(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】化学発光光放射体
(51)【国際特許分類】
F21K 2/06 20060101AFI20240903BHJP
【FI】
F21K2/06
(21)【出願番号】P 2020157117
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】502087116
【氏名又は名称】株式会社ツツミプランニング
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 文人
(72)【発明者】
【氏名】土屋 貴由
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-092601(JP,U)
【文献】特開平08-280731(JP,A)
【文献】中国実用新案第201507790(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K 2/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外力の付与により破裂する水袋と、
同水袋の破裂により漏出した水と吸熱反応する吸熱反応剤と、
同吸熱反応剤の吸熱反応場に熱を伝搬可能な領域に配され、外力の付与により発光を開始する化学発光体と、
を同化学発光体が出射する光
が透過する
位置に透明部を設けた密封袋に
同袋内の一の収容室に水袋と吸熱反応剤と化学発光体が収容されている状態、又は同袋内に二以上の収容室が形成されており、水袋と化学発光体が別の収容室に収容されている状態で内包してなる化学発光光放射体。
【請求項2】
外袋の表裏一側は他側に比して透明部を少なく形成し、一側が外側となるよう折り畳んだ前記化学発光体からの光が外方へ出射しにくい減光使用態様と、他側が外側となるよう折り畳んだ前記化学発光体からの光が外方へ出射しやすい常光使用態様との間で切り替え可能な構成としたことを特徴とする請求項1に記載の化学発光放射体。
【請求項3】
前記化学発光体は、酸化液とアンプルが収容された偏平棒状の主部と、同主部の長手方向略中央から左右に伸延する転動防止片とよりなる平面視略十字状の外ケースを備え、
同外ケースは、前記主部の前後端部及び前記転動防止片の各先端部に、下方へ向けてそれぞれ同じ長さずつ折曲形成した所定高さの脚部設けられ、前記十字形状部分は前記脚部により前記所定高さ分だけ浮いた状態に形成されており、
前記脚部によって形成された十字形状部分の下の空間に前記水袋を配し、1回の外力付与動作によって吸熱反応と発光との両方を開始させるべく構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化学発光放射体。
【請求項4】
前記水袋に付与される外力と前記化学発光体に付与される外力とは、それぞれ別の外力であることを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載の化学発光光放射体。
【請求項5】
前記密封袋の表面に前記化学発光体が放射する光の透過を抑制する印刷部を備え、同印刷部の周囲は前記光が透過する透明部として、前記化学発光体の発光時に前記印刷部と前記透明部とのコントラストを強調すべく構成したことを特徴とする請求項1~
4いずれか1項に記載の化学発光光放射体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学発光光放射体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、化学的な作用で発光する化学発光体が知られている。一般的な化学発光体は、可撓性を有する樹脂製の密閉チューブ内に第1の薬液を封入した小型のガラスアンプルを第2の薬液に浸漬させた状態で収容して構成しており、使用時は密閉チューブを撓ませて中のガラスアンプルを折損させ、同アンプル内より漏出した第1の薬液を第2の薬液と反応させることで発光させることができる。
【0003】
このように化学発光体は、火気を使用せず、また商用電源や電池など電気によることなく手軽に光らせることができるため、緊急用の照明手段やコンサートホールでの応援グッズ、夜釣り用ウキの発光手段など、実に様々な場面にて広く用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、気温の高い夏場は外出時に熱中症に注意する必要がある。特に子供は事物に対し夢中になっているうちに熱中症となるおそれがあるため、日が沈んだ後であったとしても、十分な暑さ対策が必要である。
【0006】
とはいえ夏場は、夏祭りや花火、キャンプなど日没後でも屋外で楽しむ機会が多い。そしてまた、このようなシーンは化学発光体を使用した玩具が最も活躍する場の一つであり、その目に映える美しさから特に子供たちの興味をそそり、高い人気を博している。
【0007】
この点、本発明者らは、子供たちに人気の化学発光体と熱中症の予防グッズとを組み合わせることで、日没後でも気温が下がりにくい夏場において、子供たちが率先して熱中症対策に取り組み、夏の夜のイベントをより安心して楽しむことができるのではないかと考えた。
【0008】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、冷却機能を備えた化学発光光放射体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来の課題を解決するために、本発明に係る化学発光光放射体では、(1)外力の付与により破裂する水袋と、同水袋の破裂により漏出した水と吸熱反応する吸熱反応剤と、同吸熱反応剤の吸熱反応場に熱を伝搬可能な領域に配され、外力の付与により発光を開始する化学発光体と、を同化学発光体が出射する光が透過する位置に透明部を設けた密封袋に同袋内の一の収容室に水袋と吸熱反応剤と化学発光体が収容されている状態、又は同袋内に二以上の収容室が形成されており、水袋と化学発光体が別の収容室に収容されている状態で内包してなることとした。
