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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】電力システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20240903BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20240903BHJP
   H02J 9/06 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J7/34 B
H02J9/06 120
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024539319
(86)(22)【出願日】2023-07-12
(86)【国際出願番号】 JP2023025771
(87)【国際公開番号】W WO2024048089
(87)【国際公開日】2024-03-07
【審査請求日】2024-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2022136251
(32)【優先日】2022-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文俊
(72)【発明者】
【氏名】栗田 了輔
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-230029(JP,A)
【文献】特開2017-85852(JP,A)
【文献】特開2016-178757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-5/00
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H02J 9/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの異なる箇所に配置され、それぞれに双方向インバータ、双方向DCDCコンバータ、および蓄電池を有する複数のパワーコンディショナと、
前記複数のパワーコンディショナの各々に接続される複数の負荷と、
前記複数のパワーコンディショナの運転モードを切り替える制御装置と、
を備える電力システムであって、
前記複数のパワーコンディショナの各々は、
系統連系モード用の第1端子と自立運転モード用の第2端子とを有し、前記第1端子と前記第2端子とを切り替えるモード切替スイッチと、
前記第1端子から商用電力への接続ラインに挿入され、系統連系モードで動作する時はオン、前記自立運転モードで動作する時はオフにされる系統連系リレーと、
前記第2端子に接続し、前記自立運転モードで駆動する際に、前記蓄電池の蓄電電力を出力する自立連系用端子と、
を備え、
前記複数のパワーコンディショナの前記自立連系用端子は、互いに接続されており、
前記制御装置は、前記自立運転モードで運転する際には、前記複数のパワーコンディショナのうち、特定のパワーコンディショナが有する蓄電池のみに充電を許可し、他のパワーコンディショナが有する蓄電池には放電のみを許可する、
ことを特徴とする、電力システム。
【請求項2】
前記複数のパワーコンディショナは、
前記双方向DCDCコンバータに直接接続するバイパススイッチを備え、
前記バイパススイッチは、前記系統連系モードで動作するときにオフされ、前記自立運転モードで動作するときにオンされる、
請求項1に記載の電力システム。
【請求項3】
前記他のパワーコンディショナは、複数個存在し、
前記複数の他のパワーコンディショナが有する蓄電池は、予め設定された優先順位に基づいて放電される、
請求項1または請求項2に記載の電力システム。
【請求項4】
前記優先順位は、前記複数のパワーコンディショナが有する蓄電池の配置位置に基づいて設定されている、
請求項3に記載の電力システム。
【請求項5】
前記複数のパワーコンディショナが有する蓄電池の配置位置が、鉛直方向に異なる場合、
前記優先順位として、最も低い位置に配置された蓄電池を優先する、
請求項4に記載の電力システム。
【請求項6】
前記優先順位は、前記複数のパワーコンディショナが有する蓄電池のSOCに基づいて設定されている、
請求項3記載の電力システム。
【請求項7】
前記優先順位は、前記複数のパワーコンディショナが有する蓄電池のSOHに基づいて設定されている、
請求項3記載の電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の蓄電部を備える電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、蓄電システムが記載されている。特許文献1の蓄電システムは、複数の蓄電部、複数の電力変換部を備える。
【0003】
