(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】アミン類検出薬
(51)【国際特許分類】
G01N 31/00 20060101AFI20240903BHJP
C07D 215/12 20060101ALI20240903BHJP
C07D 215/38 20060101ALI20240903BHJP
C07D 221/10 20060101ALI20240903BHJP
C07D 221/08 20060101ALI20240903BHJP
C07D 471/14 20060101ALI20240903BHJP
G01N 31/22 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
G01N31/00 V
C07D215/12
C07D215/38
C07D221/10
C07D221/08
C07D471/14 102
G01N31/22 122
(21)【出願番号】P 2021033419
(22)【出願日】2021-03-03
【審査請求日】2023-12-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 刊行物1:The Journal of Organic Chemistry,2020,vol.85、pp.13177-13190 https://pubs.acs.org/toc/joceah/85/20?sortBy=DATE 令和2年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】511065266
【氏名又は名称】学校法人昭和薬科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 悟
(72)【発明者】
【氏名】梅野 智大
(72)【発明者】
【氏名】松本 祥汰
(72)【発明者】
【氏名】臼井 一晃
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0263861(US,A1)
【文献】特開2020-186192(JP,A)
【文献】特開2008-008761(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0056999(US,A1)
【文献】特開2012-051816(JP,A)
【文献】Junko Hirota,Fluorescence Properties and Exciplex Formation of Emissive Naphthyridine Derivatives: Application as Sensors for Amines,Chem. Eur. J.,2019年,Vol.25 No.65,Page.14943-14952
【文献】Satoru Karasawa,Crystal Structures, Thermal Properties, and Emission Behaviors of N,N-R-Phenyl-7-amino-2,4-trifluoromethylquinoline Derivatives: Supercooled Liquid-to-Crystal Transformation Induced by Mechanical Stimuli,Cryst. Growth Des.,2014年03月31日,Vol.14 No.5,Page.2468-2478
【文献】Yuichiro Abe,Crystal Structures and Emitting Properties of Trifluoromethylaminoquinoline Derivatives: Thermal Single-Crystal-to-Single-Crystal Transformation of Polymorphic Crystals That Emit Different Colors,Chem. Eur. J.,2012年,Vol.18,Page.15038-15048
【文献】Satoru Karasawa,Regioselective Photocyclizations of Di(quinolinyl)arylamines and Tri(quinolinyl)amine with Emission Color Changes and Photoreaction-Induced Self-Assemblies,Chem. Eur. J.,2016年,Vol.22 No.23,Page.7771-7781
【文献】Ryusuke Hagihara,Two-step transformation of p-anisolylaminoquinoline derivatives induced by conformation- and packing-dominated processes,Dyes and Pigments,2017年04月29日,Vol.143,Page.401-408
【文献】Yasufumi Fuchi,Selective synthesis of substituted amino-quinoline derivatives by C-H activation and fluorescence evaluation of their lipophilicityresponsive properties,Scientific Reports,2019年,Vol.9 No.1,Page.17723
【文献】Takeru Araki,Fluorescence Tumor-Imaging Using a Thermo-Responsive Molecule with an Emissive Aminoquinoline Derivative,Nanomaterials,2018年,Vol.8 No.10,Page.782
【文献】Takeru Araki,Self-Assembly Behavior of Emissive Urea Benzene Derivatives Enables Heat-Induced Accumulation in Tumor Tissue,Nano Lett.,2017年03月07日,Vol.17 No.4,Page.2397-2403
【文献】今野博行,N-ヒドロキシフタルアミドの特性を生かした新しい活用法,PEPTIDE NEWSLETTER JAPAN,2021年10月,No.122,Page.2-5
【文献】Tomohiro Umeno,Quantitative and Nondestructive Colorimetric Amine Detection Method for the Solid-Phase Peptide Synthesis as an Alternative to the Kaiser Test,Anal. Chem.,2023年10月13日,Vol.95 No.42,Page.15803-15809
【文献】Tomohiro Umeno,Basic Fluorescent Protonation-Type pH Probe Sensitive to Small ΔpKa of Methanol and Ethanol,Anal. Chem.,2022年07月13日,Vol.94 No.29,Page.10400-10407
【文献】Yasufumi Fuchi,Characterization of Push-Pull-Type Benzo[X]quinoline Derivatives (X = g or f): Environmentally Responsive Fluorescent Dyes with Multiple Functions,J. Org. Chem.,2020年09月17日,Vol.85 No.20,Page.13177-13190
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 31/00
C07D 215/12
C07D 215/38
C07D 221/10
C07D 221/08
C07D 471/14
G01N 31/22
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(A)乃至下記式(D)からなる群から選択される多環式芳香族アミン化合物のハロゲン化水素塩、硫酸塩、亜硫酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、及びカルボン酸塩からなる群から選択される塩を呈色成分として含む、アミン類検出薬。
【化1】
式(A)乃至(D)中、R
1、R
11、R
21及びR
31は、夫々独立して、
【化2】
を表し、
R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8及びR
9は、夫々独立して、水素原子、炭素原子数1乃至4のアルキル基、フェニル基又は1乃至5個の基Y
2で置換されていてもよいフェニル基を表し、
Y
1及びY
2は、夫々独立して、炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、炭素原子数1乃至4のハロアルキル基、ハロゲン原子、フェニル基、ナフチル基、ビニル基、ニトロ基、シアノ基又は置換されていてもよいアミノ基を表し、
mは、0乃至4の整数を表す。
【請求項2】
前記多環式芳香族アミン化合物が、下記式(1)乃至下記式(12)で表される多環式芳香族アミン化合物からなる群から選択される化合物である、請求項1に記載のアミン類検出薬。
【化3】
【請求項3】
前記塩が、ハロゲン化水素塩である、請求項1又は請求項2に記載のアミン類検出薬。
【請求項4】
前記塩のpKaが、0.1乃至12の範囲である、請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のアミン類検出薬。
【請求項5】
ペプチド固相合成法における遊離アミノ基の検出に使用するための請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載のアミン類検出薬。
【請求項6】
アミン類を、請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載のアミン類検出薬に接触させる工程、及び
該接触工程により生じる多環式芳香族アミン化合物の呈色に基いて、該アミン化合物を検出する工程、
を含む、アミン類の検出方法。
【請求項7】
前記アミン類が、アミノ酸、ペプチド、アミノ酸誘導体、遊離アミノ基を有する糖類、一級アミン、二級アミン、三級アミン及びこれらの樹脂工程物からなる群から選択される少なくとも一種のアミン化合物である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記アミン類が、ペプチド固相合成法における、C末端が樹脂に固定された樹脂固定アミノ酸、樹脂固定ペプチド及び樹脂固定アミノ酸誘導体から選択される少なくとも一種のアミン類である、請求項6又は請求項7に記載のアミン類の検出方法。
【請求項9】
アミン類の検出に使用した請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載のアミン類検出薬の再生方法であって、
アミン類を請求項1又は請求項5に記載のアミン類検出薬に接触させることにより、呈色又は変色した式(A)乃至下記式(D)からなる群から選択される多環式芳香族アミン化合物を生じさせた後、更にハロゲン化水素、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、及びカルボン酸からなる群から選択される酸を接触させる工程、及び
該接触工程により、該多環式芳香族アミン化合物を、呈色成分である多環式芳香族アミン化合物のハロゲン化水素塩、硫酸塩、亜硫酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、及びカルボン酸塩からなる群から選択される塩に変換する工程、
を含む、再生方法。
【請求項10】
下記式(1)乃至下記式(6)、下記式(10)乃至下記式(12)で表される多環式芳香族アミン化合
物又はそのハロゲン化水素塩、硫酸塩、亜硫酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、及びカルボン酸塩からなる群から選択される塩。
【化4】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアミン類検出薬、特に再生可能なアミン類検出薬に関する。また、本発明は該アミン類検出薬を用いたアミン類の検出方法、及び使用したアミン類検出薬の再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニアやアミノ酸を代表とするアミン類は、工業的にも医薬品開発でも欠かせない重要な物質である。そのため、アミン類を使用した反応では、反応の進行や終了を確認するためにアミン類検出薬が使用されている。
また、アミン類には、可燃性・爆発性を有するものや、芳香族アミン等の発がん性を有するものもあり、大気や河川に排出された場合、環境汚染や人体への影響が心配される。そのため、排ガス及び排水にアンモニア等のアミン類が含まれていないことを確認するためにアミン類検出薬が使用されている。
アミン類検出薬としては、1級アミンの検出に使用されるニンヒドリン試薬や、アンモニアの検出に使用されるネスラー試薬等が知られている。
【0003】
また、医薬品開発の分野において、低分子医薬が持つ活性・特異性が低く、毒性・副作用が強いという問題点、及び抗体医薬が持つ製造コストが高いという問題点を解決できる次世代医薬品として、これらの中間に位置するペプチド等の中分子医薬が大きな注目を集めている。
ペプチドの合成方法としては、一般的にペプチド固相合成法が知られている。ペプチド固相合成法としては、例えば、ポリスチレンやポリアクリルアミド等のビーズ形状の樹脂に直接又はリンカーを介して、N末端を保護した第一アミノ酸又はペプチドのC末端を結合させる。次いで、脱保護、及びN-保護アミノ酸又はN-保護ペプチドの縮合反応を繰り返し、ペプチド鎖を伸長し、最後に脱保護及び固相表面から合成ペプチドを切りだして、目的とするペプチドを得る方法である。
ペプチド固相合成法において、設計通りにペプチド鎖を伸長する必要がある。そのため、N-保護アミノ酸等の縮合反応を行う度に、縮合反応が完了していること(脱保護された遊離アミノ基が存在していないこと)を確認するために、樹脂ビーズの一部を取り出してカイザーテストを行っている。カイザーテストは、取り出した樹脂ビーズに、ニンヒドリン溶液、シアン化カリウム溶液及びフェノール溶液を加えて110℃で5分加熱することにより得られる、ニンヒドリンと一級アミノ基とが結合ルーエマン紫を生じる呈色反応を利用した一級アミノ基の検出方法である。
近年、ペプチド固相合成法における遊離アミノ基の検出方法として、N-ヒドロキシフタルイミド又はN,N-ジヒドロキシピロメリットイミドと、アミンとを反応させて黄色から赤色の生成物を生じさせる呈色反応を利用した、遊離アミノ基の検出方法が提案されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】今野博行ら、Organic Letters、2020年、第22巻、第3309-3312頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カイザーテストは毒劇物であるシアン化カリウム及びフェノールを使用するという問題点があり、またネスラー試薬も毒劇物であるヨウ化水銀を使用するという問題があるため
、毒劇物を使用しない安全なアミン類検出薬の開発が期待されている。
ネスラー試薬はアンモニア以外のアミン類の検出には使用できず、またカイザーテストは、1級アミノ基と2級アミノ基とでは異なる呈色を示すため、2級又は3級アミンの検出には使用しにくいという問題もある。
また、ペプチドの固相合成におけるカイザー試薬を用いた遊離アミノ基の検出は、N-保護アミノ酸を反応させる毎に樹脂を取り出して加熱する必要があるので、検出に時間と手間がかかり、検出の自動化が困難である。
加えて、ニンヒドリンとアミノ基との反応は不可逆であるので、検出に供したサンプルは回収できずペプチド収率が低下する点、及び使用した試薬を再生利用できないため環境調和性を有さない点でも問題が生じる。
【0006】
非特許文献1に記載の方法では、淡黄色のN-保護されていないペプチドが固定された樹脂に、ヒドロキシフタルイミド又はN,N-ジヒドロキシピロメリットイミドのジメチルホルムアミド溶液を接触させると、樹脂が橙色に呈色し、その呈色した樹脂をジメチルホルムアミドで洗浄すると淡黄色に戻ることが報告されている。
しかし、非特許文献1の方法では、溶液ではなく樹脂が呈色するため定量的な評価は困難である。また、検出するアミノ酸の構造によって呈色分子の構造が異なるので、色(溶液の吸収波長)が検出するアミノ酸の種類ごとに異なるという問題もある。
【0007】
上記問題を鑑み、本発明は、安全性が高く、1級アミノ基を有するアミン類と同様に2級又は3級アミノ基を有するアミン類を検出でき、且つ、再生可能な環境調和性に優れたアミン類検出薬を提供することを目的とする。
また、本発明は、アミノ基の種類によらず単一の呈色・蛍光を示し、かつ、呈色・蛍光した分子が拡散した溶液の吸光度を測定することで定量的なアミノ基の検出が可能な、アミン類検出薬を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記アミン類検出薬を用いて、加熱工程等の必要のない簡便なアミン類の検出方法、及び使用したアミン類検出薬の再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、特定の多環式芳香族アミン化合物の塩が、アミノ類の検出薬として使用できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、本発明は以下の[1]乃至[11]の発明に関する。
[1]下記式(A)乃至下記式(D)からなる群から選択される多環式芳香族アミン化合物のハロゲン化水素塩、硫酸塩、亜硫酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、及びカルボン酸塩からなる群から選択され得る塩を呈色成分として含む、アミン類検出薬。
【化1】
式(A)乃至(D)中、R
1、R
11、R
21及びR
31は、夫々独立して、
【化2】
を表し、