【0010】
また本発明に係る化学発光光放射体は、更に以下の構成を備えるようにしても良い。
(2)外袋の表裏一側は他側に比して透明部を少なく形成し、一側が外側となるよう折り畳んだ前記化学発光体からの光が外方へ出射しにくい減光使用態様と、他側が外側となるよう折り畳んだ前記化学発光体からの光が外方へ出射しやすい常光使用態様との間で切り替え可能な構成としたこと。
(3)前記化学発光体は、酸化液とアンプルが収容された偏平棒状の主部と、同主部の長手方向略中央から左右に伸延する転動防止片とよりなる平面視略十字状の外ケースを備え、同外ケースは、前記主部の前後端部及び前記転動防止片の各先端部に、下方へ向けてそれぞれ同じ長さずつ折曲形成した所定高さの脚部設けられ、前記十字形状部分は前記脚部により前記所定高さ分だけ浮いた状態に形成されており、前記脚部によって形成された十字形状部分の下の空間に前記水袋を配し、1回の外力付与動作によって吸熱反応と発光との両方を開始させるべく構成したこと。
(4)前記水袋に付与される外力と前記化学発光体に付与される外力とは、それぞれ別の外力であること。
(5)前記密封袋の表面に前記化学発光体が放射する光の透過を抑制する印刷部を備え、同印刷部の周囲は前記光が透過する透明部として、前記化学発光体の発光時に前記印刷部と前記透明部とのコントラストを強調すべく構成したこと。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る化学発光光放射体によれば、
外力の付与により破裂する水袋と、同水袋の破裂により漏出した水と吸熱反応する吸熱反応剤と、同吸熱反応剤の吸熱反応場に熱を伝搬可能な領域に配され、外力の付与により発光を開始する化学発光体と、を同化学発光体が出射する光が透過する位置に透明部を設けた密封袋に同袋内の一の収容室に水袋と吸熱反応剤と化学発光体が収容されている状態、又は同袋内に二以上の収容室が形成されており、水袋と化学発光体が別の収容室に収容されている状態で内包してなることとしたため、冷却機能を備えた化学発光光放射体を提供することができる。
【0012】
また、外袋の表裏一側は他側に比して透明部を少なく形成し、一側が外側となるよう折り畳んだ前記化学発光体からの光が外方へ出射しにくい減光使用態様と、他側が外側となるよう折り畳んだ前記化学発光体からの光が外方へ出射しやすい常光使用態様との間で切り替え可能な構成としたこととすれば、使用場面に合わせて化学発光光の放射量を調節することができる。
【0013】
また、前記化学発光体は、酸化液とアンプルが収容された偏平棒状の主部と、同主部の長手方向略中央から左右に伸延する転動防止片とよりなる平面視略十字状の外ケースを備え、同外ケースは、前記主部の前後端部及び前記転動防止片の各先端部に、下方へ向けてそれぞれ同じ長さずつ折曲形成した所定高さの脚部設けられ、前記十字形状部分は前記脚部により前記所定高さ分だけ浮いた状態に形成されており、前記脚部によって形成された十字形状部分の下の空間に前記水袋を配し、1回の外力付与動作によって吸熱反応と発光との両方を開始させるべく構成すれば、簡便に使用することができる。
【0021】
また、前記水袋に付与される外力と前記化学発光体に付与される外力とは、それぞれ別の外力であることとすれば、冷却しながら発光させることができるのは勿論のこと、発光させることなく冷却したり、冷却させることなく発光させることも可能となる。
【0022】
また、前記密封袋の表面に前記化学発光体が放射する光の透過を抑制する印刷部を備え、同印刷部の周囲は前記光が透過する透明部として、前記化学発光体の発光時に前記印刷部と前記透明部とのコントラストを強調すべく構成すれば、印刷部の後方から差す光によって、印刷部に示された表示、例えばアニメキャラクターなどの図柄をより華やかに演出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】密封袋内の構成のバリエーションを示した説明図である。
【
図2】本実施形態に係る化学発光光放射体の使用状態を示す説明図である。
【
図3】本実施形態に係る化学発光光放射体の構成を示した説明図である。
【
図4】他の実施形態に係る化学発光光放射体の化学発光体を示した説明図である。
【
図5】他の実施形態に係る化学発光光放射体の内部構成を示した説明図である。
【
図6】更なる他の実施形態に係る化学発光光放射体の内部構成を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、化学的な作用で発光する化学発光体を密封袋に内包してなる化学発光光放射体に関するものであり、特に、冷却機能を備えた化学発光光放射体を提供するものである。
【0025】
特に、本実施形態に係る化学発光光放射体では、外力の付与により破裂する水袋と、同水袋の破裂により漏出した水と吸熱反応する吸熱反応剤と、外力の付与により発光を開始する化学発光体と、を同化学発光体が出射する光を透過する密封袋に内包して構成している。
【0026】
水袋は、吸熱反応剤による吸熱反応を起こさせるための水を収容した袋であり、密封袋外からの外力の付与により破裂して内容液を漏出させることができるよう構成している。
【0027】
外力は特に限定されるものではなく、手の力によって付与されても良いし、機械や治具を介して付与される力であってもよいが、用途や手軽さを勘案すると、ヒトの手の力によって破裂できるような強度の袋であるのが望ましい。
【0028】
すなわち、外力を加える前の状態では水袋内の内容液と吸熱反応剤とを確実に隔離することができ、密封袋の上から水袋を強く押さえつけたり、折り曲げたり、叩くことで内容液が漏出する程度の強度の袋で水袋を構成すると良い。なお、外力としての手の力は、大人による手の力でも良いし。子供の手の力であっても良い。意図しないタイミングでの冷却開始(吸熱反応の開始)を防止するには、およそ相対的に大きな大人の力程度で破裂するよう構成することもでき、また、子供でも手軽に使用可能とするためには、当然に子供の手の力程度で破裂するよう構成すべきである。
