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  • 特許-調湿シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】調湿シート
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/26 20060101AFI20240903BHJP
   B32B 3/22 20060101ALI20240903BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20240903BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20240903BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20240903BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
B01D53/26 210
B32B3/22
B32B27/12
B32B27/18 Z
B32B27/34
B32B27/40
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021019136
(22)【出願日】2021-02-09
(65)【公開番号】P2022122066
(43)【公開日】2022-08-22
【審査請求日】2023-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】513007930
【氏名又は名称】テクナード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166800
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 裕治
(74)【代理人】
【識別番号】100167438
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 淳司
(72)【発明者】
【氏名】原 真澄
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-145688(JP,A)
【文献】特開2016-215095(JP,A)
【文献】特開2016-203386(JP,A)
【文献】特開2008-157498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/26
B32B 1/00 - 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生地の片面に、シリカゲルとポリアミド樹脂とを含有する調湿層が形成され、前記調湿層の表面に、ポリウレタンを用いてなる弾性層が形成された調湿シートであって、
前記弾性層はフレームラミネート加工により形成されていることを特徴とする調湿シート。
【請求項2】
前記調湿層はドット加工により形成されている
請求項1に記載の調湿シート。
【請求項3】
前記生地は、綿製生地である
請求項1または2に記載の調湿シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調湿シートに関する。
【背景技術】
【0002】
調湿シートとしては、例えば「防カビ剤及びシリカゲルを含有する調湿層を備え、且つ、前記調湿層が乾式法で設けられたことを特徴とする、調湿シート。」(特許文献1)等が提案されている。
【0003】
従来、前記シリカゲルを含有する調湿層を生地に接着して調湿シートを作製しようとすると、生地と調湿層との間に、熱可塑性樹脂のようなホットメルト接着剤からなる接着剤層を介在させる必要があった。
【0004】
しかしながら、生地と調湿層との間に接着剤層を介在させてなる調湿シートは、シリカゲルが脱落する、接着剤層によりシートが厚くなる等の不都合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-215095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、接着剤層を介在させることなく、生地と調湿層とを直接接着してなる調湿シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の調湿シートは、生地の片面に、シリカゲルとポリアミド樹脂とを含有する調湿層が形成され、前記調湿層の表面に、ポリウレタンを用いてなる弾性層が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、接着剤層を介在させることなく、生地と調湿層とを直接接着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一態様に係る調湿シートの構成を示す模式図である。
図2】本発明の一態様に係る調湿シートの調湿層の表面を示す図である。
図3】本発明の別の態様に係る調湿シートの生地の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<概要>
本発明の一態様に係る調湿シートは、生地の片面に、シリカゲルとポリアミド樹脂とを含有する調湿層が形成され、前記調湿層の表面に、ポリウレタンを用いてなる弾性層が形成されていることを特徴としている。
【0011】
この態様によれば、接着剤層を介在させることなく、生地と調湿層とを直接接着することができる。
【0012】
