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特許7548583脂肪由来幹細胞およびゼラチンを含む生体材料ならびにその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】脂肪由来幹細胞およびゼラチンを含む生体材料ならびにその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/38 20060101AFI20240903BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20240903BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20240903BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20240903BHJP
   A61L 27/24 20060101ALI20240903BHJP
   A61L 27/36 20060101ALI20240903BHJP
   A61L 27/48 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240903BHJP
   C12N 5/077 20100101ALN20240903BHJP
【FI】
A61L27/38 300
A61K35/12
A61K35/28
A61K38/17
A61L27/24
A61L27/36 130
A61L27/48
A61P3/10
A61P17/00
A61P17/02
A61P19/08
A61P21/00
A61P43/00 107
C12N5/077
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021515540
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 EP2019075413
(87)【国際公開番号】W WO2020058511
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-06-14
(31)【優先権主張番号】62/734,064
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520097216
【氏名又は名称】ノヴァディップ バイオサイエンシズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】ダフレーン,デニス
【審査官】工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-531297(JP,A)
【文献】特表2009-513207(JP,A)
【文献】Bone grafts engineered from human adipose-derived stem cells in dynamic 3D-environments,Biomaterials,2013年,Vol.34, No.4,1004-1017
【文献】Collagenous Microbeads as a Scaffold for Tissue Engineering with Adipose-Derived Stem Cells,Plastic and Reconstructive Surgery,2007年,Vol.120, No.2,414-424
【文献】Stem cell therapy for diabetic foot ulcers: a review of preclinical and clinical research,Stem Cell Research & Therapy,2018年,Vol.9, No.1,1-16
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L
A61K
A61P
C12N
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肪由来幹細胞(ASC)を増殖させて分化させ、
増殖させて分化した後の前記ASCに、粒子の形態であり50μm~1000μmの範囲の平均直径を有するゼラチンの粒子を添加し、
前記ASCが前記ゼラチンを介して細胞外マトリックスの3次元の多次元構造を形成する
ことを特徴とする多次元生体材料。
【請求項2】
前記ゼラチンはブタのゼラチンである、請求項1に記載の多次元生体材料。
【請求項3】
前記ASCは、骨芽細胞、軟骨細胞、角化細胞、筋線維芽細胞、内皮細胞および脂肪細胞を含むかそれらからなる群から選択される細胞に分化されている、請求項1または2に記載の多次元生体材料。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載の多次元生体材料を含む医療装置。
【請求項5】
-脂肪由来幹細胞(ASC)増殖、
-4回目の継代時のASC分化、および
-多次元誘導して細胞外マトリックスを形成、
の工程を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の多次元生体材料を製造するための方法。
【請求項6】
組織欠損を治療するために使用するための請求項1~のいずれか1項に記載の多次元生体材料。
【請求項7】
前記組織は、骨、軟骨、真皮、表皮、筋肉、内皮および脂肪組織を含むかそれらからなる群から選択される、請求項に記載の使用のための多次元生体材料。
【請求項8】
前記組織欠損は真皮および/または表皮欠損である、請求項6または7に記載の使用のための多次元生体材料。
【請求項9】
前記生体材料は真皮再建のために使用するためのものである、請求項6~8のいずれか1項に記載の使用のための多次元生体材料。
【請求項10】
前記多次元生体材料は真皮創傷を治療するために使用するためのものである、請求項6~9のいずれか1項に記載の使用のための多次元生体材料。
【請求項11】
前記多次元生体材料は、表皮水疱症、巨大先天性母斑および/または先天性皮膚欠損症を治療するために使用するためのものである、請求項6~10のいずれか1項に記載の使用のための多次元生体材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は幹細胞の分野および多次元生体材料の製造のためのその使用に関する。特に本発明は、脂肪由来幹細胞(ASC)を含む生体材料、調製方法および治療法のためのそのような生体材料の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
組織工学では生細胞の使用により組織構造もしくは機能の修復を行う。その一般的なプロセスは細胞の単離および増殖、その後の足場材料が使用される再移植手順からなる。間葉系幹細胞(MSC)は成熟組織からの細胞の良好な代替物を提供し、かつ例えば骨および軟骨組織再生のための細胞源として多くの利点を有する。
【0003】
定義上、幹細胞は自己複製するその能力および多分化して最後に分化細胞を形成するその能力を特徴とする。理想的には、再生医療用途のための幹細胞は、(i)豊富な量(数百から数十億個の細胞)で存在しなければならない、(ii)低侵襲手順により回収および採取することができる、(iii)再生可能に複数の細胞系統経路に沿って分化することができる、(iv)自己もしくは同種宿主のいずれかに安全かつ有効に移植することができるという判定基準セットを満たさなければならない。
【0004】
研究により、幹細胞が中胚葉、内胚葉および外胚葉由来の細胞に分化する能力を有することが実証されている。MSCの可塑性はほとんどの場合、系統障壁を超えて他の組織に固有の細胞表現型、生化学的および機能的特性を採用するために幹細胞内に保持される固有の能力を指す。成人の間葉系幹細胞は、例えば骨髄および脂肪組織から単離することができる。
【0005】
脂肪由来幹細胞は多分化能を有し、かつ超再生能を有する。以下の用語すなわち脂肪由来幹/間質細胞(ASC:Adipose-derived Stem/Stromal Cell)、脂肪由来成人幹(ADAS:Adipose Derived Adult Stem)細胞、脂肪由来成人間質細胞(Adipose Derived Adult Stromal Cell)、脂肪由来間質細胞(ADSC:Adipose Derived Stromal Cell)、脂肪間質細胞(ASC:Adipose Stromal Cell)、脂肪間葉系幹細胞(AdMSC:Adipose Mesenchymal Stem Cell)、脂肪芽細胞、周皮細胞、前脂肪細胞、処理された吸引脂肪組織(PLA:Processed Lipoaspirate)細胞は、同じ脂肪組織細胞集団を特定するために使用されてきた。この多様な命名法の使用は文献の中で大きな混乱を招いてきた。この問題に対処するために、国際脂応用技術学会(International Fat Applied Technology Society)は、単離された可塑性/接着性多分化能細胞集団を特定するために、「脂肪由来幹細胞」(ASC:Adipose-derived Stem Cell)という用語を採用するという合意に達した。
【0006】
組織再建は骨および軟骨再建だけでなく真皮、表皮および筋肉再建も包含する。現在のところ、各組織欠損をそれぞれのために異なる開発を必要とする特定の治療法を用いて治療しなければならない。
【0007】
従って当該技術分野では、組織再建および/または再生のために完全に生体適合性であり、かつ指定された用途のために適当な機械的特徴を提供するが幅広い組織に使用可能である組織工学用材料がなお必要とされている。従って本発明は、ゼラチンにより多次元構造に分化させたASCで作られた移植片に関する。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、分化させた脂肪由来幹細胞(ASC)、細胞外マトリックスおよびゼラチンを含む多次元構造を有する生体材料に関する。
【0009】
一実施形態では、ゼラチンはブタのゼラチンである。一実施形態では、ゼラチンは粒子の形態である。一実施形態では、ゼラチンは約50μm~約1000μm、好ましくは約75μm~約750μm、より好ましくは約100μm~約500μmの範囲の平均直径を有する。
【0010】
一実施形態では、本生体材料は3次元である。
【0011】
特定の実施形態では、本生体材料は成形可能または形成可能である。
【0012】
一実施形態では、ASCを骨芽細胞、軟骨細胞、角化細胞、筋線維芽細胞、内皮細胞および脂肪細胞を含むかそれらからなる群から選択される細胞に分化させる。
【0013】
本発明は、本明細書の上に記載されている多次元生体材料を含む医療装置または医薬組成物にも関する。
【0014】
本発明の別の態様は、
-脂肪由来幹細胞(ASC)増殖、
-4回目の継代時のASC分化、および
-多次元誘導、好ましくは3D誘導
の工程を含む、本明細書の上に記載されている多次元生体材料を製造するための方法である。
【0015】
本発明はさらに、本明細書の上に記載されている方法によって得られる多次元生体材料に関する。
【0016】
本発明のさらに別の目的は、組織欠損を治療するために使用するための本明細書の上に記載されている生体材料である。一実施形態では、当該組織は骨、軟骨、真皮、表皮、筋肉、内皮および脂肪組織を含むかそれらからなる群から選択される。
【0017】
定義
本発明では以下の用語は以下の意味を有する。
【0018】
値の前の「約」という用語は、前記値の±10%を意味する。
【0019】
「脂肪組織」という用語はあらゆる脂肪組織を指す。脂肪組織は、皮下、大網/内臓、乳房、生殖腺または他の脂肪組織部位由来の褐色もしくは白色脂肪組織であってもよい。好ましくは、脂肪組織は皮下白色脂肪組織である。そのような細胞は一次細胞培養物または不死化細胞株を含んでもよい。脂肪組織は、脂肪組織を有する生きているまたは死んでいるあらゆる生物からのものであってもよい。好ましくは、脂肪組織は動物、より好ましくは哺乳類のものであり、最も好ましくは脂肪組織はヒトのものである。好都合な脂肪組織源は脂肪吸引外科手術からのものであるが、脂肪組織源または脂肪組織の単離方法は本発明にとって重要ではない。
【0020】
本明細書で使用される「脂肪由来幹細胞」という用語は、脂肪組織の「非脂肪細胞」画分を指す。当該細胞は新鮮なものまたは培養されたものであってもよい。「脂肪由来幹細胞」(ASC)は、限定されるものではないが脂肪細胞、骨細胞、軟骨細胞などの様々な異なる細胞型の前駆体として機能することができる脂肪組織に由来する間質細胞を指す。
【0021】
「再生」または「組織再生」という用語は、限定されるものではないが、本開示のASCからの新しい細胞型または組織の増殖、産生または再建を含む。一実施形態では、これらの細胞型または組織としては、限定されるものではないが、骨形成性細胞(例えば骨芽細胞)、軟骨細胞、内皮細胞、心筋細胞、造血細胞、肝細胞、脂肪細胞、神経細胞および筋管が挙げられる。特定の実施形態では、「再生」または「組織再生」という用語は、本開示のASCからの骨形成性細胞(例えば骨芽細胞)の産生または再建を指す。
【0022】
本明細書で使用される「増殖因子」という用語は、組織増殖、細胞増殖および血管新生などを促進する分子である。特定の実施形態では、「増殖因子」という用語は骨組織を促進する分子を含む。
【0023】
本明細書で使用される「培養された」という用語は、インビトロ、インビボまたはエクスビボ環境において細胞分裂しているか細胞分裂していない1つ以上の細胞を指す。インビトロ環境は、例えば好適な液体培地または寒天などのインビトロにおいて細胞を維持するのに適した当該技術分野で知られているあらゆる培地であってもよい。細胞培養のための好適なインビトロ環境の具体例は、Culture of Animal Cells:a manual of basic techniques(動物細胞の培養:基本的技術のマニュアル)(第3版),1994,R.I.Freshney(編),Wiley-Liss,Inc.;Cells:a laboratory manual(細胞:研究室マニュアル)(第1巻),1998,D.L.Spector,R.D.Goldman,L.A.Leinwand(編),Cold Spring Harbor Laboratory PressおよびAnimal Cells:culture and media(動物細胞:培養および培地),1994,D.C.Darling,S.J.Morgan John Wiley and Sons,Ltd.に記載されている。
