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特許7548584抗CD79B抗体およびキメラ抗原レセプターおよびそれらの使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】抗CD79B抗体およびキメラ抗原レセプターおよびそれらの使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20240903BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240903BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20240903BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240903BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240903BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240903BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240903BHJP
   C12P 21/02 20060101ALN20240903BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20240903BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K19/00
C07K14/725
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/13
A61P35/00
A61K39/395 T
C12P21/02 C
C12P21/08
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021523839
(86)(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 US2019058710
(87)【国際公開番号】W WO2020092467
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】62/752,889
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チュー、フーリャン
(72)【発明者】
【氏名】ニーラプ、サットヴァ エス.
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ、チンチン
(72)【発明者】
【氏名】リウ、チンウェイ
【審査官】鳥居 敬司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/012256(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0159906(US,A1)
【文献】国際公開第2017/172981(WO,A2)
【文献】国際公開第2017/015427(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0361360(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 16/00-16/46
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離されたモノクローナル抗体であって、ここで、前記抗体は、CD79bに特異的に結合し、以下を含有する、モノクローナル抗体:
(I):
(a)第1のVCDRは、配列番号23と同一であり;
(b)第2のVCDRは、配列番号24と同一であり;
(c)第3のVCDRは、配列番号25と同一であり;
(d)第1のVCDRは、配列番号28と同一であり;
(e)第2のVCDRは、配列番号29と同一であり;及び
(f)第3のVCDRは、配列番号30と同一である;
【請求項2】
操作されたCD79b CAR又はTCRであって、以下の抗原結合ドメインを含有する、CAR又はTCR:
(I):
(a)第1のVCDRは、配列番号23と同一であり;
(b)第2のVCDRは、配列番号24と同一であり;
(c)第3のVCDRは、配列番号25と同一であり;
(d)第1のVCDRは、配列番号28と同一であり;
(e)第2のVCDRは、配列番号29と同一であり;及び
(f)第3のVCDRは、配列番号30と同一である。
【請求項3】
請求項1の抗体又は請求項2の操作されたCD79b CAR又はTCRであって、
前記抗体又はCD79b CAR又はTCRの抗原結合ドメインが、配列番号22のVドメインと少なくとも約95%同一のVドメイン及び配列番号27のVドメインと少なくとも約95%同一のVドメインを含む
抗体又は操作されたCD79b CAR又はTCR。
【請求項4】
請求項1の抗体又は請求項2の操作されたCD79b CAR又はTCRであって、
前記抗体又はCD79b CAR又はTCRの抗原結合ドメインが、配列番号22のVドメインと同一のVドメイン、及び配列番号27のVドメインと同一のVドメインを含む;、
抗体又は操作されたCD79b CAR又はTCR。
【請求項5】
請求項1又は3の抗体であって、
該抗体は、IgG、IgM、IgA又はそれらの抗原結合フラグメントである、
抗体。
【請求項6】
(I)クローン45のVドメインのCDR1~3(配列番号23、24及び25)及びクローン45のV ドメインのCDR1~3(配列番号28、29及び30)を含む抗体をコードするアミノ酸配列
を含み、該抗体がCD79bに結合する、組換えポリペプチド。
【請求項7】
請求項1、3、及び4のいずれか1項に記載の抗体又は請求項6に記載の抗体をコードするアミノ酸配列を含む組換えポリペプチドをコードする核酸配列を含む、単離されたポリヌクレオチド分子。
【請求項8】
請求項1、3、及び4のいずれか1項に記載の抗体又は請求項6に記載の抗体をコードするアミノ酸配列を含む組換えポリペプチドをコードする1つ以上のポリヌクレオチド分子を含む、宿主細胞。
【請求項9】
前記宿主細胞が、哺乳動物細胞、酵母細胞、細菌細胞、繊毛細胞又は昆虫細胞である、請求項8に記載の宿主細胞。
【請求項10】
癌を有する被験体を処置するための方法に用いる為の請求項1,3,及び4のいずれか1項に記載の抗体を含む組成物であって、該方法は、有効量の該抗体を被験体に投与する工程を含む、組成物。
【請求項11】
前記癌が、B細胞悪性腫瘍である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
CD3ζ、CD28、4-1BB及び/又はOX40シグナル伝達ドメインを含む、操作されたCD79b標的化キメラ抗原レセプター(CAR)であって、請求項2又は3に記載の抗原結合ドメイン、又は請求項1、3、又は4の抗体又はそのフラグメントによる抗原結合ドメインを有する、CAR。
【請求項13】
請求項12に記載のCARであって、
(a)該CARが、リンカーによってVドメインに連結されたVドメインを含む抗原結合ドメインを含み、
(i)該リンカーが、リンカー1(配列番号44又は45)、リンカー2(配列番号46又は47)、リンカー3(配列番号48又は49)又はリンカー4(配列番号50又は51)であるか、又は
(ii)前記CARが、V-リンカー1(配列番号44又は45)-V、V-リンカー2(配列番号46又は47)-V、V-リンカー3(配列番号48又は49)-V、V-リンカー4(配列番号50又は51)-V、V-リンカー1(配列番号44又は45)-V、V-リンカー2(配列番号46又は47)-V、V-リンカー3(配列番号48又は49)-V又はV-リンカー4(配列番号50又は51)-Vを含む;
(b)前記CARが、ヒンジを含み、
該ヒンジが、CD8ヒンジ1(配列番号52又は53)、CD8ヒンジ2(配列番号54又は55)、CD8ヒンジ3(配列番号56又は57)、CD28ヒンジ(配列番号58又は59)、IgG4ヒンジ(配列番号60又は61)、IgG4CH2(配列番号62又は63)、IgG4CH2CH3(配列番号64又は65)又はIgG4CH1CH2CH3(配列番号66又は67)であるか、又は
(c)該CARが、膜貫通ドメインを含み、該膜貫通ドメインが、CD8TM1(配列番号68又は69)、CD8TM2(配列番号70又は71)又はCD28TM(配列番号72又は73)である、
CAR。
【請求項14】
請求項12又は13に記載のCARをコードする発現ベクター。
【請求項15】
CD79b CARを発現するように操作された、請求項12又は13に記載の宿主細胞。
【請求項16】
請求項1、3及び4のいずれか1項に記載の抗体を薬学的に許容される担体に含む、被験体において癌を治療する方法に使用するための薬学的組成物。
【請求項17】
CD79b CAR T細胞及び薬学的に許容される担体を含み、該CD79b CAR T細胞は、請求項12又は13に記載のCARを発現するように操作されている、被験体において癌を治療する方法に使用するための医薬組成物。
【請求項18】
被検体の癌を処置する為の方法に使用する為の、CD79b CAR T細胞を含む組成物であって、該方法は、有効量の請求項12又は13に記載のCD79b CAR T細胞を被検体に投与する、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2018年10月30日出願の米国仮出願第62/752,889の利益を主張する。この仮出願の全体が、参照により本明細書中に援用される。
配列表の援用
【0002】
2019年10月29日に作成された73KB(Microsoft Windows(登録商標)において計測)の「UTFCP1405WO_ST25.txt」という名称のファイルに含まれる配列表が、電子提出によって本明細書とともに出願され、参照により本明細書中に援用される。
背景
1.分野
【0003】
本発明は、概して、免疫学および医学の分野に関する。より詳細には、本発明は、CD79bキメラ抗原レセプターおよびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
2.関連技術の説明
CD19を標的化するキメラ抗原レセプター(CAR)T細胞は、B細胞悪性腫瘍において非常に有効である。最近、2つの抗CD19 CAR T細胞治療用製品が、再発性または治療抵抗性のB細胞急性リンパ芽球性白血病(ALL)および/または大細胞型B細胞リンパ腫に対して米国FDAによって承認された。重要な治験において、1年を超えて継続する永続性の寛解が、これらの患者の約40~50%において観察された。しかしながら、約50~60%において再発または進行が起き、抵抗性の主な原因は、CD19抗原の喪失に起因するとみられる。したがって、これらの患者における成果をさらに改善するために新規標的に対するCAR T細胞療法を開発することが急務である。
【発明の概要】
【0005】
第1の実施形態において、本開示は、単離されたモノクローナル抗体を提供し、その抗体は、CD79bに特異的に結合し、(I):(a)第1のVCDRは、配列番号3と同一であり;(b)第2のVCDRは、配列番号4と同一であり;(c)第3のVCDRは、配列番号5と同一であり;(d)第1のVCDRは、配列番号8と同一であり;(e)第2のVCDRは、配列番号9と同一であり;(f)第3のVCDRは、配列番号10と同一である;(II):(a)第1のVCDRは、配列番号13と同一であり;(b)第2のVCDRは、配列番号14と同一であり;(c)第3のVCDRは、配列番号15と同一であり;(d)第1のVCDRは、配列番号18と同一であり;(e)第2のVCDRは、配列番号19と同一であり;(f)第3のVCDRは、配列番号20と同一である;または(III):(a)第1のVCDRは、配列番号23と同一であり;(b)第2のVCDRは、配列番号24と同一であり;(c)第3のVCDRは、配列番号25と同一であり;(d)第1のVCDRは、配列番号28と同一であり;(e)第2のVCDRは、配列番号29と同一であり;(f)第3のVCDRは、配列番号30と同一である、を含む。
【0006】
いくつかの態様において、上記抗体は、配列番号2のVドメインと少なくとも約80%(例えば、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一のVドメインおよび配列番号7のVドメインと少なくとも約80%同一のVドメインを含む。ある特定の態様において、上記抗体は、配列番号12のVドメインと少なくとも約80%(例えば、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一のVドメインおよび配列番号17のVドメインと少なくとも約80%同一のVドメインを含む。いくつかの態様において、上記抗体は、配列番号22のVドメインと少なくとも約80%(例えば、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一のVドメインおよび配列番号27のVドメインと少なくとも約80%同一のVドメインを含む。
【0007】
ある特定の態様において、上記抗体は、組換え抗体である。上記抗体は、IgG、IgM、IgAまたはそれらの抗原結合フラグメントであり得る。上記抗体は、Fab’、F(ab’)2、F(ab’)3、一価のscFv、二価のscFvまたは単一ドメイン抗体であり得る。ある特定の態様において、上記抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体または脱免疫化(de-immunized)抗体である。上記抗体は、造影剤、化学療法剤、トキシンまたは放射性核種に結合体化され得る。さらなる実施形態は、薬学的に許容され得るキャリア中に上記実施形態のCD79b抗体を含む組成物を提供する。上記実施形態のCD79抗体をコードする核酸配列を含む単離されたポリヌクレオチド分子も本明細書中に提供される。
【0008】
別の実施形態は、クローン14のVドメインのCDR1~3(配列番号3、4および5)およびクローン14のVドメインのCDR1~3(配列番号8、9および10)を含む抗体Vドメインを含む組換えポリペプチドを提供する。さらなる実施形態は、クローン16aのVドメインのCDR1~3(配列番号13、14および15)およびクローン16aのVドメインのCDR1~3(配列番号18、19および20)を含む抗体Vドメインを含む組換えポリペプチドを提供する。クローン45のVドメインのCDR1~3(配列番号23、24および25)およびクローン45のVドメインのCDR1~3(配列番号28、29および30)を含む抗体Vドメインを含む組換えポリペプチドがさらに本明細書中に提供される。さらなる実施形態は、上記実施形態のCD79bポリペプチドをコードする核酸配列を含む単離されたポリヌクレオチド分子を提供する。上記実施形態のCD79b抗体または組換えポリペプチドをコードする1つ以上のポリヌクレオチド分子を含む宿主細胞も本明細書中に提供される。その宿主細胞は、哺乳動物細胞、酵母細胞、細菌細胞、繊毛細胞または昆虫細胞であり得る。
【0009】
別の実施形態は、癌を有する被験体を処置するための方法を提供し、その方法は、有効量の上記実施形態のCD79b抗体を被験体に投与する工程を含む。いくつかの態様において、その癌は、B細胞悪性腫瘍である。ある特定の態様において、その抗体は、薬学的に許容され得る組成物中に存在する。いくつかの態様において、その抗体は、全身投与される。その抗体は、静脈内に、皮内に、腫瘍内に、筋肉内に、腹腔内に、皮下に、または局所的に投与され得る。追加の態様において、その方法は、少なくとも第2の抗癌療法を被験体に投与する工程をさらに含む。いくつかの態様において、第2の抗癌療法は、外科的療法、化学療法、放射線療法、寒冷療法、ホルモン療法、免疫療法またはサイトカイン療法である。ある特定の態様において、第2の抗癌療法は、養子T細胞療法を含む。
【0010】
さらなる実施形態は、CD3ζシグナル伝達ドメイン、CD28シグナル伝達ドメイン、4-1BBシグナル伝達ドメインおよび/またはOX40シグナル伝達ドメインを含む操作されたCD79b標的化キメラ抗原レセプター(CAR)を提供する。CD3ζシグナル伝達ドメインは、配列番号80または81と少なくとも約80%(例えば、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一であり得る。CD28シグナル伝達ドメインは、配列番号74または75と少なくとも約80%(例えば、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一であり得る。4-1BBシグナル伝達ドメインは、配列番号76または77と少なくとも約80%(例えば、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一であり得る。4-1BBシグナル伝達ドメインは、配列番号78または79と少なくとも約80%(例えば、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一であり得る。
【0011】
いくつかの態様において、上記CARは、レンチウイルスベクターなどのウイルスベクターによってコードされる。特定の態様において、上記CARは、F(ab’)2、Fab’、Fab、FvおよびscFvからなる群より選択される抗原結合ドメインを含む。その抗原結合ドメインは、上記実施形態のCD79b抗体またはそのフラグメント(例えば、scFV)を含み得る。
【0012】
いくつかの態様において、上記抗原結合ドメインは、(I):(a)第1のVCDRは、配列番号3と同一であり;(b)第2のVCDRは、配列番号4と同一であり;(c)第3のVCDRは、配列番号5と同一であり;(d)第1のVCDRは、配列番号8と同一であり;(e)第2のVCDRは、配列番号9と同一であり;(f)第3のVCDRは、配列番号10と同一である;(II):(a)第1のVCDRは、配列番号13と同一であり;(b)第2のVCDRは、配列番号14と同一であり;(c)第3のVCDRは、配列番号15と同一であり;(d)第1のVCDRは、配列番号18と同一であり;(e)第2のVCDRは、配列番号19と同一であり;(f)第3のVCDRは、配列番号20と同一である;または(III):(a)第1のVCDRは、配列番号23と同一であり;(b)第2のVCDRは、配列番号24と同一であり;(c)第3のVCDRは、配列番号25と同一であり;(d)第1のVCDRは、配列番号28と同一であり;(e)第2のVCDRは、配列番号29と同一であり;(f)第3のVCDRは、配列番号30と同一である、を含む。ある特定の態様において、上記抗原結合ドメインは、配列番号31、32または33のアミノ酸配列に対して少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一を有するscFVを含む。
【0013】
追加の態様において、上記CARは、形質導入マーカーおよび/または安全スイッチをさらに含む。その形質導入マーカーは、高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)(例えば、配列番号82または83)であり得る。ある特定の態様において、その形質導入マーカーおよび/または安全スイッチは、切断型の上皮成長因子(EGFR)(例えば、配列番号40または41)である。いくつかの態様において、その形質導入マーカーおよび/または安全スイッチは、2Aペプチドなどの切断ペプチドによって上記CARに連結されている。いくつかの態様において、その2Aペプチドは、T2Aペプチド(配列番号84または85)である。
