(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】弁部材
(51)【国際特許分類】
F16K 15/14 20060101AFI20240903BHJP
E03C 1/298 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
F16K15/14 A
E03C1/298
(21)【出願番号】P 2020087739
(22)【出願日】2020-05-19
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000157212
【氏名又は名称】丸一株式会社
(72)【発明者】
【氏名】久保内 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】木村 裕史
(72)【発明者】
【氏名】服部 大輔
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-041281(JP,U)
【文献】実開昭52-061543(JP,U)
【文献】実開平06-040536(JP,U)
【文献】特開2006-189147(JP,A)
【文献】実開平02-047487(JP,U)
【文献】特開2016-080007(JP,A)
【文献】実開平01-097096(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 15/00-15/20
E03C 1/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の流路上、又は端部に配置され、
前記配管内の流体の逆流を制限する弁部材であって、
弾性を有した部材からなる弁体と、
流体が通過する流路
部の周囲に設けられ、
前記弁体が当接することで
前記流路
部を閉口する弁座部と、
前記弁体に当接して
前記弁体の逆流方向へのめくれを制限する、複数のめくれ制限部と、
を備え
、
前記弁体が前記弁座部に当接している状態において、前記めくれ制限部は前記弁体との間に隙間空間を形成し、
前記弁体に対し逆流方向への高い圧力が加わると、前記弁体は前記めくれ制限部に当接するとともに、前記弁座部との当接が失われて上流側へと圧力を開放することを特徴とする弁部材。
【請求項2】
配管の流路上、又は端部に配置され、
前記配管内の流体の逆流を制限する弁部材であって、
弾性を有した部材からなる弁体と、
流体が通過する流路
部の周囲に設けられ、
前記弁体が当接することで
前記流路
部を閉口する弁座部と、
前記流路部の周囲に、
前記弁体に当接して
前記弁体の逆流方向へのめくれを制限する、切欠き部を設けためくれ制限部と、
を備え
、
前記弁体が前記弁座部に当接している状態において、前記めくれ制限部は前記弁体との間に隙間空間を形成し、
前記弁体に対し逆流方向への高い圧力が加わると、前記弁体は前記めくれ制限部に当接するとともに、前記弁座部との当接が失われて上流側へと圧力を開放することを特徴とする弁部材。
【請求項3】
前記めくれ制限部は、
前記弁座部の上流側に備えられたことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の弁部材。
【請求項4】
前記弁体は、円盤状にして円盤部分の中心が、
前記弁座部に対して位置を固定されることを特徴とする、請求項1乃至請求項
3のいずれか一つに記載の弁部材。
【請求項5】
前記めくれ制限部を
前記流路部の周縁に沿って備えたことを特徴とする、請求項1乃至請求項
4のいずれか一つに記載の弁部材。
【請求項6】
前記めくれ制限部を、
前記弁座部に対して、流路方向に位置が異なるように備えたことを特徴とする、請求項1乃至請求項
