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特許7548616斜視矯正機能付きVRヘッドマウントディスプレイ及びその運用方法
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  • 特許-斜視矯正機能付きVRヘッドマウントディスプレイ及びその運用方法 図1
  • 特許-斜視矯正機能付きVRヘッドマウントディスプレイ及びその運用方法 図2
  • 特許-斜視矯正機能付きVRヘッドマウントディスプレイ及びその運用方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】斜視矯正機能付きVRヘッドマウントディスプレイ及びその運用方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/08 20060101AFI20240903BHJP
   G02B 27/02 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
A61B3/08
G02B27/02 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023066667
(22)【出願日】2023-04-14
【審査請求日】2023-04-14
(31)【優先権主張番号】112107179
(32)【優先日】2023-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】504117165
【氏名又は名称】逢甲大學
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】蔡 明翰
(72)【発明者】
【氏名】呂 瑞邦
(72)【発明者】
【氏名】林 慧茹
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-509983(JP,A)
【文献】国際公開第2016/051430(WO,A1)
【文献】橋本諭 ほか,VR機器を用いた訓練後に立体視の向上がみられた不同視弱視の1例,日本視能訓練士協会誌,2022年,vol. 52, pp. 191-198
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/08
G02B 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の検査用のテスト画面を表示するための表示ユニットと、
前記使用者が前記テスト画面を観視する時、前記使用者の眼球の偏角を検出する検出素子と、
前記表示ユニット及び前記検出素子に接続される処理モジュールと、
前記表示ユニット及び前記処理モジュールに接続される光学シミュレーション素子とを含む斜視矯正機能付きのヘッドマウントディスプレイであって、前記光学シミュレーション素子及び前記処理モジュールは、前記検出素子が前記使用者の前記偏角が0度を超えることを検出した時、分析のため前記偏角を取得し、前記処理モジュールは分析結果に基づき、プリズムディオプター(Prism Diopter、PD)を調整し、補償画像を前記表示ユニットに出力するヘッドマウントディスプレイ。
【請求項2】
前記テスト画面には、テストパターンが含まれる請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項3】
前記分析結果は、前記検出素子は前記偏角が0度であることを検出した時、前記光学シミュレーション素子及び前記処理モジュールによって得られた補償角度である請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項4】
前記偏角が0度を超える場合、前記光学シミュレーション素子は前記偏角に基づいてシミュレートして、少なくとも1つの調整後のテスト画面を前記表示ユニットに出力し、前記使用者の再度テストのために提供され、前記検出素子は眼球運動の前記偏角が0度であることを検出すると、検査が完了したことになる請求項1に記載のヘッドマウントディスレイ。
【請求項5】
前記処理モジュールは、前記使用者が必要とする前記補償角度に基づいて光学シミュレーションを行って前記補償画像を得、前記使用者に観視させるため、前記表示ユニットに表示する請求項3に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項6】
前記光学シミュレーション素子には、プリズム屈折方法又はカメラ回転方法が含まれる請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項7】
前記処理モジュールは、中央演算処理装置、グラフィックスプロセッサ又はその組み合わせである請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項8】
前記表示ユニットには、能動型発光ディスプレイ、受動型発光ディスプレイ或いは3D表示ディスプレイが含まれる請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項9】
