(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】工具取り付け支援具
(51)【国際特許分類】
B23B 29/04 20060101AFI20240903BHJP
B23Q 3/18 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
B23B29/04 A
B23Q3/18 D
(21)【出願番号】P 2021023730
(22)【出願日】2021-02-17
【審査請求日】2023-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】591033755
【氏名又は名称】エヌティーツール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 均
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-105283(JP,A)
【文献】登録実用新案第3166625(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2010/0322722(US,A1)
【文献】特開平11-077411(JP,A)
【文献】実公昭42-003590(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/00- 3/18
B23B27/00-29/34
B23B31/00-33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃部と工具シャンク部を有する工具を工具ホルダに取り付ける作業を支援する工具取り付け支援具であって、
環状部材を備え、
前記環状部材は、環状部材中心線の延在方向に沿って一方側および他方側に形成されている第1の端面および第2の端面と、外周面と、内周面と、前記内周面により形成され、前記第1の端面と前記第2の端面に開口し、前記環状部材中心線の延在方向に沿って延在する内側空間とを有し、
前記内側空間は、第1の空間部分と、前記第1の空間部分と前記外周面との間に形成されている第2の空間部分を有し、
前記内側空間は、前記工具の前記工具シャンク部が、前記第2の空間部分を介して前記第1の空間部分内に挿入可能および前記第1の空間部分内から抜き出し可能であるとともに、前記第1の空間部分内を前記環状部材中心線の延在方向に沿って移動可能に構成され、
前記内側空間の前記第1の空間部分内に挿入された前記工具シャンク部の、前記環状部材に対する工具中心線回りの位置を設定する第1の位置決め機構と、
前記環状部材の、前記工具ホルダに対する前記環状部材中心線回りの位置を設定する第2の位置決め機構を備えることを特徴とする工具取り付け支援具。
【請求項2】
請求項1に記載の工具取り付け支援具であって、
前記工具シャンク部の外周面は、前記工具中心線の延在方向に沿って延在する、少なくとも1つの平坦面を有し
ており、
さらに、第1の押圧部材を備え、
前記第1の押圧部材は、前記環状部材中心線の延在方向と交差する方向に沿って移動可能であるとともに、前記第1の押圧部材の移動方向と交差する方向に沿って延在する押圧面が、前記環状部材の前記内周面のうち、前記第1の空間部分を形成する第1の空間形成部分から前記第1の空間部分内に突出可能に構成され、
前記工具シャンク部が、前記第1の空間部分内に、前記
少なくとも1つの平坦面のうちの1つが前記第1の押圧部材の前記押圧面に対向するように挿入された状態で、前記第1の押圧部材を
、前記環状部材中心線の延在方向と交差する方向に沿って前記第1の空間部分側に移動させることにより、前記第1の押圧部材の前記押圧面によって前記
少なくとも1つの平坦面のうちの前記1つが押圧され、前記工具シャンク部の外周面が前記第1の空間形成部分に当接して、前記
少なくとも1つの平坦面のうちの前記1つの、前記工具中心線回りの回転が規制されるように構成され、
前記第1の位置決め機構は、
前記第1の押圧部材と、前記第1の空間形成部分
と、前記工具シャンク部の前記少なくとも1つの平坦面のうちの前記1つとにより構成されていることを特徴とする工具取り付け支援具。
【請求項3】
請求項2に記載の工具取り付け支援具であって、
前記工具シャンク部の外周面は、前記工具中心線の延在方向と直角な断面で見て、第1のシャンク部外周面部分と、少なくとも1つの第2のシャンク部外周面部分を有し、前記第1のシャンク部外周面部分は、前記工具中心線を中心とする円に沿って延在し、前記
少なくとも1つの第2のシャンク部外周面部分は、
当該少なくとも1つの第2のシャンク部外周面部分の周方向中心と前記工具中心線とを結ぶ線と交差する方向に直線状に延在するように形成されており、
前記
少なくとも1つの第2のシャンク部外周面部分が前記
少なくとも1つの平坦面として用いられることを特徴とする工具取り付け支援具。
【請求項4】
請求項2または3に記載の工具取り付け支援具であって、
さらに、第2の押圧部材を備え、
前記第2の押圧部材は、当接部材と、弾性部材を有し、
前記当接部材は、前記環状部材中心線を挟んで前記第1の押圧部材と反対側の個所に、前記環状部材中心線の延在方向と交差する方向に沿って移動可能であるとともに、前記第1の空間形成部分から前記第1の空間部分内に突出可能に構成され、
前記弾性部材の弾性力が、前記当接部材を、前記第1の空間形成部分から前記
第1の空間部分内に飛び出る方向に移動させる力として作用するように構成され、
前記工具シャンク部が、前記第1の空間部分内に、前記
少なくとも1つの平坦面のうちの前記1つが前記第1の押圧部材の前記押圧面に対向するように挿入された状態で、前記第1の押圧部材を
、前記環状部材中心線の延在方向と交差する方向に沿って前記第1の空間部分側に移動させることにより、前記第1の押圧部材の前記押圧面によって前記
少なくとも1つの平坦面のうちの前記1つが押圧され、前記工具シャンク部の外周面が、前記第2の押圧部材の前記当接部材に当接した状態で、前記第1
の空間形成部分に当接するように構成されていることを特徴とする工具取り付け支援具。
【請求項5】
請求項2~4のうちのいずれか一項に記載の工具取り付け支援具であって、
前記環状部材の前記内側空間の前記第2の空間部分は、前記工具シャンク部が前記第2の空間部分を介して前記第1の空間部分内に挿入されることにより、前記工具シャンク部の前記
少なくとも1つの平坦面のうちの前記1つが、前記第1の押圧部材の前記押圧面に対向する位置に配置されるように形成されていることを特徴とする工具取り付け支援具。
【請求項6】
請求項1に記載の工具取り付け支援具であって、
前記工具シャンク部の外周面は、前記工具中心線の延在方向に沿って延在する少なくとも1つの平坦面を
有しており、
さらに、前記環状部材の前記内周面のうち、前記第1の空間部分を形成する第1の空間形成部分は、前記工具シャンク部の、前記工具中心線回りの回転を規制するように形成されており、
前記第1の位置決め機構は、前記工具シャンク部の前記
少なくとも1つの平坦面のうちの前記
1つと前記第1の空間形成部分により構成されていることを特徴とする工具取り付け支援具。
【請求項7】
請求項1~6のうちのいずれか一項に記載の工具取り付け支援具であって、
前記第2の位置決め機構は、前記環状部材と前記工具ホルダのうちの一方に形成されている係合凹部と、他方に形成され、前記一方に形成されている前記係合凹部に着脱自在に係合可能な係合突部とにより構成されていることを特徴とする工具取り付け支援具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具を工具ホルダに取り付ける作業を支援する工具取り付け支援具に関する。
【背景技術】
【0002】
工具を用いてワークを加工する工作機械では、工具は、工具ホルダを介して工作機械の主軸に取り付けられる。この場合、工具ホルダに対する工具の取り付け位置がずれると、加工精度が低下する。このため、工具を工具ホルダに取り付ける際に、工具を正確に位置決めする必要がある。
従来、工具を工具ホルダに取り付ける作業を簡単に、短時間で行うことができるようにするために、特許文献1に開示されている工具取り付け支援具が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている工具取り付け支援具は、工具ホルダ先端面から飛び出ている工具の長さ、すなわち、工具ホルダ先端面と工具の刃部の刃先との間の距離(「工具の突き出し長さ」と呼ばれる)を設定するものである。このため、特許文献1に開示されている工具取り付け支援具は、工具を回転させてワークを加工する工作機械に用いることができる。
