(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】ガス送達デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 16/10 20060101AFI20240903BHJP
【FI】
A61M16/10 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023207773
(22)【出願日】2023-12-08
(62)【分割の表示】P 2021517184の分割
【原出願日】2019-09-27
【審査請求日】2024-01-09
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507238218
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100166165
【氏名又は名称】津田 英直
(72)【発明者】
【氏名】ゲーゲリー ロートナー
(72)【発明者】
【氏名】ブレイク ストリンガー
(72)【発明者】
【氏名】エリザベス ジェイ.ブリスボワ
(72)【発明者】
【氏名】マーク イー.マイヤーホフ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ピー.シュウェンデマン
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-504560(JP,A)
【文献】特表2017-505148(JP,A)
【文献】特開2004-167284(JP,A)
【文献】特開2004-065636(JP,A)
【文献】特表2016-516488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス送達デバイスであって、
一酸化窒素(NO)生成システムであって、
チャンバー、
前記チャンバー内に含有されたNOカートリッジであって、
一酸化窒素不透過性の不透明基材、
前記不透明基材の表面上に固定化された固体状光感性NOドナー、及び
前記固体状光感性NOドナー上に配置されたNO透過性かつ光透過性膜
を含む、前記NOカートリッジ、及び
前記固体状光感性NOドナーを、前記NO透過性かつ光透過性膜を介して、光に選択的に曝露してNOガスを生成させるために機能可能に配置された光源
を含む、前記NO生成システム、
酸素含有ガスを導入し、かつ前記NOガスを含む出力ガスを形成させるために前記チャンバーに機能可能に接続された吸気性ガス導管、ならびに
前記出力ガスのストリームを前記NO生成システムから輸送するための出口導管
を含む、前記ガス送達デバイス。
【請求項2】
前記NO透過性かつ光透過性膜が、1nm~1000nm範囲の直径を有する孔を含むナノポーラスポリカーボネート膜又は1μm~1000μm範囲の直径を有する孔を含むマイクロポリカーボネートポーラス膜である、請求項1に記載のガス送達デバイス。
【請求項3】
前記固体状光感性NOドナーが光感性S-ニトロソチオールである、請求項1に記載のガス送達デバイス。
【請求項4】
前記光感性S-ニトロソチオールが、S-ニトロソ-N-アセチル-ペニシラミン結晶、S-ニトロソグルタチオン結晶、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項3に記載のガス送達デバイス。
【請求項5】
前記固体状光感性NOドナーが、感圧性粘着剤により前記不透過基材上に固定化されている、請求項1に記載のガス送達デバイス。
【請求項6】
前記出力ガスストリームの一酸化窒素レベルをモニターするために前記出力ガスストリームと接触するセンサー、ならびに
前記センサー及び前記光源に機能可能に接続されたコントローラーであって、前記センサーからの前記一酸化窒素レベルに応答して前記光源のパラメータを調整するための、前記コントローラー
をさらに含む、請求項1に記載のガス送達デバイス。
【請求項7】
前記出口導管に機能可能に接続された送達導管、及び
送達導管に機能可能に接続された吸入ユニット
をさらに含む、請求項1に記載のガス送達デバイス。
【請求項8】
前記出力ガスストリームが前記吸入ユニットに送達される前に前記出力ガスストリームを受け入れるために前記送達導管中に配置された二酸化窒素フィルターをさらに含む、請求項7に記載のガス送達デバイス。
【請求項9】
前記固体状光感性NOドナー及び前記NO透過性かつ光透過性膜が前記基材の第1の表面上に配置されており、
前記NOカートリッジが、
前記不透明基材の第2の表面上に固定化された第2の固体状光感性NOドナー、及び
前記第2の固体状光感性NOドナー上に配置された第2のNO透過性かつ光透過性膜
をさらに含み、かつ
前記NO生成システムが、前記第2の固体状光感性NOドナーを光に選択的に曝露して追加のNOガスを生成させるために機能可能に配置された第2の光源をさらに含む、
請求項1に記載のガス送達デバイス。
【請求項10】
前記光源からの前記光が、前記固体状光感性NOドナーの光分解を開始させるためのものである、請求項1に記載のガス送達デバイス。
【請求項11】
前記光源が、約300nm~約600nmの範囲内の表示波長を有する、請求項10に記載のガス送達デバイス。
【請求項12】
前記出力ガス中のNO
2レベルが1体積百万分率(ppmv)未満である、請求項1に記載のガス送達デバイス。
【請求項13】
前記固体状光感性NOドナーが、前記不透明性基材上に形成されたキャビティ中に固定化されている、請求項1に記載のガス送達デバイス。
【請求項14】
前記不透明性基材が、ポリマー、紙、及び金属からなる群から選ばれ;そして
前記NO透過性及び光透過性膜が、ポリカーボネートを含む、請求項1に記載のガス送達デバイス。
【請求項15】
前記NO透過性及び光透過性膜を介して、光を前記固体状光感性NOドナーに選択的に適用することにより、請求項1に記載のガス送達デバイスを用いて一酸化窒素ガスを生成させること、
前記一酸化窒素ガスを前記酸素含有ガスと混合して前記出力ガスストリームを形成させること、ならびに
少なくとも吸入ユニットへの送達の前に前記出力ガスストリームの一酸化窒素レベル及び二酸化窒素レベルをモニターすること
を含む、方法。
【請求項16】
前記酸素含有ガスとの混合の前に、窒素ガスを用いて前記一酸化窒素ガスをスイープすることをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記送達の前に二酸化窒素フィルターを通じて前記出力ガスストリームを伝達することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記酸素含有ガスが空気である、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年9月27日に出願された米国仮出願第62/737,484号の利益を主張し、該仮出願の内容は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府により支援された研究又は開発に関する声明
本発明は、the National Institutes of Health(NIH)により授与されたEB024038及びHL127981の下の政府の支援と共に為された。政府は本発明においてある特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
一酸化窒素(NO)は、その独特の血管拡張特性、創傷治癒特性、血管新生促進特性、抗がん効力、抗血小板活性、及び抗微生物/抗ウイルス活性を含む、いくつかの重要な生理学的機能を有することが示されている内因性ガス分子である。一部の事例において、NOは、感染症を制御し、バイオフィルム形成を予防し、かつ炎症及び線維症を最小化するために使用され得る。
【0004】
吸入療法におけるNOの使用もまた研究されている。吸入される一酸化窒素は、肺不全を治療するために使用されており、肺血管拡張を増強し、かつ肺血管抵抗性を低下させることが示されている。吸入される一酸化窒素はまた、低酸素性呼吸不全を有する新生児を治療するために使用されており、酸素投与を向上させ、かつ体外膜酸素療法の必要性を低減することが示されている。吸入される一酸化窒素の使用は、肺移植の間、肺高血圧症の治療のため、吸入される消毒剤としてなど、他の領域においても有益であることが判明し得る。
【発明の概要】
【0005】
本開示の例の特徴は、以下の詳細な説明及び図面を参照することにより明らかとなり、これらにおいて同様の参照数字は、同一でないかもしれないが、類似した構成要素に対応する。簡潔性のために、以前に記載された機能を有する参照数字又は特徴は、それらが登場する他の図面との繋がりで記載されることもあるし、記載されないこともある。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1A-C】
図1A~1Eは、本明細書に開示される一酸化窒素(NO)カートリッジの異なる例の概略的な断面図である。
【
図1D-F】
図1A~1Eは、本明細書に開示される一酸化窒素(NO)カートリッジの異なる例の概略的な断面図である。
図1Fは、
図1D及び
図1Eに示される一酸化窒素(NO)カートリッジの1つの例の概略的な上面図である。
【
図2】
図2は、吸入療法のために使用されている、
図1A又は
図1D又は
図1EのNOカートリッジを含むガス送達デバイスの例の概略図である。
【
図5】
図5は、吸入療法のために使用されている、
図1BのNOカートリッジを含むガス送達デバイスのさらに別の例の概略図である。
【
図7】
図7は、本明細書に開示される例示的なガス送達デバイスにおいてフィードバック制御のために使用される電子回路の概略的な実例である。
【
図8A-B】
図8A及びBは、本明細書に開示される例示的なガス送達デバイス用の携帯式構成の遠近法での半概略的な実例である。
【
図9A-B】
図9A及び
図9Bは、(a)385nm、(b)470nm、及び(c)565nmの発光ダイオード(LED)光源を使用した、3mmの直径の13重量%ポリジメチルシロキサン(PDMS)-S-ニトロソ-N-アセチル-ペニシラミン(SNAP)ドーピングフィルムからの9A)気相NOレベルの速度論及び9B)累積NO放出を示すグラフである(曲線は平均値を示し、エラーバーは3つの並列測定の平均の標準誤差に対応する)。
【
図10A-B】
図10A及び
図10Bは、(a)385nm、(b)470nm、及び(c)565nmのLED光源を使用した、3mmの直径の13重量%ポリジメチルシロキサン(PDMS)-S-ニトロソグルタチオン(GSNO)ドーピングフィルムからの10A)気相NOレベルの速度論及び10B)累積NO放出を示すグラフである(曲線は平均値を示し、エラーバーは3つの並列測定の平均の標準誤差に対応する)。
【
図11A-B】
図11A及び
