(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】共重合ポリエステル樹脂
(51)【国際特許分類】
C08G 63/688 20060101AFI20240903BHJP
C08G 63/672 20060101ALI20240903BHJP
B29C 61/06 20060101ALI20240903BHJP
D01F 6/84 20060101ALI20240903BHJP
D04H 1/55 20120101ALI20240903BHJP
C09J 167/02 20060101ALI20240903BHJP
C09D 167/02 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
C08G63/688
C08G63/672
B29C61/06
D01F6/84 301E
D01F6/84 305C
D04H1/55
C09J167/02
C09D167/02
(21)【出願番号】P 2024516153
(86)(22)【出願日】2023-03-28
(86)【国際出願番号】 JP2023012483
(87)【国際公開番号】W WO2023203975
(87)【国際公開日】2023-10-26
【審査請求日】2024-05-16
(31)【優先権主張番号】P 2022071082
(32)【優先日】2022-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 浩尚
(72)【発明者】
【氏名】戸川 惠一朗
(72)【発明者】
【氏名】平澤 富士男
(72)【発明者】
【氏名】廣中 伸行
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-111076(JP,A)
【文献】特開2001-192441(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103351462(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105669958(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G63
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸成分の主成分としてテレフタル酸を含有し、ジオール成分の主成分としてエチレングリコールを含有する共重合ポリエステル樹脂であって、全ポリエステル樹脂成分中において、ジカルボン酸成分の合計量を100モル%とした場合、全ジカルボン酸成分に対するテレフタル酸成分の割合が70~99.95モル%であり、全ジカルボン酸成分に対するスルホイソフタル酸ナトリウムの割合が0.05~10モル%であり、ジオール成分の合計量を100モル%とした場合、
全グリコール成分に対するエチレングリコールの割合が50~99モル%であり、全グリコール成分に対するジエチレングリコールの割合が1~10モル%であること、テレフタル酸とスルホイソフタル酸ナトリウムとエチレングリコールとジエチレングリコールからなる遊離の環状1量体の含有量が20ppm以下であること、及びテレフタル酸とスルホイソフタル酸ナトリウムとエチレングリコールからなる遊離の環状3量体の含有量が200ppm以下であることを特徴とする共重合ポリエステル樹脂。
【請求項2】
カラーb値が-5.0~15.0であることを特徴とする請求項1に記載の共重合ポリエステル樹脂。
【請求項3】
カルボキシル末端基濃度(AV)が3~25eq/tであることを特徴とする請求項1に記載の共重合ポリエステル樹脂。
【請求項4】
共重合ポリエステル樹脂中にアルミニウム原子及びリン原子を含有し、共重合ポリエステル樹脂中のアルミニウム原子の含有量が、15~40ppmであり、共重合ポリエステル樹脂中のアルミニウム原子に対するリン原子のモル比が0より大きく2.6以下であることを特徴とする請求項1に記載の共重合ポリエステル樹脂。
【請求項5】
共重合ポリエステル樹脂中にスルホイソフタル酸ナトリウム以外のアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物に由来するアルカリ金属原子及び/又はアルカリ土類金属原子をさらに含有し、共重合ポリエステル樹脂中の前記アルカリ金属原子及び/又はアルカリ土類金属原子の含有量が、1~100ppmであることを特徴とする請求項1に記載の共重合ポリエステル樹脂。
【請求項6】
共重合ポリエステル樹脂を成形して得られた段付成形板が厚み5mmの部分において10%以下のヘイズ値を有することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂。
【請求項7】
請求項1~5のいずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする成形品。
【請求項8】
請求項1~5のいずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする熱収縮性フィルム。
【請求項9】
請求項1~5のいずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする繊維。
【請求項10】
請求項1~5のいずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする不織布。
【請求項11】
請求項1~5のいずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする接着剤。
【請求項12】
請求項1~5のいずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性及び成形性に優れながらも、フィルムなどの製品の生産時にダイス周辺の汚れや異物付着がほとんど発生せず、しかもリサイクル性に優れる共重合ポリエステル樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル、とりわけ、テレフタル酸(以下、TPAと略称することがある)とエチレングリコール(以下、EGと略称することがある)を原料として製造されるポリエチレンテレフタレート(PET)は、化学的、物理的性質に優れていることから、容器、フィルム、シート、繊維等の用途に広範囲に使用されている。
【0003】
近年、ポリエチレンテレフタレート(PET)の中でも、ジエチレングリコール(以下、DEGと略称することがある)を共重合させたポリエステル樹脂(以下、共重合ポリエステル樹脂と略称することがある)が透明性、成形性、耐衝撃性、耐熱性等に優れることで注目され、各種用途、特にフィルム、シート、射出成形体、異形成形体などの成形体用の原料ポリマーとして用いられてきている。
【0004】
また、スルホイソフタル酸ナトリウム(以下、GCMと略称することがある)を共重合させたポリエステル樹脂(以下、共重合ポリエステル樹脂と略称することがある)が生分解性に優れることで注目され、各種用途、特にフィルム、シート、射出成形体、異形成形体などの成形体用の原料ポリマーとして用いられてきている(特許文献1~6参照)。
【0005】
しかしながら、特許文献1~6の技術によって製造された共重合ポリエステル樹脂からフィルムや成形品や繊維などの製品を連続的に生産する際、ダイスや金型近辺などに低融点の異物が粘着付着し、これが製品の表面に転写されて粘着付着して商品価値が低下する問題があった。また、リサイクル時に樹脂の着色が生じたり分子量が低下する問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-150542号公報
【文献】特許4755995号公報
【文献】特許4614963号公報
【文献】特表2007-500769号公報
【文献】特許4807952号公報
【文献】特許5345749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来技術の問題を解決するために創案されたものであり、その課題は、透明性や成形性の向上のためにジエチレングリコール及びスルホイソフタル酸ナトリウムを共重合させた共重合ポリエステル樹脂において、フィルムや成形品や繊維などの製品を連続的に生産する際にダイスの汚れや製品への異物付着が発生する問題、及びリサイクル時に樹脂が着色したり分子量が低下する問題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、かかる課題を解決するためにジエチレングリコール及びスルホイソフタル酸ナトリウムを共重合させた共重合ポリエステル樹脂におけるダイスの汚れや製品への異物付着の原因について鋭意検討した結果、共重合ポリエステル樹脂の製造時に副生成物として生じる特定の環状1量体及び環状3量体(以下、環状オリゴマーと称することがある)がダイスの汚れや製品への異物付着の原因であり、これらの副生成物の含有量を一定値以下に抑制することにより、ダイスの汚れや製品への異物付着の問題をほとんど有さない共重合ポリエステル樹脂を提供することができることを見出した。また、リサイクル時の樹脂の着色や分子量の低下の原因について鋭意検討した結果、共重合ポリエステル樹脂の材料として使用しているジエチレングリコール及びスルホイソフタル酸ナトリウムは、透明性や成形性を向上させる一方で、得られる共重合ポリエステル樹脂の熱安定性、熱酸化安定性を低下させることが判った。そのため、フィルム成膜時や成形品製造時の加熱によって樹脂が劣化して、フィルムや成形品が着色したり、その分子量が低下したりすると考えられた。次に、本発明者は、共重合ポリエステル樹脂の熱安定性や熱酸化安定性を向上させるための方法を検討し、共重合ポリエステル樹脂のカルボキシル末端基濃度(AV)を一定範囲に制御すること、及び重合に使用する触媒として特定の二種類の組合せを使用することが重要であることを見出し、本発明の完成に至った。
【0009】
