を構成する放電ユニットの第1変形例を示す断面模式図である。
図7図7は、本発明の実施形態1のイオン発生器を構成する放電ユニットの第2変形例を示す断面模式図である。
図8図8は、本発明の実施形態1のイオン発生器を構成する放電ユニットの第3変形例を示す断面模式図である。
図9図9は、未焼結のセラミック層を準備する工程の一例を示す断面模式図である。
図10図10は、未焼結のセラミック拘束層を準備する工程の一例を示す断面模式図である。
図11図11は、未焼結の第1セラミック拘束層に第1孔を形成する工程の一例を示す断面模式図である。
図12図12は、第1孔の内部に未焼結の放電電極を形成する工程の一例を示す断面模式図である。
図13図13は、未焼結の第1放電側セラミック層に第2孔を形成する工程の一例を示す断面模式図である。
図14図14は、第2孔の内部に未焼結の放電電極を形成する工程の一例を示す断面模式図である。
図15図15は、未焼結の第1放電側セラミック層に第1貫通孔を形成する工程の一例を示す断面模式図である。
図16図16は、未焼結のセラミック拘束部を第1貫通孔の内部に形成する工程の一例を示す断面模式図である。
図17図17は、複合積層体を作製する工程の一例を示す断面模式図である。
図18図18は、複合積層体を作製する工程の第1変形例を示す断面模式図である。
図19図19は、複合積層体を作製する工程の第2変形例を示す断面模式図である。
図20図20は、複合積層体を作製する工程の第3変形例を示す断面模式図である。
図21図21は、本発明の実施形態2のイオン発生器の一例を示す断面模式図である。
図22A図22Aは、図21に示すイオン発生器を厚み方向において放電電極側から見た状態の一例を示す平面模式図である。
図22B図22Bは、図21に示すイオン発生器を厚み方向において集電電極側から見た状態の一例を示す平面模式図である。
図23図23は、複合積層体を作製する工程の一例を示す断面模式図である。
図24図24は、本発明の実施形態2のイオン発生器の第1変形例を示す断面模式図である。
図25図25は、図24に示すイオン発生器を厚み方向において放電電極側から見た状態の一例を示す平面模式図である。
図26図26は、本発明の実施形態2のイオン発生器の第2変形例を示す断面模式図である。
図27図27は、図26に示すイオン発生器を厚み方向において集電電極側から見た状態の一例を示す平面模式図である。
図28図28は、本発明の実施形態2のイオン発生器の第3変形例を示す断面模式図である。
図29A図29Aは、図28に示すイオン発生器を厚み方向において放電電極側から見た状態の一例を示す平面模式図である。
図29B図29Bは、図28に示すイオン発生器を厚み方向において集電電極側から見た状態の一例を示す平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のイオン発生器について説明する。なお、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更されてもよい。また、以下において記載する個々の好ましい構成を複数組み合わせたものもまた本発明である。
【0012】
本発明のイオン発生器は、絶縁基板と、上記絶縁基板に設けられた複数の放電電極(エミッタ電極)と、上記絶縁基板の厚み方向において上記放電電極と対向する位置に、上記放電電極と空間を隔てて設けられた集電電極(コレクタ電極)と、を備える。イオン発生器として用いられる場合、放電電極及び集電電極に対してそれぞれ高電圧電源及びグランドと接続されている必要がある。また、複数の放電電極が電気的に接続されている必要がある。
【0013】
以下に示す各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示す構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもない。実施形態2以降では、実施形態1と共通の事項についての記載は省略し、異なる点を主に説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態毎に逐次言及しない。
【0014】
以下の説明において、各実施形態を特に区別しない場合、単に、「本発明のイオン発生器」と言う。
【0015】
以下に示す図面は模式図であり、その寸法、縦横比の縮尺等は実際の製品と異なる場合がある。
【0016】
[実施形態1]
本発明の実施形態1のイオン発生器では、放電電極及び集電電極のうち、放電電極のみが絶縁基板に設けられている。本発明の実施形態1のイオン発生器は、放電ユニット及び集電ユニットから構成されている。このようなイオン発生器用の放電ユニットも本発明の1つである。
【0017】
図1は、本発明の実施形態1のイオン発生器の一例を示す断面模式図である。図2は、図1に示すイオン発生器を放電ユニット及び集電ユニットに分解した状態を示す断面模式図である。図3Aは、図1に示すイオン発生器を厚み方向において放電電極側から見た状態の一例を示す平面模式図である。図3Bは、図1に示すイオン発生器を厚み方向において集電電極側から見た状態の一例を示す平面模式図である。
【0018】
図1に示すイオン発生器1は、絶縁基板10と、絶縁基板10に設けられた複数の放電電極20と、絶縁基板10の厚み方向において放電電極20と対向する位置に、放電電極20と空間を隔てて設けられた集電電極30と、を備える。イオン発生器1は、放電電極20と集電電極30との間の空間を確保するためのスペーサー40を更に備えてもよい。
【0019】
イオン発生器1では、放電電極20及び集電電極30が図1に示すように共通の空間に露出していることにより、コロナ放電によるイオン発生を実現できる。より具体的には、まず、放電電極20に接続された高電圧電源(図示せず)により、放電電極20にプラス又はマイナスの高電圧が印加されると、放電電極20と集電電極30との間に強電界が形成され、放電電極20の先端21の周囲に大きな電位勾配が生じる。そして、放電電極20の先端21の周囲に大きな電位勾配が生じることにより、放電電極20の先端21の周囲に存在する空気に絶縁破壊が生じる。その結果、放電電極20の先端21からコロナ放電が生じ、放電電極20の先端21の周囲の空気中にイオンが発生する。
【0020】
イオン発生器1において、コロナ放電により発生したイオンは、高電圧電源(図示せず)に接続された放電電極20と、グランド(図示せず)に接続された集電電極30との間の電圧バイアスによってドリフトする。この際、イオンのドリフトに誘起されて周囲の空気が巻き込まれると、イオン風と呼ばれる空気の流れが生じる。このように、イオン発生器1は、イオンを発生させるだけではなく、イオン風を発生させるイオン風発生器としても機能できる。イオン発生器1がイオン風発生器として機能する場合、放電電極20が複数電極化されていることによってイオンの発生量が多くなるため、イオン風の風量も多くなる。
【0021】
図2に示すように、イオン発生器1は、放電ユニットU1及び集電ユニットU2から構成されている。図2に示す例では、放電ユニットU1は、絶縁基板10と、複数の放電電極20と、を備え、集電ユニットU2は、集電電極30と、スペーサー40と、を備える。
【0022】
絶縁基板10は、少なくとも1層のセラミック層を含む。絶縁基板10が複数のセラミック層を含む場合、複数のセラミック層は、絶縁基板10の厚み方向(図1では上下方向)に積層される。図1に示す例では、絶縁基板10は、第1放電側セラミック層11Aと、第2放電側セラミック層11Bと、を含む。
【0023】
第1放電側セラミック層11Aは、本発明の「第1セラミック層」に相当する。第1放電側セラミック層11Aは、厚み方向に相対する第1主面11Aa及び第2主面11Abを有する。イオン発生器1では、第1放電側セラミック層11Aの第1主面11Aaが放電電極20と集電電極30との間の空間に接している。また、放電ユニットU1では、第1放電側セラミック層11Aの第1主面11Aaが絶縁基板10の一方主面を構成している。
【0024】
第2放電側セラミック層11Bは、厚み方向において第1放電側セラミック層11Aの第2主面11Ab側に隣り合うように設けられている。第2放電側セラミック層11Bの第1放電側セラミック層11Aと反対側には、第2放電側セラミック層11Bと厚み方向に隣り合うように少なくとも1層のセラミック層が更に設けられていてもよい。
【0025】
絶縁基板10を構成する第1放電側セラミック層11A等のセラミック層は、低温焼結セラミック(LTCC)材料を含有することが好ましい。低温焼結セラミック材料とは、1000℃以下の温度で焼結可能であって、銅又は銀等との同時焼成が可能であるセラミック材料を意味する。
【0026】
