(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】安息香酸エステルの誘導体
(51)【国際特許分類】
C07C 219/14 20060101AFI20240903BHJP
C07D 319/08 20060101ALI20240903BHJP
C07C 291/04 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
C07C219/14
C07D319/08 CSP
C07C291/04
(21)【出願番号】P 2023003994
(22)【出願日】2023-01-13
【審査請求日】2023-01-13
(31)【優先権主張番号】202211195956.2
(32)【優先日】2022-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517330069
【氏名又は名称】浙江越甲▲薬▼▲業▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】張 ジン
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-119704(JP,A)
【文献】特表2018-508581(JP,A)
【文献】米国特許第03365483(US,A)
【文献】国際公開第2014/139161(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 219/
C07C 291/
C07D 319/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
【化1】
の構造より選択される化合物。
【請求項2】
2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩を含む製品中の、以下:
【化2】
の構造より選択される化合物
の濃度を測定することによる、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩を含む製品の品質管理
を行う方法。
【請求項3】
2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩を含む製品中の不純物を検出する方法であって、前記不純物が以下:
【化3】
の構造を有する化合物より選択されることを特徴とする方法であって、
前記方法は、以下:
(1)2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩の製品を提供すること;
(2)前記化合物A、化合物B及び/又は化合物Cの物理的/化学的特性パラメータを取得すること;
(3)2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩の製品を試験すること;及び
(4)試験で得られた物理的/化学的特性パラメータを、前記化合物A、化合物B及び/又は化合物Cの物理的/化学的特性パラメータと比較することにより、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩の製品中の不純物を判定すること;のステップを含む、方法。
【請求項4】
前記ステップ(3)における試験が、クロマトグラフィー、核磁気、赤外線、質量分析及び/又は紫外線から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(4)における前記判定が、定性的判定及び/又は定量的判定からなることを特徴とする、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩を含む製品中の不純物を検出する方法であって、前記不純物が以下:
【化4】
の構造の化合物より選択されることを特徴とする方法であって、
前記方法は、以下:
(1)2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩の製品を提供すること;
(2)前記化合物A、化合物B及び/又は化合物Cを提供すること;及び
(3)ステップ(1)の2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩製品の試験結果とステップ(2)の化合物A、化合物B及び/又は化合物Cの試験結果を比較し、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩製品中の不純物を判定すること;
のステップを含む、方法。
【請求項7】
前記ステップ(3)における試験が、クロマトグラフィー、核磁気、赤外線、質量分析及び/又は紫外線から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(3)における前記判定が、定性的判定及び/又は定量的判定からなることを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩を含む製品であって、前記製品が含有量98.00 wt%以上の2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩と不純物化合物を含み、前記不純物化合物は、請求項1に記載の化合物A、化合物B、化合物C又はそれらの組み合わせから選択され、前記不純物化合物のいずれかの含有量は0.50 wt%以下であることを特徴とする、製品。
【請求項10】
前記製品は、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩の含有量が99.00 wt%以上であることを特徴とする請求項9に記載の製品。
【請求項11】
前記不純物化合物のいずれかの含有量が0.30 wt%以下であることを特徴とする請求項9又は10に記載の製品。
【請求項12】
前記不純物化合物のいずれかの含有量が0.20 wt%以下であることを特徴とする、請求項11に記載の製品。
【請求項13】
前記不純物化合物のいずれかの含有量が0.10 wt%以下であることを特徴とする、請求項1
1に記載の製品。
【請求項14】
前記不純物化合物のいずれかの含有量が0.10 wt%以下であることを特徴とする、請求項12に記載の製品。
【請求項15】
抗炎症剤の調製における、以下:
【化5】
の構造より選択される化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩の誘導体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化合物1は、化学名2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩で、臨床適応症の一つは、糖尿病性末梢神経障害性疼痛治療薬である。その構造的に類似した誘導体は、しばしば製造時に発生する可能性のある不純物となる。化合物1の不純物については、当技術分野では報告されていない。
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願の目的は、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩の品質管理用不純物として使用でき、また抗炎症などの対応する医薬用途を有する2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩の誘導体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願は、一方では、以下:
【化2】
の構造より選択される化合物を提供する。
【0006】
上記構造においてAcはアセチルである。
本願の別の態様は、以下:
【化3】