R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8及びR
9は、夫々独立して、水素原子、炭素原子数1乃至4のアルキル基、フェニル基又は1乃至5個の基Y
2で置換されていてもよいフェニル基を表し、
Y
1及びY
2は、夫々独立して、炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、炭素原子数1乃至4のハロアルキル基、ハロゲン原子、フェニル基、ナフチル基、ビニル基、ニトロ基、シアノ基又は置換されていてもよいアミノ基を表し、
mは、0乃至4の整数を表す。
[2]前記多環式芳香族アミン化合物が、下記式(1)乃至下記式(12)で表される多環式芳香族アミン化合物からなる群から選択される化合物である、[1]に記載のアミン類検出薬。
【化3】
[3]前記塩が、ハロゲン化水素塩である、[1]又は[2]に記載のアミン類検出薬。[4]前記塩のpKaが、0.1乃至12の範囲である、[1]乃至[3]の何れか一つに記載のアミン類検出薬。
[5]ペプチド固相合成法における遊離アミノ基の検出に使用するための[1]乃至[4]の何れか1つに記載のアミン類検出薬。
[6]アミン類を、[1]乃至[5]の何れか一つに記載のアミン類検出薬に接触させる工程、及び該接触工程により生じる多環式芳香族アミン化合物の呈色に基いて、該アミン化合物を検出する工程、を含む、アミン類の検出方法。
[7]前記アミン類が、アミノ酸、ペプチド、アミノ酸誘導体、遊離アミノ基を有する糖類、一級アミン、二級アミン、三級アミン及びこれらの樹脂工程物からなる群から選択される少なくとも一種のアミン化合物である、[6]に記載の方法。
[8]前記アミン類が、ペプチド固相合成法における、C末端が樹脂に固定された樹脂固
定アミノ酸、樹脂固定ペプチド及び樹脂固定アミノ酸誘導体から選択される少なくとも一種のアミン類である、[6]又は[5]に記載のアミン類の検出方法。
[9]アミン類の検出に使用した[1]乃至[5]の何れか一項に記載のアミン類検出薬の再生方法であって、アミン類を[1]又は[5]に記載のアミン類検出薬に接触させることにより、呈色又は変色した式(A)乃至下記式(D)からなる群から選択される多環式芳香族アミン化合物を生じさせた後、更にハロゲン化水素、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、及びカルボン酸からなる群から選択される酸を接触させる工程、及び該接触工程により、該多環式芳香族アミン化合物を、呈色成分である多環式芳香族アミン化合物のハロゲン化水素塩、硫酸塩、亜硫酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、及びカルボン酸塩からなる群から選択される塩に変換する工程、を含む、再生方法。
[10]下記式(E)乃至下記式(H)で表される多環式芳香族アミン化合物、又はそのハロゲン化水素塩、硫酸塩、亜硫酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、及びカルボン酸塩からなる群から選択される塩。
【化4】
式中、R
41、R
51、R
61及びR
71は、夫々独立して
【化5】
を表し、
R
42及びR
43は、夫々独立して、水素原子、炭素原子数1乃至4のアルキル基、フェニル基もしくは1乃至5個の基Y
4で置換されていてもよいフェニル基を表し(但し、R
42及びR
43が、同時に水素原子を表す場合を除く。)、
R
44、R
45、R
46、R
47、R
48及びR
49は、夫々独立して、水素原子、炭素原子数1乃至4のアルキル基、フェニル基又は1乃至5個の基Y
4で置換されていてもよいフェニル基を表し、
Y
4及びY
5は、夫々独立して、炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、炭素原子数1乃至4のハロアルキル基、ハロゲン原子、フェニル基、ナフチル基、ビニル基、ニトロ基、シアノ基又は置換されていてもよいアミノ基を表し、
nは、0乃至4の整数を表す。
[11]前記化合物が、下記式(1)乃至下記式(6)、下記式(10)乃至下記式(12)で表される化合物である、[10]に記載の化合物、又はそのハロゲン化水素塩、硫酸塩、亜硫酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、及びカルボン酸塩からなる群から選択される塩。
【化6】
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、1級乃至3級アミノ基を有するアミン類を、安全で、短時間で簡便に検出可能であり、且つ、再生可能な環境調和性に優れたアミン類検出薬及びその再生方法を提供できる。
また、本発明は、定量的なアミノ基の検出が可能なアミン類検出薬を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施例13の化合物(2)及び塩酸塩(2)の紫外-可視分光法(UV-vis)による吸収スペクトルである。
【
図2】
図2は、実施例14の化合物(3)及び塩酸塩(3)の紫外-可視分光法(UV-vis)による吸収スペクトルである。
【
図3】
図3は、実施例15の化合物(12)及び塩酸塩(12)の紫外-可視分光法(UV-vis)による吸収スペクトルである。
【
図4】
図4(a)は、実施例16の1級アミンを添加した塩酸塩(2)の紫外-可視分光法(UV-vis)による吸収スペクトルであり、
図4(b)は1級アミンの添加量に対する化合物(2)の吸光度の増加を示すグラフである。
【
図5】
図5(a)は、実施例17の2級アミンを添加した塩酸塩(2)の紫外-可視分光法(UV-vis)による吸収スペクトルであり、
図5(b)は2級アミンの添加量に対する化合物(2)の吸光度の増加を示すグラフである。
【
図6】
図6(a)は、実施例18の3級アミンを添加した塩酸塩(2)の紫外-可視分光法(UV-vis)による吸収スペクトルであり、
図6(b)は3級アミンの添加量に対する化合物(2)の吸光度の増加を示すグラフである。
【
図7】
図7は、実施例19のアミンと反応させた塩酸塩(6)の紫外-可視分光法(UV-vis)による吸収スペクトルである。
【
図8】
図8は、実施例20のアミンと反応させた塩酸塩(8)の紫外-可視分光法(UV-vis)による吸収スペクトルである。
【
図9】
図9は、実施例21の塩化水素及びアンモニアと反応させた、化合物(7)のIRスペクトルである。
【
図10】
図10は、実施例22の塩化水素及びアンモニアと反応させた、化合物(8)のIRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のアミン類検出薬は、下記式(A)乃至下記式(D)からなる群から選択される多環式芳香族アミン化合物のハロゲン化水素塩、硫酸塩、亜硫酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、及びカルボン酸塩からなる群から選択され得る塩を呈色成分として含む。
【化7】
式(A)乃至(D)中、R
1、R
11、R
21及びR
31は、夫々独立して、
【化8】
を表す。
上記式中、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8及びR
9は、夫々独立して、水素原子、炭素原子数1乃至4のアルキル基、フェニル基又は1乃至5個の基Y
2で置換されていてもよいフェニル基を表し、Y
1及びY
2は、夫々独立して、炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、炭素原子数1乃至4のトリハロアルキル基、ハロゲン原子、フェニル基、ナフチル基、ビニル基、ニトロ基、シアノ基又は置換されていてもよいアミノ基を表し、mは、0乃至4の整数を表す。
【0013】
炭素原子数1乃至4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、及びt-ブチル基等が挙げられる
炭素原子数1乃至4のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、s-ブトキシ基及びt-ブトキシ基が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
炭素原子数1乃至4のトリハロアルキル基としては、上記炭素原子数1乃至4のアルキ
ル基の1乃至すべての水素原子が上記ハロゲン原子に置換された基が挙げられ、例えば、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基等が挙げられる。
置換基を有していてもよいアミノ基としては、アミノ基及び上記炭素原子数1乃至4のアルキル基で置換されたアミノ基が挙げられ、例えばメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基が挙げられる。
【0014】
ハロゲン化水素塩としては、フッ化水素塩、塩化水素塩、臭化水素塩及びヨウ化水素塩が挙げられ、好ましくは塩化水素塩(塩酸塩)である。
カルボン酸塩としては、特に限定されるものではないが、例えば、酢酸塩、プロピオン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸等の一価カルボン酸の塩、乳酸等の一価ヒドロキシカルボン酸の塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、アゼライン酸塩、シュウ酸塩等の二価カルボン酸の塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩等の二価ヒドロキシカルボン酸の塩、アコニット酸塩等の三価カルボン酸の塩、クエン酸等の三価ヒドロキシカルボン酸の塩が挙げられ、好ましくは酢酸塩、クエン酸塩及び酒石酸塩が挙げられる。
多環式芳香族アミン化合物は、ハロゲン化水素、硫酸、亜硫酸、チオ硫酸、硝酸、亜硝酸、及びカルボン酸等の酸と結合してアンモニウム塩を形成するものと考えられる。多環式アミン化合物と酸との反応は、多環式芳香族アミン化合物の塩基の価数(例えば、アミノ基の数)と、酸の価数により適宜調製できる。
例えば、多環式芳香族アミン化合物が2以上のアミノ基を有する場合、多環式芳香族アミン化合物1分子は、1乃至アミノ基と同数のハロゲン化水素等の1価の酸と塩を形成できる。定量分析を行う場合、本発明の多環式芳香族アミン化合物は、ハロゲン化水素等の1価の酸1分子と塩を形成したものが好ましい。
【0015】
本発明のアミン類検出薬は、好ましくは下記(1)乃至(12)で表される多環式芳香族アミン化合物のハロゲン化水素塩、硫酸塩、亜硫酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、及びカルボン酸塩からなる群から選択される塩を呈色成分として含む。
【化9】
【0016】
本発明のアミン類検出薬で検出可能なアミン類としては、アミノ基を有するものであれば限定されず、例えば、アミノ酸、ペプチド、アミノ酸誘導体、遊離アミノ基を有する糖類、その他の一級アミン、二級アミン及び三級アミンが挙げられ、またこれらアミン類が樹脂等の固体に固定されているものも含む。
樹脂等の固体に固定されているアミン類としては、これらに限定されるものではないが、例えば、ペプチド固相合成法における、遊離アミノ基を有する、C末端が樹脂に固定された樹脂固定アミノ酸、樹脂固定ペプチド及び樹脂固定アミノ酸誘導体が挙げられる。
【0017】
アミノ酸の具体例としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプト
ファン、チロシン、バリン、シスチン、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、ジヒドロキシフェニルアラニン、チロキシン、フォスフォセリン、デスモシン、β-アラニン、サルコシン、オルニチン、クレアチン、γ-アミノ酪酸、テアニン、カイニン酸、ドウモイ酸、及びイボテン酸、及びこれらのN-アルキル化アミノ酸等が挙げられる。
【0018】
アミノ酸誘導体の具体例としては、セロトニン、ノルアドレナリン、アドレナリン、チラミン、ドーパミン、及びこれらのN-アルキル化アミノ酸誘導体等が挙げられる。
遊離アミノ基を有する糖類の具体例としては、D-グルコサミン、D-ガラクトサミン、ノイラミン酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、及びN-アルキル化糖類等が挙げられる。
【0019】
第一級アミンの具体例として、メチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、n-ノニルアミン、n-デシルアミン、n-ウンデシルアミン、n-ドデシルアミン、n-トリデシルアミン、n-テトラデシルアミン、n-ペンタデシルアミン、n-ヘキサデシルアミン、n-ヘプタデシルアミン、n-オクタデシルアミン、n-ノナデシルアミン、n-エイコシルアミン等の脂肪族アミン;シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン等の脂環式アミン;ベンジルアミン、フェネチルアミン等のアラルキルアミン;アニリン、p-n-ブチルアニリン、p-tert-ブチルアニリン、p-n-オクチルアニリン、p-n-デシルアニリン、p-n-ドデシルアニリン、p-n-テトラデシルアニリン等のアニリン類、1-ナフチルアミン、2-ナフチルアミン等のナフチルアミン類、1-アミノアントラセン、2-アミノアントラセン等のアミノアントラセン類、1-アミノアントラキノン等のアミノアントラキノン類、4-アミノビフェニル、2-アミノビフェニル等のアミノビフェニル類、2-アミノフルオレン、1-アミノ-9-フルオレノン、4-アミノ-9-フルオレノン等のアミノフルオレン類、5-アミノインダン等のアミノインダン類、5-アミノイソキノリン等のアミノイソキノリン類、9-アミノフェナントレン等のアミノフェナントレン類等の芳香族アミンが挙げられる。更に、N-(tert-ブトキシカルボニル)-1,2-エチレンジアミン、N-(tert-ブトキシカルボニル)-1,3-プロピレンジアミン、N-(tert-ブトキシカルボニル)-1,4-ブチレンジアミン、N-(tert-ブトキシカルボニル)-1,5-ペンタメチレンジアミン、N-(tert-ブトキシカルボニル)-1,6-ヘキサメチレンジアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)アミン、N-(3-ヒドロキシプロピル)アミン、N-(2-メトキシエチル)アミン、N-(2-エトキシエチル)アミン等が挙げられる。
【0020】
第二級アミンの具体例として、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ-sec-ブチルアミン、ジ-n-ペンチルアミン、エチルメチルアミン、メチル-n-プロピルアミン、メチル-n-ブチルアミン、メチル-n-ペンチルアミン、メチル-n-オクチルアミン、メチル-n-デシルアミン、メチル-n-ドデシルアミン、メチル-n-テトラデシルアミン、メチル-n-ヘキサデシルアミン、メチル-n-オクタデシルアミン、エチルイソプロピルアミン、エチル-n-ブチルアミン、エチル-n-ペンチルアミン、エチル-n-オクチルアミン、ジ-n-ヘキシルアミン、ジ-n-オクチルアミン、ジ-n-ドデシルアミン、ジ-n-ヘキサデシルアミン、ジ-n-オクタデシルアミン等の脂肪族アミン;ジシクロヘキシルアミン等の脂環式アミン;ジベンジルアミン等のアラルキルアミン;ジフェニルアミン等の芳香族アミン;フタルイミド、ピロール、ピペリジン、ピペラジン、イミダゾール等の窒素含有複素環式化合物が挙げられる。更に、ビス(2-ヒドロキシエチル)アミン、ビス(3-ヒドロキシプロピル)アミン、ビス(2-エトキシエチル)アミン、ビス(2-プロポキシエチル)アミン等が挙げられる。
【0021】
第三級アミンの具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリ-n-ペンチルアミン、トリ-n-ヘキシルアミン、トリ-n-オクチルアミン、トリ-n-ドデシルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチル-n-ブチルアミン、ジメチル-n-ヘキシルアミン、ジメチル-n-オクチルアミン、ジメチル-n-デシルアミン、ジエチル-n-デシルアミン、ジメチル-n-ドデシルアミン、ジメチル-n-テトラデシルアミン、ジメチル-n-ヘキサデシルアミン、ジメチル-n-オクタデシルアミン、ジメチル-n-エイコシルアミン等の脂肪族アミン;ピリジン、ピラジン、ピリミジン、キノリン、1-メチルイミダゾール、4,4’-ビピリジル、4-メチル-4,4’-ビピリジル等の窒素含有複素環式化合物が挙げられる。
【0022】
上記のアミン類が固定される樹脂としては特に限定されず、例えばアミン類又はそれを結合するリンカーを導入する観点から、アミノ基、カルボキシル基、水酸基等の官能基を有する樹脂が挙げられ、例えば、ポリオキシアルキレンポリオール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等)、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、及びこれらを2種以上組み合わせた樹脂(例えば、これらの共重合体)が挙げられる。これら樹脂としては、ビーズ形状のものが好ましい。また、磁性ビーズとして使用可能な樹脂を用いることもできる。
【0023】
本発明のアミン類検出薬は、上記多環式芳香族アミン化合物の塩の粉体若しくは粒状の形態、又は上記多環式芳香族アミン化合物の塩の均一な溶液若しくは分散液の形態で使用できる。
固体で使用する場合、アミン類の検出を阻害しない範囲で他の粉体と混合して使用することができる。好ましくは、臭化カリウム等の不活性の塩が挙げられる。
溶液又は分散液の形態で使用する場合、溶媒としては下記の不活性溶媒を挙げることができる。好ましくは、水、メタノール、エタノール及びプロパノール等の低級アルコール、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類が挙げられる。これらの溶媒は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
