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特許7548601生体信号感知によって誤報率を改善したセキュリティ監視用のマイクロ波センサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】生体信号感知によって誤報率を改善したセキュリティ監視用のマイクロ波センサ
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/56 20060101AFI20240903BHJP
   G01S 13/87 20060101ALI20240903BHJP
   G01V 3/12 20060101ALI20240903BHJP
   G08B 13/16 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
G01S13/56
G01S13/87
G01V3/12 A
G08B13/16 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022554165
(86)(22)【出願日】2019-11-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-20
(86)【国際出願番号】 KR2019015254
(87)【国際公開番号】W WO2021095892
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】10-2019-0143161
(32)【優先日】2019-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522184039
【氏名又は名称】ジェーシーエフテクノロジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジン ミョン
(72)【発明者】
【氏名】ジ,ホ ヨン
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-122968(JP,A)
【文献】特開2009-099020(JP,A)
【文献】特開2014-228445(JP,A)
【文献】特開2016-011938(JP,A)
【文献】特開2015-072224(JP,A)
【文献】特開平11-331065(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0126582(US,A1)
【文献】米国特許第04511897(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00-17/95
G01V 3/12
G08B 13/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から印加された電圧にて第1の周期に対応する発信周波数を有する信号を生成し、生成された信号を所定の大きさに増幅させた後、第1の送信アンテナを介して外部に送出する送信器を含んで構成された送信装置と、
外部から印加された電圧にて前記第1の周期とは異なる第2の周期に対応する発信周波数を有する信号を生成し、生成された信号を所定の大きさに増幅させた後、第2の送信アンテナを介して外部に送出し、前記第1の送信アンテナ及び前記第2の送信アンテナから送出された信号を第1の受信アンテナを介してそれぞれ受信し、受信した信号と前記第2の周期に対応する発信周波数を有する信号との差分から、前記第1の送信アンテナから送信された信号を遮る監視対象の有無及び前記第2の送信アンテナから送信された信号を反射させる監視対象の有無をそれぞれ検知するための、セキュリティ監視用のIF信号及びドップラIF信号を生成し、生成したセキュリティ監視用のIF信号とドップラIF信号とをそれぞれ所定の帯域にフィルタリングするフィルタを有するレーダトランシーバ、
前記レーダトランシーバにおいてセキュリティ監視用のIF信号を処理した後の信号を、所定の大きさの第1のDC電圧レベルに変換して出力するセキュリティ信号処理部、
前記レーダトランシーバにおいて、監視領域に近づいてくる感知対象物の反射波によって生じたドップラIF信号を処理した後の信号を、所定の大きさの第2のDC電圧レベルに変換して出力する人体感知信号処理部、及び
前記セキュリティ信号処理部から入力された前記第1のDC電圧レベルと、前記人体感知信号処理部から入力された前記第2のDC電圧レベルとを比較した後、結果値を出力する比較部を有する送受信器を含んで構成されたドップラレーダと、
を備え、
前記第1の送信アンテナから所定の監視領域内において監視距離(d)を経て送出された信号と、前記第2の送信アンテナから所定の監視領域内において監視対象物によって反射された信号とをそれぞれ前記第1の受信アンテナにおいて受信して、前記セキュリティ信号処理部及び前記人体感知信号処理部においてそれぞれ信号処理を施した後、近づいてきたり、微細な動きまたは停止状態を保持したりする監視対象物を感知しかつセンサの誤作動を判別する、生体信号感知によって誤報率を改善したセキュリティ監視用のマイクロ波センサ。
【請求項2】
前記比較部において前記第1のDC電圧レベルと前記第2のDC電圧レベルとを比較して出力した値と、前記セキュリティ信号処理部から入力された前記第1のDC電圧レベルと、によって異常状態を判断する判断手段をさらに備える、請求項1に記載の生体信号感知によって誤報率を改善したセキュリティ監視用のマイクロ波センサ。
【請求項3】
前記判断手段は、前記比較部から入力された結果値をもって判断するが、
前記第1のDC電圧レベルがハイ(High)であり、かつ、前記第2のDC電圧レベルがハイ(High)であれば、監視対象物の近づきであると判断し、
前記第1のDC電圧レベルがハイ(High)であり、かつ、前記第2のDC電圧レベルがロウ(Low)であれば、正常な監視状態であると判断し、
前記第1のDC電圧レベルがミドル(Middle)であり、かつ、前記第2のDC電圧レベルがハイ(High)であれば、監視対象物が監視領域内に存在すると判断し、
前記第1のDC電圧レベルがミドル(Middle)であり、かつ、前記第2のDC電圧レベルがロウ(Low)であれば、正常な監視状態であると判断し、
前記第1のDC電圧レベルがロウ(Low)であり、かつ、前記第2のDC電圧レベルがハイ(High)であれば、監視対象物の侵入であると判断し、
前記第1のDC電圧レベルがロウ(Low)であり、かつ、前記第2のDC電圧レベルがロウ(Low)であれば、センサの誤作動による誤警報であると判断する、請求項2に記載の生体信号感知によって誤報率を改善したセキュリティ監視用のマイクロ波センサ。
