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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】光照射装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/06 20060101AFI20240903BHJP
【FI】
A61N5/06 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023206239
(22)【出願日】2023-12-06
【審査請求日】2024-03-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】323013413
【氏名又は名称】日本PBM Healing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141346
【弁理士】
【氏名又は名称】潮崎 宗
(74)【代理人】
【識別番号】100212082
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 貴康
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(72)【発明者】
【氏名】クォン ヒン,アラン
【審査官】神ノ田 奈央
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-539808(JP,A)
【文献】特開2001-212250(JP,A)
【文献】特開2004-329474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚上から顎関節及びその周囲に相当する部位に光を照射し、顎関節症治療に用いる光照射装置において、
基板と、少なくとも前記基板の一方の面に配設され、発光波長が異なる複数の光エミッタを有する発光部とを備える装置本体と、
前記発光部からの発光を制御する制御部が設けられたコントローラを備え、
前記発光部は、少なくとも、第1の帯域の波長の光を発光する第1の光エミッタと、前記第1の帯域と異なる第2の帯域の波長の光を発光する第2の光エミッタを有する、光照射装置。
【請求項2】
前記制御部は、少なくとも、前記第1の光エミッタを発光させる第1のモードと、前記第2の光エミッタを発光させる第2のモードと、前記第1の光エミッタ及び第2の光エミッタを発光させる第3のモードを切り替えて実行する、請求項1に記載の光照射装置。
【請求項3】
2つの前記装置本体が収納される2つのポケットを有し、患部に装着されるホルダーを備え、
前記ポケットは、前記発光部の光を透過する材料により構成され、
前記ポケットから前記ホルダーの装着者の患部に光を照射可能とされ、
前記ホルダーは、顔面に装着されると前記装着者の両顎関節及びその周囲に相当する部位に前記ポケットが位置され、皮膚上から顎関節及びその周囲に相当する部位に光を照射する、請求項1又は2に記載の光照射装置。
【請求項4】
前記装置本体は、電気ケーブルが着脱可能に接続される接続端子部を有し、
前記電気ケーブルを介してコントローラ及び電源ユニットと接続される、請求項1又は2に記載の光照射装置。
【請求項5】
前記電源ユニットは、モバイルバッテリーである、請求項4に記載の光照射装置。
【請求項6】
前記第1の帯域は、640~770nmであり、
前記第2の帯域は、770~1000nmである、請求項1又は2に記載の光照射装置。
【請求項7】
前記第1の帯域の波長の光の出力が、前記第1のモードと前記第3のモードで異なる、請求項2に記載の光照射装置。
【請求項8】
前記発光部は、前記第1の帯域及び前記第2の帯域と異なる第3の帯域の波長の光を発光する第3の光エミッタを有し、
前記第3の帯域は430~490nmである、請求項1又は2に記載の光照射装置。
【請求項9】
前記基板は、可撓性を有し、患部に密着可能とされている、請求項1又は2に記載の光照射装置。
【請求項10】
患部に光を照射する光照射装置において、
基板と、少なくとも前記基板の一方の面に配設され、発光波長が異なる複数の光エミッタを有する発光部とを備える装置本体と、
前記発光部からの発光を制御する制御部が設けられたコントローラを備え、
前記装置本体は、樹脂材料により形成された外装材に被覆され、
前記外装材は、少なくとも前記発光部と対峙する面が光透過性を有し、
前記外装材を介して光を照射可能とされ
口腔内の舌上と口蓋との間又は頬と歯列外側との間に保持され、口腔内に光を照射する、光照射装置。
【請求項11】