【0029】
水袋内に収容される内容液は、純水や蒸留水、脱イオン水をはじめ水道水や井戸水など、硬水や軟水などの違いはあれど吸熱反応を阻害しない程度の凡そ一般に水の範疇に含まれる水を使用することができる。
【0030】
また内容液は、上述の水をベースに、意図された又は意図しない成分が、冷却の実用性を損ってしまうほどに吸熱反応を阻害しない程度(許容可能な程度)で含まれていても良い。
【0031】
吸熱反応剤は、水袋より漏出した内容液を構成する水(単に、水袋から漏出した水ともいう。)と吸熱反応を起こす成分にて構成された反応剤である。このような反応剤は特に限定されるものではないが、敢えて例示するならば、食塩や尿素、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、チオシアン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0032】
また、吸熱反応剤には許容可能な程度であれば上述の成分以外の成分を含ませることも可能である。例えば、吸熱反応剤の剤形を粒状など適切な形状に成形する上で必要な助剤や、吸熱反応の反応速度を調整するための成分などが挙げられる。
【0033】
吸熱反応剤は、粒状に成形するのが望ましい。このような構成とすることにより反応速度を抑制し、急速な冷却を実現したり冷却時間の延長を図ることができる。吸熱反応剤の形状は、使用する主成分に応じた公知の技術を適宜採用することができる。吸熱反応剤の粒の径は特に限定されるものではないが、投影面積円相当径、例えば無作為に選択した粒を平面に撒き、目視や顕微鏡などを用いて上方より観察した際に粒が占める平面的な面積と同面積の円の径が1μm~7mmの範囲程度の粒径の吸熱反応剤を好適に使用することができる。なお、本明細書において特に断りのない限り、吸熱反応剤等の粒の径や大きさに関する説明は、いずれも投影面積円相当径と解することができる。
【0034】
化学発光体は所謂ケミカルライトであって外力の付与により発光を開始する構成を備えたものであれば良く、例えば、可撓性を有する樹脂製の密閉チューブ内に第1の薬液を封入した小型のガラスアンプルを第2の薬液に浸漬させた状態で収容して構成し、使用時は密閉チューブを撓ませて中のガラスアンプルを折損させ、同アンプル内より漏出した第1の薬液を第2の薬液と反応させることで発光可能としたものを採用することができる。
【0035】
化学発光体に付与される外力は、前述の水袋を圧壊させるために付与した外力と同じ外力(一時に加えられた外力)であるか否かにかかわらず、水袋の場合と概ね同様に手の力によって付与されても良いし、機械や治具を介して付与される力であってもよいが、用途や手軽さを勘案すると、ヒトの手の力によって発光を開始できるような密閉チューブの可撓性やガラスアンプルの強度とするのが望ましい。また、力の程度も大人の力程度を要することとしても良いし、子供の力で発光可能としても良い。
【0036】
発光の反応は特に限定されず、公知又は未知のものを採用することができる。公知の発光反応の一例としては、シュウ酸ジフェニルと過酸化水素とがサリチル酸ナトリウムの如き触媒の存在下で反応することにより蛍光染料が励起して発光する反応が挙げられる。また、このときの蛍光染料の種類、すなわち、発光光の色味は特に限定されるものではなく、公知又は未知のものを採用することができる。
【0037】
このように、本実施形態に係る化学発光光放射体では、上述した水袋と吸熱反応剤と化学発光体とを密封袋に内包して構成している。
【0038】
これらを内包するための密封袋は、吸熱反応剤と水との反応液に対し密封袋外の熱を伝達できる素材であり、また、水袋や化学発光体に対して付与された外力程度では破裂しない程度の素材の強度やシール強度を備える必要がある。また密封袋は、内包した化学発光体が発する発光光を透過できる部位を備えており、当該部位の素材は当然に化学発光体が発する発光光を透過できる素材である。密封袋を構成する素材としては、例えば、PETフィルムやポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルムやこれらの中から所定のフィルムを重ね貼りしてなる多層フィルム、更には、化学発光光を透過させない部位についてはアルミ箔を介在させたアルミ袋用フィルムであったり、アルミ蒸着フィルムを使用することもできる。
【0039】
ここで、密封袋に内包とは、一の袋内の一の収容室に水袋と吸熱反応剤と化学発光体が収容(同封)されている場合は勿論のこと、一の袋内に二以上の収容室が形成されており、水袋と化学発光体が別の収容室に収容されている状態も意味している。
【0040】
すなわち、本実施形態に係る化学発光光放射体Aは
図1(a)に示すように、密封袋としての外袋10に水袋11と吸熱反応剤12と化学発光体13とを内包して構成しているのであるが、X-X方向の断面において、例えば
図1(b)に示すように一の外袋10内の一の収容室14に水袋11と吸熱反応剤12と化学発光体13が収容されている状態は、本願における「密封袋に内包」された一態様である。
【0041】
また本願では
図1(c)に示すように、一の外袋10の内部空間を仕切フィルム10aにて表面側と裏面側とに仕切って二つの収容室14a,14bを形成し、収容室14aには水袋11と吸熱反応剤12を、また、収容室14bには化学発光体13を収容して構成した場合も、本願において密封袋に水袋11と吸熱反応剤12と化学発光体13が内包されている状態に含まれる。
【0042】
また、
図1(c)では、外袋10の表裏のフィルムと略平行に仕切フィルム10aを配して複数の収容室を形成したが、
図1(d)の如く、一の外袋10の表裏フィルムを圧着して仕切り、収容室14c,14dを形成して収容室14cには水袋11と吸熱反応剤12を、また、収容室14dには化学発光体13を収容して構成した場合も、本願において密封袋に水袋11と吸熱反応剤12と化学発光体13が内包されている状態に含まれる。
