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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】ポール
(51)【国際特許分類】
   F16B 7/14 20060101AFI20240903BHJP
   E04H 15/60 20060101ALI20240903BHJP
   A45B 9/00 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
F16B7/14 M
F16B7/14 F
E04H15/60
A45B9/00 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022121578
(22)【出願日】2022-07-29
(65)【公開番号】P2024018320
(43)【公開日】2024-02-08
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】510132510
【氏名又は名称】株式会社UACJ押出加工
(73)【特許権者】
【識別番号】000107538
【氏名又は名称】株式会社UACJ
(73)【特許権者】
【識別番号】518430030
【氏名又は名称】ディスカバリー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510237147
【氏名又は名称】株式会社加藤製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星野 一馬
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 朗
(72)【発明者】
【氏名】須山 友之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅規
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-173312(JP,A)
【文献】特表2016-530458(JP,A)
【文献】実公昭32-007173(JP,Y1)
【文献】特開2002-136315(JP,A)
【文献】実開昭57-035506(JP,U)
【文献】特公昭30-004979(JP,B1)
【文献】特開2009-250286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 7/14
E04H 15/60
A45B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の断面形状を有する筒状とされた2本以上のポール部材と、前記ポール部材の2本を連結するための連結ユニットと、を含んで構成されるポールであって、
前記連結ユニットは、2本の前記ポール部材の各々の端部に取り付けられる一対の連結具からなり、一対の前記連結具が互いに係合することで、2本の前記ポール部材を連結するものとされ、
前記連結具の各々は、
一端に、他方の前記連結具に係合する係合部を、他端に、前記ポール部材の端部に挿入される部分であって中空状で拡径可能な拡径部を有する連結具本体と、
前記拡径部の内部に嵌り入る嵌入部材と、
前記嵌入部材を前記拡径部の内部に入り込ませるように、前記連結具本体と前記嵌入部材とを締結する締結具と、
を備え、
前記拡径部の内面と前記嵌入部材の外面との少なくとも一方がテーパ状とされており、
前記締結具が締められて前記嵌入部材が前記拡径部に入り込んだ状態において、前記拡径部が拡径して前記ポール部材に内接し、前記連結具が前記ポール部材に取り付けられ
前記締結具は、ボルトと、前記嵌入部材に形成されたねじ穴と、からなり、
前記係合部には、前記一端に開口して前記ボルトを挿入する挿入穴と、前記挿入穴の底面に前記拡径部の内部に連通する連通孔と、が形成され、
前記ボルトは、前記連通孔を挿通して前記嵌入部材の前記ねじ穴に螺合しており、締められることで、前記嵌入部材を前記拡径部の内部に入り込ませるものとされた、ポール。
【請求項2】
前記ポール部材は、円筒状のものとされ、
前記拡径部は、前記他端側に開口するスリットが形成され、
前記嵌入部材の外面には、前記スリットに入り込む突起が形成されている、請求項1に記載のポール。
