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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】生体信号取得用衣服
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/256 20210101AFI20240903BHJP
   A41D 1/00 20180101ALI20240903BHJP
【FI】
A61B5/256 210
A41D1/00 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021053754
(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2022150935
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2023-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】金井 博幸
(72)【発明者】
【氏名】藤尾 宜範
(72)【発明者】
【氏名】町澤 李咲
【審査官】外山 未琴
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0073131(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0009731(US,A1)
【文献】特開2017-031534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/01
A61B 5/05-5/0538
A61B 5/24-5/398
A41D 1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣服本体を構成する衣服本体生地の裏面側に配置される1つ以上の電極と、
前記電極が取得する生体信号を受信する受信装置が接続可能なコネクタと、
前記電極と前記コネクタとを導通する生体信号伝送部とを含む生体信号取得用衣服であって、
前記衣服本体生地が主として伸縮性を有するメッシュ状の単層生地であり、
前記衣服本体生地の前記電極位置の表側に配置された弾性部材と、
前記弾性部材の前記衣服本体生地側の反対側において局所的に配置され、前記弾性部材を前記衣服本体生地の表面上に保持する保持部材と、を含む生体信号取得用衣服。
【請求項2】
前記生体信号取得用衣服の着用時において、曲げ剛性が、前記保持部材よりも前記保持部材の対面に位置する前記衣服本体生地の方が小さい、請求項1に記載の生体信号取得用衣服。
【請求項3】
前記衣服本体生地のうちの前記保持部材と対向する部分と、前記保持部材とにより、袋状の収容部が形成され、
前記収容部内に前記弾性部材が収容されている、請求項1または2に記載の生体信号取得用衣服。
【請求項4】
前記弾性部材の厚みが7mm~15mmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の生体信号取得用衣服。
【請求項5】
前記保持部材は、パワーネットである、請求項1~4のいずれか一項に記載の生体信号取得用衣服。
【請求項6】
前記生体信号伝送部及び前記コネクタは、衣服本体生地の表面側に配置されており、
前記生体信号伝送部のうちの電極側端部は、前記衣服本体生地のメッシュホールを貫通して、前記電極に接合されている、請求項1~5のいずれかの項に記載の生体信号取得用衣服。
【請求項7】
前記電極と上下方向同位置の胴周りのうちの前記電極直下以外の衣服圧(B)の平均値は、0.4kPa以下である、請求項1~6のいずれかの項に記載の生体信号取得用衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体からの生体信号を検出するための生体信号取得用衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体からの生体信号(生体からの電気信号)を検出することができるシステムを備えた衣服が提案されている。着用者の生体情報を精度良く取得するためには、電極と身体とを密着させる必要がある。そのため、衣類型の生体情報計測装置の場合は、衣類本体としてコンプレッションウェアのような上半身を強く締め付けるものが用いられており、この締め付け効果によって電極と身体とを密着させている。締め付けが弱いと、電極と身体との密着性が悪化し、生体情報の精度が低下(例えば心拍検出率が低下)する問題が生じるからである。
【0003】
例えば、特許文献1には、電極と衣服本体生地の間にクッション層を配置することで、生体と電極の密着性を高めた生体信号取得用衣服が開示されている。当該生体信号取得用衣服においては、密着性を担保するためには、衣服自体にある程度の締め付け力が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-58346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この締め付けによって着用者に圧迫感等の不快感を生じるといった問題があった。