前記検出素子は、アイトラッカーである請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、斜視矯正機能付きVR(Virtual reality、仮想現実)ヘッドマウントディスプレイに関し、特に、プリズムディオプター(Prism Diopter、PD)レンズシミュレーションシステムを組み込んだヘッドマウントデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
目は魂の窓であり、目を通じて外的現実を見ることができるが、目も多くの人間の臓器と同様に、先天性か後天性かにかかわらず、異常が発生して視力低下につながることがあり、例えば焦点ぼけ(近視又は遠視など)或いは散乱(斜視又は乱視など)などの屈折異常である。
【0003】
大部分の観視の条件において、健康な両目の視線はそろい、視軸が平行である。斜視は、眼位ずれの視覚障害であり、主な治療目標は、注視する全ての距離と方向において快適で単一視であってかつ明瞭で正常な両眼視の獲得である。通常、眼鏡と手術を組み合わせて治療している。
【0004】
斜視の検出には、主に瞳孔対光反射検査(Hirschberg test)、遮閉試験(cover-uncover test)、プリズム遮蔽試験が含まれる。瞳孔対光反射検査は、被験者が遠方の一点を固視し、各瞳孔の対光反射の位置が対称であれば両眼は平行であり、逆に非対称であれば斜視となる可能性があり、斜視角は適切な強度のプリズムによる反射の対称性によって測定できる。2番目の試験方法は、遮閉試験(cover-uncover test)で、患者が近く又は遠くの対象物を見る時片眼を遮閉して、医師は遮閉されていない他眼の動きを観察し、さまざまな強度のプリズムと方向で試験を繰り返し、斜視角を測定する。最後はプリズム遮蔽試験で、目の偏移の程度により、プリズムロッド又はプリズムレンズを介して遮閉されていない眼の眼球運動に伴うバランスをとって眼球偏位の程度を求め、かつ水平斜視と垂直斜視を別々に実施する必要があり、試験過程は煩雑で患者の十分な協力の必要がある。なお、遮閉試験及びプリズム遮蔽試験は、試験段階中に患者の眼球が動いたかどうかを判断するため、専門家の主観的な判断が必要である。上記の試験方法はステップの煩雑以外に、測定に影響を与える多くの要因があるため、測定結果が正確ではない可能性があり、専門家が実施する必要がある。
【0005】
また、市場における仮想現実(Virtual reality、VR)デジタル画像装置の台頭により、VRヘッドマウントディスプレイは視力の弱い人々に適する表示画面を提供しない。如何にして斜視患者向けのヘッドマウントディスプレイを提供するかも現在、市場における喫緊の課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、表示ユニットと、検出素子と、処理モジュールと、光学シミュレーション素子とを含む、斜視矯正機能付きヘッドマウントディスプレイを提供する。表示ユニットは、使用者の検査用のテスト画面を表示するために用いられる。前記使用者が前記テスト画面を観視する時、検出素子は、前記使用者の眼球の偏角を検出する。処理モジュールは、前記表示ユニット及び前記検出素子に接続される。光学シミュレーション素子は、前記表示ユニット及び前記処理モジュールに接続される。前記光学シミュレーション素子及び前記処理モジュールは、分析のため前記偏角を取得し、分析結果に基づき補償画像を前記表示ユニットに出力する。
【0007】
本発明の実施形態におけるヘッドマウントディスプレイの運用方法は、斜視矯正機能付きのヘッドマウントディスプレイを用意するステップS1、使用者の検査用のテスト画面を表示するステップS2、前記使用者が前記テスト画面を観視する時、前記使用者の眼球の偏角を検出するステップS3、前記偏角に基づきシミュレートして少なくとも1つの調整後のテスト画面を得るステップS4、前記調整後のテスト画面を前記使用者の再度テストのために提供し、ステップS3内で検出された前記偏角が0度になり、前記処理モジュールは前記使用者が必要とする補償角度を得るまでステップS2~S5を繰り返すステップS5、及び前記処理モジュールは前記補償角度に基づき前記使用者に観視させるための補償画像を生成するステップS6を含む。
【0008】
以上の本発明に対する略述は、本発明の幾つか態様及び技術的特徴に対し基本的な説明を行うことを目的とする。発明の略述は、本発明に対する詳細な記述ではないため、その目的は特別に本発明のキーとなる或いは重要要素を挙げることなく、本発明の範囲を特定するために用いられることはなく、簡明な方式でのみ本発明の数種概念を開示する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態におけるヘッドマウントディスプレイの構成要素を示す概略図である。
図2】使用者の眼球が本発明の実施形態におけるヘッドマウントディスプレイによって追跡されている様子を示す概略図である。
図3】本発明の実施形態におけるヘッドマウントディスプレイの運用方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の技術的特徴及び実用効果を理解し、明細書の内容に基づいて実施できるため、更に図面に示す好ましい実施形態で次の通り詳細に説明する。
【0011】
本発明は、人の目の視力低下を検出することによって補償画面を用いて目の視力を矯正するものである。図1は、本発明の斜視矯正機能付きヘッドマウントディスプレイの構成要素を示す概略図である。
【0012】
