(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】サーバ装置、通信システム、サーバ装置の通信方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04M 3/56 20060101AFI20240903BHJP
【FI】
H04M3/56 C
(21)【出願番号】P 2023090356
(22)【出願日】2023-05-31
【審査請求日】2023-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】阿部 竜彦
【審査官】山中 実
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-049593(JP,A)
【文献】特開2013-098706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M 3/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの位置情報、現在の日時、接続しているネットワークのネットワーク機器に関する情報、の内の少なくとも一の情報を含む通信環境情報を取得する取得部と、
通信品質を評価する評価部と、
前記通信環境情報に含まれる、少なくとも一種類の情報を入力データとし、前記取得部による前記通信環境情報の取得時から所定時間経過後に前記評価部により評価された通信品質を示す値を教師データとする予測モデルを学習させる学習部と、
前記予測モデルに基づいて、自装置と通信を行う端末との通信品質の予測を行う予測部と、
前記予測部の
前記通信品質の予測の結果に応じて、
自装置と通信を行う前記端末との通信に使用する通信回線を切換える切換部と、
を有するサーバ装置。
【請求項2】
前記学習部は、更に
予測モデルが保持している過去の時刻における通信環境情報に基づいて予測を行う予測モデルを学習させる、
請求項1に記載のサーバ装置。
【請求項3】
前記切換部は、更に
前記通信品質の予測の結果が、通信品質の所定レベル以下への低下である場合に、前記端末との通信を、公衆交換電話網又は移動体通信網を介した通信に切換える、
請求項1又は2に記載のサーバ装置。
【請求項4】
前記切換部は、
公衆交換電話網又は移動体通信網を介して
前記端末に対応する固定電話機又は携帯電話機に発信を行うための制御を実行する、
請求項3に記載のサーバ装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のサーバ装置と、
前記サーバ装置と通信を行うユーザ側の前記端末及び電話機と、
公衆交換電話網又は移動体通信網に接続されており、前記電話機と前記サーバ装置との通信を中継する中継装置と、
を含む通信システム。
【請求項6】
ユーザの位置情報、現在の日時、接続しているネットワークのネットワーク機器に関する情報、の内の少なくとも一の情報を含む通信環境情報を取得し、
通信品質を評価し、
前記通信環境情報に含まれる、少なくとも一種類の情報を入力データとし、前記通信環境情報の取得時から所定時間経過後に評価された通信品質を示す値を教師データとする予測モデルを学習させ、
前記予測モデルに基づいて、自装置と通信を行う端末との通信品質の予測を行い、
前記通信品質の予測の結果に応じて、自装置と通信を行う前記端末との通信に使用する通信回線を切換える、
サーバ装置の通信方法。
【請求項7】
予測モデルが保持している過去の時刻における通信環境情報に基づいて予測を行う予測モデルを学習させる、
請求項6に記載のサーバ装置の通信方法。
【請求項8】
前記通信品質の予測の結果が、通信品質の所定レベル以下への低下である場合に、前記端末との通信を、公衆交換電話網又は移動体通信網を介した通信に切換える、
請求項6又は7に記載のサーバ装置の通信方法。
【請求項9】
公衆交換電話網又は移動体通信網を介して
前記端末に対応する固定電話機又は携帯電話機に発信を行うための制御を実行する、
請求項8に記載のサーバ装置の通信方法。
【請求項10】
サーバ装置に請求項6又は7に記載の通信方法を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信品質の低下を予測しスムーズに回線を切換えることが可能な、サーバ装置、通信システム、遠隔会議システム、通信方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
通信中に通信品質の低下により、音声や映像等が乱れた場合に、電話回線等の帯域の専有が可能な回線に切換えることで通信品質を確保することができる。しかしながら従来では通信品質の低下が実際に察知されてから回線を切換えるため、音声や映像等の乱れが生じてから回線を切換えるまでの一定時間の間は通信品質が低下したままの状態が続くため、通話等が不能な時間が発生する可能性があった。
