(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】レーダ装置
(51)【国際特許分類】
G01S 13/34 20060101AFI20240903BHJP
G01S 13/931 20200101ALI20240903BHJP
G01S 13/86 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
G01S13/34
G01S13/931
G01S13/86
(21)【出願番号】P 2023531409
(86)(22)【出願日】2022-03-11
(86)【国際出願番号】 JP2022011145
(87)【国際公開番号】W WO2023276301
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-10-31
(31)【優先権主張番号】P 2021107061
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】村田 崇洋
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-023595(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0018594(US,A1)
【文献】国際公開第2020/241235(WO,A1)
【文献】特開2005-338004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - G01S 7/42
G01S 7/52 - G01S 7/64
G01S 13/00 - G01S 15/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の速度を取得する車両速度取得部と、
前記車両の進行方向に直交する方向を含む領域に向けて送信信号を送信する送信部と、
前記送信部によって送信された前記送信信号の反射信号を受信する受信部と、
前記受信部によって受信された前記反射信号に基づいて、前記車両速度取得部によって取得された前記車両の速度に応じた数の、疑似受信信号を生成する疑似信号生成部と、
前記受信部によって受信された前記反射信号と、前記疑似信号生成部によって生成された前記疑似受信信号とに基づいて、前記車両の進行方向に直交する方向に存在する物体までの距離を検出する距離検出部と
を備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
前記送信部は、
所定の距離検出精度を満たす基準送信
チャープ信号数より少ない
チャープ信号数の前記送信信号を送信し、
前記疑似信号生成部は、
前記車両速度取得部によって取得された前記車両の速度に応じた前記基準送信
チャープ信号数と、前記送信信号の
チャープ信号数との差数の前記疑似受信信号を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記基準送信
チャープ信号数は、前記車両速度取得部によって取得された前記車両の速度が低いほど多い
ことを特徴とする請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記距離検出部は、
前記車両との相対速度がゼロである前記物体までの距離を検出する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記疑似信号生成部は、
前記受信部によって受信された前記反射信号に基づいて、統計的演算を用いて、前記疑似受信信号を生成する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記距離検出部によって検出された前記物体までの距離に基づいて、前記車両の周囲に存在する駐車可能な駐車空間を検出する駐車空間検出部
を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記距離検出部によって検出された複数の前記物体までの距離に基づいて、前記駐車空間検出部によって検出された前記駐車空間の画像を生成する駐車空間画像生成部