複数の電力変換部は、複数の蓄電部のそれぞれに対応して配置される。複数の電力変換部は、それぞれに接続する蓄電部の直流出力を交流出力に変換して負荷に供給する。また、複数の電力変換部は、電力系統からの交流電力を直流電力に変換して、それぞれが接続する蓄電部に充電する。
【0004】
複数の電力変換部は、非停電の時は負荷の優先度に基づいて蓄電部の下限SOCを設定し、それを下回らないように制御する。複数の電力変換部は、停電時には下限SOCを下回っても負荷に電力を供給するように制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-85852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の蓄電システムでは、それぞれに電力変換部、蓄電部、および負荷を含んで構成される複数の組は、それぞれ独立して制御を行っている。このため、例えば停電等の非常時に、電力を必要とする組に対して、別の組から電力を供給することができなかった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、平常時は商用電力系統に連系し、商用電力系統から電力供給を受けられない時に、電力を必要とする箇所に対してより確実に電力を供給できる電力システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の実施形態に係る電力システムは、それぞれの異なる箇所に配置され、それぞれに双方向インバータ、双方向DCDCコンバータ、および蓄電池を有する複数のパワーコンディショナと、複数のパワーコンディショナの各々に接続される複数の負荷と、複数のパワーコンディショナの運転モードを切り替える制御装置と、を備える。
【0009】
複数のパワーコンディショナの各々は、系統連系モード用の第1端子と自立運転モード用の第2端子とを有し、第1端子と前記第2端子とを切り替えるモード切替スイッチと、第1端子から商用電力への接続ラインに挿入され、系統連系モードで動作する時はオン、自立運転モードで動作する時はオフにされる系統連系リレーと、第2端子に接続し、自立運転モードで駆動する際に、蓄電池の蓄電電力を出力する自立連系用端子と、を備える。
【0010】
複数のパワーコンディショナの自立連系用端子は、互いに接続されている。制御装置は、自立運転モードで運転する際には、複数のパワーコンディショナのうち、特定のパワーコンディショナが有する蓄電池のみに充電を許可し、他のパワーコンディショナが有する蓄電池には放電のみを許可する。
【0011】
この構成では、複数のパワーコンディショナの自立連系用端子は、互いに接続されていることで、複数のパワーコンディショナ間での電力の送受が可能になる。そして、特定の蓄電池を充電のみ許可し、他の蓄電池を放電のみ許可とすることで、他の蓄電池に貯められた電力は、特定の蓄電池に供給される。したがって、商用電力系統からの電力供給が停止しても、特定の蓄電池は充電される。すなわち、商用電力系統からの電力供給が停止しても、特定位置への電力供給はより確実になる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、平常時は商用電力系統に連系し、商用電力系統から電力供給を受けられない時に、電力を必要とする箇所に対してより確実に電力を供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、第1の実施形態に係る電力システムの平常時の運転態様を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る電力システムの平常時の運転態様での電力の流れの一例を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る電力システムの非常時の運転態様を示す図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る電力システムの非常時の運転態様での電力の流れの一例を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る電力システムで用いる電力供給モードの切替方法の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、第2の実施形態に係る電力システムの平常時の運転態様を示す図である。
図7図7は、第2の実施形態に係る電力システムの平常時の運転態様での電力の流れの一例を示す図である。
図8図8は、第2の実施形態に係る電力システムの非常時の運転態様を示す図である。
図9図9は、第2の実施形態に係る電力システムの非常時の運転態様での電力の流れの一例を示す図である。