【請求項4】
外部から印加された電圧にて第1の周期に対応する発信周波数を有する信号を生成し、生成された信号を所定の大きさに増幅させた後、第1の送信アンテナを介して外部に送出し、前記第1の送信アンテナから送出された後に感知対象物によって反射された反射波信号と、第2の送受信器の第2の送信アンテナから送出された前記第1の周期とは異なる第2の周期に対応する発信周波数を有する信号とを第1の受信アンテナを介してそれぞれ受信し、受信した信号と前記第1の周期に対応する発信周波数を有する信号との差分から、前記第1の送信アンテナから送信された信号を遮る監視対象の有無及び前記第2の送信アンテナから送信された信号を反射させる監視対象の有無をそれぞれ検知するための、セキュリティ監視用のIF信号及びドップラIF信号を生成し、生成したセキュリティ監視用のIF信号とドップラIF信号とをそれぞれ所定の帯域にフィルタリングするフィルタを有する第1のレーダトランシーバ、
前記第1のレーダトランシーバにおいてセキュリティ監視用のIF信号を処理した後の信号を、所定の大きさの第1のDC電圧レベルに変換して出力する第1のセキュリティ信号処理部、
前記第1のレーダトランシーバにおいて、監視領域に近づいてくる感知対象物の反射波によって生じたドップラIF信号を処理した後の信号を、所定の大きさの第2のDC電圧レベルに変換して出力する第1の人体感知信号処理部、及び
前記第1のセキュリティ信号処理部から入力された前記第1のDC電圧レベルと、前記第1の人体感知信号処理部から入力された前記第2のDC電圧レベルとを比較した後、結果値を出力する第1の比較部を有する第1の送受信器を含んで構成された第1のドップラレーダと、
外部から印加された電圧にて前記第2の周期に対応する発信周波数を有する信号を生成し、生成された信号を所定の大きさに増幅させた後、前記第2の送信アンテナを介して外部に送出し、前記第2の送信アンテナから送出された後に感知対象物によって反射された反射波信号と、前記第1の送受信器の前記第1の送信アンテナから送出された前記第1の周期に対応する発信周波数を有する信号とを第2の受信アンテナを介してそれぞれ受信し、受信した信号と前記第2の周期に対応する発信周波数を有する信号との差分からセキュリティ監視用のIF信号及びドップラIF信号を生成し、生成したセキュリティ監視用のIF信号とドップラIF信号とをそれぞれ所定の帯域にフィルタリングするフィルタを有する第2のレーダトランシーバ、
前記第2のレーダトランシーバにおいてセキュリティ監視用のIF信号を処理した後の信号を、所定の大きさの第3のDC電圧レベルに変換して出力する第2のセキュリティ信号処理部、
前記第2のレーダトランシーバにおいて、監視領域に近づいてくる感知対象物の反射波によって生じたドップラIF信号を処理した後の信号を、所定の大きさの第4のDC電圧レベルに変換して出力する第2の人体感知信号処理部、及び
前記第2のセキュリティ信号処理部から入力された第3のDC電圧レベルと、第2の人体感知信号処理部から入力された第4のDC電圧レベルとを比較した後、結果値を出力する第2の比較部を有する第2の送受信器を含んで構成された第2のドップラレーダと、
を備え、
所定の監視領域内において監視距離(d)の間の感知対象物から第1の人体感知信号処理部と第2の人体感知信号処理部においてそれぞれドップラIF信号を検出できるように、前記第1の送信アンテナと第2の送信アンテナから所定の監視領域内において監視距離(d)を経て送出されたそれぞれの信号と、前記第1の送信アンテナと2送信アンテナから所定の監視領域内において監視対象物によって反射されたそれぞれの信号とを第1の受信アンテナと第2の受信アンテナにおいて受信して、第1のセキュリティ信号処理部及び第1の人体感知信号処理部と、第2のセキュリティ信号処理部及び第2の人体感知信号処理部においてそれぞれ信号処理を施した後、近づいてきたり、微細な動きまたは停止状態を保持したりする監視対象物を感知しかつセンサの誤作動を判別する、生体信号感知によって誤報率を改善したセキュリティ監視用のマイクロ波センサ。
【請求項5】
前記第1の比較部において前記第1のDC電圧レベルと前記第2のDC電圧レベルとを比較して出力した値と、第1のセキュリティ信号処理部から入力された前記第1のDC電圧レベルと、にて異常状態を判断する第1の判断手段と、
前記第2の比較部において前記第3のDC電圧レベルと前記第4のDC電圧レベルとを比較して出力した値と、第2のセキュリティ信号処理部から入力された前記第3のDC電圧レベルと、にて異常状態を判断する第2の判断手段と、
をさらに備える、請求項4に記載の生体信号感知によって誤報率を改善したセキュリティ監視用のマイクロ波センサ。
【請求項6】
前記第1の判断手段は第1の比較部から入力された結果値をもって判断し、第2の判断手段は第2の比較部から入力された結果値をもって判断するが、
前記第1のDC電圧レベルがハイ(High)であり、前記第2のDC電圧レベルがロウ(Low)であり、前記第3のDC電圧レベルがハイ(High)であり、かつ、前記第4のDC電圧レベルがロウ(Low)であれば、正常な監視状態であると判断し、
前記第1のDC電圧レベルがハイ(High)であり、前記第2のDC電圧レベルがロウ(Low)であり、前記第3のDC電圧レベルがハイ(High)であり、かつ、前記第4のDC電圧レベルがハイ(High)であれば、第2のドップラレーダにて監視対象物の近づきであると判断し、
前記第1のDC電圧レベルがハイ(High)であり、前記第2のDC電圧レベルがハイ(High)であり、前記第3のDC電圧レベルがハイ(High)であり、かつ、前記第4のDC電圧レベルがロウ(Low)であれば、第1のドップラレーダにて監視対象物の近づきであると判断し、
前記第1のDC電圧レベル~前記第4のDC電圧レベルがいずれもハイ(High)であれば、監視距離内への監視対象物の近づきであると判断し、
前記第1のDC電圧レベルがロウ(Low)であり、前記第2のDC電圧レベルがハイ(High)であるかもしくはロウ(Low)であり、前記第3のDC電圧レベルがロウ(Low)であり、かつ、前記第4のDC電圧レベルがハイ(High)であるかもしくはロウ(Low)であれば、監視対象物の侵入であると判断し、