を備えることを特徴とする請求項6に記載のレーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、探索範囲内に光を照射して、その物体による反射光を受光することにより、物体までの距離を検出するレーダ装置に関し、消費電力を低減することを目的として、自車両が指定作動を行っている場合、光の受光回数および発光回数を減らす技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、光の受光回数および発光回数を減らすために、物体までの距離の検出精度が低下する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係るレーダ装置は、車両の速度を取得する車両速度取得部と、車両の進行方向に直交する方向を含む領域に向けて送信信号を送信する送信部と、送信部によって送信された送信信号の反射信号を受信する受信部と、受信部によって受信された反射信号に基づいて、車両速度取得部によって取得された車両の速度に応じた数の、疑似受信信号を生成する疑似信号生成部と、受信部によって受信された反射信号と、疑似信号生成部によって生成された疑似受信信号とに基づいて、車両の進行方向に直交する方向に存在する物体までの距離を検出する距離検出部とを備える。
【発明の効果】
【0006】
一実施形態に係るレーダ装置によれば、車両の周囲の物体までの距離を高精度に検出でき、且つ、信号の送受信に係る消費電力を抑制できることが可能なレーダ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態に係るレーダ装置のシステム構成図
【
図2】一実施形態に係るレーダ装置が備えるレーダ距離検出部の構成を示す図
【
図3】一実施形態に係るレーダ装置による処理の手順の一例を示すフローチャート
【
図4】一実施形態に係るレーダ装置が備えるレーダ距離検出部による距離検出処理の手順の一例を示すフローチャート
【
図5】基準送信
チャープ信号数の算出に用いられる送信時間とフレーム周期との関係を示す図
【
図6】1検出周期における基準送信
チャープ信号数Nと送信
チャープ信号数Mとの関係を示す図
【
図7A】一実施形態に係るレーダ装置によって送受信される信号の一例を示す図
【
図7B】一実施形態に係るレーダ装置によって送受信される信号の一例を示す図
【
図7C】一実施形態に係るレーダ装置によって送受信される信号の一例を示す図
【
図8】一実施形態に係るレーダ装置による駐車空間画像の生成例を説明するための図
【
図9】一実施形態に係るレーダ装置によって生成された駐車空間画像の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
【0009】
(レーダ装置100のシステム構成)
図1は、一実施形態に係るレーダ装置100のシステム構成図である。
図1に示すように、レーダ装置100は、レーダ距離検出部101、カメラ距離検出部102、車速・座標検出部103、メモリ104、レーダ障害物マップ生成部105、カメラ障害物マップ生成部106、駐車空間検出部107、駐車空間画像生成部108、およびディスプレイ109を備える。
【0010】
レーダ距離検出部101は、レーダ波を用いて、車両の側方(「車両の進行方向に直交する方向」の一例)に存在する物体まで距離を検出する。
【0011】
カメラ距離検出部102は、カメラを用いて、車両の側方の画像を撮像し、当該画像に対する画像認識処理を行うことにより、車両の側方に存在する物体までの距離を検出する。
【0012】
車速・座標検出部103は、車両の速度および座標を取得する。例えば、車速・座標検出部103は、車両に搭載されている各種センサまたはECU等から、車両の速度および座標を取得する。すなわち、車速・座標検出部103は、「車両速度取得部」としての機能を有する。
【0013】
メモリ104は、レーダ距離検出部101によって検出された物体までの距離、カメラ距離検出部102によって検出された物体までの距離、ならびに、車速・座標検出部103によって検出された車両の速度および座標を格納する。
【0014】
レーダ障害物マップ生成部105は、レーダ距離検出部101によって検出された複数の距離(物体までの距離)に基づいて、レーダ障害物マップを生成する。レーダ障害物マップは、レーダ距離検出部101によって検出された、車両を中心とする車両の周辺領域における物体(障害物)の有無を、二次元のマトリクス状で示すものである。
【0015】