また、前記調湿層はドット加工により形成されている。
【0013】
この態様によれば、生地と調湿層との接着性がより良好となる。
【0014】
さらに、前記弾性層はフレームラミネート加工により形成されている。
【0015】
この態様によれば、接着剤層を介在させることなく、調湿層と弾性層とを直接接着することができる。
【0016】
また、前記生地は、綿製生地である。
【0017】
この態様によれば、繰り返し洗濯可能になり、肌触りもよくなる。
【0018】
<第1の実施形態>
以下、本発明の一態様に係る調湿シートについて、図面を参照して説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0019】
図1は、本発明の一態様に係る調湿シートの構成を示す模式図である。
【0020】
1.全体構成
本実施形態の調湿シート100は、生地10の片面に、シリカゲルとポリアミド樹脂とを含有する調湿層20が形成され、調湿層20の表面に、ポリウレタンを用いてなる弾性層30が形成されている。
【0021】
2.生地
生地10の材質は特に限定はないが、通気性のあるものが好ましく、例えば綿、不織布、ガーゼ、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の合成樹脂、レーヨン等があげられるが、綿が好ましい。
【0022】
生地10の寸法は、特に限定はなく、用途に応じて適時選択可能である。
【0023】
3.調湿層
本実施形態の調湿シート100は、生地10の片面に、シリカゲルとポリアミド樹脂とを含有する調湿層20が直接接着されて形成されている。このように、本実施形態の調湿シート100は、接着剤層を介在させずに、生地10と調湿層20とを接着させることができる。
【0024】
調湿層20は、シリカゲルとポリアミド樹脂とを用いて形成されている。ここでのポリアミド樹脂は、シリカゲルを生地10に接着するためのいわゆるバインダーとしての役割を果たすものである。
【0025】
図2は、生地10の表面に形成された調湿層20の表面を示す図である。図中、白い点はドット状に転写、固着させたシリカゲルを示す。
【0026】
シリカゲルとポリアミド樹脂とを所定の割合で配合したものを、生地10(例えば、綿)の片面にコーティング加工(シングルドット加工)することにより、シリカゲルがドット状に転写、固着させて調湿層20が形成される(図2参照)。
【0027】
調湿層20は、シリカゲルがドット状に転写・固着させており、ドット間に空間があるため、通気性に優れている。また、軟らかい生地10(例えば綿等)に加工をした場合にも、生地10の風合いを損なうことがない。
【0028】
3-1.シリカゲル
シリカゲルは、調湿機能や吸湿機能に優れているため、湿度を一定以上に保つことができる。
【0029】
また、シリカゲルは水分の他に空気中に飛散する臭いの元であるアンモニア、トリメチルアミン、硫化水素、メルカプタンや、加齢臭の原因となるノネナールガス等も吸着する消臭機能も有する。
【0030】
シリカゲルの粒は、多数の微細貫通孔を有しており、高湿度雰囲気下では表面吸着又は毛細管現象により空気中の水分を吸収し、乾燥雰囲気下では吸収した水分を放出し得る機能を有するものが好ましい。そのため、かかる吸湿機能及び放湿機能を良好にするべく、本実施形態におけるシリカゲルには微細空間容積が0.5~1.0ml/g及び表面積が350~650m/gの範囲内にあるものが好ましい。
【0031】
また、微細貫通孔の孔径は30~120オングストロームのものが吸湿機能等を良好に発揮する上で好ましい。
【0032】
3-2.ポリアミド樹脂
シリカゲルとポリアミド樹脂との配合割合は特に限定はないが、シリカゲル40~80重量%:ポリアミド樹脂60~20重量%が好ましく、特に好ましくはシリカゲル50~70重量%:ポリアミド樹脂50~30重量%、最も好ましくはシリカゲル60重量%:ポリアミド樹脂40重量%である。このような範囲であれば、ポリアミド樹脂がシリカゲルを生地10に接着するためのバインダーとしての役割を良好に果たすからである。
【0033】
4.弾性層
本実施形態の調湿シート100は、調湿層20の片面(図2参照)に、弾性層30が直接接着されて形成されている。このように、本実施形態の調湿シート100は、接着剤層を介在させずに、と調湿層20と弾性層30とを直接接着させることができる。
【0034】
本実施形態の調湿シート100は、調湿層20の表面に弾性層30が形成されているため、調湿層20中のシリカの脱落を防ぐことができる。
【0035】
弾性層30を構成するポリウレタンは、多孔質の発砲ポリウレタンが好ましい。多孔質の発砲ポリウレタンは、通気性に優れ、また弾性があることから伸縮性にも優れている。また、ポリウレタンは吸水性もあるため、水分の保湿量が増加するという利点もある。
【0036】
弾性層30の厚さは、通常1~10mmであり、好ましくは1~5mmであり、特に好ましくは1.5~3.5mmである。
【0037】
5.調湿シートの作製
まず、生地10(例えば、綿)を準備し、シリカゲルとポリアミド樹脂とを所定の割合で配合したものを、生地10(例えば、綿)の片面に、転写、固着させて、生地の10表面に調湿層20を形成する(図2参照)。具体的には、シリカゲル60重量%とポリアミド樹脂40重量%とを配合し、これを生地10の片面にコーティング加工(シングルドット加工)(条件:ヒートロール温度:150~250℃、加工速度:1~10m/分)してシリカゲルをドット状に転写、固着させて調湿層20を形成する。ドット状に転写されたシリカゲルの表面にポリアミド樹脂が存在するため、バインダーを使用することなく生地10と接着することができる。
