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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】牽引台車
(51)【国際特許分類】
   B62B 3/00 20060101AFI20240903BHJP
   B62B 5/00 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
B62B3/00 A
B62B5/00 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020146026
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2022041025
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000245830
【氏名又は名称】矢崎化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004200
【氏名又は名称】弁理士法人山名国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100174207
【弁理士】
【氏名又は名称】筬島 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】矢崎 敦彦
(72)【発明者】
【氏名】水尻 壽嗣
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 優
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-101721(JP,A)
【文献】実開昭51-25334(JP,U)
【文献】特公昭53-10336(JP,B1)
【文献】特開2020-59324(JP,A)
【文献】特開2009-40377(JP,A)
【文献】特開平9-30422(JP,A)
【文献】特開平10-100904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 3/00, 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車ベースが進行する牽引方向を前方向と設定したとき、前記台車ベースの前側の前方向へ突き出し、その基端部が軸に回動可能に設けられる牽引バーと、
記牽引バーの下面に設けられ、前記軸の中心軸上に車輪軸が位置するように構成された前記牽引バーの軸線方向へ転動する誘導固定キャスターと、
前記台車ベース内に位置し、左右一対の固定キャスターの中心を結んだ線が、複数の牽引台車を連結した牽引時の旋回中心点からの線と重なり、前記旋回中心点からの線と直交する方向に車輪が向く前記左右一対の固定キャスターと、
後続する牽引台車の牽引バーと回動可能に連結可能な連結部と、
前記台車ベースの後側に設けられた自在キャスターと、を備え、
平面的に見て前記一対の固定キャスター間に位置する前記軸の中心と前記連結部の中心とを結んだ前後方向の線が、前記一対の固定キャスターを結んだ線と直交して生じる交点と前記軸との距離が、前記交点と前記連結部との距離より同等以下の関係になる配置となることを特徴とする、牽引台車。
【請求項2】
前記牽引バーは、その基端部が左右方向に延びる横棒部を備えた平面視T字状に形成され、当該平面視T字状の交点部が前記軸に回動可能に設けられており、前記横棒部の下面に、前記牽引バーの軸線方向へ転動する誘導固定キャスターに代えて、前記牽引バーの軸線方向と平行する方向に転動する複数の誘導固定キャスターが設けられていることを特徴とする、請求項1に記載した牽引台車。
【請求項3】
前記台車ベースの前方向に錘材が設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載した牽引台車。
【請求項4】
前記一対の固定キャスターはそれぞれ、復元用弾性機構により常時下向きに付勢されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載した牽引台車。