【請求項3】
一対の前記連結具の一方は、前記係合部が、雄ねじとされるとともに、一対の前記連結具の他方は、前記係合部が、雌ねじとされており、
前記一対の連結具は、前記雄ねじと前記雌ねじとが螺合させられることで、互いに係合する、請求項1または請求項2に記載のポール。
【請求項4】
前記連結具本体は、前記拡径部より前記一端側の部分に、外側に向かって突出するフランジ部を備え、
前記フランジ部は、前記ポール部材の端面に接する、請求項1または請求項2に記載のポール。
【請求項5】
前記フランジ部は、前記ポール部材の長さ方向からの視点において、外形形状が、前記ポール部材の外形形状と一致する、請求項4に記載のポール。
【請求項6】
一対の前記連結具のいずれかの前記係合部に係合可能とされ、他の部材を接続するための接続部を有するトップ部材を含んで構成される、請求項1または請求項2に記載のポール。
【請求項7】
一対の前記連結具のいずれかの前記係合部に係合可能とされ、当該ポールの下端を形成するボトム部材を含んで構成される、請求項1または請求項2に記載のポール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2本以上のポール部材を連結してなるポールに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献には、2本のポール部材を連結するための連結具が記載されている。下記特許文献1に記載の連結具は、1本のポール部材の一端に外周にねじ部を有する支持体を結合し、もう1本のポール部材の内部に、支持体のねじ部が螺合させられることで押圧部を拡径する押圧ユニットを設けた構成とされている。また、下記特許文献2に記載の連結具(ロッキング装置)は、ロッキングチップの一端には係止用環状フランジが形成されるとともに、ポールを順次連結するため、他端にはゴム紐結合用孔が形成され、ポールの内面には突起が形成され、この突起と結合されるロッキングチップの外周面にはゴム紐結合用孔の中心と一致するV形の凹溝が形成され、この外周面にはガイド溝が形成された構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2010-511849号公報
【文献】登録実用新案第3047516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の技術では、2本のポール部材の連結・取り外しを行うたびに、連結具の押圧部が弾性変形を繰り返すことになり、連結具の耐久性が問題となる。また、上記特許文献1に記載の技術では、ポール部材に支持体を結合させるために、ポール部材自体に加工を施す必要があると考えられる。また、上記特許文献2に記載の技術でも、ロッキングチップをポール部材に係合させるために、内面に突起を形成した構造となっている。つまり、ポール部材に加工を施すことにより、その耐久性は低下する虞がある。
【0005】
本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、2本以上のポール部材を連結する構成のポールの耐久性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のポールは、
一定の断面形状を有する筒状とされた2本以上のポール部材と、前記ポール部材の2本を連結するための連結ユニットと、を含んで構成されるポールであって、
前記連結ユニットは、2本の前記ポール部材の各々の端部に取り付けられる一対の連結具からなり、一対の前記連結具が互いに係合することで、2本の前記ポール部材を連結するものとされ、
前記連結具の各々は、
一端に、他方の前記連結具に係合する係合部を、他端に、前記ポール部材の端部に挿入される部分であって中空状で拡径可能な拡径部を有する連結具本体と、
前記拡径部の内部に嵌り入る嵌入部材と、
前記嵌入部材を前記拡径部の内部に入り込ませるように、前記連結具本体と前記嵌入部材とを締結する締結具と、
を備え、
前記拡径部の内面と前記嵌入部材の外面との少なくとも一方がテーパ状とされており、
前記締結具が締められて前記嵌入部材が前記拡径部に入り込んだ状態において、前記拡径部が拡径して前記ポール部材に内接し、前記連結具が前記ポール部材に取り付けられることを特徴とする。
【0007】