5のいずれか一つに記載の弁部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆流の防止を目的として配管の流路上や端部に配置される弁部材に関するものであって、更に詳しくは流体の逆流方向に過大な圧力が作用した場合に、弁部材の逆流防止の機能が失われることを防止する弁部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、液体や気体などの流体を通過させる配管において、配管の流路上や端部に逆流の防止を目的として弁部材が配置されている。配管の流路上に弁部材が配置される場合には、下流から上流に向けて流体が逆流することを防止するためであり、配管の端部に弁部材が配置される場合には、配管内が正圧または負圧になった際に通気することで配管内の圧力調整を行ったり、水受けパンの排水口に弁部材を配置することで防水パン上に配管からの逆流が生じることを防ぎつつ、防水パン上の排水は随時行うことを目的とする場合などがある。
特許文献1に記載の弁部材は、排水配管の流路上に配置される弁部材であって、硬質素材からなる板状の弁体、弁体に備えられたヒンジ部、ヒンジ部を介して弁体に取り付けられた錘体、からなる弁本体と、排水の流路上に設けられた、弁体と当接することで流路を閉口する弁座部と、からなり、錘体の作用によって弁体は常時弁座部に当接して流路を閉口し、排水が溜まって弁体に排水の重力が作用するとヒンジ部を中心に回動して流路を開口し、排水を上流から下流に排出する。逆流が発生した場合には、弁体は弁座部に当接した状態を維持して流路を閉口するため、逆流した排水が、弁体よりも上流側に流出することは無い。
特許文献2に記載の弁部材は、排水配管の流路上に配置される弁部材であって、弾性素材からなる円盤状の弁体、弁体中央に備えられた棒状の弁軸、からなる弁本体と、排水の流路上に設けられた、弁体と当接することで流路を閉口する弁座部、流路の中央に備えられた弁軸を固定する固定部と、から構成され、更にこの弁部材をユニット化して、配管上に接続した継手部材の側面から取り出せるように構成されてなる。固定部に弁軸を固定すると、弾性を有した弁体は弁座部に常時当接して流路を閉口し、排水が溜まって弁体に排水の圧力による応力が作用すると弁体が弾性変形を生じて流路の一部を開口し、排水を上流から下流に排出する。逆流が発生した場合には、弁体は弁座部に当接した状態を維持して流路を閉口するため、逆流した排水が、弁体よりも上流側に流出することは無い。
いずれの弁部材でも、上流側から下流側に向かう流体は通過させ、下流側から上流側に向かう逆流の流体を弁体部分よりも上流に逆流することを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-339427号公報
【文献】特開2020- 45922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の弁部材と比較して特許文献2に記載の弁部材は、ヒンジ部や錘体等の部材や機構が不要で、構造的にも簡単なため、安価でまた破損が生じにくい弁部材とすることができる。
一方で、流体が極めて強い圧力で逆流した場合に、特許文献1に記載の弁部材は、弁体が硬質の素材で構成されているため、弁部材自体が破損を生じるような強烈な逆流が生じない限り、弁座部に弁体が当接した状態を維持して流体の逆流を確実に防止することができる。
対して特許文献2に記載の弁部材では、弁体が弾性素材にて構成されており、弁体の変形によって弁体と弁座部の当接が解除されるなど、弁体が変形することが弁部材の機能の一部である。このため、特許文献1に記載の弁部材と異なり、強力な流体の逆流が生じた場合に、弁体が弾性変形して、弁座部を超えて上流側にめくれてしまい、流体の逆流を許してしまう場合がある。
この流体の逆流自体も問題ではあるが、更なる問題点として、上流側に弾性変形してしまった弁体が、
図16に示したように、上流側の流路内に接して係止し、弁体が上流側の流路に留まった状態となり、弁座部と当接する位置に戻らなくなってしまう場合があった。この結果、弁体と弁座部が当接しなくなり、本来、上流から下流への流体の通過がある場合以外では常時閉口されている流路が常時開口されるようになってしまい、下流側から上流側への流体の逆流を防止できなくなる、という問題があった。