一方、工具を固定した状態でワークを加工する工作機械では、工具ホルダに対する工具の位相(工具の刃部の刃先の位相)、すなわち、工具の、工具ホルダに対する工具中心線回りの位置を設定する必要がある。特許文献1に開示されている工具取り付け支援具は、このような工作機械に用いることができない。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、工具の、工具ホルダに対する工具中心線回りの位置を容易に設定することができる工具取り付け支援具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の工具取り付け支援具は、環状部材を備えている。
環状部材は、第1の端面、第2の端面、外周面、内側空間を形成する内周面により形成される。第1の端面と第2の端面は、環状部材中心線の延在方向に沿って一方側および他方側に形成されている。内側空間は、第1の端面と第2の端面に開口し、環状部材中心線の延在方向に沿って延在している。
内側空間は、第1の空間部分と第2の空間部分を有している。第2の空間部分は、第1の空間部分と外周面との間に形成され、環状部材中心線の延在方向と交差する方向に沿って延在している。例えば、環状部材中心線の延在方向と直交(「略直交」を含む)する方向に沿って延在する。
内側空間は、工具の工具シャンク部が、第2の空間部分を介して第1の空間部分内に挿入可能および第1の空間部分内から抜き出し可能に構成されている。また、工具シャンク部が、第1の空間部分内を環状部材中心線の延在方向に沿って移動可能に構成されている。
さらに、本発明は、第1の位置決め機構と第2の位置決め機構を備えている。第1の位置決め機構は、環状部材の内側空間の第1の空間部分内に挿入された工具シャンク部の、環状部材に対する工具中心線回りの位置(位相)を設定する。例えば、第1の位置決め機構は、工具シャンク部を、工具シャンク部中心線回りの位置が第1の位置に設定されるように、環状部材に着脱自在に取り付け可能に構成される。第2の位置決め機構は、環状部材の、工具ホルダに対する環状部材中心線回りの位置(位相)を設定する。例えば、第2の位置決め機構は、環状部材を、環状部材中心線回りの位置が第2の位置に設定されるように、工具ホルダに着脱自在に取り付け可能に構成される。
本発明では、第1の位置決め機構により、環状部材に対する工具シャンク部の位相が設定され、第2の位置決め機構により、工具ホルダに対する環状部材の位相が設定される。これにより、工具シャンク部を有する工具の、工具ホルダに対する、工具中心線回りの位置を容易に設定することができる。
本発明の異なる形態は、工具シャンク部の外周面に、工具中心線の延在方向に沿って延在する少なくとも1つの平坦面が形成されている工具を工具ホルダに取り付ける際に用いることができる。
本形態は、第1の押圧部材を備えている。第1の押圧部材は、環状部材中心線の延在方向と交差する方向に沿って移動可能であるとともに、第1の押圧部材の移動方向と交差する方向に沿って延在する押圧面を有している。例えば、第1の押圧部材は、環状部材中心線と直交(「略直交」を含む)する方向に沿って移動可能であり、押圧面は、第1の押圧部材の移動方向と直交(「略直交」を含む)する方向に延在する。
第1の押圧部材は、押圧面が、環状部材の内周面のうち、第1の空間部分を形成する第1の空間形成部分から第1の空間部分内に突出可能に配置される。例えば、第1の押圧部材は、押圧面が、第1の空間形成部分から環状部材中心線の方向に突出可能に配置される。
そして、工具シャンク部が、第1の空間部分内に、少なくとも1つの平坦面のうちの1つが第1の押圧部材の押圧面に対向するように挿入された状態で、第1の押圧部材を、環状部材中心線の延在方向と交差する方向に沿って第1の空間部分側に移動させることにより、第1の押圧部材の押圧面によって、少なくとも1つの平坦面のうちの1つが押圧され、工具シャンク部の外周面が第1の空間形成部分に当接して、少なくとも1つの平坦面のうちの1つの、工具中心線回りの回転が規制されるように構成されている。例えば、工具シャンク部の少なくとも1つの平坦面のうちの1つが第1の押圧部材の押圧面と面接触することによって、工具シャンク部の、工具中心線回りの回転が規制される。
なお、第1の押圧部材を、環状部材中心線の延在方向と交差する方向に沿って第1の空間部分側に移動させた場合、工具シャンク部が、第1の押圧部材の押圧面と第1の空間形成部分により挟持される。この時、工具の刃部の先端と環状部材との間の距離(例えば、工具の刃部の先端と環状部材の第1の端面あるいは第2の端面との間の距離)が設定される。このため、第1の押圧部材の押圧面を、工具シャンク部の少なくとも1つの平坦面のうちの1つに当接させる位置(工具シャンク部の軸方向に沿った位置)を設定することによって、環状部材を用いて工具を工具ホルダに取り付けた状態における、工具ホルダ先端面から飛び出る工具の長さ(突き出し長さ)を設定することができる。
本形態では、第1の位置決め機構は、第1の押圧部材と、第1の空間形成部分と、工具シャンク部の少なくとも1つの平坦面のうちの1つとにより構成される。
本形態では、工具の工具シャンク部の、環状部材に対する、工具中心線回りの位置を、簡単な構成で設定することができる。さらに、工具の突き出し長さも設定することができる。
本発明の異なる形態では、工具シャンク部の外周面は、工具中心線の延在方向と直角な断面で見て、第1のシャンク部外周面部分と、少なくとも1つの第2のシャンク部外周面部分を有している。第1のシャンク部外周面部分は、工具中心線を中心とする円に沿って延在している。また、少なくとも1つの第2のシャンク部外周面部分は、当該少なくとも1つの第2のシャンク部外周面部分の周方向中心と工具中心線とを結ぶ線と交差する方向に直線状に延在している。例えば、少なくとも1つの第2のシャンク部外周面部分の周方向中心と工具中心線とを結ぶ線と直交(「略直交」を含む)する方向に延在する。
本形態では、少なくとも1つの第2のシャンク部外周面部分が、第1の押圧部材の押圧面によって押圧される少なくとも1つの平坦面として用いられる。
本形態では、工具の工具シャンク部の、環状部材に対する、工具中心線回りの位置をより確実に設定することができる。
本発明の異なる形態は、第2の押圧部材を備えている。第2の押圧部材は、当接部材と弾性部材を有している。
当接部材は、環状部材中心線を挟んで第1の押圧部材と反対側の個所に、環状部材中心線の延在方向と交差する方向に沿って移動可能であるとともに、第1の空間形成部分から第1の空間部分内に突出可能に構成されている。例えば、当接部材は、第1の空間形成部分から環状部材中心線方向に突出可能に構成される。
そして、弾性部材の弾性力が、当接部材を、第1の空間形成部分から第1の空間部分内に飛び出る方向に移動させる力として作用するように構成されている。
本発明の異なる形態では、工具シャンク部の外周面は、工具中心線の延在方向と直角な断面で見て、第1のシャンク部外周面部分と、少なくとも1つの第2のシャンク部外周面部分を有している。第1のシャンク部外周面部分は、工具中心線を中心とする円に沿って延在している。また、少なくとも1つの第2のシャンク部外周面部分は、当該少なくとも1つの第2のシャンク部外周面部分の周方向中心と工具中心線とを結ぶ線と交差する方向に直線状に延在している。例えば、第2のシャンク部外周面部分の周方向中心と工具中心線とを結ぶ線と直交(「略直交」を含む)する方向に延在する。
本形態では、少なくとも1つの第2のシャンク部外周面部分が、第1の押圧部材の押圧面によって押圧される少なくとも1つの平坦面として用いられる。
本形態では、工具の工具シャンク部の、環状部材に対する、工具中心線回りの位置をより確実に設定することができる。
本発明の異なる形態は、第2の押圧部材を備えている。第2の押圧部材は、当接部材と弾性部材を有している。
当接部材は、環状部材中心線を挟んで第1の押圧部材と反対側の個所に、環状部材中心線の延在方向と交差する方向に沿って移動可能であるとともに、第1の空間形成部分から第1の空間部分内に突出可能に構成されている。例えば、当接部材は、第1の空間形成部分から環状部材中心線方向に突出可能に構成される。
そして、弾性部材の弾性力が、当接部材を、第1の空間形成部分から第1の空間部内に飛び出る方向に移動させる力として作用するように構成されている。