【0014】
いくつかの態様において、上記CARは、配列番号34、35、36、37、38、39、86、87または88のアミノ酸配列に対して少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)の同一性を有する配列を含む。
【0015】
ある特定の態様において、上記CARは、第2の抗原結合ドメインをさらに含む。いくつかの態様において、第2の抗原結合ドメインは、CD19抗原結合ドメイン、CD20抗原結合ドメインまたはCD22抗原結合ドメインである。
【0016】
いくつかの態様において、上記CARは、リンカーを含む。例えば、そのリンカーは、リンカー1(配列番号44または45)、リンカー2(配列番号46または47)、リンカー3(配列番号48または49)またはリンカー4(配列番号50または51)であり得る。ある特定の態様において、上記CARは、ヒンジを含む。例えば、そのヒンジは、CD8ヒンジ1(配列番号52または53)、CD8ヒンジ2(配列番号54または55)、CD8ヒンジ3(配列番号56または57)、CD28ヒンジ(配列番号58または59)、IgG4ヒンジ(配列番号60または61)、IgG4CH2(配列番号62または63)、IgG4CH2CH3(配列番号64または65)またはIgG4CH1CH2CH3(配列番号66または67)であり得る。特定の態様において、上記CARは、膜貫通ドメイン(TM)を含む。例えば、そのTMは、CD8TM1(配列番号68または69)、CD8TM2(配列番号70または71)またはCD28TM(配列番号72または73)であり得る。いくつかの態様において、上記CAR構築物は、V-リンカー1-V;V-リンカー2-V;V-リンカー3-V;V-リンカー4-V;V-リンカー1-V;V-リンカー2-V;V-リンカー3-V;またはV-リンカー4-Vを含む。ある特定の態様において、上記CARは、V--リンカー--V--ヒンジ-TM--シグナル伝達ドメインを含む。他の態様において、上記CARは、V--リンカー-V--ヒンジ-TM--シグナル伝達ドメインを含む。
【0017】
別の実施形態において、(I):(a)第1のVCDRは、配列番号3と同一であり;(b)第2のVCDRは、配列番号4と同一であり;(c)第3のVCDRは、配列番号5と同一であり;(d)第1のVCDRは、配列番号8と同一であり;(e)第2のVCDRは、配列番号9と同一であり;(f)第3のVCDRは、配列番号10と同一である;(II):(a)第1のVCDRは、配列番号13と同一であり;(b)第2のVCDRは、配列番号14と同一であり;(c)第3のVCDRは、配列番号15と同一であり;(d)第1のVCDRは、配列番号18と同一であり;(e)第2のVCDRは、配列番号19と同一であり;(f)第3のVCDRは、配列番号20と同一である;または(III):(a)第1のVCDRは、配列番号23と同一であり;(b)第2のVCDRは、配列番号24と同一であり;(c)第3のVCDRは、配列番号25と同一であり;(d)第1のVCDRは、配列番号28と同一であり;(e)第2のVCDRは、配列番号29と同一であり;(f)第3のVCDRは、配列番号30と同一である、を含む抗原結合ドメインを有する、操作されたCD79b CARまたはT細胞レセプター(TCR)が提供される。
【0018】
いくつかの態様において、上記抗原結合ドメインは、配列番号2のVドメインと少なくとも約80%(例えば、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一のVドメインおよび配列番号7のVドメインと少なくとも約80%同一のVドメインを含む。ある特定の態様において、上記抗原結合ドメインは、配列番号12のVドメインと少なくとも約80%(例えば、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一のVドメインおよび配列番号17のVドメインと少なくとも約80%同一のVドメインを含む。いくつかの態様において、上記抗原結合ドメインは、配列番号22のVドメインと少なくとも約80%(例えば、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一のVドメインおよび配列番号27のVドメインと少なくとも約80%同一のVドメインを含む。
【0019】
いくつかの態様において、上記CARは、1つ以上のシグナル伝達ドメインCD3ξ、CD28、OX40/CD134、4-1BB/CD137またはそれらの組み合わせを含む。特定の態様において、上記CARは、CD3ζシグナル伝達ドメインおよびCD28シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様において、上記CARは、CD3ζシグナル伝達ドメインおよび4-1BBシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様において、上記CARは、CD3ζシグナル伝達ドメインおよびOX40シグナル伝達ドメインを含む。
【0020】
ある特定の態様において、上記CARは、レンチウイルスベクターなどのウイルスベクターによってコードされる。
【0021】
ある特定の態様において、上記抗原結合ドメインは、配列番号31、32または33のアミノ酸配列に対して少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一を有するscFVを含む。
【0022】
追加の態様において、上記CARは、形質導入マーカーおよび/または安全スイッチをさらに含む。その形質導入マーカーは、高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)(例えば、配列番号82または83)であり得る。ある特定の態様において、その形質導入マーカーおよび/または安全スイッチは、切断型の上皮成長因子(EGFR)(例えば、配列番号40または41)である。いくつかの態様において、その形質導入マーカーおよび/または安全スイッチは、2Aペプチドなどの切断ペプチドによって上記CARに連結されている。いくつかの態様において、その2Aペプチドは、T2Aペプチド(配列番号84または85)である。
【0023】
いくつかの態様において、上記CARは、リンカーを含む。例えば、そのリンカーは、リンカー1(配列番号44または45)、リンカー2(配列番号46または47)、リンカー3(配列番号48または49)またはリンカー4(配列番号50または51)であり得る。ある特定の態様において、上記CARは、ヒンジを含む。例えば、そのヒンジは、CD8ヒンジ1(配列番号52または53)、CD8ヒンジ2(配列番号54または55)、CD8ヒンジ3(配列番号56または57)、CD28ヒンジ(配列番号58または59)、IgG4ヒンジ(配列番号60または61)、IgG4CH2(配列番号62または63)、IgG4CH2CH3(配列番号64または65)またはIgG4CH1CH2CH3(配列番号66または67)であり得る。特定の態様において、上記CARは、膜貫通ドメイン(TM)を含む。例えば、そのTMは、CD8TM1(配列番号68または69)、CD8TM2(配列番号70または71)またはCD28TM(配列番号72または73)であり得る。いくつかの態様において、上記CAR構築物は、V-リンカー1-V;V-リンカー2-V;V-リンカー3-V;V-リンカー4-V;V-リンカー1-V;V-リンカー2-V;V-リンカー3-V;またはV-リンカー4-Vを含む。ある特定の態様において、上記CARは、V--リンカー--V--ヒンジ-TM--シグナル伝達ドメインを含む。他の態様において、上記CARは、V--リンカー-V--ヒンジ-TM--シグナル伝達ドメインを含む。
【0024】
いくつかの態様において、上記CARは、配列番号34、35、36、37、38、39、86、87または88のアミノ酸配列に対して少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)の同一性を有する配列を含む。
【0025】
ある特定の態様において、上記CARは、第2の抗原結合ドメインをさらに含む。いくつかの態様において、第2の抗原結合ドメインは、CD19抗原結合ドメイン、CD20抗原結合ドメインまたはCD22抗原結合ドメインである。
【0026】
別の実施形態において、本実施形態のCD79b CARをコードする発現ベクターが提供される。
【0027】
本実施形態のCD79bなどのCD79b CARまたはTCRを発現するように操作された宿主細胞がさらに本明細書中に提供される。いくつかの態様において、その宿主細胞は、T細胞などの免疫細胞である。いくつかの態様において、そのT細胞は、初代ヒトT細胞またはTILである。ある特定の態様において、そのT細胞は、CD4+T細胞またはCD8+T細胞である。いくつかの態様において、その初代ヒトT細胞は、健康ドナーから得られる。T細胞は、自己T細胞であってもよいし、同種異系T細胞であってもよい。いくつかの態様において、その細胞は、CRISPRシステムまたはトランスポザーゼシステムを用いて操作される(例えば、CARまたはTCRで)。
【0028】
CD79b CAR T細胞(例えば、本実施形態のCAR T細胞)および薬学的キャリアを含む薬学的組成物も本明細書中に提供される。被験体の癌を処置するための、有効量のCD79b CAR T細胞(例えば、本実施形態のCAR T細胞)を含む組成物がさらに本明細書中に提供される。別の実施形態において、被験体の癌を処置するための、有効量のCD79b CAR T細胞(例えば、本実施形態のCAR T細胞)を含む組成物の使用が提供される。
【0029】
さらなる実施形態において、被験体の癌を処置するための方法が提供され、その方法は、有効量のCD79b CAR T細胞(例えば、本実施形態のCAR T細胞)を被験体に投与する工程を含む。いくつかの態様において、その癌は、B細胞悪性腫瘍(例えば、B細胞急性リンパ芽球性白血病(ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫または慢性リンパ性白血病)である。ある特定の態様において、その癌は、CD79bを発現している癌である。
【0030】
いくつかの態様において、上記被験体は、以前にCD19 CAR療法を投与されたことがある。ある特定の態様において、上記被験体は、CD19抗原の喪失などに起因して、CD19 CAR療法に抵抗性である。ある特定の態様において、上記被験体は、CD19陰性腫瘍を再発している。
【0031】
ある特定の態様において、上記CD79b CAR T細胞は、静脈内に、皮内に、腫瘍内に、筋肉内に、腹腔内に、皮下に、または局所的に投与される。追加の態様において、上記方法は、少なくとも第2の抗癌療法を被験体に投与する工程をさらに含む。いくつかの態様において、第2の抗癌療法は、外科的療法、化学療法、放射線療法、寒冷療法、ホルモン療法、免疫療法またはサイトカイン療法である。
【0032】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるだろう。しかしながら、この詳細な説明から当業者には本発明の趣旨および範囲内での様々な変更および改変が明らかになるので、その詳細な説明および具体例は、本発明の好ましい実施形態を示すが、単に例証として与えられることを理解するべきである。
【0033】
以下の図面は、本明細書の一部を成し、本発明のある特定の態様をさらに実証するために含められる。本発明は、本明細書中に提示される具体的な実施形態の詳細な説明と併せてこれらの図面の1つ以上を参照することによって、より理解される可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1A】細胞株におけるCD79bの発現。
図1B】ヒト組織におけるCD79bの発現。
図1C】白血病におけるCD79bの発現。
図1D】リンパ腫におけるCD79bの発現。
【0035】
図2A】CD79bを形質導入された細胞のフローサイトメトリー解析。
図2B】CD79bモノクローナル抗体の結合親和性。
図2C】CD79bモノクローナル抗体の特徴付け。
図2D】リンパ腫細胞株のクローン14染色。
【0036】
図3A】CD79b CARの構築物を描写している概略図。
図3B】CD79b CARおよびCD19 CARのフローサイトメトリー解析。
図3C】形質導入されていないT細胞をコントロールとして用いたときのCD79b CARおよびCD19 CARの細胞傷害率。
図3D】形質導入されていないT細胞をコントロールとして用いたときのCD79b CARおよびCD19 CARのフローサイトメトリー。
【0037】
図4A】CD79b CARおよびCD19エキソン2Δスプライスバリアントと共培養されたT細胞。
図4B】5:1のエフェクター:標的比で4日間インキュベートしたCARの有効性に関するフローサイトメトリー解析。
図4C】CD79b CARを用いたときのDaudi細胞の絶対細胞数。
図4D】CD79b CARを用いたときのCD19ノックダウン細胞の絶対細胞数。
【0038】
図5A】前臨床研究の概略図。
図5B】研究中のマウスの生物発光像。
図5C】研究中のマウスの生存率。
【発明を実施するための形態】
【0039】
例証的な実施形態の説明
CD79bは、汎B細胞系列マーカーであり、B細胞レセプター複合体の重要な構成要素である。CD79bは、正常なB細胞およびB細胞悪性腫瘍において広く発現され、その発現は通常、CD19特異的CAR T細胞療法の後に再発するCD19陰性腫瘍において保持される。したがって、ある特定の実施形態において、本開示は、CD79b-CAR T細胞などのための、CD79bモノクローナル抗体およびCD79b特異的CARを提供する。
【0040】
本研究は、インビトロおよびインビボモデルにおいて本CD79b特異的CAR T細胞生成物の有効性を実証した。ヒトCD79bに対して3つのマウスモノクローナル抗体をハイブリドーマ技術によって開発し、それらの抗体が、組換えヒトCD79bに特異的に結合すること、高親和性(1.44~17.8nMのKd範囲)を有すること、および複数のリンパ腫細胞株を染色することが実証された。次に、CD79b抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をクローニングし、CD3ζおよびCD28/4-1BB共刺激ドメインを有する抗CD79b CAR用のレンチウイルス構築物を開発した。その抗CD79b CAR構築物は、レンチウイルスを用いて、健康ドナー由来の初代CD4+およびCD8+T細胞に70%超の形質導入効率で形質導入され得ることが実証された。
【0041】
抗CD79b CAR T細胞は、Daudiバーキットリンパ腫細胞株およびMinoマントル細胞リンパ腫細胞株に対して、コントロール抗CD19 CAR T細胞に匹敵する有意な細胞傷害活性を示したが、形質導入されていないT細胞はそのような活性は示さなかったことが観察された。より重要なことには、抗CD79bは、CD19-CD79b+リンパ腫細胞を溶解したが、抗CD19 CAR T細胞は、CD19-CD79b+リンパ腫細胞を溶解しなかった。また、CD4抗CD79b CAR T細胞およびCD8抗CD79b CAR T細胞をリンパ腫細胞と共培養すると、CD4抗CD79b CAR T細胞とCD8抗CD79b CAR T細胞の両方において有意な脱顆粒が観察された。また、NSGマウスにおけるMinoリンパ腫異種移植モデルに対する抗CD79b CAR T細胞の有効性をインビボにおいて調べた。ルシフェラーゼで標識されたMinoマントル細胞リンパ腫細胞を、2×10腫瘍細胞/マウスでNSGマウスにIV注射した。18日後、マウスを、10×10T細胞/マウスにおいて、形質導入されていない初代T細胞、抗CD19 CAR T細胞または抗CD79b CAR T細胞で尾静脈を介して処置した。生物発光イメージングを用いて、腫瘍量を評価した。結果は、形質導入されていないT細胞で処置されたマウスでは腫瘍成長の進行を示した。一方で、抗CD19-および抗CD79b CAR T細胞で処置されたマウスでは、腫瘍成長が阻害され、生存時間が改善された。したがって、これらの結果は、B細胞悪性腫瘍を有する患者におけるその新規抗CD79b CAR T細胞療法の有効性を示した。これは、CD19特異的CAR T細胞療法後のCD19喪失に起因する抵抗性を克服するための新規ストラテジーとなり得る。
【0042】
いくつかの態様において、本抗CD79b CAR構築物は、レンチウイルスベクターによってコードされる。そのベクターは、T細胞などの免疫細胞に形質導入され得る。その構築物は、CD28、CD3ζおよび/または4-1BBシグナル伝達ドメインを含み得る。その構築物は、eGFPまたは切断型のEGFRドメインなどの形質導入マーカーを含み得る。その形質導入マーカーは、2Aペプチドなどの切断ペプチドによってCARに連結され得る。
【0043】
本明細書中に提供されるCD79b特異的CAR免疫細胞(例えば、T細胞)を投与することによって癌を処置する方法が、本明細書中にさらに提供される。その癌は、CD79bを発現しているB細胞悪性腫瘍(例えば、B細胞急性リンパ芽球性白血病(ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫または慢性リンパ性白血病)であり得る。本治療は、抗CD19-CAR T細胞療法の後にCD19陰性腫瘍を再発したB細胞悪性腫瘍を有する被験体を処置するために使用され得る。
I.定義
【0044】
本明細書中で使用されるとき、特定の構成要素に関する「本質的に含まない」は、その特定の構成要素が、意図的に組成物に製剤化されていないことおよび/または夾雑物としてでさえもしくは微量でさえ存在しないことを意味するために本明細書中で使用される。ゆえに、ある組成物の任意の意図されない混入に起因する、その特定の構成要素の総量は、0.05%未満、好ましくは、0.01%未満である。標準的な分析方法ではその特定の構成要素の量を検出できない組成物が最も好ましい。
【0045】
本明細書中で使用されるとき、「a」または「an」は、1つ以上を意味し得る。請求項で使用されるとき、語「a」または「an」は、語「~を含む」とともに使用されるとき、1つまたは1つより多いことを意味し得る。
【0046】
請求項での用語「または」の使用は、選択肢だけを指すと明示的に示されない限り、またはそれらの選択肢が相互排他的でない限り、「および/または」を意味するために使用されるが、本開示は、選択肢だけおよび「および/または」を指すという定義を支持する。本明細書中で使用されるとき、「別の」は、少なくとも第2のものまたはそれ以上のものを意味し得る。用語「約」、「実質的に」および「およそ」は、一般に、述べられている値プラスまたはマイナス5%を意味する。
【0047】
疾患もしくは状態を「処置する」または疾患もしくは状態の処置とは、その疾患の徴候または症状を軽減する目的で、1つ以上の薬物を患者に投与することを含み得るプロトコルを実行することを指す。処置の望ましい効果としては、疾患の進行速度の低下、疾患状態の回復または緩和、および予後の緩解または改善が挙げられる。軽減は、現れる疾患または状態の徴候または症状が現れた後のみならず現れる前に生じ得る。したがって、「処置する」または「処置」は、疾患または望ましくない状態を「予防する」またはそれらの「予防」を含み得る。さらに、「処置する」または「処置」は、徴候または症状の完全な軽減を必要とせず、治癒を必要とせず、詳細には、患者に対して周辺効果しか及ぼさないプロトコルを含む。