本発明は上記問題点に鑑み発明されたものであって、弾性素材で構成した弁体を採用した弁部材において、流体が強い圧力で逆流を生じた結果、弾性素材で構成された弁体が弁座部の上流側にめくれ上がり、弁部材による流路の閉口ができなくなる、という問題を解消するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、配管の流路上、又は端部に配置され、前記配管内の流体の逆流を制限する弁部材であって、弾性を有した部材からなる弁体と、流体が通過する流路部の周囲に設けられ、前記弁体が当接することで前記流路部を閉口する弁座部と、前記弁体に当接して前記弁体の逆流方向へのめくれを制限する、複数のめくれ制限部と、を備え、前記弁体が前記弁座部に当接している状態において、前記めくれ制限部は前記弁体との間に隙間空間を形成し、前記弁体に対し逆流方向への高い圧力が加わると、前記弁体は前記めくれ制限部に当接するとともに、前記弁座部との当接が失われて上流側へと圧力を開放することを特徴とする弁部材である。
【0006】
請求項2に記載の本発明は、配管の流路上、又は端部に配置され、前記配管内の流体の逆流を制限する弁部材であって、弾性を有した部材からなる弁体と、流体が通過する流路部の周囲に設けられ、前記弁体が当接することで前記流路部を閉口する弁座部と、前記流路部の周囲に、前記弁体に当接して前記弁体の逆流方向へのめくれを制限する、切欠き部を設けためくれ制限部と、を備え、前記弁体が前記弁座部に当接している状態において、前記めくれ制限部は前記弁体との間に隙間空間を形成し、前記弁体に対し逆流方向への高い圧力が加わると、前記弁体は前記めくれ制限部に当接するとともに、前記弁座部との当接が失われて上流側へと圧力を開放することを特徴とする弁部材である。
【0007】
請求項3に記載の本発明は、前記めくれ制限部は、前記弁座部の上流側に備えられたことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の弁部材である。
【0008】
請求項4に記載の本発明は、前記弁体は、円盤状にして円盤部分の中心が、前記弁座部に対して位置を固定されることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の弁部材である。
【0009】
請求項5に記載の本発明は、前記めくれ制限部を前記流路部の周縁に沿って備えたことを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の弁部材である。
【0010】
請求項6に記載の本発明は、前記めくれ制限部を、前記弁座部に対して、流路方向に位置が異なるように備えたことを特徴とする、請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載の弁部材である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1、請求項2に記載の本発明では、強力な流体の逆流が生じた場合に、弁体が弾性変形して弁座部を超えて上流側にめくれてしまった場合であっても、めくれ制限部を設けたことで、そのまま弁体が上流側の流路に留まってしまう、ということが無くなる。このため、弁部材が流路を開放したままとなる、ということが無くなり、弁体が弁座部に当接するように復帰して流路を閉口することで、流体の逆流を確実に防止することができる。
請求項3、請求項6に記載の本発明においては、めくれ制限部の位置を明確にすることができる。
請求項4に記載の本発明においては、弁体が弁座部に当接している状態において、めくれ制限部は弁体との間に隙間空間を形成することで、弁体が弁座部に当接している状態ではめくれ制限部が弁体に干渉することが無くなり、弁体が弁座部に確実に当接することができる。
請求項5に記載の本発明においては、弁体の形状を明確化できる。
請求項7に記載の本発明においては、めくれ制限部を、弁座部に対して流路方向に位置を変えて構成したことにより、逆流の圧力の程度が変化し、弁体のめくれがより激しくなった場合にも対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第一実施例の弁部材を採用した継手部材を示す断面図である。
【
図2】