前記発光部は、少なくとも、第1の帯域の波長の光を発光する第1の光エミッタと、前記第1の帯域と異なる第2の帯域の波長の光を発光する第2の光エミッタを有し、
前記制御部は、少なくとも、前記第1の光エミッタを発光させる第1のモードと、前記第2の光エミッタを発光させる第2のモードと、前記第1の光エミッタ及び第2の光エミッタを発光させる第3のモードを切り替えて実行する、請求項10に記載の光照射装置。
【請求項12】
前記第1の帯域は、640~770nmであり、
前記第2の帯域は、770~1000nmである、請求項11に記載の光照射装置。
【請求項13】
前記基板の一方の面と反対側の面にも前記発光部が設けられている、請求項10~12のいずれか1項に記載の光照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、光照射装置に関し、詳しくは皮膚上又は粘膜上から光を目的部位に照射する光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、患者の患部に皮膚や粘膜の上から光を照射することで、外傷や手術創などの創傷治癒を促進したり、痛みを緩和したりする光線療法が行われている。光線療法は、光線療法機器によって患者の患部へ、治療方法に応じて、可視光域、紫外域、無線周波数域、または赤外域といった様々な波長の光が照射される。
【0003】
このような光線療法に用いられる機器の例としては、レーザー光を治療目的部位に照射する装置(特許文献1)、また、単色光を治療目的部位に照射する装置(特許文献2)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平09-038221号公報
【文献】特開2001-212250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光線療法を必要とする患部やその症状は様々なものがある。また、時間の経過と共に症状は変化する。そのため、光線療法に使用される光線療法機器には、患部の位置やその症状、また時間の経過に応じた光の照射が求められる。
【0006】
そこで、本技術は、患部やその症状に応じて的確に光を照射することができる光照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本技術に係る光照射装置は、皮膚上から顎関節及びその周囲に相当する部位に光を照射し、顎関節症治療に用いる光照射装置において、基板と、少なくとも前記基板の一方の面に配設され、発光波長が異なる複数の光エミッタを有する発光部とを備える装置本体と、前記発光部からの発光を制御する制御部が設けられたコントローラを備え、前記発光部は、少なくとも、第1の帯域の波長の光を発光する第1の光エミッタと、前記第1の帯域と異なる第2の帯域の波長の光を発光する第2の光エミッタを有するものである。
【発明の効果】
【0008】
本技術が適用された光照射装置によれば、第1~第3のモードにおける発光波長及び積算光量を異ならせることができる。したがって、モードを切り替えることにより、患部やその症状の経過に応じて最適な光を照射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本技術が適用された光照射装置の構成を示す図である。
図2図2は、装置本体及びコントローラの一構成例を示す機能ブロック図である。
図3図3は、第1の実施の形態に係る光照射装置を示す平面図である。
図4図4は、第1の実施の形態に係る光照射装置の使用状態を示す図である。
図5図5は、第1の実施の形態に係る光照射装置のホルダーを示す図であり、(A)平面図、(B)はポケットを取り付ける状態を示す平面図である。
図6図6は、第1の実施の形態に係る光照射装置の装置本体を示す分解斜視図である。
図7図7は、第2の実施の形態に係る光照射装置を示す平面図である。
図8図8は、第2の実施の形態に係る光照射装置の使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本技術が適用された光照射装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本技術は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0011】
図1は、本技術が適用された光照射装置1の構成を示す図である。図1に示すように、本技術が適用された光照射装置1は、基板5と、少なくとも基板5の一方の面に配設され、発光波長が異なる複数の光エミッタ6を有する発光部7とを備える装置本体2と、発光部7からの発光を制御する制御部8が設けられたコントローラ3を備える。
