(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】車両のバッテリー収容部
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20240903BHJP
B60R 16/04 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
B62D25/20 J
B60R16/04 C
(21)【出願番号】P 2024501465
(86)(22)【出願日】2023-02-20
(86)【国際出願番号】 JP2023006034
(87)【国際公開番号】W WO2023157969
(87)【国際公開日】2023-08-24
【審査請求日】2024-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2022024489
(32)【優先日】2022-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177460
【氏名又は名称】山崎 智子
(72)【発明者】
【氏名】冨樫 全希
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-19409(JP,A)
【文献】特開2018-95110(JP,A)
【文献】特開2015-8161(JP,A)
【文献】特開2006-214185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
B60R 16/04
H01M 50/20
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロアパネルに下方に凹ませた凹状に形成され、内部にバッテリーを収容する車両のバッテリー収容部であって、
前記バッテリー収容部は、前記バッテリーが載置される底壁と、前記底壁の周縁から起立して前記底壁の周囲を囲む側壁と、前記底壁の中央に設けられた開口部と、前記底壁に前記開口部を挟んで互いに対向するように一対で設けられた上方に凸状のビードと、を備え
前記ビードは、
車両の前後方向または車両の幅方向に延在する第1ビード部と、
前記第1ビード部の長手方向の両端から前記開口部側に向かって前記第1ビード部の延在方向と交差する方向に延在する一対の第2ビード部と、を含んで構成されている、
ことを特徴とする車両のバッテリー収容部。
【請求項2】
前記開口部を挟んで一方側の第2ビードと他方側の第2ビードとが所定の間隔を開けて配置されている
ことを特徴とする請求項1記載の車両のバッテリー収容部。
【請求項3】
前記第1ビード部は、その周縁部の一部が車両の前後方向または車両の幅方向に延びる直線状に形成された第1直線縁部を有し、
前記第2ビード部は、その周縁部の一部が前記第1直線縁部の延在方向と交差する方向に延びる直線状に形成された第2直線縁部を有する
ことを特徴とする請求項1または2記載の車両のバッテリー収容部。
【請求項4】
前記開口部側に位置する前記第1ビード部の内周縁部と、前記開口部側に位置する前記第2ビード部の内周縁部とは、前記開口部の外形に沿った形状とされ、
前記第1直線縁部は、前記開口部と反対側に位置する前記第1ビード部の外周縁部に形成され、
前記第2直線縁部は、前記開口部と反対側に位置する前記第2ビード部の外周縁部に形成される
ことを特徴とする請求項3記載の車両のバッテリー収容部。
【請求項5】
前記開口部は円形を呈し、
前記第1ビード部の内周縁部と、前記第2ビード部の内周縁部とは、前記開口部の周方向に沿った滑らかな単一の曲線で形成されている、
ことを特徴とする請求項4記載の車両のバッテリー収容部。
【請求項6】
前記第1ビード部の外周縁部と前記第2ビード部の外周縁部との境界部分は、前記第1直線縁部と前記第2直線縁部とを斜めに繋ぐ傾斜縁部とされている、
ことを特徴とする
請求項3記載の車両のバッテリー収容部。
【請求項7】
前記底壁は、車両の前後方向に延びる互いに平行な一対の第1辺と、車両の幅方向に延びる互いに平行な一対の第2辺とを有する略矩形状に形成され、
前記側壁は、前記一対の第1辺から起立して互いに対向する一対の第1側壁と、前記一対の第2辺から起立して互いに対向する一対の第2側壁とを有し、
前記第1ビード部の前記第1直線縁部は、前記第1側壁または前記第2側壁の何れか一方と平行に延在され、
前記第2ビード部の前記第2直線縁部は、前記第1側壁または前記第2側壁の何れか他方と平行に延在される
ことを特徴とする