低温焼結セラミック材料としては、例えば、クオーツ、アルミナ又はフォルステライト等のセラミック材料にホウ珪酸ガラスを混合してなるガラス複合系低温焼結セラミック材料、ZnO-MgO-Al-SiO系の結晶化ガラスを用いた結晶化ガラス系低温焼結セラミック材料、BaO-Al-SiO系セラミック材料又はAl-CaO-SiO-MgO-B系セラミック材料等を用いた非ガラス系低温焼結セラミック材料等が挙げられる。
【0027】
絶縁基板10には、少なくとも第1放電側セラミック層11Aを厚み方向に貫通する複数の第1貫通孔H1が設けられていることが好ましい。図1に示す例では、第1貫通孔H1は、第1放電側セラミック層11A及び第2放電側セラミック層11Bを厚み方向に貫通するように設けられている。第1貫通孔H1は、吸気口として機能する。
【0028】
第1貫通孔H1は、例えば、隣り合う放電電極20の間に配置されている。第1貫通孔H1は、規則的に配置されていることが好ましい。図3Aに示す例では、第1貫通孔H1は、厚み方向から見て、最も近い放電電極20の先端21同士を結ぶ直線上に配置されている。
【0029】
図4Aは、図1に示すイオン発生器を厚み方向において放電電極側から見た状態の別の一例を示す平面模式図である。
【0030】
図3A及び図4Aにおいては、厚み方向から見たときの第1貫通孔H1の平面形状は、互いに同じであるが、互いに異なっていてもよい。厚み方向から見たときの第1貫通孔H1の平面形状は特に限定されず、例えば、図3Aに示すような円形又は楕円形等であってもよく、図4Aに示すような長方形等の多角形等であってもよい。図4Aに示すように、多角形の角部には丸みが付けられていてもよい。イオン発生器1をイオン風発生器として用いる場合には、第1貫通孔H1の開口率は大きい方が好ましい。
【0031】
図1に示すように、厚み方向に直交する方向から見たときの第1貫通孔H1の断面形状は、互いに同じであることが好ましい。厚み方向に直交する方向から見たときの第1貫通孔H1の断面形状は特に限定されず、例えばテーパー状であってもよい。
【0032】
放電電極20は、絶縁基板10に設けられている。絶縁基板10に設けられる放電電極20の数は、2個以上であれば特に限定されない。放電電極20が複数設けられていることにより、イオンの発生量を多くすることができる。図3Aに示すように、放電電極20は、規則的に配置されていることが好ましい。
【0033】
図1に示すように、放電電極20の先端21の幅は放電電極20の底面22の幅よりも狭く、かつ、放電電極20の先端21が第1放電側セラミック層11Aの第1主面11Aaから突出している。放電電極20は、放電電極20と集電電極30との間の空間に露出している。
【0034】
イオン発生器1が後述する方法により製造される場合、未焼結のセラミック拘束層に拘束された状態で放電電極20が形成される。未焼結のセラミック拘束層は焼成時に焼結しない、つまり、未焼結のセラミック拘束層は焼成時に収縮しないので、焼成時における絶縁基板10及び放電電極20の不所望な変形を抑制することができる。その結果、絶縁基板10の表面(具体的には、第1放電側セラミック層11Aの第1主面11Aa)に対して放電電極20の先端21を高精度に配置することができる。
【0035】
放電電極20の先端21又は底面22の幅とは、厚み方向から見たときの放電電極20の先端21又は底面22の最小幅を意味する。例えば、厚み方向から見た放電電極20の先端21又は底面22の形状が円形である場合には直径を意味し、楕円形である場合には短径を意味し、多角形である場合には短手方向の幅を意味する。
【0036】
放電電極20の先端21を高精度に配置する観点から、放電電極20の先端21の幅は、互いに同じであることが好ましい。放電電極20の先端21の幅は、各々、0.1μm以上、100μm以下であることが好ましく、1μm以上、50μm以下であることがより好ましい。
【0037】
放電電極20の先端21を高精度に配置する観点から、放電電極20の高さ、すなわち厚み方向における放電電極20の先端21から底面22までの長さは、互いに同じであることが好ましい。放電電極20の高さは、各々、5μm以上、200μm以下であることが好ましい。
【0038】
図5A図5B図5C図5D図5E及び図5Fは、放電電極の形状の例を示す斜視模式図である。
【0039】
放電電極20の形状は、例えば、図5Aに示す放電電極20Aのように、錐体でもよい。放電電極20の形状は、円錐、楕円錐、角錐等の錐体の他、円錐台、楕円錐台、角錐台等の錐台でもよい。
【0040】
放電電極20は、図5B図5C図5D図5E及び図5Fに示すように、厚み方向に積層され、かつ、互いに接合された複数の電極層を含んでもよい。その場合、厚み方向に隣接する電極層において、放電電極の先端側に位置する電極層の底面の幅は、放電電極の底面側に位置する電極層の先端の幅と同じでもよく、放電電極の底面側に位置する電極層の先端の幅よりも狭くてもよい。
【0041】
放電電極20の形状は、例えば、図5Bに示す放電電極20Bのように、柱体同士の組合せでもよい。放電電極20の形状は、円柱、楕円柱、角柱等の柱体同士の組合せの他、錐台同士の組合せでもよく、底面側の柱体と先端側の錐台との組合せでもよく、底面側の錐台と先端側の柱体との組合せでもよく、底面側の柱体と先端側の錐体との組合せでもよい。
【0042】
図5Bに示す放電電極20Bは2層の電極層を含んでいるが、3層の電極層を含んでいてもよく、4層以上の電極層を含んでいてもよい。
【0043】
図5Bに示す放電電極20Bでは、放電電極20Bの先端側に位置する電極層の先端の幅は、放電電極20Bの先端側に位置する電極層の底面の幅と同じであり、放電電極20Bの底面側に位置する電極層の先端の幅は、放電電極20Bの底面側に位置する電極層の底面の幅と同じである。厚み方向に隣接する電極層において、放電電極20Bの先端側に位置する電極層の底面の幅は、放電電極20Bの底面側に位置する電極層の先端の幅よりも狭い。したがって、放電電極20Bの先端の幅は、放電電極20Bの底面の幅よりも狭い。
【0044】
図5Bに示す例では、厚み方向に隣接する電極層の接合面において、放電電極20Bの先端側に位置する電極層の外縁は、放電電極20Bの底面側に位置する電極層の外縁よりも外側に位置しない。具体的には、厚み方向に隣接する電極層の接合面において、放電電極20Bの先端側に位置する電極層の外縁の全体が、放電電極20Bの底面側に位置する電極層の外縁よりも内側に位置している。図5Bにおいては、放電電極20Bの先端側に位置する電極層の中心軸が、放電電極20Bの底面側に位置する電極層の中心軸と一致しているが、放電電極20Bの底面側に位置する電極層の中心軸からずれていてもよい。なお、放電電極20Bの先端側に位置する電極層の外縁の一部が、放電電極20Bの底面側に位置する電極層の外縁と一致していてもよい。
【0045】
放電電極20の形状は、例えば、図5Cに示す放電電極20C、図5Dに示す放電電極20D、図5Eに示す放電電極20E及び図5Fに示す放電電極20Fのように、底面側の錐台と先端側の錐体との組合せでもよい。
【0046】
図5Cに示す放電電極20C及び図5Dに示す放電電極20Dは2層の電極層を含んでおり、図5Eに示す放電電極20E及び図5Fに示す放電電極20Fは3層の電極層を含んでいるが、4層以上の電極層を含んでいてもよい。
【0047】
図5Cに示す放電電極20Cでは、放電電極20Cの先端側に位置する電極層の先端の幅は、放電電極20Cの先端側に位置する電極層の底面の幅よりも狭く、放電電極20Cの底面側に位置する電極層の先端の幅は、放電電極20Cの底面側に位置する電極層の底面の幅よりも狭い。厚み方向に隣接する電極層において、放電電極20Cの先端側に位置する電極層の底面の幅は、放電電極20Cの底面側に位置する電極層の先端の幅よりも狭い。したがって、放電電極20Cの先端の幅は、放電電極20Cの底面の幅よりも狭い。
【0048】
図5Cに示す例では、厚み方向に隣接する電極層の接合面において、放電電極20Cの先端側に位置する電極層の外縁は、放電電極20Cの底面側に位置する電極層の外縁よりも外側に位置しない。具体的には、厚み方向に隣接する電極層の接合面において、放電電極20Cの先端側に位置する電極層の外縁の全体が、放電電極20Cの底面側に位置する電極層の外縁よりも内側に位置している。図5Cにおいては、放電電極20Cの先端側に位置する電極層の中心軸が、放電電極20Cの底面側に位置する電極層の中心軸と一致しているが、放電電極20Cの底面側に位置する電極層の中心軸からずれていてもよい。
【0049】
