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特許7548480開環重合法でポリ乳酸を調製する製造方法及びプレポリマー混合物とポリ乳酸
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】開環重合法でポリ乳酸を調製する製造方法及びプレポリマー混合物とポリ乳酸
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/78 20060101AFI20240903BHJP
   C08G 63/82 20060101ALI20240903BHJP
   C08G 63/08 20060101ALI20240903BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20240903BHJP
【FI】
C08G63/78 ZBP
C08G63/82
C08G63/08
C08L101/16
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023507846
(86)(22)【出願日】2020-04-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-24
(86)【国際出願番号】 CN2020087017
(87)【国際公開番号】W WO2021217299
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】522418196
【氏名又は名称】万華化学(四川)有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】516296371
【氏名又は名称】万華化学集団股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】WANHUA CHEMICAL GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】NO.17, TIANSHAN ROAD, YEDA, YANTAI CITY,SHANDONG PROVINCE, CHINA.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】孫 双翼
(72)【発明者】
【氏名】喬 義濤
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-069271(JP,A)
【文献】特開2008-001732(JP,A)
【文献】国際公開第2010/147088(WO,A1)
【文献】特開2013-189615(JP,A)
【文献】国際公開第2008/018474(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/78
C08G 63/82
C08G 63/08
C08L 101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開環重合法でポリ乳酸を調製する製造方法であって、
製造装置で、開始剤、触媒及びモノマーIを接触させて開環重合反応させ、ポリ乳酸プレポリマーを含むプレポリマー混合物を生成するステップ(1)と、
前記プレポリマー混合物をモノマーIIと接触して反応させ、高分子量のポリ乳酸を生成し、前記ポリ乳酸の数平均分子量≧4.5万であるステップ(2)とを含み、
前記モノマーIとモノマーIIは同じであり、それぞれ独立してラクチドを含み、
ステップ(1)において、前記モノマーIが100%転化されたときに、前記プレポリマー混合物におけるポリ乳酸プレポリマーの理論数平均分子量は1000~5000である、ことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
ステップ(1)において、前記モノマーIが100%転化されたときに、前記プレポリマー混合物におけるポリ乳酸プレポリマーの理論数平均分子量は2000~5000である、ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
ステップ(1)において、前記開始剤とモノマーIの質量の合計を100として、開始剤とモノマーIの質量比は1.2:98.8~15.8:84.2である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
ステップ(2)において、前記プレポリマー混合物とモノマーIIの質量の合計を100として、プレポリマー混合物とモノマーIIの質量比は0.5:99.5~10:90である、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記触媒は有機金属化合物及び/又は有機塩基から選ばれ
記有機金属化合物は有機スズ化合物、有機アルミニウム化合物及び有機亜鉛化合物から選ばれる1種又は複数種であり
記有機塩基は有機グアニジンである、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
ステップ(1)において、前記触媒の質量と開始剤及びモノマーIの質量の合計との配合比は0.1:100~10:100であり
記触媒は有機金属化合物であり、前記プレポリマー混合物において、触媒の含有量(対応する金属で)は300~10000ppmである、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
ステップ(2)に記載のプレポリマー混合物とモノマーIIの反応系において、触媒の含有量≦0.12%であり
記触媒は有機金属化合物であり、ステップ(2)に記載のプレポリマー混合物とモノマーIIの反応系において、触媒の含有量(対応する金属で)は15~50ppmである、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記モノマーI及びモノマーIIにおいて、前記ラクチドはL-ラクチド、D-ラクチド及びメソラクチドから選ばれる1種又は複数種であ、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記モノマーI及びモノマーIIはさらにそれぞれ独立して第2のモノマーを含み、前記第2のモノマーは環状ラクトン及び/又はエポキシ化合物から選ばれる、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記開始剤はヒドロキシル基含有化合物から選ばれる1種又は複数種であ、ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
ステップ(1)の反応系において、前記モノマーIの残留率は2~20%であり、及び/又は、
ステップ(2)の反応系において、転化率は90~98%である、ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
ステップ(1)の反応温度は150~220℃であり、ステップ(2)の反応温度は170~220℃である、ことを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
ステップ(1)の製造方法はバッチ製造、半連続製造又は連続製造であり、及び/又は、
ステップ(2)の製造方法はバッチ製造であり、得られたポリ乳酸の数平均分子量変動≦2%であるか、或いは半連続製造であり、得られたポリ乳酸の数平均分子量変動≦2%であるか、或いは連続製造であり、得られたポリ乳酸の数平均分子量変動≦5%であり
テップ(1)及びステップ(2)の製造方法はいずれも連続製造であり、ステップ(1)及びステップ(2)において管式反応器を使用する、ことを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記プレポリマー混合物
触媒、反応されていないモノマーI及びポリ乳酸プレポリマーを含む、ことを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載の製造方法
【請求項15】
前記プレポリマー混合物の180℃における粘度は10~500cpであり、及び/又は、
前記プレポリマー混合物において、ポリ乳酸プレポリマーと反応されていないモノマーIの総重量を100wt%として、前記ポリ乳酸プレポリマーの含有量は80~98wt%であり、前記反応されていないモノマーIの含有量は2~20wt%であり、及び/又は、
ポリ乳酸プレポリマー及び反応されていないモノマーIの総質量に占める前記触媒の質量の百分率は0.09~9.1%であり、及び/又は、
前記触媒は有機金属化合物であり、前記プレポリマー混合物において、触媒の含有量(対応する金属で)は300~10000ppmであり、及び/又は、