請求項3記載の車両のバッテリー収容部。
【請求項8】
前記第2ビード部の先端部は前記第2ビード部の延在方向の先方に向かって凸状の湾曲形状で形成されている、
ことを特徴とする
請求項1または2記載の車両のバッテリー収容部。
【請求項9】
前記底壁は、前記開口部を含む中央の部位が下方に膨出形成された環状凹部とされ、前記開口部は前記底壁において最も低位に位置される
ことを特徴とする
請求項1または2記載の車両のバッテリー収容部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のバッテリー収容部に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車などの車両には、走行用のモータに電力を供給する駆動用バッテリーとは別に、車両に搭載された補機類に電力を供給する補機用バッテリーが設けられている。
このような補機用バッテリーが設けられた車両として、荷室を区画するリアフロアパネルに下方に凹ませて形成されバッテリーを収容するバッテリー収容部を備えたものが開示されている(特許文献1参照)。
バッテリー収容部は、補機用バッテリーの底面が載置される底壁と、底壁の周囲から起立する側壁とを備え、底壁の中央には、バッテリー収容部の電着塗装時に不要な電着塗料を排出するための開口部が設けられている。
補機用バッテリーは、例えば、14kg程度の重量を有している。そのため、車両走行時に路面の凹凸によって補機用バッテリーからバッテリー収容部に対して上下方向に大きな荷重が入力することから、バッテリー収容部の底壁を補強して強度剛性を確保する必要がある。
そこで、上記従来技術では、底壁に、開口部を挟んで上方に凸状に形成された一対のビードを設けており、一対のビードは、互いに平行して車両前後方向に沿って直線状に延在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両走行時に、補機用バッテリーから上下方向の荷重が底壁に入力すると、底壁を車両前後方向に曲げようとする曲げモーメントによって第1の応力が発生し、また、底壁を車幅方向に曲げようとする曲げモーメントによって第2の応力が発生する。
上記従来技術では、一対のビードが車両前後方向に延在していることから一対のビードによって第1の応力に対する強度剛性を高めることができるものの、第2の応力に対する強度剛性を高めることが難しく、バッテリー収容部の耐久性を確保する上で改善の余地がある。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、走行時にバッテリーから入力する荷重に対して強度剛性を高め、耐久性の向上を図る上で有利な車両のバッテリー収容部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の一実施の形態は、車両のフロアパネルに下方に凹ませた凹状に形成され、内部にバッテリーを収容する車両のバッテリー収容部であって、
前記バッテリー収容部は、前記バッテリーが載置される底壁と、前記底壁の周縁から起立して前記底壁の周囲を囲む側壁と、前記底壁の中央に設けられた開口部と、前記底壁に前記開口部を挟んで互いに対向するように一対で設けられた上方に凸状のビードと、を備え前記ビードは、車両の前後方向または車両の幅方向に延在する第1ビード部と、前記第1ビード部の長手方向の両端から前記開口部側に向かって前記第1ビード部の延在方向と交差する方向に延在する一対の第2ビード部と、を含んで構成されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記開口部を挟んで一方側の第2ビードと他方側の第2ビードとが所定の間隔を開けて配置されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記第1ビード部は、その周縁部の一部が車両の前後方向または車両の幅方向に延びる直線状に形成された第1直線縁部を有し、前記第2ビード部は、その周縁部の一部が前記第1直線縁部の延在方向と交差する方向に延びる直線状に形成された第2直線縁部を有することを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記開口部側に位置する前記第1ビード部の内周縁部と、前記開口部側に位置する前記第2ビード部の内周縁部とは、前記開口部の外形に沿った形状とされ、前記第1直線縁部は、前記開口部と反対側に位置する前記第1ビード部の外周縁部に形成され、前記第2直線縁部は、前記開口部と反対側に位置する前記第2ビード