図5Dに示す放電電極20Dでは、放電電極20Dの先端側に位置する電極層の先端の幅は、放電電極20Dの先端側に位置する電極層の底面の幅よりも狭く、放電電極20Dの底面側に位置する電極層の先端の幅は、放電電極20Dの底面側に位置する電極層の底面の幅よりも狭い。厚み方向に隣接する電極層において、放電電極20Dの先端側に位置する電極層の底面の幅は、放電電極20Dの底面側に位置する電極層の先端の幅よりも狭い。したがって、放電電極20Dの先端の幅は、放電電極20Dの底面の幅よりも狭い。
【0050】
図5Dに示す例では、厚み方向に隣接する電極層の接合面において、放電電極20Dの先端側に位置する電極層の外縁は、放電電極20Dの底面側に位置する電極層の外縁よりも外側に位置しない。具体的には、厚み方向に隣接する電極層の接合面において、放電電極20Dの先端側に位置する電極層の外縁の一部が、放電電極20Dの底面側に位置する電極層の外縁と一致している。図5Dにおいては、放電電極20Dの先端側に位置する電極層の中心軸が、放電電極20Dの底面側に位置する電極層の中心軸からずれている。
【0051】
図5Eに示す放電電極20Eでは、放電電極20Eの先端側に位置する電極層の先端の幅は、放電電極20Eの先端側に位置する電極層の底面の幅よりも狭く、放電電極20Eの底面側に位置する電極層の先端の幅は、放電電極20Eの底面側に位置する電極層の底面の幅よりも狭い。厚み方向に隣接する電極層において、放電電極20Eの先端側に位置する電極層の底面の幅は、放電電極20Eの底面側に位置する電極層の先端の幅よりも狭い。したがって、放電電極20Eの先端の幅は、放電電極20Eの底面の幅よりも狭い。
【0052】
図5Eに示す例では、厚み方向に隣接する電極層の接合面において、放電電極20Eの先端側に位置する電極層の外縁は、放電電極20Eの底面側に位置する電極層の外縁よりも外側に位置しない。具体的には、厚み方向に隣接する電極層の接合面において、放電電極20Eの先端側に位置する電極層の外縁の全体が、放電電極20Eの底面側に位置する電極層の外縁よりも内側に位置している。図5Eにおいては、放電電極20Eの先端側に位置する電極層の中心軸が、放電電極20Eの底面側に位置する電極層の中心軸と一致しているが、放電電極20Eの底面側に位置する電極層の中心軸からずれていてもよい。
【0053】
図5Fに示す放電電極20Fでは、放電電極20Fの先端側に位置する電極層の先端の幅は、放電電極20Fの先端側に位置する電極層の底面の幅よりも狭く、放電電極20Fの底面側に位置する電極層の先端の幅は、放電電極20Fの底面側に位置する電極層の底面の幅よりも狭い。厚み方向に隣接する電極層において、放電電極20Fの先端側に位置する電極層の底面の幅は、放電電極20Fの底面側に位置する電極層の先端の幅よりも狭い。したがって、放電電極20Fの先端の幅は、放電電極20Fの底面の幅よりも狭い。
【0054】
図5Fに示す例では、厚み方向に隣接する電極層の接合面において、放電電極20Fの先端側に位置する電極層の外縁は、放電電極20Fの底面側に位置する電極層の外縁よりも外側に位置しない。具体的には、厚み方向に隣接する電極層の接合面において、放電電極20Fの先端側に位置する電極層の外縁の一部が、放電電極20Fの底面側に位置する電極層の外縁と一致している。図5Fにおいては、放電電極20Fの先端側に位置する電極層の中心軸が、放電電極20Fの底面側に位置する電極層の中心軸からずれている。
【0055】
放電電極20の形状は、図5Cに示す放電電極20C及び図5Dに示す放電電極20Dを組み合わせた形状でもよく、図5Eに示す放電電極20E及び図5Fに示す放電電極20Fを組み合わせた形状でもよい。すなわち、厚み方向に隣接する電極層の接合面において、放電電極20の先端側に位置する電極層の外縁の全体が、放電電極20の底面側に位置する電極層の外縁よりも内側に位置しているものと、放電電極20の先端側に位置する電極層の外縁の一部が、放電電極20の底面側に位置する電極層の外縁と一致しているものとが混在してもよい。
【0056】
放電電極20の形状は、特に限定されないが、図5A図5C図5D図5E及び図5Fに示すように、錐体、錐台又はこれらの組合せであることが好ましい。
【0057】
放電電極20が、厚み方向に積層され、かつ、互いに接合された複数の電極層を含む場合、厚み方向に隣接する電極層の接合面において、放電電極20の先端側に位置する電極層の外縁は、放電電極20の底面側に位置する電極層の外縁よりも外側に位置しないことが好ましい。例えば、図5B図5C図5D図5E及び図5Fに示すように、厚み方向に隣接する電極層において、放電電極20の先端側に位置する電極層の底面の幅が、放電電極20の底面側に位置する電極層の先端の幅よりも狭い場合、厚み方向に隣接する電極層の接合面において、放電電極20の先端側に位置する電極層の外縁は、放電電極20の底面側に位置する電極層の外縁よりも外側に位置しないことが好ましい。
【0058】
厚み方向に隣接する電極層の接合面において、放電電極20の先端側に位置する電極層の外縁が、放電電極20の底面側に位置する電極層の外縁よりも外側に位置する場合には、放電電極20の底面側に位置する電極層から放電電極20の先端側に位置する電極層が露出する。この場合、電極層の露出部分は鋭角であるため、余計な放電が発生するおそれがある。これに対し、厚み方向に隣接する電極層の接合面において、放電電極20の先端側に位置する電極層の外縁が、放電電極20の底面側に位置する電極層の外縁よりも外側に位置しない場合には、放電電極20の先端側に位置する電極層から放電電極20の底面側に位置する電極層が露出する。しかし、電極層の露出部分は鈍角であるため、放電する可能性を低くすることができる。
【0059】
放電電極20の先端21を高精度に配置する観点から、絶縁基板10に設けられる放電電極20の形状は、互いに同じであることが好ましい。
【0060】
放電電極20に含有される導電材料は、特に限定されない。例えば、絶縁基板10を構成するセラミック層が低温焼結セラミック材料を含有する場合、放電電極20に含有される導電材料として、銅、銀等の金属又はこれらの金属の少なくとも1種を含む合金等が挙げられる。放電電極20において、上述した導電材料は、めっき法、スパッタリング法等により、金、クロム、白金、ニッケル、タングステン、モリブデン等の耐食性を有する金属材料で被覆されていてもよい。
【0061】
集電電極30は、絶縁基板10の厚み方向において放電電極20と対向する位置に、放電電極20と空間を隔てて設けられている。集電電極30は、放電電極20と集電電極30との間の空間に露出している。
【0062】
集電電極30の形状は特に限定されない。図3Bに示す例では、集電電極30は、面状に配置されている。
【0063】
集電電極30には、集電電極30を厚み方向に貫通する複数の第2貫通孔H2が設けられていることが好ましい。第2貫通孔H2は、排気口として機能する。
【0064】
図3Bに示すように、第2貫通孔H2は、規則的に配置されていることが好ましい。図3Bに示す例では、第2貫通孔H2は、厚み方向から見て、第1貫通孔H1と重ならない位置に配置されているが、第1貫通孔H1と重なる位置に配置されていてもよい。
【0065】
図4Bは、図1に示すイオン発生器を厚み方向において集電電極側から見た状態の別の一例を示す平面模式図である。
【0066】
図3B及び図4Bにおいては、厚み方向から見たときの第2貫通孔H2の平面形状は、互いに同じであるが、互いに異なっていてもよい。厚み方向から見たときの第2貫通孔H2の平面形状は特に限定されず、例えば、図3Bに示すような円形又は楕円形等であってもよく、図4Bに示すような長方形等の多角形等であってもよい。図4Bに示すように、多角形の角部には丸みが付けられていてもよい。厚み方向から見たときの第2貫通孔H2の平面形状は、厚み方向から見たときの第1貫通孔H1の平面形状と同じであってもよく、異なっていてもよい。イオン発生器1をイオン風発生器として用いる場合には、第2貫通孔H2の開口率は大きい方が好ましい。
【0067】
図1に示すように、厚み方向に直交する方向から見たときの第2貫通孔H2の断面形状は、互いに同じであることが好ましい。厚み方向に直交する方向から見たときの第2貫通孔H2の断面形状は特に限定されず、例えばテーパー状であってもよい。
【0068】
集電電極30に含有される導電材料は、特に限定されず、例えば、ステンレス、アルミニウム、チタン、銅、又はこれらの金属に耐食性のあるコーティング(ニッケルメッキ等)を形成した材料等が挙げられる。また、第2貫通孔H2が設けられた集電電極30として、例えば、パンチングメッシュ等を用いることができる。このようなパンチングメッシュにおいて、上述した導電材料は、めっき法、スパッタリング法等により、金、クロム、白金、ニッケル、タングステン、モリブデン等の耐食性を有する金属材料で被覆されていてもよい。