の構造より選択される化合物が2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩を含む製品の品質管理における適用を提供する。
【0007】
本願のさらなる態様は、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩を含む製品中の不純物を検出する方法を提供し、前記不純物は、以下:
【化4】
の構造の化合物より選択される。
【0008】
前記方法は、以下のステップを含む:
(1)2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩の製品を提供すること;
(2)前記化合物A、化合物B及び/又は化合物Cの物理的/化学的特性パラメータを取得すること;
(3)2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩の製品を試験すること;及び
(4)試験で得られた物理的/化学的特性パラメータを、前記化合物A、化合物B及び/又は化合物Cの物理的/化学的特性パラメータと比較することにより、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩の製品中の不純物を判定すること。
【0009】
本願の一実施例では、前記ステップ(3)における試験は、クロマトグラフィー、核磁気、赤外線、質量分析及び/又は紫外線から選択される。
【0010】
本願の一実施例では、前記ステップ(4)における判定は、定性的判定及び/又は定量的判定からなる。
【0011】
本願の別の態様では、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩を含む製品中の不純物を検出する方法を提供し、前記不純物は、以下:
【化5】
の構造の化合物より選択される。
【0012】
前記方法は、以下のステップを含む:
(1)2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩の製品を提供すること;
(2)前記化合物A、化合物B及び/又は化合物Cを提供すること;及び
(3)ステップ(1)の2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩製品の試験結果とステップ(2)の化合物A、化合物B及び/又は化合物Cの試験結果を比較し、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩製品中の不純物を判定すること。
【0013】
本願の一実施例では、前記ステップ(3)における試験は、クロマトグラフィー、核磁気、赤外線、質量分析及び/又は紫外線から選択される。
【0014】
本願の一実施例では、前記ステップ(3)における判定は、定性的判定及び/又は定量的判定からなる。
【0015】
また、本願は、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩を含む製品をさらに提供する、前記製品が98.00 wt%以上の2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩と、不純物化合物とからなり、前記不純物化合物が請求項1に記載の化合物A、化合物B、化合物C又はこれらの組み合わせから選択される、前記不純物化合物のいずれかの含有量が、0.50 wt%以下である。
【0016】
本願の一実施例では、前記製品は、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩を99.00 wt%以上含む製品からなる。
【0017】
本願の一実施例では、前記不純物化合物のいずれかの含有量は0.30 wt%以下であり、好ましくは前記不純物化合物のいずれかの含有量は0.20 wt%以下であり、より好ましくは前記不純物化合物のいずれかの含有量は0.10 wt%以下である。
【0018】
本願はまた、抗炎症剤の調製における、以下:
【化6】
の構造より選択される化合物の使用を提供するものである。
【0019】
化合物A、B、Cは、いずれも化合物1の製造と品質管理の要となる成分である。さらに、薬理学的に抗炎症作用があり、親水性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1に化合物Aのエレクトロスプレーイオン化(ESI)低分解能マススペクトルを示す。
【
図2】
図2に化合物Bのエレクトロスプレーイオン化(ESI)低分解能マススペクトルを示す。
【
図3】
図3に化合物1長期放置時のクロマトグラムを示す。
【
図4】
図4に化合物A対照品のクロマトグラムを示す。
【
図5】
図5に化合物1粗生成物のクロマトグラムを示す。
【
図6】
図6に化合物B対照品のクロマトグラムを示す。
【
図7】
図7に化合物C対照品のクロマトグラムを示す。
【
図8】
図8に逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)により検出された炎症因子単球走化性タンパク質1(MCP-1)のメッセンジャーリボ核酸(mRNA)発現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
具体的な実施形態
本明細書では、特に記載がない場合、関係する構成要素又はその好ましい構成要素を互いに組み合わせて、新たな技術的解決策を形成することができる。
【0022】
本明細書では、特に記載がない場合、記載されたすべての実施形態及びその好ましい実施形態を互いに組み合わせて、新たな技術的解決策を形成することができる。
【0023】
本明細書では、特に記載がない場合、好ましい特徴だけでなく、言及したすべての技術的特徴を互いに組み合わせて、新たな技術的解決策を形成することができる。
【0024】
本明細書では、特に記載がない場合、「1つ」という用語は「少なくとも1つ」を意味する。
本明細書では、特に記載がない場合、パーセンテージ、個などは全て重量を意味する。
本明細書で開示する「範囲」は、下限値及び上限値の形式である。下限値、上限値は、それぞれ1つ以上あってもよい。下限値と上限値を選択することで、任意の範囲を定義する。選択された下限と上限によって、特定の範囲の境界が定義される。この方法で定義できる範囲はすべて包括的であり、組み合わせ可能である。すなわち、任意の下限値と任意の上限値を組み合わせて範囲を形成することができる。
【0025】
本明細書では、「含む」という用語は、当該製品が、任意の量で存在し得る他の成分をも含み得ることを意味し、ただし、その量で存在する成分は、人体に許容され、本発明の製品中の活性成分の活性に悪影響を及ぼさないことを条件とする。
【0026】
本明細書では、「抗炎症」又は「抗炎症性」という用語は同じ意味を持ち、いずれも炎症性因子の産生又は放出を抑制することを指す。炎症因子の産生や放出を抑制することで、炎症を抑えて沈静化させ、同時に炎症による痛みを和らげることができる可能性がある。
【0027】
本願は、一方では、以下:
【化7】
の構造より選択される化合物を提供する。
上記構造においてAcはアセチルである。
【0028】
本願の別の態様は、以下:
【化8】
の構造より選択される化合物が2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩を含む製品の品質管理における適用を提供する。
【0029】
本願のさらなる態様は、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩を含む製品中の不純物を検出する方法を提供し、前記不純物は、以下:
【化9】
の構造の化合物より選択され、
前記方法は、以下のステップを含む:
(1)2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩の製品を提供すること;