【請求項5】
前記牽引バーには、前記誘導固定キャスターを自在キャスターに変更するための偏芯用孔が設けられていることを特徴とする、請求項1又は3又は4に記載した牽引台車。
【請求項6】
前記牽引バーは、跳ね上げ可能な構成とされていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載した牽引台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的に、工場、物流センター、空港等で部品や荷物を必要な場所(目的地)へ移動させる際、先導する動力付きの運搬車に複数台連結して搬送するために供される牽引台車の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、工場、物流センター、空港等で部品や荷物を必要な場所へ移動させる際、先導する動力付きの運搬車に複数台連結して搬送するために供される牽引台車は、連結台数が多いほど一度に沢山搬送できる等、合理的かつ効率的な観点からは望ましいが、連結台数が多くなると旋回通路等に伴う内輪差の問題が顕著になり、解決するべき課題となっている。
すなわち、連結台数が増加しても先行する牽引台車、ひいては先導する動力付きの運搬車の移動軌跡に可能なかぎり近づけて追従できるような内輪差の少ない牽引台車が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、実用新案登録請求の範囲および図3等に記載されているように、前後左右のキャスタ車輪4a,4b、5a,5bを、台車本体3の中心線Pに対して左右等分の振り分け位置に配置し、前部側キャスタ車輪4a,4bの回動レバー12を回動軸14の後方に向かわせて、このレバー12に連結のリンク10を、台車牽引部材7のスイング縦軸9よりも後部側の中心線近傍に対して左右等分の振り分け箇所に連結し、後部側キャスタ車輪5a,5bの回動レバー13を回動軸14に対して車輪外側の斜め前方に張り出させて、このレバー13に連結のリンク11を、台車牽引部材7の前部リンク連結点10a,10bよりも後部側の中心線近傍に対して左右等分の振り分け箇所に、互いにクロスさせて連結してなる、被牽引台車のステアリング装置が開示されている。
この特許文献1に係る被牽引台車のステアリング装置によると、「左右一対の前後のキャスタ車輪を台車本体の左右中間の中心線に対して左右に振り分け状に配置したことで、ステアリングのためにキャスタ車輪を回動させたとしても、台車本体に対しては、僅かにキャスタ車輪のオフセット分だけ、キャスタ車輪の接地支持点が平行移動するだけであって、被牽引台車の左右の安定性が直進牽引の際と殆ど変わりないことから、積み荷を安全に移動させることができる」という効果を奏する(詳しくは、明細書の発明の効果の項を参照)。
【0004】
特許文献2には、実用新案登録請求の範囲および第1図~第4図に記載されているように、2点1、1’に車輪3、3’を配し、2点1、1’間の垂直2等分線上、交差点0より等距離の点2、2’に連結桿4、4’を配置し、枠杆5に取り付けて車両を形成した前方牽引車の輪跡を踏襲する車両が開示されている。
この特許文献2に係る牽引車の輪跡を踏襲する車両によると、第4図に示したように、「通路8の曲路を牽引走行する場合、前方車両が曲路に従って進路を変えるとき、車両の前部と後部とは、移動方向が反対に移動しながら後車両を牽引する。第4図に示す矢印方向に各車両の連結桿は動きながら牽引され、前車両の輪跡9を踏襲して容易に曲路を通行することができる」という効果を奏する(明細書の第3頁の中程を参照)。
【0005】
特許文献3には、特許請求の範囲および図1等に記載されているように、台車ベース(を構成するフレーム10)と、前記台車ベースの4隅近傍をそれぞれ支持する転向可能な第1から第4の車輪21、22、23、24と、前記台車ベースの中央部を支持する転向不能な第5の車輪80とを備え、前記第5の車輪80は、空気入りタイヤからなり、走行方向を直進方向に固定されていることを特徴とする台車が開示されている。
