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特許7548589近接露光装置用照明装置、近接露光装置及び近接露光装置の露光方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】近接露光装置用照明装置、近接露光装置及び近接露光装置の露光方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240903BHJP
【FI】
G03F7/20 501
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021551204
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2020036432
(87)【国際公開番号】W WO2021070643
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2019187715
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】松坂 昌明
(72)【発明者】
【氏名】山口 洋一
(72)【発明者】
【氏名】松下 智恒
(72)【発明者】
【氏名】結城 大悟
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/067246(WO,A1)
【文献】特開2010-118383(JP,A)
【文献】特開2011-203555(JP,A)
【文献】特開2009-098043(JP,A)
【文献】特開2006-110228(JP,A)
【文献】特開2015-87517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20-7/24、9/00-9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクと所定のギャップを介して配置されたワークに対し、該マスクを介して露光光を照射する照明装置であって、
水銀ランプを光源とする第1の光源部と、
該第1の光源部からの光を均一にして出射するフライアイレンズと、
前記第1の光源部からの光をそれぞれ反射する複数の反射鏡と、
複数のLED素子を光源とする第2の光源部、及び、該第2の光源部を、前記第1の光源部の光路上に位置する作動位置と、前記第1の光源部の光路から離間した退避位置との間で移動させる移動機構を有するLEDユニットと、
を備える、近接露光装置用照明装置。
【請求項2】
前記第2の光源部の作動位置は、前記フライアイレンズと、該フライアイレンズよりも上流側の前記反射鏡との間で、かつ前記フライアイレンズの近傍に設定される、請求項1に記載の近接露光装置用照明装置。
【請求項3】
前記移動機構は、ボールねじ機構、シリンダ装置、回転機構の少なくとも一つによって構成される、請求項1又は2に記載の近接露光装置用照明装置。
【請求項4】
前記移動機構は、前記第2の光源部を第1の方向に移動させる第1の移動機構と、前記第2の光源部を前記第1の移動機構と共に第1の方向と異なる第2の方向に移動させる第2の移動機構とによって構成される、請求項1~3のいずれか1項に記載の近接露光装置用照明装置。
【請求項5】
前記第2の光源部は、複数のLED素子をそれぞれ有する複数の分割光源部によって構成され、
前記移動機構は、前記複数の分割光源部ごとに設けられる、請求項1~4のいずれか1項に記載の近接露光装置用照明装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の近接露光装置用照明装置を備え、該照明装置からの露光光によりマスクのパターンをワークに露光転写する、近接露光装置。
【請求項7】
請求項に記載の近接露光装置を使用し、
前記照明装置からの露光光によりマスクのパターンをワークに露光転写する、近接露光装置の露光方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクを介してワークに露光光を照射する照明装置、LEDユニット、近接露光装置及び近接露光装置の露光方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線(特に、i線)を活用する露光装置としては、超高圧水銀ランプ等の放電型ランプを光源とし、該光源から照射された光によってステージに固定されたワークにマスクのパターンを露光転写するものが知られている。
【0003】