また、溶液又は分散液の形態で使用する場合、アミン類の検出を阻害しない範囲で、公知の緩衝剤を含有してもよい。例えば、クラークラブス緩衝液、セーレンセン緩衝液、コルトフ緩衝液、ミカエリス緩衝液、マッキルベイン緩衝液、ブリトンロビンソン緩衝液、カーモディ緩衝液、ゴモリ緩衝液、ベイツバウアー緩衝液、デロリーキング緩衝液等が挙げられる。
【0024】
<アミン類の検出方法>
本発明のアミン類の検出方法は、アミン類を、上記アミン類検出薬に接触させる工程、及び該接触工程により生じるアミン化合物の呈色に基いて、該アミン類を検出する工程を含む。
【0025】
アミン類を上記アミン類検出薬に接触させる方法としては、慣用の方法を使用できる。
例えば、密閉した容器内で多環式芳香族アミン化合物の塩の固体に、気体のサンプルを接触させる方法が挙げられる。サンプルにアミン類が含まれている場合、多環式芳香族アミン化合物が生じる呈色反応が起こるので、アミン類を検出できる。
また、多環式芳香族アミン化合物の塩を溶解させた溶液に、固体、液体又は気体のサンプルを添加する方法、或いは液体のサンプルに固体の多環式芳香族アミン化合物の塩を直
接添加する方法が挙げられる。サンプルにアミン類が含まれている場合、生じた多環式芳香族アミン化合物が溶液中に拡散して、溶液の色が変わることによりアミン類を検出できる。
【0026】
本発明に用いられる多環式芳香族アミン化合物は、π共役環に強い電子吸引性基であるトリフルオロメチル基、及び電子供与性基であるアミノ基を有するプッシュ-プル型のπ拡張型多環式芳香族アミン化合物であるので発色(蛍光発色)する。一方、多環式芳香族アミン化合物の塩は、アミノ基部位が電子供与性を有さないアンモニウムカチオン構造となるので、プッシュ-プル型のπ拡張型多環式芳香族性を有さず、無色又は淡色(例えばアミノ基由来の淡黄色或いは淡褐色)の化合物となる。
本発明のアミン類検出薬は、無色又は淡色の多環式芳香族アミン化合物の塩をアミン類と接触させることにより、脱塩して有色・蛍光色の多環式芳香族アミン化合物が生じる呈色反応により、多環式芳香族アミン化合物又はそれが拡散した溶液の色が変化するので、視覚によりアミン類の有無を検出できる。
一方、サンプル中にアミノ基を有するアミン類が含まれていない場合、多環式芳香族アミン化合物を生じず、アミン類検出薬が呈色しないため、本発明のアミン類検出薬はアミン類の検出に有効である。
【0027】
ここで、多環式芳香族アミン化合物の塩の溶液は、使用する溶媒の種類及びそのpHにより、一部脱塩して、多環式芳香族アミン化合物とその塩とが平衡状態で拡散している有色の溶液となっていても構わない。アミン類と接触させることにより多環式芳香族アミン化合物の濃度が増加し、溶液の色が濃く変化するので、アミン類の検出は可能である。
【0028】
また、多環式芳香族アミン化合物の塩は、その構造により酸解離定数(pKa)が異なるので、溶媒の種類及びpHを調製することで、溶液中の多環式芳香族アミン化合物とその塩との平衡状態を調製できる。また、サンプルの溶媒及びpHに基いて、使用する多環式芳香族アミン化合物の塩を選択的に使用することができる。アミン類の定量には、検出条件下で無色(白色)乃至淡色であるアミン類検出薬を使用することが好ましい。例えば、ペプチドの固相合成には、樹脂ビーズに影響を及ぼさない中性付近のpHの溶媒を使用するため、pKaが5.0乃至11.0の範囲、好ましくは5.8乃至7.5の範囲の多環式芳香族アミン化合物の塩を使用することが好ましい。
【0029】
但し、本発明の多環式芳香族アミン化合物の塩の酸解離定数よりも低い酸解離定数を有するアミン類の検出では、平衡がアミン類の塩の生成よりも多環式芳香族アミン化合物の塩の生成に偏るため、アミン類の正確な定量ができない場合がある。そのため、検出するアミン類よりも低い酸解離定数を有する多環式芳香族アミン化合物のハロゲン塩を含むアミン類検出薬を使用することが好ましい。
例えば、pKaが0.1乃至12.0の範囲、好ましくは5.0乃至11.0の範囲、より好ましくは5.8乃至7.5の範囲にある多環式芳香族アミン化合物の塩を使用することが好ましい。この範囲であれば、本発明の多環式芳香族アミン化合物の塩は、溶媒中で完全に脱塩することもなく、また検出するアミン類の塩の形成を妨げない。
【0030】
また、従来のアミン類検出薬では、検出薬とアミン類とが結合して呈色することを利用していたため、検出可能なアミン類に制限があったり、検出するアミン類の種類により異なる色の呈色を生じたりする。例えば、カイザーテストは、ニンヒドリンと一級アミノ基(-NH2)とが反応してルーエマン紫を生じる呈色反応を利用するものであるので、一級アミノ基(-NH2)を有していないアミン類の検出には適用できないという問題がある。しかし、本発明のアミン類検出薬は、脱塩により生じる多環式芳香族アミン化合物又はそれが拡散した溶液の色でアミン類の検出するため、アミン類の種類に限らず検出可能であり、単一の呈色を示すという利点を有する。
【0031】
加えて、従来のアミン類検出薬とアミン類とが結合(共有結合やイオン結合など)して有色の生成物を生じる呈色反応では、アミン類の種類により生成物の色(吸収スペクトル)が異なり、定量反応を行うことは困難であった。また、樹脂固定ペプチド等のアミノ酸の検出では、溶液ではなく樹脂が呈色するため、定量反応を行うことは困難であった。
しかし、本発明のアミン類検出薬は、検出するアミン類の種類にかかわらず、脱塩された単一の多環式芳香族アミンン化合物が生成し、溶液中に拡散する。そのため、例えば紫外可視分光法等の慣用の方法を用いて測定した溶液中のアミン類検出薬の濃度から、サンプル中に含まれるアミン類の量を定量することが可能である。
【0032】
本発明のアミン類検出薬に含まれる多環式芳香族アミン化合物の含有量は、検出するサンプルや検出薬の形状によっても変化し得るが、例えば溶液として使用する場合、サンプルと混合後の濃度が、例えば0.01μM~100mM、好ましくは0.1~100μMである。
【0033】
<アミン類検出薬の再生方法>
アミン類検出薬の再生方法は、アミン類をアミン類検出薬に接触させることにより多環式芳香族アミン化合物を生じさせた後、更にハロゲン化水素、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、及びカルボン酸からなる群から選択される酸を接触させる工程、及び該接触工程により、該多環式芳香族アミン化合物を、呈色成分である多環式芳香族アミン化合物のハロゲン化水素塩、硫酸塩、亜硫酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、及びカルボン酸塩からなる群から選択される塩に変換する工程を含む。
【0034】
アミン類との反応により脱塩して生じた多環式芳香族アミン化合物は、当量或いは過剰量の酸と反応させることにより、容易に対応する多環式芳香族アミン化合物の塩を生成する。生成した多環式芳香族アミン化合物の塩を公知の方法により精製し、容易にアミン類検出薬を再生することができる。
これまで使用されていたカイザーテストは不可逆反応であるため、ニンヒドリンの再生は非常に困難であるが、本発明のアミノ類検出薬はアミン類の検出後、容易に回収し再生利用できるため、環境調和性に非常に優れている。
【0035】
多環式芳香族アミン化合物への酸の接触方法は公知の方法を使用できる。
例えば、白色又は淡色の固体が得られるまで、固体の多環式芳香族アミン化合物に気体状の酸を接触させる方法が挙げられる。
また、多環式芳香族アミン化合物が拡散した溶液中に、溶液の色が透明になるまで気体、液体若しくは固体状の酸、又は下記不活性溶媒に溶解した酸溶液を添加し、得られた溶液を溶媒留去して精製する方法が挙げられる。
【0036】
<ペプチド固相合成法への利用>
本発明のアミン類検出薬は、ペプチド固相合成法における未反応の遊離アミノ基を検出するためのカイザーテストの代わりに使用するのに適している。
本発明のアミン類検出薬は、例えば、N-末端保護されたアミノ酸(又はペプチド)が固定された樹脂を準備する工程、該樹脂固定アミノ酸(又はペプチド)を脱保護及びN-保護アミノ酸を縮合する工程、樹脂を洗浄後、樹脂と本発明のアミン類検出薬を接触させて遊離アミノ基の有無を検出する工程、検出結果に基づいて再度N-保護アミノ酸を縮合反応させるか又は次の脱保護及びN-保護アミノ酸を縮合反応させる工程、目的とするペプチド鎖が得られるまで上記検出工程及び反応工程を繰り返し、その後樹脂からペプチドを回収する工程を含む、ペプチド固相合成方法に使用できる。
【0037】
本発明のアミン類検出薬においては、N-保護アミノ酸の縮合反応後、樹脂(固相)を
洗浄し、その固相に、本発明のアミン類検出薬溶液を添加することで、すべての樹脂固定ペプチド(アミノ酸)について、遊離アミノ基の有無を検出できる。つまり、一部の樹脂しか検出に供せないカイザーテストと比して、遊離アミノ基の検出精度が高い。
本発明のアミン類検出薬は、遊離アミノ基が存在していない場合、脱塩せず、溶液は呈色しない。この場合、アミン類検出薬を回収し、固相を洗浄するだけで次の脱離及びN-保護アミノ酸の縮合反応を行うことができる。
一方、遊離アミノ基が存在していた場合、脱塩して、呈色した多環式芳香族アミン化合物が拡散した溶液が得られる。この場合、アミン類検出薬を回収し、固相を洗浄するだけで、再度N-保護アミノ酸の縮合反応を行うことができる。
【0038】
つまり、本発明の方法では、遊離アミノ基を検出するために、カイザーテストの様に樹脂の一部を取り出すことも、呈色反応のための加熱工程も必要ない。また、樹脂(固相)を洗浄するだけで、次の工程を行える。そのため、ペプチドの伸長に伴い収率が低下することがなく、短時間で簡便にペプチドの合成を進めることができるので、経済的に優れている。加えて、ペプチド固相合成にコック付きカラム等を使用した場合、本発明のアミン類検出薬の使用によりワンポットでペプチドを合成できるので、ペプチド合成の自動化を可能にすることが期待できる。
【0039】
また、上述した様に回収したアミン類検出薬の溶液を、紫外可視吸光光度計等により吸収スペクトルを測定することで、残存するアミノ基の定量が可能である。また回収したアミン類検出薬は、上述の方法で容易に再生して再利用できる。
【0040】
<多環式芳香族アミン化合物及びその塩の合成方法>
また、本発明は、式(A)乃至式(D)からなる群から選択される多環式芳香族アミン化合物及びそのハロゲン化水素塩、硫酸塩、亜硫酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、及びカルボン酸塩からなる群から選択される塩の製造方法に関し、例えば、下記の製造方法により多環式芳香族アミンを得ることができる。
【0041】
(式(A1)乃至(D1)で表される化合物の製造)
【化10】
【0042】
式(A1)乃至(D1)で表される化合物は、以下の方法で製造することができる
【化11】
【化12】
【化13】
【0043】
式(A1)で表される化合物は、それ自体は公知の方法(例えば、米国特許8,106,206号明細書に記載の方法)で合成することができる。例えば、1,3-フェニレンジアミンとヘキサフルオロアセチルアセトンとを環化反応させることにより得ることができる。
【0044】
式(B1)及び(C1)で表される化合物は、例えば、2,7-ナフチレンジアミンとヘキサフルオロアセチルアセトンとを環化反応させることにより混合物として得ることができる。得られた混合物は、例えばシリカゲルカラムクロマトグラフィー等の公知の方法で精製し単離可能である。
【0045】
1,3-フェニレンジアミン及びヘキサフルオロアセチルアセトンは市販のものを使用できる。
2,7-ジアミノナフタレンは、市販のものでもよいし、Bucherer反応に準じて、密封管内で、2,7-ジヒドロキシナフタレンを、亜硫酸水素ナトリウムの存在下アンモニア水溶液と反応させることにより合成したものでもよい。
反応に用いる2,7-ジアミノナフタレンに代えて、2,7-ジアミノナフタレンの一方のアミノ基を選択的にトシル基等で保護した保護体を使用することが好ましい。保護体は、例えば、2,7-ジアミノナフタレンと、0.9~1.2当量の塩化パラトルエンス
ルホニル(塩化トシル)とをピリジン溶媒中室温で反応させることにより得ることができる。環化反応後、塩基の存在下で脱保護することにより、式(B1)及び(C1)で表される化合物を得ることができる。
【0046】
これらの反応は、例えば、コンベス キノリン反応に準じて行うことができ、例えば、触媒の存在下において、不活性溶媒中で行われる。
【0047】
触媒としては、コンベス キノリン反応に使用可能な酸触媒、例えば、メタンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸およびキシレンスルホン酸等の芳香族スルホン酸を包含するスルホン酸;硫酸、発煙硫酸、リン酸等の鉱酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸;三フッ化ホウ素-テトラヒドロフラン(THF)錯体、塩化アルミニウム、塩化亜鉛等のルイス酸;モンモリロナイトK-10、硫酸化ジルコニア等の固体酸等が挙げられ、好ましくはモンモリロナイトK10が挙げられる。
【0048】
不活性溶媒としては、反応に関与しないものであればよく、例えば、水、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル;ヘキサン、ヘプタン等の飽和炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン等の芳香族炭化水素;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4-フルオロエチレンカーボネート等の炭酸エステル;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、γ-ラクトン等のエステル;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)等のアミド;N,N,N’,N’-テトラメチルウレア(TMU)、N,N’-ジメチルプロピレンウレア(DMPU)等のウレア;ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、オクタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2,2,2-トリフルオロエタノール等のアルコール;ジクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン炭化水素;等が挙げられる。これらは1種のみで用いてもよく、任意の比で混合して用いてもよい。好ましくは、1,4-ジオキサンが挙げられる。
【0049】
反応温度は0℃乃至の溶媒の還流温度、好ましくは60℃乃至100℃である。反応時間は反応温度によって異なるが、5分乃至168時間、好ましくは10分乃至~24時間である。
【0050】
式(D1)で表される化合物は、例えば、2,4-ビス(トリフルオロメチル)イミダゾ[1,2-α][1,8]ナフチリジンとハロゲン化剤とを反応させて得られる式(D11)(式中、Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。)で表される化合物と、式(13)で表されるホウ素化合物とを反応させることにより得ることができる。得られた混合物は、例えばシリカゲルカラムクロマトグラフィー等の公知の方法で精製し単離可能である。
【0051】
2,4-ビス(トリフルオロメチル)イミダゾ[1,2-a][1,8]ナフチリジンは、それ自体は公知の方法、例えば(古賀登ら、Org.Lett.,2012年、第14巻、第24号、第6282乃至6285頁、及びYefeng Tangら、Org.Biomol.Chem.,2014年、第12巻、第2344乃至2348頁)に従って合成できる。例えば、2,6-ジアミノピリジンとヘキサフルオロアセチルアセトンと
を環化反応させて得られた2-アミノ-5,7-ビス(トリフルオロメチル)-1,8-ナフチリジンを、さらにブロモアセトアルデヒドと環化反応させて得ることができる。
【0052】
式(D11)で表される化合物の合成は公知の方法、例えばWohl-Ziegler反応に準じて行うことができ、例えば、不活性溶媒中で、N-ヨードスクシンイミド、N-ブロモスクシンイミド、N-クロロスクシンイミド、臭素、塩化スルフリルなどのハロゲン化剤を用いて行われる。さらに、熱、光、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリルなどのラジカル開始剤を反応に加えることで、反応を加速させることができる。
【0053】
式(13)で表されるホウ素化合物としては、市販の又は公知の化合物を使用できる。
式中、-B(OR
51)
2としては、例えば、-B(OH)
2、-B(OMe)
2、-B(OEt)
2、-B(OPr)
2、-B(OBu)
2、及び-B(OPh)
2などが挙げられる。また、2つのOR
51とホウ素原子とが環を形成していてもよく、その場合のB(OR
51)
2としては、例えば、
【化14】
で表される基が挙げられる。収率の観点から式(II)で示される基が好ましい。
式(D11)で表される化合物は、ホウ素化合物に対して0.5~3.0モル当量を用いることが好ましい。
式(13)で表されるホウ素化合物としては、好ましくは4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)アニリンが挙げられる。
【0054】
式(D11)で表される化合物と、式(13)で表されるホウ素化合物との反応は、例えば鈴木-宮浦クロスカップリング反応に準じて行うことができ、例えば、触媒の存在下において、不活性溶媒中、0℃乃至溶媒の還流温度の温度範囲で5分乃至168時間行われる。
【0055】
触媒としては、後述するパラジウム触媒が挙げられ、好ましくはテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)が挙げられる。
【0056】
塩基としては、後述する塩基が挙げられ、好ましくは、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム等の金属炭酸塩が挙げられる。
用いる塩基の量に特に制限はなく、例えば塩基とホウ素化合物とのモル比は、1:2~10:1の範囲が挙げられ、好ましくは1:1~4:1の範囲が挙げられる。
【0057】
不活性溶媒としては、上記の不活性溶媒が挙げられ、好ましくは、水、エーテル、アミド、アルコール、及びこれらの混合溶媒が挙げられ、さらに好ましくは水と1,4-ジオキサンの混合溶媒が挙げられる。