前記ポリ乳酸プレポリマーの数平均分子量は800~5000である、ことを特徴とする請求項14に記載の製造方法
【請求項16】
記ポリ乳酸の数平均分子量Mn≧6万であり
記ポリ乳酸の多分散性指数PDIは1.65~2.2であり
記ポリ乳酸はブロック共重合体ではない、請求項1~13のいずれか一項に記載の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリ乳酸製造の技術分野に属し、特に開環重合法でポリ乳酸を調製する製造方法及びプレポリマー混合物とポリ乳酸に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー消費と環境保護が重視されていることに伴い、ポリ乳酸がますます注目されている。ポリ乳酸(Polylactic acid又はpolylactide,PLAと略称する)は生分解性ポリエステルであり、紡織、食品包装、薬物徐放、組織工学などの面で重要な応用があり、さらに、その複合材料は、自動車の内装、建築材料などの分野でも幅広い用途が見込まれている。通常、PLAは主に乳酸の直接重縮合又はラクチドの開環重合により調製して得られる。
【0003】
特許文献CN103649165Aに開示されているポリ乳酸樹脂及びその製造方法によれば、開環重合法と比較して、直接重縮合法は、得られたポリ乳酸樹脂の分子量が低いという問題がある。特許文献US6187901B1によれば、開環重合法により、モル質量2万~50万のポリ乳酸製品を得ることができる。そのため、通常、開環重合法を用いて高分子量のポリ乳酸を得る。
【0004】
開環重合法は、ラクチドをモノマーとし、通常、開始剤及び触媒を添加する必要がある。開始剤は通常、アルコール(以下ROHで表す)であり、例えば、特許文献CN104892916Aは、エタノール又はラウリルアルコールを開始剤とする重合方法を開示している。
【0005】
開環重合法での高分子量のポリ乳酸の調製において、目標生成物PLAの数平均分子量(Mn)は以下を満たし、
【数1】
ただし、
[MO]はモノマーのモル数であり、[MO]=mmo/Mmo、mmoはモノマーの質量であり、Mmoはモノマーのモル質量であり、
[ROH]は開始剤のモル数であり、[ROH]=mROH/MROH、mROHは開始剤の質量であり、MROHは開始剤の分子量である。
【0006】
開環重合法の特徴の一つは、製品の分子量が開始剤ROHの使用量に対して非常に敏感であり、且つ目標分子量が高いほど、ROHの使用量に対してより敏感である。モノマーがラクチド(分子量144)、開始剤がエタノール(分子量46)であることを例にして、モノマーと開始剤の総質量は一定で1000kgであり、目標分子量が50000±5000の場合、必要な開始剤のエタノールの使用量は0.836~1.022kgであり、その許容誤差範囲は0.186kgであり、目標分子量が200000±5000の場合、必要な開始剤のエタノールの使用量は0.224~0.236kgであり、その許容誤差範囲はわずか0.012kgであり、比較後、目標分子量は4倍しか増加しないものの、許容される仕込み誤差範囲について、前者は後者の15.5倍であることを発見した。
【0007】
また、低分子アルコールを開始剤として高分子量のポリ乳酸製品を製造するときに、低分子アルコールの仕込み量が、材料の総質量に占める割合は非常に小さく、目標分子量が200000±5000の場合、必要なエタノールの質量が材料の総質量に占める割合は、わずか224~236ppmである。
【0008】
実際の製造では、仕込みフォーミュラ及び秤量・材料添加の影響だけでなく、転化率の影響も考慮する必要がある。開環重合法の特徴により、[MO]は転化率の増加について線形に増加することが決められるため、製品のMnと転化率は線形関係にある。製品Mnの変動≦5%に制御するために、製造における転化率の変動≦5%に制御する必要がある。実験によれば、同じ反応時間での転化率は開始剤の使用量とはほとんど関係がないが、触媒の使用量と反応温度に密接に関係していることを示す。
【0009】
ラクチドの開環重合によく使用される触媒は、酸触媒、塩基触媒、有機金属触媒などが含まれる。ラクチドは強酸、強塩基の触媒条件下で開環することで製品のラセミ化につながるため、その商業的意味は大きくない。商業的に報道されている触媒は、主に有機塩基触媒及び有機スズ触媒であり、特にオクタン酸第一スズ触媒である。スズは一定の細胞毒性があり、且つ製品から取り除くのが困難であり、その使用量と残留を厳密に制御しなければならず、通常、製品におけるSnの残留を50ppm以下に制御する必要があり、それに応じて、オクタン酸第一スズ触媒の使用量は170ppmを超えることはできない。同時に、転化率の変動≦5%であることを確保することに対する効果的な手段の1つは、触媒使用量の変動≦5%に制御することである。
【0010】
また、転化率は反応温度に密接に関係している。反応温度の上昇に伴い、反応速度は著しく上昇し、同じ反応時間で(連続反応器について、同じ材料供給速度で表現する)の転化率が向上する。したがって、転化率を安定させるように制御するために、反応器内に局所的なホットスポットが存在することを回避する必要がある。ラクチドの開環重合反応は放熱反応であり、局所的なホットスポットを回避するために、反応器内の触媒の濃度を均一にさせる必要がある。
【0011】
PLA製造過程における転化率は触媒の使用量と局所的な濃度に密接に関係している。PLA製品の性能(例えば、粘度、メルトインデックスなど)は分子量に密接に関係しており、さらに分子量は変換率と開始剤の使用量に直接関係しているため、ポリ乳酸の製造時、触媒、開始剤の仕込み変動は、製品の分子量の不安定性に容易につながる。
【0012】
従来のポリ乳酸の製造方法では、最終的な製品の質量に比べて開始剤と触媒の使用量が非常に少ないため、開始剤と触媒の秤量、添加及び反応過程における均一な分散に実際の製造上の困難を引き起こす。そのため、製品の製造安定性により寄与する重合方法を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0013】
本発明の目的は、従来の高分子量のポリ乳酸の製造プロセスには開始剤及び触媒の秤量に対する要求精度が高く、仕込み質量の変動が製品の質量に大きく影響を与え、開始剤及び触媒の使用量が少なく混合が困難であるなどの要因による製造の不安定性の欠点が存在することについて、開始剤及び触媒の仕込み変動を低減し、製造過程における高分子量のポリ乳酸の製品の製造安定性(例えば、得られたポリ乳酸製品の数平均分子量)を向上させることができる、開環重合法でポリ乳酸を調製する製造方法及びプレポリマー混合物とポリ乳酸を提供する。
【0014】
本発明は、上記の目的を実現するために、次の技術案を提供する。
一態様では、開環重合法でポリ乳酸を調製する製造方法を提供し、該製造方法は、
製造装置で、開始剤、触媒及びモノマーIを接触させて開環重合反応させ、ポリ乳酸プレポリマーを含むプレポリマー混合物を生成するステップ(1)と、
前記プレポリマー混合物をモノマーIIと接触して反応させ、高分子量のポリ乳酸を生成し、好ましくは、前記ポリ乳酸の数平均分子量≧4.5万(例えば、5万、10万、20万、30万、40万、45万)であるステップ(2)とを含み、
前記モノマーIとモノマーIIは同じ又は異なり、それぞれ独立してラクチドを含む。ここでの「同じ」は、両者に含まれる成分と各成分の比率がいずれも同じであると理解できる。ここでの「異なる」は、両者に含まれる成分が異なるか、又は各成分の比率が異なると理解できる。
【0015】
好ましい実施形態において、ステップ(1)及びステップ(2)で、前記モノマーIとモノマーIIは同じである。即ち、モノマーI及びモノマーIIに含まれる成分及び各成分の比率はいずれも同じであり、調製されたポリ乳酸重合物はブロック共重合体ではない。
【0016】
本発明に係る製造方法によれば、いくつかの示例では、ステップ(1)において、前記モノマーIが100%転化されたときに、前記プレポリマー混合物におけるポリ乳酸プレポリマーの理論数平均分子量は1000~5000(例えば、1500、3000、3500、4000、4500)、好ましくは2000~5000である。
【0017】
本発明に係る製造方法によれば、いくつかの示例では、ステップ(1)において、前記開始剤とモノマーIの質量の合計を100として、開始剤とモノマーIの質量比は1.2:98.8~15.8:84.2(例えば、1.5:98.5、2:98、5:95、10:90、12:88、15:85)である。
【0018】
ステップ(1)において、開始剤の仕込み質量配合比は開始剤の質量/(開始剤の質量+モノマーIの質量)として定義可能である。換算された後に、即ち、開始剤の仕込み質量配合比は1.2:100~15.8:100(例えば、1.5:100、2:100、5:100、10:100、12:100、15:100)である。