部の外周縁部に形成されることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、記開口部は円形を呈し、前記第1ビード部の内周縁部と、前記第2ビード部の内周縁部とは、前記開口部の周方向に沿った滑らかな単一の曲線で形成されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記第1ビード部の外周縁部と前記第2ビード部の外周縁部との境界部分は、前記第1直線縁部と前記第2直線縁部とを斜めに繋ぐ傾斜縁部とされていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記底壁は、車両の前後方向に延びる互いに平行な一対の第1辺と、車両の幅方向に延びる互いに平行な一対の第2辺とを有する略矩形状に形成され、前記側壁は、前記一対の第1辺から起立して互いに対向する一対の第1側壁と、
前記一対の第2辺から起立して互いに対向する一対の第2側壁とを有し、前記第1ビード部の前記第1直線縁部は、前記第1側壁または前記第2側壁の何れか一方と平行に延在され、前記第2ビード部の前記第2直線縁部は、前記第1側壁または前記第2側壁の何れか他方と平行に延在されることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記第2ビード部の先端部は前記第2ビード部の延在方向の先方に向かって凸状の湾曲形状で形成されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記底壁は、前記開口部を含む中央の部位が下方に膨出形成された環状凹部とされ、前記開口部は前記底壁において最も低位に位置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施の形態によれば、車両走行時、補機用バッテリーから上下方向の荷重が底壁に入力し、第1ビード部をその延在方向に曲げようとする曲げモーメントが生じ、また、第2ビード部をその延在方向に曲げようとする曲げモーメントが生じた場合、第1ビード部によってその曲げモーメントに対する底壁の強度剛性が高められると共に、第2ビード部によってその曲げモーメントに対する底壁の強度剛性が高められている。
そのため、底壁に生じる互いに直交する第1の応力および第2の応力の双方に対する底壁の強度剛性を高めることができ、バッテリートレイ耐久性を確保する上で有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、電着塗装時に第2ビード部の間から余分な電着塗料を開口部へ流すことができ、電着塗料の排出性を確保した上で底壁の強度剛性を高めることができるので、電着塗料の排出性の確保とバッテリートレイの耐久性の確保の両立を図る上で有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、バッテリー収容部は、第1直線縁部と第2直線部を有することでバッテリー収容部の車両前後方向または車幅方向の応力に対する強度剛性を高め、バッテリー収容部の耐久性を確保する上でより有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、第1ビード部の内周縁部と第2ビード部の内周縁部とが開口部に沿ってかつ開口部との間に一定の間隔をおいて配置されるため、開口部の周囲に残存する不要な電着塗料を円滑に開口部から排出させる上で有利となると共に、バッテリー収容部の車両前後方向または車幅方向の応力に対する強度剛性を高め、バッテリー収容部の耐久性を確保する上で有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、第1ビード部の内周縁部と、第2ビード部の内周縁部とが交差する箇所に対する応力集中を緩和することができるので、底壁に生じる互いに直交する第1の応力および第2の応力の双方に対する底壁の強度剛性を高める上でより有利となり、バッテリー収容部の耐久性を確保する上でより有利となる。