本形態では、工具シャンク部が、第1の空間部分内に、少なくとも1つの平坦面のうちの1つが、第1の押圧部材の押圧面に対向するように挿入された状態で、第1の押圧部材を、環状部材中心線の延在方向と交差する方向に沿って第1の空間部分側に移動させることにより、第1の押圧部材の押圧面によって、少なくとも1つの平坦面のうちの1つが押圧され、工具シャンク部の外周面が、第2の押圧部材の当接部材に当接した状態で、第1の空間形成部分に当接するように構成されている。当接部材は、工具シャンク部の外周面が当接部材(当接部材の表面)に当接した状態における、工具シャンク部の、工具中心線回りの回転が容易となるように形成される。例えば、当接部材として球状のボールが用いられる。これにより、工具シャンク部の、工具中心線回りの位置を、工具シャンク部の少なくとも1つの平坦面のうちの1つと第1の押圧部材の押圧面とが面接触する位置(第1の位置)に容易に設定することができる。
本形態では、工具の工具シャンク部の、環状部材に対する、工具中心線回りの位置をより容易、確実に設定することができる。
本発明の異なる形態では、環状部材の内側空間の第2の空間部分は、工具シャンク部が第2の空間部分を介して第1の空間部分内に挿入されることにより、工具シャンク部の少なくとも1つの平坦面のうちの1つが、第1の押圧部材の押圧面に対向する位置に配置されるように形成されている。例えば、第2の空間部分の内径が、工具ホルダの最小外径より大きく、最大外径より小さく設定される。
本形態では、工具を工具ホルダに取り付ける作業がより容易となる。
本発明の異なる形態は、工具シャンク部の外周面が、工具中心線の延在方向に沿って延在する少なくとも1つの平坦面を有する工具を工具ホルダに取り付ける際に用いることができる。
本形態では、環状部材の内周面のうち、第1の空間部分を形成する第1の空間形成部分は、工具シャンク部の少なくとも1つの平坦面のうちの1つの、工具中心線回りの回転を規制するように形成されている。本形態の環状部材を用いることにより、例えば、工具ホルダを環状部材の第1の空間部分内に挿入することで、工具ホルダの、環状部材に対する、工具ホルダ中心線回りの位置を設定することができる。
本形態では、第1の位置決め機構は、工具シャンク部の少なくとも1つの平坦面のうちの1つと、第1の空間形成部分により構成されている。
本形態では、環状部材を簡単に構成することができるとともに、工具を工具ホルダに取り付ける作業がより容易となる。
本発明の異なる形態では、第2の位置決め機構は、環状部材と工具ホルダのうちの一方に形成されている係合凹部と、他方に形成され、一方に形成されている係合凹部に着脱自在に係合可能な係合突部とにより構成されている。係合凹部や係合突部の形状、数、配置位置等は、適宜選択することができる。
本形態では、環状部材の、工具ホルダに対する、環状部材中心線回りの位置を、簡単な構成で設定することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の工具取り付け支援具を用いることにより、工具の、工具ホルダに対する工具中心線回りの位置を容易に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の工具取り付け支援具を使用可能な工具ホルダの第1の例の断面図である。
【
図2】本発明の工具取り付け支援具の第1の実施形態の断面図である。
【
図3】第1の実施形態の工具取り付け支援具を工具に取り付ける動作を説明する図である。
【
図4】第1の実施形態の工具取り付け支援具を工具に取り付ける動作を説明する図である。
【
図5】第1の実施形態の工具取り付け支援具を工具に取り付ける動作を説明する図である。
【
図6】
図5の矢印VI-VI方向から見た図である。
【
図7】第1の実施形態の工具取り付け支援具を用いて工具を第1の例の工具ホルダに取り付ける動作を説明する図である。
【
図8】第1の実施形態の工具取り付け支援具を用いて工具を第1の例の工具ホルダに取り付ける動作を説明する図である。
【
図9】本発明の工具取り付け支援具を使用可能な工具ホルダの第2の例の断面図である。
【
図10】本発明の工具取り付け支援具の第2の実施形態の断面図である。
【
図11】第2の実施形態の工具取り付け支援具を用いて工具を第2の例の工具ホルダに取り付ける動作を説明する図である。
【
図12】本発明の工具取り付け支援具の第3の実施形態の断面図である。
【
図13】本発明の工具取り付け支援具の第4の実施形態の断面図である。
【
図14】本発明の工具取り付け支援具の第5の実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
本明細書では、工具ホルダの工具挿入空間の中心線Pを「工具ホルダ中心線」といい、中心線Pの延在方向を「軸方向」といい、軸方向に沿って、工具挿入空間内に工具シャンク部が挿入される側(
図1、
図9において、矢印Aで示される左側)を「先端側」といい、工具シャンク部が挿入される側と反対側(
図1、
図9において、矢印Bで示される右側)を「後端側」という。工具シャンク部の中心線Tを「工具中心線」といい、中心線Tの延在方向に沿って、工具挿入空間に挿入される側(
図7において右側)を「後端側」といい、工具挿入空間に挿入される側と反対側(
図7において左側)を「先端側」という。プリセットリング(環状部材)の内側空間の中心線Qを「プリセットリング中心線(環状部材中心線)」といい、中心線Qに沿って、工具ホルダ先端面に対向する側(
図2(b)において右側)を「後端側」といい、工具ホルダ先端面と対向する側と反対側(
図2(b)において左側)を「先端側」という。
【0009】
先ず、工具を取り付ける工具ホルダの第1の例を、
図1を参照して説明する。
第1の例の工具ホルダ10は、本体部20とスリーブ30により構成されている。
【0010】
本体部20は、軸方向に沿って延在する筒状に形成されている。
本体部20は、本体部内周面21、本体部外周面22、本体部先端面20A、本体部後端面20Bを有している。本体部内周面21によって、軸方向に沿って延在し、断面が円形を有する本体部内側空間20aが形成される。
本体部20には、加圧媒体が充填される流体通路23が形成されている。加圧媒体としては、例えば油が用いられる。また、本体部20には、流体通路23内の加圧媒体の圧力を調整する圧力調整ネジ40が設けられている。
本体部外周面22は、本体部先端面20A側に本体部外周面部分22aを有している。本体部外周面部分22aによって、工具ホルダ中心線Pを中心線とする突部24が形成されている。突部24は、後述する、プリセットリング110の凹部110fに着脱自在に挿入可能(係合可能)に形成されている。本実施形態では、突部24を形成する本体部外周面部分22aは、断面が多角形に形成されている。
【0011】
スリーブ30は、軸方向に沿って延在する筒状に形成されている。
スリーブ30は、スリーブ内周面31、スリーブ外周面32、スリーブ先端面30A、スリーブ後端面30Bを有している。スリーブ内周面31によって、軸方向に沿って延在し、断面が円形を有するスリーブ内側空間30aが形成される。
スリーブ外周面32は、径方向内側に窪んでいる凹面に形成されているスリーブ外周面部分32a、32bを有している。スリーブ外周面部分32aおよび32bとスリーブ内周面31との間に、径方向に沿って弾性変形可能な薄肉の把持部33aおよび33bが形成される。
スリーブ30は、本体部内側空間20a内に先端側から挿入された状態で本体部20に固定される。例えば、スリーブ外周面32を本体部内周面21にロウ付けする。
これにより、スリーブ外周面32と本体部内周面21との間に、加圧媒体が注入される密閉領域が形成される。すなわち、スリーブ外周面部分32aおよび32bと本体部内周面21との間に、加圧室25aおよび25bが形成される。加圧室25aおよび15bは、流体通路23と連通している。
スリーブ内側空間30aと本体部内側空間20aによって、「工具挿入空間」が形成される。本体部先端面20Aとスリーブ先端面30Aによって、「工具ホルダ先端面」が形成される。
【0012】
図3、
図6に示されている工具50を工具ホルダ10に取り付ける場合には、工具50の工具シャンク部52を工具挿入空間内に挿入する。そして、圧力調整ネジ40を操作し、加圧室25aおよび25b内の加圧媒体の圧力を高める。これにより、把持部33aおよび33bが径方向内側に弾性変形し、スリーブ内周面31の、把持部33aおよび33bに対応する部分によって工具シャンク部52が把持される。
工具50を取り外す場合には、加圧室25aおよび25b内の加圧媒体の圧力を低下させる。
加圧室25aおよび25bと、把持部33aおよび33bによって、工具シャンク部52(工具50)を把持する把持機構が構成される。
【0013】
次に、工具ホルダ10に取り付けることができる工具の一例を、
図3、
図6を参照して説明する。
工具50は、刃部51と工具シャンク部52を有している。