【0043】
また、
図1(e)に示すように、
図1(d)と同様一の外袋10の表裏フィルムを圧着して仕切り、収容室14c,14dを形成し吸熱反応剤12と化学発光体13を収容する一方、収容室14dには前述の水袋11の内容液をそのまま収容して水袋11を構成しても、本願において密封袋に水袋11と吸熱反応剤12と化学発光体13が内包されている状態に含まれる。なお、この場合、仕切りのシール部10bは先述した水袋を圧壊させる押圧力程度の力で表裏フィルムが剥離して収容室14dから収容室14cへ内容液が移行できる程度のシール強度とすべきである。
【0044】
また、更に付言するならば、上述の
図1中に示した構成を適宜組み合わせた仕切り態様も、本発明の機能を実質的に阻害しない限り、本願において密封袋に内包されている状態に含まれる。
【0045】
そして、このような構成を備えた本実施形態に係る化学発光光放射体によれば、冷却機能を備えた化学発光光放射体を提供することができ、例えば日没後の気温が下がりにくい夏場であっても、涼みながら熱中症を予防しつつ、美しい明かりと共に花火や祭など夜の催事を楽しむことができる。
【0046】
また、本実施形態に係る化学発光光放射体の更なる態様として、化学発光体は、同化学発光体が有する熱を前記吸熱反応剤の吸熱反応場に伝搬可能な領域に配されていることとしても良い。
【0047】
このような態様の具体例としては、例えば
図1(b)~
図1(e)にて示した態様が挙げられる。すなわち、
図1(b)や
図1(e)に示す態様は、化学発光体13が水と吸熱反応剤12との吸熱反応場となる領域に直接配されており、化学発光体13が有する熱を吸熱反応剤12の吸熱反応の場に伝搬可能な領域に配されていると言える態様である。
【0048】
また、
図1(c)にて示した態様は、水袋11と吸熱反応剤12を収容した収容室14aが吸熱反応の場となる領域に相当し、化学発光体13は積極的な断熱のための構成を特に備えていない仕切フィルム10aを隔てた収容室14bに配置されているため、化学発光体13が有する熱を吸熱反応剤12の吸熱反応の場に伝搬可能な領域に配されていると言える態様である。
【0049】
また、
図1(d)にて示した態様は、一の外袋10の内部がシール部10cにより収容室14cと収容室14dとに区分けされており、シール部10c部分による熱伝導はあまり期待できないことから、一見すると化学発光体13の熱は吸熱反応剤12の吸熱反応の場である収容室14cに伝搬させることは困難であるようにも思えるが、図中にて白抜きの矢印で示すように折りたたむことで、化学発光体13が有する熱を吸熱反応剤12の吸熱反応の場に伝搬可能となるため、このような態様も化学発光体13が吸熱反応の場に熱を伝えることが可能な領域に配されていると言える態様である。
【0050】
なお、この
図1(d)の例ではシール部10cが十分なシール強度を持つものとして説明したが、同シール部10cが水袋11や化学発光体13に対する外力によって剥離し収容室14c内の水袋11と吸熱反応剤12との反応液が収容室14dへ移行可能となるならば、これは化学発光体13が有する熱を吸熱反応剤12の吸熱反応の場に伝搬可能な領域に配されている態様であり、また、化学発光体13が水と吸熱反応剤12との吸熱反応場となる領域に直接配された態様とも言える。
【0051】
このように、化学発光体を、同化学発光体が有する熱を吸熱反応剤による吸熱反応の場に伝搬可能な領域に配したり、吸熱反応場となる領域に配すれば、化学発光体の発光時間をより長くすることができる。
【0052】
また化学発光体は、その形状に関し、特に限定されるものではないが、例えば棒状とすることができる。
【0053】
棒状の化学発光体は、本実施形態に係る化学発光光放射体であればいずれの態様においても適用可能であるが、特に化学発光体を吸熱反応剤の吸熱反応場となる領域に配した場合、冷却と発光とを同時に行った際に棒状の化学発光体にて水と吸熱反応剤との反応液を撹拌することが容易となり、満遍なく反応を行わせることが可能となる。
【0054】
また、水と吸熱反応剤との反応液中にて化学発光体が棒形状に沿った線状の光を放つこととなり、流体内にて蛍光色に光る幻想的な化学発光光を放射させることができる。
【0055】
また化学発光体は、例えば偏平状としても良い。これは、偏平棒状であっても良いが、これに限らず、円板状であったり、矩形板状、星形板状、不定形板状など平たい形状全般が含まれる。
【0056】
化学発光体を偏平状とすれば、平たい広幅の面にて水と吸熱反応剤との反応液をより効率的に撹拌することができ、また、外袋の表裏面と化学発光体の平たい広幅の面とが対応した状態で安定しやすくなるため、発光形状の視認安定性を向上することができる。
【0057】
また、本実施形態に係る化学発光光放射体の更なる態様として、吸熱反応剤は、尿素、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムから選ばれる少なくともいずれか1つを主成分とすることとしても良い。このような構成を備えることにより、堅実な吸熱反応を行わせることができる。
【0058】
また、吸熱反応剤は、水と反応の際に水を白濁させるものを使用することもできる。このような構成とすることにより、化学発光体の発光光をより多く拡散させることができ、より淡い柔らかな光による演出が可能となる。このような効果を目的とする場合、吸熱反応時に反応液が白濁するものであれば吸熱反応剤の種類は特に限定されるものではないが、中でも、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムから選ばれる少なくともいずれか1つを主成分とすることで、白濁反応液の堅実な生成を行わせることができる。
【0059】