【0012】
発光部7は、少なくとも、第1の帯域の波長の光を発光する第1の光エミッタ6aと、第2の帯域の波長の光を発光する第2の光エミッタ6bを有する。発光部7は、第1の光エミッタ6aから発光される照射光の波長と第2の光エミッタ6bから発光される照射光の波長(wavelength:nm)及びその放射束(Radiant Flux:W)が異なる。
【0013】
制御部8は、少なくとも、第1の光エミッタ6aを発光させる第1のモードと、第2の光エミッタ6bを発光させる第2のモードと、第1の光エミッタ6a及び第2の光エミッタ6bを発光させる第3のモードを切り替えて実行する。
【0014】
これにより、光照射装置1は、第1~第3のモードにおける患部に対する放射照度(Irradiance:W/m)及び吸収エネルギー(J)を異ならせることができる。したがって、モードを切り替えることにより、患部やその症状に応じて最適な光を照射することができる。
【0015】
以下、光照射装置1の各構成について詳細に説明する。
【0016】
[装置本体]
装置本体2は、基板5と、少なくとも基板5の一方の面に配設され、発光波長が異なる複数の光エミッタ6を有する発光部7とを備える。
【0017】
[基板]
基板5は、絶縁性基板であり、用途に応じて、例えばポリイミド等の可撓性を有する絶縁性フィルムや、ガラスエポキシ基板等のリジッド基板により形成される。基板5としては、患部への密着性に優れる可撓性基板が好ましい。可撓性基板を用いることにより、患部が、例えば、腕、足、顔、臀部のように湾曲した表面を有する場合でも、装置本体2を患部に密着させることができ、光を効率よく照射することができる。
【0018】
可撓性を有する基板5としては、ポリイミド樹脂フィルム以外にも、例えば、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、PET(polyethylene terephthalate)樹脂、液晶ポリマー等のフィルムや、これらのフィルムの表面に白色顔料を含む樹脂(白樹脂、白レジスト、等)を塗布した高反射性の樹脂フィルム、白色顔料を混合した高反射性樹脂フィルム等、様々な材料が使用可能である。
【0019】
基板5の面積は特に限定は無く、用途並びに第1、第2の光エミッタ6a,6bの数及び配置パターンに応じて適宜設計される。例えば、後述する顎関節症治療に用いる光照射装置40では、顎関節及びその周囲に相当する部位をカバーする大きさ(例えば、60~85mm×115~120mm)とされる。また、後述する口腔内の粘膜治療に用いる光照射装置50では、舌上や頬の内側に無理なく装着できる大きさ(例えば、50~60mm×60~90mm)とされる。
【0020】
基板5の厚みも特に限定は無く、用途に応じて適宜設計され、例えば0.5mm厚程度である。
【0021】
なお、光照射装置1においては、基板5の光エミッタ6が搭載された面を表面5aとし、基板5の表面5aと反対側の面を裏面5bとする。
【0022】
[発光部]
基板5には図示しない配線が形成され、配線上に発光部7を構成する光エミッタ6が搭載されている。配線は、例えば表面が銀メッキで覆われた銅メッキ配線などにより形成される。配線材料は、発光効率の観点から低抵抗であることが好ましい。また、光照射時に患部から反射される光を患部に戻しロスを低減する観点から、表面反射率が高いもの、例えば全光束反射率が80%以上の材料が好ましい。
【0023】
光エミッタ6は、基板5上の配線を介して基板5の表面5a又は裏面5bに設けられた接続端子部11と接続されている。接続端子部11は、電気ケーブル15を介してコントローラ3と接続されている。光エミッタ6は、電気ケーブル15の端部に接続されたコントローラ3によって、光照射、例えば照射ON及び照射OFF、照射モード(第1の光エミッタ6a及び/又は第2の光エミッタ6b、時間(sec)、放射照度(W/m)、吸収エネルギー(J)など)が制御される。
【0024】
[光エミッタ]
光エミッタ6としては、特に制限は無く、例えば発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)、半導体レーザダイオード(LD)、ポリマー発光ダイオード(PLED)、発光ポリマー(LEP)、光ファイバ束等、若しくはこれらの組合せ等が例示されるが、これらに限定されない。光エミッタ6は、基板5の表面5aに設けられたパッド(図示せず)上に表面実装される等により、配線と接続されている。
【0025】