【0058】
反応温度は0℃乃至溶媒の還流温度、好ましくは40℃乃至溶媒の還流温度である。
反応時間は反応温度によって異なるが、5分乃至168時間、好ましくは10分乃至48時間である。
【0059】
ここで、式(13)で表されるホウ素化合物に代えて、後述する式(15)で表される化合物を使用することで、下記式(D2)又は(D3)(式中、R4、R5及びY1は上
記と同じ意味を表す。)で表される化合物を合成することができる。
【0060】
(式(A2)乃至(D2)及び式(A3)乃至(D3)で表されるアミン化合物の製造)
【化15】
【0061】
上記式(A2)及び(A3)で表される化合物は、以下の方法で製造することができる。
【化16】
上記方法で得られた式(A1)で表される化合物を、不活性溶媒中、触媒及び塩基の存在下、上記式(14)(式中、Xはフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、R
2は上記と同じ意味を表す。)で表されるハロゲン化合物と反応させて、式(A2)(式中、R
2は上記と同じ意味を表す。)で表される化合物を得ることができる。
【0062】
【化17】
さらに、上記方法で得られた式(A2)で表される化合物を、不活性溶媒中、触媒及び塩基の存在下、上記式(15)(式中、X及びR
3は上記と同じ意味を表す。)で表されるハロゲン化合物と反応させて、式(A3)(式中、R
3は上記と同じ意味を表す。)で表される多環式芳香族アミン化合物を得ることができる。
式(A3)中のR
2及びR
3が同じ基を表す場合、式(A1)で表される多環式芳香族アミン化合物に、2当量以上、好ましくは2乃至10当量の上記式(14)で表されるハロゲン化合物を反応させることで、式(A3)で表される芳香族アミン化合物を得ること
もできる。
同様に、式(A1)で表される多環式芳香族アミン化合物に代えて、式(B1)乃至(D1)で表される多環式芳香族アミン化合物を使用することで、式(B2)乃至(D2)、及び式(B3)乃至(D3)で表される多環式芳香族アミン化合物を製造することができる。
【0063】
上記式(14)で表されるハロゲン化合物及び式(15)で表されるハロゲン化合物としては、市販の又は公知の化合物を使用でき、好ましくはヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、ヨウ化イソプロピル、ヨウ化ブチル、ヨウ化2-メチルプロピル、ヨウ化tert-ブチル、ブロモベンゼン、4-tert-ブチル-1-ブロモベンゼン、4-メトキシ-1-ブロモベンゼンなどが挙げられる。
【0064】
これらの反応は、例えば、バックワルド・ハートウィッグアミノ化反応、ゴールドバーグ アミノ化反応及びジョルダン・ウルマン・ゴルトベルク反応等の公知の方法に準じて行うことができ、例えば、触媒、塩基及びリガンドの存在下において、不活性溶媒中で行われる。
【0065】
触媒としては、例えばパラジウム触媒又は銅触媒を使用できる。
パラジウム触媒としては、ホスフィン系配位子を有するパラジウム触媒又はパラジウム触媒前駆体とホスフィン系配位子とを混合して生成する錯体を使用することができる。パラジウム触媒前駆体とホスフィン系配位子とを混合して生成する錯体は、反応系中で調製することができ、場合によっては別途調製し、反応系中に加えることもできる。
【0066】
ホスフィン系配位子を有するパラジウム触媒としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(0)、ビス[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム(0)、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(0)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジアセテート、ジクロロ[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム(II)、ジクロロ[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)、ジクロロ[1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]パラジウム(II)、ジクロロビス(トリ-O-トリルホスフィン)パラジウム(II)等が挙げられる。好ましくは、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムが挙げられる。
【0067】
パラジウム触媒前駆体としては、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロジアミンパラジウム(II)ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロロ(1,5-シクロオクタジエン)パラジウム(II)、アリルパラジウムクロリドダイマー(II)、ビス(2-メチルアリル)パラジウムクロリドダイマー(II)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)(クロロホルム)ジパラジウム(0)、アセチルアセトンパラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、トリフルオロ酢酸パラジウム(II)、トリフルオロメタンスルホン酸パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)、パラジウム担持カーボン等が挙げられる。好ましくは塩化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)が挙げられる。より好ましくは酢酸パラジウム(II)が挙げられる。
【0068】
ホスフィン系配位子としては、トリメチルホスフィン、トリn-ブチルホスフィン、トリtert-ブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスrフィン、トリメトキシホスフィン、トリエトキシホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリフェノキシホスフィン、
トリ(o-トリルホスフィン)、トリス(2-メチルフェノキシ)ホスフィン、トリス(4-メチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9’-ジメチルキサンテン、ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン等が挙げられる。より好ましくはトリフェニルホスフィンが挙げられる。
ホスフィン系配位子の使用量は、触媒前駆体に対して10モル当量以下であり、好ましくは5モル当量以下であり、より好ましくは3モル当量以下であり、0.01モル当量以上であり、好ましくは0.1モル当量以上であり、より好ましくは1モル当量以上である。ホスフィン系配位子の使用量については、上記に記載の上限値及び下限値を任意に組み合わせることができる。
【0069】
銅触媒としては、ヨウ化銅(I)、臭化銅(I)、塩化銅(I)、酢酸銅(II)、硫酸銅(II)等を挙げることができる。また、リガンドとしては、例えばトランス-N,N‘-ジメチルシクロヘキサン-1,2-ジアミン等が挙げられる。
【0070】
塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等の金属水酸化物塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム等の金属炭酸塩、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム等の金属酢酸塩、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等の金属リン酸塩、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化カルシウム、フッ化セシウム等の金属フッ化物塩、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムイソプロピルオキシド、カリウムtert-ブトキシド等の金属アルコキシド、トリエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチルピペラジン、N-メチルピペラジン等の有機塩基等を挙げることができる。好ましくは、カリウムtert-ブトキシドが好ましい。
【0071】
不活性溶媒としては、上記に挙げた不活性溶媒を挙げることができ、特に芳香族炭化水素系、例えばトルエンが好ましい。
反応温度は室温乃至の溶媒の還流温度、好ましくは80℃乃至溶媒の還流温度である。反応時間は反応温度によって異なるが、5分~48時間、好ましくは4~12時間である。
【0072】
(式(A5)乃至(D5)で表される化合物の製造)
【化18】
【0073】
式(A5)で表される化合物は以下の方法で製造することができる。
【化19】
【0074】
式(A4)で表される化合物は、上記方法で得られた式(A1)で表される化合物を用いて、公知の方法(例えば、米国特許8,106,206号明細書に記載の方法)で製造することができる。例えば、式(A1)で表される化合物のアミノ基を、不活性溶媒中、酸の存在下、亜硝塩と反応させてジアゾニウム基とし、次いでヨウ化塩と反応させることにより、式(A4)で表される化合物を得ることができる。
得られた式(A4)で表される化合物を、上記式(16)(式中、R4、R5及びY1は上記と同じ意味を表し、R51は上記と同じ意味を表す。)で表されるホウ素化合物と反応させて、式(A5)(式中、R4、R5及びY1は上記と同じ意味を表す。)で表される化合物を得ることができる。
同様に、式(A1)で表される化合物に代えて、式(B1)乃至(D1)で表される化合物を使用することで、式(B5)乃至(D5)で表される化合物を得ることができる。
【0075】
亜硝酸塩としては、好ましくは亜硝酸ナトリウムが挙げられる。
酸としては、硫酸、塩酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などが挙げられ、好ましくは硫酸が挙げられる。
ヨウ化塩としては、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化リチウム等が挙げられ、好ましくはヨウ化カリウムが挙げられる。
例えば、ジアゾニウム塩の形成は、式(A1)乃至(D1)で表される化合物の硫酸溶液に、5℃以下に保ったまま、亜硝酸塩の水溶液を滴下添加して行うことができる。
ヨウ化反応は、5℃以下のジアゾニウム塩の溶液にヨウ化塩の水溶液を加え、その後60℃乃至100℃の温度にて実施することができる。
【0076】
式(16)で表されるホウ素化合物としては、市販の又は公知の化合物を使用できる。
式中、R4、R5、Y1及び-B(OR51)2は上記と同じ意味を表す。
2,4-ビス(トリフルオロメチル)-7-ヨードキノンは、式(12)で表されるホウ素化合物に対して0.5~3.0モル当量を用いることが好ましい。
式(12)で表される化合物としては、好ましくは4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)アニリンが挙げられる。
【0077】
これらの反応は、例えば鈴木-宮浦クロスカップリング反応に準じて行うことができ、例えば、触媒の存在下において、不活性溶媒中、0℃乃至溶媒の還流温度の温度範囲で5分乃至168時間で行われる。
【0078】
パラジウム触媒としては、上記のパラジウム触媒が挙げられる。
ホスフィン系配位子を有するパラジウム触媒としては、上記のパラジウム触媒が挙げられ、好ましくは、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)が挙げられる。より好ましくは、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)が挙げられる。
パラジウム触媒前駆体としては、上記のパラジウム触媒前駆体が挙げられ、好ましくは塩化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)が挙げられる。より好ましくは酢酸パラジウム(II)が挙げられる。
ホスフィン系配位子としては、上記のホスフィン配位子が挙げられ、好ましくはトリフェニルホスフィン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン又は1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンが挙げられる。
ホスフィン系配位子の使用量は上記と同じである。
【0079】
塩基としては、上記の塩基が挙げられ、好ましくは、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム等の金属炭酸塩が挙げられる。
用いる塩基の量に特に制限はなく、例えば塩基とホウ素化合物とのモル比は、1:2~10:1の範囲が挙げられ、好ましくは1:1~4:1の範囲が挙げられる。
【0080】
不活性溶媒としては、上記の不活性溶媒が挙げられ、好ましくは、水、エーテル、アミド、アルコール、及びこれらの混合溶媒が挙げられ、さらに好ましくは水と1,4-ジオキサンの混合溶媒が挙げられる。
【0081】
反応温度は0℃乃至溶媒の還流温度、好ましくは40℃乃至溶媒の還流温度である。
反応時間は反応温度によって異なるが、5分乃至168時間、好ましくは10分乃至48時間である。
【0082】
(式(A6)乃至(D6)で表される化合物の製造)
【化20】
【0083】
上記式(A6)で表される化合物は、以下の方法で製造することができる。
【化21】
【0084】
例えば、上記で得られた式(A4)で表される化合物を、不活性溶媒中、塩基及び触媒の存在下、式(17)(式中、R6乃至R9は、上記と同じ意味を表す。)で表されるグアニジン化合物と反応させて、式(A6)(式中、R6乃至R9は、上記と同じ意味を表す。)で表される多環式芳香族アミン化合物を得ることができる。
式(A4)で表される化合物に代えて、式(B4)乃至(D4)で表される化合物を使用することで、式(B6)乃至(D6)で表される化合物を得ることができる。
【0085】
式(17)で表されるグアニジンは、市販の又は公知のグアニジン類を使用でき、その具体例としてはとしては、グアニジン、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-プロピルグアニジン、1-ブチルグアニジン、1-tert-ブチルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1,1-ジメチルグアニジン、1,1-ジエチルグアニジン、1,1-ジプロピルグアニジン、1,1-ジブチルグアニジン、1,1-tert-ブチルグアニジン、1,1-ジフェニルグアニジン、1,3-ジメチルグアニジン、1,3-ジエチルグアニジン、1,3-ジプロピルグアニジン、1,3-ジブチルグアニジン、1,3-tert-グアニジン、1,3-ジフェニルグアニジン、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン、1,1,3,3-テトラエチルグアニジン、1,1,3,3-テトラプロピルグアニジン、1,1,3,3-テトラブチルグアニジン、1,1,3,3-テトラtert-ブチルグアニジン、1,1,3,3-テトラフェニルグアニジン、1,3-ビス(4-クロロフェニル)グアニジン、1,3-ビス(4-フルオロフェニル)グアニジン、1,3-ビス(4-メチルフェニル)グアニジン、1,3-ビス(4-エチルフェニル)グアニジン、1,3-ビス(4-プロピルフェニル)グアニジン、1,3-ビス(4
-t-ブチルフェニル)グアニジン、1,3-ビス(4-ヘキシルフェニル)グアニジン、1,3-ビス(4-メトキシフェニル)グアニジン、1,3-ビス(2-メトキシフェニル)グアニジン、1,3-ビス(2-エトキシフェニル)グアニジン、1,3-ビス(2-エトキシフェニル)グアニジン、1,3-ビス(4-(トリフルオロメチル)フェニル)グアニジン、1-フェニル-3-(2-(トリフルオロメチル)フェニル)グアニジン、1,3-ビス(2-メチル-4-ニトロフェニル)グアニジン、1-フェニル-3-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)グアニジン、1-フェニル-3-(2-(トリフルオロメチル)フェニル)グアニジン、1,3-ビス(1-ナフチル)グアニジン、1,3-ビス(2-ナフチル)グアニジン、1,3-ビス(1,1’-ビフェニル-4-イル)グアニジンなどが挙げられ、好ましくは1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ビス(4-メトキシフェニル)グアニジン、1,3-ビス(4-(トリフルオロメチル)フェニル)グアニジン、1-フェニル-3-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)グアニジンが挙げられる。
【0086】
触媒としては、上記のパラジウム触媒が挙げられ、好ましくは酢酸パラジウム(II)及びキサントフォスの組み合わせが挙げられる。
塩基としては、上記の塩基が挙げられ、好ましくは、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、及び炭酸セシウム等が挙げられる。
上記反応は溶媒中で行うことができ、溶媒としては上記の不活性溶媒が挙げられ、好ましくはトルエンが挙げられる。
反応温度は0℃乃至溶媒の還流温度、好ましくは80℃乃至溶媒の還流温度である。
反応時間は反応温度によって異なるが、5分乃至168時間、好ましくは10分乃至8時間である。
【0087】
(式(A7)乃至(D7)及び(A8)乃至(D8)で表される化合物の製造)
【化22】
【化23】
【0088】
式(A8)で表されるアミン化合物は、以下の方法で製造することができる。
【化24】
【0089】
例えば、上記で得られた式(A1)で表される化合物に、不活性溶媒中、塩基の存在下、式(18)(式中、R52及びR53は、夫々独立して、水素原子又は保護基を表す。)で表されるグアニジル化剤を反応させて、式(A7)(式中、R52乃至及びR53は、上記と同じ意味を表す。)で表される化合物を得ることができる。基R52及びR53が保護基である場合、脱保護することにより、式(A8)で表される化合物を得ることができる。