【0048】
本願全体にわたって使用される用語「治療効果」または「治療的に有効な」とは、この状態に対する医学的処置に関して被験体の福祉を促進または向上する何らかのことを指す。これには、ある疾患の徴候または症状の頻度または重症度の低下が含まれるが、これらに限定されない。例えば、癌の処置は、例えば、腫瘍サイズの減少、腫瘍の侵襲性の低下、癌の成長速度の低下、または転移の予防を含み得る。癌の処置とは、癌を有する被験体の生存時間の延長のことも指し得る。
【0049】
「被験体」および「患者」とは、ヒトまたは非ヒト、例えば、霊長類、哺乳動物および脊椎動物のことを指す。特定の実施形態において、被験体は、ヒトである。
【0050】
句「薬学的または薬理学的に許容され得る」とは、ヒトなどの動物に適宜投与されたとき、有害反応、アレルギー反応または他の不都合な反応をもたらさない分子実体および組成物のことを指す。抗体またはさらなる活性成分を含む薬学的組成物の調製は、本開示に照らせば当業者に公知である。さらに、動物(例えば、ヒト)への投与の場合、調製物は、FDA Office of Biological Standardsが要求する無菌性、発熱性、一般的な安全性および純度の規格を満たすべきであることが理解される。
【0051】
本明細書中で使用されるとき、「薬学的に許容され得るキャリア」は、当業者に公知であるように、任意のおよびすべての水性溶媒(例えば、水、アルコール溶液/水溶液、食塩水、非経口ビヒクル、例えば、塩化ナトリウム、リンゲルデキストロースなど)、非水溶媒(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油および注射可能な有機エステル、例えば、オレイン酸エチル)、分散媒、コーティング、界面活性剤、酸化防止剤、保存剤(例えば、抗菌剤または抗真菌剤、抗酸化剤、キレート剤および不活性ガス)、等張剤、吸収遅延剤、塩、薬物、薬物安定剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味剤、香味剤、色素、流動性および栄養補給剤、そのような同様の材料ならびにそれらの組み合わせを含む。薬学的組成物中の様々な構成要素のpHおよび正確な濃度は、周知のパラメータに従って調整される。
II.CD79b抗体
【0052】
ある特定の実施形態において、CD79bの少なくとも一部に結合し、CD79bシグナル伝達を阻害する抗体またはそのフラグメントが企図される。本明細書中で使用されるとき、用語「抗体」は、任意の免疫学的結合剤(例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、IgEおよび遺伝的に改変されたIgG)ならびに抗原結合活性を保持する抗体CDRドメインを含むポリペプチドのことを広く指すことを目的としている。抗体は、キメラ抗体、親和性成熟した抗体、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体または抗原結合抗体フラグメントまたは天然リガンドもしくは合成リガンドからなる群より選択され得る。好ましくは、抗CD79b抗体は、モノクローナル抗体またはヒト化抗体である。
【0053】
したがって、公知の手段によっておよび本明細書中に記載されるように、CD79b抗原またはそのエピトープが、天然の起源から単離されているか、天然の化合物の合成誘導体またはバリアントであるかにかかわらず、CD79b、1つ以上のそのそれぞれのエピトープまたは前述のいずれかの結合体に特異的な、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体、抗体フラグメントならびに結合ドメインおよびCDR(前述のいずれかの操作された形態を含む)が作製され得る。
【0054】
本実施形態に適した抗体フラグメントの例としては、(i)V、V、CおよびCH1ドメインからなるFabフラグメント;(ii)VおよびCH1ドメインからなる「Fd」フラグメント;(iii)単一抗体のVおよびVドメインからなる「Fv」フラグメント;(iv)Vドメインからなる「dAb」フラグメント;(v)単離されたCDR領域;(vi)連結された2つのFabフラグメントを含む二価のフラグメントであるF(ab’)2フラグメント;(vii)VドメインとVドメインとが、それら2つのドメインが会合して結合ドメインを形成するのを可能にするペプチドリンカーによって連結されている、一本鎖Fv分子(「scFv」);(viii)二重特異的一本鎖Fv二量体(米国特許第5,091,513号を参照のこと);および(ix)遺伝子融合によって構築される多価または多重特異性のフラグメントであるダイアボディ(米国特許出願公開20050214860)が挙げられるが、これらに限定されない。Fv、scFvまたはダイアボディ分子は、VドメインとVドメインとを連結するジスルフィド架橋の組み込みによって安定化され得る。CH3ドメインに接続されたscFvを含むミニボディも作製され得る。
【0055】
抗体様結合性ペプチド模倣物も実施形態において企図される。Liu et al.(2003)には、切り詰められた抗体として作用し、血清半減期がより長い、ならびに合成方法がより煩雑でないという一定の利点を有するペプチドである「抗体様結合性ペプチド模倣物」(ABiP)が記載されている。
【0056】
CD79bに特異的な抗体を作製するために、CD79b細胞外ドメイン(ECD)タンパク質などの抗原を動物に接種することができる。抗原は、免疫応答を高めるために別の分子に結合または結合体化されることが多い。本明細書中で使用されるとき、結合体は、動物において免疫応答を誘発するために用いられる抗原に結合された任意のペプチド、ポリペプチド、タンパク質または非タンパク質性物質である。抗原接種に応答して動物において産生される抗体は、種々の個別の抗体産生Bリンパ球から産生される種々の非同一分子(ポリクローナル抗体)を含む。ポリクローナル抗体は、それぞれが同じ抗原上の異なるエピトープを認識し得る、抗体種の混合集団である。ある動物におけるポリクローナル抗体産生に対して厳密な条件が与えられると、その動物の血清中の抗体のほとんどが、その動物が免疫された抗原性化合物上の集合的エピトープを認識する。この特異性は、目的の抗原またはエピトープを認識するそれらの抗体だけを選択する親和性精製によってさらに高められる。
【0057】
モノクローナル抗体は、単一種の抗体であり、すべての抗体産生細胞が単一のBリンパ球細胞株に由来するので、各抗体分子が同じエピトープを認識する。モノクローナル抗体(MAb)を作製するための方法は、一般に、ポリクローナル抗体を調製するための方針と同じ方針で始まる。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体の作製において、マウスおよびラットなどのげっ歯類が使用される。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体の作製において、ウサギ細胞、ヒツジ細胞またはカエル細胞が使用される。ラットの使用は、周知であり、一定の利点を提供し得る。マウス(例えば、BALB/cマウス)が慣例的に使用され、一般に、安定した融合物を高率でもたらす。
【0058】
ハイブリドーマ技術は、CD79b抗原で予め免疫されたマウス由来の単一のBリンパ球と不死のミエローマ細胞(通常、マウスミエローマ)との融合を必要とする。この技術は、単一の抗体産生細胞を不特定多数の世代にわたって伝播する方法を提供し、同じ抗原特異性またはエピトープ特異性を有する無制限の量の構造的に同一の抗体(モノクローナル抗体)が作製され得る。
【0059】
血漿B細胞(CD45CD5CD19)は、免疫されたウサギから調製されたばかりのウサギ末梢血単核球から単離され得、CD79b結合細胞についてさらに選択され得る。抗体産生B細胞を濃縮した後、全RNAが単離され、cDNA合成され得る。重鎖と軽鎖の両方の抗体可変領域のDNA配列が、増幅され得、ファージディスプレイFab発現ベクター内に構築され得、E.coliに形質転換され得る。CD79bに特異的に結合するFabは、複数回の濃縮パニングを通じて選抜され得、配列決定され得る。選択された、CD79bに結合するヒットは、ヒト胎児腎(HEK293)細胞(Invitrogen)において哺乳動物発現ベクター系を用いてウサギ型およびウサギ/ヒトキメラ型の完全長IgGとして発現され得、高速タンパク質液体クロマトグラフィ(FPLC)分離ユニットとともにプロテインG樹脂を用いて精製され得る。
【0060】
1つの実施形態において、上記抗体は、キメラ抗体、例えば、異種非ヒト配列、ヒト配列またはヒト化配列(例えば、フレームワーク配列および/または定常ドメイン配列)に移植された非ヒトドナー由来の抗原結合配列を含む抗体である。モノクローナル抗体の軽鎖定常ドメインおよび重鎖定常ドメインをヒト起源の類似のドメインで置き換えてインタクトな外来性抗体の可変領域を残す方法が開発されている。あるいは、ヒト免疫グロブリン遺伝子が導入されたマウスにおいて、「完全ヒト」モノクローナル抗体が産生される。げっ歯類、例えば、マウスのアミノ酸配列とヒトのアミノ酸配列との両方を有する抗体可変ドメインを組換え的に構築することによって、モノクローナル抗体の可変ドメインをよりヒトの形態に変換する方法も開発されている。「ヒト化」モノクローナル抗体では、超可変CDRだけが、マウスモノクローナル抗体に由来し、フレームワーク領域および定常領域は、ヒトアミノ酸配列に由来する(米国特許第5,091,513号および同第6,881,557号を参照のこと)。げっ歯類に特徴的な、抗体内のアミノ酸配列を、ヒト抗体の対応する位置に見られるアミノ酸配列に置き換えることにより、治療で使用している間に有害な免疫反応が起きる可能性が低下すると考えられている。抗体を産生するハイブリドーマまたは他の細胞は、そのハイブリドーマによって産生される抗体の結合特異性を変化させても変化させなくてもよい、遺伝子突然変異または他の変更にも供され得る。
【0061】
様々な動物種においてポリクローナル抗体を産生するための方法、ならびにヒト化抗体、キメラ抗体および完全ヒト抗体をはじめとした様々なタイプのモノクローナル抗体を作製するための方法は、当該分野で周知であり、予測可能性が高い。例えば、以下の米国特許および米国特許出願には、そのような方法の有効な説明が提供されている:米国特許出願番号2004/0126828および同2002/0172677;ならびに米国特許第3,817,837号;同第3,850,752号;同第3,939,350号;同第3,996,345号;同第4,196,265号;同第4,275,149号;同第4,277,437号;同第4,366,241号;同第4,469,797号;同第4,472,509号;同第4,606,855号;同第4,703,003号;同第4,742,159号;同第4,767,720号;同第4,816,567号;同第4,867,973号;同第4,938,948号;同第4,946,778号;同第5,021,236号;同第5,164,296号;同第5,196,066号;同第5,223,409号;同第5,403,484号;同第5,420,253号;同第5,565,332号;同第5,571,698号;同第5,627,052号;同第5,656,434号;同第5,770,376号;同第5,789,208号;同第5,821,337号;同第5,844,091号;同第5,858,657号;同第5,861,155号;同第5,871,907号;同第5,969,108号;同第6,054,297号;同第6,165,464号;同第6,365,157号;同第6,406,867号;同第6,709,659号;同第6,709,873号;同第6,753,407号;同第6,814,965号;同第6,849,259号;同第6,861,572号;同第6,875,434号;および同第6,891,024号。本明細書に引用されるすべての特許、特許出願公報および他の刊行物ならびにそれらに引用されているすべての特許、特許出願公報および他の刊行物が、参照により本願に援用される。
【0062】
抗体は、鳥類および哺乳動物を含む任意の動物起源から産生され得る。好ましくは、抗体は、ヒツジ、ネズミ科(例えば、マウスおよびラット)、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ウマまたはニワトリの抗体である。さらに、より新しい技術によって、ヒト抗体の開発およびヒトコンビナトリアル抗体ライブラリーからのスクリーニングが可能になる。例えば、参照により本明細書中に援用される米国特許第6,946,546号に記載されているように、バクテリオファージ抗体発現技術によって、動物の免疫化がなくても特異的抗体の作製が可能である。
【0063】
CD79bに対する抗体が、その抗体の動物種、モノクローナル細胞株または他の起源を問わず、CD79bの効果を中和または相殺する能力を有することは十分に予想される。ある特定の動物種が、抗体の「Fc」部分を介した補体系の活性化に起因してアレルギー反応を引き起こす可能性が高いかもしれないという理由で、治療用抗体の作製には好ましくない場合がある。しかしながら、抗体全体を酵素的に消化して、「Fc」(補体結合)フラグメント、および結合ドメインまたはCDRを有する抗体フラグメントにしてもよい。Fc部分を除去することにより、その抗原抗体フラグメントが望ましくない免疫学的応答を誘発する可能性は低下するので、Fcを有しない抗体は、予防的または治療的な処置に対して優先され得る。上に記載されたように、他の種において産生された抗体または他の種由来の配列を有する抗体を動物に投与したことに起因する有害な免疫学的結果を低減または排除するために、キメラまたは部分的にヒトまたは完全にヒトになるように抗体を構築してもよい。
【0064】
置換バリアントは、通常、タンパク質内の1つ以上の部位の1つのアミノ酸から別のアミノ酸への交換を含み、他の機能または特性を失ってまたは失わずに、そのポリペプチドの1つ以上の特性を調節するようにデザインされ得る。置換は、保存的であってよく、すなわち、1つのアミノ酸が、形状および電荷が似たアミノ酸で置き換えられる。保存的置換は、当該分野で周知であり、それらとしては、例えば、アラニンからセリンへ;アルギニンからリジンへ;アスパラギンからグルタミンまたはヒスチジンへ;アスパラギン酸からグルタミン酸へ;システインからセリンへ;グルタミンからアスパラギンへ;グルタミン酸からアスパラギン酸へ;グリシンからプロリンへ;ヒスチジンからアスパラギンまたはグルタミンへ;イソロイシンからロイシンまたはバリンへ;ロイシンからバリンまたはイソロイシンへ;リジンからアルギニンへ;メチオニンからロイシンまたはイソロイシンへ;フェニルアラニンからチロシン、ロイシンまたはメチオニンへ;セリンからトレオニンへ;トレオニンからセリンへ;トリプトファンからチロシンへ;チロシンからトリプトファンまたはフェニルアラニンへ;およびバリンからイソロイシンまたはロイシンへの変化が挙げられる。あるいは、置換は、当該ポリペプチドの機能または活性が影響を受けるような非保存的な置換であってもよい。非保存的変更は、通常、ある残基を化学的に似ていない残基で置換すること、例えば、極性アミノ酸または荷電アミノ酸を非極性アミノ酸または非荷電アミノ酸の代わりに用いること、およびその逆を含む。
【0065】
タンパク質は、組換えタンパク質、すなわち、インビトロで合成されたタンパク質であり得る。あるいは、非組換えタンパク質または組換えタンパク質が、細菌から単離され得る。そのようなバリアントを含む細菌が、組成物および方法において実行され得ることも企図される。その結果として、タンパク質は、単離される必要はない。
【0066】
1mlあたり約0.001mg~約10mgの全ポリペプチド、ペプチドおよび/またはタンパク質が組成物に存在することが企図される。したがって、組成物中のタンパク質の濃度は、約、少なくとも約、または多くとも約0.001、0.010、0.050、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0mg/mlまたはそれ以上(またはこれらの中で導き出せる任意の範囲)であり得る。このうち、約、少なくとも約、または多くとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%が、CD79bに結合する抗体であり得る。
【0067】
抗体、または好ましくは抗体の免疫学的部分が、他のタンパク質との融合タンパク質に化学的に結合体化され得るか、または他のタンパク質との融合タンパク質として発現され得る。本明細書および添付の請求項において、そのような融合タンパク質はすべて、抗体または抗体の免疫学的部分の定義に含まれる。
【0068】
実施形態は、少なくとも1つの作用物質に連結して抗体結合体またはペイロードを形成する、CD79bに対する抗体および抗体様分子、ポリペプチドおよびペプチドを提供する。診断薬または治療薬としての抗体分子の有効性を高めるために、少なくとも1つの所望の分子または部分を連結することまたは共有結合することまたは複合体化することが従来法である。そのような分子または部分は、少なくとも1つのエフェクター分子またはレポーター分子であり得るが、これらに限定されない。エフェクター分子は、所望の活性、例えば、細胞傷害活性を有する分子を含む。抗体に付着されたエフェクター分子の非限定的な例としては、トキシン、治療的酵素、抗生物質、放射標識されたヌクレオチドなどが挙げられる。対照的に、レポーター分子は、アッセイを用いて検出され得る任意の部分として定義される。抗体に結合体化されるレポーター分子の非限定的な例としては、酵素、放射標識、ハプテン、蛍光標識、リン光性分子、化学発光分子、クロモフォア、発光分子、光親和性分子、有色粒子、またはビオチンなどのリガンドが挙げられる。
【0069】
抗体を結合体部分に付着または結合体化するためのいくつかの方法が当該分野で公知である。いくつかの付着方法は、例えば、抗体に付着された有機キレート剤、例えば、ジエチレントリアミン五酢酸無水物(DTPA);エチレントリアミン四酢酸;N-クロロ-p-トルエンスルホンアミド;および/またはテトラクロロ-3-6-ジフェニルグリコウリル-3を用いる、金属キレート錯体の使用を含む。また、グルタルアルデヒドまたは過ヨウ素酸塩などのカップリング剤の存在下において酵素とモノクローナル抗体を反応させてもよい。これらのカップリング剤の存在下において、またはイソチオシアネートとの反応によって、フルオレセインマーカーを有する結合体が調製される。
III.T細胞療法
【0070】
本開示のある特定の実施形態は、T細胞を入手すること、および標的癌細胞に対する免疫療法としてT細胞を被験体に投与することに関する。機能的な抗腫瘍エフェクターT細胞の誘導、活性化および拡大のためのいくつかの基本的なアプローチが、過去20年で報告されてきた。これらとしては、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)などの自己細胞;自己DC、リンパ球、人工抗原提示細胞(APC)、またはT細胞リガンドおよび活性化抗体でコーティングされたビーズ、または標的細胞膜の捕捉によって単離された細胞を用いてエキソビボで活性化されたT細胞;抗宿主腫瘍T細胞レセプター(TCR)を天然に発現している同種異系細胞;および「T-ボディ」として知られる抗体様腫瘍認識能を示す腫瘍反応性TCR分子またはキメラTCR分子を発現するように遺伝的に再プログラムされたまたは「再指示された」非腫瘍特異的な自己細胞または同種異系細胞が挙げられる。これらのアプローチは、本開示の方法において使用され得る、T細胞を調製および免疫化するための数多くのプロトコルの元となった。
A.T細胞の調製
【0071】