【0038】
次に、調湿層20の表面に、ウレタンをフレームラミネート加工して弾性層30を形成する。具体的には、シート状のウレタンフォームを、市販のフレームラミネート装置を用いて、通常の方法で加工することにより、調湿層20と弾性層30とを接着する。
【0039】
<第2の実施形態>
第2の実施形態に係る調湿シートは、図1の生地10に代えて、図3に示す構成の生地1を使用した以外は、第1の実施形態に係る調湿シートと略同様の構成である。
【0040】
1.生地
本実施形態の調湿シートに係る生地としては、例えば図3に示すような生地1を使用することもできる。
【0041】
図3は、第2の実施形態に係る調湿シートの生地1の概略構成を示す断面図である。
【0042】
生地1は、基材シート2と基材シート3とが重ね合わせられ、その重ね合わせられた面4,5同士の間に、多数の粒状をなすシリカゲル6が挟持されて調湿層9が形成されている。生地1は、例えば、基材シート2と基材シート3との間に、多数の粒状をなすシリカゲル6を挟み、縫合や熱溶着等により固定して調湿層9を形成することにより作製することができる。
【0043】
生地1は可撓性で通気性を備え、内部に調湿機能を有する材料を備えている。
【0044】
1-1.基材シート
基材シート2,3は、特に限定はないが、通気性を備え、空気や湿分を透過可能なものが好ましく、例えば不織布、織布、編物等が用いられる。基材シート2,3の材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂等の合成樹脂、レーヨン等が使用できる。基材シート2はウェブ7の集合体であり、同じく基材シート3はウェブ8の集合体である。
【0045】
1-2.調湿層
調湿層9の材質は、調湿機能を有するものであれば特に限定はなく、例えば、シリカゲルや、ゼオライト、トルマリン等の天然多孔石、備長炭等の炭材や活性炭、パーライト、ケイ酸ソーダ等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併用することができる。これらのなかでも、調湿機能や消臭機能に優れ、即効性がある点でシリカゲルが好適に用いられる。シリカゲルは水分の他に空気中に飛散する臭いの元であるアンモニア、トリメチルアミン、硫化水素、メルカプタンや、加齢臭の原因となるノネナールガス等も吸着し消臭機能をも有する。
【0046】
調湿層9は、図3に示すように、基材シート2,3間において層状(図では4層)をなし、基材シート2,3の対向面4,5間に全体に亘り均一に分布してなる多数のシリカゲル6の集合体である。シリカゲル6を上下両側から矜持した状態において、基材シート2,3の対向面4,5は、図3において拡大して示すように、基材シート2,3の構成素材であるウェブ7,8により互いに縫合されている。
【0047】
シリカゲル6を固定するために、基材シート2と基材シート3との重合部分にはシリカゲル6を上下両側から挟持した状態においてニードルパンチが複数箇所に亘って施されている。すなわち各ニードルパンチの箇所において基材シート2と基材シート3のウェブ7,8同士が機械的に絡み合うことにより、その絡み合った各箇所付近に基材シート2と基材シート3とが接合され固定されている。これにより、ウェブ7,8により対向面4と対向面5との間が縫合された基材シート2と基材シート3にてシリカゲル6は層状をなしたまま移動不能に挟着保持されている。
【0048】
シリカゲル6の粒は、多数の微細貫通孔を有しており、高湿度雰囲気下では表面吸着又は毛細管現象により空気中の水分を吸収し、乾燥雰囲気下では吸収した水分を放出し得る機能を有している。そのため、かかる調湿機能及び放湿機能を良好にするべく、本実施形態におけるシリカゲル6には微細空間容積が0.5~1.0ml/g及び表面積が650~350m/gの範囲内にあるものが採用されている。
【0049】
また、微細貫通孔の孔径は30~120オングストロームのものが調湿機能等を良好に発揮する上で好ましい。
【0050】
このように、多数のシリカゲル6の粒が基材シート2と基材シート3とに挟持されることで、高い調湿性、防湿性、消臭性を長時間に亘って保つことができる。
【0051】
<変形例>
以上、一実施形態に係る調湿シートを説明したが、本発明はこの実施形態に限られるものではなく、例えば、以下のような変形例であってもよい。また、実施形態と変形例とを組み合わせたものでもよいし、変形例同士を組み合わせたものでもよい。また、実施形態や変形例に記載していない例や要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても本発明に含まれる。
【0052】
1.ドット加工
実施形態では、調湿層20をドット加工により形成したが、これに限定されるものではない。
【0053】
2.フレームラミネート加工
実施形態では、弾性層30をフレームラミネート加工により形成したが、これに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の実施形態に係る調湿シートは、(1)人と接して蒸れやすい箇所、例えば、自動車のシート、シートカバー、靴(スニーカー、安全靴等)、靴の中敷き、椅子(座面、背板)、枕、寝具、クッション、アパレル等の服飾等や、(2)物を収納するケースやその内装材、例えば、アタッシュケースやカバン等の資材、カメラ,カメラレンズ,パソコン等の電子部品を収納する電子部品用ケース、楽器ケース、雑貨製品等のインテリア製品等に使用することができる。
【符号の説明】
【0055】
100 調湿シート
10 生地
20 調湿層
30 弾性層
図1
図2
図3