【0069】
集電電極30は、例えば、スペーサー40に設けられている。
【0070】
スペーサー40を構成する材料は、特に限定されず、例えば、樹脂、ガラス、セラミック等の絶縁材料が挙げられる。
【0071】
図1及び図2に示すように、例えば、集電ユニットU2のスペーサー40を放電ユニットU1の絶縁基板10に固定することにより、集電ユニットU2を放電ユニットU1に取り付けることができる。絶縁基板10及びスペーサー40のいずれか一方に位置決め用のピンが設けられ、もう一方に位置決め用の穴が設けられていてもよい。図1及び図2に示す例では、放電電極20が設けられていない部分の第1放電側セラミック層11Aの第1主面11Aaを、集電電極30の位置決めのための基準面とすることができる。
【0072】
図1に示すように、放電電極20の底面22が絶縁基板10の内部に埋設されていることが好ましい。放電電極20が絶縁基板10の内部に埋設されることで、放電電極20の先端21の位置がばらつきにくくなる。
【0073】
特に、放電電極20の底面22は、第1放電側セラミック層11Aと、厚み方向において第1放電側セラミック層11Aの第2主面11Ab側に隣り合う第2放電側セラミック層11Bとの界面の位置に設けられていることが好ましい。
【0074】
イオン発生器1が後述する方法により製造される場合、放電電極20の底面22の位置を第1放電側セラミック層11Aの第2主面11Abの位置に一致させることができる。これにより、絶縁基板10の表面(具体的には、第1放電側セラミック層11Aの第1主面11Aa)に対して放電電極20の先端21をさらに高精度に配置することができる。
【0075】
図1等では、説明の便宜のために、第1放電側セラミック層11Aと第2放電側セラミック層11Bとの界面が明瞭に示されているが、このような界面が明瞭に現れないこともある。
【0076】
図6は、本発明の実施形態1のイオン発生器を構成する放電ユニットの第1変形例を示す断面模式図である。
【0077】
図6に示す放電ユニットU1Aでは、放電ユニットU1と異なり、集電電極30の位置決めのための基準面が設けられていない。もちろん、放電ユニットU1Aには、集電電極30の位置決めのための基準面が設けられていてもよい。
【0078】
図7は、本発明の実施形態1のイオン発生器を構成する放電ユニットの第2変形例を示す断面模式図である。
【0079】
図7に示す放電ユニットU1Bでは、放電電極20の底面22が第1放電側セラミック層11Aの第1主面11Aaの位置に設けられている。この場合、絶縁基板10は、第2放電側セラミック層11Bを含まず、第1放電側セラミック層11Aのみを含んでもよい。放電ユニットU1Bには、集電電極30の位置決めのための基準面が設けられていてもよい。
【0080】
図8は、本発明の実施形態1のイオン発生器を構成する放電ユニットの第3変形例を示す断面模式図である。
【0081】
図8に示す放電ユニットU1Cでは、放電ユニットU1Aのように放電電極20の底面22が絶縁基板10の内部に埋設されているが、放電ユニットU1Bのように放電電極20の底面22が第1放電側セラミック層11Aの第1主面11Aaの位置に設けられていてもよい。
【0082】
放電ユニットU1Cでは、絶縁基板10は、第1放電側セラミック層11Aと、第2放電側セラミック層11Bと、第3放電側セラミック層11Cと、第4放電側セラミック層11Dと、を含む。第3放電側セラミック層11Cは、厚み方向に相対する第1主面11Ca及び第2主面11Cbを有する。第4放電側セラミック層11Dは、厚み方向に相対する第1主面11Da及び第2主面11Dbを有する。
【0083】
第3放電側セラミック層11Cは、厚み方向において第1放電側セラミック層11Aの第1主面11Aa側に隣り合うように設けられている。第4放電側セラミック層11Dは、厚み方向において第3放電側セラミック層11Cの第1主面11Ca側に隣り合うように設けられている。ただし、第3放電側セラミック層11C及び第4放電側セラミック層11Dは、厚み方向から見て、放電電極20と重ならない位置に設けられている。
【0084】
図8に示す例では、絶縁基板10の一方主面は、第1放電側セラミック層11Aの第1主面11Aaに加えて、第4放電側セラミック層11Dの第1主面11Daを含む。この場合、第4放電側セラミック層11Dの第1主面11Daを、集電電極30の位置決めのための基準面とすることができる。
【0085】
第1放電側セラミック層11Aの第1主面11Aaに対して、第4放電側セラミック層11Dの第1主面11Daは、放電電極20の先端21よりも厚み方向において高い位置に存在する。つまり、厚み方向における第4放電側セラミック層11Dの第1主面11Daから第1放電側セラミック層11Aの第1主面11Aaまでの距離は、放電電極20の先端21から第1放電側セラミック層11Aの第1主面11Aaまでの距離よりも大きい。
【0086】
図8に示す放電ユニットU1Cのように、絶縁基板10の一方主面は、第1放電側セラミック層11Aの第1主面11Aaに加えて、放電電極20の先端21よりも厚み方向において高い位置に存在するセラミック層の主面を含むことが好ましい。図8に示す例では、厚み方向において第1放電側セラミック層11Aの第1主面11Aa側に隣り合うように2層のセラミック層が設けられているが、1層のセラミック層が設けられていてもよく、3層以上のセラミック層が設けられていてもよい。
【0087】
以下、本発明の実施形態1のイオン発生器の製造方法について説明する。このようなイオン発生器の製造方法も本発明の1つである。
【0088】
図9は、未焼結のセラミック層を準備する工程の一例を示す断面模式図である。
【0089】
図9に示すように、未焼結の第1放電側セラミック層111Aを含む未焼結のセラミック層を準備する。未焼結の第1放電側セラミック層111Aは、厚み方向に相対する第1主面111Aa及び第2主面111Abを有する。なお、未焼結の第1放電側セラミック層111Aは、本発明の「未焼結の第1セラミック層」に相当する。
【0090】
未焼結の第1放電側セラミック層111A等の未焼結のセラミック層は、例えば、上述した低温焼結セラミック材料等のセラミック材料、バインダー及び溶剤を含むセラミックスラリーをドクターブレード法等の方法によってシート状に成形することにより作製される。セラミックスラリーには、分散剤、可塑剤等の種々の添加剤が含有されていてもよい。
【0091】
図10は、未焼結のセラミック拘束層を準備する工程の一例を示す断面模式図である。
【0092】
図10に示すように、未焼結の第1セラミック拘束層151を含む未焼結のセラミック拘束層を準備する。未焼結の第1セラミック拘束層151は、厚み方向に相対する第1主面151a及び第2主面151bを有する。
【0093】
未焼結の第1セラミック拘束層151等の未焼結のセラミック拘束層は、未焼結の第1放電側セラミック層111A等の未焼結のセラミック層と同様の方法により作製される。ただし、未焼結のセラミック拘束層は、未焼結のセラミック層が焼結する温度では実質的に焼結しない。すなわち、未焼結のセラミック拘束層の焼結温度は、未焼結のセラミック層の焼結温度よりも高い。例えば、未焼結のセラミック層に含まれるセラミック材料として低温焼結セラミック材料を用いる場合には、未焼結のセラミック拘束層に含まれるセラミック材料として、例えば、アルミナ、酸化ジルコニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ムライト、酸化マグネシウム、炭化ケイ素等を用いることができる。これらの中では、アルミナが好ましい。
【0094】
図11は、未焼結の第1セラミック拘束層に第1孔を形成する工程の一例を示す断面模式図である。
【0095】
図11に示すように、未焼結の第1セラミック拘束層151の第1主面151a側の端部の幅が第2主面151b側の端部の幅よりも狭い複数の第1孔161を、未焼結の第1セラミック拘束層151の第2主面151bから形成する。第1孔161の形状は、互いに同じであることが好ましい。未焼結の第1セラミック拘束層151の第2主面151bから見た第1孔161の平面形状は特に限定されず、例えば、円形又は楕円形等である。
【0096】