図1の弁部材の開口状態を示す断面図である。
【
図3】
図1の弁部材の、めくれ制限部に弁体が当接した状態を示す断面図である。
【
図4】第一実施例の、弁部材ユニットを取り出した状態を示す参考図である。
【
図8】第二実施例の弁部材を採用した吸気弁継手を示す断面図である。
【
図9】第二実施例の弁部材ユニットを示す断面図である。
【
図11】
図9の弁部材ユニットの開口状態を示す断面図である。
【
図12】
図9の弁部材ユニットの、めくれ制限部に弁体が当接した状態を示す断面図である。
【
図13】めくれ制限部を、流路方向に位置が異なるように設けたユニット本体の底面図である。
【
図14】
図13の実施例のユニット本体の、A-A断面を示す参考図である。
【
図15】
図13の実施例のユニット本体の、下方からの斜視図である。
【
図16】従来の弁部材を採用した継手部材の、弁体がめくれた状態を示す断面図である。
【実施例】
【0014】
以下に、本発明の第一実施例を、図面を参照しつつ説明する。
図1乃至
図7に示した、本発明の第一実施例の弁部材を採用した継手部材1は、以下に記載する、継手部材1と弁部材ユニット2から構成されてなり、上流側の配管P及び下流側の配管Pに施工される。
継手部材1は、流体の流路を形成する直管状の管体部1aと、管体部1a内部に備えられ上流側及び下流側の配管Pと連通する収納部1bと、管体部1aの側面に設けられた収納部1bと連通する開口部1cと、からなる。
弁部材ユニット2は、以下に記載する、弁本体4と、ユニット本体3と、ロック部材6と、から構成されてなる。
弁本体4は、弾性素材からなる、円盤状の弁体4aと、該弁体4aの中央から弁体4aに対して垂直に設けられた、側面に凹凸を備えた弁軸4bと、から構成されてなる。該弁本体4は、傘に似た形状となるため、一般的にはアンブレラ弁と呼ばれる形状である。
ユニット本体3は、側面に開口部1cを閉口する蓋部3aを備えた、略円筒形状を有する部材であって、円筒部分の内部に、排水が通過する流路部3bを設けてなる。また、流路部3b内部には弁本体4の弁軸4bを固定する固定部3dを備えると共に、固定部3dと流路部3b内面側面をつなぐアーム部3eを備えてなる。また、流路部3bの下流側の周囲には、弁座部5を備えてなる。
更に弁座部5の上流側(
図1の上方側)に、流路部3bの内周縁に沿って一定の間隔で、計8つの、リブ片からなるめくれ制限部3cを備えてなる。めくれ制限部3cは、
図6、
図7等から明らかなように、流路部3b上であって、流路部3bに対して内側面方向に突出してなる。また、めくれ制限部3cは、弁体4aの中心からめくれ制限部3cまでの距離に、めくれ制限部3cから弁座部5までの距離を足した長さが、弁体4aの半径よりも短くなるような位置に設けられている。このため、弁体4aが流体の逆流の圧力を受けて弾性変形した際に、弁体4aの外周側の端部が、弁座部5より上流側の流路内に達することが無く、弁体4aの端部が流路部3bの内面に係止した状態となることが無い。
尚、一部のめくれ制限部3cは、
図6、
図7に示すように、アーム部3eの一部としてアーム部3eの下面に形成されてなる。また、めくれ制限部3cは弁座部5よりも上流側に配置されてなるため、施工完了時、通常の弁体4aが弁座部5に当接している状態では、弁体4aとめくれ制限部3cとの間には隙間空間が生じており、弁体4aにめくれ制限部3cが当接することは無い。
蓋部3aは円盤状であって、ユニット本体3の側面にユニット本体3と一体に構成されてなり、円盤部分の側面に環状のパッキングを備え、施工完了後継手部材1の開口部1cを閉口するように構成されてなる。
ロック部材6は、円盤状の部材であって、ユニット本体3の蓋部3aに回動自在に取り付けられ、施工完了時継手部材1の開口部1cに回転ロックにより嵌合することで、継手部材1内部の収納部1bにユニット本体3が収納され、また蓋部3aが開口部1cを閉口した状態を維持固定するように機能する。
尚、施工現場などに搬入される前に、ユニット本体3は、弁軸4bを下方から固定部3dに挿通して嵌合固定することで、弁体4aが弁座部5に当接するようにして固定すると共に、ロック部材6をユニット本体3の蓋部3aに回動自在に取り付け、弁部材ユニット2として構成してなる。