前記第1のDC電圧レベル~前記第4のDC電圧レベルがいずれもロウ(Low)であれば、センサの誤作動による誤警報であると判断する、請求項5に記載の生体信号感知によって誤報率を改善したセキュリティ監視用のマイクロ波センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セキュリティ監視用のセンサに係り、さらに詳しくは、マイクロ波(Microwave)信号を用いて所定の距離以内において近づいてくる人体や動物または物事を感知して、環境的な要因による誤警報や故障状態を監視しかつ判断する、生体信号感知によって誤報率を改善したセキュリティ監視用のマイクロ波センサに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、セキュリティシステムは、人命と財産の保護を必要とする場所や空間などへの外部からの無断接触や侵入により起こり得る各種の犯罪から命と財産を保護するために設置される。かようなセキュリティシステムには、外部の侵入を感知するための各種のセンサが設けられる。
【0003】
センサは、外部の刺激や信号を感知するものであって、人間の感覚器官が感知し難い外部信号や危ない信号を感知して電気信号に切り換える装置である。かようなセンサは、内視鏡、聴診器、体温計、X線撮影機、磁気共鳴画像装置(MRI)、赤外線カメラなど我々の身近なところにおいて種々に用いられている。内視鏡は、光を用いて胃や腸内の様子の観察をサポートし、聴診器は、音を介して心臓拍動や呼吸、血液循環などに関する情報を与えてくれる。体温計は、熱を用いて体中の体温を測定することができ、X線撮影機や磁気共鳴画像装置は、内視鏡によっても確認できない身体中の状態を電磁気波を用いて間接的に観察できるようにする。赤外線カメラは、物体から放出される赤外線を視認可能な可視光線に切り換えるため、周囲をさらに詳しく確認できるようにする。
【0004】
また、センシング技術の一つとしてのレーダは、物体までの正確な距離と観測個所に対する物体の相対速度とを正確に測定することができる。レーダ装置は、概ねマイクロ波の電磁気波を物体に発射して、その物体から反射される電磁気波を受信して作動する。処理された信号は、オペレータやレーダによって制御される周辺装置が使用可能な形態に変換される。目標物に関する情報は、陰極線管のスクリーンに表示される。最も広く用いられるパルスレーダは、無線エネルギーを非常に強いパルス状にして送信する。連続波レーダは、送信信号を短いパルスではない連続状にして送信するため、反響もまた連続して受信される。単なる連続波レーダは、距離を測定することができないものの、さらに精巧な周波数変調レーダは、距離の測定を行うことが可能である。光線レーダは、無線周波数の代わりに非常に狭い幅を有するレーザ光を発射する。
【0005】
また、ドップラレーダ(Doppler Radar)は、電波のドップラ効果を用いたものであり、目標に向かって送信するレーダ電波の周波数と反射する周波数との差分にて移動する目標を検出する。気象レーダや航空機の自律航法装置、軍事用のレーダに用いられる。気象用のものにおいては、雲の内部において起きている風の速度の変化を測定する。自律航法装置においては、地面に達する電波の速度を測定して現在の位置を算出する。軍事用のレーダにおいては、通常、単一パルス信号を用いて地表及び海水面上の反射波中において移動する目標のみを捕捉し、かつ追跡するパルスドップラレーダが主流をなしている。
【0006】
図1に示すトランシーバ構造からなる従来のドップラレーダは、トランシーバの内部の電圧制御発振器(VCO)において作成されたマイクロ波信号、例えば、24~24.25GHzがTxアンテナを介して出力され、出力されたマイクロ波信号は、対象物となる人体や物事などのターゲット(Target)に反射されてRxアンテナに受信される。そして、ターゲットが動く場合、Rxアンテナに受信される信号は、ターゲットの動く速度に応じて、Tx信号が相対的に遷移された任意のドップラ遷移周波数信号に切り換えられてRxアンテナに受信される。したがって、トランシーバの内部において電圧制御発振器(VCO)の周波数信号と受信された周波数信号とがミキサを通過しながら、両信号間の差分がドップラ信号として検出され、これは、特定の電圧レベルのIF(基底帯域)信号となって信号処理回路に引き渡される。このとき、IF信号として検出されたドップラ信号は、ターゲットが動いている時間の間にのみ異なる電圧レベルの動きにより信号が生じ、動きが消えると、IF信号もまたゼロ(0)となる。
【0007】
従来より人体や物体の動きを感知するために主として用いられてきている赤外線センサは、感知距離が短く、反応速度が低い他、霧、落ち葉、樹木の枝、鳥類、昆虫、温度、日光などの干渉や乱れによる誤報率が高く、しかも、セットアップの誤差範囲が狭いという不都合がある。また、従来の方式のドップラレーダは、長距離の電波の送出のためにモジュレーション信号を用いたり、ドップラ信号をそのまま用いたりするために信号を感知する過程において受信信号のプロセッシングが必要となるため、受信端に非常に複雑な回路と高価な部品を用いながらも、ソフトウェアを用いることを余儀なくされるという不都合があった。
【0008】
本発明と関わる先行技術であって、特許文献1には、ドップラレーダを用いた動き感知装置が、前記ドップラレーダを介してドップラ信号を受信し、前記ドップラ信号に含まれている周波数成分のパワー平均値を算出する信号処理器と、前記ドップラレーダを介して連続して受信される複数のドップラ信号のそれぞれに対して算出された前記パワー平均値を前記信号処理器から受信し、前記パワー平均値の経時変化を解析して反射体の動きの種類を判定する動き判定器と、を備えるという構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0021906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の不都合を解消するためのものであって、ドップラレーダトランシーバ構造において、一対の送信器と受信器を活用して設定された直線距離において侵入する生体信号を感知して、環境的な要因による誤警報や故障状態を監視しかつ判断することを目的としている。
【0011】