また、式(A1)で表される化合物に代えて、式(B1)乃至(D1)で表される化合物を使用することで、式(B8)乃至(D8)で表される化合物を得ることができる。
【0090】
保護基としては、公知のものを使用でき、例えば、シアナミド、S-アルキルイソチオ尿素、O-アルキルイソ尿素、アミノイミノメタンスルホン酸、3,5-ジメチル-1-グアニルピラゾール、及び1H-ピラゾール-1-カルボアミジン由来のN-保護基が挙げられる。
【0091】
式中ではグアニジル化剤として式(18)で表される化合物を例示しているが、その他公知のグアニジル化剤も使用でき、例えば、1-アミジノピラゾールヒドロクロライド、1-カルバミミドイル-1,2,4-トリアゾールヒドロクロリド、1-(N-Boc-アミジノ)-ピラゾール、1-(N-Cbz-アミジノ)-ピラゾール、1-[N,N’-(Di-Boc)アミジノ]ピラゾール、1-[N,N’-(Di-Cbz)アミジノ]ピラゾール、N,N’-ジ-Boc-S-メチルイソチオウレア、1,3-ジ-Boc-チオウレア、グッドマンズ薬、1,2,3-トリ-Boc-グアニジンが挙げられ、好ましくは、1-[N,N’-(ジ-Boc)アミジノ]ピラゾール及び1-[N,N’-(ジ-Cbz)アミジノ]ピラゾールが挙げられる。
保護体を用いる場合は、反応終了後トリフルオロ酢酸等の酸を用いて脱保護することで、目的化合物を得ることができる。
【0092】
反応に用いる塩基としては、上記塩基が挙げられ、好ましくはトリエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチルピペラジン、N-メチルピペラジン等の3級アミン類が挙げられる。
反応に用いる不活性溶媒としては、上記不活性溶媒が挙げられ、好ましくは1,4-ジオキサンが挙げられる。
反応温度は0℃乃至溶媒の還流温度、好ましくは30℃乃至溶媒の還流温度である。
反応時間は反応温度によって異なるが、5分乃至168時間、好ましくは48時間乃至120時間である。
【0093】
(式(A10)乃至(D10)で表される化合物の製造)
【化25】
【0094】
式(A10)で表される多環式芳香族アミン化合物は、以下の方法により製造することができる。
【化26】
上記で得られた式(A1)で表される多環式芳香族アミン化合物に、式(19)(式中、R
6は上記と同じ意味を表す。)で表されるイソチオシアネート化合物を反応させて、式(A9)(式中、R
6は上記と同じ意味を表す。)で表されるチオウレア化合物を得ることができる。次いで、式(A9)で表されるチオウレア化合物に、式(20)(R
8は上記と同じ意味を表す。)で表されるアミン化合物を反応させて、式(A10)で表される多環式芳香族アミン化合物を得ることができる。
上記式中、式(A1)で表される多環式芳香族アミン化合物に代えて、式(B1)乃至(D1)で表される化合物を使用することで、式(B10)乃至(D10)で表される多環式芳香族アミン化合物を得ることができる。
【0095】
式(19)で表されるイソチオシアネートの好ましい例としては、メチルイソチオシアネート、エチルイソチオシアネート、プロピルイソチオシアネート、ブチルイソチオシアネート、tert-ブチルイソチオシアネート、フェニルイソチオシアネートなどがあげられ、好ましくはフェニルイソチオシアネートが挙げられる。
【0096】
式(20)で表されるアミン化合物としては、メチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、アニリンなどがあげられ、好ましくはn-プロピルアミンが挙げられる。
塩基としては、上記塩基が挙げられ、好ましくはトリエチルアミンが挙げられる。
【0097】
式(A9)で表される化合物の合成反応は溶媒中で実施でき、溶媒としては上記の不活性溶媒が挙げられ、好ましくはアセトニトリルが挙げられる。
反応温度は0℃乃至溶媒の還流温度、好ましくは30℃乃至溶媒の還流温度である。
反応時間は反応温度によって異なるが、5分乃至168時間、好ましくは12時間乃至36時間である。
【0098】
式(A10)で表される化合物の合成反応は、溶媒中、塩基及び縮合剤の存在下で実施することができる。
【0099】
縮合剤としては公知のものが使用でき、例えば、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド(WSC)塩酸塩等のN,N’-ジ置換カルボジイミド類が挙げられ、好ましくは、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミドが挙げられる。
縮合剤の使用量は、化合物(A1)乃至(D1)で表される化合物1モルに対して、通常0.5~5モル、好ましくは0.8~3モル、より好ましくは1.0~1.2モルである。
【0100】
溶媒としては上記の不活性溶媒が挙げられ、好ましくはアセトニトリルが挙げられる。
塩基としては上記の塩基が挙げられ、好ましくはトリエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチルピペラジン、N-メチルピペラジン等の3級アミン類が挙げられる。
反応温度は0℃乃至溶媒の還流温度、好ましくは50℃乃至溶媒の還流温度である。
反応時間は反応温度によって異なるが、5分乃至168時間、好ましくは8時間乃至36時間である。
【0101】
本発明の式(A)乃至(D)からなる群から選択される多環式芳香族アミン化合物の塩は、上記式(A)乃至(D)からなる群から選択される多環式芳香族アミン化合物の固体又はそれを含む溶液に、気体、液体若しくは固体状の酸、又は上記不活性溶媒に溶解した酸溶液を加えることにより得ることができる。
【0102】
有色の上記(A)乃至(D)で表される群から選択される多環式芳香族アミン化合物の固体の色が変わらなくなるまで(白色若しくは淡色になるまで)、例えば1乃至10当量、好ましくは1乃至3当量の気体状の酸を加え、(A)乃至(D)で表される群から選択される多環式芳香族アミン化合物のハロゲン化水素塩を得ることができる。
または、上記(A)乃至(D)で表される群から選択される多環式芳香族アミン化合物が拡散した有色の溶液の色が変わらなくなるまで(無色もしくは淡色になるまで)、例えば1乃至10当量、好ましくは1乃至3当量の気体、液体若しくは固体状の酸、又は上記不活性溶媒に溶解した酸溶液を加え、その後、溶媒留去及び真空乾燥して、式(A)乃至(D)からなる群から選択される多環式芳香族アミン化合物の塩を得ることができる。
得られた多環式芳香族アミン化合物の塩は、必要によりシリカゲルクロマトグラフィー等の公知の方法を利用して精製することができる。
【0103】
酸としては、上記と同じものが使用でき、好ましくは塩化水素又は塩酸である。
溶媒としては、式(A)乃至(D)からなる群から選択される多環式芳香族アミン化合物を溶解させることができればよく、上記溶媒が挙げられ、好ましくは、水、メタノール、エタノール及びプロパノール等の低級アルコール、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類が挙げられる。
【0104】
好ましくは、本発明は、下記式(E)乃至(H)で表される新規な多環式芳香族アミン化合物、又はその塩に関する。
【化27】
式中、R
41、R
51、R
61及びR
71は、夫々独立して
【化28】
を表す。
R
42及びR
43は、夫々独立して、水素原子、炭素原子数1乃至4のアルキル基、フェニル基もしくは1乃至5個の基Y
4で置換されていてもよいフェニル基を表す。但し、R
42及びR
43が、同時に水素原子を表す場合を除く。
R
44、R
45、R
46、R
47、R
48及びR
49は、夫々独立して、水素原子、炭素原子数1乃至4のアルキル基、フェニル基又は1乃至5個の基Y
5で置換されていてもよいフェニル基を表す。
Y
4及びY
5は、夫々独立して、炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、炭素原子数1乃至4のハロアルキル基、ハロゲン原子、フェニル基、ナフチル基、ビニル基、ニトロ基、シアノ基又は置換されていていてもよいアミノ基を表し、nは、0乃至4の整数を表す。
炭素原子数1乃至4のアルキル基としては、上述したアルキル基が挙げられる。
【0105】
上記式(E)乃至(H)で表される多環式芳香族アミン化合物の具体例として下記式(1)乃至(6)及び(10)乃至(12)で表される多環式芳香族アミンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化29】
【実施例】
【0106】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限
定されるものではない。
なお、実施例において、試料の合成及び調製に用いた試薬は下記のメーカーから購入した。
(1)N,N-ジメチル-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)アニリン:東京化成工業株式会社
(2)炭酸ナトリウム:ナカライテスク株式会社
(3)1,4-ジオキサン:ナカライテスク株式会社
(4)テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0):東京化成工業株式会社(5)1,3-ジフェニルグアニジン:東京化成工業株式会社
(6)炭酸セシウム:富士フィルム和光純薬株式会社
(7)トルエン:富士フィルム和光純薬株式会社
(8)酢酸パラジウム(II):東京化成工業株式会社
(9)キサントフォス:シグマアルドリッチ
(10)N,N’-ビス(tert-ブトキシカルボニル)-1H-ピラゾール-1-カルボキサミジン:東京化成工業株式会社
(11)トリエチルアミン:ナカライテスク株式会社
(12)ジクロロメタン:関東化学株式会社
(13)トリフルオロ酢酸:東京化成工業株式会社
(14)フェニルイソシアネート:東京化成工業株式会社
(15)アセトニトリル:関東化学株式会社又はナカライテスク株式会社
(16)n-プロピルアミン:ナカライテスク株式会社
(17)1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩:東京化成工業株式会社
(18)1M 塩酸/ジエチルエーテル:東京化成工業株式会社
(19)メタノール:ナカライテスク株式会社
(20)酢酸エチル:ナカライテスク株式会社
(21)ヘキサン:ナカライテスク株式会社
(22)ピリジン:ナカライテスク株式会社
(23)ブロモベンゼン:ナカライテスク株式会社
(24)ジエチルエーテル:ナカライテスク株式会社
(25)クロロホルム:ナカライテスク株式会社
(26)[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)のジクロロメタン複合体(Pd(DPPF)Cl2/CH2Cl2):東京化成工業株式会社
(27)ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(DPPF):東京化成工業株式会社(28)N-ブロモスクシンイミド:ナカライテスク株式会社
(29)チオ硫酸ナトリウム:ナカライテスク株式会社
(30)炭酸水素ナトリウム:ナカライテスク株式会社
(31)4-ヨードアニリン:東京化成工業株式会社
(32)酢酸カリウム:ナカライテスク株式会社
(33)4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン):東京化成工業株式会社
(34)無水硫酸マグネシウム ナカライテスク株式会社
(35)テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0):東京化成工業株式会社
【0107】
試料の調製及び物性の分析に用いた装置は以下の通りである。
(1)赤外分光光度計(IR)
装置:日本分光社製 420FT-IR
(2)核磁気共鳴装置(NMR)
装置:ブルカーバイオスピン社製AVANCE 300M
ブルカーバイオスピン社製AVANCE 600
(3)高分解能質量分析装置(HRMS(ESI))
装置:日本電子データム社製 JMP-T100LP
(4)紫外可視吸光スペクトル
装置:日本分光社製 V760
(5)pH測定
装置:株式会社堀場製作所製 pHメータD51 pH電極9618S-10D
【0108】
実施例1:4-(2,4-ビス(トリフルオロメチル)キノリン-7-イル)-N,N-ジメチルアニリン(化合物(1))及びその塩酸塩(塩酸塩(1))の合成
【化30】
シュレンク管に2,4-ビス(トリフルオロメチル)-7-ヨードキノリン(46.0mg,0.118mmol)、N,N-ジメチル-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)アニリン(30.6mg,0.124mmol)、炭酸ナトリウム(18.8mg,0.177mmol)を加え、1,4-ジオキサン(1mL)と水(0.4mL)により溶解した。溶液を凍結脱気後、窒素雰囲気下、テトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(0)(5.5mg,4.8μmol)を加え、60℃にて4時間撹拌した。反応終了後、酢酸エチルと水を加え、分液操作を行った。得られた有機相を無水硫酸マグネシウムにより乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧下留去することで粗生成物を得た。得られた粗生成物はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(3%酢酸エチル/ヘキサン溶液)により精製し、目的化合物(1)(48.2mg,当量)を黄色の蛍光性固体として得た。
融点(Mp): 164-167 ℃;
1H NMR (600 MHz, CDCl
3): δ 8.47 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 8.20 (dd, J = 8.9, 1.9 Hz, 1H), 8.09 (dd, J = 8.9, 1.9 Hz, 1H), 7.92 (s, 2H), 7.71
(d, J = 8.9 Hz, 2H), 6.84 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 3.05 (s, 6H);
13C NMR (150 MHz, CDCl
3): δ 150.9, 148.9, 147.6 (q, J = 35.2 Hz), 144.2, 136.2 (q, J = 32.3 Hz), 129.5, 128.1 (2C), 125.8, 125.7, 124.1, 123.0 (q, J = 273.0 Hz), 122.0, 121.1 (q, J =273.6 Hz), 112.9, 112.6 (2C), 40.3 (2C);
19F NMR (282 MHz, CDCl
3): δ -61.5
(d, J = 1.4 Hz), -67.7; IR (KBr): 1610, 1510, 1449, 1364, 1274, 1250, 1200, 1137, 1097, 898, 813 cm
-1; HRMS (ESI) m/z: [M + H]
+ calcd for C
19H
15F
6N
2, 385.1139;
found, 385.1136.
【0109】
化合物(1)をメタノールに溶解して黄色の溶液を得た。ここに、1mol/Lの塩酸のジエチルエーテル溶液を0.5mL加えて、透明の溶液を得た。溶媒を除去して得られた白色固体を真空乾燥して、塩酸塩(1)を得た。
【0110】
実施例2:2,4-ビス(トリフルオロメチル)-7-(N,N’-ジフェニルグアニジル)キノリン(化合物(2))及びその塩酸塩(2)の合成
【化31】
シュレンク管に2,4-ビス(トリフルオロメチル)-7-ヨードキノリン(196mg,0.501mmol)、1,3-ジフェニルグアニジン(127mg,0.601mmol)、炭酸セシウム(652mg,2.00mmol)を加え、トルエン(5mL)により溶解した。溶液を凍結脱気後、窒素雰囲気下、酢酸パラジウム(5.6mg,24.9μmol)とキサントフォス(14.5mg,25.1μmol)を加え、100℃にて2時間撹拌した。反応終了後、酢酸エチルと水を加え、分液操作を行った。得られた有機相を無水硫酸マグネシウムにより乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧下留去することで粗生成物を得た。得られた粗生成物はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(13%酢酸エチル/ヘキサン溶液)により精製し、目的化合物(2)(248mg,当量)を黄色の非晶体として得た。
1H NMR (600 MHz, CDCl
3): δ 7.94 (s, 1H), 7.79 (s, 1H), 7.69 (s, 1H), 7.57 (s, 1H), 7.30 (t, J = 7.7 Hz, 4H), 7.23 (t, J = 7.7 Hz, 4H), 7.09 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 6.44 (br s, 2H);
13C NMR (150 MHz, CDCl
3): δ 150.4, 149.2, 147.1 (q, J = 35.2
Hz), 145.6, 139.7, 135.9 (q, J = 32.1 Hz), 129.5 (4C), 128.4, 124.4, 124.2 (2C), 122.8 (q, J = 273.4 Hz), 121.9 (4C), 121.0 (q, J = 273.7 Hz), 119.3, 118.8, 111.4 (2C);
19F NMR (282 MHz, CDCl
3): δ -61.4 (d, J = 1.7 Hz), -67.6; IR (KBr): 3419, 1645, 1584, 1541, 1497, 1446, 1278, 1214, 1138, 1095, 985, 886, 750, 693 cm
-1; HRMS (ESI) m/z: [M + H]
+ calcd for C
24H
17F
6N
4, 475.1357; found, 475.1355.