【0015】
上記弁部材は、次のようにして排水用の配管P上に施工される。
継手部材1の上端を上流側の配管Pに、下端を下流側の配管Pに、それぞれ接続する。
次に、継手部材1の開口部1cから弁部材ユニット2のユニット本体3を挿通し、継手部材1内に配置した上で、継手部材1の開口部1cを蓋部3aで覆い、更にロック部材6と開口部1cとを回転ロックにて閉口することで、弁部材が排水配管Pに施工される。
【0016】
上記のように構成された弁部材を備えた排水配管Pは、排水が無い場合、
図1のように、弁体4aが弁座部5に当接して排水の流路を閉口した状態となる。
尚、前述の通り、弁体4aとめくれ制限部3cとの間には隙間空間が生じており、めくれ制限部3cが弁体4aに干渉しないため、弁体4aと弁座部5の当接による流路部3bの閉口は確実に行われる。
この状態から、上流側から排水が行われた場合、排水は、上流側の配管Pから、継手部材1内部に侵入し、ユニット本体3の流路部3b内であって、弁体4a上に流入する。ある程度ユニット本体3の流路部3b内、又はその上流の継手部材1内に排水が溜まると、溜まった排水の圧力によって、
図2のように、弁本体4の弾性によって弁体4aが変形して弁座部5から離間することで、排水の流路が開口し、ユニット本体3内部に溜まった排水が流出して、継手部材1内を通過し、下流側の配管Pに排出される。排水が完了すると、弁本体4の弾性によって弁体4aが
図1の形状に復帰し、弁体4aが再び弁座部5に当接して、排水の流路が閉口される。
この時、流路部3b上の全周に渡ってめくれ制限部3cを設けていないため、その分流路部3b上の開口面積が多くなり、排水性能が向上する。
【0017】
また、下流側から排水が逆流し、排水の逆流の圧力が、弁体4aのめくれを生じない範囲だった場合、弁体4aと弁座部5の当接は、下流側から水圧が加えられることによってより近接し、流路の閉口を確実に行うため、排水は弁部材を通過することができず、排水の逆流が防止される。また、排水が無い状態でも弁本体4と弁座部5とが当接しているため、下流側からの臭気など気体成分や害虫類が上流側に逆流することを防止することができる。
【0018】
一方、下流側から排水が逆流し、排水の逆流の圧力が、弁体4aのめくれを生じるほど高い圧力だった場合、弁体4aの一部分は弁座部5との当接状態を超えて、弁座部5より更に上方に弾性変形するが、
図3に示したように、弁体4aはめくれ制限部3cに当接しそれ以上上昇することが無いため、弁体4aが上流側の流路内に接して係止したような状態となることが無くなる。
また、この時、弁体4aと弁座部5の全周での当接は失われて、逆流の一部は弁体4aと弁座部5との隙間から上流側に逆流を生じる。但し、この当接の失われた部分から圧力が開放されるため、弁体4a等弁部材に係る部材が破損することはない。
排水の逆流が終了すると、めくれ制限部3cに当接していた弁体4aが、弁座部5に当接した状態に復帰し、再び流路の閉口を行うため、排水や気体成分は弁部材を通過することができなくなり、逆流が防止される。
【0019】
上記弁部材において、メンテナンスや清掃が必要な場合は、ロック部材6と開口部1cの回転ロックを解除し、
図4のように、弁部材ユニット2を取り出すことで、メンテナンスや清掃などを行うことができる。必要な作業が終了した後は、再び開口部1cからユニット本体3を挿入し、蓋ロック部材6と開口部1cを回転ロックにて接続することで、支障なく配管Pを利用することができる。
【0020】
次に、本発明の第二実施例を、図面を参照しつつ説明する。
図8乃至
図12に示した、本発明の第二実施例は、設備機器や配管に接続される吸気弁としての弁部材であって、以下に記載する、継手部材1と弁部材ユニット2とカバー部材から構成されてなり、設備機器の吸気構造部分や配管の枝管部分などに接続される。尚、本実施例では、弁部材ユニット2は、枝管部分にて分岐した配管に接続された継手部材1の端部に配置され、弁部材ユニット2より先は他の配管に接続される等の構成は無い。即ち、本実施例の弁部材は、配管の端部に接続される弁部材である。