図10図10は、第2の実施形態に係る電力システムで用いる電力供給モードの切替方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る電力システムについて、図を参照して説明する。図1は、第1の実施形態に係る電力システムの平常時の運転態様を示す図である。図2は、第1の実施形態に係る電力システムの平常時の運転態様での電力の流れの一例を示す図である。図3は、第1の実施形態に係る電力システムの非常時の運転態様を示す図である。図4は、第1の実施形態に係る電力システムの非常時の運転態様での電力の流れの一例を示す図である。なお、本実施形態に示すパワーコンディショナの個数、負荷の個数は、一例であり、複数であればこの例に限るものではない。
【0015】
図1図2図3図4に示すように、電力システム10は、複数のパワーコンディショナ31-34、複数の負荷41-44、非常用コンセント50、制御装置60、自立連系用ライン300、商用電力連系ライン400を備える。
【0016】
複数のパワーコンディショナ31-34は、パワーコンディショナ31、パワーコンディショナ32、パワーコンディショナ33、および、パワーコンディショナ34を備える。複数の負荷41-44は、負荷41、負荷42、負荷43、および、負荷44を備える。
【0017】
複数のパワーコンディショナ31-34は、商用電力連系ライン400を通じて商用交流電源(商用電力系統)にそれぞれ接続される。負荷41は、商用電力連系ライン400におけるパワーコンディショナ31と商用交流電源とを接続するラインに対して接続される。負荷42は、商用電力連系ライン400におけるパワーコンディショナ32と商用交流電源とを接続するラインに対して接続される。負荷43は、商用電力連系ライン400におけるパワーコンディショナ33と商用交流電源とを接続するラインに対して接続される。負荷44は、商用電力連系ライン400におけるパワーコンディショナ34と商用交流電源とを接続するラインに対して接続される。
【0018】
制御装置60は、商用電力連系ライン400に配置されたカレントセンサCTからの出力を受け、複数のパワーコンディショナ31-34の運転制御を行う。カレントセンサCTは、商用電力連系ライン400における複数のパワーコンディショナ31-34が接続されるノードよりも商用交流電源側の位置に配置される。
【0019】
複数のパワーコンディショナ31-34、複数の負荷41-44、および、制御装置60は、例えば複数階(図の例であれば、4階建て)を有する建築物に配置される。図の例では、パワーコンディショナ31および負荷41は、3階に配置され、パワーコンディショナ32および負荷42は、2階に配置される。パワーコンディショナ33および負荷43は、1階に配置され、パワーコンディショナ34および負荷44は、地下1階に配置される。制御装置60は、いずれの階に配置されていてもよいが、例えば、非常事態の避難階(図の場合は、2階)に配置されているとよい。
【0020】
そして、商用電力連系ライン400は、複数のパワーコンディショナ31-34および複数の負荷41-44が配置される各階に亘って配線されている。
【0021】
また、自立連系用ライン300も、複数のパワーコンディショナ31-34が配置される各階に亘って配置されている。自立連系用ライン300と複数のパワーコンディショナ31-34のより具体的な接続構成は、後述する。
【0022】
また、非常用コンセント50は、非常事態の避難階(図の場合は、2階)に配置されている。非常用コンセント50は、パワーコンディショナ32に接続される。なお、非常用コンセント50の具体的な接続構成は、後述する。
【0023】
(複数のパワーコンディショナ31-34の構成)
パワーコンディショナ31は、系統連系リレー311、モード切替スイッチ312、双方向インバータ313、双方向DCDCコンバータ314、蓄電池315、および、自立連系用端子P31を有する。
【0024】
モード切替スイッチ312は、第1端子、第2端子、第3端子を備える。モード切替スイッチ312は、第3端子を第1端子または第2端子に選択的に接続するスイッチである。すなわち、モード切替スイッチ312は、第1端子が第3端子に接続する第1接続態様と、第2端子が第3端子に接続する第2接続態様とを選択する。
【0025】
モード切替スイッチ312の第1端子は、系統連系リレー311を通じて、商用電力連系ライン400に接続される。モード切替スイッチ312の第2端子は、自立連系用ライン300に接続される。モード切替スイッチ312の第3端子は、双方向インバータ313に接続される。
【0026】
双方向インバータ313は、双方向DCDCコンバータ314に接続される。双方向DCDCコンバータ314は、蓄電池315に接続される。
【0027】
自立連系用端子P31は、モード切替スイッチ312の第2端子に接続し、自立連系用ライン300に接続する。
【0028】
このように、パワーコンディショナ31は、商用電力連系ライン400側から、系統連系リレー311、モード切替スイッチ312、双方向インバータ313、双方向DCDCコンバータ314、蓄電池315の順に接続される構成を備える。パワーコンディショナ31は、モード切替スイッチ312にて、自立連系用端子P31を通じて自立連系用ライン300に接続可能な構成も備える。
【0029】