即ち、本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、以下の(1)~(12)の構成を有するものである。
(1)ジカルボン酸成分の主成分としてテレフタル酸を含有し、ジオール成分の主成分としてエチレングリコールを含有する共重合ポリエステル樹脂であって、全ポリエステル樹脂成分中において、ジカルボン酸成分の合計量を100モル%とした場合、全ジカルボン酸成分に対するテレフタル酸成分の割合が70~99.95モル%であり、全ジカルボン酸成分に対するスルホイソフタル酸ナトリウムの割合が0.05~10モル%であり、ジオール成分の合計量を100モル%とした場合、全グリコール成分に対するジエチレングリコールの割合が1~10モル%であること、テレフタル酸とスルホイソフタル酸ナトリウムとエチレングリコールとジエチレングリコールからなる遊離の環状1量体の含有量が20ppm以下であること、及びテレフタル酸とスルホイソフタル酸ナトリウムとエチレングリコールからなる遊離の環状3量体の含有量が200ppm以下であることを特徴とする共重合ポリエステル樹脂。
(2)カラーb値が-5.0~15.0であることを特徴とする(1)に記載の共重合ポリエステル樹脂。
(3)カルボキシル末端基濃度(AV)が3~25eq/tであることを特徴とする(1)に記載の共重合ポリエステル樹脂。
(4)共重合ポリエステル樹脂中にアルミニウム原子及びリン原子を含有し、共重合ポリエステル樹脂中のアルミニウム原子の含有量が、15~40ppmであり、共重合ポリエステル樹脂中のアルミニウム原子に対するリン原子のモル比が0より大きく2.6以下であることを特徴とする(1)に記載の共重合ポリエステル樹脂。
(5)共重合ポリエステル樹脂中にスルホイソフタル酸ナトリウム以外のアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物に由来するアルカリ金属原子及び/又はアルカリ土類金属原子をさらに含有し、共重合ポリエステル樹脂中の前記アルカリ金属原子及び/又はアルカリ土類金属原子の含有量が、1~100ppmであることを特徴とする(1)に記載の共重合ポリエステル樹脂。
(6)共重合ポリエステル樹脂を成形して得られた段付成形板が厚み5mmの部分において10%以下のヘイズ値を有することを特徴とする(1)~(5)のいずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂。
(7)(1)~(5)のいずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする成形品。
(8)(1)~(5)のいずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする熱収縮性フィルム。
(9)(1)~(5)のいずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする繊維。
(10)(1)~(5)のいずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする不織布。
(11)(1)~(5)のいずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする接着剤。
(12)(1)~(5)のいずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする塗料。
【発明の効果】
【0010】
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、ジエチレングリコール及びスルホイソフタル酸ナトリウムの使用による透明性、成形性の利点を享受しつつも、フィルムや成形品や繊維などの製品を連続的に生産する際にダイスの汚れや、製品への異物付着がほとんど発生せず、また、リサイクル時に樹脂が着色したり分子量が低下することもない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の共重合ポリエステル樹脂を具体的に説明する。
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分の主成分としてテレフタル酸を含有し、ジオール成分の主成分としてエチレングリコールを含有する共重合ポリエステル樹脂において、透明性、成形性のためにジエチレングリコール及びスルホイソフタル酸ナトリウムを共重合させたものであり、重合時に副生成物として生じる特定の環状1量体及び環状3量体の含有量を一定値以下に抑制することにより、ダイスの汚れや製品への異物付着の問題を効果的に防止し、さらには、共重合ポリエステル樹脂のカルボキシル末端基濃度(AV)を一定範囲に制御すること、及び重合に使用する触媒として特定の二種類の組合せを使用することにより、リサイクル時に樹脂が着色したり分子量が低下する問題を効果的に防止したものである。
【0012】
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分の主成分としてテレフタル酸を含有する。具体的には、テレフタル酸の含有量は、ジカルボン酸成分の合計量を100モル%とした場合、全ジカルボン酸成分に対するテレフタル酸の割合が70~99.95モル%、好ましくは80~99.95モル%、より好ましくは90~99.95モル%であるようなものである。
【0013】
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、テレフタル酸に加えて、生分解性の向上のために、スルホイソフタル酸ナトリウムをジカルボン酸成分として含有する。具体的には、スルホイソフタル酸ナトリウムの含有量は、ジカルボン酸成分の合計量を100モル%とした場合、全ジカルボン酸成分に対するスルホイソフタル酸ナトリウムの割合が0.05~10モル%、好ましくは0.1~5モル%、より好ましくは0.2~3モル%であるようなものである。スルホイソフタル酸ナトリウムの含有量が上記下限未満では、ヘイズ値が高く、DSC測定に劣る傾向にある。一方、スルホイソフタル酸ナトリウムの含有量が上記上限を超えると、後述する遊離の環状1量体及び環状3量体の量が多くなり、ダイスの汚れや製品への異物付着が多くなる。
【0014】
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、テレフタル酸及びスルホイソフタル酸ナトリウム以外の他のジカルボン酸成分も含有することができる。かかる他のジカルボン酸成分としては、(1)イソフタル酸、オルソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、(2)アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、ダイマー酸、ドデカンジカルボン酸、アゼライン酸などの脂肪族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、(3)ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸及びその機能的誘導体などが挙げられる。
【0015】
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、ジオール成分の主成分としてエチレングリコールを含有する。具体的には、エチレングリコールの含有量は、ジオール成分の合計量を100モル%とした場合、全グリコール成分に対するエチレングリコールの割合が好ましくは50~99モル%、より好ましくは70~99モル%、さらに好ましくは80~99モル%、特に好ましくは90~99モル%であるようなものである。
【0016】
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、エチレングリコールに加えて、透明性及び成形性の向上のために、ジエチレングリコールをジオール成分として含有する。具体的には、ジエチレングリコールの含有量は、ジオール成分の合計量を100モル%とした場合、全ジオール成分に対するジエチレングリコールの割合が1~10モル%、好ましくは2~9モル%、より好ましくは3~8モル%であるようなものである。ジエチレングリコールの含有量が上記範囲内にあることで、透明性が高い、つまり非晶性である共重合ポリエステル樹脂を得ることが可能となる。ジエチレングリコールの含有量が上記下限未満では、結晶性になるため、成形品やフィルムの透明性が悪くなり、十分な透明性が達成できず、商品価値がなくなる傾向にある。一方、ジエチレングリコールの含有量が上記上限を超えると、後述する遊離の環状1量体の量が多くなり、ダイスの汚れや製品への異物付着が多くなる。
【0017】
ジエチレングリコールは、共重合ポリエステル樹脂の重合時にエチレングリコールが縮合することでも生成する。この縮合による生成するジエチレングリコールの量は、重合条件や製造する装置によっても変わってくるが、全ジオール成分に対して0.5~2.0モル%程度である。この量も考慮して、原料として添加するジエチレングリコールの量を考えれば良い。
【0018】
なお、ここで非晶性とは、ヤマトDP63乾燥機にて120℃で120分放置した試料を、示差走査型熱量計(DSC)を用いて、-100℃から300℃まで20℃/minで昇温し、次に-100℃まで50℃/minで降温し、続いて-100℃から300℃まで20℃/minで昇温する二度の昇温過程のどちらにおいても融解ピークを示さないものを指す。本発明の共重合ポリエステル樹脂は、非晶性であることにより、特に肉厚成形体であっても好適に使用しうるだけの透明性を有することができる。つまり、本測定条件で「非晶性」であると言うことは、フィルムの透明性を高品質に保つことができ、更には、肉厚なフィルムにしても十分な透明性を維持できることを表す。
【0019】