工具シャンク部52は、断面が円形を有する円柱状部材により形成されている。また、工具シャンク部52の外周面には、円柱状部材の外周面を、工具中心線Tの延在方向に沿って切り欠いた形状を有する第1の平坦面52b1と第2の平坦面52b2が形成されている。第1の平坦面52b1と第2の平坦面52b2は、工具中心線Tを挟んで対向する個所に形成されている。
具体的には、工具シャンク部52の外周面は、
図3に示されているように、工具中心線Tの延在方向と直角な断面で見て、外周面部分52a、第1の平坦面52b1および第2の平坦面52b2を有している。外周面部分52aは、工具中心線Tを中心とする半径(D1/2)mmの円に沿って延在する円弧面に形成されている。第1の平坦面52b1(第2の平坦面52b2)は、工具中心線Tから(D2/2)mmの位置に、第1の平坦面52b1(第2の平坦面52b2)の周方向中心と工具中心線Tとを結ぶ線と直交(「略直交」を含む)する方向に直線状に延在する平坦面に形成されている。すなわち、工具シャンク部52は、最小外径D2mm(第1の平坦面52b1と第2の平坦面52b2との間の間隔)、最大外径D1mm(D1>D2)(外周面部分52aの直径)を有している。
なお、工具50としては、1を含む種々の数の平坦面が工具シャンク部52の外周面に形成されている工具が用いられる。
外周面部分52aが、「第1のシャンク部外周面部分」あるいは「第1の外周面部分」に対応し、平坦面(第1の平坦面52b1、第2の平坦面52b2)が、「第2のシャンク部外周面部分」あるいは「第2の内周面部分」に対応し、第1の平坦面52b1が、「平坦面のうちの1つ」あるいは「2つの第2のシャンク部外周面部分のうちの一方」あるいは「2つの第2の外周面部分のうちの一方」に対応し、第2の平坦面52b2が、「2つの第2のシャンク部外周面部分のうちの他方」あるいは「2つの第2の外周面部分の他方」に対応する。
【0014】
次に、工具50を工具ホルダ10に取り付ける場合に、工具50の、工具ホルダ10に対する位置を設定する作業を支援する、本発明の工具取り付け支援具の第1の実施形態を、
図2を参照して説明する。なお、
図2(a)は、第1の実施形態の工具取り付け支援具100の断面図である。また、
図2(b)は、
図2(a)の矢印II-II方向から見た断面図である。
【0015】
本実施形態の工具取り付け支援具100は、プリセットリング110により構成されている。
プリセットリング110は、プリセットリング中心線Q(以下、単に「中心線Q」という)に沿って延在する環状部材として形成され、第1のプリセットリング端面(以下、単に「第1の端面」という)110A、第2のプリセットリング端面(以下、単に「第2の端面」という)110B、プリセットリング内周面(以下、単に「内周面」という)111およびプリセットリング外周面(以下、単に「外周面」という)112を有している。
第1の端面110Aおよび第2の端面110Bは、中心線Qに沿って先端側および後端側に形成されている。
内周面111によって、第1の端面110Aと第2の端面110Bに開口し、中心線Qに沿って延在するプリセットリング内側空間(以下、単に「内側空間」という)110aが形成されている。すなわち、内側空間110aは、第1の端面110Aと第2の端面110Bを連通する連通孔として形成されている。
内周面111は、中心線Qの延在方向と直角な断面で見て(
図2(a)参照)、プリセットリング内周面部分(以下、単に「内周面部分」という)111a~111gを有している。内周面部分111aと111cは、工具シャンク部52の外周面部分52aの半径(D1/2)に等しい(「略等しい」を含む)半径Rmmの円弧状に形成されている。なお、内周面部分111aは、中心線Qを中心とする円に沿って延在する円弧面に形成されている。内周面部分111bは、内周面部分111aの一方端部(外周面112と反対側の端部)と内周面部分111cの一方端部(外周面112と反対側の端部)を接続し、直線状に延在している。内周面部分111dは、内周面部分111aの他方端部と外周面112を接続し、直線状に延在している。内周面部分111eは、内周面部分111cの他方端部と外周面112を接続し、内周面部分111dと平行(「略平行」を含む)に直線状に延在している。なお、内周面部分111b、111cの形状は、適宜変更可能である。
内周面部分111a~111cにより第1のプリセットリング空間部分(以下、「第1の空間部分」という)110bが形成される。また、内周面部分111dと111eにより、第2のプリセットリング空間部分(以下、「第2の空間部分」という)110cが形成される。第2の空間部分110cは、第1の空間部分110bから、中心線Qの延在方向と交差する方向に沿って延在している。本実施形態では、第2の空間部分110cは、中心線Qの延在方向と直交(「略直交」を含む)する方向に沿って延在している。
【0016】
本実施形態では、プリセットリング110が、本発明の「環状部材」に対応し、プリセットリング内側空間110aが、本発明の「第1の端面と第2の端面に開口し、環状部材中心線の延在方向に沿って延在する内側空間」に対応し、第1のプリセットリング空間部分110bが、本発明の「第1の空間部分」に対応し、第2のプリセットリング空間部分110cが、本発明の「第2の空間部分」に対応し、プリセットリング内周面部分111a~111c、111eが、本発明の「第1の空間部分を形成する第1の空間形成部分」に対応する。
【0017】
また、プリセットリング110には、中心線Qの延在方向と交差する方向に沿って延在する孔110dと110eが形成されている。本実施形態では、孔110dと110eは、中心線Qの延在方向と直交(「略直交」を含む)する方向に延在している。孔110eは、内周面部分111aに開口している。孔110dは、中心線Qを挟んで、孔110eと反対側の内周面部分、本実施形態では、内周面部分111cと111eに開口している。本実施形態では、孔110dと110eは、内周面111と外周面112に開口している貫通孔として形成されている。
孔110dには、ネジ120が、孔110dの延在方向に沿って移動可能に配置されている。ネジ120は、第1の空間部分110b側(中心線Q側)に先端面121を有している。ネジ120は、中心線Qの延在方向と直角な断面で見て(
図2(a)参照)、先端面121が、先端面121の周方向中心と中心線Qとを結ぶ線と交差する方向に延在するように配置されている。本実施形態では、先端面121は、先端面121の周方向中心と中心線Qとを結ぶ線と直交(「略直交」を含む)する方向に延在するように配置されている。
孔110eには、ボールプランジャ130が配置されている。ボールプランジャ130は、本体部131、スプリング132、ボール133を有している。本体部131は、孔110eの内周面にネジ結合され、孔110eの延在方向に沿って移動可能である。本体部131の、第1の空間部分110b側には、ボール133の直径より小さい内径を有する開口部が形成されている。ボール133は、スプリング132の弾性力によって、開口部から第1の空間部分110b側(中心線Q側)に飛び出る方向に移動する力が加えられている。
本実施形態では、孔110dおよび110eは、中心線Qを挟んで対向する個所に、孔110dおよび110eの中心線が、中心線Qを通るように形成されている。
【0018】
本実施形態では、ネジ120が、本発明の「第1の押圧部材」に対応し、ネジ120の先端面121が、本発明の「押圧面」に対応する。
また、ボールプランジャ130が、本発明の「第2の押圧部材」に対応し、ボール133が、本発明の「第2の弾性部材の当接部材」に対応し、スプリング132が、本発明の「第2の押圧部材の弾性部材に対応する。
【0019】
また、プリセットリング110は、第2の端面110B側に、内周面部分111fと111gによって、中心線Qを中心線とする凹部110fが形成されている。
凹部110fを形成する内周面部分111gは、工具ホルダ10の突部24が、着脱自在に挿入可能(係合可能)に形成されている。本実施形態では、突部24の多角形の辺の数(角数)と同じ辺の数(角数)を有する多角形に形成されている。突部24と凹部110fは、着脱自在に嵌合可能に形成されている。
工具ホルダ10の突部24がプリセットリング110の凹部110fと係合することによって、プリセットリング110の、工具ホルダ10に対する、中心線Q回りの位置(位相)が設定される。
本実施形態では、工具ホルダ10の突部24とプリセットリング110の凹部110fによって、本発明の「環状部材の、工具ホルダに対する、環状部材中心線回りの位置を設定する第2の位置決め機構」が構成される。
なお、第2の位置決め機構を構成する凹部を工具ホルダ10に形成し、突部をプリセットリング110に形成することもできる。
【0020】