また、本発明は、誤報率を改善し、かつ、回路の単純化によって製造コストを節減し、しかも、活用度を向上させることを他の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の目的を達成するために、外部から印加された電圧にて所定の周期の発振周波数を生成し、生成された発振周波数を所定の大きさに増幅させた後、第1の送信アンテナを介して外部に送出する送信器から構成された第1のドップラレーダと、外部から印加された電圧にて所定の周期の発振周波数を生成し、生成された発振周波数を所定の大きさに増幅させた後、第2の送信アンテナを介して外部に送出し、前記第1の送信アンテナと第2の送信アンテナから送出された信号を第1の受信アンテナを介してそれぞれ送受信するレーダトランシーバと、前記レーダトランシーバの第1の受信アンテナにおいて第1の送信アンテナから送出されたセキュリティ監視用のIF信号を処理した後、所定の大きさの第1のDC電圧レベルに変換して出力するセキュリティ信号処理部と、前記レーダトランシーバの第1の受信アンテナにおいて第2の送信アンテナから送出された、監視領域に近づいてくる感知対象物の反射波によって生じたドップラIF信号を処理した後、所定の大きさの第2のDC電圧レベルに変換して出力する人体感知信号処理部と、前記セキュリティ信号処理部から入力された第1のDC電圧レベルと、人体感知信号処理部から入力された第2のDC電圧レベルとを比較した後、結果値を出力する比較部を有する送受信器から構成された第2のドップラレーダと、を備え、前記第1の送信アンテナから所定の監視領域内において監視距離dを経て送出された信号と、前記第2の送信アンテナから所定の監視領域内において監視対象物によって反射された信号とをそれぞれ第1の受信アンテナにおいて受信して、セキュリティ信号処理部と人体感知信号処理部においてそれぞれ信号処理を施した後、近づいてきたり、微細な動きまたは停止状態を保持したりする監視対象物を感知しかつセンサの誤作動を判別する、生体信号感知によって誤報率を改善したセキュリティ監視用のマイクロ波センサを提供するところに特徴がある。
【0013】
また、本発明において、前記生体信号感知によって誤報率を改善したセキュリティ監視用のマイクロ波センサは、前記比較部において第1のDC電圧レベルと第2のDC電圧レベルとを比較して出力した値と、セキュリティ信号処理部から入力された第1のDC電圧レベルと、にて異常状態を判断する判断手段をさらに備えていてもよい。
【0014】
さらに、本発明において、前記判断手段は、比較部から入力された結果値をもって判断するが、第1のDC電圧レベルがハイ(High)であり、かつ、第2のDC電圧レベルがハイ(High)であれば、監視対象物の近づきであると判断し、第1のDC電圧レベルがハイ(High)であり、かつ、第2のDC電圧レベルがロウ(Low)であれば、正常な監視状態であると判断し、第1のDC電圧レベルがミドル(Middle)であり、かつ、第2のDC電圧レベルがハイ(High)であれば、監視対象物が監視領域内に存在すると判断し、第1のDC電圧レベルがミドル(Middle)であり、かつ、第2のDC電圧レベルがロウ(Low)であれば、正常な監視状態であると判断し、第1のDC電圧レベルがロウ(Low)であり、かつ、第2のDC電圧レベルがハイ(High)であれば、監視対象物の侵入であると判断し、第1のDC電圧レベルがロウ(Low)であり、かつ、第2のDC電圧レベルがロウ(Low)であれば、センサの誤作動による誤警報であると判断してもよい。
【0015】
さらにまた、本発明において、前記レーダトランシーバは、セキュリティ監視用のIF信号とドップラIF信号とをそれぞれ所定の帯域にフィルタリングするフィルタを備えていてもよい。
【0016】
また、本発明は、外部から印加された電圧にて所定の周期の発振周波数を生成し、生成された発振周波数を所定の大きさに増幅させた後、第1の送信アンテナを介して外部に送出し、前記第1の送信アンテナから送出された後に感知対象物によって反射された反射波信号と、第2の送受信器の第2の送信アンテナから送出された信号とを第1の受信アンテナを介してそれぞれ送受信する第1のレーダトランシーバと、前記第1のレーダトランシーバの第1の受信アンテナにおいて受信した第2の送受信器の第2のレーダトランシーバの第2の送信アンテナから送出されたセキュリティ監視用のIF信号を処理した後、所定の大きさの第1のDC電圧レベルに変換して出力する第1のセキュリティ信号処理部と、前記第1のレーダトランシーバの第1の受信アンテナにおいて受信した第1の送信アンテナから送出された、監視領域に近づいてくる感知対象物の反射波によって生じたドップラIF信号を処理した後、所定の大きさの第2のDC電圧レベルに変換して出力する第1の人体感知信号処理部と、前記第1のセキュリティ信号処理部から入力された第1のDC電圧レベルと、第1の人体感知信号処理部から入力された第2のDC電圧レベルとを比較した後、結果値を出力する第1の比較部を有する第1の送受信器から構成された第1のドップラレーダと、外部から印加された電圧にて所定の周期の発振周波数を生成し、生成された発振周波数を所定の大きさに増幅させた後、第2の送信アンテナを介して外部に送出し、前記第2の送信アンテナから送出された後に感知対象物によって反射された反射波信号と、第1の送受信器の第1の送信アンテナから送出された信号とを第2の受信アンテナを介してそれぞれ送受信する第2のレーダトランシーバと、前記第2のレーダトランシーバの第2の受信アンテナにおいて受信した第1の送受信器の第1の送信アンテナから送出されたセキュリティ監視用のIF信号を処理した後、所定の大きさの第3のDC電圧レベルに変換して出力する第2のセキュリティ信号処理部と、前記第2のレーダトランシーバの第2の受信アンテナにおいて受信した第2の送信アンテナから送出された、監視領域に近づいてくる感知対象物の反射波によって生じたドップラIF信号を処理した後、所定の大きさの第4のDC電圧レベルに変換して出力する第2の人体感知信号処理部と、前記第2のセキュリティ信号処理部から入力された第3のDC電圧レベルと、第2の人体感知信号処理部から入力された第4のDC電圧レベルとを比較した後、結果値を出力する第2の比較部を有する第2の送受信器から構成された第2のドップラレーダと、を備え、所定の監視領域内において監視距離dの間の感知対象物 から第1の人体感知信号処理部と第2の人体感知信号処理部においてそれぞれドップラIF信号を検出できるように、前記第1の送信アンテナと第2の送信アンテナから所定の監視領域内において監視距離dを経て送出されたそれぞれの信号と、前記第1の送信アンテナと2送信アンテナから所定の監視領域内において監視対象物によって反射されたそれぞれの信号とを第1の受信アンテナと第2の受信アンテナにおいて受信して、第1のセキュリティ信号処理部及び第1の人体感知信号処理部と、第2のセキュリティ信号処理部及び第2の人体感知信号処理部においてそれぞれ信号処理を施した後、近づいてきたり、微細な動きまたは停止状態を保持したりする監視対象物を感知しかつセンサの誤作動を判別する、生体信号感知によって誤報率を改善したセキュリティ監視用のマイクロ波センサを提供するところに特徴がある。
【0017】