第1孔161は、未焼結の第1セラミック拘束層151を厚み方向に貫通する貫通孔でもよく、未焼結の第1セラミック拘束層151を厚み方向に貫通しない非貫通孔でもよい。第1孔161が貫通孔である場合、未焼結の第1セラミック拘束層151の第2主面151bから第1主面151aに達するように第1孔161を形成する。この際、第1孔161の先端が未焼結の第1セラミック拘束層151の第1主面151aに一致することが好ましく、図11に示す第1孔161の断面形状が三角形であることがより好ましい。第1孔161が非貫通孔である場合、未焼結の第1セラミック拘束層151の第2主面151bから第1主面151aに達しないように第1孔161を形成する。この際、図11に示す第1孔161の断面形状が三角形であることが好ましい。なお、第1孔161は、未焼結の第1セラミック拘束層151の厚み方向に対して傾斜して形成されてもよいが、未焼結の第1セラミック拘束層151の厚み方向に沿って形成されることが好ましい。例えば、第1孔161は、未焼結の第1セラミック拘束層151の厚み方向に直交する方向から見たとき、厚み方向に沿う中心軸に対して対称に形成されることが好ましい。
【0097】
第1孔161は、レーザー光の照射により形成されることが好ましい。レーザー光により形成される第1孔161の形状は、レーザー光の進行方向に向かって先細るテーパー状となる。第1孔161の形状は、レーザー光を照射する条件を選定することによって調整することができる。また、未焼結の第1セラミック拘束層151のレーザー吸収率を調整することにより、第1孔161の形状を調整することもできる。さらに、レーザー光による方法では、高い位置精度及び形状精度で第1孔161を形成することができる。
【0098】
あるいは、第1孔161は、熱プレスにより形成されてもよい。この場合、未焼結の第1セラミック拘束層151に含まれるバインダーとして熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0099】
図12は、第1孔の内部に未焼結の放電電極を形成する工程の一例を示す断面模式図である。
【0100】
図12に示すように、未焼結の第1セラミック拘束層151に形成された第1孔161の内部に、未焼結の放電電極120の少なくとも一部を形成する。図12に示す例では、未焼結の第1セラミック拘束層151に形成された第1孔161の内部に、未焼結の放電電極120の一部を形成する。
【0101】
未焼結の放電電極120は、例えば、未焼結のセラミック層に含まれるセラミック材料として低温焼結セラミック材料を用いる場合には、銅、銀等の導電材料を含む導電性ペーストを第1孔161に充填することにより形成される。
【0102】
図13は、未焼結の第1放電側セラミック層に第2孔を形成する工程の一例を示す断面模式図である。
【0103】
未焼結の第1セラミック拘束層151に形成された第1孔161の内部に未焼結の放電電極120の一部を形成する場合、図13に示すように、未焼結の第1放電側セラミック層111Aの第1主面111Aa側の端部の幅が第2主面111Ab側の端部の幅よりも狭い複数の第2孔162を、未焼結の第1放電側セラミック層111Aの第2主面111Abから形成する。第2孔162の形状は、互いに同じであることが好ましい。未焼結の第1放電側セラミック層111Aの第2主面111Abから見た第2孔162の平面形状は特に限定されず、例えば、円形又は楕円形等である。
【0104】
第2孔162は、未焼結の第1放電側セラミック層111Aを厚み方向に貫通する貫通孔である。したがって、未焼結の第1放電側セラミック層111Aの第2主面111Abから第1主面111Aaに達するように第2孔162を形成する。この際、第2孔162の先端が未焼結の第1放電側セラミック層111Aの第1主面111Aaに一致しないことが好ましく、図13に示す第2孔162の断面形状が台形であることがより好ましい。なお、第2孔162は、未焼結の第1放電側セラミック層111Aの厚み方向に対して傾斜して形成されてもよいが、未焼結の第1放電側セラミック層111Aの厚み方向に沿って形成されることが好ましい。例えば、第2孔162は、未焼結の第1放電側セラミック層111Aの厚み方向に直交する方向から見たとき、厚み方向に沿う中心軸に対して対称に形成されることが好ましい。
【0105】
未焼結の第1放電側セラミック層111Aの第1主面111Aa側に位置する第2孔162の端部の幅は、未焼結の第1セラミック拘束層151の第2主面151b側に位置する第1孔161の端部の幅と同じでもよく、未焼結の第1セラミック拘束層151の第2主面151b側に位置する第1孔161の端部の幅よりも広くてもよい。
【0106】
第2孔162は、レーザー光の照射により形成されることが好ましい。レーザー光により形成される第2孔162の形状は、レーザー光の進行方向に向かって先細るテーパー状となる。第2孔162の形状は、レーザー光を照射する条件を選定することによって調整することができる。また、未焼結の第1放電側セラミック層111Aのレーザー吸収率を調整することにより、第1孔161の形状を調整することもできる。さらに、レーザー光による方法では、高い位置精度及び形状精度で第2孔162を形成することができる。
【0107】
あるいは、第2孔162は、熱プレスにより形成されてもよい。この場合、未焼結の第1放電側セラミック層111Aに含まれるバインダーとして熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0108】
図14は、第2孔の内部に未焼結の放電電極を形成する工程の一例を示す断面模式図である。
【0109】
未焼結の第1放電側セラミック層111Aに第2孔162を形成する場合、図14に示すように、未焼結の第1放電側セラミック層111Aに形成された第2孔162の内部に、未焼結の放電電極120の一部を形成する。
【0110】
例えば、第1孔161の内部に未焼結の放電電極120を形成する方法と同一の方法により、第2孔162の内部に未焼結の放電電極120を形成することができる。第2孔162の内部に形成される未焼結の放電電極120の材料は、第1孔161の内部に形成される未焼結の放電電極120の材料と同一であることが好ましい。
【0111】
図15は、未焼結の第1放電側セラミック層に第1貫通孔を形成する工程の一例を示す断面模式図である。
【0112】
必要に応じて、図15に示すように、未焼結の第1放電側セラミック層111Aを厚み方向に貫通する複数の第1貫通孔H1を形成する。第1貫通孔H1の形状は、互いに同じであることが好ましい。
【0113】
第1貫通孔H1は、例えば、レーザー光を照射することにより形成されてもよく、パンチ等を用いて形成されてもよい。
【0114】
なお、第1貫通孔H1を形成する順番は特に限定されず、例えば、第2孔162を形成する前の未焼結の第1放電側セラミック層111Aに第1貫通孔H1を形成してもよい。
【0115】
図16は、未焼結のセラミック拘束部を第1貫通孔の内部に形成する工程の一例を示す断面模式図である。
【0116】
未焼結の第1放電側セラミック層111Aに第1貫通孔H1を形成する場合、図16に示すように、未焼結の第1放電側セラミック層111Aに形成された第1貫通孔H1の内部に、未焼結のセラミック拘束部150を形成する。
【0117】
未焼結のセラミック拘束部150は、例えば、未焼結のセラミック拘束層に含まれるセラミック材料を含むセラミックペーストを第1貫通孔H1に充填することにより形成される。あるいは、未焼結のセラミック拘束部150は、未焼結のセラミック拘束層と同様のセラミックシートを第1貫通孔H1に充填することにより形成されてもよい。
【0118】
図17は、複合積層体を作製する工程の一例を示す断面模式図である。
【0119】
図17に示すように、未焼結の第1放電側セラミック層111Aの第1主面111Aaと未焼結の第1セラミック拘束層151の第2主面151bとが対向するように、未焼結の第1放電側セラミック層111Aを含む未焼結のセラミック層と未焼結の第1セラミック拘束層151を含む未焼結のセラミック拘束層とを積層することにより、複合積層体100を作製する。
【0120】
未焼結の第1セラミック拘束層151に未焼結の放電電極120の一部が形成され、未焼結の第1放電側セラミック層111Aに未焼結の放電電極120の一部が形成される場合には、未焼結の第1放電側セラミック層111Aに形成された未焼結の放電電極120と未焼結の第1セラミック拘束層151に形成された未焼結の放電電極120とが厚み方向に重なるように、未焼結の第1放電側セラミック層111Aの第1主面111Aaと未焼結の第1セラミック拘束層151の第2主面151bとを対向させる。この際、厚み方向から見て、未焼結の第1放電側セラミック層111Aに形成された未焼結の放電電極120の中心が、未焼結の第1セラミック拘束層151に形成された未焼結の放電電極120の中心と一致することが好ましいが、未焼結の第1セラミック拘束層151に形成された未焼結の放電電極120の中心からずれてもよい。いずれの場合においても、未焼結の第1セラミック拘束層151に形成された未焼結の放電電極120の第2主面151b側の外縁は、未焼結の第1放電側セラミック層111Aに形成された未焼結の放電電極120の第1主面111Aa側の外縁よりも外側に位置しないことが好ましい。