本願に開示のポールは、互いに連結する2本のポール部材の各々の端部に、同一の構造あるいは係合部のみ異なる構造の連結具を取り付けて、それら連結具の係合部同士を係合させることで、2本のポール部材が連結される。そして、2本のポール部材の各々に対して連結具を取り付ける構造は、連結具本体の拡径部を拡径させることによって生じる拡径部とポール部材との間の大きな摩擦力のみによるものである。そのため、本願に開示のポールは、ポール部材自体には、何の加工を施す必要もなく、ポール部材の耐久性の向上を図ることができる。また、ポール部材に対して連結具を取り付ける構造は、ポール部材とポール部材とを連結する構造とは、別に設けられている。ポール部材に対して連結具を取り付ける作業は、ポール部材とポール部材とを連結する作業に比較して、行われる頻度は低い。つまり、本願に開示のポールは、拡径部が拡径することによる弾性変形が繰り返し行われることがなく、連結具の耐久性を向上させることができる。したがって、本願に開示のポールは、耐久性,信頼性に優れたものとなる。なお、本願に開示のポールは、種類が特に限定されるものでなく、例えば、テントやタープの支柱、登山や歩行補助用のステッキ(ストック)等、種々のものに採用可能である。
【0008】
本願に開示のポールは、締結具による締結によって、嵌入部材が連結具本体に対して長さ方向に移動するのみの構造とすることができる。つまり、本願に開示のポールにおいて、ポール部材は、円筒状のものだけでなく、断面が長円や多角形状の筒状のものとすることもできる。また、一対の連結具同士が係合する構造は、特に限定されない。例えば、雄ねじと雌ねじによる螺合、単に嵌め合わせる嵌合、爪による係止、突起と溝とを嵌め合わせるもの等を採用することができる。
【0009】
上記構成において、前記締結具は、ボルトと、前記嵌入部材に形成されたねじ穴と、からなり、前記係合部には、前記一端に開口して前記ボルトを挿入する挿入穴と、前記挿入穴の底面に前記拡径部の内部に連通する連通孔と、が形成され、前記ボルトは、前記連通孔を挿通して前記嵌入部材の前記ねじ穴に螺合しており、締められることで、前記嵌入部材を前記拡径部の内部に入り込ませるものとされた構成とすることができる。
【0010】
この構成のポールは、嵌入部材をナットとして機能させるため、部材点数を減らすことができる。また、ボルトを連結具本体の挿入穴内に入れてしまうため、一対の連結具同士を係合させると、それらのボルトを隠蔽することができ、2本のポール部材を連結した状態において、すっきりとした外観を実現できる。また、ボルトが隠蔽されるため、風雨等に晒されることがなく、ボルトおよびねじ穴を保護することができる。
【0011】
上記構成において、前記ポール部材は、円筒状のものとされ、前記拡径部は、前記他端側に開口するスリットが形成され、前記嵌入部材の外面には、前記スリットに入り込む突起が形成されている構成とすることができる。
【0012】
この構成のポールは、拡径部がスリットによって拡径し易い。また、この構成のポールは、円筒状のものとされているため、ボルトによる締結を行う際に嵌入部材の連結具本体に対する周り止めが必要であるが、その周り止めが、拡径用のスリットを利用して実現されており、連結具本体に対して、周り止め用の加工を施す必要がない。
【0013】
上記構成において、一対の前記連結具の一方は、前記係合部が、雄ねじとされるとともに、一対の前記連結具の他方は、前記係合部が、雌ねじとされており、前記一対の連結具は、前記雄ねじと前記雌ねじとが螺合させられることで、互いに係合する構成とすることができる。
【0014】
この構成のポールは、一対の連結具同士を係合させる構造が、ねじによる螺合とされている。この構成のポールは、2本のポールを比較的堅固に連結することができる。また、この構成のポールは、例えば、一端に雄ねじの連結具を取り付けるとともに、他端に雌ねじの連結具を取り付けた状態のポール部材を複数用意しておけば、ポール部材とポール部材との連結や延長を容易に行うことができる。
【0015】
上記構成において、前記連結具本体は、前記拡径部より前記一端側の部分に、外側に向かって突出するフランジ部を備え、前記フランジ部は、前記ポール部材の端面に接する構成とすることができる。
【0016】
この構成にポールは、連結具がポール部材の内部に入り込んでしまう事態を回避するとともに、ポール部材に対する連結具の長さ方向に位置決めを容易に行うことができる。また、このフランジ部によって、ポールの端面を保護することができる。