また、第1ビード部の内周縁部と、第2ビード部の内周縁部との境目に不要な電着塗料が溜まって残存することを抑制する上で有利となり、バッテリー収容部の塗装を効率的に行なう上でより有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、第1直線縁部と第2直線縁部とが交差する箇所に対する応力集中を緩和することができるので、底壁に生じる互いに直交する第1の応力および第2の応力の双方に対する底壁の強度剛性を高める上でより有利となり、バッテリー収容部の耐久性を確保する上でより有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、底壁、一対の第1側壁、一対の第2側壁によって構成されるバッテリー収容部の構造を簡素化する上で有利となり、バッテリー収容部の製造コストの低減を図る上で有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、第2ビード部の先端部に対する応力集中を緩和することができるので、第1の応力および第2の応力の双方に対する底壁の強度剛性を高める上でより有利となり、バッテリー収容部の耐久性を確保する上でより有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、開口部の周囲の底壁の強度剛性を向上させることができる上、底壁に残存する不要な電着塗料を環状凹部から開口部を介して円滑に排出させる上で有利となり、バッテリー収容部の耐久性の確保と電着塗料の排出性の確保の両立を図る上でより有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態に係る車両のバッテリー収容部が適用された車両のリアフロアパネルの斜視図である。
【
図2】実施の形態に係る車両のバッテリー収容部の平面図である。
【
図3】
図2のA-A線断面図であり、補機用バッテリーから荷重が入力した際の車両のバッテリー収容部の変形前、変形後の状態を示す。
【
図4】補機用バッテリー、バッテリーホルダおよびフックボルトを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
なお、以下の図面において、符号FRは車両前方、符号UPは車両上方、符号HLは車幅方向を示す。
本実施の形態に係る車両のバッテリー収容部(バッテリートレイ)は、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車などの補機用バッテリーを備える車両に適用されている。
補機用バッテリーは、車両に搭載された補機類に電力を供給するものであり、車両を走行させるモータに電力を供給する駆動用バッテリーとは別に設けられている。
【0009】
図1に示すように、車両の荷室は鋼板で形成されたフロアパネル10(本実施の形態ではリアフロアパネル10)によって区画されている。
バッテリー収容部16は、リアフロアパネル10に下方に凹ませて形成され、内部に補機用バッテリー14を収容するものである。
本実施の形態のバッテリー収容部16は、鋼板がプレス加工されることでリアフロアパネル10とは別体に構成されている。
バッテリー収容部16は、後述するように電着塗装で塗装される。
【0010】
図1、
図2、
図3に示すように、バッテリー収容部16は、底壁24と、側壁12と、フランジ18と、後述する開口部30と、後述する一対のビード36と、を含んで構成されている。
底壁24は、補機用バッテリー14が載置される箇所である。本実施の形態では、底壁24は、車両の前後方向に延びる互いに平行な一対の第1辺2402と、車両の幅方向に延びる互いに平行な一対の第2辺2404と、を有する略矩形状に形成されている。
本実施の形態では、底壁24は平面視長方形を呈し、第1辺2402が短辺であり、第2辺2404が長辺である。
【0011】
側壁12は、底壁24の周縁から起立して底壁24の周囲を囲むように設けられている。
図2に示すように、本実施の形態では、側壁12は、一対の第1辺2402(短辺)から起立して車幅方向で互いに対向する一対の第1側壁20と、一対の第2辺2404(長辺)から起立して車両前後方向で互いに対向する一対の第2側壁22と、を有している。
フランジ18は、一対の第1側壁20の上端および一対の第2側壁22の上端からバッテリー収容部16の外側に突設され、平面視矩形枠状を呈している。
バッテリー収容部16はリアフロアパネル10に形成された不図示の開口に上方からはめ込まれ、フランジ18が開口の周囲のリアフロアパネル10部分に溶接されることでリアフロアパネル10に一体的に取り付けられている。
本実施の形態では、このようにバッテリー収容部16がリアフロアパネル10に取り付けられた状態で、
図2に示すように、バッテリー収容部16が2つのクロスメンバ26A、26Bの間に位置する。そして、2つのクロスメンバ26A、26Bにより、バッテリー収容部16に収容された補機用バッテリー14の保護が図られている。
【0012】
図2、