次に、第1の実施形態の工具取り付け支援具100を用いて、工具50を工具ホルダ10に取り付ける作業を、
図3~
図8を参照して説明する。
図3は、プリセットリング110の第1の空間部分110b内に工具シャンク部52が挿入された状態を示す断面図である。
図4は、ボールプランジャ130の作用を説明する断面図である。
図5は、第1の空間部分110b内に挿入された工具シャンク部52をネジ120により押圧した状態を示す断面図であり、
図6は、
図5を矢印VI-VI方向から見た断面図である。
図7は、工具シャンク部52にプリセットリング110が取り付けられた工具50を工具ホルダ10に取り付けた状態を示す断面図である。
図8は、プリセットリング110を取り外した状態を示す断面図である。
【0021】
先ず、工具取り付け支援具100を構成するプリセットリング110を、工具50の工具シャンク部52に取り付ける動作を説明する。
工具シャンク部52を、プリセットリング110の第2の空間部分110cを介して第1の空間部分110b内に挿入する。そして、第1の空間部分110b内に挿入した工具シャンク部52の第1の平坦面52b1が、ネジ120の先端面121に対向する位置に配置されるように、工具シャンク部52の、工具中心線T回りの位置を調整する。
本実施形態では、内周面部分111dと111eとの間の距離(第2の空間部分110cの内径)Lが、工具シャンク部52の最小外径D2より大きく、最大外径D1より小さく設定されている。これにより、工具シャンク部52を、プリセットリング110の第2の空間部分110cを介して第1の空間部分110b内に挿入した場合、
図3に示されているように、工具シャンク部52の第1の平坦面52b1が、ネジ120の先端面121に対向する位置に配置される。
なお、この時、工具シャンク部52を、外周面部分52aがプリセットリング110の第1の空間部分110bを形成する内周面部分111bに当接する位置まで第1の空間部分110b内に挿入するのが好ましい。
【0022】
工具シャンク部52を第1の空間部分110b内に挿入した状態で、ネジ120を、孔110dの延在方向に沿って第1の空間部分110b側(中心線Q方向)に移動させる。
ネジ120の先端面121が工具シャンク部52の第1の平坦面52b1に当接すると、工具シャンク部52は、ネジ120により押圧されて移動する。ネジ120を更に移動させると、
図4(a)に示されているように、工具シャンク部52の第2の平坦面52b2が、ボールプランジャ130のボール133に当接する。
この場合、第2の平坦面52b2がボールプランジャ130のボール133の表面133aに当接した状態(スプリング132の弾性力により、ネジ120の押圧力と逆向きの力が第2の平坦面52b2に作用している状態)で、第1の平坦面52b1がネジ120の先端面121により押圧されるため、工具シャンク部52は、工具中心線T回りに、
図4(a)に矢印で示されている方向に回転する。そして、工具シャンク部52の、工具中心線T回りの位置(位相)が、
図4(b)に示されているように、ネジ120の先端面121が第1の平坦面52b1と面接触(「面当たり」ともいう)する位置に設定される。なお、
図3に示されている状態から
図4(a)に示されている状態に移行する際にも、ネジ120の押圧力は、ネジ120の先端面121が第1の平坦面52b1と面接触するように工具シャンク部52を回転させる力として作用する。
ネジ120の先端面121が第1の平坦面52b1に面接触する、工具シャンク部52の工具中心線T回りの位置が、本発明の「第1の位置」に対応する。
ネジ120を更に移動させると、
図5に示されているように、工具シャンク部52の、工具中心線T回りの位置が設定された状態で、工具シャンク部52の外周面部分52aの、第2の平坦面52b2の周囲の部分が、内周面部分111aに当接する。
内周面部分111aは、工具シャンク部52の外周面部分52aに対応する形状に形成されている。本実施形態では、内周面部分111aは、中心線Qを中心とし、工具シャンク部52の外周面部分52aの半径(D1/2)と等しい半径Rの円弧面に形成されている。これにより、工具シャンク部52は、工具中心線T回りの位置が設定された状態で、ネジ120と内周面部分111aによって安定に保持(挟持)される。
プリセットリング110を工具シャンク部52から取り外す場合には、ネジ120を第1の空間部分110bと反対側に移動させる。
【0023】
以上により、工具シャンク部52の、プリセットリング110に対する、工具中心線T回りの位置が設定される。第1の空間部分110bの形状、ネジ120やボールプランジャ130の配置位置は、工具50の工具シャンク部52に形成されている平坦面(例えば、第1の平坦面52b1、52b2)と刃部51の刃先との、工具中心線T回りの位置関係に基づいて設定される。
本実施形態では、工具シャンク部52の第1の平坦面52b1、ネジ120およびプリセットリング110の第1の空間形成部分111aによって、本発明の「工具シャンク部の、環状部材に対する、工具中心線回りの位置を設定する第1の位置決め機構」が構成される。
なお、工具シャンク部52の第2の平坦面52b2とボールプランジャ130によって、工具シャンク部52の、工具中心線T回りの回転(工具シャンク部52の第1の平坦面52b1とネジ120の先端面121が面接触する位置への回転)が容易となる。
【0024】
次に、工具シャンク部52にプリセットリング110が取り付けられた状態で、工具50を工具ホルダ10に取り付ける。
具体的には、
図7に示されているように、工具シャンク部52の、プリセットリング110が取り付けられている個所より後端側の部分を、工具ホルダ10の工具挿入空間内に挿入する。また、プリセットリング110の、第2の端面110B側に形成されている凹部110f内に、工具ホルダ10の、工具ホルダ先端面側に形成されている突部24を挿入する。この時、工具ホルダ10の工具ホルダ先端面(本体部先端面20A)が、プリセットリング110の内周面部分111fに当接するように、プリセットリング110を工具ホルダに取り付ける。
本実施形態では、凹部110fの内周面(内周面部分111g)および突部24の外周面(外周面部分22a)は、辺の数(角数)が同じ多角形に形成されている。また、凹部110f内に挿入される突部24の位相が定められている。例えば、凹部110fの所定の辺(角)と突部24の所定の辺(角)に目印を付け、目印が一致するように突部24を凹部110f内に挿入する。
突部24の所定位置が凹部110fの所定位置と対向する、プリセットリング110の中心線Q回りの位置が、本発明の「第2の位置」に対応する。
これにより、プリセットリング110の、工具ホルダ10に対する、中心線Q回りの位置(位相)が設定される。
ここで、前述したように、工具シャンク部52の、プリセットリング110に対する、工具中心線T回りの位置が設定されている。
このため、工具50(工具シャンク部52)の、工具ホルダ10に対する、工具中心線T回りの位置が設定される。
なお、工具ホルダ10の外周面部分22aの周方向に沿った所定個所に形成された突部と、プリセットリング110の凹部110fを形成する内周面部分11gの周方向に沿った所定個所に形成され、突部と係合可能な凹部によって、工具50(工具シャンク部52)の、工具ホルダ10に対する、工具中心線T回りの位置を設定する第2の位置決め機構を構成することもできる。
【0025】
次に、
図7に示されている状態において、工具ホルダ10の圧力調整ネジ40を操作して、加圧室25aおよび25b内の加圧媒体の圧力を高める。これにより、把持部33aおよび33bが径方向内側に弾性変形し、スリーブ内周面31の、把持部33aおよび33bに対応する部分によって、工具挿入空間内に挿入されている工具シャンク部52が挟持される。
その後、
図8に示されているように、プリセットリング110を工具シャンク部52から取り外す。
【0026】
工作機械の主軸に装着された工具ホルダに取り付けられている工具を用いてワークを加工する場合、工具ホルダに対する工具の位相だけでなく工具の突き出し長さを設定する必要がある。
第1の実施形態の工具取り付け支援具100を用いることにより、前述したように、工具ホルダに対する工具の位置(位相)を設定することができる。
第1の実施形態の工具取り付け支援具100を用いることによって、工具の突き出し長さも設定することもできる。
第1の実施形態の工具取り付け支援具100を用いて工具の突き出し長さを設定する動作を以下に説明する。
【0027】
工具シャンク部52をプリセットリング110に取り付ける際に、工具50の刃部51の先端とプリセットリング110の第1の端面110Aとの間の距離M1あるいは刃部51の先端と内周面部分111fとの間の距離N(