【0017】
上記構成において、前記フランジ部は、前記ポール部材の長さ方向からの視点において、外形形状が、前記ポール部材の外形形状と一致する構成とすることができる。
【0018】
この構成のポールは、2本のポール部材を連結した際に、外側に突出する部分がなく、外観性に優れたものとなる。
【0019】
上記構成において、一対の前記連結具のいずれかの前記係合部に係合可能とされ、他の部材を接続するための接続部を有するトップ部材を含んで構成することができる。
【0020】
この構成のポールにおいて、トップ部材は、例えば、テントの屋根部材に接合するための部材や、タープのハトメに挿入する部材、ストックの把持部材等が相当する。この構成のポールによれば、ポール部材および連結具を、種々のもの兼用することができる。
【0021】
上記構成において、一対の前記連結具のいずれかの前記係合部に係合可能とされ、当該ポールの下端を形成するボトム部材を含んで構成することができる。
【0022】
この構成のポールは、ポール部材取り付けられた連結具の係合部をしっかりと保護することができる。また、この構成のポールによれば、下端に用いるポール部材との区別がなく、ポールの組み立て作業を簡便に行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、2本以上のポール部材を連結する構成のポールの耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態であるポールの正面図
図2】ポールをパーツごとに分解した正面図
図3】2本のポールユニットが組み付けられた部分を拡大して示す断面図
図4】2本のポールユニットを取り外した状態の断面図
図5】連結ユニットの分解断面図
図6】第1連結具の分解斜視図
図7】第2連結具の分解斜視図
図8】ポールの下端を拡大して示す断面図
図9】ポールの上端を拡大して示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態を図1から図9を用いて説明する。本実施形態では、タープやテントの支柱に用いられるポール10を例示する。ポール10は、比較的大型のタープに用いられ、図1および図2に示すように、複数のパーツを連結して、比較的長尺な円柱状の支柱を形成するものである。具体的には、同一の構成とされて本ポール10を構成する主体となる複数(本実施形態においては2本)のポールユニット12と、本ポール10の上端部を形成するトップポールユニット14と、本ポール10の先端をなすトップ部材16と、本ポール10の下端をなすボトム部材18と、からなる。
【0026】
ポールユニット12の各々は、上端に雄ねじ12aが設けられるとともに、下端に雌ねじ12bが設けられている。つまり、2本のポールユニット12は、一方のポールユニット12の雄ねじ12aと、他方のポールユニット12の雌ねじ12bとが螺合されることで、組み付けられる構成となっている。なお、本発明は、これら2本のポールユニット12を組み付ける構造に特徴を有するものであるため、その構造については、後に詳しく説明することとする。
【0027】
トップポールユニット14は、自身の長さを調整可能なものとされている。具体的には、トップポールユニット14は、ポールユニット12と同一の長さで同一外径の円筒状の外筒20と、外筒20の内部に挿抜可能に設けられた円筒状の内筒22とを有している。外筒20には、長さ方向に等間隔で並ぶ複数の貫通孔20aが形成されている。一方、内筒22には、長さ方向における下端側の部分に、外筒20の貫通孔20aのいずれかに嵌り合うプッシュ式のボタン22aが配されている。このボタン22aは、径方向外側に向かって付勢された構成とされており、貫通孔20aに嵌合した状態から押し込まれることによって、貫通孔20aに対する嵌合が解除されて、長さ方向における外筒20と内筒22との相対移動が可能となる。そして、ボタン22aが嵌合される貫通孔20aが変更されることで、トップポールユニット14の長さが変更される。ひいては、本ポール10の長さが変更されるのである。なお、図1および図2に示す状態は、最上部にある貫通孔20aにボタン22aが嵌合して、長さが最も長くされた状態を示している。また、このトップポールユニット14の下端をポールユニット12に組み付ける構造も、2本のポールユニット12を組み付ける構造と同一である。