【0019】
ステップ(1)における開始剤の仕込み質量配合比により、モノマーIが100%転化されたときに得られたポリ乳酸プレポリマーの理論数平均分子量は所定の要求に達することができる。例えば、限定される開始剤とモノマーIの質量比について、ステップ(1)に記載のモノマーIが100%転化されたときに、前記プレポリマー混合物におけるポリ乳酸プレポリマーの理論数平均分子量は1000~5000とすることができる。
【0020】
いくつかの示例では、ステップ(2)において、前記プレポリマー混合物とモノマーIIの質量の合計を100として、プレポリマー混合物とモノマーIIの質量比は0.5:99.5~10:90(例えば、0.8:99.2、1.5:98.5、2:98、5:95、8:92)、好ましくは1:99~5:95である。
【0021】
プレポリマー混合物の仕込み質量配合比はプレポリマー混合物の質量/(プレポリマー混合物の質量+モノマーIIの質量)として定義可能である。換算された後に、即ち、プレポリマー混合物の仕込み質量配合比は0.5:100~10:100(例えば、0.8:100、1.5:100、2:100、5:100、8:100)、好ましくは1:100~5:100である。
【0022】
いくつかの示例では、前記触媒は有機金属化合物及び/又は有機塩基から選ばれ、好ましくは有機金属化合物から選ばれる。
【0023】
いくつかの好ましい実施形態において、前記有機金属化合物は有機スズ化合物、有機アルミニウム化合物及び有機亜鉛化合物から選ばれる1種又は複数種である。
【0024】
いくつかの好ましい実施形態において、前記有機塩基は有機グアニジンである。
【0025】
いくつかの示例では、ステップ(1)において、前記触媒の質量と開始剤及びモノマーIの質量の合計との配合比は0.1:100~10:100(例えば、0.5:100、0.8:100、1.5:100、2:100、5:100、8:100)である。
【0026】
ステップ(1)において、触媒の仕込み質量配合比は触媒の質量/(開始剤の質量+モノマーIの質量)として定義可能である。換算された後に、即ち、触媒の仕込み質量配合比は0.1:100~10:100である。
【0027】
ステップ(1)における触媒の使用量は最終的な製品を製造するのに必要な触媒の総使用量である。即ち、ステップ(2)において前記触媒をさらには添加しない。ステップ(1)における触媒はステップ(2)において依然として触媒活性を有する。
【0028】
ステップ(1)における触媒の仕込み質量配合比により、得られたプレポリマー混合物における触媒含有量を合理的な範囲内に制御することができる。例えば、プレポリマー混合物において、ポリ乳酸プレポリマー及び反応されていないモノマーIの総質量に占める前記触媒の質量の百分率は0.09~9.1%である。いくつかの好ましい実施形態において、前記触媒は有機金属化合物であり、前記プレポリマー混合物において、触媒の含有量(対応する金属で)は300~10000ppm(例えば、500ppm、1000ppm、2000ppm、5000ppm、8000ppm)、より好ましくは600~4000ppmである。
【0029】
ステップ(2)の重合反応が終了した後に、得られたポリ乳酸製品系における触媒の残留率≦0.12%である必要がある。ステップ(2)に記載のプレポリマー混合物とモノマーIIの反応系にける材料配合比を調整することにより、ポリ乳酸製品系における触媒の含有量の要求を実現することができる。
【0030】
いくつかの示例では、ステップ(2)に記載のプレポリマー混合物とモノマーIIの反応系において、触媒の含有量≦0.12%(例えば、触媒の含有量は0.1%、0.08%、0.05%、0.01%)、好ましくは≦0.02%である。
【0031】
いくつかの好ましい実施形態において、前記触媒は有機金属化合物であり、ステップ(2)に記載のプレポリマー混合物とモノマーIIの反応系において、触媒の含有量(対応する金属で)は15~50ppm(例えば、18ppm、25ppm、30ppm、35ppm、45ppm)、より好ましくは20~40ppmである。
【0032】
いくつかの示例では、前記モノマーI及びモノマーIIにおいて、前記ラクチドはL-ラクチド、D-ラクチド及びメソラクチドから選ばれる1種又は複数種である。
【0033】
いくつかの好ましい実施形態において、前記モノマーI及びモノマーIIはさらにそれぞれ独立して第2のモノマーを含み、前記第2のモノマーは環状ラクトン及び/又はエポキシ化合物から選ばれ、より好ましくは環状ラクトンから選ばれ、さらに好ましくはカプロラクトン及び/又はグリコリドから選ばれる。
【0034】
いくつかの示例では、前記開始剤はヒドロキシル基含有化合物から選ばれる1種又は複数種であり、好ましくはアルコール系化合物から選ばれる1種又は複数種である。ここで記載のアルコール系化合物は一価アルコール、二価アルコール及び多価アルコールの1種又は複数種、例えば、イソデカノール(Isodecanol)、ドデカノール、1,2-エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン(TMP)、ペンタエリスリトールであってもよい。
【0035】
いくつかの示例では、ステップ(1)の反応系において、前記モノマーIの残留率は2~20%(例えば、3%、5%、8%、10%、15%)である。ここで、モノマーIの残留率は転化率と互いに換算可能である。
【0036】
いくつかの示例では、ステップ(2)の反応系において、転化率は90~98%(例えば、92%、95%)、好ましくは94~96%である。ここでの転化率とはモノマーIとモノマーIIの転化率を意味してもよい。
【0037】
転化率の計算とは、重合物に転化されたモノマー質量と総モノマー仕込み質量の比を指す。モノマーI及びモノマーIIはそれぞれラクチドのみを含むときに、L-ラクチド、D-ラクチド及びメソラクチドの分子量が同じであるため、転化率も重合物に転化されたモノマーモル数と総モノマー仕込みモル数の比に等しい。重合前後のモノマーの核磁気スペクトルおけるピーク位置は異なり、核磁気スペクトルにより計算可能である。
【0038】
いくつかの示例では、ステップ(1)の反応温度は150~220℃、好ましくは170~200℃であり、ステップ(2)の反応温度は170~220℃、好ましくは175~200℃である。
【0039】
いくつかの示例では、ステップ(1)の製造方法はバッチ製造、半連続製造又は連続製造である。
【0040】
例えば、ステップ(1)は一括仕込みのバッチ製造である。バッチ製造で使用される製造装置は当業者によく知られており、釜式反応器であってもよい。
【0041】
例えば、ステップ(1)は半連続製造であり、ここで、開始剤、触媒を一括添加し、モノマーIを持続的に添加し、所定の仕込み配合比及び転化率に達した後に、系内で得られたプレポリマー混合物を一括排出する。半連続製造で使用される製造装置は当業者によく知られており、釜式反応器であってもよい。
【0042】
例えば、ステップ(1)は連続製造であり、ここで、開始剤、触媒、モノマーIを仕込み配合比で製造装置における反応器の入口に同期に添加し、反応器内の材料が所定の転化率に達した後に、系内で得られたプレポリマー混合物を反応器の出口から連続的に排出する。連続製造で使用される製造装置は当業者によく知られており、管式反応器であってもよい。
【0043】
いくつかの示例では、ステップ(2)の製造方法はバッチ製造であり、得られたポリ乳酸の数平均分子量変動≦2%であるか、或いは半連続製造であり、得られたポリ乳酸の数平均分子量変動≦2%であるか、或いは連続製造であり、得られたポリ乳酸の数平均分子量変動≦5%、好ましくは≦2%である。
【0044】
例えば、ステップ(2)は一括仕込みのバッチ製造であり、複数のバッチのポリ乳酸製品の製造ではいずれも同一バッチのプレポリマー混合物を使用する。
【0045】
例えば、ステップ(2)は半連続製造であり、プレポリマー混合物を反応器に一括添加し、モノマーIIを持続的に添加し、所定の仕込み配合比及び転化率に達した後に、得られた高分子量のポリ乳酸を一括排出し、複数のバッチのポリ乳酸製品の製造では同一バッチのプレポリマー混合物を使用する。
【0046】
例えば、ステップ(2)は連続製造であり、プレポリマー混合物とモノマーIIを仕込み配合比で反応器の入口に同期に添加し、反応器内に所定の転化率に達した後に、高分子量のポリ乳酸を反応器の出口から連続的に排出し、24h内で得られた高分子量のポリ乳酸の数平均分子量変動≦5%である。
【0047】
好ましい実施形態において、ステップ(1)及びステップ(2)の製造方法はいずれも連続製造であり、より好ましくは、ステップ(1)及びステップ(2)において管式反応器を使用する。
【0048】