また、特許文献1に記載の露光装置では、照明装置は、例えば、水銀ランプから構成された主光源と、該主光源とは出力応答特性が異なる、例えば、LEDから構成された補助光源と、主光源と補助光源の射出光を検出する光電センサと、被露光基板に照射される露光光の強度を変更する露光量制御部と、を備える。主光源は、目標最小照度から決定された照度で発光し、補助光源は、目標照度と主光源による照度との差分の照度を発光し、光合成部により主光源および補助光源から照射された光を合成して、装置の生産性を低下させることなく、光源の出力応答特性を向上させるようにした露光装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2は、照明光学系が、水銀ランプ、LED、ハロゲンランプなどからなる、第1及び第2の光源部と、第1の光源部からの光を遮光可能なフィルタと、を有する。そして、基板とマスクとを所定のギャップに近接させた状態で、フィルタの開タイミングを制御することで第1及び第2の光源部からの光を異なるタイミングで基板に照射して、高解像度のパターンを形成するとともに、スループットを向上させた近接露光装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特開2015-87517号公報
【文献】日本国特開2013-205613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、水銀ランプ等の放電型ランプは、電源投入後に、出力が安定するまでに時間がかかり、出力変更時に短時間での出力可変が事実上難しい。また、フライアイレンズから離れた位置に光源を配置する場合、フライアイレンズの入射角を補う必要があるため、光源のサイズが大きくなる。さらに、放電型ランプは、消費電力が大きく、ランプ寿命が短いという問題があった。
【0007】
一方、近年、近接露光装置用の照明装置としても、出力可変に対する応答性が略0.1msec以下である紫外線LEDなどを2次元でマトリクス状に配置した光源が使用され始めている。また、LEDは、水銀ランプと比較して消費電力が小さい利点も有する。このため、光源部を水銀ランプとした照明装置をすでに組み込んでいる既存の露光装置においても、LEDを光源部として使用できることが望まれている。特に、光源部を水銀ランプからLEDに切り替える際、実際にサンプルを通す条件合わせの試験が必要となるが、両光源を併用可能とすると、円滑に水銀ランプからLEDへの切り替えが可能となる。
【0008】
特許文献1の露光装置は、LEDを補助光源として使用するものであり、また、特許文献2の露光装置も、LEDを一例として、第1の光源部を選択的に、第2の光源部に組み合わせて使用するものであり、上記課題を考慮したものでない。
【0009】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、光源部として、水銀ランプとLEDの両方を独立して使用可能な近接露光装置用照明装置、LEDユニット、近接露光装置及び近接露光装置の露光方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) マスクと所定のギャップを介して配置されたワークに対し、該マスクを介して露光光を照射する照明装置であって、
水銀ランプを光源とする第1の光源部と、
該第1の光源部からの光を均一にして出射するフライアイレンズと、
前記第1の光源部からの光をそれぞれ反射する複数の反射鏡と、
複数のLED素子を光源とする第2の光源部、及び、該第2の光源部を、前記第1の光源部の光路上に位置する作動位置と、前記第1の光源部の光路から離間した退避位置との間で移動させる移動機構を有するLEDユニットと、
を備える、近接露光装置用照明装置。
(2) (1)に記載の近接露光装置用照明装置に使用されるLEDユニットであって、
前記移動機構は、前記第1の光源部の光路から離間した位置に設置される、LEDユニット。
(3) (1)に記載の近接露光装置用照明装置を備え、該照明装置からの露光光によりマスクのパターンをワークに露光転写する、近接露光装置。
(4) (3)に記載の近接露光装置を使用し、
前記照明装置からの露光光によりマスクのパターンをワークに露光転写する、近接露光装置の露光方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の近接露光装置用照明装置、LEDユニット、近接露光装置及び近接露光装置の露光方法によれば、1台の照明装置により、水銀ランプとLEDの両方を独立して使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1(a)は、本発明に係る近接露光装置用照明装置の概略構成を示す側面図、図1(b)は、その上面図である。
図2図2は、図1(b)に示すLEDユニットの上面図である。
図3図3は、第1変形例に係る、移動機構がシリンダ装置からなるLEDユニット近傍を示す上面図である。
図4A図4Aは、第2変形例に係る、移動機構が回転機構によって構成されるLEDユニット近傍を示す斜視図である。
図4B図4Bは、第3変形例に係る、移動機構が回転機構によって構成されるLEDユニット近傍を示す斜視図である。
図4C図4Cは、第4変形例に係る、移動機構が回転機構によって構成されるLEDユニット近傍を示す斜視図である。