この特許文献3に係る台車によると、「固定車輪として台車底面(台車ベース)の中央部を支持する中央車輪80が設けられていることにより、図1に示すように、牽引方向に応じて右前輪21と右後輪23とが互いに逆方向に転向すると共に、左前輪22と左後輪24とが互いに逆方向に転向するので、台車100の旋回における内輪差の発生が抑制される」という効果を奏する(詳しくは、明細書の段落[0039]の項を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実用新案登録第3037640号公報
【文献】実開昭51-25334号公報
【文献】特開2007-30882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の被牽引台車のステアリング装置は、4輪操舵方式で部材点数が多く、しかも機構が複雑で製造コストやメンテナンスフィーが嵩むという課題があった。
また、連結して牽引すると、直線方向から旋回しての牽引状態、又は旋回して直線方向に戻る牽引状態に際し、前輪と後輪とを連携させて操舵している関係で前輪が牽引方向に従うと後輪も直ちに連動する所謂4WSの駆動方式のような構成を呈する。よって、後輪の理想的な移動軌跡よりも先に変位をしてしまうので、連結した場合、先行する牽引台車(先導する動力付きの運搬車)の移動軌跡に追従できない課題があった。
【0008】
特許文献2の牽引車の輪跡を踏襲する車両は、部材点数は少ないものの、牽引台車同士の連結が車両台から突き出した連結桿4、4’で回転可能に連結した構成なので、後続台車は慣性により直線的に進み、台車の連結桿4、4’を支点に回転が発生し蛇行が始まるという課題があった(本願の図11参照)。
また、最後尾の台車はその後の台車による支えがないので、荷物の重心が台車ベース後側にあると連結桿4側の前輪が床から浮き上がり、当該連結桿4を支点に内輪差が大きく生じて蛇行が発生する課題があった(本願の図12参照)。さらに、各台車からの荷受けを行う場合、複数の連結した台車は各々が蛇行状態で停止するため、荷受け場所との相対的位置がずれる等、荷受けがしづらい課題もあった(本願の図11図12参照)。
【0009】
特許文献3の台車は、部材点数は少ないものの、特許文献2と同様に連結桿が車台から突き出した構成を呈するので、後続台車の慣性により台車の連結桿を支点に回転が発生し蛇行が始まるという課題があった。また、四隅の車輪が自由車輪なので、中央の第5の固定車輪80(90)の接地により、台車自体が第5の固定車輪を中心に自転し易いから慣性の影響が出やすいという課題があった。
【0010】
したがって、本発明の目的は、牽引バーに設けた誘導固定キャスターが牽引台車の前輪となり、当該誘導固定キャスターにより牽引台車の回転(左右の横振れ)を防止し、先の牽引台車の移動軌跡を辿るように次の牽引台車が追従し、連結しても内輪差が少ない牽引台車を提供することにある。
本発明の次の目的は、停車時において、整列した牽引台車列が左右に振れることなく維持されて、荷下ろし作業がし易い牽引台車を提供することにある。
本発明の次の目的は、シンプルな構造を実現することにより、経済的かつ合理的で使い勝手がよく取り扱い性に優れた牽引台車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る牽引台車は、台車ベース10が進行する牽引方向を前方向と設定したとき、前記台車ベース10の前側の前方向へ突き出し、その基端部1aが軸11に回動可能に設けられる牽引バー1と、
記牽引バー1の下面に設けられ、前記軸11の中心軸上に車輪軸2aが位置するように構成された前記牽引バー1の軸線方向へ転動する誘導固定キャスター2と、
前記台車ベース10内に位置し、左右一対の固定キャスター3L、3Rの中心を結んだ線Fが、複数の牽引台車を連結した牽引時の旋回中心点Oからの線と重なり、前記旋回中心点Oからの線と直交する方向に車輪32が向く前記左右一対の固定キャスター3L、3Rと、
後続する牽引台車の牽引バー1と回動可能に連結可能な連結部4と、
前記台車ベース10の後側に設けられた自在キャスター5と、を備え、