図3に示すように、底壁24は、底壁本体28と、開口部30と、底壁傾斜部32と、環板部34と、一対のビード36と、を備えている。
底壁本体28は、一対の第1側壁20および一対の第2側壁22の下端に接続されている。
開口部30は、電着塗装時に不要な電着塗料を排出するための箇所である。開口部30は、底壁本体28の中央に設けられ、本実施の形態では開口部30は円形を呈している。
底壁傾斜部32は、開口部30の周囲において開口部30に向かうにつれて底壁本体28から下方に変位している。本実施の形態では、底壁傾斜部32は円錐面状を呈している。
環板部34は、底壁傾斜部32の下端を接続して開口部30の周囲で環板状に延在しており、したがって、環板部34の内側に開口部30が位置している。
環板部34は底壁24において最も低位に位置している。
言い換えると、底壁24は、開口部30を含む中央の部位が下方に膨出形成された環状凹部35とされ、開口部30は底壁24において最も低位に位置されている。
【0013】
一対のビード36は、底壁本体28に開口部30を挟んで互いに対向するように上方に凸状に形成されている。
図2に示すように、一対のビード36は、車幅方向において底壁傾斜部32と、環板部34と、開口部30と、を挟んで設けられている。
一対のビード36は、第1ビード部38と、一対の第2ビード部40と、を含んで構成されている。
第1ビード部38の上面3810および第2ビード部40の上面4010は、同一平面上を延在している。
第1ビード部38は、車両の前後方向または車両の幅方向に延在している。
本実施の形態では、第1ビード部38は、車幅方向の幅を有して車両前後方向に延在している。言い換えると、第1ビード部38は第1側壁20の延在方向と平行して直線状に延在している。
第1ビード部38は、その周縁部の一部が車両の前後方向または車両の幅方向に延びる直線状に形成された第1直線縁部3802を有する。本実施の形態では、第1直線縁部3802は車両の前後方向に延びている。
第1直線縁部3802は、開口部30と反対側に位置する第1ビード部38の外周縁部に形成されている。
第1直線縁部3802は、第1側壁20または第2側壁22の何れか一方と平行に延在される。本実施の形態では、第1直線縁部3802は第1側壁20と平行に延在されている。
一対の第2ビード部40は、第1ビード部38の長手方向の両端から開口部30側に向かって第1ビード部38の延在方向と交差(直交)する方向に延在している。
本実施の形態では、一対の第2ビード部40は、車両前後方向の幅を有して車幅方向に延在している。言い換えると、一対の第2ビード部40は第1ビード部38の長手方向の両端から互いに接近する方向に延在している。
一対の第2ビード部40は、開口部30を挟んで車幅方向一方側と他方側とが所定の間隔を開けて配置されている。より具体的には、一対の第2ビード部40の互いの先端部4006が所定の間隔を開けて対向される。
一対の第2ビード部40は、その周縁部の一部が第1直線縁部3802の延在方向と交差する方向に延びる直線状に形成された第2直線縁部4002を有している。
第2直線縁部4002は、開口部30と反対側に位置する第2ビード部40の外周縁部に形成されている。
一対の第2ビード部40の第2直線縁部4002は、第1側壁20または第2側壁22の何れか他方と平行に延在される。本実施の形態では、第2直線縁部4002は第2側壁22と平行に延在されている。
第1ビード部38の外周縁部と一対の第2ビード部40の外周縁部との境界部分は、第1直線縁部3802と第2直線縁部4002とを斜めに繋ぐ傾斜縁部41とされている。
【0014】
図2に示すように、開口部30側に位置する第1ビード部38の内周縁部3804と、開口部30側に位置する一対の第2ビード部40の内周縁部4004とは、開口部30の外形に沿った形状とされ、それら第1ビード部38の内周縁部3804と、一対の第2ビード部40の内周縁部4004とは、開口部30の周方向に沿った滑らかな単一の曲線で形成されている。
本実施の形態では、第1ビード部38の内周縁部3804と一対の第2ビード部40の内周縁部4004は、開口部30を中心とした円弧で形成されている。
【0015】
第2ビード部40の先端部4006は第2ビード部40の延在方向の先方に向かって凸状の湾曲形状で形成されている。
各ビード36の一対の第2ビード部40の先端部4006は互いに対向している。それら互いに対向する一対の第2ビード部40の先端部4006の間に位置する底壁本体28の箇所は、ビード36の外側に位置する底壁本体28と、ビード36の内側に位置する底壁本体28と、を接続する通路2802となっている。