図5A図5Aは、第5変形例に係る、移動機構が複数のボールねじ機構によって構成されるLEDユニット近傍を示す斜視図である。
図5B図5Bは、第6変形例に係る、移動機構がボールねじ機構と回転機構によって構成されるLEDユニット近傍を示す斜視図である。
図6A図6Aは、第7変形例に係る、第2の光源部が分割され、分割光源部がボールねじ機構によって互いに独立して移動可能なLEDユニット近傍を示す斜視図である。
図6B図6Bは、第8変形例に係る、第2の光源部が分割され、分割光源部が回転機構によって互いに独立して移動可能なLEDユニット近傍を示す斜視図である。
図6C図6Cは、第9変形例に係る、第2の光源部が分割され、各分割光源部の移動機構がボールねじ機構と回転機構によって構成されるLEDユニット近傍を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る近接露光装置用照明装置の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の近接露光装置10は、マスクステージMSに保持されたマスクMと、ワークステージWSに載置されたワークWとを所定のギャップを介して配置し、近接露光装置用照明装置(以下では、単に照明装置とも言う)20から出射された光を、マスクMを介してワークWに照射して、マスクMのパターンをワークWに露光転写する。
【0014】
照明装置20は、水銀ランプ31を光源とする第1の光源部30と、第1の光源部30から出射された光の赤外線を透過させ、光路ELの向きを変える一対のコールドミラー40,41と、コールドミラー41の下流側に配設されて第1の光源部30から出射された光を開閉制御する露光制御用シャツター45と、該露光制御用シャツター45の下流側に配置されて、光の強度を均一化するインテグレータを構成する少なくとも1枚のフライアイレンズ46(本実施形態では、3枚のフライアイレンズ46a,46b,46c)と、周辺部の光の進行方向を変えるフィールドレンズ49と、フィールドレンズ49からの光を平行光として照射するコリメーションミラー50と、該平行光をマスクMに向けて照射する平面ミラー51と、を備える。
【0015】
第1の光源部30は、例えば水銀ランプ31と、この水銀ランプ31から出射された光を集光する不図示のリフレクタをそれぞれ複数有して、二次元でマトリックス配置される。なお、光源としては、単一の水銀ランプ31とリフレクタの構成であってもよい。水銀ランプ31は、赤外線も出射するので、赤外線を透過させるコールドミラー40,41を設けることが好ましく、そのためある程度の長い光路長が要求される。
【0016】
フライアイレンズ46は、通常、ワークWの露光面における照度が、タクトタイムとの兼ね合いで最大の照度となるように、フライアイレンズ46の入射面での照度が最大となるように設計される。大、中、小の3枚のフライアイレンズ46a,46b,46cは、それぞれスライドさせて交換することを可能であり、要求される露光精度などに応じて最適なサイズのフライアイレンズ46が選択されて使用される。なお、フライアイレンズ46の枚数は3枚に限定されない。
【0017】
フィールドレンズ49は、レンズ周辺部の光を効率的に使用するためのものであり、必ずしも必要としないが、タクトタイム向上のために設けることが望ましい。
【0018】
また、照明装置20は、複数のLED素子62を光源とする第2の光源部61と、第2の光源部61を光路ELと交差する方向に移動させる移動機構70と、を有するLEDユニット60を備える。
【0019】
図2も参照して、第2の光源部61は、複数(例えば、数百個程度)のLED素子(Light Emitting Diode)62が、二次元でマトリックス配置されて基体63に実装されている。第2の光源部61は、移動機構70により、第1の光源部30の光路EL上に位置する作動位置APと、該光路ELから離間した退避位置WPとの間で移動可能である。
【0020】
第2の光源部61の作動位置APは、第1の光源部30の光路EL上、かつフライアイレンズ46とコールドミラー41との間で、フライアイレンズ46の近傍に設定されている。
【0021】
なお、第2の光源部61の作動位置APは、露光制御用シャツター45の上流側に配置されているが、LED素子62は出力応答性に優れるため、露光制御用シャツター45による光の開閉制御を必要としない。従って、第2の光源部61の作動位置APは、露光制御用シャツター45の下流側とし、フライアイレンズ46よりも上流側で、フライアイレンズ46のより近傍に配置してもよい。
また、LED素子62は、水銀ランプ31と異なり、赤外線を出射しないので、フライアイレンズ46の近傍に配置することができる。従って、少なくとも露光制御用シャツター45より下流側の光路ELは、第1の光源部30と第2の光源部61とで同じものとなる。
【0022】
