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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】抗体製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240903BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240903BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240903BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240903BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20240903BHJP
【FI】
A61K39/395 M
A61K9/08
A61K39/395 U ZNA
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/18
A61K47/26
A61P35/02
A61P37/02
A61P37/06
C07K16/46
C07K16/28
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2024534766
(86)(22)【出願日】2024-03-15
(86)【国際出願番号】 JP2024010151
【審査請求日】2024-06-11
(31)【優先権主張番号】P 2023041761
(32)【優先日】2023-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023154195
(32)【優先日】2023-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000185983
【氏名又は名称】小野薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野崎 晋也
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 涼
(72)【発明者】
【氏名】有馬 尚紀
(72)【発明者】
【氏名】小田 淳史
(72)【発明者】
【氏名】松永 淳
(72)【発明者】
【氏名】宮鍋 一紘
(72)【発明者】
【氏名】富樫 佑介
(72)【発明者】
【氏名】前家 理宏
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/156199(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/210662(WO,A1)
【文献】特表2019-526627(JP,A)
【文献】国際公開第2023/031969(WO,A1)
【文献】国際公開第2023/031970(WO,A1)
【文献】特表2022-553058(JP,A)
【文献】国際公開第2011/161226(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61K 47/02
A61K 47/12
A61K 47/18
A61K 47/26
C07K 16/46
C07K 16/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)0.1~1.2 mg/mLの抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)18~22 mMの酢酸緩衝剤、
(c)172~193 mMのトレハロース、
(d)5~15 mMのL-メチオニン、
(e)0.05~0.3 %(w/v)のポリソルベート80、および
(f)19.6~25.7 mMの塩化ナトリウムを含み、pHが4.9~5.1である、皮下投与用もしくは静脈内投与用の水性医薬組成物またはその製剤であって、
ここで、当該抗PD-1/CD3二重特異性抗体が、
(i)PD-1に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖、ならびに
(ii)CD3に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖からなり、
(α)前項(i)の重鎖が、配列番号5のアミノ酸配列からなり、
(β)前項(ii)の重鎖が、配列番号6のアミノ酸配列からなり、ならびに
(γ)前項(i)および前項(ii)の軽鎖がともに、配列番号7のアミノ酸配列からなる当該二重特異性抗体である、当該水性医薬組成物またはその製剤。
【請求項2】
抗PD-1/CD3二重特異性抗体が、0.5 mg/mLまたは1 mg/mLである、請求項1記載の水性医薬組成物またはその製剤。
【請求項3】
(a)0.5 mg/mLまたは1 mg/mLの抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)20.07 mMの酢酸緩衝剤、
(c)182.38 mMのトレハロース、
(d)10.05 mMのL-メチオニン、
(e)0.1 %(w/v)のポリソルベート80、ならびに
(f)23.27 mMの塩化ナトリウムを含み、pHが5.0である、皮下投与用もしくは静脈内投与用の水性医薬組成物またはその製剤であって、
ここで、当該抗PD-1/CD3二重特異性抗体が、
(i)PD-1に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖、ならびに
(ii)CD3に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖からなり、
(α)前項(i)の重鎖が、配列番号5のアミノ酸配列からなり、
(β)前項(ii)の重鎖が、配列番号6のアミノ酸配列からなり、ならびに
(γ)前項(i)および前項(ii)の軽鎖がともに、配列番号7のアミノ酸配列からなる当該二重特異性抗体である、当該水性医薬組成物またはその製剤。
【請求項4】
(a)0.1~1.2 mg/mLの抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)(b1)1.68~2.05 mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、および(b2)前項(b1)の酢酸ナトリウム三水和物の分量に対応して、pHが4.9~5.1となる分量の酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)65.1~72.6 mg/mLのトレハロース二水和物、
(d)0.75~2.25 mg/mLのL-メチオニン、
(e)0.5~3.0 mg/mLのポリソルベート80、ならびに
(f)1.15~1.5 mg/mLの塩化ナトリウムを含み、pHが4.9~5.1である、皮下投与用もしくは静脈内投与用の水性医薬組成物またはその製剤であって、
ここで、当該抗PD-1/CD3二重特異性抗体が、
(i)PD-1に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖、ならびに
(ii)CD3に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖からなり、
(α)前項(i)の重鎖が、配列番号5のアミノ酸配列からなり、
(β)前項(ii)の重鎖が、配列番号6のアミノ酸配列からなり、ならびに
(γ)前項(i)および前項(ii)の軽鎖がともに、配列番号7のアミノ酸配列からなる当該二重特異性抗体である、当該水性医薬組成物またはその製剤。
【請求項5】
抗PD-1/CD3二重特異性抗体が、0.5 mg/mLまたは1 mg/mLである、請求項4記載の水性医薬組成物またはその製剤。
【請求項6】
(a)0.5 mg/mLまたは1 mg/mLの抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)1.87 mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物および0.38 mg/mLの酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)69 mg/mLのトレハロース二水和物、
(d)1.5 mg/mLのL-メチオニン、
(e)1.0 mg/mLのポリソルベート80、ならびに
(f)1.36 mg/mLの塩化ナトリウムを含み、pHが5.0である、皮下投与用もしくは静脈内投与用の水性医薬組成物またはその製剤であって、
ここで、当該抗PD-1/CD3二重特異性抗体が、
(i)PD-1に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖、ならびに
(ii)CD3に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖からなり、
(α)前項(i)の重鎖が、配列番号5のアミノ酸配列からなり、
(β)前項(ii)の重鎖が、配列番号6のアミノ酸配列からなり、ならびに
(γ)前項(i)および前項(ii)の軽鎖がともに、配列番号7のアミノ酸配列からなる当該二重特異性抗体である、当該水性医薬組成物またはその製剤。
【請求項7】
(a)0.5~6 mgの抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)(b1)8.4~10.2 mgの酢酸ナトリウム三水和物、および(b2)前項(b1)の酢酸ナトリウム三水和物の分量に対応して、pHが4.9~5.1となる分量の氷酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)325~365.1 mgのトレハロース二水和物、
(d)3.75~11.25 mgのL-メチオニン、
(e)2.5~15.0 mgのポリソルベート80、ならびに
(f)5.8~7.5 mgの塩化ナトリウムを含み、pHが4.9~5.1であり、単位製剤当たりの容量が5 mLである、皮下投与用もしくは静脈内投与用の水性医薬組成物またはその製剤であって、
ここで、当該抗PD-1/CD3二重特異性抗体が、
(i)PD-1に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖、ならびに
(ii)CD3に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖からなり、
(α)前項(i)の重鎖が、配列番号5のアミノ酸配列からなり、
(β)前項(ii)の重鎖が、配列番号6のアミノ酸配列からなり、ならびに
(γ)前項(i)および前項(ii)の軽鎖がともに、配列番号7のアミノ酸配列からなる当該二重特異性抗体である、当該水性医薬組成物またはその製剤。
【請求項8】
抗PD-1/CD3二重特異性抗体が、2.5 mgまたは5 mgである、請求項7記載の水性医薬組成物またはその製剤。
【請求項9】
(a)2.5 mgまたは5 mgの抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)9.35 mgの酢酸ナトリウム三水和物および1.9 mgの氷酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)345 mgのトレハロース二水和物、
(d)7.5 mgのL-メチオニン、
(e)5.0 mgのポリソルベート80、ならびに
(f)6.8 mgの塩化ナトリウムを含み、pHが5.0であり、単位製剤当たりの容量が5 mLである、皮下投与用もしくは静脈内投与用の水性医薬組成物またはその製剤であって、
ここで、当該抗PD-1/CD3二重特異性抗体が、
(i)PD-1に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖、ならびに
(ii)CD3に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖からなり、
(α)前項(i)の重鎖が、配列番号5のアミノ酸配列からなり、
(β)前項(ii)の重鎖が、配列番号6のアミノ酸配列からなり、ならびに
(γ)前項(i)および前項(ii)の軽鎖がともに、配列番号7のアミノ酸配列からなる当該二重特異性抗体である、当該水性医薬組成物またはその製剤。
【請求項10】
(a)0.2~2.4 mgの抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)(b1)3.36~4.1 mgの酢酸ナトリウム三水和物、および(b2)前項(b1)の酢酸ナトリウム三水和物の分量に対応して、pHが4.9~5.1となる分量の氷酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)130.2~145.2 mgのトレハロース二水和物、
(d)1.5~4.5 mgのL-メチオニン、
(e)1.0~6.0 mgのポリソルベート80、ならびに
(f)2.3~3.0 mgの塩化ナトリウムを含み、pHが4.9~5.1であり、単位製剤当たりの容量が2 mLである、皮下投与用もしくは静脈内投与用の水性医薬組成物またはその製剤であって、
ここで、当該抗PD-1/CD3二重特異性抗体が、
(i)PD-1に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖、ならびに
(ii)CD3に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖からなり、
(α)前項(i)の重鎖が、配列番号5のアミノ酸配列からなり、
(β)前項(ii)の重鎖が、配列番号6のアミノ酸配列からなり、ならびに
(γ)前項(i)および前項(ii)の軽鎖がともに、配列番号7のアミノ酸配列からなる当該二重特異性抗体である、当該水性医薬組成物またはその製剤。
【請求項11】
抗PD-1/CD3二重特異性抗体が、1 mgである、請求項10記載の水性医薬組成物またはその製剤。
【請求項12】
(a)1 mgの抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)3.74 mgの酢酸ナトリウム三水和物および0.76 mgの氷酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)138 mgのトレハロース二水和物、
(d)3.0 mgのL-メチオニン、
(e)2.0 mgのポリソルベート80、ならびに
(f)2.72 mgの塩化ナトリウムを含み、pHが5.0であり、単位製剤当たりの容量が2 mLである、皮下投与用もしくは静脈内投与用の水性医薬組成物またはその製剤であって、
ここで、当該抗PD-1/CD3二重特異性抗体が、
(i)PD-1に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖、ならびに
(ii)CD3に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖からなり、
(α)前項(i)の重鎖が、配列番号5のアミノ酸配列からなり、
(β)前項(ii)の重鎖が、配列番号6のアミノ酸配列からなり、ならびに
(γ)前項(i)および前項(ii)の軽鎖がともに、配列番号7のアミノ酸配列からなる当該二重特異性抗体である、当該水性医薬組成物またはその製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、抗体、特に、PD-1およびCD3に各々特異的に結合することができる二重特異性抗体(以下、「抗PD-1/CD3二重特異性抗体」と略記することがある。)を有効成分とする医薬組成物(以下、「本発明の医薬組成物」と略記することがある。)およびその製剤(以下、「本発明の製剤」と略記することがある。)に関する。
【背景技術】
【0002】
PD-1は免疫グロブリンファミリーに属する免疫抑制受容体であり、抗原レセプターからの刺激により活性化したT細胞の免疫活性化シグナルを抑制する機能を持つ分子である。PD-1ノックアウトマウスの解析等から、このPD-1シグナルは、自己免疫性拡張型心筋症、ループス様症候群、自己免疫性脳脊髄炎、全身性ループスエリテマトーデス、移植片対宿主病、I型糖尿病およびリウマチ性関節炎などの自己免疫疾患の抑制に重要な役割を果たすことが知られている。したがって、PD-1シグナルを増強する物質は自己免疫疾患等の予防または治療剤となり得ることが指摘されている。
【0003】
これまでにPD-1シグナルを増強する物質として、PD-1を認識する二重特異性抗体が知られている(特許文献1~5)。この二重特異性抗体は、T細胞受容体複合体のメンバーであるCD3を認識する抗体の抗原認識部位とPD-1を認識する抗体の抗原認識部位とが遺伝子工学的に連結されたものであり、PD-1をT細胞受容体複合体近傍に位置させる頻度を上げることによって、T細胞受容体複合体に対するPD-1の抑制シグナルを増強する作用をもつ。
【0004】
本発明の医薬組成物は、約0.01 mg/mL~約200 mg/mLの濃度範囲の抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分とし、その製剤添加物の一実施態様として、酢酸緩衝剤、トレハロース、L-メチオニン、ポリソルベート80および塩化ナトリウムを含むことを特徴とするものであるが、抗体製剤として、特許文献6~14に挙げられる製剤が報告されている。
【0005】
特許文献6は、抗CD3抗体によって標的組織特異的な免疫調節を行うために、静注などの全身投与ではない投与によって、標的組織での免疫抑制作用を最小化できる製剤に関するものである。そのような製剤例として、単位投与量が0.1~10 mgとなる抗CD3抗体を有効成分とし、その製剤添加物として、酢酸ナトリウム三水和物、塩化ナトリウム、ポリソルベート80、トレハロースおよびメチオニンを含む経口製剤と、2 mg/mLの抗CD3抗体を有効成分とし、その製剤添加物として、酢酸ナトリウム三水和物、塩化ナトリウムおよびポリソルベート80を含む皮下注製剤が各々開示されているが、標的組織での免疫抑制作用の最小化が難しい静注用製剤として、それら添加物からなる製剤が使用され得ることは実質的に開示されておらず、また、当該皮下注製剤に、さらに、トレハロースおよびL-メチオニンを添加することも一切示唆されていない。さらに、当該文献の両製剤におけるポリソルベート80の濃度は0.02 %(w/v)相当とされているが、本発明の医薬組成物については、凝集抑制の観点から、さらに約0.1 %(w/v)を至適ないし必要とすることは一切示唆されていない。
【0006】
特許文献7には、150 mg/mLの抗OX40L抗体を有効成分とし、その製剤添加物として、酢酸緩衝剤、トレハロース、ポリソルベート20およびメチオニンを含む製剤が開示されている。ここで、当該文献の製剤の添加物のうち、トレハロースおよびメチオニンは、等張化剤または安定化剤として用いられているが、同様に等張化剤または安定化剤として機能し得る塩化ナトリウムに関して、トレハロースおよびメチオニンの存在下において、さらに添加することは一切示唆されていない。また、好ましい性能を示す製剤例に含まれるポリソルベート20を、ポリソルベート80に代えて使用することについても一切示唆されていない。
【0007】
特許文献8には、150 mg/mLの抗GM-CSF-Rα抗体を有効成分とし、その製剤添加物として、酢酸緩衝剤、塩化ナトリウム、ポリソルベート80およびトレハロースを含む製剤が開示されているが、L-メチオニンの添加については一切示唆されていない。
【0008】
また、低または中性pI値を有する抗体に適用される製剤は、その抗体のコロイド安定性を配慮して、通常、抗体のpI値よりも1pH分乖離したpHが設定されるのが通常とされているが、特許文献8は、そのpHを抗体のpI値に近い5.5~7.5の範囲で実現させる製剤に適用することを目的とするものであり、当該製剤組成は、それ以外のpHの医薬組成物(例えば、pHが4.7~5.3の本発明の医薬組成物)には本来適用されない。
【0009】
特許文献9には、約45~55 mg/mLのアダリムマブを有効成分とし、その製剤添加物として、酢酸緩衝剤、塩化ナトリウム、ポリソルベート80およびトレハロースを含む製剤が開示されているが、遊離アミノ酸を実質的にないし全く含有しないか、あるいは含有していても0.1 mM以下であることが示されており、さらには、L-メチオニンを含む遊離アミノ酸の存在が抗体の安定性を顕著に悪化させること(pH 5.0以下での抗体の断片化)が開示されている。また、より少ない成分を採用する、より複雑でない製剤が望まれるところ、トレハロースが抗酸化特性に関して極めて有望であることから、さらなる抗酸化剤の添加は必要とされていないことが示唆されている。
【0010】
特許文献10および11には、20 mg/mLの抗EGFR抗体を有効成分とし、その製剤添加物として、酢酸緩衝剤、塩化ナトリウム、ポリソルベート80およびトレハロースを含む製剤が開示されているが、塩化ナトリウムの濃度は100 mM相当である。一方、本発明の医薬組成物では、塩化ナトリウムの濃度は約34.2 mM以下とされており、100 mM相当の濃度では凝集体の発生が顕著であり、適用できない。また、L-メチオニンの添加については一切示唆されていない。
【0011】
特許文献12および13には、IgG4アイソタイプ抗体に顕著に発生する可視微粒子に対処するため、酢酸緩衝剤、ポリソルベート80、トレハロース、メチオニンおよびDTPAを含む製剤が開示されているが、その物性が異なるIgG1アイソタイプ抗体(DOI(JaLC):10.15083/00006491)である本発明にかかる抗PD-1/CD3二重特異性抗体に適用できるかについては一切示唆されていない。また、当該文献の製剤におけるポリソルベート80の濃度は0.02 %(w/v)とされているが、本発明の医薬組成物については、凝集抑制の観点から、さらに約0.1 %(w/v)を至適ないし必要とすることも一切示唆されていない。
【0012】
特許文献14には、抗TIGIT抗体を有効成分とし、その製剤の一態様として、酢酸緩衝剤、トレハロース、塩化ナトリウムおよびポリソルベート80を添加剤として含む製剤が開示されているが、実際には、塩化ナトリウムの添加は、抗体のモノマー純度の急速な低下を示したため、これを含まない方が好ましいこと、また、ポリソルベート80の濃度について、0.02%と0.04%を比較した結果、モノマー純度の急速な低下の観点から、0.02%の低い濃度の方が好ましいことが開示されている。一方、本発明の医薬組成物では、塩化ナトリウムが添加されており、ポリソルベート80の濃度としては、約0.1 %(w/v)がより好ましいとされている。
【0013】
これまで、抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分とし、当該添加物組成を有する医薬組成物であって、また、その単一組成によって、幅広い濃度範囲の抗体を皮下投与と静脈内投与の両方に適用できる本発明の医薬組成物は見出されておらず、上記特許文献に開示される製剤からも一切示唆されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】国際公開第2003/011911号
【文献】国際公開第2004/072286号
【文献】国際公開第2013/022091号
【文献】国際公開第2019/156199号
【文献】国際公開第2021/020416号
【文献】特表2019-526627号
【文献】国際公開第2011/161226号
【文献】特表2020-509025号
【文献】特表2017-516846号
【文献】中国特許出願公開第107987161号
【文献】中国特許出願公開第115869395号
【文献】国際公開第2023/031969号
【文献】国際公開第2023/031970号
【文献】国際公開第2022/152245号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、幅広い濃度範囲で使用される抗体、特に、抗PD-1/CD3二重特異性抗体について、皮下投与用および静脈内投与用の何れにも適用できる単一組成の医薬組成物およびその製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の発明者らは鋭意検討した結果、かかる課題を解決する医薬組成物およびその製剤を見出し、本発明を完成した。
【0017】
すなわち、本発明は、主に以下の実施態様を提供する。
<1> 抗体(好ましくは、抗PD-1/CD3二重特異性抗体)を有効成分として含み、さらに、緩衝剤(好ましくは、酢酸緩衝剤)、トレハロース、酸化防止剤(好ましくは、L-メチオニン)、ポリソルベート80および塩化ナトリウムを含む、皮下投与用もしくは静脈内投与用水性医薬組成物またはその製剤、
<2> 前項<1>記載の水性医薬組成物またはその製剤と生物学的同等性を有する皮下投与用もしくは静脈内投与用水性医薬組成物またはその製剤、ならびに