本明細書において、前記ポリ乳酸の数平均分子量の変動(例えば、≦5%又は≦2%)とは、得られたポリ乳酸の数平均分子量の変動範囲の絶対値を指すことができる。
【0049】
本願の技術案の鍵は、モノマーのステップごとの仕込み及び重合を採用し、得られる生成物の分子量を段階的に増幅して触媒の濃度を段階的に希釈する製造プロセスにあり、例えば、具体的には2つのポイントを含めることができる。第一に、得られる生成物の分子量を段階的に増幅することにより、製造プロセス配合における開始剤とモノマーの使用量との間の差異(即ち、開始剤の仕込み質量配合比を増加させる)を低減し、秤量及び仕込みによる開始剤の製造と操作の困難さを低減し、製造過程におけるポリ乳酸製品の分子量安定性を向上させる。第二に、触媒の濃度を段階的に希釈することにより、製造プロセス配合における触媒と他の成分(モノマー+開始剤)の使用量との間の差異(すなわち、触媒の仕込み質量配合比を増加させる)を低減し、秤量及び仕込みによる触媒の製造と操作の困難さを低減し、製造過程における転化率安定性を向上させ、さらにポリ乳酸製品の分子量安定性を向上させる。以下、具体的な例により解釈して説明する。
【0050】
例えば、ラクチドをモノマーとし、分子量が158のイソデカノールを開始剤とし、102ppmのオクタン酸第一スズ(30ppmのSn)を触媒とし、Mn=100000±5000(数平均分子量変動≦5%で)の高分子量のポリ乳酸を合成する必要がある。それぞれモノマーのワンステップ重合重合反応、モノマーのステップごとの仕込み及び重合の製造過程に従って行われる。
【0051】
(1)製造過程でモノマーのワンステップ重合反応を用いて直接重合すると、1000kgごとのポリ乳酸製品はラクチド998.42kg、イソデカノール1.580kg、オクタン酸第一スズ0.102kg(触媒の使用量が非常に少なく、製品の質量に入らず、以下も同様である)が必要である。製造過程でイソデカノールの仕込み精度に対する要求は1.505~1.663kgであり、イソデカノールの仕込み質量配合比は0.158%であり、オクタン酸第一スズの仕込み質量配合比は0.01%である。製造実施では、開始剤及び触媒の仕込み質量配合比は、非常に小さくて開始剤及び触媒の高精度の秤量及び仕込みの高精度の制御を達成しにくい、且つ材料の添加方法及び材料の添加操作の影響を受けて変動しやすいため、最終的なポリ乳酸製品の製造安定性を確保することができないことを発見した。
【0052】
(2)製造過程でモノマーのステップごとの仕込み及び重合、製品の分子量を段階的に増幅して触媒の濃度を段階的に希釈する製造方法を採用すると、まず、理論分子量が2000のポリ乳酸プレポリマーを合成することが予定可能であり、次に、ポリ乳酸プレポリマーを含むプレポリマー混合物を得た後に、製品の分子量を50倍増幅することで、分子量が10000のポリ乳酸製品を得ることができる。
【0053】
理論分子量が2000のポリ乳酸プレポリマーの合成ステップにおいて、1000kgごとのポリ乳酸プレポリマーはラクチド921kg、イソデカノール79.0kg、オクタン酸第一スズ5.12kgが必要である。イソデカノールの仕込み精度に対する要求は75.24~83.16kgであり、イソデカノールの仕込み質量配合比は7.9%であり、オクタン酸第一スズの仕込み質量配合比は0.5%である。これにより、モノマーのワンステップ重合重合の製造方法と比較して、ポリ乳酸プレポリマーの製造過程におけるイソデカノールとオクタン酸第一スズの仕込み質量配合比はいずれも50倍増幅され、開始剤及び触媒は高精度の秤量及び装置での均一な混合が容易であることが分かる。イソデカノールの秤量誤差が0.158kgから7.9kgに向上し、開始剤の秤量が大幅に容易になる。理論分子量が2000のポリ乳酸プレポリマーから、分子量が100000のポリ乳酸製品を合成するステップにおいて、1000kgごとのポリ乳酸製品は20kgのポリ乳酸プレポリマー及び980kgのラクチドが必要であれば、ポリ乳酸プレポリマーの仕込み質量配合比は2.0%であり、秤量及び材料添加も容易である。
【0054】
しかしながら、得られる生成物の分子量を段階的に増幅し、及び触媒の濃度を段階的に希釈する製造プロセスでは、適切なプレポリマー混合物をどのように決定するかに、その操作上の難点がある。
【0055】
プレポリマー混合物は、通常、触媒、完全に反応されていないモノマーI及びポリ乳酸プレポリマーを含み、この3つの成分はいずれもプレポリマー混合物の系内に一定の影響を与える。以下、それぞれ検討される。
【0056】
i)プレポリマー混合物におけるモノマーIの含有量は主に転化率により決定され、ラクチド開環重合は可逆的な開環重合であり、反応が平衡に達すると、系内にモノマーが不可避的に存在し、重合反応の温度に応じて、最終的な系内におけるモノマーの含有量はわずかに異なる。製造経済性を考慮すると、ステップ(1)での転化率を80~98%に制御すればよく、即ち、モノマーIの残留率は約2~20%である。残留されたモノマーIはステップ(2)で重合反応に関与し続ける。
【0057】
ii)プレポリマー混合物におけるポリ乳酸プレポリマーの含有量も同様に転化率により決定され、上記のi)の内容を参照可能である。
【0058】
また、ポリ乳酸プレポリマーの理論分子量は多面的な影響をもたらす。本発明では、生成物の分子量を段階的に増幅する製造方法を採用し、そのキーパラメータは、適切な増幅比率を選択することにより、各ステップでの原料成分の秤量と材料添加を容易にする。適切な増幅比率はステップ(1)におけるモノマーIが100%転化されたときに得られたポリ乳酸プレポリマーの理論分子量に表現される。適切なポリ乳酸プレポリマー理論分子量を選択することにより、ステップ(1)及びステップ(2)の製造プロセスフォーミュラにおける各成分をいずれも秤量、材料添加及び均一に混合しやすくすることができる。
【0059】
例えば、開始剤の分子量がM1、モノマーIが100%転化されたときに得られた高分子量のポリ乳酸の理論数平均分子量がPであると、最もバランスの取れたポリ乳酸プレポリマーの理論分子量M2はM1及びPの間にあり、且つ両者との比率のバランスを取るべきである。即ち、M1:M2=M2:Pであれば、ポリ乳酸プレポリマーの理論分子量M2の最適値は次のとおりである。
【数2】
【0060】
算出した最適値に従ってポリ乳酸プレポリマーの理論分子量M2を選択すると、ツーステップの操作における原料成分の秤量及び材料添加の困難さは同等である。M2が大きすぎると、ステップ(1)における原料成分の秤量及び材料添加の困難さを増加させ、M2が小さすぎると、ステップ(2)における原料成分の秤量及び材料添加の困難さを増加させる。しかしながら、製造過程において、M2の選択値に影響を与える多くの要因があり、最適値からずれる。原料秤量及び材料添加の精度に影響を与えない条件下で、M2の選択値も最適値からずれる。
【0061】
本願の製造方法において、高分子量のポリ乳酸の理論数平均分子量P値は4.5万以上であり、最高は通常、50万を超えない。製造実施の実現可能性に応じて、秤量及び和材料添加の精度を確保するように、ステップ(1)における材料添加時の開始剤の仕込み配合比、触媒の仕込み配合比及びステップ(2)における材料添加時のプレポリマー混合物の仕込み配合比を考慮する必要がある。出願人の詳細な検討により、M2の適切な取り得る値の範囲を選択することにより、M1:M2≧1:100を満たし、それとともにM2の取り得る値を適切に調整することにより、M2:Pが0.5:100~10:100であることを兼ねることができることが分かった。
【0062】
反応系において、ポリ乳酸プレポリマー及び残留されたモノマーIがステップ(2)で依然として反応し続けるため、製造されたポリ乳酸プレポリマーの実際の分子量を精度よく制御する必要がない。もし必要があれば、プレポリマー混合物のヒドロキシル値を測定する方法で、換算して高精度のポリ乳酸プレポリマーの理論数平均分子量(例えば、ポリ乳酸プレポリマーの理論数平均分子量=56.1*f*1000/ヒドロキシル値、ただし、fは官能性を表す)を得ることができる。ステップ(1)に記載のプレポリマー混合物のヒドロキシル値を測定し、測定されたヒドロキシル値(即ち、測定されたヒドロキシル値によってポリ乳酸プレポリマーの理論分子量を決定可能である)及び予定された最終的なポリ乳酸製品の目標分子量に応じて、ステップ(2)に記載のプレポリマー混合物とモノマーIIの質量比を決定することができる。必要があれば、ステップ(2)でモノマーのステップごとの材料添加及び重合の方法を再度採用することができ、特にデバイスが限定されており、高分子量のポリ乳酸を合成する必要があるときに、モノマーの複数回のステップごとの重合は、高精度の秤量デバイスへの依存を著しく低減することができる。
【0063】