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、エチレングリコール及びジエチレングリコール以外の他のジオール成分も含有することができる。かかる他のジオール成分としては、(1)テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングルコール等の脂肪族グリコール類、(2)1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環式グリコール類、(3)p-キシリレングリコール、m-キシリレングリコール等の芳香族グリコール類等が挙げられる。
【0020】
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、カルボキシル基、ヒドロキシル基またはそれらのエステル形成性基を3個以上有する多官能化合物(例えばトリメリット酸、ピロメリット酸、グリセリン、トリメチロールプロパン等)を共重合ポリエステル樹脂の酸成分および/またはグリコール成分の0.001~5モル%含有することが、異形押出し成形性を高める上で好ましい。
【0021】
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、重合時に副生成物として生じる特定の環状1量体及び環状3量体の含有量を一定値以下に抑制することにより、ダイスの汚れや製品への異物付着の問題を効果的に防止することを本質的な特徴とする。具体的には、本発明の共重合ポリエステル樹脂は、テレフタル酸とスルホイソフタル酸ナトリウムとエチレングリコールとジエチレングリコールからなる遊離の環状1量体の含有量が20ppm以下であり、テレフタル酸とスルホイソフタル酸ナトリウムとエチレングリコールからなる遊離の環状3量体の含有量が200ppm以下である。本発明において、テレフタル酸とスルホイソフタル酸ナトリウムとエチレングリコールとジエチレングリコールからなる遊離の環状1量体とはテレフタル酸、エチレングリコール、スルホイソフタル酸ナトリウム、ジエチレングリコールの順に環状に結合した環状1量体(以下、TESDと略す)を表し、テレフタル酸とスルホイソフタル酸ナトリウムとエチレングリコールからなる環状3量体とは、テレフタル酸、エチレングリコール、テレフタル酸、エチレングリコール、スルホイソフタル酸ナトリウム、エチレングリコールの順に環状に結合した環状3量体(以下、T2SE3と略す)を表す。なお、本発明において、「共重合ポリエステル樹脂」とは、ポリエステルと言う化学物質のみではなく、TESDやT2SE3と言ったオリゴマー成分や、後記する触媒成分を含んだものを指す。ただし、ポリエステルと言う化学物質を説明するとき、便宜上、「共重合ポリエステル樹脂」と記載する場合もある。
【0022】
TESDの含有量は、20ppm以下であることが必要であり、好ましくは10ppm以下、より好ましくは5ppm以下である。上記上限を超えると、フィルムや繊維の生産時の押出成形機のダイスの樹脂出口近辺の汚れが酷くなり、付着した異物が成形体表面に付着して表面状態が悪くなり、透明性にも影響して商品価値が低下する。また、成形品の連続射出成形時に射出成形の金型排気口が詰まり、正常な成形品が得られなくなる。また、この含有量の下限値は、生産時の経済性より1ppmである。TESDの含有量は、後述する実施例の測定方法によって定量した値である。
【0023】
T2SE3の含有量は、200ppm以下であることが必要であり、好ましくは150ppm以下、より好ましくは100ppm以下である。上記上限を超えると、フィルムや繊維の生産時の押出成形機のダイスの樹脂出口近辺の汚れが酷くなり、付着した異物が成形体表面に付着して表面状態が悪くなり、透明性にも影響して商品価値が低下する傾向にある。また、成形品の連続射出成形時に射出成形の金型排気口が詰まり、正常な成形体が得られなくなる。また、この含有量の下限値は、生産時の経済性より1ppmである。T2SE3の含有量は、後述する実施例の測定方法によって定量した値である。
【0024】
T2SE3及びTESDがダイス周辺の汚れや異物付着を生じさせるメカニズムは不明であるが、T2SE3のエチレングリコールとスルホイソフタル酸の立体障害の影響でT2SE3の融点やガラス転移温度が低くなり、更にTESD中のジエチレングリコールとスルホイソフタルの立体障害の影響でTESDの融点やガラス転移温度がT2SE3より低くなるため、強い粘着性が発現し、TESDとT2SE3の相乗効果によって、成形時やフィルム押出成形機のダイスへの付着が大きくなると考えられる。
【0025】
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、カルボキシル末端基濃度が、ポリマー1トン当たり3~25当量であることが好ましく、5~23当量/トンであることがより好ましい。カルボキシル末端基濃度が上記範囲であることにより、共重合ポリエステル樹脂の着色を抑制することに寄与することができる。共重合ポリエステル樹脂の着色がやや劣っていても良い場合、カルボキシル末端基濃度は32当量/t以下でも良い。生産性(反応時間)を考慮しなければ、カルボキシル末端基濃度の下限は0当量/tであることができる。
【0026】
本発明の共重合ポリエステル樹脂の数平均分子量は、好ましくは2000~30000、より好ましくは2500~28000、さらに好ましくは3000~27000である。数平均分子量が上記下限未満であると、結晶性が上がりヘイズが高くなり、更に樹脂凝集力不足のために成形品の強伸度が不足し、脆くなって使用できないことがある。一方、上記上限を越えると、溶融粘度が上がり過ぎるために、種々の成形加工に最適な温度も上がってしまい、熱安定性が悪く、シート成膜性が低下する場合があり、更には、前記のTESDやT2SE3の量が増加し、ダイス汚れ及び異物付着により結果的に成形体の透明性が悪化してしまう場合がある。
【0027】
本発明の共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、40℃以上120℃未満が好ましく、より好ましくは、45℃以上115℃未満であり、さらに好ましくは、50℃以上110℃未満であり、特に好ましくは、50℃以上70℃未満である。ここでガラス転移温度とは、示差走査型熱量計(DSC)を用いて、20℃/minで昇温して測定した値を指す。ガラス転移温度が上記下限未満の場合、異形押出し成形品が夏季に屋外で使用される場合や、夏季に密閉状態で行う製品輸送時や倉庫保管時においては、フィルムや異形押出し成形品が熱変形を起こす場合がある。また、ガラス転移温度が上記上限を超えると、シートの成膜性や透明性が低下する傾向にあり、用途によっては使用できない場合がある。
【0028】
本発明の共重合ポリエステル樹脂のカラーb値は、-5.0~15.0が好ましい。カラーb値の下限は-3.0がより好ましく、さらに好ましくは-2.5である。また、上限は14.0がより好ましく、さらに好ましくは13.0である。カラーb値が上記上限を超えると、共重合ポリエステル樹脂の黄色味が強くなり色調の点で好ましくない。一方、カラーb値が上記下限未満では、共重合ポリエステル樹脂の青味が目立つようになり、用途によっては使用できない場合がある。
【0029】
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、金型温度10℃において成形して得られた段付成形板の厚さ5mmの部分におけるヘイズ値が10%以下であることが好ましく、さらに好ましくは9%以下、特に好ましくは8%以下である。ヘイズ値が上記上限値を越えると、成形品やフィルムの透明性が悪化し、透明性の要求が厳しい用途では使用できない場合がある。
【0030】
本発明の共重合ポリエステル樹脂には、用途に応じて他の成分も適宜添加することができる。例えば、耐衝撃性向上剤、充填剤、紫外線吸収剤、表面処理剤、滑剤、光安定剤、顔料、帯電防止剤、抗菌剤、架橋剤、イオウ系酸化防止剤、難燃剤、可塑剤、加工助剤、発泡剤等を添加することができる。本発明の共重合ポリエステルは、従来からPETなどで一般的に用いられている押出ブロー成形、絞り成形、射出成形、異形押出成形、カレンダー加工成形などにより、各種の成形体に好適に成形される。
【0031】
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、透明性、成形性などを必要とする各種用途に好適に使用することができ、例えば、成形品、熱収縮性フィルム、繊維、不織布、接着剤、塗料などの原料として使用することができる。
【0032】
次に、本発明の共重合ポリエステル樹脂の製造方法について説明する。本発明の共重合ポリエステル樹脂は、直接エステル化反応と重縮合反応による製造法、あるいはエステル交換反応と重縮合反応による製造法のいずれの方法によっても製造することができる。前記の反応は、連続式反応装置で行っても良いし、回分式反応装置で行っても良いが、経済性及び品質の安定性の点で連続式反応装置によるのが好ましい。
【0033】
連続式反応装置(連続式重縮合法)では、エステル化反応、エステル交換反応及び溶融重縮合反応はそれぞれ1段階で行ってもよいが、複数の段階に分けて行うのが好ましい。エステル化反応またはエステル交換反応を複数の段階に分けて行う場合、反応缶数は2缶~3缶が好ましい。また、溶融重縮合を複数の段階に分けて行う場合、反応缶数は3缶~7缶が好ましい。
【0034】
本発明の共重合ポリエステル樹脂を連続式重縮合法で製造する場合、全ジカルボン酸またはそのエステル誘導体1モルに対して1.02~1.5モル、好ましくは1.03~1.4モルの全てのグリコ-ルを含有するスラリーを調製し、これをオリゴマーを含有するエステル化反応工程に連続的に供給する。エステル化反応温度は通常240~270℃であり、好ましくは250~265℃である。また、反応缶内の圧力は通常0.2MPa以下、好ましくは0.01~0.05MPaである。また、重縮合反応の温度は通常265~285℃であり、好ましくは270~280℃であり、反応缶内の圧力は通常1.5hPa以下、好ましくは0.5hPa以下である。エステル化反応の反応時間は5時間以下が好ましく、特に好ましくは2~3.5時間である。また、重縮合反応の反応時間は3時間以下が好ましく、特に好ましくは1~2時間である。