<3> 前項<1>もしくは<2>記載の水性医薬組成物またはその製剤の自己免疫疾患もしくは移植片対宿主病(GVHD)あるいは血液がんの予防、症状進展抑制、再発抑制および/または治療における使用。
【発明の効果】
【0018】
抗PD-1/CD3二重特異性抗体にかかる本発明の医薬組成物またはその製剤は、自己免疫疾患もしくは移植片対宿主病(GVHD)あるいは血液がんの予防、症状進展抑制、再発抑制および/または治療のための新たな薬剤となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】抗PD-1/CD3二重特異性抗体A(詳細は後述した。)を構成する、PD-1に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖ならびにCD3に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖の各アミノ酸配列を示す。
図2】抗PD-1/CD3二重特異性抗体B(詳細は後述した。)を構成する重鎖定常領域のうち、PD-1に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖における重鎖定常領域の各アミノ酸配列を示す。
図3】抗PD-1/CD3二重特異性抗体Bを構成する重鎖定常領域のうち、CD3に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖における重鎖定常領域の各アミノ酸配列を示す。
図4】抗体α(詳細は後述した。)のPD-1に対する結合活性(%)(抗体αの標準品の活性を100%とした相対活性)と、同抗体上のPD-1に対する相補性決定領域に存在する101番目のメチオニン残基(以下、「Met101」と略記することがある。)の酸化度(%)(101番目のメチオニン残基が酸化されている抗体αの割合)の関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、抗体、特に、二つの異なる抗原分子あるいはエピトープに対する結合特異性を一分子に備え持つ抗体、すなわち、二重特異性抗体に関する。本発明にかかる抗PD-1/CD3二重特異性抗体は、
(i)PD-1に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖、ならびに
(ii)CD3に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖から構成される。ここで、
(a)前項(i)の重鎖は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4および配列番号5から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなり、
(b)前項(ii)の重鎖は、配列番号6のアミノ酸配列からなり、ならびに
(c)前項(i)および前項(ii)の軽鎖はともに、配列番号7のアミノ酸配列からなる。
【0021】
ここで、「PD-1に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖」は、重鎖および軽鎖がジスルフィド結合を介して会合することで、PD-1に特異的に結合する抗原結合部位を形成する重鎖・軽鎖複合体を意味する。「抗原結合部位」とは、抗体がその抗原に対する結合活性を有するための最小単位であり、「PD-1に特異的に結合する」とは、少なくとも、1x10-5 M、好ましくは1x10-7 M、より好ましくは1x10-9 Mより高い親和性(解離定数(Kd値))を有する結合活性でPD-1に対して直接結合することができ、少なくとも、CD28、CTLA-4およびICOSなどの、所謂、CD28ファミリー受容体に属するほかの受容体メンバーには実質的に結合しない特徴として使用される。
【0022】
また、「CD3に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖」は、重鎖および軽鎖がジスルフィド結合を介して会合することで、CD3に特異的に結合する抗原結合部位を形成する重鎖・軽鎖複合体を意味する。ここで、「CD3に特異的に結合する」とは、少なくとも、1x10-5 M、好ましくは1x10-7 M、より好ましくは1x10-9 Mより高い親和性(解離定数(Kd値))を有する結合活性でCD3に対して直接結合することができ、他のタンパク質には実質的に結合しない特徴として使用される。
【0023】
前述の抗PD-1/CD3二重特異性抗体(以下、総称して、「抗PD-1/CD3二重特異性抗体A」と略記することがある。)のうち、本発明の医薬組成物またはその製剤が適用される抗体として好ましくは、PD-1に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖が、配列番号5のアミノ酸配列からなる抗PD-1/CD3二重特異性抗体(以下、「抗体α」と略記することがある。)である。
【0024】
抗PD-1/CD3二重特異性抗体Aは、WO2019/156199に開示された方法に従って製造することができ、各々抗PD-1/CD3二重特異性抗体クローンPD1-1(Bi)~PD1-5(Bi)に対応し、このうち、抗体αは、クローンPD1-5(Bi)に対応する。
【0025】
さらに、抗体αのPD-1に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖の重鎖定常領域が、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12および配列番号13から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなる重鎖定常領域に置換され、CD3に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖の重鎖定常領域が、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18および配列番号19から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなる重鎖定常領域に置換された抗PD-1/CD3二重特異性抗体(以下、総称して、「抗PD-1/CD3二重特異性抗体B」と略記することがある。)も同様に本発明の医薬組成物またはその製剤が適用され得る。なお、抗PD-1/CD3二重特異性抗体Bは、WO2021/020416に開示された方法に従って製造できる。
【0026】
なお、抗PD-1/CD3二重特異性抗体Aおよび抗PD-1/CD3二重特異性抗体Bの何れも、そのアイソタイプはIgG1である。
【0027】
本発明の医薬組成物は、当該抗PD-1/CD3二重特異性抗体を、約0.01~約200 mg/mLにおける任意の濃度(例えば、約0.01 mg/mL、約0.02 mg/mL、約0.03 mg/mL、約0.04 mg/mL、約0.05 mg/mL、約0.06 mg/mL、約0.07 mg/mL、約0.08 mg/mL、約0.09 mg/mL、約0.1 mg/mL、約0.2 mg/mL、約0.3 mg/mL、約0.4 mg/mL、約0.5 mg/mL、約0.6 mg/mL、約0.7 mg/mL、約0.8 mg/mL、約0.9 mg/mL、約1 mg/mL、約1.1 mg/mL、約1.2 mg/mL、約1.3 mg/mL、約1.4 mg/mL、約1.5 mg/mL、約2 mg/mL、約5 mg/mL、約10 mg/mL、約15 mg/mL、約20 mg/mL、約25 mg/mL、約30 mg/mL、約40 mg/mL、約50 mg/mL、約60 mg/mL、約70 mg/mL、約80 mg/mL、約90 mg/mL、約100 mg/mL、約120 mg/mL、約130 mg/mL、約140 mg/mL、約150 mg/mL、約160 mg/mL、約170 mg/mL、約180 mg/mL、約190 mg/mLまたは約200 mg/mL)にて含み、好ましくは、約0.1~約150 mg/mLにおける任意の濃度にて含み、より好ましくは、約0.1~約1.2 mg/mLにおける任意の濃度(例えば、約0.1 mg/mL、約0.2 mg/mL、約0.3 mg/mL、約0.4 mg/mL、約0.5 mg/mL、約0.6 mg/mL、約0.7 mg/mL、約0.8 mg/mL、約0.9 mg/mL、約1 mg/mL、約1.1 mg/mLまたは約1.2 mg/mL)、約5~約25 mg/mLにおける任意の濃度(例えば、約5 mg/mL、約10 mg/mL、約15 mg/mL、約20 mg/mLまたは約25 mg/mL)または約80~約150 mg/mLにおける任意の濃度(例えば、約80 mg/mL、約90 mg/mL、約100 mg/mL、約110 mg/mL、約120 mg/mL、約130 mg/mL、約140 mg/mLまたは約150 mg/mL)にて含む。さらにより好ましくは、約0.5 mg/mL、約1 mg/mL、約10 mg/mLまたは約100 mg/mLである。
【0028】
その単位製剤当たりの容量が、例えば、5 mLとなる本発明の水性医薬組成物(好ましくは、静脈内投与用)に適用される抗PD-1/CD3二重特異性抗体は、約0.05~約1000 mgにおける任意の分量(好ましくは、約0.5~約750 mg、より好ましくは、約0.5~約6.0 mg、約25~約125 mgまたは約400~約750 mg、さらにより好ましくは、約2.5 mg、約5 mg、約50 mgまたは約500 mg)となり、一方、その容量が、例えば、1 mLとなる水性医薬組成物(好ましくは、皮下投与用)に適用される抗PD-1/CD3二重特異性抗体は、前記5 mL容量の水性医薬組成物に適用される同抗体の前記分量の1/5量となり、その容量が、例えば、各々約2 mL、約0.8 mL、約0.6 mL、約0.5 mL、約0.4 mLおよび約0.2 mLとなる場合には、前記5 mL容量の水性医薬組成物に適用される同抗体の前記分量の各々約2/5量、約4/25量、約3/25量、約1/10量、約2/25量および約1/25量となる。
【0029】
なお、本明細書において用いられる「医薬組成物」とは、有効成分とそれ以外の一以上の添加物との混合物を言い、また、「水性医薬組成物」とは、当該医薬組成物が、水性溶媒に実質的に溶解しているものを意味する。本発明の医薬組成物の好ましい形態としては、水性医薬組成物である。
【0030】
本明細書において用いられる「製剤」とは、当該医薬組成物を、適宜選択した投与経路や投与方法に適した形態にした薬剤を言う。また、本明細書において用いられる「約」とは、表記される数値を10%以内の範囲で下回って、または上回って変化してよいことを意味し、範囲を表す「~」は、その下限と上限の各数値を含むことを意味する。
【0031】
本発明の水性医薬組成物は、そのpHを安定させるために緩衝剤を含む。当該緩衝剤として、本発明の水性医薬組成物が取り得るpHの安定に十分対応でき、抗PD-1/CD3二重特異性抗体の安定化に影響しないものであれば何れのものも許容されるが、好ましくは、酢酸緩衝剤である。本発明の水性医薬組成物における酢酸緩衝剤の濃度としては、約7.3~約73.0 mMにおける任意の濃度(例えば、約7.3 mM、約10 mM、約14.6 mM、約15 mM、約18 mM、約20 mM、約20.07 mM、約21 mM、約22 mM、約25 mM、約30 mM、約35 mM、約40 mM、約43.8 mM、約45 mM、約50 mM、約55 mM、約60 mM、約70 mMおよび約73.0 mM)であり、好ましくは、約14.6~約43.8 mMにおける任意の濃度であり、より好ましくは、約18~約22 mMにおける任意の濃度であり、さらにより好ましくは、約20 mMであり、より具体的には、約20.07 mMである。なお、本明細書中、例えば、「10 mMの酢酸緩衝剤」あるいは「10 mMの酢酸緩衝液」と表記する場合、本発明の水性医薬組成物において、10mMに相当する濃度となる酢酸緩衝剤が含まれることを意味する。
【0032】
ここで、当該酢酸緩衝剤は、酢酸ナトリウム溶液(例えば、酢酸ナトリウム無水物、酢酸ナトリウム二水和物または酢酸ナトリウム三水和物の水溶液)に任意のpHとなるよう酢酸を添加する公知の方法で調製することができる。例えば、単位製剤当たりの容量が5 mLとなる水性医薬組成物(好ましくは、静脈内投与用)に適用される当該酢酸緩衝剤は、(i)約3.4~約34 mg(好ましくは、約6.8~約20.4 mg、より好ましくは、約8.4~約10.2 mg)の任意の分量に相当する酢酸ナトリウム三水和物、ならびに(ii)酢酸ナトリウム三水和物の前記分量に対応して、例えば、当該酢酸緩衝剤の溶液のpHが約4.9~5.1となる任意の分量に相当する氷酢酸から構成され、さらにこの場合における好ましい態様の当該酢酸緩衝剤は、約9.4 mg(具体的には、約9.35 mg)の酢酸ナトリウム三水和物および約1.9 mgの氷酢酸から構成される。
【0033】
一方、その容量が、例えば、約1 mLとなる水性医薬組成物(好ましくは、皮下投与用)に適用される当該酢酸緩衝剤は、前記5 mL容量の水性医薬組成物に適用される酢酸ナトリウム三水和物および氷酢酸の前記各分量の約1/5量で構成され、その容量が、例えば、各々約2 mL、約0.8 mL、約0.6 mL、約0.5 mL、約0.4 mLおよび約0.2 mLとなる場合には、前記5 mL容量の水性医薬組成物に適用される酢酸ナトリウム三水和物および氷酢酸の前記各分量の約2/5量、約4/25量、約3/25量、約1/10量、約2/25量および約1/25量で各々構成される。
【0034】
本発明の水性医薬組成物における緩衝剤には、前記の酢酸緩衝剤と同等のpH緩衝性能を有する緩衝剤も含まれる。
【0035】
本発明の水性医薬組成物は、約4.7~約5.3(すなわち、約5.0±0.3の範囲)における任意のpH(例えば、約4.7、約4.8、約4.9、約5.0、約5.1、約5.2または約5.3)を有し、好ましくは、約4.9~約5.1(すなわち、約5.0±0.1の範囲)における任意のpHを有し、より好ましくは、約5.0のpHを有する。
【0036】
本発明の水性医薬組成物は、主に、その浸透圧の調整のため、糖類を含む。当該糖類としては、本発明の水性医薬組成物の浸透圧を十分調整でき、抗PD-1/CD3二重特異性抗体の安定化に影響しないものであれば何れのものも許容されるが、好ましくは、トレハロースであり、トレハロースは水和物(例えば、一水和物、好ましくは、二水和物)または無水物の形態で添加されてもよい。本発明の水性医薬組成物中のトレハロースの濃度としては、約5~約286.1 mMにおける任意の濃度(例えば、約5 mM、約10 mM、約20 mM、約30 mM、約40 mM、約50 mM、約60 mM、約70 mM、約80 mM、約90 mM、約100 mM、約110 mM、約120 mM、約130 mM、約140 mM、約150 mM、約160 mM、約170 mM、約172 mM、約180 mM、約182 mM、約182.3 mM、約182.38 mM、約182.4 mM、約190 mM、約193 mM、約200 mM、約207.9 mM、約210 mM、約220 mM、約225 mM、約230 mM、約240 mM、約250 mM、約260 mM、約270 mM、約280 mM、約285 mM、約286 mMまたは約286.1 mM)であり、好ましくは、約10~約207.9 mMにおける任意の濃度であり、より好ましくは、約172~約193 mMにおける任意の濃度であり、さらにより好ましくは、約182 mMであり、具体的には、約182.4 mMであり、より具体的には、約182.38 mMである。
【0037】
本発明の水性医薬組成物における糖類がトレハロースであって、その単位製剤当たりの容量が、例えば、5 mLとなる水性医薬組成物(好ましくは、静脈内投与用)に適用されるトレハロースは、その二水和物として、約9.46~約541.2 mgにおける任意の分量(好ましくは、約18.9~約393.3 mg、より好ましくは、約325~約365.1 mg、さらにより好ましくは、約345 mg)となり、一方、その容量が、例えば、1 mLとなる水性医薬組成物(好ましくは、皮下投与用)に適用されるトレハロースは、前記5 mL容量の水性医薬組成物に適用されるトレハロース二水和物の前記分量の1/5量となり、その容量が、例えば、各々約2 mL、約0.8 mL、約0.6 mL、約0.5 mL、約0.4 mLおよび約0.2 mLとなる場合には、前記5 mL容量の水性医薬組成物に適用されるトレハロース二水和物の前記分量の各々約2/5量、約4/25量、約3/25量、約1/10量、約2/25量および約1/25量となる。
【0038】
本発明の水性医薬組成物における糖類には、前記トレハロースと同等の浸透圧調整能を有する糖類も含まれる。
【0039】
本発明の水性医薬組成物は、抗PD-1/CD3二重特異性抗体に対する酸化またはそれによる薬理活性の低下を抑制するため、酸化防止剤を含む。当該酸化防止剤は、目的とする程度において、抗PD-1/CD3二重特異性抗体の酸化またはそれによる薬理活性の低下を抑制できるものであれば何れのものも許容されるが、好ましくは、L-メチオニンまたはDTPA(Diethylene Triamine Pentaacetic Acid)であり、より好ましくは、L-メチオニンである。本発明の水性医薬組成物における酸化防止剤がL-メチオニンである場合における、その濃度としては、約5~約30.2 mMにおける任意の濃度(例えば、約5 mM、約8 mM、約10 mM、約10.05 mM、約12 mM、約15 mM、約20 mM、約25 mM、約30 mMまたは約30.2 mM)であり、好ましくは、約5~約20 mMにおける任意の濃度であり、より好ましくは、約5~約15 mMにおける任意の濃度であり、さらにより好ましくは、約8~約12 mMにおける任意の濃度であり、最も好ましくは、約10 mMであり、より具体的には、約10.05 mMである。
【0040】
本発明の水性医薬組成物における酸化防止剤がL-メチオニンであって、その単位製剤当たりの容量が、例えば、5 mLとなる水性医薬組成物(好ましくは、静脈内投与用)に適用されるL-メチオニンは、約3.75~約22.5 mgにおける任意の分量(好ましくは、約3.75~約15.0 mg、より好ましくは、約3.75~約11.25 mg、さらにより好ましくは、約6~約9 mg、最も好ましくは、約7.5 mg)となり、一方、その容量が、例えば、1 mLとなる水性医薬組成物(好ましくは、皮下投与用)に適用されるL-メチオニンは、前記5 mL容量の水性医薬組成物に適用されるL-メチオニンの前記分量の1/5量となり、その容量が、例えば、各々約2 mL、約0.8 mL、約0.6 mL、約0.5 mL、約0.4 mLおよび約0.2 mLとなる場合には、前記5 mL容量の水性医薬組成物に適用されるL-メチオニンの前記分量の各々約2/5量、約4/25量、約3/25量、約1/10量、約2/25量および約1/25量となる。
【0041】
本発明の水性医薬組成物における酸化防止剤には、前記L-メチオニンと同等の、抗PD-1/CD3二重特異性抗体に対する酸化防止能を有するものも含まれる。
【0042】
本発明の水性医薬組成物は、主に、抗PD-1/CD3二重特異性抗体の凝集を抑制するため、界面活性剤を含む。当該界面活性剤は、抗PD-1/CD3二重特異性抗体の凝集を抑制できるものであれば何れのものも許容されるが、好ましくは、ポリソルベート80であり、その濃度としては、約0.01~約0.5 %(w/v)における任意の濃度(例えば、約0.01 %(w/v)、約0.02 %(w/v)、約0.04 %(w/v)、約0.05 %(w/v)、約0.06 %(w/v)、約0.08 %(w/v)、約0.1 %(w/v)、約0.12 %(w/v)、約0.15 %(w/v)、約0.2 %(w/v)、約0.25 %(w/v)、約0.3 %(w/v)、約0.35 %(w/v)、約0.4 %(w/v)、約0.45 %(w/v)または約0.5 %(w/v))であり、好ましくは、約0.05~約0.3 %(w/v)における任意の濃度であり、より好ましくは、約0.08~約0.12 %(w/v)における任意の濃度であり、さらに好ましくは、約0.1 %(w/v)である。
【0043】
本発明の水性医薬組成物における界面活性剤がポリソルベート80であって、その単位製剤当たりの容量が、例えば、5 mLとなる水性医薬組成物(好ましくは、静脈内投与用)に適用されるポリソルベート80は、約0.5~約25 mgにおける任意の分量(好ましくは、約2.5~約15 mg、より好ましくは、約4~約6 mg、さらに好ましくは、約5 mg)となり、一方、その容量が、例えば、1 mLとなる水性医薬組成物(好ましくは、皮下投与用)に適用されるポリソルベート80は、前記5 mL容量の水性医薬組成物に適用されるポリソルベート80の前記分量の1/5量となり、その容量が、例えば、各々約2 mL、約0.8 mL、約0.6 mL、約0.5 mL、約0.4 mLおよび約0.2 mLとなる場合には、前記5 mL容量の水性医薬組成物に適用されるポリソルベート80の前記分量の各々約2/5量、約4/25量、約3/25量、約1/10量、約2/25量および約1/25量となる。
【0044】
本発明の水性医薬組成物における界面活性剤には、前記ポリソルベート80と同等の、抗PD-1/CD3二重特異性抗体の凝集抑制能を有するものも含まれる。
【0045】
本発明の水性医薬組成物は、安定化(凝集抑制)のため、塩を含む。当該塩は、当該安定化を可能とするものであれば何れのものも許容されるが、好ましくは、塩化ナトリウムであり、その濃度としては、約0.5~約34.2 mMにおける任意の濃度(例えば、約0.5 mM、約1 mM、約2 mM、約3 mM、約4 mM、約5 mM、約6 mM、約7 mM、約8 mM、約9 mM、約10 mM、約11 mM、約12 mM、約13 mM、約14 mM、約15 mM、約16 mM、約17 mM、約18 mM、約19 mM、約19.6 mM、約20 mM、約21 mM、約22 mM、約23 mM、約23.27 mM、約24.0 mM、約25 mM、約25.7 mM、約30 mMまたは約34.2 mM)であり、好ましくは、約1.0~約25.7 mMにおける任意の濃度であり、より好ましくは、約19.6~約25.7 mMにおける任意の濃度であり、さらにより好ましくは、約23 mMであり、より具体的には、約23.27 mMである。
【0046】
なお、本発明の水性医薬組成物は、その導電率が、約2.6~約3.1 mS/cm(例えば、約2.6 mS/cm、約2.7 mS/cm、約2.8 mS/cm、約2.9 mS/cm、約3.0 mS/cmまたは約3.1 mS/cm)であるものが好ましく、さらに、約2.8 mS/cmであるものがより好ましい。
【0047】
本発明の水性医薬組成物における塩が塩化ナトリウムであって、その単位製剤当たりの容量が、例えば、5 mLとなる水性医薬組成物(好ましくは、静脈内投与用)に適用される塩化ナトリウムは、約0.15~約10.0 mgにおける任意の分量(好ましくは、約0.29~約7.5 mg、より好ましくは、約5.8~約7.5 mg、さらにより好ましくは、約6.8 mg)となり、その容量が、例えば、1 mLとなる水性医薬組成物(好ましくは、皮下投与用)に適用される塩化ナトリウムは、前記5 mL容量の水性医薬組成物に適用される前記分量の1/5量となり、その容量が、例えば、各々約2 mL、約0.8 mL、約0.6 mL、約0.5 mL、約0.4 mLおよび約0.2 mLとなる場合には、前記5 mL容量の水性医薬組成物に適用される塩化ナトリウムの前記分量の各々約2/5量、約4/25量、約3/25量、約1/10量、約2/25量および約1/25量となる。
【0048】
本発明の水性医薬組成物における塩には、前記塩化ナトリウムと同等の安定化能を有するものも含まれる。
【0049】
なお、本明細書において、本発明の水性医薬組成物に含まれる各添加物の分量は、単位容量(例えば、1 mL)に相当する前述の各添加物の分量であってもよく、例えば、その一態様として、1.87 mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、0.38 mg/mLの酢酸、69 mg/mLのトレハロース二水和物、1.5 mg/mLのL-メチオニン、1.0 mg/mLのポリソルベート80、および1.36 mg/mLの塩化ナトリウムなどが挙げられる。
【0050】
本発明の水性医薬組成物のうちの一つの実施形態としては、例えば、
(A)(a)約0.1~約1.2 mg/mLまたは約5~約25 mg/mL(各々好ましくは、約1 mg/mLまたは約10 mg/mL)の抗PD-1/CD3二重特異性抗体(好ましくは、抗体α)を有効成分として含み、さらに、
(b)緩衝剤(好ましくは、約7.3~約73.0 mM(好ましくは、約14.6~約43.8 mM、より好ましくは、約18~約22 mM、さらにより好ましくは、約20 mM、より具体的には、約20.07 mM)の酢酸緩衝剤または当該酢酸緩衝剤と同等のpH緩衝性能を有する緩衝剤)、