尚、本実施例の弁部材は接続部1dに接続された設備機器や配管P内が負圧になった場合に、外部から接続部1dに向けて流体としての気体、即ち空気を供給する吸気弁であり、弁体4aが弁座部5から離間して下方に効果することで流路部3bを開口して継手部材1内部の空気を継手部材1内部に吸気すると共に、継手部材1内部の空気を外部に排気することは無いようにするための部材である。従って、本実施例の逆流防止弁において、
図8の図示に基づけば、継手部材1内部の上端から下方の接続部1dに向かって流れる方向が正しい空気の流れ方向(吸気方向)であり、逆向きの、接続部1dから継手部材1内部上端に向かう空気の流れ方向が逆流の方向である。
継手部材1は、流体である空気の通過部分を形成する直管状にして円筒形状を成す管体部1aと、管体部1a上端に設けられたユニット本体3を配置・接続する収納部1bと、管体部1aの下端に設けられた、設備機器や配管Pに接続される接続部1dと、カバー体を取り付ける支持体と、からなる。
弁部材ユニット2は、以下に記載する、弁本体4と、ユニット本体3と、から構成されてなる。
弁本体4は、ゴムなどの弾性素材からなる、略円盤状の部材であって、該弁体4aの端部部分に、弁体4aに対して垂直に設けられた、側面に凹凸を備えた3本の弁軸4bを備えて構成されてなる。
ユニット本体3は、略円盤状にして、円盤の周縁の部分に継手部材1の上端の内側面と嵌合する嵌合部を備えた部材であって、円盤部分に、
図10に示したように、平面視直線状部分を有する円弧状の、空気が通過する流路部3bを設けてなる。また、流路部3bの直線状の部分の近傍に、弁本体4の弁軸4bを固定する固定部3dを備えてなる。また、流路部3bの、下方側の周囲には、弁座部5を備えてなる。
更に弁座部5の上方側(
図9の上方側)の流路部3bに、流路部3bの周縁に沿って板状のめくれ制限部3cを備えてなる。尚、めくれ制限部3cは、流路部3bの全周に沿ってではなく、円弧部分の周縁にのみ設けられており、流路部3bの直線状部分には設けられていない。即ち、本実施例の弁部材は、流路部3bの周囲に沿ってめくれ制限部3cを設けると共に、該めくれ制限部3cには、直線状部分を切欠き部3fとして設けた弁部材である。
尚、制限部は弁座部5よりも上方に配置されてなるため、施工完了時、通常の弁体4aが弁座部5に当接している状態では、弁体4aとめくれ制限部3cとの間には隙間空間が生じており、弁体4aにめくれ制限部3cが当接することは無い。
カバー部材は半球状の部材であって、その開口部分の内側面が継手部材1の支持体の外側の端部に嵌合されることで、継手部材1の上方を覆い隠すように配置される。
尚、施工現場などに搬入される前に、ユニット本体3は、弁軸4bを下方から固定部3dに挿通して嵌合固定することで、弁体4aが弁座部5に当接するようにして固定されてなる。
【0021】
上記弁部材は、次のようにして設備機器や配管上に施工される。
継手部材1の下端の接続部1dを、設備機器又は配管の枝管部等、接続先の部材の接続箇所に接続する。次に、ユニット本体3の嵌合部を継手部材1の上端に嵌合させ、ユニット本体3を継手部材1の収納部1bに配置する。
更に、カバー部材の開口部分の内側面を継手部材1の支持体の外側の端部に嵌合されることで、弁部材が設備機器や配管P上に施工される。
【0022】
上記のように構成された弁部材を備えた継手部材1は、継手部材1の内外で圧力差が無い場合、
図9のように、弁体4aが弁座部5に当接して空気の流路を閉口した状態となる。
尚、前述の通り、弁体4aとめくれ制限部3cとの間には隙間空間が生じており、めくれ制限部3cが弁体4aに干渉しないため、弁体4aと弁座部5の当接による流路部3bの閉口は確実に行われる。
この状態から、接続部1dに接続された設備機器や配管P内部が負圧となった場合、弁部材の内外の気圧差から、流路部3bの上方(上流)から下方(下流)に向かって応力が作用し、