いくつかの実施形態において、T細胞は、血液、骨髄、リンパ液またはリンパ系器官に由来する。いくつかの態様において、細胞は、ヒト細胞である。細胞は、通常、初代細胞であり、例えば、被験体から直接単離された細胞、および/または被験体から単離され、凍結された細胞である。いくつかの実施形態において、細胞には、T細胞または他の細胞型の1つ以上のサブセット(例えば、T細胞集団全体、CD4細胞、CD8細胞、およびそれらの部分集団、例えば、機能、活性化状態、成熟度、分化の可能性、拡大、再循環、局在化および/または残存能、抗原特異性、抗原レセプターのタイプ、特定の器官もしくはコンパートメントに存在すること、マーカーもしくはサイトカイン分泌のプロファイル、および/または分化の程度によって定義されるもの)が含まれる。処置される被験体に関して、細胞は、同種異系細胞および/または自己細胞であり得る。いくつかの態様において、既存技術などの場合、細胞は、多能性(pluripotent)および/または多能性(multipotent)である(例えば、人工多能性幹細胞(iPSC)などの幹細胞)。いくつかの実施形態において、上記方法は、被験体から細胞を単離する工程、それらを本明細書中に記載されるように調製、処理、培養および/または操作する工程、ならびに凍結保存の前または後にそれらを同じ患者に再導入する工程を含む。
【0072】
T細胞(例えば、CD4および/またはCD8T細胞)のサブタイプおよび部分集団に含まれるのは、ナイーブT(T)細胞、エフェクターT細胞(TEFF)、メモリーT細胞およびそのサブタイプ(例えば、幹細胞メモリーT(TSC)、セントラルメモリーT(TCM)、エフェクターメモリーT(TEM)または最終分化型エフェクターメモリーT(TTEMRA)細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、未熟T細胞、成熟T細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞、内在性および獲得型(adaptive)の制御性T(Treg)細胞、ヘルパーT細胞(例えば、TH1細胞、TH2細胞、TH3細胞、TH17細胞、TH9細胞、TH22細胞、濾胞性ヘルパーT細胞)、アルファ/ベータT細胞およびデルタ/ガンマT細胞である。
【0073】
いくつかの実施形態において、T細胞集団の1つ以上は、表面マーカーなどの特異的マーカーが陽性であるかまたは特異的マーカーが陰性である細胞が濃縮されているか、または枯渇している。いくつかの場合において、そのようなマーカーは、ある特定のT細胞集団(例えば、非メモリー細胞)上に存在しないかまたは比較的低レベルで発現されるが、ある特定の他のT細胞集団(例えば、メモリー細胞)上に存在するかまたは比較的高レベルで発現されるマーカーである。1つの実施形態において、それらの細胞(例えば、CD8細胞またはCD3細胞)は、CD45RO、CCR7、CD28、CD27、CD44、CD127および/もしくはCD62Lが陽性であるかまたは高い表面レベルのCD45RO、CCR7、CD28、CD27、CD44、CD127および/もしくはCD62Lを発現している細胞が濃縮されている(すなわち、ポジティブ選択されている)、かつ/またはCD45RAが陽性であるかもしくは高い表面レベルのCD45RAを発現している細胞が枯渇している(例えば、ネガティブ選択されている)。いくつかの実施形態において、細胞は、CD122、CD95、CD25、CD27および/もしくはIL7-Ra(CD127)が陽性であるかまたは高い表面レベルのCD122、CD95、CD25、CD27および/もしくはIL7-Ra(CD127)を発現している細胞が濃縮されているかまたは枯渇している。いくつかの例では、CD8T細胞は、CD45ROが陽性である(またはCD45RAが陰性である)かつCD62Lが陽性である細胞が濃縮されている。
【0074】
いくつかの実施形態において、T細胞は、非T細胞(例えば、B細胞、単球または他の白血球)上に発現されているマーカー(例えば、CD14)のネガティブ選択によってPBMCサンプルから分離される。いくつかの態様では、CD4またはCD8選択工程を用いることにより、CD4ヘルパーT細胞およびCD8細胞傷害性T細胞が分離される。そのようなCD4およびCD8集団は、1つ以上のナイーブ、メモリーおよび/またはエフェクターT細胞の部分集団上に発現されているまたは比較的高い程度に発現されているマーカーのポジティブまたはネガティブ選択によって、さらに部分集団にソーティングされ得る。
【0075】
いくつかの実施形態において、CD8細胞は、それぞれの部分集団に関連する表面抗原に基づくポジティブ選択またはネガティブ選択などによって、ナイーブ、セントラルメモリー、エフェクターメモリーおよび/またはセントラルメモリー幹細胞がさらに濃縮されているかまたは枯渇している。いくつかの実施形態において、セントラルメモリーT(TCM)細胞の濃縮は、投与後の長期生存率、拡大および/または生着を改善するなどの有効性を高めるために行われ、これは、いくつかの態様において、そのような部分集団において特に頑健である。いくつかの実施形態において、TCMが濃縮されたCD8T細胞とCD4T細胞とを組み合わせることにより、有効性がさらに高まる。
【0076】
いくつかの実施形態において、T細胞は、自己T細胞である。この方法では、腫瘍サンプルを患者から入手し、単一の細胞懸濁液を得る。その単一の細胞懸濁液は、任意の好適な様式で、例えば、機械的に(例えば、gentleMACSTMDissociator,Miltenyi Biotec,Auburn,Calif.を用いて腫瘍を脱凝集させて)または酵素的に(例えば、コラゲナーゼまたはDNase)得ることができる。腫瘍の酵素消化物の単一の細胞懸濁液を、インターロイキン-2(IL-2)中で培養する。それらの細胞を、コンフルエンス(例えば、約2×10リンパ球)になるまで、例えば、約5~約21日間、好ましくは、約10~約14日間、培養する。例えば、それらの細胞を、5日間、5.5日間または5.8日間~21日間、21.5日間または21.8日間、例えば、10日間、10.5日間または10.8日間~14日間、14.5日間または14.8日間、培養し得る。
【0077】
培養されたT細胞は、プールされ、急速に拡大され得る。約10~約14日間、好ましくは、約14日間にわたる急速な拡大によって、抗原特異的T細胞の数が少なくとも約50倍(例えば、50、60、70、80、90もしくは100倍またはそれ以上)増加する。より好ましくは、約10~約14日間、好ましくは、約14日間にわたる急速な拡大によって、少なくとも約200倍(例えば、200、300、400、500、600、700、800、900またはそれ以上)増加する。
【0078】
当該分野で公知であるようないくつかの方法のうちのいずれかによって、拡大が達成され得る。例えば、T細胞は、フィーダーリンパ球と、インターロイキン-2(IL-2)またはインターロイキン-15(IL-15)のいずれか(IL-2が好ましい)との存在下において非特異的T細胞レセプター刺激を用いて容易に拡大され得る。その非特異的T細胞レセプター刺激は、およそ30ng/mlの、マウスモノクローナル抗CD3抗体であるOKT3(Ortho-McNeil(登録商標),Raritan,N.J.から入手可能)を含み得る。あるいは、T細胞は、T細胞成長因子(例えば、300IU/mlのIL-2またはIL-15(IL-2が好ましい))の存在下において1つ以上の癌抗原(エピトープなどのその抗原性部分、または細胞を含む)で末梢血単核球(PBMC)をインビトロにおいて刺激することによって容易に拡大され得、その癌抗原は、必要に応じてベクターから発現され得、例えば、ヒト白血球抗原A2(HLA-A2)結合ペプチドである。そのインビトロで誘導されたT細胞は、HLA-A2を発現している抗原提示細胞に対してパルスされた同じ癌抗原による再刺激によって急速に拡大される。あるいは、それらのT細胞は、例えば、照射された自己リンパ球または照射されたHLA-A2+同種異系リンパ球およびIL-2で再刺激され得る。
【0079】
上記自己T細胞は、それらの自己T細胞の増殖および活性化を促進するT細胞成長因子を発現するように改変され得る。好適なT細胞成長因子としては、例えば、インターロイキン(IL)-2、IL-7、IL-15およびIL-12が挙げられる。好適な改変方法は、当該分野で公知である。例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd ed.,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.2001;およびAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates and John Wiley & Sons,NY,1994を参照のこと。特定の態様において、改変された自己T細胞は、T細胞成長因子を高レベルで発現する。T細胞成長因子コード配列(例えば、IL-12のコード配列)は、T細胞成長因子コード配列への作動可能な連結が高レベル発現を促進するプロモーターと同様に、当該分野において容易に入手可能である。
B.遺伝的に操作された抗原レセプター
【0080】
上記T細胞は、操作されたTCRまたはキメラ抗原レセプター(CAR)などの抗原レセプターを発現するように遺伝的に操作され得る。例えば、自己T細胞が、CD79bなどの癌抗原に対する抗原特異性を有するT細胞レセプター(TCR)を発現するように改変される。好適なTCRとしては、例えば、黒色腫抗原、例えば、gp100またはMART-1に対する抗原特異性を有するものが挙げられる。好適な改変方法は、当該分野で公知である。例えば、Sambrook and Ausubel,前出を参照のこと。例えば、上記T細胞は、Heemskerk et al.Hum Gene Ther.19:496-510(2008)およびJohnson et al.Blood 114:535-46(2009)に記載されている形質導入法を用いて、癌抗原に対する抗原特異性を有するTCRを発現するように形質導入され得る。
【0081】
いくつかの実施形態において、上記T細胞は、遺伝子操作を介して導入された、1つ以上の抗原レセプターをコードする1つ以上の核酸、およびそのような核酸の遺伝的に操作された生成物を含む。いくつかの実施形態において、それらの核酸は、異種であり、すなわち、通常は、細胞またはその細胞から得られるサンプルに存在せず、例えば、別の生物または細胞から得られた核酸であり、それらは、例えば、操作されている細胞および/またはそのような細胞の起源である生物には通常見られない。いくつかの実施形態において、それらの核酸は、天然に見られない核酸(例えば、キメラ)など天然に存在しない。
【0082】
いくつかの実施形態において、上記CARは、CD79bに特異的に結合する細胞外の抗原認識ドメインを含む。いくつかの実施形態において、その抗原は、細胞表面上に発現されているタンパク質である。いくつかの実施形態において、上記CARは、TCR様CARであり、抗原は、TCRと同様に主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子の状況において細胞表面上で認識される、プロセシングを受けたペプチド抗原(例えば、細胞内タンパク質のペプチド抗原)である。
【0083】
CARおよび組換えTCRをはじめとした例示的な抗原レセプター、ならびにそれらのレセプターを操作するための方法および細胞に導入するための方法には、例えば、国際特許出願公開番号WO200014257、WO2013126726、WO2012/129514、WO2014031687、WO2013/166321、WO2013/071154、WO2013/123061、米国特許出願公開番号US2002131960、US2013287748、US20130149337、米国特許第6,451,995号、同第7,446,190号、同第8,252,592号、同第8,339,645号、同第8,398,282号、同第7,446,179号、同第6,410,319号、同第7,070,995号、同第7,265,209号、同第7,354,762号、同第7,446,191号、同第8,324,353号および同第8,479,118号、ならびに欧州特許出願番号EP2537416に記載されているもの、および/またはSadelain et al.,2013;Davila et al.,2013;Turtle et al.,2012;Wu et al.,2012によって記載されたものが含まれる。いくつかの態様において、遺伝的に操作された抗原レセプターには、米国特許第7,446,190号に記載されているようなCAR、および国際特許出願公開番号WO/2014055668Alに記載されているものが含まれる。
1.キメラ抗原レセプター
【0084】
いくつかの実施形態において、上記CARは、a)細胞内のシグナル伝達ドメイン、b)膜貫通ドメイン、およびc)抗原結合領域を含む細胞外のドメインを含む。
【0085】
いくつかの実施形態において、操作された抗原レセプターには、活性化型または刺激型のCAR、共刺激型のCAR(WO2014/055668を参照のこと)および/または阻害型のCAR(iCAR、Fedorov et al.,2013を参照のこと)をはじめとしたCARが含まれる。それらのCARは、一般に、1つ以上の細胞内のシグナル伝達構成要素に、いくつかの態様ではリンカーおよび/または膜貫通ドメインを介して連結された、細胞外の抗原(またはリガンド)結合ドメインを含む。そのような分子は、通常、天然の抗原レセプターを介するシグナル、共刺激レセプターとともにそのようなレセプターを介するシグナル、および/または共刺激レセプターのみを介するシグナルを模倣するかまたはまねる。
【0086】
本開示のある特定の実施形態は、細胞内のシグナル伝達ドメイン、膜貫通ドメイン、および1つ以上のシグナル伝達モチーフを含む細胞外のドメインを含む、抗原特異的CARポリペプチド(免疫原性を低減するようにヒト化されたCAR(hCAR)を含む)をコードする核酸を含む核酸の使用に関する。ある特定の実施形態において、そのCARは、1つ以上の抗原の間で共有される空間を含むエピトープを認識し得る。ある特定の実施形態において、結合領域は、モノクローナル抗体の相補性決定領域、モノクローナル抗体の可変領域、および/またはそれらの抗原結合フラグメントを含み得る。別の実施形態において、その特異性は、レセプターに結合するペプチド(例えば、サイトカイン)に由来する。
【0087】
ヒトCAR核酸は、ヒト患者に対する細胞免疫療法を増強するために使用されるヒト遺伝子であり得ると企図される。具体的な実施形態において、本発明は、CARの完全長cDNAまたはコード領域を含む。その抗原結合領域またはドメインは、特定のヒトモノクローナル抗体に由来する一本鎖可変フラグメント(scFv)のV鎖およびV鎖のフラグメント(例えば、参照により本明細書中に援用される米国特許第7,109,304号に記載されているもの)を含み得る。そのフラグメントは、ヒト抗原特異的抗体の任意の数の異なる抗原結合ドメインでもあり得る。より具体的な実施形態において、そのフラグメントは、ヒト細胞における発現のためにヒトコドン使用頻度に最適化された配列によってコードされる抗原特異的scFvである。
【0088】
配置は、多量体であり得る(例えば、ダイアボディまたは多量体)。その多量体は、軽鎖および重鎖の可変部分がダイアボディに交差対形成することによって形成される可能性が最も高い。その構築物のヒンジ部分には、完全欠失から、1つ目のシステインが維持されること、セリン置換ではなくプロリン置換であること、1つ目のシステインまで切断されることにまで及ぶ複数の選択肢があり得る。Fc部分は、欠失させることができる。安定したかつ/または二量体化する任意のタンパク質が、この目的にかない得る。Fcドメインのうちの1つだけ、例えば、ヒト免疫グロブリン由来のCH2ドメインまたはCH3ドメインを使用することができる。二量体化を改善するように改変されたヒト免疫グロブリンのヒンジ、CH2およびCH3領域を使用することもできる。免疫グロブリンのヒンジ部分だけを使用することもできる。CD8アルファの部分を使用することもできる。
【0089】
いくつかの実施形態において、上記CAR核酸は、膜貫通ドメインおよび改変されたCD28細胞内シグナル伝達ドメインなどの、他の共刺激レセプターをコードする配列を含む。他の共刺激レセプターとしては、CD28、CD27、OX-40(CD134)および4-1BB(CD137)のうちの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
いくつかの実施形態において、CARは、養子療法によって標的化される特定の細胞型において発現される抗原などの特定の抗原(またはマーカーまたはリガンド)、例えば、癌マーカーおよび/または減衰応答を誘導することを目的とした抗原(例えば、正常細胞型または非罹患細胞型に発現される抗原)に対する特異性を有するように構築される。したがって、上記CARは通常、その細胞外の部分に、1つ以上の抗原結合分子(例えば、1つ以上の抗原結合フラグメント、抗原結合ドメインもしくは抗原結合部分)または1つ以上の抗体可変ドメイン、および/または抗体分子を含む。いくつかの実施形態において、上記CARは、抗体分子の抗原結合部分(例えば、モノクローナル抗体(mAb)の可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)に由来する一本鎖抗体フラグメント(scFv))を含む。
【0091】
キメラレセプターをコードするオープンリーディングフレームの配列は、ゲノムDNA起源、cDNA起源から得ることができるか、または合成することができるか(例えば、PCRを介して)、またはそれらの組み合わせである。イントロンはmRNAを安定化することが見出されているので、ゲノムDNAのサイズおよびイントロンの数に応じて、cDNAまたはそれらの組み合わせを使用することが望ましい場合がある。また、mRNAを安定化するために内在性または外来性の非コード領域を使用することもさらに有益であり得る。
【0092】
上記キメラ構築物は、裸のDNAとしてまたは好適なベクターに入った状態で免疫細胞に導入され得ることが企図される。裸のDNAを用いたエレクトロポレーションによって細胞を安定的にトランスフェクトする方法は、当該分野で公知である。例えば、米国特許第6,410,319号を参照のこと。裸のDNAとは、一般に、発現にとって適切な向きでプラスミド発現ベクターに含められたキメラレセプターをコードするDNAのことを指す。
【0093】
あるいは、キメラ構築物を免疫細胞に導入するために、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターまたはレンチウイルスベクター)を用いることができる。本開示の方法に従って使用するのに適したベクターは、免疫細胞において非複製性のベクターである。ウイルスに基づくベクターが多数知られており(例えば、HIV、SV40、EBV、HSVまたはBPVに基づくベクター)、細胞内に維持されるそのウイルスのコピー数は、その細胞の生存能を維持するほど十分低い。
【0094】
いくつかの態様において、抗原に特異的に結合する構成要素、すなわち認識構成要素は、1つ以上の膜貫通ドメインおよび細胞内のシグナル伝達ドメインに連結される。いくつかの実施形態において、上記CARは、CARの細胞外ドメインに融合された膜貫通ドメインを含む。1つの実施形態において、そのCARにおけるドメインの1つと天然に会合する膜貫通ドメインが使用される。いくつかの場合において、その膜貫通ドメインは、レセプター複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限に抑えるためにそのようなドメインが同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインに結合するのを回避するように、選択されるかまたはアミノ酸置換によって改変される。