【0035】
本発明の共重合ポリエステル樹脂を回分式重縮合法で製造する場合、エステル化反応温度は通常220~250℃であり、好ましくは230~245℃である。また、反応缶内の圧力は通常0.2~0.4MPa、好ましくは0.25~0.30MPaである。また、重縮合反応は1段階で行っても、複数段階に分けて行ってもよい。1段階で行う場合は、漸次減圧および昇温を行い、最終的な温度を260~280℃、好ましくは265~275℃の範囲とし、最終的な圧力を、通常3hPa以下、好ましくは0.5hPa以下とする。エステル化反応の反応時間は4時間以下が好ましく、特に好ましくは2~3時間である。また、重縮合反応の反応時間は5時間以下が好ましく、特に好ましくは1~3時間である。
【0036】
次に、連続式エステル交換反応によって低重縮合体を製造する場合は、テレフタル酸ジメチルと、テレフタル酸ジメチル1モルに対して1.1~1.6モル、好ましくは1.2~1.5モルのグリコールを含有する溶液を調製し、これをエステル交換反応工程に連続的に供給する。エステル交換反応温度は通常200~270℃であり、好ましくは230~265℃である。エステル交換法の場合、重縮合触媒以外にエステル交換触媒を使用することが必要である。得られた低重縮合体を前記の連続式重縮合と同様に反応させる。
【0037】
また、回分式エステル交換反応によって低重縮合体を製造する場合は、回分式反応器にテレフタル酸ジメチルと、テレフタル酸ジメチル1モルに対して2.3~2.0モル、好ましくは2.2~2.0モルのグリコールを投入してエステル交換触媒存在下に反応を行う。得られた低重縮合体を前記のエステル化反応による場合と同様にして重縮合させる。
【0038】
重縮合触媒としては、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、アルミニウム化合物の少なくとも1種を用いることができる。前記アンチモン化合物としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモングリコキサイド等が挙げられる。これらの中でも、三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモングリコキサイドが好ましく、特に好ましくは三酸化アンチモンである。これらのアンチモン化合物は、生成する共重合ポリエステル樹脂に対してアンチモン元素として50~400ppm含有させることが好ましく、さらに好ましくは100~350ppmであり、特に好ましくは150~300ppmである。
【0039】
また、前記ゲルマニウム化合物としては、例えば、結晶性二酸化ゲルマニウム、非晶性二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、蓚酸ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ-n-ブトキシド、亜リン酸ゲルマニウム等の化合物等が挙げられる。これらの中でも、結晶性二酸化ゲルマニウム、非晶性二酸化ゲルマニウムがさらに好ましく、特に好ましくは非晶性二酸化ゲルマニウムである。これらのゲルマニウム化合物は、生成する共重合ポリエステル樹脂に対してゲルマニウム元素として10~100ppm含有させることが好ましく、さらに好ましくは30~70ppmであり、特に好ましくは30~50ppmである。
【0040】
また、前記チタン化合物としては、例えば、テトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-プロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート等のテトラアルキルチタネート及びそれらの部分加水分解物、酢酸チタン、蓚酸チタニル、蓚酸チタニルアンモニウム、蓚酸チタニルナトリウム、蓚酸チタニルカリウム、蓚酸チタニルカルシウム、蓚酸チタニルストロンチウム等の蓚酸チタニル化合物、トリメリット酸チタン、硫酸チタン、塩化チタン、チタンハロゲン化物の加水分解物、シュウ化チタン、フッ化チタン、六フッ化チタン酸カリウム、六フッ化チタン酸アンモニウム、六フッ化チタン酸コバルト、六フッ化チタン酸マンガン、チタンアセチルアセトナート、ヒドロキシ多価カルボン酸又は含窒素多価カルボン酸とのチタン錯体物、チタン及び珪素或いはジルコニウムからなる複合酸化物、チタンアルコキサイドとリン化合物の反応物等が挙げられる。これらの中でも、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラブトキシド、シュウ酸チタニルカリウムが好ましく、特に好ましくはチタニウムテトラブトキシドである。これらのチタン化合物は、生成する共重合ポリエステル樹脂に対してチタン元素として1~50ppm含有させることが好ましく、さらに好ましくは2~20ppmであり、特に好ましくは3~10ppmである。
【0041】
重縮合触媒として、リサイクル性(耐熱性、熱酸化安定性)から、アルミニウム化合物が特に好ましい。アルミニウム化合物はリン化合物と併用して用いることが好ましい。本発明の共重合ポリエステル樹脂を製造する際に使用する重合触媒を構成するアルミニウム化合物としては、公知のアルミニウム化合物が限定なく使用できる。
【0042】
アルミニウム化合物としては、具体的には、酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム及びアルミニウムアセチルアセトネート、シュウ酸アルミニウムなどの有機アルミニウム化合物及びこれらの部分加水分解物などが挙げられる。これらのうちカルボン酸塩、無機酸塩及びキレート化合物が好ましく、これらの中でも酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム及びアルミニウムアセチルアセトネートがより好ましく、酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム及び水酸化塩化アルミニウムがさらに好ましく、酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウムが最も好ましい。
【0043】
重合触媒に用いられるアルミニウム化合物の使用量は、アルミニウム原子として、得られるポリエステル樹脂の全質量に対して15~40ppm残留するようにすることが好ましく、より好ましくは17~38ppmであり、更に好ましくは20~35ppmである。アルミニウム原子の残留量が上記範囲未満の場合、触媒活性が不良となるおそれがある。一方、アルミニウム原子の残留量が上記範囲を越えると、熱安定性及び熱酸化安定性の低下が問題になる場合や、アルミニウムに起因する異物の発生や着色の増加が問題になる場合がある。なお、上述のように、アルミニウム化合物は、ポリエステル重合時に減圧環境下に置かれても、重合触媒としての使用量のほぼ100%が残留するので、使用量が残留量になると考えてよい。共重合ポリエステル樹脂の特性をやや犠牲にして良い場合、共重合ポリエステル樹脂中のアルミニウム原子の含有量は、9~42ppmであっても良い。
【0044】
重合触媒に用いられるリン化合物は、特に限定されないが、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物を用いると、触媒活性の向上効果が大きく好ましく、これらの中でもホスホン酸系化合物を用いると、触媒活性の向上効果が特に大きく好ましい。
【0045】
これらのリン化合物のうち、同一分子内にフェノール部を有するリン化合物を用いると、樹脂の熱安定性及び熱酸化安定性の向上効果が大きく好ましい。フェノール構造を有するリン化合物であれば特に限定はされないが、同一分子内にフェノール部を有する、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物からなる群より選ばれる一種または二種以上の化合物を用いると、触媒活性の向上効果と樹脂の熱安定性及び熱酸化安定性の向上効果の両方が大きく好ましい。これらの中でも、一種または二種以上の同一分子内にフェノール部を有するホスホン酸系化合物を用いると、触媒活性の向上効果と樹脂の熱安定性及び熱酸化安定性の向上効果の両方が特に大きく好ましい。
【0046】
また、同一分子内にフェノール部を有するリン化合物としては、下記一般式(1)、(2)で表される化合物などが挙げられる。
【0047】
【0048】
【0049】
(一般式(1)~(2)中、R1はフェノール部を含む炭素数1~50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基などの置換基およびフェノール部を含む炭素数1~50の炭化水素基を表す。R4は、水素、炭素数1~50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基などの置換基を含む炭素数1~50の炭化水素基を表す。R2、R3はそれぞれ独立に水素、炭素数1~50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基などの置換基を含む炭素数1~50の炭化水素基を表す。ただし、炭化水素基は分岐構造やシクロヘキシル等の脂環構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。R2とR4の末端どうしは結合していてもよい。)
【0050】