【0028】
次に、図3から図7を用いて、ポールユニット12およびトップポールユニット14を組み付ける構造について、詳しく説明する。まず、ポールユニット12は、一定の外径および内径とされた円筒状のポール部材30を主体とするものである。このポール部材30は、6000系アルミニウム合金からなる。そして、ポール部材30は、押出成形によって成形され、表面にアルマイト処理が施されたものである。なお、トップポールユニット14の外筒20は、ポール部材30に対して複数の貫通孔20aを形成したものとなっている。
【0029】
そして、本実施形態のポール10は、図3に示すように、上記2本のポール部材30を連結するための連結ユニット32を含んで構成されている。この連結ユニット32は、一対の連結具である第1連結具34と第2連結具36とからなる。図4に示すように、第1連結具34が2本のポール部材30の一方に取り付けられ、第2連結具36が2本のポール部材30の他方に取り付けられた状態とされ、それら第1連結具34と第2連結具36とが係合させられることで、図3に示すように、2本のポール部材30が連結される。
【0030】
第1連結具34と、第2連結具36とは、同じ構成要素からなり、類似する構造となっている。第1連結具34および第2連結具36は、図5から図7に示すように、いずれも3つの部材である連結具本体40,嵌入部材42,ボルト44からなる。第1連結具34と第2連結具36において、嵌入部材42およびボルト44は、完全に同一の部材である。それに対して、連結具本体40は、それの一部、具体的には、互いに係合させる部分の構造が相違するものとなっている。以下の説明において、第1連結具34の連結具本体40を、第1連結具本体40Aと呼び、第2連結具36の連結具本体40を、第2連結具本体40Bと呼ぶこととする。
【0031】
第1連結具本体40Aおよび第2連結具本体40Bは、形状は相違するものの、構成要素は同一であり、いずれも、一端が、相対する連結具に係合する部分である係合部50とされ、他端が、ポール部材30の内部に挿入される部分であって中空状で拡径可能な拡径部52とされている。そして、第1連結具本体40Aの係合部50が、雄ねじ部50Aとされ、第2連結具本体40Bの係合部50が雌ねじ部50Bとされている。
【0032】
以下に、第1連結具本体40A,第2連結具本体40Bの各々について、順に詳しく説明する。まず、第1連結具本体40Aは、図5および図6に示すように、他端側の拡径部52が概して円筒状とされている。この拡径部52の外径は、ポール部材30の内径より僅かに小さくされており、ポール部材30の端部に対して、スムースに挿入できる。この拡径部52には、長さ方向に延びて他端(図5における下端)に開口する複数(本実施形態においては6本)のスリット60が、周方向において等間隔で形成されている。つまり、この複数のスリット60によって、拡径部52は、拡径可能とされている。また、拡径部52の内周面は、他端側に向かうにつれて内径が大きくなるテーパ部62とされている。
【0033】
一端側の雄ねじ部50Aは、拡径部52の外径より小さな外径とされ、その外周面に雄ねじが形成されている。なお、この雄ねじ部50Aには、一端(図5における上端)に開口して、前述したボルト44を挿入可能な挿入穴64が形成されている。そして、この挿入穴64の底面64aには、拡径部52の内部に連通する連通孔66が形成されている。なお、この連通孔66の内径は、ボルト44の頭部44aの外径より小さく、ボルト44の雄ねじ部44bの外径より大きくされている。つまり、挿入穴64の底面64aは、ボルト44の頭部44aが当接する座面部として機能する。
【0034】
第1連結具本体40Aは、拡径部52より係合部50(雄ねじ部50A)側に、詳しく言えば、雄ねじ部50Aの基端に、径方向外側に向かって広がるフランジ部68を有している。このフランジ部68は、その外径がポール部材30の外径と一致する大きさとされている。つまり、第1連結具本体40Aをポール部材30の端部に挿入すると、このフランジ部68がポール部材30の端面に当接することになり、第1連結具34のポール部材30に対する長さ方向における位置が定まるようになっている。そして、このフランジ部68がポール部材の端面に当接した状態においては、第1連結具本体40Aの係合部50である雄ねじ部50Aのみが突出する状態となるのである。