(2)前記化合物A、化合物B及び/又は化合物Cの物理的/化学的特性パラメータを取得すること;
(3)2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩の製品を試験すること;及び
(4)試験で得られた物理的/化学的特性パラメータを、前記化合物A、化合物B及び/又は化合物Cの物理的/化学的特性パラメータと比較することにより、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩の製品中の不純物を判定すること。
【0030】
本願では、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩製品を提供する工程は、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩のin situ合成、又は2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩の市販の提供であり得る。2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩の合成方法は、当該技術分野において従来のものであり、例えば、WO2019/095879A1などを参照されたい。
【0031】
本願では、前記化合物A、化合物B及び/又は化合物Cの物理的/化学的特性パラメータを取得する前記ステップは、例えば、前記化合物A、化合物B及び/又は化合物Cの物理/化学特性パラメータをその場で取得するか、前記化合物A、化合物B及び/又は化合物Cの予め記憶された物理的/化学的特性パラメータを読み取るか、又は先行技術(例えば、技術マニュアル、既存文献、特許開示又はインターネットソースがあるがこれに限定されない)により前記化合物A、化合物B及び/又は化合物Cの物理/化学特性パラメータを得ることからなるが、これらに限られるわけではない。
【0032】
一実施例では、化合物A、化合物B及び/又は化合物Cの物理的/化学的特性パラメータをその場で取得するステップは、化合物A、化合物B及び/又は化合物Cを提供するステップと、その後、化合物A、化合物B及び/又は化合物Cの物理的/化学的特性パラメータを測定するステップとを含む。
【0033】
別の実施例では、前記化合物A、化合物B及び/又は化合物Cの予め記憶された物理的/化学的特性パラメータは、記憶媒体(例えば外部又は内部ストレージ)にデータとして記憶された化合物A、化合物B及び/又は化合物Cの物理的/化学的特性パラメータを含むが、これらに限定されない。
【0034】
本願では、物理的/化学的特性パラメータには、クロマトグラフィー、核磁気(以下、NMR)、赤外線(以下、IR)、紫外線(以下、UV)、及び/又は質量分析(以下、MS)特性パラメータ、ならびに特性パラメータと濃度(含有量、純度)との関係が含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
本願の一実施例では、前記ステップ(3)における試験は、クロマトグラフィー、NMR、IR、MS及び/又はUVから選択される。2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩の製品の試験方法(例えば、クロマトグラフィー、NMR、IR、MS及び/又はUV)は従来のものであり、当業者であれば、先行技術に従って容易に実施することができる。
【0036】
本願の一実施例では、前記ステップ(4)における判定は、定性的判定及び/又は定量的判定からなる。例えば、ステップ(3)で得られた2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩製品の物理的/化学的特性パラメータとステップ(2)で得られた前記化合物A、化合物B及び/又は化合物Cの物理的/化学的特性パラメータ(例えばクロマトグラフィー、NMR、IR、MS、及び/又はUV特性パラメータ)を比較することによって、前記塩酸塩製品に含まれる不純物(化合物A、B及び/又はC)を定性的又は定量的に判定することができる。
【0037】
本願の一実施例では、定性的判断は、クロマトグラフィー(例えば高速液体クロマトグラフィー)、NMR、IR、UV、及び/又はMS特性パラメータの比較を含む。例えば、クロマトグラフィーの滞留時間、NMRシグナルピーク、IR特性ピーク、UV吸収極大波長、及びMS特性ピーク(又は電荷比)を比較する。
【0038】
本願の一実施例では、定量的判定は、内部標準法又は検量線法を含む。
本願の一実施例では、前記定量的判定は、以下を含む:(a)異なる濃度の化合物A、化合物B及び/又は化合物C標準品を構成すること;(b)異なる濃度の化合物A、化合物B及び/又は化合物C標準品の物理的/化学的パラメータを試験すること;(c)ステップ(b)で得られた物理的/化学的パラメータとステップ(a)の濃度に基づき標準曲線を作成すること;および(d)上記ステップ(3)で得られた2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩製品の物理的/化学的パラメータと上記標準曲線に基づいて、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩の製品中の化合物A、化合物B及び/又は化合物Cの濃度を決定すること。
【0039】
本願の別の実施例では、定量的判定は、以下を含む:
(a)一定濃度の化合物A、化合物Bと/又は化合物Cの対照品を設定すること;(b)化合物A、化合物B及び/又は化合物C対照品のクロマトグラムを試験し、化合物A、化合物B及び/又は化合物Cの対応するピークのピーク面積を決定すること;(c)2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩の製品クロマトグラムを試験し、以下の式によって化合物A、化合物Bと/又は化合物Cの濃度を算出する。
【0040】
【0041】
式中:
A試料は、被験物質溶液化合物A又はB又はCのピーク面積である;
ASTDは、化合物A或いはB或いはC対照品溶液中の化合物A又はB又はCのピーク面積である;
M試料は、被験物質における秤量(mg)である;
MSTDは、化合物A又はB又はC対照品における秤量(mg)である;
V試料は、被験物質における体積(mL)である;
VSTDは、化合物A又はB又はCの対照品溶液の体積(mL);
Wは、化合物A又はB又はC対照品の含有量(100%超の場合は、100.0%として計算)である。
【0042】
本願の別の態様では、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩を含む製品中の不純物を検出する方法を提供し、前記不純物は、以下:
【化10】
の構造の化合物より選択され、前記方法は、以下のステップを含む:
(1)2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩の製品を提供すること;
(2)前記化合物A、化合物B及び/又は化合物Cを提供すること;及び
(3)2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩の製品中の不純物は、ステップ(1)の2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩の製品とステップ(2)の化合物A、化合物B及び/又は化合物Cとの試験結果の比較により判定することが出来る。
【0043】