【0024】
「集密度」という用語は、細胞培養表面(培養皿またはフラスコなど)における接着細胞の数、すなわち当該細胞によって覆われている当該表面の割合を指す。100%の集密度とは、当該表面が細胞によって完全に覆われていることを意味する。一実施形態では、「細胞が集密に達する」または「細胞が集密である」という表現は、細胞が当該表面の80~100%を覆っていることを意味する。一実施形態では、「細胞が準集密である」という表現は、細胞が当該表面の60~80%を覆っていることを意味する。一実施形態では、「細胞が過剰集密である」という表現は、細胞が当該表面の少なくとも100%を覆っていること、および/または数時間または数日前から100%の集密であることを意味する。
【0025】
「冷蔵する」または「冷蔵」という用語は、対象の正常な生理的温度未満の温度にする処置を指す。例えば、長期間、例えば少なくとも約1時間、少なくとも約1日、少なくとも約1週間、少なくとも約4週間、少なくとも約6ヶ月などにわたって約-196℃~約+32℃の範囲で選択された1つ以上の温度にする。一実施形態では、「冷蔵する」または「冷蔵」は0℃未満の温度にする処置を指す。冷蔵は手動で、あるいは好ましくは冷蔵プログラムを実行することができる特別な装置を用いて行ってもよい。一実施形態では、「冷蔵」という用語は「凍結」および「凍結保存」として当該技術分野で知られている方法を含む。当業者であれば、冷蔵方法はその目的のための試薬の添加を含む他の工程を含んでもよいことを理解するであろう。
【0026】
本明細書で使用される「非胚細胞」という用語は胚から単離されていない細胞を指す。非胚細胞は分化されていても分化されていなくてもよい。非胚細胞は子宮外で動物から単離された細胞などのほぼあらゆる体細胞を指すことができる。これらの例は限定することを意図していない。
【0027】
本明細書で使用される「分化細胞」という用語は、非特殊化表現型から特殊化表現型に発生した前駆体細胞を指す。例えば脂肪由来幹細胞は骨形成性細胞に分化することができる。
【0028】
本明細書で使用される「分化培地」という用語は、分化細胞を産生するために本発明の培養系で使用される化合物の集合物のうちの1つを指す。当該化合物の作用様式に関してはいかなる限定も意図されていない。例えば当該物質は表現型の変化を誘導または支援すること、特定の表現型を有する細胞の増殖を促進すること、またはそれ以外の細胞の増殖を遅らせることにより分化プロセスを支援してもよい。またそれは培地中に存在するか、それ以外の方法で分化を望ましくない細胞型への経路に導く細胞集団によって合成され得る、他の因子に対する阻害物質として作用してもよい。
【0029】
「治療」、「治療する」または「軽減」という用語は、その目的が骨欠損を予防するか遅らせる(減らす)ことである治療処置を指す。治療を必要とするものとしては、当該障害に既に罹患しているものならびに当該障害に罹患しやすいものまたは骨欠損を予防すべきものが挙げられる。対象は本発明の方法に従って治療量の生体材料が投与された後に、当該患者が骨欠損の減少および/または骨欠損に関連する症状の1つ以上のある程度の緩和、罹患率および死亡率の低下ならびに生活の質問題の改善のうちの1つ以上の観察可能および/または測定可能な減少または不在を示した場合に骨欠損の「治療」が成功となる。治療の成功および当該障害の改善の評価のための上記パラメータは、医師が精通している日常的な手順によって容易に測定可能である。
【0030】
開示されている生体材料の治療的使用の文脈において、「同種」療法ではドナーおよびレシピエントは同じ生物種の異なる個体であるが「自家」療法ではドナーおよびレシピエントは同じ個体であり、「異種」療法ではドナーはレシピエントとは異なる生物種の動物に由来している。
【0031】
「有効量」という用語は、臨床結果を含む有益もしくは所望の結果をもたらすのに十分な量を指す。有効量は1回以上の投与で投与することができる。
【0032】
「対象」という用語は哺乳類、好ましくはヒトを指す。対象の例としては、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウマ、ウシおよびそれらのトランスジェニック生物種が挙げられる。一実施形態では、対象は、医療的ケアを受けるのを待っているか受けている途中である、過去に医療処置の対象であったか現在対象であるか今後対象になる、あるいは疾患の発生について監視されている「患者」すなわち温血動物、より好ましくはヒトであってもよい。一実施形態では、対象は成人(例えば18歳以上のヒトの対象)である。別の実施形態では、対象は小児(例えば18歳未満のヒトの対象)である。一実施形態では、対象は男性である。別の実施形態では、対象は女性である。
【0033】
「生体適合性」という用語は、細胞、細胞培養、組織または生物などの生物系に適合可能な非毒性材料を指す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、脂肪組織由来幹細胞(ASC)、細胞外マトリックスおよびゼラチンを含む多次元構造を有する生体材料に関する。
【0035】
本明細書で使用される「多次元構造を有する生体材料」という用語は、本発明全体を通して「多次元生体材料」という用語で置き換えることができる。
【0036】
一実施形態では、細胞は脂肪組織から単離されたものであり、以後これを脂肪由来幹細胞(ASC)と呼ぶ。
【0037】
一実施形態では、ASC組織は動物由来であり、好ましくは哺乳類由来であり、より好ましくはヒト由来である。従って一実施形態では、ASCは動物ASCであり、好ましくは哺乳類ASCであり、より好ましくはヒトASCである。好ましい実施形態では、ASCはヒトASCである。
【0038】
脂肪組織から幹細胞を単離する方法は当該技術分野で知られており、例えばZukら(Tissue Engineering(組織工学).2001,7:211-228)に開示されている。一実施形態では、ASCは脂肪吸引によって脂肪組織から単離されたものである。
【0039】
例示として、脂肪組織は針生検または脂肪吸引によって回収してもよい。最初に当該組織試料を任意に抗生物質、例えば1%ペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)を含有するリン酸緩衝食塩水(PBS)で広範囲にわたって洗浄することによりASCを脂肪組織から単離してもよい。次いで当該試料を組織消化のためのコラゲナーゼ(例えば、2%P/Sを含有するPBS中で調製した1型コラゲナーゼ)を含む無菌組織培養皿に入れ、37℃、5%COで30分間インキュベートする。コラゲナーゼ活性は培養培地(例えば10%血清を含有するDMEM)を添加することにより中和してもよい。分解したら当該試料を管に移してもよい。当該試料を遠心分離することにより(例えば2000rpmで5分間)、ASCを含有する間質血管画分(SVF)を得る。一次脂肪細胞からの間質細胞の分離を完了させるために、当該試料を激しく振盪させてペレットを徹底的に破壊し、かつ細胞を混合してもよい。遠心分離工程を繰り返してもよい。回転およびコラゲナーゼ溶液吸引後に、ペレットを溶解緩衝液に再懸濁させ、氷上で(例えば10分間)インキュベートし、(例えばPBS/2%P/Sで)洗浄し、かつ(例えば2000rpmで5分間)遠心分離した。次いで上澄みを吸引し、細胞ペレットを培地(例えば間質培地、すなわち20%FBS、1%L-グルタミンおよび1%P/Sが添加されたα-MEM)に再懸濁し、かつ細胞懸濁液を(例えば70μmの細胞ストレーナにより)濾過してもよい。当該細胞を含有する試料を最後に培養皿に播種し、かつ37℃、5%COでインキュベートしてもよい。
【0040】
一実施形態では、本発明のASCは脂肪組織の間質血管画分から単離されたものであってもよい。一実施形態では、吸引脂肪組織は使用前に室温で数時間または+4℃で24時間あるいは長期保存のために0℃未満、例えば-18℃で維持してもよい。
【0041】
一実施形態では、ASCは新鮮なASCまたは冷蔵されたASCであってもよい。新鮮なASCは冷蔵処理を行っていない単離されたASCである。冷蔵されたASCは冷蔵処理を行った単離されたASCである。一実施形態では、冷蔵処理は0℃未満のあらゆる処理を意味する。一実施形態では、冷蔵処理は-18℃、-80℃または-180℃で行ってもよい。具体的な実施形態では、冷蔵処理は凍結保存であってもよい。
【0042】
冷蔵処理の例示として、ASCを約80~90%の集密において採取してもよい。洗浄および皿からの剥離工程後に、細胞を冷蔵保存培地と共に室温でペレット化してバイアルに入れてもよい。一実施形態では、冷蔵保存培地は、80%ウシ胎児血清またはヒト血清、10%ジメチルスルホキシド(DMSO)および10%DMEM/HamのF-12を含む。次いでバイアルを-80℃で一晩貯蔵してもよい。バイアルを例えば-80℃に達するまで毎分およそ1℃でゆっくりと冷却するアルコール凍結容器にバイアルを入れてもよい。最後に、凍結させたバイアルは長期貯蔵のために液体窒素容器に移してもよい。
【0043】
一実施形態では、ASCは分化させたASCである。一実施形態では、ASCを骨芽細胞、軟骨細胞、角化細胞、内皮細胞、筋線維芽細胞および脂肪細胞を含むかそれらからなる群から選択される細胞に分化させる。別の実施形態では、ASCを骨芽細胞、軟骨細胞、角化細胞、内皮細胞および筋線維芽細胞を含むかそれらからなる群から選択される細胞に分化させる。別の実施形態では、ASCを骨芽細胞、軟骨細胞、角化細胞および筋線維芽細胞を含むかそれらからなる群から選択される細胞に分化させる。別の実施形態では、ASCを骨芽細胞、軟骨細胞、角化細胞および内皮細胞を含むかそれらからなる群から選択される細胞に分化させる。別の実施形態では、ASCを骨芽細胞、軟骨細胞および角化細胞を含むかそれらからなる群から選択される細胞に分化させる。別の実施形態では、ASCを骨芽細胞および軟骨細胞を含むかそれらからなる群から選択される細胞に分化させる。
【0044】
一実施形態では、ASCは骨形成性の分化させたASCである。言い換えると好ましい実施形態では、ASCを骨形成性細胞に分化させる。さらに言い換えると好ましい実施形態では、ASCを骨形成性培地において分化させる。特定の実施形態では、ASCを骨芽細胞に分化させる。
【0045】
骨形成性分化を制御および評価するための方法は当該技術分野で知られている。例えば、本発明の細胞または組織の骨分化は、オステオカルシンおよび/またはリン酸塩の染色(例えばフォンコッサを用いて)、リン酸カルシウムの染色(例えばアリザリンレッドを用いて)、磁気共鳴画像法(MRI)、石灰化基質形成の測定またはアルカリホスファターゼ活性の測定によって評価してもよい。
【0046】
一実施形態では、ASCの骨形成性分化は骨形成性分化培地(MD)でのASCの培養により行う。
【0047】
一実施形態では、骨形成性分化培地はヒト血清を含む。特定の実施形態では、骨形成性分化培地はヒト血小板溶解物(hPL)を含む。一実施形態では、骨形成性分化培地は他の動物血清を全く含まず、好ましくはヒト血清以外の他の血清を含まない。
【0048】
一実施形態では、骨形成性分化培地は、デキサメタゾン、アスコルビン酸およびリン酸ナトリウムが添加された増殖培地を含むからそれらからなる。一実施形態では、骨形成性分化培地は、ペニシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシンおよび/またはアムホテリシンBなどの抗生物質をさらに含む。一実施形態では、全ての培地が動物タンパク質を含んでいない。
【0049】
一実施形態では、増殖培地は当業者に公知の細胞の増殖を支持するように設計されたどんな培養培地であってもよい。本明細書で使用される増殖培地(proliferation medium)は「増殖培地」(growth medium)ともいう。増殖培地の例としては、限定されるものではないが、MEM、DMEM、IMDM、RPMI1640、FGMもしくはFGM-2、199/109培地、HamF10/HamF12またはMcCoyの5Aが挙げられる。好ましい実施形態では、増殖培地はDMEMである。
【0050】
一実施形態では、骨形成性分化培地は、L-アラニル-L-グルタミン(Ala-Gln、「Glutamax(登録商標)」または「Ultraglutamine(登録商標)」ともいう)、hPL、デキサメタゾン、アスコルビン酸およびリン酸ナトリウムが添加されたDMEMを含むからそれらからなる。一実施形態では、骨形成性分化培地は、L-アラニル-L-グルタミン、hPL、デキサメタゾン、アスコルビン酸およびリン酸ナトリウム、ペニシリン、ストレプトマイシンおよびアムホテリシンBが添加されたDMEMを含むからそれらからなる。
【0051】
一実施形態では、骨形成性分化培地は、L-アラニル-L-グルタミン、hPL(約5%、v/v)、デキサメタゾン(約1μM)、アスコルビン酸(約0.25mM)およびリン酸ナトリウム(約2.93mM)が添加されたDMEMを含むからそれらからなる。一実施形態では、骨形成性分化培地は、L-アラニル-L-グルタミン、hPL(約5%、v/v)、デキサメタゾン(約1μM)、アスコルビン酸(約0.25mM)およびリン酸ナトリウム(約2.93mM)、ペニシリン(約100U/mL)およびストレプトマイシン(約100μg/mL)が添加されたDMEMを含むからそれらからなる。一実施形態では、骨形成性分化培地はアムホテリシンB(約0.1%)をさらに含む。
【0052】
別の実施形態では、ASCは軟骨形成性の分化させたASCである。言い換えると好ましい実施形態では、ASCを軟骨形成性細胞に分化させる。さらに言い換えると好ましい実施形態では、ASCを軟骨形成性培地において分化させる。特定の実施形態では、ASCを軟骨細胞に分化させる。
【0053】
軟骨形成性分化を制御および評価するための方法は当該技術分野で知られている。例えば、本発明の細胞または組織の軟骨形成性分化はアルシアンブルーの染色によって評価してもよい。
【0054】
一実施形態では、軟骨形成性分化は軟骨形成性分化培地でのASCの培養により行う。
【0055】
一実施形態では、軟骨形成性分化培地は、DMEM、hPL、ピルビン酸ナトリウム、ITS、プロリン、TGF-β1およびデキサメタゾンを含むからそれらからなる。一実施形態では、軟骨形成性分化培地は、ペニシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシンおよび/またはアムホテリシンBなどの抗生物質をさらに含む。