【0003】
特許文献1には、次のようなWeb会議システムが開示されている。このシステムでは通常時はインターネット経由で通信することで会議を開催しており、通信品質が所定のレベルまで低下した場合に音声による通信経路を、公衆交換電話網(PSTN:Public Switched Telephone Network)の電話回線に切換えるといった処理を実行する。切換処理の実行に当たっては電話回線を中継するPBX(Private Branch Exchange:構内交換機)が会議に参加してユーザ側の固定電話等に架電処理を行い、ユーザはこれに応答する。これにより音声通話を開始し、会議等を再開することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
なお、上記先行技術文献の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。以下の分析は、本発明者らによってなされたものである。
【0006】
上記の通り、特許文献1に開示されている発明では、音声品質が所定のレベルまで低下した場合に、Web会議システムが察知してインターネット等を介した通信から、電話回線を介した通信に切換えるための制御がシステム側で可能である。
【0007】
しかしながら上述の通り、通信品質の低下をシステムが実際に察知して回線を切換えるため、回線を切換えるまでの一定時間の間は通信品質が低下したままの状態が続くため通信が不能な時間が発生するといった問題が生ずる可能性がある。具体的には、特許文献1の技術では通信回線を切換えるまで次のようなステップを実行することが必要であった。すなわち1.音質の低下をWeb会議システムサーバで検出、2.音質が安定している電話回線、VPN(Virtual Private Netowrk)回線などを使用してPBXがWeb会議システムへ参加、3.PBXが架電を行うことでユーザが使用するデバイスを固定電話機やスマホに切り換え、といったステップの処理を実行することが必要であった。このため、音声の品質が低下した状態での通話が一定時間発生し、会議が中断されると行った事態が生ずる可能性がある。
【0008】
そこで、本発明の一視点において、通信品質が低下した場合にスムーズに回線を切換えることに貢献する、サーバ装置、通信システム、遠隔会議システム、通信方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の視点によれば、ユーザの位置情報、現在の日時、接続しているネットワークのネットワーク機器に関する情報、の内の少なくとも一の情報を含む通信環境情報を取得する取得部と、前記通信環境情報に基づいて、サーバ装置と通信を行う端末との通信品質の予測を行う予測部と、前記予測部の予測結果に応じて前記端末との通信に使用する通信回線を切換える切換部と、
を有するサーバ装置が提供される。
【0010】
本発明の第二の視点によれば、ユーザ側の端末及び電話機と、ユーザの位置情報、現在の日時、接続しているネットワークのネットワーク機器に関する情報、の内の少なくとも一の情報を含む通信環境情報を取得する取得部と、前記通信環境情報に基づいて、前記端末との通信品質の予測を行う予測部と、前記予測部の予測結果に応じてサーバ装置と通信を行う通信に使用する通信回線を切換える切換部と、を有するサーバ装置と、公衆交換電話網又は移動体通信網に接続されており、前記電話機と前記サーバ装置との通信を中継する中継装置と、を含む通信システムが提供される。
【0011】
本発明の第三の視点によれば、以下のステップをサーバ装置が実行する通信方法であって、ユーザの位置情報、現在の日時、接続しているネットワークのネットワーク機器に関する情報、の内の少なくとも一の情報を含む通信環境情報を取得するステップと、前記通信環境情報に基づいて、サーバ装置と通信を行う端末との通信品質の予測を行うステップと、予測結果に応じて前記端末との通信に使用する通信回線を切換えるステップと、を有する通信方法が提供される。
【0012】
本発明の第四の視点によれば、ユーザの位置情報、現在の日時、接続しているネットワークのネットワーク機器に関する情報、の内の少なくとも一の情報を含む通信環境情報を取得する処理と、前記通信環境情報に基づいて、サーバ装置と通信を行う端末との通信品質の予測を行う処理と、予測結果に応じて前記端末との通信に使用する通信回線を切換える処理と、をコンピュータに実行させるためのプログラムが提供される。
【0013】