カメラ障害物マップ生成部106は、カメラ距離検出部102によって検出された複数の距離(物体までの距離)に基づいて、カメラ障害物マップを生成する。カメラ障害物マップは、カメラ距離検出部102によって検出された、車両を中心とする車両の周辺領域における物体(障害物)の有無を、二次元のマトリクス状で示すものである。
【0016】
駐車空間検出部107は、レーダ障害物マップ生成部105によって生成されたレーダ障害物マップと、カメラ障害物マップ生成部106によって生成されたカメラ障害物マップとに基づいて、車両の周囲に存在する駐車可能な駐車空間を検出する。例えば、駐車空間検出部107は、レーダ障害物マップおよびカメラ障害物マップに基づいて、車両の周辺領域において、車両を駐車するのに十分なサイズを有する矩形枠状の物体(障害物)が存在しないスペースを、駐車可能な駐車空間として検出する。
【0017】
駐車空間画像生成部108は、駐車空間検出部107によって検出された駐車空間の画像を生成する。例えば、駐車空間画像生成部108は、車両を中心とする車両の周辺領域を表す二次元画像を生成し、当該二次元画像において、駐車空間を所定の強調表示方法(例えば、矩形枠を表示させる等)によって強調表示することにより、駐車空間の画像を生成する。
【0018】
ディスプレイ109は、駐車空間画像生成部108によって生成された駐車空間の画像を表示する。
【0019】
(レーダ距離検出部101の構成)
図2は、一実施形態に係るレーダ装置100が備えるレーダ距離検出部101の構成を示す図である。
【0020】
図2に示すように、レーダ距離検出部101は、送信部210、受信部220、および信号処理部230を備える。
【0021】
送信部210は、車両の側方に向けて送信信号(レーダ波)を送信する。特に、送信部210は、一検出周期毎に、M個の送信チャープ信号を含む送信信号を送信する。但し、Mは、送信チャープ信号パラメータ算出部231によって算出された送信チャープ信号数(すなわち、所定の距離検出精度を満たす基準送信チャープ信号数Nより少ない数である送信チャープ信号数)である。
【0022】
具体的には、送信部210は、コントローラ211、変調器212、発振器213、増幅器214、および送信アンテナ215を備える。コントローラ211は、送信符号を生成する。変調器212は、コントローラ211によって生成された送信符号を周波数変調することによって、変調信号を生成する。発振器213は、変調器212によって生成された変調信号に応じた発振周波数の送信信号(例えば、FMCW波等のレーダ波)を生成する。増幅器214は、発振器213によって生成された送信信号の信号レベルを増幅する。送信アンテナ215は、増幅器214によって増幅された送信信号を空間に放射する。
【0023】
受信部220は、送信部210によって送信信号が送信される毎に、送信部210によって送信された送信信号の反射信号を受信する。すなわち、受信部220は、送信部210によってM個の送信チャープ信号を含む送信信号が送信されたことに応じて、M個の受信チャープ信号を含む反射信号を受信する。
【0024】
具体的には、受信部220は、受信アンテナ221、増幅器222、ミキサ223、およびA/D224を備える。受信アンテナ221は、空間から反射信号を受信する。増幅器222は、受信アンテナ221によって受信された反射信号を増幅する。ミキサ223は、送信信号と反射信号とを混合することによって位相検波し、中間周波数信号を生成する。A/D224は、ミキサ223によって生成された中間周波数信号を、アナログ信号からデジタル信号に変換するA/Dコンバータである。受信部220は、A/D224から出力された中間周波数信号(デジタル信号)を、信号処理部230へ出力する。
【0025】
なお、送信部210および受信部220は、例えば、車両の側方が信号の送受信方向となるように車両に設置されるレーダ送受信機100Aによって実現される。
【0026】
信号処理部230は、送信チャープ信号パラメータ算出部231、補完パラメータ算出部232、FFT部233、疑似信号生成部234、および距離検出部235を有する。
【0027】
送信チャープ信号パラメータ算出部231は、送信チャープ信号パラメータとして、基準送信チャープ信号数Nおよび送信チャープ信号数Mを算出する。基準送信チャープ信号数Nは、所定の距離検出精度を満たすのに必要な送信チャープ信号数(1検出周期毎の送信チャープ信号数)である。送信チャープ信号パラメータ算出部231は、車速・座標検出部103によって取得された車両の速度が低いほど、基準送信チャープ信号数Nにより大きい値を設定する。車両の速度が低いほど、車両と物体との相対速度が小さくなるため、分解能を高める必要があるからである。送信チャープ信号数Mは、実際に送信部210によって送信する送信チャープ信号数(1検出周期毎の送信チャープ信号数)である。