そして、パワーコンディショナ31は、モード切替スイッチ312にて、商用電力連系ライン400に接続される系統連系モードと、自立連系用ライン300に接続される自立運転モードとを切り替える。
【0030】
さらに、パワーコンディショナ31は、系統連系モード時には系統連系リレー311をオン(短絡)にし、自立運転モードには系統連系リレー311をオフ(開放)にする。
【0031】
パワーコンディショナ32、パワーコンディショナ33、および、パワーコンディショナ34の基本的な構成は、パワーコンディショナ31と同様であり、追記の必要な箇所を除き、説明は省略する。
【0032】
パワーコンディショナ32は、系統連系リレー321、モード切替スイッチ322、双方向インバータ323、双方向DCDCコンバータ324、蓄電池325、および、自立連系用端子P32を有する。パワーコンディショナ32は、自立連系用端子P32を通じて自立連系用ライン300に接続される。
【0033】
パワーコンディショナ32におけるモード切替スイッチ322の第2端子と自立連系用端子P32とを接続する電力ラインには、非常用コンセント50が接続されている。なお、非常用コンセント50は、自立連系用ライン300に直接接続されていてもよい。
【0034】
パワーコンディショナ33は、系統連系リレー331、モード切替スイッチ332、双方向インバータ333、双方向DCDCコンバータ334、蓄電池335、および、自立連系用端子P33を有する。パワーコンディショナ33は、自立連系用端子P33を通じて自立連系用ライン300に接続される。
【0035】
パワーコンディショナ34は、系統連系リレー341、モード切替スイッチ342、双方向インバータ343、双方向DCDCコンバータ344、蓄電池345、および、自立連系用端子P34を有する。パワーコンディショナ34は、自立連系用端子P34を通じて自立連系用ライン300に接続される。
【0036】
(平常時の動作(系統連系モード))
図1図2に示すように、平常時、パワーコンディショナ31では、系統連系リレー311がオンになり、モード切替スイッチ312では、第1端子と第3端子とが接続される(系統連系モード)。パワーコンディショナ32では、系統連系リレー321がオンになり、モード切替スイッチ322では、第1端子と第3端子とが接続される(系統連系モード)。パワーコンディショナ33では、系統連系リレー331がオンになり、モード切替スイッチ332では、第1端子と第3端子とが接続される(系統連系モード)。パワーコンディショナ34では、系統連系リレー341がオンになり、モード切替スイッチ342では、第1端子と第3端子とが接続される(系統連系モード)。
【0037】
これにより、複数の負荷41-44に商用交流電源(外部の商用電力系統)からの電力が供給されるとともに、複数のパワーコンディショナ31-34にも、商用交流電源(外部の商用電力系統)からの電力が供給される。
【0038】
パワーコンディショナ31は、蓄電池315のSOCを検出し、必要に応じて蓄電池315を充電する。この際、パワーコンディショナ31は、商用電源から利用可能な電力をこえない範囲(例えば、契約電力をこえない範囲)で、蓄電池315を充電する。また、パワーコンディショナ31は、負荷41の消費電力が商用電源から利用可能な電力をこえる場合(例えば、契約電力をこえてしまう場合)、蓄電池315に充電された電力を負荷41に供給する。
【0039】
パワーコンディショナ32は、蓄電池325のSOCを検出し、必要に応じて蓄電池325を充電する。この際、パワーコンディショナ32は、商用電源から利用可能な電力をこえない範囲(例えば、契約電力をこえない範囲)で、蓄電池325を充電する。また、パワーコンディショナ32は、負荷42の消費電力が商用電源から利用可能な電力をこえる場合(例えば、契約電力をこえてしまう場合)、蓄電池325に充電された電力を負荷42に供給する。
【0040】
パワーコンディショナ33は、蓄電池335のSOCを検出し、必要に応じて蓄電池335を充電する。この際、パワーコンディショナ33は、商用電源から利用可能な電力をこえない範囲(例えば、契約電力をこえない範囲)で、蓄電池335を充電する。また、パワーコンディショナ33は、負荷43の消費電力が商用電源から利用可能な電力をこえる場合(例えば、契約電力をこえてしまう場合)、蓄電池335に充電された電力を負荷43に供給する。
【0041】
パワーコンディショナ34は、蓄電池345のSOCを検出し、必要に応じて蓄電池345を充電する。この際、パワーコンディショナ34は、商用電源から利用可能な電力をこえない範囲(例えば、契約電力をこえない範囲)で、蓄電池345を充電する。また、パワーコンディショナ34は、負荷44の消費電力が商用電源から利用可能な電力をこえる場合(例えば、契約電力をこえてしまう場合)、蓄電池345に充電された電力を負荷44に供給する。
【0042】
(非常時の動作(自立連系モード))
非常時とは、災害等によって商用交流電源から電力が供給されない場合である。
【0043】