【0035】
一方、第2連結具本体40Bは、全体が、ポール部材30の内径より僅かに小さな外径を有し、概して円筒形状のものとされている。他端(図5における上端)側の拡径部52は、第1連結具本体40Aと同一の形状であり、複数(第1連結具本体40Aと同様に6本)のスリット70が形成されるとともに、内周面は、他端側に向かうにつれて内径が大きくなるテーパ部72とされている。
【0036】
第2連結具本体40Bの一端(図5における下端)側の部分は、ボルト44を挿入するための挿入穴74が形成されていることで、円筒状とされている。そして、その内周面に雌ねじが形成されることで、第2連結具本体40Bの一端は、雌ねじ部50Bとされているのである。なお、この挿入穴74の底面74aには、第1締結具本体40Aと同様に、拡径部52の内部に連通し、ボルト44の雄ねじ部44bを挿通させる連通孔76が形成されている。
【0037】
また、第2連結具本体40Bも、第1連結具本体40Aと同様に、フランジ部78を有している。第2連結具本体40Bにおいては、拡径部52より係合部50(雌ねじ部50B)側であることに変わりはないが、長さ方向における端(一端,図5における下端)にフランジ部78が形成されている。つまり、第2連結具本体40Bをポール部材30の端部から挿入すると、第2連結具本体40Bは、このフランジ部78を除くほぼ全ての部分が、ポール部材30の内部に挿入された状態となるのである。
【0038】
次に、前述した嵌入部材42の構造について説明する。嵌入部材42は、図5から図7に示すように、円錐台形状のものとされている。つまり、嵌入部材42は、外周面がテーパ状に形成されたものとなっている。なお、この嵌入部材42は、相対的に外径の小さな方の端部である小径端部42aの外径が、拡径部52の他端における内径より小さく、相対的に外径の大きな方の端部である大径端部42bの外径が、拡径部52の他端における内径より大きくされている。また、嵌入部材42の外周面には、軸線を挟んで互いに反対側に位置するように、一対の突起80が形成されている。この突起80は、前述した拡径部52に形成されたスリット60,70の幅より小さなものとされている。また、嵌入部材42には、軸線と同軸的に貫通形成され、内周面に雌ねじが形成されたねじ穴82が形成されている。
【0039】
次に、第1連結具34と第2連結具36のポール部材30への取付方法について説明する。第1連結具本体40Aおよび第2連結具本体40Bにおいて、上記のような構造の嵌入部材42を、拡径部52に対して小径端部42a側から、一対の突起80をスリット60,70に合わせるようにして挿入する。そして、挿入穴64,74からボルト44を挿入し、ねじ穴82に螺合させる。第1連結具34および第2連結具36をポール部材30に挿入する前においては、ボルト44の嵌入部材42に対する螺合は、拡径部52を拡径させない程度の仮止め状態とする。
【0040】
そして、第1連結具本体40A,嵌入部材42,ボルト44を仮組みした第1連結具34、あるいは、第2連結具本体40B,嵌入部材42,ボルト44を仮組みした第2連結具36を、ポール部材30に対して、フランジ部68,78が当接するまで挿入する。次いで、工具を用いてボルト44を締め付ける。突起80とスリット60,70とが係合していることにより、嵌入部材42は回転が禁止されており、嵌入部材42は、一端側に向けて移動すること、換言すれば、拡径部52の内部に入り込むことになる。そして、拡径部52のテーパ部62,72と、嵌入部材42のテーパ状とされた外周面とが合わさることにより、拡径部52が拡径し、ポール部材30の内周面に内接することになる。
【0041】
したがって、本実施形態のポール10において、第1連結具34あるいは第2連結具36は、ポール部材30に対して、拡径部52とポール部材30との間の大きな摩擦力によって、固定されるのである。
【0042】
なお、第1連結具34,第2連結具36を構成する連結具本体40および嵌入部材42は、5000系アルミニウム合金からなる。これら連結具本体40および嵌入部材42は、押出成形後に切削加工されて形成され、表面にアルマイト処理が施されたものである。また、ボルト44は、ステンレス製のものとされている。先に説明したように、ポール部材30は6000系アルミニウム合金から形成されており、弾性変形する拡径部52を有する第1連結具34および第2連結具36に比較して、より強度の高いものとなっている。つまり、ポール部材30は、内面において拡径部52の拡径をしっかりと抑えて、連結具34,36の取り付け状態を維持することができる。