【0056】
一実施形態では、軟骨形成性分化培地は、DMEM、hPL(約5%、v/v)、デキサメタゾン(約1μM)、ピルビン酸ナトリウム(約100μg/mL)、ITS(約1×)、プロリン(約40μg/mL)およびTGF-β1(約10ng/mL)を含むからそれらからなる。
【0057】
別の実施形態では、ASCは角化細胞形成性の分化させたASCである。言い換えると好ましい実施形態では、ASCを角化細胞形成性細胞に分化させる。さらに言い換えると好ましい実施形態では、ASCを角化細胞形成性培地において分化させる。特定の実施形態では、ASCを角化細胞に分化させる。
【0058】
角化細胞形成性分化を制御および評価するための方法は当該技術分野で知られている。例えば、本発明の細胞または組織の角化細胞形成性分化はPankeratinまたはCD34の染色によって評価してもよい。
【0059】
一実施形態では、角化細胞への分化は角化細胞形成性分化培地でのASCの培養により行う。
【0060】
一実施形態では、角化細胞形成性分化培地は、DMEM、hPL、インスリン、KGF、hEGF、ヒドロコルチゾンおよびCaCl2を含むからそれらからなる。一実施形態では、角化細胞形成性分化培地は、ペニシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシンおよび/またはアムホテリシンBなどの抗生物質をさらに含む。
【0061】
一実施形態では、角化細胞形成性分化培地は、DMEM、hPL(約5%、v/v)、インスリン(約5μg/mL)、KGF(約10ng/mL)、hEGF(約10ng/mL)、ヒドロコルチゾン(約0.5μg/mL)およびCaCl(約1.5mM)を含むからそれらからなる。
【0062】
別の実施形態では、ASCは内皮形成性の分化させたASCである。さらに言い換えると好ましい実施形態では、ASCを内皮形成性培地において分化させる。特定の実施形態では、ASCを内皮細胞に分化させる。
【0063】
内皮形成性分化を制御および評価するための方法は当該技術分野で知られている。例えば、本発明の細胞または組織の内皮形成性分化はCD34の染色によって評価してもよい。
【0064】
一実施形態では、内皮細胞への分化は内皮形成性分化培地でのASCの培養により行う。
【0065】
一実施形態では、内皮形成性分化培地は、EBMTM-2培地、hPL、hEGF、VEGF、R3-IGF-1、アスコルビン酸、ヒドロコルチゾンおよびhFGFbを含むからそれらからなる。一実施形態では、内皮形成性分化培地は、ペニシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシンおよび/またはアムホテリシンBなどの抗生物質をさらに含む。
【0066】
一実施形態では、内皮形成性分化培地はEBMTM-2培地、hPL(約5%、v/v)、hEGF(約0.5mL)、VEGF(約0.5mL)、R3-IGF-1(約0.5mL)、アスコルビン酸(約0.5mL)、ヒドロコルチゾン(約0.2mL)およびhFGFb(約2mL)、キットClonetics(商標)EGM(商標)-2MV BulletKit(商標)CC-3202(Lonza社)の試薬を含むからそれらからなる。
【0067】
別の実施形態では、ASCは筋線維形成性の分化させたASCである。言い換えると好ましい実施形態では、ASCを筋線維形成性細胞に分化させる。さらに言い換えると好ましい実施形態では、ASCを筋線維形成性培地において分化させる。特定の実施形態では、ASCを筋線維芽細胞に分化させる。
【0068】
筋線維形成性分化を制御および評価するための方法は当該技術分野で知られている。例えば、本発明の細胞または組織の筋線維形成性分化はα-SMAの染色によって評価してもよい。
【0069】
一実施形態では、筋線維形成性細胞への分化は筋線維形成性分化培地でのASCの培養により行う。
【0070】
一実施形態では、筋線維形成性分化培地は、DMEM:F12、ピルビン酸ナトリウム、ITS、RPMI1640ビタミン、TGF-β1、グルタチオン、MEMを含むからそれらからなる。一実施形態では、筋線維形成性分化培地は、ペニシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシンおよび/またはアムホテリシンBなどの抗生物質をさらに含む。
【0071】
一実施形態では、筋線維形成性分化培地は、DMEM:F12、ピルビン酸ナトリウム(約100μg/mL)、ITS(約1×)、RPMI1640ビタミン(約1×)、TGF-β1(約1ng/mL)、グルタチオン(約1μg/mL)、MEM(約0.1mM)を含むからそれらからなる。
【0072】
別の実施形態では、ASCは脂肪生成性の分化させたASCである。言い換えると好ましい実施形態では、ASCを脂肪生成細胞に分化させる。さらに言い換えると好ましい実施形態では、ASCを脂肪生成培地において分化させる。特定の実施形態では、ASCを脂肪細胞に分化させる。
【0073】
脂肪生成分化を制御および評価するための方法は当該技術分野で知られている。例えば、本発明の細胞または組織の脂肪生成分化はオイルレッドによる染色によって評価してもよい。
【0074】
一実施形態では、脂肪細胞への分化は脂肪生成分化培地でのASCの培養により行う。
【0075】
一実施形態では、脂肪生成分化培地は、DMEM、hPL、デキサメタゾン、インスリン、インドメタシンおよびIBMXを含むからそれらからなる。一実施形態では、脂肪生成分化培地は、ペニシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシンおよび/またはアムホテリシンBなどの抗生物質をさらに含む。
【0076】
一実施形態では、脂肪生成分化培地は、DMEM、hPL(約5%)、デキサメタゾン(約1μM)、インスリン(約5μg/mL)、インドメタシン(約50μM)およびIBMX(約0.5mM)を含むからそれらからなる。
【0077】
一実施形態では、ASCは後期継代された脂肪由来幹細胞である。本明細書で使用される「後期継代された」という用語は、少なくとも4継代後に分化させた脂肪由来幹細胞を意味する。本明細書で使用される4継代は4回目の継代、すなわち新鮮な培地に再懸濁させる前に培養容器の表面からそれらを剥離することにより細胞を分割させることを4回行う行為を指す。一実施形態では、後期継代された脂肪由来幹細胞を4継代後、5継代後、6継代後またはそれよりも後に分化させる。好ましい実施形態では、ASCを4継代後に分化させる。
【0078】
初代細胞の最初の継代を0継代(P0)と呼ぶ。本発明によれば、継代P0は、ペレット化された間質血管画分(SVF)からの細胞懸濁液の培養容器への播種を指す。従って継代P4は、細胞を培養容器の表面から(例えばトリプシンによる消化によって)4回(P1、P2、P3およびP4)剥離し、かつ新鮮な培地に再懸濁させたことを意味する。
【0079】
一実施形態では、本発明のASCを4回目の継代まで増殖培地で培養する。一実施形態では、本発明のASCを4回目の継代後に分化培地で培養する。従って一実施形態では、継代P1、P2およびP3においてASCを培養容器の表面から剥離し、次いで増殖培地において適当な細胞密度まで希釈する。さらに本実施形態によれば、継代P4においてASCを培養容器の表面から剥離し、次いで分化培地で適当な細胞密度まで希釈する。従って本実施形態によれば、P4において本発明のASCを再懸濁せず、分化させる前に(すなわち分化培地で培養させる前に)それらが集密に達するまで増殖培地で培養するが、分化培地に直接再懸濁して培養する。
【0080】
一実施形態では、細胞を少なくともそれらが集密に達するまで、好ましくは70%~100%の集密、より好ましくは80%~95%の集密に達するまで分化培地中に維持する。一実施形態では、細胞を少なくとも5日間、好ましくは少なくとも10日間、より好ましくは少なくとも15日間分化培地中に維持する。一実施形態では、細胞を5~30日間、好ましくは10~25日間、より好ましくは15~20日間分化培地中に維持する。一実施形態では、分化培地を2日ごとに取り換える。但し当該技術分野で知られているように、細胞増殖率はドナーごとに僅かに異なる場合がある。従って分化持続期間および培地交換回数はドナーごとに異なってもよい。
【0081】
一実施形態では、使用される分化培地に応じて少なくとも特徴的な組織の形成まで細胞を分化培地中に維持する。
【0082】
例えば少なくとも類骨の形成まで、すなわち骨基質の石灰化されていない有機部分が骨組織の成熟前に形成されるまで細胞を骨形成性分化培地中に維持してもよい。
【0083】
例えば温度、pH、O含有量、CO含有量および塩分などの培養パラメータを最先端技術において利用可能な標準的なプロトコルに従って調整してもよい。
【0084】
一実施形態では、本発明のゼラチンはブタのゼラチンである。本明細書で使用される「ブタのゼラチン(porcine gelatin)」という用語は、「豚肉のゼラチン(pork gelatin)」または「豚ゼラチン(pig gelatin)」で置き換えることができる。一実施形態では、ゼラチンはブタの皮膚のゼラチンである。
【0085】
一実施形態では、本発明のゼラチンは粒子、ビーズ、球体およびマイクロスフェアなどの形態である。
【0086】
一実施形態では、本発明のゼラチンは、例えば立方体などの所定の3D形状または足場を形成するように構造化されていない。一実施形態では、本発明のゼラチンは所定の形状または足場を有していない。一実施形態では、本発明のゼラチンは立方体の形態を有していない。一実施形態では、ゼラチン、好ましくはブタのゼラチンは3D足場ではない。一実施形態では、本発明の生体材料は足場を有していない。
【0087】
一実施形態では、本発明のゼラチンはマクロ多孔性マイクロキャリアである。
【0088】
ブタのゼラチン粒子の例としては、限定されるものではないが、Cultispher(登録商標)G、Cultispher(登録商標)S、SpongostanおよびCutanplastが挙げられる。一実施形態では、本発明のゼラチンはCultispher(登録商標)GまたはCultispher(登録商標)Sである。
【0089】
一実施形態では、本発明のゼラチン、好ましくはブタのゼラチンは少なくとも約50μm、好ましくは少なくとも約75μm、より好ましくは少なくとも約100μm、より好ましくは少なくとも約130μmの平均直径を有する。一実施形態では、本発明のゼラチン、好ましくはブタのゼラチンは最大で約1000μm、好ましくは最大で約750μm、より好ましくは最大で約500μmの平均直径を有する。別の実施形態では、本発明のゼラチン、好ましくはブタのゼラチンは最大で約450μm、好ましくは最大で約400μm、より好ましくは最大で約380μmの平均直径を有する。
【0090】
一実施形態では、本発明のゼラチン、好ましくはブタのゼラチンは約50μm~約1000μm、好ましくは約75μm~約750μm、より好ましくは約100μm~約500μmの範囲の平均直径を有する。別の実施形態では、本発明のゼラチン、好ましくはブタのゼラチンは約50μm~約500μm、好ましくは約75μm~約450μm、より好ましくは約100μm~約400μmの範囲の平均直径を有する。別の実施形態では、本発明のゼラチン、好ましくはブタのゼラチンは約130μm~約380μmの範囲の平均直径を有する。
【0091】
本発明に係るゼラチン粒子の平均直径を評価するための方法は当該技術分野で知られている。そのような方法の例としては、限定されるものではないが、特に好適な篩を用いるグラニュロメトリー、沈降法(sedimentometry)、遠心分離技術、レーザー回折および、特にテレセントリックレンズを有する高性能カメラを用いる画像解析などが挙げられる。一実施形態では、ゼラチンを150cm容器のために約0.1cm~約5cm、好ましくは約0.5cm~約4cm、より好ましくは約0.75cm~約3cmの範囲の濃度で添加する。一実施形態では、ゼラチンを150cm容器のために約1cm~約2cmの範囲の濃度で添加する。一実施形態では、ゼラチンを150cm容器のために約1cm、1.5cmまたは2cmの濃度で添加する。
【0092】
一実施形態では、ゼラチンを150cm容器のために約0.1g~約5g、好ましくは約0.5g~約4g、より好ましくは約0.75g~約3gの範囲の濃度で添加する。一実施形態では、ゼラチンを150cm容器のために約1g~約2gの範囲の濃度で添加する。一実施形態では、ゼラチンを150cm容器のために約1g、1.5gまたは2gの濃度で添加する。
【0093】
一実施形態では、細胞の分化後に本発明のゼラチンを培養培地に添加する。一実施形態では、細胞が準集密になった場合に本発明のゼラチンを培養培地に添加する。一実施形態では、細胞が過剰集密になった場合に本発明のゼラチンを培養培地に添加する。一実施形態では、細胞が分化後に集密に達した場合に本発明のゼラチンを培養培地に添加する。言い換えると一実施形態では、細胞が分化培地において集密に達した場合に本発明のゼラチンを培養培地に添加する。一実施形態では、P4から少なくとも5日後、好ましくは10日後、より好ましくは15日後に本発明のゼラチンを培養培地に添加する。一実施形態では、P4から5~30日後、好ましくは10~25日後、より好ましくは15~20日後に本発明のゼラチンを培養培地に添加する。
【0094】
一実施形態では、本発明に係る生体材料は2次元である。本実施形態では、本発明の生体材料は1mm未満の薄膜を形成してもよい。
【0095】
本発明の範囲内で「1mm未満」という表現は、0.99mm、0.95mm、0.9mm、0.8mm、0.75mm、0.7mm、0.6mm、0.5mm、0.4mm、0.3mm、0.2mm、0.1mmおよびそれ未満を包含する。いくつかの実施形態では、「~未満(less than)」という表現は「~に満たない(inferior to)」という表現で置き換えることができる。
【0096】
別の実施形態では、本発明に係る生体材料は3次元である。本実施形態では、本発明の生体材料は少なくとも1mmの厚さを有する厚い膜を形成してもよい。本生体材料の大きさはその用途に適合させてもよい。
【0097】