(c)約5~約286.1 mM(好ましくは、約10~約207.9 mM、より好ましくは、約172~約193 mM、さらにより好ましくは、約182 mM、より具体的には、約182.38 mM)のトレハロース、
(d)約5~約30.2 mM(好ましくは、約5~約20 mM、より好ましくは、約5~約15 mM、さらにより好ましくは、約10 mM、より具体的には、約10.05 mM)のL-メチオニン、
(e)約0.01~約0.5 %(w/v)(好ましくは、約0.05~約0.3 %(w/v)、より好ましくは、約0.08~約0.12 %(w/v)、さらに好ましくは、約0.1 %(w/v))のポリソルベート80、および
(f)約0.5~約34.2 mM(好ましくは、約1.0~約25.7 mM、より好ましくは、約19.6~約25.7 mM、さらにより好ましくは、約23 mM、より具体的には、約23.27 mM)の塩化ナトリウムを含み、pHが約4.7~約5.3(好ましくは、約4.9~約5.1、より好ましくは、約5.0)である医薬組成物、
(B)(a)約0.1~約1.2 mg/mLまたは約5~約25 mg/mL(各々好ましくは、約1 mg/mLまたは約10 mg/mL)の抗PD-1/CD3二重特異性抗体(好ましくは、抗体α)を有効成分として含み、さらに、
(b)約7.3~約73.0 mM(好ましくは、約14.6~約43.8 mM、より好ましくは、約18~約22 mM、さらにより好ましくは、約20 mM、より具体的には、約20.07 mM)の酢酸緩衝剤、
(c)約5~約286.1 mM(好ましくは、約10~約207.9 mM、より好ましくは、約172~約193 mM、さらにより好ましくは、約182 mM、より具体的には、約182.38 mM)のトレハロース、
(d)酸化防止剤(好ましくは、約5~約30.2 mM(好ましくは、約5~約20 mM、より好ましくは、約5~約15 mM、さらにより好ましくは、約10 mM、より具体的には、約10.05 mM)のL-メチオニンまたは当該L-メチオニンと同等の酸化防止能を有する酸化防止剤)、
(e)約0.01~約0.5 %(w/v)(好ましくは、約0.05~約0.3 %(w/v)、より好ましくは、約0.08~約0.12 %(w/v)、さらに好ましくは、約0.1 %(w/v))のポリソルベート80、および
(f)約0.5~約34.2 mM(好ましくは、約1.0~約25.7 mM、より好ましくは、約19.6~約25.7 mM、さらにより好ましくは、約23 mM、より具体的には、約23.27 mM)の塩化ナトリウムを含み、pHが約4.7~約5.3(好ましくは、約4.9~約5.1、より好ましくは、約5.0)である医薬組成物、ならびに、
(C)(a)約0.1~約1.2 mg/mLまたは約5~約25 mg/mL(各々好ましくは、約1 mg/mLまたは約10 mg/mL)の抗PD-1/CD3二重特異性抗体(好ましくは、抗体α)を有効成分として含み、さらに、
(b)緩衝剤(好ましくは、約7.3~約73.0 mM(好ましくは、約14.6~約43.8 mM、より好ましくは、約18~約22 mM、さらにより好ましくは、約20 mM、より具体的には、約20.07 mM)の酢酸緩衝剤または当該酢酸緩衝剤と同等のpH緩衝性能を有する緩衝剤)、
(c)約5~約286.1 mM(好ましくは、約10~約207.9 mM、より好ましくは、約172~約193 mM、さらにより好ましくは、約182 mM、より具体的には、約182.38 mM)のトレハロース、
(d)酸化防止剤(好ましくは、約5~約30.2 mM(好ましくは、約5~約20 mM、より好ましくは、約5~約15 mM、さらにより好ましくは、約10 mM、より具体的には、約10.05 mM)のL-メチオニンまたは当該L-メチオニンと同等の酸化防止能を有する酸化防止剤)、
(e)約0.01~約0.5 %(w/v)(好ましくは、約0.05~約0.3 %(w/v)、より好ましくは、約0.08~約0.12 %(w/v)、さらに好ましくは、約0.1 %(w/v))のポリソルベート80、および
(f)約0.5~約34.2 mM(好ましくは、約1.0~約25.7 mM、より好ましくは、約19.6~約25.7 mM、さらにより好ましくは、約23 mM、より具体的には、約23.27 mM)の塩化ナトリウムを含み、pHが約4.7~約5.3(好ましくは、約4.9~約5.1、より好ましくは、約5.0)である医薬組成物である。なお、これら(A)~(C)の水性医薬組成物は、静脈内投与および皮下投与の何れにおいても使用できる。
【0051】
一方、本発明の水性医薬組成物のうち、皮下投与用の水性医薬組成物の一つの実施形態としては、例えば、
(D)(a)約80~約150 mg/mL(好ましくは、約100 mg/mL)の抗PD-1/CD3二重特異性抗体(好ましくは、抗体α)を有効成分として含み、さらに、
(b)緩衝剤(好ましくは、約7.3~約73.0 mM(好ましくは、約14.6~約43.8 mM、より好ましくは、約18~約22 mM、さらにより好ましくは、約20 mM、より具体的には、約20.07 mM)の酢酸緩衝剤または当該酢酸緩衝剤と同等のpH緩衝性能を有する緩衝剤)、
(c)約5~約286.1 mM(好ましくは、約10~約207.9 mM、より好ましくは、約172~約193 mM、さらにより好ましくは、約182 mM、より具体的には、約182.38 mM)のトレハロース、
(d)約5~約30.2 mM(好ましくは、約5~約20 mM、より好ましくは、約5~約15 mM、さらにより好ましくは、約10 mM、より具体的には、約10.05 mM)のL-メチオニン、
(e)約0.01~約0.5 %(w/v)(好ましくは、約0.05~約0.3 %(w/v)、より好ましくは、約0.08~約0.12 %(w/v)、さらに好ましくは、約0.1 %(w/v))のポリソルベート80、および
(f)約0.5~約34.2 mM(好ましくは、約1.0~約25.7 mM、より好ましくは、約19.6~約25.7 mM、さらにより好ましくは、約23 mM、より具体的には、約23.27 mM)の塩化ナトリウムを含み、pHが約4.7~約5.3(好ましくは、約4.9~約5.1、より好ましくは、約5.0)である医薬組成物、
(E)(a)約80~約150 mg/mL(好ましくは、約100 mg/mL)の抗PD-1/CD3二重特異性抗体(好ましくは、抗体α)を有効成分として含み、さらに、
(b)約7.3~約73.0 mM(好ましくは、約14.6~約43.8 mM、より好ましくは、約18~約22 mM、さらにより好ましくは、約20 mM、より具体的には、約20.07 mM)の酢酸緩衝剤、
(c)約5~約286.1 mM(好ましくは、約10~約207.9 mM、より好ましくは、約172~約193 mM、さらにより好ましくは、約182 mM、より具体的には、約182.38 mM)のトレハロース、
(d)酸化防止剤(好ましくは、約5~約30.2 mM(好ましくは、約5~約20 mM、より好ましくは、約5~約15 mM、さらにより好ましくは、約10 mM、より具体的には、約10.05 mM)のL-メチオニンまたは当該L-メチオニンと同等の酸化防止能を有する酸化防止剤)、
(e)約0.01~約0.5 %(w/v)(好ましくは、約0.05~約0.3 %(w/v)、より好ましくは、約0.08~約0.12 %(w/v)、さらに好ましくは、約0.1 %(w/v))のポリソルベート80、および
(f)約0.5~約34.2 mM(好ましくは、約1.0~約25.7 mM、より好ましくは、約19.6~約25.7 mM、さらにより好ましくは、約23 mM、より具体的には、約23.27 mM)の塩化ナトリウムを含み、pHが約4.7~約5.3(好ましくは、約4.9~約5.1、より好ましくは、約5.0)である医薬組成物、ならびに、
(F)(a)約80~約150 mg/mL(好ましくは、約100 mg/mL)の抗PD-1/CD3二重特異性抗体(好ましくは、抗体α)を有効成分として含み、さらに、
(b)緩衝剤(好ましくは、約7.3~約73.0 mM(好ましくは、約14.6~約43.8 mM、より好ましくは、約18~約22 mM、さらにより好ましくは、約20 mM、より具体的には、約20.07 mM)の酢酸緩衝剤または当該酢酸緩衝剤と同等のpH緩衝性能を有する緩衝剤)、
(c)約5~約286.1 mM(好ましくは、約10~約207.9 mM、より好ましくは、約172~約193 mM、さらにより好ましくは、約182 mM、より具体的には、約182.38 mM)のトレハロース、
(d)酸化防止剤(好ましくは、約5~約30.2 mM(好ましくは、約5~約20 mM、より好ましくは、約5~約15 mM、さらにより好ましくは、約10 mM、より具体的には、約10.05 mM)のL-メチオニンまたは当該L-メチオニンと同等の酸化防止能を有する酸化防止剤)、
(e)約0.01~約0.5 %(w/v)(好ましくは、約0.05~約0.3 %(w/v)、より好ましくは、約0.08~約0.12 %(w/v)、さらに好ましくは、約0.1 %(w/v))のポリソルベート80、および
(f)約0.5~約34.2 mM(好ましくは、約1.0~約25.7 mM、より好ましくは、約19.6~約25.7 mM、さらにより好ましくは、約23 mM、より具体的には、約23.27 mM)の塩化ナトリウムを含み、pHが約4.7~約5.3(好ましくは、約4.9~約5.1、より好ましくは約5.0)である医薬組成物である。
【0052】
また、本発明の水性医薬組成物のうちの別の実施形態としては、例えば、
(A1)(a)約0.1~約1.2 mg/mLまたは約5~約25 mg/mL(各々好ましくは、約0.5 mg/mL、約1 mg/mLまたは約10 mg/mL)の抗PD-1/CD3二重特異性抗体(好ましくは、抗体α)を有効成分として含み、さらに、
(b)約7.3~約73.0 mMの酢酸緩衝剤、
(c)約5~約286.1 mMのトレハロース、
(d)約5~約30.2 mMのL-メチオニン、
(e)約0.01~約0.5 %(w/v)のポリソルベート80、および
(f)約0.5~約34.2 mMの塩化ナトリウムを含み、pHが約4.7~約5.3である医薬組成物であり、好ましくは、
(B1)(a)約0.1~約1.2 mg/mLまたは約5~約25 mg/mL(各々好ましくは、約0.5 mg/mL、約1 mg/mLまたは約10 mg/mL)の抗PD-1/CD3二重特異性抗体(好ましくは、抗体α)を有効成分として含み、さらに、
(b)約14.6~約43.8 mM(好ましくは、約18~約22 mM)の酢酸緩衝剤、
(c)約10~約207.9 mM(好ましくは、約172~約193 mM)のトレハロース、
(d)約5~約20 mM(好ましくは、約5~約15 mM)のL-メチオニン、
(e)約0.05~約0.3 %(w/v)(好ましくは、約0.08~約0.12 %(w/v))のポリソルベート80、および
(f)約1.0~約25.7 mM(好ましくは、約19.6~約25.7 mM)の塩化ナトリウムを含み、pHが約4.9~約5.1である医薬組成物であり、より好ましくは、
(C1)(a)約0.5 mg/mL、約1 mg/mLまたは約10 mg/mLの抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分(好ましくは、抗体α)として含み、さらに、
(b)約20.1 mM(具体的には、約20.07 mM)の酢酸緩衝剤、
(c)約182.4 mM(具体的には、約182.38 mM)のトレハロース、
(d)約10.1 mM(具体的には、約10.05 mM)のL-メチオニン、
(e)約0.1 %(w/v)のポリソルベート80、および
(f)約23.3 mM(具体的には、約23.27 mM)の塩化ナトリウムを含み、pHが約5.0である医薬組成物である。なお、これら(A1)~(C1)の水性医薬組成物も、静脈内投与および皮下投与の何れにおいても使用できる。
【0053】
一方、本発明の水性医薬組成物のうち、皮下投与用の水性医薬組成物の別の実施形態としては、例えば、
(D1)(a)約80~約150 mg/mL(好ましくは、約100 mg/mL)の抗PD-1/CD3二重特異性抗体(好ましくは、抗体α)を有効成分として含み、さらに、
(b)約7.3~約73.0 mMの酢酸緩衝剤、
(c)約5~約286.1 mMのトレハロース、
(d)約5~約30.2 mMのL-メチオニン、
(e)約0.01~約0.5 %(w/v)のポリソルベート80、および
(f)約0.5~約34.2 mMの塩化ナトリウムを含み、pHが約4.7~約5.3である医薬組成物であり、好ましくは、
(E1)(a)約80~約150 mg/mL(好ましくは、約100 mg/mL)の抗PD-1/CD3二重特異性抗体(好ましくは、抗体α)を有効成分として含み、さらに、
(b)約14.6~約43.8 mM(好ましくは、約18~約22 mM)の酢酸緩衝剤、
(c)約10~約207.9 mM(好ましくは、約172~約193 mM)のトレハロース、
(d)約5~約20 mM(好ましくは、約5~約15 mM)のL-メチオニン、
(e)約0.05~約0.3 %(w/v)(好ましくは、約0.08~約0.12 %(w/v))のポリソルベート80、および
(f)約1.0~約25.7 mM(好ましくは、約19.6~約25.7 mM)の塩化ナトリウムを含み、pHが約4.9~約5.1である医薬組成物であり、より好ましくは、
(F1)(a)約100 mg/mLの抗PD-1/CD3二重特異性抗体(好ましくは、抗体α)を有効成分として含み、さらに、
(b)約20.1 mM(具体的には、約20.07 mM)の酢酸緩衝剤、
(c)約182.4 mM(具体的には、約182.38 mM)のトレハロース、
(d)約10.1 mM(具体的には、約10.05 mM)のL-メチオニン、
(e)約0.1 %(w/v)のポリソルベート80、および
(f)約23.3 mM(具体的には、約23.27 mM)の塩化ナトリウムを含み、pHが約5.0である医薬組成物である。
【0054】
さらに、本発明の水性医薬組成物のもう一つ別の実施形態としては、例えば、その単位製剤当たりの容量が約5 mLである場合には、
(A2)(a)約0.5~約6 mgまたは約25~約125 mg(各々好ましくは、約2.5 mg、約5 mgまたは約50 mg)の抗PD-1/CD3二重特異性抗体(好ましくは、抗体α)を有効成分として含み、さらに、
(b)(b1)約3.4~約34.0 mgの酢酸ナトリウム三水和物、および(b2)前項(b1)の酢酸ナトリウム三水和物の分量に対応して、pHが約4.7~約5.3となる分量の氷酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)約9.46~約541.2 mgのトレハロース二水和物、
(d)約3.75~約22.5 mgのL-メチオニン、
(e)約0.5~約25.0 mgのポリソルベート80、ならびに
(f)約0.15~約10.0 mgの塩化ナトリウムを含み、pHが約4.7~約5.3である医薬組成物であり、好ましくは、
(B2)(a)約0.5~約6 mgまたは約25~約125 mg(各々好ましくは、約2.5 mg、約5 mgまたは約50 mg)の抗PD-1/CD3二重特異性抗体(好ましくは、抗体α)を有効成分として含み、さらに、
(b)(b1)約6.8~約20.4 mg(好ましくは、約8.4~約10.2 mg)の酢酸ナトリウム三水和物、および(b2)前項(b1)の酢酸ナトリウム三水和物の分量に対応して、pHが約4.9~約5.1となる分量の氷酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)約18.9~約393.3 mg(好ましくは、約325~約365.1 mg)のトレハロース二水和物、
(d)約3.75~約15.0 mg(好ましくは、約3.75~11.25 mg)のL-メチオニン、
(e)約2.5~約15.0 mg(好ましくは、約4~6 mg)のポリソルベート80、ならびに
(f)約0.29~約7.5 mg(好ましくは、約5.8~約7.5 mg)の塩化ナトリウムを含み、pHが約4.9~約5.1である医薬組成物であり、より好ましくは、
(C2)(a)約2.5 mg、約5 mgまたは約50 mgの抗PD-1/CD3二重特異性抗体(好ましくは、抗体α)を有効成分として含み、さらに、
(b)約9.4 mg(具体的には、約9.35 mg)の酢酸ナトリウム三水和物および約1.9 mgの氷酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)約345 mgのトレハロース二水和物、
(d)約7.5 mgのL-メチオニン、
(e)約5.0 mgのポリソルベート80、ならびに
(f)約6.8 mgの塩化ナトリウムを含み、pHが約5.0である医薬組成物である。なお、これら(A2)~(C2)の水性医薬組成物も、静脈内投与および皮下投与の何れにおいても使用できる。
【0055】
なお、本発明の水性医薬組成物の製剤において、単位製剤当たりの容量は、投与1回当たりの投与量に応じて選択され得、例えば、前項(A2)~(C2)の医薬組成物からなる場合、単位製剤当たり約1 mL、約2 mL、約3 mL、約4 mL、約6 mL、約8 mL、約10 mLおよび約20 mLの容量の何れかからも選択され得る。その場合の抗PD-1/CD3二重特異性抗体および各添加物の分量は、前項(A2)~(C2)に記載した単位製剤当たりの容量が約5 mLである場合の各分量の各々約1/5量、約2/5量、約3/5量、約4/5量、約6/5量、約8/5量、約2倍量および約4倍量となる。
【0056】
さらに、本発明の水性医薬組成物のさらにもう一つ別の実施形態としては、
(D2)(a)約0.1~約1.2 mg/mLまたは約5~約25 mg/mL(各々好ましくは、約0.5 mg/mL、約1 mg/mLまたは約10 mg/mL)の抗PD-1/CD3二重特異性抗体(好ましくは、抗体α)を有効成分として含み、さらに、
(b)(b1)約0.68~約6.8 mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、および(b2)前項(b1)の酢酸ナトリウム三水和物の分量に対応して、pHが約4.7~約5.3となる分量の酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)約1.9~約108.3 mg/mLのトレハロース二水和物、
(d)約0.75~約4.5 mg/mLのL-メチオニン、
(e)約0.1~約5.0 mg/mLのポリソルベート80、ならびに
(f)約0.03~約2.0 mg/mLの塩化ナトリウムを含み、pHが約4.7~約5.3である医薬組成物であり、好ましくは、
(E2)(a)約0.1~約1.2 mg/mLまたは約5~約25 mg/mL(各々好ましくは、約0.5 mg/mL、約1 mg/mLまたは約10 mg/mL)の抗PD-1/CD3二重特異性抗体(好ましくは、抗体α)を有効成分として含み、さらに、
(b)(b1)約1.36~約4.08 mg/mL(好ましくは、約1.68~約2.05 mg/mL)の酢酸ナトリウム三水和物、および(b2)前項(b1)の酢酸ナトリウム三水和物の分量に対応して、pHが約4.9~約5.1となる分量の酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)約3.8~約78.7 mg/mL(好ましくは、約65.1~約72.6 mg/mL)のトレハロース二水和物、
(d)約0.75~約3.0 mg/mL(好ましくは、約0.75~約2.25 mg/mL)のL-メチオニン、
(e)約0.5~約3.0 mg/mL(好ましくは、約0.8~約1.2 mg/mL)のポリソルベート80、ならびに
(f)約0.06~約1.5 mg/mL(好ましくは、約1.15~約1.5 mg/mL)の塩化ナトリウムを含み、pHが約4.9~約5.1である医薬組成物であり、より好ましくは、
(F2)(a)約0.5 mg/mL、約1 mg/mLまたは約10 mg/mLの抗PD-1/CD3二重特異性抗体(好ましくは、抗体α)を有効成分として含み、さらに、
(b)約1.9 mg/mL(具体的には、約1.87 mg/mL)の酢酸ナトリウム三水和物および約0.4 mg/mL(具体的には、約0.38 mg/mL)の酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)約69 mg/mLのトレハロース二水和物、
(d)約1.5 mg/mLのL-メチオニン、
(e)約1.0 mg/mLのポリソルベート80、ならびに
(f)約1.4 mg/mL(具体的には、約1.36 mg/mL)の塩化ナトリウムを含み、pHが約5.0である医薬組成物である。なお、これら(D2)~(F2)の水性医薬組成物も、同様に、静脈内投与および皮下投与の何れにおいても使用できる。
【0057】
一方、本発明の水性医薬組成物のうち、皮下投与用の水性医薬組成物のもう一つ別の実施形態としては、例えば、その単位製剤当たりの容量が約1 mLである場合には、
(A3)(a)約80~約150 mg(好ましくは、約100 mg)の抗PD-1/CD3二重特異性抗体(好ましくは、抗体α)を有効成分として含み、さらに、
(b)(b1)約0.68~約6.8 mgの酢酸ナトリウム三水和物、および(b2)前項(b1)の酢酸ナトリウム三水和物の分量に対応して、pHが約4.7~約5.3となる分量の氷酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)約1.9~約108.3 mgのトレハロース二水和物、
(d)約0.75~約4.5 mgのL-メチオニン、
(e)約0.1~約5.0 mgのポリソルベート80、ならびに
(f)約0.03~約2.0 mgの塩化ナトリウムを含み、pHが約4.7~約5.3である医薬組成物であり、好ましくは、
(B3)(a)約80~約150 mg(好ましくは、約100 mg)の抗PD-1/CD3二重特異性抗体(好ましくは、抗体α)を有効成分として含み、さらに、
(b)(b1)約1.36~約4.08 mg(好ましくは、約1.68~約2.05 mg)の酢酸ナトリウム三水和物、および(b2)前項(b1)の酢酸ナトリウム三水和物の分量に対応して、pHが約4.9~約5.1となる分量の氷酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)約3.8~約78.7 mgの(好ましくは、約65.1~約72.6 mg)トレハロース二水和物、
(d)約0.75~約3.0 mg(好ましくは、約0.75~約2.25 mg)のL-メチオニン、
(e)約0.5~約3.0 mgのポリソルベート80、ならびに
(f)約0.06~約1.5 mg(好ましくは、約1.15~約1.5 mg)の塩化ナトリウムを含み、pHが約4.9~約5.1である医薬組成物であり、より好ましくは、
(C3)(a)約100 mgの抗PD-1/CD3二重特異性抗体(好ましくは、抗体α)を有効成分として含み、さらに、
(b)約1.9 mg(具体的には、約1.87 mg)の酢酸ナトリウム三水和物および約0.4 mg(具体的には、約0.38 mg)の氷酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)約69 mgのトレハロース二水和物、
(d)約1.5 mgのL-メチオニン、
(e)約1.0 mgのポリソルベート80、ならびに
(f)約1.4 mg(具体的には、約1.36 mg)の塩化ナトリウムを含み、pHが約5.0である医薬組成物である。
【0058】
本発明の水性医薬組成物の製剤が、前項(A3)~(C3)の医薬組成物からなる場合、その単位製剤当たりの容量は、例えば、約0.1 mL、約0.2 mL、約0.4 mL、約0.5 mL、約0.6 mL、約0.8 mLおよび約1.2 mLの容量の何れかからも選択され得る。その場合、抗PD-1/CD3二重特異性抗体および各添加物の分量は、前項(A3)~(C3)に記載した単位製剤当たりの容量が約1 mLである場合の各分量の各々約1/10量、約1/5量、約2/5量、約1/2量、約3/5量、約4/5量および約6/5倍量となる。
【0059】
さらに、本発明の水性医薬組成物のうち、皮下投与用の水性医薬組成物のさらにもう一つ別の実施形態としては、例えば、
(D3)(a)約80~約150 mg/mL(好ましくは、約100 mg/mL)の抗PD-1/CD3二重特異性抗体(好ましくは、抗体α)を有効成分として含み、さらに、
(b)(b1)約0.68~約6.8 mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、および(b2)前項(b1)の酢酸ナトリウム三水和物の分量に対応して、pHが約4.7~約5.3となる分量の酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)約1.9~約108.3 mg/mLのトレハロース二水和物、
(d)約0.75~約4.5 mg/mLのL-メチオニン、
(e)約0.1~約5.0 mg/mLのポリソルベート80、ならびに
(f)約0.03~約2.0 mg/mLの塩化ナトリウムを含み、pHが約4.7~約5.3である医薬組成物であり、好ましくは、