【0016】
次にバッテリー収容部16の電着塗装について説明する。
バッテリー収容部16は、その全体が電着塗料に浸漬された状態で、バッテリー収容部16と、電着塗料に浸漬された電極との間に所定の直流電流が通電されることで電着塗料がバッテリー収容部16の表面に付着して塗膜が形成されて電着塗装がなされる。
塗膜形成後、バッテリー収容部16は、電着塗料から引き上げられたのち、一対のビード36が上方を向き、底壁本体28がほぼ水平となった姿勢で乾燥される。
このとき、バッテリー収容部16に残った不要な電着塗料がバッテリー収容部16から流れ落ちて排出される。
【0017】
この際、バッテリー収容部16の第1側壁20、第2側壁22、底壁24に残った不要な電着塗料は、開口部30に向かって流れやがて開口部30から排出される。
そして、不要な電着塗料は、通路2802を通ってビード36の内側の底壁本体28の箇所に至り、一対のビード36の内側の底壁本体28の箇所に残った電着塗料と共に底壁傾斜部32に流れ、底壁傾斜部32から環板部34に至り、開口部30から排出される。
【0018】
次に、補機用バッテリー14の取り付けについて説明する。
図4に示すように、補機用バッテリー14は、直方体状を呈し、バッテリー収容部16の底壁24の輪郭よりも一回り小さい長方形状の底面1402と、底面1402の四辺から起立する側面1404と、側面1404の上端を接続する長方形状の上面1406と、を備えている。
補機用バッテリー14は例えば14kg程度の重量を有している。
まず、補機用バッテリー14の底面1402をバッテリー収容部16の底壁24に載置し、言い換えると、第1ビード部38の上面3810および第2ビード部40の上面4010に載置する。
次いで、補機用バッテリー14の上面1406に延在させてバッテリーホルダ42のホルダ本体4202を載置し、バッテリーホルダ42の一対の屈曲部4204を補機用バッテリー14の上面1406の段差部1410に係合した状態とする。
次いで、バッテリーホルダ42の両端の取り付け片4206から垂設したフックボルト44の下端のフック部4402を、バッテリー収容部16の第2側壁22の上部に取り付けた係止金具46(
図1参照)に係止させたのち、フックボルト44の軸部をバッテリーホルダ42の取り付け片4206のねじ挿通孔を挿通させて取り付け片4206の上方に突出させ、取り付け片4206から突出する軸部の雄ねじ4404にナット48を締結し、バッテリーホルダ42とバッテリー収容部16の底壁24とによって補機用バッテリー14を上下方向から挟むことで補機用バッテリー14をバッテリー収容部16に取り付ける。
【0019】
次に作用効果について説明する。
本実施の形態によれば、底壁24に開口部30を挟んで互いに対向するように一対で設けられた上方に凸状のビード36が、車両の前後方向に延在する第1ビード部38と、第1ビード部38の長手方向の両端から開口部30側に向かって第1ビード部38の延在方向と交差する方向に延在する一対の第2ビード部40と、を含んで構成されている。
したがって、車両走行時に路面の凹凸によって、補機用バッテリー14から上下方向の荷重が底壁24に入力し、第1ビード部38をその延在方向に曲げようとする曲げモーメントが生じた場合、一対のビード36の第1ビード部38によってその曲げモーメントに対する底壁24の強度剛性が高められている。
また、車両走行時に路面の凹凸によって、補機用バッテリー14から上下方向の荷重が底壁24に入力し、第2ビード部40をその延在方向に曲げようとする曲げモーメントが生じた場合、一対のビード36の第2ビード部40によってその曲げモーメントに対する底壁24の強度剛性が高められている。
そのため、底壁24に生じる互いに直交する第1の応力および第2の応力の双方に対する底壁24の強度剛性を高めることができ、バッテリー収容部16の耐久性を確保する上で有利となる。
言い換えると、一対のビード36が第1ビード部38と第2ビード部40を有することでバッテリー収容部16にかかる車両の前後方向または車幅方向の振動や負荷に対する強度剛性を高め、バッテリー収容部16の耐久性を確保する上で有利となる。
【0020】
図3は、
図2のA-A線断面図である。
図中、符号Aは、実施の形態のバッテリー収容部16において補機用バッテリー14の荷重が入力しておらず底壁24の変形が生じていないバッテリー収容部16の断面形状を示す。
符号Bは、補機用バッテリー14の荷重が入力して実施の形態のバッテリー収容部16の底壁24が変形したバッテリー収容部16の断面形状を示す。