なお、このプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記録することができる。記憶媒体は、半導体メモリ、ハードディスク、磁気記録媒体、光記録媒体等の非トランジェント(non-transient)なものとすることができる。本発明は、コンピュータプログラム製品として具現することも可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の各視点によれば、通信品質の低下を予測しスムーズに回線を切換える、サーバ装置、通信システム、遠隔会議システム、通信方法、及びプログラムを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態のサーバ装置における構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態のサーバ装置における構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】サーバ装置が取得する通信環境情報の一例を示す図である。
【
図4】第1の実施形態のサーバ装置における予測モデルの構成を示す概略図である。
【
図5】第1の実施形態のサーバ装置における別の予測モデルの構成を示す概略図である。
【
図6】第1の実施形態のサーバ装置の予測処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】第1の実施形態のサーバ装置の学習処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】第1の実施形態のサーバ装置におけるハードウエア構成の一例を示す概略図である。
【
図9】第2の実施形態の遠隔会議システムの概略を説明するための図である。
【
図10】第2の実施形態の通信システムの構成を説明する図である。
【
図11】第2の実施形態の通信システムの処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
初めに、一実施形態の概要について説明する。なお、この概要に付記した図面参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、この概要の記載はなんらの限定を意図するものではない。
【0017】
図1に一実施形態のサーバ装置の構成の一例を示したブロック図を示す。一実施形態のサーバ装置10は、取得部11と、予測部12と、切換部13と、を有する。
【0018】
取得部11は、ユーザの位置情報、現在の日時、接続しているネットワークのネットワーク機器に関する情報、の内の少なくとも一の情報を含む通信環境情報を取得する。予測部12は、通信環境情報に基づいて、サーバ装置と通信を行う端末との通信品質の予測を行う。切換部13は、予測部12の予測結果に応じて端末との通信に使用する通信回線を切換える。
【0019】
このように一実施形態のサーバ装置は、通信環境の状況の変化に基づいて、通信品質の予測値の算出が可能である。予測値に基づいて使用する回線を比較的安定した電話回線等へ切換が可能である。すなわち、現測値ではなく予測値を用いることで、通信回線の通信品質が低下する前に回線の切換処理が可能であり、切換のために通信品質の低下した時間帯が発生するのを防ぐことが可能である。
【0020】
[第1の実施形態]
[装置の構成]
図2に第1の実施形態のサーバ装置の構成の一例を示したブロック図を示す。第1の実施形態のサーバ装置10は、一実施形態と同様に、取得部11と、予測部12と、切換部13と、を有する。第1の実施形態のサーバ装置10は更に、評価部14と、学習部15と、を有する。
【0021】
取得部11は、ユーザの位置情報、現在の日時、接続しているネットワークのネットワーク機器に関する情報、の内の少なくとも一の情報を含む通信環境情報を取得する。情報の取得はスマートフォン等の端末により行われ最終的にサーバ装置が取得するという態様で良い。
図3に取得する通信環境情報の一例を示す。この図にあるように、ユーザごとに、日時、位置情報、ネットワーク機器に関する情報としてWi-Fi情報(ルータの情報)等が取得され、記憶域に格納されている。これらの情報はデータベース化されてサーバ装置、又は他のデータベースサーバ装置等に格納されていてもよい。
【0022】
予測部12は、通信環境情報に基づいて、サーバ装置と通信を行う端末との通信品質の予測を行う。予測はAI(Artificial Intelligence)を用いた予測モデルに基づいて行われてもよい。予測モデルは上記通信環境情報を入力として、通信品質(後述)の予測値又は識別値を出力するものであればよい。
【0023】