本発明の範囲内で「少なくとも1mm」という表現は、1mm、1.2mm、1.3mm、1.5mm、1.6mm、1.75mm、1.8mm、1.9mm、2mm、2.25mm、2.5mm、2.75mm、3mm、3.5mm、4mm、4.5mm、5mmおよびそれ以上を包含する。いくつかの実施形態では、「少なくとも1mm」という表現は「1mm以上」という表現で置き換えることができる。
【0098】
一実施形態では、本発明の生体材料は足場を含んでいない。本明細書で使用される「足場」という用語は、天然の哺乳類骨または天然の細胞外マトリックス構造を模倣している足場などの、ヒトおよび動物組織を含む天然の哺乳類組織の多孔率、細孔径および/または機能を模倣する構造を意味する。そのような足場の例としては、限定されるものではないが、人工骨、コラーゲンスポンジ、タンパク質ヒドロゲル、ペプチドヒドロゲル、ポリマーヒドロゲルおよび木材系ナノセルロースヒドロゲルなどのヒドロゲルが挙げられる。一実施形態では、本発明の生体材料は人工骨を含んでいない。一実施形態では、本発明の生体適合性材料は人工骨ではない。一実施形態では、本発明の生体材料は人工真皮および/または表皮を含んでいない。一実施形態では、本発明の生体適合性材料は人工真皮および/または表皮ではない。
【0099】
一実施形態では、本発明の生体材料の多次元は天然の細胞外マトリックス構造を模倣している足場によるものではない。一実施形態では、本発明の生体材料は天然の細胞外マトリックス構造を模倣している足場を含んでいない。
【0100】
一実施形態では、本発明の生体材料の多次元は、本発明の脂肪組織由来幹細胞による細胞外マトリックスの合成によるものである。
【0101】
一実施形態では、本発明の生体材料は細胞外マトリックスを含む。一実施形態では、本発明の生体材料の細胞外マトリックスはASCに由来している。
【0102】
本明細書で使用される「細胞外マトリックス(ECM)」という用語は、非細胞性3次元巨大分子ネットワークを意味する。ECMのマトリックス成分は互いおよび細胞接着受容体に結合し、それにより細胞が本発明の組織または生体材料においてその中に存在する複雑なネットワークを形成する。
【0103】
一実施形態では、本発明の細胞外マトリックスは、コラーゲン、プロテオグリカン/グリコサミノグリカン、エラスチン、フィブロネクチン、ラミニンおよび/または他の糖タンパク質を含む。特定の実施形態では、本発明の細胞外マトリックスはコラーゲンを含む。別の特定の実施形態では、本発明の細胞外マトリックスはプロテオグリカンを含む。別の特定の実施形態では、本発明の細胞外マトリックスはコラーゲンおよびプロテオグリカンを含む。一実施形態では、本発明の細胞外マトリックスは、増殖因子、プロテオグリカン、分泌因子、細胞外マトリックス調節因子および糖タンパク質を含む。
【0104】
一実施形態では、本発明の生体材料中のASCは組織を形成し、本明細書ではこれをASC組織と呼ぶ。
【0105】
一実施形態では、ASC組織は細胞化された相互結合組織である。一実施形態では、生体適合性材料、好ましくは生体適合性粒子が細胞化された相互結合組織に組み込まれている。一実施形態では、生体適合性材料、好ましくは生体適合性粒子はASC組織内に分散されている。
【0106】
一実施形態では、本発明の生体材料はゼラチンを介して形成された相互結合組織を特徴とする。一実施形態では、本発明の生体材料はゼラチンを取り囲んでいる石灰化を特徴とする。
【0107】
一実施形態では、骨形成性分化培地を使用する場合、本発明の生体材料はオステオカルシン発現および石灰化特性を有する本物の骨と同じ特性を有する。本実施形態によれば、本発明の生体材料は骨細胞を含む。さらに本実施形態によれば、本発明の生体材料は骨細胞および細胞外マトリックスを含む。さらに本実施形態によれば、本発明の生体材料は骨細胞およびコラーゲンを含む。さらに本実施形態によれば、本発明の生体材料は骨基質を含む。
【0108】
一実施形態では、本発明の生体材料は本生体材料の細胞の分化が終点に達しているような材料であり、本生体材料の表現型は移植された際に未変化のままである。
【0109】
一実施形態では、本発明の生体材料は増殖因子を含む。一実施形態では、本発明の生体材料はVEGFおよび/またはSDF-1αを含む。
【0110】
一実施形態では、本発明に係る生体材料は石灰化されている。本明細書で使用される「石灰化」または「骨組織骨密度」という用語は、割合でも表される骨または生体材料によって形成された「骨様」組織の1平方センチメートルのミネラルの量を指す。従って本明細書で使用される「石灰化」または「骨組織骨密度」という用語は、割合でも表される生体材料の1平方センチメートル当たりのミネラルの量を指す。
【0111】
生体材料の石灰化度を評価するための方法は当該技術分野で知られている。そのような方法の例としては、限定されるものではないが、マイクロコンピュータ断層撮影(マイクロCT)分析、イメージング質量分析、カルセインブルー染色および骨密度分布(BMDD)分析などが挙げられる。
【0112】
一実施形態では、本発明の生体材料の石灰化は本生体材料の成熟と共に増加する。本明細書で使用される「本生体材料の成熟」という用語はゼラチンによる培養の持続期間を意味する。言い換えると、本生体材料の成熟は多次元誘導の時間に対応している。
【0113】
一実施形態では、本発明の生体材料の石灰化度は1%未満である。一実施形態では、1%未満の石灰化度は、骨形成性分化培地の中に入れて12週間に満たない成熟により得られる。一実施形態では、1%未満の石灰化度は骨形成性分化培地の中に入れて8週間以下の成熟により得られる。
【0114】
一実施形態では、本発明の生体材料の石灰化度は、約1%~約20%、好ましくは約1%~約15%、より好ましくは約1%~約10%、さらにより好ましくは約1%~約5%の範囲である。一実施形態では、本発明の生体材料の石灰化度は、約1%~約4%または3%の範囲である。本発明の範囲内で「約1%~約20%」という表現は、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%および約20%を包含する。
【0115】
別の実施形態では、本発明の生体材料の石灰化度は少なくとも1%または1.24%である。一実施形態では、少なくとも1%または1.24%の石灰化度は骨形成性分化培地の中に入れて12週間以上の成熟により得られる。
【0116】
別の実施形態では、本発明の生体材料の石灰化度は少なくとも2%、2.5%または2.77%である。一実施形態では、少なくとも2%、2.5%または2.77%の石灰化度は骨形成性分化培地の中に入れて25週間以上の成熟により得られる。
【0117】
特定の一実施形態では、本発明の生体材料の石灰化度は約0.07%である。別の特定の実施形態では、本発明の生体材料の石灰化度は約0.28%である。別の特定の実施形態では、本発明の生体材料の石灰化度は約0.33%である。別の特定の実施形態では、本発明の生体材料の石灰化度は約1.24%である。別の特定の実施形態では、本発明の生体材料の石灰化度は約2.77%である。
【0118】
本発明は、分化させた脂肪由来幹細胞(ASC)、細胞外マトリックスおよびゼラチンを含む多次元構造を製造するための方法にも関する。
【0119】
一実施形態では、本発明に係る生体材料を製造するための方法は、
-細胞増殖、
-細胞分化、および
-多次元誘導
の工程を含む。
【0120】
一実施形態では、本発明に係る生体材料を製造するための方法は、
-ASC増殖、
-ASC分化、および
-3次元誘導
の工程を含む。
【0121】
一実施形態では、本発明に係る生体材料を製造するための方法は、
-細胞、好ましくはASCを対象から単離する工程、
-細胞、好ましくはASCを増殖させる工程、
-増殖させた細胞、好ましくはASCを分化させる工程、および
-ゼラチンの存在下で分化細胞、好ましくはASCを培養する工程
を含む。
【0122】
一実施形態では、本発明の生体材料を製造するための方法は、細胞増殖の工程の前に行われる細胞、好ましくはASCの単離の工程をさらに含む。一実施形態では、本発明の生体材料を製造するための方法は、細胞増殖の工程の前に行われる細胞、好ましくはASCを単離する工程をさらに含む。
【0123】
一実施形態では、増殖の工程は増殖培地において行う。特定の実施形態では、増殖培地はDMEMである。一実施形態では、増殖培地にはAla-Glnおよび/またはヒト血小板溶解物(hPL)が添加されている。一実施形態では、増殖培地はペニシリンおよび/またはストレプトマイシンなどの抗生物質をさらに含む。
【0124】
一実施形態では、増殖培地は、Ala-GlnおよびhPL(5%)が添加されたDMEMを含むからそれからなる。一実施形態では、増殖培地は、Ala-Gln、hPL(5%、v/v)、ペニシリン(100U/mL)およびストレプトマイシン(100μg/mL)が添加されたDMEMを含むからそれからなる。
【0125】
一実施形態では、増殖の工程は本明細書の上に記載されているように行う。一実施形態では、増殖の工程はP8まで行う。一実施形態では、増殖の工程はP4、P5、P6、P7またはP8まで続く。従って一実施形態では、細胞増殖の工程は少なくとも3回の継代を含む。一実施形態では、細胞増殖の工程は最大で7回の継代を含む。一実施形態では、細胞増殖の工程は3~7回の継代を含む。特定の一実施形態では、増殖の工程はP4まで行う。従って一実施形態では、細胞増殖の工程は、細胞を培養容器の表面から剥離し、次いでそれらを継代P1、P2およびP3において増殖培地で希釈することを含む。P6までの増殖の一実施形態では、細胞増殖の工程は、細胞を培養容器の表面から剥離し、次いでそれらを継代P1、P2、P3、P4およびP5において増殖培地で希釈することを含む。
【0126】
一実施形態では、増殖の工程は細胞を3、4、5、6または7回継代するために必要な限り続く。特定の実施形態では、増殖の工程は細胞を3回継代するために必要な限り続く。一実施形態では、増殖の工程は最後の継代後に細胞が集密、好ましくは70%~100%の集密、より好ましくは80%~95%の集密に達するまで続く。一実施形態では、増殖の工程は3、4、5、6または7回目の継代後に細胞が集密に達するまで続く。
【0127】
有利な実施形態では、ゼラチンを添加する前に分化培地において細胞、好ましくはASCを培養することは本発明の方法の重要な工程である。そのような工程はASCの骨形成性細胞への分化を可能にするために必要である。また、この工程は多次元構造を得るために必要である。
【0128】
一実施形態では、分化の工程はP4、P5、P6、P7またはP8の後に行う。一実施形態では、分化の工程は細胞が集密でない場合に行う。特定の実施形態では、分化の工程は集密まで細胞の培養を行うことなくP4、P5、P6、P7またはP8の後に行う。
【0129】
一実施形態では、分化の工程はP4、P5、P6、P7またはP8において行う。一実施形態では、分化の工程は細胞が集密でない場合に行う。特定の実施形態では、分化の工程は集密まで細胞の培養を行うことなくP4、P5、P6、P7またはP8において行う。
【0130】
一実施形態では、分化の工程は、細胞を分化培地においてインキュベートすることにより行う。一実施形態では、分化の工程は、骨形成性、軟骨形成性、筋線維形成性もしくは角化細胞形成性分化培地、好ましくは骨形成性、軟骨形成性もしくは筋線維形成性分化培地、より好ましくは骨形成性もしくは軟骨形成性分化培地、より好ましくは骨形成性培地において細胞をインキュベートすることにより行う。一実施形態では、分化の工程は、培養容器の表面から剥離した細胞を分化培地に懸濁させることにより行う。
【0131】
一実施形態では、分化培地におけるASCのインキュベーションは少なくとも3日間、好ましくは少なくとも5日間、より好ましくは少なくとも10日間、より好ましくは少なくとも15日間行う。一実施形態では、分化培地におけるASCのインキュベーションは5~30日間、好ましくは10~25日間、より好ましくは15~20日間行う。一実施形態では、分化培地を2日ごとに取り換える。本発明の範囲内で「少なくとも3日間」という表現は、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35日間およびそれ以上を包含する。
【0132】
一実施形態では、多次元誘導、好ましくは3D誘導の工程は、本明細書の上に定義されているような分化培地にゼラチンを添加することにより行う。一実施形態では、多次元誘導、好ましくは3D誘導の工程の間に細胞を分化培地中に維持する。
【0133】
一実施形態では、多次元誘導、好ましくは3D誘導の工程は細胞が分化培地において集密、好ましくは70%~100%の集密、より好ましくは80%~95%の集密に達した場合に行う。
【0134】
別の実施形態では、多次元誘導、好ましくは3D誘導の工程は形態的変化が現れた場合に行う。一実施形態では、多次元誘導、好ましくは3D誘導の工程は、使用される分化培地に応じて少なくとも1つ特徴的な組織が生じた場合に行う。例えば骨形成性分化培地が使用される場合、少なくとも1つの類骨小結節が形成された場合に多次元誘導、好ましくは3D誘導の工程を行う。本明細書で使用される「類骨」という用語、骨組織の成熟前に形成される骨基質の石灰化されていない有機部分を意味する。
【0135】
別の実施形態では、多次元誘導、好ましくは3D誘導の工程は細胞が集密に達した場合に行う。
【0136】
一実施形態では、本発明の細胞およびゼラチンを少なくとも5日間、好ましくは少なくとも10日間、より好ましくは少なくとも15日間インキュベートする。一実施形態では、本発明の細胞およびゼラチンを10日間~30日間インキュベートする。本発明の範囲内で「少なくとも5日間」という表現は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35日間およびそれ以上を包含する。
【0137】
別の実施形態では、本発明の細胞およびゼラチンを少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、8週間、12週間、25週間または34週間インキュベートする。
【0138】
一実施形態では、多次元誘導、好ましくは3D誘導の工程の間に培地を2日ごとに取り換える。
【0139】
本発明は、本発明に係る方法によって得られる多次元生体材料にも関する。一実施形態では、多次元生体材料は本発明に係る方法によって得られる。一実施形態では、多次元生体材料は本発明に係る方法によって製造する。一実施形態では、本発明の方法によって得られる生体材料はヒトまたは動物の体に移植することを目的としている。一実施形態では、移植される生体材料は自己由来または同種異系であってもよい。一実施形態では、本発明の生体材料は骨、軟骨、真皮、筋肉、内皮もしくは脂肪組織領域に移植してもよい。一実施形態では、この生体材料はヒトまたは動物の体の通常とは異なる領域に移植してもよい。