【0121】
図17に示す複合積層体100では、未焼結の第1放電側セラミック層111Aの第2主面111Ab側に未焼結の第2放電側セラミック層111Bが更に積層されている。未焼結の第2放電側セラミック層111Bの未焼結の第1放電側セラミック層111Aと反対側には、未焼結のセラミック拘束層が更に積層されてもよい。同様に、未焼結の第1セラミック拘束層151の未焼結の第1放電側セラミック層111Aと反対側には、未焼結のセラミック拘束層が更に積層されてもよい。
【0122】
得られた複合積層体100を、未焼結の第1放電側セラミック層111A等の未焼結のセラミック層が焼結する温度で焼成する。これにより、未焼結の第1放電側セラミック層111Aは第1放電側セラミック層11Aとなり、未焼結の第2放電側セラミック層111Bは第2放電側セラミック層11Bとなるため、絶縁基板10が作製される。さらに、未焼結の放電電極120は放電電極20となる。
【0123】
一方、複合積層体100の焼成温度では実質的に焼結しない未焼結のセラミック拘束部150及び未焼結の第1セラミック拘束層151は焼成時に収縮しないので、焼成時における絶縁基板10及び放電電極20の不所望な変形を抑制することができる。その結果、絶縁基板10の表面(具体的には、第1放電側セラミック層11Aの第1主面11Aa)に対して放電電極20の先端21を高精度に配置することができる。
【0124】
複合積層体100を焼成した後、残存する未焼結のセラミック拘束部150及び未焼結の第1セラミック拘束層151を除去することが好ましい。未焼結のセラミック拘束部150及び未焼結の第1セラミック拘束層151を除去する方法としては、例えば、ウェットブラスト、サンドブラスト、ブラッシング、超音波洗浄等の方法を用いることができる。
【0125】
以上の工程により、放電ユニットU1Aを作製することができる。同様の方法により、放電ユニットU1を作製することも可能である。また、図示されていないが、第1孔161及び第2孔の大きさ又は位置を変更することにより、図5Cに示す放電電極20C又は図5Dに示す放電電極20Dを形成することができる。
【0126】
図18は、複合積層体を作製する工程の第1変形例を示す断面模式図である。
【0127】
図18に示す複合積層体100Aでは、未焼結の第1セラミック拘束層151の未焼結の第1放電側セラミック層111Aと反対側に未焼結の第2セラミック拘束層152が更に積層されている。未焼結の放電電極120の先端は、未焼結の第1セラミック拘束層151と未焼結の第2セラミック拘束層152との界面の位置と一致している。
【0128】
複合積層体100Aを焼成することによっても、放電ユニットU1Aを作製することができる。また、図示されていないが、未焼結の第2セラミック拘束層152にも未焼結の放電電極120を形成することにより、図5Eに示す放電電極20E又は図5Fに示す放電電極20Fを形成することができる。
【0129】
図19は、複合積層体を作製する工程の第2変形例を示す断面模式図である。
【0130】
図19に示す複合積層体100Bでは、未焼結の第1放電側セラミック層111Aに未焼結の放電電極120が形成されず、未焼結の第1セラミック拘束層151に未焼結の放電電極120の全部が形成されている。図19に示す例では、未焼結の第1セラミック拘束層151の未焼結の第1放電側セラミック層111Aと反対側には未焼結の第2セラミック拘束層152が更に積層されている。未焼結の放電電極120の先端は、未焼結の第1セラミック拘束層151と未焼結の第2セラミック拘束層152との界面の位置と一致してもよく、一致しなくてもよい。
【0131】
複合積層体100Bを焼成することにより、放電ユニットU1Bを作製することができる。
【0132】
図20は、複合積層体を作製する工程の第3変形例を示す断面模式図である。
【0133】
図20に示す複合積層体100Cでは、未焼結の第1放電側セラミック層111Aの未焼結の第2放電側セラミック層111Bと反対側に未焼結の第3放電側セラミック層111C及び未焼結の第1セラミック拘束層151が積層され、未焼結の第3放電側セラミック層111Cの未焼結の第1放電側セラミック層111Aと反対側に未焼結の第4放電側セラミック層111Dが積層され、未焼結の第1セラミック拘束層151の未焼結の第1放電側セラミック層111Aと反対側に未焼結の第2セラミック拘束層152が積層されている。図20に示すように、未焼結の第3放電側セラミック層111C及び未焼結の第1セラミック拘束層151の外側には未焼結の第3セラミック拘束層153が積層されることが好ましく、未焼結の第2放電側セラミック層111Bの外側には未焼結の第4セラミック拘束層154が積層されることが好ましい。未焼結の放電電極120の先端は、未焼結の第1セラミック拘束層151と未焼結の第2セラミック拘束層152との界面の位置と一致してもよく、一致しなくてもよい。
【0134】
複合積層体100Cを焼成することにより、放電ユニットU1Cを作製することができる。
【0135】
その後、例えば、放電ユニットU1に集電ユニットU2を取り付けることにより、イオン発生器1が得られる。
【0136】
[実施形態2]
本発明の実施形態2のイオン発生器では、放電電極及び集電電極の両方が絶縁基板に設けられている。
【0137】
図21は、本発明の実施形態2のイオン発生器の一例を示す断面模式図である。図22Aは、図21に示すイオン発生器を厚み方向において放電電極側から見た状態の一例を示す平面模式図である。図22Bは、図21に示すイオン発生器を厚み方向において集電電極側から見た状態の一例を示す平面模式図である。
【0138】
図21に示すイオン発生器2は、絶縁基板10と、絶縁基板10に設けられた複数の放電電極20と、絶縁基板10の厚み方向において放電電極20と対向する位置に、放電電極20と空間を隔てて設けられた集電電極30と、を備える。
【0139】
絶縁基板10は、厚み方向(図21では上下方向)に積層された複数のセラミック層を含む。図21には絶縁基板10の全体の構成が示されていないが、絶縁基板10は、第1放電側セラミック層11Aと、第2放電側セラミック層11Bと、第1集電側セラミック層12Aと、第2集電側セラミック層12Bと、を含む。
【0140】
本発明の実施形態1と同様、第1放電側セラミック層11Aは、本発明の「第1セラミック層」に相当する。第1放電側セラミック層11Aは、厚み方向に相対する第1主面11Aa及び第2主面11Abを有する。イオン発生器2では、第1放電側セラミック層11Aの第1主面11Aaが放電電極20と集電電極30との間の空間に接している。
【0141】
一方、第1集電側セラミック層12Aは、本発明の「第2セラミック層」に相当する。第1集電側セラミック層12Aは、厚み方向において第1放電側セラミック層11Aの第1主面11Aaと対向する位置に設けられている。
【0142】
第2集電側セラミック層12Bは、厚み方向において第1集電側セラミック層12Aの放電電極20側に隣り合うように設けられている。第2集電側セラミック層12Bの第1集電側セラミック層12Aと反対側には、第2集電側セラミック層12Bと厚み方向に隣り合うように少なくとも1層のセラミック層が更に設けられていてもよい。あるいは、厚み方向において第1集電側セラミック層12Aの放電電極20側に第2集電側セラミック層12Bが設けられていなくてもよい。
【0143】
第1集電側セラミック層12Aの第2集電側セラミック層12Bと反対側には、第1集電側セラミック層12Aと厚み方向に隣り合うように少なくとも1層のセラミック層が更に設けられていてもよい。
【0144】
絶縁基板10には、少なくとも第1集電側セラミック層12Aを厚み方向に貫通する複数の第2貫通孔H2が設けられていることが好ましい。図21に示す例では、第2貫通孔H2は、第1集電側セラミック層12A及び第2集電側セラミック層12Bを厚み方向に貫通するように設けられている。第2貫通孔H2は、排気口として機能する。
【0145】
図22Bに示すように、第2貫通孔H2は、規則的に配置されていることが好ましい。図22Bに示す例では、第2貫通孔H2は、厚み方向から見て、第1貫通孔H1と重ならない位置に配置されているが、第1貫通孔H1と重なる位置に配置されていてもよい。
【0146】