図11Bは、(a)385nm、(b)470nm、及び(c)565nmのLED光源を使用した、1000ppbの標的NOレベルを用いた6mmの直径のPDMS-SNAPドーピングフィルムからのフィードバック制御NO放出の間の11A)送達されたガスストリーム中のNOレベル(太線)及び累積NO放出(細線)の両方ならびに11B)パルス幅変調LED強度についてのPWMデューティサイクルを示すグラフである。
【
図12A-B】
図12A及び
図12Bは、385nmのLED光源を使用した、1000ppb、2500ppb、及び5000ppbの標的NOレベルを用いた6mmの直径のPDMS-SNAPドーピングフィルムからのフィードバック制御NO放出の間の12A)送達されたガスストリーム中のNOレベル(太線)及び累積NO放出(細線)の両方ならびに12B)パルス幅変調LED強度についてのPWMデューティサイクルを示すグラフである。
【
図13A-B】
図13A及び
図13Bは、385nmのLED光源を使用した、500ppb、1000ppb、1500ppb、2000ppb、2500ppb、及び5000ppbに段階的に変化させ、次に逆方向に戻した標的NOレベルを用いた6mmの直径のPDMS-SNAPドーピングフィルムからのフィードバック制御NO放出の間の13A)送達されたガスストリーム中のNOレベル及び13B)パルス幅変調LED強度についてのPWMデューティサイクルを示すグラフである。
【
図14】
図14は、385nmのLED光源を使用した、2500ppbの標的NOレベルを用いた6mmの直径のPDMS-SNAPドーピングフィルムからのフィードバック制御NO放出の間の、窒素受容者ガスの流速の乱れに対するシステム応答を示すグラフであり、上のグラフは、送達されたガスストリーム中のNOレベルを示し、中央のグラフは窒素流速における変化を示し、下のグラフは、パルス幅変調LED強度についてのPWMデューティサイクルを示す。
【
図15A-B】
図15A及び
図15Bは、385nmのLED光源及び異なる受容者ガス、すなわち窒素ガス(N
2)又は空気を使用した、1000ppbの標的NOレベルを用いた6mmの直径のPDMS-SNAPドーピングフィルムからのフィードバック制御NO放出の間の15A)送達されたガスストリーム中のNOレベル(太線)及び累積NO放出(細線)の両方ならびに15B)パルス幅変調LED強度についてのPWMデューティサイクルを示すグラフである。
【
図16A-B】
図16A及び
図16Bは、385nmのLED光源、及び、80%のO
2ストリーム中の生成されたNOガスを送達するためにその後に酸素と混合した窒素受容者ガスストリームを使用した、2500ppbの標的NOレベルを用いた6mmの直径のPDMS-SNAPドーピングフィルムからのフィードバック制御NO放出の間の16A)送達されたガスストリーム中のNOレベル及び累積NO放出の両方ならびに16B)パルス幅変調LED強度についてのPWMデューティサイクルを示すグラフである(NO濃度はガス混合後に測定した)。
【
図17A-C】
図17A、
図17B及び
図17Cは、17A)窒素中、17B)コンディショニングされたシリカゲルNO
2スクラッバーを用いた窒素中、及び17C)コンディショニングされたシリカゲルNO
2スクラッバーを用いた空気中の、PDMS-GSNOドーピングフィルムからのNO及びNO
2放出を描写するグラフである。
【
図18A-B】
図18A~18Dは、(例えば、
図1Aに示されるような)マイクロポーラスGSNOカートリッジを使用した、4L/分の空気流速でのNO吸入デバイスからのNO及びNO
2放出を描写するグラフである。
【
図18C-D】
図18A~18Dは、(例えば、
図1Aに示されるような)マイクロポーラスGSNOカートリッジを使用した、4L/分の空気流速でのNO吸入デバイスからのNO及びNO
2放出を描写するグラフである。
【
図19】
図19は、パターン形成した粘着片及びパターン形成した粘着片のキャビティ中のSNAPをそれぞれが含んでいた4つのNOカートリッジを含むシステムについての経時的(h、時間)なNO及びNO
2濃度(ppb)を描写するグラフである。
【
図20A-C】
図20Aは、
図19に示されるデータを生成するために使用されたシステムの上面概略図である。
図20Bは、
図20Aに示されるシステムの1つの例の概略的な断面図(システムの上部からシステムの下部への線に沿ったもの)である。
図20Cは、
図20Aに示されるシステムの別の例の概略的な断面図(システムの上部からシステムの下部への線に沿ったもの)である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
ガス送達デバイスのいくつかの例が本明細書に開示される。例示的なデバイスにおいて、一酸化窒素(NO)ガスは、特定の波長の光に対して感受性の固相一酸化窒素ドナーからオンデマンドで光分解により生成される。固相一酸化窒素ドナーは、光への光暴露に応答してインサイチューでNOガスを生成させることができる。これらのNOドナー分子からのインサイチューのNOガス生成は、一酸化窒素タンク(すなわち、圧縮ガスシリンダー中のNO)の必要性を排除し、これはデバイスを単純化し、デバイスのコストを低減する。本明細書に開示されるガス送達デバイスの一部の例は、いかなるガスタンクも含まず、そのため、携帯式吸入デバイスとして構成され得る。本明細書に開示されるガス送達デバイスの他の例は少なくとも窒素ガスタンクを含み、これによりこれらの例は、携帯性はより低くなるが、例えば病院での状況において、非常に好適となる。
【0008】
さらに、本明細書に開示される例示的なガス送達デバイスを用いることで、固相一酸化窒素ドナーに適用される光のパルス長及び/又は強度を変動させることにより、生成されるNOの量を精密に制御することができる。これにより、特定の応用において所望される効果を得るために好適な量のNOが生成されることが可能となる。1つの例として、安定した治療用量(例えば、約100ppbv(parts per billion by volume;体積十億分率)~約100ppmv(parts per million by volume;体積百万分率))のNOが吸入一酸化窒素治療のために生成され得る。出力ガスストリーム中のNOの濃度はまた、少なくとも部分的に、利用されるガスの流速に依存する。さらに、本明細書に開示される例示的なガス送達デバイスを用いることで、NO2の量は、閾値レベルより低くなるように制御され得る。例において、出力ガス中のNO2レベルは1体積百万分率(ppmv)未満であり、一部の事例において、0.1ppmv未満である。
【0009】
本明細書に開示される例において、固体形態であり、かつ光感性の一酸化窒素ドナーが使用される。「固体形態」により、NOドナーは液体でも流体でもなく、堅くかつ安定な形状であることが意味される。一部の例において、NOドナーは結晶性又は粉末形態である。「光感性」により、NOドナーは光分解可能、すなわち、特定の1つ又は複数の光の波長に曝露された時に光分解を起こすことができることが意味される。特に、NOドナーは、特定の1つ又は複数の光の波長に曝露された時にNOガス分子を放出することができる。固体状光感性NOドナーの例としては光感性S-ニトロソチオールが挙げられる。光感性S-ニトロソチオールの一部の特有の例は、S-ニトロソ-N-アセチル-ペニシラミン(SNAP)結晶、S-ニトロソグルタチオン(GSNO)結晶、及びこれらの組合せからなる群から選択される。
【0010】
本明細書に開示される例において、一酸化窒素を生成させるために使用される特定の1つ又は複数の光の波長は、部分的に、使用されるNOドナー及びNO放出の所望される速度に依存してもよい。例において、光の波長は約300nm~約600nmの範囲内である。特定の波長がNO放出の所望される速度より低い速度を結果としてもたらす場合、この欠乏は、より高い光パワー表面密度を使用することにより補償されてもよい。
【0011】
また、本明細書に開示される例において、固相の光感性一酸化窒素ドナーは、基材上又は中に固定化される。「固定化される」により、固体の光感性一酸化窒素ドナーは、粘着剤を使用して基材に取り付けられ得るか、又はポリマーもしくは他の薄フィルムにドーピングもしくは共有結合的に取り付けられ得るか、又は基材上に形成されたキャビティ中に含有され得ることが意味される。
【0012】
NOカートリッジ
【0013】
ガス送達デバイスのいくつかの例が本明細書に開示される。ガス送達デバイスのそれぞれは一酸化窒素生成システムを含み、該システムはそれ自体、NOカートリッジを含む。
図1A~1Eは、NOカートリッジの5つの異なる例を示す。
【0014】
図1Aにおいて、NOカートリッジ10は、基材12、基材12の表面S
1上に固定化された固体状光感性NOドナー14、及び固体状光感性NOドナー14上に配置されたNO透過性かつ光透過性膜16を含む。
【0015】
この例において、基材12は、NOドナー14用の物理的キャリアとして作用する。そのため、ポリマー、紙、ガラス、金属などを含む任意の基材12が使用されてもよい。一部の例において、基材12は、一酸化窒素に対して不透過性であってもよく、又は一酸化窒素が基材12中で低い溶解度を有するように選択されてもよい。これは、基材12が二酸化窒素(NO2)生成用のマイクロリアクターとして作用することを防止するために望ましいことがある。
【0016】
固体状光感性NOドナー14は、本明細書に記載される例のいずれかであってもよい。NOドナー14は
図1Aにおいて連続的な層として示されているが、NOドナー14は基材表面S
1にわたって広がった結晶又は粉末粒子であってもよいことが理解されるべきである。
【0017】
この例において、NOドナー14は、粘着剤18を使用して基材12上に固定化されていてもよい。好適な粘着剤18の例としては、感圧性粘着剤、例えば、単独の又は粘着付与剤(例えば、ロジンエステル)と調合されたエラストマーが挙げられる。エラストマーはアクリル系であり得る。一部の例において、粘着剤18は、基材12上に広がった液体又はゲルであってもよい。他の例において、粘着剤18は、基材12上に粘着した両面テープであってもよい。
【0018】
NOドナー14は、任意の好適な技術を使用して粘着剤18に適用されてもよい。適用時に、NOドナー14の粘着剤18への粘着を補助するためにNOドナー14に圧力が適用されてもよい。粘着剤18は、基材12の表面領域にわたるNOドナー14の相対的に一貫した分布を可能にする。
【0019】
NOカートリッジ10のこの例はまた、固体状光感性NOドナー14上に配置されたNO透過性かつ光透過性膜16を含む。この例示的な膜16は、一酸化窒素に対して透過性である。そのため、NOドナー14から放出されるNOは、膜16のナノポア又はマイクロポアを通過して受容者ガスストリームに入ることができる。この例示的な膜16はまた、NOドナー14から一酸化窒素を放出させるために使用される光の波長に対して透過性である。そのため、この例において、望ましい波長の光(
図1Aにおいてhvとして示される)が膜16を通じてNOドナー14に伝達され得る。例として、膜16は、約300nm~約600nmの範囲内の光の1つ又は複数の波長に対して透過性であってもよい。
【0020】