【0006】
本発明は、不快感の低減と生体情報を精度良く取得することが両立された、生体信号取得用衣服を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、衣服本体を構成する衣服本体生地の裏面側に配置される1つ以上の電極と、
前記電極が取得する生体信号を受信する受信装置が接続可能なコネクタと、
前記電極と前記コネクタとを導通する生体信号伝送部とを含む生体信号取得用衣服であって、
前記衣服本体生地が伸縮性を有するメッシュ状の生地であり、
前記衣服本体生地の前記電極位置の表側に配置された弾性部材と、
前記弾性部材の前記衣服本体生地側の反対側に配置され、前記弾性部材を前記衣服本体生地の表面上に保持する保持部材と、を含む、生体信号取得用衣服に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、衣服本体生地が伸縮性を有するメッシュ状の生地であり、保持部材によって衣服本体生地の表面側上に保持された弾性部材を含むことで、衣服本体生地による締め付け力に対する不快感の低減と生体情報を精度良く取得することが両立された、生体信号取得用衣服を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1Aは、本発明の一実施形態に係る生体信号取得用衣服の模式的正面図である。
図2図2Aは、図1に示す生体信号取得用衣服の表面側を、図2Bは、裏面側を示す、模式的正面図である。
図3図3は、図2Aに示す生体信号取得用衣服のI-I線での断面図である。
図4図4は、生体信号受信装置の模式的説明図である。
図5図5Aは、図1に示す生体信号取得用衣服の非着用時の衣服本体生地と弾性部材と保持部材の模式断面図であり、図5Bは、着用時の衣服本体生地と弾性部材と保持部材の模式断面図である。
図6図6は、実施例の生体信号取得用衣服における各構成部材の寸法を説明するための模式図である。
図7図7は、比較例2,3の生体信号取得用衣服の模式的正面図であり、図7Aは、表面側を、図7Bは裏面側を示す。
図8図8は、図7Aに示す生体信号取得用衣服のII-II線での断面図である。
図9図9は、比較例の生体信号取得用衣服における各構成部材の寸法を説明するための模式図である。
図10図10は、実施例1~3及び比較例1の生体信号取得用衣服を被験者に着用させて求めた心拍検出率を比較するグラフである。
図11図11は、衣服圧の測定点を説明する説明図である。
図12図12は、実施例1~3、比較例1~3の生体信号取得用衣服の着用時の測定点における衣服圧を示す折れ線グラフである。
図13図13は、官能性試験の測定部位を説明する説明図である。
図14図14は、官能性試験の結果を示したレーダーチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の発明者らは、締め付け力に対する不快感の低減と生体情報を精度良く取得することとの両立のために、鋭意検討を重ねた。その結果、衣服本体生地として伸縮性を有するメッシュ状の生地を使用して衣服本体生地と生体との接触面積を減らし、且つ、弾性部材によって着用時に局所的に衣服圧が高くなる構成として生体と電極との密着性を高めることにより、前記不快感が低減され、且つ、生体情報を精度良く取得できることを見出した。本明細書において、「裏面側又は裏側」とは生体に近い側をいい、「表面側又は表側」とは生体と遠い側をいう。また「上」とは首まわりに近い側をいい、「下」とは、首まわりから遠い側をいう。
【0011】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態をより詳細に説明する。しかし、本発明は、下記図面に示したものに限定されない。
【0012】
図1Aは、本発明の一実施形態に係る生体信号取得用衣服の模式的正面図であり、図2Aは、図1に示した生体信号取得用衣服の表面側を、図2Bは裏面側を示す。図3は、同生体信号取得用衣服のI-I線での断面図である。図4は、生体信号受信装置の模式的説明図である。該実施形態の生体信号取得用衣服1(インナー)は、衣服本体2と、電極3と、生体信号伝送部4と、コネクタ5とを備えている。衣服本体生地201の電極位置の表側には弾性部材10が配置されており、弾性部材10は、衣服本体生地201と、衣服本体生地201に固定された保持部材7との間に配置されて、衣服本体生地201の表面上に保持されている。
【0013】