なお、吸熱反応の開始に先立って化学発光体の発光を開始させた場合には、外袋の内部がまだ反応液によって満たされていない空間内を経た光が化学発光光放射体から出射されるため、透明感のある光が観察される。また、白濁する吸熱反応剤として塩化アンモニウムや硝酸アンモニウムを採用した場合、吸熱反応が終了すると反応液は徐々に清澄な状態に変化する。このとき、化学発光体による発光が継続しているならば、吸熱反応時に拡散光として観察された化学発光光は、徐々に拡散されにくくなるため、透明感のある光に変化する様子が経時的に観察されることとなる。従って、吸熱反応の開始前や最中から終わりにかけてなど、化学発光体の発光と吸熱反応の開始とのタイミングにより、透明感のある光から拡散光へ、また拡散光から清澄な光への変化による演出効果も期待することもできる。
【0060】
また、本実施形態に係る化学発光光放射体の更なる態様として、化学発光体の発光光は、最大ピーク波長が380nm~580nmの範囲内に属する寒色系の発光色であることとしても良い。このような構成とすることにより、冷感を視覚的に生起させることができ、熱中症予防効果を更に高めることができる。
【0061】
また、本実施形態に係る化学発光光放射体の更なる態様として、吸熱反応剤と水との反応溶液中には増粘剤が含まれるよう構成しても良い。すなわち、増粘剤は、吸熱反応剤と共に含まれていても良いし、水袋中の内容液に予め溶存させた状態であったり、更には他の状態で含まれていても良いのであるが、吸熱反応剤と水との反応溶液が粘稠な状態となるよう増粘剤が含まれるよう構成しても良い。
【0062】
増粘剤は、吸熱反応の阻害が許容可能な範囲であり、また、反応溶液に粘性を付与できる物質であれば特に限定されるものではないが、例えば、セルロース、セルロース誘導体、セルロース誘導体の塩、アクリル酸誘導体、アクリル酸誘導体の塩、増粘多糖類などを使用することができる。
【0063】
そして、このような構成を備えることにより、反応溶液中において小気泡が浮遊分散した状態を長く保つことができ、発光光の中で浮遊する気泡により幻想的な雰囲気を醸し出すことができる。
【0064】
また、本実施形態に係る化学発光光放射体の更なる態様として、水袋に付与される外力と化学発光体に付与される外力とは同じ外力であり、水袋を破裂させるべく付与された外力を前記発光の契機とし、又は、発光の契機とすべく付与された外力を水袋の破裂に利用すべく構成しても良い。
【0065】
例えば、水袋を破裂させるべく付与された外力を発光の契機とする具体的な態様の一例としては、水袋に付与された力を化学発光体に伝達する機構を設け、同化学発光体の内部バイアルの折損のための力として利用する方法が考えられる。
【0066】
また、発光の契機とすべく付与された外力を水袋の破裂に利用する具体的な態様の一例としては、化学発光体を撓ませた際の力を水袋の表面に収束させ袋体を破る力として利用する方法が考えられる。
【0067】
そして、このような構成を備えれば、一度の外力付与動作にて発光と冷却とを開始させることができる。
【0068】
また、本実施形態に係る化学発光光放射体の更なる態様として、水袋に付与される外力と化学発光体に付与される外力とは、それぞれ別の外力であることとしても良い。
【0069】
すなわち、水袋を破裂させるべく付与された外力は、化学発光体の内部バイアルの折損のための力としては積極的に利用せず、またその逆に、発光を開始させるべく化学発光体を撓ませるための力は、水袋から内容液を漏出させるための力としては積極的には利用しない。また更に付言するならば、そのような構成を備えないということである。
【0070】
このような構成とすることにより、冷却しながら発光させることができるのは勿論のこと、発光させることなく冷却したり、冷却させることなく発光させることも可能となる。
【0071】
また、密封袋の表面に化学発光体が放射する光の透過を抑制する印刷部を備え、同印刷部の周囲は化学発光光が透過する透明部として、化学発光体の発光時に印刷部と透明部とのコントラストを強調すべく構成しても良い。
【0072】
例えば印刷部には子供たちに人気のキャラクターの図柄などが配されるが、印刷部の全周又は周回りの一部を囲うように、一例としてはキャラクターの周縁に沿って透明部を設け、化学発光光が出射されうるように構成することで、印刷部と透明部とのコントラストを強調する演出が可能となると共に、キャラクターの背後から光が差すこととなり、キャラクターを際立たせる演出を行うことができる。なお、印刷部を囲う透明部を周回りの一部に形成する場合は、好ましくは周縁回りの半部以上、より好ましくは7割以上、更に好ましくは8割以上とすることができる。すなわち、周回りの一部に透明部を形成することは、周回りの長さの少なくとも5割以上に透明部が形成されることとしても良い。
【0073】
また、印刷部には、その内方領域にて一部透明部を設けることとしても良い。この透明部の形成位置は特に限定されるものではないが、例えば、印刷部に示されたキャラクターが身につけるアクセサリーの位置であったり、ロボットの目に相当する部位や、戦隊キャラクターが持つレーザー銃の銃口や発射軌跡の位置などとすることができる。
【0074】
また、透明部は必ずしも高い透明度を有する必要はない。勿論、透明部から化学発光光が出射できる程度の透明度は必要であるが、例えば磨りガラスの如き加工を施したり、密封袋の袋地の樹脂を少し濁らせるなどして光を散乱させる構成を備えるようにしても良い。このような構成とすることで、透明部から光を出射させるのみならず、透明部自体をより顕著に光らせることができ、表示部の図柄等と相俟った興趣を添えることができる。
【0075】
以下、本実施形態に係る化学発光光放射体について、図面を参照しながら更に説明する。
【0076】
図2は本実施形態に係る化学発光光放射体Bの使用状態を示した説明図である。化学発光光放射体Bには化学発光体が収容されており、袋体の外部から化学発光体に対して外力を与えて発光を開始させることで、
図2(a)に示すように、光る玩具や応援グッズとしての使用が可能である。
【0077】