発光部7を構成する光エミッタ6には、第1の帯域の波長の光を発光する第1の光エミッタ6aと、第2の帯域の波長の光を発光する第2の光エミッタ6bを有する。第1の帯域の波長と第2の帯域の波長は、異なる波長であり、例えば、第1の帯域は、640~770nm(660±10%)であり、第2の帯域は、770~1000nm(880±10%)である。なお、本明細書では、第1の光エミッタ6aと第2の光エミッタ6bを区別しない場合や、第1、第2の光エミッタ6a,6bの両方を指す場合に、「光エミッタ6」と称することがある。後述する第3の光エミッタ等、第1、第2の光エミッタ6a,6b以外の光エミッタを設けた場合も同様である。
【0026】
発光部7は、第1の光エミッタ6aと第2の光エミッタ6bとの組み合わせによるユニットを構成し、複数のユニットが基板5の表面5aに設けられている。ユニットの構成は特に限定は無く、任意に設計することができる。図1に示す例では、1つの第1の光エミッタ6aと、2つの第2の光エミッタ6bで構成されるユニットが均等に配列されている。
【0027】
光照射装置1は、光エミッタ6を照射するための少なくとも3つのモードを有する。すなわち、光照射装置1は、第1の光エミッタ6aのみを発光させる第1のモードと、第2の光エミッタ6bのみを発光させる第2のモードと、第1の光エミッタ6a及び第2の光エミッタ6bを発光させる第3のモードを有する。モードの切り替えは、後述するコントローラ3に設けられた制御部8によって制御される。
【0028】
第1の光エミッタ6aから発光される照射光の波長と第2の光エミッタ6bから発光される照射光の波長(wavelength:nm)及びその放射束(Radiant Flux:W)が異なる。したがって、光照射装置1は、制御部8によってモードを切り替えことにより、第1~第3のモードにおける患部に対する放射照度(Irradiance:W/m)及び吸収エネルギー(J)を異ならせ、患部やその症状に応じて最適な光を照射することができる。
【0029】
この他にも、光照射装置1は、各モードにおける光照射のパターンも適宜設定でき、第1の光エミッタ6a及び/又は第2の光エミッタ6bを一律に同じ放射照度で点灯してもよく、点滅させててもよい。また、時間的に照射位置や放射照度、照射パターンが変動するように設定してもよい。
【0030】
また、光照射装置1は、第1の光エミッタ6aの第1の帯域の波長の光の出力(放射束)を、第1のモードと第3のモードで異なるようにしてもよい。例えば、第1の光エミッタ6aのみが発光する第1のモードでは出力を高くし、第2の光エミッタ6bとともに発光する第3のモードでは出力を低くしてもよい。
【0031】
第1の光エミッタ6aとしては、赤色光(発光波長:640~770nm)を発光するLEDが例示される。また、第2の光エミッタ6bとしては、赤外光(発光波長:770nm~1000nm程度)を発光するLEDが例示される。
【0032】
また、発光部7は、第1の帯域及び第2の帯域と異なる第3の帯域の波長の光を発光する第3の光エミッタを有してもよい。第3の光エミッタは、第3の帯域の波長として例えば、青色帯域の波長の光(発光波長:430~490nm)を発光するものを使用することができる。光照射装置1は、第3の光エミッタを単独又は第1、第2の光エミッタ6a,6bのいずれか若しくは両方と用いるモードを設定することにより、患部やその症状に応じて、より最適な光を照射することができる。
【0033】
赤色光(発光波長:640~770nm)は、比較的患部の外側の痛みの緩和に対して有効といわれている。また、赤外光(発光波長:770nm~1000nm程度)は、血流の促進や、骨の治療、患部の内側の痛みの緩和に対して有効といわれている。青色光(発光波長:430~490nm)は、バクテリア等の殺菌や消毒作用を有するといわれている。光照射装置1は、例えば、強い痛みの緩和に用いる場合は、第1の光エミッタ6aのみから赤色光を照射する第1のモードを選択する。第1のモードにおける第1の光エミッタ6aの出力は、他のモードよりも大きいため、より痛みの緩和に適した光を照射することができる。
【0034】
[温度検知部]
なお、基板5には、光エミッタ6の温度を検知するサーミスタ等の温度検知部17を設けてもよい。これにより、光エミッタ6が所定の温度以上に加熱した場合に、光照射を停止し、装着者及び装置本体2を保護するように制御することができる。
【0035】
[コントローラ]
次いで、発光部7からの発光を制御する制御部8が設けられたコントローラ3について説明する。図1に示すように、コントローラ3は、装置本体2と電気ケーブル15を介して接続されている。また、コントローラ3は、電気ケーブル15を介して電源ユニット18と接続される。コントローラ3は、装置本体2及び電源ユニット18と電気ケーブル15を介して着脱可能に接続される。