【0028】
補完パラメータ算出部232は、補完パラメータとして、疑似受信信号数Kおよび利用チャープ信号数Iを算出する。疑似受信信号数Kは、所定の距離検出精度を満たすのに必要な疑似受信信号の数である。すなわち、疑似受信信号数Kは、基準送信チャープ信号数N-送信チャープ信号数Mによって求められる。利用チャープ信号数Iは、M個の受信チャープ信号のうち、疑似受信信号の生成に利用する受信チャープ信号の数である。
【0029】
FFT部233は、受信部220によって受信された反射信号(具体的には、受信部220から出力される中間周波数信号)をフーリエ変換することによって、物体までの距離を示す距離データ(周波数スペクトル)を生成する。FFT部233は、送信部210が、M個の送信チャープ信号を含む送信信号を連続的に複数回送信し、受信部220がM個の受信チャープ信号を含む反射信号を連続的に複数回受信するのに応じて、複数の距離データを連続的に生成する。
【0030】
疑似信号生成部234は、受信部220によって受信された複数の受信チャープ信号を含む反射信号に基づいて、補完パラメータ算出部232によって算出された疑似受信信号数K(すなわち、車速・座標検出部103によって取得された車両の速度に応じた数)の、疑似受信信号を生成する。
【0031】
特に、疑似信号生成部234は、一検出周期毎に、車速・座標検出部103によって取得された車両の速度に応じた基準送信チャープ信号数Nと、送信部210による送信信号の送信チャープ信号数Mとの差数であるK個の疑似受信信号を生成する。
【0032】
また、疑似信号生成部234は、受信部220によって受信されたM個のチャープ信号を含む反射信号に基づいて、統計的演算を用いて、K個の疑似受信信号を生成する。
【0033】
距離検出部235は、受信部220によって受信されたM個の受信チャープ信号を含む反射信号と、疑似信号生成部234によって生成されたK個の疑似受信信号とに基づいて、車両の側方に存在する物体までの距離を検出する。具体的には、距離検出部235は、M個の受信チャープ信号とK個の疑似受信信号とに対してコヒーレント積分を行うことにより、車両の側方に存在する物体までの距離を検出する。
【0034】
(レーダ装置100による処理の手順の一例)
図3は、一実施形態に係るレーダ装置100による処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0035】
まず、車速・座標検出部103が、車両の速度および座標の取得を開始する(ステップS301)。例えば、車速・座標検出部103は、所定のサンプリング周期毎(例えば、1秒毎、0.5秒毎、等)に、車速センサ、位置センサ等を用いて、車両の速度および座標を取得する。
【0036】
次に、レーダ装置100は、ステップS302~S304と、ステップS305~S307とを並行して実行する。
【0037】
<ステップS302~S304>
ステップS302では、カメラ距離検出部102が、カメラを用いて、車両の側方に存在する物体までの距離を検出する。例えば、カメラ距離検出部102は、車両の側方を向くように車両に設けられたカメラを用いて、所定のサンプリング周期毎(例えば、1秒毎、0.5秒毎、等)に、車両の側方に存在する物体までの距離を検出する。
【0038】
次に、レーダ装置100は、車速・座標検出部103によって取得された座標に基づいて、所定の距離を走行したか否かを判断する(ステップS303)。
【0039】
ステップS303において、所定の距離を走行していないと判断された場合(ステップS303:No)、レーダ装置100は、ステップS302を再度実行する。
【0040】
一方、ステップS303において、所定の距離を走行したと判断された場合(ステップS303:Yes)、カメラ障害物マップ生成部106が、カメラ距離検出部102によって検出された複数の距離に基づいて、カメラ障害物マップを生成する(ステップS304)。
【0041】
<ステップS305~S307>