切換部13は、予測部12の予測結果に応じて端末との通信に使用する通信回線を切換える。例えば予測結果が通信品質を示す値が所定の値以下である場合には、予め通信回線を切換えるための処理を実行する。例えばインターネット経由で通信を行っていたところ予測結果が所定の通信品質以下となる場合に、電話回線(公衆交換電話網又は移動体通信網)に通信経路を切換えるといった処理を行う。
【0024】
また上記に関わらず、切換先は電話回線に限られず、帯域保証されたVPN回線や専用線としても良い。
【0025】
評価部14は、通信品質を評価する。「通信品質」とは、例えばRTT(Round Trip Time)の値や、パケットロスの数、所定時間内におけるジッタ発生の頻度等の指標で評価されるものである。これらは一例であり、本発明ではこの他にも種々の指標が適用可能である。上記通信品質の指標の値は端末等で取得されても良いし、サーバ装置10により取得しても良い。
【0026】
学習部15は、通信環境情報に含まれる、少なくとも一種類の情報を入力データとし、取得部11による前記通信環境情報の取得時から所定時間経過後に評価部14により評価された通信品質を教師データとする予測モデルを学習させる。所定時間経過後の通信品質(の評価値)を教師データとするのは将来の状態を予測するモデルであるからである。すなわち時刻tの通信環境情報を入力値として、時刻t+αの通信品質の評価値を教師データとして学習を行うことになる。
【0027】
図4は第1の実施形態のサーバ装置における予測モデルの構成を示す概略図である。この図にあるように、予測モデルはニューラルネットワークで構成されていてもよい。予測モデルは
図4のようにニューロンが階層構造をなしていてよい。
図3の通信環境情報を適宜正規化等の加工をして入力データとする。ここでは一例として時刻(24時間周期)、曜日(7日間周期)、位置情報、Wi-Fiの帯域、Wi-Fiの電波強度を入力データとしている。入力データは入力層に入力され、各ユニットの活性化関数に基づいて出力を得て、中間層に値を渡す。適宜調整により設定された階層数の中間層を介した後、出力層で集約されモデルの出力値を得る。出力の値は、上記通信品質の評価値であってもよいし、あるいは評価値を下回っているか否かの2値であってもよい。
【0028】
図5は第1の実施形態のサーバ装置における別の予測モデルの構成を示す概略図である。本予測モデルは過去の状態(時刻t-1)からフィードバックを得て、時刻t+1の評価値等を予測するモデルである。このように現在(時刻t)の通信環境情報に加え、過去(t-1)の状態に基づいて通信環境情報予測を行うと、より正確な予測が可能である。
【0029】
上記予測モデルの学習の手段については一般的な誤差逆伝播法を使用できるが、これに限られず種々の手法にて学習をすることができる。
【0030】
[処理の流れ]
図6は第1の実施形態のサーバ装置10の予測処理の流れを示すフローチャートである。サーバ装置10は処理を開始すると、通信環境情報を取得する(ステップS61)。次に、取得した通信環境情報に基づいて通信品質の予測を行う(ステップS62)。予測を行った後、又は同時に通信環境情報に基づいて通信品質の評価を行う(ステップS63)。その結果予測された通信品質が所定の基準である所定の評価値以下である場合(ステップS63、Y)には通信回線の切換えを行う(ステップS64)。予測された通信品質が所定値を上回る場合(ステップS63、N)には再び通信環境情報を取得する処理(ステップS61)に戻る。
【0031】
図7は第1の実施形態のサーバ装置10の学習処理の流れを示すフローチャートである。サーバ装置10は処理を開始すると、通信環境情報を取得する(ステップS71)。次に通信品質の評価を行う(ステップS72)。次に通信環境情報を入力、評価の結果である通信品質の示す値を教師データとして学習を実行する(ステップS73)。
【0032】
[ハードウエア構成]
次に、第1の実施形態に係るサーバ装置のハードウエア構成を説明する。
図8は、第1の実施形態に係るサーバ装置10のハードウエア構成の一例を示すブロック図である。
【0033】
サーバ装置を構成するサーバ装置10は、情報処理装置(コンピュータ)により構成可能であり、
図8に例示する構成を備える。例えば、サーバ装置10は、それぞれ、内部バス85により相互に接続されるCPU(Central Processing Unit)81、メモリ82、入出力インタフェース83、及び通信手段であるNIC(Network Interface Card)84等を備える。
【0034】
但し、
図8に示す構成は、サーバ装置を構成する各装置のハードウエア構成を限定する趣旨ではない。サーバ装置10は、それぞれ、図示しないハードウエアを含んでもよいし、必要に応じて入出力インタフェース83を備えていなくともよい。また、サーバ装置10に含まれるCPU等の数も