符号Cは、車両前後方向に延在する一対のビード36のみが形成された従来技術のバッテリー収容部16において、補機用バッテリー14の荷重が入力して底壁24が変形したバッテリー収容部16の断面形状を示す。
なお、
図3は、底壁24の変形量を比較しやすいように、変形量を実際の変形量よりも誇張して描いている。
図3の符号B、Cから明らかなように、本実施の形態のバッテリー収容部16における底壁24の変形量は、従来技術のバッテリー収容部16における底壁24の変形量に対して抑制されており、第2ビード部40をその延在方向に曲げようとする曲げモーメントに対する底壁24の強度剛性が確保されていることがわかる。
【0021】
なお、一対の第2ビード部40は、第1ビード部38の長手方向の両端から開口部30側に向かって第1ビード部38の延在方向と交差する方向に延在していればよく、例えば、一対の第2ビード部40は、第1ビード部38の長手方向の両端から、第1ビード部38に対して直交して延在していてもよく、あるいは、第1ビード部38の長手方向の両端から、互いに近づく方向に傾斜しつつ延在していてもよく、あるいは、第1ビード部38の長手方向の両端から、互いに離れる方向に傾斜しつつ延在していてもよく、また、第1ビード部38と一対の第2ビード部40は、平面視C字状に延在していてもよい。このような構成であっても本実施の形態とほぼ同様な効果を奏する。
【0022】
また、本実施の形態では、一対の第2ビード部40は、開口部30を挟んで車幅方向一方側と他方側の互いの先端部4006が所定の間隔を開けて対向するよう配置されている。
したがって、電着塗装時に一対の第2ビード部40の間から余分な電着塗料を開口部30へ流すことができ、バッテリートレイの耐久性の確保と電着塗料の排出性の確保の両立を図る上で有利となる。
【0023】
また、本実施の形態では、第1ビード部38は、その周縁部の一部が車両の前後方向に延びる直線状に形成された第1直線縁部3802を有し、第2ビード部40は、その周縁部の一部が第1直線縁部3802の延在方向と交差する方向に延びる直線状に形成された第2直線縁部4002を有している。
したがって、バッテリー収容部16は、第1直線縁部3802と第2直線縁部4002を有することでバッテリー収容部16の車両前後方向または車幅方向の応力に対する強度剛性を高め、バッテリー収容部16の耐久性を確保する上で有利となる。
【0024】
また、本実施の形態では、開口部30側に位置する第1ビード部38の内周縁部3804と、開口部30側に位置する第2ビード部40の内周縁部4004とは、開口部30の外形に沿った形状とされ、第1直線縁部3802は、開口部30と反対側に位置する第1ビード部38の外周縁部に形成され、第2直線縁部4002は、開口部30と反対側に位置する第2ビード部40の外周縁部に形成されている。
したがって、第1ビード部38の内周縁部3804と第2ビード部40の内周縁部4004とが開口部30に沿ってかつ開口部30との間に一定の間隔をおいて配置される。
そのため、第1ビード部38の内周縁部3804および第2ビード部40の内周縁部4004と開口部30との間に残存する不要な電着塗料を円滑に開口部30から排出させる上で有利となる。
また、第1ビード部38、第2ビード部40の外周縁部に形成された第1直線縁部3802、第2直線縁部4002によって、バッテリー収容部16の車両前後方向または車幅方向の応力に対する強度剛性を高め、バッテリー収容部16の耐久性を確保する上で有利となる。
【0025】
また、本実施の形態では、開口部30は円形を呈し、第1ビード部38の内周縁部3804と、第2ビード部40の内周縁部4004とは、開口部30の周方向に沿った滑らかな単一の曲線で形成されている。
したがって、第1ビード部38の内周縁部3804と、第2ビード部40の内周縁部4004とが交差する箇所に対する応力集中を緩和することができるので、底壁24に生じる互いに直交する第1の応力および第2の応力の双方に対する底壁24の強度剛性を高める上でより有利となり、バッテリー収容部16の耐久性を確保する上でより有利となる。
また、第1ビード部38の内周縁部3804と、第2ビード部40の内周縁部4004との境目の角部を無くしたので、第1ビード部38の内周縁部3804と、第2ビード部40の内周縁部4004と、の境目に不要な電着塗料が溜まって残存することを抑制する上で有利となり、バッテリー収容部16の塗装を効率的に行なう上で有利となる。
【0026】
また、本実施の形態では、第1ビード部38の外周縁部と第2ビード部40の外周縁部との境界部分は、第1直線縁部3802と第2直線縁部4002とを斜めに繋ぐ傾斜縁部41とされている。