(E3)(a)約80~約150 mg/mL(好ましくは、約100 mg/mL)の抗PD-1/CD3二重特異性抗体(好ましくは、抗体α)を有効成分として含み、さらに、
(b)(b1)約1.36~約4.08 mg/mL(好ましくは、約1.68~約2.05 mg/mL)の酢酸ナトリウム三水和物、および(b2)前項(b1)の酢酸ナトリウム三水和物の分量に対応して、pHが約4.9~約5.1となる分量の酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)約3.8~約78.7 mg/mLの(好ましくは、約65.1~約72.6 mg/mL)トレハロース二水和物、
(d)約0.75~約3.0 mg/mL(好ましくは、約0.75~約2.25 mg/mL)のL-メチオニン、
(e)約0.5~約3.0 mg/mL(好ましくは、約0.8~約1.2 mg/mL)のポリソルベート80、ならびに
(f)約0.06~約1.5 mg/mL(好ましくは、約1.15~約1.5 mg/mL)の塩化ナトリウムを含み、pHが約4.9~約5.1である医薬組成物であり、より好ましくは、
(F3)(a)約100 mg/mLの抗PD-1/CD3二重特異性抗体(好ましくは、抗体α)を有効成分として含み、さらに、
(b)約1.9 mg/mL(具体的には、約1.87 mg/mL)の酢酸ナトリウム三水和物および約0.4 mg/mL(具体的には、約0.38 mg/mL)の酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)約69 mg/mLのトレハロース二水和物、
(d)約1.5 mg/mLのL-メチオニン、
(e)約1.0 mg/mLのポリソルベート80、ならびに
(f)約1.4 mg/mL(具体的には、約1.36 mg/mL)の塩化ナトリウムを含み、pHが約5.0である医薬組成物である。
【0060】
本発明の水性医薬組成物には、上述の(A)~(F)、(A1)~(F1)、(A2)~(F2)および(A3)~(F3)に各々挙げられる医薬組成物の何れかと、生物学的同等性試験において生物学的利用能(バイオアベイラビリティ)が同等であり、本発明にかかる抗PD-1/CD3二重特異性抗体(好ましくは、抗体α)を有効成分として含有する静脈内投与用または皮下投与用水性医薬組成物も含まれる。当該医薬組成物には、上述の(A)~(F)、(A1)~(F1)、(A2)~(F2)および(A3)~(F3)に各々挙げられる医薬組成物の何れかにおけるものと同じ添加物を含むが、その組成比率が異なるものや、何れか一以上の添加物が異なるものも含まれる。例えば、(i)少なくとも、トレハロース、L-メチオニン、ポリソルベート80および塩化ナトリウムを含む医薬組成物、(ii)少なくとも、酢酸緩衝剤、トレハロース、ポリソルベート80および塩化ナトリウムを含む医薬組成物、ならびに(iii)少なくとも、トレハロース、ポリソルベート80および塩化ナトリウムを含む医薬組成物が挙げられる。
【0061】
ここで、生物学的同等性は、例えば、平成18年(2006年)11月24日付の薬食審査発第1124005において、厚生労働省が定める「後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン」またはその後の改訂版に記載の生物学的同等性試験によって判定することができる。具体的には、当該ガイドラインでは、原則としてクロスオーバー法を行い、血液をサンプルとする場合には、単回投与試験でのAUCt(最終サンプリング時間tまでのAUC(血中濃度-時間曲線下面積))およびCmax(最高血中濃度)を生物学的同等性判定パラメータとする。
【0062】
当該ガイドラインに従い、試験方法を適宜選択し、生物学的同等性が試験される製剤と標準製剤の前記生物学的同等性判定パラメータを統計処理し、所定の範囲内にあるときに、当該試験製剤は生物学的に標準製剤と同等であると判定できる。例えば、当該ガイドラインでは、生物学的同等の許容域は、AUCおよびCmaxが対数正規分布する場合には、当該試験製剤と標準製剤のパラメータの母平均の比で表すとき、0.80~1.25とされ、当該試験製剤と標準製剤の生物学的同等性判定パラメータの対数値の平均値の差の90%信頼区間がlog(0.80)~log(1.25)の範囲にあるとき、当該試験製剤と標準製剤は生物学的に同等と判定される。また、前記の判定基準に適合しない場合でも、当該試験製剤と標準製剤の生物学的同等性判定パラメータの対数値の平均値の差がlog(0.90)~log(1.11)であり、且つ、当該ガイドラインの第3章のA項のV.に従った溶出試験において溶出挙動が類似していると判定された場合には、生物学的に同等と判定される。ただし、この規定が適用されるのは、総被験者数20名(1群10名)以上が用いられた場合に限られる。なお、本発明において、上述の(A)~(F)、(A1)~(F1)、(A2)~(F2)および(A3)~(F3)に各々挙げられる医薬組成物からなる製剤が、「標準製剤」に相当する。
【0063】
本発明の水性医薬組成物は、製造前に無菌処理されたものであることが好ましい。無菌処理として無菌操作法を採用する場合には、例えば、秤量した本発明にかかる抗体および各添加物を注射用水(例えば、滅菌精製水および注射用蒸留水)などに希釈または溶解させ、溶解液を濾過滅菌することにより製造することができる。当該医薬組成物には、本発明にかかる抗体および各添加物からなる凍結乾燥体を注射用水にて再構成させ、調製されたものも含まれる。
【0064】
本発明の製剤は、静脈内投与および皮下投与に応じて、各々適した形態を取ることができる。例えば、静脈内投与の場合には、バイアル容器またはアンプル容器に封入され得、水性医薬組成物の全液量の容量に応じてそのサイズを選択できる。なお、バイアル容器またはアンプル容器に封入された形態であっても、医療現場において、シリンジに採取されたのち、皮下投与されてもよい。
【0065】
本発明の製剤が、皮下投与用製剤の形態を取る場合、当該医薬組成物を洗浄・滅菌処理された注射器に予め充填したプレフィルドシリンジ製剤として提供することができる。また、本発明の医薬組成物は、洗浄・滅菌処理されたカートリッジに充填・密封し、さらに、当該カートリッジをインジェクターペン、オートインジェクターまたは無針装置(例えば、MediJectorおよびBioJector(登録商標))に充填された形態として提供することもできる。
【0066】
[本発明の製剤の医薬的用途]
抗PD-1/CD3二重特異性抗体にかかる本発明の水性医薬組成物またはその製剤は、自己免疫疾患もしくは移植片対宿主病(GVHD)あるいは血液がんの予防、症状進展抑制、再発抑制および/または治療に有用である。
【0067】
本発明の水性医薬組成物またはその製剤が予防、症状進展抑制、再発抑制および/または治療可能な自己免疫疾患としては、例えば、ベーチェット病、全身性エリテマトーデス、慢性円板状エリテマトーデス、多発性硬化症(全身性強皮症、進行性全身性硬化症)、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、結節性動脈周囲炎(結節性多発動脈炎、顕微鏡的多発血管炎)、大動脈炎症候群(高安動脈炎)、悪性関節リウマチ、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、脊椎関節炎、混合性結合組織病、シェーグレン症候群、成人スティル病、血管炎、アレルギー性肉芽腫性血管炎、過敏性血管炎、リウマトイド血管炎、大型血管炎、ANCA関連血管炎(例えば、多発血管炎性肉芽腫症および好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)、コーガン症候群、RS3PE症候群、側頭動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、線維筋痛症、抗リン脂質抗体症候群、好酸球性筋膜炎、IgG4関連疾患(例えば、原発性硬化性胆管炎、自己免疫性膵炎など)、ギラン・バレー症候群、重症筋無力症、慢性萎縮性胃炎、自己免疫性肝炎、非アルコール性脂肪肝炎、原発性胆汁性肝硬変、グッドパスチャー症候群、急速進行性糸球体腎炎、巨赤芽球性貧血、自己免疫性溶血性貧血、悪性貧血、自己免疫性好中球減少症、特発性血小板減少性紫斑病、バセドウ病(グレーブス病(甲状腺機能亢進症))、橋本病、自己免疫性副腎機能不全、原発性甲状腺機能低下症、アジソン病(慢性副腎皮質機能低下症)、特発性アジソン病、I型糖尿病、緩徐進行性I型糖尿病(成人潜在性自己免疫性糖尿病)、限局性強皮症、乾癬、乾癬性関節炎、水疱性類天疱瘡、天疱瘡、類天疱瘡、妊娠性疱疹、線状IgA水疱性皮膚症、後天性表皮水疱症、円形脱毛症、白斑、尋常性白斑、視神経脊髄炎、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、多巣性運動ニューロパチー、サルコイドーシス、巨細胞性動脈炎、筋委縮性側索硬化症、原田病、自己免疫性視神経症、特発性無精子症、習慣性流産、炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病)、セリアック病、強直性脊椎炎、重症喘息、慢性蕁麻疹、移植免疫、家族性地中海熱、好酸球性副鼻腔炎、拡張型心筋症、全身性肥満細胞症および封入体筋炎などが挙げられる。
【0068】
特に、本発明の水性医薬組成物またはその製剤が予防、症状進展抑制、再発抑制および/または治療可能な自己免疫疾患として好ましくは、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、クローン病、潰瘍性大腸炎および重症筋無力症などが挙げられる。
【0069】
また、本発明の水性医薬組成物またはその製剤が予防、症状進展抑制、再発抑制および/または治療可能な血液がんとしては、例えば、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫(例えば、B細胞性非ホジキンリンパ腫およびT/NK細胞性非ホジキンリンパ腫(例えば、前駆T細胞リンパ芽球性リンパ腫、慢性Tリンパ球性白血病、T細胞型大顆粒リンパ球性白血病、大顆粒NK細胞性白血病、急速進行性NK細胞白血病、末梢性T細胞リンパ腫、末梢性T細胞リンパ腫・非特定型、分類不能末梢性T細胞リンパ腫、血管免疫芽球性T細胞性リンパ腫、未分化大細胞(CD30陽性)リンパ腫、血管中心性リンパ腫、腸管T細胞性リンパ腫、腸症型T細胞リンパ腫、肝脾型γ-δT細胞リンパ腫、皮膚T細胞性リンパ腫、皮下脂肪組織炎様T細胞リンパ腫、菌状息肉症、セザリー症候群、ホジキン様/ホジキン関連未分化大細胞リンパ腫、節外性NK/T細胞リンパ腫、成人T細胞性リンパ腫、T細胞前リンパ球性白血病、慢性NK細胞リンパ増殖異常症、小児全身性EBV陽性T細胞リンパ腫、種痘様水疱症様リンパ増殖異常症、節外性NK/T細胞リンパ腫・鼻型、腸症関連T細胞リンパ腫、単形性上皮向性腸管T細胞リンパ腫、胃腸管緩徐進行性T細胞リンパ増殖異常症、肝脾T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD30陽性T細胞リンパ増殖異常症、リンパ腫様丘疹症、原発性皮膚未分化大細胞型リンパ腫、原発性皮膚γδT細胞リンパ腫、原発性皮膚CD8陽性急速進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫、原発性皮膚先端型CD8陽性T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD4陽性小型/中型T細胞リンパ増殖性症、濾胞T細胞リンパ腫、濾胞ヘルパーT細胞形質を伴う節性末梢性T細胞リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫・ALK陽性型、未分化大細胞リンパ腫・ALK陰性型および乳房インプラント関連未分化大細胞リンパ腫))およびホジキンリンパ腫)、白血病(例えば、急性骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、骨髄異形成症候群および慢性骨髄性白血病)、中枢神経系原発悪性リンパ腫および骨髄増殖症候群などが挙げられる。
【0070】
特に、本発明の水性医薬組成物またはその製剤が予防、症状進展抑制、再発抑制および/または治療可能な血液がんとして好ましくは、末梢性T細胞リンパ腫および皮膚T細胞性リンパ腫などが挙げられる。
【0071】
ここで、本発明における「治療」とは、例えば、ある疾患もしくはその症状を治癒させることまたは改善させることを意味し、「予防」とは、ある疾患もしくは症状の発現を未然に防止するあるいは一定期間遅延させることを意味し、「症状進展抑制」とは症状の進展または悪化を抑制して病態の進行を止めることを意味する。なお、「予防」の意味には再発抑制も含まれる。「再発抑制」とは、ある疾患もしくは症状の再発を防止または再発の可能性を低減させることを意味する。
【0072】
本発明は、例えば、下記[1]~[95]、[1-1]~[1-3]および[2-1]~[2-3]に挙げられる実施態様を各々提供する。
[1] 抗体(好ましくは、抗PD-1/CD3二重特異性抗体)を有効成分として含み、さらに、緩衝剤(好ましくは、酢酸緩衝剤)、トレハロース、酸化防止剤(好ましくは、L-メチオニン)、ポリソルベート80および塩化ナトリウムを含む、皮下投与用もしくは静脈内投与用の水性医薬組成物またはその製剤;
[2] 抗PD-1/CD3二重特異性抗体が、約0.01~約200 mg/mL(好ましくは、約0.1~約150 mg/mL(好ましくは、約0.1~約1.2 mg/mL、約5~約25 mg/mLまたは約80~約150 mg/mL))である、前項[1]記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[3] 抗PD-1/CD3二重特異性抗体が、約0.01 mg/mL、約0.02 mg/mL、約0.03 mg/mL、約0.04 mg/mL、約0.05 mg/mL、約0.06 mg/mL、約0.07 mg/mL、約0.08 mg/mL、約0.09 mg/mL、約0.1 mg/mL、約0.2 mg/mL、約0.3 mg/mL、約0.4 mg/mL、約0.5 mg/mL、約0.6 mg/mL、約0.7 mg/mL、約0.8 mg/mL、約0.9 mg/mL、約1 mg/mL、約1.1 mg/mL、約1.2 mg/mL、約1.3 mg/mL、約1.4 mg/mL、約1.5 mg/mL、約2 mg/mL、約5 mg/mL、約10 mg/mL、約15 mg/mL、約20 mg/mL、約25 mg/mL、約30 mg/mL、約40 mg/mL、約50 mg/mL、約60 mg/mL、約70 mg/mL、約80 mg/mL、約90 mg/mL、約100 mg/mL、約110 mg/mL、約120 mg/mL、約130 mg/mL、約140 mg/mL、約150 mg/mL、約160 mg/mL、約170 mg/mL、約180 mg/mL、約190 mg/mLまたは約200 mg/mLである、前項[1]記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[4] 抗PD-1/CD3二重特異性抗体が、約0.5 mg/mL、約1 mg/mL、約10 mg/mLまたは約100 mg/mLである、前項[1]記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[5] 酢酸緩衝剤が、約7.3~約73.0 mM(好ましくは、約14.6~約43.8 mM、より好ましくは、約18~約22 mM)である、前項[1]~[4]の何れか一項記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[6] 酢酸緩衝剤が、約7.3 mM、約10 mM、約14.6 mM、約15 mM、約18 mM、約20 mM、約20.07 mM、約21 mM、約22 mM、約25 mM、約30 mM、約35 mM、約40 mM、約43.8 mM、約45 mM、約50 mM、約55 mM、約60 mM、約70 mMまたは約73.0 mMである、前項[1]~[4]の何れか一項記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[7] 酢酸緩衝剤が、約20.07 mMである、前項[1]~[4]の何れか一項記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[8] 酢酸緩衝剤が、酢酸ナトリウム三水和物および酢酸の組み合わせからなる、前項[5]~[7]の何れか一項記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[9] トレハロースが、約5~約286.1 mM(好ましくは、約10~約207.9 mM、より好ましくは、約172~約193 mM)である、前項[1]~[8]の何れか一項記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[10] トレハロースが、約5 mM、約10 mM、約20 mM、約30 mM、約40 mM、約50 mM、約60 mM、約70 mM、約80 mM、約90 mM、約100 mM、約110 mM、約120 mM、約130 mM、約140 mM、約150 mM、約160 mM、約170 mM、約172 mM、約180 mM、約182 mM、約182.3 mM、約182.38 mM、約182.4 mM、約190 mM、約193 mM、約200 mM、約207.9 mM、約210 mM、約220 mM、約225 mM、約230 mM、約240 mM、約250 mM、約260 mM、約270 mM、約280 mM、約285 mM、約286 mMまたは約286.1 mMである、前項[1]~[8]の何れか一項記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[11] トレハロースが、約182.38 mMである、前項[1]~[8]の何れか一項記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[12] トレハロースが、トレハロース二水和物である、前項[1]~[8]の何れか一項記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[13] L-メチオニンが、約5~約30.2 mM(好ましくは、約5~約20 mM、より好ましくは、約5~約15 mM)である、前項[1]~[12]の何れか一項記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[14] L-メチオニンが、約5 mM、約10 mM、約10.05 mM、約15 mM、約20 mM、約25 mM、約30 mMまたは約30.2 mMである、前項[1]~[12]の何れか一項記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[15] L-メチオニンが、約10.05 mMである、前項[1]~[12]の何れか一項記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[16] ポリソルベート80が、約0.01~約0.5 %(w/v)(好ましくは、約0.05~約0.3 %(w/v)、さらに好ましくは、約0.08~約0.12 %(w/v))である、前項[1]~[15]の何れか一項記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[17] ポリソルベート80が、約0.01 %(w/v)、約0.02 %(w/v)、約0.04 %(w/v)、約0.05 %(w/v)、約0.06 %(w/v)、約0.08 %(w/v)、約0.1 %(w/v)、約0.12 %(w/v)、約0.15 %(w/v)、約0.2 %(w/v)、約0.25 %(w/v)、約0.3 %(w/v)、約0.35 %(w/v)、約0.4 %(w/v)、約0.45 %(w/v)または約0.5 %(w/v)である、前項[1]~[15]の何れか一項記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[18] ポリソルベート80が、約0.1 %(w/v)である、前項[1]~[15]の何れか一項記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[19] 塩化ナトリウムが、約0.5~約34.2 mM(好ましくは、約1.0~約25.7 mM、より好ましくは、約19.6~約25.7 mM)である、前項[1]~[18]の何れか一項記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[20] 塩化ナトリウムが、約0.5 mM、約1 mM、約2 mM、約3 mM、約4 mM、約5 mM、約6 mM、約7 mM、約8 mM、約9 mM、約10 mM、約11 mM、約12 mM、約13 mM、約14 mM、約15 mM、約16 mM、約17 mM、約18 mM、約19 mM、約19.6 mM、約20 mM、約21 mM、約22 mM、約23 mM、約23.27 mM、約24.0 mM、約25 mM、約25.7 mM、約30 mMまたは約34.2 mMである、前項[1]~[18]の何れか一項記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[21] 塩化ナトリウムが、約23.27 mMである、前項[1]~[18]の何れか一項記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[22] 水性医薬組成物(好ましくは、静脈内投与用)の単位製剤当たりの容量が約5 mLである、前項[1]~[21]の何れか一項記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[23] 前項[22]記載の水性医薬組成物に適用される酢酸緩衝剤が、(i)約3.4~約34 mgの酢酸ナトリウム三水和物、および(ii)前項(i)の酢酸ナトリウム三水和物の分量に対応して、pHが約4.7~約5.3(好ましくは、約4.9~約5.1、より好ましくは、約5.0)となる分量の氷酢酸からなる、前項[22]記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[24] 前項[22]記載の水性医薬組成物に適用される酢酸緩衝剤が、(i)約6.8~約20.4 mg(好ましくは、約8.4~約10.2 mg)の酢酸ナトリウム三水和物、および(ii)前項(i)の酢酸ナトリウム三水和物の分量に対応して、pHが約4.7~約5.3(好ましくは、約4.9~約5.1、より好ましくは、約5.0)となる分量の氷酢酸からなる、前項[22]記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[25] 前項[22]記載の水性医薬組成物に適用される酢酸緩衝剤が、約9.4 mg(具体的には、約9.35 mg)の酢酸ナトリウム三水和物および約1.9 mgの氷酢酸からなる、前項[22]記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[26] トレハロースがトレハロース二水和物である、前項[22]~[25]の何れか一項記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[27] トレハロース二水和物が、約9.46~約541.2 mg(好ましくは、約18.9~約393.3 mg、より好ましくは、約325~約365.1 mg、さらにより好ましくは、約345 mg)である、前項[26]記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[28] 酸化防止剤がL-メチオニンである、前項[22]~[27]の何れか一項記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[29] L-メチオニンが、約3.75~約22.5 mg(好ましくは、約3.75~約15.0 mg、より好ましくは、約3.75~約11.25 mg、さらにより好ましくは、約7.5 mg)である、前項[28]記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[30] ポリソルベート80が、約0.5~約25 mg(好ましくは、約2.5~約15 mg、より好ましくは、約5 mg)である、前項[22]~[29]の何れか一項記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[31] 塩化ナトリウムが、約0.15~約10.0 mg(好ましくは、約0.29~約7.5 mg、より好ましくは、約5.8~約7.5 mg、さらにより好ましくは、約6.8 mg)である、前項[22]~[30]の何れか一項記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[32] 水性医薬組成物の単位製剤当たりの容量が約2 