NO透過性かつ光透過性膜16の例としては、ポリカーボネート、例えば、ポリカーボネートトラックエッチ膜が挙げられる。商業的に入手可能なNO透過性かつ光透過性膜16としては、WHATMAN(登録商標) NUCLEPORE(商標) Track-Etched Membranes(GE Healthcare)及びTRAKETCH(登録商標)(Sabeu)が挙げられる。これらの膜16は、ナノポーラス(例えば、約1nmから1000nm未満の範囲内の直径)又はマイクロポーラス(例えば、約1μmから1000μm未満の範囲内の直径)であってもよい。
【0021】
NO透過性かつ光透過性膜16は、固体状光感性NOドナー14上に配置され、かつ粘着剤18を使用して基材12に粘着されてもよい。
【0022】
図1Aには示されないが、NOカートリッジ10はまた、反対表面S
2に粘着した第2の固体状光感性NOドナー、及び第2の固体状光感性NOドナー上に配置された第2のNO透過性かつ光透過性膜を含んでもよい。この例は、NOがNOカートリッジ10の両側から生成されることを可能にする。この例は
図2に示される。
【0023】
ここで
図1Bを参照すると、NOカートリッジ10’の別の例は、光透過性基材12’、光透過性基材12’の表面S
1上に固定化された固体状光感性NOドナー14、及び固体状光感性NOドナー14上に配置されたポーラス膜16’を含む。
【0024】
この例において、基材12’はNOドナー14用の物理的キャリアとして作用し、そしてまた、光hvがNOドナー14に伝達されることを可能にした。そのため、この例において、約300nm~約600nmの範囲内の1つ又は複数の光の波長に対して透過性である任意の基材12’が使用されてもよい。例示的な光透過性基材12’は、透過性ポリマー(例えば、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリエチレンテレフタレートなど)又はガラス材料である。一部の例において、光透過性基材12’は、一酸化窒素に対して不透過性であってもよく、又は一酸化窒素が基材12’中で低い溶解度を有するように選択されてもよい。これは、基材12’が二酸化窒素(NO2)生成用のマイクロリアクターとして作用することを防止するために望ましいことがある。
【0025】
固体状光感性NOドナー14は、本明細書に記載される例のいずれかであってもよい。NOドナー14は
図1Bにおいて連続的な層として示されているが、NOドナー14は基材表面S
1にわたって広がった結晶又は粉末粒子であってもよいことが理解されるべきである。
【0026】
この例において、NOドナー14は、光透過性粘着剤18’を使用して基材12’上に固定化されていてもよい。粘着剤18’は、応用において使用されている光の波長に対して透過性であるように選択されてもよい。一部の例において、粘着剤18’は紫外波長に対して透過性である。他の例において、粘着剤18’は、約300nm~600nmの範囲内の光の波長に対して透過性である。NOドナー14は、任意の好適な技術を使用して粘着剤18’に適用されてもよい。適用時に、NOドナー14の粘着剤18’への粘着を補助するためにNOドナー14に圧力が適用されてもよい。粘着剤18’は、基材12’の表面領域にわたるNOドナー14の相対的に一貫した分布を可能にする。粘着剤18’はまた、非常に薄い層であり、そのため、さもなければ起こる可能性がある任意の光吸収が低い。
【0027】
NOカートリッジ10’のこの例はまた、固体状光感性NOドナー14上に配置されたポーラス膜16’を含む。この例示的な膜16’は、NOドナー14から一酸化窒素を放出させるために使用される光の波長に対して透過性であってもよく、又はそうでなくてもよい。この例示的な膜16’はまたポーラスであり、そのため一酸化窒素に対して透過性である。そのため、NOドナー14から放出されるNOは、膜16’のナノポア又はマイクロポアを通過して受容者ガスストリームに入ることができる。非透過性ポーラス膜16’の例としては、ポーラスのポリテトラフルオルエチレン(PTFE)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリビニリデンジフルオリドなどが挙げられる。透過性ポーラス膜16’の例としては、膜16について提供される任意の例が挙げられる。これらの膜16’はナノポーラス又はマイクロポーラスであってもよい。
【0028】
ポーラス膜16’は、固体状光感性NOドナー14上に配置され、かつ粘着剤18’又は18を使用して基材12’に粘着されてもよい。
【0029】
NOカートリッジ10、10’のいずれについても、基材12、12’及び膜16、16’の寸法、ならびにNOドナー14の量は、部分的に、カートリッジ10、10’が使用されるガス送達デバイスの寸法の他に、NO放出の望ましい速度に依存してもよい。例として、300mgのSNAPは、4L/分の流速において10ppmのNOを8時間生成させるために十分である。この例について、4×75mgのSNAPは、4×40mmの直径の円形表面上に分布し、47mmのマイクロポーラス膜で覆われ得る。NO放出の持続期間、流速、又は濃度を増加させるために、NOドナー14の量もまた増加させるべきである。シートフィルター材料(例えば、膜16、16’用)は、304mm×3.04mまでのサイズにおいて利用可能であり得、そのため、任意の望ましいサイズ及び/又は形状に切断され得る。
【0030】
ここで
図1Cを参照すると、NOカートリッジ10’’の別の例は、基材12’’及び基材12’’中に固定化された固体状光感性NOドナー14を含む。
【0031】
この例において、基材12’’は、NOドナー14に伝達される光hvに対して透過性であってもよく、そしてまた、生成されるNOガスに対して透過性であってもよい。基材12’’の例としては、シリコーンゴム、ポリ(塩化ビニル)、ポリウレタンなどが挙げられる。
【0032】
示されていないが、その中にNOドナー14を有する基材12’’は、別の物理的キャリア上に配置されていてもよいことが理解されるべきである。これらの事例において、物理的キャリアはマイクロ構造もしくはポーラスのものであり、又はその中にNOドナー14を有する基材12’’は、限られた表面積を有する物理的キャリアに取り付けられる。これらの構成は、物理的キャリアに面するその中にNOドナー14を有する基材12’’の側からの容易なガス輸送を促し、かつNOドナー14を有する基材12’’及び物理的キャリアの間のガスの蓄積を防止する。
【0033】
例において、NOドナー14は、溶媒膨潤方法を使用して基材12’’中に固定化されてもよい。この方法を用いる場合、固体NOドナー14は、基材12’’中のその溶解度閾値を超える濃度で基材12’’の膨潤溶媒中に溶解する。膨潤溶媒は基材12’’を溶解せず、むしろ、基材12’’は膨潤溶媒(及びその中に溶解したNOドナー)を取り込み、膨潤する。溶媒が蒸発した時に、NOドナー14はその結晶形態で基材12’’のバルク内に残存する。別の例において、NOドナー14は、固体NOドナー14を非硬化基材材料とブレンドして混合物を形成させ、混合物のフィルムをキャストし、かつ基材材料を硬化させることにより基材12’’中に固定化されてもよい。固体NOドナー14は、硬化した基材12’’中に包埋される。
【0034】
固体状光感性NOドナー14は、本明細書に記載される例のいずれかであってもよい。
【0035】
NOカートリッジ10’’について、基材12’’の寸法、及びNOドナー14の量は、部分的に、カートリッジ10’’が使用されるガス送達デバイスの寸法の他に、NO放出の望ましい速度に依存してもよい。さらに、NOドナー14の量はまた、NOドナー14を基材12’’に導入するために使用される方法に依存してもよい。
【0036】
ここで
図1D及び
図1Eを参照すると、NOカートリッジ10A及び10Bのさらに他の例が描写される。これらの例において、NOドナー14は、基材12又は12’上に形成された1つ又は複数のキャビティ21中に導入され、そこで固定化される。これらのNOカートリッジ10A、10BからのNO
2レベルは非常に低く(例えば、<1ppm)、そのため、これらのNOカートリッジ10A、10BはNO
2スクラッバーなしで使用されてもよいことが見出されている。
【0037】
これらのNOカートリッジ10A及び10Bは、(
図1Aを参照して記載されたような)基材12及びNO透過性かつ光透過性膜16又は(
図1Bを参照して記載されたような)光透過性基材12’及びポーラス膜16’を含んでもよい。
【0038】
図1D及び
図1Eの1つの例において、基材12及びNO透過性かつ光透過性膜16は、粘着剤18’’を使用して粘着している。この例示的な粘着剤は、コア層19の反対側上の粘着性部分18を含む。この例において、光hvは光透過性膜16を通じて導入されるので、粘着剤18及びコア層19は透過性でなくてもよい。本明細書に開示される粘着剤18の任意の例が使用されてもよく、任意の非透過性コア層19が使用されてもよい。
【0039】
図1D及び
図1Eの別の例において、光透過性基材12’及びポーラス膜16’は、粘着剤18’’を使用して粘着している。この例示的な粘着剤は、コア層19の反対側上の粘着性部分18’を含む。この例において、光hvは光透過性基材12’を通じて導入されるので、粘着剤18’及びコア層19は透過性であってもよい。透過性粘着剤18’’の一部の例としては、3M(商標) Optically Clear Adhesive CEF08XX(821X/818X) Seriesならびに3M(商標) Ultra-clean Laminating Adhesive 501FL及び502FLが挙げられる。
【0040】
図1Dにおいて、粘着剤18’’の1つの層が含まれ、単一の層18’’は、1つのコア層19及び1つのコア層19の反対側上の粘着剤18又は18’を含む。
図1Eにおいて、粘着剤18’’の複数の層が含まれ、これは2つ又はそれより多くのコア層19及び2つ又はそれより多くのコア層19のそれぞれの反対側上の粘着剤18又は18’を含む。描写されるように、
図1Eにおける複数層の粘着剤18’’は、粘着剤18又は18’及びコア層19の交互の層を含み、最も外側の粘着剤18又は18’は、基材12を光透過性膜16に粘着させ、又は光透過性基材12’をポーラス膜16’に粘着させる。
【0041】
図1D及び
図1Eの両方に示されるように、キャビティ21が粘着剤18’’中に形成されている。単一のキャビティ21が示されているが、任意の数のキャビティが含まれてもよいことが理解されるべきである。
図1Fの上面図において、複数のキャビティ21が含まれている。
【0042】
1つの例において、キャビティ/キャビティ21は、カッティングプロッタを使用して単一又は複数層の粘着剤18’’中に形成される。キャビティ/キャビティ21は、粘着剤18’’が基材12又は12’に固定される前に粘着剤18’’中に形成されてもよい。1つ又は複数のキャビティ21が単一又は複数層の粘着剤18’’中に画定される場合に、ライナーが最も外側の粘着剤18又は18’に除去可能に取り付けられてもよい。各キャビティ21の横寸法(例えば、直径)は、部分的に、製作方法、NOドナー14粒子サイズなどに依存してもよい。例において、横寸法は約0.5mm~約10mmの範囲内である。別の例において、キャビティ21の横寸法は約1mmである。各キャビティ21の深さは粘着剤18’’の厚さに依存してもよい。例において、深さは約0.1mm~約1mmの範囲内である。