したがって、第1直線縁部3802と第2直線縁部4002とを直交させて繋ぐ場合に比較して第1直線縁部3802と第2直線縁部4002とが交差する箇所に対する応力集中を緩和することができるので、底壁24に生じる互いに直交する第1の応力および第2の応力の双方に対する底壁24の強度剛性を高める上でより有利となり、バッテリー収容部16の耐久性を確保する上でより有利となる。
【0027】
また、本実施の形態では、底壁24は、車両の前後方向に延びる互いに平行な一対の第1辺2402と、車両の幅方向に延びる互いに平行な一対の第2辺2404と、を有する略矩形状に形成され、側壁12は、一対の第1辺2402から起立して互いに対向する一対の第1側壁20と、一対の第2辺2404から起立して互いに対向する一対の第2側壁22と、を有し、第1ビード部38の第1直線縁部3802は、第1側壁20と平行に延在され、第2ビード部40の第2直線縁部4002は、第2側壁22と平行に延在される。
したがって、底壁24、一対の第1側壁20、及び一対の第2側壁22によって構成されるバッテリー収容部16の構造を簡素化する上で有利となり、バッテリー収容部16の製造コストの低減を図る上で有利となる。
【0028】
また、本実施の形態では、第2ビード部40の先端部4006は第2ビード部40の延在方向の先方に向かって凸状の湾曲形状で形成されている。
そのため、第2ビード部40の先端部4006に対する応力集中を緩和することができるので、第1の応力および第2の応力の双方に対する底壁24の強度剛性を高める上でより有利となり、バッテリー収容部16の耐久性を確保する上でより有利となる。
【0029】
また、本実施の形態では、底壁24は、開口部30を含む中央の部位が下方に膨出形成された環状凹部35とされ、開口部30は底壁24において最も低位に位置されている。
したがって、開口部30の周囲の底壁24の強度剛性を確保する上で有利となる上、底壁24に残存する不要な電着塗料を環状凹部35から開口部30を介して円滑に排出させる上で有利となり、バッテリー収容部16の耐久性の確保と電着塗料の排出性の確保の両立を図る上でより有利となる。
【0030】
また、本実施の形態では、開口部30の周囲に底壁傾斜部32と環板部34とが設けられている。
したがって、塗装時に開口部30の周囲の底壁本体28の箇所に残存する電着塗料が底壁本体28から底壁傾斜部32を介して環板部34に向かって円滑に流れ落ちて開口部30から効率的に排出される。
そのため、不要な電着塗料が開口部30の周囲に溜まって残存することを抑制でき、バッテリー収容部16の塗装を効率的に行なう上で有利となる。
【0031】
なお、本実施の形態では、第1側壁20および第1ビード部38が車両前後方向と平行に延在している場合について説明したが、第1側壁20および第1ビード部38が車幅方向と平行に延在している場合であっても本発明は無論適用可能であり、本実施の形態と、同様の作用効果が奏される。
また、本実施の形態では、バッテリー収容部16がハイブリッド車やプラグインハイブリッド車などの補機用バッテリー14を収容保持する場合について説明したが、本発明は、化石燃料のみをエネルギーとして使用するガソリン車などの車両に搭載されるバッテリーを収容保持するバッテリートレイにも無論適用可能である。
【0032】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0033】
なお、本出願は、2022年2月21日出願の日本特許出願(特願2022-024489)に基づくものであり、その内容は本出願の中に参照として援用される。
【符号の説明】
【0034】
10 リアフロアパネル
12 側壁
14 補機用バッテリー
1402 底面
1404 側面
1406 上面
1410 段差部
16 バッテリー収容部
18 フランジ
20 第1側壁
22 第2側壁
24 平面視長方形の底壁
2402 第1辺
2404 第2辺
28 底壁本体
2802 通路
30 開口部
32 底壁傾斜部
34 環板部
35 環状凹部
36 一対のビード
38 第1ビード部
3802 第1直線縁部
3804 内周縁部
3810 上面
40 第2ビード部
4002 第2直線縁部
4004 内周縁部
4006 先端部
4010 上面
41 傾斜縁部
26A、26Bクロスメンバ
42 バッテリーホルダ
4202 ホルダ本体
4204 屈曲部
4206 取り付け片
44 フックボルト
4402 フック部
4404 雄ねじ
46 係止金具
48 ナット