iii)プレポリマー混合物における触媒の含有量は、最終的なポリ乳酸製品における触媒の含有量に対する要求及びステップ(2)におけるプレポリマー混合物とモノマーの質量配合比によって決定されることができる。
【0064】
製造過程において、最終的なポリ乳酸製品における触媒の含有量が要求を満たすようにする必要がある。例えば、触媒は有機スズ化合物であることを例にとって、該系内における触媒の含有量はSnで15~50ppmであってもよい。重合反応完了した後に行う可能なモノマー脱離ステップが製品における触媒の濃度の増加をもたらすことを考慮すると、ステップ(2)におけるプレポリマー混合物とモノマーIIを混合した後の系内における触媒の含有量をSnで20~40ppmに調整して制御することにより、モノマーを脱離した後の触媒含有量が依然として≦50ppmを満たすようにできる。
【0065】
ステップ(2)におけるプレポリマー混合物とモノマーIIの質量配合比を決定し、これに応じて、プレポリマー混合物における触媒の含有量の範囲を算出し、製造の経済性を向上させることができる。異なる有機金属化合物又は有機塩基を触媒として使用すると、触媒の毒性及び触媒効率に応じて、触媒の使用量を調整することができる。
【0066】
iv)プレポリマー混合物における各成分の組成は、プレポリマー混合物の粘度も考慮する必要がある。粘度は大きすぎると、第1の態様で、反応の物質移動に不利であり、ステップ(1)の製造制御に不利であり、第2の態様で、プレポリマー混合物の輸送に不利であり、エネルギー消費を増加させ、第3の態様で、プレポリマー混合物とステップ(2)で添加されたモノマーの混合に不利である。製造の利便性を考慮し、180℃でのプレポリマー混合物の粘度が10~500cpであるように選択することができる。
【0067】
ステップ(1)における転化率<80%に制御し、プレポリマー混合物におけるモノマーの含有量>20%に増加させ、180℃でのプレポリマー混合物の粘度が10~500cpであるように維持する場合、プレポリマー混合物の理論数平均分子量を増加させることができ、且つステップ(2)の製造に寄与するが、その難点は、ステップ(1)の系内における触媒の濃度が非常に高く、反応が非常に速く、製造でステップ(1)における転化率≧80%に制御するのに便利であることにある。
【0068】
他の態様では、上記の製造方法で製造されたプレポリマー混合物をさらに提供し、前記プレポリマー混合物は触媒、反応されていないモノマーI及びポリ乳酸プレポリマーを含む。
【0069】
本発明に係るプレポリマー混合物によれば、いくつかの示例では、前記プレポリマー混合物の180℃における粘度は10~500cp(例えば、50cp、100cp、200cp、300cp、400cp)である。
【0070】
いくつかの示例では、前記プレポリマー混合物において、ポリ乳酸プレポリマーと反応されていないモノマーIの総重量を100wt%として、前記ポリ乳酸プレポリマーの含有量は80~98wt%(例えば、85wt%、90wt%、95wt%)であり、前記反応されていないモノマーIの含有量は2~20wt%(例えば、3wt%、6wt%、12wt%、18wt%)である。
【0071】
いくつかの示例では、ポリ乳酸プレポリマー及び反応されていないモノマーIの総質量に占める前記触媒の質量の百分率は0.09~9.1%(例えば、0.1%、0.2%、0.5%、1%、3%、5%、8%)である。
【0072】
いくつかの示例では、前記触媒は有機金属化合物であり、前記プレポリマー混合物において、触媒の含有量は対応する金属で300~10000ppm(例えば、500ppm、800ppm、1200ppm、2500ppm、5000ppm、8000ppm)、好ましくは600~4000ppmである。
【0073】
いくつかの示例では、前記ポリ乳酸プレポリマーの数平均分子量は800~5000(例えば、1000、2000、3000、4000)である。
【0074】
さらに他の態様では、上記の製造方法で製造された高分子量のポリ乳酸をさらに提供する。
【0075】
好ましくは、前記ポリ乳酸の数平均分子量Mn≧4.5万(例えば、5万、8万、12万、15万、20万、30万、40万、45万)であり、より好ましくは数平均分子量Mn≧6万である。
【0076】
好ましくは、前記ポリ乳酸の多分散性指数(polydispersity index)PDIは1.65-2.2(例えば、1.7、1.8、2.0、2.1)である。
【0077】
本発明のステップ(1)で得られたプレポリマー混合物には反応されていないモノマーIが含まれ、且つ処理せずに系内にモノマーIIを直接添加する。モノマーIの組成とモノマーIIの組成が異なるときに、残留したモノマーIはモノマーIIの組成に干渉する。モノマーIIの組成にモノマーIが含まれるときに(例えば、モノマーIは100%のL-ラクチドであるが、モノマーIIは50%のL-ラクチドと50%のD-ラクチドの混合物である)、モノマーIIの組成を適切に調整することで上記の干渉を回避することにより、所望の共重合体を得ることができる。しかし、モノマーIIの組成にはモノマーI(例えば、モノマーIは100%のL-ラクチドであるが、モノマーIIは100%のD-ラクチドである)が完全に含まれず、且つ相分離の高いブロック共重合体を得ることが期待されるときに、まず、L-ラクチドの重合を行い、次に触媒の脱離及びモノマーの脱離を行い、系内に触媒及びD-ラクチドを再添加してブロック重合するという方法を採用する必要がある。しかしながら、この方法は、本発明の製造方法とに区別がある。
【0078】
したがって、本発明において、好ましくは、前記ポリ乳酸はブロック共重合体ではない。
【0079】
ステップ(2)において、プレポリマー混合物とモノマーIIの質量比が≦2:98であると、ポリ乳酸重合物の全体的な組成に対する目標製品におけるプレポリマー混合物セグメンの影響を無視でき、この時、最終的な製品は、モノマーIIの重合により完全に得られたものと考えられ、ブロックではない製品である。
【0080】
数平均分子量Mn<4.5万のポリ乳酸を製造するときに、従来のワンステップ開環重合製造方法と本発明に記載の製造方法はいずれも製品の製造安定性を効果的に満たすことができる。しかし、数平均分子量Mn≧4.5万のポリ乳酸を製造するときに、本発明に記載の製造方法は高製造安定性をより効果的に向上させ、基本的にポリ乳酸製品の数平均分子量の変動範囲が非常に小さく、例えば、その変動範囲≦2%であることを確保することができる。
【0081】
ポリ乳酸の数平均分子量は、ジクロロメタンを移動相として、ポリスチレンを標準参照物としてGPCでテストできる。本発明で製造された高分子量のポリ乳酸の数平均分子量はフォーミュラにより算出された理論分子量と通常、不一致であり、且つ通常、フォーミュラにより算出された理論分子量よりも小さい。これは、主に2つの原因によるものであり、一つは高分子量のポリ乳酸の数平均分子量は絶対値ではなくポリスチレン標準参照物に対する相対値であるためであり、もう一つは使用された原料のモノマーに必然的に水が残留し、水は開始剤としてラクチドの開環重合を開始し、実際に反応に関与する開始剤の使用量を増加させ、ポリ乳酸分子量を低減することができるためである。
【0082】
当業者は、ポリ乳酸の製造実施において、原料のモノマーの純度、水分含有量などの要因に応じて、製造実施によって仕込みフォーミュラと実際の製品の分子量との間の合理的な関係を確立すべきであり、仕込みフォーミュラによって簡単に換算することはできない。
【0083】
従来の技術に対して、本発明の技術案は次の有益な効果を有する。
1、モノマーのステップごとの仕込み及びステップごとの重合の方法により、先にプレポリマー混合物を合成してから生成物の分子量の増幅を行う製造方法は、製造プロセスにおける秤量及び材料添加時に存在する原料の操作困難さを低減させ、製造安定性(特にポリ乳酸分子量の安定性)を向上させる。好ましい実施形態において、バッチ製造を採用して5バッチの最終的な製品を製造すると、同一バッチのプレポリマー混合物を用いて同じ原料フォーミュラで製造された高分子量ポリ乳酸製品は、数平均分子量変動範囲≦2%であり、連続製造を採用すると、同じ原料フォーミュラで24h内に得られた高分子量のポリ乳酸製品は、数平均分子量変動範囲≦5%であり、
2、本発明では、得られたプレポリマー混合物の組成を選択することは肝心であり、プレポリマー混合物におけるポリ乳酸プレポリマーの含有量及びその理論数平均分子量、反応されていないモノマー含有量及び触媒の含有量により、適切なプレポリマー混合物を決定し、得られる生成物の分子量を段階的に増幅し、及び触媒の濃度を段階的に希釈する製造プロセスを実現することができ、