図22Bにおいては、厚み方向から見たときの第2貫通孔H2の平面形状は、互いに同じであるが、互いに異なっていてもよい。厚み方向から見たときの第2貫通孔H2の平面形状は特に限定されず、例えば、円形又は楕円形等であってもよく、長方形等の多角形等であってもよい。多角形の角部には丸みが付けられていてもよい。厚み方向から見たときの第2貫通孔H2の平面形状は、厚み方向から見たときの第1貫通孔H1の平面形状と同じであってもよく、異なっていてもよい。イオン発生器2をイオン風発生器として用いる場合には、第2貫通孔H2の開口率は大きい方が好ましい。
【0147】
図21に示すように、厚み方向に直交する方向から見たときの第2貫通孔H2の断面形状は、互いに同じであることが好ましい。厚み方向に直交する方向から見たときの第2貫通孔H2の断面形状は特に限定されず、例えばテーパー状であってもよい。
【0148】
その他の絶縁基板10の構成、及び、放電電極20の構成については、イオン発生器1と同様である。
【0149】
絶縁基板10には、少なくとも第1放電側セラミック層11Aを厚み方向に貫通する複数の第1貫通孔H1が設けられていることが好ましい。図21に示す例では、第1貫通孔H1は、第1放電側セラミック層11A及び第2放電側セラミック層11Bを厚み方向に貫通するように設けられている。第1貫通孔H1は、吸気口として機能する。
【0150】
第1貫通孔H1は、例えば、隣り合う放電電極20の間に配置されている。第1貫通孔H1は、規則的に配置されていることが好ましい。図22Aに示す例では、第1貫通孔H1は、厚み方向から見て、最も近い放電電極20の先端21同士を結ぶ直線上に配置されている。
【0151】
図22Aにおいては、厚み方向から見たときの第1貫通孔H1の平面形状は、互いに同じであるが、互いに異なっていてもよい。厚み方向から見たときの第1貫通孔H1の平面形状は特に限定されず、例えば、円形又は楕円形等であってもよく、長方形等の多角形等であってもよい。多角形の角部には丸みが付けられていてもよい。イオン発生器2をイオン風発生器として用いる場合には、第1貫通孔H1の開口率は大きい方が好ましい。
【0152】
図21に示すように、厚み方向に直交する方向から見たときの第1貫通孔H1の断面形状は、互いに同じであることが好ましい。厚み方向に直交する方向から見たときの第1貫通孔H1の断面形状は特に限定されず、例えばテーパー状であってもよい。
【0153】
イオン発生器2では、放電電極20の先端21が絶縁基板10の内側に位置しているため、放電電極20にホコリ等が付着することによる影響を抑えることができる。
【0154】
集電電極30は、絶縁基板10に設けられている。具体的には、第1集電側セラミック層12Aに集電電極30が設けられ、かつ、集電電極30の一部が第1集電側セラミック層12Aから露出している。
【0155】
イオン発生器2が後述する方法により製造される場合、未焼結のセラミック拘束層に拘束された状態で放電電極20及び集電電極30が形成される。未焼結のセラミック拘束層は焼成時に焼結しない、つまり、未焼結のセラミック拘束層は焼成時に収縮しないので、焼成時における絶縁基板10、放電電極20及び集電電極30の不所望な変形を抑制することができる。その結果、放電電極20の先端21と集電電極30との最近接距離が高精度となるように放電電極20及び集電電極30を配置することができる。
【0156】
図21に示すように、放電電極20の先端21に最も近い集電電極30の露出部(図21中、Pで示す箇所)は、第1集電側セラミック層12Aと、厚み方向において第1集電側セラミック層12Aの放電電極20側に隣り合う第2集電側セラミック層12Bとの界面の位置に設けられていることが好ましい。
【0157】
図21等では、説明の便宜のために、第1集電側セラミック層12Aと第2集電側セラミック層12Bとの界面が明瞭に示されているが、このような界面が明瞭に現れないこともある。
【0158】
集電電極30の形状は特に限定されない。図22Bに示す例では、集電電極30は、第2貫通孔H2の側壁の全周にわたってリング状に配置されている。厚み方向から見て、集電電極30の中心は、放電電極20の中心と一致することが好ましい。各々の第2貫通孔H2の側壁に配置される集電電極30は、配線等の導電部を介して互いに接続されていてもよい。集電電極30の形状は、1箇所以上途切れた部分を備えるリング形状であってもよい。この場合、途切れた部分には第1集電側セラミック層12Aが配置されることになる。
【0159】
集電電極30は、第2貫通孔H2の側壁の一部に配置されていてもよい。その場合、集電電極30は、第2貫通孔H2の側壁に沿って連続的に配置されていてもよく、断続的に配置されていてもよい。
【0160】
あるいは、集電電極30は、第2貫通孔H2の側壁に沿って個別に配置される代わりに、一体となって面状に配置されてもよい。
【0161】
集電電極30に含有される導電材料は、特に限定されない。例えば、絶縁基板10を構成するセラミック層が低温焼結セラミック材料を含有する場合、集電電極30に含有される導電材料として、銅、銀等の金属又はこれらの金属の少なくとも1種を含む合金等が挙げられる。集電電極30において、上述した導電材料は、めっき法、スパッタリング法等により、金、クロム、白金、ニッケル、タングステン、モリブデン等の耐食性を有する金属材料で被覆されていてもよい。集電電極30に含有される導電材料は、放電電極20に含有される導電材料と同一であることが好ましい。
【0162】
以下、本発明の実施形態2のイオン発生器の製造方法について説明する。このようなイオン発生器の製造方法も本発明の1つである。
【0163】
本発明の実施形態2では、複合積層体を作製する方法が実施形態1と異なる。
【0164】
図23は、複合積層体を作製する工程の一例を示す断面模式図である。
【0165】
図23に示す複合積層体200を作製する前に、未焼結の第1集電側セラミック層112Aに、一部が未焼結の第1集電側セラミック層112Aから露出するように、未焼結の集電電極130を形成する。なお、未焼結の第1集電側セラミック層112Aは、本発明の「未焼結の第2セラミック層」に相当する。
【0166】
図23に示す例では、複合積層体200を作製するために、未焼結の放電電極120が形成された未焼結の第1セラミック拘束層151の第1主面151aに、未焼結の第1セラミック拘束層151の第1主面151a側から未焼結の第2セラミック拘束層152及び未焼結の第2集電側セラミック層112Bを介して、未焼結の集電電極130が形成された未焼結の第1集電側セラミック層112Aを積層する。図23に示すように、未焼結の第1集電側セラミック層112Aの外側には未焼結の第3セラミック拘束層153が積層されることが好ましく、未焼結の第2放電側セラミック層111Bの外側には未焼結の第4セラミック拘束層154が積層されることが好ましい。
【0167】
なお、複合積層体200を作製する工程では、未焼結の放電電極120が形成された未焼結の第1セラミック拘束層151の第1主面151aに、未焼結の集電電極130が形成された未焼結の第1集電側セラミック層112Aを、直接的又は間接的に積層すればよい。具体的には、未焼結の集電電極130の形状又は配置等によって、未焼結の放電電極120が形成された未焼結の第1セラミック拘束層151の第1主面151aに、別の未焼結のセラミック拘束層を介して、又は、未焼結の第1セラミック拘束層151の第1主面151a側から別の未焼結のセラミック拘束層及び別の未焼結のセラミック層を介して、あるいは直接に、未焼結の集電電極130が形成された未焼結の第1集電側セラミック層112Aを積層すればよい。
【0168】
得られた複合積層体200を、未焼結の第1放電側セラミック層111A等の未焼結のセラミック層が焼結する温度で焼成する。これにより、未焼結の第1放電側セラミック層111Aは第1放電側セラミック層11Aとなり、未焼結の第2放電側セラミック層111Bは第2放電側セラミック層11Bとなり、未焼結の第1集電側セラミック層112Aは第1集電側セラミック層12Aとなり、未焼結の第2集電側セラミック層112Bは第2集電側セラミック層12Bとなるため、絶縁基板10が作製される。さらに、未焼結の放電電極120は放電電極20となり、未焼結の集電電極130は集電電極30となる。
【0169】
一方、複合積層体200の焼成温度では実質的に焼結しない未焼結のセラミック拘束部150、未焼結の第1セラミック拘束層151及び未焼結の第2セラミック拘束層152は焼成時に収縮しないので、焼成時における絶縁基板10、放電電極20及び集電電極30の不所望な変形を抑制することができる。その結果、放電電極20の先端21と集電電極30との最近接距離が高精度となるように放電電極20及び集電電極30を配置することができる。複合積層体200が未焼結の第3セラミック拘束層153及び未焼結の第4セラミック拘束層154を備える場合も同様である。
【0170】