電極3は、衣服本体2を構成する衣服本体生地201の裏面側に配置され、生体(着用者の肌)と接触して生体からの生体信号を取得する。該実施形態において、電極3は2個であり、みぞおちの両側を覆う領域に左右対称的に配置されているが、電極は1個でもよく、3個以上でもよい。また、電極の配置場所も取得しようとする生体信号や対象とする生体組織などに応じて適宜決めることができる。生体信号としては、例えば、脈波、脈拍、呼吸、体動等による信号が挙げられる。測定部位としては、例えば、胸部、背部、腹部などが挙げられる。みぞおちの両側を覆う領域に左右対称的に配置する場合、心拍数等を検出することができる。電極の数に応じて、生体信号伝送部及びコネクタの数を適宜調整すればよい。
【0014】
電極3の素材は、生体信号を取得することができるものであればよく、特に限定されない。例えば、導電性繊維で構成することができる。導電性繊維としては、例えば、繊維に導電性金属をめっきした導電性金属めっき繊維や繊維に導電性高分子を含浸したもの等を用いることができる。導電性金属としては、例えば、銀、アルミナ、金、銅等が挙げられ、導電性が高い観点から、銀が好ましい。繊維としては、特に限定されないが、耐久性に優れる観点から、ポリエステル繊維やナイロン繊維などを用いることができる。導電性繊維を不織布、編物及び織物などの繊維集合体にして電極として用いることができる。電極3を構成する繊維集合体は、特に限定されないが、例えば、目付が100~500g/mであってもよい。電極3の大きさや形状は、生体信号が取得できればよく特に限定されない。例えば、電極3の縦及び横の長さがいずれも、1~10cmであってもよい。また、電極3は、特に限定されないが、例えば、厚みが0.01~5mmであってもよい。
【0015】
生体信号伝送部4は、その一部が衣服本体生地201の表面側に配置され、生体信号伝送部4のうちの電極3側端部は、衣服本体生地201のメッシュホールを貫通して、電極3に接合され、電極3と導通しており、電極3が取得した生体信号を伝送する。生体信号伝送部4は、電極3が取得した生体信号を伝送することができればよく、その素材は特に限定されない。電極3と同様に、導電性繊維で構成することができる。例えば、電極3と生体信号伝送部4は、一体でなく、別々の構造体であってもよい。電極3と生体信号伝送部4が別々の構造体の場合、導電性繊維糸で縫い込むことで電極3と生体信号伝送部4を接合させてもよく、導電性接着剤で電極3と生体信号伝送部4を接着させてもよい。接着剤としては、特に限定されず、例えば、ホットメルト接着剤等を用いることができる。なお、電極3と生体信号伝送部4は、一体(一つの構造体)であってもよく、すなわち、電極3の一部を延長することで生体信号伝送部4が構成されていてもよい。具体的には、電極3から延長された周辺部及び突出部が生体信号伝送部4を構成していてもよい。また、生体信号伝送部4は、衣服本体生地201の裏面側に配置されていてもよい。
【0016】
電極3と衣服本体生地201との固定は、縫製による縫着で行ってもよく、ホットメルト接着剤等の接着剤で接着させてもよい。生体信号伝送部4と衣服本体生地201との固定は、縫製による縫着で行ってもよく、ホットメルト接着剤等の接着剤で接着させてもよい。なお、電極に伸縮性のない素材を用いる場合は、着用時の衣服本体生地の伸びを考慮し、予め伸び代を確保した状態で固定することが好ましい。つまり、非着用時において電極3は衣服本体生地に対してやや弛んだ状態で固定されていると好ましい。
【0017】
コネクタ5は、生体信号受信装置に対する生体信号出力部である。コネクタ5は、生体信号伝送部4の表面側に配置されている接続部51と、接続部51を生体信号伝送部4に固定する固定部52を有し、接続部51と固定部52は、生体信号伝送部4を挟むように配置されていてもよい。コネクタ5が、生体信号伝送部4のうちの衣服本体生地201の表面側に配置された部分に固定され、衣服本体生地201の表面側に配置されていると、コネクタ5による異物感を衣服本体生地201によって緩和できるので好ましい。接続部51と固定部52で生体信号伝送部4を挟む際に、固定部と生体信号伝送部4の間に導電性テープを配置してもよい。コネクタ5としては、例えば、導電性金属のスナップボタン、マグネットホック等を用いることができる。
【0018】
生体信号伝送部4を、衣服本体生地201の裏面側に配置する場合は、接続部51と固定部52は、衣服本体生地201と生体信号伝送部4を挟むように配置してもよい。また、この場合は、検出対象の生体信号以外のノイズを低減するために、生体信号取得用衣服1の裏側において、生体信号伝送部4及びコネクタ5の固定部52は、絶縁性シート(図示せず)で覆われていることが好ましい。そして、コネクタ5による異物感を軽減する観点から、コネクタ5の固定部52と絶縁シート20の間には、クッション材(図示せず)が配置されていることが好ましい。絶縁性シートは、電気絶縁性を有するものであればよく特に限定されない。例えば、ポリエチレンテレフタレートシート、ポリエチレンナフタレートシート、ポリウレタンシート等が挙げられる。クッション材としては、例えば、樹脂発泡体や、編物、織物及び不織布等の繊維集合体が挙げられる。
【0019】