【0043】
先に説明したポールユニット12は、一方の端部(図2における上端)に第1連結具34が取り付けられるとともに、他方の端部に第2連結具36が取り付けられたものとなっている。それにより、ポールユニット12の上端に雄ねじ12aが設けられ、下端に雌ねじ12bが設けられたものとなっている。なお、本実施形態のポール10の下端をなすボトム部材18は、図8に示すように、ポール10の脚となる脚部18aと、その脚部18aから上方に突出して形成された雄ねじ部18bとを有している。この雄ねじ部18bは、第1連結具34の雄ねじ部50Aの同じサイズのものとされており、ポールユニット12の下端に取り付けられた第2連結具36の雌ねじ部50Bに対して螺合する形で取り付け可能とされている。
【0044】
また、トップポールユニット14は、外筒20の一方側の端部(図2における下端)に、第2連結具36が固定されている。そして、外筒20の上端からは、内筒22が延び出している。その内筒22の上端に、ポール10の先端をなすトップ部材16が取り付けられるのである。この内筒22の上端には、第2連結具36と同一の構成で、内筒22の内径に合わせたサイズの連結具90が取り付けられている。つまり、連結具90は、係合部である雌ねじ部92と拡径部94とを有する連結具本体96と、嵌入部材98と、ボルト44と、から構成されたものとなっている。
【0045】
トップ部材16は、布状のタープ本体に設けられたハトメに接続するための部材であり、ハトメに挿入する軸体100と、軸体100の先端に形成された雄ねじ部100aに螺合可能なキャップ102と、からなる。軸体100には、さらに、下方に延び出すようにして雄ねじ部100bが形成されている。この雄ねじ部100bを、内筒22の上端に取り付けられた連結具90の雌ねじ部92に螺合させることで、トップ部材16を、トップポールユニット14の上端に取り付けることが可能とされている。
【0046】
以上のように、本実施形態のポール10は、互いに連結する2本のポール部材30の各々の端部に、同一の構成の第1連結具34と第2連結具36を、それぞれ取り付けて、それら連結具34,36の係合部50同士を係合させることで、2本のポール部材30が連結される。そして、2本のポール部材30の各々に対して連結具34,36を取り付ける構造は、連結具本体40の拡径部52を拡径させることによって生じる拡径部52とポール部材30との間の大きな摩擦力のみによるものである。そのため、本実施形態のポール10は、ポール部材30自体には、何の加工を施す必要もなく、ポール部材30の耐久性の向上を図ることができる。また、本実施形態のポール10は、ポール部材30に対して連結具34,36を取り付ける構造は、ポール部材30とポール部材30とを連結する構造(係合部50)とは、別に設けられている。そして、ポール部材30に対して連結具34,36を取り付ける作業(拡径部52を拡径させること)は、ポール部材30とポール部材30とを連結する作業(雄ねじ部50Aと雌ねじ部50Bとを螺合させること)に比較して行われる頻度は低い、さらに言えば、ほぼ最初に行われるのみである。つまり、本実施形態のポール10は、拡径部52の拡径による弾性変形が繰り返し行われることがなく、連結具34,36の耐久性を向上させることができる。したがって、本実施形態のポール10は、耐久性,信頼性に優れたものとなる。
【0047】
本実施形態のポール10においては、連結具本体40と嵌入部材42を締結する締結具が、ボルト44とナットとして機能する嵌入部材42とで構成されるため、部材点数を減らすことができる。また、ボルト44を連結具本体40の挿入穴64,74の内部に入れてしまうため、一対の連結具34,36同士を係合させると、それらのボルト44を隠蔽することができ、2本のポール部材30を連結した状態において、すっきりとした外観を実現できる。また、ボルト44が隠蔽されるため、風雨等に晒されることがなく、ボルト44および嵌入部材42のねじ穴82を保護することができる。
【0048】
