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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】覚醒レベルを決定するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/16 20060101AFI20240903BHJP
【FI】
A61B5/16 130
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021534639
(86)(22)【出願日】2019-12-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 EP2019084532
(87)【国際公開番号】W WO2020126710
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】18213285.2
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】デスペニック,マリヤ
(72)【発明者】
【氏名】フォンセカ,ペドロ
(72)【発明者】
【氏名】オベール,グザヴィエ ルイ マリー アントワーヌ
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0238868(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0296332(US,A1)
【文献】特表2018-505759(JP,A)
【文献】米国特許第05433223(US,A)
【文献】特表2016-506410(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0132946(US,A1)
【文献】国際公開第2016/067028(WO,A2)
【文献】INGRE, M., rt al.,Validating and extending the three process model of alertness in airline operations,PLoS One,2014年10月20日,Vol.9, No.10,e108679,<DOI: 10.1371/journal.pone.0108679>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/16-5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の覚醒レベルを決定するシステムであって、
前記被検体の睡眠状態と覚醒状態とを区別する生理学的センサ信号を生理学的センサから受信する入力と、
コントローラであり、前記生理学的センサ信号から、
睡眠セッションを特定し、それらに関連する入眠時刻、起床時刻、及び該入眠時刻と該起床時刻との間の中間点である睡眠中央時刻を導出し、
24時間周期での複数の睡眠セッションから単一の代表的な睡眠中央時刻を導出し、
前記単一の代表的な睡眠中央時刻を用いて概日フェーズを推定し、
眠気予測のための覚醒の3プロセスモデルを用いて前記概日フェーズから覚醒レベルを決定し、それにより前記推定した概日フェーズに基づいて前記眠気予測をパーソナライズする、
ように適応されたコントローラと、
を有するシステム。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記複数の睡眠セッションの睡眠中央時刻をそれぞれの睡眠セッションの持続時間に従って重み付けた加重平均に基づいて、前記単一の代表的な睡眠中央時刻を導出する、
ように適応されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コントローラは、
特定の日の前記概日フェーズを、その日の睡眠中央時刻と翌日の睡眠中央時刻とに基づいて決定する、
ように適応されている、請求項1乃至2のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項4】
前記コントローラは、ある日の概日周期のピークを、その日の睡眠中央時刻に、その日の睡眠中央時刻と翌日の睡眠中央時刻との間の時間差の半分を加えたもの、として決定するように適応されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記コントローラは、
特定の日の概日周期のピークを、12時間だけ前にシフトさせたその日の睡眠中央時刻に基づいて決定する、
ように適応されている、請求項1乃至2のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記コントローラは、前記3プロセスモデルに使用される定数を調整することによって前記被検体の年齢を更に考慮に入れて前記概日フェーズを決定するように適応されている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記コントローラは、前記生理学的センサの一部として実装され、又は
前記コントローラは、ウェアラブルな前記生理学的センサが通信するリモート装置内に少なくとも部分的に実装される、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
当該システムは更に前記生理学的センサを有し、前記生理学的センサはプレチスモグラフィセンサ及び/又は加速度センサを有する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
被検体の覚醒レベルを決定する方法であって、
被検体から、該被検体の睡眠状態と覚醒状態とを区別する生理学的センサ信号を取得し、
睡眠セッションを特定し、それらに関連する入眠時刻、起床時刻、及び該入眠時刻と該起床時刻との間の中間点である睡眠中央時刻を導出し、
24時間周期での複数の睡眠セッションから単一の代表的な睡眠中央時刻を導出し、
前記単一の代表的な睡眠中央時刻を用いて概日フェーズを推定し、
眠気予測のための覚醒の3プロセスモデルを用いて前記概日フェーズから覚醒レベルを決定し、それにより前記推定した概日フェーズに基づいて前記眠気予測をパーソナライズする、
ことを有する方法。
【請求項10】
前記複数の睡眠セッションの睡眠中央時刻の、それぞれの睡眠セッションの持続時間に従った重み付けを用いた加重平均に基づいて、前記単一の代表的な睡眠中央時刻を導出する、
ことを有する請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ある日の概日周期のピークを、その日の睡眠中央時刻に、その日の睡眠中央時刻と翌日の睡眠中央時刻との間の時間差の半分を加えたもの、として決定すること、又は
特定の日の概日周期のピークを、12時間だけ前にシフトさせたその日の睡眠中央時刻に基づいて決定すること、
を有する請求項9乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
コンピュータプログラムコードを有するコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムコードは、当該コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるときに、請求項9乃至11のいずれか一項に記載の方法を実行するように適応されている、コンピュータプログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のコンピュータプログラムを格納したプロセッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過去情報の分析のため又は将来予測のために覚醒レベルを決定するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人間は、注意を怠らないときに、より良好なパフォーマンスを発揮することができる。人間は、眠たいときに、生命を脅かし得る間違いを起こしやすくなる。眠気は、睡眠負債及び一日のうちの時間など、様々な要因によって引き起こされ得る。眠気を事前に予測することができるならば、例えば、個人が過度に眠くなることが予測される期間の前又は間に、仕事をスケジュール化したり是正措置をとったり(例えば、休憩をとったり)することによって、その影響を最小限に抑えたり防いだりすることができる。