また、本発明において、生体信号感知によって誤報率を改善したセキュリティ監視用のマイクロ波センサは、前記第1の比較部において第1のDC電圧レベルと第2のDC電圧レベルとを比較して出力した値と、第1のセキュリティ信号処理部から入力された第1のDC電圧レベルと、にて異常状態を判断する第1の判断手段と、前記第2の比較部において第3のDC電圧レベルと第4のDC電圧レベルとを比較して出力した値と、第2のセキュリティ信号処理部から入力された第3のDC電圧レベルと、にて異常状態を判断する第2の判断手段と、をさらに備えていてもよい。
【0018】
さらに、本発明において、前記第1の判断手段は第1の比較部から入力された結果値をもって判断し、第2の判断手段は第2の比較部から入力された結果値をもって判断するが、第1のDC電圧レベルがハイ(High)であり、第2のDC電圧レベルがロウ(Low)であり、第3のDC電圧レベルがハイ(High)であり、かつ、第4のDC電圧レベルがロウ(Low)であれば、正常な監視状態であると判断し、第1のDC電圧レベルがハイ(High)であり、第2のDC電圧レベルがロウ(Low)であり、第3のDC電圧レベルがハイ(High)であり、かつ、第4のDC電圧レベルがハイ(High)であれば、第2のドップラレーダにて監視対象物の近づきであると判断し、第1のDC電圧レベルがハイ(High)であり、第2のDC電圧レベルがハイ(High)であり、第3のDC電圧レベルがハイ(High)であり、かつ、第4のDC電圧レベルがロウ(Low)であれば、第1のドップラレーダにて監視対象物の近づきであると判断し、第1のDC電圧レベル~第4のDC電圧レベルがいずれもハイ(High)であれば、監視距離内への監視対象物の近づきであると判断し、第1のDC電圧レベルがロウ(Low)であり、第2のDC電圧レベルがハイ(High)であるかもしくはロウ(Low)であり、第3のDC電圧レベルがロウ(Low)であり、かつ、第4のDC電圧レベルがハイ(High)であるかもしくはロウ(Low)であれば、監視対象物の侵入であると判断し、第1のDC電圧レベル~第4のDC電圧レベルがいずれもロウ(Low)であれば、センサの誤作動による誤警報であると判断してもよい。
【0019】
さらにまた、本発明において、前記第1のレーダトランシーバと第2のレーダトランシーバは、それぞれセキュリティ監視用のIF信号とドップラIF信号をそれぞれ所定の帯域にフィルタリングするフィルタを備えていてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、従来のマイクロ波センサにおいて変調信号を用いたり、ドップラ信号をそのまま用いたりするために受信器に非常に複雑な回路と高価な部品を用いながらも、ソフトウェアを用いることを余儀なくされるというデメリットを克服することができ、RFトランシーバモジュールを用いてソフトウェアの構成なしに簡単な回路の挿入だけでも同等以上のレベルのセンサを実現することができ、人体の感知及びセキュリティ信号の処理をそれぞれ行う第1のドップラレーダと第2のドップラレーダを一対にして設けて監視距離をさらに広げてセキュリティ監視が行えるようにし、人体によって乱されるIF周波数帯域を特定して設定することができ、監視距離dを広げるために単にIF周波数を増幅させたり、電圧レベル(ピークトウピーク)の変化をDC電圧の変位に変更して出力して使用したりすることができるようにし、監視距離の拡張によって、一対のセンサが互いにセキュリティ信号を送出しかつ受信できるように二重で確認(ダブルチェック)することにより、監視状態を細かく管理することができ、センサの誤警報や故障状態をさらに簡単に見分けることができて既存のマイクロ波センサに比べて誤報率を大幅に改善することができるというメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】従来のドップラレーダの作用を示す図である。
図2】本発明に係る第1の実施形態であり、生体信号感知によって誤報率を改善したセキュリティ監視用のマイクロ波センサを示すブロック図である。
図3】本発明に係る生体信号感知によって誤報率を改善したセキュリティ監視用のマイクロ波センサにおいて、比較部から出力されたDC電圧レベルにて判断手段において監視状態を判断する結果を示す図表である。
図4】本発明に係る第2の実施形態であり、生体信号感知によって誤報率を改善したセキュリティ監視用のマイクロ波センサを示すブロック図である。
図5】本発明に係る生体信号感知によって誤報率を改善したセキュリティ監視用のマイクロ波センサにおいて、第1の比較部及び第2の比較部から出力されたDC電圧レベルにて第1の判断手段と第2の判断手段において監視状態を判断する結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面に基づいて、本発明に係る生体信号感知によって誤報率を改善したセキュリティ監視用のマイクロ波センサに関する第1の実施形態について詳しく説明する。
【0023】
図2中、第1のドップラレーダ10と第2のドップラレーダ20は、マイクロ波(Microwave)周波数を送出しかつ受信するための所定の範囲内において設定された監視距離dに見合う分だけ隔設される。第1のドップラレーダ10と第2のドップラレーダ20は、向かい合うように対応して設けられることが好ましい。
【0024】
第1のドップラレーダ10は、外部から印加された電圧にて所定の周期の発振周波数を生成し、生成された発振周波数を所定の大きさに増幅させた後、第1の送信アンテナTx1を介して外部に送出する送信器11から構成される。
【0025】
前記第1のドップラレーダ10に対応して設けられる第2のドップラレーダ20は、発振周波数を送信しかつ受信する送受信器21から構成される。第2のドップラレーダ20のレーダトランシーバ22は、外部から印加された電圧にて所定の周期の発振周波数を生成し、生成された発振周波数を所定の大きさに増幅させた後、第2の送信アンテナTx2を介して外部に送出する。なお、送受信器21は、第1のドップラレーダ10の第1の送信アンテナTx1と第2のドップラレーダ20の第2の送信アンテナTx2から送出された信号を第1の受信アンテナRx1にてそれぞれ送受信する。
【0026】
また、セキュリティ信号処理部23は、レーダトランシーバ22の第1の受信アンテナRx1において第1の送信アンテナTx1から送出されたセキュリティ監視用のIF信号を処理した後、所定の大きさの第1のDC電圧レベルに変換して出力する。また、人体感知信号処理部24は、レーダトランシーバ22に接続された第1の受信アンテナRx1において第2の送信アンテナTx2から送出された、監視領域に近づいてくる感知対象物から反射された反射波によって生じたドップラIF信号を処理した後、所定の大きさの第2のDC電圧レベルに変換して出力する。さらに、レーダトランシーバ22は、セキュリティ監視用のIF信号とドップラIF信号をそれぞれ所定の帯域にフィルタリングするためのフィルタを備える。