本願では、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩製品を提供する工程は、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩のin situ合成、又は2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩の市販の提供であり得る。2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩の合成方法は、当該技術分野において従来のものであり、例えば、WO2019/095879A1などを参照されたい。
【0044】
本願では、化合物A、化合物B及び/又は化合物Cを提供することは、化合物A、化合物B及び/又は化合物Cをその場で合成すること、又は合成された化合物A、化合物B及び/又は化合物Cを得ること(市販されているか、又は標準として保存されている)を含む。
本願の一実施例では、前記ステップ(3)における試験は、クロマトグラフィー、NMR、IR、MS及び/又はUVから選択される。2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩の製品、及び化合物A、化合物B及び/又は化合物Cの試験方法(例えば、クロマトグラフィー、NMR、IR、MS及び/又はUV)は従来のものであり、当業者であれば、先行技術に従って容易に実施することができる。
【0045】
本願の一実施例では、ステップ(3)における前記判定は、定性的判定及び/又は定量的判定からなる。例えば、得られた2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩製品の物理的/化学的特性パラメータと、得られた前記化合物A、B及び/又はCの物理的/化学的特性パラメータ(例えば、クロマトグラフィー、NMR、IR、MS、及び/又はUV特性)を比較することにより、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩製品中の不純物(化合物A、B、及び/又はC)を定性的又は定量的に判定することができる。
【0046】
本願の一実施例では、定性的判断は、クロマトグラフィー(例えば高速液体クロマトグラフィー)、NMR、IR、UV、及び/又はMS特性パラメータの比較を含む。例えば、クロマトグラフィーの滞留時間、NMRシグナルピーク、IR特性ピーク、UV吸収極大波長、及びMS特性ピーク(又は電荷比)を比較する。
【0047】
本願の一実施例では、定量的判定は、内部標準法又は検量線法を含む。
本願の一実施例では、前記定量的判定は、以下を含む:(a)異なる濃度の化合物A、化合物B及び/又は化合物C標準品を構成すること;(b)異なる濃度の化合物A、化合物B及び/又は化合物C標準品の物理的/化学的パラメータを試験すること;(c)ステップ(b)で得られた物理的/化学的パラメータとステップ(a)の濃度に基づき標準曲線を作成すること;および(d)上記ステップ(3)で得られた2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩製品の物理的/化学的パラメータと上記標準曲線に基づいて、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩の製品中の化合物A、化合物B及び/又は化合物Cの濃度を決定すること。
【0048】
本願の別の実施例では、定量的判定は、以下を含む:
(a)一定濃度の化合物A、化合物Bと/又は化合物Cの対照品を設定すること;(b)化合物A、化合物B及び/又は化合物C対照品のクロマトグラムを試験し、化合物A、化合物B及び/又は化合物Cの対応するピークのピーク面積を決定すること;(c)2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩の製品クロマトグラムを試験し、以下の式によって化合物A、化合物Bと/又は化合物Cの濃度を算出する。
【0049】
【0050】
式中:
A試料は、被験物質溶液化合物A又はB又はCのピーク面積である;
ASTDは、化合物A或いはB或いはC対照品溶液中の化合物A又はB又はCのピーク面積である;
M試料は、被験物質における秤量(mg)である;
MSTDは、化合物A又はB又はC対照品における秤量(mg)である;
V試料は、被験物質における体積(mL)である;
VSTDは、化合物A又はB又はCの対照品溶液の体積(mL);
Wは、化合物A又はB又はC対照品の含有量(100%超の場合は、100.0%として計算)である。
【0051】
本願はまた、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩を含む製品を提供し、前記製品は、98.00 wt%以上(例えば98.00~99.5 wt%)の含有量の2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩、および不純物化合物を含み、前記不純物化合物が前記化合物A、化合物B、化合物Cまたはそれらの組み合わせであり、前記不純物化合物のいずれかの含有量が0.50 wt%以下(例えば、0.01~0.50 wt%)である。
【0052】
本願の一実施例では、前記製品は、99.00wt%以上の(例えば99.00-99.5重量%)2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ香酸塩酸塩を含む。
【0053】
本願の一実施例では、不純物化合物のいずれかの含有量は0.30wt%以下(例えば0.01-0.30wt%)であり、好ましくは不純物化合物のいずれかの含有量は0.2wt%以下(例えば0.01-0.20wt%)であり、より好ましくは不純物化合物のいずれかの含有量は0.10重量%以下(例えば0.01-0.10wt%)である。
【0054】
本願はまた、抗炎症剤の調製における、以下:
【化11】
の構造より選択される化合物の使用を提供するものである。
【0055】
本願の別の態様では、炎症を軽減するための方法を提供し、前記方法は、治療を必要とする個体に、以下:
【化12】
の構造より選択される化合物の投与を含む。
【0056】
以下、実施形態に関連して本発明をさらに詳細に説明する。しかしながら、これらの実施形態の列挙は、単に説明のためのものであり、本発明の範囲を限定するためのものではないことを理解されたい。
【0057】
実施例1:
本実施形態では、化合物Aは、以下の通り、合成され、特徴づけられる。
【0058】
【0059】
1)アスピリンを原料とし、ジメチルホルムアミドの作用で塩化スルホキシドと反応して塩化オルト-アセチルサリチル酸を得、その後ジエチルアミノエタノールと反応して2-(ジエチルアミノ)-エチル2-アセトキシ安息香酸エステルを生成し、最後に塩化水素と反応して2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩(化合物1)粗品を得、さらにエタノール再結晶によって2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩原料を得る。
2)化合物1 110 gを三角フラスコに秤量し、純水700 mLを加えて試料を溶解。氷浴中で磁気撹拌下、炭酸水素ナトリウム35 gをゆっくりと加え、少量の気泡が見られる。目立った気泡が出なくなるまで撹拌する。
3)ジクロロメタン500 mLを加えると、水層から大量の気泡が放出される;目立った気泡が出なくなるまで撹拌を続けた後、反応を停止し、抽出し、分液し、水層に500 mLのジクロロメタンを加えて再度抽出し、分液した。有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、遊離アルカリ乾燥液を得る。
4)M-クロロペルオキシ安息香酸78 gを秤量し、ジクロロメタン500 mLを用いて懸濁液を作成し、沸騰しないように速度を制御しながら、遊離アルカリ乾燥液にゆっくりと注ぐ。1時間ほど反応させる。反応が完成した後、ろかして不溶物を除去し、旋蒸して大部分の溶剤を除去し、黄色油状液体を得る。