【0003】
例えば、T.Akerstedt及びS.Folkard,“The three-process model of alertness and its extension to performance,sleep latency,and sleep length”,Chronobiology international,vol.14,no.2,pp.115-123,1997(非特許文献1)に開示されるように、覚醒の3プロセスモデルが眠気予測に関して知られている。それは、M.Ingre,W.V.Leeuwen,T.Klemets,C.Ullvetter,S.Hough,G.Kecklund,D.Karlsson及びT.Akerstedt,“Validating and extending the three process model of alertness in airline operations”,PLoS One,vol.9,no.10,2014(非特許文献2)にて更に論じられている。
【0004】
このモデルは、3つの主要な成分を考慮に入れる。第1の成分は、覚醒における日内変動を表す概日(サーカディアン)プロセス(C)である。第2の成分は、目が覚めている時間に伴う覚醒の低下と睡っている時間に伴うその回復とを記述する恒常性(ホメオスタティック)プロセスである(S)。第3の成分は、起床後に覚醒が再開する前の遅延を記述する睡眠慣性プロセス(W)である。
【0005】
概日成分の他に、一日のうちの時間に関係し、それによって影響を受ける超日成分(U)も存在する。この成分は、午後の注意力低下をシミュレートするために、元々の3プロセスモデルに追加される。一般的な仮定は、この注意力低下は、覚醒における12時間成分の存在に起因するというものである。概日成分(C)及び超日成分(U)はどちらも、その計算に概日リズムフェーズを使用する。
【0006】
覚醒のこの既知の3プロセスモデルでは、集団平均を表す概日リズムフェーズのデフォルト値が用いられる。概日プロセスCのフェーズ、特にアクロフェーズは、例えば、小数時間で16.8というデフォルト値に設定される。元々の3プロセスモデルは朝の07:45という起床時刻に基づいていた。プロセスCのアクロフェーズは、起床後ほぼ正確に9時間後である小数時間で16.8(16時48分、16:48)に生じると仮定されていた。
【0007】
このアプローチに伴う1つの問題点は、このアプローチは人々が規則正しい睡眠スケジュールを持つと仮定するものであるが、それは交代勤務労働者又は睡眠障害のある人々には当てはまらないということである。被検体の実際の概日リズムフェーズを考慮に入れることができること望ましいが、それは一般に煩わしいプロセスであり、さもなければ不正確なものである。
【0008】
US2017/0238868(特許文献1)は、概日リズムに基づく注意力予測モデルを開示している。そのモデルは、睡眠中央時刻を含む様々なパラメータを使用する。
【0009】
US2017/0132946は、睡眠の持続時間に基づいて概日リズムを測定するための別のシステムを開示している。
【0010】
特に実際の概日リズムを考慮に入れて、被検体の覚醒レベルを決定及び予測するための信頼性があって邪魔にならない手法が依然として望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許出願公開第2017/0238868号明細書
【文献】米国特許出願公開第2017/0132946号明細書
【非特許文献】
【0012】
【文献】T.Akerstedt及びS.Folkard,“The three-process model of alertness and its extension to performance,sleep latency,and sleep length”,Chronobiology international,vol.14,no.2,pp.115-123,1997
【文献】M.Ingre,W.V.Leeuwen,T.Klemets,C.Ullvetter,S.Hough,G.Kecklund,D.Karlsson及びT.Akerstedt,“Validating and extending the three process model of alertness in airline operations”,PLoS One,vol.9,no.10,2014
【発明の概要】
【0013】
本発明は、請求項によって規定される。
【0014】
本発明の一態様に従った例によれば、被検体の覚醒レベルを決定するシステムが提供され、当該システムは、
被検体の睡眠状態と覚醒状態とを区別する生理学的センサ信号を生理学的センサからの受信する入力と、
コントローラであり、生理学的センサ信号から、
睡眠セッションを特定し、それらに関連する入眠時刻、起床時刻、及び該入眠時刻と該起床時刻との間の中間点である睡眠中央(ミッドスリープ)時刻を導出し、
24時間周期での複数の睡眠セッションから単一の代表的な睡眠中央時刻を導出し、
単一の代表的な睡眠中央時刻を用いて概日フェーズを推定し、
概日フェーズから覚醒レベルを決定する、
ように適応されたコントローラと、
を有する。
【0015】
概日フェーズは、特定の概日マーカーが発生する時間に関して定められる。マーカーは、中核体温(Core-Body Temperature;CBT)最低又は薄明下メラトニン分泌開始(Dim-Light Melatonin secretion Onset;DLMO)とすることができる。通常、昼行性の生活様式を持った、規則的に概日リズムに合った人では、CBTは主睡眠エピソードの真ん中付近又はそれより少しだけ遅れて起こり、DLMOは21:00又は22:00付近の早めの晩に起こる。概日フェーズは、現在ローカル時間と選択されたマーカーの時間との間の時間間隔として表され得る。例えば、CBT最低の4時間後に起床する、又はDLMOマーカーの2時間後に眠りにつくなどである。従って、概日フェーズは、生理学的マーカーに対する概日周期のタイミング、すなわち、マーカーに対する例えば最大値などの周期内の特定の時点、を特徴付ける特定の期間を指す。この情報から、完全な周期的概日リズムのタイミングが取得又は導出され得る。用語“概日フェーズ”はこれに従って理解されるべきである。
【0016】
このシステムは、覚醒レベルを決定する際にデフォルトの概日フェーズを使用する必要を回避する。その代わりに、デフォルト値が、概日リズムフェーズを推定することに基づいて自動的に更新される実際の概日フェーズ(特に、ピークのタイミング)の推定で置き換えられる。集団全体で概日成分を算出するときの概日フェーズの平均値を表す値を使用することに代えて、覚醒レベルの決定をパーソナライズすることができる。このように、個人の睡眠セッション時間を使用することは、概日リズムフェーズに関する集団平均を単純に使用するソリューションとは対照的に、概日フェーズ推定の個人化を可能にする。
【0017】
個人の概日リズムフェーズの推定値における揺れ動きの検出はまた、概日障害の存在を判定する際にも有用となり得る。
【0018】
当該システムはまた、例えば交代勤務労働者又は睡眠障害のある人などの不規則な睡眠パターンを持つ個人に対して眠気をより正確に推定することができる。単一の代表的な睡眠中央時刻は、複数の睡眠セッション、すなわち、うたた寝又は浅い眠りの期間も考慮に入れることができる。
【0019】