平面的に見て前記一対の固定キャスター3L、3R間に位置する前記軸11の中心と前記連結部4の中心とを結んだ前後方向の線Lが、前記一対の固定キャスター3L、3Rを結んだ線Fと直交して生じる交点Gと前記軸11との距離Sが、前記交点Gと前記連結部4との距離Tより同等以下の関係になる配置となることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した牽引台車において、前記牽引バー1は、その基端部1aが左右方向に延びる横棒部6を備えた平面視T字状に形成され、当該平面視T字状の交点部が前記軸11に回動可能に設けられており、前記横棒部6の下面に、前記牽引バー1の軸線方向へ転動する誘導固定キャスター2に代えて、前記牽引バー1の軸線方向と平行する方向に転動する複数の誘導固定キャスター12が設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載した牽引台車において、前記台車ベース10の前方向に錘材7が設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載した発明は、請求項1~3のいずれか1項に記載した牽引台車において、前記一対の固定キャスター3L、3Rはそれぞれ、復元用弾性機構8により常時下向きに付勢されていることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載した発明は、請求項1又は3又は4に記載した牽引台車において、前記牽引バー1には、前記誘導固定キャスター2を自在キャスターに変更するための偏芯用孔1dが設けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載した発明は、請求項1~5のいずれか1項に記載した牽引台車において、前記牽引バー1は、跳ね上げ可能な構成とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る牽引台車によれば、以下の効果を奏する。
(1)水平方向に回動可能な牽引バーに設けた誘導固定キャスターが牽引台車の前輪となり、当該誘導固定キャスターにより牽引台車の回転(左右の横振れ)を防止し、先の牽引台車の移動軌跡を次の牽引台車が追従し、連結しても内輪差が少ない牽引台車を実現できる。
停車時において、整列した牽引台車列が左右に振れることなく維持されて、荷下ろし作業がし易い牽引台車を実現できる。
シンプルな構造を実現することにより、経済的かつ合理的で使い勝手がよく取り扱い性に優れた牽引台車を実現できる。
(2)牽引台車の台車ベースの前方向(前半部分)に錘材を固定し、かつ、左右一対の固定キャスターに復元用弾性機構を設けて実施すると、錘材の効果により、誘導固定キャスターの接地状態がより安定的に維持される。また、復元用弾性機構の弾性力により、誘導固定キャスターの床の凹凸等の状態に左右されないように、常に安定的に誘導固定キャスターの接地圧を保つことができる。よって、牽引台車の自転が起こりにくく、更に最後尾の牽引台車であっても、誘導固定キャスターと一対の固定キャスターとが浮き上がらずに接地圧が確保されるので、自転が起こらずに、牽引台車の連結した列が隊列を崩さずに整然と並ぶようになり、荷下ろしにも支障が出ない。
(3)その他、実施例4に係る牽引台車によれば、牽引台車から、作業者が手押しする汎用台車にモデルチェンジすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】Aは、本発明に係る牽引台車を概略(透視図)的に示した平面図であり、Bは、同正面図である。
図2図1Bの要部拡大図である。
図3】本発明に係る牽引台車が牽引される状態を例示した平面図(説明図)である。
図4図4の要部を示した平面図(説明図)である。
図5】本発明に係る牽引台車の異なる実施例を概略的に示した平面図である。
図6】Aは、本発明に係る牽引台車の異なる実施例を概略(透視図)的に示した平面図であり、Bは、同正面図である。
図7】Aは、本発明に係る牽引台車の異なる実施例を示した正面図であり、Bは、Aに用いる牽引バーの要部を示した斜視図である。
図8】本発明に係る牽引台車の異なる実施例を概略的に示した平面図である。
図9】本発明に係る牽引台車の異なる実施例を概略的に示した平面図である。
図10】従来技術に係る牽引台車を平面的に示した説明図である。
図11】従来技術に係る牽引台車を平面的に示した説明図である。