ステップS305では、レーダ距離検出部101が、レーダ波を用いて、車両の側方に存在する物体まで距離を検出する。例えば、レーダ距離検出部101は、車両の側方を向くように車両に設けられたレーダ送受信機100A(すなわち、送信部210および受信部220)を用いて、所定のサンプリング周期毎(例えば、1秒毎、0.5秒毎、等)に、車両の側方に存在する物体まで距離を検出する。
【0042】
次に、レーダ装置100は、車速・座標検出部103によって取得された座標に基づいて、所定の距離を走行したか否かを判断する(ステップS306)。
【0043】
ステップS306において、所定の距離を走行していないと判断された場合(ステップS306:No)、レーダ装置100は、ステップS305を再度実行する。
【0044】
一方、ステップS306において、所定の距離を走行したと判断された場合(ステップS306:Yes)、レーダ障害物マップ生成部105が、レーダ距離検出部101によって検出された複数の距離に基づいて、レーダ障害物マップを生成する(ステップS307)。
【0045】
<ステップS308~>
ステップS304でカメラ障害物マップが生成され、且つ、ステップS307でレーダ障害物マップが生成されると、駐車空間検出部107が、レーダ障害物マップと、カメラ障害物マップとに基づいて、車両の周囲に存在する駐車空間を検出する(ステップS308)。
【0046】
次に、駐車空間画像生成部108が、ステップS308で検出された駐車空間の画像を生成する(ステップS309)。
【0047】
そして、ディスプレイ109が、ステップS309で生成された駐車空間の画像を表示し(ステップS310)、レーダ装置100は、
図3に示す一連の処理を終了する。
【0048】
(レーダ距離検出部101による距離検出処理の手順の一例)
図4は、一実施形態に係るレーダ装置100が備えるレーダ距離検出部101による距離検出処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図4は、
図3に示したレーダ距離検出部101による距離検出処理(ステップS305)の手順の一例を詳細に示す。
【0049】
まず、レーダ距離検出部101は、初回実行であるか否かを判断する(ステップS401)。
【0050】
ステップS401において、初回実行であると判断された場合(ステップS401:Yes)、レーダ距離検出部101は、送信チャープ信号数M、疑似受信信号数K、および利用チャープ信号数Iの各々に所定の初期値を設定する(ステップS402)。そして、レーダ距離検出部101は、ステップS409へ処理を進める。
【0051】
一方、ステップS401において、初回実行ではないと判断された場合(ステップS401:No)、レーダ距離検出部101は、車速の変化が所定の閾値A以上であるか否かを判断する(ステップS403)。
【0052】
ステップS403において、車速の変化が所定の閾値A以上ではないと判断された場合(ステップS403:No)、レーダ距離検出部101は、ステップS409へ処理を進める。
【0053】
一方、ステップS403において、車速の変化が所定の閾値A以上であると判断された場合(ステップS403:Yes)、送信チャープ信号パラメータ算出部231が、基準送信チャープ信号数N,Nminを算出する(ステップS404)。
【0054】
そして、レーダ距離検出部101は、N/Nminが所定の閾値B以上であるか否かを判断する(ステップS405)。
【0055】
ステップS405において、N/Nminが所定の閾値B以上であると判断されば場合(ステップS405:Yes)、送信チャープ信号パラメータ算出部231が、送信チャープ信号数MにN/Bを設定し、補完パラメータ算出部232が、利用チャープ信号数IにMを設定する(ステップS407)。そして、補完パラメータ算出部232が、疑似受信信号数K=N-Mを算出し(ステップS408)、レーダ距離検出部101は、ステップS409へ処理を進める。
【0056】
一方、ステップS405において、N/Nminが所定の閾値B以上ではないと判断された場合(ステップS405:No)、送信チャープ信号パラメータ算出部231が、送信チャープ信号数MにNminを設定し、補完パラメータ算出部232が、利用チャープ信号数IにMを設定する(ステップS406)。そして、補完パラメータ算出部232が、疑似受信信号数K=N-Mを算出し(ステップS408)、レーダ距離検出部101は、ステップS409へ処理を進める。
【0057】