当該システムは、センサを備えたウェアラブル装置として実装され得る。例えば、センサは、プレチスモグラフィ(PPG)センサ及び/又は加速度センサを有し得る。これは、煩わしくない上に事実に基づくソリューションを提供する。狙いは、煩わしくないモニタリングを可能にすることであるが、他のセンサモダリティ(例えば、EEGなど)も使用され得る。
【0020】
斯くして、身体運動(加速度計から)のアクチグラフィ分析に基づいて、又は好ましくは、身体運動とPPG信号から測定される自律(心臓及び呼吸)活動との組み合わせから、睡眠持続時間が自動的に推定され得る。睡眠状態及び覚醒状態、ひいては、睡眠持続時間の推定における高められた精度の結果として、例えば睡眠日誌などの手作業での注釈付けの限界が克服される。
【0021】
このソリューションはウェアラブル装置に基づくとともに、現場での身体検査、睡眠検査セッション、臨床検査を必要としないので、自由生活条件に適している。
【0022】
当該システムはまた、連続した24時間の期間のモニタリングを可能にし、これは、さもなければ考慮されない昼寝の期間を明らかにすることができ;昼寝の存在、頻度及び持続時間が、概日障害を含む様々な睡眠障害の示唆となり得る。既存のソリューションは、代わりに、個人がモニタリング期間中に単一の主睡眠セッションを持つと仮定している。
【0023】
コントローラは、
睡眠セッションそれぞれの睡眠中央時刻を導出し、
複数の睡眠セッションの睡眠中央時刻の加重平均に基づいて、単一の代表的な睡眠中央時刻を導出する、
ように適応され得る。
【0024】
この加重平均は、例えば、それぞれの睡眠セッションの持続時間に従って重み付けられる。斯くして、より長い睡眠セッションが、より短いうたた寝よりも、睡眠中央時刻の決定に対していっそう大きい影響を持つ。
【0025】
コントローラは、
特定の日の概日フェーズを、その日の睡眠中央時刻と翌日の睡眠中央時刻とに基づいて決定する、
ように適応されてもよい。
【0026】
これは、過去情報の分析が行われる場合に可能である。例えば、コントローラは、ある日の概日周期のピークを、その日(すなわち、前夜)の睡眠中央時刻に、その日の睡眠中央時刻と翌日の睡眠中央時刻との間の時間差の半分を加えたもの、として決定するように適応され得る。そして、この分析が、概日周期の将来予測の基礎として使用され得る。
【0027】
コントローラは、それに代えて、
特定の日の概日周期のピークを、12時間だけ前にシフトさせたその日の睡眠中央時刻に基づいて決定する、
ように適応されてもよい。
【0028】
これは、1日だけのモニタリングであっても、概日フェーズのリアルタイム決定を可能にする。
【0029】
コントローラは、3プロセスモデルに基づいて概日フェーズから覚醒レベルを決定するように適応され得る。本発明は、概日成分のより正確な決定が可能にされるので、より信頼性の高い結果を3プロセスモデルが提供することを可能にする。
【0030】
コントローラは、被検体の年齢を更に考慮に入れて概日フェーズを決定するように適応されてもよい。
【0031】
当該システムは好ましくは、経時的な覚醒インジケーションを表示するディスプレイを更に有する。これは、ユーザが仕事をスケジュール化したり睡眠中断のタイミングを決めたりするのを支援するために使用され得る。
【0032】
コントローラは、ウェアラブル生理学的センサの一部として実装されてもよいし、あるいは、ウェアラブル生理学的センサが通信するリモート装置内に少なくとも部分的に実装されてもよい。センサは、例えば電話又はタブレットなどのユーザのポータブル装置と(例えば、Bluetooth(登録商標)を介して)通信することができ、そのポータブル装置は、インターネット上で、データ処理ステップの一部又は全部を実行するプロセッシングリソースと通信し得る。
【0033】
本発明はまた、受信した被検体の睡眠状態と覚醒状態とを区別する生理学的センサ信号に基づいて、被検体の覚醒レベルを決定するプロセッシングシステムを提供し、当該プロセッシングシステムは、生理学的センサ信号から、
睡眠セッションを特定し、それらに関連する入眠時刻、起床時刻、及び該入眠時刻と該起床時刻との間の中間点である睡眠中央時刻を導出し、
24時間周期での複数の睡眠セッションから単一の代表的な睡眠中央時刻を導出し、
単一の代表的な睡眠中央時刻を用いて概日フェーズを推定し、
概日フェーズから覚醒レベルを決定する、
ように適応される。
【0034】
これは、センサに対してローカルであってもよいしセンサからリモートであってもよいものであるプロセッサを規定する。
【0035】
本発明はまた、被検体の覚醒レベルを決定する方法を提供し、当該方法は、
被検体から、該被検体の睡眠状態と覚醒状態とを区別する生理学的センサ信号を取得し、
睡眠セッションを特定し、それらに関連する入眠時刻、起床時刻、及び該入眠時刻と該起床時刻との間の中間点である睡眠中央時刻を導出し、
24時間周期での複数の睡眠セッションから単一の代表的な睡眠中央時刻を導出し、
単一の代表的な睡眠中央時刻を用いて概日フェーズを推定し、
概日フェーズから覚醒レベルを決定する、
ことを有する。
【0036】
当該方法は、
睡眠セッションそれぞれの睡眠中央時刻を導出し、
複数の睡眠セッションの睡眠中央時刻の加重平均に基づいて、単一の代表的な睡眠中央時刻を導出する、
ことを有し得る。
【0037】
当該方法は、それぞれの睡眠セッションの持続時間に従った重み付けを用いて加重平均を取得することを有し得る。
【0038】
ある日の概日周期のピークが、その日の睡眠中央時刻に、その日の睡眠中央時刻と翌日の睡眠中央時刻との間の時間差の半分を加えたもの、として決定され得る。
【0039】
それに代えて、特定の日の概日周期のピークが、12時間だけ前にシフトさせたその日の睡眠中央時刻に基づいて決定されてもよい。
【0040】
そして、3プロセスモデルに基づいて、概日フェーズから覚醒レベルが決定され得る。
【0041】
本発明はまた、コンピュータプログラムコードを有するコンピュータプログラムを提供し、コンピュータプログラムコードは、当該コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるときに、上で規定された方法を実行するように適応される。
【0042】
本発明のこれら及びその他の態様が、以下に記載される実施形態を参照して明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
本発明のより十分な理解のために、また、それがどのように実施され得るのかをいっそう明瞭に示すために、以下、単なる例として、以下の図を含む添付図面を参照する。
図1】被検体の覚醒レベルを決定するシステムを示している。
図2】被検体の覚醒レベルを決定する方法を示している。
図3】異なる持続時間の複数の睡眠セッションが単一の代表的な睡眠中央時刻の推定にどのように影響するかの例を示している。
図4】概日リズムフェーズの計算がどのように実行されるかの第1の例をグラフで示している。
図5】概日リズムフェーズの計算がどのように実行されるかの第2の例をグラフで示している。
図6】眠気予測結果の一例を示している。
図7】コントローラを実装するユニットのうちの1つ以上を実装するためのコンピュータの一般的アーキテクチャの一例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図面を参照して本発明を説明する。
【0045】
理解されるべきことには、詳細な説明及び具体例は、装置、システム及び方法の例示的な実施形態を示しているが、説明の目的のみに意図されており、本発明の範囲を限定することは意図していない。本発明の装置、システム及び方法のこれら及び他の特徴、態様、及び利点が、以下の説明、添付の請求項、及び添付の図面からよりよく理解されることになる。理解されるべきことには、図は単に概略的なものであり、縮尺通りに描かれていない。これまた理解されるべきことには、同じ又は同様の部分を指し示すために、複数の図を通して同じ参照符号が使用されている。
【0046】