また化学発光光放射体Bには、水袋と吸熱反応剤とが収容されており、同様に袋体の外部から水袋に対して外力を与え、内容液を漏出させて吸熱反応剤と反応させることで、
図2(b)に示すように、冷却剤としても使用可能である。
【0078】
従って、日没後でも気温が下がりにくい夏場において、例えば子供である使用者Uが率先して熱中症対策に取り組み、夏の夜のイベントをより安心して楽しむことができる。
【0079】
図3は、化学発光光放射体Bの構成を示した説明図であり、
図3(a)は化学発光光放射体Bの表面、
図3(b)は化学発光光放射体Bの裏面を示している。
【0080】
化学発光光放射体Bは、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、密封袋としての外袋20の内部に、水袋21と吸熱反応剤22と化学発光体23を内包させた状態で密封して構成している。
【0081】
外袋20は、厚さ12~25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)製、又は、厚さ20~40μmのOPP製の透明フィルムを表面用として採用する一方、裏面には厚さ30~150μmのポリエチレン製の透明フィルムを採用し、これらを熱圧着シールにて形成した1袋1収容室態様の三方袋であり、化学発光光放射体Bはこの三方袋の開口より水袋21と吸熱反応剤22と化学発光体23を収容し、開口部を熱圧着シールすること形成している。
【0082】
外袋20の表面31側は
図3(a)に示すように、主に印刷を施すための面としており、ここでは元々透明な表面用フィルムの表面に下地印刷を施して不透明化し、更にこの下地印刷上に子供が好むキャラクターや図柄を配したデザインで表面31の略全面に印刷を施して印刷部32(印刷部32a)を形成し、子供たちの興味をそそるようにしている。なお、予め印刷が施されたフィルムを用いて袋を形成することも勿論可能である。
【0083】
また、また表面31には、下地印刷や図柄の印刷を施しておらずフィルム素材の透明部分をそのまま露出させた透明部33を一部に形成している。ここでは一例として、クリームソーダ図柄のグラス部分に透明部33を形成しており、化学発光光放射体Bの内部にて化学発光体23が発した化学発光光を出射可能に構成している。
【0084】
一方、外袋20の裏面35側は、
図3(b)に示すように、略全面を透明部33としており、化学発光光放射体Bの内部のほぼ全体が透けて見えるようにしている。すなわち、裏面35側は、下地印刷のような不透明化を行わず、化学発光光放射体Bの内部にて化学発光体23が発した化学発光光が略全面から出射されるようにしている。
【0085】
ただし、裏面35は必ずしも全体が透明部33として形成される必要はなく、印刷部32が形成されていても良い。ここでは品質表示やバーコードが配された印刷部32bを形成している。
【0086】
水袋21は、水収容袋21aに内容液21bを収容し密封して構成しており、小学生程度の子供である使用者Uが水袋21を破裂させるべく外袋20を介して付与した外力程度の力で内容液21bが水収容袋21aから漏出するような強度で形成している。
【0087】
内容液21bは、吸熱反応剤22の反応水として機能する液であり、本実施形態では水としている。なお内容液21bは、内容液21bと吸熱反応剤22との反応液に粘性を付与すべく前述の各種増粘剤を含有させても良い。
【0088】
内容液21bとしての水の量は、吸熱反応剤22との吸熱反応に適した量としている。ここでは、尿素と水とによる吸熱反応を利用しているため、吸熱反応剤22である尿素の重量の60%~65%、例えば62.5%に相当する重量の水の量としている。
【0089】
吸熱反応剤22は、水袋21の内容液21bと吸熱反応するための剤であり、本実施形態では尿素を直径1μm~7mm程度の粒状に調製したものを50g用いている。
【0090】
化学発光体23は、外ケース23a内に酸化液23bとアンプル23cとを収容して構成しており、アンプル23c内には蛍光液23dが封入されている。
【0091】
酸化液23bは蛍光液23dの構成成分を酸化させるための液であり、本実施形態では35%の過酸化水素水を使用している。またアンプル23c内に封入された蛍光液23dは、酸化液23bと反応することで蛍光液23dに含まれる蛍光物質を励起させて発光する液であり、ここではシュウ酸ジフェニルと9,10-ジフェニルアントラセン(青色蛍光色素)とを含む液としており、発光光のピーク波長は435~480nmであり、見た目に涼しげな寒色系の発光色としている。
【0092】
化学発光体23の外ケース23aは、長さ約20cm、幅約1.5cm、厚み約5mmの偏平棒状であり、可撓性を付与するために素材はポリエチレンにて形成している。また、収容されているアンプル23cは、直径約3mmで長さが約18cmの外形状を有しており、使用者である小学生程度の子供が発光を開始させるために外袋20を介して付与した外力程度の力で外ケース23aが撓み、蛍光液23dが折損して蛍光液が漏出するような強度で形成している。
【0093】
なお、前述した外袋20のシール強度やフィルムの強度は、この化学発光体23の発光開始のための外力や、先に述べた水袋21から内容液21bを漏出させるための外力を付与した場合でも内容物が逸脱しない十分な強度を有している。
【0094】
そして、このような構成を備える化学発光光放射体Bによれば、使用者Uは、化学発光体23に対して外力を付与しアンプル23cを折損させて発光を開始させることにより、化学発光光放射体Bの表面31や裏面35の透明部33から化学発光光を放射させることができ、蛍光の美しい光を楽しむことができる。
【0095】
また
図3(a)に示すように、印刷を施した表面31においても、印刷部32の図柄に応じて透明部33を形成して化学発光光を出射可能に構成しているため、所定の印刷デザイン、特に子供が好むような可愛らしい、あるいは格好良いデザイン上で印刷の色材による色と化学発光体23の光の色とのコラボレーションによる演出を行うことができる。
【0096】