制御装置60は、カレントセンサCTを出力に基づいて商用交流電源から電力が供給されていない状態を検出すると、複数のパワーコンディショナ31-34に対して、自立連系モードで動作するように指示する。
【0044】
より具体的には、制御装置60は、非常事態の避難階にあるパワーコンディショナ32が有する蓄電池325のみに充電を許可し、他の複数のパワーコンディショナ31、33、34がそれぞれに有する蓄電池315、335、345には放電のみを許可する。
【0045】
制御装置60からの指示を受け、図3に示すように、複数のパワーコンディショナ31、32、33、34は、それぞれのモード切替スイッチ312、322、332、342の第3端子を第2端子に接続し、それぞれの系統連系リレー311、321、331、341をオフにして、自立連系モードで運転する。
【0046】
そして、図4に示すように、パワーコンディショナ31、33、34は、それぞれが有する蓄電池315、335、345の電力を放電して、自立連系用ライン300に出力するように制御する。
【0047】
一方、パワーコンディショナ32は、自立連系用ライン300から供給された他のパワーコンディショナ31、33、34からの電力によって、蓄電池325を充電する。
【0048】
この際、パワーコンディショナ32が自立連系用ラインに接続する途中には、非常用コンセント50が接続されている。これにより、非常時には、蓄電池315、335、345に蓄電された電力を、蓄電池325で蓄電でき、且つ、非常用コンセント50から利用することができる。そして、蓄電池315、335、345が放電してSOCが0%になっても、これらの電力によって蓄電された蓄電池325を放電させることで、この電力を同階の非常用コンセント50から利用できる。
【0049】
これにより、電力システム10は、平常時は商用電力系統に連系し、商用電力系統から電力供給を受けられない時に、電力を必要とする箇所に対してより確実に電力を供給できる。
【0050】
なお、電力システム10は、放電する蓄電池の優先順位を予め決めていてもよい。例えば、蓄電池325のSOCが高い場合は、非常用コンセント50での消費電力が小さい場合、他の全ての蓄電池315、335、345から電力の供給を受けなくてもよいことがある。この場合、制御装置60は、放電対象のパワーコンディショナ(蓄電池)の放電順を指定する。
【0051】
(1)制御装置60は、放電対象の複数のパワーコンディショナ31、33、34の蓄電池315、335、345の配置位置に基づいて、優先順位を設定する。例えば、上述のように、複数のパワーコンディショナ31、33、34の蓄電池315、335、345が、異なる階(鉛直方向の異なる位置)に配置されている場合、この配置位置に基づいて、優先順位を設定する。
【0052】
一例として、制御装置60は、鉛直方向の位置が低いほど、優先順位を高くする。これにより、電力システム10は、建築物が浸水するような場合に故障し易い場所にある順に放電を行うことができる。
【0053】
また、一例として、制御装置60は、蓄電池325までの自立連系用ライン300を通じた距離が長いほど、優先順位を高くする。これにより、電力システム10は、断線の可能性が高い順に放電を行うことができる。
【0054】
なお、優先順位の設定はこれに限らず、それぞれの蓄電池の配置、起こりうる非常事態の状況に応じて適宜設定できる。
【0055】
(2)制御装置60は、放電対象の複数のパワーコンディショナ31、33、34の蓄電池315、335、345のSOCに基づいて、優先順位を設定する。例えば、制御装置60は、SOCが低いほど優先順位を高くすることもでき、SOCが高いほど優先順位を高くすることもできる。
【0056】
(3)制御装置60は、放電対象の複数のパワーコンディショナ31、33、34の蓄電池315、335、345のSOHに基づいて、優先順位を設定する。例えば、制御装置60は、SOHが低いほど優先順位を高くすることもでき、SOHが高いほど優先順位を高くすることもできる。
【0057】
(電力供給モードに切替方法)
図5は、第1の実施形態に係る電力システムで用いる電力供給モードの切替方法の一例を示すフローチャートである。なお、各処理の具体的な内容は、上述しており、必要な箇所を除いて説明は省略する。
【0058】
電力システム10は、平常時であれば(S11:YES)、複数のパワーコンディショナ31-34を商用電力連系ライン400に接続し、商用電力系統に連系運転する(S12)。
【0059】
電力システム10は、平常時で無く(S11:NO)、非常時(例えば停電状態)であれば(S13:YES)、複数のパワーコンディショナ31-34を商用電力連系ライン400から切り離す(S14)。
【0060】
電力システム10は、複数のパワーコンディショナ31-34を自立連系用ライン300で接続する(S15)。電力システム10は、複数のパワーコンディショナ31-34に対して、非常時使用階に、蓄電されている電力を供給するように集中制御を実行する(S16)。