本発明のアプローチを説明する前に、先ず、決定される眠気に関する既知のアプローチを説明する。
【0047】
上述のように、既知の覚醒の3プロセスモデルは、概日プロセス(C)、恒常性プロセス(S)及び睡眠慣性プロセス(W)を考慮に入れる眠気予測で知られている。
【0048】
この元々の3プロセスモデルのこれらの成分は、括弧内のパラメータのデフォルト値を用いて以下のように計算される。恒常性睡眠成分Sは、覚醒状態の関数としての覚醒の低下と、睡眠中の覚醒の回復とを記述する。覚醒状態の間、睡眠成分Sは:
【数1】
のとおりであり、ここで、Lは、内部覚醒尺度のより低い漸近線である(L=2.4)。パラメータS(S=14)は起床時における成分Sを表し、tawは起床後の時間(小数時間単位)を表す。
【0049】
睡眠中、恒常性プロセスを記述する3つの異なる関数があるが、それらは、眠気を予測する際には考慮されない。このモデルはまた、睡眠慣性プロセスWを含み、これは、起きている時間(taw)の関数:
【数2】
として、指数関数的回復(Wdecay=-1.51)を伴って、起床時の覚醒(Winit=-5.72)を当初低下させる。
【0050】
一日のうちの時間(小数時間単位でのtod)に関係する2つの成分が存在する。プロセスCは、デフォルトの概日フェーズ(p=16.8)及び振幅(M=2.5)を有する24hの周期を持つ:
【数3】
【0051】
プロセスUは、振幅(U=0.5)及びmesor(U=-0.5)を有する12時間の周期を持つ:
【数4】
【0052】
眠気予測のために、これらのモデル成分が足し合わされて、カロリンスカ眠気尺度(Karolinska Sleepiness Scale;KSS)での評定を予測するために使用されることが可能な結合覚醒スコアを作成する。カロリンスカ眠気尺度は、覚醒及び眠気の主観的な自己認識を記述するものであり、以下の定義を有する1から9までの範囲の値を含む:
1:非常にはっきり目覚めている、2:非常に目覚めている、3:目覚めている、4:わりと目覚めている、5:目覚めてもなければ眠たくもない、6:眠たい兆候がある、7:眠たいが、起きているのに努力はいらない、8:眠くて、起きているのに努力がいる、9:非常に眠たく、起きているのに多大な努力がいり、眠さと闘っている。
【0053】
眠気は、1つの定数(a=10.6)と1つの係数(b=-0.6)とを有する線形変換関数:
【数5】
を用いて予測される。
【0054】
概日成分(C)(式1)と超日成分(U)(式2)との、覚醒の3プロセスモデルの2つの成分は、概日リズムフェーズpの推定を使用する。覚醒の元々の3プロセスモデルでは、このパラメータは、小数時間で16.8というデフォルト値を持つ。この値は、交代勤務労働者又は睡眠障害のある人を考慮に入れていない集団での平均値を表すものである。これは、覚醒予測に大きい影響を持ち得る。
【0055】
概日リズムは、およそ24時間の周期性を有する内因性リズムである。これらのリズムは、様々な光刺激及び非光刺激により、社会的スケジュール及び仕事スケジュールによって物理的環境と同期される。概日リズムは、夜と昼の自然な進行に基づく繰り返しパターンを表す。
【0056】
ヒトの生物学的概日時計は、例えば、朝早く起き、正午頃に昼食をとり、23:00に寝る者に関して、24時間周期を通じて以下の典型パターンを与える:
02:00 最も深い睡眠
04:30 最低体温
06:45 最も急な血圧上昇
07:30 メラトニン分泌停止
10:00 最も高い覚醒
14:30 最良の協調(コーディネーション)
15:30 最も速い反応時間
17:00 最大の心血管効率及び筋力
18:30 最高血圧
19:00 最高体温
21:00 メラトニン分泌停止。
【0057】
概日リズムは、生物が正確で規則的な環境変化を予測し、それに備えることを可能にする。環境と協調することにおいてと同様に、内部代謝プロセスを調節して協調させる上で、リズム性が重要であると思われる。
【0058】
内因性の概日制御機構の乱れ、又は体内時計時間と24時間の外部環境との間の不整合はいずれも、睡眠、並びに代謝機能障害、認知障害、心血管系異常、及び生殖器-排尿機能障害を含むヒトの健康の数多くのその他側面における有害な結果を伴う概日リズム障害をもたらし得る。長期的なリズムの乱れは、特に心血管疾患の発展又は増悪において、脳外の末梢器官に重大な健康上の悪影響を及ぼすと考えられる。また、外部環境(例えば、明暗サイクル)との概日時間調節機構の不整合は、代謝障害(例えば、肥満及び糖尿病)の発展の一因となり得る。
【0059】
概日リズム睡眠障害(Circadian Rhythm Sleep Disorders;CRSDs)は、概日時計システムの機能不全に起因する睡眠覚醒障害の慢性的又は頻発的なパターン、又は臨床的に重大な機能障害をもたらす内因性概日リズムのタイミングと外的に課される社会的及び労働サイクルとの間の不整合から生じる。CRSDsは、それらの想定される基礎メカニズムに従って分類されることができる:
1. 内因性概日時計自体が変化した:
1.1 睡眠相後退障害、
1.2 睡眠相前進障害、
1.3 不規則睡眠覚醒リズム、及び
1.4 フリーランニング障害
2. 外部環境及び/又は社会的状況が内因性概日時計に対して変化した:
2.1 時差ぼけ、及び
2.2 交代勤務障害。
【0060】
これらの障害は、一連の24時間周期の過程での異なるパターンの睡眠時間によって特徴付けられる。
【0061】
睡眠相後退障害(DSPD)は、要求される睡眠/覚醒時計時間に対する主睡眠エピソードの安定した遅延が存在する睡眠障害である。この遅延パターンは、日中の機能に障害を伴う不眠及び過度の眠気の慢性症状につながる。
【0062】
睡眠相前進障害(ASPD)は、主睡眠期間の安定した前進が存在する睡眠障害であり、望ましい又は従来の時刻よりも数時間早い習慣的且つ不随意の睡眠開始及び起床時刻によって特徴付けられる。ASPDを患う患者は典型的に、午後遅く又は夕方の眠気、及び朝早い時間に睡眠を保つことの困難さの不満を示す。
【0063】
非24時間睡眠覚醒障害(N24HSWD、以前はフリーラニングリズム障害として知られていた)は、24時間の環境サイクルに安定して同調しない慢性的又は頻発的な睡眠覚醒時間によって特徴付けられる。典型的に、数週間かけての睡眠開始及び起床時刻の予測可能なドリフト(通常、だんだん時間が遅くなる)が存在する。N24HSWDを患う患者は、不眠に似た症状を示し、朝起きることの困難を伴い、日中の過度な眠気を伴い、及び社会的及び職業的義務を果たすことができない。
【0064】
不規則睡眠覚醒リズム障害(ISWRD)は、24時間周期を通して何度も短い睡眠及び覚醒の発作が発生することをもたらす概日睡眠覚醒リズムの一時的な無秩序さによって特徴付けられる。ISWRを患う患者又はその介護者は典型的に、夜間に睡眠を維持することの困難及び日中の過度の眠気という慢性症状を報告する。
【0065】
交代勤務障害(SWD)は、労働時間が習慣的な睡眠時間の間にスケジュールされ、不眠及び日中の過度の眠気に類似した慢性的な症状、及び結果として、従来と違う労働スケジュールと時間的に関連した機能障害につながる。ヒトにおいて、不規則な食事時間を支持する交代勤務は、インスリン感受性の変化及び体重の増加と関連する。交代勤務はまた、心臓-メタボリックシンドローム、高血圧、及び高揚の代謝リスクの増加につながる。SWDの他の症状には、慢性疲労、倦怠感、気分障害、胃腸障害、性欲減退を含む。アルコール及び物質乱用のリスクが高くなり、体重増加、高血圧、心血管疾患、乳がん及び子宮内膜がんのリスクも高くなる。SWDは、医学的併存疾患に加えて、生産性の著しい低下、ヘルスケア利用の増加、個人及び公共の安全に関するリスクの増加と関連する。
【0066】