図11のように、弁本体4の弾性によって近接している弁体4aが変形して弁座部5から離間することで、空気の流路が開口し、ユニット本体3の上方であり、弁部材の外部から、継手部材1の内部に空気が供給され、継手部材1内を通過し、下流側の設備機器や配管Pに吸気が供給されて負圧を解消する。負圧が解消されると、内外の気圧差が無くなり、弁体4aを弾性変形させている応力も失われて、弁本体4の弾性によって弁体4aが
図9の形状に復帰し、弁体4aが再び弁座部5に当接して、流路部3bの流路が閉口される。
【0023】
また、接続部1dに接続されている設備機器や配管の内部が正圧となり、それに伴って継手部材1内部も正圧となった場合に、継手部材1内の空気の正圧の圧力が、弁体4aのめくれを生じない範囲だった場合、弁体4aと弁座部5の当接は、下流側から空気の圧力が加えられることによってより近接し、流路部3bの閉口を確実に行うため、継手部材1内の空気は弁部材を通過することができず、継手部材1外部に継手部材1内部の空気が流出することは防止される。また、継手部材1の内外で圧力差の無い状態でも弁本体4と弁座部5とが当接しているため、接続部1dに接続されている設備機器や配管内の臭気や害虫類などが継手部材1外に逆流することを防止することができる。
【0024】
一方、接続部1dに接続されている設備機器や配管の内部が正圧となり、それに伴って継手部材1内部も正圧となった場合に、継手部材1内の空気の正圧の圧力が、弁体4aのめくれを生じるほど高い圧力の場合、弁体4aの一部分は弁座部5との当接状態を超えて、弁座部5より更に上方に弾性変形するが、
図12に示したように、弁体4aはめくれ制限部3cに当接しそれ以上上昇することが無いため、弁体4aが上流側の流路内に接して係止したような状態となることが無くなる。
弁体4aと弁座部5の全周での当接は失われて、逆流の一部は弁体4aと弁座部5との隙間から継手部材1外部に逆流を生じる。但し、この当接の失われた部分から圧力が開放されるため、弁体4a等弁部材に係る部材が破損することはない。
空気の逆流による流出が終了すると、めくれ制限部3cに当接していた弁体4aが、元の、弁座部5に当接した状態に復帰し、再び流路の閉口を行うため、設備機器や配管の空気は弁部材を通過することができず、設備機器や配管の空気の逆流が防止される。
尚、本実施例では、めくれ制限部3cは、流路部3bの全周に沿って設けられてはおらず、弁軸4bに近傍となる部分には切欠き部3fとして設けられていないが、弁本体4が、この弁軸4bに固定されているため、この弁軸4b近傍では弁体4aが弁座部5を超えて流路部3b内面に当接し戻らなくなる、という事は生じない。そのためめくれ制限部3cを設ける必要が無く、その分流路部3bの開口面積を広くし通気性能を向上することができる。
【0025】
上記継手部材1において、メンテナンスや清掃が必要な場合は、カバー部材とユニット本体3を継手部材1から取り出すことで、メンテナンスや清掃などを行うことができる。必要な作業が終了した後は、再び継手部材1にユニット本体3やカバー部を接続することで、支障なく吸気弁としての弁部材として利用することができる。
【0026】
本発明の実施例は上記のようであるが、本発明は上記実施例に限定されるものでは無く、発明の主旨を変更しない範囲で自由に変更が可能である。
例えば、
図13乃至
図15に記載したユニット本体3のめくれ制限部3cのように、めくれ制限部3cを、弁座部5に対して、流路方向に位置が異なるように備えて構成してもよい。この
図13乃至
図15の実施例では、ユニット本体3のめくれ制限部3c以外の部材や構成、施工方法、使用方法は全て第一実施例と同じである。
このように構成することで、第一実施例のめくれ制限部3cで対応できるよりもより強い圧力の逆流が生じた場合に、弁座部5よりもより距離があるめくれ制限部3cで弁体4aのめくれを止めることができ、弁体4aのめくれによる弁部材の作動不良を確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 継手部材 1a 管体部
1b 収納部 1c 開口部
1d 接続部 2 弁部材ユニット
3 ユニット本体 3a 蓋部
3b 流路部 3c めくれ制限部
3d 固定部 3e アーム部
3f 切欠き部 4 弁本体
4a 弁体 4b 弁軸
5 弁座部 6 ロック部材
P 配管