【0036】
電源ユニット18としては、家庭用コンセントと接続された電源装置(アダプタ)18aや、再充電可能な又は使い捨ての電池が収容されるモバイルバッテリー18b等を使用することができる。このように、装置本体2とコントローラ3及び電源ユニット18を分離し、ケーブルで接続することにより、装置本体2の装着時に掛かる重量が装置本体2自体の重量のみとなり、装着位置のズレを防止することができ、また装置本体2を患部に装着する装着者の負担を軽減でき、さらに操作性を向上することもできる。また、装置本体2が電源ケーブル15と着脱可能とされることで、使用後に装置本体2のみを交換したり洗浄したりするなどのメンテナンスも容易となる。
【0037】
なお、二次電池をコントローラ3や装置本体2に内蔵してもよい。コントローラ3や装置本体2に内蔵された二次電池は、コントローラ3や装置本体2が家庭用コンセントに接続された電源装置と電源ケーブルを介して接続されることにより充電可能となる。
【0038】
図1及び図2には装置本体2及びコントローラ3の一構成例を示す機能ブロック図が示されている。図1及び図2に示すように、コントローラ3は、プログラムに基づき光エミッタ6の照射部位、照射時間、照射光の波長、放射照度等を制御したり、予め照射部位、照射時間、照射光の波長、放射照度及び吸収エネルギー等が設定されたモードや、光照射装置1の稼働履歴をメモリやストレージに保存したりする制御部8と、電源のON・OFFや照射のON・OFFの操作やモードの選択を行う操作ボタンなどを備えた操作部21とを備えている。
【0039】
なお、コントローラ3は、手動で照射部位、照射時間、照射光の波長、放射照度、吸収エネルギー等の設定を行なう設定部22や、光照射装置1の稼働状態や稼働履歴、スケジュール管理、光照射の残り時間、バッテリ残量などを表示する液晶パネル等の表示部24、所定の光照射の終了やエラー状態等をアラーム音や発光、振動などで報知する報知部25、インターネットを介して外部サーバ31と接続し、制御部8に格納された制御プログラムやスケジュールの更新、制御部8に保存された稼働履歴の送信等を行う通信部26などを設けてもよい。
【0040】
制御部8は、マイクロプロセッサ28を有する。マイクロプロセッサ28は、メモリ29やストレージ34との間で第1~第3のモード等のプログラムや光照射装置1の稼働履歴等の情報通信を行う。また、マイクロプロセッサ28は、設定部22の設定情報をメモリ29又はストレージ34に保存し、またメモリ29又はストレージ34に保存された設定に応じて光エミッタ6の照射を制御する。
【0041】
マイクロプロセッサ28は、電源のON/OFFを行う電源スイッチ32及び照射開始/停止を操作する操作スイッチ33の操作に応じて動作する。また、マイクロプロセッサ28は、サーミスタ等の温度検知部17からの信号に応じて光照射を停止する。これにより、光エミッタ6が所定の温度以上に加熱した場合に、光照射を停止し、装着者及び装置本体2を保護するように制御することができる。
【0042】
さらに、マイクロプロセッサ28は、電源ユニット18をモバイルバッテリーで構成した場合における出力電圧を検出する検出回路35の出力を受信し、充電量を判断し、表示部24や報知部25を制御して使用者に伝える。
【0043】
[第1の実施の形態]
次いで、光照射装置1の具体的な適用例について説明する。なお、以下の実施の形態は光照射装置1の一適用例であり、本発明は、この実施の形態に限るものではない。
【0044】
第1の実施の形態に係る光照射装置40は、顎関節症および障害(TMJ/TMD)の治療に使用されるものである。図3は光照射装置40の平面図であり、図4は光照射装置40の使用状態を示す図である。光照射装置40は、装置本体2と、装置本体2が収納されるとともに、使用者の顔面に巻回され、装置本体2を顔面の所定の位置に当てるホルダー41を有する。
【0045】
図5はホルダー41を示す図であり、(A)平面図、(B)はポケットを取り付ける状態を示す平面図である。ホルダー41は、略帯状に形成され、装置本体2を収納するポケット42が、長手方向に離間して2つ設けられている。光照射装置40は、ポケット42に装置本体2を発光部7が光透過性を有するポケット42の表側を向くように収納し、使用者の頭に縦方向に巻回して使用される(図4)。これにより、装置本体2の発光部7が使用者の顎関節及びその周囲に相当する部位と対峙されて保持され、モードに応じた光を照射することができる。
【0046】
ホルダー41は、ポリエステルやポリウレタンなどの素材で形成され、適度な伸縮性と強度を有する。ホルダー41の材料はこれらに限定されないことはもちろんである。また、ホルダー41の長手方向の両端部には、面ファスナーやホック等による係止部46が設けられ、これにより使用者の顔面に装着し、固定することができる。