【0027】
第2のドップラレーダ20の比較部25は、セキュリティ信号処理部23から入力された第1のDC電圧レベルと、人体感知信号処理部24から入力された第2のDC電圧レベルとをそれぞれ比較した後、その結果値を出力する。
【0028】
また、第2のドップラレーダ20の送受信器21には判断手段26が組み込まれ、判断手段26は、比較部25において第1のDC電圧レベルと第2のDC電圧レベルとを比較して出力した値と、セキュリティ信号処理部23から入力された第1のDC電圧レベルと、にてセキュリティ監視用のマイクロ波センサの正常な作動状態や異常状態を判断する。
【0029】
さらに、判断手段26において受信された信号にてセキュリティ監視のための管制センターなどの監視スタッフに監視領域内における侵入体の侵入や近づきまたは通過などに伴う警報の発生またはモニタリングを行わせてもよい。
【0030】
このような構成を有する本発明の第1の実施形態に係る生体信号感知によって誤報率を改善したセキュリティ監視用のマイクロ波センサの作用について説明する。
【0031】
まず、第1のドップラレーダ10の第1の送信アンテナTx1から所定の監視領域内において監視距離dを経て発振された周波数信号が送出される。第1の送信アンテナTx1から送出された信号は、第2のドップラレーダ20の第1の受信アンテナRx1において受信される。そして、第2のドップラレーダ20の第2の送信アンテナTx2から送出された信号は、所定の監視領域内において監視対象物によって反射された後、第1の受信アンテナRx1において受信される。このとき、第2のドップラレーダ20の第1の受信アンテナRx1において第1の送信アンテナTx1と第2の送信アンテナTx2からそれぞれ受信された信号は、レーダトランシーバ22において周波数信号をそれぞれフィルタを介してフィルタリングする。通常、100Km/h以下の速度にて移動する人体や動物または物事におけるドップラIF信号は、概ね数百Hz未満の特性を有している。これは、任意の設定されたセキュリティ監視用のIF信号との周波数偏差が大きいので、両信号は、当該帯域のフィルタにて手軽に分離することができる。
【0032】
レーダトランシーバ22において分離されたセキュリティ監視用のIF信号は、セキュリティ信号処理部23において処理された後、第1のDC電圧レベルに変換されて出力され、監視領域に近づいてくる人体や動物または物事によって反射されたドップラIF信号は、人体感知信号処理部24において処理された後、第2のDC電圧レベルに変換されて出力される。
【0033】
したがって、第2のドップラレーダ20の送受信器21は、第1の受信アンテナRx1において受信された信号に対して、セキュリティ信号処理部23と人体感知信号処理部24においてそれぞれ信号処理を施して第1のDC電圧レベル及び第2のDC電圧レベルとして出力すれば、判断手段26において、第1のドップラレーダ10と第2のドップラレーダ20との間において近づいてくる監視対象物を感知したりセンサの誤作動を判別したりすることができる。
【0034】
図3中、判断手段26は、比較部25から入力された結果値をもって判断する。すなわち、判断手段26は、第1のDC電圧レベルがハイ(High)であり、かつ、第2のDC電圧レベルがハイ(High)であれば、監視対象物が近づいていると判断する。また、判断手段26は、第1のDC電圧レベルがハイ(High)であり、かつ、第2のDC電圧レベルがロウ(Low)であれば、正常な監視状態であると判断する。そして、判断手段26は、第1のDC電圧レベルがミドル(Middle)であり、かつ、第2のDC電圧レベルがハイ(High)であれば、監視対象物が警報区域に相当する監視領域内に存在すると判断して監視状況のモニタリングが行われるようにし、さらに、判断手段26は、第1のDC電圧レベルがミドル(Middle)であり、かつ、第2のDC電圧レベルがロウ(Low)であれば、正常な監視状態であると判断する。なお、判断手段26は、第1のDC電圧レベルがロウ(Low)であり、かつ、第2のDC電圧レベルがハイ(High)であれば、監視対象物の侵入であると判断し、第1のDC電圧レベルがロウ(Low)であり、かつ、第2のDC電圧レベルがロウ(Low)であれば、センサの誤作動による誤警報であると判断して、センサのメンテナンスが行われるようにする。
【0035】
さらに、第2のドップラレーダ20の送受信器21に組み込まれた人体感知信号処理部24は、呼吸などの微細な動きを感知することができるので、監視対象物の隠蔽や掩蔽もしくは停止などといった状況下でも監視対象物の存否と近づきを判断することができる。
【0036】
このように、第1のドップラレーダ10の第1の送信アンテナTx1から所定の監視領域内において監視距離dを経て送出された信号と、第2のドップラレーダ20の第2の送信アンテナTx2から所定の監視領域内において監視対象物によって反射された信号とを第2のドップラレーダ20の第1の受信アンテナRx1において受信して、セキュリティ監視用のIF信号とドップラIF信号に対して、セキュリティ信号処理部23と人体感知信号処理部においてそれぞれ信号処理を施すことにより、監視領域における監視対象物の近づきや存否の感知を行うことができ、しかも、センサの誤作動を判別することができる。したがって、監視領域に近づいてくる人体や動物または物事を感知し、セキュリティ監視状態における環境的な要因によるセンサの誤警報と故障状態を感知しかつ判断することができて、セキュリティ警備のモニタリングをなお一層効率よく行うことができる。
【0037】
次いで、本発明に係る生体信号感知によって誤報率を改善したセキュリティ監視用のマイクロ波センサの第2の実施形態について説明する。
【0038】
図4中、第3のドップラレーダ30と第4のドップラレーダ40は、マイクロ波周波数を送出しかつ受信するための所定の範囲内において設定された監視距離dに見合う分だけ隔設される。第3のドップラレーダ30と第4のドップラレーダ40は、向かい合うように対応して設けられることが好ましい。
【0039】
第3のドップラレーダ30は、第4のドップラレーダ40に対応して設けられて発振周波数を送信しかつ受信する第1の送受信器31から構成される。第3のドップラレーダ30の第1のレーダトランシーバ32は、外部から印加された電圧にて所定の周期の発振周波数を生成し、生成された発振周波数を所定の大きさに増幅させた後、第1の送信アンテナTx1を介して外部に送出する。なお、第1の送受信器31は、第3のドップラレーダ30の第1の送信アンテナTx1と第4のドップラレーダ40の第2の送信アンテナTx2から送出された信号を第1の受信アンテナRx1にてそれぞれ送受信する。