図1に示すように、衣服本体生地201は、伸縮性を有するメッシュ状の生地であり、メッシュホール部分201aと編織物からなる繊維部分201bから構成される生地である。そのため、衣服本体生地201と生体との接触面積が少ないことから従来のコンプレッションウェアと比較して締め付け感が緩和され、加えて、通気性も良いことから汗抜け性が良く、着心地が良い。メッシュホール部分の平面形状は、円、楕円、四角、ひし形、多角形、不定形のどのような形状でもよい。メッシュホール部分201aの1個あたりの平均面積は、4mm以上12mm以下が好ましく、5mm以上10mm以下が好ましい。メッシュホール部分201aの1個あたりの平均面積は、例えば、生地を無張力下で広げ、写真撮影し、寸法および形状を測定し、計算より算出できる。また、メッシュホール部分201aの面積、視野内の数、視野の面積を算出し、これらの値を用い、生地全体に対するメッシュホール部分201aの面積比を算出できる。なお、衣服本体2を構成する衣服本体生地201は主として上記メッシュ状の生地であるが、衣服本体2のうちの一部、例えば、他よりも高い強度が求められる部分(肩、裾等)は、上記メッシュ状の生地以外の編織物によって補強されていてもよいし、当該編織物によって構成されていてもよい。
【0020】
衣服本体生地201は、好ましくは、着心地と生体情報を精度良く取得することとの両立の観点から、伸縮性が高い編物が好ましく、例えば、衣服本体生地201の、縦方向の伸長率(EMT)は、好ましくは80%以上200%以下、より好ましくは90%以上150%以下である。横方向の伸長率(EMT)は、好ましくは50%以上150%以下、より好ましくは50%以上80%以下である。伸長率は、実施例に記載の方法にて測定できる。また、着心地と生体情報を精度良く取得することとの両立の観点から、横方向の伸長率に対する縦方向の伸長率は、好ましくは1.2倍以上2.5倍以下であり、より好ましくは1.5倍以上2.0倍以下である。編組織は、シングルラッセル編みが好ましい。このような伸縮性生地は、弾性繊維(糸)と非弾性繊維(糸)で構成することができる。弾性繊維しては、特に限定されないが、例えば、ポリウレタン弾性繊維、ポリエーテル・エステル弾性繊維、ポリアミド弾性繊維、ポリオレフィン弾性繊維などが挙げられ、伸長性に優れる観点からポリウレタン弾性繊維が好適である。非弾性繊維としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系合成繊維、ナイロンなどのポリアミド系合成繊維などを使用することができる。
【0021】
保持部材7は、衣服本体生地201よりも伸縮性が低い伸縮性生地、例えば、パワーネット等の弾性糸混紡編物等で構成されていると好ましい。一般にパワーネット生地としては、ストレッチ性を備えた細かいネット状の編物であり、例えば、ナイロン等の繊維とポリウレタンの弾性繊維とをお互いに交編して生成されており、伸びたときのキックバック性が強い。保持部材7は、パワーネットを複数枚積層したものであってもよい。保持部材7は、1方向に伸縮性を有する生地(実質的に1方向にのみ伸縮する生地)、2方向に伸縮性を有する生地のいずれでもよい。保持部材7の、1方向(衣服本体2の横方向と同方向)の伸長率(EMT)は、生体情報を精度良く取得する観点から、好ましくは3%以上30%以下、より好ましくは3%以上15%以下である。保持部材7の、もう一方の方向(衣服本体2の縦方向または着丈方向と同方向)の伸長率(EMT)について、特に制限はないが、好ましくは、3%以上30%以下、より好ましくは3%以上15%以下である。
【0022】
保持部材7と、衣服本体生地201のうちの保持部材7と対向する部分とにより、袋状の収容部71が形成され、当該収容部71内に弾性部材10が収容されていると好ましい。図1に示すように、収容部71は、上側に開口した開口部72を有するので、収容部71から弾性部材10が出し入れ可能である。故に、厚みの異なる弾性部材10と交換すれば、電極3と生体との密着性の程度を調整することができる。例えば、より厚い弾性部材10と交換すれば、電極3と生体との密着性を高めることができる。また、生体信号取得用衣服1において、保持部材7と衣服本体生地201の間に弾性部材7を保持できればよく、保持部材7の4辺のうちの上下2辺のみが、衣服本体生地201に固定されていてもよいし、4辺全部を衣服本体生地201に固定して、収容部を閉じ、弾性部材10を出し入れ不可としてもよい。保持部材7の衣服本体生地201への固定は、縫製による縫着で行ってもよく、ホットメルト接着剤等の接着剤で接着させてもよい。保持部材7の衣服本体生地201への固定は、弾性部材10が保持部材7と衣服本体生地201の間に保持されるかぎり、各辺において、連続的であってもよいし断続的であってもよい。
【0023】