時差ぼけ障害は、幾つかのタイムゾーンを横切る旅行及びその後の体内概日時計と目的地ローカル時刻とのずれから生じる。時差ぼけに関し、一般的に、当方への旅行に適応することがいっそう難しい。東方への旅行者の場合、目的地での症状は、入眠困難、日中の過度の眠気、及び、特に午前中の、日中のパフォーマンス低下を含む。西方への旅行者の場合、入眠は睡眠維持よりも問題とならず、夜早く眠ること及びパフォーマンス低下が特に厄介である。時差ぼけのその他の一般的な関連症状は、食欲及び消化管機能の変化、全身倦怠感、疲労、気分障害を含む。
【0067】
概日リズムのフェーズのタイミングは、存在するCRSDのインジケータとなり得る。概日リズムのフェーズを知ることは、特定のCRSDの早期検出に役立ち得る。
【0068】
概日リズムのタイミングを測定するための古典的なフェーズマーカーは:
1. 中核体温最低
2. 血漿コルチゾールレベル
3. 松果体からのメラトニン分泌(血漿、唾液、又は尿サンプルから測定)
である。
【0069】
温度調整(体温調節)は、生物を最適動作温度に維持する恒常性維持機構の一部であり、何故なら、それが化学反応の速さに影響を与えるからである。体温は、個人の概日リズムによって制御されるように、1日を通して上下に規則的に循環する。個人の中核体温は、睡眠サイクルの後半に最低値を持つ傾向にあり、底(nadir)と呼ばれるこの最低点は、概日リズムの主要なマーカーの1つである。正常なクロノタイプ(概日のずれ又は障害のない個人)の間でバラつきが大きいが、平均的な成人体温は、習慣的な起床時刻の約2時間前である午前4時又は午前5時ごろに、その最低に達する。
【0070】
コルチゾールは、ヒトの生理学における最も明確な概日リズムの1つである。それは、視床下部の視交叉上核に位置する中枢時計によって調節される。コルチゾールは中枢時計と末梢時計の間の二次メッセンジャーとして作用すること、従って、体の概日リズムの同期におけるその重要性が示唆されている。正常な人は、深夜に非常に低い又は検出不能なコルチゾールレベルを有し、それが夜通し上昇し、朝に最初のピークとなる。コルチゾールレベルはその後、1日を通してゆっくりと低下する。
【0071】
メラトニンは、松果体の松果体細胞で産出されるホルモンである。メラトニンは、概日リズムを調節する助けとなる。それはアミノ酸トリプトファンから自然に合成される。松果体によるメラトニンの産出は、日常の明暗パターンに関する情報を網膜から受け取る視床下部の視交叉上核(SCN)の影響下にある。人体は、明かりが薄暗いとして就寝の2時間前から自身のメラトニンを産出し始める。この自然な作用は、薄明下メラトニン開始(Dim-Light Melatonin Onset;DLMO)として知られており、規則的な睡眠覚醒パターンに身体を保つ助けとなる。血漿又は唾液で測定される、薄明でのメラトニン分泌の開始時間は、概日リズムのフェーズのマーカーとして頻繁に使用されている。正常な人の場合、1日の様々な時間のメラトニン分泌量は24時間サイクルをたどる。メラトニンの分泌は真夜中にピークとなり、夜の後半の間に徐々に低下する。DLMOは、フェーズ時間及び概日リズム障害の存在を測定するための“ゴールドスタンダード”として利用可能な最良の検査と考えられる。DLMO検査を行うことは、ヒトの体内時計の乱れを発見及び理解するのに非常に役立つ。より重要なことには、DLMOは睡眠の中間点(睡眠中央時刻)と有意な相関を有し、それ故に、概日リズムのフェーズを推定するために使用されることができる。
【0072】
DLMOSと睡眠タイミング(開始、中間点、及び起床時刻)との間の関係は:
S.K.Martin及びC.I.Eastman,“Sleep logs of young adults with self-selected sleep times predict the dim light melatonin onset”,Chronobiology International,vol.19,no.4,pp.695-707,2002;
S.J.Crowley,C.Acebo,G.Fallone及びM.A.Carskadon,“Estimating Dim Light Melatonin Onset (DLMO) Phase in Adolescents Using Summer or School-Year Sleep/Wake Schedules”,Sleep,vol.29,no.12,pp.1632-1641,2006;及び
J.Terman,M.Terman,E.Lo及びT.Cooper,“Circadian time of morning light administration and therapeutic response in winter depression”,Arch Gen Psychiatry,vol.58,pp.69-75,2001
にて論じられている。
【0073】
覚醒の既知の3プロセスモデルでは、集団平均を表す概日リズムフェーズのデフォルト値が用いられる。概日プロセスCのフェーズ、例えば、小数時間で16.8というデフォルト値に設定される。
【0074】
上述のように、このアプローチに伴う1つの問題点は、これは人々が規則正しい睡眠スケジュールを持つと仮定するものであるが、それは交代勤務労働者又は睡眠障害のある人々には当てはまらないということである。被検体の実際の概日リズムフェーズを考慮に入れることができること望ましい。
【0075】
概日リズムフェーズの推定のための現行方法は、複数の異なる分析を含む。直腸温検査は、中核体温を推定するために用いられる伝統的なゴールドスタンダード測定である。体温調査のために、被検体は、直腸温が継続的に採られる間、起きたままでありながら、闇に近い中で静かに半ばもたれかかっていなければならない。通常、血漿コルチゾール及び唾液コルチゾールが2時間毎に測定される。唾液コルチゾールの測定は、血清/血漿における測定の代用として使用される。血漿コルチゾール測定では、静脈内カテーテルを使用することができる。コルチゾールに関する唾液サンプルは、唾液分泌をシミュレートするために、綿棒を口に入れて約60秒間噛むことによって取得される。
【0076】
DLMO検査は、睡眠検査室で行わねばならず、通常は午後8時から午前3時まで行われる。検査の間、患者は薄暗い明かりの中にいたままであることを求められ、噛んだ綿ボールの形態の唾液サンプルが1時間毎に採取される。その後、サンプルのメラトニン濃度が測定される。検査中、患者は、各サンプルが採取される前30分は飲食することができない。これらのタイプの測定は、煩わしく、不快であり、自由生活条件では実行不可能である。
【0077】
個人の概日リズムを、特に何日又は何週間といういっそう長い期間にわたって、評価するためのこれらの方法のこの不備を所与として、概日リズム睡眠障害の臨床診断は通常、7日間より長きにわたる睡眠記録及び/又はアクチグラフィを用いた睡眠歴及び身体検査に頼っている。睡眠記録は、手動で又は睡眠検査室で取得され得る。睡眠日誌で構成される自己評価による手製の注釈付けは、中核体温の測定又はコルチゾール若しくはメラトニンサンプルの採取よりは煩わしくないが、おおよその睡眠及び起床時刻、忘れられたうたた寝、夜間に目覚めたことの注釈付けの欠如、及び睡眠状態の誤認のために、非常に不正確である。
【0078】
一般的に使用される別のアプローチは、朝型・夜型質問紙(MEQ)又はミュンヘンクロノタイプ質問紙(MCTQ)である。これらの質問紙も、近似に基づいており、睡眠日誌と同じ不正確さに悩まされる。
【0079】
MEQベースの質問紙は、報告によれば、もっともらしい結果を生み出すが、“リアルワールドの”行動に関しては、それらは、仕事のない日と就業日を別々に明確にモデル化してもいなければ、実際の睡眠時間又は屋外光への曝露について尋ねてもいない。しかしながら、個人の睡眠時間は、(極めて早いクロノタイプを除いて)就業日と仕事のない日との間で大きな変化を示し、また、被検体の昼光への曝露に依存する。MCTQ質問紙は、簡単な質問を用いて一日24時間内(睡眠フェーズ)の睡眠のタイミングを定量的に評価する。そして、概日リズムフェーズ推定のための、仕事のない日の睡眠中央時刻(midsleep time on free days;MSF)の計算が、仕事又は社会的義務がない日の睡眠開始及び目覚めの時刻に関する質問に基づいて実行される。MSFは、これら2つの時刻の中間点である。そして、就業日と仕事のない日との間の差を補償するために、MSFは:
【数6】
のように補正され、ここで、SDは就業日の睡眠時間を表し、SDは仕事のない日の睡眠時間を表す。(5*SD+2*SD)/7なる項は週平均睡眠時間である。このアプローチは、睡眠中央時間の計算に、就業日と仕事のない日との間の差を考慮に入れるが、幾つかの限界に悩まされる:
1. これは、検査される個人によって入力される(被検体)質問紙に基づいている、及び
2. これは、1日の間に1回の(主)睡眠セッションしかないと仮定している。このようにして推定される睡眠中央時刻に基づく概日フェーズの計算は、不規則睡眠覚醒リズム障害又は交代勤務障害の存在を指し示し得るものである可能なうたた寝を考慮に入れていない。
【0080】
本発明は、被検体の睡眠状態と覚醒状態とを区別する生理学的センサ信号を提供する生理学的センサ(例えばウェアラブルセンサなど)を用いて被検体の覚醒レベルを決定するシステムを提供する。睡眠セッション、並びにそれらに関連する入眠時刻及び起床時刻が特定される。24時間周期での複数の睡眠セッションから単一の代表的な睡眠中央時刻が取得され、該単一の代表的な睡眠中央時刻を用いて概日フェーズが推定される。そして、該概日フェーズから覚醒レベルが取得される。このシステムは、覚醒レベルを決定する際にデフォルトの概日フェーズを使用する必要を回避する。当該システムは、例えば交代勤務労働者又は睡眠障害のある人などの不規則な睡眠パターンを持つ個人に対して眠気をより正確に推定することができる。単一の代表的な睡眠中央時刻は、複数の睡眠セッション、すなわち、うたた寝又は浅い眠りの期間も考慮に入れることができる。
【0081】
図1は、被検体の覚醒レベルを決定するシステム10を示している。これは、被検体の睡眠状態と覚醒状態とを区別する生理学的センサ信号を提供するウェアラブル生理学的センサ12を有する。なお、例えばベッドセンサなどの非ウェアラブルセンサも使用され得る。
【0082】
センサは、手首装着式のPPGセンサ、身体運動を測定するための加速度計、ヘッドバンドに一体化されたEEGセンサ、又はこれらの任意の組み合わせとし得る。加速度計は、身体運動のアクチグラフィ分析を可能にし、ある期間にわたる運動の欠如が睡眠を指し示し、PPGセンサは、心臓及び呼吸の活動を測定することを可能にする。
【0083】
このソリューションはウェアラブル装置に基づくとともに、現場での身体検査、睡眠検査セッション、臨床検査を必要としないので、自由生活条件に適している。センサはまた、各睡眠エピソードの持続時間を決定することを可能にする。それらの睡眠エピソードは、夜間の主睡眠セッションであることもあれば、昼寝であることもある。
【0084】
センサ12が全ての処理能力を内蔵してもよい。しかしながら、図1は、その代わりに、センサ12が、短距離無線通信プロトコル(例えば、Bluetooth)を用いて、好適なアプリを格納した移動電話14と通信し、そして、該移動電話が、インターネット上で、リモートのデータ処理機能16に接続することを示している。図示の3つのユニット全ての処理機能がコントローラを構成すると考えてもよい。従って、理解されることには、この出願に規定されるコントローラは、1つのハードウェア装置内に位置してもよいし、複数の装置間で分散されてもよい。
【0085】
コントローラは、生理学的センサ信号を分析して、睡眠セッションを特定し、それらに関連する入眠時刻及び起床時刻を導出する。
【0086】
本発明は、特に、24時間周期で、例えばうたた寝又は邪魔された睡眠の期間などの、複数の睡眠セッションが特定されることを可能にする。各睡眠セッションが、関連する睡眠中央時刻を有し、それら時刻から、その24時間周期に関する単一の代表的な睡眠中央時刻が導出される。
【0087】
そして、該単一の代表的な睡眠中央時刻を用いて、概日フェーズが推定され得る。
【0088】
この概日フェーズは、例えば、経時的な波形である。例えばピークのタイミングなどの1つの特定の値が、その後の、概日フェーズからの覚醒レベルの導出にとって、関心あるものであり得る。
【0089】
このシステムは、覚醒レベルを決定する際にデフォルトの概日フェーズを使用する必要を回避する。その代わりに、デフォルト値が、概日リズムフェーズを推定することに基づいて自動的に更新される実際の概日フェーズ(特に、ピークのタイミング)の推定で置き換えられる。これは、概日リズムフェーズに関する集団平均を単純に使用するソリューションとは対照的に、概日フェーズ推定の個人化を提供する。
【0090】
図2は、コントローラによって実行される被検体の覚醒レベルを決定する方法を示している。
【0091】
ステップ20にて、被検体から生理学的センサ信号が取得される。これらの信号は、被検体の睡眠状態と覚醒状態とを区別する。従って、このステップは、センサデバイスによって実行される。
【0092】
ステップ22にて、スリープ状態(SS)が特定される。これらスリープ状態は、少なくとも覚醒状態及び睡眠状態を含む。しかしながら、更なる睡眠状態が特定されてもよい。
【0093】
例えば、EEGモニタによってセンシングされ得る異なる脳活動特性に、異なる睡眠段階が関連付けられ得る。特に、被検体の脳活動は、急速眼球運動(レム)睡眠、非急速眼球運動(ノンレム)睡眠と関連付けられ得る。睡眠段階は、ノンレムステージN1、ステージN2、又はステージN3睡眠、レム睡眠、のうちの1つ以上を含み得る。N1は浅い睡眠状態に対応し、N3は深い睡眠状態に対応する。ノンレムステージN3又はステージN2睡眠は、徐波活動(SWA、すなわち深い)睡眠とし得る。
【0094】
従って、精緻化において、入眠時刻及び起床時刻だけではなく、異なる睡眠段階も考慮され得る。
【0095】
なお、脳波活動を測定するのではなく心臓及び呼吸の活動を測定することで異なる睡眠段階を自動的に区別する他の技術が利用可能である。従って、睡眠段階分析はまた、ウェアラブルモニタを用いて行われてもよい。睡眠段階は概日リズム(における不整合)によって影響を受けることもあり、そのような不整合を割り出し、そして定量化もする助けとなり得る。
【0096】
ステップ24にて、睡眠セッション、並びにそれらに関連する開始(入眠)時刻t及び終了(起床)時刻tが特定される。
【0097】
ステップ26にて、24時間周期での複数の睡眠セッションから単一の代表的な睡眠中央時刻TMSが導出される。
【0098】
ステップ28にて、単一の代表的な睡眠中央時刻を用いて概日フェーズ(Circ)が推定され、そして、ステップ30にて、概日フェーズから覚醒/眠気レベル(A/S)が推定される。
【0099】
これらのステップは、センサによる当初データ収集は別として、コントローラによって実行され、上述したように、コントローラは、1つの場所にあってもよいし、複数の異なる装置間で分散されてもよい。
【0100】
上述のように、‘薄明下メラトニン開始’(DLMO)は、概日フェーズを推定するために利用可能な最良の測定―‘ゴールドスタンダード’―と考えられている。DLMOは、睡眠中央時刻(睡眠開始時刻と起床時刻との間の中間点)と有意な相関を持つ。従って、睡眠中央時刻に基づいて、概日リズムのフェーズを推定することができる。
【0101】
ある人物が幾つかの睡眠セッションを持った場合、特定の日の睡眠中央時刻は、重み付け係数を特定の睡眠セッションの持続時間とした、(覚醒したことに先立つ)前の24時間内の全ての睡眠中央時刻の加重平均:
【数7】
として推定され、ここで、tms 及びΔt は、それぞれ、セッションiの睡眠中央時刻及び持続時間であり、Nは、覚醒したことに先立つ前の24時間内の睡眠セッションの数である。
【0102】
斯くして、複数の睡眠セッションそれぞれの睡眠中央時刻が導出され、そして、単一の代表的な睡眠中央時刻は、それら複数の睡眠セッションの睡眠中央時刻の加重平均に基づく。
【0103】