【0047】
ポケット42は、PET、PVC、PC、PMMA、TPU等、発光部7の光を透過する光透過性を有する素材で形成された略矩形状のカバー42aからなる。ポケット42は、例えば、カバー42aがホルダー41に一辺を開放するように縫合や接着等によりに取り付けられることにより形成される。ホルダー41は、ポケット42の開放端から装置本体2を挿脱可能とされる。
【0048】
また、ホルダー41は、ポケット42の内側に、装置本体2の接続端子部11を露出させる端子孔43が設けられている。装置本体2は、ポケット42に収納されると、基板5の裏面5bに設けられた接続端子部11が端子孔43から露出され、電気ケーブル15と接続可能とされている。
【0049】
光照射装置40に使用される装置本体2は、図6に示すように、発行部7が設けられた基板5と、基板5を両面側から挟持するトレイ44及び保護カバー45を備える。基板5がトレイ44及び保護カバー45に挟持されることにより、取り扱い性に優れ、また発光部7を保護することができる。
【0050】
基板5は、角部が丸みを帯びた略台形状をなし、表面5aに第1の光エミッタ6aと第2の光エミッタ6bとの組み合わせによるユニットが4つ又は3つ配列されたユニット列47が所定の間隔を空けて6列設けられている。光照射装置40における光エミッタ6ないしユニットの配列パターンはこれに限られるものではない。また、ユニット列47間には、楕円形の開口部48が設けられている。
【0051】
トレイ44は、基板5と同様に、角部が丸みを帯びた略台形状をなし、基板5が収納される収納凹部49が設けられている。また、トレイ44は、可撓性を有する樹脂材料、例えば、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、PET樹脂や、これらの樹脂に白色顔料を含有させたもの(白樹脂、白レジスト、等)などにより形成することができる。なお、トレイ44の材料はこれらに限定されるものではない。
【0052】
また、保護カバー45は、トレイ44に収納された基板5の表面5aを覆うものであり、基板5に設けられた開口部48に挿通する楕円形の凸部48aが設けられている。保護カバー45は、凸部48aが開口部48に挿通することにより、基板5の位置決めを図ることができる。また、保護カバー45は、基板5の光エミッタ6の形成位置に応じて、光エミッタ6との干渉を防止する凹部45aが設けられている。保護カバー45は、PET、PVC、PC、PMMA、TPU等、発光部7の光を透過する光透過性及び可撓性を有する樹脂材料などにより形成される。なお、保護カバー45の材料はこれらに限定されるものではない。
【0053】
光照射装置40は、ホルダー41、ホルダー41に収納される装置本体2が可撓性を有するため、図4に示すように、ホルダー41を使用者の頭に縦方向に巻回して装着すると、装置本体2の発光部7を使用者の顎関節及びその周囲に相当する部位に沿って密着させることができる。したがって、光照射装置40は、装着感を損なうことがなく、また、モードに応じた光を効率よく患部に照射することができる。なお、光照射装置40は、頭部以外の部位に対して用いてもよい。
【0054】
以下、光照射の各モードにおける光エミッタ6の波長、放射照度、照射時間、吸収エネルギーの設定例について説明する。基板5の表面には、光エミッタ6として、21個のLEDユニットが設けられ、各ユニットは、第1の光エミッタ6aとして赤色光(発光波長:640~770nm)を発光するLEDと、第2の光エミッタ6bとして赤外光(発光波長:770nm~1000nm程度)を照射するLEDにより構成されているものとする。光照射装置40は、ホルダー41の片側に当該基板5が設けられ、全体で計42個のLEDユニットが設けられている。なお、いずれのモードにおいても、温度検知部17によってモニタされる光エミッタ6の動作停止温度は、例えば43℃に設定される。
【0055】
第1のモードでは、第1の光エミッタ6aにより赤色光のみを発光させる。各第1の光エミッタ6aの動作電流を9mA±10%(8.1~9.9mA)、単位面積当たりの放射束を14.0mW/cm±10%(12.6~15.4mW/cm)、動作時間を360sec±10%(324~396sec)の範囲で設定してもよい。動作電流:9mA、単位面積当たりの放射束:14.0mW/cm、動作時間:360secとした場合、各装置本体2から照射される赤色光の放射照度の総量は294.0mW/cm、光照射装置40全体では588.0mW/cmとなり、各装置本体2からの照射光の吸収エネルギー(J)は105.8J、光照射装置40全体では211.6Jとなる。