また、裏面35は、表面31に比して透明部33を多く形成することにより、化学発光体23からの化学発光光の放射面積を多くしているため、使用者Uの周囲にいる者からの視認性に富む。従って、
図2(a)に示したように、イベント等での応援グッズとして利用することも可能である。
【0097】
また、水袋21に対して外力を付与し、内容液21bと吸熱反応剤22を反応させることにより、化学発光光放射体Bは冷却機能を発揮する。これにより、日没後でも気温が下がりにくい夏場などであっても、
図2(b)に示したように涼をとり暑さをしのぐことができる。
【0098】
また、化学発光光放射体Bが発揮する冷却機能は、化学発光体23も冷却する。従って、発光反応の速度を抑制することができ、冷却しない場合に比してより長時間に亘り発光を継続させることができる。特に、化学発光光放射体Bは
図2(a)に示したように手持ちにて使用したときは、使用者Uの手の熱が化学発光体23に伝わりやすいのであるが、冷却機能のが発揮されている最中は、化学発光体23を冷やしつつ使用者の掌なども冷やすため、より長きに亘って化学発光光を楽しむことができる。
【0099】
併せて、本実施形態において吸熱反応は、反応液が白濁しない尿素と水との反応を採用しているため、化学発光光放射体Bより放射された化学発光光(蛍光)はあまり拡散することなく透明部33より出射される。すなわち、清澄な反応液を透過した蛍光であることから、白濁反応液中を透過してきた光と比較して、より透明感のある光の演出を行うことができる。
【0100】
また、外袋20の表面31側は裏面35と比較して透明部33が少なく、裏面35側は表面31と比較して透明部33を多く形成しているため、例えば化学発光光放射体Bを二つ折りにした場合、表面31が外側になるよう折り畳まれたならば化学発光体23からの光が外方へ出射しにくい減光使用態様となり、裏面35が外側になるよう折り畳まれたならば光が外方へ出射しやすい常光使用態様となる。このよに、減光使用態様と常光使用態様との間で切替可能な構成を備えることで、使用場面に合わせて化学発光光の放射量を調節することができる。
【0101】
次に、他の実施形態に係る化学発光光放射体Cについて説明する。化学発光光放射体Cは、化学発光光放射体Bとほぼ同様の構成を備えているが、化学発光体の構造と水袋21の配置位置の点において特徴的である。また、吸熱反応剤として、吸熱反応液が白濁する硝酸アンモニウムを採用している。
【0102】
図4は他の実施形態に係る化学発光光放射体Cの化学発光体43を示した説明図である。化学発光体43は、先述の化学発光体23と略同形状とした偏平棒状の主部43eと、同主部43eの長手方向略中央から直交方向へ向けて左右に伸延する転動防止片43f,43fとよりなる外ケース43aにより平面視略十字状の外観を呈している。
【0103】
また、外ケース43aは、主部43eの前後端部及び転動防止片43fの各先端部に、下方へ向けてそれぞれ同じ長さずつ折曲形成した所定高さの脚部43gが設けられており、前述の十字形状部分は脚部43gにより所定高さ分だけ浮いた状態に形成されている。
【0104】
また、この脚部43gによって形成された十字形状部分の下の空間は、主部43eや転動防止片43fが上方より力を受けた際の撓み代として機能するものであり、
脚部43gの高さは、内部に収容されているアンプル23cが破損する主部43eの撓みを許容する高さとしている。なお、
図4において化学発光体43の十字形状部分の上に長破線で示すのは、水袋21が配置される位置を示している。
【0105】
図5は、
図4のY-Y断面における化学発光光放射体Cの中の状態を示している。
図5(a)に示すように、上述の構成を備えた他の実施形態に係る化学発光光放射体Cによれば、外袋20内にて水袋21は、化学発光体43の上に重ねた状態で配置される。また吸熱反応剤22は、化学発光体43の脚部43gにより、外袋20内において下方へ集合することとなり、水袋21との相対的な位置関係において、水袋21が上、吸熱反応剤22が下という状態になる。
【0106】
そして、この状態で外袋20の上部から、水袋21を破裂させることができる程度の外力を付与すると、
図5(b)に示すように水袋21からは内容液21bが漏出して吸熱反応剤22と接触し吸熱反応が開始される。
【0107】
またこれと共に、外袋20を破裂させるために付与された外力は、化学発光体43の主部43eを撓ませる。従って、主部43eの内部に収容されているアンプル23cを折損させることとなり、吸熱反応の開始と共に発光が開始される。
【0108】
このように、他の実施形態に係る化学発光光放射体Cによれば、1回の外力付与動作によって吸熱反応と発光との両方を開始させることができ、簡便に使用することができる。
【0109】
併せて、本実施形態において吸熱反応は、反応液が白濁する硝酸アンモニウムと水との反応を採用しているため、化学発光光放射体Cより放射された蛍光は拡散し、拡散光の状態で透明部33より出射される。従って、清澄な反応液を透過した蛍光と比較して、より淡い幻想的な演出を行うことができる。
【0110】
次に、更なる他の実施形態に係る化学発光光放射体Dについて説明する。
図6は化学発光光放射体Dの構成を示した説明図である。化学発光光放射体Dは、化学発光光放射体Bとほぼ同様の構成を備えているが、密封袋としての外袋の形状や、透明部に特徴を有している。
【0111】
図6(a)に示すように、化学発光光放射体Dは外袋50を備えており、同外袋50は、後述の印刷部52に施されたウサギのキャラクター図柄の外形状に大まかに沿った形状としている。
【0112】
また、外袋50の内部には、水袋や吸熱反応剤、化学発光体など(図示せず)が収容されており、熱圧着によって周縁にシール部50aを形成してこれらを密封している。
【0113】
シール部50aの内方領域には、ウサギのキャラクター図柄が示された印刷部52を形成し、内部からの化学発光光の出射が抑制されるよう構成している。
【0114】