【0061】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る電力システムについて、図を参照して説明する。図6は、第2の実施形態に係る電力システムの平常時の運転態様を示す図である。図7は、第2の実施形態に係る電力システムの平常時の運転態様での電力の流れの一例を示す図である。図8は、第2の実施形態に係る電力システムの非常時の運転態様を示す図である。図9は、第2の実施形態に係る電力システムの非常時の運転態様での電力の流れの一例を示す図である。なお、本実施形態に示すパワーコンディショナの個数、負荷の個数は、第1の実施形態と同様に一例であり、複数であればこの例に限るものではない。
【0062】
図6図7図8図9に示すように、第2の実施形態に係る電力システム10Aは、第1の実施形態に係る電力システム10に対して、複数のパワーコンディショナ31A、32A、33A、34A、HVDC連系ライン600を備える点、および、自立連系用ライン300を備えない点で異なる。電力システム10Aの他の基本的な構成は、電力システム10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0063】
パワーコンディショナ31Aは、第1の実施形態に係るパワーコンディショナ31に対して、バイパススイッチ316を備える点で異なる。バイパススイッチ316は、双方向インバータ313と双方向DCDCコンバータ314との接続ラインとHVDC連系ライン600との間に接続される。バイパススイッチ316は、平常時(系統連系モード)ではオフ(開放)され、非常時(自立運転モード)ではオン(短絡)される。
【0064】
パワーコンディショナ32Aは、第1の実施形態に係るパワーコンディショナ32に対して、バイパススイッチ326を備える点で異なる。バイパススイッチ326は、双方向インバータ323と双方向DCDCコンバータ324との接続ラインとHVDC連系ライン600との間に接続される。バイパススイッチ326は、平常時(系統連系モード)ではオフ(開放)され、非常時(自立運転モード)ではオン(短絡)される。
【0065】
パワーコンディショナ33Aは、第1の実施形態に係るパワーコンディショナ33に対して、バイパススイッチ336を備える点で異なる。バイパススイッチ336は、双方向インバータ333と双方向DCDCコンバータ334との接続ラインとHVDC連系ライン600との間に接続される。バイパススイッチ336は、平常時(系統連系モード)ではオフ(開放)され、非常時(自立運転モード)ではオン(短絡)される。
【0066】
パワーコンディショナ34Aは、第1の実施形態に係るパワーコンディショナ34に対して、バイパススイッチ346を備える点で異なる。バイパススイッチ346は、双方向インバータ343と双方向DCDCコンバータ344との接続ラインとHVDC連系ライン600との間に接続される。バイパススイッチ346は、平常時(系統連系モード)ではオフ(開放)され、非常時(自立運転モード)ではオン(短絡)される。
【0067】
(平常時の動作(系統連系モード))
図6図7に示すように、平常時、バイパススイッチ316、326、336、346は、オフであり、複数のパワーコンディショナ31A、32A、33A、34Aは、第1の実施形態に係る複数のパワーコンディショナ31、32、33、34と同様に動作する。
【0068】
(非常時の動作(自立連系モード))
制御装置60は、カレントセンサCTを出力に基づいて商用交流電源から電力が供給されていない状態を検出すると、複数のパワーコンディショナ31A-34Aに対して、HVDC連系ライン600を用いた自立連系モードで動作するように指示する。
【0069】
より具体的には、制御装置60は、非常事態の避難階にあるパワーコンディショナ32Aが有する蓄電池325のみにHVDC連系ライン600を通じた充電を許可する。制御装置60は、他の複数のパワーコンディショナ31、33、34がそれぞれに有する蓄電池315、335、345にはHVDC連系ライン600を通じた放電のみを許可する。
【0070】
制御装置60からの指示を受け、図8に示すように、複数のパワーコンディショナ31A、32A、33A、34Aは、それぞれのバイパススイッチ316、326、336、346をオンにして、自立連系モードで運転する。
【0071】
そして、図9に示すように、パワーコンディショナ31A、33A、34Aは、それぞれが有する蓄電池315、335、345の電力を放電して、HVDC連系ライン600に出力するように制御する。
【0072】
一方、パワーコンディショナ32Aは、HVDC連系ライン600から供給された他のパワーコンディショナ31A、33A、34Aからの電力によって、蓄電池325を充電する。
【0073】
この際、非常用コンセント50は、双方向インバータ323およびモード切替スイッチ322を通じて、双方向DCDCコンバータ324およびバイパススイッチ326に接続されている。これにより、非常時には、蓄電池315、335、345に蓄電された電力を、蓄電池325で蓄電でき、且つ、非常用コンセント50から利用することができる。そして、蓄電池315、335、345が放電してSOCが0%になっても、これらの電力によって蓄電された蓄電池325を放電させることで、この電力を同階の非常用コンセント50から利用できる。