【0095】
膜貫通ドメインは、いくつかの実施形態において、天然起源または合成起源に由来する。起源が天然である場合、そのドメインは、いくつかの態様において、任意の膜結合型タンパク質または膜貫通タンパク質に由来する。膜貫通領域は、T細胞レセプターのアルファ、ベータまたはゼータ鎖、CD28、CD3ゼータ、CD3イプシロン、CD3ガンマおよびCD3デルタに由来する(すなわち、その膜貫通領域を少なくとも含む)膜貫通領域を含む。あるいは、膜貫通ドメインは、いくつかの実施形態において、合成の膜貫通ドメインである。いくつかの態様において、合成の膜貫通ドメインは、ロイシンおよびバリンなどの疎水性残基を主に含む。いくつかの態様では、フェニルアラニン、トリプトファンおよびバリンのトリプレットが、合成の膜貫通ドメインの各末端に見られることがある。
【0096】
具体的な実施形態において、本CAR構築物は、軽鎖-リンカー-重鎖-ヒンジ-膜貫通ドメイン-シグナル伝達ドメインを含む。そのリンカーは、リンカー1(配列番号44または45)、リンカー2(配列番号46または47)、リンカー3(配列番号48または49)またはリンカー4(配列番号50または51)であり得る。そのヒンジは、CD8ヒンジ1(配列番号52または53)、CD8ヒンジ2(配列番号54または55)、CD8ヒンジ3(配列番号56または57)、CD28ヒンジ(配列番号58または59)、IgG4ヒンジ(配列番号60または61)、IgG4CH2(配列番号62または63)、IgG4CH2CH3(配列番号64または65)またはIgG4CH1CH2CH3(配列番号66または67)であり得る。その膜貫通ドメインは、CD8TM1(配列番号68または69)、CD8TM2(配列番号70または71)またはCD28TM(配列番号72または73)であり得る。そのシグナル伝達ドメインは、CD28(配列番号74または75)、4-1BB(配列番号76または77)、OX-40(配列番号78または79)および/またはCD3細胞内(配列番号80または81)であり得る。そのCAR構築物は、GFP(配列番号82または83)、T2A(配列番号84または85)および/またはEGFR(配列番号40または41)をさらに含み得る。例示的な重鎖(HC)、リンカーおよび軽鎖(LC)の組み合わせとしては、LC-リンカー1-HC;LC-リンカー2-HC;LC-リンカー3-HC;LC-リンカー4-HC;HC-リンカー1-LC;HC-リンカー2-LC;HC-リンカー3-LC;またはHC-リンカー4-LCが挙げられ得るが、これらに限定されない。
2.T細胞レセプター(TCR)
【0097】
いくつかの実施形態において、遺伝的に操作された抗原レセプターには、組換えTCR、および/または天然に存在するT細胞からクローニングされたTCRが含まれる。「T細胞レセプター」または「TCR」とは、可変a鎖および可変β鎖(それぞれTCRαおよびTCRβとしても知られる)または可変γ鎖および可変δ鎖(それぞれTCRγおよびTCRδとしても知られる)を含み、MHCレセプターに結合した抗原ペプチドに特異的に結合することができる分子のことを指す。いくつかの実施形態において、TCRは、αβ型である。
【0098】
通常、αβ型およびγδ型として存在するTCRは、一般に構造が似ているが、それらを発現しているT細胞は、解剖学的位置または機能が異なり得る。TCRは、細胞表面上にまたは可溶型として見られ得る。一般に、TCRは、T細胞(またはTリンパ球)の表面上に見られ、通常、その表面上で、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子に結合した抗原の認識に関与する。いくつかの実施形態において、TCRは、定常ドメイン、膜貫通ドメイン、および/または短い細胞質テイルも含み得る(例えば、Janeway et al,1997を参照のこと)。例えば、いくつかの態様において、TCRの各鎖は、1つのN末端免疫グロブリン可変ドメイン、1つの免疫グロブリン定常ドメイン、膜貫通領域、およびC末端に短い細胞質テイルを有し得る。いくつかの実施形態において、TCRは、シグナル伝達の媒介に関わるCD3複合体のインバリアントタンパク質と会合される。別段述べられない限り、用語「TCR」は、その機能的TCRフラグメントを包含すると理解されるべきである。この用語は、αβ型またはγδ型のTCRをはじめとしたインタクトなまたは完全長のTCRも包含する。
【0099】
したがって、本明細書中の目的では、TCRへの言及には、任意のTCRまたは機能的フラグメント(例えば、MHC分子において結合した特異的な抗原ペプチド、すなわち、MHC-ペプチド複合体に結合するTCRの抗原結合部分)が含まれる。交換可能に使用され得る、TCRの「抗原結合部分」または抗原結合フラグメントとは、TCRの構造ドメインの一部しか含まないが、完全なTCRが結合する抗原(例えば、MHC-ペプチド複合体)に結合する分子のことを指す。いくつかの場合において、抗原結合部分は、特異的なMHC-ペプチド複合体に結合するための結合部位を形成するのに十分なTCRの可変ドメイン(例えば、TCRの可変a鎖および可変β鎖)を含み、例えば一般に、各鎖が3つの相補性決定領域を含む。
【0100】
いくつかの実施形態において、TCR鎖の可変ドメインは、会合してループ、または免疫グロブリンに類似の相補性決定領域(CDR)を形成し、それにより、抗原認識がもたらされ、TCR分子の結合部位を形成することによってペプチド特異性が決定され、ペプチド特異性が決定される。通常、免疫グロブリンと同様に、CDRは、フレームワーク領域(FR)によって分断される(例えば、Jores et al.,1990;Chothia et al.,1988;Lefranc et al.,2003を参照のこと)。いくつかの実施形態において、CDR3は、プロセシングされた抗原の認識に関与する主要なCDRであるが、アルファ鎖のCDR1は、抗原ペプチドのN末端部と相互作用するとも示されているのに対して、ベータ鎖のCDR1は、そのペプチドのC末端部と相互作用する。CDR2は、MHC分子を認識すると考えられている。いくつかの実施形態において、β鎖の可変領域は、さらなる超可変性(HV4)領域を含み得る。
【0101】
いくつかの実施形態において、TCR鎖は、定常ドメインを含む。例えば、免疫グロブリンと同様に、TCR鎖の細胞外の部分(例えば、a鎖、β鎖)は、2つの免疫グロブリンドメインである、N末端における可変ドメイン(例えば、VまたはVp;通常、KabatナンバリングであるKabat et al.,“Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services,Public Health Service National Institutes of Health,1991,5th ed.に基づくアミノ酸1~116)、および細胞膜に隣接した1つの定常ドメイン(例えば、a鎖定常ドメインまたはC、通常、Kabatに基づくアミノ酸117~259、β鎖定常ドメインまたはCp、通常、Kabatに基づくアミノ酸117~295)を含み得る。例えば、いくつかの場合、それらの2本の鎖によって形成されるTCRの細胞外の部分は、2つの膜近位定常ドメイン、およびCDRを含む2つの膜遠位可変ドメインを含む。TCRドメインの定常ドメインは、システイン残基がジスルフィド結合を形成する短い接続配列を含み、それにより、それらの2本の鎖の間に連結が形成される。いくつかの実施形態において、TCRは、α鎖およびβ鎖の各々に追加のシステイン残基を有し得るため、TCRは、定常ドメインに2つのジスルフィド結合を含む。
【0102】
いくつかの実施形態において、TCR鎖は、膜貫通ドメインを含み得る。いくつかの実施形態において、膜貫通ドメインは、正に帯電している。いくつかの場合において、TCR鎖は、細胞質テイルを含む。いくつかの場合において、その構造のおかげで、TCRはCD3のような他の分子と会合することができる。例えば、膜貫通領域とともに定常ドメインを含むTCRは、そのタンパク質を細胞膜に固定し得、CD3シグナル伝達装置または複合体のインバリアントサブユニットと会合し得る。
【0103】
一般に、CD3は、哺乳動物においては3つの異なる鎖(γ、δおよびε)およびζ鎖を有し得る多タンパク質複合体である。例えば、哺乳動物では、この複合体は、CD3γ鎖、CD3δ鎖、2つのCD3ε鎖、およびCD3ζ鎖のホモ二量体を含み得る。CD3γ鎖、CD3δ鎖およびCD3ε鎖は、単一の免疫グロブリンドメインを含む免疫グロブリンスーパーファミリーの高度に関連した細胞表面タンパク質である。CD3γ鎖、CD3δ鎖およびCD3ε鎖の膜貫通領域は、負に帯電しており、これは、これらの鎖が、正に帯電したT細胞レセプター鎖と会合できるようにする特性である。CD3γ鎖、CD3δ鎖およびCD3ε鎖の細胞内テイルの各々は、免疫受容活性化チロシンモチーフまたはITAMとして知られる保存された単一のモチーフを含むのに対して、各CD3ζ鎖は、3つ含む。一般に、ITAMは、TCR複合体のシグナル伝達能に関わる。これらのアクセサリー分子は、負に帯電した膜貫通領域を有し、TCRから細胞へのシグナルの伝播において役割を果たす。CD3鎖およびζ鎖は、TCRと一体となって、T細胞レセプター複合体として知られる複合体を形成する。
【0104】
いくつかの実施形態において、TCRは、2本の鎖αおよびβ(または必要に応じてγおよびδ)のヘテロ二量体であり得るか、または一本鎖TCR構築物であり得る。いくつかの実施形態において、TCRは、ジスルフィド結合などによって連結された2本の別個の鎖(α鎖とβ鎖またはγ鎖とδ鎖)を含むヘテロ二量体である。いくつかの実施形態において、標的抗原(例えば、癌抗原)に対するTCRが特定され、細胞に導入される。いくつかの実施形態において、TCRをコードする核酸は、公的に入手可能なTCR DNA配列のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅などによって、種々の起源から得ることができる。いくつかの実施形態において、TCRは、生物学的起源、例えば、細胞、例えば、T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)、T細胞ハイブリドーマまたは他の公的に入手可能な起源から得られる。いくつかの実施形態において、T細胞は、インビボで単離された細胞から得ることができる。いくつかの実施形態において、高親和性T細胞クローンが、患者から単離され得、TCRが単離され得る。いくつかの実施形態において、T細胞は、培養されたT細胞ハイブリドーマまたはクローンであり得る。いくつかの実施形態において、標的抗原に対するTCRクローンは、ヒト免疫系遺伝子(例えば、ヒト白血球抗原系またはHLA)で操作されたトランスジェニックマウスにおいて産生された。いくつかの実施形態では、ファージディスプレイを用いて、標的抗原に対するTCRが単離される。いくつかの実施形態において、TCRまたはその抗原結合部分は、TCRの配列の知識によって合成的に作製され得る。
C.送達方法
【0105】
当業者であれば、本開示の抗原レセプターを発現させるために標準的な組換え手法(例えば、Sambrook et al.,2001およびAusubel et al.,1996(両方が参照により本明細書中に援用される)を参照のこと)によってベクターを構築する能力を充分に備えているだろう。ベクターとしては、プラスミド、コスミド、ウイルス(バクテリオファージ、動物ウイルスおよび植物ウイルス)および人工染色体(例えば、YAC)、例えば、レトロウイルスベクター(例えば、モロニーマウス白血病ウイルスベクター(MoMLV)、MSCV、SFFV、MPSV、SNVなどに由来するもの)、レンチウイルスベクター(例えば、HIV-1、HIV-2、SIV、BIV、FIVなどに由来するもの)、アデノウイルス(Ad)ベクター(その複製可能型、複製欠損型およびガットレス型(gutless forms)を含む)、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、サルウイルス40(SV-40)ベクター、ウシパピローマウイルスベクター、エプスタイン・バーウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、ハーベイマウス肉腫ウイルスベクター、マウス乳癌ウイルスベクター、ラウス肉腫ウイルスベクター、パルボウイルスベクター、ポリオウイルスベクター、水疱性口内炎ウイルスベクター、マラバウイルス(maraba virus)ベクターおよびB群アデノウイルスenadenotucirevベクターが挙げられるがこれらに限定されない。
a.ウイルスベクター
【0106】
抗原レセプターをコードするウイルスベクターは、本開示のある特定の態様において提供され得る。組換えウイルスベクターを作製する際、必須ではない遺伝子は、通常、異種(または非天然)タンパク質の遺伝子またはコード配列で置き換えられる。ウイルスベクターは、ウイルス配列を利用して、核酸および場合によってはタンパク質を細胞に導入する一種の発現構築物である。ある特定のウイルスが細胞に感染する能力またはレセプター媒介性のエンドサイトーシスを介して細胞に侵入する能力、および宿主細胞のゲノムにインテグレートし、ウイルス遺伝子を安定かつ効率的に発現する能力によって、それらのウイルスが、外来核酸を細胞(例えば、哺乳動物細胞)に移行させるための魅力的な候補になった。本発明のある特定の態様の核酸を送達するために使用され得るウイルスベクターの非限定的な例を下記に記載する。
【0107】
レンチウイルスは、複雑なレトロウイルスであり、一般的なレトロウイルス遺伝子であるgag、polおよびenvに加えて、調節機能または構造機能を有する他の遺伝子も含む。レンチウイルスベクターは、当該分野で周知である(例えば、米国特許第6,013,516号および同第5,994,136号を参照のこと)。
【0108】
組換えレンチウイルスベクターは、非分裂細胞に感染することができ、インビボとエキソビボの両方において遺伝子導入および核酸配列発現のために使用され得る。例えば、非分裂細胞に感染することができる組換えレンチウイルス(ここで、好適な宿主細胞が、パッケージング機能を有する2つ以上のベクター、すなわちgag、polおよびenv、ならびにrevおよびtatでトランスフェクトされる)は、参照により本明細書中に援用される米国特許第5,994,136号に記載されている。
b.調節エレメント
【0109】
本開示において有用なベクターに含められる発現カセットは、特に、タンパク質コード配列に作動可能に連結された真核生物転写プロモーター、介在配列を含むスプライスシグナル、および転写終結/ポリアデニル化配列を(5’から3’への方向で)含む。真核細胞においてタンパク質をコードする遺伝子の転写を制御するプロモーターおよびエンハンサーは、複数の遺伝的エレメントから構成される。細胞機構は、各エレメントによって運ばれる調節情報を集め、統合することができ、それにより、異なる遺伝子が、多くの場合は複雑なパターンである異なるパターンの転写制御を展開することが可能になる。本開示の状況において使用されるプロモーターとしては、構成的プロモーター、誘導性プロモーターおよび組織特異的プロモーターが挙げられる。
(i)プロモーター/エンハンサー
【0110】
本明細書中に提供される発現構築物は、抗原レセプターの発現を駆動するプロモーターを含む。プロモーターは、一般に、RNA合成のための開始部位の位置を特定するように機能する配列を含む。これの最もよく知られている例は、TATAボックスであるが、哺乳動物のターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ遺伝子のプロモーターおよびSV40後期遺伝子のプロモーターなど、一部のプロモーターでは、TATAボックスを欠き、開始部位自体と重なっている不連続なエレメントが、開始の場所を固定するのを助ける。さらなるプロモーターエレメントが、転写開始の頻度を制御する。通常、これらは、開始部位の30110bp上流の領域に位置するが、いくつかのプロモーターは、開始部位の下流にも機能的エレメントを含むと示されている。コード配列をプロモーター「の支配下に」するためには、転写読み枠の転写開始部位の5’末端を、選択されたプロモーターの「下流」(すなわち、3’)に置く。「上流」のプロモーターは、DNAの転写を刺激し、コードされるRNAの発現を促進する。
【0111】
プロモーターエレメント間の間隔は、変更がきくことが多く、エレメントが、反転されるかまたは互いに対して移動された場合でも、プロモーターの機能は保存される。tkプロモーターでは、プロモーターエレメント間の間隔は、活性が低下し始めるまで最大50bp広げられ得る。プロモーターに応じて、個々のエレメントは、協同的にまたは独自に機能して転写を活性化し得るとみられる。プロモーターは、核酸配列の転写性の活性化に関わるシス作用性制御配列のことを指す「エンハンサー」と併せて使用されてもよいし、使用されなくてもよい。
【0112】
プロモーターは、コードセグメントおよび/またはエキソンの上流に位置する5’非コード配列を単離することによって得られることがあるような、ある核酸配列と天然に会合したプロモーターであり得る。そのようなプロモーターは、「内在性」プロモーターと呼ぶことができる。同様に、エンハンサーは、ある核酸配列の下流または上流に位置する、その配列と天然に会合したエンハンサーであり得る。あるいは、ある核酸配列とその天然の環境では天然には会合していないプロモーターのことを指す、組換えプロモーターまたは異種プロモーターの支配下にコード核酸セグメントを置くことによって、一定の利点が得られる。また、組換えエンハンサーまたは異種エンハンサーは、その天然の環境では核酸配列と天然には会合していないエンハンサーのことを指す。そのようなプロモーターまたはエンハンサーには、他の遺伝子のプロモーターまたはエンハンサー、ならびに他の任意のウイルスまたは原核細胞もしくは真核細胞から単離されたプロモーターまたはエンハンサー、ならびに「天然に存在」しない、すなわち、種々の転写制御領域の種々のエレメントおよび/または発現を変化させる変異を含む、プロモーターまたはエンハンサーが含まれ得る。例えば、組換えDNAの構築において最もよく使用されるプロモーターとしては、βラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)、ラクトースおよびトリプトファン(trp-)プロモーターシステムが挙げられる。プロモーターおよびエンハンサーの核酸配列を合成的に作製することに加えて、組換えクローニング、および/またはPCRTMをはじめとした核酸増幅技術を用いて、ある配列が、本明細書中に開示される組成物に関連して作製され得る。さらに、核以外のオルガネラ(例えば、ミトコンドリア、葉緑体など)内での配列の転写および/または発現を指示する調節配列も同様に使用できることが企図される。
【0113】