mLであり、各添加物の分量が、前項[23]~[31]の何れか一または二以上に記載の各添加物の分量の約2/5量である、前項[1]~[21]の何れか一項記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[33] 水性医薬組成物(好ましくは、皮下投与用)の単位製剤当たりの容量が約1 mLである、前項[1]~[21]の何れか一項記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[34] 前項[33]記載の水性医薬組成物に適用される酢酸緩衝剤が、(i)約0.68~約6.8 mgの酢酸ナトリウム三水和物、および(ii)前項(i)の酢酸ナトリウム三水和物の分量に対応して、pHが約4.7~約5.3(好ましくは、約4.9~約5.1、より好ましくは、約5.0)となる分量の氷酢酸からなる、前項[33]記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[35] 前項[33]記載の水性医薬組成物に適用される酢酸緩衝剤が、(i)約1.36~約4.08 mg(好ましくは、約1.68~約2.05 mg)の酢酸ナトリウム三水和物、および(ii)前項(i)の酢酸ナトリウム三水和物の分量に対応して、pHが約4.7~約5.3(好ましくは、約4.9~約5.1、より好ましくは、約5.0)となる分量の氷酢酸からなる、前項[33]記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[36] 前項[33]記載の水性医薬組成物に適用される酢酸緩衝剤が、約1.9 mg(具体的には、約1.87 mg)の酢酸ナトリウム三水和物および約0.4 mg(具体的には、約0.38 mg)の氷酢酸からなる、前項[33]記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[37] トレハロースがトレハロース二水和物である、前項[33]~[36]の何れか一項記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[38] トレハロース二水和物が、約1.9~約108.3 mg(好ましくは、約3.8~約78.7 mg、より好ましくは、約65.1~約72.6 mg、さらにより好ましくは、約69 mg)である、前項[37]記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[39] 酸化防止剤がL-メチオニンである、前項[33]~[38]の何れか一項記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[40] L-メチオニンが、約0.75~約4.5 mg(好ましくは、約0.75~約3.0 mg、より好ましくは、約0.75~約2.25 mg、さらにより好ましくは、約1.5 mg)である、前項[39]記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[41] ポリソルベート80が、約0.1~約5.0 mg(好ましくは、約0.5~約3.0 mg、より好ましくは、約1.0 mg)である、前項[33]~[40]の何れか一項記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[42] 塩化ナトリウムが、約0.03~約2.0 mg(好ましくは、約0.06~約1.5 mg、より好ましくは、約1.15~約1.5 mg、さらにより好ましくは、約1.4 mg(具体的には、約1.36 mg))である、前項[33]~[41]の何れか一項記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[43] 当該水性医薬組成物のpHが、約4.7~約5.3(好ましくは、約4.9~約5.1、より好ましくは、約5.0)である、前項[1]~[42]の何れか一項記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[44] (a)約0.1~約1.2 mg/mLまたは約5~約25 mg/mL(各々好ましくは、約0.5 mg/mL、約1 mg/mLまたは約10 mg/mL)の抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)約7.3~約73.0 mMの酢酸緩衝剤、
(c)約5~約286.1 mMのトレハロース、
(d)約5~約30.2 mMのL-メチオニン、
(e)約0.01~約0.5 %(w/v)のポリソルベート80、ならびに
(f)約0.5~約34.2 mMの塩化ナトリウムを含み、pHが約4.7~約5.3である、皮下投与用もしくは静脈内投与用の水性医薬組成物またはその製剤;
[45] (a)約0.1~約1.2 mg/mLまたは約5~約25 mg/mL(各々好ましくは、約0.5 mg/mL、約1 mg/mLまたは約10 mg/mL)の抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)約14.6~約43.8 mM(好ましくは、約18~約22 mM)の酢酸緩衝剤、
(c)約10~約207.9 mM(好ましくは、約172~約193 mM)のトレハロース、
(d)約5~約20 mM(好ましくは、約5~約15 mM)のL-メチオニン、
(e)約0.05~約0.3 %(w/v)(好ましくは、約0.08~約0.12 %(w/v))のポリソルベート80、ならびに
(f)約1.0~約25.7 mM(好ましくは、約19.6~約25.7 mM)の塩化ナトリウムを含み、pHが約4.9~約5.1である、皮下投与用もしくは静脈内投与用の水性医薬組成物またはその製剤;
[46] (a)約0.5 mg/mL、約1 mg/mLまたは約10 mg/mLの抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)約20.07 mMの酢酸緩衝剤、
(c)約182.38 mMのトレハロース、
(d)約10.05 mMのL-メチオニン、
(e)約0.1 %(w/v)のポリソルベート80、ならびに
(f)約23.27 mMの塩化ナトリウムを含み、pHが約5.0である、皮下投与用もしくは静脈内投与用の水性医薬組成物またはその製剤;
[47] (a)約80~約150 mg/mL(好ましくは、約100 mg/mL)の抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)約7.3~約73.0 mMの酢酸緩衝剤、
(c)約5~約286.1 mMのトレハロース、
(d)約5~約30.2 mMのL-メチオニン、
(e)約0.01~約0.5 %(w/v)のポリソルベート80、ならびに
(f)約0.5~約34.2 mMの塩化ナトリウムを含み、pHが約4.7~約5.3である、皮下投与用の水性医薬組成物またはその製剤;
[48] (a)約80~約150 mg/mL(好ましくは、約100 mg/mL)の抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)約14.6~約43.8 mM(好ましくは、約18~約22 mM)の酢酸緩衝剤、
(c)約10~約207.9 mM(好ましくは、約172~約193 mM)のトレハロース、
(d)約5~約20 mM(好ましくは、約5~約15 mM)のL-メチオニン、
(e)約0.05~約0.3 %(w/v)(好ましくは、約0.08~約0.12 %(w/v))のポリソルベート80、ならびに
(f)約1.0~約25.7 mM(好ましくは、約19.6~約25.7 mM)の塩化ナトリウムを含み、pHが約4.9~約5.1である、皮下投与用の水性医薬組成物またはその製剤;
[49] (a)約100 mg/mLの抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)約20.07 mMの酢酸緩衝剤、
(c)約182.38 mMのトレハロース、
(d)約10.05 mMのL-メチオニン、
(e)約0.1 %(w/v)のポリソルベート80、ならびに
(f)約23.27 mMの塩化ナトリウムを含み、pHが約5.0である、皮下投与用の水性医薬組成物またはその製剤;
[50] (a)約0.1~約1.2 mg/mLまたは約5~約25 mg/mL(各々好ましくは、約0.5 mg/mL、約1 mg/mLまたは約10 mg/mL)の抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)(b1)約0.68~約6.8 mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、および(b2)前項(b1)の酢酸ナトリウム三水和物の分量に対応して、pHが約4.7~約5.3となる分量の酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)約1.9~約108.3 mg/mLのトレハロース二水和物、
(d)約0.75~約4.5 mg/mLのL-メチオニン、
(e)約0.1~約5.0 mg/mLのポリソルベート80、ならびに
(f)約0.03~約2.0 mg/mLの塩化ナトリウムを含み、pHが約4.7~約5.3である、皮下投与用もしくは静脈内投与用の水性医薬組成物またはその製剤;
[51] (a)約0.1~約1.2 mg/mLまたは約5~約25 mg/mL(各々好ましくは、約0.5 mg/mL、約1 mg/mLまたは約10 mg/mL)の抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)(b1)約1.36~約4.08 mg/mL(好ましくは、約1.68~約2.05 mg/mL)の酢酸ナトリウム三水和物、および(b2)前項(b1)の酢酸ナトリウム三水和物の分量に対応して、pHが約4.9~約5.1となる分量の酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)約3.8~約78.7 mg/mL(好ましくは、約65.1~約72.6 mg/mL)のトレハロース二水和物、
(d)約0.75~約3.0 mg/mL(好ましくは、約0.75~約2.25 mg/mL)のL-メチオニン、
(e)約0.5~約3.0 mg/mL(好ましくは、約0.8~約1.2 mg/mL)のポリソルベート80、ならびに
(f)約0.06~約1.5 mg/mL(好ましくは、約1.15~約1.5 mg/mL)の塩化ナトリウムを含み、pHが約4.9~約5.1である、皮下投与用もしくは静脈内投与用の水性医薬組成物またはその製剤;
[52] (a)約0.5 mg/mL、約1 mg/mLまたは約10 mg/mLの抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)約1.9 mg/mL(具体的には、約1.87 mg/mL)の酢酸ナトリウム三水和物および約0.4 mg/mL(具体的には、約0.38 mg/mL)の酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)約69 mg/mLのトレハロース二水和物、
(d)約1.5 mg/mLのL-メチオニン、
(e)約1.0 mg/mLのポリソルベート80、ならびに
(f)約1.4 mg/mL(具体的には、約1.36 mg/mL)の塩化ナトリウムを含み、pHが約5.0である、皮下投与用もしくは静脈内投与用の水性医薬組成物またはその製剤;
[53] (a)約0.5~約6 mgまたは約25~約125 mg(各々好ましくは、約2.5 mg、約5 mgまたは約50 mg)の抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)(b1)約3.4~約34.0 mgの酢酸ナトリウム三水和物、および(b2)前項(b1)の酢酸ナトリウム三水和物の分量に対応して、pHが約4.7~約5.3となる分量の氷酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)約9.46~約541.2 mgのトレハロース二水和物、
(d)約3.75~約22.5 mgのL-メチオニン、
(e)約0.5~約25.0 mgのポリソルベート80、ならびに
(f)約0.15~約10.0 mgの塩化ナトリウムを含み、pHが約4.7~約5.3であり、単位製剤当たりの容量が約5 mLである、皮下投与用もしくは静脈内投与用の水性医薬組成物またはその製剤;
[54] (a)約0.5~約6 mgまたは約25~約125 mg(各々好ましくは、約2.5 mg、約5 mgまたは約50 mg)の抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)(b1)約6.8~約20.4 mg(好ましくは、約8.4~約10.2 mg)の酢酸ナトリウム三水和物、および(b2)前項(b1)の酢酸ナトリウム三水和物の分量に対応して、pHが約4.9~約5.1となる分量の氷酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)約18.9~約393.3 mg(好ましくは、約325~約365.1 mg)のトレハロース二水和物、
(d)約3.75~約15.0 mg(好ましくは、約3.75~約11.25 mg)のL-メチオニン、
(e)約2.5~約15.0 mg(好ましくは、約4~6 mg)のポリソルベート80、ならびに
(f)約0.29~約7.5 mg(好ましくは、約5.8~約7.5 mg)の塩化ナトリウムを含み、pHが約4.9~約5.1であり、単位製剤当たりの容量が約5 mLである、皮下投与用もしくは静脈内投与用の水性医薬組成物またはその製剤;
[55] (a)約2.5 mg、約5 mgまたは約50 mgの抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)約9.4 mg(具体的には、約9.35 mg)の酢酸ナトリウム三水和物および約1.9 mgの氷酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)約345 mgのトレハロース二水和物、
(d)約7.5 mgのL-メチオニン、
(e)約5.0 mgのポリソルベート80、ならびに
(f)約6.8 mgの塩化ナトリウムを含み、pHが約5.0であり、単位製剤当たりの容量が約5 mLである、皮下投与用もしくは静脈内投与用の水性医薬組成物またはその製剤;
[56] (a)約0.2~約2.4 mgまたは約10~約50 mg(各々好ましくは、約1 mg、約2 mgまたは約20 mg)の抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)(b1)約1.36~約13.6 mgの酢酸ナトリウム三水和物、および(b2)前項(b1)の酢酸ナトリウム三水和物の分量に対応して、pHが約4.7~約5.3となる分量の氷酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)約3.8~約216.6 mgのトレハロース二水和物、
(d)約1.5~約9.0 mgのL-メチオニン、
(e)約0.2~約10.0 mgのポリソルベート80、ならびに
(f)約0.06~約4.0 mgの塩化ナトリウムを含み、pHが約4.7~約5.3であり、単位製剤当たりの容量が約2 mLである、皮下投与用もしくは静脈内投与用の水性医薬組成物またはその製剤;
[57] (a)約0.2~約2.4 mgまたは約10~約50 mg(各々好ましくは、約1 mg、約2 mgまたは約20 mg)の抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)(b1)約2.72~約8.16 mg(好ましくは、約3.36~約4.1 mg)の酢酸ナトリウム三水和物、および(b2)前項(b1)の酢酸ナトリウム三水和物の分量に対応して、pHが約4.9~約5.1となる分量の氷酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)約7.6~約157.4 mg(好ましくは、約130.2~約145.2 mg)のトレハロース二水和物、
(d)約1.5~約6.0 mg(好ましくは、約1.5~約4.5 mg)のL-メチオニン、
(e)約1.0~約6.0 mgのポリソルベート80、ならびに
(f)約0.12~約3.0 mg(好ましくは、約2.3~約3.0 mg)の塩化ナトリウムを含み、pHが約4.9~約5.1であり、単位製剤当たりの容量が約2 mLである、皮下投与用もしくは静脈内投与用の水性医薬組成物またはその製剤;
[58] (a)約1 mg、約2 mgまたは約20 mgの抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)約3.7 mg(具体的には、約3.74 mg)の酢酸ナトリウム三水和物および約0.8 mg(具体的には、約0.76 mg)の氷酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)約138 mgのトレハロース二水和物、
(d)約3.0 mgのL-メチオニン、
(e)約2.0 mgのポリソルベート80、ならびに
(f)約2.7 mg(具体的には、約2.72 mg)の塩化ナトリウムを含み、pHが約5.0であり、単位製剤当たりの容量が約2 mLである、皮下投与用もしくは静脈内投与用の水性医薬組成物またはその製剤;
[59] (a)約80~約150 mg/mL(好ましくは、約100 mg/mL)の抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)(b1)約0.68~約6.8 mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、および(b2)前項(b1)の酢酸ナトリウム三水和物の分量に対応して、pHが約4.7~約5.3となる分量の酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)約1.9~約108.3 mg/mLのトレハロース二水和物、
(d)約0.75~約4.5 mg/mLのL-メチオニン、
(e)約0.1~約5.0 mg/mLのポリソルベート80、ならびに
(f)約0.03~約2.0 mg/mLの塩化ナトリウムを含み、pHが約4.7~約5.3である、皮下投与用の水性医薬組成物またはその製剤;
[60] (a)約80~約150 mg/mL(好ましくは、約100 mg/mL)の抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)(b1)約1.36~約4.08 mg/mL(好ましくは、約1.68~約2.05 mg/mL)の酢酸ナトリウム三水和物、および(b2)前項(b1)の酢酸ナトリウム三水和物の分量に対応して、pHが約4.9~約5.1となる分量の酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)約3.8~約78.7 mg/mL(好ましくは、約65.1~約72.6 mg/mL)のトレハロース二水和物、
(d)約0.75~約3.0 mg/mL(好ましくは、約0.75~約2.25 mg/mL)のL-メチオニン、
(e)約0.5~約3.0 mg/mL(好ましくは、約0.8~約1.2 mg/mL)のポリソルベート80、ならびに
(f)約0.06~約1.5 mg/mL(好ましくは、約1.15~約1.5 mg/mL)の塩化ナトリウムを含み、pHが約4.9~約5.1である、皮下投与用の水性医薬組成物またはその製剤;
[61] (a)約100 mg/mLの抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)約1.9 mg/mL(具体的には、約1.87 mg/mL)の酢酸ナトリウム三水和物および約0.4 mg/mL(具体的には、約0.38 mg/mL)の酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)約69 mg/mLのトレハロース二水和物、
(d)約1.5 mg/mLのL-メチオニン、
(e)約1.0 mg/mLのポリソルベート80、ならびに
(f)約1.4 mg/mL(具体的には、約1.36 mg/mL)の塩化ナトリウムを含み、pHが約5.0である、皮下投与用の水性医薬組成物またはその製剤;
[62] (a)約80~約150 mg(好ましくは、約100 mg)の抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)(b1)約0.68~約6.8 mgの酢酸ナトリウム三水和物、および(b2)前記(b1)の酢酸ナトリウム三水和物の分量に対応して、pHが約4.7~約5.3となる分量の氷酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)約1.9~約108.3 mgのトレハロース二水和物、
(d)約0.75~約4.5 mgのL-メチオニン、
(e)約0.1~約5.0 mgのポリソルベート80、ならびに
(f)約0.03~約2.0 mgの塩化ナトリウムを含み、pHが約4.7~約5.3であり、単位製剤当たりの容量が約1 mLである、皮下投与用の水性医薬組成物またはその製剤;
[63] (a)約80~約150 mg(好ましくは、約100 mg)の抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)(b1)約1.36~約4.08 mg(好ましくは、約1.68~約2.05 mg)の酢酸ナトリウム三水和物、および(b2)前項(b1)の酢酸ナトリウム三水和物の分量に対応して、pHが約4.9~約5.1となる分量の氷酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)約3.8~約78.7 mg(好ましくは、約65.1~約72.6 mg)のトレハロース二水和物、
(d)約0.75~約3.0 mg(好ましくは、約0.75~約2.25 mg)のL-メチオニン、
(e)約0.5~約3.0 mgのポリソルベート80、ならびに
(f)約0.06~約1.5 mg(好ましくは、約1.15~約1.5 mg)の塩化ナトリウムを含み、pHが約4.9~約5.1であり、単位製剤当たりの容量が約1 mLである、皮下投与用の水性医薬組成物またはその製剤;
[64] (a)約100 mgの抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)約1.9 mg(具体的には、約1.87 mg)の酢酸ナトリウム三水和物および約0.4 mg(具体的には、約0.38 mg)の氷酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)約69 mgのトレハロース二水和物、
(d)約1.5 mgのL-メチオニン、
(e)約1.0 mgのポリソルベート80、ならびに
(f)約1.4 mg(具体的には、約1.36 mg)の塩化ナトリウムを含み、pHが約5.0であり、単位製剤当たりの容量が約1 mLである、皮下投与用の水性医薬組成物またはその製剤;
[65] (a)約0.1~約1.2 mg/mLまたは約5~約25 mg/mL(各々好ましくは、約0.5 mg/mL、約1 mg/mLまたは約10 mg/mL)の抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)緩衝剤(好ましくは、約7.3~約73.0 mM(好ましくは、約14.6~約43.8 mM、より好ましくは、約18~約22 mM、さらにより好ましくは、約20.07 mM)の酢酸緩衝剤または当該酢酸緩衝剤と同等のpH緩衝性能を有する緩衝剤)、
(c)約5~約286.1 mM(好ましくは、約10~約207.9 mM、より好ましくは、約172~約193 mM、さらにより好ましくは、約182.38 mM)のトレハロース、
(d)約5~約30.2 mM(好ましくは、約5~約20 mM、より好ましくは、約5~約15 mM、さらにより好ましくは、約10.05 mM)のL-メチオニン、
(e)約0.01~約0.5 %(w/v)(好ましくは、約0.05~約0.3 %(w/v)、より好ましくは、約0.08~約0.12 %(w/v)、さらに好ましくは、約0.1 %(w/v))のポリソルベート80、ならびに
(f)約0.5~約34.2 mM(好ましくは、約1.0~約25.7 mM、より好ましくは、約19.6~約25.7 mM、さらにより好ましくは、約23.27 mM)の塩化ナトリウムを含み、pHが約4.7~約5.3(好ましくは、約4.9~約5.1、より好ましくは、約5.0)である、皮下投与用もしくは静脈内投与用の水性医薬組成物またはその製剤;
[66] (a)約0.1~約1.2 mg/mLまたは約5~約25 mg/mL(各々好ましくは、約0.5 mg/mL、約1 mg/mLまたは約10 mg/mL)の抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)約7.3~約73.0 mM(好ましくは、約14.6~約43.8 mM、より好ましくは、約18~約22 mM、さらにより好ましくは、約20.07 mM)の酢酸緩衝剤、