【0043】
単一又は複数層の粘着剤18’’(その中に画定されたキャビティ/キャビティ22を有する)を基材12又は12’に取り付けるためにライナーの1つは除去されてもよい。他方のライナーは、NOドナー14がキャビティ/キャビティ21に導入される時にその場所に残存してもよい。
【0044】
NOドナー14は、任意の好適な技術、例えば、スクリーン印刷、静電沈着、ゼログラフィーなどを使用してキャビティ/キャビティ21に沈着されてもよい。固体状光感性NOドナー14は、本明細書に記載される例のいずれかであってもよい。
【0045】
NOドナー14が沈着されたら、他方のライナーは除去されてもよく、光透過性膜16又はポーラス膜16’を粘着剤18’’に粘着させてもよい。
【0046】
ガス送達デバイス
【0047】
NOカートリッジ10、10’、10”、10A、10Bが、1以上のガス送達デバイスにおいて使用され得る。
図2~
図6は、本明細書に開示されているガス送達デバイスの異なる例を示す。ガス送達デバイスは、それぞれ、吸入療法用の一酸化窒素を生成させるために使用され得る。各デバイスにより、方法は、光を固体状光感性NOドナーに選択的に適用することにより一酸化窒素ガスを生成させること;当該一酸化窒素ガスを酸素含有ガスと混合して出力ガスストリームを形成させること;ならびに、少なくとも吸入ユニットへの送達の前に出力ガスストリームの一酸化窒素レベル及び二酸化窒素レベルをモニターすることを概して含む。方法は、使用されるデバイスに応じて多少変動し得る。そのため、各方法を、対応するガス送達デバイスを用いてより詳細に説明する。
【0048】
図2をここで参照すると、ガス送達デバイス20Aの一例が示されている。ガス送達デバイス20Aは、
図1Aに示されているNOカートリッジ10又は
図1D及び
図1Eに示されているNOカートリッジ10Aもしくは10Bでの使用に好適である。この例において、ガス送達デバイス20Aは:i)一酸化窒素(NO)生成システム22Aであって、チャンバー24、チャンバー24に含有されたNOカートリッジ10、10A、又は10B(ここで、NOカートリッジ10、10A、又は10Bは、基材12、基材12の表面S
1に固定化された固体状光感性NOドナー14、及び、固体状光感性NOドナー14上に配置されたNO透過性かつ光透過性膜16を含む)、及び、固体状光感性NOドナー14を光hvに選択的に曝露してNOガスを生成させるために機能可能に配置された光源26を含む、上記NO生成システム;ii)酸素含有ガスOCを導入し、かつ上記NOガスを含む出力ガスOGを形成させるためにチャンバー24に機能可能に接続された吸気性ガス導管28;ならびにiii)出力ガスOGのストリームをNO生成システム22Aから輸送するための出口導管30を含む。
図2に具体的に示されてはいないが、固体状光感性NOドナー14は、粘着剤18を使用して(例えば、
図1Aを参照して記載されている)又はキャビティ/キャビティ(複数)21を使用して(例えば、
図1D及び
図1Eを参照して記載されている)、基材12の表面S
1に固定化されていてよいことが理解されるべきである。
【0049】
ガス送達デバイス20Aにより、方法は:光源26を操作してNOドナー14上に光を放射して、チャンバー24内でドナー14からNOを光分解によって放出すること;酸素含有ガスOCをチャンバー24内に導入し、ここで、NO及び酸素含有ガスOCが混合して出力ガスOGを形成させること;ならびに出力ガスOGをチャンバー24から所望の送り先まで輸送することを含む。この方法及びガス送達デバイス20Aの詳細をここで説明する。
【0050】
デバイス20AのNO生成システム22Aは、光分解が行われるチャンバー24(すなわち、光分解チャンバー)を含む。チャンバー24は、カートリッジ10を含有し得かつ酸素含有ガスOC又は一酸化窒素NOに透過性ではないいずれの好適な材料からできていてもよい。光源26が、(
図2に示されているように)チャンバー24の外側に配置されているとき、チャンバー24は、光源26によって放射される光hvの波長(複数可)に対して透明である材料から形成されるべきである。この例において、チャンバーは、ガラス、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、低密度ポリエチレン(LDPE)などから形成されていてよい。光源26が、チャンバー24の内側に配置されているとき、チャンバー24は、光源26によって放射される光hvの波長(複数可)に対して透明でない材料から形成されるべきである。この例において、チャンバー24は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ステンレス鋼などから形成されていてよい。
【0051】
チャンバー24は、入口32(酸素含有ガスOCを導入するために使用される導管28に接続されている)及び出口34(出力ガスOGのストリームを輸送するために使用される導管30に接続されている)の周りでシールされていてよい。チャンバー24は、NO生成システム22A全体がその耐用寿命の終わりに処分され得るように使い捨てであってもよく、又は、チャンバー24は、NOカートリッジ10、10A、もしくは10Bが取り替えられ得るように開口部を含み得る。
【0052】
NO生成システム22Aはまた、カートリッジ10、10A、又は10Bも含む。NOカートリッジ10は、
図1Aを参照して記載されている例のいずれであってもよく、NOカートリッジ10A、10Bは、基材12及びNO透過性かつ光透過性膜16を含む、
図1D又は
図1Eを参照して記載されている例のいずれであってもよい。
図2に示されている例において、NOカートリッジ10、10A、又は10Bは、基材12の両面S
1、S
2に配置されたNOドナー14及びNO透過性かつ光透過性膜16を含むため、NOは、別個の光源26を使用してNOカートリッジ10の両側から生成され得る。
図2に詳細に示されていないが、NOドナー14は、粘着剤18によって基材表面S
1、S
2に、又はキャビティ/キャビティ(複数)21内に配置されていてよい。
【0053】
NO生成システム22Aは、光源26も含む。固体状光感性NOドナー14の光分解を開始する光を放射することが可能であるいずれの光源26が使用されてもよい。換言すると、一酸化窒素をNOドナー14から放出させる特定の波長(複数可)の光を放射することが可能であるいずれの光源26が使用されてもよい。そのため、光源26は、使用されるNOドナー14及び所望のNO放出速度に部分的に左右され得る。例として、光源26は、高輝度発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード、ランプなどであってよい。好適なLEDは、約340nm~約600nmの範囲の表示波長、例えば、340nm、又は385nm、又は470nm、又は565nmを有するものであってよい。
【0054】
1以上の光源26は、単一の表面S1又はS2に配置されたNOドナー14からNOを放出するために使用されてよい。複数の光源の使用は、NO放出にわたってさらなる制御を可能にし得る。例えば、より高いNOレベルが望ましいときには、表面S1を向く全ての光源26が、表面S1上のNOドナー14に向かって光を放射するように活性化され得、より低いNOレベルが望ましいときには、全てに満たない光源26が活性化され得る。
【0055】
光源26は、NOドナー14を光hvに選択的に曝露するように配置されている。光源26は、光透過性チャンバー24の外側に配置されていてよく、又は、透明でないチャンバー24の内側に配置されていてよい。いくつかの例において、光源26は、チャンバー24(例えば、内側又は外側のいずれか)に取り付けられていてよい。これらの例において、また、チャンバー24が使い捨てであるとき、光源26は、チャンバー24と共に廃棄されてよい。これらの例において、また、チャンバー24が使い捨てでない(しかし、むしろ、使い捨てカートリッジ10を収容している)とき、光源26は、いくつかのNOカートリッジ10と共に再利用されてよい。これらの例において、光源26はまた、その耐用寿命の終わりに取り替えられ得るようにチャンバー24の内側又は外側から取り外し可能であってもよい。いくつかの他の例において、光源26は、チャンバー24も収納するデバイスハウジング(図示せず)に取り付けられていてよい。これらの例において、光源26は、チャンバー24に直接取り付けられていなくてよいが、操作されるときには光hvをNOドナー14に向けるように配置されている。これらの例において、光源26は、その耐用寿命の終わりに取り替えられ得るようにデバイスハウジングから取り外し可能であってよい。
【0056】
光源26がチャンバー24の内側に取り付けられていているとき、任意の粘着剤又は他の好適な固定機構が、光源26を内部チャンバー壁に取り付けるために使用されてよい。光源26が(
図2に示されているように)チャンバー24の外側に取り付けられていているとき、光源26からの光を遮断しない任意の光透過性粘着剤36又は他の好適な固定機構が、光源26を外部チャンバー壁に取り付けるために使用されてよい。光源26はまた、チャンバー24の外側に機能可能に配置されていてもよいが、これに取り付けられていなくてもよい。
【0057】
いつ光源(複数可)26がON及びOFFにされるか、ONサイクルの継続時間、強度、表面電力密度などを制御するために、電子回路が光源26に機能可能に接続されていてよい。電子回路は、以下にさらに詳細に記載する、検知及びフィードバックシステムの一部であってよい。
【0058】
光源26は、最大で、例えば、カートリッジ10あたり8時間の任意の時間間隔でONにされてよく、そのため、この時間間隔の際にNOを光分解によって放出し得る。カートリッジ10におけるNOドナー14の量に応じて、より長い時間間隔が可能であり得る。NOの生成を停止することが望ましいとき、光源26は、光hvがもはやNOドナー14上に放射されないようにOFFにされる。NO放出寿命は、より大きい基材12が使用されるとき、及び/又は、より多量のNOドナー14が使用されるとき、より長くあり得る。
【0059】
この例において、NOドナー14から放出されたNOガスは、膜16を透過して、チャンバー24内に入る。NOドナー14の光分解は、エアロゾル液滴ならびにNOガスを生成し得る。エアロゾル液滴は、種々の医療用途に望ましくない。膜16は、任意のエアロゾル液滴がNOガスと共にチャンバー14に入ることを防止することが理解されるべきである。
【0060】
図2に示されているガス送達デバイス20Aはまた、酸素含有ガスOCをチャンバー24に導入するためにチャンバー24に(例えば、入口32に)機能可能に接続された吸気性ガス導管28も含む。酸素含有ガスOCは、少なくとも実質的に純粋な酸素ガスO