弾性部材10の材料としては、柔軟性を有し、保持部材7によって衣服本体生地201側に押された際に、電極3を生体側へ付勢できる弾性反発力を有するものであれば特に制限はない。例えば、ゴム状弾性体(弾性非発砲体)、弾性発泡体等のいずれであってもよいが、軽量であることから、弾性発泡体が好ましく、化粧用パフのようなスポンジが好ましい。弾性発砲体は、連続気泡発泡体、半連続気泡発泡体、独立気泡発泡体のいずれであってもよい。弾性発砲体の材料としては、海綿、天然ラテックス等の天然素材、ウレタン(特殊ウレタンまたは湿式ウレタン等)、ラテックス、SBR(スチレンブタジエンゴム)、PVA(Polyvinyl Alcohol)またはNBR(アクロニトリルブタジエンラバー)、シリコン、オレフィン系樹脂等の合成素材が例示される。弾性部材10の圧縮レジリエンスは、電極の生体への密着性向上の観点から80%以上好ましい。圧縮レジリエンスは、例えば、実施例に記載の方法により測定できる。
【0024】
弾性部材10の大きさは、電極3の大きさに併せて適宜調整することができる。弾性部材10の縦長さ及び横長さは、特に限定されないが、例えば、それぞれ、電極3の縦長さ及び横長さの0.5~1.5倍の範囲であってもよい。生体信号取得用衣服において、着心地と生体情報を精度良く取得することとの両立の観点から、電極3がある部分の衣服圧は高く、それ以外の部分の衣服圧は低い方が好ましく、衣服圧の高い部分(電極3がある部分)と低い部分(それ以外の部分)とが存在する分布が在ると好ましい。このような衣服圧の分布を作り出す観点から、弾性部材10の厚みは、7mm以上が好ましく、一方、弾性部材10のアウターへの響きの問題から、15mm以下が好ましい。
【0025】
電極3直下の衣服圧(A)は、生体情報を精度良く取得する観点から、1.0kPa以上が好ましく、1.4kPa以上がより好ましい。電極3と上下方向同位置の胴周りのうちの電極3直下以外の衣服圧(B)の平均値(b)は、着心地の観点から、0.4kPa以下が好ましく、0.3kPa以下がより好ましい。前記平均値の下限について制限はないが、通常、0.1kPa以上である。また、前記衣服圧(B)の平均値(b)に対する電極3の衣服圧(A)の比は、着心地の観点から、5以上が好ましく、8以上がより好ましい。前記比の上限について特に制限はないが、22以下が適切である。尚、衣服圧(A)および衣服圧(B)は、実施例に記載の方法により測定できる。
【0026】
衣服本体生地201と弾性部材10は、縫製による縫着又は接着剤によって固定させてもよいし、固定させなくてもよい。
【0027】
図5Aに、生体信号取得用衣服の未着用時の衣服本体生地201と弾性部材10と保持部材7の模式断面図を、図5Bに、着用時の衣服本体生地201と弾性部材10と保持部材7の模式断面図を示している。図5Aに示されるように、未着用時では、弾性部材10は、未圧縮状態で、保持部材7と衣服本体生地201との間に配置されていると好ましい。図5Bに示されるように、着用時においては、衣服本体生地201と保持部材7に、主として胴幅方向の張力がかかる。保持部材7と衣服本体生地201は互いに固定されているため、両者には同一の引張荷重が作用した状態になる。この状態における生地の曲げ剛性が、保持部材7よりも衣服本体生地201の方が小さいため、弾性部材10は、保持部材7により衣服本体生地20側、すなわち電極3側に押圧され、その結果、電極3と生体との密着性が向上する。未着用時に、弾性部材10が、保持部材7と衣服本体生地201とで形成される収容部内に、未圧縮状態で配置されていると、着用時に、弾性部材10の弾性反発力が衣服本体生地20側に効果的に作用するので好ましい。
【0028】
図1に示すように、生体信号取得用衣服1は、生体信号を受信する受信装置6を有してもよい。生体信号受信装置6は、電極3が取得し、生体信号伝送部4が伝送して来た生体信号を受信するとともに、該生体信号をデジタル信号に変換し、例えば、無線等によって送信する小型の携帯端末装置である。該実施形態において、図4に示されているように、生体信号受信装置6は、接続部61を有しており、接続部61とコネクタ5の接続部51を着脱可能する係合することで、生体信号受信装置6とコネクタ5を着脱可能に接続することができる。衣服未使用時、特に洗濯時には、生体信号受信装置6を取り外すことができる。
【0029】
図1図3では、生体信号取得用衣服1が無袖シャツの場合を例示しているが、生体信号取得用衣服1は、生体に接触するように身に着けるものであればよく、例えば、半袖シャツ、長袖シャツ、ガードル等が挙げられる。生体信号取得用衣服1を着用することで、日常生活を行いながら、長期間連続的に心電図などを計測することができる。
【0030】
生体信号取得用衣服は、衣服のずれ上がりを防止するために、裾部の一部又は全部において、周方向に沿ってゴム等の弾性体で構成された帯状の留め具を配置してもよい。
【実施例
【0031】
各種パラメーターの測定方法は下記の通りである。
[圧縮仕事量(WC)]
圧縮試験機(島津精機社製 オートグラフ AG-X plus 500N、圧縮子サイズ:直径100mm)を用いて、加圧面積78.5cmに対し、荷重6.24N、速度1mm/secの条件で、弾性部材を厚み方向に加圧したときの圧縮仕事量(WC)を測定した。
【0032】
[圧縮レジリエンス(RC)]