【0060】
5)上記油状液に酢酸イソプロピル1500 mLを加えて乳濁液とし、粗生成物を溶解する。塩化水素の酢酸イソプロピル溶液(化合物1の投与量に換算して約1.1 eq)を反応系にゆっくり滴下し、ろかして化合物A(純度98.26%)を得た。
6)本実施形態では、化合物Aは、以下の特徴を有する:1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.94 (dd, J = 7.8, 1.4 Hz, 1H), 7.62 (td, J = 8.0, 1.5 Hz, 1H), 7.35 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 7.20 - 7.06 (m, 1H), 4.90 - 4.72 (m, 2H), 4.24 - 4.06 (m, 2H), 3.84 (ddt, J = 25.0, 13.4, 7.0 Hz, 4H), 2.35 (s, 3H), 1.40 (t, J = 7.2 Hz, 6H)。
7)本実施形態では、化合物Aは、以下の特徴を有する:13C NMR (101 MHz、CDCl3) δ(ppm)=169.51, 163.42, 150.58, 134.53, 130.88, 130.84, 126.05, 123.69, 121.86, 77.32, 77.00, 76.68, 61.45, 59.24, 57.41, 20.93, 20.88, 8.05。
8)本実施形態では、化合物Aは、赤外分光法によっても定性分析することができ、化合物Aの赤外特性は、N-O結合の伸縮振動が存在し、1500 cm-1~1690 cm-1の範囲にピークを持つ点で化合物1と大きく異なる。また、その構造におけるN-O結合の形成、そのアンモニウム塩の特性ピーク(2700~2500 cm-1)におけるピーク形状や吸収強度は化合物1と大きく異なることになる。
【0061】
9)本実施形態では、化合物Aは、UVクロマトグラフィーによっても定性分析することができ、メタノールに溶解した後の化合物AのUVスペクトルの吸収極大波長が225 nm、第2吸収極大波長が279 nmである。
10)本実施形態では、化合物Aは、質量分析によっても定性的に測定することができ、化合物Aの質量スペクトルを
図1に示す。イオン化モードはエレクトロスプレーイオン源(ESI)、イオンモードはポジティブ(正)であり、試料[M-Cl]
+の測定値m/zは296.2である。
11)本実施形態では、化合物Aは、NMR内部標準法によっても定量分析することができ、内部標準物質は、被験物質のシグナルピークを妨害しないように選択され、テトラメチルシラン(TMS)を内部標準物質として使用することができる。
【0062】
実施例2
本実施形態では、化合物Bは、以下の手順で合成され、特徴づけられる。
【0063】
【0064】
1)化合物1 200 gを秤量し、アセトニトリル500 mL及び濃塩酸50 mLを加え、常温で72時間撹拌する。30~40°Cで溶剤を減圧蒸留除去し、エタノール600 mLを加え、撹拌しながら50~60°Cまで加熱し、1時間保温し、固体はすべて溶解し、室温まで静置して12時間保温した後、ろかし、エタノール100 mLで洗浄し、湿った生成物を得た。これを60°Cで12時間乾燥して、2-アセトキシフェノール-2-(ジエチルアミノ)エチル塩酸塩を得る。
2)2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩250 gを四つ口フラスコに秤量し、ジクロロメタン2100 mLを加えて機械的に撹拌し、氷浴で0-10°Cまでに冷却。
3)ピリジン96 gを定圧滴下ロートに秤量し、反応系にゆっくりと滴下添加し、滴下添加後10分間撹拌を続ける。
4)内温0~10°Cで、塩化クロロアセチル137.5 gを定圧滴下ロートに秤り、内温0~10°Cに制御しながら反応系にゆっくり滴下添加する。滴下添加後2~4時間撹拌を続ける。
【0065】
5)反応液を片口フラスコに移し、減圧下で画分が蒸発しなくなるまで濃縮し、淡黄色の粘稠な固体を得る。
6)フラスコにイソプロパノール400 mLとメチルtert-ブチルエーテル800 mLを加え、内温を0~10°Cに制御し、1~2時間叩解を行った。
7)叩解を停止し、減圧下でろかし、ろ過ケークをメチルtert-ブチルエーテル400 mLで数回洗浄し、オフホワイトの湿った生成物を得た。
8)湿った生成物を真空オーブンに入れ、減圧下で乾燥させ、オフホワイトの粗生成物を得る。
【0066】
9)粗生成物を三つ口フラスコに秤量し、イソプロパノール400 mLを加えて、機械的に攪拌し、オイルバスで加温。
10)内温75°Cでは系が完全に溶解しないので、15分間保持攪拌して0~10°Cまで徐々に温度を下げ、その間にメチルtert-ブチルエーテルを添加することができる。
11)減圧下でろかし、オフホワイトの湿った固体生成物を得る。
12)湿った生成物を真空オーブンに入れ、減圧下で乾燥させ、オフホワイトの固体化合物Bを得る(純度98.4%)。
【0067】
13)本実施形態では、化合物Bは、以下の特徴を有する:1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ11.42 (s, 1H), 8.13 (dd, J = 7.9, 1.7 Hz, 1H), 7.74 (td, J = 7.8, 1.7 Hz, 1H), 7.46 (td, J = 7.6, 1.2 Hz, 1H), 7.32 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 4.64 (t, J = 5.3 Hz, 2H), 3.48 (d, J = 5.2 Hz, 2H), 3.17 (s, 1H), 1.25 (t, J = 7.2 Hz, 6H)。
14)本実施形態では、化合物Bは、以下の特徴をする:13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ(ppm)=166.71, 163.59, 150.19, 135.30, 132.21, 127.30, 124.21, 122.44, 59.98, 49.44, 47.27, 41.78, 8.84。
15)本実施形態では、化合物Bは、赤外分光法によっても定性分析することができ、化合物Bの赤外特性は、C-Cl結合の伸縮振動があり、800~600 cm-1の範囲に指紋領域のピークがある点で化合物1と比較して大きく異なっている。
【0068】
16)本実施形態では、化合物Bは、UVクロマトグラフィーによっても定性分析することができ、メタノールに溶解した後の化合物BのUVスペクトルの吸収極大波長は222 nm、第2吸収極大波長は243 nmである。
17)本実施形態では、化合物Bは、質量分析により定性的に測定することもでき、化合物Bの質量スペクトルは
図2に示すとおりである。イオン化モードはESI、イオンモードはポジティブ(正)で、試料[M-Cl]
+の測定値m/zは314.1である。
18)本実施形態では、化合物Bは、NMR内部標準法により定量することができる。内部標準物質は、被験物質のシグナルピークを妨害しないように選択され、TMSを内部標準として使用することができる。
【0069】
実施例3
本実施形態では、化合物C、以下の手順で合成され、特徴付けられる。
【0070】
【0071】
1)アスピリン180 gを四つ口フラスコに秤量し、ジクロロメタン及びN,N-ジメチルホルムアミド(1 mL)を加えて撹拌し、オイルバスで約30~40°Cに加温。
2)塩化スルホキシド144 gを定圧滴下ロートに秤量し、反応系にゆっくり滴下するように加える。滴下後、1時間攪拌を続ける。