ステップS409では、送信部210が、車両の側方に向けてM個の送信チャープ信号を含む送信信号を送信し、受信部220が、M個の受信チャープ信号を含む反射信号を受信する。但し、Mは、ステップS402、ステップS406、またはステップS407で設定された送信チャープ信号数Mである。
【0058】
次に、FFT部233が、ステップS409で受信されたM個の受信チャープ信号を含む反射信号に基づいて生成された中間周波数信号をフーリエ変換することによって、物体までの距離を示すM個の距離データを生成する(ステップS410)。
【0059】
次に、疑似信号生成部234が、ステップS409で受信されたM個の受信チャープ信号から、ステップS410で生成された距離データのうちのI個の受信チャープ信号から得られた距離データに基づいて、K個の疑似受信信号を生成する(ステップS411)。疑似受信信号は、I個の受信チャープ信号から生成された距離データから得られた疑似距離データである。但し、Kは、ステップS402またはステップS408で設定された疑似受信信号数である。また、Iは、ステップS402、ステップS406、またはステップS407で設定された利用チャープ信号数である。
【0060】
次に、距離検出部235が、ステップS410で生成されたM個の距離データと、ステップS411で生成されたK個の疑似受信信号とに対してコヒーレント積分を行うことにより、車両の側方に存在する物体までの距離を検出する(ステップS412)。
【0061】
距離検出部235は、コヒーレント積分を行うことにより、FFT変換で得られる結果のうち、周波数ゼロのスペクトル強度を、車両との相対速度が0である物体の距離として検出することができる。
【0062】
その後、レーダ距離検出部101は、
図4に示す一連の処理を終了する。
【0063】
(基準送信
チャープ信号数Nの算出例)
図5を参照して、送信
チャープ信号パラメータ算出部231による基準送信
チャープ信号数Nの算出例について説明する。
図5は、基準送信
チャープ信号数Nの算出に用いられる送信時間Tsweepとフレーム周期Tframeとの関係を示す図である。
【0064】
まず、送信チャープ信号パラメータ算出部231は、下記数式(1)により、1チャープ信号あたりの送信時間Tsweepを算出する。但し、Vmaxは、駐車スペース検出で利用する最大車両速度であり、λは、レーダ距離検出部101の送信部から送信されるレーダ波の波長である。
【0065】
Tsweep=4(Vmax×λ) ・・・(1)
【0066】
次に、送信チャープ信号パラメータ算出部231は、下記数式(2)により、現在の車両速度Vから、距離精度を満足するフレーム周期Tframeを算出する。但し、XaccはX軸方向(車両の左右方向に対応する方向)の距離精度である。
【0067】
Tframe=Xacc/V ・・・(2)
【0068】
次に、送信チャープ信号パラメータ算出部231は、下記数式(3)により、基準送信チャープ信号数Nを算出する。
【0069】
N=Tframe/Tsweep ・・・(3)
【0070】
なお、距離精度Xaccは設計事項であり、一例として「10cm」(但し、これに限らない。)が設定される。また、最大車両速度Vmaxは設計事項であり、一例として「30km/h」(但し、これに限らない。)が設定される。
【0071】
(疑似受信信号数Kおよび利用
チャープ信号数Iの算出例)
図6を参照して、補完パラメータ算出部232による疑似受信信号数Kおよび利用
チャープ信号数Iの算出例について説明する。
図6は、1検出周期における基準送信
チャープ信号数Nと送信
チャープ信号数Mとの関係を示す図である。
【0072】
事前に、送信
チャープ信号パラメータ算出部231が、
図5に示す算出方法により、最大車両速度Vmaxのときに必要な基準送信
チャープ信号数Nminと、現在の車両速度Vのときに必要な基準送信
チャープ信号数Nとを算出する。但し、送信
チャープ信号パラメータ算出部231は、現在の車両速度Vが最大車両速度Vmaxを超える場合、現在の車両速度Vが最大車両速度Vmaxであるものとして、基準送信
チャープ信号数Nを算出する。
【0073】
(基準送信チャープ信号数N/基準送信チャープ信号数Nmin)が閾値B(例えば4)以下の場合、すなわち、車速が比較的速い場合、送信チャープ信号パラメータ算出部231は、送信チャープ信号数Mに基準送信チャープ信号数Nminを設定する。また、補完パラメータ算出部232は、利用チャープ信号数Iに送信チャープ信号数Mを設定する。