【0140】
一実施形態では、本発明の生体材料は均質であり、これは本生体材料の構造および/または構成が組織全体にわたって類似していることを意味する。一実施形態では、本生体材料は、自然な疾患領域への移植のために必要な望ましい取り扱いおよび機械特性を有する。一実施形態では、本発明の方法によって得られる生体材料は、引き裂くことなく手術器具で保持することができる。
【0141】
本発明の別の目的は本発明に係る生体材料を含む医療装置である。
【0142】
さらなる別の目的は、本発明に係る生体材料および少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物である。
【0143】
本発明は、薬として使用するための本発明に係る生体材料または医薬組成物にも関する。
【0144】
本発明は、医療装置または医療装置の中に含まれているものとしての本発明の生体材料のあらゆる使用、あるいは医薬組成物における本発明の生体材料のあらゆる使用に関する。特定の実施形態では、本発明の生体材料、医療装置または医薬組成物は、使用前に操作およびモデル化することができるパテ様材料である。
【0145】
本発明はさらに、それを必要とする対象における組織欠損を治療するために使用するため、あるいはその治療の際に使用するための分化させた脂肪由来幹細胞(ASC)、細胞外マトリックスおよびゼラチンを含む多次元構造を有する生体材料、それらを含む医療装置または医薬組成物に関する。
【0146】
本発明の別の態様は、組織欠損を治療するための分化させた脂肪由来幹細胞(ASC)、細胞外マトリックスおよびゼラチンを含む多次元構造を有する生体材料、それらを含む医療装置または医薬組成物の使用にも関する。本発明のさらに他の態様は、組織欠損を治療するための薬の調製または製造のための分化させた脂肪由来幹細胞(ASC)、細胞外マトリックスおよびゼラチンを含む多次元構造を有する生体材料、それらを含む医療装置または医薬組成物の使用にも関する。
【0147】
本発明はさらに、本発明に係る治療的有効量の生体材料、医療装置または医薬組成物を対象に投与することを含む、それを必要とする対象における組織欠損を治療する方法に関する。
【0148】
本発明の一態様は、本発明に係る治療的有効量の生体材料、医療装置または医薬組成物を対象に投与することを含む、それを必要とする対象における組織再建方法である。本明細書で使用される「組織再建」という用語は「組織修復」または「組織再生」という言葉で置き換えることができる。
【0149】
一実施形態では、「組織」という用語は、骨、軟骨、真皮、表皮、筋肉、内皮および脂肪組織を含むからそれらからなる。従って一実施形態では、組織欠損は、骨、軟骨、真皮、表皮、筋肉、内皮および脂肪組織欠損を含むからそれらからなる。
【0150】
一実施形態では、組織再建は、骨再建、軟骨再建、真皮再建、表皮再建、筋肉もしくは筋原線維再建、内皮再建および脂肪再建を含むかそれらからなる群から選択される。
【0151】
骨および真皮および/または表皮再建の例としては、限定されるものではないが、皮膚再建、創傷治癒、糖尿病性足部潰瘍などの糖尿病性潰瘍治療、熱傷後病変部再建、放射線照射後病変部再建、乳癌または乳房変形後の再建が挙げられる。
【0152】
真皮および/または表皮再建の例としては、限定されるものではないが、皮膚再建、創傷治癒、糖尿病性足部潰瘍などの糖尿病性潰瘍治療、熱傷後病変部再建、放射線照射後病変部再建、乳癌または乳房変形後の再建が挙げられる。
【0153】
軟骨再建の例としては、限定されるものではないが、膝軟骨形成術、鼻もしくは耳再建、肋骨もしくは胸骨再建が挙げられる。
【0154】
筋原線維再建の例としては、限定されるものではないが、骨格筋再建、腹壁損傷後の再建、下肢の虚血性筋傷害後の再建、コンパートメント症候群(CS)に関連する再建が挙げられる。
【0155】
内皮再建の例としては、限定されるものではないが、静脈動脈硬化症シャントなどの血管吻合のための血管パッチの再細胞化が挙げられる。
【0156】
脂肪再建の例としては、限定されるものではないが、美容整形外科手術、若返り、脂肪充填術再建が挙げられる。
【0157】
本出願人は、本発明の生体材料が移植部位における石灰化組織の存在により骨形成特性を有することを実証した。
【0158】
特定の一態様では、本発明は、骨欠損を治療する際に使用するための本発明の生体材料、医療装置または医薬組成物に関する。特定の一態様では、本発明は、骨再建のために使用するための本発明の生体材料、医療装置または医薬組成物に関する。一実施形態では、本発明の生体材料は、ヒトまたは動物の体内の骨空洞を充填するために使用するためのものである。
【0159】
一実施形態では、本発明の生体材料、医療装置または医薬組成物は軟骨欠損を治療する際に使用するためのものである。一実施形態では、本発明の生体材料、医療装置または医薬組成物は軟骨再建のために使用するためのものである。一実施形態では、本発明の生体材料、医療装置または医薬組成物は膝軟骨形成術、鼻もしくは耳再建、肋骨もしくは胸骨再建のために使用するためのものである。
【0160】
本出願人は、本発明の生体材料がより速い表皮および真皮の再建、免疫応答の誘発ならびにエラスチン線維の数の増加という利点を有することを実証した。さらに、本発明の生体材料の移植後に形成された瘢痕は肥厚性ではない。
【0161】
一実施形態では、本発明の生体材料、医療装置または医薬組成物は真皮および/または表皮欠損を治療する際に使用するためのものである。一実施形態では、本発明の生体材料、医療装置または医薬組成物は真皮再建のために使用するためのものである。一実施形態では、本発明の生体材料、医療装置または医薬組成物は皮膚再建のために使用するためのものである。一実施形態では、本発明の生体材料、医療装置または医薬組成物は、皮膚再建、創傷治癒、糖尿病性足部潰瘍などの糖尿病性潰瘍治療、熱傷後病変部再建、放射線照射後病変部再建、乳癌または乳房変形後の再建のためのものである。特定の実施形態では、本発明の生体材料、医療装置または医薬組成物は、真皮創傷、好ましくは糖尿病性真皮創傷を治療するために使用するためのもの、あるいはそれを治療する際に使用するためのものである。
【0162】
一実施形態では、本発明の生体材料、医療装置または医薬組成物は創傷の閉鎖を促進するためのものである。一実施形態では、本発明の生体材料、医療装置または医薬組成物は特に創傷治癒中に創傷の厚さを減少させるためのものである。
【0163】
特定の実施形態では、本発明の生体材料、医療装置または医薬組成物は、表皮水疱症、巨大先天性母斑および/または先天性皮膚欠損症を治療するために使用するためのもの、あるいはそれらの治療の際に使用するためのものである。
【0164】
さらに別の態様では、本発明は、再建もしくは美容整形外科手術のために使用するための本発明の生体材料、医療装置または医薬組成物に関する。
【0165】
一実施形態では、本発明の生体材料は同種移植または自家移植として使用してもよい。一実施形態では、本発明の生体材料を組織移植で使用してもよい。
【0166】
一実施形態では、当該対象は組織欠損のために既に治療されている。別の実施形態では、当該対象は組織欠損のためにまだ治療されていない。
【0167】
一実施形態では、当該対象は組織欠損のための少なくとも1種の他の治療に対して非応答性であった。
【0168】
一実施形態では、当該対象は糖尿病性である。一実施形態では、当該対象は糖尿病性創傷に罹患している。
【0169】
一実施形態では、当該対象は成人すなわち18歳以上である。別の実施形態では、当該対象は小児すなわち18歳未満である。
【0170】
一実施形態では、本発明の生体材料、医療装置または医薬組成物は組織再建の処置中にそれを必要とする対象に投与する。
【0171】
いくつかの実施形態では、本発明の生体材料、医療装置または医薬組成物は、例えばクリップまたはトロカールによる外科移植あるいは腹腔鏡経路によりそれを必要とする対象に投与する。
【0172】
本発明は、本発明に係る生体材料、医薬組成物または医療装置および好適な固定手段を含むキットにも関する。好適な固定手段の例としては、限定されるものではないが、生体適合性、非毒性および任意に生体吸収性である外科的使用のための外科用接着剤、組織接着剤またはあらゆる接着剤組成物が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0173】
図1図1A図1Bは生体材料の肉眼図を示す写真である。図1A:骨分化培地において2.5週間の培養でブタのゼラチン(Cultispher G)およびASCにより形成された生体材料。図1B:骨分化培地において7.5週間の培養でブタのゼラチン(Cultispher G)およびASCにより形成された生体材料。
図2図2A図2Bは骨分化培地において7.5週間の培養でブタのゼラチン(Cultispher G)およびASCにより形成された生体材料のヘマトキシリン・エオシン染色を示す写真である。図2A:元の倍率×5。図2B:拡大×10。
図3図3A図3Bは骨分化培地において7.5週間の培養でブタのゼラチン(Cultispher G)およびASCにより形成された生体材料のフォンコッサ染色を示す写真である。図3A:元の倍率。図3B:拡大×10。
図4図4A図4Bは骨分化培地において7.5週間の培養でブタのゼラチン(Cultispher G)およびASCにより形成された生体材料のオステオカルシン発現を示す写真である。図4A:元の倍率。図4B:拡大×10。
図5A】MP中のASC(MP)と比較した骨分化培地においてASCおよびCultipher G(生体材料)により形成された本発明の生体材料中の遺伝子ANGの発現を示すグラフである。:p<0.05。
図5B】MP中のASC(MP)と比較した骨分化培地においてASCおよびCultipher G(生体材料)により形成された本発明の生体材料中の遺伝子ANGPT1の発現を示すグラフである。:p<0.05。
図5C】MP中のASC(MP)と比較した骨分化培地においてASCおよびCultipher G(生体材料)により形成された本発明の生体材料中の遺伝子EPHB4の発現を示すグラフである。:p<0.05。
図5D】MP中のASC(MP)と比較した骨分化培地においてASCおよびCultipher G(生体材料)により形成された本発明の生体材料中の遺伝子EDN1の発現を示すグラフである。:p<0.05。
図5E】MP中のASC(MP)と比較した骨分化培地においてASCおよびCultipher G(生体材料)により形成された本発明の生体材料中の遺伝子THBS1の発現を示すグラフである。:p<0.05。
図5F】MP中のASC(MP)と比較した骨分化培地においてASCおよびCultipher G(生体材料)により形成された本発明の生体材料中の遺伝子PTGS1の発現を示すグラフである。:p<0.05。
図5G】MP中のASC(MP)と比較した骨分化培地においてASCおよびCultipher G(生体材料)により形成された本発明の生体材料中の遺伝子LEPの発現を示すグラフである。:p<0.05。
図5H】MP中のASC(MP)と比較した骨分化培地においてASCおよびCultipher G(生体材料)により形成された本発明の生体材料中の遺伝子VEGFAの発現を示すグラフである。:p<0.05。
図5I】MP中のASC(MP)と比較した骨分化培地においてASCおよびCultipher G(生体材料)により形成された本発明の生体材料中の遺伝子VEGFBの発現を示すグラフである。:p<0.05。
図5J】MP中のASC(MP)と比較した骨分化培地においてASCおよびCultipher G(生体材料)により形成された本発明の生体材料中の遺伝子VEGFCの発現を示すグラフである。:p<0.05。
図5K】MP中のASC(MP)と比較した骨分化培地においてASCおよびCultipher G(生体材料)により形成された本発明の生体材料中の遺伝子ID1の発現を示すグラフである。:p<0.05。
図5L】MP中のASC(MP)と比較した骨分化培地においてASCおよびCultipher G(生体材料)により形成された本発明の生体材料中の遺伝子TIMP1の発現を示すグラフである。:p<0.05。
図6図6A図6Dは骨分化培地において異なる成熟レベルでASCおよびCultipher Gにより形成された本発明の生体材料を示す写真である。図6A:4週間、図6B:8週間、図6C:12週間、および図6D:25週間。石灰化は透明で示されている3D基質の中に黄色で示されている。
図7】移植後29日目のヌードラットにおける、骨分化培地において7.5週間の培養でブタのゼラチン(Cultispher GもしくはS)およびASCにより形成された生体材料の「移植部位」のX線撮影の写真である。
図8】移植後29日目のウィスターラットにおける骨分化培地において7.5週間の培養でブタのゼラチン(Cultispher GもしくはS)およびASCにより形成された生体材料の「移植部位」のX線撮影の写真である。
図9】骨分化培地において7.5週間の培養でブタのゼラチン(Cultispher GもしくはS)およびASCにより形成された生体材料のフォンコッサ染色を示す写真である。
図10】骨分化培地において7.5週間の培養でブタのゼラチン(Cultispher S)およびASCにより形成された生体材料のヘマトキシリン・エオシン染色を示す写真である。
図11】骨分化培地において7.5週間の培養でブタのゼラチン(Cultispher S)およびASCにより形成された生体材料のヌードラットへの移植後29日目のフォンコッサ染色を示す写真である。
図12図12A図12Bはヌードラットにおける「移植部位」のX線撮影を示す写真である。図12A:骨分化培地において7.5週間の培養でブタのゼラチン(Cultispher GもしくはS)およびASCにより形成された生体材料の移植後29日目。図12B:ブタのゼラチン(Cultispher GもしくはS)のみにより形成された生体材料の移植後29日目。
図13図13A図13Cは0日目(D0)、15日目(D15)、23日目(D23)および34日目(D34)におけるラットの脚の創傷治癒を示す写真である。図13A:移植なし、図13B:Cultispher S粒子のみの移植後、および図13C:骨分化培地において8週間の培養でブタのゼラチン(Cultispher S)およびASCにより形成された生体材料の移植後(C)。左肢:虚血性の脚;右肢:非虚血性の脚。