【0111】
化合物(2)をメタノールに溶解して黄色の溶液を得た。ここに、1mol/Lの塩酸のジエチルエーテル溶液を0.5mL加えて、透明の溶液を得た。溶媒を除去して得られた白色固体を真空乾燥して、塩酸塩(2)を得た。
【0112】
実施例3:2,4-ビス(トリフルオロメチル)-7-グアニジルキノリン(化合物(3))及びその塩酸塩(塩酸塩(3))の合成
【化32】
2,4-ビス(トリフルオロメチル)-7-アミノキノリン(140mg,0.500mmol)、N,N’-ビス(tert-ブトキシカルボニル)-1H-ピラゾール-1-カルボキサミジン(310mg,0.999mmol)、トリエチルアミン(139μL,1.00mmol)を1,4-ジオキサン(5mL)で溶解し、窒素雰囲気下、50℃にて3日間撹拌した。反応液に酢酸エチルを加え、1M塩酸と飽和食塩水で順次洗浄した。得られた有機相を無水硫酸マグネシウムにより乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧下留去することで粗生成物を得た。得られた粗生成物はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(3%酢酸エチル/ヘキサン溶液)により精製し、目的化合物(3)のBoc保護体(50.0mg,19%)を白色の固体として得た。
Mp: 156-159 ℃;
1H NMR (600 MHz, CDCl
3): δ 11.67 (s, 1H), 10.85 (s, 1H), 8.58 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 8.20 (dd, J = 9.2, 2.0 Hz, 1H), 8.17 (dd, J = 9.4, 1.2 Hz, 1
H), 7.91 (s, 1H), 1.57 (s, 9H), 1.55 (s, 9H);
13C NMR (150 MHz, CDCl
3): δ 163.2, 153.4, 153.3, 148.0 (q, J = 35.2 Hz), 140.0, 136.1 (q, J = 32.2 Hz), 126.1, 124.6, 122.8 (q, J = 273.4 Hz), 121.0 (q, J = 273.6 Hz), 120.73, 120.70, 112.9, 84.4, 80.4, 28.12 (3C), 28.06 (3C);
19F NMR (282 MHz, CDCl
3): δ -61.4, -67.7; IR (KBr): 1719, 1652, 1416, 1372, 1327, 1279, 1147, 1102 cm
-1; HRMS (ESI) m/z: [M +
Na]
+ calcd for C
22H
24F
6N
4NaO
4, 545.1599; found, 545.1592.
【0113】
続いて、この化合物(3)のBoc保護体(33.3mg,63.7μmol)をジクロロメタン(0.5mL)に溶解し、トリフルオロ酢酸(0.5mL)を加え、室温にて一晩撹拌した。反応液を飽和NaHCO3水溶液で中和し、酢酸エチルにて3度抽出した。得られた有機相を無水硫酸ナトリウムにより乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧下留去することで粗生成物を得た。得られた粗生成物はアミノシリカゲルを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル)により精製し、目的化合物(3)(19.6mg,96%)を薄い黄色の固体として得た。
Mp: 179-182 ℃; ft.1H NMR (600 MHz, CD3CN): δ 8.06 (dd, J = 9.1, 2.1 Hz, 1H), 7.89 (s, 1H), 7.56 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 7.45 (dd, J = 9.1, 2.2 Hz, 1H), 4.77 (br s, 2 × NH2); 13C NMR (150 MHz, CD3CN): δ 155.8, 154.3, 151.1, 147.6 (q, J = 34.9 Hz), 136.2 (q, J = 32.0 Hz), 131.6, 125.1, 124.3 (q, J = 272.5 Hz), 122.4 (q,
J = 272.5 Hz), 120.8, 119.8, 112.2; 19F NMR (282 MHz, CD3OD): δ -62.9 (d, J = 1.8 Hz), -69.2; IR (KBr): 3463, 1648, 1587, 1448, 1277, 1241, 1134, 1114, 892 cm-1; HRMS (ESI) m/z: [M + H]+ calcd for C12H9F6N4, 323.0731; found, 323.0726.
【0114】
化合物(3)をメタノールに溶解して淡黄色の溶液を得た。ここに、1mol/Lの塩酸のジエチルエーテル溶液を0.5mL加えて、透明の溶液を得た。溶媒を除去して得られた白色固体を真空乾燥して、塩酸塩(3)を得た。
【0115】
実施例4:1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゾ[f]キノリン-9-N-フェニル-N’-ノルマルプロピルグアニジン(化合物(4))及びその塩酸塩(4)の合成
【化33】
1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゾ[f]キノリン-9-アミン(33.0mg,99.9μmol)、フェニルイソチオシアネート(35.9μL,0.300mmol)をアセトニトリル(1mL)で溶解し、窒素雰囲気下、60℃にて24時間撹拌した。反応後、反応液を室温まで冷やし、ヘキサンを加えてろ過した。ろ紙上の固体を回収し、乾燥することでチオウレア中間体を得た。このチオウレア中間体をアセトニトリル(1mL)で溶解し、トリエチルアミン(41.6μL,0.300mmol)、n-プロピルアミン(16.4μL,0.200mmol)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミドヒドロクロリド塩酸塩(23.0mg,0.120mmol)を加え、窒素雰囲気下、室温にて16時間撹拌した。反応液を酢酸エチルで希釈後、水で洗浄した。得られた有機相を無水硫酸マグネシウムにより乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧下留去することで粗生成物を得た。得られた粗生成物はアミノシリカゲルを用いたシリ
カゲルカラムクロマトグラフィー(10%酢酸エチル/ヘキサン溶液)と通常のシリカゲルカラムクロマトグラフィー(50%酢酸エチル/ヘキサン溶液、20%メタノール/酢酸エチル溶液)により精製し、目的化合物(4)(39.0mg,収率80%)を黄色の固体として得た。
Mp: 140-142 ℃;
1H NMR (600 MHz, CDCl
3): δ 8.40 (s, 1H), 8.14 (s, 1H), 8.03 (d,
J = 8.9 Hz, 1H), 7.92 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 7.89 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.48 (dd, J = 8.3, 1.2 Hz, 1H), 7.36-7.31 (m, 2H), 7.16-7.09 (m, 3H), 4.30 (br s, 1H), 3.36 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 1.63 (sep, J = 7.2 Hz, 2H), 0.97 (t, J = 7.5 Hz, 3H);
13C
NMR (150 MHz, CDCl
3): δ 150.6, 148.8, 146.4 (q, J = 35.8 Hz), 135.3 (q, J = 32.7 Hz), 133.6, 130.1, 129.6 (2C), 129.3, 128.2, 126.6 (2C), 125.8, 124.5, 123.9 (q, J = 273.5 Hz), 123.7, 123.3 (2C), 121.2 (q, J = 273.3 Hz), 121.1 (2C), 115.1, 43.7, 22.9, 11.5;
19F NMR (282 MHz, CDCl
3): δ -57.9, -67.5; IR (KBr): 3435, 1619, 1589, 1418, 1334, 1271, 1192, 1137, 843 cm
-1; HRMS (ESI) m/z: [M + H]
+calcd
for C
25H
21F
6N
4, 491.1670; found, 491.1661.
【0116】
化合物(4)をメタノールに溶解して淡黄色の溶液を得た。ここに、1mol/Lの塩酸のジエチルエーテル溶液を0.5mL加えて、透明の溶液を得た。溶媒を除去して得られた白色固体を真空乾燥して、塩酸塩(4)を得た。
【0117】
実施例5:1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゾ[f]キノリン-9-グアニジン(化合物(5))及びその塩酸塩(5)の合成
【化34】
1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゾ[f]キノリン-9-アミン(87.1mg,0.264mmol)、N,N’-ビス(tert-ブトキシカルボニル)-1H-ピラゾール-1-カルボキサミジン(164mg,0.528mmol)、トリエチルアミン(73.2μL,0.528mmol)を1,4-ジオキサン(2.6mL)で溶解し、窒素雰囲気下、50℃にて3日間撹拌した。反応液に酢酸エチルを加え、1M塩酸と飽和食塩水で順次洗浄した。得られた有機相を無水硫酸マグネシウムにより乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧下留去することで粗生成物を得た。得られた粗生成物はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(5%酢酸エチル/ヘキサン溶液)により精製し、目的化合物(5)のBoc保護体(72.8mg,収率48%)を黄色の固体として得た。
Mp: 96-98 ℃;
1H NMR (600 MHz, CDCl
3): δ 11.66 (s, 1H), 10.68 (s, 1H), 9.31 (s,
1H), 8.21 (s, 1H), 8.05 (dd, J = 8.9, 4.1 Hz, 1H), 8.01 (dd, J = 8.9, 3.8 Hz, 1H), 7.93 (dd, J = 8.5, 3.8 Hz, 1H), 7.83 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 1.58 (s, 9H), 1.54
(s, 9H);
13C NMR (150 MHz, CDCl
3): δ 163.4, 153.4, 153.3, 150.6, 146.8 (q, J =
35.8 Hz), 136.3, 136.0 (q, J = 32.9 Hz), 133.3, 130.8, 129.4, 127.7, 127.4, 124.1, 123.9, 123.6 (q, J = 273.6 Hz), 121.3 (q, J = 8.0 Hz), 121.1 (q, J = 273.3 Hz), 115.4 (q, J = 6.6 Hz), 84.1, 79.8, 28.1 (6C);
19F NMR (282 MHz, CDCl
3): δ -58.2, -67.5; IR (KBr): 1720, 1646, 1415, 1370, 1332, 1278, 1152, 1060 cm
-1; HRMS
(ESI) m/z: [M + Na]
+ calcd for C
26H
26F
6N
4NaO
4, 595.1756; found, 595.1756.
【0118】
続いて、この化合物(5)のBoc保護体(40.0mg,69.9μmol)をジク
ロロメタン(0.5mL)に溶解し、トリフルオロ酢酸(0.5mL)を加え、室温にて一晩撹拌した。反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、酢酸エチルにて3度抽出した。得られた有機相を無水硫酸マグネシウムにより乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧下留去することで粗生成物を得た。得られた粗生成物はアミノシリカゲルを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル)により精製し、目的化合物(5)(17.2mg,収率66%)を薄い黄色の固体として得た。
Mp: 205-207 ℃; 1H NMR (600 MHz, CD3CN): δ 8.30 (s, 1H), 8.26 (s, 1H), 8.18 (d,
J = 8.9 Hz, 1H), 8.01 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.90 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 7.44 (d, J
= 8.4, 1.8 Hz, 1H), 5.14 (br s, 2 × NH2); 13C NMR (150 MHz, CD3OD): δ 157.0, 151.9, 149.2, 147.6 (q, J = 35.6 Hz), 136.7 (q, J = 32.2 Hz), 135.2, 131.3, 131.2, 129.3, 128.3, 125.4 (q, J = 270.1 Hz), 124.9, 123.90, 123.87, 122.7 (q, J = 273.6 Hz), 116.4; 19F NMR (282 MHz, CD3OD): δ -59.3, -69.1; IR (KBr): 3426, 1648, 1597, 1451, 1334, 1278, 1194, 1151, 902 cm-1; HRMS (ESI) m/z: [M + H]+ calcd for C16H11F6N4, 373.0888; found, 373.0897.
【0119】
化合物(5)をメタノール中で撹拌して溶解させて淡黄色の溶液を得た。ここに、1mol/Lの塩酸のジエチルエーテル溶液を0.5mL加えて、透明の溶液を得た。溶媒を除去して得られた白色固体を真空乾燥して、塩酸塩(5)を得た。
【0120】
実施例6:4-(2,4-ビス(トリフルオロメチル)イミダゾ[1,2-a][1,8]ナフチリジン-9-イル)アニリン(化合物(6))及びその塩酸塩(6)の合成
下記スキームに従って、化合物(6)を合成した。
【化35】
【0121】
2,6-ジアミノピリジン(3.0g、27.5mmol)、及びヘキサフルオロアセチルアセトン(6.32g、30.4mmol)を酢酸(14mL)に溶解し、ここに濃硫酸(0.35mL)を添加した。この混合物を24時間還流し、その後冷却して、5℃以下で水酸化ナトリウム(11.0g)の水溶液(40mL)をゆっくり添加した。沈殿物を濾過し、冷水で洗浄し、真空乾燥させにより、2,4-ビス(トリフルオロメチル)[1,8]ナフチリジン(6a)を白色固体(5.4g、19.1mmol、収率69.3%)として得た。
【0122】
ブロモアセトアルデヒドジエチルアセタール(7.4g、37.5mmol)を水(30mL)に溶解し、臭化水素酸(2.7mL)を加えた。この混合物を30分間還流し、冷却後、溶液をエーテルで抽出した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、真空化で溶
媒を除去した。得られたブロモアセトアルデヒドを、化合物(6a)(1.74g、6.19mmol)のエタノール溶液(100mL)に加えた。この混合物を3時間還流し、その後溶媒を減圧下で蒸発させた。残留物を水に溶解し、炭酸ナトリウムで塩基性にし、ジクロロメタンで抽出した。乾燥後、有機相を真空で濃縮し、シリカゲルクロマトグラフ(石油エーテル/酢酸エチル=5:1)で精製し、2,4-ビス(トリフルオロメチル)イミダゾ[1,2-][1,8]ナフチリジン(6b)(1.83g、収率80%)を得た。
1H NMR (300 MHz, MeOD): δ 8.59 (s, 1H), 8.22 (s, 1H), 7.90 (dd, J=1.7, 9.9 Hz, 1H), 7.84 (d, J=9.8 Hz, 1H), 7.68 (d, J =1.3 Hz, 1H); 13C NMR (150 MHz, MeOD): δ 147.37 (q, J= 36.9 Hz), 145.46, 145.36, 138.87 (q, J= 33.5 Hz), 133.95, 124.76, 123.08, 122.97, 121.41, 118.53, 115.61, 114.85; 19F NMR (282 MHz, CDCl3): δ
-60.8, -67.4; IR (KBr): 3421, 1583, 1509, 1449, 1278, 1244, 1142, 1036, 826, 665 cm-1; IR (KBr): 3050, 1464, 1447, 1319, 1294, 1273, 1231, 1198, 1159, 1132, 739 cm-1; HRMS (ESI) m/z: [M + H]+calcd for C12H6F6N3, 306.0466; found, 306.0445.