【0074】
一方、(基準送信チャープ信号数N/基準送信チャープ信号数Nmin)が閾値B(例えば4)を超える場合、すなわち、車速が比較的遅い場合、送信チャープ信号パラメータ算出部231は、送信チャープ信号数Mに(基準送信チャープ信号数N/閾値B)を設定する。また、補完パラメータ算出部232は、利用チャープ信号数Iに送信チャープ信号数Mを設定する。
【0075】
そして、補完パラメータ算出部232は、下記数式(4)により、疑似受信信号数Kを算出する。
【0076】
K=N-M・・・(4)
【0077】
例えば、
図6は、車両速度が最大のときに1検出周期に必要な基準送信
チャープ信号数Nminを「16」とした例を示す。この場合、1検出周期分の波形を再現するためには、少なくとも送信
チャープ信号数Mを「4」以上(1/4周期分以上)とする必要がある。この考えに基づき、閾値Bを「4」とすることが好ましい。そして、車両速度が最大よりも低い場合、1検出周期に必要な基準送信
チャープ信号数Nが大きくなる。この場合、(M=基準送信
チャープ信号数N/閾値B)によって、送信
チャープ信号数Mを大きくすることで、送信
チャープ信号数Mを「4」以上(1/4周期分以上)とすることができる。
【0078】
(送受信される信号の一例)
図7A~
図7Cは、一実施形態に係るレーダ装置100によって送受信される信号の一例を示す図である。
図7A~
図7Cにおいて、上段の実線は複数の送信
チャープ信号を含む送信信号の波形を示し、下段の実線は複数の受信
チャープ信号を含む受信信号の波形を示し、下段の点線は疑似受信信号の波形を示す。
【0079】
図7A~
図7Cに示すように、一実施形態に係るレーダ装置100は、送信部210により、周波数変調された複数の送信
チャープ信号を含む送信信号を送信する。これに応じて、一実施形態に係るレーダ装置100は、受信部220により、送信
チャープ信号と同数の受信
チャープ信号を含む反射信号を受信する。
図7A~
図7Cに示す例では、車速に関わらず、送信
チャープ信号数と受信
チャープ信号数はいずれも「4」である。
【0080】
一方、
図7A~
図7Cに示す例では、車速の変化に伴う所定の距離検出精度を満たすのに必要な
チャープ信号数(すなわち、基準送信
チャープ信号数N)の変化に応じて、疑似受信信号数Kを変化させるようにしている。具体的には、車速が低いほど、所定の距離検出精度を満たすのに必要な
チャープ信号数(すなわち、基準送信
チャープ信号数N)が増加するのに応じて、疑似受信信号数Kを増やすようにしている。これにより、一実施形態に係るレーダ装置100は、実際に送信する送信信号の
チャープ信号数を少なくすることで消費電力を抑制しつつ、受信信号の
チャープ信号数を疑似的に増やすことができるため、物体までの距離を高精度に検出することができる。
【0081】
(疑似受信信号生成方法の一例)
例えば、疑似信号生成部234は、以下に示す統計的手法を用いて、M個の受信チャープ信号X1,X2,・・・,XMから、予測誤差を最小にするような係数aNを算出し、算出された係数aNを用いて、疑似受信信号を生成することができる。但し、以下に示す統計的手法は一例であり、疑似信号生成部234は、その他の何らかの統計的手法を用いて、疑似受信信号を生成してもよい。
【0082】
まず、疑似信号生成部234は、下記数式(5)により、受信チャープ信号X1の予測値を、受信チャープ信号X2~XMの線形結合(ウェイト和)によって算出する。
【0083】
【0084】
次に、疑似信号生成部234は、下記数式(6)により、受信チャープ信号X1の実測値と予測値との差分値を、後方誤差として算出する。
【0085】
【0086】
次に、疑似信号生成部234は、下記数式(7)により、受信チャープ信号XMの予測値を、受信チャープ信号XM-1~X1の線形結合(ウェイト和)によって算出する。
【0087】
【0088】
次に、疑似信号生成部234は、下記数式(8)により、受信チャープ信号XMの実測値と予測値との差分値を、前方誤差として算出する。
【0089】
【0090】
次に、疑似信号生成部234は、後方誤差および前方誤差の2乗和が最小となる係数a2~aNを算出する。
【0091】
そして、疑似信号生成部234は、算出された係数a2~aNを用いた下記数式(9)により、受信チャープ信号XM+1を疑似受信信号として算出できる。
【0092】
【0093】
(駐車空間画像の生成例)
次に、