当然、発現のために選択されたオルガネラ、細胞型、組織、器官または生物におけるDNAセグメントの発現を効果的に指示するプロモーターおよび/またはエンハンサーを使用することが重要になる。分子生物学の当業者は、一般に、タンパク質発現のために、プロモーター、エンハンサーおよび細胞型の組み合わせを使用することを承知している(例えば、参照により本明細書中に援用されるSambrook et al.1989を参照のこと)。使用されるプロモーターは、構成的プロモーター、組織特異的プロモーター、誘導性プロモーター、および/または導入されたDNAセグメントの高レベル発現を指示する、適切な条件下において有用なプロモーター(例えば、組換えタンパク質および/または組換えペプチドの大規模生成において有益なプロモーター)であり得る。そのプロモーターは、異種であっても、内在性であってもよい。
【0114】
さらに、任意のプロモーター/エンハンサーの組み合わせ(例えば、epd.isb-sib.ch/のワールドワイドウェブを介したEukaryotic Promoter Data Base EPDBに従って)も、発現を駆動するために使用され得る。T3、T7またはSP6細胞質発現系の使用が、別の実行可能な実施形態である。適切な細菌ポリメラーゼが、送達複合体の一部としてまたはさらなる遺伝的発現構築物として提供される場合、真核細胞は、ある特定の細菌プロモーターからの細胞質での転写を支持し得る。
【0115】
プロモーターの非限定的な例としては、初期または後期ウイルスプロモーター(例えば、SV40初期または後期プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)初期プロモーター);真核細胞プロモーター(例えば、ベータアクチンプロモーター、GADPHプロモーター、メタロチオネインプロモーター);および連鎖状応答エレメントプロモーター(例えば、サイクリックAMP応答エレメントプロモーター(cre)、血清応答エレメントプロモーター(sre)、ホルボールエステルプロモーター(TPA)およびミニマルTATAボックス近傍の応答エレメントプロモーター(tre))が挙げられる。ヒト成長ホルモンプロモーター配列(例えば、Genbankに記載されているヒト成長ホルモンミニマルプロモーター、アクセッション番号X05244、ヌクレオチド283-341)またはマウス乳腺腫瘍プロモーター(ATCCから入手可能,Cat.No.ATCC45007)を使用することも可能である。ある特定の実施形態において、プロモーターは、CMV IE、デクチン-1、デクチン-2、ヒトCD11c、F4/80、SM22、RSV、SV40、Ad MLP、ベータ-アクチン、MHCクラスIまたはMHCクラスIIプロモーターであるが、しかしながら、治療用の遺伝子の発現を駆動するために有用な他の任意のプロモーターも本開示の実施に適用できる。
【0116】
ある特定の態様において、本開示の方法は、エンハンサー配列、すなわち、プロモーターの活性を増加させる核酸配列であって、シスで、かつその向きを問わず、比較的長い距離(標的プロモーターから最大数キロベース離れた距離)にわたって作用する能力を有する核酸配列にも関する。しかしながら、エンハンサーは、所与のプロモーターに対して近位でも機能し得るので、エンハンサーの機能は必ずしもそのような長い距離に限定されない。
(ii)開始シグナルおよび連結発現
【0117】
コード配列の効率的な翻訳のために、本開示に提供される発現構築物において特異的な開始シグナルも使用され得る。これらのシグナルは、ATG開始コドンまたは隣接配列を含む。外来性の翻訳制御シグナル(ATG開始コドンを含む)が提供される必要がある場合がある。当業者であれば、これを判断することおよび必要なシグナルを提供することが容易にできるだろう。インサート全体の翻訳を確保するためには、開始コドンが、所望のコード配列の読み枠と「インフレーム」でなければならないことは周知である。その外来性の翻訳制御シグナルおよび開始コドンは、天然のものまたは合成のものであり得る。適切な転写エンハンサーエレメントを含めることによって、発現効率が高められ得る。
【0118】
ある特定の実施形態において、配列内リボソーム進入部位(IRES)エレメントの使用は、多重遺伝子のメッセージ、すなわちポリシストロニックなメッセージを生成するために使用される。IRESエレメントは、5’メチル化キャップ依存的翻訳のリボソームスキャニングモデルを迂回し、内部の部位において翻訳を開始することができる。ピコルナウイルス科の2つのメンバー(ポリオおよび脳心筋炎)由来のIRESエレメント、ならびに哺乳動物のメッセージ由来のIRESが、報告されている。IRESエレメントは、異種のオープンリーディングフレームに連結できる。各々がIRESによって分断された複数のオープンリーディングフレームが、一緒に転写され得、ポリシストロニックなメッセージが生成され得る。IRESエレメントのおかげで、各オープンリーディングフレームが、効率的な翻訳のためにリボソームに接近できるようになる。単一のプロモーター/エンハンサーを用いて複数の遺伝子を効率的に発現して、単一のメッセージを転写することもできる。
【0119】
さらに、本開示に提供される構築物内の遺伝子の連結発現または同時発現をもたらすために、ある特定の2A配列エレメントが使用され得る。例えば、オープンリーディングフレームを連結して単一のシストロンを形成することによって遺伝子を同時発現するために、切断配列が使用され得る。例示的な切断配列は、F2A(口蹄疫ウイルス2A)または「2A様」配列(例えば、Thosea asignaウイルス2A;T2A)である。
(iii)複製開始点
宿主細胞においてベクターを増殖させるために、そのベクターは、1つ以上の複製開始部位(「ori」と呼ばれることが多い)、例えば、複製が開始される特異的な核酸配列である、上に記載されたようなEBVのoriPまたはプログラミングにおける機能が似ているかもしくは高められた遺伝的に操作されたoriPに対応する核酸配列を含み得る。あるいは、上に記載されたような他の染色体外で複製するウイルスの複製起点、または自律複製配列(ARS)を使用することができる。
c.選択マーカーおよびスクリーニング可能なマーカー
【0120】
いくつかの実施形態において、本開示の構築物を含む細胞は、マーカーを発現ベクターに含めることによって、インビトロまたはインビボにおいて特定され得る。そのようなマーカーは、発現ベクターを含む細胞を容易に特定できるようにする特定可能な変化を細胞に与える。一般に、選択マーカーは、選択を可能にする特性を付与するマーカーである。ポジティブ選択マーカーは、そのマーカーが存在することによってその選択が可能になるマーカーであり、ネガティブ選択マーカーは、その存在が選択を妨げるマーカーである。ポジティブ選択マーカーの例は、薬物耐性マーカーである。
【0121】
通常、薬物選択マーカーを含めることにより、形質転換体のクローニングおよび特定が助けられ、例えば、ネオマイシン、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、DHFR、GPT、ゼオシンおよびヒスチジノールに対する抵抗性を付与する遺伝子が、有用な選択マーカーである。条件の実行に基づいて形質転換体の判別を可能にする表現型を付与するマーカーに加えて、比色解析を基礎とする、GFPなどのスクリーニング可能なマーカーをはじめとした他のタイプのマーカーも企図される。あるいは、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(tk)またはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)などの、ネガティブ選択マーカーとしてスクリーニング可能な酵素が利用され得る。当業者であれば、免疫学的マーカーをおそらくはFACS解析と併せて使用する方法も承知しているだろう。使用されるマーカーは、遺伝子産物をコードする核酸と同時に発現されることが可能である限り、重要ではないと考えられている。選択マーカーおよびスクリーニング可能なマーカーのさらなる例は、当業者に周知である。
d.他の核酸送達方法
【0122】
抗原レセプターをコードする核酸のウイルス送達に加えて、以下の方法が、所与の宿主細胞への組換え遺伝子送達のさらなる方法であるので、本開示において考慮される。
【0123】
本開示の免疫細胞へのDNAまたはRNAなどの核酸の導入は、本明細書中に記載されるようにまたは当業者に公知であるように、細胞を形質転換するための核酸送達に適した任意の方法を使用し得る。そのような方法としては、DNAの直接送達(例えば、エキソビボトランスフェクション、注射(マイクロインジェクションを含む));エレクトロポレーション;リン酸カルシウム沈殿;DEAE-デキストランに続くポリエチレングリコールの使用;直接的な音波負荷;リポソーム媒介性のトランスフェクションおよびレセプター媒介性のトランスフェクション;微粒子銃(microprojectile bombardment);炭化ケイ素繊維を伴った撹拌;アグロバクテリウム媒介性の形質転換;乾燥/阻害媒介性のDNA取り込み、およびそのような方法の任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。これらの手法などの手法の適用により、オルガネラ、細胞、組織または生物が安定にまたは一過性に形質転換され得る。
IV.処置方法
【0124】
本実施形態のある特定の態様は、CD79bシグナル伝達に関連する疾患または障害を予防または処置するために使用され得る。CD79bのシグナル伝達は、癌細胞の増殖を予防する任意の好適な薬物によって低減され得る。好ましくは、そのような物質は、抗CD79b抗体または抗CD79b CAR T細胞であり得る。
【0125】
いくつかの実施形態において、本開示は、有効量の本開示のCAR T細胞を投与する工程を含む、免疫療法のための方法を提供する。1つの実施形態において、免疫応答を誘発するCAR T細胞集団の移入によって、内科疾患または内科障害が処置される。本開示のある特定の実施形態において、免疫応答を誘発するCAR T細胞集団の移入によって、癌が処置される。個体の癌を処置するためまたは癌の進行を遅延させるための方法が本明細書中に提供され、その方法は、有効量の抗原特異的細胞療法を個体に投与する工程を含む。本方法は、免疫障害、固形癌および血液癌の処置に適用され得る。詳細には、その癌は、B細胞急性リンパ芽球性白血病(ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫などのB細胞悪性腫瘍、濾胞性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫および慢性リンパ性白血病であり得る。
【0126】
本処置方法が有用な腫瘍には、任意の悪性細胞タイプ、例えば、固形腫瘍または血液腫瘍に見られる細胞タイプが含まれる。例示的な固形腫瘍としては、膵臓、結腸、盲腸、胃、脳、頭部、頸部、卵巣、腎臓、喉頭、肉腫、肺、膀胱、黒色腫、前立腺および乳房からなる群より選択される器官の腫瘍が挙げられ得るが、これらに限定されない。例示的な血液腫瘍としては、骨髄の腫瘍、TまたはB細胞悪性腫瘍、白血病、リンパ腫、芽腫、ミエローマなどが挙げられる。本明細書中に提供される方法を用いて処置され得る癌のさらなる例としては、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌および肺扁平上皮癌を含む)、腹膜癌、胃(gastric)または胃(stomach)癌(消化器癌および消化管間質癌を含む)、膵癌、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、乳癌、結腸癌、直腸結腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌または腎癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、様々なタイプの頭頸部癌、および黒色腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0127】
癌は、具体的には以下の組織タイプの癌であり得るが、これらに限定されない:新生物、悪性;癌腫;癌腫、未分化;巨細胞および紡錘形細胞癌;小細胞癌;乳頭状癌;扁平上皮癌;リンパ上皮癌;基底細胞癌;毛母癌;移行上皮癌;乳頭状移行上皮癌;腺癌;ガストリノーマ、悪性;胆管癌;肝細胞癌;肝細胞癌・胆管癌の混合型;索状腺癌;腺様嚢胞癌;腺腫性ポリープ内腺癌;腺癌、家族性大腸ポリポーシス;固形癌;カルチノイド腫瘍、悪性;細気管支肺胞腺癌;乳頭状腺癌;嫌色素性癌;好酸性癌;好酸性腺癌;好塩基性癌;明細胞腺癌;顆粒細胞癌;濾胞腺癌;乳頭状・濾胞腺癌;非被包性硬化癌;副腎皮質癌;類内膜癌;皮膚付属器癌;アポクリン腺癌;皮脂腺癌;耳垢腺癌;粘表皮癌;嚢胞腺癌;乳頭状嚢腺癌;乳頭状漿液性嚢胞腺癌;粘液性嚢胞腺癌;粘液性腺癌;印環細胞癌;浸潤性導管癌;髄様癌;小葉癌;炎症性癌;パジェット病、乳房;腺房細胞癌;腺扁平上皮癌;扁平上皮化生を伴う腺癌;胸腺腫、悪性;卵巣間質腫瘍、悪性;莢膜細胞腫、悪性;顆粒膜細胞腫、悪性;アンドロブラストーマ、悪性;セルトリ細胞癌;ライディッヒ細胞腫瘍、悪性;脂質細胞腫瘍、悪性;傍神経節腫、悪性;乳房外傍神経節腫、悪性;褐色細胞腫;グロムス血管肉腫;悪性黒色腫;無色素性黒色腫;表在拡大型黒色腫;悪性黒子黒色腫;末端黒子型黒色腫;結節性黒色腫;巨大色素性母斑内悪性黒色腫;類上皮細胞黒色腫;青色母斑、悪性;肉腫;線維肉腫;線維性組織球腫、悪性;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児性横紋筋肉腫;胞巣状横紋筋肉腫;間質肉腫;混合腫瘍、悪性;ミュラー管混合腫瘍;腎芽腫;肝芽腫;癌肉腫;間葉腫、悪性;ブレンナー腫瘍、悪性;葉状腫瘍、悪性;滑膜肉腫;中皮腫、悪性;未分化胚腫;胎児性癌;奇形腫、悪性;卵巣甲状腺腫、悪性;絨毛癌;中腎腫、悪性;血管肉腫;血管内皮腫、悪性;カポジ肉腫;血管外皮腫、悪性;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍皮質骨肉腫;軟骨肉腫;軟骨芽細胞腫、悪性;間葉性軟骨肉腫;骨巨細胞腫瘍;ユーイング肉腫;歯原性腫瘍、悪性;エナメル上皮歯牙肉腫;エナメル上皮腫、悪性;エナメル上皮線維肉腫;松果体腫、悪性;脊索腫;グリオーマ、悪性;上衣腫;アストロサイトーマ;原形質性アストロサイトーマ;細線維性アストロサイトーマ;星芽腫;膠芽腫;乏突起膠腫;希突起芽腫;原始神経外胚葉性;小脳肉腫;神経節神経芽腫;神経芽腫;網膜芽腫;嗅神経原腫瘍;髄膜腫、悪性;神経線維肉腫;神経鞘腫、悪性;顆粒細胞腫、悪性;悪性リンパ腫;ホジキン病;ホジキン;側肉芽腫;悪性リンパ腫、小リンパ球性;悪性リンパ腫、大細胞型、びまん性;悪性リンパ腫、濾胞性;菌状息肉腫;他の特定の非ホジキンリンパ腫;B細胞リンパ腫;低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小非切れ込み型細胞NHL;巨大病変(bulky disease)NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;ワルデンシュトレームマクログロブリン血症;悪性組織球増殖症;多発性骨髄腫;肥満細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ性白血病;形質細胞性白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞白血病;骨髄性白血病;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;肥満細胞白血病;巨核芽球性白血病;骨髄性肉腫;ヘアリー細胞白血病;慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);急性骨髄性白血病(AML);および慢性骨髄芽球性白血病。
【0128】
特定の実施形態は、白血病の処置方法に関する。白血病は、血液または骨髄の癌であり、血液細胞、通常は白血球細胞(白血球)の異常な増殖(分裂増殖による生成)を特徴とする。白血病は、血液腫瘍と呼ばれる広範な疾患群の一部である。白血病は、多種多様な疾患を網羅する広義語である。白血病は、急性および慢性の形態に臨床的におよび病理学的に分けられる。
【0129】
本開示の方法のいくつかの実施形態において、個体における活性化されたCD4T細胞および/またはCD8T細胞は、γ-IFNを産生するCD4T細胞および/もしくはCD8T細胞、ならびに/またはその組み合わせの投与前と比べて細胞溶解活性の増大を特徴とする。γ-IFNは、例えば、細胞の固定、透過処理、およびγ-IFNに対する抗体による染色を含む細胞内サイトカイン染色(ICS)をはじめとした、当該分野で公知の任意の手段によって測定され得る。細胞溶解活性は、当該分野で公知の任意の手段によって、例えば、エフェクター細胞と標的細胞の混合物を用いた細胞殺滅アッセイを使用して、測定され得る。
【0130】
いくつかの実施形態において、被験体には、T細胞療法の前に骨髄非破壊的なリンパ球除去化学療法が投与され得る。その骨髄非破壊的なリンパ球除去化学療法は、任意の好適な経路によって投与され得る任意の好適なそのような治療であり得る。その骨髄非破壊的なリンパ球除去化学療法は、特に、癌が転移性であり得る黒色腫である場合、例えば、シクロホスファミドおよびフルダラビンの投与を含み得る。シクロホスファミドおよびフルダラビンの例示的な投与経路は、静脈内である。同様に、任意の好適な用量のシクロホスファミドおよびフルダラビンが投与され得る。特定の態様では、およそ60mg/kgのシクロホスファミドが2日間投与され、その後、およそ25mg/mのフルダラビンが5日間投与された。
【0131】
ある特定の実施形態では、自己T細胞の増殖および活性化を促進するT細胞成長因子が、自己T細胞と同時にまたは自己T細胞に続いて被験体に投与される。T細胞成長因子は、自己T細胞の増殖および活性化を促進する任意の好適な成長因子であり得る。好適なT細胞成長因子の例としては、インターロイキン(IL)-2、IL-7、IL-15およびIL-12が挙げられ、これらは、単独でまたは様々な組み合わせで(例えば、IL-2およびIL-7、IL-2およびIL-15、IL-7およびIL-15、IL-2、IL-7およびIL-15、IL-12およびIL-7、IL-12およびIL-15、またはIL-12およびIL2)使用され得る。IL-12が、好ましいT細胞成長因子である。
【0132】
治療有効量の免疫細胞が、非経口投与をはじめとしたいくつかの経路、例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、胸骨内もしくは関節内注射または注入によって投与され得る。
【0133】
到達可能な不連続の固形腫瘍に対しては、腫瘍内注射、すなわち腫瘍脈管構造への注射が特に企図される。局所投与、領域性投与または全身投与も適切であり得る。>4cmの腫瘍の場合、投与される体積は、約4~10ml(特に10ml)であり、<4cmの腫瘍の場合、約1~3mlの体積が使用される(特に3ml)。単回用量として送達される複数回の注射は、約0.1~約0.5ml体積を含む。
【0134】
T細胞集団は、疾患と一致した処置レジメンで、例えば、疾患状態を回復させるためには単回または1日~数日間にわたる数回の投与で、または疾患進行を阻害するためおよび疾患再発を予防するためには長期間にわたる周期的な投与で、投与され得る。製剤において使用される正確な用量は、投与経路および疾患または障害の重症度にも依存し、医師の判断および各患者の状況に従って決定されるべきである。T細胞の治療有効量は、処置される被験体、苦痛の重症度およびタイプ、ならびに投与様式に依存する。いくつかの実施形態において、ヒト被験体の処置において使用され得る用量は、少なくとも3.8×10、少なくとも3.8×10、少なくとも3.8×10、少なくとも3.8×10、少なくとも3.8×10、少なくとも3.8×10または少なくとも3.8×1010T細胞/mの範囲である。ある特定の実施形態において、ヒト被験体の処置において使用される用量は、約3.8×10~約3.8×1010T細胞/mの範囲である。追加の実施形態において、T細胞の治療有効量は、約5×10細胞/kg体重~約7.5×10細胞/kg体重(例えば、約2×10細胞~約5×10細胞/kg体重または約5×10細胞~約2×10細胞/kg体重)で変動し得る。T細胞の正確な量は、被験体の年齢、体重、性別および生理学的状態に基づいて、当業者によって容易に決定される。有効な用量は、インビトロまたは動物モデル試験系から導かれた用量反応曲線から外挿され得る。