図8の例示に限定する趣旨ではなく、例えば、複数のCPUが各装置に含まれていてもよい。
【0035】
メモリ82は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、補助記憶装置(ハードディスク等)である。
【0036】
入出力インタフェース83は、図示しない表示装置や入力装置のインタフェースとなる手段である。表示装置は、例えば、液晶ディスプレイ等である。入力装置は、例えば、キーボードやマウス等のユーザ操作を受付ける装置である。
【0037】
サーバ装置10の機能は、処理モジュールである取得プログラムと、予測プログラムと、切換プログラムと、評価プログラムと、学習プログラムと、メモリ82等に保持されている通信環境情報と、通信品質のデータ、通信品質の所定の基準値を示すデータ等により実現される。
【0038】
上記処理モジュールは、例えば、それぞれメモリ82に格納されたプログラムをCPU81が実行することで実現される。また、そのプログラムは、ネットワークを介してダウンロードするか、あるいは、プログラムを記憶した記憶媒体を用いて、更新することができる。上記処理モジュールは、半導体チップにより実現されてもよい。即ち、上記処理モジュールが行う機能を何らかのハードウエア、及び/又は、ソフトウエアで実行する手段があればよい。
【0039】
[ハードウエアの動作]
まず、サーバ装置10の予測時のハードウエアの動作を説明する。サーバ装置10は動作を開始すると、メモリ82から取得プログラムが呼び出され、CPU81にて実行状態となる。同プログラムは端末等により取得された通信環境情報のデータを、NIC84を介して取得する。取得されたデータはメモリ82に格納される。
【0040】
次に予測プログラムがメモリ82から呼び出され、CPU81にて実行状態となる。同プログラムはメモリ82に格納されている学習済みの予測モデルを読み込む。更に同プログラムは、メモリ82に格納されている通信環境情報のデータを読み込み、予測モデルに値を渡す。CPU81における演算処理により予測結果の値(通信品質を示す値)が算出される。
【0041】
次に切換プログラムがメモリ82から呼び出され、CPU81にて実行状態となる。同プログラムは予測プログラムによる予測結果の値を読み込み、予め設定され読み込んだ通信品質の所定の基準値と比較演算を行う。演算の結果、予測結果の値が基準値以下である場合には回線の切換えを実行するための制御を開始する。例えば、NIC84を介して端末やルータ、構内交換機等に予測結果の値が基準値以下であるとの通知を行ったり、電話回線への切換えを行うための制御信号等を送信したりする。一方予測結果の値が基準値を上回る場合には引き続き予測処理を実行する。
【0042】
次に、サーバ装置10の学習時のハードウエアの動作を説明する。サーバ装置10は動作を開始すると、評価プログラムをメモリ82から呼び出し、CPU81にて実行状態とする。同プログラムは端末やサーバ装置10において評価し、取得された通信品質を示す値をメモリ82へ格納する。この通信品質を示す値が教師データとなり、通信環境情報のデータが学習時の入力データとなるため、両者を関連付けてメモリ82に格納していてもよい。
【0043】
次に学習プログラムがメモリ82から呼び出され、CPU81にて実行状態となる。同プログラムは、メモリ82に格納されている通信環境情報のデータと、通信品質を示す値と、を読み込んで、それぞれ入力データと、教師データとしてCPU81による演算処理による予測モデルの学習を行う。学習アルゴリズムは先述した誤差逆伝播法などを用い、再急降下法などで各ユニット間の重みパラメータを調整し収束させる処理等を実行するが、具体的手法については種々の手法が適用可能であり、特に限定されない。学習が終了すると、調整されたパラメータ群は学習済みの予測モデルの一部としてメモリ82に格納される。
【0044】
[効果の説明]
上記の通り、本実施形態のサーバ装置は、通信環境情報を取得し、この通信環境情報と予測モデルを用いて通信品質の予測を行うことが可能である。また、通信環境情報を取得し、回線の通信品質を評価し品質を示す値を取得することで学習データを蓄積し、これを用いて予測モデルの学習を実行することが可能である。予測モデルによる予測結果に基づいて、通信回線を切換えることで、回線が切換わるまでの間、通信品質が低いままで通信を行うといった状況を未然に回避することが可能である。
【0045】
[第2の実施形態]
第2の実施形態では上記サーバ装置を遠隔会議システムに適用した場合について述べる。
【0046】
[概略]