図8および
図9を参照して、一実施形態に係るレーダ装置100による駐車空間画像の生成例について説明する。
図8は、一実施形態に係るレーダ装置100による駐車空間画像の生成例を説明するための図である。
図9は、一実施形態に係るレーダ装置100によって生成された駐車空間画像の一例を示す図である。
【0094】
図8は、車両10が駐車場14に駐車する例を示す。
図8に示すように、車両10に搭載されたレーダ装置100は、車両10の左前角部および右前角部の各々に、レーダ送受信機100Aを有する。各レーダ送受信機100Aは、車両の左斜め前方および右斜め前方の検出エリア12に向けてレーダ波(送信信号)を送信することができ、検出エリア12に存在する物体からの反射信号を受信することができる。
【0095】
駐車空間画像を生成するために、車両10は、駐車場14の左側の駐車スペース14Aと右側の駐車スペース14Bとの間の通路14Cを通り過ぎる。これにより、レーダ送受信機100Aは、各レーダ送受信機100Aを用いて、駐車スペース14Aおよび駐車スペース14Bの全域をスキャン(信号の送受信)することができる。
【0096】
そして、レーダ装置100は、各レーダ送受信機100Aのスキャン結果に基づいて、所定の1検出周期毎に、車両10の左側方の駐車スペース14Aに存在する物体までの距離と、車両10の右側方の駐車スペース14Bに存在する物体までの距離とを検出し、これらの検出結果に基づいて、
図9に示すように、駐車場14の駐車空間画像20を生成することができる。
【0097】
この際、レーダ装置100は、これまでに説明したとおり、一検出周期毎に、実際に送信する送信チャープ信号数Mを抑制しつつ、受信チャープ信号の不足分を疑似受信信号によって補うことで、消費電力を抑制しつつ、物体までの距離を高精度に距離を検出することができる。
【0098】
図9に示すように、駐車空間画像20は、駐車スペース画像21と、駐車スペース画像22と、車両画像23と、駐車可能枠画像24を含む。
【0099】
駐車スペース画像21は、駐車スペース14Aの平面画像であり、物体が存在する領域が白色で表示されており、物体が存在しない領域が黒色で表示されている。
【0100】
駐車スペース画像22は、駐車スペース14Bの平面画像であり、物体が存在する領域が白色で表示されており、物体が存在しない領域が黒色で表示されている。
【0101】
車両画像23は、車両10の平面画像であり、駐車空間画像20において、車両10の現在位置と対応する位置に表示される。すなわち、駐車空間画像20において、車両10の移動に伴って、車両10の表示位置が変化する。
【0102】
駐車可能枠画像24は、車両10が駐車可能なスペースを示す矩形枠状の画像である。駐車可能枠画像24は、駐車スペース画像21および駐車スペース画像22に対し、物体が存在しない領域(黒色部分)のうち、車両10が駐車可能な所定のサイズ以上の領域を、矩形枠状に示す。
【0103】
一実施形態に係るレーダ装置100は、このような駐車空間画像20をディスプレイ109によって表示することにより、駐車場14における車両10が駐車可能なスペースを、ユーザ(車両10の運転者等)に対して視覚的に容易に把握させることができる。
【0104】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形又は変更が可能である。
【0105】
本国際出願は、2021年6月28日に出願した日本国特許出願第2021-107061号に基づく優先権を主張するものであり、当該出願の全内容を本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0106】
10 車両
12 検出エリア
14 駐車場
14A,14B 駐車スペース
14C 通路
20 駐車空間画像
21 駐車スペース画像
22 駐車スペース画像
23 車両画像
24 駐車可能枠画像
100 レーダ装置
100A レーダ送受信機
101 レーダ距離検出部
102 カメラ距離検出部
103 車速・座標検出部
104 メモリ
105 レーダ障害物マップ生成部
106 カメラ障害物マップ生成部
107 駐車空間検出部
108 駐車空間画像生成部
109 ディスプレイ
210 送信部
220 受信部
230 信号処理部
231 送信チャープ信号パラメータ算出部
232 補完パラメータ算出部
233 FFT部
234 疑似信号生成部
235 距離検出部