A.薬学的組成物
【0135】
CAR T細胞および薬学的に許容され得るキャリアを含む薬学的組成物および製剤も本明細書中に提供される。
【0136】
本明細書中に記載されるような薬学的組成物および製剤は、所望の程度の純度を有する活性成分(例えば、抗体またはポリペプチド)を1つ以上の自由選択の薬学的に許容され得るキャリア(Remington’s Pharmaceutical Sciences 22nd edition,2012)と混合することによって、凍結乾燥された製剤または水溶液の形態で調製され得る。薬学的に許容され得るキャリアは、一般に、使用される投与量および濃度においてレシピエントにとって無毒性であり、それらのキャリアとしては、緩衝剤(例えば、リン酸、クエン酸および他の有機酸);酸化防止剤(アスコルビン酸およびメチオニンを含む);保存剤(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム);塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノールアルコール、ブチルアルコールまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン(例えば、メチルパラベンまたはプロピルパラベン);カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリジン);単糖類、二糖類および他の炭水化物(グルコース、マンノースまたはデキストリンを含む);キレート剤(例えば、EDTA);糖類(例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール);塩形成対イオン(例えば、ナトリウム);金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体);および/または非イオン性界面活性剤(例えば、ポリエチレングリコール(PEG))が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な本明細書中の薬学的に許容され得るキャリアとしては、間質薬物分散剤、例えば、中性で活性な可溶性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、ヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標),Baxter International,Inc.)がさらに挙げられる。1つの態様において、sHASEGPは、1つ以上のさらなるグリコサミノグリカナーゼ、例えば、コンドロイチナーゼと併用される。
B.併用療法
【0137】
ある特定の実施形態において、本実施形態の組成物および方法は、少なくとも1つのさらなる治療と併用されるT細胞集団を含む。そのさらなる治療は、放射線療法、手術(例えば、ランペクトミーおよび乳房切除術)、化学療法、遺伝子治療、DNA治療、ウイルス治療、RNA治療、免疫療法、骨髄移植、ナノ治療、モノクローナル抗体治療または前述の組み合わせであり得る。そのさらなる治療は、アジュバント療法またはネオアジュバント療法の形態であり得る。
【0138】
いくつかの実施形態において、さらなる治療は、小分子酵素阻害剤または抗転移剤の投与である。いくつかの実施形態において、さらなる治療は、副作用制限剤(例えば、処置の副作用の発生率および/または重症度を下げることを目的とする作用物質、例えば、抗悪心剤など)の投与である。いくつかの実施形態において、さらなる治療は、放射線療法である。いくつかの実施形態において、さらなる治療は、手術である。いくつかの実施形態において、さらなる治療は、放射線療法と手術の併用である。いくつかの実施形態において、さらなる治療は、ガンマ線照射である。いくつかの実施形態において、さらなる治療は、PBK/AKT/mTOR経路を標的化する治療、HSP90阻害剤、チューブリン阻害剤、アポトーシス阻害剤および/または化学予防剤である。さらなる治療は、当該分野で公知の化学療法剤の1つ以上であり得る。
【0139】
免疫細胞療法は、免疫チェックポイント療法などのさらなる癌治療の前、最中、後または様々な組み合わせで投与され得る。それらの投与は、同時から数分、数日、数週間までの範囲の間隔で行われ得る。免疫細胞療法がさらなる治療薬とは別に患者に提供される実施形態において、それら2つの化合物が、なおも患者に対して有益な併用効果を発揮できるように、各送達時点の間にかなりの期間が経過しないことを保証するのが一般的である。そのような場合、抗体療法と抗癌療法とが、互いの約12~24または72時間以内に、より詳細には、互いの約6~12時間以内に患者に提供され得ることが企図される。そのような状況において、それぞれの投与間に数日(2、3、4、5、6または7)から数週間(1、2、3、4、5、6、7または8)が経過した場合、処置期間をかなり延長することが望ましい可能性がある。
【0140】
様々な組み合わせが使用され得る。下記の例の場合、免疫細胞療法が、「A」であり、抗癌療法が、「B」である:
A/B/A B/A/B B/B/A A/A/B A/B/B B/A/A A/B/B/B B/A/B/B
B/B/B/A B/B/A/B A/A/B/B A/B/A/B A/B/B/A B/B/A/A
B/A/B/A B/A/A/B A/A/A/B B/A/A/A A/B/A/A A/A/B/A
【0141】
本実施形態の任意の化合物または治療の患者への投与は、それらの作用物質に毒性がある場合はそれを考慮して、そのような化合物を投与するための一般的なプロトコルに従う。ゆえに、いくつかの実施形態では、併用療法に起因し得る毒性をモニタリングする工程が存在する。
1.化学療法
【0142】
多種多様の化学療法剤が、本実施形態に従って使用され得る。化学療法剤の例としては、アルキル化剤(例えば、チオテパおよびシクロスホスファミド);スルホン酸アルキル(例えば、ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファン);アジリジン(例えば、ベンゾドパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドパ(meturedopa)およびウレドパ(uredopa));エチレンイミンおよびメチルアメラミン(methylamelamines)(アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミドおよびトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含む);アセトゲニン(特に、ブラタシンおよびブラタシノン);カンプトテシン(合成アナログであるトポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン(carzelesin)およびビゼレシン(bizelesin)合成アナログを含む);クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成アナログであるKW-2189およびCB1-TM1を含む);エレウセロビン(eleutherobin);パンクラチスタチン(pancratistatin);サルコジクチイン(sarcodictyin);スポンギスタチン(spongistatin);ナイトロジェンマスタード(例えば、クロラムブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノベンビキン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロフォスファミド(trofosfamide)およびウラシルマスタード);ニトロソ尿素(例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチンおよびラニムヌスチン(ranimnustine));抗生物質(例えば、エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特に、カリケアマイシンガンマlIおよびカリケアマイシンオメガI1));ジネマイシン(dynemicin)(ジネマイシンAを含む);ビスホスホネート(例えば、クロドロネート);エスペラミシン;ならびにネオカルチノスタチンクロモフォアおよび関連色素タンパク質であるエンジイン抗生物質クロモフォア、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アウトラルニシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン(carminomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモミシニス、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン(例えば、マイトマイシンC)、ミコフェノール酸、ノガラルニシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチンおよびゾルビシン;抗代謝産物(例えば、メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU));葉酸アナログ(例えば、デノプテリン(denopterin)、プテロプテリンおよびトリメトレキサート);プリンアナログ(例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン(thiamiprine)およびチオグアニン);ピリミジンアナログ(例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビンおよびフロクスウリジン);アンドロゲン(例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタンおよびテストラクトン);抗副腎(anti-adrenals)(例えば、ミトタンおよびトリロスタン);葉酸補給剤(例えば、フロリン酸(frolinic acid));アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド(aldophosphamide glycoside);アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デホファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジコン;エルフォルミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate);エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);メイタンシノイド(maytansinoids)(例えば、メイタンシンおよびアンサミトシン(ansamitocins));ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン(losoxantrone);ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK多糖複合体;ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクォン(triaziquone);2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;トリコテシン(特に、T-2トキシン、ベラクリンA、ロリジン(roridin)Aおよびアングイジン(anguidine));ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;タキソイド、例えば、パクリタキセルおよびドセタキセルゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;白金配位錯体(例えば、シスプラチン、オキサリプラチンおよびカルボプラチン);ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセロダ(xeloda);イバンドロネート;イリノテカン(例えば、CPT-11);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド(例えば、レチノイン酸);カペシタビン;カルボプラチン、プロカルバジン、プリコマイシン、ゲムシタビエン、ナベルビン、ファルネシル-タンパク質タンスフェラーゼ阻害剤、トランスプラチナ(transplatinum)、ならびに上記のいずれかの薬学的に許容され得る塩、酸または誘導体が挙げられる。
2.放射線療法
【0143】
DNA損傷を引き起こす、広く使用されてきた他の因子としては、γ線、X線および/または腫瘍細胞への放射性同位体の定方向送達として一般的に知られているものが挙げられる。マイクロ波、陽子ビーム照射およびUV照射などの他の形態のDNA損傷因子も企図される。これらの因子のすべてが、DNA、DNAの前駆体、DNAの複製および修復ならびに染色体のアセンブリおよび維持に対して広範囲のダメージをもたらす可能性が最も高い。X線の線量の範囲は、長期間(3~4週間)にわたる50~200レントゲンという1日線量から、2000~6000レントゲンという単回線量までの範囲である。放射性同位体の線量の範囲は、大きく異なり、同位体の半減期、放射される放射線の強度およびタイプ、ならびに腫瘍性細胞による取り込みに依存する。
3.免疫療法
【0144】
当業者は、免疫療法が上記実施形態の方法と併用してまたは併せて使用され得ることを理解する。癌の処置の状況において、免疫治療薬は、通常、癌細胞を標的化し、破壊するために免疫エフェクター細胞および免疫エフェクター分子を使用することに頼る。リツキシマブ(RITUXAN(登録商標))が、そのような例である。免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞の表面上の何らかのマーカーに特異的な抗体であり得る。その抗体は、単独で治療のエフェクターとして機能し得るか、または他の細胞をリクルートして、実際に細胞殺滅に影響し得る。その抗体はまた、薬物またはトキシン(化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)に結合体化され得、標的化剤として役立ち得る。あるいは、そのエフェクターは、腫瘍細胞標的と直接または間接的に相互作用する表面分子を有するリンパ球であり得る。様々なエフェクター細胞には、細胞傷害性T細胞およびNK細胞が含まれる。
【0145】
抗体-薬物結合体(ADC)は、殺細胞薬に共有結合的に連結された、併用療法において使用され得るモノクローナル抗体(MAb)を含む。このアプローチは、抗原標的に対するMAbの高い特異性を非常に強力な細胞傷害性薬物と組み合わせることから、豊富なレベルの抗原を有する腫瘍細胞にペイロード(薬物)を送達する「武装した」MAbをもたらす。また、薬物の標的化送達は、正常組織への曝露を最小限に抑えることから、毒性の低減および治療指数の改善をもたらす。例示的なADC薬物としては、ADCETRIS(登録商標)(ブレンツキシマブベドチン)およびKADCYLA(登録商標)(トラスツズマブエムタンシンまたはT-DM1)が挙げられる。
【0146】
免疫療法の1つの態様において、腫瘍細胞は、標的化の影響を受けやすい何らかのマーカー、すなわち、他の大部分の細胞上に存在しない何らかのマーカーを有さなければならない。多くの腫瘍マーカーが存在し、これらのいずれかが、本実施形態の状況において標的化に好適であり得る。一般的な腫瘍マーカーとしては、CD20、癌胎児抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG-72、HMFG、Sialyl Lewis抗原、MucA、MucB、PLAP、ラミニンレセプター、erb B、erb b2およびp155が挙げられる。免疫療法の代替の態様は、抗癌効果と免疫刺激効果とを組み合わせることである。IL-2、IL-4、IL-12、GM-CSF、ガンマ-IFNなどのサイトカイン、MIP-1、MCP-1、IL-8などのケモカイン、およびFLT3リガンドなどの成長因子をはじめとした免疫刺激分子も存在する。
【0147】
免疫療法の例としては、免疫アジュバント、例えば、Mycobacterium bovis、Plasmodium falciparum、ジニトロクロロベンゼンおよび芳香族化合物);サイトカイン療法、例えば、インターフェロンα、βおよびγ、IL-1、GM-CSFならびにTNF;遺伝子治療、例えば、TNF、IL-1、IL-2およびp53;ならびにモノクローナル抗体、例えば、抗CD20、抗ガングリオシド GM2および抗p185が挙げられる。1つ以上の抗癌療法が、本明細書中に記載される抗体療法とともに使用され得ることが企図される。
【0148】
いくつかの実施形態において、免疫療法は、免疫チェックポイント阻害剤であり得る。免疫チェックポイントは、シグナル(例えば、共刺激分子)を強めるかまたはシグナルを弱めるかのいずれかである。免疫チェックポイントの遮断によって標的化され得る阻害性免疫チェックポイントとしては、アデノシンA2Aレセプター(A2AR)、B7-H3(CD276としても知られる)、BおよびTリンパ球アテニュエーター(BTLA)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CD152としても知られるCTLA-4)、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、キラー細胞免疫グロブリン(KIR)、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG3)、プログラム死1(PD-1)、T細胞免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン3(TIM-3)、ならびにT細胞活性化のV-ドメインIgサプレッサー(VISTA)が挙げられる。特に、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1軸および/またはCTLA-4を標的化する。
【0149】
免疫チェックポイント阻害剤は、小分子、組換え型のリガンドまたはレセプターなどの薬物であり得るか、または特に、ヒト抗体などの抗体である。免疫チェックポイントタンパク質またはそのアナログの公知の阻害剤が、使用され得、特に、キメラ化型、ヒト化型またはヒト型の抗体が使用され得る。当業者が承知しているように、代替のおよび/または等価な名称が、本開示において述べられるある特定の抗体に対して使用され得る。そのような代替のおよび/または等価な名称は、本開示の文脈において相互交換可能である。例えば、ランブロリズマブが、代替のおよび等価な名称であるMK-3475およびペンブロリズマブとしても知られていることが知られている。