図6参照)が設定値となるように設定する。例えば、第1の空間部分110b内に挿入した工具シャンク部52を、第1の空間部分110bの延在方向(中心線Qの延在方向)に沿って移動させる。第1の端面110Aと内周面部分111fとの間の距離M2は定められているため、距離M1を設定値に設定することによって、距離N(=M1+M2)を設定値に設定することができる。
距離MあるいはNをそれぞれの設定値に設定する方法としては、例えば、特許文献1(特開2001-105283号公報)に開示されている方法を用いることができる。
そして、距離M1あるいはNをそれぞれの設定値に設定した状態で、ネジ120を移動させて工具シャンク部52をプリセットリング110に取り付ける。
工具50(工具シャンク部52)を取り付けたプリセットリング110を、前述した方法で工具ホルダ10に取り付けると、
図7、
図8に示されているように、工具ホルダ先端面(本体部先端面20A)から飛び出ている工具50の長さ(工具の突き出し長さ)Nが設定値に設定される。
【0028】
プリセットリングの、工具ホルダに対する、プリセットリング中心線回りの位置を設定する第2の位置決め機構は、前述した構成の第2の位置決め機構に限定されない。以下に、異なる構成の第2の位置決め機構を用いた、第2の実施形態の工具取り付け支援具を説明する。
【0029】
第2の実施形態の工具取り付け支援具を用いて工具50を取り付けることができる工具ホルダの第2の例を、
図9を参照して説明する。
第2の例の工具ホルダ60は、
図1に示されている第1の例の工具ホルダ10と同様に、本体部20、スリーブ30を有している。
第2の例の工具ホルダ60では、本体部20の本体部先端面20A(本体部内周面21より径方向外側)に、凹部25が形成されている。凹部25は、後述する、プリセットリング210の突部260と着脱自在に係合可能に形成されている。
【0030】
次に、工具50を第2の例の工具ホルダ60に取り付ける場合に用いることができる、本発明の工具取り付け支援具の第2の実施形態を、
図10を参照して説明する。なお、
図10(a)は、第2の実施形態の工具取り付け支援具200の断面図である。また、
図10(b)は、
図10(a)の矢印X-X方向から見た断面図を示している。
【0031】
本実施形態の工具取り付け支援具200は、第1の実施形態の工具取り付け支援具100と同様に、プリセットリング210、ネジ220、ボールプランジャ230を有している。なお、
図10において、
図2に示されている、各構成要素に付されている符号と、3桁目以外が同じ符号が付されている構成要素は、同じ構成要素である。
本実施形態の工具取り付け支援具200では、プリセットリング210は、第2の端面210B(第2の空間部分210cより径方向外側)に、突部260を有している。突部260は、工具ホルダ60の凹部25に挿入可能(係合可能)に形成されている。突部260の外周面および凹部25の内周面の形状は、円形、多角形等の種々の形状に設定可能である。突部260と凹部25は、着脱自在に嵌合可能に形成されている。
本実施形態では、突部260と凹部25が嵌合する、プリセットリング210の中心線Q回りの位置が、本発明の「第2の位置」に対応する。また、工具ホルダ60の凹部25とプリセットリング210の突部260によって、本願発明の「環状部材の、工具ホルダに対する、環状部材中心線回りの位置を設定する第2の位置決め機構」が構成される。
なお、第2の位置決め機構を構成する突部を工具ホルダ60に形成し、凹部をプリセットリング210に形成することもできる。
【0032】
第2の実施形態の工具取り付け支援具200を用いて、工具50を工具ホルダ60に取り付ける作業を説明する。
工具取り付け支援具200を構成するプリセットリング210を、工具50の工具シャンク部52に取り付ける動作は、プリセットリング110を工具シャンク部52に取り付ける動作と同様である(
図3~
図6参照)。
次に、工具シャンク部52にプリセットリング210が取り付けられた状態で、工具50を工具ホルダ60に取り付ける。
具体的には、
図11に示されているように、工具シャンク部52の、プリセットリング210が取り付けられている個所より後端側の部分を、工具ホルダ60の工具挿入空間内に挿入する。
また、プリセットリング210の第2の端面210Bを、工具ホルダ60の工具ホルダ先端面(本体部先端面40A)に当接させる。この時、プリセットリング210の第2の端面210Bに形成されている突部260を、工具ホルダ60の工具ホルダ先端面(本体部先端面20A)に形成されている凹部25に挿入する。突部260はプリセットリング中心線Qから離れた位置に形成され、凹部25は、工具ホルダ中心線Pから離れた位置に形成されている。このため、突部260を凹部25に挿入する(係合させる)ことにより、プリセットリング210の、工具ホルダ60に対する、中心線Q回りの位置が設定される。
そして、工具50を工具ホルダ10に取り付ける場合と同様に、工具ホルダ60の把持機構を作動させて工具シャンク部52を把持した後、プリセットリング210を工具シャンク部52から取り外す。
【0033】
なお、前記した、第1の実施形態の工具取り付け支援具100(第2の実施形態の工具取り付け支援具200)の説明では、工具シャンク部52の外周面に、工具中心線Tを挟んで第1の平坦面52b1と対向する個所に第2の平坦面52b2が形成されている工具50をプリセットリング110(210)に取り付ける場合について説明したが、工具シャンク部の外周面に第2の平坦面が形成されていない工具をプリセットリング110(210)に取り付けることもできる。この場合には、ボールプランジャ130のボール133(ボールプランジャ230のボール233)は、工具ホルダ60の外周面部分52aに当接する。
また、工具50に、ネジ120(220)の押圧力と逆方向の力を加える第2の押圧部材として、ボールプランジャ130(230)を用いたが、第2の押圧部材は、当接部材と、当接部材を移動させる弾性力を発生する弾性部材を有していればよく、ボールプランジャに限定されない。当接部材としては、工具シャンク部52の外周面(外周面部分、平坦面)と当接した状態における、工具シャンク部52の、工具中心線T回りの回転が容易である部材が用いられる。
【0034】
工具50(工具シャンク部52)の、プリセットリングに対する、工具中心線回りの位置を設定する第1の位置決め機構は、前述した構成の第1の位置決め機構に限定されない。以下に、異なる構成の第1の位置決め機構を用いた工具取り付け支援具の第3~第5の実施形態を説明する。
なお、以下の実施形態では、プリセットリングの、工具ホルダに対する、中心線Q回りの位置を設定する第2の位置決め機構として、第2の実施形態と同様の第2の位置決め機構を用いている場合について説明する。
【0035】
本発明の工具取り付け支援具の第3の実施形態を、
図12を参照して説明する。
なお、
図12(a)は、第3の実施形態の工具取り付け支援具300の断面図である。また、
図12(b)は、
図12(a)の矢印XII-XII方向から見た断面図である。
【0036】
第3の実施形態の工具取り付け支援具300は、プリセットリング310により構成されている。
プリセットリング310は、中心線Qに沿って延在する環状部材として形成され、第1の端面310A、第2の端面310B、内周面311および外周面312を有している。内周面311によって、第1の端面310Aと第2の端面310Bに開口し、中心線Qに沿って延在する内側空間310aが形成されている。
内周面311は、第1の実施形態のプリセットリング110の内周面部分111a~111eと同じ形状の内周面部分311a~311eを有している。すなわち、内側空間310aは、プリセットリング110の内側空間110aと同様に、内周面部分311a~311cにより形成される第1の空間部分310bと、内周面部分311dと311eにより形成される第2の空間部分310cを有している。
【0037】
また、プリセットリング310には、中心線Qの延在方向と交差する方向に沿って延在する孔310dが形成されている。孔310dは、中心線Qを挟んで、内周面部分311aと反対側に形成され、内周面部分311c、311eに開口している。
孔310dには、ネジ320が配置されている。ネジ320は、第1の実施形態のプリセットリング110に用いられているネジ120と同じ形状を有している。すなわち、ネジ320の先端面321は、中心線Qの延在方向と直角な断面で見て(
図12(a)参照)、先端面321の周方向中心と中心線Qとを結ぶ線と直交(「略直交」を含む)する方向に沿って延在している。