図9は第2の実施形態の遠隔会議システムの概略を説明するための図である。この図にあるように、本システムは会議サーバ装置100と、PC(Personal Computer)200と、PBX(Private Branch Exchange:構内交換機)300と、ビジネスホン400と、が含まれる。通常時はIP(Internet Protocol)を用いるインターネットを介してベストエフォートの回線品質にて遠隔会議を開催している。
【0047】
本実施形態の遠隔会議システムでは、会議サーバ装置100又はPC200において回線の通信品質を評価し、その評価値と、通信環境の情報である、特定の曜日や時刻、接続しているWi-Fi環境などの複合的要因、を予測モデルに学習させ、通信品質の低下を予測することで、未然に使用する回線を、帯域が保証された固定電話回線等に切換える処理を実行することが可能である。
【0048】
具体的には、会議サーバ装置100で予測モデルを用いて通信の品質の低下が予測されると、会議サーバ装置100はPC200に対して通信の品質低下が予測されるとのメッセージを送信し、PC200は画面上に警告メッセージ等を表示する。会議サーバ装置100は更にPBX300と、PBX300配下のビジネスホン400を会議に参加させるための制御を実行する。ビジネスホン400が会議に参加可能になると、会議サーバ装置100はPBX300に対してビジネスホン400へ発信させるための制御情報と、ビジネスホン400の電話番号を送信する。PBX300は配下のビジネスホン400に発信すると共に、会議サーバ装置に公衆交換電話網を用いて会議サーバ装置100に音声接続する。これに対してビジネスホン400側が発信に対して応答することにより、PC200のユーザは固定電話回線を用いて音声にて会議を続けることが可能となる。
【0049】
[構成]
図10は上述の遠隔会議システムを具現化するための、通信システムの構成を説明する図である。この図にあるように本実施形態の通信システムは、サーバ装置10(会議サーバ装置100に該当)と、端末20(PC200に該当)と、中継装置30(PBX300に該当)と、電話機40(ビジネスホン400に該当)と、が含まれる。
【0050】
サーバ装置10は上記実施形態と同様に、取得部11と、予測部12と、切換部13と、評価部14と、学習部15と、を有する。これらの構成要件については上記実施形態で記載済みであるので説明は省略する。
【0051】
端末20はユーザ側の端末を指す。PCやスマートフォン、タブレット端末等の、インターネットに接続し、映像と音声を入出力可能な端末である。
【0052】
中継装置30は公衆交換電話網又は移動体通信網に接続されており、電話機とサーバ装置との通信を中継する。上記概要では構内交換機としてのPBXを例として用いたが、特に構内交換機以外の中継装置を排除する趣旨ではなく、例えばクラウド型のPBX等も中継装置30に含まれる。
【0053】
電話機40は中継装置30に接続されており、公衆交換電話網又は移動体通信網に接続可能な電話機、ビジネスホン、スマートフォン等を指す。
【0054】
[処理の流れ]
以下に本実施形態の通信システムを用いて遠隔会議を行う場合の処理の流れを示す。
図11は本実施形態の通信システムの処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
【0055】
この図にあるようにユーザはまず遠隔会議に参加するために端末20からサーバ装置10にアクセスする(ステップS1101)。サーバ装置10は、端末の位置情報、現在の日時、端末が接続されているWi-Fiルータの情報などを端末から取得する(ステップS1102)。次に、サーバ装置10は予測モデルを使用し、遠隔会議中に端末20からの音声品質が低下する可能性があるか予測する(ステップS1103)。
【0056】
予測の結果、サーバ装置10は、遠隔会議中にユーザの音声品質が低い状態になる可能性がある場合、中継装置30に遠隔会議へ電話回線等で参加させる制御を行う。具体的には、まずサーバ装置10から中継装置30へ音声品質の低下が予測されるとの通知を行う(ステップS1104)。通知を受けた中継装置30は、通知に応じて電話回線等を通じてサーバ装置10に接続し遠隔会議に参加する(ステップS1105)。これと共にサーバ装置10は、ユーザに対して端末20に加えて電話機(固定電話又はスマートフォン)40で遠隔会議に参加することを遠隔会議アプリケーション上で提案する(ステップS1106)。ユーザは端末20より遠隔会議アプリケーションで、電話機40で遠隔会議に参加することを選択し、サーバ装置へ通知する(ステップS1107)。このとき、電話機40の内、固定電話機で遠隔会議に参加するか、スマートフォンで参加するかの選択を行っても良い。
【0057】