従って、睡眠中央時刻は、1日の間に1つの主セッションしか存在しないと仮定することなく、全ての睡眠セッションに基づく。これは、うたた寝や断片的な休息エピソードを考慮に入れる覚醒モデルの個人化を可能にする。また、これは、概日リズムフェーズの推定値における揺れ動きを見ることにより、可能性ある概日リズム睡眠障害についての更なる洞察を得ることを可能にする。
【0104】
異なる持続時間の複数の睡眠セッションが単一の代表的な睡眠中央時刻の推定にどのように影響するかの例を、図3に示す。
【0105】
これらのプロットは睡眠時間を示しており、各プロット内の片矢印が代表的な睡眠中央時刻のタイミングを示している。
【0106】
上のプロットは、単一の主睡眠セッションに関するものである。この場合、加重平均は必要なく、睡眠中央時刻は既知の手法で得られる。
【0107】
真ん中のプロットは、夜間の1つの主睡眠セッションと、日中うたた寝とを示している。下のプロットは、夜間の等しい持続時間の2つの別々の睡眠セッションを示している。
【0108】
単一の代表的な睡眠中央時刻に基づいて、概日リズムフェーズを推測することができる。
【0109】
図4は、概日リズムフェーズの計算がどのように実行されるかをグラフで示している。プロット40のラインはメラトニン分泌サイクルを表し、プロット42は概日リズムサイクルを表している。2つの連続した睡眠中央時刻に基づいて、日(d-1)の概日リズムフェーズを:
【数8】
として推定することができ、ここで、tMSdは、日dの睡眠中央時刻であり、tMSd-1は、前の日(d-1)の睡眠中央時刻である。
【0110】
概日フェーズは、従って、特定の日に関して、その日の睡眠中央時刻と翌日の睡眠中央時刻とに基づいて決定される。特に、ある日の概日フェーズのピーク44が、その日の睡眠中央時刻46に、その日の睡眠中央時刻46と翌日の睡眠中央時刻48との間の時間差の半分を加えたもの、として計算される。
【0111】
この計算は、日d(すなわち、次の日)でのみ可能である。これが計算の初日である場合、又は概日リズムフェーズの計算が(次の日の睡眠中央時刻を用いずに)オンライン的に行われる必要がある場合、以下の近似:
【数9】
を採ることができる。
【0112】
この場合、特定の日に関する概日フェーズのピーク44は、12時間だけ前にシフトさせたその日の睡眠中央時刻46に基づく。
【0113】
この計算を図5に示す。これは、人が約8時間の睡眠を取ると仮定している。仕事のない日の睡眠中央時刻と就業日の睡眠中央時刻との間の差を考慮に入れるため、概日リズムフェーズの計算のために好ましくは7日間の連続した日が考慮される。
【0114】
さらに、起こり得る外れ値を補償するために、過去7日間の推定された概日リズムフェーズの中央値を、最終的な推定における使用に採用してもよい。
【0115】
ユーザが装置を着用しなかったために睡眠中央時刻間の差が7日を超える場合、ウェアラブルが着用されないときには如何なる特定の睡眠行動も仮定されないため、概日リズムフェーズの計算がリセットされ、最初からやり直される。
【0116】
そして、(上述のような)3プロセスモデルを使用して(図2のステップ30にて)、上述のように推定された概日リズムフェーズに基づいて眠気予測をパーソナライズし得る。
【0117】
元々の3プロセスモデルの概日成分(C)及び超日(U)成分はどちらも、それぞれの計算に概日リズムフェーズの(小数時間で)16.8なるデフォルト値を用いる。式(1)及び(2)のデフォルト値を、式(4)によって得られた単一の代表的な睡眠中央時刻に基づいて式(5)又は(6)から自動的に見積もられた概日リズムフェーズで置き換えることができる。
【0118】
斯くして、モデルは、例えば交代勤務労働者又は睡眠障害のある人などの不規則な睡眠パターンを持つ個人に対して眠気をより正確に推定することができる。
【0119】
眠気予測のため、これらのモデル成分を足し合わせることで、上の式(3)に示される線形変換関数を用いて、上述の1-9カロリンスカ眠気尺度(KSS)での評定を予測するために使用されることが可能な結合覚醒スコアが生成される。
【0120】
好適な一実施形態において、眠気予測アルゴリズム計算はリモートで実行される。計算の結果として、起床後の期間(例えば、起床から16時間)について予測されたKSS値が、例えばスマートフォン上のアプリで、視覚化のためにユーザに送り返される。
【0121】
眠気予測結果の一例を、y軸をKSS評定とした図6に示す。
【0122】
追加のパラメータを使用して、眠気予測に使用されるフェーズパラメータを更に最適化してもよい。年齢、及びセンサ導出による睡眠パラメータ(持続時間、断片化)は全て、モデルの他の部分を更にパーソナライズするために使用されることができる。例えば、被検体が何夜も例外的に短い睡眠時間であった場合に、Sプロセスの計算に、又は3プロセスに基づく眠気の計算にも、ペナルティを用いることができる(上の式(3)がこれを実装する)。
【0123】
同様に、年齢は、年齢を用いて、3プロセスモデルで使用される異なる定数を調整したり、又は睡眠持続時間及び睡眠断片化に関する標準値を確立したりすることができ、代わって該標準値は、実際の睡眠測定値との比較に使用されることができ、また、眠気予測を更に調整することができる(例えば、断片化の増加又は持続時間の減少の場合にそれにペナルティを科すことにより、又は特に長く安らかな睡眠の夜の場合にそれを減らすことにより)。
【0124】
当該システムはまた、例えば交代勤務労働者又は睡眠障害のある人などの不規則な睡眠パターンを持つ人に対して眠気をより正確に推定することができる。単一の代表的な睡眠中央時刻はまた、複数の睡眠セッション、すなわち、うたた寝又は浅い眠りの期間も考慮に入れることができる。
【0125】
本発明のシステムによって実行される分析は、睡眠セッション情報及び概日フェーズ情報が、例えば先立つ何日かの期間について表示されること、及び、次の概日フェーズのタイミングを予測し、ひいては、例えば次の24時間の期間又は将来の何日かについて覚醒レベルを予測するために表示されることを可能にする。予測された覚醒レベルは、KSSスケールで表示され得る。当該システムは、これらの予測及び分析が、長い睡眠セッションだけでなくうたた寝及び様々な睡眠期間の断片化された睡眠について、最小限として睡眠の開始及び睡眠からの覚醒をセンシングすることのみに基づいて得られることを可能にする。従って、煩わしくないセンシングが可能である。
【0126】
上述の方法及びシステムを用いて眠気を予測することは、ある個人が眠たいことを予測される時間の間、仕事をスケジュール化する又は是正措置をとる(例えば、休憩をとる)ことによって、これらの問題を回避する助けとなり得る。交代勤務労働者は特に、不規則な睡眠パターンのために眠気を催しやすい。このソリューションは、労働者及びその管理者が、それら労働者の個々の覚醒状態についての洞察を得ることを可能にして、それらの者が、それに基づいて交代勤務を設計し、害を及ぼし得る状況を回避することを可能にする。
【0127】
コントローラは、ウェアラブル生理学的センサの一部として実装されてもよいし、あるいは、ウェアラブル生理学的センサが通信するリモート装置内に少なくとも部分的に実装されてもよい。センサは、例えば電話又はタブレットなどのユーザのポータブル装置と(例えば、Bluetoothを介して、USBケーブル上で、又はNFC、WiFiなどを用いて)通信することができ、そのポータブル装置は、インターネット上で、データ処理ステップの一部又は全部を実行するプロセッシングリソースと通信し得る。
【0128】
代わりに全ての処理がウェアラブル装置によって実行される場合、装置外での処理のためにローデータを通信する必要はなく、代わりに全ての計算をオンボードプロセッサ上で実行し、最終的に結果を含められたディスプレイ上でユーザに表示し、又は処理の結果を外部ディスプレイ(例えば、ペアリングされたスマートフォン上)に送信する(例えば、Bluetooth又は他の通信機構を介して)。
【0129】