なお、本実施形態のプリセットリング310は、第1の実施形態のプリセットリング110の孔110eおよびボールプランジャ130を有していない。
また、本実施形態のプリセットリング310は、第2の実施形態のプリセットリング210と同様に、第2の端面310Bに、工具ホルダ60の凹部25に挿入可能(係合可能)な突部360が形成されている。
【0038】
本実施形態では、工具シャンク部52の第1の平坦面52b1、ネジ320、プリセットリング310の内周面部分311aによって、本発明の「工具シャンク部の、環状部材に対する、工具中心線回りの位置を設定する第1の位置決め機構」が構成される。
【0039】
第3の実施形態の工具取り付け支援具300を用いて、工具50を工具ホルダ60に取り付ける作業を説明する。
先ず、工具60の工具シャンク部52を、プリセットリング310の第2の空間部分310cを介して第1の空間部分310b内に挿入する。工具シャンク部52をプリセットリング310の第1の空間部分310b内に挿入する動作は、プリセットリング110の第1の空間部分110b内に挿入する動作と同様である(
図3参照)。
工具シャンク部52をプリセットリング310の第1の空間部分310b内に挿入した状態で、ネジ320を、孔310dの延在方向に沿って第2の空間部分310c側(中心線Q側)に移動させる。
この時、工具シャンク部52の、工具中心線T回りの位置(位相)が、
図12(a)に示されているように、ネジ320の先端面321が第1の平坦面52b1と面接触するように設定される。
次に、工具シャンク部52にプリセットリング310を取り付けた状態で、プリセットリング310を工具ホルダ60に取り付ける。この時、プリセットリング310の突部360を工具ホルダ60の凹部25に挿入する。これにより、前述したように、プリセットリング310の、工具ホルダ60に対する、中心線Q回りの位置が設定される。
そして、前述したように、工具ホルダ60の把持機構を作動させた後、プリセットリング310を工具シャンク部52から取り外す。
本実施形態の工具取り付け支援具300は、プリセットリング310に、ボールプランジャを設けることなく、工具50(工具シャンク部52)の、工具ホルダ60に対する、工具中心線T回りの位置を設定することができる。
【0040】
なお、前記した、第1の実施形態の工具取り付け支援具100(第2の実施形態の工具取り付け支援具200、第3の実施形態の工具取り付け支援具300)の説明では、プリセットリング110(210、310)の内周面部分111a(211a、311a)を、工具シャンク部52の外周面部分52aに対応する形状、例えば、外周面部分52aの半径(D1/2)に等しい(「略等しい」を含む)半径Rの円弧面に形成したが、工具シャンク部52を、ネジ120(220)の先端面121(221)とプリセットリング110(210)の内周面部分111a(211a)によって挟持することができればよく、工具シャンク部52の外周面部分52aの形状に対応した形状以外の形状に形成することもできる。例えば、楕円面や平坦面に形成することもできる。
また、工具シャンク部52の外周面に、工具中心線Tを挟んで第1の平坦面52b1と対向する個所に第2の平坦面52b2が形成されている工具50をプリセットリング310に取り付ける場合について説明したが、工具シャンク部の外周面に第2の平坦面が形成されていない工具をプリセットリング310に取り付けることもできる。
【0041】
本発明の工具取り付け支援具の第4の実施形態を、
図13を参照して説明する。
なお、
図13(a)は、第4の実施形態の工具取り付け支援具400の断面図である。また、
図13(b)は、
図13(a)の矢印XIII-XIII方向から見た断面図である。
【0042】
第4の実施形態の工具取り付け支援具400は、プリセットリング410により構成されている。
プリセットリング410は、中心線Qに沿って延在する環状部材として形成され、第1の端面410A、第2の端面410B、内周面411および外周面412を有している。内周面411によって、第1の端面410Aと第2の端面410Bに開口し、中心線Qに沿って延在する内側空間410aが形成されている。
内周面411は、内周面部分411a~411eを有している。内周面部分411aと411cは、中心線Qの延在方向と直交(「略直交」を含む)する方向に平行(「略平行」を含む)に、外周面412と反対側に中心線Qを超える位置まで直線状に延在している。内周面部分411bは、内周面部分411aおよび411cの、外周面412と反対側の端部の間に、内周面部分411aおよび411cの延在方向と直交(「略直交」を含む)する方向に直線状に延在している。内周面部分411d(411e)は、内周面部分411a(411c)と外周面412の間に形成されている。内周面部分411dと411eは、内周面部分411dと411eとの間の距離が、中心線Q側から外周面412側に向って大きくなるように傾斜状に延在している。内周面部分411dと411eは、工具シャンク部52を内側空間410a内に挿入する際のガイド面として作用する。
【0043】
内周面部分411aと411cとの間の距離Lは、工具シャンク部52の最小外径D2より大きく、最大外径D1より小さく設定されている。
本実施形態のプリセットリング410では、内周面部分411aおよび411cの、外周面412と反対側の部分と内周面部分411bにより、第1の空間部分410bが形成されている。また、内周面部分411aおよび411cの、外周面412側の部分と内周面部分411dおよび411eにより、第2の空間部分410cが形成されている。
【0044】
また、プリセットリング410には、中心線Qの延在方向と交差する方向に沿って延在する孔410dが形成されている。孔410dは、内周面部分411cに開口している。
孔410dには、ネジ420が配置されている。ネジ420は、第1の実施形態のプリセットリング110に用いられているネジ120と同じ形状を有している。すなわち、ネジ420の先端面421は、中心線Qの延在方向と直角な断面で見て(
図13(a)参照)、先端面421の周方向中心と中心線Qとを結ぶ線と直交(「略直交」を含む)する方向に沿って延在している。
また、本実施形態のプリセットリング410は、第2の実施形態のプリセットリング210と同様に、第2の端面410Bに、工具ホルダ60の凹部25に挿入可能(係合可能)な突部460が形成されている。
なお、本実施形態のプリセットリング410は、第1の実施形態のプリセットリング110の孔110eおよびボールプランジャ130を有していない。また、内周面部分411aの、第1の空間部分410bを形成する部分は、第3の実施形態のプリセットリング310の内周面部分311aのように、円弧面に形成されていない。
【0045】
本実施形態では、工具シャンク部52の第1の平坦面52b1、ネジ420およびプリセットリング410の内周面部分411aによって、本発明の「工具シャンク部の、環状部材に対する、工具中心線回りの位置を設定する第1の位置決め機構」が構成される。
【0046】
第4の実施形態の工具取り付け支援具400を用いて、工具50を工具ホルダ60に取り付ける作業を説明する。
先ず、工具50の工具シャンク部52を、プリセットリング410の第2の空間部分410cを介して第1の空間部分410b内に挿入する。
この時、外周面部分52aが内周面部分411bに当接する位置まで挿入するのが好ましい。
工具シャンク部52を第1の空間部分410b内に挿入した状態で、ネジ420を、孔410dの延在方向に沿って第1の空間部分410b側(中心線Q側)に移動させ、先端面421を工具シャンク部52の第1の平坦面52b1に当接させる。そして、工具シャンク部52を押圧して、工具シャンク部52の第2の平坦面52b2をプリセットリング410の内周面部分411aに当接させる。これにより、工具シャンク部52は、第1の平坦面52b1がネジ420の先端面421と面接触するように、工具中心線T回りに回転する。この時、工具シャンク部52の第2の平坦面52b2とプリセットリング410の内周面部分411aとの当接により、工具シャンク部52の、工具中心線T回りの回転が促進される。
以上により、工具50(工具シャンク部52)の、プリセットリング410に対する、工具中心線T回りの位置が設定される。
以後の動作は、第2の実施形態の工具取り付け支援具200を用いた場合と同様である。
本実施形態の工具取り付け支援具400は、プリセットリング410に、ボールプランジャや円弧状の内周面部分を設けることなく、工具50(工具シャンク部52)の、工具ホルダ60に対する、工具中心線T回りの位置を設定することができる。
【0047】