図14】100%で固定した偽対照との比較で評価した、非治療(偽対照)またはCultispher S粒子のみ(Cultispher)または骨分化培地において8週間の培養でブタのゼラチン(Cultispher S)およびASCにより形成された生体材料(生体材料)で治療した非虚血性の脚(黒色の棒)および虚血性の脚(白色の棒)における創傷の大きさの曲線下面積(AUC)を示すヒストグラムである。
図15図15A図15BはCultispher S粒子のみ(■)または骨分化培地において8週間の培養でブタのゼラチン(Cultispher S)およびASCにより形成された生体材料(●)での治療後0日目~34日目または非治療(偽対照、▲)の創傷領域を割合で示すグラフである。図15A:非虚血性の脚;図15B:虚血性の脚。
図16図16A図16Bは非治療(偽対照、左)、Cultispher S粒子のみ(中間)または本発明の生体材料(右)での治療後の完全な創傷閉鎖の日数を示すグラフである。図16A:非虚血性の脚;図16B:虚血性の脚。
図17A】虚血性の脚の治療後0日目~34日目のリンパ球CD3(黒色の線)およびマクロファージCD68(灰色の線)の数を示すグラフである。図17A:非治療(偽対照)。
図17B】虚血性の脚の治療後0日目~34日目のリンパ球CD3(黒色の線)およびマクロファージCD68(灰色の線)の数を示すグラフである。図17B:Cultispher S粒子のみで治療。
図17C】虚血性の脚の治療後0日目~34日目のリンパ球CD3(黒色の線)およびマクロファージCD68(灰色の線)の数を示すグラフである。図17C:骨分化培地において8週間の培養でブタのゼラチン(Cultispher S)およびASCにより形成された生体材料で治療。
図18図18A図18Bは非治療(偽対照)、Cultispher S粒子のみ(Cultisphers)の移植後ならびに骨分化培地において8週間の培養でブタのゼラチン(Cultispher S)およびASCにより形成された生体材料の移植後15日目および34日目における創傷の厚さを示すグラフである。図18A:虚血性モデル。図18B:非虚血性モデル。
図19図19A図19DはCultispher S粒子のみ(ドットのヒストグラム)または骨分化培地において8週間の培養でブタのゼラチン(Cultispher S)およびASCにより形成された生体材料(黒色のヒストグラム)、または非治療の(偽対照、ストライプのヒストグラム)による治療後1、5、15および34日目の非虚血性の脚における表皮および真皮スコアを示すヒストグラムである。図19A:非虚血性の脚の中心部の表皮スコア。図19B:非虚血性の脚の末端の表皮スコア。図19C:非虚血性の脚の中心部の真皮スコア。図19D:非虚血性の脚の末端の真皮スコア。
図20図20A図20Dは異なる培地においてASCおよび粒子により得られた構造を示す写真である。図20A:骨形成性培地;図20B:軟骨形成性培地;図20C:筋線維形成性培地;および図20D:角化細胞形成性培地。構造の形態(1.)、把持性(grippability)(2.)、ヘマトキシリン・エオシン染色(3.)および組織特異的染色(4.)、すなわち骨形成性培地のためにオステオカルシン(OC)、軟骨形成性培地のためにアルシアンブルー(AB)、筋線維形成性培地のためにα-SMA、および角化細胞形成性培地のためにCD34を評価した。
【実施例
【0174】
以下の実施例により本発明をさらに例示する。
【0175】
実施例1:本発明の生体材料の製造
【0176】
1.1.hASCの単離
インフォームドコンセントおよび血清スクリーニング後に、腹部領域におけるコールマン式による脂肪吸引によりヒトの皮下脂肪組織を採取した。
【0177】
ヒト脂肪由来幹細胞(hASC)を入ってきた脂肪組織から迅速に単離した。吸引脂肪組織は+4℃で24時間または-80℃でより長い時間にわたって保存することができる。
【0178】
最初に品質管理目的のために吸引脂肪組織の画分を単離し、吸引脂肪組織の残りの体積を測定した。次いで、吸引脂肪組織をHBSS中で調製したコラゲナーゼ溶液(NB1、Serva Electrophoresis社、ハイデルベルク、ドイツ)(約8U/mLの最終濃度を有する)で消化した。消化のために使用した酵素溶液の体積は脂肪組織の体積の2倍であった。この消化は37℃±1℃で50~70分間行った。1回目の断続的振盪は15~25分後、2回目の振盪は35~45分後に行った。この消化はMP培地(増殖培地)の添加により停止した。MP培地は、5%ヒト血小板溶解物(hPL)(v/v)が添加されたDMEM培地(4.5g/Lのグルコースおよび4mMのAla-Gln;Sartorius Stedim Biotech社、ゲッティンゲン、ドイツ)を含んでいた。DMEMは炭酸緩衝液で緩衝された塩、アミノ酸、ビタミン、ピルビン酸塩およびグルコースを含む標準的な培養培地であり、かつ生理的pH(7.2~7.4)を有する。使用したDMEMはAla-Glnを含んでした。ヒト血小板溶解物(hPL)は、間葉系幹細胞(hASCなど)のインビトロ増殖を刺激するために使用される豊富な増殖因子源である。
【0179】
消化した脂肪組織を遠心分離し(500g、10分、室温)、上澄みを除去した。ペレット化された間質血管画分(SVF)をMP培地の中に再懸濁し、200~500μmメッシュのフィルタに通した。濾過した細胞懸濁液に対して2度目の遠心分離を行った(500g、10分、20℃)。hASCを含むペレットをMP培地の中に再懸濁した。細胞懸濁液のごく一部は細胞計数のために維持することができ、残りの細胞懸濁液全体を使用して1つの75cmのTフラスコに播種した(継代P0と呼ぶ)。播種した細胞の数を推定するために細胞計数を行った(情報のためにのみ)。
【0180】
単離工程の翌日(1日目)に、75cmのTフラスコから増殖培地を除去した。細胞をリン酸緩衝液で3回洗い流し、次いで新たに調製したMP培地をフラスコに添加した。
【0181】
1.2.ヒト脂肪由来幹細胞の増殖および拡大
増殖段階の間に、当該プロセスのその後の工程のために十分な量の細胞を得るためにhASCを4回(P1、P2、P3およびP4)継代した。
【0182】
P0と4回目の継代(P4)との間に、細胞をTフラスコで培養し、そこに新鮮なMP培地を供給した。70%以上であって100%以下の集密(目標集密:80~90%)に達した際に細胞を継代した。1バッチからの全ての細胞培養レシピエントを同時に継代した。各継代において、TrypLE(Select(1×);75cmのフラスコのために9mLまたは150cmのフラスコのために12mL)、組換え型動物由来成分非含有細胞解離酵素を用いて細胞をそれらの培養容器から剥離した。TrypLe消化は37℃±2℃で5~15分間行い、かつMP培地の添加により停止させた。
【0183】
次いで細胞を遠心分離し(500g、5分、室温)、かつMP培地に再懸濁した。均質な細胞懸濁液を保証するために採取した細胞をプールした。再懸濁後に細胞を計数した。
【0184】
次いで継代P1、P2およびP3において残りの細胞懸濁液をMP培地で適当な細胞密度まで希釈し、より大きい組織培養表面に播種した。これらの工程において、75cmのフラスコには15mLの細胞懸濁液体積を播種し、150cmフラスコには30mLの細胞懸濁液体積を播種した。各継代において0.5×10~0.8×10細胞/cmで細胞を播種した。異なる継代の間に培養培地を3~4日ごとに交換した。細胞挙動および増殖率はドナーごとに僅かに異なる場合がある。故に2つの継代間の持続期間および継代間の培地交換回数はドナーごとに異なってもよい。
【0185】
1.3.骨形成性分化
継代P4(すなわち4回目の継代)において、細胞に対して2度目の遠心分離を行い、MD培地(分化培地)に再懸濁した。再懸濁後に、MD培地において適当な細胞密度まで希釈する前に細胞の2度目の計数を行い、70mLの細胞懸濁液体積を150cmのフラスコに播種し、骨形成性MD培地を供給した。この方法に従って細胞を4回目の継代後に骨形成性MD培地において直接培養した。従って、細胞が集密に達していない間に骨形成性MD培地を添加した。
【0186】
骨形成性MD培地は、デキサメタゾン(1μM)、アスコルビン酸(0.25mM)およびリン酸ナトリウム(2.93mM)が添加された増殖培地(DMEM、Ala-Gln、hPL5%)からなっていた。
【0187】
細胞挙動および増殖率はドナーごとに僅かに異なる場合がある。故に骨形成性分化工程の持続期間および継代間での培地交換回数はドナーごとに異なってもよい。
【0188】
1.4.細胞の多次元誘導
細胞が集密に達した場合であって形態的変化が現れ、かつ少なくとも1つの類骨小結節(骨組織の成熟前に形成される骨基質の石灰化されていない有機部分)がフラスコ内で観察された場合に3D誘導が開始された。
【0189】
骨形成性MD培地に曝露された後に、接着性骨形成性細胞の集密な単層を含む培養容器にゼラチン粒子(Cultispher-GおよびCultispher-S、Percell Biolytica社、オーストルプ、スウェーデン)を150cmの容器に対して1、1.5および2cmの濃度でゆっくりと均質に撒き散らした。
【0190】
細胞をMD培地中に維持した。多次元誘導の間に定期的な培地交換を3~4日ごとに行った。それらの培地交換はゼラチン粒子の除去を慎重に防止し、かつ構造を発達させることにより行った。
【0191】
実施例2:本生体材料の特性評価
【0192】
2.1.材料および方法
2.1.1.構造/組織学的検査
ASCおよびCultispher GおよびS粒子から得られた3D構造の形成を試験した。Cultispherの粒子を6人の異なるドナーからの4継代時の集密なASCの上に添加した。150cmの容器ごとに異なる体積すなわち1、1.5、2cmの粒子を試験した。細胞を分化培地(ウルトラグルタミン(Ultraglutamine)+1%ペニシリン/ストレプトマイシン+0.5%アンホテリシンAB+デキサメタゾン(1μM)、アスコルビン酸(0.25mM)およびリン酸ナトリウム(2.93mM)を含むDMEM4.5g/Lグルコース)中に維持し、その培地交換を3~4日ごとに行った。
【0193】
MPおよびMD中の培養物の比較のために、MD中の3D構造の生検を粒子の添加後5日目、14日目および8週目に行った。
【0194】
細胞充実性の評価のために、Cultispher粒子の添加後4週目、8週目および12週目に3D構造の生検を行った。
【0195】
それらをホルモールに固定し、かつヘマトキシリン・エオシン、マッソントリクローム、オステオカルシンおよびフォンコッサ染色のために調製した。
【0196】
当該組織の骨分化および石灰化をそれぞれオステオカルシンおよびフォンコッサで染色したスライドにおいて評価した。ヘマトキシリン・エオシンおよびマッソントリクローム染色後に当該組織の構造、細胞充実性および細胞外マトリックスの存在を評価した。
【0197】
2.1.2.生物学的活性
(i)最終製品における増殖因子VEGF、IGF1、SDF-1αの抽出および定量化ならびに(ii)低酸素および高血糖(例えば糖尿病性創傷治癒の状態)における本発明の生体材料の増殖因子分泌/含有量の能力により生理活性のインビトロ研究を評価した。また、(iii)本発明の生体材料の生理活性特性をqRT-PCRにより分子レベルでインビトロにおいて特性評価した。
【0198】
増殖因子含有量
形成された組織の生理活性を評価するために、ゼラチン(1.5cm)の添加後4および8週目にタンパク質の抽出および定量化のための生検を行った。総タンパク質および増殖因子含有量を供給業者の説明書に従って、比色定量(BCAタンパク質アッセイキット、ThermoFisher Scientific社)およびVEGF、SDF1α、IGF1のためのELISA(Human Quantikine ELISAキット、RD Systems社)によって定量化した。
【0199】
低酸素および高血糖での培養
本発明の生体材料の生理活性ならびにこの3D構造の生理活性に対する血中酸素(oxemia)および血糖(glycemia)の影響を評価するために、8週目に3人のドナーからのCultispher G(1.5cm)およびASCにより形成された組織の生検をPBSで2回洗い流し、HPLを含まない4.5g/L(高血糖状態)または1g/L(血糖正常状態)グルコースで10mLのMDを含む6ウェルプレートに2連で配置した。プレートを低酸素(1%O)または酸素正常状態(21%O)、5%CO、37℃の中に72時間置いた。次いで比色定量(BCAタンパク質アッセイキット、ThermoFisher Scientific社)およびELISA(BMP2、BMP7、VEGF、SDF-1α、IGF1、FGFb(Human Quantikine ELISAキット、RD SYSTEMS社))による総タンパク質および増殖因子定量化のためにそれぞれ上澄みを採取した。タンパク質抽出、精製ならびに総タンパク質および増殖因子含有量の定量化のために当該組織を処理した。
【0200】
qRT-PCR
血管形成および血管新生に関与する遺伝子の発現の分析により本発明の生体材料の血管新生促進性の可能性を調査した。異なる状態における脂肪幹細胞、すなわち増殖培地中の脂肪幹細胞(表現型指向を有しない、MP)、粒子を含まない古典的な骨形成性培地中の脂肪幹細胞(MD)、および最後に本発明の生体材料(細胞外マトリックスによる3次元足場非含有構造の形成を誘導することを考慮して1.5cmの粒子を有する脂肪幹細胞)による遺伝子発現を分析した。
【0201】
Qiazol溶菌試薬(Qiagen社、ヒルデン、ドイツ)およびPrecellysホモジナイザー(Bertin instruments社、モンティニー=ル=ブルトンヌー(Montigny-le-Bretonneux)、フランス)を用いて、増殖培地(MP)において培養された2000個以上のASC(n=4の独立したヒト脂肪組織源)および本発明の生体材料の約1cmの生検(n=5)から総RNAを抽出した。製造業者の説明書に従って、さらなるオンカラムデオキシリボヌクレアーゼ消化と共にRneasyミニキット(Qiagen社、ヒルデン、ドイツ)を用いてRNAを精製した。分光光度計(Spectramax 190、Molecular Devices社、カリフォルニア、米国)を用いてRNAの品質および量を決定した。市販されているPCRアレイ(Human RT Profiler Assay-血管新生)による骨形成性および血管新生性遺伝子発現プロファイルのために、RT RNA first strand kit(Qiagen社、ヒルデン、ドイツ)を用いて0.5μgの総RNAからcDNAを合成した。増幅産物の検出のためにABI Quantstudio 5 system(Applied Biosystems社)およびSYBR Green ROX Mastermix(Qiagen社、ヒルデン、ドイツ)を使用した。ΔΔCT法に従って定量化を行った。各試料の最終結果を3種類のハウスキーピング遺伝子(ACTB、B2MおよびGAPDH)の発現レベルの平均に対して正規化した。