また、水銀ランプ31の光学系は、水銀ランプ31のアレイのサイズがフライアイレンズ46のサイズに比べて大きいため、集光させている。そのため、LED素子62のアレイを水銀ランプ31の近傍に設置すると、LED素子62のアレイも水銀ランプ31のアレイと同様のサイズにする必要があるが、フライアイレンズ46の近傍に設置すると、よりコンパクトなサイズにすることが可能になり、装置全体のサイズを大きくなるのを防ぐことができる。
【0023】
図2に示すように、移動機構70は、カップリング71を介して連結されたモータ72により回転駆動されるねじ軸73と、第2の光源部61を実装する基体63が固定されて、ねじ軸73に螺合するナット74と、を備えるボールねじ機構80によって構成される。移動機構70は、第1の光源部30及び第2の光源部61からの光を阻害することがないように、光路ELから離間した位置(図1(a)に示す実施例では第2の光源部61の下方)に配設されている。
【0024】
そして、モータ72を回転させることで、第2の光源部61を光路EL上に位置する作動位置APと、該光路ELから離間した退避位置WPとの間で往復移動させて、照明装置20の光源を、第1の光源部30と第2の光源部61に切り換え、いずれか一方の光源部30,61からの露光光によりマスクMのパターンをワークWに露光転写する。
【0025】
第1の光源部30による露光は、図1に示すように、先ず、移動機構70により第2の光源部61を光路ELから離間した退避位置WPに位置させた後、マスクステージMsに保持されたマスクMと、ワークステージWsに載置されたワークWとを、数10~数100μmのギャップに調整して近接対向配置する。その際、第2の光源部61のLED素子62は、消灯している。
【0026】
そして、水銀ランプ31を光源とする第1の光源部30から出射された露光用の光を、一対のコールドミラー40,41で反射し、開制御されている露光制御用シャツター45からフライアイレンズ46で集光させる。フライアイレンズ46から出射される露光用の光は、フィールドレンズ49を通って、コリメーションミラー50で反射されて所定のコリメーション角を持った平行光とされ、平面ミラー51によってマスクMに入射する。そして、マスクMを透過した露光用の光は、ワークWの表面に塗布されたフォトレジストを感光させてマスクMのマスクパターンがワークWに露光転写される。
【0027】
一方、出力応答性に優れるLED素子62で構成された第2の光源部61による露光は、図2の実線で示すように、モータ72を回転させて第2の光源部61を光路EL上の作動位置APに位置させる。そして、LED素子62を点灯してその光をフライアイレンズ46に入射させる。フライアイレンズ46から出射される露光用の光は、同様に、フィールドレンズ49、コリメーションミラー50、及び平面ミラー51を介して、マスクMに入射する。そして、マスクMを透過した露光用の光は、ワークWの表面に塗布されたフォトレジストを感光させてマスクMのマスクパターンがワークWに露光転写される。
【0028】
このように、第2の光源部61を、第1の光源部30の光路EL上に進出または退避させて、光源を第1の光源部30と第2の光源部61とに切り替えて使用することで、1台の近接露光装置用照明装置20により、水銀ランプとLEDの両方を光源部として独立して使用することが可能となる。
【0029】
(第1変形例)
図3に示す第1変形例のLEDユニット60Aは、移動機構70を、上記実施形態のボールねじ機構の代わりに、シリンダ装置75としている。この場合、シリンダ装置75のピストンロッド76を伸縮して、該ピストンロッド76の先端に固定された第2の光源部61を、光路EL上の作動位置APと、該光路ELから離間した退避位置WPとの間で移動させる。
したがって、移動機構70がシリンダ装置75の場合も、光路ELから離間した位置に配設され、第1の光源部30及び第2の光源部61からの光を阻害することがない。
【0030】
(第2~第4変形例)
図4A図4Cは、移動機構70が回転機構によって構成される、第2~第4変形例のLEDユニット60B~60Dを示す。即ち、回転機構であるモータ81の回転軸に、第2の光源部61を実装する基体63が取り付けられる。第2~第4変形例のいずれも、第2の光源部61を、第1の光源部30の光路EL上の作動位置APと、該光路ELから離間した退避位置WPとの間で回転させる。
【0031】
したがって、第2~第4変形例では、第1の光源部30による露光の場合には、第2の光源部61は、光路ELから離間した退避位置WPに配設され、第1の光源部30からの光を阻害することがない。また、第2の光源部61による露光の場合には、第2の光源部61は、作動位置APにて複数のLED素子62を点灯する。
この結果、モータ81によって第2の光源部61を回転させることで、第1の光源部30と第2の光源部61での露光を任意に切り替え可能となる。
なお、モータ81の回転軸の位置や回転方向、退避位置WPは任意に設定可能である。
【0032】
(第5~第6変形例)