3)反応を終了し、反応液を片口フラスコに移し、減圧下で濃縮して溶媒を留去し、塩化アシル濃縮物を得た。
4)四つ口フラスコに塩化アシルを入れ、さらにクロロホルム100 mLを加え、機械的に攪拌し、オイルバスで加温した。
【0072】
5)ジエチルアミノエタノール118 g(1.0 eq)をゆっくりと滴下しながら加え、途中で暖め、還流を発生させる。
6)滴下が完了してから、1時間ほど反応させる。
7)反応を終了させ、室温まで冷却する。系に水酸化ナトリウム40 gを含む水酸化ナトリウムの氷水溶液を加えて塩基性(pH約8)にした後、撹拌し、分配して有機相を飽和塩化ナトリウム400 mLで洗浄し、無水硫酸ナトリウム40 gの上で一晩乾燥させる。抽出液をろかし、濃縮して濃縮物を得る。
8)濃縮物80 gを四つ口フラスコに入れ、酢酸イソプロピル200 mLを加え、室温で機械的に攪拌する。
【0073】
9)HClガスをゆっくりと導入したところ、まず黄色の油状物質が析出し、pH<7.0で固体として析出し始め、徐々に上昇する。pHをモニターし、pH>6.0になるよう制御。ガスを抜いた後、30分間撹拌を続け、ろかする。
10)ろ過ケークを三角フラスコに移し、アセトニトリル100 mLを加え、加熱して溶解させる。室温まで冷却し、酢酸イソプロピルを加え、振とう後、出現した濁りが振とう後、溶解しなくなるまで振とう混合する。系を液体が澄むまで加熱し、撹拌して室温まで温度を下げ、過程中に大量の顆粒状固体を析出する。固体をろかし、ろ過ケークを少量の酢酸イソプロピルで洗浄後、2時間乾燥し、化合物Cを得る(純度99.4%)。
11)本実施形態では、化合物Cは、以下の特徴を有する:1H NMR (500 Mhz, CDCl3) δ 11.5.(brs, 1H, ), δ 7.96 (dd, 1H, J = 7.8Hz), 7.66(dt, 1H, J = 7.6Hz), 7.22 (t, 4H, J = 7.6Hz), 7.11 (d, 4H, J = 7.8Hz), 4.30 (m, 2H), 3.26 (t, 2H, J = 5.0 Hz,), 3.07 (brs, 4H), 1.89 (s, 3H) ,1.31 (t, 6H, J = 6.0 Hz)。
12)本実施形態では、化合物Cは、以下の特徴を有する:13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ(ppm)=136.81, 129.17, 123.47, 116.99, 22.37, 58.76, 49.75, 46.89, 8.40。
【0074】
13)本実施形態では、化合物Cは、赤外分光法によっても定性分析することができる:3489.5 cm-1:安息香酸エステルC=O伸縮振動の高調波シグナルであり、1755.0 cm-1に対応して安息香酸エステルC=O伸縮振動が発生し、分子中に安息香酸エステル構造が存在する可能性があることを示す。3003.3, 2948.3 cm-1:メチル又はメチレンのC-H伸縮振動で、分子内にメチル又はメチレン構造が存在する可能性があることを示す。2578.9, 2478.7 cm-1:アンモニウム塩のN-H伸縮振動で、分子内にアンモニウム塩の構造が存在する可能性があることを示す。1614.0, 1591.4, 1466.5 cm-1:ベンゼン環骨格のC=C伸縮振動で、分子内にベンゼン環構造が存在する可能性あることがを示す。1393.8, 1302.4 cm-1:メチルのC-H屈曲振動で、分子内にメチル構造が存在する可能性があることを示す。1270.5, 1254.5 cm-1:安息香酸エステルのC-O屈曲振動であり、分子内に安息香酸エステル構造が存在する可能性があることを示す。
14)本実施形態では、化合物Cは、UVクロマトグラフィーによっても定性分析することができ、メタノールに溶解した後の化合物CのUVスペクトルの吸収極大波長は205 nmであり、第2吸収極大波長は237 nmである。
15)本実施形態では、化合物Cは、高分解能質量分析によっても定性的に測定することもでき、イオン化モードはESI、イオンモードはポジティブ(正)であり、試料[M-Cl]+の精密質量決定値m/zは280.1である。
16)本実施形態では、化合物Cは、NMR内部標準によっても定量分析することができ、内部標準物質は、被験物質のシグナルピークを妨害しないように選択され、TMSを内部標準物質として使用することができる。
【0075】
実施例4
本実施形態では、化合物1の品質管理及びその中間製造工程の管理における不純物対照品として、化合物A、B及びCの利用を例示したものである。
1.化合物1の調製手順:
化合物1(2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシ安息香酸塩酸塩)は、実施例1に記載したように、又は従来技術を参照して調製することができる。
【0076】
2.化合物Aの供給源及び検出方法
2.1化合物1の長期保存後の完成品の試験や強分解実験の結果から、化合物1の構造中の3級アミンは、酸化剤(例えば空気中の酸素)の存在により酸化され、化合物1の窒素酸化物、すなわち化合物Aを与えることが判明している。化合物1の長期保存・輸送時の安定性を検討するためには、化合物A(不純物)の含有量を検出し、化合物1の最終製品の品質を管理するための分析法を開発する必要がある。
【0077】
2.2化合物Aの検出方法
2.2.1クロマトグラフィー条件:オクタデシルシラン結合シリカゲルを充填剤とする高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(250 mm×4.6 mm、5 μm)、カラム温度33°C、流速1.0 mL/min、注入量10 μL、検出波長276 nm、移動相緩衝塩溶液-メタノール-氷酢酸(66:24:10)。
2.2.2溶液の調製:
1)被験物質溶液:長期放置された化合物1を被験物質1として、約100 mgを正確に量り、10 mLのメスフラスコに入れ、メタノールで目盛まで溶解し、よく振ってから、これを被験物質溶液とし、同じの被験物質溶液を2つ調製する。
2)化合物A対照品溶液:化合物A対照品を約20 mg精密に量り、100 mLのメスフラスコに入れ、メタノールに溶かし、秤に固定し、よく振って、化合物A対照品溶液とする。
2.2.3測定法:化合物A対照品溶液及び被験物質溶液を正確に量り、それぞれを液体クロマトグラフに注入し、主成分のピークの保持時間の3倍まででクロマトグラムを記録した。
2.2.4含有量計算
【0078】
【0079】
式中:
A
試料は、被験物質溶液に含まれる化合物Aのピーク面積である;
A
STDは、化合物A対照品溶液における化合物Aのピーク面積である;
M
試料は、被験物質における秤量(mg)である;
M
STDは、化合物A対照品の秤量(mg)である;
V
試料は、被験物質における体積(mL)である;
V
STDは、化合物A対照品溶液の体積(mL)である;
Wは、化合物A対照品の含有量(100%超の場合は、100.0%として計算)である。
被験物質溶液をクロマトグラフィーで検出した結果を
図3に示す。化合物Aのピークタイムは約8.6分、化合物1のピークタイムは約6.2分であった。化合物A対照品溶液をクロマトグラフィーで検出した結果を
図4に示す。
【0080】
式1に代入すると、
ここで、
A試料は、被験物質溶液化合物Aにおけるピーク面積であり、121,719である;
ASTDは、化合物A対照品溶液における化合物Aのピーク面積であり、483,700である;
M試料は、被験物質における秤量(mg)であり、100.71 mgである;
MSTDは、化合物A対照品における秤量(mg)であり、19.89 mgである;
V試料は、被験物質溶液における体積(mL)であり、10 mLである;