【0150】
いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1がそのリガンド結合パートナーに結合するのを阻害する分子である。具体的な態様において、PD-1リガンド結合パートナーは、PDL1および/またはPDL2である。別の実施形態において、PDL1結合アンタゴニストは、PDL1がその結合パートナーに結合するのを阻害する分子である。具体的な態様において、PDL1結合パートナーは、PD-1および/またはB7-1である。別の実施形態において、PDL2結合アンタゴニストは、PDL2がその結合パートナーに結合するのを阻害する分子である。具体的な態様において、PDL2結合パートナーは、PD-1である。アンタゴニストは、抗体、その抗原結合フラグメント、イムノアドヘシン、融合タンパク質またはオリゴペプチドであり得る。
【0151】
いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体)である。いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、ニボルマブ、ペンブロリズマブおよびCT-011からなる群より選択される。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、イムノアドヘシン(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)に融合されたPDL1またはPDL2の細胞外の部分またはPD-1結合部分を含むイムノアドヘシン)である。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、AMP-224である。MDX-1106-04、MDX-1106、ONO-4538、BMS-936558およびOPDIVO(登録商標)としても知られるニボルマブが、使用され得る抗PD-1抗体である。MK-3475、Merck3475、ランブロリズマブ、KEYTRUDA(登録商標)およびSCH-900475としても知られるペンブロリズマブが、例示的な抗PD-1抗体である。hBATまたはhBAT-1としても知られるCT-011も、抗PD-1抗体である。B7-DCIgとしても知られるAMP-224は、PDL2-Fc融合可溶性レセプターである。
【0152】
本明細書中に提供される方法において標的化され得る別の免疫チェックポイントは、CD152としても知られる細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)である。ヒトCTLA-4の完全cDNA配列は、Genbankアクセッション番号L15006を有する。CTLA-4は、T細胞の表面上に見られ、抗原提示細胞の表面上のCD80またはCD86に結合したとき「切」スイッチとして作用する。CTLA4は、ヘルパーT細胞の表面上に発現される免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであり、T細胞に阻害シグナルを伝達する。CTLA4は、T細胞共刺激タンパク質であるCD28に似ており、両分子は、抗原提示細胞上のCD80およびCD86(それぞれB7-1およびB7-2とも呼ばれる)に結合する。CTLA4は、T細胞に阻害シグナルを伝達するのに対して、CD28は、刺激シグナルを伝達する。細胞内CTLA4は、制御性T細胞にも見られ、それらの細胞の機能にとって重要であり得る。T細胞レセプターおよびCD28を介したT細胞の活性化により、B7分子に対する阻害性レセプターであるCTLA-4が高発現される。
【0153】
いくつかの実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、抗CTLA-4抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体)、それらの抗原結合フラグメント、イムノアドヘシン、融合タンパク質またはオリゴペプチドである。
【0154】
本方法における使用に適した抗ヒトCTLA-4抗体(またはそれ由来のVHおよび/もしくはVLドメイン)は、当該分野で周知の方法を用いて作製され得る。あるいは、当該分野で認められている抗CTLA-4抗体を使用することができる。例示的な抗CTLA-4抗体は、イピリムマブ(10D1、MDX-010、MDX-101およびYervoy(登録商標)としても知られる)またはその抗原結合フラグメントおよびバリアントである。他の実施形態において、その抗体は、イピリムマブの重鎖CDRおよび軽鎖CDRまたは重鎖VRおよび軽鎖VRを含む。したがって、1つの実施形態において、その抗体は、イピリムマブのVH領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインならびにイピリムマブのVL領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の実施形態において、その抗体は、CTLA-4上の、上述の抗体と同じエピトープへの結合が競合し、かつ/またはCTLA-4上の、上述の抗体と同じエピトープに結合する。別の実施形態において、その抗体は、上述の抗体に対して少なくとも約90%の可変領域アミノ酸配列同一性(例えば、イピリムマブと少なくとも約90%、95%または99%の可変領域同一性)を有する。
4.手術
【0155】
癌を有する人のおよそ60%が、予防的手術、診断的手術または進行度診断手術、根治的手術および緩和手術をはじめとした何らかのタイプの手術を受ける。根治的手術には、癌性組織の全部または一部を物理的に除去、切除および/または破壊する摘出術が含まれ、他の治療(例えば、本実施形態の処置、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子治療、免疫療法および/または代替療法)と併せて使用され得る。腫瘍摘出術とは、腫瘍の少なくとも一部を物理的に除去することを指す。手術による処置には、腫瘍摘出術に加えて、レーザー手術、凍結手術、電気手術および顕微鏡下手術(モース術)が含まれる。
【0156】
癌性細胞、組織または腫瘍の一部または全部を切除する際、身体に空洞が形成され得る。処置は、さらなる抗癌療法によるその領域の灌流、直接注射または局所適用によって達成され得る。そのような処置は、例えば、1、2、3、4、5、6もしくは7日ごとに、または1、2、3、4および5週間ごとに、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12ヶ月ごとに、反復され得る。これらの処置は、様々な投与量でもあり得る。
5.他の作用物質
【0157】
処置の治療効果を改善するために、本実施形態のある特定の態様と組み合わせて他の作用物質が使用され得ることが企図される。これらのさらなる作用物質としては、細胞表面レセプターおよびギャップ結合のアップレギュレーションに影響する作用物質、細胞分裂抑制剤および分化剤、細胞接着の阻害剤、アポトーシス誘導物質に対する過剰増殖細胞の感度を高める作用物質、または他の生物学的作用物質が挙げられる。ギャップ結合数を増加させることによる細胞間のシグナル伝達の増加は、隣接する過剰増殖細胞集団に対する抗過剰増殖効果を高め得る。他の実施形態では、処置の抗過剰増殖の有効性を改善するために、本実施形態のある特定の態様と組み合わせて細胞分裂抑制剤または分化剤が使用され得る。本実施形態の有効性を改善するために、細胞接着の阻害剤が企図される。細胞接着阻害剤の例は、接着斑キナーゼ(FAK)阻害剤およびロバスタチンである。
V.製品またはキット
【0158】
免疫細胞を含む製品またはキットも本明細書中に提供される。その製品またはキットは、個体の癌を処置するためもしくは癌の進行を遅延させるためにまたは癌を有する個体の免疫機能を高めるために免疫細胞を使用するための指示を含む添付文書をさらに含み得る。本明細書中に記載される抗原特異的免疫細胞のいずれかが、その製品またはキットに含められ得る。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、バッグおよびシリンジが挙げられる。その容器は、ガラス、プラスチック(例えば、ポリ塩化ビニルまたはポリオレフィン)または金属合金(例えば、ステンレス鋼またはハステロイ)などの種々の材料から形成され得る。いくつかの実施形態において、その容器は、製剤およびラベルを保持し、そのラベルは、容器に付着しているかまたは関連付けられており、その容器には、使用法が示されている場合がある。その製品またはキットは、商業的な観点およびユーザーの観点から望ましい他の材料をさらに含むことがあり、それらの材料としては、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、および使用するための指示を含む添付文書が挙げられる。いくつかの実施形態において、その製品は、1つ以上の別の作用物質(例えば、化学療法剤および抗悪性腫瘍剤)をさらに含む。その1つ以上の作用物質に適した容器としては、例えば、ボトル、バイアル、バッグおよびシリンジが挙げられる。
VI.実施例
【実施例
【0159】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含められる。以下の実施例に開示される手法は、本発明の実施において十分に機能すると本発明者が発見した手法であり、ゆえにその実施にとって好ましい形式であると考えることができることが当業者によって認識されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示に鑑みて、開示される具体的な実施形態において多くの変更を行うことができ、それらの変更は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、なおも同様または類似の結果をもたらすと認識するはずである。
実施例1-CD79b抗体およびCARの開発
【0160】
CD79bの発現は、B細胞系統に限定される:リアルタイムPCRを用いて、CD79bが、Mino、Daudi、HBC-1、Jeko、SUDHL6、SUDHL4およびU2932を含む広範囲のB細胞リンパ腫細胞株において発現されるが、JurkatおよびJ76T細胞リンパ腫/白血病細胞株では発現されないことが見出された(図1A)。CD79bが正常組織上で発現されているかを判定するために、20種の正常ヒト組織全RNAを含むFirstChoice Human Total RNA Survey PanelをApplied Biosystemsから入手した。ヒト扁桃サンプル由来の精製されたB細胞およびT細胞から全RNAを抽出し、それらをそれぞれポジティブコントロールおよびネガティブコントロールとして使用した。CD79b転写物は、脾臓およびリンパ節などのリンパ系組織だけに存在し、すべての非リンパ系の正常組織には存在しないことが見出された(図1B)。
【0161】
公的に入手可能な遺伝子発現データセット(Oncomine)を用いて、CD79bが、ALLおよび慢性リンパ性白血病(図1C)および複数のB細胞リンパ腫サブタイプ(例えば、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫およびマントル細胞リンパ腫)(図1D)において高度に発現されることが見出された。各腫瘍タイプに対するサンプル数は、括弧内に示されている。
【0162】
ヒトCD79bに対する複数のモノクローナル抗体の作製ならびに抗体の重鎖配列および軽鎖配列の特定:ヒトCD79bを発現するマウス線維芽細胞L細胞でマウスを免疫することによって、抗ヒトCD79bモノクローナル抗体をハイブリドーマ技術によって作製した(図2A)。ELISAによって、組換えヒトCD79bタンパク質に対する結合能が高い3つのクローンを特定した(図2B)。これらの3つのモノクローナル抗体の親和性を、Octet Assayによってさらに測定し、1.44、17.8および2.0nMというKd値をそれぞれ有する3つのクローン、14(IgG1)、16A(IgG2)および45(IgG2)を、さらなる開発のために選択した(図2C)。モノクローナル抗体クローン#14を蛍光色素に結合体化したところ、BD Biosciencesから市販されている抗CD79b抗体に匹敵するB細胞リンパ腫細胞株の染色を示した(図2D)。上記モノクローナル抗体のハイブリドーマの全RNAを抽出し、cDNAを合成した。5’-RACE PCR(cDNA末端の迅速増幅)を用いて、重鎖および軽鎖のV遺伝子をクローニングした。DNA配列によってタンパク質配列を予測した。ハイブリドーマの培養上清を精製し、MD Anderson Proteomics Core Facilityの質量分析によって重鎖および軽鎖のタンパク質配列を確認した。
【0163】
抗CD79b CAR T細胞の作製:可変領域の一本鎖フラグメント(scFv)の特異的配列を使用して、抗CD79b CARの構築物をいくつか作製した。形質導入されたT細胞においてCAR発現を検出するために、CAR-高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)融合構築物または切断型のヒト上皮成長因子レセプター(huEGFRt)を使用した(図3A)。後者は、重篤な毒性が起こった場合にCAR T細胞を除去するための安全スイッチとしても働き得る。T細胞の活性化に対するシグナル1を提供するためにCD3-ゼータ(CD3z)鎖を組み込み、シグナル2を提供するために共刺激ドメインであるCD28または4-1BBを組み込んだ(図3A)。
【0164】
これらの構築物をレンチウイルスベクターpHR_SFFVにクローニングし、次いでそれを用いて、初代健康ドナーT細胞に形質導入した。クローン45-CD79b-CD28-CARを用いてCD4およびCD8T細胞におけるeGFP発現によって測定される代表的な形質導入効率(>70%)が図3Bに示されている。抗CD19-CAR T細胞をコントロールとして使用した。
【0165】
CellTrace Far Redで標識されたDaudi細胞に対するCAR T細胞の細胞傷害活性を、記載のエフェクター:標的(E:T)比での16時間のフローサイトメトリーアッセイにおけるAqua染色によって測定した(図3C)。20:1というE:T比での様々な培養条件に対する、死細胞率を伴う代表的なドットプロット(右上の四半分)が図3Dに示されている。データは、抗CD19-CAR T細胞と抗CD79b-CAR T細胞の両方が、形質導入されていないコントロールT細胞と比べてDaudiバーキットリンパ腫細胞に対して高度に細胞傷害性であったことを示している。
【0166】
抗CD79b CAR T細胞は、CD19 リンパ腫細胞とCD19 リンパ腫細胞の両方に対して細胞傷害性である:CD19陰性(CD19)リンパ腫細胞に対する抗CD79b CAR T細胞の有効性を測定するために、脱顆粒および細胞傷害性アッセイを、CD19を欠くびまん性大細胞型B細胞リンパ腫細胞株であるSUDHL6を用いて行った。まず、CRISPR-Cas9によってCD19をノックアウトし(CD19KOSUDHL6)、次いで、これらのリンパ腫細胞に、抗CD19 CAR構築物において使用される抗CD19抗体クローンFMC63に対する結合部位であるエキソン2を欠くCD19スプライスバリアント(CD19Dex2)を形質導入した。
【0167】
形質導入されていない初代T細胞(コントロールT)、クローン-14-CD79b-CD28 CAR、14-CD79b-4-1BB CARおよびFMC63-CD19-CD28 CARを、Daudi細胞または上記のSUDHL6細胞(CD19KOSUDHL6-CD19Dex2)と5:1のE:T比で共培養した。T細胞をCellTrace Far Redで標識し、標的細胞をCellTrace Violetで標識した。2時間後、ゴルジ阻害剤および脱顆粒マーカー(CD107a/b)を培養物に加えて、T細胞の脱顆粒を測定した。腫瘍細胞に対する細胞傷害活性を共培養の4日後に測定した。14-CD79b-CD28および14-CD79b-4-1BB CAR T細胞は、著しく高い脱顆粒および両方の細胞株に対して細胞傷害活性を示したが、コントロールT細胞は示さなかった(図4Aおよび図4B)。対照的に、FMC63-CD19-CD28 CARは、CD19Daudiに対して細胞傷害性であったが、CD19KOSUDHL6-CD19Dex2腫瘍細胞に対しては細胞傷害性でなかった。
【0168】
4日間の共培養の後に、フローサイトメトリー用のCountBright Absolute Counting Beadsを使用して、生細胞の腫瘍細胞の絶対数も測定した(図4C)。その結果は、生細胞の腫瘍細胞の観察されたパーセンテージと一致した(図4B)。標的細胞およびエフェクターT細胞の代表的なドットプロットが示されている(図4Aおよび図4B)。これらの実験を少なくとも3回繰り返し、類似の結果が得られた。
【0169】
抗CD79b CAR T細胞は、リンパ腫異種移植片に対してインビボ有効性を示す:インビボにおける抗CD79b CAR T細胞の有効性を試験するために、ホタルルシフェラーゼ遺伝子を発現しているMinoマントル細胞リンパ腫細胞株をNSGマウスに2×10腫瘍細胞/マウスでIV注射した。18日後、マウスを、形質導入されていない初代T細胞、抗CD19-CD28 CAR T細胞またはクローン45抗CD79b-CD28 CAR T細胞で、10×10個のCART細胞または形質導入されていないT細胞/マウスで尾静脈注射によって処置した。生物発光イメージングを用いて、腫瘍量を評価した(図5A)。その結果は、形質導入されていないT細胞で処置されたマウスにおいて進行性の腫瘍成長を示した。対照的に、良好な腫瘍制御および生存時間の著しい改善(p<0.05)が、抗CD19-と抗CD79b CAR T細胞の両方で処置されたマウスにおいて観察された(図5Bおよび図5C)。インビトロの結果は、各個別の実験に対して少なくとも3回検証し、インビボの結果は2回検証した。したがって、抗CD79b CAR療法は、CD19を発現しているまたは発現していないB細胞悪性腫瘍の処置のために使用することができる。
【0170】
本明細書中に開示および特許請求される方法のすべてが、本開示に鑑みて、過度の実験を行うことなく実施および実行され得る。本発明の組成物および方法を好ましい実施形態の点から説明してきたが、本発明の概念、趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書中に記載された方法および方法の工程または工程の順序に変更が適用されてもよいことが当業者には明らかだろう。より詳細には、同じまたは類似の結果が達成される限り、化学的かつ生理的に関係するある特定の作用物質を本明細書中に記載される作用物質の代わりに用いてもよいことが明らかだろう。当業者に明らかなそのような類似の代替物および改変のすべてが、添付の請求項によって定義される本発明の趣旨、範囲および概念の範囲内であるとみなされる。
文献
以下の参考文献は、それらが本明細書に記載されたものを補足する例示的な手順または他の詳細を提供する範囲で、参照により本明細書に具体的に組み込まれる。
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図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
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図5C
【配列表】
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