【0074】
これにより、電力システム10Aは、平常時は商用電力系統に連系し、商用電力系統から電力供給を受けられない時に、電力を必要とする箇所に対してより確実に電力を供給できる。
【0075】
さらに、電力システム10Aは、双方向インバータを通さずに、蓄電池315、蓄電池335、蓄電池345の電力によって蓄電池325を蓄電できる。これにより、電力システム10Aは、蓄電電力をより有効に利用できる。
【0076】
(電力供給モードに切替方法)
図10は、第2の実施形態に係る電力システムで用いる電力供給モードの切替方法の一例を示すフローチャートである。なお、各処理の具体的な内容は、上述しており、必要な箇所を除いて説明は省略する。
【0077】
電力システム10Aは、平常時であれば(S11:YES)、複数のパワーコンディショナ31-34を商用電力連系ライン400に接続し、商用電力系統に連系運転する(S12)。
【0078】
電力システム10Aは、平常時で無く(S11:NO)、非常時(例えば停電状態)であれば(S13:YES)、複数のパワーコンディショナ31-34を商用電力連系ライン400から切り離す(S14)。
【0079】
電力システム10Aは、複数のパワーコンディショナ31-34をHVDC連系ライン600で接続する(S15A)。電力システム10Aは、複数のパワーコンディショナ31-34に対して、非常時使用階に、蓄電されている電力を供給するように集中制御を実行する(S16)。
【0080】
<1> それぞれの異なる箇所に配置され、それぞれに双方向インバータ、双方向DCDCコンバータ、および蓄電池を有する複数のパワーコンディショナと、
前記複数のパワーコンディショナの各々に接続される複数の負荷と、
前記複数のパワーコンディショナの運転モードを切り替える制御装置と、
を備える電力システムであって、
前記複数のパワーコンディショナの各々は、
系統連系モード用の第1端子と自立運転モード用の第2端子とを有し、前記第1端子と前記第2端子とを切り替えるモード切替スイッチと、
前記第1端子から商用電力への接続ラインに挿入され、前記系統連系モードで動作する時はオン、前記自立運転モードで動作する時はオフにされる系統連系リレーと、
前記第2端子に接続し、前記自立運転モードで駆動する際に、前記蓄電池の蓄電電力を出力する自立連系用端子と、
を備え、
前記複数のパワーコンディショナの前記自立連系用端子は、互いに接続されており、
前記制御装置は、前記自立運転モードで運転する際には、前記複数のパワーコンディショナのうち、特定のパワーコンディショナが有する蓄電池のみに充電を許可し、他のパワーコンディショナが有する蓄電池には放電のみを許可する、ことを特徴とする、電力システム。
【0081】
<2> 前記複数のパワーコンディショナは、
前記双方向DCDCコンバータに直接接続するバイパススイッチを備え、
前記バイパススイッチは、前記系統連系モードで動作するときにオフされ、前記自立運転モードで動作するときにオンされる、<1>の電力システム。
【0082】
<3> 前記他のパワーコンディショナは、複数個存在し、
前記複数の他のパワーコンディショナが有する蓄電池は、予め設定された優先順位に基づいて放電される、<1>または<2>の電力システム。
【0083】
<4> 前記優先順位は、前記複数のパワーコンディショナが有する蓄電池の配置位置に基づいて設定されている、<3>の電力システム。
【0084】
<5> 前記複数のパワーコンディショナが有する蓄電池の配置位置が、鉛直方向に異なる場合、前記優先順位として、最も低い位置に配置された蓄電池を優先する、<4>に記載の電力システム。
【0085】
<6> 前記優先順位は、前記複数のパワーコンディショナが有する蓄電池のSOCに基づいて設定されている、<3>乃至<5>のいずれかの電力システム。
【0086】
<7> 前記優先順位は、前記複数のパワーコンディショナが有する蓄電池のSOHに基づいて設定されている、<3>乃至<6>のいずれかの電力システム。
【符号の説明】
【0087】
10、10A:電力システム
31、31A、32、32A、33、33A、34、34A:パワーコンディショナ
41、42、43、44:負荷
50:非常用コンセント
60:制御装置
300:自立連系用ライン
311、321、331、341:系統連系リレー
312、322、332、342:モード切替スイッチ
313、323、333、343:双方向インバータ
314、324、334、344:双方向DCDCコンバータ
315、325、335、345:蓄電池
316、326、336、346:バイパススイッチ
400:商用電力連系ライン
600:HVDC連系ライン
P31、P32、P33、P34:自立連系用端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10