なお、前記した、第4の実施形態の工具取り付け支援具400の説明では、工具シャンク部52の外周面に、工具中心線Tを挟んで第1の平坦面52b1と対向する個所に第2の平坦面52b2が形成されている工具50をプリセットリング410に取り付ける場合について説明したが、工具シャンク部の外周面に第2の平坦面が形成されていない工具をプリセットリング410に取り付けることもできる。この場合には、工具シャンク部52の外周面部分52aが、プリセットリング410の内周面部分411aに当接する。
【0048】
本発明の工具取り付け支援具の第5の実施形態を、
図14を参照して説明する。
なお、
図14(a)は、第5の実施形態の工具取り付け支援具500の断面図である。また、
図14(b)は、
図14(a)の矢印XIV-XIV方向から見た断面図である。
【0049】
第5の実施形態の工具取り付け支援具500は、プリセットリング510により構成されている。
プリセットリング510は、中心線Qに沿って延在する環状部材として形成され、第1の端面510A、第2の端面510B、内周面511および外周面512を有している。内周面511によって、第1の端面510Aと第2の端面510Bに開口し、中心線Qに沿って延在する内側空間510aが形成されている。
内周面511は、第4の実施形態のプリセットリング410と同様に、内周面部分511a~511eを有している。
本実施形態のプリセットリング510は、第4の実施形態のプリセットリング410の孔410dおよびネジ420を有していない。このため、内周面部分511aと511cとの間の距離Lは、工具シャンク部52が、内側空間510a内を移動可能な範囲内で、工具シャンク部52の最小外径D2に等しい(「略等しい」を含む)距離に設定されている。
本実施形態のプリセットリング510では、内周面部分511aおよび511cの、外周面512と反対側の部分と内周面部分511bにより、第1の空間部分510bが形成されている。また、内周面部分511aおよび511cの、外周面512側の部分と内周面部分511dおよび511eにより、第2の空間部分510cが形成されている。
【0050】
本実施形態では、工具シャンク部52の第1の平坦面52b1および第2の平坦面52b2、プリセットリング510の内周面部分511aおよび511cによって、本発明の「工具シャンク部の、環状部材に対する、工具中心線回りの位置を設定する第1の位置決め機構」が構成される。
【0051】
第5の実施形態の工具取り付け支援具500を用いて、工具50を工具ホルダ60に取り付ける作業を説明する。
先ず、工具50の工具シャンク部52を、プリセットリング510の第2の空間部分510cを介して第1の空間部分510b内に挿入する。本実施形態では、工具シャンク部52は、第1の平坦面52b1および第2の平坦面52b2が、それぞれプリセットリング510の内周面部分511aおよび511cと略面接触した状態で、第2の空間部分510cを介して第1の空間部分510b内に挿入される。この時、工具シャンク部52の外周面部分52aが内周面部分511bに当接する位置まで挿入するのが好ましい。
本実施形態のプリセットリング510では、工具シャンク部52を第1の空間部分510b内に挿入することによって、工具50(工具シャンク部52)の、プリセットリング510に対する、工具中心線T回りの位置が設定される。
以後の動作は、第2の実施形態の工具取り付け支援具200を用いた場合と同様である。
本実施形態の工具取り付け支援具500は、プリセットリング510に、ボールプランジャ、円弧状の内周面部分、ネジ(押圧部材)を用いることなく、工具50(工具シャンク部52)の、工具ホルダ60に対する、工具中心線T回りの位置を設定することができる。
【0052】
なお、前記した、第5の実施形態の工具取り付け支援具500の説明では、工具シャンク部52の外周面に、工具中心線Tを挟んで第1の平坦面52b1と対向する個所に第2の平坦面52b2が形成されている工具50をプリセットリング510に取り付ける場合について説明したが、工具シャンク部の外周面に第2の平坦面が形成されていない工具をプリセットリング510に取り付けることもできる。例えば、第1の平坦面52b1のみが形成されている工具シャンク部を有する工具をプリセットリング510に取り付ける場合には、工具シャンク部52の外周面部分52aが、プリセットリング510の内周面部分511aに当接する。
【0053】
本発明は、実施形態で説明した構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。
工具シャンク部の外周面に、工具中心線を挟んで対向する2個所に平坦面が形成されている工具を工具ホルダに取り付ける場合について説明したが、本発明の工具取り付け支援具は、1を含む種々の数の平坦面が形成されている工具を工具ホルダに取り付ける場合に用いることができる。
本発明の工具取り付け支援具は、実施形態で説明した構成の工具ホルダに工具を取り付ける場合に限定されず、種々の構成の工具ホルダに工具を取り付ける場合に用いることができる。例えば、実施形態で説明した加圧媒体を利用する把持機構以外の、公知の把持機構を備える工具ホルダに工具を折り付ける場合に用いることができる。
実施形態では、工具シャンク部をプリセットリング(環状部材)の内側空間の第2の空間部分を介して第1の空間部分内に挿入することによって、第1の空間部分内において、工具シャンク部の平坦面のうちの1つがネジの先端面(押圧部材の押圧面)に対向する位置に配置されるように構成したが、これに限定されない。例えば、第1の空間部分内において、工具シャンク部を手動で回転させることによって、工具シャンク部の平坦面のうちの1つをネジの先端面(押圧部材の押圧面)に対向する位置に配置することもできる。
プリセットリング(環状部材)の形状、例えば、第1の空間部分(第1の空間部分を形成する内周面部分)の形状、第2の空間部分(第2の空間部分を形成する内周面部分)の形状は、実施形態で説明した形状に限定されない。
工具(工具ホルダ)の、プリセットリング(環状部材)に対する、工具中心線回りの位置を設定する第1の位置決め機構およびプリセットリング(環状部材)の、工具ホルダに対する、プリセットリング中心線(環状部材中心線)回りの位置を設定する第2の位置決め機構の構成は、実施形態で説明した構成に限定されない。
実施形態で説明した各構成は、単独で用いることもできるし、適宜選択した複数の構成を組み合わせて用いることもできる。
【符号の説明】
【0054】
10、60 工具ホルダ
20 本体部
20A 本体部先端面
20B 本体部後端面
20a 本体部内側空間
21 本体部内周面
22 本体部外周面
22a本体部外周面部分
23 流体通路
24 突部(係合突部)
25 凹部(係合凹部)
25a、25b 加圧室
30 スリーブ
30A スリーブ先端面
30B スリーブ後端面
30a スリーブ内側空間
31 スリーブ内周面
32 スリーブ外周面
32a、32b スリーブ外周面部分
33a、33b 把持部
40 圧力調整ネジ
50 工具
51 刃部
52 工具シャンク部
52a 第1のシャンク部外周面部分
52b1、52b2 第2のシャンク部外周面部分
100、200、300、400、500 工具取り付け支援具
110、210、310、410、510 プリセットリング(環状部材)
110A、210A、310A、410A、510A 第1のプリセットリング端面(第1の環状部材端面)
110B、210B、310B、410B、510B 第2のプリセットリング端面(第2の環状部材端面)
110a、210a、310a、410a、510a プリセットリング内側空間(内側空間)
110b、210b、310b、410b、510b 第1のプリセットリング空間部分(第1の環状部材空間部分)
110c、210c、310c、410c、510c 第2のプリセットリング空間部分(第2の環状部材空間部分)
110d、110e、210d、210e、310d、410d 孔
110f 凹部(係合凹部)
111、211、311、411、511 プリセットリング内周面(環状部材内周面)
111a~111g、211a~211e、311a~311e、411a~411e、511a~511e プリセットリング内周面部分(環状部材内周面部分)
112、212、312、412、512 プリセットリング外周面(環状部材外周面)
120、220、320、420 ネジ(第1の押圧部材)
121、221、321、421 先端面(押圧面)
130、230 ボールプランジャ(第2の押圧部材)
131、231 本体部
132、232 スプリング(弾性部材)
133、233 ボール(当接部材)
133a、233a 表面
260、360、460、560 突部(係合突部)