前記の同一分子内にフェノール部を有するリン化合物としては、例えば、p-ヒドロキシフェニルホスホン酸、p-ヒドロキシフェニルホスホン酸ジメチル、p-ヒドロキシフェニルホスホン酸ジエチル、p-ヒドロキシフェニルホスホン酸ジフェニル、ビス(p-ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(p-ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸メチル、ビス(p-ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸フェニル、p-ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸、p-ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸メチル、p-ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸フェニル、p-ヒドロキシフェニルホスフィン酸、p-ヒドロキシフェニルホスフィン酸メチル、p-ヒドロキシフェニルホスフィン酸フェニルなどが挙げられる。その他、下記一般式(3)で表されるリン化合物を挙げることができる。
【0051】
【0052】
一般式(3)中、X1、X2は、それぞれ、水素、炭素数1~4のアルキル基、または1価以上の金属を表す。
また、X1は、金属が2価以上であって、X2が存在しなくても良い。さらには、リン化合物に対して金属の余剰の価数に相当するアニオンが配置されていても良い。
金属としては、Li、Na、K、Ca、Mg、Alが好ましい。
【0053】
これらの同一分子内にフェノール部を有するリン化合物をポリエステルの重合時に添加すると、アルミニウム化合物の触媒活性が向上するとともに、重合したポリエステル樹脂の熱安定性及び熱酸化安定性も向上する。その理由は、リン化合物中のヒンダートフェノール部分がポリエステル樹脂の熱安定性及び熱酸化安定性を向上させているためと考えられる。この場合、リン化合物の残留量が31ppmより少なくなると、上記の熱安定性及び熱酸化安定性の向上効果が薄れ、結果として、本発明のポリエステル樹脂の熱安定性及び熱酸化安定性の改善効果や着色の改善効果が見られなくなることがある。
【0054】
上記の中でも、重縮合触媒として使用することが好ましいリン化合物は、下記化学式(4)、化学式(5)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種のリン化合物である。
【0055】
【0056】
【0057】
上記の化学式(4)で示される化合物としては、Irganox1222(ビーエーエスエフ社製)が市販されている。また、化学式(5)で示される化合物としては、Irganox1425(ビーエーエスエフ社製)が市販されており、使用可能である。
【0058】
重合触媒に用いられるリン化合物の使用量は、リン原子として、得られる共重合ポリエステル樹脂の全質量に対して31~119ppm残留するようにすることが好ましく、より好ましくは39~105ppmであり、更に好ましくは48~92ppmである。上記下限未満では、熱安定性及び熱酸化安定性の向上効果が薄れる可能性がある。一方、上記上限を超えると、重合活性を低下させる可能性がある。なお、上述のように、リン化合物は、ポリエステル樹脂の重合時に減圧環境下に置かれる際、触媒として系に最初に添加された使用量の一部が系外に除去されるが、この除去量は、ほぼ一定の割合であるため、除去割合を考慮して残留量で規定しても適切であると言える。共重合ポリエステル樹脂の特性をやや犠牲にして良い場合、共重合ポリエステル樹脂中のリン原子の含有量は、19~125ppmであっても良い。
熱安定性に関しては0.7以下が良く、好ましく0.6以下、最も好ましくは0.5以下が良好である。
【0059】
また、上述のように、本発明では、アルミニウム化合物に対するリン化合物の比率も重要である。具体的には、本発明では、ポリエステル樹脂中のアルミニウム原子に対するリン原子のモル比(P/Al比)は0より大きく2.6以下であることが好ましく、より好ましくは0.2~2.4、更に好ましくは0.4~2.3である。アルミニウム化合物は、単独で重合触媒として使用しても、触媒活性を十分に発揮することができない。アルミニウム化合物に加えてリン化合物も重合触媒として特定の比率で併用することで、触媒活性を十分に高めることができる。ポリエステル樹脂中のアルミニウム原子に対するリン原子のモル比が上記範囲外では、重合触媒としての機能を十分に果たすことができないおそれがある。
【0060】
本発明では、上述のアルミニウム化合物及びリン化合物に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、触媒活性をさらに向上させるために、チタン化合物、スズ化合物、ゲルマニウム化合物等の金属含有重縮合触媒を併用しても良い。その場合、ゲルマニウム化合物は、得られるポリエステル樹脂の質量に対して、ゲルマニウム原子として10ppm以下が好ましく、チタン化合物は、得られるポリエステル樹脂の質量に対して、チタン原子として3ppm以下であることが好ましく、スズ化合物は、得られるポリエステル樹脂の質量に対して、スズ原子として3ppm以下が好ましい。ただし、本発明の目的からは、これらのチタン化合物、スズ化合物、ゲルマニウム化合物等の金属含有重縮合触媒は、極力使用しないことが好ましい。また、重合触媒として一般的に使用されるアンチモン化合物は、上述のように樹脂の熱安定性及び熱酸化安定性の向上効果に劣るので、本発明では使用を控える方がよい。
【0061】
また、本発明の共重合ポリエステル樹脂の製造においては、重合活性を向上させるためや製造された共重合ポリエステル樹脂中のアセトアルデヒド(以下AAと略すことがある)含有量を低減させてフレバー性を向上させるために、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を併用してもよい。AAは、共重合ポリエステル樹脂の合成の際に副生成物として生じることがある成分である。アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、ベリリウム、マグネシウムの化合物が挙げられ、好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムの化合物、更に好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウムの化合物、最も好ましくはリチウム、カリウムの化合物である。具体的なアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物としては、これらの元素の酢酸塩(例えば酢酸リチウム)等のカルボン酸塩、アルコキサイド等が挙げられる。これらは、粉体、水溶液、エチレングリコール溶液等として反応系に添加されることができる。アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の使用量は、共重合ポリエステル樹脂中のアルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素(例えばリチウム元素)の含有量が1~100ppmであるようなものであることが好ましく、更に好ましくは1~60ppm、最も好ましくは、1~50ppmである。なお、この含有量は、本発明の共重合ポリエステル樹脂中にジカルボン酸成分として含有されるスルホイソフタル酸ナトリウムに由来するナトリウム元素の含有量を除外した値である。共重合ポリエステル樹脂中のアルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素の含有量が100ppmを超えると、熱安定が低下する傾向にある。一方、ポリエステル樹脂中のAAの含有量は150ppm以下であることが好ましく、より好ましくは120ppm、更に好ましくは110ppm以下、最も好ましくは80ppm以下である。AAの含有量が150ppmを超えるとフレバー性が低下する傾向にある。
【0062】
直接エステル化法の場合、前記重縮合触媒は、エステル化反応開始前、あるいは加圧エステル化反応終了後から初期重縮合反応開始前までの任意の時点で添加することができる。但し、アンチモン化合物またはチタン化合物を重縮合触媒として使用する場合には、エステル化反応前に添加することが好ましい。また、他の重縮合触媒、熱安定剤、添加物はエステル化反応後に添加することが好ましい。
【0063】
また、エステル交換法の場合には、前記重縮合触媒は、エステル交換反応開始前から初期重縮合反応開始前までの任意の時点で添加することができる。但し、チタン化合物は、重縮合触媒としての機能だけでなくエステル交換触媒としての機能も有するので、エステル交換反応開始前に添加することが好ましい。また、他の重縮合触媒、熱安定剤、添加物はエステル交換反応終了後からに添加することが好ましい。エステル交換触媒としては、酢酸マンガン、酢酸マグネシウム、チタニウムテトラブトキサイドなどのチタン化合物などが好適である。エステル交換触媒は、エステル交換反応開始前に添加することが必要である。
【0064】
また、上記のアルミニウム化合物以外の触媒を使用する場合、安定剤として、リン化合物を使用することができる。リン化合物としては、例えば、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸およびそれらの誘導体等が挙げられる。好適な具体例としては、リン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリブチル、リン酸トリフェニル、リン酸モノメチル、リン酸ジメチル、リン酸モノブチル、リン酸ジブチル、亜リン酸、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリブチル、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、エチルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジフェニルが挙げられる。これらの中でも、リン酸トリメチル、リン酸が特に好適である。これらのリン化合物は、生成する共重合ポリエステルに対して1~100ppm含有させることが好ましく、さらに好ましくは3~70ppmであり、特に好ましくは5~50ppmである。