【0056】
第2のモードでは、第2の光エミッタ6bにより赤外光のみを発光させる。各第2の光エミッタ6bの動作電流を33mA±10%(29.7~36.3mA)、単位面積当たりの放射束を65.4mW/cm±10%(58.9~71.9mW/cm)、動作時間を360sec±10%(324~396sec)の範囲で設定してもよい。動作電流:33mA、単位面積当たりの放射束:65.4mW/cm、動作時間:360secとした場合、各装置本体2から照射される赤外光の放射照度の総量は1372.9mW/cm、光照射装置40全体では2745.8mW/cmとなり、各装置本体2からの照射光の吸収エネルギー(J)は494.2J、光照射装置40全体では988.4Jとなる。
【0057】
第3のモードでは、第1の光エミッタ6aにより赤色光を発光させるとともに第2の光エミッタ6bにより赤外光を発光させる。各第1の光エミッタ6aの動作電流を7mA±10%(6.3~7.7mA)、各第2の光エミッタ6bの動作電流を33mA±10%(29.7~36.3mA)、単位面積当たりの放射束を79.4mW/cm±10%(71.5~87.3mW/cm)、動作時間を360sec±10%(324~396sec)の範囲で設定してもよい。第1の光エミッタ6aの動作電流:7mA、第2の光エミッタ6bの動作電流:33mA、単位面積当たりの放射束:79.4mW/cm、動作時間:360secとした場合、各装置本体2から照射される赤外光の放射照度の総量は1666.9mW/cm、光照射装置40全体では3333.8mW/cmとなり、各装置本体2からの照射光の吸収エネルギー(J)は600.0J、光照射装置40全体では1200.0Jとなる。
【0058】
なお、放射照度は、光エミッタ6から照射して放射照度計により単位面積当たりに入射する光の放射束を計測することで求めることができる。各装置本体2からの放射照度の総量は、各光エミッタ6の放射照度に光エミッタ6の個数を掛け合わせることで求めることができる。また、各装置本体2から照射される光の吸収エネルギー(W・sec)は、放射照度の総量(W)と照射時間(sec)を掛け合わせることにより求めることができる。
【0059】
上記各モードにおける光エミッタ6の発光波長、放射照度、動作時間、吸収エネルギーの値は例示であり、各モードの設定値は上述したものに限定されない。また、光照射装置40は、第1~第3のモードに毎にコントローラ3の報知部25のインジケーターの発光色が変わり、いずれのモードで駆動しているかを識別できるようにしてもよい。
【0060】
[第2の実施の形態]
次いで、光照射装置1の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態に係る光照射装置50は、口腔内の粘膜治療に用いるものである。図7は光照射装置50の平面図であり、図8は光照射装置50の使用状態を示す図である。光照射装置50は、装置本体2と、装置本体2が内蔵され、口腔内に保持される外装材51を有する。
【0061】
外装材51は、例えば平面視で楕円形をなす板状をなし、口腔内の舌上と口蓋との間又は頬と歯列外側との間に保持可能な大きさを有する。また、外装材51は、少なくとも装置本体2の発光部7と面する部位が透過性を有し、発光部7から光を照射可能とされている。外装材51の長軸方向の一側縁部には、電気ケーブル15が導出される導出部52が形成されている。装置本体2は基板5に形成された接続端子部11が電気ケーブル15と接続され、電気ケーブル15は導出部52から導出されコントローラ3と接続されている。
【0062】
外装材51の材質は、従来スポーツや医療の分野で用いられているマウスピース等の材料と同様であり、発光部7から光を照射可能であり、且つ可撓性と形状保持性を有する透明もしくは半透明の樹脂材料により形成される。具体的に、外装材51の材質としては、口腔形状に適合し、適度な硬さと柔らかさを備えた樹脂、例えば、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン等のウレタン樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、およびカーボネート系樹脂などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
上記オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリプロピレン系樹脂、およびエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)などが好ましく、ポリエチレン(PE)、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリプロピレン系樹脂などがより好ましい。