図12】従来技術に係る牽引台車を平面的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に係る牽引台車の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0020】
本発明に係る牽引台車は、図1図2に示したように、台車ベース10が進行する牽引方向を前方向と設定したとき、前記台車ベース10の前側の前方向へ突き出し、その基端部1aが軸11に回動可能に設けられる牽引バー1と、
記牽引バー1の下面に設けられ、前記軸11の中心軸上に車輪軸2aが位置するように構成された前記牽引バー1の軸線方向へ転動する誘導固定キャスター2と、
前記台車ベース10内に位置し、左右一対の固定キャスター3L、3Rの中心を結んだ線Fが、複数の牽引台車を連結した牽引時の旋回中心点Oからの線と重なり、前記旋回中心点Oからの線と直交する方向に車輪32が向く前記左右一対の固定キャスター3L、3Rと、
後続する牽引台車の牽引バー1と回動可能に連結可能な連結部4と、
前記台車ベース10の後側に設けられた自在キャスター5と、を備え、
平面的に見て前記一対の固定キャスター3L、3R間に位置する前記軸11の中心と前記連結部4の中心とを結んだ前後方向の線Lが、前記一対の固定キャスター3L、3Rを結んだ線Fと直交して生じる交点Gと前記軸11との距離Sが、前記交点Gと前記連結部4との距離Tより同等以下の関係になる配置となる。これは、距離Sが長くなると牽引台車の小回りが利かなくなることもあって、S≦Tの関係にするのが望ましいからである。
【0021】
前記台車ベース10は、矩形の板材、または枠フレームの上に矩形の板材を取り付けてなる構成で実施され、その下面部に、後述する誘導固定キャスター2等のキャスターが取り付けられる。
【0022】
前記牽引バー1は、細長い板状部材で実施され、その基端部1aを前記台車ベース10の前方向の左右中央部に位置決めし、その上方に位置する前記台車ベース10との間に摺動材9を介在させた積層状態とし、前記台車ベース10の上方から連結ボルト(段付きボルト)11を串刺し状にねじ込むことで、当該連結ボルト11を軸11として水平方向に回動可能な構成で実施されている。
ちなみに図2中の符号10aは、前記連結ボルト11を貫通させるために台車ベース10に形成した貫通孔を示し、符号1bは、前記連結ボルト11をねじ込むために牽引バー1に形成したねじ孔を示している。
【0023】
さらに、前記連結ボルト(軸)11の下端部には、前記誘導固定キャスター2が取り付けられている。具体的に前記誘導固定キャスター2は、前記牽引バー1の基端部1aの下面であって前記連結ボルト11の下端部に、下向きに開口するコ字形状の車輪支持脚21をねじ込むことで取り付けられ、前記車輪支持脚21の下部に車輪22が同車輪支持脚21の側部間に略水平に設けた車輪軸(車軸)2aによって前記牽引バー1の軸線方向へ転動するように回転自在に支持され、前記連結ボルト11と同芯状、すなわち前記連結ボルト11の中心軸上に前記車輪軸2aが位置するように構成されている。
かくして、前記誘導固定キャスター2は、図1について、中央の牽引バー1のときは当該牽引バー1の軸線方向へ転動し、左方向にスイングさせた牽引バー1Lのときは当該牽引バー1Lの軸線方向へ転動し、右方向にスイングさせた牽引バー1Rのときは当該牽引バー1Rの軸線方向へ転動する等、常時、前記牽引バー1の軸線方向へ転動する構造を呈する。
なお、前記牽引バー1の前方向の軸線上の先端部には、先行する別の牽引台車へ連結するための連結孔1cが形成されている。
【0024】
次に、一対の固定キャスター3L、3Rは、図3にも示したように、前記台車ベース10内に位置し、台車ベース10の側面近傍位置の左右一対の固定キャスター3L、3Rの中心を結んだ線Fが、複数の牽引台車を連結した牽引時の旋回中心点Oからの線と重なり、前記旋回中心点Oからの線と直交する方向に車輪32が向く構成で実施されている。
具体的に前記固定キャスター3L、3Rは、本実施例では同形同大等の共通する構成で実施するので、前記固定キャスター3Lを例に説明すると、図1Bに示したように、前記台車ベース10の取付対応部位の下面に、取付プレート14を介して下向きに開口するコ字形状の車輪支持脚31が取り付けられ、前記車輪支持脚31の下部に車輪32が同車輪支持脚31の側部間に略水平に設けた車輪軸(車軸)3aによって前記台車ベース10の進行する方向へ転動するように回転自在に支持されている。