2、又は空気、又は、酸素を含む低酸素ガスであってよい。この例において、酸素含有ガスOCは、酸素含有ガスOCの流れを調節し得る、又は、入口32内への酸素含有ガスOCの流れを調節するために流量調整器に連結され得る、任意の好適なガス源(例えば、ガスボンベ(図示せず)、周囲の空気を送達するガスポンプ38など)から送達され得る。任意の好適なガスの流量が使用されてよい。例として、酸素含有ガスOCの流量は、約50mL/分~約5L/分の範囲であってよい。別の例において、上記源又は流量調整器は、出力ガスストリームOGが約20%の酸素~約99.99%の酸素を含有するように酸素含有ガスOCの流れを調節し得る。別の例において、100%飽和空気が、出力ガスストリームOG中の約10mg/L(ppm)のO
2に相当する、酸素含有ガスOCとして使用されてよい。
【0061】
吸気性ガス導管28は、少なくとも酸素含有ガスOC及び一酸化窒素に対して低い透過性を有する又は透過性を有しない管であってよい。好適な管材料の例として、ポリ(塩化ビニル)(PVC)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレン(PE)、フッ素化ポリマーなどが挙げられる。
【0062】
チャンバー24において、酸素含有ガスOCは、光分解によって放出されたNOガスと混合して、出力ガスストリームOGを形成させる。出力ガスOGのストリームは、NO生成システム22Aから出て出口34を通って出口導管30内に入ってよい。出口導管30は、出力ガスOG中の少なくとも酸素含有ガスOC及び一酸化窒素に対して低い透過性を有する又は透過性を有しない管であってよい。出口導管30の長さもまた、ストリームが望ましい送り先(例えば、受容者40)に送達される前の二酸化窒素(NO2)形成を回避するために、比較的短くてもよい。酸素含有ガスOCは、受容者40への送達の直前に導入されるため、NO濃度への影響は、NOと酸素含有ガスOCとの間の短い接触時間に起因して最小又は皆無である。
【0063】
いくつかの例において、出力ガスOGストリームは、流量を制御する調節装置を含んでいてよいガス源からの圧力の結果として輸送され得る。他の例において、出力ガスOGストリームは、下流に配置されたバキューム機からの圧力の結果として輸送され得る。
【0064】
出口導管30は、送達導管46であってよく、又は、当該導管に機能可能に接続されていてよい。送達導管46は、吸入ユニット48に機能可能に接続されており、出力ガスストリームOGを受容者/患者40に輸送することが可能である。送達導管46は、出力ガスストリームOGに透過性でない任意の好適なポリマー又は他の配管であってよい。例において、送達導管46は、出力ガスストリームOGがNO生成システム22A内に流れて戻らないように一方向弁を有していてもよい。吸入ユニット48は、人工呼吸器、フェースマスク、鼻カニューレ、又は、患者40の気道に出力ガスストリームOGを送達するためのある他の好適な装置であってよい。
【0065】
ガス送達デバイス20Aは、検知及びフィードバックシステムをさらに含んでいてよい。例において、検知及びフィードバックシステムは、出力ガスOGの一酸化窒素レベル(すなわち、NO濃度)をモニターするために出力ガスストリームOGと接触するセンサー42、ならびに、センサー42及び光源26に機能可能に接続されたコントローラー44であって、センサー42からの一酸化窒素レベルに応答して光源26のパラメータを調整し得る、コントローラー44を含む。示されていないが、検知及びフィードバックシステムはまた、NO2濃度をモニターするための別個のセンサーを含んでいてもよいことが理解されるべきである。
【0066】
センサー(複数可)42は、出力ガスストリームOGと接触して配置されていてよい。センサー(複数可)42は、出力導管30もしくは送達導管46、又は、出力もしくは送達導管30、46から分配もしくは分岐された別の導管に配置されていてよい。かかる他の導管が使用される場合、出力ガスストリームOGのいくらかを収容し、これをセンサー42に輸送する。センサー(複数可)42は、出力ガスストリームOGにおけるNOレベル及びNO2レベルをモニターするために使用されてよい。フィードバック制御のためにNOレベル及びNO2レベルをモニターすることが望ましくあり得る。特に、フィードバック制御は、O2とNOとの反応によって生成され得かつ受容者/患者40には毒性となり得るNO2(二酸化窒素)の形成の回避を助ける。
【0067】
NO放出をより良好にフィードバック制御するために、センサー(複数可)42を光分解チャンバー(例えば、24、24’、52)の近くに配置することが望ましくあり得る。センサー(複数可)42を吸入ユニット48の近くに(例えば、吸入ユニット48の約3フィート以内に)配置することが望ましい場合もある。この配置は、フィードバック制御を遅延させる可能性もあるが、確実に、患者40に入るガスストリームのNOレベルがより高く、NO2レベルがより低くなるようにするために望ましくあり得る。
【0068】
任意の好適なNOセンサー42が使用されてよい。例において、センサー42は、電流測定NOセンサーである。1つのタイプの電流測定センサーは、ガス透過性膜の後方における内部の白金(Pt)電極位置における、NOから硝酸塩(NO3
-)への酸化に基づく、Shibukiスタイルセンサー(図示せず)である。別の例において、センサー42は、化学発光センサーである。
【0069】
別の例の電流測定NOセンサーは、ポリマー電解質(すなわちアイオノマーフィルム)の表面に(例えば、化学的還元によって)直接堆積された作用電極(複数可)(例えば、白金、金など)を含む。この例のセンサー42はまた、アイオノマー相も湿潤させる内部の電解液に浸漬されている、参照電極及び対電極も含む。このセンサーにおいて、出力ガスストリームOGの部分が作用電極(複数可)の表面上を流れる。陽電位が印加されて(例えば、約1V対Ag/AgCl)、作用電極(複数可)及びアイオノマーフィルムの界面で電気化学反応が起こる。例において、作用電極(複数可)に印加される陽電位は、約0.2V~約1.1Vの範囲である。出力ガスストリームOGにおけるNOは、電気化学的に酸化して亜硝酸塩/硝酸塩となり、NO(g)レベルに比例する電流信号を出力する。
【0070】
他の例において、電流測定NOセンサーは、アイオノマーフィルムの、作用電極(複数可)と同じ表面に、別の作用電極を含み得、より低い陽電位が、(NOではなく)NO2のみが酸化されて(測定された電流を介して)検知されるように他の作用電極に印加されてよい。NOセンサー信号は、バイポテンショスタットを使用して、存在する任意のNO2について補正され得る。これらの電流測定NOセンサーは、比較的迅速な応答時間を示し、作用電極(複数可)の高表面積により、Shibuki構成よりも大きい電流を生じさせる。
【0071】
本明細書において言及されているように、出力ガスストリームOGにおけるNO2レベルをモニターするために、別のセンサーが含まれていてよいことが理解されるべきである。
【0072】
センサーデータ(つまり、出力ガスストリームOG中のNO濃度及び/又は出力ガスストリームOG中のNO
2濃度)はコントローラー44に伝達される。一例では、コントローラー44はPIDコントローラー(比例・積分・微分コントローラー)である。
図7は、感知及びフィードバックシステム内の電子回路の概略図を示し、センサー42、コントローラー44、及び、光源26に加え、表示されるその他の構成要素を含む。ISBは個別のセンサーボードであり、作用極を参照極に対して一定電位に維持し、電流を計測するポテンショスタットである。また、ISBは、測定した電流をアナログ(例えば、0V~3V若しくは0V~5Vの電圧信号又は4mA~20mAの電流)信号に変換する。アナログ信号は(アナログデジタル(A/D)変換器を用いて)容易にデジタル信号に変換可能で、コントローラー部44で容易に処理可能である。センサー42からのフィードバックは、送達先で少なくとも実質的に一定のNO濃度が達成できるように、光源26の1つ以上のパラメータをサーボ制御するのに用いられることがある。データは、出力ガスストリームOGの流れを調整するためにも用いられることがある。
【0073】
センサーデータが、NOレベルが高すぎる又は低すぎることを示す場合、光源26をON又は44にし、光強度及び/又は表面出力密度を調節し、及び/又は、1つ又は複数のガスの流量を調節してもよい。一例では、センサー42は出力ガスストリームOGの一酸化窒素レベルをモニターし、出力ガスストリームOGの一酸化窒素レベルに基づいて、コントローラー44は、光源26の現在の状態を維持する(例えば、NOが所望レベルのとき)、又は、NO生成を増加させるため光源26を調節する(例えば、出力ガスストリームOGの一酸化窒素レベルが目標レベル未満のとき)、又は、NO生成を減少させるため光源26を調節する(例えば、出力ガスストリームOGの一酸化窒素レベルが目標レベルを超過するとき)のうち1つを実行する。感知されたNOレベルが低すぎる場合、1つ又は複数の光源26がONにされるか、又は明るくされ得る。例えば、複数の光源26が含まれ、低レベルが感知されたときに1つがONである場合、NO放出率を増加させるためにもう1つの光源26をONにすることがある。感知されたNOレベルが高すぎる場合、1つ又は複数の光源26がOFFにされるか、又は暗くされ得る。一例として、NO放出率を増加又は減少させ、それによって、NO生成デバイス22Aから送出されて出力ガスストリームOGに存在するNO流を増加又は減少させるため、光強度及び/又は表面出力密度を増加又は減少するように調整することがある。
【0074】
目標NOレベルは、NOを使用中の所与の用途に基づくことがある。目標レベルは、患者40及び用途に応じて、非常に低い又は非常に高いことがある。例として、吸入療法中の新生児のNO目標レベルは約10ppmから約70ppmの範囲のことがあり、バイパス手術中に血小板及び他の細胞の活性化を防ぐために人工肺で生成されるNOの目標レベルは約190ppmから約210ppmの範囲のことがある。さらに、肺感染症などの抗菌用途の場合、例えば、約500ppbから約10ppmの範囲のより低いレベルのNOが吸入療法に有用なことがある。
【0075】
センサーデータはまた、望ましくない量のNO2が出力ガスストリームOGに存在するか否かを決定するためにも使用されることがある。望ましくない量のNO2が存在する場合、デバイス20Aのアラームが始動され、及び/又は、システム20Aからの出力ガスOGの送出を低減するように流量が調整され、及び/又は、NOレベルがそれに応じて調整され得る。
【0076】