3、本発明は、同一プレポリマー混合物から、異なる分子量のポリ乳酸製品を製造する方法を同時に提供し、製造の柔軟性を向上させ、プレポリマー混合物とモノマーの質量配合比を調整することにより、同一バッチのプレポリマー混合物から、分子量の異なるさまざまなポリ乳酸製品を柔軟に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0084】
本発明の技術的特徴及び内容を詳細に理解できるように、以下、本発明の好ましい実施形態をより詳細に説明する。実施例において本発明の好ましい実施形態について説明しているが、本発明はさまざまな形態で実施することができ、ここで説明される実施形態に限定されるべきではないことを理解すべきである。
【0085】
<原料の由来>
L-ラクチド及びD-ラクチドは、いずれもCorbionから購入され、工業用グレードであり、
トリメチロールプロパン(TMP)は、アラディン試薬公司から購入され、試薬グレードであり、
エチレングリコールは、アラディン試薬公司から購入され、試薬グレードであり、
イソデカノールは、北京InnoChem科技有限公司から購入され、試薬グレードであり、
1,4-ブタンジオールは、美克から購入され、工業用グレードであり、
1,6-ヘキサンジオールは、元利から購入され、工業用グレードである。
他の原料及び試薬は、いずれもアラディン試薬公司から購入され、試薬グレードである。
【0086】
<テスト方法>
転化率は、H NMRでテストし、次に測定した転化率及び反応過程における原料仕込み質量配合比に応じて、系内におけるモノマーの含有量を計算した。
ポリ乳酸プレポリマーの実際の数平均分子量は、反応原料の仕込み配合比と転化率により換算した。
触媒における金属(例えば、Sn元素)の含有量の検出はICPにより検出した。
プレポリマー混合物の粘度はBrookfield社のコーンプレート型粘度計によりテストした。
高分子量のポリ乳酸の数平均分子量Mn及びPDI(重合物分散性指数、重合物の分子量の分布を説明するために用いられる)は、ジクロロメタンを移動相として、ポリスチレンを標準参照物としてGPCでテストした。
【0087】
特に明記しない限り、すべてのモノマーにおける水分含有量≦50ppmである。
製造過程において、すべての製造デバイスは使用される前に窒素を導入してデバイス内の空気を除去する必要がある。
【0088】
実施例1
プレポリマー混合物の製造について
1500Lのステンレス鋼反応釜に1,6-ヘキサンジオール59.1kg、L-ラクチド941kg及びオクタン酸第一スズ6.8kgを添加して開環重合反応させた。180℃で撹拌して45分間反応させて開環重合を行い、ポリ乳酸プレポリマーを含むプレポリマー混合物Aを得た。モノマーが100%転化されたときに、該ポリ乳酸プレポリマーの理論数平均分子量は2000である。反応系における転化率は97.1%であり、プレポリマー混合物AにおけるL-ラクチドモノマーの含有量を2.7wt%として算出し、プレポリマー混合物Aで得られたポリ乳酸プレポリマーの数平均分子量は1945であり、180℃における粘度は55cpであり、Snの含有量は0.2%(2000ppm)である。
【0089】
該製造過程において、1,6-ヘキサンジオールの仕込み質量配合比は59.1kg/(59.1kg+941kg)=5.9:100である。オクタン酸第一スズの仕込み質量配合比は6.8kg/(59.1kg+941kg)=0.68:100である。この原料仕込み質量配合比下で、開始剤と触媒の仕込み、秤量を高精度にすることができる。
【0090】
高分子量ポリ乳酸の製造について
1500Lのステンレス鋼反応釜に得られたプレポリマー混合物A 20.0kg、L-ラクチド980kgを添加して反応させ、180℃で撹拌して4時間反応させ、高分子量のポリ乳酸製品を得た。得られたポリ乳酸のMn=68640であり、PDI=1.71である。系内におけるL-ラクチドモノマーの残留率は4.5%であり、Snの含有量は40ppmである。
【0091】
該製造過程において、プレポリマー混合物Aの仕込み質量配合比は:20.0kg/(20.0kg+980kg)=2.0:100である。この原料仕込み質量配合比下で、プレポリマー混合物の仕込み、秤量を高精度にすることができる。
【0092】
その後、プレポリマー混合物Aを用いたポリ乳酸の製造過程を4回繰り返し、合計5バッチのポリ乳酸製品を製造した。製造された5バッチのポリ乳酸の結果を表1に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
得られたポリ乳酸の数平均分子量の変動範囲はその平均値の-0.5%~+0.7%である。
【0095】
実施例2
プレポリマー混合物の製造について
1500Lのステンレス鋼反応釜に1,6-ヘキサンジオール59.1kg、L-ラクチド941kg及びオクタン酸第一スズ6.8kgを添加して開環重合反応させた。180℃で撹拌して45分間反応させて開環重合を行い、ポリ乳酸プレポリマーを含むプレポリマー混合物Aを得た。モノマーが100%転化されたときに、該ポリ乳酸プレポリマーの理論数平均分子量は2000である。反応系における転化率は97.1%であり、プレポリマー混合物AにおけるL-ラクチドモノマーの含有量を2.7wt%として算出し、プレポリマー混合物Aで得られたポリ乳酸プレポリマーの数平均分子量は1945であり、180℃における粘度は55cpであり、Snの含有量は0.2%(2000ppm)である。
【0096】
該製造過程において、1,6-ヘキサンジオールの仕込み質量配合比は:59.1kg/(59.1kg+941kg)=5.9:100である。オクタン酸第一スズの仕込み質量配合比は6.8kg/(59.1kg+941kg)=0.68:100である。この原料仕込み質量配合比下で、開始剤と触媒の仕込み、秤量を高精度にすることができる。
【0097】
高分子量ポリ乳酸の製造について
1500Lのステンレス鋼反応釜に得られたプレポリマー混合物A 13.3kg、L-ラクチド900.0kg及びD-ラクチド86.7kgを添加して反応させ、170℃で撹拌して9時間反応させ、高分子量のポリ乳酸製品を得た。得られたポリ乳酸のMn=97143であり、PDI=1.93である。系内におけるモノマーの残留率は4.5%であり、Snの含有量は26.7ppmである。
【0098】
該製造過程において、プレポリマー混合物Aの仕込み質量配合比は13.3kg/(13.3kg+986.7kg)=1.3:100である。この原料仕込み質量配合比下で、プレポリマー混合物の仕込み、秤量を高精度にすることができる。
【0099】
その後、プレポリマー混合物Aを用いたポリ乳酸の製造過程を4回繰り返し、合計5バッチのポリ乳酸製品を製造した。製造された5バッチのポリ乳酸の結果を表2に示す。
【0100】
【表2】
【0101】
得られたポリ乳酸の数平均分子量の変動範囲はその平均値の-0.5%~+0.7%である。
【0102】
実施例3
プレポリマー混合物の製造について
第1のプラグフロー反応器に、反応材料を連続的に添加して製品を連続的に抽出し、各反応材料の流量は次のとおりである。トリメチロールプロパン(TMP)の流量は11.2kg/h、L-ラクチドの流量は88.8kg/h、オクタン酸第一スズの流量は1.36kg/hであり、各反応材料を160℃で開環重合反応させ、反応停留時間は45minであり、ポリ乳酸プレポリマーを含むプレポリマー混合物Bを得た。モノマーが100%転化されたときに、該ポリ乳酸プレポリマーの理論数平均分子量は1200である。反応系における転化率は93.5%であり、プレポリマー混合物BにおけるL-ラクチドモノマーの含有量を5.8wt%として算出し、プレポリマー混合物Bで得られたポリ乳酸プレポリマーの数平均分子量は1131であり、180℃における粘度は38cpであり、Snの含有量は0.4%(4000ppm)である。得られた製品を貯蔵タンクに入れて一時保管した。
【0103】
製造過程において、トリメチロールプロパンの仕込み質量配合比は11.2kg/(11.2kg+88.8kg)=11.2:100である。オクタン酸第一スズの仕込み質量配合比は1.36kg/(11.2kg+88.8kg)=1.36:100である。この原料仕込み質量配合比下で、開始剤と触媒の仕込み、秤量を高精度にすることができる。
【0104】
高分子量ポリ乳酸の製造について
第2のプラグフロー反応器に、反応材料を連続的に添加して製品を連続的に抽出し、各反応材料の流量は次のとおりである。プレポリマー混合物Bの流量は1.0kg/h、L-ラクチドの流量は99.0kg/hであり、200℃で重合反応させ、反応停留時間は4hであり、高分子量のポリ乳酸製品を得た。系内におけるSnの含有量は40ppmである。
【0105】
該製造過程において、プレポリマー混合物Bの仕込み質量配合比は1.0kg/(1.0kg+99.0kg)=1.0:100である。この原料仕込み質量配合比下で、プレポリマー混合物の仕込み、秤量を高精度にすることができる。
【0106】