(c)約5~約286.1 mM(好ましくは、約10~約207.9 mM、より好ましくは、約172~約193 mM、さらにより好ましくは、約182.38 mM)のトレハロース、
(d)酸化防止剤(好ましくは、約5~約30.2 mM(好ましくは、約5~約20 mM、より好ましくは、約5~約15 mM、さらにより好ましくは、約10.05 mM)のL-メチオニンまたは当該L-メチオニンと同等の酸化防止能を有する酸化防止剤)、
(e)約0.01~約0.5 %(w/v)(好ましくは、約0.05~約0.3 %(w/v)であり、より好ましくは、約0.08~約0.12 %(w/v)、さらに好ましくは、約0.1 %(w/v)である)のポリソルベート80、ならびに
(f)約0.5~約34.2 mM(好ましくは、約1.0~約25.7 mM、より好ましくは、約19.6~約25.7 mM、さらにより好ましくは、約23.27 mM)の塩化ナトリウムを含み、pHが約4.7~約5.3(好ましくは、約4.9~約5.1、より好ましくは、約5.0)である、皮下投与用もしくは静脈内投与用の水性医薬組成物またはその製剤;
[67] (a)約0.1~約1.2 mg/mLまたは約5~約25 mg/mL(各々好ましくは、約0.5 mg/mL、約1 mg/mLまたは約10 mg/mL)の抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)緩衝剤(好ましくは、約7.3~約73.0 mM(好ましくは、約14.6~約43.8 mM、より好ましくは、約18~約22 mM、さらにより好ましくは、約20.07 mM)の酢酸緩衝剤または当該酢酸緩衝剤と同等のpH緩衝性能を有する緩衝剤)、
(c)約5~約286.1 mM(好ましくは、約10~約207.9 mM、より好ましくは、約172~約193 mM、さらにより好ましくは、約182.38 mM)のトレハロース、
(d)酸化防止剤(好ましくは、約5~約30.2 mM(好ましくは、約5~約20 mM、より好ましくは、約5~約15 mM、さらにより好ましくは、約10.05 mM)のL-メチオニンまたは当該L-メチオニンと同等の酸化防止能を有する酸化防止剤)、
(e)約0.01~約0.5 %(w/v)(好ましくは、約0.05~約0.3 %(w/v)、より好ましくは、約0.08~約0.12 %(w/v)、さらに好ましくは、約0.1 %(w/v))のポリソルベート80、ならびに
(f)約0.5~約34.2 mM(好ましくは、約1.0~約25.7 mM、より好ましくは、約19.6~約25.7 mM、さらにより好ましくは、約23.27 mM)の塩化ナトリウムを含み、pHが約4.7~約5.3(好ましくは、約4.9~約5.1、より好ましくは、約5.0)である、皮下投与用もしくは静脈内投与用の水性医薬組成物またはその製剤;
[68] (a)約80~約150 mg/mL(好ましくは、約100 mg/mL)の抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)緩衝剤(好ましくは、約7.3~約73.0 mM(好ましくは、約14.6~約43.8 mM、より好ましくは、約18~約22 mM、さらにより好ましくは、約20.07 mM)の酢酸緩衝剤または当該酢酸緩衝剤と同等のpH緩衝性能を有する緩衝剤)、
(c)約5~約286.1 mM(好ましくは、約10~約207.9 mM、より好ましくは、約172~約193 mM、さらにより好ましくは、約182.38 mM)のトレハロース、
(d)約5~約30.2 mM(好ましくは、約5~約20 mM、より好ましくは、約5~約15 mM、さらにより好ましくは、約10.05 mM)のL-メチオニン、
(e)約0.01~約0.5 %(w/v)(好ましくは、約0.05~約0.3 %(w/v)、より好ましくは、約0.08~約0.12 %(w/v)、さらに好ましくは、約0.1 %(w/v))のポリソルベート80、ならびに
(f)約0.5~約34.2 mMの塩化ナトリウム(好ましくは、約1.0~約25.7 mM、より好ましくは、約19.6~約25.7 mM、さらにより好ましくは、約23.27 mM)を含み、pHが約4.7~約5.3(好ましくは、約4.9~約5.1、より好ましくは、約5.0)である、皮下投与用の水性医薬組成物またはその製剤;
[69] (a)約80~約150 mg/mL(好ましくは、約100 mg/mL)の抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)約7.3~約73.0 mM(好ましくは、約14.6~約43.8 mM、より好ましくは、約18~約22 mM、さらにより好ましくは、約20.07 mM)の酢酸緩衝剤、
(c)約5~約286.1 mM(好ましくは、約10~約207.9 mM、より好ましくは、約172~約193 mM、さらにより好ましくは、約182.38 mM)のトレハロース、
(d)酸化防止剤(好ましくは、約5~約30.2 mM(好ましくは、約5~約20 mM、より好ましくは、約5~約15 mM、さらにより好ましくは、約10.05 mM)のL-メチオニンまたは当該L-メチオニンと同等の酸化防止能を有する酸化防止剤)、
(e)約0.01~約0.5 %(w/v)(好ましくは、約0.05~約0.3 %(w/v)、より好ましくは、約0.08~約0.12 %(w/v)、さらに好ましくは、約0.1 %(w/v))のポリソルベート80、ならびに
(f)約0.5~約34.2 mM(好ましくは、約1.0~約25.7 mM、より好ましくは、約19.6~約25.7 mM、さらにより好ましくは、約23.27 mM)の塩化ナトリウムを含み、pHが約4.7~約5.3(好ましくは、約4.9~約5.1、より好ましくは約5.0)である、皮下投与用の水性医薬組成物またはその製剤;
[70] (a)約80~約150 mg/mL(好ましくは、約100 mg/mL)の抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)緩衝剤(好ましくは、約7.3~約73.0 mM(好ましくは、約14.6~約43.8 mM、より好ましくは、約18~約22 mM、さらにより好ましくは、約20.07 mM)の酢酸緩衝剤または当該酢酸緩衝剤と同等のpH緩衝性能を有する緩衝剤)、
(c)約5~約286.1 mM(好ましくは、約10~約207.9 mM、より好ましくは、約172~約193 mM、さらにより好ましくは、約182.38 mM)のトレハロース、
(d)酸化防止剤(好ましくは、約5~約30.2 mM(好ましくは、約5~約20 mM、より好ましくは、約5~約15 mM、さらにより好ましくは、約10.05 mM)のL-メチオニンまたは当該L-メチオニンと同等の酸化防止能を有する酸化防止剤)、
(e)約0.01~約0.5 %(w/v)(好ましくは、約0.05~約0.3 %(w/v)、より好ましくは、約0.08~約0.12 %(w/v)、さらに好ましくは、約0.1 %(w/v))のポリソルベート80、ならびに
(f)約0.5~約34.2 mM(好ましくは、約1.0~約25.7 mM、より好ましくは、約19.6~約25.7 mM、さらにより好ましくは、約23.27 mM)の塩化ナトリウムを含み、pHが約4.7~約5.3(好ましくは、約4.9~約5.1、より好ましくは、約5.0)である、皮下投与用の水性医薬組成物またはその製剤;
[71] 当該抗PD-1/CD3二重特異性抗体が、WO2019/156199により特定される特許出願明細書に開示された当該抗PD-1/CD3二重特異性抗体である、前項[1]~[70]の何れか一項記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[72] 当該抗PD-1/CD3二重特異性抗体が、
(i)PD-1に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖、ならびに
(ii)CD3に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖からなり、
(a)前項(i)の重鎖が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4および配列番号5から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなり、
(b)前項(ii)の重鎖が、配列番号6のアミノ酸配列からなり、ならびに
(c)前項(i)および前項(ii)の軽鎖がともに、配列番号7のアミノ酸配列からなる当該二重特異性抗体である、前項[1]~[70]の何れか一項記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[73] PD-1に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖が、配列番号5のアミノ酸配列からなる、前項[72]記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[74] 前項[72]または[73]記載のPD-1に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖の重鎖定常領域が、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12および配列番号13から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなる重鎖定常領域に置換され、前項[72]記載のCD3に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖の重鎖定常領域が、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18および配列番号19から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなる重鎖定常領域に置換された、前項[71]~[73]の何れか一項記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[75] (a)約0.5 mg/mL、約1 mg/mLまたは約10 mg/mLの抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)約14.6~約43.8 mM(好ましくは、約18~約22 mM)の酢酸緩衝剤、
(c)約10~約207.9 mM(好ましくは、約172~約193 mM)のトレハロース、
(d)約5~約20 mM(好ましくは、約5~約15 mM)のL-メチオニン、
(e)約0.05~約0.3 %(w/v)(好ましくは、約0.08~約0.12 %(w/v))のポリソルベート80、ならびに
(f)約1.0~約25.7 mM(好ましくは、約19.6~約25.7 mM)の塩化ナトリウムを含み、pHが約4.9~約5.1である、皮下投与用もしくは静脈内投与用の水性医薬組成物またはその製剤であって、
ここで、当該抗PD-1/CD3二重特異性抗体が、
(i)PD-1に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖、ならびに
(ii)CD3に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖からなり、
(α)前項(i)の重鎖が、配列番号5のアミノ酸配列からなり、
(β)前項(ii)の重鎖が、配列番号6のアミノ酸配列からなり、ならびに
(γ)前項(i)および前項(ii)の軽鎖がともに、配列番号7のアミノ酸配列からなる当該二重特異性抗体である、当該水性医薬組成物またはその製剤;
[76] (a)約0.5 mg/mL、約1 mg/mLまたは約10 mg/mLの抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)約20.07 mMの酢酸緩衝剤、
(c)約182.38 mMのトレハロース、
(d)約10.05 mMのL-メチオニン、
(e)約0.1 %(w/v)のポリソルベート80、ならびに
(f)約23.27 mMの塩化ナトリウムを含み、pHが約5.0である、皮下投与用もしくは静脈内投与用の水性医薬組成物またはその製剤であって、
ここで、当該抗PD-1/CD3二重特異性抗体が、
(i)PD-1に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖、ならびに
(ii)CD3に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖からなり、
(α)前項(i)の重鎖が、配列番号5のアミノ酸配列からなり、
(β)前項(ii)の重鎖が、配列番号6のアミノ酸配列からなり、ならびに
(γ)前項(i)および前項(ii)の軽鎖がともに、配列番号7のアミノ酸配列からなる当該二重特異性抗体である、当該水性医薬組成物またはその製剤;
[77] (a)約100 mg/mLの抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)約14.6~約43.8 mM(好ましくは、約18~約22 mM)の酢酸緩衝剤、
(c)約10~約207.9 mM(好ましくは、約172~約193 mM)のトレハロース、
(d)約5~約20 mM(好ましくは、約5~約15 mM)のL-メチオニン、
(e)約0.05~約0.3 %(w/v)(好ましくは、約0.08~約0.12 %(w/v))のポリソルベート80、ならびに
(f)約1.0~約25.7 mM(好ましくは、約19.6~約25.7 mM)の塩化ナトリウムを含み、pHが約4.9~約5.1である、皮下投与用の水性医薬組成物またはその製剤であって、
ここで、当該抗PD-1/CD3二重特異性抗体が、
(i)PD-1に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖、ならびに
(ii)CD3に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖からなり、
(α)前項(i)の重鎖が、配列番号5のアミノ酸配列からなり、
(β)前項(ii)の重鎖が、配列番号6のアミノ酸配列からなり、ならびに
(γ)前項(i)および前項(ii)の軽鎖がともに、配列番号7のアミノ酸配列からなる当該二重特異性抗体である、当該水性医薬組成物またはその製剤;
[78] (a)約100 mg/mLの抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)約20.07 mMの酢酸緩衝剤、
(c)約182.38 mMのトレハロース、
(d)約10.05 mMのL-メチオニン、
(e)約0.1 %(w/v)のポリソルベート80、ならびに
(f)約23.27 mMの塩化ナトリウムを含み、pHが約5.0である、皮下投与用の水性医薬組成物またはその製剤であって、
ここで、当該抗PD-1/CD3二重特異性抗体が、
(i)PD-1に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖、ならびに
(ii)CD3に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖からなり、
(α)前項(i)の重鎖が、配列番号5のアミノ酸配列からなり、
(β)前項(ii)の重鎖が、配列番号6のアミノ酸配列からなり、ならびに
(γ)前項(i)および前項(ii)の軽鎖がともに、配列番号7のアミノ酸配列からなる当該二重特異性抗体である、当該水性医薬組成物またはその製剤;
[79] (a)約0.5 mg/mL、約1 mg/mLまたは約10 mg/mLの抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)(b1)約1.36~約4.08 mg/mL(好ましくは、約1.68~約2.05 mg/mL)の酢酸ナトリウム三水和物、および(b2)前項(b1)の酢酸ナトリウム三水和物の分量に対応して、pHが約4.9~約5.1となる分量の酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)約3.8~約78.7 mg/mL(好ましくは、約65.1~約72.6 mg/mL)のトレハロース二水和物、
(d)約0.75~約3.0 mg/mL(好ましくは、約0.75~約2.25 mg/mL)のL-メチオニン、
(e)約0.5~約3.0 mg/mL(好ましくは、約0.8~約1.2 mg/mL)のポリソルベート80、ならびに
(f)約0.06~約1.5 mg/mL(好ましくは、約1.15~約1.5 mg/mL)の塩化ナトリウムを含み、pHが約4.9~約5.1である、皮下投与用もしくは静脈内投与用の水性医薬組成物またはその製剤であって、
ここで、当該抗PD-1/CD3二重特異性抗体が、
(i)PD-1に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖、ならびに
(ii)CD3に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖からなり、
(α)前項(i)の重鎖が、配列番号5のアミノ酸配列からなり、
(β)前項(ii)の重鎖が、配列番号6のアミノ酸配列からなり、ならびに
(γ)前項(i)および前項(ii)の軽鎖がともに、配列番号7のアミノ酸配列からなる当該二重特異性抗体である、当該水性医薬組成物またはその製剤;
[80] (a)約0.5 mg/mL、約1 mg/mLまたは約10 mg/mLの抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)約1.9 mg/mL(具体的には、約1.87 mg/mL)の酢酸ナトリウム三水和物および約0.4 mg/mL(具体的には、約0.38 mg/mL)の酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)約69 mg/mLのトレハロース二水和物、
(d)約1.5 mg/mLのL-メチオニン、
(e)約1.0 mg/mLのポリソルベート80、ならびに
(f)約1.4 mg/mL(具体的には、約1.36 mg/mL)の塩化ナトリウムを含み、pHが約5.0である、皮下投与用もしくは静脈内投与用の水性医薬組成物またはその製剤であって、
ここで、当該抗PD-1/CD3二重特異性抗体が、
(i)PD-1に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖、ならびに
(ii)CD3に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖からなり、
(α)前項(i)の重鎖が、配列番号5のアミノ酸配列からなり、
(β)前項(ii)の重鎖が、配列番号6のアミノ酸配列からなり、ならびに
(γ)前項(i)および前項(ii)の軽鎖がともに、配列番号7のアミノ酸配列からなる当該二重特異性抗体である、当該水性医薬組成物またはその製剤;
[81] (a)約100 mg/mLの抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)(b1)約1.36~約4.08 mg/mL(好ましくは、約1.68~約2.05 mg/mL)の酢酸ナトリウム三水和物、および(b2)前項(b1)の酢酸ナトリウム三水和物の分量に対応して、pHが約4.9~約5.1となる分量の酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)約3.8~約78.7 mg/mL(好ましくは、約65.1~約72.6 mg/mL)のトレハロース二水和物、
(d)約0.75~約3.0 mg/mL(好ましくは、約0.75~約2.25 mg/mL)のL-メチオニン、
(e)約0.5~約3.0 mg/mL(好ましくは、約0.8~約1.2 mg/mL)のポリソルベート80、ならびに
(f)約0.06~約1.5 mg/mL(好ましくは、約1.15~約1.5 mg/mL)の塩化ナトリウムを含み、pHが約4.9~約5.1である、皮下投与用の水性医薬組成物またはその製剤であって、
ここで、当該抗PD-1/CD3二重特異性抗体が、
(i)PD-1に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖、ならびに
(ii)CD3に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖からなり、
(α)前項(i)の重鎖が、配列番号5のアミノ酸配列からなり、
(β)前項(ii)の重鎖が、配列番号6のアミノ酸配列からなり、および
(γ)前項(i)および前項(ii)の軽鎖がともに、配列番号7のアミノ酸配列からなる当該二重特異性抗体である、当該水性医薬組成物またはその製剤;
[82](a)約100 mg/mLの抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)約1.9 mg/mL(具体的には、約1.87 mg/mL)の酢酸ナトリウム三水和物および約0.4 mg/mL(具体的には、約0.38 mg/mL)の酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)約69 mg/mLのトレハロース二水和物、
(d)約1.5 mg/mLのL-メチオニン、
(e)約1.0 mg/mLのポリソルベート80、ならびに
(f)約1.4 mg/mL(具体的には、約1.36 mg/mL)の塩化ナトリウムを含み、pHが約5.0である、皮下投与用の水性医薬組成物またはその製剤であって、
ここで、当該抗PD-1/CD3二重特異性抗体が、
(i)PD-1に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖、ならびに
(ii)CD3に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖からなり、
(α)前項(i)の重鎖が、配列番号5のアミノ酸配列からなり、
(β)前項(ii)の重鎖が、配列番号6のアミノ酸配列からなり、ならびに
(γ)前項(i)および前項(ii)の軽鎖がともに、配列番号7のアミノ酸配列からなる当該二重特異性抗体である、当該水性医薬組成物またはその製剤;
[83] (a)約2.5 mg、約5 mgまたは約50 mgの抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)(b1)約6.8~約20.4 mg(好ましくは、約8.4~約10.2 mg)の酢酸ナトリウム三水和物、および(b2)前項(b1)の酢酸ナトリウム三水和物の分量に対応して、pHが約4.9~約5.1となる分量の氷酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)約18.9~約393.3 mg(好ましくは、約325~約365.1 mg)のトレハロース二水和物、
(d)約3.75~約15.0 mg(好ましくは、約3.75~約11.25 mg)のL-メチオニン、
(e)約2.5~約15.0 mg(好ましくは、約4~6 mg)のポリソルベート80、ならびに
(f)約0.29~約7.5 mg(好ましくは、約5.8~約7.5 mg)の塩化ナトリウムを含み、pHが約4.9~約5.1であり、単位製剤当たりの容量が約5 mLである、皮下投与用もしくは静脈内投与用の水性医薬組成物またはその製剤であって、
ここで、当該抗PD-1/CD3二重特異性抗体が、
(i)PD-1に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖、ならびに
(ii)CD3に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖からなり、
(α)前項(i)の重鎖が、配列番号5のアミノ酸配列からなり、
(β)前項(ii)の重鎖が、配列番号6のアミノ酸配列からなり、ならびに
(γ)前項(i)および前項(ii)の軽鎖がともに、配列番号7のアミノ酸配列からなる当該二重特異性抗体である、当該水性医薬組成物またはその製剤;
[84] (a)約2.5 mg、約5 mgまたは約50 mgの抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)約9.4 mg(具体的には、約9.35 mg)の酢酸ナトリウム三水和物および約1.9 mgの氷酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)約345 mgのトレハロース二水和物、
(d)約7.5 mgのL-メチオニン、
(e)約5.0 mgのポリソルベート80、ならびに
(f)約6.8 mgの塩化ナトリウムを含み、pHが約5.0であり、単位製剤当たりの容量が約5 mLである、皮下投与用もしくは静脈内投与用の水性医薬組成物またはその製剤であって、
ここで、当該抗PD-1/CD3二重特異性抗体が、
(i)PD-1に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖、ならびに