また、シール部50aの内方であって印刷部52の外方となる領域には、印刷部52の周縁周りに沿って透明部53が設けられている。
【0115】
図6(b)は化学発光光放射体Dにおける印刷部と透明部の形成位置を示した説明図であり、シール部50aを網掛け、印刷部52を黒塗り、透明部53を白色で示している。
図6(b)に示すように、透明部53はキャラクター図柄に沿った形状を有する印刷部52の外縁に沿って全周に亘って設けられており、キャラクターの外周全域から化学発光光が出射されるよう形成している。
【0116】
従って、化学発光光放射体Dの使用時には、キャラクターが施された印刷部52と透明部53より出射される光とによってコントラストが強調され、キャラクターがあたかも光り輝くような演出を行うことができる。
【0117】
また
図6(c)は、変形例に係る化学発光光放射体D2の印刷部と透明部の形成位置を示した説明図である。同変形例に係る化学発光光放射体D2では、外観は
図6(a)に示す態様とほぼ同じであるが、ウサギのキャラクターの手に相当する部分の印刷部52がシール部50aと接触又は重畳するように形成されており、印刷部52とシール部50aとの間に透明部53が形成されておらず、印刷部52の周縁回りの一部に透明部53が形成された状態となっている点で先の例と相違している。
【0118】
また、印刷部52の領域内において、ウサギのキャラクターの顔に付されていたデコレーションアートに相当する部分に透明部53aを形成しており、同透明部53aから化学発光光を出射可能としている。
【0119】
また更に、同透明部53aには、白濁状の弾性体薄膜、例えば白色半透明でハート型に切り抜いた薄手のシリコンシート54が貼り付けられており、透明部53aより出射される化学発光光の散乱光が生じやすいようにしている。
【0120】
従って、化学発光光放射体D2の使用時には、キャラクターが施された印刷部52と透明部53より出射される光によってコントラストが強調され、キャラクターの下方の一部を除いた周縁が光り輝く演出を行うことができる。
【0121】
また、透明部53aに重畳させて配置固定した光拡散手段としてのシリコンシート54が化学発光光を拡散させるためハート形状に光ることとなり、キャラクター図柄に更なる光の演出を加えることができる。なお、シリコンシート54の裏面(透明部53aとの対向面)や表面を彫るなどしてシートの厚みを変化させることにより化学発光光の透過度合いを変化させ、化学発光光放射体Dの使用時に所定の図柄などがシリコンシート54上に浮き出るよう構成しても良い。
【0122】
上述してきたように、本実施形態に係る化学発光光放射体によれば、外力の付与により破裂する水袋と、同水袋の破裂により漏出した水と吸熱反応する吸熱反応剤と、外力の付与により発光を開始する化学発光体と、を同化学発光体が出射する光を透過する密封袋に内包してなることとしたため、冷却機能を備えた化学発光光放射体を提供することができる。
また、前記化学発光体は、同化学発光体が有する熱を前記吸熱反応剤の吸熱反応場に伝搬可能な領域に配されていることとすれば、化学発光体の発光時間をより長くすることができる。
また、前記化学発光体は、前記吸熱反応剤の吸熱反応場となる領域に配されていることとすれば、化学発光体の発光時間をより長くすることができ、しかも吸熱反応剤と水との反応液内にて化学発光体が光を放つこととなるため、反応液や同反応液中の気泡、密封袋の表面形状等に由来する屈折や拡散により、従来の化学発光体に比して幻想的な演出が可能となる。
また、前記発光体は棒状であることとすれば、吸熱反応場内にて化学発光体を動かすことにより吸熱反応剤と水との反応液の撹拌を効率よく行うことができ、均一な吸熱反応を行わせることができる。
また、前記発光体は偏平状であることとすれば、吸熱反応剤と水との反応液の撹拌を行うにあたり、偏平幅広の面により撹拌時の抵抗が大きくなって効率よく行うことができ、しかも、袋の表裏と偏平幅広の面とを対応させることで、発光光の出射効率をより向上させることができる。
また、前記吸熱反応剤は、尿素、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムから選ばれる少なくともいずれか1つを主成分とすれば、吸熱反応剤と水との反応液をより堅実に行わせることができる。
また、前記吸熱反応剤は、前記水と反応の際に前記水を白濁させることとすれば、化学発光体の発光光をより多く拡散させることができ、より淡い柔らかな光による演出が可能となる。
また、前記発光体の発光光は、最大ピーク波長が380nm~580nmの範囲内に属する寒色系の発光色であることとすれば、冷感を視覚的に生起させることができ、熱中症予防効果を更に高めることができる。
また、前記吸熱反応剤の前記水との反応溶液中には増粘剤が含まれていることとすれば、反応溶液中において小気泡が浮遊分散した状態を長く保つことができ、発光光の中で浮遊する気泡により幻想的な雰囲気を醸し出すことができる。
また、前記水袋に付与される外力と前記化学発光体に付与される外力とは同じ外力であり、水袋を破裂させるべく付与された外力を前記発光の契機とし、又は、前記発光の契機とすべく付与された外力を前記水袋の破裂に利用すべく構成すれば、一度の外力付与動作にて発光と冷却とを開始させることができる。
【0123】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【0124】
例えば、化学発光光放射体D2において透明部53aの部分にて散乱光を発生させるための光拡散手段としてシリコンシート54を採用したが、これに限定されるものではなく、化学発光光放射体の外袋の表面側を構成するフィルム自体を半透明フィルムとすることで光拡散手段とすることも可能である。
【符号の説明】
【0125】
10 外袋
11 水袋
12 吸熱反応剤
13 化学発光体
20 外袋
21 水袋
22 吸熱反応剤
23 化学発光体
43 化学発光体
A 化学発光光放射体
B 化学発光光放射体
C 化学発光光放射体
U 使用者