サーバ装置10は、中継装置30に選択された電話機40に接続するための指示を送信する(ステップS1108)。これには電話機の電話番号が含まれていても良い。中継装置30は、電話機40に架電し(ステップS1109)、ユーザが着信応答するとすでに接続されているサーバ装置10と中継装置30との間の通話と、中継装置30と電話機40との間の通話を接続し、電話機40からサーバ装置10までの音声通話の接続を成立させる(ステップS1110)。
【0058】
[効果の説明]
本実施形態の通信システムによると、通信品質の低下を予測モデルにて予測可能である。通信品質の低下が予測されると、中継装置30と配下の電話機40とを遠隔会議等に参加させる処理を実行可能である。これによりスムーズに使用回線の切換えが可能である。
【0059】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下のようにも記載され得るが、以下には限られない。
[形態1]
上述の第一の視点に係るサーバ装置のとおりである。
[形態2]
通信品質を評価する評価部と、通信環境情報に含まれる、少なくとも一種類の情報を入力データとし、取得部による通信環境情報の取得時から所定時間経過後に評価部により評価された通信品質を示す値を教師データとする予測モデルを学習させる学習部と、を更に有し、予測部は予測モデルに基づいて通信品質の予測を行う、好ましくは形態1のサーバ装置。
[形態3]
学習部は、更に予測モデルが保持している過去の時刻における通信環境情報に基づいて予測を行う予測モデルを学習させる、好ましくは形態2のサーバ装置。
[形態4]
切換部は、更に予測部の予測結果が、通信品質の所定レベル以下への低下である場合に、端末との通信を、公衆交換電話網又は移動体通信網を介した通信に切換える、好ましくは形態1から3のいずれか一のサーバ装置。
[形態5]
切換部は、公衆交換電話網又は移動体通信網を介して端末に対応する固定電話機又は携帯電話機に発信を行うための制御を実行する、好ましくは形態4のサーバ装置。
[形態6]
上述の第二の視点に係る通信システムのとおりである。
[形態7]
通信品質を評価する評価部と、通信環境情報に含まれる、少なくとも一種類の情報を入力データとし、取得部による通信環境情報の取得時から所定時間経過後に評価部により評価された通信品質を教師データとする予測モデルを学習させる学習部と、を更に有し、予測部は予測モデルに基づいて通信品質の予測を行う、サーバ装置を含む好ましくは形態6の通信システム。
[形態8]
好ましくは形態6又は7に記載の遠隔会議システム。
[形態9]
上述の第三の視点に係る通信方法のとおりである。
[形態10]
上述の第四の視点に係るプログラムのとおりである。
なお、形態9及び10は、形態1と同様に、形態2~形態5に展開することが可能である。
【0060】
引用した上記の特許文献等の各開示は、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、更にその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の全開示の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ、ないし、選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想に従って当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。特に、本書に記載した数値範囲については、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし小範囲が、別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0061】
10 :サーバ装置
11 :取得部
12 :予測部
13 :切換部
14 :評価部
15 :学習部
20 :端末
30 :中継装置
40 :電話機
81 :CPU
82 :メモリ
83 :入出力インタフェース
84 :NIC
85 :内部バス
100 :会議サーバ装置
200 :PC
300 :PBX
400 :ビジネスホン
【要約】
【課題】通信品質の低下を予測しスムーズに回線を切換える、サーバ装置、通信システム、遠隔会議システム、通信方法、及びプログラムの提供。
【解決手段】ユーザの位置情報、現在の日時、接続しているネットワークのネットワーク機器に関する情報、の内の少なくとも一の情報を含む通信環境情報を取得する取得部と、通信環境情報に基づいて、サーバ装置と通信を行う端末との通信品質の予測を行う予測部と、予測部の予測結果に応じて端末との通信に使用する通信回線を切換える切換部と、を有するサーバ装置を提供する。
【選択図】
図1