【0040】
第1のセキュリティ信号処理部33は、第1のレーダトランシーバ32の第1の受信アンテナRx1において第2の送受信器41の第2の送信アンテナTx2から送出されたセキュリティ監視用のIF信号を処理した後、所定の大きさの第1のDC電圧レベルに変換して出力する。そして、第1の人体感知信号処理部34は、第1のレーダトランシーバ32に接続された第1の受信アンテナRx1において第1の送信アンテナTx1から送出された、監視領域に近づいてくる感知対象物から反射された反射波によって生じたドップラIF信号を処理した後、所定の大きさの第2のDC電圧レベルに変換して出力する。さらに、第1のレーダトランシーバ32には、セキュリティ監視用のIF信号とドップラIF信号をそれぞれ所定の帯域にフィルタリングするためのフィルタが備えられる。
【0041】
第3のドップラレーダ30の第1の比較部35は、第1のセキュリティ信号処理部33から入力された第1のDC電圧レベルと、第1の人体感知信号処理部34から入力された第2のDC電圧レベルとをそれぞれ比較した後、その結果値を出力する。
【0042】
また、第3のドップラレーダ30の第1の送受信器31には第1の判断手段36が組み込まれ、第1の判断手段36は、第1の比較部35において第1のDC電圧レベルと第2のDC電圧レベルとを比較して出力した値と、第1のセキュリティ信号処理部33から入力された第1のDC電圧レベルと、にてセキュリティ監視用のマイクロ波センサの正常な作動状態や異常状態を判断する。
【0043】
一方、第4のドップラレーダ40は、第3のドップラレーダ30に対応して設けられて発振周波数を送信しかつ受信する第2の送受信器41から構成される。第4のドップラレーダ40の第2のレーダトランシーバ42は、外部から印加された電圧にて所定の周期の発振周波数を生成し、生成された発振周波数を所定の大きさに増幅させた後、第1の送信アンテナTx1を介して外部に送出する。そして、第2の送受信器41は、第3のドップラレーダ30の第1の送信アンテナTx1と第4のドップラレーダ40の第2の送信アンテナTx2から送出された信号を第2の受信アンテナRx2にてそれぞれ送受信する。
【0044】
第2のセキュリティ信号処理部43は、第2のレーダトランシーバ42の第2の受信アンテナRx2において第1の送受信器31の第1の送信アンテナTx1から送出されたセキュリティ監視用のIF信号を処理した後、所定の大きさの第3のDC電圧レベルに変換して出力する。そして、第2の人体感知信号処理部44は、第2のレーダトランシーバ42に接続された第2の受信アンテナRx2において第2の送信アンテナTx2から送出された、監視領域に近づいてくる感知対象物から反射された反射波によって生じたドップラIF信号を処理した後、所定の大きさの第4のDC電圧レベルに変換して出力する。さらに、第2のレーダトランシーバ42には、セキュリティ監視用のIF信号とドップラIF信号をそれぞれ所定の帯域にフィルタリングするためのフィルタが備えられる。
【0045】
第4のドップラレーダ40の第2の比較部45は、第2のセキュリティ信号処理部43から入力された第3のDC電圧レベルと、第2の人体感知信号処理部44から入力された第4のDC電圧レベルとをそれぞれ比較した後、その結果値を出力する。
【0046】
また、第4のドップラレーダ40の第2の送受信器41には第2の判断手段46が組み込まれ、第2の判断手段46は、第2の比較部45において第3のDC電圧レベルと第4のDC電圧レベルとを比較して出力した値と、第2のセキュリティ信号処理部43から入力された第3のDC電圧レベルと、にてセキュリティ監視用のマイクロ波センサの正常な作動状態や異常状態を判断する。
【0047】
さらに、第1の判断手段36と第2の判断手段46において受信された信号にてセキュリティ監視のための管制センターなどの監視スタッフに監視領域内において侵入体の侵入や近づきまたは通過などに伴う警報の発生またはモニタリングを行わせることができる。
【0048】
このような構成を有する本発明の第2の実施形態に係る生体信号感知によって誤報率を改善したセキュリティ監視用のマイクロ波センサの作用について説明する。
【0049】
まず、第3のドップラレーダ30の第1の送信アンテナTx1から所定の監視領域内において監視距離dを経て発振された周波数信号が送出される。第1の送信アンテナTx1から送出された信号は、第4のドップラレーダ40の第2の受信アンテナRx2において受信され、これとともに、第1の送信アンテナから送出された信号は、所定の監視領域内において監視対象物によって反射された後、第1の受信アンテナRx1において受信される。
【0050】
そして、第4のドップラレーダ40の第2の送信アンテナTx2から所定の監視領域内において監視距離dを経て発振された周波数信号が送出される。第2の送信アンテナTx2から送出された信号は、第3のドップラレーダ30の第1の受信アンテナRx1において受信され、これとともに、第2の送信アンテナから送出された信号は、所定の監視領域内において監視対象物によって反射された後、第2の受信アンテナRx2において受信される。
【0051】
第3のドップラレーダ30の第1の送受信器31に組み込まれた第1のレーダトランシーバ32は、第1の受信アンテナRx1において第1の送信アンテナTx1と第2の送信アンテナTx2からそれぞれ受信された周波数信号をフィルタを介してフィルタリングする。そして、第1のレーダトランシーバ32において分離されたセキュリティ監視用のIF信号は、第1のセキュリティ信号処理部33において処理された後、第1のDC電圧レベルに変換されて出力され、監視領域に近づいてくる人体や動物または物事によって反射されたドップラIF信号は、第1の人体感知信号処理部34において処理された後、第2のDC電圧レベルに変換されて出力される。
【0052】
第3のドップラレーダ30の第1の送受信器31は、第1の受信アンテナRx1において受信された信号に対して、第1のセキュリティ信号処理部33と第1の人体感知信号処理部34においてそれぞれ信号処理を施して、第1のDC電圧レベル及び第2のDC電圧レベルとして出力すれば、第1の判断手段36において、第1の比較部35において第1のDC電圧レベルと第2のDC電圧レベルとを比較して出力した値と、第1のセキュリティ信号処理部33から入力された第1のDC電圧レベルと、にて異常状態を判断する。したがって、第1の判断手段36は、第3のドップラレーダ30と第4のドップラレーダ40との間において近づいてくる監視対象物を感知したり、センサの誤作動を判別したりすることができる。