図7は、上述のコントローラを実装するユニットのうちの1つ以上を実装するためのコンピュータ70の一般的アーキテクチャの一例を示している。
【0130】
コンピュータ70は、以下に限られないが、PC、ワークステーション、ラップトップ、PDA、パーム装置、サーバ、ストレージ、及びこれらに類するもの含む。一般に、ハードウェアアーキテクチャの観点で、コンピュータ70は、ローカルインタフェース(図示せず)を介して通信可能に結合された、1つ以上のプロセッサ71、メモリ72、及び1つ以上のI/O装置73を含み得る。ローカルインタフェースは、例えば、以下に限られないが、技術的に知られているような、1つ以上のバス、又は他の有線若しくは無線接続とすることができる。ローカルインタフェースは、通信を可能にするために、例えばコントローラ、バッファ(キャッシュ)、ドライバ、リピータ、及び受信器などの追加の要素を有し得る。さらに、ローカルインタフェースは、上述のコンポーネント間での適切な通信を可能にするために、アドレス接続、制御接続、及び/又はデータ接続を含み得る。
【0131】
プロセッサ71は、メモリ72に格納されることができるソフトウェアを実行するためのハードウェアデバイスである。プロセッサ71は、実質的に任意のカスタムメイド又は市販のプロセッサ、中央演算処理ユニット(CPU)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、又はコンピュータ70に関連する幾つかのプロセッサの中の補助プロセッサとすることができ、また、プロセッサ71は、半導体ベースのマイクロプロセッサ(マイクロチップの形態)又はマイクロプロセッサであってもよい。
【0132】
メモリ72は、揮発性メモリ素子(例えば、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)などのランダムアクセスメモリ(RAM))及び不揮発性メモリ素子(例えば、ROM、消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(EPROM)、電子的消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(EEPROM)、プログラム可能読み出し専用メモリ(PROM)、テープ、コンパクトディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、ディスク、ディスケット、カートリッジ、カセット、又はこれらに類するものなど)のうちのいずれか一方又は組み合わせを含むことができる。さらに、メモリ72は、電子、磁気、光、及び/又は他のタイプの記憶媒体を組み込み得る。なお、メモリ72は分散アーキテクチャを有することができ、そこでは、様々なコンポーネントが互いにリモートに位置するが、プロセッサ71によってアクセスされることができる。
【0133】
メモリ72内のソフトウェアは、1つ以上の別個のプログラムを含むことができ、それらの各々が、論理機能を実装するための実行可能な命令の順序付けられたリストを有する。メモリ72内のソフトウェアは、好適なオペレーティングシステム(O/S)74、コンパイラ75、ソースコード76、及び例示的な実施形態に従った1つ以上のアプリケーション77を含む。
【0134】
アプリケーション77は、例えば計算ユニット、ロジック、機能ユニット、プロセス、オペレーション、仮想エンティティ、及び/又はモジュールなどの多数の機能コンポーネントを有する。
【0135】
オペレーティングシステム74は、コンピュータプログラムの実行を制御し、スケジューリング、入出力制御、ファイル及びデータ管理、メモリ管理、並びに通信制御及び関連サービスを提供する。
【0136】
アプリケーション77は、実行される命令のセットを有した、ソースプログラム、実行可能プログラム(オブジェクトコード)、スクリプト、又は任意の他のエンティティとし得る。ソースプログラムの場合、そのプログラムは通常、オペレーティングシステム74と共に適切に動作するよう、メモリ72内に含まれていてもいなくてもよいものであるコンパイラ(例えばコンパイラ75など)、アセンブラ、インタプリタ、又はこれらに類するものによって翻訳される。さらに、アプリケーション77は、データ及びメソッドのクラスを有するものであるオブジェクト指向プログラミング言語として、又は、以下に限られないが例えば、C、C++、C#、Pascal、BASIC、APIコール、HTML、XHTML、XML、ASPスクリプト、JavaScript(登録商標)、FORTRAN、COBOL、Perl、Java(登録商標)、ADA、.NET、及びこれらに類するものといった、ルーチン、サブルーチン、及び/又は関数を有するものである手続き型プログラミング言語として記述されるころができる。
【0137】
I/O装置73は、以下に限られないが例えばマウス、キーボード、スキャナ、マイクロフォン、カメラなどの入力装置を含み得る。さらに、I/O装置73はまた、以下に限られないが例えばプリンタ、ディスプレイなどといった、出力装置を含んでいてもよい。最後に、I/O装置73は更に、以下に限られないが例えばネットワークインタフェースコントローラ(NIC)又は変調器/復調器(リモート装置、他のファイル、装置、システム、又はネットワークにアクセスするため)、無線周波数(RF)又は他のトランシーバ、電話インタフェース、ブリッジ、ルータなどといった、入力及び出力の両方を通信する装置を含んでいてもよい。I/O装置73はまた、例えばインターネット又はイントラネットなどの様々なネットワーク上で通信するためのコンポーネントを含む。
【0138】
コンピュータ70が動作しているとき、プロセッサ71は、メモリ72内に格納されたソフトウェアを実行するように、メモリ72へ及びからデータを通信するように、及びソフトウェアに従ってコンピュータ70の動作を一般的に制御するように構成される。アプリケーション77及びオペレーティングシステム74が、プロセッサ71によって全体にて又は部分にて読み出され、恐らくはプロセッサ71内でバッファリングされ、そして実行される。
【0139】
アプリケーション77がソフトウェアにて実装されるとき、留意すべきことには、アプリケーション77は、任意のコンピュータ関連システム又は方法によって又はそれと共に使用されるために、実質的に任意のコンピュータ読み取り可能媒体に格納されることができる。この文書の文脈において、コンピュータ読み取り可能媒体は、コンピュータ関連システム又は方法によって又はそれと共に使用されるためのコンピュータプログラムを収容又は格納することができる電子、磁気、光、又は他の物理的装置又は手段とし得る。
【0140】
開示された実施形態への変形が、図面、本開示及び添付の請求項の検討から、請求項に係る発明を実施する当業者によって理解されて実現され得る。請求項において、用語“有する”はその他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞“a”又は“an”は複数であることを排除するものではない。特定の複数の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、それらの手段の組合せが有利に使用され得ないということを指し示すものではない。コンピュータプログラムは、他のハードウェアとともに供給されるか、他のハードウェアの一部として供給されるかする例えば光記憶媒体又は半導体媒体などの好適な媒体にて格納/配布され得るが、例えばインターネット又はその他の有線若しくは無線の遠隔通信システムを介してなど、その他の形態で配布されてもよい。なお、“ように適応される”なる用語が請求項又は説明において使用される場合、“ように適応される”なる用語は、“ように構成される”なる用語と等価であることが意図される。請求項中の如何なる参照符号も、範囲を限定するものとして解されるべきでない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7