ガス送達デバイス20Aはまた、二酸化窒素(NO2)フィルター50を含むことがある。NO2フィルター50は、出力ガスストリームOGが吸入ユニット48に送達される前に出力ガスストリームOGを受け取るために、送達導管46内に配置され得る。NO2フィルター50の一部の例は、出力ガスストリームOGから二酸化窒素の少なくとも一部を除去する。例として、シリカゲルフィルター(調整済みのシリカ粒子を使用)又はソーダ石灰スクラバーがある。これらのフィルター50は、NO2を生理学的に適切でないレベルに低減し得る。NO2フィルター50の他の例は、二酸化窒素を一酸化窒素に逆変換する。NO2が除去(吸収)されてNOのペイロードが失われることがなく、むしろNOに還元されるため、この変換は望ましい。このタイプのNO2フィルター50の例には、アスコルビン酸を含浸させたシリカ粒子がある。
【0077】
次に、
図3を参照すると、ガス送達デバイス20Bの別の例が図示される。ガス送達デバイス20Bは、
図1Aに示されるNOカートリッジ10又は
図1Cに示されるNOカートリッジ10’’又は
図1D及び
図1Eに示されるNOカートリッジ10A、10Bと共に用いられるのに適している。この例では、ガス送達デバイス20Bは、i)真空環境52、真空環境52内に含まれるNOカートリッジ10、10’’、10A又は10B(NOカートリッジ10、10’’は、少なくとも基材12又は12’’及び基材12上又は基材12’’内に固定化された固体状光感性NOドナー14を含む)、及び、固体状光感性NOドナー14を光hvに選択的に曝露してNOガスを生成するために機能可能に配置された光源26を含む一酸化窒素(NO)生成システム22B、ii)NO生成システム22BからのNOガスの流れを輸送するための出口導管30’、並びに、iii)酸素含有ガスOCを導入し、出力ガスOGストリームを形成させるために出口導管30’と機能可能に接続された吸気性ガス導管28’を含む。
【0078】
ガス送達デバイス20Bを用いて、本方法は、NOドナー14に光を照射するために光源26を動作させること、これによって真空環境52内でドナー14から光分解によってNOガスが放出され、真空環境52から出口導管30’を通ってNOガスを輸送すること、出力ガスOGを形成するために酸素含有ガスOCをNOガスに導入すること、及び、出力ガスOGを所望の送達先に輸送することを含む。
【0079】
真空環境52内では、無酸素でNOガスが生成されるため、NO2の形成が防がれる。故に、NOとO2の両方に浸透性があり、そのため、NO2生成のマイクロリアクターとして作用し得る基材12’’(例えば、シリコーンゴム)を含むことがあるNOカートリッジ10’’で、真空環境52は特に望ましい。真空環境52には酸素がないため、真空環境でNOカートリッジ10’’が用いられると、NO2を同時に生成することなく効果的に光分解によってNOを放出することができる。(NO2生成のマイクロリアクターとしては作用しない)カートリッジ10も真空環境52で用いられ得ることを理解されたい。
【0080】
本方法及びガス送達デバイス20Bの詳細を以下に記載する。
【0081】
デバイス20BのNO生成システム22Bは、光分解が実施される場所である真空環境52(例えば、光分解チャンバー)を含む。真空環境52は、カートリッジ10又は10’’を含むことが可能で、かつ、真空ポンプによって空気やその他のガスを除去できる、任意の好適な材料から構成され得る真空チャンバーであってもよい。真空環境52の例示的材料としては、ステンレス鋼、アルミニウム、真ちゅう、高密度セラミック、ガラス又はアクリルがある。真空環境52に不透明材料が用いられる場合、真空環境52は、光源26から照射される光hvの波長に対して透過性のある材料で形成された窓54を含むことがある。
【0082】
真空環境52は開口部を含むことがあり、NOカートリッジ10、10’’、10A又は10Bの耐用年数が経過した場合に開口部を通して交換することができる。
【0083】
真空環境52は、NOガスを真空環境52から出口導管30’に吸い出すことが可能な真空ポンプ56と機能可能に接続する出口34も有する。
【0084】
NO生成システム22Bは、カートリッジ10、10’’、10A又は10Bも含む。NOカートリッジ10は、
図1Aを参照して記載された例のいずれでもよく、又は、NOカートリッジ10’’は、
図1Cを参照して記載された例のいずれでもよく、又は、NOカートリッジ10A、10Bは
図1D又は
図1Eを参照して記載された例のいずれでもよく、そして、NOカートリッジ10A、10Bは、基材12及びNO透過性かつ光透過性膜16を含む
図1D又は
図1Eを参照して記載された例のいずれでもよい。NOカートリッジ10、10’’、10A又は10Bは、NOドナー14が直接光源26に面するように、真空環境の中に配置されてもよいことを理解されたい。
【0085】
NO生成システム22Bは光源26も含む。光源26は、
図2を参照して記載された例のいずれでもよい。光源26は、NOドナー14を光hvに選択的に曝露するよう配置されることがある。デバイス22Bでは、光源26を真空環境52の外に配置するのが望ましいことがある。これら例の一部では、光透過性の接着剤又は光源26からの光を遮断しないその他の適切な固定機構によって、光源26は真空環境52の外側に直接取り付けられることがある。これら例のその他の一部では、光源26は真空環境52の外側に取り付けられるのではなく、(
図3に示されるように)窓54を通して光hvを照射するように機能可能に配置されることがある。
【0086】
1つ又は複数の光源26をいつON、OFFにするか、ONサイクルの期間、光強度、表面出力密度などを制御するために、電子回路が光源26に機能可能に接続されることがある。この例示的デバイス20Bでは、光源26は、例えばカートリッジ10、10’’、10A又は10Bにつき最大8時間などの任意の時間間隔でONにされることがあり、つまり、この時間間隔で光分解によってNOを放出することがある。カートリッジ10、10’’、10A又は10B内のNOドナー14の量によっては、より長い時間間隔も可能なことがある。NOの生成を停止するのが望ましい場合、NOドナー14にそれ以上光hvが照射されないように光源26がOFFにされる。より大きな基材12又は12’’が用いられた場合、及び/又は、より高濃度のNOドナー14が用いられた場合、NO放出寿命はより長くなることがある。
【0087】
この例では、NOドナー14の光分解によって純粋なNOガスが生成される(つまり、その他のガスが含まれない)。形成されるどのようなエアロゾル液滴もi)NOカートリッジ10、10A又は10Bの膜16によって真空環境52への進入が防がれる、又は、ii)NOカートリッジ10’’、10A又は10Bの基材12’’内に閉じ込められることがある。
【0088】
故に、NOドナー14から放出されたNOガスが、真空環境52に存在する唯一のガスとなる。純粋なNOガスは、真空ポンプ56からの圧力によって、真空環境52から輸送されることがある。NOガスは、(
図2を参照して記載された出口導管30と同じ材料で形成され得る)出口導管30’を通って輸送されることがある。
【0089】
図3に示されるガス送達デバイス20Bは、導管30’内のNOガスに酸素含有ガスOCを導入するため、出口導管30’に機能可能に接続された吸気性ガス導管28’も含むことがある。吸気性ガス導管28’は、吸気性ガス導管28に関して記載された材料のいずれであってもよい。さらに、酸素含有ガスOCは、
図2を参照して記載された例のいずれでもあってもよく(例えば、純酸素ガスO
2、又は空気、又は酸素を含む低酸素ガス)、
図2を参照して記載されたガス供給源のいずれから送出されてもよい。酸素含有ガスOCの吸気性ガス導管28’への流れを制御するため、酸素含有ガス供給源は、流量調整器を含む、又は、流量調整器に接続され得る。任意の好適なガス流量が本明細書に記載されるように使用されてもよい。
【0090】
吸気性ガス導管28’では、酸素含有ガスOCは光分解によって放出されたNOガスと混合し、デバイス20Bの出力ガスストリームOGを形成する。
【0091】
ガス送達デバイス20Bでは、出口導管30’及び吸気性ガス導管28’は、送達導管46と機能可能に接続される、又は、送達導管46と一体化して形成されることがある。送達導管46は、出力ガスストリームOGを受容者/患者40に輸送可能な吸入ユニット48に機能可能に接続される。送達導管46及び吸入ユニット48は、
図2を参照して本明細書中に記載された例のいずれでもあってもよい。
【0092】
この例では、吸気性ガス導管28’及び送達導管46の長さは、所望の送達先(例えば、受容者40)にストリームが送達される前にNO2が形成されるのを回避するため、比較的短いことがある。受容者40への送達直前に酸素含有ガスOCが導入されるため、NOと酸素含有ガスOCとの接触時間が短いので、NO濃度への影響は最小限に抑えられる又は全くない。
【0093】
ガス送達デバイス20Bは、感知及びフィードバックシステムを更に含むことがある。一例では、感知及びフィードバックシステムは、出力ガスOGの一酸化窒素レベル(つまり、NO濃度)をモニターするために出力ガスストリームOGに接触するセンサー42、並びに、センサー42及び光源26に機能可能に接続するコントローラー44を含み、センサー42からの一酸化窒素レベルに応じてコントローラー44は光源26のパラメータを調節することができる。この例のセンサーは、出力ガスOGの二酸化窒素レベルのモニターにも用いられることがある。(センサー42、コントローラー44及び電子回路を含む)感知及びフィードバックシステムは、
図2を参照して本明細書中に記載された例のいずれでもあってもよい。センサーデータ(つまり、出力ガスストリームOG中のNO濃度及び/又は出力ガスストリームOG中のNO
2濃度)は、例えば、NO生成システム22BからのNO放出を増加又は減少するために、
図2を参照して記載されたように用いられることがある。
【0094】
ガス送達デバイス20Bは、二酸化窒素(NO2)フィルター50も含むことがある。NO2フィルターは、出力ガスストリームOGが吸入ユニット48に送達される前に出力ガスストリームOGを受け取るため、送達導管46内に配置されることがある。本明細書に記載されたNO2フィルター50のいずれかの例が、ガス送達デバイス20Bで用いられることがある。
【0095】
次に、
図4を参照すると、ガス送達デバイス20Cのさらに別の例が図示される。ガス送達デバイス20Cは、
図1Aに示されるNOカートリッジ10、又は、
図1Cに示されるNOカートリッジ10’’、又は、
図1D及び
図1Eに示されるNOカートリッジ10A若しくは10Bと共に用いられるのに適している。この例では、ガス送達デバイス20Cは、i)チャンバー24、チャンバー24’内に固定化されたNOカートリッジ10又は10’’(NOカートリッジ10、10’’、10A,又は10Bは、少なくとも基材12又は12’’及び基材12又は12’’に固定化された固体状光感性NOドナー14を含む)、及び、固体状光感性NOドナー14を光hvに選択的に曝露してNOガスを生成させるために機能可能に配置された光源26を含む一酸化窒素(NO)生成システム22C、ii)窒素ガスN
2をチャンバー24’に送達するための入口導管58、iii)チャンバー24’から窒素ガス及びNOガスストリームを輸送するための出口導管30’’、並びに、iv)酸素含有ガスOCを導入し、デバイス20Cの出力ガスOGストリームを形成させるために出口導管30’’と機能可能に接続された吸気性ガス導管28’’を含む。