VSTDは、化合物A対照品溶液における体積(mL)であり、100 mLである;
Wは、化合物A対照品における含有量であり、98.7%である。
計算の結果、被験物質溶液中の化合物Aの含有量は0.49%であった。
【0081】
3.化合物B及びCの供給源及び検出方法
3.1クロロアセチルサリチルクロリドは、原料アスピリンを酸性条件下で加水分解して生成するサリチル酸と塩化スルホキシドを反応させて製造する化合物1の合成の第1工程(o-アセチルサリチルクロライド製造)の副生成物として製造されるものである。順次、クロロアセチルサリチルクロライドは、その後の反応工程でジエチルアミノエタノールと個別に反応し、その後の工程(塩化水素ガスの通過)を経て引き続き塩を形成する。この不純物である化合物Bの存在は、理論的にも、完成品の試験でも検出された。
化合物1の製造過程中の第1ステップの産物はオルト-アセチルサリチル酸クロリドであり、オルト-アセチルサリチル酸クロリド構造中のアセチル基と塩化アシル基団の存在によって自身で環化反応を発生し、副産物2-クロロ-2-メチル-4ヒドロ-ベンゾ-1,3-ダイオキシン-4-オンを生成し、同様に、塩素原子の存在によって、後続の反応中にそれはジエチルアミノエタノールと反応し、かつ後続のステップ(塩化水素ガスを通す)の後に引き続き塩になる。この不純物である化合物Cの存在は、理論的にも、完成品の試験でも検出された。
【0082】
3.2化合物B及びCの検出方法
3.2.1クロマトグラフィー条件:オクタデシルシラン結合シリカゲルを充填剤とする高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(250 mm×4.6 mm、5 μm)、カラム温度33°C、流速1.0 mL/min、注入量10 μL、検出波長276 nm、移動相緩衝塩溶液-メタノール-氷酢酸(63:27:10)。
3.2.2溶液の調製:
1)被験物質溶液:化合物1粗生成物を被験物質として、約100 mgを正確に量り、10 mLのメスフラスコに入れ、メタノールで目盛まで溶解し、よく振ってから、これを被験物質溶液とし、同じの被験物質溶液を2つ調製する。
2)化合物B及びCの対照品溶液:化合物B及びCをそれぞれ約20 mgを正確に量り、100 mLのメスフラスコに入れ、メタノールを加えて溶解し、容量を目盛りに合わせてよく振り、化合物B及びCの対照品溶液として使用する。
3.2.3測定法:化合物B及びC対照品溶液と被験物質溶液をそれぞれ正確に量り、液体クロマトグラフに注入し、主成分のピークの保持時間の3倍までクロマトグラムを記録した。
3.2.4含有量計算
【0083】
【0084】
式中:
A
試料は、被験物質溶液化合物B又はCのピーク面積である;
A
STDは、化合物B又はC対照品溶液における化合物B又はCのピーク面積である。
M
試料は、被験物質における秤量(mg)である;
M
STDは、化合物B又はC対照品における秤量(mg)である。
V
試料は、被験物質における体積(mL)である;
V
STDは化合物B又はC対照品溶液の体積(mL)である。
Wは、化合物B又はC対照品の含有量(100%超の場合は、100.0%として計算)である。
現在のクロマトグラフィー条件下での化合物B及びCのピーク位置を
図5に示すが、化合物Bのピークタイムは約7.7分、化合物Cのそれは約8.1分、化合物1のそれは約5.6分であった。
【0085】
化合物B対照品の検出結果を
図6に示し、式2に代入した。ここで、
A
試料は、被験物質溶液化合物Bにおけるピーク面積であり、92,777である;
A
STDは、化合物B対照品溶液における化合物Bのピーク面積であり、9,802,329である;
M
試料は、被験物質における秤量(mg)であり、99.95 mgである;
M
STDは、化合物B対照品における秤量(mg)であり、20.21 mgである。
V
試料は、被験物質溶液における体積(mL)であり、10 mLである;
V
STDは、化合物B対照品溶液における体積(mL)であり、100 mLである。
Wは、化合物B対照品における含有量であり、99.7%である。
計算の結果、被験物質溶液中の化合物Bの含有量は0.02%であった。
【0086】
化合物C対照品の検出結果を
図7に示し、式2に代入した。ここで、
A
試料は、被験物質溶液化合物Cにおけるピーク面積であり、68,429である;
A
STDは、化合物C対照品溶液における化合物Cのピーク面積であり、467,641である。
M
試料は、被験物質における秤量(mg)であり、99.95 mgである;
M
STDは、化合物C対照品における秤量(mg)であり、20.21 mgである。
V
試料は、被験物質溶液における体積(mL)であり、10 mLである;
V
STDは、化合物C対照品溶液における体積(mL)であり、100 mLである。
Wは、化合物C対照品における含有量であり、そ92.5%である。
計算の結果、被験物質溶液中の化合物Cの含有量は0.27%であった。
【0087】
実施例5
本実施例では、化合物A、B及びCが優れた溶解性を有することを例示した。
被検化合物(A又はB又はC)約0.2 gを10 mLサンプル管に秤量し、精製水2 mLを加え、混和する。完全に溶解した場合は、約0.2 gの被検化合物を加え続け、過飽和になるまで、又は2.0 gの被検化合物が加えられるまで混合する。2.0 gを加えても完全に澄んでいる場合は、試験する化合物の水への溶解度が1.0 g/mL以上であることを記録する。
化合物A、化合物B及び化合物Cの溶解度は、1.0 g/mL以上であることが実験的に証明された。
【0088】
実施例6
本実施形態では、化合物A、B及びCがいずれも用量依存的に単球走化性タンパク質1(MCP-1)のメッセンジャーリボ核酸(mRNA)レベルを抑制することを例示し、より優れた抗炎症効果が示唆される。
1.溶液調製:
1.1陰性対照品溶液:陰性対照品溶液はジメチルスルホキシド(DMSO)であり、調製せずにそのまま使用することができる。
1.2DMEM培地:DMEM粉末(高糖度、ピルビン酸塩)1Lを超純水950 mLに加え、無水炭酸水素ナトリウム3.7 gを添加する。1 M HClでpHを7.2に調整し、超純水で容量を1 Lに固定。最後に、培地を0.22 μmの容量フィルターで膜ろ過し、無菌容器に入れる。(ろ過後、pHが0.1~0.3単位上昇することがある)
1.3陽性対照薬の構成:デキサメタゾン溶液:デキサメタゾン1.95 mgをDMSO 5 mLに溶かし、振盪して溶解した。1000×溶液(10mM)を得る。分注し、-20°Cの冷蔵庫で保管する。
1.4被験物質溶液調製:
化合物A/化合物B/化合物C:被験物質の適切な質量を秤量してDMSOに溶解し、終濃度1Mの溶液を調製する。分注後は-20°Cで保存する。
1.5ペニシリン/ストレプトマイシン二重抗体溶液:ペニシリン800万単位/瓶を超純水40 mLと混合したもの、ストレプトマイシン1 g/瓶を超純水50 mLと混合したものを体積比で1:1に混合し、100×ペニシリン/ストレプトマイシン二重抗体溶液(ペニシリン10万単位/mL、ストレプトマイシン10 mg/mL含有)とする。この溶液を0.22 μmの滅菌微孔膜でろ過した後、10 mL/tubeに分注し、-20°Cの冷蔵庫で保存する。
1.6緩衝液調製:
PBS: 8 g NaCl, 0.2 g KCl, 1.44 g Na2HPO4, 0.24 g KH2PO4を1Lメスフラスコに量り、超純水を900 mLまで加え、濃塩酸でpH7.2に調整して1Lとする。室温で保存する。
【0089】
2.細胞培養(回収、継代、凍結乾燥)。