また、図5Aに示す第5変形例のLEDユニット60Eでは、移動機構70は、第2の光源部61がナット74に配置された第1のボールねじ機構(第1の移動機構)80Aと、該第1のボールねじ機構80Aが他のナット74に配置された第2のボールねじ機構(第2の移動機構)80Bと、によって構成される。
【0033】
第1のボールねじ機構80Aは、第2の光源部61を第1の光源部30の光路ELに直交する方向(第1の方向)に移動させ、第2のボールねじ機構80Bは、第2の光源部61を含む、第1のボールねじ機構80Aを光路ELと平行な方向(第2の方向)に移動させる。これにより、移動機構70は、第2の光源部61を、作動位置APと退避位置WPとの間で、上面視で、L字型の軌跡で移動させることができる。
【0034】
図5Bに示す第6変形例のLEDユニット60Fは、移動機構70を、第2の光源部61が回転軸に取付けられたモータ81である回転機構(第1の移動機構)と、モータ81がナット74に配置されたボールねじ機構(第2の移動機構)80とによって構成する。
【0035】
モータ81は、第2の光源部61を第1の光源部30の光路ELに直交する姿勢から光路ELに沿った姿勢となる回転方向(第1の方向)に回転移動させ、ボールねじ機構80は、第2の光源部61を含むモータ81を光路ELと直交する方向(第2の方向)に移動させる。これにより、移動機構70は、第2の光源部61を、作動位置APと退避位置WPとの間で移動させることができる。
【0036】
これら第5及び第6変形例のように、移動機構70は、第2の光源部を第1の方向に移動させる第1の移動機構と、第2の光源部を第1の移動機構と共に第1の方向と異なる第2の方向に移動させる第2の移動機構とによって構成してもよい。第1及び第2の移動機構は、ボールねじ機構、回転機構の他、シリンダ装置であってもよい。また、第1及び第2の移動機構は、同時に駆動させてもよいし、個々に順次駆動させてもよい。さらに、退避位置WPは、第1の移動機構と第2の移動機構とによって移動可能な範囲において、適宜変更してもよい。また、移動機構70は、3つ以上の移動機構を組み合わせて構成されてもよい。
このようなLEDユニット60E,60Fは、退避位置WPの自由度を上げることができ、また、メンテナンス作業性を向上することができる。
【0037】
(第7~第9変形例)
次に、図6A図6Cは、第2の光源部61が、複数のLED素子62をそれぞれ有する複数の分割光源部61a,61bによって構成される、第7~第9変形例のLEDユニット60B~60Dを示す。
例えば、図6Aでは、第2の光源部61は、一対の基体63a,63bに複数のLED素子62がそれぞれ配置された一対の分割光源部61a,61bによって構成される。移動機構70は、分割光源部61a,61bごとにそれぞれ設けられる。この場合、各基体63a、63bが、各ボールねじ機構80のナット74にそれぞれ取り付けられる。
【0038】
そして、第1の光源部30による露光の場合には、第2の光源部61の分割光源部61a、61bは、光路ELから離間した退避位置WPに位置し、第2の光源部61による露光の際には、分割光源部61a、61bは、第1の光源部30の光路EL上の作動位置APに位置する。このとき、一対の基体63a,63bは、互いに当接されるか、または近接して配置される。
【0039】
また、図6Bでは、分割光源部61a、61bに対応する各移動機構70は、モータ81によってそれぞれ構成される。一対の分割光源部61a、61bは、第1の光源部30の光路EL上で、一対の基体63a、63bが互いに面一となる作動位置APと、回転駆動されて、該光路ELから離間し、一対の基体63a、63bが平行となる退避位置WPとの間で移動する。
【0040】
さらに、図6Cでは、分割光源部61a、61bに対応する各移動機構70は、モータ81とボールねじ機構80とによってそれぞれ構成される。この場合も、第1の光源部30による露光の場合には、第2の光源部61の分割光源部61a、61bは、光路ELから離間した退避位置WPに位置し、第2の光源部61による露光の際には、分割光源部61a、61bは、光路EL上の作動位置APに位置する。
【0041】
第7~第9変形例のように、第2の光源部61を分割することによって、各分割光源部61a、61bの重量を小さくでき、各分割光源部61a、61bの移動を高速化でき、また、ボールねじ機構80のモータ72に出力が小さなものを利用できる。
【0042】
なお、第2の光源部61の分割数は、上記に限らず、3分割以上であってもよく、各分割光源部に対応して移動機構をそれぞれ設ければよい。また、第2の光源部61の分割は、第7~第9変形例の左右分割に限らず、上下分割であってもよいし、斜めに分割してもよい。
いずれの変形例においても、その他の構成及び効果は、上記実施形態の照明装置と同様である。
【0043】
尚、本発明は、前述した一実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