【0096】
ガス送達デバイス20Cを用いて、本方法は、NOドナー14に光を照射するよう光源26を動作させること、これによってチャンバー24’内でドナー14からNOガスが光分解によって放出され、チャンバー24’からNOガスをスイープするために窒素ガスをチャンバー24に導入すること、N2/NOガスの混合物をチャンバー24から出口導管30’’を通して輸送すること、出力ガスOGを形成するために酸素含有ガスOCをN2/NOガス混合物に導入すること、及び、出力ガスOGを所望の送達先に輸送することを含む。
【0097】
この例では、スイープガスとしてN2が用いられるため、チャンバー24’内には酸素がほとんど又は全くない。これによって、デバイス20Cは、NOとO2の両方に浸透性があり、そのため、NO2生成のマイクロリアクターとして作用し得る基材12’’(例えば、シリコーンゴム)を含むことがあるNOカートリッジ10’’と共に用いられるのに適するようになる。N2スイープガスが酸素の存在を最小限に抑えるため、NOカートリッジ10’’は、チャンバー24’内に(もし生成されたとしても)NO2を同時に生成しすぎることなく効果的に光分解によってNOを放出するのに用いられることが可能になる。N2スイープガスは、患者への送達前に酸素含有ガスと混合され得る。この例では、(NO2生成のマイクロリアクターとしては作用しない)カートリッジ10も用いられ得ることを理解されたい。
【0098】
本方法及びガス送達デバイス20Cの詳細を以下に記載する。
【0099】
デバイス20CのNO生成システム22Cは、チャンバー24’を含む。この例では、チャンバー24’は、チャンバー24に関して記載されたいずれの例でもよく、又は、真空環境52でもよい。
【0100】
NO生成システム22Cは、カートリッジ10、10’’、10A又は10Bも含む。NOカートリッジ10は、
図1Aを参照して記載された例のいずれでもよく、並びに、NOカートリッジ10’’は、
図1Cを参照して記載された例のいずれでもよく、並びに、NOカートリッジ10A又は10Bは、基材12及びNO透過性かつ光透過性膜16を含む
図1D及び
図1Eを参照して記載された例のいずれでもよい。NOカートリッジ10、10’’、10A又は10Bは、NOドナー14が直接光源26に面するように、チャンバー24’の中に配置されてもよいことを理解されたい。
【0101】
この例では、光源26はチャンバー24’内に図示される。あるいは、
図2又は3を参照して記載された例のいずれかのように、光源26はチャンバー24’の外側に配置され得ることを理解されたい。光源26は、チャンバー24’内でNOドナー14を照射するよう光源26が配置される限り、
図2を参照して記載された例のいずれでもよく、本明細書中に開示された電子回路と電気的に通信することがある。
【0102】
チャンバー24’は入口32を含み、入口32は窒素ガスをチャンバー24’に送達する入口導管58に取り付けられている。窒素ガスN2は、圧縮ガスタンク60又は酸素スクラバーなどのガス供給源から入口導管58に供給され得る。圧縮ガスタンク60は、圧縮窒素ガスN2を含むことがあり、窒素ガスN2の入口導管58への流量を制御するための調節装置が付属している。酸素スクラバー(図示せず)は、周囲の空気を酸素スクラバーに導入するポンプに機能可能に接続されることがある。周囲の空気は、入口導管58に送達される窒素ガスN2を生成するために周囲の空気から酸素を除去することが可能な酸素スクラバーの溶液又は粒子ベッドに方向付けられる。窒素ガスN2は、周囲の空気に由来する混合ガスのことがある。混合ガスは窒素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素を含み、また、少量の酸素以外のガスを含む可能性がある。一例では、酸素スクラバーは、空気から少なくとも50%の酸素を除去するため、混合ガスは10%未満の酸素ガスを含むことがある。別の例では、酸素スクラバーは空気から充分な酸素を除去して、混合ガスに含まれる酸素ガスは5%以下になる。
【0103】
デバイス20Cのこの例では、入口導管58は窒素ガスN2を一酸化窒素生成システム22Cに送達し、一酸化窒素生成システム22Cでは、本明細書に記載の方法で光源26を用いてNOが光分解によって生成されている、又は、光分解によって生成される。窒素パージガスN2はチャンバー24’内に直接導入されることがある、あるいは、初めに流量計62を通過することがある。流量計62は、窒素パージガスN2の線形若しくは非線形質量又は体積流量を測定し、制御する。
【0104】
システム22Cに導入された窒素パージガス(N2)は、生成された一酸化窒素を流れにのせる。その結果生成された窒素ガスN2及び一酸化窒素N2/NOのストリームは次に出口34を通ってシステム22Cから輸送される。形成されたエアロゾル液滴は、いずれも、i)NOカートリッジ10、10A又は10Bの膜16によってチャンバー24’への進入が妨がれる、又は、ii)NOカートリッジ10’’、10A又は10Bの基材12’’内に閉じ込められる。N2/NOガスストリームは、出口導管30’’を通って輸送される。
【0105】
図4に示されるガス送達デバイス20Cは吸気性ガス導管28’も含む。吸気性ガス導管28’は、酸素含有ガスOCをN
2/NOガスストリームに導入してこのデバイス20Cの出力ガスOGを形成するため、出口導管30’’に機能可能に接続される。吸気性ガス導管28’は、吸気性ガス導管28に関して記載された材料のいずれであってもよい。さらに、酸素含有ガスOCは、
図2を参照して記載された例のいずれであってもよく(例えば、純酸素ガスO
2若しくは空気、又は、酸素を含む低酸素ガス)、
図2を参照して記載されたガス供給源のいずれから送出されてもよい。ガス供給源の例は、
図4に示される酸素タンク64である。例えばタンク64などの酸素含有ガス供給源は、酸素含有ガスOCの吸気性ガス導管28’への流れを制御するため、流量調整器を含む、又は、流量調整器に接続され得る。任意の好適なガス流量が本明細書に記載されるように使用されてもよい。酸素含有ガスOCの流量は、連続的又は間欠的であってもよく、酸素含有ガスOC及び所望の吸入気酸素(つまり、FiO
2)の組成に依存することがある。
【0106】
ガス送達デバイス20Cでは、出口導管30’’及び吸気性ガス導管28’は、送達導管46と機能可能に接続される、又は、送達導管46と一体化して形成されることがある。送達導管46では、酸素含有ガスOCはN2/NOガスストリームと混合し、デバイス20Cの出力ガスストリームOGを形成する。
【0107】
送達導管46は、出力ガスストリームOGを受容者/患者40に輸送可能な吸入ユニット48に機能可能に接続される。送達導管46及び吸入ユニット48は、
図2を参照して本明細書に記載される例のいずれでもよい。
【0108】
この例では、送達導管46の長さは、ストリームが所望の送達先(例えば、受容者40)に送達される前にガスが失われるのを防ぐため、比較的短いことがある。酸素含有ガスOCは受容者40への送達直前に導入されるため、NOと酸素含有ガスOCとの接触時間が短いので、NO濃度の影響は最小限に抑えられる又は全くない。
【0109】
ガス送達デバイス20Cは、感知及びフィードバックシステムを更に含むことがある。一例では、感知及びフィードバックシステムは、出力ガスOGの一酸化窒素レベル(つまり、NO濃度)をモニターするために出力ガスストリームOGに接触するセンサー42、並びに、センサー42及び光源26に機能可能に接続するコントローラー44を含み、センサー42からの一酸化窒素レベルに応じてコントローラー44は光源26のパラメータを調節することができる。この例のセンサーは、出力ガスOGの二酸化窒素レベルのモニターにも用いられることがある。(センサー42、コントローラー44、及び、電子回路を含む)感知及びフィードバックシステムは、
図2を参照して本明細書中に記載された例のいずれでもあってもよい。センサーデータ(つまり、出力ガスストリームOG中のNO濃度及び/又は出力ガスストリームOG中のNO
2濃度)は、例えば、NO生成システム22CからのNO放出を増加又は減少するために、
図2を参照して記載されたように用いられることがある。
【0110】
ガス送達デバイス20Cは、二酸化窒素(NO2)フィルター50も含むことがある。NO2フィルターは、出力ガスストリームOGが吸入ユニット48に送達される前に出力ガスストリームOGを受け取るため、送達導管46内に配置されることがある。本明細書に記載されたNO2フィルター50のいずれかの例が、ガス送達デバイス20Cで用いられることがある。
【0111】
次に、
図5を参照すると、ガス送達デバイス20Dの別の例が図示される。ガス送達デバイス20Dは、
図1Bに示されるNOカートリッジ10’又はNOカートリッジ10A若しくは10Bの一部の例と共に用いられるのに適している。この例では、ガス送達デバイス20Dは、i)チャンバー24、チャンバー24内に固定化されたNOカートリッジ10’、10A又は10B(NOカートリッジ10’、10A又は10Bは、光透過性基材12’、光透過性基材12’の表面S
1に固定化された固体状光感性NOドナー14、及び、固体状光感性NOドナー14に配置されたポーラス膜16’を含む)、及び、固体状光感性NOドナー14を光hvに光透過性基材12’を通して選択的に曝露してNOガスを生成させるために機能可能に配置された光源26を含む一酸化窒素(NO)生成システム22C、ii)酸素含有ガスOCを導入してNOガスを含む出力ガスOGを形成するためにチャンバー24に機能可能に接続された吸気性ガス導管28、並びに、iii)NO生成システム22Dからの出力ガスOGのストリームを輸送する出口導管30を含む。
図5には特に図示されないが、固体状光感性NOドナー14は、接着剤18(例えば、
図1Bを参照して記載された)を用いて、又は、(例えば、
図1D及び
図1Eを参照して記載された)1つ若しくは複数のキャビティ21を用いて基材12’の表面S
1に固定化され得ることを理解されたい。
【0112】
ガス送達デバイス20Dを用いて、本方法は、光透過性基材12’を通して、NOドナー14に光を照射するよう光源26を動作させること、これによって、チャンバー24内でドナー14からNOが光分解によって放出され、酸素含有ガスOCをチャンバー24に導入すること、チャンバー24においてNO及び酸素含有ガスOCが混合して出力ガスOGを形成し、及び、出力ガスOGをチャンバー24から所望の送達先に輸送することを含む。本方法及びガス送達デバイス20Dの詳細を以下に記載する。
【0113】
デバイス20DのNO生成システム22Dは、光分解が起こるチャンバー24(つまり、光分解チャンバー)を含む。チャンバー24は、
図2を参照して記載されたチャンバーのいずれの例でもよい。
【0114】
NO生成システム22Dは、カートリッジ10’、10A又は10Bも含む。NOカートリッジ10’は、