複合積層体200を焼成した後、残存する未焼結のセラミック拘束部150、未焼結の第1セラミック拘束層151及び未焼結の第2セラミック拘束層152を除去することが好ましい。複合積層体200が未焼結の第3セラミック拘束層153及び未焼結の第4セラミック拘束層154を備える場合には、それらも除去することが好ましい。
【0171】
以上の工程により、イオン発生器2が得られる。
【0172】
図24は、本発明の実施形態2のイオン発生器の第1変形例を示す断面模式図である。図25は、図24に示すイオン発生器を厚み方向において放電電極側から見た状態の一例を示す平面模式図である。なお、図24に示すイオン発生器を厚み方向において集電電極側から見た状態の一例を示す平面模式図は、図22Bと同様である。
【0173】
図24に示すイオン発生器2Aでは、第1貫通孔H1は、斜め方向に隣り合う放電電極20の間に配置されている。第1貫通孔H1は、規則的に配置されていることが好ましい。図25に示す例では、第1貫通孔H1は、厚み方向から見て、最も近い放電電極20の先端21同士を結ぶ直線上に配置されていない。
【0174】
第2貫通孔H2は、規則的に配置されていることが好ましい。第2貫通孔H2は、厚み方向から見て、第1貫通孔H1と重ならない位置に配置されていてもよく、第1貫通孔H1と重なる位置に配置されていてもよい。
【0175】
イオン発生器2Aでは、放電電極20の先端21が絶縁基板10の内側に位置しているため、放電電極20にホコリ等が付着することによる影響を抑えることができる。
【0176】
図24に示すように、放電電極20の先端21に最も近い集電電極30の露出部Pは、第1集電側セラミック層12Aと、厚み方向において第1集電側セラミック層12Aの放電電極20側に隣り合う第2集電側セラミック層12Bとの界面の位置に設けられていることが好ましい。
【0177】
集電電極30は、例えば、第2貫通孔H2の側壁の全周にわたってリング状に配置されている。厚み方向から見て、集電電極30の中心は、放電電極20の中心と一致することが好ましい。各々の第2貫通孔H2の側壁に配置される集電電極30は、配線等の導電部を介して互いに接続されていてもよい。あるいは、集電電極30は、第2貫通孔H2の側壁に沿って個別に配置される代わりに、一体となって面状に配置されてもよい。
【0178】
図26は、本発明の実施形態2のイオン発生器の第2変形例を示す断面模式図である。図27は、図26に示すイオン発生器を厚み方向において集電電極側から見た状態の一例を示す平面模式図である。なお、図26に示すイオン発生器を厚み方向において放電電極側から見た状態の一例を示す平面模式図は、図25と同様である。
【0179】
図26に示すイオン発生器2Bでは、集電電極30は、絶縁基板10の内側面(具体的には、第1集電側セラミック層12Aの放電電極20側の主面)に露出するように面状に配置されている。図27に示すように、厚み方向から見て、集電電極30の中心は、放電電極20の中心と一致することが好ましい。
【0180】
図26に示すイオン発生器2Bでは、第2貫通孔H2は、斜め方向に隣り合う集電電極30の間に配置されている。第2貫通孔H2は、規則的に配置されていることが好ましい。図27に示す例では、第2貫通孔H2は、厚み方向から見て、最も近い集電電極30同士を結ぶ直線上に配置されていない。厚み方向から見て、第2貫通孔H2は、第1貫通孔H1と重なる位置に配置されていることが好ましく、第2貫通孔H2の中心は、第1貫通孔H1の中心と一致することがより好ましい。
【0181】
イオン発生器2Bでは、放電電極20の先端21が絶縁基板10の内側に位置しているため、放電電極20にホコリ等が付着することによる影響を抑えることができる。
【0182】
図26に示すように、放電電極20の先端21に最も近い集電電極30の露出部Pは、第1集電側セラミック層12Aの放電電極20側の主面の位置に設けられていることが好ましい。
【0183】
図28は、本発明の実施形態2のイオン発生器の第3変形例を示す断面模式図である。図29Aは、図28に示すイオン発生器を厚み方向において放電電極側から見た状態の一例を示す平面模式図である。図29Bは、図28に示すイオン発生器を厚み方向において集電電極側から見た状態の一例を示す平面模式図である。
【0184】
図28に示すイオン発生器2Cでは、放電電極20と集電電極30との間の空間が流路壁13によって離隔されている。これにより、隣り合う流路間でのイオン風の摩擦及び干渉等を防止することができる。
【0185】
イオン発生器2Cでは、放電電極20の先端21が絶縁基板10の内側に位置しているため、放電電極20にホコリ等が付着することによる影響を抑えることができる。
【0186】
放電電極20は、例えば、第1貫通孔H1の周囲に配置されている。第1貫通孔H1の周囲には、1個の放電電極20が配置されてもよく、複数の放電電極20が配置されてもよい。各々の第1貫通孔H1の周囲に配置される放電電極20の数は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0187】
集電電極30は、例えば、第2貫通孔H2の側壁の全周にわたってリング状に配置されている。厚み方向から見て、集電電極30の中心は、放電電極20の中心と一致することが好ましい。各々の第2貫通孔H2の側壁に配置される集電電極30は、配線等の導電部を介して互いに接続されていてもよい。あるいは、集電電極30は、第2貫通孔H2の側壁に沿って個別に配置される代わりに、一体となって面状に配置されてもよい。集電電極30の形状は、1箇所以上途切れた部分を備えるリング形状であってもよい。この場合、途切れた部分には第1集電側セラミック層12Aが配置されることになる。
【0188】
第2貫通孔H2は、規則的に配置されていることが好ましい。厚み方向から見て、第2貫通孔H2は、第1貫通孔H1と重なる位置に配置されていることが好ましく、第2貫通孔H2の中心は、第1貫通孔H1の中心と一致することがより好ましい。
【0189】
図28に示すように、放電電極20の先端21に最も近い集電電極30の露出部Pは、第1集電側セラミック層12Aと、厚み方向において第1集電側セラミック層12Aの放電電極20側に隣り合う第2集電側セラミック層12Bとの界面の位置に設けられていることが好ましい。
【0190】
本発明のイオン発生器は、上記実施形態に限定されるものではなく、イオン発生器の構成、製造条件等に関し、本発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0191】
1、2、2A、2B、2C イオン発生器
10 絶縁基板
11A 第1放電側セラミック層(第1セラミック層)
11Aa 第1放電側セラミック層の第1主面
11Ab 第1放電側セラミック層の第2主面
11B 第2放電側セラミック層
11C 第3放電側セラミック層
11Ca 第3放電側セラミック層の第1主面
11Cb 第3放電側セラミック層の第2主面
11D 第4放電側セラミック層
11Da 第4放電側セラミック層の第1主面
11Db 第4放電側セラミック層の第2主面
12A 第1集電側セラミック層(第2セラミック層)
12B 第2集電側セラミック層
13 流路壁
20、20A、20B、20C、20D、20E、20F 放電電極
21 放電電極の先端
22 放電電極の底面
30 集電電極
40 スペーサー
100、100A、100B、100C、200 複合積層体
111A 未焼結の第1放電側セラミック層(未焼結の第1セラミック層)
111Aa 未焼結の第1放電側セラミック層の第1主面
111Ab 未焼結の第1放電側セラミック層の第2主面
111B 未焼結の第2放電側セラミック層
111C 未焼結の第3放電側セラミック層
111D 未焼結の第4放電側セラミック層
112A 未焼結の第1集電側セラミック層(未焼結の第2セラミック層)
112B 未焼結の第2集電側セラミック層
120 未焼結の放電電極
130 未焼結の集電電極
150 未焼結のセラミック拘束部
151 未焼結の第1セラミック拘束層
151a 未焼結の第1セラミック拘束層の第1主面
151b 未焼結の第1セラミック拘束層の第2主面
152 未焼結の第2セラミック拘束層
153 未焼結の第3セラミック拘束層
154 未焼結の第4セラミック拘束層
161 第1孔
162 第2孔
H1 第1貫通孔
H2 第2貫通孔
P 放電電極の先端に最も近い集電電極の露出部
U1、U1A、U1B、U1C 放電ユニット
U2 集電ユニット
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22A
図22B
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29A
図29B