圧縮試験機(島津精機社製 オートグラフ AG-X plus 500N、圧縮子サイズ:直径100mm)、加圧面積78.5cmに対し、荷重6.24N、速度1mm/secの条件で、弾性部材を厚み方向に加圧したときの圧縮レジリエンス(RC)を測定した。
【0033】
[伸長率(EMT)]
精密万能試験機(島津製作所製 SHIMADZU オートグラフAG-X plus)を用いて、室温23±1℃、相対湿度50±5%の雰囲気下で、引張速度(歪み速度)を12mm/分として、試験片について引張試験を行った。当該引張試験では、荷重が2.45N(最大荷重)に達するまで試験片を伸長させながら荷重を測定し、最大荷重に達した後は即座に回復させ、回復過程も同一速度で荷重を測定した。尚、初期チャック間距離は100mmとし、試験片のサイズは50×200mmとし、試験は横方向、縦方向、それぞれ5回ずつ行い、各々の方向で算術平均値を求めることで、伸長率を算出した。
【0034】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0035】
(実施例1)
衣服本体として、アウトドア用アンダーウエア(ラフマ・ミレー株式会社、DRYNAMIC NS CREW MIVO1248 メンズ ポリプロピレン66% ナイロン28% ポリウレタン6%、シングルラッセル編み、胸囲72cm、メッシュホール部分平均面積8mm、横方向の伸長率65.63%、縦方向の伸長率118.52%)を用意した。
【0036】
ナイロン繊維に銀メッキを行った導電性繊維(ミツフジ社製:「AGposs」)を用いて織物を作製した。次に、前記織物を所定の寸法にカットして、電極3と生体信号伝送部4を各々用意した。電極3と生体信号伝送部4の寸法は、両者を縫製により接合して一体化した状態で、図6Aに示す各部位の長さが下記にようになるようにした。
L1:3.8cm,L2:0.5cm,L3:1.0cm,L4:1.8cm,W1:5.5cm,W2:5.3cm,W3:1.3cm
【0037】
弾性部材10として、合成ゴムスポンジ(商品名ファンデーションパフ角型、Seria社製、圧縮仕事量(WC):8.48gf・cm/cm、圧縮レジリエンス(RC)81.45%、厚み7mm)を、図6Bに示すように、L5が4.0cm、W4が5.4cmとなるようにカットしたものを用意した。
【0038】
保持部材7として、パワーネット(商品名ARCARE、品番SACRO LIGHT-FX社製の背部ステー部分を使用、1wayパワーネット、伸長率4.89%)に使用されているパワーネットを、図6Cに示すように、L6が5.5cm、W5が7.0cmとなるようにカットしたものを用意した。
【0039】
図1図3に示される生体信号取得用衣服1を、下記のように作製した。なお、図1図3では、後述する接着剤は図示していない。
まず、衣服本体生地201の表面側(生体側の反対側)に、弾性部材10を収容するための収容部71を形成した。具体的には、前記保持部材7を衣服本体生地201に対して、保持部材7の伸縮方向と、衣服本体の胴回り方向とが同じとなるように、且つ、開口部を上に有する袋状に縫い付けた。次に、衣服本体生地201の裏面側(生体側)に電極3を固定した後、電極3と生体信号伝送部4とを固定した。具体的には、電極3の直上に収容部71が配置されるように、電極3と衣服本体生地201とを位置合わせをして重ね、電極3を衣服本体生地201に縫い付けた。次に、生体信号伝送部4の長手方向のうちのコネクタ5が設けられる側を衣服本体生地201の表面上に配置し、その反対側を衣服本体生地201のメッシュホールを通し、その端部(電極側端部)を電極3に縫い付けた。次に、スナップボタンを、凸部が生体信号伝送部4の表面側になるように、かつ止め部が生体信号伝送部4の裏面側になるように配置して止めることで、接続部51(凸部)と、固定部52(止め部)を有するコネクタ5を形成した。その後、生体信号伝送部4のうちの衣服本体生地201の表面上に配置された部分を、衣服本体生地201に縫い付けた。接続部51(凸部)間の距離Daは20mmとした。次に、弾性部材10を収容部71内に挿入して、実施例1の生体信号取得用衣服(胸囲72cm、電極の中心を通る胴幅寸法69cm)を得た。
【0040】
(実施例2)
弾性部材10を、厚み11mm、圧縮仕事量(WC)20.67gf・cm/cm、圧縮レジリエンス(RC)82.89%の合成ゴムスポンジに代えたこと以外は、実施例1と同様の構成の生体信号取得用衣服(胸囲72cm、電極の中心を通る胴幅寸法69cm)を作成した。
【0041】
(実施例3)
弾性部材10を、厚み15mm、圧縮仕事量(WC)20.67gf・cm/cm、圧縮レジリエンス(RC)83.04%の合成ゴムスポンジに代えたこと以外は、実施例1と同様にしてとして、実施例3の生体信号取得用衣服(胸囲72cm、電極の中心を通る胴幅寸法69cm)を得た。
【0042】
(比較例1)
弾性部材10およびその収容部71を設けない以外は、実施例1と同様の構成の生体信号取得用衣服を作製した。