【0202】
2.1.3.その特性に対する本生体材料の成熟の影響
その特性に対する本生体材料(「組織」ともいう)の成熟の影響を、石灰化レベル評価、組織学的評価(細胞充実性の決定)および生理活性評価(増殖因子VEGF、IGF1、SDF-1αの抽出および定量化)により評価した。本明細書における本生体材料の成熟とは分化培地におけるCultispher粒子によるASCの培養の持続期間を意味する。
【0203】
Cultispher粒子の添加後4週目(1人のドナー)、8週目(6人のドナー)、12週目(3人のドナー)および25週目(1人のドナー)に3D構造の生検を行い、マイクロCTスキャナー分析のためにホルモールに固定した。末梢骨定量的CT機器(Skyscan 1172G、Bruker micro-CT NV、コンティフ、ベルギー)を用いて3D構造の石灰化を評価した。
【0204】
また組織の生検(4週間(n=3)、8週間(n=8)、12週間(n=3)および25週間(n=1))をホルモールに固定し、ヘマトキシリン・エオシン、マッソントリクロームおよびフォンコッサ染色のために調製した。
【0205】
2.2.結果
2.2.1.構造/組織学的検査
Cultispher粒子を増殖培地においてhASCと共に培養した場合に3D構造は得られなかった。肉眼的3D構造が認められなかったときは顕微鏡的構造は形成されなかった。
【0206】
増殖培地とは対照的に、骨形成性分化培地においてASCと共に培養したCultispherはシート様3D構造の形成を示した(図1A)。さらにこの構造は鉗子で掴むことができた(図1B)。
【0207】
骨形成性分化培地においてASCと共に培養したCultispherの組織学的検査から、粒子間に細胞化された相互結合組織の存在が明らかになった。さらに細胞外マトリックスおよび細胞が粒子の細孔中に認められた(図2Aおよび図2B)。フォンコッサ染色は単離された石灰化粒子の存在を示した。対照的に、細胞外マトリックスはフォンコッサによって染色されなかった(図3Aおよび図3B)。最後に、オステオカルシン発現は相互結合組織において認められなかった(図4Aおよび図4B)。
【0208】
2.2.2.生物学的活性
増殖因子含有量および分泌
Cultispher GおよびSのみの中にはタンパク質含有量は認められなかった。ほんの微量のIGF-1が検出されたがELISA法の定量化の下限未満であった。
【0209】
骨形成性分化培地においてASCと共に培養したCultispherの生検の上澄みの中で検出されたIGF-1およびBMP7レベルはELISA法の定量化の下限未満であり、微量のBMP2およびFGFbが測定された。対照的に、VEGFおよびSDF-1αの有意な分泌が認められた。
【0210】
増殖因子分泌に対する培養条件の有意な影響は認められなかった(表1)。
【表1】
【0211】
骨形成性分化培地においてASCと共に培養したCultispherの生検からのタンパク質抽出物中で検出されたBMP2、BMP7およびFGFbレベルはELISA法の定量化の下限未満であった。対照的にIGF-1、VEGFおよびSDF-1αの有意な含有量が認められた。
【0212】
VEGF含有量に対する培養条件の有意な影響は認められなかった。但し、他の群と比較して4.5g/Lグルコースにおける酸素正常状態(21%O)においてより低いIGF-1含有量が認められた(p<0.05)。低酸素に対してより高いSDF-1α含有量が酸素正常状態および正常血糖(1および4.5g/Lのグルコース)において認められた(p<0.05)(表2)。
【表2】
【0213】
qRT-PCR分析
qRT-PCR分析によって分析した84種の血管新生促進性遺伝子にわたって、13種のmRNAを異なる培養条件間で調節した。増殖培地中のASCと比較して、本発明の生体材料において10種の遺伝子が上方制御され(ANG、ANGPT1、EPHB4、EDN1、LEP、THBS1、PTGS1、VEGFA、VEGFBおよびVEGFC)、2種の遺伝子がMP中のASCと比較して本発明の生体材料において下方制御されることが分かった(ID1、TIMP1)(図5)。
【0214】
MP中のASCと比較してアンジオポエチン(ANGおよびANGPT1)mRNAの有意なより高い発現が本発明の生体材料において認められた(図5Aおよび図5B)。アンジオポエチンシグナル伝達は血管新生、すなわち以前から存在する血管から新しい動脈および静脈が形成されるプロセスを促進する(Fagiani Eら,Cancer Lett,2013)。
【0215】
血管形成において重要な役割を担っている膜貫通タンパク質であるEPHB4(エフリン受容体B4)、強力な血管収縮物質であるエンドセリン(EDN1)(Wu MH,Nature,2013)、トロンボスポンジン1(THBS1)、血管拡張物質およびシクロオキシゲナーゼ1(PTGS1/COX-1)、内皮細胞の調節は、MP中のASCと比較して本発明の生体材料において有意に上方制御された(それぞれ図5C図5D図5Eおよび図5F)。
【0216】
レプチン(LEP)mRNA(血管新生の重要なエンハンサーおよびVEGF発現の誘導因子;Bouloumie Aら,Circ.Res.1998;Sierra-Honigmann MRら,Science(ニューヨーク州ニューヨーク)1998)もMP中のASCと比較して本発明の生体材料において過剰発現された(図5G)。
【0217】
最後に、血管内皮増殖因子A、BおよびCのmRNA(VEGF A/B/C)の発現もMP中のASCと比較して本発明の生体材料においてASCのために有意に向上した(それぞれ図5H図5Iおよび図5J)。VEGFは血管発生および血管新生の調節のための最も重要な増殖因子のうちの1つである。骨は高度に血管化された器官(骨形成における重要な調節因子としての血管新生による)であるため、VEGFは骨格発達および出生後骨修復にも好影響を与える(Hu Kら,Bone 2016)。
【0218】
対照的に、インビボにおいて血管新生を減少させるように会合されたDNA結合タンパク質阻害剤(ID1)およびメタロペプチダーゼ阻害剤1(TIMP1)(Reed MJら,Microvasc Res 2003)は、MP中のASCと比較して本発明の生体材料において下方制御された(それぞれ図5Kおよび図5L)。
【0219】
全体としてこれらの分子解析から、細胞が本発明の生体材料においてそれらの3D基質に埋め込まれている場合にはASCの血管新生促進能が上方制御されることが分かる。
【0220】
2.2.3.その特性に対する本生体材料の成熟の影響
石灰化レベルの評価
4、8、12および25週目における3D移植片の拡大写真から同じ肉眼的構造が明らかになり(図6Aおよび図6B)、これらをマイクロCTで分析した。石灰化体積の割合を決定した:4週目に0.07%、8週目に0.28%±0.33%、12週目に1.24%±0.35%および25週目に2.77%(図6Cおよび図6D)。
【0221】
従って、成熟レベルが高くなるほど石灰化が高まる。
【0222】
組織学的評価
分析した異なる組織において同様の細胞充実性を定量化した際に、細胞含有量に対する当該組織の成熟の影響が認められた(データは示さず)。
【0223】
対照的に、当該組織中のECMの割合が成熟レベルに伴って増加し、4週目に有意なより低い割合のECMおよび25週目により高い割合のECMが認められた(4、8/12および25週目においてそれぞれ、28±7対33±11対34±11対56±8%のECM(p<0.05))(表3)。
【表3】
【0224】
より顕著なフォンコッサ染色により示されているように12および25週間の成熟においてより高い石灰化度が認められた(データは示さず)。
【0225】
生理活性評価
ELISAによるタンパク質抽出、精製および増殖因子(VEGF、IGF1、SDF-1α)の定量化後に、4、8、12および25週間の成熟における本生体材料の生理活性を調査した(表4)。
【表4】
【0226】
実施例3:血管新生および骨形成特性のインビボ研究
【0227】
3.1.材料および方法
3.1.1.ヌードラットを用いたインビボ実験
本発明の生体材料(7.5週間の成熟中に1.5cmのCultispher GもしくはSと共に実施例1に記載されているように培養したASC)の10個の複製物を0日目にヌードラットの焼灼した腰の筋肉に縫い付けた。移植後29日目に生体材料を採取して画像および組織学検査によって分析した。
【0228】
3.1.2.ウィスターラットを用いたインビボ実験
本発明の生体材料(7.5週間の成熟中に1.5cmのCultispher GもしくはSと共に実施例1に記載されているように培養したASC)の10個の複製物を0日目にウィスターラットの焼灼した腰の筋肉に縫い付けた。移植後29日目に生体材料を採取して画像および組織学検査によって分析した。
【0229】
動物の全身の臨床的状態を実験期間の間に毎日確認した。
【0230】
小動物イメージングSkyScan1076のための高解像度X線マイクロCTシステムを用いて30個の検体の石灰化の分析を行った。CTvolおよびCTanソフトウェア(Skyscan)を用いてスキャンの3次元再建および石灰化組織の分析を行った。
【0231】
本製品のインビボでの血管新生および骨誘導特性を評価するために筋肉試料に対して組織学的分析を行った(ヘマトキシリン・エオシン、マッソントリクローム、フォンコッサ(当該組織中の石灰化の位置を見つけるため)、ヒト組織マーカーKu80(動物組織におけるヒト由来の細胞を確認するため)およびCD3(当該組織におけるCD3+免疫細胞の再分配を確認するため)染色)。
【0232】
3.2.結果
3.2.1.ヌードラットを用いたインビボ実験
インビボ実験の間に苦痛または有意な病変の兆候が認められず、これは本製品が動物に対して有害作用を引き起こさなかったことを示している。
【0233】
ヌードラットでは、29日目に行ったX線写真において石灰化を示唆するX線不透過性構造の存在が観察された(図7)。
【0234】
ヌードラットからの試料においてヒト細胞の存在が強調された。存在する場合、ヒト細胞が2つの群において末端を除いて移植部位の平均半分の細胞に現れた。ラットおよびヒト由来の細胞がラット細胞のみが存在している末端を除いて移植部位に均質に分布されていた。
【0235】
3.2.2.ウィスターラットを用いたインビボ実験
ウィスターラットでは、29日目に行われたX線写真において石灰化を示唆するX線不透過性構造の存在が観察された(図8)。
【0236】
石灰化の分析により各移植部位における石灰化組織の存在が示唆されている。
【0237】
フォンコッサ染色により、石灰化が当該粒子上に局所化されていることが分かる(図9)。
【0238】
実施例4:インビボでの生理活性研究
【0239】
4.1.材料および方法
4.1.1.試料の調製
10匹のヌードラットの脊椎傍筋肉組織への移植のために、約0.5gの生体材料(8週間の成熟中に1.5cmのCultispher Sと共に実施例1に記載されているように培養したASC)の10個の試料を調製した。また約0.5gのCultispher S粒子の2つの試料を対照として使用した。
【0240】
当該試料の増殖因子含有量を評価するために、生体材料の試料をタンパク質の抽出および定量化(VEGF、IGF1、SDF-1α)のために調製した。
【0241】
本生体材料の品質を評価するために、1つの試料をヘマトキシリン・エオシン(HE)およびフォンコッサ(VK)染色のためにホルモールに固定した。HE染色後の当該組織中の細胞の数を計数することにより脱細胞処置の有効性の評価を行った。
【0242】
4.1.2.動物施設への収容
獣医学サービスによって認可されており、かつ現在のところ現行の法律(実験目的で使用される動物に対する2013年2月1日時点のDecree N 2013-118)に準拠して全ての実験手順で使用されている動物施設「Centre Preclinique Atlanthera」に動物を収容した。研究開始前の最低7日間でこれらの動物を順応させ、その研究中に動物の全身状態を毎日追跡した。標準的な寸法のプラスチック製の箱の中の空調が効いた動物小屋に動物を収容した。人工の昼/夜光サイクルを12時間の明期および12時間の暗期に設定した。全ての動物は水に自由にアクセスすることができ、市販の固形飼料が自由に与えられていた。各動物を耳タグ(リング)で特定した。
【0243】
4.1.3.実験プロトコル
0日目に生体材料の複製物を10匹のヌードラットの焼灼した腰の筋肉に縫い付け、粒子のみを1匹のヌードラットの腰の筋肉に形成されている筋肉の焼灼した区画に移植した。移植後29日目に画像および組織学検査によって分析するために生体材料を含む筋肉を採取した。
【0244】
腰の筋肉への移植
最良の条件下で外科手術を行うために動物を完全に麻酔した。鎮痛処置は外科手術のほぼ30分前のブプレノルフィン注射およびその後の翌日の別の注射で構成されていた。
【0245】
外科手術:各動物のために腰のレベルで脊柱に沿って長手方向の皮膚切開創を作製した。1匹のラットのために皮膚切開創の両側に筋肉区画を作製した(すなわち腰の筋肉の中に区画を作製した)。区画を焼灼した。粒子のみをこれらの区画の中に移植した。10匹のラットのために生体材料を焼灼した腰の筋肉に縫い付けた。外科手術後に外科用ステープルを用いて皮膚創傷部を縫合した。
【0246】
臨床的経過観察
動物の全身の臨床的状態を実験期間中に毎日確認した。1週間に2回、呼吸、眼、心血管系、胃腸の兆候、運動活動および行動、発作の兆候、皮膚の評価、移植部位における炎症に焦点を当てた詳細な臨床的経過観察を行った。
【0247】
また詳細な臨床的経過観察と同時に1週間に2回体重を測定した。
【0248】
終了手順および死後分析
29日目に瀉血により動物を屠殺し、肉眼的評価を行った。剖検中に死体の外部状況を観察し、内部の病変的異常の可能性の兆候を示すあらゆる異常な体液喪失が記録された。
【0249】