【0053】
また、第4のドップラレーダ40の第2の送受信器41に組み込まれた第2のレーダトランシーバ42は、第2の受信アンテナRx2において第1の送信アンテナTx1と第2の送信アンテナTx2からそれぞれ受信された周波数信号をフィルタを介してフィルタリングする。そして、第2のレーダトランシーバ42において分離されたセキュリティ監視用のIF信号は、第2のセキュリティ信号処理部43において処理された後、第3のDC電圧レベルに変換されて出力され、監視領域に近づいてくる人体や動物または物事によって反射されたドップラIF信号は、第2の人体感知信号処理部44において処理された後、第4のDC電圧レベルに変換されて出力される。
【0054】
第4のドップラレーダ40の第2の送受信器41は、第2の受信アンテナRx2において受信された信号に対して、第2のセキュリティ信号処理部43と第2の人体感知信号処理部44においてそれぞれ信号処理を施して、第3のDC電圧レベル及び第4のDC電圧レベルとして出力すれば、第2の判断手段46において、第2の比較部45において第3のDC電圧レベルと第4のDC電圧レベルとを比較して出力した値と、第2のセキュリティ信号処理部43から入力された第3のDC電圧レベルと、にて異常状態を判断する。したがって、第2の判断手段46は、第3のドップラレーダ30と第4のドップラレーダ40との間において近づいてくる監視対象物を感知したり、センサの誤作動を判別したりすることができる。
【0055】
図5中、第1の判断手段36は第1の比較部35から入力された結果値をもって判断し、第2の判断手段46は第2の比較部45から入力された結果値をもって判断する。すなわち、第1の判断手段36と第2の判断手段46は、第1のDC電圧レベルがハイ(High)であり、第2のDC電圧レベルがロウ(Low)であり、第3のDC電圧レベルがハイ(High)であり、かつ、第4のDC電圧レベルがロウ(Low)であれば、正常な監視状態であると判断する。また、第1の判断手段36と第2の判断手段46は、第1のDC電圧レベルがハイ(High)であり、第2のDC電圧レベルがロウ(Low)であり、第3のDC電圧レベルがハイ(High)であり、かつ、第4のDC電圧レベルがハイ(High)であれば、第2のドップラレーダ20への監視対象物の近づきであると判断し、さらに、第1のDC電圧レベルがハイ(High)であり、第2のDC電圧レベルがハイ(High)であり、第3のDC電圧レベルがハイ(High)であり、かつ、第4のDC電圧レベルがロウ(Low)であれば、第1のドップラレーダ10への監視対象物の近づきであると判断する。さらにまた、第1のDC電圧レベル~第4のDC電圧レベルがいずれもハイ(High)であれば、監視距離内への人体や動物または大きな物事などの監視対象物の近づきであると判断し、第1のDC電圧レベルがロウ(Low)であり、第2のDC電圧レベルがハイ(High)であるかもしくはロウ(Low)であり、第3のDC電圧レベルがロウ(Low)であり、かつ、第4のDC電圧レベルがハイ(High)であるかもしくはロウ(Low)であれば、監視対象物の侵入であると判断する。そして、第1の判断手段36と第2の判断手段46において、第1のDC電圧レベル~第4のDC電圧レベルがいずれもロウ(Low)であれば、センサの誤作動による誤警報であると判断して、センサのメンテナンスが行われるようにする。なお、第1の判断手段36と第2の判断手段46において、第1のDC電圧レベル~第4のDC電圧レベルがハイ(High)またはロウ(Low)ではない場合には、正常状態であると判断するか、あるいは、監視者によるモニタリング後に適切な処置が決められる筈である。
【0056】
さらに、第3のドップラレーダ30の第1の送受信器31に組み込まれた第1の人体感知信号処理部34と、第4のドップラレーダ40の第2の送受信器41に組み込まれた第2の人体感知信号処理部44は、それぞれ呼吸などの微細な動きを感知することができるので、監視対象物の隠蔽や掩蔽もしくは停止などといった状況下でも監視対象物の存否と近づきを判断することができる。
【0057】
このように、第3のドップラレーダ30の第1の送信アンテナTx1と第4のドップラレーダ40の第2の送信アンテナTx2から所定の監視領域内において監視距離dを経て送出された信号と、所定の監視領域内において監視対象物によって反射された信号とを第3のドップラレーダ30の第1の受信アンテナRx1と第4のドップラレーダ40の第2の受信アンテナRx2において受信して、セキュリティ監視用のIF信号とドップラIF信号に対して、第1のセキュリティ信号処理部33及び第2のセキュリティ信号処理部43と、第1の人体感知信号処理部34及び第2の人体感知信号処理部44においてそれぞれ信号処理を施すことにより、監視領域における監視対象物の近づきや存否の感知が行えるとともに、センサの誤作動を判別することができる。したがって、監視領域に近づいてくる人体や動物または物事を感知し、セキュリティ監視状態における環境的な要因によるセンサの誤警報と故障状態を感知しかつ判断することができて、セキュリティ警備モニタリングをなお一層効率よく行うことができる。
【0058】
さらに、本発明の第2の実施形態においては、人体の感知及びセキュリティ信号の処理をそれぞれ行う第1の送受信器31と第2の送受信器41を一対にして設けて監視距離をさらに広げてセキュリティ監視が行えるようにしたのである。そして、監視距離の拡張によって、一対のセンサが互いにセキュリティ信号を送出しかつ受信できるように二重で確認することにより、監視状態を細かく管理することができ、センサの誤警報や故障状態をさらに簡単に見分けることができる。
【0059】
したがって、本発明の生体信号感知によって誤報率を改善したセキュリティ監視用のマイクロ波センサは、人体によって乱されるIF周波数帯域を特定して設定することができ、監視距離dを広げるために単にIF周波数を増幅させたり、電圧レベル(ピークトウピーク)の変化をDC電圧の変位に変更して出力して用いたりすることができるので、既存のマイクロ波センサに比べて誤報率の大幅な改善を期待することができるというメリットがある。
【0060】
以上の説明において、本発明については、特定の実施形態と関連付けて図示及び説明したが、特許請求の範囲によって示された発明の思想及び領域から逸脱しない範囲内において種々の改造及び変化を行うことが可能であるということは、この技術分野における通常の知識を有する者であれば誰でも理解できる筈である。
図1
図2
図3
図4
図5