製造過程において、6時間ごとに1回サンプリングし、5回のサンプリング後、合計5バッチのポリ乳酸製品を得た。製造された5バッチのポリ乳酸の結果を表3に示す。
【0107】
【表3】
【0108】
得られたポリ乳酸の数平均分子量の変動範囲はその平均値の-3.7%~+3.3%である。
【0109】
実施例4
プレポリマー混合物の製造について
第1のプラグフロー反応器に、反応材料を連続的に添加して製品を連続的に抽出し、各反応材料の流量は次のとおりである。エチレングリコールの流量は6.2kg/h、L-ラクチドの流量は93.8kg/h、オクタン酸第一スズの流量は2.73kg/hであり、各反応材料を150℃で開環重合反応させ、反応停留時間は45minであり、ポリ乳酸プレポリマーを含むプレポリマー混合物Cを得た。モノマーが100%転化されたときに、該ポリ乳酸プレポリマーの理論数平均分子量は1000である。反応系における転化率は97.0%であり、プレポリマー混合物CにおけるL-ラクチドモノマーの含有量を2.8wt%として算出し、プレポリマー混合物Cで得られたポリ乳酸プレポリマーの数平均分子量は972であり、180℃における粘度は10cpであり、Snの含有量は0.8%(8000ppm)である。得られた製品を貯蔵タンクに入れて一時保管した。
【0110】
製造過程において、エチレングリコールの仕込み質量配合比は6.2kg/(6.2kg+93.8kg)=6.2:100である。オクタン酸第一スズの仕込み質量配合比は2.73kg/(6.2kg+93.8kg)=2.73:100である。この原料仕込み質量配合比下で、開始剤と触媒の仕込み、秤量を高精度にすることができる。
【0111】
高分子量ポリ乳酸の製造について
第2のプラグフロー反応器に、反応材料を連続的に添加して製品を連続的に抽出し、各反応材料の流量は次のとおりである。プレポリマー混合物Cの流量は0.5kg/h、L-ラクチドの流量は99.5kg/hであり、175℃で重合反応させ、反応停留時間は5.5hであり、高分子量のポリ乳酸製品を得た。系内におけるSnの含有量は40ppmである。
【0112】
該製造過程において、プレポリマー混合物Cの仕込み質量配合比は0.5kg/(0.5kg+99.5kg)=0.5:100である。この原料仕込み質量配合比下で、プレポリマー混合物の仕込み、秤量を高精度にすることができる。
【0113】
製造過程において、6時間ごとに1回サンプリングし、5回のサンプリング後、合計5バッチのポリ乳酸製品を得た。製造された5バッチのポリ乳酸の結果を表4に示す。
【0114】
【表4】
【0115】
得られたポリ乳酸の数平均分子量の変動範囲はその平均値の-3.4%~+3.3%である。
【0116】
実施例5
プレポリマー混合物の製造について
1500Lのステンレス鋼反応釜に1,6-ヘキサンジオール23.6kg、L-ラクチド898kg、D-ラクチド78kg及びオクタン酸第一スズ6.8kgを添加して開環重合反応させ、開環重合しながら220℃で撹拌して45分間反応させ、ポリ乳酸プレポリマーを含むプレポリマー混合物Dを得た。モノマーが100%転化されたときに、ポリ乳酸プレポリマーの理論数平均分子量は5000である。反応系における転化率は97.0%であり、プレポリマー混合物Dにおけるモノマーの含有量を2.9wt%として算出し、プレポリマー混合物Dで得られたポリ乳酸プレポリマーの数平均分子量は4854であり、180℃における粘度は218cpであり、Snの含有量は0.2%(2000ppm)である。
【0117】
製造過程において、1,6-ヘキサンジオールの仕込み質量配合比は23.6kg/(23.6kg+976kg)=2.36:100である。オクタン酸第一スズの仕込み質量配合比は6.8kg/(23.6kg+976kg)=0.68:100である。この原料仕込み質量配合比下で、開始剤と触媒の仕込み、秤量を高精度にすることができる。
【0118】
高分子量ポリ乳酸の製造について
1500Lのステンレス鋼反応釜に得られたプレポリマー混合物D 20.0kg、L-ラクチド902kg、D-ラクチド78kgを添加して反応させ、220℃で撹拌して3時間反応させ、高分子量のポリ乳酸を生成した。ポリ乳酸製品のMn=145731であり、PDI=2.17である。系内におけるラクチドモノマーの残留率は3%であり、Snの含有量は40ppmである。
【0119】
該製造過程において、プレポリマー混合物Dの仕込み質量配合比は20.0kg/(20.0kg+980kg)=2.0:100である。この原料仕込み質量配合比下で、プレポリマー混合物の仕込み、秤量を高精度にすることができる。
【0120】
その後、プレポリマー混合物Aを用いたポリ乳酸の製造過程を4回繰り返し、合計5バッチのポリ乳酸製品を製造した。製造された5バッチのポリ乳酸の結果を表5に示す。
【0121】
【表5】
【0122】
得られたポリ乳酸の数平均分子量の変動範囲はその平均値の-1.4%~+1.7%である。
【0123】
実施例6
プレポリマー混合物の製造について
1500Lのステンレス鋼反応釜に1,4-ブタンジオール45.1kg、L-ラクチド225kg及びオクタン酸第一スズ5.5kgを添加し、170℃に昇温して撹拌して開環重合反応を始め、次に30min内に730kgのL-ラクチドを添加し、添加完了した後に170℃で50分間反応し続け、反応完了した後にポリ乳酸プレポリマーを含むプレポリマー混合物Eを得た。モノマーが100%転化されたときに、該ポリ乳酸プレポリマーの理論数平均分子量は2000である。反応系における転化率は96.5%であり、プレポリマー混合物Eにおけるモノマーの含有量を3.3wt%として算出し、プレポリマー混合物Eで得られたポリ乳酸プレポリマーの数平均分子量は1933であり、180℃における粘度は22cpであり、Snの含有量は0.16%(1600ppm)である。
【0124】
製造過程において、1,4-ブタンジオールの仕込み質量配合比は45.1kg/(45.1kg+955kg)=4.5:100である。オクタン酸第一スズの仕込み質量配合比は5.5kg/(45.1kg+955kg)=0.55:100である。この原料仕込み質量配合比下で、開始剤と触媒の仕込み、秤量を高精度にすることができる。
【0125】
高分子量ポリ乳酸の製造について
プラグフロー反応器に、反応材料を連続的に添加して製品を連続的に抽出し、各反応材料の流量は次のとおりである。プレポリマー混合物Eの流量は2.5kg/h、L-ラクチドの流量は97.5kg/hであり、各反応材料を180℃で重合反応させ、反応停留時間は4hであり、高分子量のポリ乳酸を得た。系内におけるSnの含有量は40ppmである。
【0126】
該製造過程において、プレポリマー混合物Eの仕込み質量配合比は2.5kg/(2.5kg+97.5kg)=2.5:100である。この原料仕込み質量配合比下で、プレポリマー混合物の仕込み、秤量を高精度にすることができる。
【0127】
製造過程において、6時間ごとに1回サンプリングし、5回のサンプリング後、合計5バッチのポリ乳酸製品を得た。製造された5バッチのポリ乳酸の結果を表6に示す。
【0128】
【表6】
【0129】
得られたポリ乳酸の数平均分子量の変動範囲はその平均値の-1.3%~+1.5%である。
【0130】
実施例7
プレポリマー混合物の製造について
1500Lのステンレス鋼反応釜にイソデカノール31.6kg、L-ラクチド968kg及びオクタン酸第一スズ1.0kgを添加して開環重合反応させ、190℃で撹拌して60分間反応させ、ポリ乳酸プレポリマーを含むプレポリマー混合物Fを得た。モノマーが100%転化されたときに、ポリ乳酸プレポリマーの理論数平均分子量は5000である。反応系における転化率は97.5%であり、プレポリマー混合物Fにおけるモノマーの含有量を2.4wt%として算出し、プレポリマー混合物Fで得られたポリ乳酸プレポリマーの数平均分子量は4879であり、180℃における粘度は459cpであり、Snの含有量は300ppmである。
【0131】
製造過程において、イソデカノールの仕込み質量配合比は31.6kg/(31.6kg+968kg)=3.16:100である。オクタン酸第一スズの仕込み質量配合比は1.0kg/(31.6kg+968kg)=0.1:100である。この原料仕込み質量配合比下で、開始剤と触媒の仕込み、秤量を高精度にすることができる。
【0132】
高分子量ポリ乳酸の製造について
プラグフロー反応器に、反応材料を連続的に添加して製品を連続的に抽出し、各反応材料の流量は次のとおりである。プレポリマー混合物Fの流量は10kg/h、L-ラクチドの流量は90kg/hであり、各反応材料を180℃で重合反応させ、反応停留時間は5hであり、高分子量のポリ乳酸を得た。系内のおけるSnの含有量は30ppmである。
【0133】
該製造過程において、プレポリマー混合物Fの仕込み質量配合比は10kg/(10kg+90kg)=10:100である。この原料仕込み質量配合比下で、プレポリマー混合物の仕込み、秤量を高精度にすることができる。