【0025】
次に、後続する連結台車の牽引バー1と回動可能に連結可能な連結部4は、本実施例では、板厚方向に貫通する連結孔4を形成して実施され、後続する牽引台車の牽引バー1の連結孔1cと芯を一致させ、当該芯が一致した連結孔4、1cに、別途用意したピンを貫通させて回動可能に連結する手段で実施している。なお、連結手段はこれに限定されず、いずれか一方の連結孔4、1cをピン構造にして互いに嵌め合う構成で実施することもできる。
【0026】
次に、台車ベース10の後側に設けられる自在キャスター5は、前記台車ベース10の前方の浮き上がりを防止するために設けた。つまり、前記台車ベース10に積載した荷物が後方に偏った場合に、一対の固定キャスター3L、3Rを支点に前後でシーソーのようになり、前記誘導固定キャスター2、ひいては台車ベース10(牽引台車)の前方の浮き上がりを防止するために設けた。前記誘導固定キャスター2に浮き上がりが生じると床との接地状態が解除されて確実な操舵性を損なう虞があるからである。よって前記自在キャスター5は、本実施例では、前記台車ベース10の後方部分に左右対称な配置で一対設けて実施しているがこれに限定されず、例えば前記連結部4の近傍位置に1個設置する等、前記台車ベース10の浮き上がりを防止することを条件に設置部位や個数は適宜設計変更可能である。
ちなみに本実施例に係る自在キャスター5は、図1Bに示したように、あくまでも一例として、前記台車ベース10の取付対応部位の下面に、取付プレート15を介して下向きに開口するコ字形状の車輪支持脚51が旋回自在に取り付けられ、前記車輪支持脚51の下部に車輪52が同車輪支持脚51の側部間に略水平に設けた車輪軸(車軸)5aによって回転自在に支持する構成で実施されている。
【0027】
本発明に係る牽引台車は、さらに、図3図4が分かり易いように、平面的に見て前記一対の固定キャスター3L、3R間に位置する前記軸11の中心と前記連結部4の中心とを結んだ前後方向の線Lが、前記一対の固定キャスター3L、3Rを結んだ線Fと直交して生じる交点Gと前記軸11との距離Sが、前記交点Gと前記連結部4との距離Tより同等以下の関係になる配置で実施されている。このような構成とすることにより、前記誘導固定キャスター2が牽引台車の前輪となり、当該誘導固定キャスター2により牽引台車の回転(左右の横振れ)を防止して、先行する牽引台車の移動軌跡を辿るように追従し、連結しても内輪差が極力少ない牽引台車を実現することができる。
【0028】
より具体的に説明すると、図3は、上記構成の牽引台車を、先導する動力付きの運搬車(図示略)に複数台連結して曲路を牽引走行する場合の走行状態を平面的に示しており、図4は、その要部を示している。ちなみに、図3中の符号Oは旋回中心点を示し、符号Xは、牽引バー1と連結部4との連結部の移動軌跡ラインを示し、符号Yは、牽引バー1の軸11の移動軌跡ラインを示し、符号Zは、前記交点Gの移動軌跡ラインを示している。図3から分かるように、当該3つのラインX、Y、Zは、旋回中心Oを中心に、互い同じ距離を維持しつつ、良好な走行状態を維持しているのが分かる。また、前記旋回中心点Oからの線、具体的には、旋回中心点Oと前記交点Gとを結ぶ線と直交する方向に車輪32が向く構成で実施されているのが分かる。
【0029】
したがって、図3に係る先導する動力付きの運搬車(図示略)に複数台連結して曲路を牽引走行する場合の走行状態は、前後の牽引台車(例えば、図4のV、W)について、先行の牽引台車(V)が曲路にしたがって進路を変えるとき(牽引方向D参照)、当該先行の牽引台車(V)が牽引する左方向に従って後続の牽引台車(W)の牽引バー1が軸11を中心に左方に回動する、と同時に、後続の牽引台車(W)の前記誘導固定キャスター2も左方に回動(転向)しつつ、先行する牽引台車(V)に追従する。すなわち、前記先行する牽引台車(V)の進行方向の向きが変わると、これに追従して後続の牽引台車(W)の牽引バー1の向きと誘導固定キャスター2の向きとが同時に変わる。そして、誘導固定キャスター2が牽引台車(W)の前輪となり、当該牽引台車(W)自身の回転(自転)を止めるので、前記一対の固定キャスター3L、3Rとで、連結しても後続の牽引台車(W)の移動軌跡が、先行する牽引台車(V)の移動軌跡を辿ることとなり、連結しても内輪差の少ない走行状態を実現することができる。