2.1H9c2細胞の回収(出所:CAS cell bank、37°C保存):細胞懸濁液1 mLを含む凍結チューブを37°Cのウォーターバスで急速振盪して解凍し、DMEM完全培地(10%牛胎児血清(FBS)と1%ペニシリン/ストレプトマイシン二重抗体液)4 mLを加えてよく混合した。1000 rpmで4分間遠心し、上清を捨て、DMEM完全培地4 mLを加え、軽くたたいてほぐす。その後、すべての細胞懸濁液をT25細胞培養フラスコに加え、一晩培養(又は、細胞懸濁液を約10 cmディッシュに加え、約6 mLの培地を加え、一晩培養)。細胞培養用フラスコを上下水平に2回、左右水平に2回振って、細胞がフラスコ内に均一に分散されるようにする。翌日、溶液を交換し、細胞密度を確認する。
2.2H9c2細胞の継代培養とプレート展開:細胞密度が80%~90%になれば、継代培養が可能。培養上清を捨て、カルシウム・マグネシウムイオンを含まない500 μLのPBSで細胞を左右に軽く振って1~2回濡らしながら洗浄し、廃棄する。500 μLのトリプシン(H9c2細胞の使用濃度は0.25%)を培養瓶に添加し、37°Cの培養箱の中で4分間消化し、その後、顕微鏡の下で細胞の消化情況を観察し、細胞の大部分は丸くなって脱落し、操作台に持ち帰り、2 mL DMEM完全培地(膵プロテアソーム積に対するDMEM培地の比=1:4)を添加して消化を停止し、そしてDMEM完全培地を利用してまだ脱落していない細胞を洗い流した。DMEM完全培地を6~8 mL/瓶で加え、穏やかに振り混ぜて吸引し、1000 rpmで6分間遠心し、上清を捨て、2 mLのDMEM完全培地で細胞を再懸濁させる。
細胞継代を行う場合は、8 mL DMEM完全培地を含む新しいディッシュ又は5 mL T25細胞培養フラスコに細胞懸濁液を1:2~1:5で分注する。
【0090】
3.細胞試験:
抗炎症薬のスクリーニングに用いたH9c2細胞のTNF-α誘発炎症モデル
6ウェル培養プレートに入れたH9c2細胞は、培養上清を捨て、PBSウェットで2回洗浄して薬剤とインキュベートした。実験ウェルの設定は、ブランク対照群、モデル対照群、陽性対照群、実験群に分けられた。実験群は、高用量群、中用量群、低用量群に分けられた。PBSで洗浄後、0.98 mLのDMEM培地(0.5%DMSO含有)をブランク群とモデル群に加え、終濃度10 μMのデキサメタゾンを陽性対照群の各ウェルに添加した。実験グループは、化合物A、化合物B、化合物Cに分けられ、各薬剤について高、中、低用量の3つの濃度勾配があり、すべてDMEM培地で希釈された。作業濃度は、化合物Aと化合物Cはそれぞれ5 mM, 1 mM, 0.2 mM、化合物Bはそれぞれ3 mM, 1 mM, 0.2 mMであった。6ウェルプレートの各ウェルは、上記溶液の添加後、細胞を入れて2時間インキュベートした。2時間後、DMEM培地を捨てることを禁じ、ブランク対照群を除く全ての群に、TNF-αの最終作業濃度が10 ng/mLとなるように500 ng/mLのTNF-αを含むDMEM培地を20 μL加え、細胞に炎症反応を誘発させた。1時間後に培養上清を捨て、PBS湿式洗浄後、RNA抽出のために細胞を回収。
【0091】
4.細胞サンプルの処理:
4.1トータルRNA抽出手順
細胞全リボ核酸(RNA)は、TRizol試薬を用いて以下のように調製した。
組織のホモジナイズ:細胞の入った6ウェルプレートにTRizol 1 mLを加え、細胞をこすり落とす。よくブローした後、1.5 mL EPチューブに移し替える。
液相分離:0.2 mLのクロロホルムを加え、15秒間手で激しく振り、室温で2-3分放置後、4°C、12,000 rpm、15分間遠心分離する。(遠心分離後3層に分かれ、下層の赤い層が組織沈殿物とフェノール・クロロホルム相、中層がタンパク質とデオキシリボ核酸(DNA)、上層が無色の水相で、RNAは水相にのみ存在)。
RNAの沈殿と洗浄:上層の水相を別の清潔なEPチューブに移し(取り過ぎないように注意し、中間層まで)、0.5 mLのイソプロパノールを加え、手でよく振って室温で10分間放置後、4°C、12,000 rpm、10分間の遠心分離を行った。遠心分離後、チューブの側壁や底に白い沈殿物が見えるが、これがRNAの沈殿物である。上清を除去し、75%エタノール1 mL(DEPC水が必要)を加え、上下に振って沈殿を浮かせ、7,500 rpm、4°Cで5分間遠心分離する。
RNAの再溶解:沈殿物を落とさないように静かに上清を流し、短時間遠心分離してチューブの底に残った上清を振り、200 μLと10 μLのガンで上清を吸引する。キャップを外し、5~10分間自然乾燥させる。RNA沈殿を20~50 μLのDEPC水で再懸濁し、ガンで数回繰り返しブローする。
濃度測定:ブランク対照としてDEPC水を使用し、OD260/280値を測定する。1 OD = 40 μg RNA。OD260/280が1.8~2.0のものが高純度品とされている。1000 ng/mL以下の濃度は一般に正確である。高すぎる濃度は、希釈して後で測定する必要がある。OD260/280値が1.8~2.0の場合は良質のRNA、2.2以上の場合はRNAがシングルヌクレオチドに加水分解されている、1.8以下の場合はタンパク質が混入していることを示す。RNA抽出後、一部は同日中に逆転写を行い、残りはラベルを付けて-80°Cで保存する。
4.2 mRNAの逆転写によるcDNAの第一鎖の合成
cDNAの一本鎖は、mRNAの逆転写により、以下の2段階のプロセスで合成される。
逆転写反応系の調製(10μL系):5xPrimeScript RT Master Mix、トータルRNA、DEPC水を反応管に直接加え、最後にピペットを軽く吹きつけて、均等に混ぜる。
【0092】
【0093】
【0094】
逆転写産物は、直ちにリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)に使用するか、-20°Cで短期間保存することができます。長期保存する場合は、凍結融解を繰り返さないように分割し、-80°Cで保存することが推奨される。逆転写産物のcDNA濃度を測定するには、DEPC水で装置をゼロに調整し、測定したサンプルcDNAは、そのままqPCRアッセイに使用することができる。
【0095】
5.逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)アッセイ
5.1プライマー設計とRT-PCR
標的炎症関連遺伝子MCP-1のプライマーは、チューブリンを内部参照遺伝子として設計し、Paisano Biosciences Ltd.又はBioengineering (Shanghai) Co., Ltd.で合成した。プライマー情報を表3(H9c2細胞用)に示す。
【0096】
【0097】
5.2RT-PCR
cDNAを「鋳型」として、SYBR Premix Ex TaqTMII(Tli RNaseH Plus)を用いてRT-PCRシステムを調製した(表4)。反応はRoche Light Cycle 480II 96 Real-Time PCR Systemを用いて、95°Cで30秒間の前変性、95°Cで5秒間の変性、55°Cで30秒間のアニーリング、72°Cで30秒間の伸長を行い、40回サイクルを行い、溶融曲線を付けて各サイクル終点で蛍光シグナルを検出する増幅手順で実施した。
【0098】
【0099】
6.試験グループと試験方法
6.1グループ及び投与情報
【表5】
6.2試験方法
6.2.1モデリング方法
H9c2細胞の炎症誘発モデルは以下のようにモデル化された:10 ng/mL TNFが1時間誘発された。
6.2.2薬力学的パラメータの測定
H9c2細胞モデルでは、炎症因子であるMCP-1を抗炎症薬力学的な指標として選択した。炎症因子MCP-1のmRNA発現は、RT-PCRで検出した。
図8を参照されたい。
【0100】
7.結論
TNF誘発H9c2細胞モデルにおいて、化合物A、B及びCは、ある用量範囲内で、炎症因子MCP-1 mRNAの上昇を用量依存的に抑制した。これは、化合物A、B、Cが抗炎症作用を有することを示している。