【0134】
製造過程において、6時間ごとに1回サンプリングし、5回のサンプリング後、合計5バッチのポリ乳酸製品を得た。製造された5バッチのポリ乳酸の結果を表7に示す。
【0135】
【表7】
【0136】
得られたポリ乳酸の数平均分子量の変動範囲はその平均値の-0.9%~+0.9%である。
【0137】
比較例1(ワンステップ重合)
高分子量ポリ乳酸の製造について
1500Lのステンレス鋼反応釜に1,6-ヘキサンジオール1.18kg、L-ラクチド999kg及びオクタン酸第一スズ0.14kgを添加して開環重合反応させ、180℃で撹拌して4時間反応させ、ポリ乳酸製品を得た。反応完了後、系内におけるSnの含有量は40ppmである。
【0138】
製造過程において、1,6-ヘキサンジオールの仕込み質量配合比は1.18kg/(1.18kg+999kg)=0.118:100である。オクタン酸第一スズの仕込み質量配合比は0.14kg/(1.18kg+999kg)=0.014:100である。この原料仕込み質量配合比下で、仕込み、秤量における開始剤及び触媒の精度を把握・制御しにくく、混合過程における原料の均一性も影響を受けた。
【0139】
上記の製造過程をまた4回繰り返し、合計5バッチのポリ乳酸製品を得た。製造された5バッチのポリ乳酸の結果を表8に示す。
【0140】
【表8】
【0141】
得られたポリ乳酸の数平均分子量の変動範囲はその平均値の-7.8%~+8.1%である。
【0142】
比較例2(ワンステップ重合)
高分子量ポリ乳酸の製造について
プラグフロー反応器に、反応材料を連続的に添加して製品を連続的に抽出し、各反応材料の流量は次のとおりである。トリメチロールプロパン(TMP)の流量は0.11kg/h、L-ラクチドの流量は99.89kg/h、オクタン酸第一スズの流量は0.014kg/hである。各反応材料を200℃で開環重合反応させ、反応停留時間は3hであり、ポリ乳酸製品を得た。系内におけるSnの含有量は40ppmである。
【0143】
製造過程において、トリメチロールプロパンの仕込み質量配合比は0.11kg/(0.11kg+99.89kg)=0.11:100である。オクタン酸第一スズの仕込み質量配合比は0.014kg/(0.11kg+99.89kg)=0.014:100である。この原料仕込み質量配合比下で、仕込み、秤量における開始剤及び触媒の精度を把握・制御しにくく、混合過程における原料の均一性も影響を受けた。
【0144】
製造過程において、6時間ごとに1回サンプリングし、5回のサンプリング後、合計5バッチのポリ乳酸製品を得た。製造された5バッチのポリ乳酸の結果を表9に示す。
【0145】
【表9】
【0146】
得られたポリ乳酸の数平均分子量の変動範囲はその平均値の-12.5%~+11.6%である。
【0147】
比較例3(ワンステップ重合)
高分子量ポリ乳酸の製造について
プラグフロー反応器に、反応材料を連続的に添加して製品を連続的に抽出し、各反応材料の流量は次のとおりである。エチレングリコールの流量は0.03kg/h、L-ラクチドの流量は99.97kg/h、オクタン酸第一スズの流量は0.014kg/hである。各反応材料を175℃で開環重合反応させ、反応停留時間は5.5hであり、ポリ乳酸製品を得た。系内におけるSnの含有量は40ppmである。
【0148】
製造過程において、エチレングリコールの仕込み質量配合比は0.03kg/(0.03kg+99.97kg)=0.03:100である。オクタン酸第一スズの仕込み質量配合比は0.014kg/(0.03kg+99.97kg)=0.014:100である。この原料仕込み質量配合比下で、仕込み、秤量における開始剤及び触媒の精度を把握・制御しにくく、混合過程における原料の均一性も影響を受けた。
【0149】
製造過程において、6時間ごとに1回サンプリングし、5回のサンプリング後、合計5バッチのポリ乳酸製品を得た。製造された5バッチのポリ乳酸の結果を表10に示す。
【0150】
【表10】
【0151】
得られたポリ乳酸の数平均分子量の変動範囲はその平均値の-22.2%~+17.9%である。
【0152】
比較例4(ワンステップ重合)
高分子量ポリ乳酸の製造について
1500Lのステンレス鋼反応釜に1,6-ヘキサンジオール0.47kg、L-ラクチド919.5kg、D-ラクチド80kg及びオクタン酸第一スズ0.14kgを添加して開環重合反応させた。220℃で撹拌して3時間反応させ、ポリ乳酸製品を得た。系内におけるSnの含有量は40ppmである。
【0153】
製造過程において、1,6-ヘキサンジオールの仕込み質量配合比は0.47kg/(0.47kg+999.5kg)=0.047:100である。オクタン酸第一スズの仕込み質量配合比は0.14kg/(0.47kg+999.5kg)=0.014:100である。この原料仕込み質量配合比下で、仕込み、秤量における開始剤及び触媒の精度を把握・制御しにくく、混合過程における原料の均一性も影響を受けた。
【0154】
上記の製造過程をまた4回繰り返し、合計5バッチのポリ乳酸製品を得た。製造された5バッチのポリ乳酸の結果を表11に示す。
【0155】
【表11】
【0156】
得られたポリ乳酸の数平均分子量の変動範囲はその平均値の-11.8%~+8.5%である。
【0157】
比較例5(ワンステップ重合)
高分子量ポリ乳酸の製造について
プラグフロー反応器に、反応材料を連続的に添加して製品を連続的に抽出し、各反応材料の流量は次のとおりである。1,4-ブタンジオールの流量は0.11kg/h、L-ラクチドの流量は99.89kg/h、オクタン酸第一スズの流量は0.014kg/hである。各反応材料を180℃で開環重合反応させ、反応停留時間は4hであり、ポリ乳酸製品を得た。系内におけるSnの含有量は40ppmである。
【0158】
製造過程において、1,4-ブタンジオールの仕込み質量配合比は0.11kg/(0.11kg+99.89kg)=0.11:100である。オクタン酸第一スズの仕込み質量配合比は0.014kg/(0.11kg+99.89kg)=0.014:100である。この原料仕込み質量配合比下で、仕込み、秤量における開始剤及び触媒の精度を把握・制御しにくく、混合過程における原料の均一性も影響を受けた。
【0159】
製造過程において、6時間ごとに1回サンプリングし、5回のサンプリング後、合計5バッチのポリ乳酸製品を得た。製造された5バッチのポリ乳酸の結果を表12に示す。
【0160】
【表12】
【0161】
得られたポリ乳酸の数平均分子量の変動範囲はその平均値の-11.2%~+12.9%である。
【0162】
比較例6(ワンステップ重合)
高分子量ポリ乳酸の製造について
プラグフロー反応器に、反応材料を連続的に添加して製品を連続的に抽出し、各反応材料の流量は次のとおりである。イソデカノールの流量は0.32kg/h、L-ラクチドの流量は99.68kg/h、オクタン酸第一スズの流量は0.010kg/hである。各反応材料を180℃で開環重合反応させ、反応停留時間は5hであり、ポリ乳酸製品を得た。系内におけるSnの含有量は30ppmである。
【0163】
製造過程において、イソデカノールの仕込み質量配合比は0.32kg/(0.32kg+99.68kg)=0.32:100である。オクタン酸第一スズの仕込み質量配合比は0.010kg/(0.32kg+99.68kg)=0.010:100である。この原料仕込み質量配合比下で、仕込み、秤量における開始剤及び触媒の精度を把握・制御しにくく、混合過程における原料の均一性も影響を受けた。
【0164】
製造過程において、6時間ごとに1回サンプリングし、5回のサンプリング後、合計5バッチのポリ乳酸製品を得た。製造された5バッチのポリ乳酸の結果を表13に示す。
【0165】
【表13】
【0166】
得られたポリ乳酸の数平均分子量の変動範囲はその平均値の-8.3%~+8.6%である。
【0167】
比較例1を実施例1、比較例2~6及び実施例3~7とそれぞれ比較した後に、各実施例では、製造過程において原料の秤量精度に対する要求がより低く、得られた異なるバッチのポリ乳酸製品Mnがより安定し、変動範囲がより小さく、製造実施がより容易であることが分かった。本発明は、モノマーのツーステップの材料添加及び重合、ならびに段階的な分子量増幅の製造プロセスを採用することにより製造の安定性を向上させる。
【0168】
比較例1を実施例1及び実施例2と比較した後に、本発明の製造方法は、異なる分子量のポリ乳酸製品をより容易で柔軟に製造することが分かった。
【0169】
以上、本発明の各実施例を説明したが、前述の説明は例示的なものであり、網羅的ではなく、且つ開示されている各実施例に限定されない。本発明の主旨から逸脱することなく、当業者にとって、多数の修正及び変形は明らかである。