【0030】
仮に、前記誘導固定キャスター2が無い場合、先行する牽引台車(V)の走行方向の変更に直ちに追従する前輪(誘導固定キャスター2)が存在しないことになるので、後続の牽引台車(W)は、図10の破線に示したように、当該牽引台車(W)の慣性力で回転し、外側に膨らむような挙動を示し、先行する牽引台車(V)の移動軌跡を辿るようには追従しない。
もっとも、上述した牽引台車V、Wを含む複数台連結した構成の牽引台車の挙動は、上述した通りの挙動をベースにして実に複雑な挙動を呈するが、おおよそ、相前後する牽引台車(V、W)は、同様の移動軌跡を辿るので牽引台数が増加しても、先行する牽引台車、ひいては先導する動力付きの運搬車の移動軌跡に可能なかぎり近づけて追従できるような内輪差の少ない牽引作業を実現できる。
【実施例2】
【0031】
図5は、前記牽引台車の異なる実施例を示している。
この実施例2に係る牽引台車は、上記実施例1に係る牽引台車と比し、牽引バー1の構成が相違する。
すなわち、この実施例2に係る牽引バー1は、その基端部1aが左右方向に延びる(軸11の同芯上を通って左右方向に延びる)横棒部6を備えた平面視T字状に形成され、当該平面視T字状の交点部が前記軸11に回動可能に設けられており、前記横棒部6の下面に、前記牽引バー1の軸線方向へ転動する誘導固定キャスター2に代えて、前記牽引バー1の軸線方向と平行する方向に転動する複数(図示例では左右両端部に計2個)の誘導固定キャスター12が設けられている。
この実施例2に係る牽引台車によると、上記実施例1と比し、牽引バー1の強度・剛性が向上し、牽引台車の前側を幅広に受けることになるので、積載時の荷物の偏りに対して強くなり、個々の誘導固定キャスター12が負担する荷重を軽減させてタイヤの摩耗を抑制できる効果がある。また、牽引台車の前側部分の重量も増加するので、台車ベース10(牽引台車)の前方の浮き上がり防止にも寄与する。
[実施例3]
【実施例3】
【0032】
図6は、前記牽引台車の異なる実施例を示している。
この実施例3に係る牽引台車は、上記実施例1に係る牽引台車と比し、前記一対の固定キャスター3L、3Rの構成が相違する。
この実施例3に係る一対の固定キャスター3L、3Rは、本実施例では同形同大等の共通する構成で実施するので、前記固定キャスター3Lを例に説明すると、図6Bに示したように、前記固定キャスター3Lの取付部位の前方向に、若干間隔をあけて金属プレート(錘材)7を設け、前記金属プレート7の下面に前記固定キャスター3Lの取付部位へ十分届く長さの板ばね(復元用弾性機構)8を設けて前記固定キャスター3Lが常時下向きに付勢される構成で実施される。前記固定キャスター3Lは、前記板ばね8の一端部の下面に下向きに開口するコ字形状の車輪支持脚31が取り付けられ、前記車輪支持脚31の下部に車輪32が同車輪支持脚31の側部間に略水平に設けた車輪軸(車軸)3aによって前記台車ベース10の進行する方向へ転動するように回転自在に支持されている。
【0033】
要するに、実施例3に係る牽引台車は、実施例1に係る牽引台車と比し、前記誘導固定キャスター2、及び一対の固定キャスター3L、3Rの床に対する良好な接地状態をより確実に維持することができる。すなわち、前記金属プレート7による錘効果により、誘導固定キャスター2の接地状態がより安定的に維持される。また、復元用弾性機構8の弾性力により、誘導固定キャスター2の床の凹凸等の状態に左右されないように、常に安定的に誘導固定キャスター2の接地圧を保つことができる。よって、牽引台車の自転が起こりにくく、更に最後尾の牽引台車であっても、誘導固定キャスター2がシーソーの原理で浮き上がらずに接地圧が確保されるので、自転が起こらずに、牽引台車の連結した列が隊列を崩さずに整然と並ぶようになり、荷下ろしにも支障が出ない。
なお、本実施例では、復元用弾性機構として板ばねを用いているがこれに限定されず、コイルばねを用いた構成で実施することもできる。