【0065】
共重合ポリエステル樹脂の色調改善のためにコバルト化合物を配合することができる。このコバルト化合物の添加により、特にカラーb値を小さくすることができる。コバルト化合物はコバルト原子として共重合ポリエステル樹脂に対して0.5~30ppm含有させることが好ましく、さらに好ましくは1~20ppm、特に好ましくは1~15ppmの範囲である。コバルト原子の含有量が上記範囲を越えると、コバルト金属の還元により共重合ポリエステル樹脂が黒ずんだり、青味が強くなったりし、カラーL値が50未満となったり、カラーb値が-5未満となったりし、商品価値が低下する。コバルト化合物としては、酢酸コバルト、塩化コバルト、安息香酸コバルト、クロム酸コバルト等が挙げられる。これらの中では、酢酸コバルトが好ましい。
【0066】
上記の連続式重縮合法または回分式重縮合法で得られた共重合ポリエステル樹脂は、通常、反応缶の底部に設けた抜き出し口からストランド状に抜き出し、水冷後、チップ状またはシート状にカットされる。
【0067】
本発明の本質的な特徴である、遊離のTESDやT2SE3の含有量が少ない共重合ポリエステル樹脂は、エステル交換とエステル化を同時に行う方法や、エステル化反応又はエステル交換反応の途中、もしくは反応後に特定のジオール成分を追加添加して、重縮合反応を行う方法で製造することができる。このうち、後者のエステル化反応又はエステル交換反応の途中、もしくは反応後に特定のジオール成分を追加添加して、重縮合反応を行う方法で製造する方法が好ましく、特定のジオール成分は、ジエチレングリコールやエチレングリコールであることが好ましく、ジエチレングリコールであることがより好ましい。
例えば、追加で添加する量を考慮した量の原料モノマーを先に、エステル化反応又はエステル交換反応させ、その反応後にジエチレングリコールを添加して5分以上攪拌した後に重縮合する。追加で添加するジエチレングリコール成分は、全ジエチレングリコール成分の7.5~30モル%であることが好ましい。
他には、追加で添加する量を考慮した量の原料モノマーを先に、エステル化反応又はエステル交換反応させ、その反応途中でジエチレングリコールを添加して、更に反応後にジエチレングリコールを追加添加して、5分以上攪拌後に重縮合する。追加で添加するジエチレングリコール成分は、全ジエチレングリコール成分の5~20モル%であることが好ましい。
更には、追加で添加する量を考慮した量の原料モノマーを先に、エステル化反応又はエステル交換反応させ、その反応途中でジエチレングリコールを添加して、更に反応後にジエチレングリコールを追加添加して、5分以上攪拌後に重縮合する。追加で添加するジオール(ジエチレングリコール+エチレングリコール)成分は、全ジオール(ジエチレングリコール+エチレングリコール)成分の7.5~30モル%であることが好ましい。
更に、ストランド状に抜き出し、水冷後、チップ状またはシート状やカットした物をジエチレングリコールやトリエチレングリコールの蒸気中に一定時間接触することで、TESDやT2SE3を減少させることもできる。詳しいメカニズムは不明であるが、ジエチレングリコールやトリエチレングリコールの蒸気によって、環状のTESDやT2SE3を開環すると思われる。
【0068】
本発明のポリエルテル樹脂組成物には、必要に応じて、本発明としての特性を損なわない範囲において、各種添加剤を含有させることができる。添加剤としては、例えば顔料などの着色剤、、トナー、耐熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、変性剤、帯電防止剤、難燃剤、染料などが挙げられ、ポリエルテル樹脂組成物の着色性の改善のため酸化チタン、トナーが好ましい。酸化チタンの添加量としては、0から20000ppm、好ましくは0.1ppmから15000ppm、更に好ましくは0.2ppmから13000ppmが良好である。トナーの添加量としては、0.1ppmから100ppm、好ましくは0.5から90ppm、最も好ましくは、1~80ppmが良好である。トナーとしては、フタロシアニン系、スチルベンビスベンゾオキサゾール誘導体を使用することができる。具体的には、クラリアント社製SOLVAPERM BLUE RLSやPVfastBLUE A4RやホスタルックスKSやイーストマンコダック社製のOB-1等であるが、その中でも250℃以上で溶融が開始され、約300℃で溶融が完了するタイプのクラリアント社製ソルベントブルーシリーズのものが特に好ましい。かかるトナーは、ポリエステル自体の融点(230~265℃)と同様の融点を有するため、ポリエステルとの混合溶解性が非常に良く、溶融機械内での溶融均一性が優れており、紡糸操業性が良好なものとなる。
【実施例】
【0069】
次に、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例の態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。なお、実施例における特性値の評価は、以下の方法に依った。
【0070】
(1)共重合ポリエステル樹脂の組成比
共重合ポリエステル樹脂試料約5mgを重クロロホルムとトリフルオロ酢酸の混合溶液(体積比9/1)0.7mlに溶解し、1H-NMR(varian製、UNITY50)を使用して組成比を求めた。
【0071】
(2)TESD含有量
共重合ポリエステル樹脂50mgをヘキサフルオロイソプロパノール/クロロホルム混合液(容量比=1/9)1mLに溶解し、さらにクロロホルム4mLを加えて希釈した。これにメタノール10mLを加えてポリマーを沈殿させた後、遠心分離した。遠心分離後の上清を濃縮乾固し、ジメチルホルムアミド0.4mLで再溶解した。この溶液を使用して、高速液体クロマトグラフによりTESD含有量を測定した。
装置:Waters ACQUITY UPLC
カラム:Waters BEH-C18 2.1×150mm(Waters製)
【0072】
(3)T2SE3含有量
上記TESD含有量測定と同様の方法で、高速液体クロマトグラフによりT2SE3含有量を測定した。
【0073】
(4)極限粘度(IV)
60℃で24時間乾燥した試料0.1gを精秤し、25mLのフェノール/テトラクロロエタン(3/2(質量比))の混合溶媒に溶解し、オストワルド粘度計を用いて30℃で極限粘度(IV)を測定した。
【0074】
(5)数平均分子量
溶剤としてクロロホルム/ヘキサフルオロイソプロパノール混合溶媒(容量比=9/1)、および検定標準としてポリスチレンを用いるウオーターズ(Waters)ゲル透過クロマトグラフィーによって数平均分子量を測定した。クロロホルム/ヘキサフルオロイソプロパノール混合溶媒(容量比=9/1)を溶離液として、ポリスチレン換算の測定値を得た。
【0075】
(6)カルボキシル末端基濃度(AV)
60℃で24時間乾燥した試料0.2gを精秤し、そのときの重量をW(g)とした。試験管にベンジルアルコール10mlと秤量した試料を加え、試験管を205℃に加熱したオイルバスに浸し、ガラス棒で攪拌しながら試料を溶解した。溶解時間を3分間、5分間、7分間としたときの試料をそれぞれA、B、Cとした。次いで、新たに試験管を用意し、ベンジルアルコールのみを入れて同様の手順で処理し、溶解時間を3分間、5分間、7分間としたときの試料をそれぞれa、b、cとした。予めファクターの分かっている0.04mol/l水酸化カリウム溶液(エタノール溶液)を用いて滴定した。指示薬はフェノールレッドを用い、黄緑色から淡紅色に変化したところを終点とし、水酸化カリウム溶液の滴定量(ml)を求めた。試料A、B、Cの滴定量をXA、XB、XC(ml)とする。試料a、b、cの滴定量をXa、Xb、Xc(ml)とした。各溶解時間に対しての滴定量XA、XB、XCを用いて、最小2乗法により、溶解時間0分での滴定量V(ml)を求める。同様にXa、Xb、Xcを用いて、滴定量V0(ml)を求めた。次いで、下記式5に従い、AVを求めた。
AV(eq/t)=[(V-V0)×NF×1000]/W(式5)
NF:0.04mol/l水酸化カリウム溶液のファクター
W:試料重量(g)
【0076】
(7)色調(カラーb値及びカラーL値)
共重合ポリエステル樹脂のチップのカラーをカラーメーター(日本電色社製、Model 1001DP)を使用し測定し、カラーb値及びカラーL値を求めた。
【0077】
(8)融点
ティー・エイ・インスツルメント社製の示差熱分析計(DSC)TAS100型熱分析システムを用いて測定した。ポリエステル樹脂の試料7.5±0.3mgをアルミ製のパンに入れ、融点測定器を用いて280℃まで加熱し、1分間保持した後、液体窒素にて急冷した。その後、試料を、室温から20℃/分の昇温速度で300℃まで加熱し、融点(Tm)を測定した。Tmは、それぞれのピークの極大部分の温度とした。
【0078】
(9)ガラス転移点(Tg)
試料5mgをセイコー電子工業社製の示差走査熱量計(型式:DSC220)を用いて、-40℃から120℃まで、昇温速度10℃/分で昇温し、得られた吸熱曲線より求めた。ガラス転移温度以下のベースラインの延長線と遷移部における最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)とした。
【0079】
(10)アルミニウム原子含有量
試料0.1gを6M塩酸溶液に溶解させ一日放置した後、純水で希釈し1.2M塩酸測定用溶液とした。調製した溶液試料を高周波プラズマ発光分析により求めた。
【0080】
(11)リン原子含有量
試料1gを、炭酸ナトリウム共存下で乾式灰化分解させる方法、あるいは硫酸/硝酸/過塩素酸の混合液または硫酸/過酸化水素水の混合液で湿式分解させる方法によってリン化合物を正リン酸とした。次いで、1モル/Lの硫酸溶液中においてモリブデン酸塩を反応させてリンモリブデン酸とし、これを硫酸ヒドラジンで還元してヘテロポリ青を生成させた。吸光光度計(島津製作所製、UV-150-02)により波長830nmにおける吸光度を測定した。予め作成した検量線から、試料中のリン原子の量を定量した。