また、本実施形態のポール10は、ポール部材30とポール部材30とを連結した状態において、それらポール部材30の間には、一対の連結具34,36のフランジ部68,78が重なって視認できるのみである。このフランジ部68,78は、ポール部材30の外形形状と一致しているため、本実施形態のポール10は、外側に突出する部分もなく、外観性に優れたものとなる。
【0049】
<他の実施形態>
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。例えば、次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0050】
(1)上記実施形態のポール10は、トップポールユニット14が伸縮可能な構成とされていたが、ポール部材の長さが互いに異なるものや、本実施形態におけるポール部材30より短めのものを用意し、連結する本数で長さを調整する構成としてもよい。そのような構成とすれば、ポール部材自体に加工を施す必要がなく、より耐久性の向上を図ることができる。
【0051】
(2)上記実施形態においては、一対の連結具34,36は、係合部50が雄ねじ部50A,雌ねじ部50Bとされ、互いに螺合させる構成とされていたが、それに限定されない。例えば、単に嵌め合わせる嵌合する構造としたり、爪等によって掛止する構造としたり、突起と溝とを嵌め合わせる構造等の種々の係合する構造を採用することができる。
【0052】
(3)上記実施形態においては、締結具は、嵌入部材42をナットとして機能させる構成とされていたが、別にナット部材を用意してもよい。
【0053】
(4)上記実施形態においては、拡径部52の内面と、嵌入部材42の外周面との両者がテーパ状とされていたが、いずれか一方のみであっても良い。
【0054】
(5)上記実施形態においては、拡径部52にスリット60,70が設けられていたが、そのスリット60,70は必須ではない。例えば、連結具本体40を形成している素材に樹脂等を用いて、拡径部全体が拡径するような構成とすることもできる。
【0055】
(6)上記実施形態においては、ポール部材30が円筒状のものとされていたが、それに限定されない。例えば、断面が楕円や多角形の筒状のものとすることができる。本願に開示のポールを構成する連結具は、連結具本体に対して嵌入部材が軸線方向に相対移動することで拡径部の拡径を行う構成であるため、ポール部材がどのような断面形状であっても、問題なく取り付けることができる。なお、ポール部材が、円形以外の断面形状であれば、ボルト44の締結時に、連結具本体と嵌入部材とが相対回転しないため、本実施形態に用いられていたスリット60、70と突起80とからなる周り止めが必要ない。
【0056】
(7)上記実施形態においては、トップ部材16がタープに接続するための接続部を有するものとされていたが、その他の接続部を有するトップ部材を取り付けることで、タープの支柱以外にも利用可能である。例えば、テントの屋根を構成する部材への接続部を有するトップ部材を取り付けて、テントの支柱に利用することもできる。
【0057】
(8)上記実施形態において、本発明のポールは、タープやテントに提供されるものとされていたが、それに限定されず、本発明のポールは、登山や歩行補助用のステッキ(ストック)等、ポール状のものを連結する構成のものに広く採用可能である。
【0058】
(9)したがって、上記実施形態においては、ポール部材30とボルト44を除く連結ユニット32を構成する連結具本体40および嵌入部材42は、アルミニウム合金から成形されていたが、それらを成形する材料は、特に限定されない。他の金属であってもよく、樹脂等であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
10…ポール、16…トップ部材、18…ボトム部材、30…ポール部材、32…連結ユニット、34…第1連結具、36…第2連結具、40…連結具本体、40A…第1連結具本体、40B…第2連結具本体、42…嵌入部材〔締結具〕、44…ボルト〔締結具〕、50…係合部、50A…雄ねじ部、50B…雌ねじ部、52…拡径部、60…スリット、62…テーパ部、64…挿入穴、64a…底面、66…連通孔、68…フランジ部、70…スリット、72…テーパ部、74…挿入穴、74a…底面、76…連通孔、78…フランジ部、80…突起、82…ねじ穴
図1
図2
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図7
図8
図9