【実施例4】
【0034】
図7は、前記牽引台車の異なる実施例を示している。
この実施例4に係る牽引台車は、上記実施例1に係る牽引台車と比し、前記牽引バー1の構成に工夫を施すことにより、上記実施例1~3で説明した牽引台車を、単独で用いられる作業者が手押しする汎用台車にモデルチェンジ可能な構成で実施される。
すなわち、実施例4に係る牽引バー1は、上記実施例1の構成に加えて、前記誘導固定キャスター2を自在キャスターに変更するための偏芯用孔1dが形成され、かつ、跳ね上げ可能な構成で実施されている(図7A図2とを対比して参照)。一方、前記台車ベース10には、前記偏芯用孔1dに対応する部位に貫通孔10bが形成されている。
【0035】
よって、前記モデルチェンジする場合には、前記連結ボルト(軸)11を台車ベース10から取り外し、前記牽引バー1及び誘導固定キャスター2を台車ベース10から一旦取り外す。そして、前記牽引バー1と誘導固定キャスター2(車輪支持脚21)とは前記軸用孔1bにねじをねじ込んで固定する。しかる後、前記牽引バー1と前記台車ベース10とは、前記偏芯用孔1dと貫通孔10bとの位置合わせを行い、その間に摺動材9を介在させた積層状態とし、前記台車ベース10の上方から前記連結ボルト(段付きボルト)11を串刺し状にねじ込む。かくして、実施例4に係る牽引台車は、前記牽引バー1の前記軸11を、当該前記軸11よりも前方向にオフセットした偏芯用軸41に設計変更して、前記牽引バー1に取り付けられた前記誘導固定キャスター2を前記偏芯用軸41を中心に旋回する自在キャスターにモデルチェンジすることができる。
【0036】
また、前記跳ね上げ可能な構成は、あくまでも一例として、図7Bに例示したように、前記牽引バー1を連結ピン18で連結可能な2分割構造体とし、一方の前方の跳ね上げ部に、連結ピン18の下面に接して当該跳ね上げ部の水平状態を保持するための支持プレート19を設け、他方に、跳ね上げられた跳ね上げ部が当接し、前記当接状態を保持するための壁部1eを形成した構成で実施されている。
【0037】
かくして、実施例4に係る牽引台車は、図7Cに概略的に例示したような牽引台車(実施例1~3参照)から、図7Dに概略的に示したような汎用台車にモデルチェンジすることができる。なお、図中の符号20は、取っ手部材を概略的に示している。
【実施例5】
【0038】
図8は、前記牽引台車の異なる実施例を示している。
この実施例5に係る牽引台車は、上記実施例1に係る牽引台車と比し、前記一対の固定キャスター3L、3Rをそれぞれ2輪構造で実施している点が相違する。当該2輪構造で実施することにより、個々の車輪が負担する荷重を軽減させてタイヤの摩耗を抑制できる等の経済的効果がある。
【実施例6】
【0039】
図9は、前記牽引台車の異なる実施例を示している。
この実施例6に係る牽引台車は、上記実施例3に係る牽引台車と比し、牽引台車の前側にも補助輪として一対の自在キャスター50を設けたことが相違する(図6A図9とを対比して参照)。牽引台車の前側を広く支持することになるので、積載時の荷物の偏りに強くなり、牽引台車が倒れ難くなる効果がある。
【0040】
以上、実施例を図面に基づいて説明したが、本発明は、図示例の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が必要に応じて通常行う設計変更、応用のバ
リエーションの範囲を含むことを念のために言及する。
【符号の説明】
【0041】
1 牽引バー
1a 基端部
1b 軸用孔
1c 連結孔
1d 偏芯用孔
2 誘導固定キャスター
2a 車輪軸
21 車輪支持脚
22 車輪
3L 固定キャスター
3R 固定キャスター
3a 車輪軸
31 車輪支持脚
32 車輪
4 連結部(連結孔)
5 自在キャスター
6 横棒部
7 錘材
8 復元用弾性機構
9 摺動材
10 台車ベース
11 軸(連結ボルト)
12 誘導固定キャスター
13 段付きボルト
14 取付プレート
15 取付プレート
16 牽引バー
18 連結ピン
19 支持プレート
20 取っ手部材
41 偏芯用軸
CL 左右中心線上
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12