(ii)CD3に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖からなり、
(α)前項(i)の重鎖が、配列番号5のアミノ酸配列からなり、
(β)前項(ii)の重鎖が、配列番号6のアミノ酸配列からなり、ならびに
(γ)前項(i)および前項(ii)の軽鎖がともに、配列番号7のアミノ酸配列からなる当該二重特異性抗体である、当該水性医薬組成物またはその製剤;
[85](a)約1 mgの抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)(b1)約2.72~約8.16 mg(好ましくは、約3.36~約4.1 mg)の酢酸ナトリウム三水和物、および(b2)前項(b1)の酢酸ナトリウム三水和物の分量に対応して、pHが約4.9~約5.1となる分量の氷酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)約7.6~約157.4 mg(好ましくは、約130.2~約145.2 mg)のトレハロース二水和物、
(d)約1.5~約6.0 mg(好ましくは、約1.5~約4.5 mg)のL-メチオニン、
(e)約1.0~約6.0 mgのポリソルベート80、ならびに
(f)約0.12~約3.0 mg(好ましくは、約2.3~約3.0 mg)の塩化ナトリウムを含み、pHが約4.9~約5.1であり、単位製剤当たりの容量が約2 mLである、皮下投与用もしくは静脈内投与用の水性医薬組成物またはその製剤であって、
ここで、当該抗PD-1/CD3二重特異性抗体が、
(i)PD-1に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖、ならびに
(ii)CD3に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖からなり、
(α)前項(i)の重鎖が、配列番号5のアミノ酸配列からなり、
(β)前項(ii)の重鎖が、配列番号6のアミノ酸配列からなり、ならびに
(γ)前項(i)および前項(ii)の軽鎖がともに、配列番号7のアミノ酸配列からなる当該二重特異性抗体である、当該水性医薬組成物またはその製剤;
[86](a)約1 mgの抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)約3.7 mg(具体的には、約3.74 mg)の酢酸ナトリウム三水和物および約0.8 mg(具体的には、約0.76 mg)の氷酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)約138 mgのトレハロース二水和物、
(d)約3.0 mgのL-メチオニン、
(e)約2.0 mgのポリソルベート80、ならびに
(f)約2.7 mg(具体的には、約2.72 mg)の塩化ナトリウムを含み、pHが約5.0であり、単位製剤当たりの容量が約2 mLである、皮下投与用もしくは静脈内投与用の水性医薬組成物またはその製剤であって、
ここで、当該抗PD-1/CD3二重特異性抗体が、
(i)PD-1に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖、ならびに
(ii)CD3に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖からなり、
(α)前項(i)の重鎖が、配列番号5のアミノ酸配列からなり、
(β)前項(ii)の重鎖が、配列番号6のアミノ酸配列からなり、ならびに
(γ)前項(i)および前項(ii)の軽鎖がともに、配列番号7のアミノ酸配列からなる当該二重特異性抗体である、当該水性医薬組成物またはその製剤;
[87] (a)約100 mgの抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)(b1)約1.36~約4.08 mg(好ましくは、約1.68~約2.05 mg)の酢酸ナトリウム三水和物、および(b2)前項(b1)の酢酸ナトリウム三水和物の分量に対応して、pHが約4.9~約5.1となる分量の氷酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)約3.8~約78.7 mg(好ましくは、約65.1~約72.6 mg)のトレハロース二水和物、
(d)約0.75~約3.0 mg(好ましくは、約0.75~約2.25 mg)のL-メチオニン、
(e)約0.5~約3.0 mgのポリソルベート80、ならびに
(f)約0.06~約1.5 mg(好ましくは、約1.15~約1.5 mg)の塩化ナトリウムを含み、pHが約4.9~約5.1であり、単位製剤当たりの容量が約1 mLである、皮下投与用の水性医薬組成物またはその製剤であって、
ここで、当該抗PD-1/CD3二重特異性抗体が、
(i)PD-1に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖、ならびに
(ii)CD3に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖からなり、
(α)前項(i)の重鎖が、配列番号5のアミノ酸配列からなり、
(β)前項(ii)の重鎖が、配列番号6のアミノ酸配列からなり、および
(γ)前項(i)および前項(ii)の軽鎖がともに、配列番号7のアミノ酸配列からなる当該二重特異性抗体である、当該水性医薬組成物またはその製剤;
[88](a)約100 mgの抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、
(b)約1.9 mg(具体的には、約1.87 mg)の酢酸ナトリウム三水和物および約0.4 mg(具体的には、約0.38 mg)の氷酢酸からなる酢酸緩衝剤、
(c)約69 mgのトレハロース二水和物、
(d)約1.5 mgのL-メチオニン、
(e)約1.0 mgのポリソルベート80、ならびに
(f)約1.4 mg(具体的には、約1.36 mg)の塩化ナトリウムを含み、pHが約5.0であり、単位製剤当たりの容量が約1 mLである、皮下投与用の水性医薬組成物またはその製剤であって、
ここで、当該抗PD-1/CD3二重特異性抗体が、
(i)PD-1に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖、ならびに
(ii)CD3に特異的に結合する抗原結合部位を構成する重鎖および軽鎖からなり、
(α)前項(i)の重鎖が、配列番号5のアミノ酸配列からなり、
(β)前項(ii)の重鎖が、配列番号6のアミノ酸配列からなり、ならびに
(γ)前項(i)および前項(ii)の軽鎖がともに、配列番号7のアミノ酸配列からなる当該二重特異性抗体である、当該水性医薬組成物またはその製剤;
[89] 導電率が、約2.6~約3.1 mS/cmである、前項[1]~[88]の何れか一項記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[90] 抗体(好ましくは、抗PD-1/CD3二重特異性抗体)を有効成分として含み、さらに、緩衝剤(好ましくは、酢酸緩衝剤)、トレハロース、酸化防止剤(好ましくは、L-メチオニン)、ポリソルベート80を含み、導電率が約2.6~約3.1 mS/cmである、皮下投与用もしくは静脈内投与用の水性医薬組成物またはその製剤;
[91] 導電率が、約2.8 mS/cmである、前項[1]~[90]の何れか一項記載の水性医薬組成物またはその製剤;
[92] 前項[75]、[76]、[79]、[80]、[83]~[86]および[89]~[91]の何れか一項記載の水性医薬組成物またはその製剤と生物学的同等性を示し、同項記載の抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含有する、静脈内投与用の水性医薬組成物またはその製剤;
[93] 前項[75]~[91]の何れか一項記載の水性医薬組成物またはその製剤と生物学的同等性を示し、同項記載の抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含有する、皮下投与用の水性医薬組成物またはその製剤;
[94] 生物学的同等性が、以下の(i)および(ii)の差の90%信頼区間がlog(0.80)~log(1.25)の範囲にある関係である、前項[92]記載の水性医薬組成物またはその製剤:
(i)その投与による生物学的同等性判定パラメータの対数値の平均値、および
(ii)前項[75]、[76]、[79]、[80]、[83]~[86]および[89]~[91]の何れか一項記載の水性医薬組成物またはその製剤の投与による生物学的同等性判定パラメータの対数値の平均値;
[95] 生物学的同等性が、以下の(i)および(ii)の差の90%信頼区間がlog(0.80)~log(1.25)の範囲にある関係である、前項[93]記載の水性医薬組成物またはその製剤:
(i)その投与による生物学的同等性判定パラメータの対数値の平均値、および
(ii)前項[75]~[91]の何れか一項記載の水性医薬組成物またはその製剤の投与による生物学的同等性判定パラメータの対数値の平均値;
【0073】
[1-1] 前項[1]~[91]、[93]および[95]の何れか一項記載の皮下投与用の水性医薬組成物が予め充填されたプレフィルドシリンジまたはカートリッジ;
[1-2] 前項[1-1]記載のカートリッジが充填されたインジェクターペン、オートインジェクターまたは無針装置;
[1-3] 前項[1]~[95]の何れか一項記載の水性医薬組成物(好ましくは、静脈内投与用)が封入されたバイアル容器またはアンプル容器;
【0074】
[2-1] (i)前項[1]~[95]の何れか一項記載の水性医薬組成物もしくはその製剤、(ii)前項[1-1]記載のプレフィルドシリンジまたはカートリッジ、(iii)前項[1-2]記載のインジェクターペン、オートインジェクターもしくは無針装置または(iv)前項[1-3]記載のバイアル容器もしくはアンプル容器の、自己免疫疾患もしくは移植片対宿主病(GVHD)あるいは血液がんの予防、症状進展抑制、再発抑制および/または治療における使用;
[2-2] 自己免疫疾患が、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、クローン病、潰瘍性大腸炎または重症筋無力症である、前項[2-1]記載の使用;ならびに
[2-3] 血液がんが、末梢性T細胞リンパ腫または皮膚T細胞性リンパ腫である、前項[2-1]記載の使用。
【0075】
本明細書において、明示的に引用されるすべての特許文献および非特許文献もしくは参考文献の内容は、全て本明細書の一部としてここに引用し得る。
【0076】
本発明を以下の実施例によってさらに詳しく説明するが、本発明の範囲はこれに限定されない。本発明の記載に基づき種々の変更または修飾が当業者には可能であり、これらの変更または修飾も本発明に含まれる。
【実施例
【0077】
実施例1:処方スクリーニング
本発明にかかる抗PD-1/CD3二重特異性抗体である抗体αに最適な処方の基本条件の探索を行った。表1および表2の条件で、抗体濃度が各々20 mg/mLとなるよう、試料B1~B30の30種を調製した。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
当該30種の試料について、拡散相互作用パラメータ(KD)、凝集開始温度(Tagg)および溶解度の測定を各々実施した。また、加速・保管試験も実施し、これらについては、濃度および濁度の測定ならびにSEC-HPLCでのモノマー残量の測定を実施した。
【0081】
拡散相互作用パラメータは、各試料の抗体濃度(1.25, 2.5, 5.0, 10および15 mg/mL)について25℃下で測定および解析を行い、各処方に対して拡散係数(Diffusion Coefficient, μm/s)をプロットすることで算出した。
【0082】
凝集開始温度は、各試料の抗体濃度1 mg/mLについて、25~80℃まで昇温することにより測定および解析を行った。各処方に対して粒径(nm)をプロットすることで、25℃下での平均粒径から10%平均粒径が大きくなったときの値を凝集開始温度とした。
【0083】
なお、拡散相互作用パラメータおよび凝集開始温度の測定には、プレートリーダー(DynaPro PlateReaderII(WYATT Technology))および解析ソフト(Dynamics V7)が使用された。
【0084】
溶解度の測定は、2 mg/mLの各試料を硫安濃度0.1 M間隔で1.1 Mから2.0 Mまでの10点を含む溶媒と反応させた後、15,000 gで30分間遠心した。遠心後の上清について、280 nmの吸光度を測定した。各試料の硫安濃度に対する溶解度(%)をプロットし、溶解度50%の硫安濃度を比較した。なお、吸光度の測定にはプレートリーダー(INFINITE 200 PRO M PLEX(TECAN))が使用された。
【0085】
保管・加速試験は、各試料(1 mg/mL)を0.22 μmフィルターにて滅菌し、バイアルに分注して実施した。
【0086】
保管試験は、4℃下および20℃下で、各々0週間および4週間保管した。保管したサンプルについて濃度、濁度、SEC-HPLC分析での評価を実施した。測定用のサンプルは何れも15,000 gで30分間遠心分離した後の上清を用いた。濃度は、280 nmの吸光度(光路長2 mm)をもとに算出した。濁度は、500 nmの吸光度(光路長1 cm)をもとに算出した。SEC-HPLCは、Alliance HPLCシステム(Waters)を用いて、表3に示す条件で実施した。
【0087】
加速試験は、20℃下で3日間、500回転/分で振とうした。評価は、保管試験と同様に実施した。
【0088】
【表3】
【0089】
拡散相互作用パラメータ(KD)、凝集開始温度(Tagg)および溶解度の計算および測定結果を、降順に、各々表4に示す。また、保管試験(4℃下にて4週間)の結果を表5に、保管試験(20℃下にて4週間)の結果を表6に、加速試験(20℃下で3日間振とう)の結果を表7に各々示す。各表中、試料番号1~30は、表1および表2中の試料B1~B30に対応する番号である。
【0090】
【表4】
【0091】
【表5】
【0092】
【表6】
【0093】
【表7】
【0094】
コロイド安定性、熱安定性、振とうおよび保管によるモノマー減少率を総合的に判断した結果、次の評価に進める処方として、試料4(20 mM酢酸緩衝液(pH 5.0))、試料5(20 mM 酢酸緩衝液(pH 5.0)、20 mM塩化ナトリウム)および試料22(20 mMヒスチジン緩衝液(pH 6.0))を選択した。なお、表1および表2に示された試料のうち、酢酸緩衝液の濃度として示される「20 mM」は簡略化された表記であり、正確には、20.07 mMである。また、表8~表11、表27、表33、表38、表45および表51ならびにそれらに対応する実施例1~10に記載中の「20 mM 酢酸緩衝液」の表記についても同様である。
【0095】
実施例2:添加剤の評価(1)
実施例1の評価にて選択された試料番号4、5および22の各処方に、糖(スクロース、トレハロース、D-マンニトールおよびソルビトール)を各々添加した処方S1~S24の24種を表8のとおり調製した。
【0096】
【表8】
【0097】
24種の試料について、拡散相互作用パラメータ(KD)および凝集開始温度(Tagg)の測定を実施した。
【0098】
拡散相互作用パラメータは、各試料の抗体濃度(1, 2, 4, 8および 10 mg/mL)について25℃下で測定および解析を行い、各処方に対して拡散係数(Diffusion Coefficient, μm/s)をプロットすることで算出した。
【0099】
凝集開始温度は、各試料の抗体濃度1 mg/mLについて25~80℃まで昇温することにより測定および解析を行った。各処方に対して、粒径(nm)をプロットすることで25℃下での平均粒径から10%平均粒径が大きくなったときの値を凝集開始温度とした。
【0100】
各試料について算出したKD値を降順に表9に示す。
【0101】
【表9】
【0102】
各試料について測定した凝集開始温度(Tagg)を降順に表10に示す。
【0103】
【表10】
【0104】
拡散相互作用パラメータ(KD)および凝集開始温度(Tagg)を総合的に判断した結果、次の評価に進める処方として、試料S3(20 mM酢酸緩衝液(pH 5.0)、285 mMトレハロース)、S5(20 mM酢酸緩衝液(pH 5.0)、285 mM D-マンニトール)およびS23(20 mMヒスチジン緩衝液(pH 6.0)、285 mM ソルビトール)を選択した。なお、塩化ナトリウムを含む酢酸緩衝液は何れもスコアが低いため、塩化ナトリウムを含まない処方が選択された。
【0105】
実施例3:添加剤の評価(2)
実施例2の評価にて選択された試料S3、S5およびS23の各処方に、ポリソルベート(PS)(ポリソルベート80(PS80)およびポリソルベート20(PD20))を各々添加した試料E1~E15の15種を表11のとおり調製した。
【0106】
【表11】
【0107】
15種の試料(1 mg/mL)を0.22 μmフィルターにて滅菌し、バイアルに分注後、保管試験、加速試験および凍結融解試験を各々実施した。
【0108】
保管試験は、各々20℃および40℃下にて4週間保管した。保管した試料について目視評価、濃度、濁度およびSEC-HPLC分析での評価を実施した。評価用の試料は何れも15,000 gで30分間遠心分離した上清を用いた。濃度は、280 nmの吸光度(光路長2 mm)をもとに算出した。濁度は、500 nmの吸光度(光路長1 cm)をもとに算出した。SEC-HPLC分析は、表2に示す条件で実施した。
【0109】
加速試験は、20℃下で3日間、500回/分で振とうした。
【0110】
凍結融解試験は、凍結(-80℃下にて10分間、25℃下にて10分間)を3回繰り返した。
【0111】
調製直後の試料はいずれも透明であり、可視粒子は認められなかった。
【0112】
保管試験(20℃下にて4週間)の結果を表12に、保管試験(40℃下にて4週間)の結果を表13に、加速試験(20℃下にて3日間振とう)の結果を表14に、凍結融解試験(-80℃下にて10分間、25℃下にて10分間)の結果を表15に各々示す。
【0113】
【表12】
【0114】
【表13】
【0115】
【表14】
【0116】
【表15】
【0117】
表14に示す加速試験の結果から、ポリソルベートを含まない処方である試料E1、E6およびE11において明らかに凝集安定性が低く、ポリソルベートは必須であることが確認された。さらに、本実施例の評価を総合的に判断した結果、次の評価に進める処方として、試料E3(20 mM 酢酸緩衝液(pH 5.0)、285 mM トレハロース、0.1% PS80)、E4(20 mM 酢酸緩衝液(pH 5.0)、285 mM トレハロース, 0.01% PS20)、E10(20 mM 酢酸緩衝液(pH 5.0)、285 mM D-マンニトール、0.1% PS20)およびE13(20 mMヒスチジン緩衝液(pH 6.0)、285 mM ソルビトール、0.1% PS80)を選択した。
【0118】
実施例4:安定性評価試験(1)
【0119】
実施例3の評価において選択された酢酸処方(20 mM酢酸緩衝液(pH 5.0)、285 mM トレハロース、0.1 % PS80)およびヒスチジン処方(20 mM ヒスチジン緩衝液(pH 6.0)、0.1 % PS80)各々について、100 mg/mLの抗体αを含む試料を調製した。
【0120】
同試料を0.22 μmフィルターにて滅菌し、1 mLずつ滅菌済みのバイアルに分注した後、表16に示す各条件に付したのちの各試料の安定性に関する評価試験を実施した。
【0121】
【表16】
【0122】
上表に示す各条件に付した試料について、(a)pH測定、(b)抗体濃度測定、(c)濁度測定、(d)SEC-HPLC(サイズ排除クロマトグラフィー)解析、(e)SDS-PAGE解析、(f)IE-HPLC(イオン交換クロマトグラフィー)解析、(g)粘度測定、(h)FIA(フローイメージング解析)および(i)摺動抵抗測定による評価を各々実施した。
(a)pH測定には、pHメーター(LAQUA F-74(HORIBA))および微量試料測定用電極(マイクロ Tou pH 電極(HORIBA))が使用された。
(b)抗体濃度は、各試料を15,000 g、30分間遠心した上清について、280 nmの吸光度を1 cmまたは2 mmの光路長で測定された。なお、各試料について、吸光度が0.1~1.0になるよう希釈して測定され、抗体の吸光係数ε280 = 1.51(mg/mL)-1cm-1から濃度が算出された。なお、測定には、分光光度計(BioSpectormeter(Eppendorf))が使用された。
(c)濁度測定においては、光路長1 cmで500 nmの吸光度を測定した。なお、測定には、分光光度計が使用された。
(d)SEC-HPLC解析は、表3に示した条件で実施された。
(e)SDS-PAGE解析は、各試料を15,000 g、30分間遠心分離した上清を用い、還元下(100 mM DTT)および非還元下(-DTT)において、2 μgの試料を、4~12% Bis-Trisゲル上で100 V、約30分間電気泳動して実施された。
(f)IE-HPLC解析は、表17に示す条件で実施された。
【0123】
【表17】
【0124】
(g)粘度測定では、試料を15,000 g、30分間遠心分離した上清について、20℃下での粘度が測定された。なお、密度は1.0 g/cmとし、相対粘度が決定された。
(h)摺動抵抗測定:測定試料として、15,000 g、30分間遠心分離した上清を用いた。29G staked 1mL COP syringeに試料を400 μLずつ充填し、5時間程度静置した。オートグラフを用い、6 mL/分でシリンジを押し出し、摺動抵抗値が測定された。なお、摺動抵抗測定は、初期状態の試料についてのみ実施した。
(i)FIAにおいては、フローイメージング装置を用いて、150 μLの試料を流速0.05 mL/分で測定し、1 μm以上のサイズの凝集体について評価された。
【0125】
(安定性評価結果)
安定性評価試験前後の試料について、目視での状態確認が実施された。初期状態の試料では、酢酸処方の試料およびヒスチジン処方の試料ともに黄色を呈し、4週間および12週間保管ならびに3日間振とうした各条件下において、明らかな色の変化は見られなかった。ヒスチジン処方の試料に関して、5℃下での4週間保管後ならびに5℃および25℃下で各々12週間保管した後において微粒子が確認された。また、酢酸処方およびヒスチジン処方の試料ともに、40℃下での4週間保管後において微粒子は見られなかったが、全体が白く濁っていた。
(a)安定性評価試験後のすべての試料において、顕著なpHの変化は認められなかった。
(b)安定性試験後のすべての試料において、大きな濃度の変化は見られなかった。
(c)安定性試験前後の濁度の測定結果を表18に示す。
【0126】
【表18】
【0127】
4週間保管後では、初期状態(表中の「Initial」)の試料と比較して、酢酸処方の試料では、40℃下での保管により、ヒスチジン処方の試料では、25℃および40℃下での保管により、20%以上濁度が上昇した。酢酸処方の試料は、初期状態の試料と比較して、40℃下での12週間保管により、50%程度濁度が上昇した。ヒスチジン処方の試料では、5℃、25℃および40℃下での保管により、初期状態の試料と比べて、90%以上濁度が上昇した。
(d)安定性試験前後のSEC-HPLC解析の測定結果を表19に示す。
【0128】
【表19】
【0129】
SEC-HPLC解析において、酢酸処方の試料では、40℃下にて4週間および12週間保管した何れにおいても、モノマー(Monomer area)が3~5%減少した。ヒスチジン処方の試料では、25℃および40℃下での12週間保管により、同抗体に由来するモノマーが2~5%および4%それぞれ減少した。これらモノマーの減少分は、抗体凝集による高分子種(HMWS)等に変化したと推測された。振とうおよび凍結融解による影響はほとんど見られなかった。
(e)安定性試験前後のSDS-PAGE解析から、還元条件および非還元条件の何れによっても、初期状態および各試料において、標品と同様のバンドが観察され、精製、濃縮などの試料調製で分解が生じていないことが確認された。
(f)安定性試験前後のIE-HPLC分析の結果を表20に示す。
【0130】
【表20】
【0131】
酢酸処方およびヒスチジン処方の試料ともに、5℃下での4週間保管、12週間保管、振とうならびに凍結融解の何れの条件下において、その影響はほとんど認められなかった。
【0132】
25℃下での4週間保管の条件下では、ヒスチジン処方の試料において、酸性分子種が3%増加し、中性分子種が3%減少した。
【0133】
40℃下での4週間保管の条件下では、酢酸処方の試料において、酸性分子種が15%増加し、中性分子種が19%減少し、塩基性分子種が5%増加した。ヒスチジン処方の試料においても、酸性分子種が15%増加し、中性分子種が15%減少した。
【0134】