【0081】
(12)チタン原子含有量
試料1gを白金製るつぼに精秤し、電気炉で炭化・灰化させた。残渣を硫酸水素カリウムで溶融した後、溶融物を希塩酸で溶解させ、テトラブチルチタネート(TBTと略すことがある)含有量を、ジアンチピリルメタン比色法を使用して測定した。単位は、チタン原子としてppmで表した。
【0082】
(13)アンチモン原子含有量
試料1gを硫酸/過酸化水素水の混合液で湿式分解させた。次いで、亜硝酸ナトリウムを加えてアンチモン原子をSb5+とし、ブリリアングリーンを添加してアンチモンとの青色錯体を生成させた。この錯体をトルエンで抽出後、吸光光度計(島津製作所製、UV-150-02)を用いて、波長625nmにおける吸光度を測定し、予め作成した検量線から、試料中のアンチモン原子の量を比色定量した。
【0083】
(14)コバルト原子含有量
試料1gを白金ルツボにて灰化分解し、6モル/L塩酸を加えて蒸発乾固させた。これを1.2モル/Lの塩酸で溶解し、ICP発光分析装置(島津製作所製、ICPS-2000)を用いて発光強度を測定した。予め作成した検量線から、試料中のコバルト原子の量を定量した。
【0084】
(15)リチウム原子含有量
試料1gを白金製るつぼに秤量し、ホットプレート上で400℃まで予備炭化を行った。その後、ヤマト科学社製電気炉FO610型を用いて、550℃で8時間灰化処理を行った。灰化後、6.0Nの塩酸、弗化水素酸を少量添加し、ホットプレート上で酸分解を行い、酸が完全に揮発するまで加熱処理を行った。酸分解終了後に、1.2Nの塩酸20mLを用いて定容して得られる測定液中のリチウム元素濃度を、高周波誘導結合プラズマ発光分析装置(日立ハイテクサイエンス社製、SPECTROBLUE)で測定し、試料中のリチウム元素含有量を算出した。
【0085】
(16)ダイス汚れ及び異物付着
乾燥した共重合ポリエステル樹脂試料をシート用ダイス付き押出機に投入して2日間、約0.5mm厚みのシートを連続成形した。次の基準により、ダイス出口の汚れ付着の状態及びシート表面の異物付着の状態を肉眼で評価した。
(評価基準)
◎:ダイス出口の汚れ付着がほとんどなく、シート表面状態良好
○:ダイス出口の汚れ付着が僅かにあるが、シート表面状態良好
△:ダイス出口の汚れ付着が少しあり、シート表面に異物付着少しあり
×:ダイス出口の汚れ付着が非常に酷く、シート表面に異物付着多数あり
【0086】
(17)ヘイズ値
射出成形機(名機製作所製、M-150C-DM)を使用して、280℃で共重合ポリエステル樹脂を溶融させ、金型温度10℃で厚さ2~11mmの段付成形板を成形した。成形板の厚さ5mmの部分のヘイズ値(%)をヘイズメーター(日本電色社製、Model NDH2000)で測定した。
【0087】
(18)DSC
ヤマトDP63乾燥機にて、試料を120℃で120分放置した。この試料を、示差走査型熱量計(DSC)を用いて、-100℃~300℃まで20℃/minで昇温し、次に-100℃まで50℃/minで降温し、続いて-100℃~300℃まで20℃/minで昇温させた。二度の昇温過程において融解ピークを示すかどうかを確認した。二度の昇温過程のどちらにおいても融解ピークを示さないものを「○」、どちらか一方でも示すものを「×」とした。
【0088】
(19)熱安定性評価:熱酸化分解パラメーター(TD)
共重合ポリエステル樹脂の極限粘度(IV)を測定し、加熱試験前のIV([IV]i)とした。一方、乾燥した共重合ポリエステル樹脂のチップ3gをガラス製試験管に入れ、窒素雰囲気下で280℃のオイルバスに120分浸漬させて溶融させ、加熱した後のIV([IV]f1)を測定した。[IV]i及び[IV]f1から、下記の式に従ってTDを求めた。
TD=0.245{[IV]f1
-1.47-[IV]i
-1.47}
共重合ポリエステル樹脂の熱酸化分解パラメーター(TD)の値が小さいほど、熱安定性が高いことを表す。
【0089】
(20)ポリエステル樹脂中のアセトアルデヒド(AA)含有量:
窒素置換したガラスアンプルに試料/蒸留水=1グラム/2ccを入れ、アンプルの上部を溶封し、160℃で2時間抽出処理を行った。冷却後、抽出液中のアセトアルデヒド含有量を高感度ガスクロマトグラフィーで測定し、濃度をppmで表示した。フレバー性評価として、アセトアルデヒド含有量が80ppm以下を◎、80ppmより多く120ppm以下を〇、120ppmより多く160ppm未満を△~〇、160ppm以上を×とした。
【0090】
(実施例1)
樹脂組成が表1に示す値になるように、ジカルボン酸成分として高純度テレフタル酸(TPA)及びスルホイソフタル酸ナトリウムジメチルエステル(GCM)、ジオール成分としてエチレングリコール(EG)及びジエチレングリコール(DEG)を含むスラリーを調製した。ただし、スラリー中のジカルボン酸成分に対する全グリコール成分のモル比(G/A)は2.2になるように調節した。次に、このスラリーを、予め反応物が残存している第1エステル化反応缶に連続的に供給した。次いで、攪拌下、缶内圧力0.15MPa、257℃の条件下で、平均滞留時間が3時間となるようにエステル化反応を行った。得られた反応物を第2エステル化反応缶に移送し、缶内圧力0.05MPaで攪拌下、257℃の条件下で、平均滞留時間が1時間となるようにエステル化反応を行った。次いで、得られたエステル化反応物を第3エステル化反応缶に移送し、攪拌下、缶内圧力0.05MPa、257℃の条件下でエステル化反応を行った。
【0091】
生成したオリゴマーに、エステル化反応前に添加した量の20%に相当する量のジエチレングリコールを目標組成に一致するように添加して15分間攪拌し、反応させた。
【0092】
このエステル化反応生成物に、重合触媒としてアルミニウム化合物(塩基性酢酸アルミニウム)のエチレングリコール溶液およびリン化合物(Irganox1222:前述の化学式(4)の化合物)のエチレングリコール溶液を一定量添加して、第1重縮合反応缶に連続的に供給し、攪拌下、261℃、6.7kPaで1時間、次いで第2重縮合反応缶で攪拌下、272℃、0.6kPaで1時間、さらに最終重縮合反応缶で攪拌下、275℃、0.10~0.20kPaで1時間かけて重縮合反応を行った。重縮合反応後、反応物をポリマーフィルターに通過させ、溶融状態の共重合ポリエステル樹脂をダイのノズルからストランド状に抜き出し、クーリングバスで水冷後、チップ状にカッティングした。得られた共重合ポリエステル樹脂の評価結果を表1に示す。
【0093】
(実施例2~4)
実施例2~4は、スルホイソフタル酸ナトリウム(GCM)の量を変化させた例である。具体的には、テレフタル酸、スルホイソフタル酸、エチレングリコール及びジエチレングリコールの配合割合を、樹脂組成が表1に示す値になるように変更した以外は実施例1と同様にして共重合ポリエステル樹脂を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂の評価結果を表1に示す。
【0094】
(実施例5,6)
実施例5,6は、ジエチレングリコール(DEG)の量を変化させた例である。具体的には、テレフタル酸、スルホイソフタル酸、エチレングリコール及びジエチレングリコールの配合割合を、樹脂組成が表1に示す値になるように変更した以外は実施例1と同様にして共重合ポリエステル樹脂を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂の評価結果を表1に示す。
【0095】
(実施例7~9)
実施例7~9は、数平均分子量及び/又はカルボキシル末端基濃度(AV)を変化させた例である。具体的には、数平均分子量及び/又はカルボキシル末端基濃度(AV)が表1に示す値になるように反応条件(エステル化反応の平均滞留時間)を調節した以外は実施例1と同様にして共重合ポリエステル樹脂を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂の評価結果を表1に示す。
【0096】
(実施例10~13)
実施例10~13は、重合触媒のアルミニウム化合物及び/又はリン化合物の量を変化させた例である。具体的には、残存アルミニウム原子及び/又はリン原子の量が表1に示す値になるようにアルミニウム化合物及び/又はリン化合物の添加量を調節した以外は実施例1と同様にして共重合ポリエステル樹脂を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂の評価結果を表1に示す。
【0097】
(実施例14~16)
実施例14~16は、ポリマー中のアセトアルデヒド含有量の低減によるフレバー性の改善のために酢酸リチウムをさらにスラリーに配合した例である。具体的には、樹脂組成が表1に示す値になるように、ジカルボン酸成分として高純度テレフタル酸(TPA)及びスルホイソフタル酸ナトリウムジメチルエステル(GCM)、ジオール成分としてエチレングリコール(EG)及びジエチレングリコール(DEG)、及び酢酸リチウムを含むスラリーを調製した。ただし、スラリー中のジカルボン酸成分に対する全グリコール成分のモル比(G/A)は2.2になるように調節した。次に、このスラリーを、予め反応物が残存している第1エステル化反応缶に連続的に供給した。次いで、攪拌下、缶内圧力0.15MPa、257℃の条件下で、平均滞留時間が3時間となるようにエステル化反応を行った。得られた反応物を第2エステル化反応缶に移送し、缶内圧力0.05MPaで攪拌下、257℃の条件下で、平均滞留時間が1時間となるようにエステル化反応を行った。次いで、得られたエステル化反応物を第3エステル化反応缶に移送し、攪拌下、缶内圧力0.05MPa、257℃の条件下でエステル化反応を行った。
【0098】
生成したオリゴマーに、エステル化反応前に添加した量の20%に相当する量のジエチレングリコールを目標組成に一致するように添加して15分間攪拌し、反応させた。
【0099】