例えば、本実施形態では、移動機構70によって、第2の光源部61を水平方向に移動させて作動位置APと退避位置WPとの間で切り替えているが、第2の光源部61を上下方向に移動させて作動位置APと退避位置WPとの間で切り替えてもよい。
また、本発明の移動機構は、上述したボールねじ機構やシリンダ装置、回転機構に限定されず、LEDユニットを作動位置と退避位置との間で移動させる任意の機構が適用できる。
【0044】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) マスクと所定のギャップを介して配置されたワークに対し、該マスクを介して露光光を照射する照明装置であって、
水銀ランプを光源とする第1の光源部と、
該第1の光源部からの光を均一にして出射するフライアイレンズと、
前記第1の光源部からの光をそれぞれ反射する複数の反射鏡と、
複数のLED素子を光源とする第2の光源部、及び、該第2の光源部を、前記第1の光源部の光路上に位置する作動位置と、前記第1の光源部の光路から離間した退避位置との間で移動させる移動機構を有するLEDユニットと、
を備える、近接露光装置用照明装置。
この構成によれば、第2の光源部を第1の光源部の光路上に進出または退避させることで、1台の照明装置により、第1の光源部と第2の光源部とを切り替えて使用することができる。また、水銀ランプを光源とする既存の近接露光装置用照明装置に、LEDを光源部として容易に改修することができる。
【0045】
(2) 前記第2の光源部の作動位置は、前記フライアイレンズと、該フライアイレンズよりも上流側の前記反射鏡との間で、かつ前記フライアイレンズの近傍に設定される、(1)に記載の近接露光装置用照明装置。
この構成によれば、第2の光源部の作動位置をフライアイレンズの近傍とすることで、複数のLED素子から出射される光を効果的にフライアイレンズに集光することができるので、複数のLED素子を有する第2の光源部、及び第2の光源部を有するLEDユニットをコンパクトに設計でき、また、第1の光源部と第2の光源部との切り替えも容易に行うことができる。
【0046】
(3) 前記移動機構は、ボールねじ機構、シリンダ装置、回転機構の少なくとも一つによって構成される、(1)又は(2)に記載の近接露光装置用照明装置。
この構成によれば、第2の光源部を、近接露光装置用照明装置に応じて、適切な退避位置に退避させることができる。
【0047】
(4) 前記移動機構は、前記第2の光源部を第1の方向に移動させる第1の移動機構と、前記第2の光源部を前記第1の移動機構と共に第1の方向と異なる第2の方向に移動させる第2の移動機構とによって構成される、(1)~(3)のいずれかに記載の近接露光装置用照明装置。
この構成によれば、第2の光源部を、近接露光装置用照明装置に応じて、より適切な退避位置に退避させることができる。
【0048】
(5) 前記第2の光源部は、複数のLED素子をそれぞれ有する複数の分割光源部によって構成され、
前記移動機構は、前記複数の分割光源部ごとに設けられる、(1)~(4)のいずれかに記載の近接露光装置用照明装置。
この構成によれば、1か所に大きな退避位置を設ける必要がなくなり、また、各移動機構をコンパクトに設計できる。
【0049】
(6) (1)~(5)のいずれかに記載の近接露光装置用照明装置に使用されるLEDユニットであって、
前記移動機構は、前記第1の光源部の光路から離間した位置に設置される、LEDユニット。
この構成によれば、水銀ランプを光源とする既存の近接露光装置用照明装置に、LEDユニットを適切に設置することができる。
【0050】
(7) (1)~(5)のいずれかに記載の近接露光装置用照明装置を備え、該照明装置からの露光光によりマスクのパターンをワークに露光転写する、近接露光装置。
この構成によれば、第1の光源部と第2の光源部とを切り替えて、ワークを効率的に露光することができる。
【0051】
(8) (7)に記載の近接露光装置を使用し、
前記照明装置からの露光光によりマスクのパターンをワークに露光転写する、近接露光装置の露光方法。
この構成によれば、第1の光源部と第2の光源部とを切り替えて、ワークを効率的に露光することができる。
【0052】
なお、本出願は、2019年10月11日出願の日本特許出願(特願2019-187715)に基づくものであり、その内容は本出願の中に参照として援用される。
【符号の説明】
【0053】
10 近接露光装置
20 照明装置(近接露光装置用照明装置)
30 第1の光源部
31 水銀ランプ
40,41 コールドミラー(反射鏡)
46 フライアイレンズ
50 コリメーションミラー(反射鏡)
51 平面ミラー(反射鏡)
60 LEDユニット
61 第2の光源部
62 LED素子
70 移動機構
72 モータ(駆動装置)
73 ねじ軸
74 ナット
AP 作動位置
EL 光路
M マスク
W ワーク
WP 退避位置
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C