心臓、腎臓、脾臓、肝臓および肺に焦点を当てた内部臓器のあらゆる病変的変化を評価するため胸腔および腹腔を大きく開いた。
【0250】
移植部位における肉眼的評価
筋肉移植部位を露出し、かつ局所的組織反応ならびに移植組織の存在および局在化に焦点を当てた詳細な肉眼的評価を行った(X線撮影分析)。
【0251】
筋肉移植部位を移植片と共に除去した。外植片を中性緩衝ホルマリン溶液に室温で48時間固定した。
【0252】
3D組織形態計測的分析
小動物イメージングSkyScan1076のための高解像度X線マイクロCTシステムを用いて検体の石灰化の分析を行った。
【0253】
以下のパラメータ:電源電圧:50kV、回転工程:0.5°、画素の大きさ:18μm、1つの位置につき1フレームを用いて筋肉試料を室温でスキャンした。
【0254】
CTvolおよびCTanソフトウェア(Skyscan)を用いてスキャンの3次元再建および石灰化組織の分析を行った。
【0255】
各試料において骨石灰化組織のものと同様のシグナルの量(閾値40/255)を決定した(骨体積:BVとして特定)。使用した「組織体積」値は処方された移植組織の体積である。
【0256】
病理組織学的分析および2D組織形態計測的分析
本製品のインビボでの血管新生および骨誘導特性を評価するために筋肉試料に対して組織学的分析を行った。
【0257】
ホルマリン固定した外植片をEDTA15%中で13日間脱灰した。次いで、当該試料を脱水してパラフィン包埋した。ミクロトームを用いて4~5μmの切片に切断してスライド上で引き伸ばした。切片化は150μmだけ離れた2つの異なるレベルで行った。
【0258】
これらの2つの切片化領域において、(パラフィン包埋または凍結した検体からの切片を用いて)ヘマトキシリン・エオシン(HE)、マッソントリクローム(MT)およびCD146の免疫組織化学を行った。
【0259】
デジタルスライドスキャナー(Nanozoomer、Hamamatsu社)を用いて完全な染色された切片の画像を取得した。血管によって占められた領域の定量化(Trichrome Masson、CD146)をNDPview2ソフトウェアを用いて行い、当該組織の特徴に基づいて目的の領域の輪郭を手で描いて切片上で「移植部位」の領域を定めた。各血管の輪郭を手で描いて目的の領域において血管によって占められる領域を定量化した。血管に対応する表面および「移植部位」の総面積に対する血管の数を報告した。
【0260】
4.2.結果
4.2.1.組織学的分析
HE染色後に当該組織中の細胞の数を決定した(図10):146.5±50.4細胞/mm
【0261】
当該組織のフォンコッサ染色により、粒子上に局所化された弱い石灰化が証明された(図11)。
【0262】
4.2.2.本生体材料の生理活性のインビボ研究
苦痛または有意な病変部の兆候は認められず、これは本製品が動物に対して有害作用を引き起こさなかったことを示している。この実験の間に記録した動物の体重から、全ての動物が2日目に体重の増加を示さず、次いで2日目~28日目に規則的な体重増加を示すことが分かった。外科手術直後に体重増加が生じないことがしばしば観察されたが、これは試験した製品のあらゆる毒性の兆候とはみなさない。2日目~28日目に観察された規則的な体重増加により当該粒子が動物代謝に影響を与えなかったことが確認される。インビボ実験の終了時に剖検により肉眼的器官病変部は全く強調されなかった。
【0263】
移植部位におけるミネラル含有量
本生体材料が移植された全ての部位において、石灰化を示唆するX線不透過性構造の存在が29日目に行われたX線写真において観察された(図12)。
【0264】
筋肉内への石灰化組織の形成の割合を定量化するために、小動物イメージングSkyScan1076のための高解像度X線マイクロCTシステムを用いて「移植部位」の石灰化の分析を行った。その結果が表5に示されている。
【表5】
【0265】
この分析により、0.118の平均BV/TVの本生体材料が移植された各部位における石灰化組織の顕著な含有量の存在が示唆される。
【0266】
移植組織の新血管新生
新血管新生を文書化するために線維性結合組織における毛管の存在を調べた。
【0267】
マッソントリクローム染色後の移植組織内および筋肉と移植部位との接合部における面積あたりの血管の数および血管密度を定量化した。
【0268】
本生体材料を含む移植組織はマッソントリクローム染色によって血管化されていることが分かり、その数は40.8±18.5血管/mmであった。
【0269】
実施例5:高血糖性/虚血性の異種ラットモデルにおけるインビボ有効性研究
【0270】
5.1.材料および方法
5.1.1.動物
250~300gの56匹の雌のウィスターラットにストレプトゾトシン(50mg/kg)を腹腔内投与した。ストレプトゾトシンの投与から7日~10日後に、血糖試験ストリップによって尾静脈血から血糖値を測定した。11.1mM超のグルコースレベルを有するラットを高血糖性とみなし、本研究に含めた(n=42のラット)。
【0271】
Levigneら(Biomed Res Int 2013)に記載されているように、各ラットの左肢において虚血を誘発させた。剪毛した鼠径部における長手方向の切開創を通して、外腸骨および大腿動脈を総腸骨から伏在動脈まで切開した。虚血状態を引き起こすために左肢において切開した動脈を総腸骨から切除し、右肢動脈は保存して肢を非虚血性であるとみなした。全ての外科手術を手術用顕微鏡(Carl Zeiss社、イェーナ、ドイツ)下で行い、誘導のためのイソフルラン5%および麻酔の維持のためのイソフルラン3%の吸入により動物を麻酔した。
【0272】
動物をランダムに以下の3つの群:
-偽対照群(n=10の雌のウィスターラット)、
-Cultispher群(n=10の雌のウィスターラット)、すなわち粒子のみ、
-生体材料群(n=14の雌のウィスターラット)、すなわち組織を形成するゼラチン粒子を含むASC
に分けた。
【0273】
5.1.2.被験物質
約0.5gのCultispher粒子の14個の試料を調製し、ガンマ線を照射した。
【0274】
移植のために約2cmの生体材料の14個の試料(8週間の成熟中に1.5cmのCultispher Sと共に実施例1に記載されているように培養したASC)を調製した。
【0275】
当該試料の増殖因子含有量を評価するために、生体材料の1つの試料をタンパク質の抽出および定量化(VEGF、IGF1、SDF-1α)のために調製した。
【0276】
本生体材料の品質を評価するために、試料をヘマトキシリン・エオシン(HE)染色のためにホルモールに固定した。HE染色後の当該組織中の細胞の数を計数することにより脱細胞処理の有効性の評価を行った。
【0277】
5.1.3.創傷治癒の肉眼的評価
移植後0、15、24および34日目に脚の写真を撮影した。
【0278】
創傷閉鎖を定量化するために、2人の独立した操作者による画像Jソフトウェアを用いた画像分析により創傷領域を測定した。D0~D34の各時点で測定した創傷領域に対して曲線下面積を計算し、100%で固定した偽対照群と比較して表した。
【0279】
5.1.4.創傷治癒の顕微鏡的評価
脚を切開して創傷組織を取り出し、これを横方向に向けて当該組織の全厚の組織学的スライドを得た。5μmの組織学的スライドを調製し、表皮(op ‘t Veld RCら,Biomaterials 2018)および真皮(Yates Cら,Biomaterials 2007)のスコア化のためにHEで染色した。
【0280】
創傷(中心部および末端)の3つの代表的な切片における表皮治癒のスコア化。
-0:上皮細胞の遊走なし
-1:部分的遊走
-2:角質化を伴わない/部分的角質化を伴う完全な遊走
-3:完全な角質化を伴う完全な遊走
-4:進行性肥厚
【0281】
創傷(中心部および末端)の3つの代表的な切片における真皮治癒のスコア化。
-0:治癒なし
-1:炎症性浸潤
-2:肉芽組織の存在-線維増殖および血管新生
-3:肉芽組織を置き換えるコラーゲン沈着>50%
-4:肥厚性線維化反応
【0282】
また組織形態計測による血管領域の評価ならびに免疫および炎症反応の評価のためのCD3、CD68免疫染色法のためにマッソントリクローム染色を行った。また移植後のヒト細胞の存在を特定するためにKU80染色を行った。
【0283】
5.2.結果
ストレプトゾトシン注射を投与した56匹のラットに対して、42匹が高血糖を発症し、これらを本研究のために選択し、14匹が低血糖症を示し、かつ外科合併症を発症したため本研究から除外した。
【0284】
5.2.1.創傷治癒の肉眼的評価
創傷の肉眼的写真が図13に示されている。他の群(偽対照(図13A)および粒子のみ(図13B))と比較して本生体材料群(図13C)では外科手術後15日目(D15)からより良好な創傷治癒を観察することができる。この差は虚血性(左肢)および非虚血性創傷(右肢)の両方で認めることができる。
【0285】
非虚血性創傷のための曲線下面積の結果が図14に示されている。Cultispherのみの移植により非治療動物と比較してそれぞれ23%の創傷治癒の低下が示された。対照的に本発明の生体材料で治療した群ではより良好な創傷治癒(25%)が認められた。
【0286】
D0~D34の非虚血性創傷および虚血性創傷の創傷領域の漸進的変化が図15に示されている(それぞれ図15Aおよび図15B)。本発明の生体材料で治療した創傷が他の群と比較してD21~D34により低い治癒されていない組織を示していることに留意されたい。創傷の完全な閉鎖は非虚血および虚血状態(それぞれ図16Aおよび図16B)において本発明の生体材料で治療した場合に有意により速い。
【0287】
炎症反応を評価するための組織形態計測の結果が図17に示されている。これらの結果は偽対照(図17A)およびCultispher Sのみ(図17B)と比較して本発明の生体材料で治療した境界部、中心部および虚血性創傷部全体(図17C)においてより高いリンパ球CD3(黒色の線)を示している。CD3は感染および機能不全に陥っている細胞を破壊するために正常に機能している。
【0288】
またマクロファージCD68(灰色の線)は、偽対照(図17A)およびCultispher Sのみ(図17B)のように、D10周辺でピークに達した(図17C)。CD68は、組織部位に群がって細胞残屑および感染を除去することが分かっているマクロファージに特有である。
【0289】
これらの2つの観察により、本発明の生体材料の移植により免疫誘発による創傷閉鎖動態の増加が生じることが確認される。
【0290】
創傷の厚さも評価した(図18)。虚血性モデル(図18A)では、創傷の厚さは移植後D15からD34に減少し、これは退縮を示している。非虚血性モデル(図18B)では、創傷の厚さは移植後D15からD34に僅かに減少したが、さらに重要なことには偽対照およびCultisphersのみの場合のようには増加しなかった。この結果は、本発明の生体材料が移植されている場合には肥厚が存在しないことを強調している。
【0291】
5.2.2.創傷治癒の顕微鏡的評価
各時点において非虚血性創傷に対して評価した表皮および真皮スコアが図19A図19B図19Cおよび図19Dに示されている。他の群と比較して本発明の生体材料ではより速い真皮および表皮形成が認められた。
【0292】
実施例6:異なる分化培地の試験
【0293】
6.1.材料および方法
形成された3D構造に対する分化培地の影響を調査した。異なる分化培地:骨形成性培地(実施例1と同じ)、軟骨形成性培地(DMEM、5%HPL、100μg/mLのピルビン酸ナトリウム、ITS 1×、40μg/mLのプロリン、10ng/mLのTGF-β1、1μMのデキサメタゾン)、角化細胞形成性培地(DMEM、5%HPL、5μg/mLのインスリン、10ng/mLのKGF、10ng/mLのhEGF、0.5μg/mLのヒドロコルチゾン、1.5mMのCaCl)、および筋線維形成性培地(DMEM:F12、100μg/mLのピルビン酸ナトリウム、1×ITS、1×RPMI1640ビタミン、1ng/mLのTGF-β1、1μg/mLのグルタチオン、0.1mMのMEM)において、1.5cmのCultispher Sと共にASCを4週目培養した。3~4日ごとに分化培地を交換しながら培養物を4週目維持した。
【0294】
4週目における組織の生検をヘマトキシリン・エオシン、マッソントリクロームおよびフォンコッサ染色のためにホルモールに固定した。また組織特異的染色を行った(オステオカルシン、アルシアンブルー、Pankeratin、CD34、α-SMA)。
【0295】
形成された組織の生理活性を評価するために、Cultispherを添加してから4週間後にタンパク質の抽出および定量化のために生検を行った。比色定量(BCAタンパク質アッセイキット、ThermoFisher Scientific社)によって総タンパク質および増殖因子含有量(VEGFおよびSDF-1α)を定量化した。
【0296】
6.2.結果
骨形成性培地におけるASCおよびCultispher Sは骨形成性分化のための陽性対照として機能する。大きい把持可能な3D構造の形成が観察された。組織学的分析により、細胞化された相互結合組織内への粒子の組み込みおよび当該基質のオステオカルシン陽性染色が明らかになった(図20A)。
【0297】
軟骨形成性培地における培養物は、容易に把持可能であり、かつ機械力に対して抵抗性を有する強度および厚い3D構造の形成を素早く(たった数日後で)示した。組織学的分析により細胞化された相互結合組織内への粒子の組み込みおよびアルシアンブルー染色に対する基質陽性が明らかになった(図20B)。
【0298】
筋線維形成性分化培地は3D構造の形成を可能にした。形成された構造は把持可能であったが脆弱であった。この場合も、組織学的分析により細胞化された相互結合組織内への粒子の組み込みおよび当該基質のα-SMA陽性の染色が明らかになった(図20C)。
【0299】
角化細胞形成性培地におけるASCおよび粒子は、大きい平面状の薄い3D構造を形成した。これは非常に脆弱であり、かつ扱いが困難であった(図20D)。
(表6)。
【表6】
【0300】
従ってASCおよびゼラチンにより形成された生体材料の全ての試料において3D構造が観察され、全ての分化培地を試験した。
図1A
図1B
図2A-B】
図3A-B】
図4A-B】
図5-1】
図5-2】
図6A-D】
図7
図8
図9
図10
図11
図12A-B】
図13A-C】
図14
図15
図16
図17A
図17B
図17C
図18
図19
図20A-D】