25℃下での12週間保管の条件下では、酢酸処方の試料において、酸性分子種が9%増加し、中性分子種が9%減少した。ヒスチジン処方の試料においても、酸性分子種が8%増加し、中性分子種が8%減少した。
【0135】
40℃での12週間保管の条件下では、酢酸処方の試料において、酸性分子種が33%増加し、中性分子種が37%減少し、塩基性分子種が4%増加した。ヒスチジン処方の試料においても、酸性分子種が32%増加し、中性分子種が32%減少した。
【0136】
中性分子種の減少分は、主に、酸化により酸性分子種に変化したと考えられた。
【0137】
25℃下での4週間保管の結果から、酢酸処方の方が、安定性が高いと考えられた。
(g)安定性評価試験前後での粘度測定の結果、何れの処方も、安定性評価試験前後において有意な粘度の変化は見られなかった。
【0138】
なお、初期状態の試料の粘度は、酢酸処方の試料が4.41 mPa・s、ヒスチジン処方の試料が4.2 mPa・sと、100 mg/mLの濃度であっても非常に低い値であった。
(h)初期状態の試料での摺動抵抗値測定の結果、酢酸処方およびヒスチジン処方の試料の何れにおいても、非常に低い摺動抵抗値(7.66 Nおよび7.46 N)であった。
(i)安定性評価試験前後の抗体を含む各処方の粒子濃度から、処方液のみの粒子濃度を引いた粒子濃度を表21に示す。
【0139】
【表21】
【0140】
酢酸処方の試料は、40℃下での12週間保管の条件において、ヒスチジン処方の試料では、25℃下での12週間保管の条件において、最も粒子濃度が高かった。
【0141】
評価された何れの条件においても、酢酸処方と比較して、ヒスチジン処方の粒子濃度は、数十から数千倍高かった。
【0142】
本実施例に示す安定性評価の結果から、本発明にかかる抗体αの処方としては、酢酸処方(20 mM酢酸緩衝液(pH 5.0)、285 mM トレハロース、0.1 % PS80)の方が適していると考えられた。
【0143】
実施例5:添加剤の評価(3)
実施例4の評価に基づき選択された酢酸処方(20 mM酢酸緩衝液(pH 5.0)、285 mM トレハロース、0.1 % PS80)について、さらに最適化検討を実施した。
【0144】
導電率の安定性を確保するため、塩濃度の検討を実施した。
【0145】
選択された同酢酸処方(20 mM酢酸緩衝液(pH 5.0)、285 mM トレハロース、0.1 % PS80)に、塩化ナトリウムを添加した試料N1~N8の8種を表22のとおり調製した。
【0146】
【表22】
【0147】
8種の同試料を0.22 μmフィルターにて滅菌し、1または5 mLずつ滅菌済みのバイアルに分注して、表23に示す各条件にて安定性評価を実施した。
【0148】
【表23】
【0149】
上表に示す各条件に付した試料について、(a)SEC-HPLC解析、(b)IE-HPLC解析、(c)RP-HPLC(逆相クロマトグラフィー)解析、(d)結合活性、(e)FIA、および(f)ペプチドマップ解析(液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)による変性部位の解析)の評価を各々実施した。
【0150】
なお、(a)SEC-HPLC解析は、表24の条件で実施された。
【0151】
【表24】
【0152】
(b)IE-HPLC解析は、表25の条件で実施された。
【0153】
【表25】
【0154】
(c)RP-HPLC解析は、表26の条件で実施された。
【0155】
なお、(蛍光強度値)/(UV280 nm吸光エリア値)×100の値を着色指標とした。標準品との着色指標の比((試料の着色指標)/(標準品の着色指標))を試料中の着色体量を示す指標値とした。
【0156】
【表26】
【0157】
(d)PD-1およびCD3への結合活性の測定は、表面プラズモン共鳴法(SPR)により実施された。
(e)FIAにおいては、フローイメージング装置を用いて、500 μLの試料を流速0.1 mL/分で測定し、2 μm以上のサイズの凝集体が評価された。
(f)ペプチドマップ解析は、LC-MSを用いて実施された。
(保管試験)
(a)SEC-HPLC解析にて評価した、保管試験前後での高分子種(HMWS)の割合を表27に示す。いずれの濃度においても、5℃下での12週間保管では、HMWSの顕著な増加は認められなかった。25℃下においては、抗体濃度が20 mg/mLの処方では、HMWSの増加は認められなかったものの、100 mg/mLの処方では、HMWSの直線的な増加傾向が認められた。一方、導電率による挙動の差は認められなかった。40℃下では、いずれの濃度においてもHMWSは増加したが、20 mg/mLの処方では、導電率の上昇に伴い、HMWSが高まる傾向が認められた。5℃および25℃下では、安定な処方であることが確認された。
【0158】
【表27】
【0159】
(b)IE-HPLC解析にて評価した、保管試験前後での酸性分子種の割合を表28に示す。
【0160】
【表28】
【0161】
40℃下では、酸性分子種が増大する傾向が認められたが、5℃および25℃下では、酸性分子種の増大は認められず、安定な処方であることが確認された。また、導電率による影響は認められなかった。
(c)RP-HPLC解析にて評価した、保管試験前後での着色体の割合を表29に示す。
【0162】
【表29】
【0163】
5℃下では変化がなかったものの、25℃および40℃下では、着色体割合の上昇が認められた。導電率の違いによる差は認められなかった。
(d)SPRにて評価した、保管試験前後でのPD-1への結合活性の結果を表30に、CD3結合活性の結果を表31に各々示す。各表中の数値は、抗体αの標準品に対する比活性(%)を表す。5℃および25℃下では、PD-1、CD3ともに結合活性の低下は認められなかった。一方、40℃下では、PD-1への結合活性の低下が認められ、さらに、抗体濃度が20 mg/mLにおいては、その結合活性の低下は顕著であった。
【0164】
【表30】
【0165】
【表31】
【0166】
(e)FIAにて、試料N5およびN8の保管試験後の粒子数を各々評価したが、試料間で微粒子数および最大粒子数に有意な差は認められなかった。
(振とう試験)
(a)SEC-HPLCにて、振とう試験前後におけるHMWSの割合を評価したが、すべての試料および条件において、HMWSの顕著な増加は認められなかった。
(b)IE-HPLCにて、振とう試験前後における酸性分子種の割合を評価したが、すべての試料および条件において、酸性分子種の顕著な増加は認められなかった。
(c)RP-HPLCにて、振とう試験前後における着色体の割合を評価したが、すべての試料および条件において、着色体の顕著な増加は認められなかった。
(d)SPRにて、振とう試験前後におけるPD-1およびCD3に対する結合活性を各々評価したが、試料間において結合活性の低下に有意な差は認められなかった。
(e)FIAにて、試料N5およびN8の振とう試験後における粒子数を評価したが、何れについても、振とうストレスによる微粒子数および最大粒子径の増加は認められなかった。
(凍結融解)
(a)SEC-HPLCにて、凍結融解試験前後でのHMWSの割合を評価したが、すべての試料においてHMWSの割合に大きな変化はなく、凍結融解ストレスに安定であることが確認された。
(b)IE-HPLCにて、凍結融解試験前後での酸性分子種の割合を評価したが、すべての試料において酸性分子種の割合に大きな変化はなく、同様に、凍結融解ストレスに安定であることが確認された。
(c)RP-HPLCにて、凍結融解試験前後での着色体の割合を評価したが、すべての試料において着色体の割合にも大きな変化は認められなかった。
(d)SPRにて、凍結融解試験前後でのPD-1およびCD3への結合活性を各々評価したが、すべての試料において結合活性に大きな変化は認められなかった。
(e)FIAにて、試料N5およびN8の凍結融解試験後における粒子数を各々評価したが、何れについても凍結融解ストレスによる微粒子数および最大粒子径の増加は認められなかった。また、評価した試料間に有意な差も認められなかった。
【0167】
(シリンジ通液試験)
SEC-HPLCにて、試料N8のシリンジ通液試験前後におけるHMWSの割合(%)を評価したが、HMWSの生成は認められなかった。
【0168】
(ペプチドマップ解析)
表30に示したように、40℃下での長期保管におけるPD-1への結合活性の低下について、ペプチドマップによる要因解析を行った。代表例として、PD-1に対する相補性決定領域に存在する101番目のメチオニン残基(以下、「Met101」と略記することがある。)への酸化度(%)を表32に示す。5℃および25℃下では、Met101の酸化度は低値を示しており、試料間差は認められなかった。また、抗体濃度が100 mg/mLの場合に比べ、20 mg/mLの場合において顕著な酸化が認められた。図4に示すように、Met101の酸化とPD-1結合活性の低下には相関関係があった。このような酸化が、結合活性低下の原因である可能性が認められた。
【0169】
【表32】
【0170】
実施例6:安定性評価(2)
本発明にかかる抗体αが、低濃度において、安定性が低下する可能性が実施例5において示唆されたため、低濃度域での安定性を評価した。
【0171】
酢酸処方(20 mM酢酸緩衝液(pH 5.0)、285 mM トレハロース、0.1 % PS80、1.25 mg/mL 塩化ナトリウム)に、1および50 mg/mLの抗体αを各々含む試料L1およびL2を表33のとおり調製した。
【0172】
【表33】
【0173】
この2種の試料を0.22 μmフィルターにて滅菌し、1または5 mLずつ滅菌済みのバイアルに分注して、表34に示す条件下にて安定性評価を実施した。
【0174】
【表34】
【0175】
各条件下で保管した試料について、(a)SEC-HPLC解析、(b)IE-HPLC解析および(c)PD-1およびCD3への結合活性の測定を各々実施した。なお、SEC-HPLC解析は、表24に示された条件で実施され、IE-HPLC解析は、表25に示された条件で実施された。PD-1およびCD3への結合活性の測定は、SPRにより行われた。
(a)SEC-HPLCにて評価した、保管前後でのHMWSの割合を表35に示す。何れの処方においても、40℃下での長期保管においてHMWSが大幅に上昇したが、抗体が低濃度のL1において、HMWSの蓄積はより顕著であった。低濃度条件で凝集の可能性が高まることが示唆された。
【0176】
【表35】
【0177】
(b)IE-HPLCにて評価した、保管前後での酸性分子種の割合を表36に示す。何れの濃度においても、40℃下で酸性分子種が増大する傾向が認められ、1 mg/mLの場合の方が酸化の進行が速い傾向が認められた。
【0178】
【表36】
【0179】
(c)SPRにて評価した、保管前後でのPD-1への結合活性の結果を表37に示す。5℃および25℃下では、PD-1、CD3ともに結合活性の低下は認められなかったが、40℃下では両試料ともPD-1への結合活性の低下が顕著であった。PD-1に対する相補性決定部位の酸化により、抗体への酸化が進みやすくなった可能性が考えられた。
【0180】
【表37】
【0181】
実施例7:添加剤の評価(4)
長期保管の影響により、本発明にかかる抗体αの酸化が進行し、PD-1およびCD3への結合活性の低下、特に、PD-1への結合活性の低下が顕著であることが実施例6において示唆された。
【0182】
酢酸処方(20 mM酢酸緩衝液(pH 5.0)、193 mM トレハロース、0.1 % PS80、1.15 mg/mL 塩化ナトリウム)に、抗酸化剤(L-メチオニンまたはDTPA)を添加する検討を実施した。1および20 mg/mLの抗体αを各々含む処方試料A1~A8を表38のとおり調製した。
【0183】
【表38】
【0184】
8種の各試料を0.22 μmフィルターにて滅菌し、1 mLずつ滅菌済バイアルに分注して、表34と同様に安定性の評価を実施した。同評価では、表34において示される条件下で保管した試料について、(a)SEC-HPLC解析、(b)IE-HPLC解析、(c)RP-HPLC解析、(d)PD-1およびCD3への結合活性の測定、および(e)ペプチドマップ解析を各々実施した。なお、SEC-HPLC解析は、表24に示された条件で実施され、IE-HPLC解析は、表25に示された条件で実施され、RP-HPLC解析は、表26に示された条件で実施された。また、PD-1およびCD3への結合活性の測定は、SPRにより行われ、ペプチドマップ解析は、LC-MSを用いて実施された。
(a)SEC-HPLC解析にて評価した、保管前後でのHMWSの割合(%)を表39に示す。抗酸化剤未添加でも、5℃および25℃では変化はなかった。一方で、L-メチオニンを10 mMまたはDTPAを20 μM添加した試料について、40℃下で12週間保管した場合、HMWSの生成が劇的に抑制された。L-メチオニンまたはDTPAのHMWSの生成抑制効果は、抗体濃度1および20 mg/mLにおいても同様に認められた。
【0185】
【表39】
【0186】
(b)IE-HPLC解析にて評価した、保管前後での酸性分子種の割合(%)を表40に示す。抗体濃度1および20 mg/mLの何れにおいても、40℃下で酸性分子種が増大する傾向が認められた。特に、抗体濃度1 mg/mLにおいて、L-メチオニン 10 mMまたはDTPA 20 μMを添加した試料において、酸性分子種の生成を抑制する効果が認められた。
【0187】
【表40】
【0188】
(c)IE-HPLC解析にて評価した、保管前後の着色指標を表41に示す。抗体濃度1および20 mg/mLの何れにおいても、40℃下での着色体の生成を劇的に抑制する効果が認められた。特に、抗体濃度1 mg/mLにおいて、L-メチオニン 10 mMまたはDTPA 20 μMを添加した試料において、着色体の生成を抑制する効果が認められた。
【0189】
【表41】
【0190】
(d)SPRにて評価した、保管前後のPD-1への結合活性(%)の結果を表42に、CD3への結合活性(%)の結果を表43に各々示す。抗酸化剤未添加のまま25℃以上で保管した場合、抗体濃度1および20 mg/mLの何れにおいても、PD-1およびCD3への結合活性の低下がともに認められた。一方で、40℃下では、抗体濃度1および20 mg/mLともに、抗酸化剤の添加により、結合活性低下の劇的な抑制効果が認められた。抗酸化剤の添加により、HMWSおよび酸性分子種の生成が抑制されたことが、結合活性の低下抑制につながったと考えられた。
【0191】
【表42】
【0192】
【表43】
【0193】
(e)表42に示したように、40℃下での長期保管におけるPD-1結合活性の低下について、ペプチドマップによる要因解析を行った。代表例として、PD-1に対する相補性決定領域に存在するメチオニン残基(Met101)の酸化度(%)を表44に示す。抗体濃度1 mg/mL、40℃下での保管において、Met101が高度に酸化されていることを確認した。一方で、抗酸化剤の添加により、Met101の酸化は劇的に抑制されており、さらには、PD-1への結合活性の低下も劇的に抑制されていた。従って、抗酸化剤の添加が、抗体αの安定性向上に極めて有用であることを確認できた。
【0194】
【表44】
【0195】
実施例8:安定性試験(3)
実施例1~7までの検討において、本発明にかかる抗体αが、安定に保管され得る条件を見出した。さらに安定な条件を設定するため、糖の濃度範囲を決定することとした。
【0196】
酢酸処方(20 mM酢酸緩衝液(pH 5.0)、172 mM、182.38 mMもしくは193 mMのトレハロース、0.1 % PS80、1.36 mg/mL 塩化ナトリウム、10 mM L-メチオニン)に、1 mg/mLの抗体αを各々含む試料T1~T3を表45のとおり調製した。なお、表45および表47~59に記載されるトレハロースの濃度である「182 mM」は、「182.38 mM」を略記した表記である。
【0197】
【表45】
【0198】
この2種の試料を0.22 μmフィルターにて滅菌し、1 mLずつ滅菌済みのバイアルに分注して、表46に示す条件下にて安定性評価を実施した。
【0199】
【表46】
【0200】
各条件下で保管した試料について、(a)IE-HPLC解析 、(b)RP-HPLCおよび(c)PD-1およびCD3への結合活性の測定を各々実施した。IE-HPLC解析は、表25に示された条件で実施された。RP-HPLCは表26に示された条件で実施された。PD-1およびCD3への結合活性の測定は、SPRにより行われた。
(a)IE-HPLCにて評価した、保管前後での酸性分子種の割合(%)を表47に示す。何れの処方においても、25℃および40℃下での長期保管において酸性分子種が上昇した。通常の保管温度となる5℃下では安定であった。処方間で差は認められなかった。
【0201】
【表47】
【0202】
(b)RP-HPLCにて評価した、保管前後での着色体の割合を表48に示す。何れの処方においても、40℃下での長期保管において着色体が上昇した。処方間で差は認められなかった。
【0203】
【表48】
【0204】
(C)SPRにて評価した、保管試験前後でのPD-1への結合活性の結果を表49に、CD3結合活性の結果を表50に各々示す。各表中の数値は、抗体αの標準品に対する比活性(%)を表す。いずれの条件においても、PD-1、CD-3への結合活性の大幅な低下は認められなかった。また、処方間でもその差は認められなかった。
【0205】
【表49】
【0206】
【表50】
【0207】
実施例9:安定性試験(4)
実施例1~8までの検討において、本発明にかかる抗体αが、安定に保管され得る条件を見出した。それらを総合して最適と考えられた条件の安定性試験を実施した。
【0208】
酢酸処方(20 mM酢酸緩衝液(pH 5.0)、182.38 mMトレハロース、0.1 % PS80、1.36 mg/mL 塩化ナトリウム、10 mM L-メチオニン)に、1 mg/mLまたは100 mg/mLの抗体αを各々含む試料F1およびF2を表51のとおり調製した。
【0209】
【表51】
【0210】
この2種の試料を0.22 μmフィルターにて滅菌し、1mLずつ滅菌済みのバイアルに分注して、表52に示す条件下にて安定性評価を実施した。
【0211】
【表52】
【0212】
各条件下で保管した試料について、(a)SEC-HPLC、(b)IE-HPLC解析、(c)等電点電気泳動(iCIEF)、(d)RP-HPLC、および(e)PD-1およびCD3への結合活性の測定を各々実施した。SEC-HPLC解析は、表24に示された条件で実施された。IE-HPLC解析は、表25に示された条件で実施された。iCIEFはキャピラリー等電点電気泳動装置により行われた。RP-HPLCは表26に示された条件で実施された。PD-1およびCD3への結合活性の測定は、SPRにより行われた。
(a)SEC-HPLCにて評価した、保管前後でのHMWSの割合を表53に示す。100 mg/mLの濃度においては、25℃および40℃下の条件でHMWSの増加が認められたが、5℃下では顕著な増加は認められなかった。5℃下では安定であると考えられた。
【0213】
【表53】
【0214】
(b)IE-HPLCにて評価した、保管前後での酸性分子種の割合を表54に示す。25℃および40℃下での長期保管条件で酸性分子種の増加が認められたが、5℃下では顕著な増加は認められなかった。5℃下では安定であると考えられた。
【0215】
【表54】
【0216】
(c)iCIEFにて評価した、保管前後での酸性分子種の割合(%)を表55に示す。25℃および40℃下での長期保管条件で酸性分子種の増加が認められたが、5℃下では顕著な増加は認められなかった。5℃下では安定であると考えられた。
【0217】
【表55】
【0218】
(d)RP-HPLCにて評価した、保管前後での着色体の割合を表56に示す。25℃および40℃下での長期保管条件で着色体の増加が認められたが、5℃下では顕著な増加は認められなかった。5℃下では安定であると考えられた。
【0219】
【表56】
【0220】
(e)SPRにて評価した、保管試験前後でのPD-1への結合活性の結果を表57に、CD3結合活性の結果を表58に各々示す。各表中の数値は、標準品に対する比活性(%)を表す。40℃下では、PD-1の結合活性の低下を認めた。一方で、5℃および25℃下では、PD-1およびCD3ともに結合活性の低下は認められず、十分な安定性を有していると考えられた。
【0221】
【表57】
【0222】
【表58】
【0223】
より低濃度での処方安定性を評価するため、酢酸処方(20 mM酢酸緩衝液(pH 5.0)、182.38 mMトレハロース、0.1 % PS80、1.36 mg/mL 塩化ナトリウム、10 mM L-メチオニン)に、0.01 mg/mLから1.0 mg/mLの抗体αを各々含む試料L1からL4を表59のとおり調製した。
【0224】
【表59】
【0225】
この2種の試料を0.22 μmフィルターにて滅菌し、滅菌済みのバイアルに分注して、表60に示す条件下にて安定性評価を実施した。
【0226】
【表60】
【0227】
各条件下で保管した試料について、本実施例の前記評価と同様の分析評価を実施した。
(a)SEC-HPLCにて評価した、保管前後でのHMWSの割合を表61に示す。0.5 mg/mLおよび1.0 mg/mLの濃度において、5、25および40 ℃の条件下では、HMWSの割合の増加が認められなかった。
【0228】
【表61】
【0229】
(b)IE-HPLCにて評価した、保管前後での酸性分子種の割合を表62に示す。25 ℃および40 ℃下での長期保管条件で酸性分子種の増加が認められたが、5 ℃下では顕著な増加は認められなかった。5 ℃下では安定であると考えられた。
【0230】
【表62】
【0231】
(c)iCIEFにて評価した、保管前後での酸性分子種の割合(%)を表63に示す。25 ℃および40 ℃下での長期保管条件で酸性分子種の増加が認められたが、5 ℃下では顕著な増加は認められなかった。5 ℃下では安定であると考えられた。
【0232】
【表63】
【0233】
(d)SPRにて評価した、保管試験前後でのPD-1への結合活性の結果を表64に、CD3結合活性の結果を表65に各々示す。各表中の数値は、標準品に対する比活性(%)を表す。全温度、濃度域においてPD-1およびCD3ともに結合活性の低下は認められず、十分な安定性を有していると考えられた。
【0234】
【表64】
【0235】
【表65】
【0236】
実施例10:処方調製法
本発明の水性医薬組成物を調製する方法について、実施例9の試料F2を例に、以下に示す。なお、同試料F2と抗体濃度が異なる本発明の水性医薬組成物についても、同様に調製することができる。
(a)処方調製液1を、20 mM酢酸緩衝液(pH 5.0)、182.38 mMトレハロース、1.36 mg/mL 塩化ナトリウムおよび10 mM L-メチオニンとなるように調製する。
(b)処方調製液2を、20 mM酢酸緩衝液(pH 5.0)、182.38 mMトレハロース、2 % PS80、1.36 mg/mL 塩化ナトリウムおよび10 mM L-メチオニンとなるように調製する。
(c)処方調製液3を、20 mM酢酸緩衝液(pH 5.0)、182.38 mMトレハロース、0.1 % PS80、1.36 mg/mL 塩化ナトリウムおよび10 mM L-メチオニンとなるように調製する。
(d)抗体αの製造工程のうち、ウイルスろ過工程から得られた工程液を、限外ろ過/透析ろ過膜で処方調製液1に溶液組成を置換する。
(e)前項(d)において、溶液組成を処方調製液1に置換した、抗体αを含む工程液を、限外ろ過/透析ろ過膜で約140 mg/mLまで濃縮する。
(f)前項(e)において濃縮した抗体αを含む工程液に、高濃度のPS80を含む処方調製液2を添加し、PS80濃度が0.1%となるように調製する。
(g)前項(f)において、目的のPS80濃度に調整した抗体αを含む工程液に、処方調製液3を添加し、抗体濃度が目的の100 mg/mLとなるように希釈する。
【産業上の利用可能性】
【0237】
抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分とする、本発明の医薬組成物またはその製剤は、自己免疫疾患もしくは移植片対宿主病(GVHD)あるいは血液がんの予防、症状進展抑制、再発抑制または治療に有用である。
【要約】
本発明の課題は、抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分とする、自己免疫疾患もしくは移植片対宿主病(GVHD)あるいは血液がんの予防、症状進展抑制、再発抑制または治療のための新たな製剤を提供することにある。
本発明は、抗PD-1/CD3二重特異性抗体を有効成分として含み、さらに、例えば、酢酸緩衝剤、トレハロース、L-メチオニン、ポリソルベート80および塩化ナトリウムを含む、単一の添加物組成にて、皮下投与用および静脈内投与用の何れにも使用できる水性医薬組成物ならびにその製剤を提供する。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
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