図1に示すように、本発明は、表示ユニット100と、検出素子200と、処理モジュール300と、光学シミュレーション素子400とを含む、斜視矯正機能付きヘッドマウントディスプレイ10を提供する。表示ユニット100は、使用者UEの検査用のテスト画面110を表示するために用いられる。前記使用者UEが前記テスト画面110を観視する時、検出素子200は、前記使用者UEの眼球の偏角を検出する。処理モジュール300は、前記表示ユニット100及び前記検出素子200に接続される。光学シミュレーション素子400は、前記表示ユニット100及び前記処理モジュール300に接続される。前記光学シミュレーション素子400及び前記処理モジュール300は、分析のため前記偏角を取得し、分析結果に基づき補償画像を前記表示ユニット100に出力する。
【0013】
さらに説明すると、図2に示すように、使用者UEがヘッドマウントディスプレイ10を装着した後、両目は全過程を通してテスト画面110内の円形のテストパターンを凝視し、実施形態では円で示され、テストパターンは形状や色を限定するものではなく、主な特徴が明確で、構造が単純であり、患者が理解できるように記述及び説明しやすいだけでよい。図2の検出素子200は、左右の目を撮影する高速度カメラであるアイトラッカーであり、使用者UEの両目の動きを捉える。
【0014】
図3は、本発明の実施形態におけるヘッドマウントディスプレイの運用方法を示す概略図である。図3に示すように、検出素子200は、偏角が0度であることを検出すると、斜視検査が完了したことになる。1回目のテスト後に得られた使用者UEの偏角が0度の場合、使用者UEには斜視がないことを意味する。対照的に検出素子200は、使用者UEの偏角が0度より大きいことを検出した場合、光学シミュレーション素子400は検出された偏角に応じてシミュレーションプリズム法或いはカメラ回転法で斜視をシミュレートし、調整後のテスト画面を表示ユニット100に出力して、検出素子200が眼球運動の偏角が0度になるまで使用者UEの再度テストのために提供され、この時斜視を持つ使用者が必要とする補償角度を得て、検査が完了する。
【0015】
さらに説明すると、テストの最終段階において、使用者UEのテスト結果、偏角が0度の場合、処理モジュール300は補償角度を取得する。処理モジュール300には中央演算処理装置及びグラフィックスプロセッサが含まれ、中央演算処理装置及びグラフィックスプロセッサを併用して補償角度で演算し、使用者UEに適した補償画像、すなわち斜視矯正画像を得る。左右の目用の補償画像がヘッドマウントディスプレイ10にそれぞれ表示されることで、使用者UEが最良の視覚体験を得ることができるようにする。なお、ヘッドマウントディスプレイ10は、測定された補償角度に基づいて画像の回転角度及び偏向角度を調整し、プリズムディオプターレンズシミュレーションシステムを組み込んだヘッドマウントディスプレイ10は、斜視矯正中で常用のプリズムディオプターレンズの効果をシミュレートすることができる。仮想デバイスの使用時に、使用者UEの眼球移動方向を自動的に検出し、プリズムディオプターレンズの矯正効果を増減させ、長期間の使用により、使用者の斜視の程度を軽減させ、視力矯正及び治療の目的を達成できる。
【0016】
なお、使用者UEのユーザーエクスペリエンス又はゲーム過程に伴い、検出素子200が使用者UEの頭或いは目に大幅な移動があることを検出した時、処理モジュール300はプリズムディオプター(Prism Diopter、PD)を調整する。プリズムディオプターは目から6メートルの距離に物を置き、使用者UEの左目が前記物を見る時(視野の真ん中)、右目が凝視する場所は真ん中に比べて数センチずれる程度のシミュレーション度数が低いレンズであると定義される。使用者のUEの頭又は目の移動が特定の振幅よりも大きい場合、使用者UEはシナリオの微小な変化を気付くことができないため、プリズムディオプターの調整は、使用者UEに気付くことが容易ではなく、長期間使用した後使用者UEは斜視度数が低い環境に適応することで、視力矯正の効果を奏する。
【0017】
以上に説明するものは、本発明の好ましい実施形態であって、本発明の実施範囲は、そのような実施形態に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及び明細書の内容に基づいて行われる簡単な変化と潤色は、本発明にカバーされる範囲内に属する。
【符号の説明】
【0018】
100 表示ユニット
10 ヘッドマウントディスプレイ
110 テスト画面
200 検出素子
300 処理モジュール
400 光学シミュレーション素子
UE 使用者



【要約】      (修正有)
【課題】斜視矯正機能付きVRヘッドマウントディスプレイ及びその運用方法を提供する。
【解決手段】本発明は、斜視矯正機能付きのVRヘッドマウントディスプレイ10及びその運用方法であり、ヘッドマウントディスプレイを介して使用者の眼球運動を検出することで、斜視に必要な補償角度を得、処理モジュール300は補償角度に基づいて補償画像を生成して使用者に観視させる。プリズムディオプターレンズシミュレーションシステムを組み込んだヘッドマウントディスプレイは、斜視矯正中で常用のプリズムディオプターレンズの効果をシミュレートすることができる。仮想デバイスの使用時に、使用者の眼球移動方向を自動的に検出し、プリズムディオプターレンズの矯正効果を増減させ、長期間の使用により、使用者の斜視の程度を軽減させ、視力矯正及び治療の目的を達成できる。
【選択図】図1
図1
図2
図3