【0043】
(比較例2)
比較例2の生体信号取得用衣服として、市販の生体信号取得用衣服(商品名スマートフィット(登録商標)、倉敷紡績株式会社製、半袖シャツ、Sサイズ、胸囲78cm、電極の中心を通る胴幅寸法69cm)を、用意した。
【0044】
(比較例3)
比較例3の生体信号取得用衣服として、市販の生体信号取得用衣服(商品名スマートフィット(登録商標)、倉敷紡績株式会社製、半袖シャツ、Mサイズ、胸囲80cm、電極の中心を通る胴幅寸法72cm)を、用意した。
【0045】
尚、比較例2の生体信号取得用衣服と比較例3の生体信号取得用衣服は、衣服本体のサイズ以外は同様の構成をしており、以下、図7図9を用いて、比較例2、3の生体信号取得用衣服の構造および寸法等について説明する。なお、図7図9では、後述する接着剤は図示していない。
【0046】
図7及び図8に示すように、比較例2、3の生体信号取得用衣服100、衣服本体200を構成する衣服本体生地20100の裏面側に配置される1つ以上の電極300と、生体と接触してなる電極300が取得した生体信号を受信する受信装置が接続可能なコネクタ500と、電極300とコネクタ500とを導通する生体信号伝送部400とを備えている。電極300と衣服本体生地20100の間にはクッション層1000が配置されている。コネクタ500は、衣服本体生地20100表面側に配置されている接続部5100と、接続部5100を衣服本体200に固定する固定部5200を有し、接続部5100と固定部5200は、衣服本体生地20100と生体信号伝送部400を挟むように配置されている。衣服本体生地20100の裏面側において、生体信号伝送部400及びコネクタ500の固定部5200は、絶縁性シート2000で覆われている。固定部5200と絶縁シート2000の間には、クッション層3000が配置されている。
【0047】
衣服本体生地20100として、2way縮性生地(ポリエステル繊維82重量%、ポリウレタン弾性繊維18重量%、縦方向の伸長率47.15%、横方向の伸長率62.48%、目付155g/m、ゲージ32G、トリコット編み)を用いた。
【0048】
電極300と生体信号伝送部400の一体物7000の図9Aに示す寸法は、下記の通りである。一体物7000の材料は、ナイロン繊維に銀メッキを行った導電性繊維(ミツフジ社製:「AGposs」)を用いた織物(目付は実施例1のそれと同じ)である。
L10:50mm、L20:15mm、L30:25mm、W10:70mm、W20:40mm、W30:110mm、Da:20mm
【0049】
図9Bに示すクッション層1000およびクッション層3000の材料は、ポリエステル繊維100質量%からなるダブルラッセル(目付200g/m、厚み2mm)であり、図9Bに示す寸法は、各々、下記の通りである。
L40:30mm、W40:50mm、L50:20mm、W50:40mm
た。
【0050】
絶縁性シート2000(ポリ・テープ社製:「ポリ・フレックス」)の図9Cに示す寸法は、各々、下記の通りである。
L60:60mm、L70:40mm、W60:240mm、W70:60mm、W80:100mm
【0051】
クッション層1000と電極300は、ポリウレタン系ホットメルト接着剤により接着されており、クッション層1000および生体信号伝送部400は衣服本体生地20100とポリウレタン系ホットメルト接着剤により接着されている。コネクタ500の固定部5200とクッション層3000は、ポリウレタン系ホットメルト接着剤により接着されている。絶縁性シート2000は、熱プレスにより、生体信号伝送部400、クッション層3000及び衣服本体生地20100に融着されている。図7BにおいてLcは200mmであった。
【0052】
(心拍検出率)
実施例1~3、及び比較例1の生体信号取得用衣服を被験者(20代男性6人)に着用させ、23±1℃、50±5%の環境下で、下記の試技1~4を行っている最中の心拍数を測定するため、心電図を計測した。具体的には、生体信号取得用衣服を着用した後、左右の電極をそれぞれ0.1mL程度の水で濡らせ、十分に安静にした後、下記の試技1~4を行いながら心電図を計測した。また、同様の試技を行いながら医療用電極を用いて第2誘導(左足と右手の電位差)にて心電図を計測した。測定機器は、BIOPAC MP160 心電図用アンプECG100Cを用いた。
【0053】
[試技1:肩の外転]
立位静止(開始姿勢)2秒間経過後に、外転位180°まで両腕を上げ(最終姿勢)、その状態で2秒間静止した後、立位静止にもどす試技を1回につき8秒間で行い、それを5回行う。
[試技2:側屈]
立位静止(開始姿勢)2秒間経過後に、外転位180°まで片腕を上げながら側屈し(最終姿勢)、その状態で2秒間静止した後、立位静止にもどす試技を1回につき8秒間で行い、それを5回行う。
[試技3:前屈]
立位静止(開始姿勢)2秒間経過後に、前屈を行い(最終姿勢)、その状態で2秒間静止した後、立位静止にもどす試技を1回につき8秒間で行い、それを5回行う。