【0064】
ポリエステル系樹脂は、多価カルボン酸(ジカルボン酸など)とポリアルコール(ジオールなど)との重縮合体である。上記ポリエステル系樹脂の例には、ポリエチレンテレフタレート(PET)などが含まれる。
【0065】
ウレタン系樹脂は、イソシアネート基を有する化合物と水酸基を有する化合物との重縮合体である。上記ウレタン系樹脂の例には、熱可塑性ポリウレタン(TPU)などが含まれる。
【0066】
ポリアミド系樹脂は、アミド結合によって多数のモノマーが結合してできた(共)重合体である。上記ポリアミド系樹脂の例には、ナイロン、パラ系アミド、およびメタ系アミドなどが含まれる。
【0067】
アクリル系ゴム樹脂は、アクリル系ゴムを主成分とした(共)重合体である。上記アクリル系樹脂の例には、メタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルのブロック共重合体などが含まれる。
【0068】
なお、外装材51を複数のパーツにより構成し、各パーツを異なる材料により形成し、硬度を変えてもよい。
【0069】
外装材51は、上述のような材料を装置本体2と一体にモールド成形することにより得られる。材料の射出条件は外装材51の大きさや形状に応じて設定され、単一素材で構成する場合は1つの金型で外装材51全体を成型する。外装材51の大きさは、平均的な人の口腔内に適合するのに適した大きさを有していればよい。装着者が成人である場合には、平均的な成人の口腔に対応するような大きさを有する大人用光照射装置50として製造し、装着者が子供である場合には平均的な子供の口腔に対応するような大きさを有する子供用光照射装置50として製造する。
【0070】
また、外装材51を複数のパーツにより構成する場合は、例えば、各パーツをモールド成形するなどにより形成した後、各パーツ間に装置本体2を挟持した状態で接着や溶着などにより形成することができる。
【0071】
光照射装置50は、口腔内の舌上と口蓋との間又は頬と歯列外側との間に、口蓋や頬の内側に発光部7を向けて、保持される。そして、モードに応じた光を口蓋や頬の内側の患部に照射することができる。
【0072】
なお、光照射装置50は、装置本体2の基板5の裏面5b側にも発光部7を設けるとともに、外装材51を当該裏面5b側の発光部7と面する部位が透過性を有するように形成してもよい。これにより、光照射装置50は、舌上と口蓋の両方の患部、あるいは頬の内側と歯茎(歯肉)の両方の患部に光を照射することができる。
【0073】
光照射装置50の光照射の各モードにおける光エミッタ6の波長、放射照度、照射時間、吸収エネルギーの設定値は、上述した光照射装置40と同様に設定することができるが、これに限定されないことはもちろんである。
【符号の説明】
【0074】
1 光照射装置、2 装置本体、3 コントローラ、5 基板、6 光エミッタ、6a 第1の光エミッタ、6b 第2の光エミッタ、7 発光部、8 制御部、11 接続端子部、15 電気ケーブル、17 温度検知部、18 電源ユニット、21 操作部、22 設定部、24 表示部、25 報知部、26 通信部、28 マイクロプロセッサ、29 メモリ、31 サーバ、32 電源スイッチ、33 操作スイッチ、34 ストレージ、35 検出回路、40 光照射装置、41 ホルダー、42 ポケット、43 端子孔、44 トレイ、45 保護カバー、45a 凹部、47 ユニット列、48 開口部、48a 凸部、49 収納凹部、50 光照射装置、51 外装材、52 導出部
【要約】
【課題】患部やその症状に応じて的確に光を照射することができる光照射装置を提供する。
【解決手段】光照射装置は、患部に光を照射する光照射装置1において、基板5と、少なくとも基板5の一方の面5aに配設され、発光波長が異なる複数の光エミッタ6を有する発光部7とを備える装置本体2と、発光部7からの発光を制御する制御部8が設けられたコントローラ3を備え、発光部7は、少なくとも、第1の帯域の波長の光を発光する第1の光エミッタ6aと、第1の帯域と異なる第2の帯域の波長の光を発光する第2の光エミッタ6bを有し、制御部8は、少なくとも、第1の光エミッタ6aを発光させる第1のモードと、第2の光エミッタ6bを発光させる第2のモードと、第1の光エミッタ6a及び第2の光エミッタ6bを発光させる第3のモードを切り替えて実行する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8