【0123】
得られた化合物(6b)(1.51g、4.95mmol)とN-ブロモスクシンイミド(1.32g、7.42mmol)をアセトニトリル(20mL)に溶解し、50℃で1時間撹拌した。反応溶液を室温まで冷却し、溶媒を真空下で除去した。残渣をジクロロメタンで溶解し、3回分液操作を行った後、有機層をチオ硫酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムで洗浄した。次いで有機層をろ過し、溶媒を減圧下留去することで粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(50%酢酸エチル/n-ヘキサン溶液)により精製し、9-ブロモ-2,4-ビス(トリフルオロメチル)イミダゾ[1,2-α][1,8]ナフチリジン(6c)(1.82g,96%)を黄色の固体として得た。1H NMR (300 MHz, MeOD): δ 8.32 (s, 1H), 7.98 (dd, J=1.8, 9.8 Hz, 1H),
7.88 (d, J=9.8 Hz, 1H), 7.75 (s, 1H); 13C NMR (150 MHz, MeOD): δ 146.72, 146.56, 145.77 (q, J= 37.0 Hz), 138.42 (q, J= 33.5 Hz), 136.82, 126.60, 124.78, 123.14, 121.63, 119.18, 115.88, 100.46; 19F NMR (282 MHz, CDCl3): δ -61.0, -67.6; IR (KBr): 3055, 1424, 1274, 1133, 901, 713 cm-1; HRMS (ESI) m/z: [M + H]+ calcd for C12H5BrF6N3, 383.9571; found, 383.9582.
【0124】
4-ヨードアニリン(1.0g、5.81mmol)、酢酸カリウム(2.3g、23.24mmol)、4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)(1.8g,6.97mmol)、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)ジクロロメタン複合体(5mol%)を1,4-ジオキサン(4mL)に溶解し、この混合物を100℃にて17時間撹拌した。反応終了後室温まで冷却し酢酸エチル及び水を用いて分液し、得られた有機相を無水硫酸マグネシウムにより乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧下留去することで粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(99%ジクロロメタン/メタノール溶液)により精製し、4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3-ジオキサボラン-2-イル)アニリン(6d)(923.8mg、収率78%)を白色の固体として得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 7.62 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 6.66 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 3.83 (br, 2H), 1.32 (s, 12H); IR (KBr): 3450, 3358, 3218, 3042, 2994, 2977, 2927, 1630, 1604, 1562, 1472, 1430, 1398, 1361, 1311, 1302, 1272, 1214, 1182, 1144, 1109, 1089, 962, 859, 831, 740, 672, 658, 639, 581, 526, 507, 450 cm-1; HRMS (ESI) m/z: [M + H]+calcd for C12H19BNO2, 220.1598; found, 220.1511.
【0125】
窒素雰囲気下で、化合物(6c)(311.9mg,0.81mmol)、化合物(6d)(230.0mg,1.05mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(5mol%)を1,4-ジオキサン(5.5mL)に溶解し、ここに1
0%炭酸ナトリウム水溶液(10mL)を加えた。混合液を90℃で2時間撹拌した。反応終了後室温まで冷却し、ジクロロメタン及び水を用いて分液し、得られた有機相を無水硫酸マグネシウムにより乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧下留去することで粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(50%酢酸エチル/ヘキサン溶液)により精製し、化合物(6)(351.2mg,76%)を赤色の固体として得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ 8.28 (s, 1H), 7.99 (d, J = 9.7 Hz, 1H), 7.74 (dd, J = 2.07, 9.72 Hz, 1H), 7.60 (s, 1H), 7.31 (d, J = 8.52, 2H), 6.60 (d, J = 8.58,
2H), 5.32 (s, 2H); 13C NMR (150 MHz, MeOD): δ 149.5, 146.8, 146.0, 145.7 (q, J
= 37.1 Hz), 138.0 (q, J = 33.2 Hz), 134.1, 134.0, 132.4, 124.9, 124.7, 123.4, 123.1, 122.8, 120.8, 120.6, 119.5, 115.4, 115.1; 19F NMR (282 MHz, CDCl3): δ -60.9 (d, J = 1.8 Hz), -67.2; IR (KBr): 3424, 3340, 3229, 1637, 1610, 1487, 1420, 1277, 1213, 1141 cm-1; HRMS (ESI) m/z: [M + H]+ calcd for C18H11F6N4, 397.0888; found, 397.0882.
【0126】
化合物(6)をメタノールに溶解して黄色の溶液を得た。ここに、1mol/Lの塩酸のジエチルエーテル溶液を0.5mL加えて、透明の溶液を得た。溶媒を除去して得られた白色固体を真空乾燥して、塩酸塩(6)を得た。
【0127】
実施例7:1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゾ[f]キノリン-9-アミン(化合物7)及び2,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンゾ[g]キノリン-8-アミン(化合物8)、並びにその塩酸塩(7)及び塩酸塩(8)の合成
【化36】
オートクレーブ中で、2,7-ジヒドロキシナフタリン(2.00g、12.5mmol)及び28%の亜硫酸水素ナトリウム(5.20g、50.0mmol)のアンモニア溶液(100mL)を170℃で9時間撹拌し、次いで反応混合物を室温まで冷却し、10%水酸化ナリウム水溶液を用いてpHを12にして、沈殿物を得た。沈殿物をろ過し、洗浄し、真空乾燥して2,7-ジアミノナフタレン(1.82g、92%)を黄褐色の固体として得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.50 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 6.76 (d, J = 2.0 Hz, 2H), 6.70 (dd, J = 2.4, 8.8 Hz, 2H), 3.77 (br s,4H).
【0128】
得られた2,7-ジアミノナフタレン(158mg、1.0mmol)をピリジン溶液(5mL)に溶解し、ここに塩化トシル(270mg、1.4mmol)のピリジン溶液(10mL)を0℃で1時間かけて滴下した。反応混合物を室温まで昇温して一晩撹拌し、水(100mL)を加えて反応をクエンチした。得られた混合物をジエチルエーテル(100mL)で抽出し、有機相を10%塩酸で酸性化した。また、水相は水酸化ナトリウム溶液を用いて中性にし、ジエチルエーテルを加えて抽出した。
有機相を回収し、硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、溶媒を真空下で蒸発させて、N-(7-アミノナフタレン-2-イル)-4-メチルベンゼンスルホンアミド(234mg、粗収率75%)で得た。
【0129】
Mp: 156-158℃; IR (KBr): 3406, 3339, 1636, 1516, 1346, 1320, 1159, 1091 cm-1;
1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ: 7.67 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.54 (dd, J = 6.8, 8.4 Hz,
2H), 7.27 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 7.18 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 6.92 (dd, J = 2.2, 8.6
Hz, 1H), 6.86 (dd, J = 2.2, 8.6 Hz, 1H), 6.83 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 6.70 (br s, 1H), 3.87 (br s, 2H), 2.34 (s, 3H); 13C{1H}NMR (150 MHz, CDCl3) δ: 144.9, 143.8, 136.1, 135.2, 134.5, 129.6 (2C), 129.1, 129.0, 127.2 (2C), 125.5, 117.7, 117.4, 116.3, 108.0, 21.5; HRMS (ESI) m/z [M + H]+ calcd for C17H17N2O2S 313.1011, found: 313.1007.
【0130】
窒素雰囲気下で、N-(7-アミノナフタレン-2-イル)-4-メチルベンゼンスルホンアミドの乾燥1,4-ジオキサン(12mL)溶液に、ヘキサフルオロアセチルアセトン(1.4mL、9.7mmol)およびモンモリロナイトK10(1.13g)を加え、60℃で10時間撹拌した。混合物を室温に冷却した後、セライトで濾過し、得られたろ液を減圧下で蒸発させて固体を得た。得られた固体に濃硫酸(2.4mL)を加え、100℃で5時間撹拌した。水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、混合物を酢酸エチルで3回抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空で蒸発させて目的化合物(7)及び(8)の混合物を得た。この混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(nヘキサン/酢酸エチル=20/1)で精製して、化合物(7)(252mg、32%)の黄色固体及び化合物(8)(38.0mg、5%)の赤色の固体を得た。
【0131】
化合物(7):Mp:132-138 ℃, IR (KBr): 3457, 3399, 1635, 1540, 1276, 1188, and 1137 cm-1, 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ: 8.13 (s, 1H), 8.00-7.97 (m, 2H), 7.84 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.79 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.16 (dd, J = 2.1, 8.5 Hz, 1H), 4.13 (br, 2H); 13C{1H}NMR (150 MHz, CDCl3) δ: 150.9, 146.3 (q, 2JCF = 35.6 Hz), 145.9, 135.3 (q, 2JCF = 32.6 Hz), 133.6, 130.2, 128.6, 126.9, 124.2, 123.9 (q, 1JCF = 273.5 Hz), 123.1, 121.2 (q, 1JCF = 273.3 Hz), 118.6, 114.8 (q, 3JCF = 7.2 Hz),
111.8 (q, 3JCF = 8.1 Hz); 19F{1H}-NMR (282 MHz, CDCl3) δ: -58.0, -67.9; HRMS (ESI) m/z [M + H]+ calcd for C15H9F6N2 331.0669, found: 331.0705; anal. calcd for
C15H8F6N2: C, 54.56; H, 2.44; N, 8.48. Found: C, 54.60; H, 2.47; N, 8.50.
【0132】
化合物(8):Mp: 228-235 ℃; IR (KBr): 3464, 3351, 1636, 1277, 1197, and 1135 cm-1; 1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ: 8.59 (s, 2H), 7.97 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.82 (s, 1H), 7.17 (dd, J = 2.2, 8.9 Hz, 1H), 7.14 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 4.22 (br s, 2H); 13C{1H}NMR (150 MHz, CDCl3) δ: 147.4 (q, 2JCF = 35.6 Hz), 145.7, 144.5, 136.7
(q, 2JCF = 32.1 Hz), 136.6, 130.4, 129.4, 125.8, 123.7, 123.2 (q, 1JCF = 273.4 Hz), 122.7, 121.1 (q, 1JCF = 274.0 Hz), 118.1, 111.8, 105.2;19F{1H}NMR (282 MHz,
CDCl3) δ: -62.8, -68.4; HRMS (ESI) m/z [M + H]+ calcd for C15H9F6N2331.0669, found: 331.0707; anal. calcd for C15H8F6N2: C, 54.56; H, 2.44; N, 8.48. Found: C,
54.78; H, 2.60; N, 8.34.
【0133】
実施例8:2,4-ビス(トリフルオロメチル)-7-ヨードキノリン(化合物(9))及びその塩酸塩(9)の合成
【化37】
m-フェニレンジアミン1.0g(9.26mmol)及びモンモリロナイトK10 1.5gを溶解したトルエン30mL溶液に、ヘキサフルオロアセトン2.35g(11
.35mmol)を添加し、90℃で1時間反応させた。反応溶液を濾過し、濾液を減圧下で約10mLに濃縮した。冷却後、得られた沈殿物を濾過により集めて、2,4-ビス(トリフルオロメチル)キノリン-7-アミン(化合物(9))を黄色の固体2.5g(8.93mmol、収率96%)で得た。
また、酢酸エチル/ヘキサン混合溶媒で再結晶することで化合物(9)の黄色単結晶を得た。
化合物(9)をメタノール中で撹拌して溶解させて黄色の溶液を得た。ここに、1mol/Lの塩酸のジエチルエーテル溶液を0.5mL加えて、透明の溶液を得た。溶媒を除去して得られた白色固体を真空乾燥して、塩酸塩(9)を得た。
【0134】
実施例9:2-(2,4-ビス(トリフルオロメチル)キノリン-7-イル)-1,3-ビス(4-(トリフルオロメチル)フェニル)グアニジン(化合物(10))及びその塩酸塩(10)の合成
【化38】
シュレンク管に2,4-ビス(トリフルオロメチル)-7-ヨードキノリン(113mg、0.289mmol)、1,3-ビス(4-(トリフルオロメチル)フェニル)グアニジン(121mg、0.348mmol)、炭酸セシウム(377mg、1.16mmol)及びトルエン(3mL)を加えて溶解した。溶液を凍結脱気後、窒素雰囲気下、酢酸パラジウム(3.2mg、14μmol)とキサントフォス(8.4mg、15μmol)を加え、100℃にて1時間撹拌した。反応終了後、酢酸エチルと水を加え、分液操作を行った。得られた有機相を無水硫酸マグネシウムにより乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧下留去することで粗生成物を得た。得られた粗生成物はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(10%酢酸エチル/ヘキサン溶液)により精製し、目的化合物(76.4mg、43%)を薄い黄色の非晶体として得た。
1H NMR (600 MHz, CD
3CN): δ 8.00 (br d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.87 (s, 2H), 7.59 (br d, J = 6.8 Hz, 1H), 7.44 (d, J = 7.4 Hz, 4H), 7.23 (br s, 4H);
13C NMR (150 MHz,
CD
3CN): δ 150.0, 147.9 (q, J = 35.1 Hz), 145.7, 146.2 (q, J= 32.4 Hz), 131.9, 129.4, 126.75 (2C), 126.72 (2C), 125.4 (q, J = 270.2 Hz, 2C), 125.0 (2C), 124.2 (q, J = 32.2 Hz, 2C), 123.9 (q, J = 274.2 Hz), 122.0 (q, J = 274.4 Hz), 121.1 (4C), 120.1, 112.9 (2C);
19F NMR (282 MHz, CD
3CN): δ -62.1, -62.3, -68.3; IR (KBr): 3427, 1603, 1523, 1450, 1325, 1279, 1215, 1116, 1068, 835, 666 cm
-1; HRMS (ESI) m/z: [M + H]
+ calcd for C
26H
15F
12N
4, 611.1105; found, 611.1126.
【0135】
化合物(10)をメタノール中で撹拌して溶解させて黄色の溶液を得た。ここに、1mol/Lの塩酸のジエチルエーテル溶液を0.5mL加えて、透明の溶液を得た。溶媒を除去して得られた白色固体を真空乾燥して、塩酸塩(10)を得た。
【0136】
実施例10:2-(2,4-ビス(トリフルオロメチル)キノリン-7-イル)-1-フェニル-3-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)グアニジン(化合物(11))及びその塩酸塩(11)の合成
【化39】
シュレンク管に2,4-ビス(トリフルオロメチル)-7-ヨードキノリン(54.1mg、0.138mmol)、1-フェニル-3-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)グアニジン(46.3mg、0.166mmol)、炭酸セシウム(180mg、0.552mmol)、及びトルエン(2mL)を加えて溶解した。溶液を凍結脱気後、窒素雰囲気下、酢酸パラジウム(1.5mg、6.7μmol)とキサントフォス(4.0mg、6.9μmol)を加え、100℃にて3時間撹拌した。反応終了後、酢酸エチルと水を加え、分液操作を行った。得られた有機相を無水硫酸マグネシウムにより乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧下留去することで粗生成物を得た。得られた粗生成物はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(3%酢酸エチル/ジクロロメタン溶液)により精製し、目的化合物(70.2mg、94%)を黄色の非晶体として得た。
1H NMR (600 MHz, CDCl
3): δ 8.05 (br d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.97 (br s, 1H), 7.79 (s, 1H), 7.63 (br s, 1H), 7.55 (d, J= 8.0 Hz, 2H), 7.40-7.31 (m, 4H), 7.20 (d, J=
8.0 Hz, 3H), 6.38 (br s, 2H);
13C NMR (150 MHz, CDCl
3): δ 149.3, 147.6 (q, J =
35.0 Hz), 144.7, 138.2, 136.1 (q, J = 32.6 Hz), 129.9 (4C), 127.6, 126.54 (2C),
126.52 (2C), 125.4, 125.1 (q, J = 32.7 Hz), 124.8, 124.2 (q, J= 271.6 Hz), 123.1, 122.8 (q, J = 273.2 Hz), 121.0 (q, J = 275.4 Hz), 120.6, 118.7, 111.9 (2C);
19F NMR (282 MHz, CDCl
3): δ -61.5, -61.9, -67.5; IR (KBr): 3422, 1594, 1541, 1449, 1325, 1279, 1215, 1146, 1067, 835, 751, 666 cm
-1; HRMS (ESI) m/z: [M + H]
+ calcd for C
25H
16F
9N
4, 543.1231; found, 543.1221.