[試技4:回旋]
立位静止(開始姿勢)2秒間経過後に、左側に体幹を回旋し(最終姿勢)、その状態で2秒間静止した後、立位静止にもどす試技を1回につき8秒間で行い、それを5回行う。
【0054】
得られた心電図から心拍数を数え、下記式より心拍検出率を算出し、当該心拍検出率の6人の平均値を図10に示した。
心拍検出率(%)=生体信号取得用衣服の電力で測定した心拍数(回)/医療用電極で測定した心拍数(回)×100
【0055】
図10に示されるように、弾性部材を備えない比較例1よりも弾性部材を備えた実施例1~3の方が、心拍検出率が高い。また、例えば、試技3の結果についてみると、心拍数検出率は、弾性部材を備えない比較例1を基準として、弾性部材の厚みが7mmの実施例1では1.4倍、弾性部材の厚みが11mmの実施例2では1.6倍、弾性部材の厚みが15mmの実施例3では1.8倍であった。このことから、弾性部材の厚みが厚いほど、電極と生体(肌)との密着性が向上し、運動時にも電極が生体に追従することで、心拍検出率が向上したものと推測される。
【0056】
(衣服圧)
実施例1~3、比較例1~3の生体信号取得用衣服を、図11に示した理想体ボディー(キイヤ製 size:91, 型番:BG-733-01)に着せた時の衣服圧力を測定した。衣服圧の測定点は、図11に示す通り、左半身で水平方向に沿った8点である。衣服圧の測定条件の詳細は下記の通りとした。
[衣服圧測定条件]
・実験環境:室温23±1℃ 湿度50±5%
・使用機器:エアバック式接触圧測定器(エイエムアイ・テクノ社製)
・サンプリング周波数:5Hz
・測定回数:各3回ずつ
・測定点の特定:測定点3は電極直下、測定点1-3距離83mm、測定点3-5間距離106mm、測定点5-8間距離212mm、測定点2は測定点1および3から等距離の位置、測定点4は測定点3および5から等距離の位置、測定点8-7間距離、測定点7-6間距離、及び測定点6-5間距離は等距離
【0057】
下記表1には、衣服圧(kPa)を3回測定した結果の平均値を示しており、図12では、それをグラフ化している。
【表1】
【0058】
表1および図12に示されるように、電極直下(測定点3)の衣服圧は、弾性部材を備えていない比較例1に比べて弾性部材を備えた実施例1~3の方が高くなっている。また、実施例1~3は弾性部材が厚いほど測定点3の衣服圧が高くなっている。実施例1~3では、電極直下(測定点3)の衣服圧は比較例2、3と同等であるが、それ以外の測定点における衣服圧は、比較例2、3のそれよりも低くなっており、実施例1~3の方が比較例2~3よりも、電極直下の測定点3の衣服圧(A)と、それ以外の測定点における衣服圧(B)の平均値(b)との比(=衣服圧(A)/衣服圧(B)の平均値(b))が大きい。このことから、実施例1~3の生体信号取得用衣服は、比較例2~3の生体信号取得用衣服よりも着心地が良いことがわかる。また、実施例1~3の測定点3における衣服圧は、比較例2,3の測定点3における衣服圧と同等の値であるので、生体情報を精度良く取得できることが分かる。
【0059】
なお、比較例2~3の生体信号取得用衣服について、測定点3における衣服圧が他の測定点よりも高くなっている理由は、電極3の材料である導電性繊維の織物が衣服本体生地よりも硬く伸縮性がないこと、および、衣服全体の締め付け力と衣服本体生地と電極との間に配置されたクッション層によるものと推察される。
【0060】
(官能試験)
実施例1~3、比較例2の生体信号取得用衣服について、下記の条件にて官能性試験を行った。
・官能検査法:シェッフェの一対比較法(中屋の変法)
・評価方法:試料を着用し,静止時における部位別の評価と動作時における総合評価
・評価尺度:7段階
・評価試技:静止立位、肩の外転、側屈、前屈、回旋
・実験環境:室温23±0.5℃ 湿度50±5%
・被験者:20代男性 7名
・評価形容語:(1)部位別 圧迫感がない、(2)総合 動きやすい 肌触りがいい
評価部位は、図13に示す、胸部81, 電極部82, 腹部83, 側面部84, 背面部85である。
【0061】
図14に示すように、電極部82を含むいずれの評価部位においても、圧迫感に関する評価について、人間の感覚では著しい差があることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の生体信号取得用衣服は、着心地の良さと生体情報を精度良く取得することを両立できる。故に、コンプレッションタイプのウェアを嫌う高齢者、子供、傷病人等に適している。
【符号の説明】
【0063】
1 生体信号取得用衣服
2 衣服本体
3 電極
4 生体信号伝送部
5 コネクタ
6 生体信号受信装置
7 保持部材
10 弾性部材
51 コネクタの接続部
52 コネクタの固定部
61 生体信号受信装置の接続部
71 収容部
201 衣服本体生地
201a メッシュホール部分
201b 繊維部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14