このエステル化反応生成物に、重合触媒としてアルミニウム化合物(塩基性酢酸アルミニウム)のエチレングリコール溶液およびリン化合物(Irganox1222:前述の化学式(4)の化合物)のエチレングリコール溶液を一定量添加して、第1重縮合反応缶に連続的に供給し、攪拌下、261℃、6.7kPaで1時間、次いで第2重縮合反応缶で攪拌下、272℃、0.6kPaで1時間、さらに最終重縮合反応缶で攪拌下、275℃、0.10~0.20kPaで1時間かけて重縮合反応を行った。重縮合反応後、反応物をポリマーフィルターに通過させ、溶融状態の共重合ポリエステル樹脂をダイのノズルからストランド状に抜き出し、クーリングバスで水冷後、チップ状にカッティングした。得られた共重合ポリエステル樹脂の評価結果を表1に示す。
【0100】
(実施例17)
実施例17は、重合触媒として、アルミニウム化合物の代わりにアンチモン化合物及びコバルト化合物を使用した例である。具体的には、樹脂組成が表1に示す値になるように、ジカルボン酸成分として高純度テレフタル酸(TPA)及びスルホイソフタル酸ナトリウムジメチルエステル(GCM)、ジオール成分としてエチレングリコール(EG)及びジエチレングリコール(DEG)を含むスラリーを調製した。ただし、スラリー中のジカルボン酸成分に対する全グリコール成分のモル比(G/A)は2.2になるように調節した。次に、このスラリーを、予め反応物が残存している第1エステル化反応缶に連続的に供給した。次いで、攪拌下、缶内圧力0.15MPa、257℃の条件下で、平均滞留時間が3時間となるようにエステル化反応を行った。得られた反応物を第2エステル化反応缶に移送し、缶内圧力0.05MPaで攪拌下、257℃の条件下で、平均滞留時間が1時間となるようにエステル化反応を行った。次いで、得られたエステル化反応物を第3エステル化反応缶に移送し、攪拌下、缶内圧力0.05MPa、257℃の条件下でエステル化反応を行った。
【0101】
生成したオリゴマーに、エステル化反応前に添加した量の20%に相当する量のジエチレングリコールを目標組成に一致するように添加して15分間攪拌し、反応させた。
【0102】
このエステル化反応生成物に、重合触媒としてアンチモン化合物(三酸化アンチモン)のエチレングリコール溶液、コバルト化合物(酢酸コバルト)のエチレングリコール溶液およびリン化合物(Irganox1222:前述の化学式(4)の化合物)のエチレングリコール溶液を一定量添加して、第1重縮合反応缶に連続的に供給し、攪拌下、261℃、6.7kPaで1時間、次いで第2重縮合反応缶で攪拌下、272℃、0.6kPaで1時間、さらに最終重縮合反応缶で攪拌下、275℃、0.10~0.20kPaで1時間かけて重縮合反応を行った。重縮合反応後、反応物をポリマーフィルターに通過させ、溶融状態の共重合ポリエステル樹脂をダイのノズルからストランド状に抜き出し、クーリングバスで水冷後、チップ状にカッティングした。得られた共重合ポリエステル樹脂の評価結果を表1に示す。
【0103】
(実施例18,19)
実施例18,19は、重合触媒としてアルミニウム化合物の代わりにチタン化合物を使用した例である。具体的には、樹脂組成が表1に示す値になるように、ジカルボン酸成分として高純度テレフタル酸(TPA)及びスルホイソフタル酸ナトリウムジメチルエステル(GCM)、ジオール成分としてエチレングリコール(EG)及びジエチレングリコール(DEG)、及び酢酸リチウムを含むスラリーを調製した。ただし、スラリー中のジカルボン酸成分に対する全グリコール成分のモル比(G/A)は2.2になるように調節した。次に、このスラリーを、予め反応物が残存している第1エステル化反応缶に連続的に供給した。次いで、攪拌下、缶内圧力0.15MPa、257℃の条件下で、平均滞留時間が3時間となるようにエステル化反応を行った。得られた反応物を第2エステル化反応缶に移送し、缶内圧力0.05MPaで攪拌下、257℃の条件下で、平均滞留時間が1時間となるようにエステル化反応を行った。次いで、得られたエステル化反応物を第3エステル化反応缶に移送し、攪拌下、缶内圧力0.05MPa、257℃の条件下でエステル化反応を行った。
【0104】
生成したオリゴマーに、エステル化反応前に添加した量の20%に相当する量のジエチレングリコールを目標組成に一致するように添加して15分間攪拌し、反応させた。
【0105】
このエステル化反応生成物に、重合触媒としてテトラブチルチタネート(TBT)の1-ブタノール溶液およびリン化合物(Irganox1222:前述の化学式(4)の化合物)のエチレングリコール溶液を一定量添加して、第1重縮合反応缶に連続的に供給し、攪拌下、261℃、6.7kPaで1時間、次いで第2重縮合反応缶で攪拌下、272℃、0.6kPaで1時間、さらに最終重縮合反応缶で攪拌下、275℃、0.10~0.20kPaで1時間かけて重縮合反応を行った。重縮合反応後、反応物をポリマーフィルターに通過させ、溶融状態の共重合ポリエステル樹脂をダイのノズルからストランド状に抜き出し、クーリングバスで水冷後、チップ状にカッティングした。得られた共重合ポリエステル樹脂の評価結果を表1に示す。
【0106】
(実施例20,21)
実施例20,21は、着色性の改善のために酸化チタンをさらに配合した例である。具体的には、テレフタル酸、スルホイソフタル酸、エチレングリコール及びジエチレングリコールの配合割合や重合触媒の種類や量、カルボキシル末端基濃度(AV)、又は数平均分子量を表1に示す値になるように変更し、更に、酢酸リチウムをスラリーに配合し、重合触媒と同時に酸化チタンCR930(石原産業製)をポリエステル樹脂に対して0.5ppm(実施例20)又は12000ppm(実施例21)となるように添加した以外は実施例1と同様にして共重合ポリエステル樹脂を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂の評価結果を表1に示す。
【0107】
(実施例22,23)
実施例22,23は、着色性の改善のためにトナーをさらに配合した例である。具体的には、テレフタル酸、スルホイソフタル酸、エチレングリコール及びジエチレングリコールの配合割合や重合触媒の種類や量、カルボキシル末端基濃度(AV)、又は数平均分子量を表1に示す値になるように変更し、更に、重合触媒と同時にトナーとしてソルベントブルー45(クラリアント製)をポリエステル樹脂に対して0.1ppm(実施例22)又は50ppm(実施例23)となるように添加した以外は実施例1と同様にして共重合ポリエステル樹脂を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂の評価結果を表1に示す。
【0108】
(比較例1)
比較例1は、ジカルボン酸成分としてスルホイソフタル酸ナトリウム(GCM)を使用せず、テレフタル酸のみを使用した例である。具体的には、テレフタル酸、エチレングリコール及びジエチレングリコールの配合割合を、樹脂組成が表1に示す値になるように変更した以外は実施例1と同様にして共重合ポリエステル樹脂を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂の評価結果を表1に示す。なお、比較例1では、GCMを使用していないため、TESD量及びT2SE3量の測定は行わなかった。
【0109】
(比較例2)
比較例2は、スルホイソフタル酸ナトリウム(GCM)の量が少なすぎる例である。具体的には、テレフタル酸、スルホイソフタル酸、エチレングリコール及びジエチレングリコールの配合割合を、樹脂組成が表1に示す値になるように変更した以外は実施例1と同様にして共重合ポリエステル樹脂を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂の評価結果を表1に示す。
【0110】
(比較例3)
比較例3は、スルホイソフタル酸ナトリウム(GCM)の量が多すぎる例である。具体的には、テレフタル酸、スルホイソフタル酸、エチレングリコール及びジエチレングリコールの配合割合を、樹脂組成が表1に示す値になるように変更した以外は実施例1と同様にして共重合ポリエステル樹脂を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂の評価結果を表1に示す。
【0111】
(比較例4)
比較例4は、ジエチレングリコール(DEG)の量が多すぎる例である。具体的には、テレフタル酸、スルホイソフタル酸、エチレングリコール及びジエチレングリコールの配合割合を、樹脂組成が表1に示す値になるように変更した以外は実施例1と同様にして共重合ポリエステル樹脂を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂の評価結果を表1に示す。
【0112】
【0113】
表1からわかるように、本発明の要件を全て満たす実施例1~23は、ダイス汚れ及び異物付着がなく、透明性(ヘイズ値、DSC測定)にも優れ、リサイクル性(熱安定性)にも優れる。これに対して、比較例1は、ジカルボン酸成分としてスルホイソフタル酸ナトリウム(GCM)を使用せず、テレフタル酸のみを使用しており、比較例2は、スルホイソフタル酸ナトリウム(GCM)の量が少なすぎるため、透明性(ヘイズ値、DSC測定)に劣り、リサイクル性(熱安定性)に劣る。比較例3は、スルホイソフタル酸ナトリウム(GCM)の量が多すぎるため、環状オリゴマー(TESD,T2SE3)の含有量が高く、そのためダイス汚れ及び異物付着が多い。比較例4は、ジエチレングリコール(DEG)の量が多すぎるため、環状オリゴマー(TESD)の含有量が高く、そのためダイス汚れ及び異物付着が多い。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、ジエチレングリコール及びスルホイソフタル酸ナトリウムの使用による透明性、成形性の利点を享受しつつも、フィルムや成形品や繊維などの製品を連続的に生産する際にダイスの汚れや、製品への異物付着がほとんど発生せず、また、リサイクル時に樹脂が着色したり分子量が低下することもない。従って、本発明は、産業界に寄与することが大である。