【0137】
化合物(11)をメタノール中で撹拌して溶解させて黄色の溶液を得た。ここに、1mol/Lの塩酸のジエチルエーテル溶液を0.5mL加えて、透明の溶液を得た。溶媒を除去して得られた白色固体を真空乾燥して、塩酸塩(11)を得た。
【0138】
実施例11:2-(2,4-ビス(トリフルオロメチル)キノリン-7-イル)-1,3-ビス(4-メトキシフェニル)グアニジン(化合物(12))及びその塩酸塩(12)の合成
【化40】
シュレンク管に2,4-ビス(トリフルオロメチル)-7-ヨードキノリン(62.9mg、0.161mmol)、1,3-ビス(4-メトキシフェニル)グアニジン(54.0mg、0.193mmol)、炭酸セシウム(210mg、0.645mmol)、及びトルエン(1.6mL)を加えて溶解した。溶液を凍結脱気後、窒素雰囲気下、酢酸パラジウム(1.8mg、8.0μmol)とキサントフォス(4.7mg、8.1μmol)を加え、100℃にて3時間撹拌した。反応終了後、酢酸エチルと水を加え、分液操作を行った。得られた有機相を無水硫酸マグネシウムにより乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧下留去することで粗生成物を得た。得られた粗生成物はシリカゲルカラムクロマトグラ
フィー(25%酢酸エチル/ヘキサン溶液)により精製し、目的化合物(85.3mg、99%)を黄色の非晶体として得た。
1H NMR (600 MHz, CDCl
3): δ 8.00 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.90 (br s, 1H), 7.73 (s, 1H), 7.62 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.19 (d, J = 8.9 Hz, 4H), 6.86 (d, J = 8.9 Hz, 4H), 6.15 (br s, 2H), 3.78 (s, 6H);
13C NMR (150 MHz, CDCl
3): δ 156.9 (2C), 150.9, 149.5, 147.2 (q, J = 35.3 Hz), 146.9, 135.8 (q, J = 32.5 Hz), 132.1, 128.8, 124.7 (4C), 124.4 (2C), 122.9 (q, J = 275.5 Hz), 121.1 (q, J = 275.5 Hz), 119.3, 119.0, 114.7 (4C), 111.3, 55.5 (2C);
19F NMR (282 MHz, CDCl
3): δ -61.4 (d, J = 1.5 Hz), -67.4; IR (KBr): 3421, 1583, 1509, 1449, 1278, 1244, 1142, 1036, 826, 665 cm
-1; HRMS (ESI) m/z: [M + H]
+ calcd for C
26H
21F
6N
4O
2, 535.1569; found, 535.1549.
【0139】
化合物(12)をメタノール中で撹拌して溶解させて黄色の溶液を得た。ここに、1mol/Lの塩酸のジエチルエーテル溶液を0.5mL加えて、透明の溶液を得た。溶媒を除去して得られた白色固体を真空乾燥して、塩酸塩(12)を得た。
【0140】
実施例12:多環式芳香族アミン化合物の塩酸塩のPKaの決定
上記塩酸塩(1)乃至(5)、(7)乃至(12)0.125μmolを、1,4-ジオキサン1.5mLに溶解させ、ここに、様々なpHに調整した緩衝液(pH0乃至2:塩酸緩衝液、pH2乃至8:マッキルベイン緩衝液、pH8乃至13:炭酸水素ナトリウム/水酸化ナトリウム緩衝液)3.5mLを加えて、混合液のpHを測定した。その後、各pHの溶液の吸光度測定を行い、各塩酸塩の吸収極大波長の吸収強度からpH曲線を作成し、各化合物のプロトン化体のpKaを算出した。算出されたpKaを下記表1に示す。
【表1】
【0141】
本発明の各多環式芳香族アミンの塩酸塩は、夫々異なるpKa(0.8乃至9.8)を有しているため、検出するサンプルのpHに基いて、適したアミン類検出薬を提供できる。例えば、ペプチド固相合成の遊離アミノ基の検出には、反応に影響のないよう、中性領域にpHを調整した、塩酸塩(2)乃至(5)、(11)又は(12)、特に好しくは塩酸塩(2)又は(12)を含むアミン類検出薬を採用することが好ましい。
【0142】
<吸収スペクトルの測定>
実施例13:化合物(2)及び塩酸塩(2)のモル吸光係数(ε)
化合物(2)を0.0474mg(0.100μmol)入れたスクリューバイアル瓶を2本用意し、夫々のバイアル瓶にメタノール5mL、又は3%塩酸のメタノール溶液5mLを添加し、振とうして溶解させた。
また、塩酸塩(2)を0.0511mg(0.100μmol)を入れたバイアルを1本用意し、そこにメタノール(5mL)を加えて溶解させた。
これら3本のサンプルの吸収スペクトルを
図1に示す。
【0143】
実施例14:化合物(3)及び塩酸塩(3)のモル吸光係数(ε)
化合物(3)を0.0322mg(0.100μmol)入れたスクリューバイアル瓶を3本用意し、夫々のバイアル瓶にメタノール5mL、n-ブタノール5mL又は3%塩酸含有メタノール溶液5mLを添加し、振とうして溶解させた。
また塩酸塩(3)を0.0359mg(0.100μmol)を入れたバイアルを1本
用意し、そこにメタノール(5mL)を加えて溶解させた。
これら4本のサンプルの吸収スペクトルを
図2に示す。
【0144】
実施例15:化合物(12)及び塩酸塩(12)のモル吸光係数(ε)
化合物(12)を0.0534mg(0.100μmol)入れたスクリューバイアル瓶を3本用意し、夫々のバイアル瓶にメタノール5mL、n-ブタノール5mL又は3%塩酸含有メタノール溶液5mLを添加し、振とうして溶解させた。
また塩酸塩(12)を0.0571mg(0.100μmol)を入れたバイアルを1本用意し、そこにメタノール(5mL)を加えて溶解させた。
これら4本のサンプルの吸収スペクトルを
図3に示す。
【0145】
図1乃至3において、化合物(2)、(3)及び(12)の3%塩酸含有メタノール溶液のモル吸光係数(ε)は、塩酸塩(2)、(3)及び(12)のメタノール溶液のモル吸光係数(ε)とほぼ一致することから、本発明の多環式芳香族アミン化合物は塩酸存在下、多環式芳香族アミン化合物の塩酸塩を形成することが理解できる。
一方、塩酸塩(2)、(3)及び(12)のメタノール溶液は380nmより長波長側のモル吸光係数(ε)はほぼ0であるため、ほぼ無色透明の溶液であるのに対し、化合物(2)、(3)及び(12)のメタノール溶液は、380nm乃至500nmの波長領域にモル吸光係数(ε)を有するため、黄色から赤色の溶液であることが理解できる。つまり、本発明の多環式芳香族アミン化合物の塩は、脱塩により呈色し、それが拡散した溶液の色を変化させることができることが理解できる。
なお、脱塩した多環式芳香族アミン化合物(2)、(3)及び(12)は、塩酸の添加により多環式芳香族アミン化合物の塩酸塩(2)、(3)及び(12)に容易に再生できることも理解できる。
【0146】
<アミン類の検出>
実施例16:化合物(2)を用いた1級アミンの検出
塩酸塩(2)51.086mgをメタノール50mLに溶解して、2.0mMの塩酸塩(2)メタノール溶液を調製した。
この溶液を容器に5mLずつ分取し、夫々の容器中の溶液に、夫々マイクロシリンジを用いて、0、0.2、0.4、0.6、0.8、1.0、1.2、1.6及び2.0当量のn-プロピルアミンを加えた。
この溶液を0.2cmのセルを用いて吸光度を測定した。得られた吸収スペクトルを
図4(a)に示す。
また、n-プロピルアミンの添加量に対する、波長381nmの吸光度のグラフを
図4(b)に示す。
【0147】
実施例17:化合物(2)を用いた2級アミンの検出
塩酸塩(2)51.086mgをメタノール50mLに溶解して、2mMの塩酸塩(2)メタノール溶液を調製した。
この溶液を容器に5mLずつ分取し、夫々の容器中の溶液に、夫々マイクロシリンジを用いて、0、0.2、0.4、0.6、0.8、1.0、1.2、1.6及び2.0当量のピペリジンを加えた。
この溶液を0.2cmのセルを用いて吸光度を測定した。得られた吸収スペクトルを
図5(a)に示す。また、ピペリジンの添加量に対する、波長381nmの吸光度のグラフを
図5(b)に示す。
【0148】
実施例18:化合物(2)を用いた3級アミンの検出
塩酸塩(2)51.086mgをメタノール50mLに溶解して、2mMの塩酸塩(2)メタノール溶液を調製した。
この溶液を容器に5mLずつ分取し、夫々の容器中の溶液に、夫々マイクロシリンジを用いて、0、0.2、0.4、0.6、0.8、1.0、1.2、1.6及び2.0当量のトリエチルアミンを加えた。
この溶液を0.2cmのセルを用いて吸光度を測定した。得られた吸収スペクトルを
図6(a)に示す。また、トリエチルアミンの添加量に対する、波長381nmの吸光度のグラフを
図6(b)に示す。
【0149】
実施例16乃至実施例18より、本発明のアミン類検出薬は、1級、2級及び3級のアミンのいずれも、添加するアミン類の量に比例して吸光度が増加することから、これらアミン類を定量的に検出できることが示された。
また、実施例16乃至実施例18より、本発明のアミン類検出薬は、1級、2級及び3級のアミンのいずれも、多環式芳香族アミン化合物の極大吸収波長の吸光度を測定することにより、アミン類を検出できることが理解できる。
【0150】
実施例19:塩酸塩(6)の呈色反応
スクリューバイアル瓶に、塩酸塩(6)0.346gをメタノール溶液40mLに溶解して、20μmol/Lの塩酸塩(6)メタノール溶液を準備した。この溶液を、6本のスクリューバイアル瓶に5mLずつ取り分けた。夫々のスクリューバイアル瓶に、28%アンモニア水(NH
3)、40%メチルアミン水溶液(MeNH
2)、50%ジメチルアミン水溶液(Me2NH)、グリシン(Gly)及びプロリン(Pro)を、塩酸塩(6)に対して5当量加え、蓋をして振とうし、溶液の色を観察した。溶液の吸収スペクトルを
図7に示す。
アミン類を添加した溶液に、更に33%塩酸を、塩酸塩(6)に対して5当量加え、溶液の色を観察した。溶液の色の変化を下記表2に示す。
【表2】
【0151】
実施例20:塩酸塩(8)の呈色反応
実施例7で合成した塩酸塩(8)(0.293mg)をメタノール溶液40mLに溶解して20μmol/Lの塩酸塩(8)メタノール溶液を準備した。この溶液を、6本のスクリューバイアル瓶に5mLずつ取り分けた。夫々のスクリューバイアル瓶に、28%アンモニア水(NH
3)、40%メチルアミン水溶液(MeNH
2)、50%ジメチルアミン水溶液(Me2NH)、グリシン(Gly)及びプロリン(Pro)を、塩酸塩(8)に対して5当量加え、蓋をして振とうした。その結果を下記表3に示す。また、溶液の吸収スペクトルを
図7に示す。
また、アミン類を添加した溶液に、更に33%塩酸を、塩酸塩(8)に対して5当量加え、溶液の色を観察した。溶液の色を下記表3に示す。
【表3】
【0152】
種々のアミン類を添加した塩酸塩(6)及び塩酸塩(8)は、夫々、目視では同じ色に呈色した。またず、
図7及び
図8より、アミン類添加後の溶液は夫々ほぼ同じ吸光度を示した。
表2、表3、
図7及び
図8より、本発明の多環式芳香族アミン化合物の塩を含むアミン類検出薬は、アミン類と接触することにより脱塩して、多環式芳香族アミン化合物を生じる呈色反応を起こすことが示された。また、ジメチルアミンやプロリン等の2級アミンに対しても1級アミンと同様にアミン類の検出を行えることが示された。
なお、塩酸塩(6)の方が塩酸塩(8)よりも吸光度が高く高感度であることも理解できる。
また、アミン検出後のアミン類検出薬は、過剰量のハロゲン化水素を添加することでハロゲン化水素塩を形成するので、再利用できることが示された。
【0153】
<アミン(気体)の検出>
実施例21:塩酸塩(7)を用いたアンモニアガスの検出
化合物(7)1mgと、臭化カリウム49mgとを混合して、2質量%の化合物(7)を含む黄色の粉末サンプルを作成した。
作成した黄色の粉末サンプルを、33%塩酸から調整した塩化水素ガスで充満した密閉容器に入れたところ、徐々に粉末の色が薄くなり、10分後には粉末の色は淡横色になった。得られた粉末の一部を取り出してIR測定を行ったところ、化合物(7)のピークは消失し、塩酸塩(7)のピークが検出された。
次に、得られた淡黄色の粉末を28%アンモニア水から調整したアンモニアガスで充満した密閉容器内に入れたところ、5秒以内に粉末の色が黄色になった。粉末の一部を取り出してIR測定を行ったところ、塩酸塩(7)のピークは消失し、化合物(7)のピーク及び塩化アンモニウムのピークが検出された。IR測定の結果を
図9に示す
この粉末に同じ操作を5回繰り返しても、同じ色の変化が観察された。
【0154】
実施例22:塩酸塩(8)を用いたアンモニアガスの検出
化合物(8)1mgと、臭化カリウム49mgとを混合して、2質量%の化合物(8)を含むオレンジ色の粉末サンプルを作成した。
作成した赤色の粉末サンプルを、33%塩酸から調整した塩化水素ガスで充満した密閉容器に入れたところ、徐々に粉末の色が薄くなり、10分後には粉末の色は淡褐色に変化した。得られた粉末の一部を取り出してIR測定を行ったところ、化合物(8)のピークは消失し、塩酸塩(8)のピークが検出された。
次に、得られた淡褐色の粉末を28%アンモニア水から調整したアンモニアガスで充満した密閉容器に入れたところ、5秒以内に粉末の色がオレンジ色に変化した。粉末の一部を取り出してIR測定を行ったところ、塩酸塩(8)のピークは消失し、化合物(8)及び塩化アンモニウムのピークが検出された。IR測定の結果を
図10に示す
この粉末に同じ操作を5回繰り返えしても、同じ色の変化が観察された。
【0155】
実施例21及び22より、本発明のアミン類検出薬は、固体状体及び溶液状態でも、気体状のアミン類の検出に使用できるできることが示された。また、気体状のアミン類の検出後、容易にアミン類検出薬を再生使用できることが示された。