図1Bを参照して記載された例のいずれでもよく、NOカートリッジ10A、10Bは、光透過性基材12’及びポーラス膜16’を含む
図1D及び
図1Eを参照して記載された例のいずれでもよい。
【0115】
NO生成システム22Dは、光源26も含む。カートリッジ10’の基材12’を通して伝達可能かつ固体状光感性NOドナー14の光分解を開始させる光を照射可能な任意の光源26が用いられ得る。本明細書に記載の光源26のいずれかが用いられ得る。
【0116】
図5に示される例では、光源26は、光透過性基材12’を通してNOドナー14を光hvに選択的に曝露するよう配置される。NOカートリッジ10’、10A又は10Bのこの例では、膜16’は透明又は不透明である。故に、不透明膜16’が用いられた場合、
図2に示される例とは異なり、デバイス22Dの光源26は膜16’に光を向けるようには配置されず、むしろ、光を光透過性基材12’に向けるように配置される。デバイス22D中の光源25は、照射された光が光透過性基材12を通ってNOドナー14に届くことが可能な限りにおいて、本明細書に開示された例のいずれかを用いて、チャンバー24に取り付けられる、又は、チャンバー24の内若しくは外に機能可能に配置されることがある。
図5に示される例では、光源26は、光透過性接着剤36によってチャンバー24に取り付けられる。他の例では、チャンバー24は、光源26と光透過性基材12’との間に(
図3の窓54と類似の)窓を含むことがある。
【0117】
電子回路は、1つ又は複数の光源26をいつON、OFFにするか、ONサイクルの期間、光強度、表面出力密度などを制御するために光源26に機能可能に接続されることがある。電子回路は、本明細書に記載されるような感知及びフィードバックシステムの一部であってもよい。
【0118】
光源26は、例えば、カートリッジ10’につき最大8時間など任意の時間間隔でONにされることがあり、つまり、この時間間隔で光分解によってNOを放出することがある。カートリッジ10’内のNOドナー14の量によってより長時間の時間間隔もあり得る。NOの生成を停止することが望ましい場合、光透過性基材12’を通して光hvがこれ以上NOドナー14に照射されないように光源26はOFFにされる。より大きな基材12’が用いられた場合、及び/又は、より大量のNOドナー14が用いられた場合、NO放出寿命はより長くなることがある。
【0119】
この例では、NOドナー14から放出されたNOガスは、膜16’を通ってチャンバー24に浸透する。膜16’は、エアロゾル液滴が生成されるのを防ぐ。
【0120】
図5に示されるガス送達デバイス20Dは、酸素含有ガスOCをチャンバー24に導入するために(例えば、入口32において)チャンバー24に機能可能に接続される吸気性ガス導管28も含む。吸気性ガス導管28、酸素含有ガスOC、及びガス供給源は、
図2を参照して記載された例のいずれでもよい。酸素含有ガス供給源は、酸素含有ガスOCの吸気性ガス導管28への流れを制御するために流量調整器を含む、又は、流量調整器に接続し得る。本明細書に記載される任意の好適なガス流量が用いられ得る。
【0121】
チャンバー24では、酸素含有ガスOCは光分解によって放出されたNOガスと混合し、出力ガスストリームOGを形成する。出力ガスOGのストリームはNO生成システム22Dから、出口34を通って出口導管30に排出されることがある。出口導管30は、出力ガスOG中の少なくとも酸素含有ガスOC及び一酸化窒素に対して浸透性が低い又は浸透性がない管のことがある。出口導管30の長さも、ストリームが所望の送達先(例えば、受容者40)に送達される前にNO2が形成されることを回避するため、比較的短いことがある。受容者40への送達直前に酸素含有ガスOCが導入されるため、NOと酸素含有ガスOCとの接触時間が短いので、NO濃度への影響は最小限に抑えられる又は全くない。
【0122】
一部の例では、出力ガスOGストリームは、流量を制御するための調節装置を含むことがあるガス供給源からの圧力によって輸送されることがある。その他の例では、出力ガスOGストリームは、下流に位置する真空からの圧力によって輸送されることがある。
【0123】
ガス送達デバイス20Dでは、出口導管30は、送達導管46に接続されることがある、又は、送達導管46に機能可能に接続されることがある。送達導管46は、出力ガスストリームOGを受容者/患者40に輸送可能な吸入ユニット48に機能可能に接続される。送達導管46及び吸入ユニット48は、
図2を参照して本明細書に記載された例のいずれでもよい。
【0124】
ガス送達デバイス20Dは、感知及びフィードバックシステムを更に含むことがある。一例では、感知及びフィードバックシステムは、出力ガスOGの一酸化窒素レベル(つまり、NO濃度)をモニターするために出力ガスストリームOGと接触するセンサー42、並びに、センサー42及び光源26に機能可能に接続されるコントローラー44を含む。コントローラー44は、センサー42からの一酸化窒素レベルに応じて光源26のパラメータを調節することができる。この例のセンサーは、出力ガスOGの二酸化窒素レベルをモニターするためにも用いられることがある。(センサー42、コントローラー44、及び、電子回路を含む)感知及びフィードバックシステムは、
図2を参照して本明細書に記載された例のいずれであってもよい。センサーデータ(つまり、出力ガスストリームOG中のNO濃度及び/又は出力ガスストリームOG中のNO
2濃度)は、例えば、NO生成システム22Bから放出されるNOを増加又は減少させるために、
図2を参照して記載されるように用いられることがある。
【0125】
ガス送達デバイス20Dは、二酸化窒素(NO2)フィルター50も含むことがある。NO2フィルターは、出力ガスストリームOGが吸入ユニット48に送達される前に出力ガスストリームOGを受け取るように、送達導管46内に配置されることがある。本明細書に記載されるNO2フィルター50のいずれの例がガス送達デバイス20D内で用いられてもよい。
【0126】
次に
図6を参照すると、ガス送達デバイス20Eの更に別の例が図示される。ガス送達デバイス20Eは、
図1A、1B、1C、1D及び1Eにそれぞれ示されるNOカートリッジ10、10’、10’’、10A、又は10Bと共に用いられるのに適する。この例では、ガス送達デバイス20Eは、i)チャンバー24、チャンバー24内に含まれるNOカートリッジ10、10’、10’’、10A、又は10B、及び、固体状光感性NOドナー14を光hvに(例えば、直接、又は光透過性基材12’を通して)選択的に曝露してNOガスを生成させるために機能可能に配置された光源26を含む一酸化窒素(NO)生成システム22E、ii)酸素含有ガスOCをチャンバー24に導入するため、チャンバー24に機能可能に接続される吸気性ガス導管28、iii)少なくとも酸素含有ガスOC及びNOガスのストリームをチャンバー24から送達導管46に輸送するための出口導管30、並びに、iv)ストリームOGが送達導管46に送達される前にストリームOGを受け取るよう配置された二酸化窒素フィルター50を含む。
【0127】
ガス送達デバイス20Eの場合、方法は、光をNOドナー14に放射するよう光源26を操作することであって、光はチャンバー24内部のドナー14からNOを光分解により放出する、操作すること、チャンバー24に酸素含有ガスOCを導入することであって、チャンバー24内でNOと酸素含有ガスOCがガス混合物を形成する、導入すること、ガス混合物をチャンバー24から二酸化窒素フィルターに輸送することであって、二酸化窒素フィルターでは出力ガスOGを形成するようNO2を減少させ又は除去することができる、輸送すること、及び出力ガスOGを送達導管46に輸送することを含む。
【0128】
カートリッジ10、10’、10A、又は10Bは、NO2をほとんど生成することができない又は全く生成することができないけれども、ガス送達デバイス20Eは、カートリッジ10、10’、10’’、10A、又は10Bのいずれかと共に使用してもよい。このデバイス20Eは、カートリッジ10’’と共に使用するのに特に適してよい。本明細書において言及したように、NOカートリッジ10’’は、NOとO2の両方に透過性がある基材12’’(例えばシリコーンゴム)を含んでもよく、したがってNO2生成用のマイクロリアクターとして機能することができる。本実施例におけるチャンバー24は酸素を含んでよく、チャンバー24に導入される酸素含有ガスOCを有するので、NOカートリッジ10’’はNOガスを光分解により放出することに加えて、NO2を生成することもできる。ガスストリームを受容者40に送達する前にNO2を除去するために、二酸化窒素フィルター50を使用してもよい。
【0129】
本方法及びガス送達デバイス20Eの詳細をこれから説明する。
【0130】
このデバイス20EのNO生成システム22Eには、光分解が起こるチャンバー24(すなわち、光分解チャンバー)が含まれる。チャンバー24は、
図2を参照して説明されたチャンバーの例のいずれであってもよい。
【0131】
NO生成システム22Eにはまた、カートリッジ10、10’、10’’、10A、又は10Bが含まれる。NOカートリッジ10、10’、10’’、10A、又は10Bは、
図1A、1B、1C、1D、及び1Eを参照して説明された例のいずれであってもよい。
【0132】
NO生成システム22Eにはまた、光源26が含まれる。固体状光感性NOドナー14の光分解を起こさせる光を放射することができる任意の光源26を使用してもよい。本明細書に記載された光源26のいずれを使用してもよい。本実施例の光源26の配置は、使用されるNOカートリッジ10、10’、10’’、10A、又は10Bによることになる。例えば、NOカートリッジ10、10A、又は10BのNO透過性かつ光透過性膜16に対して、又はNOカートリッジ10’、10A、又は10Bの光透過性基材12’に対して、又はNOカートリッジ10’’の基材12’’に固定化されたNOドナーに対して、光を放射するよう光源26を配置してもよい。
【0133】
光源26をONにする時及び光源26をOFFにする時、ONサイクルの期間、強度、パワー面密度等を制御するよう電子回路を光源26に機能可能に接続してもよい。この電子回路は、本明細書に記載したように感知及びフィードバックシステムの一部であってもよい。
【0134】
カートリッジ10、10’、10’’、10A、又は10Bにつき、例えば最長8時間等の時間間隔で光源26をONにしてもよく、したがってこの時間間隔でNOを光分解により放出してもよい。カートリッジ10、10’、10’’、10A、又は10BにあるNOドナー14の量によっては、これより長い時間間隔を可能としてもよい。NOの生成を中止することが望ましい場合は、hv光が光透過性基材12’を介してNOドナー14にそれ以上放射されないように光源26をOFFにする。大きい基材12、12’、12’’を使用する場合及び/又は量が多いNOドナー14を使用する場合には、NO放出時間を長くしてもよい。
【0135】
本実施例においては、NOカートリッジ10又はいくつかの例である10A又は10Bを使用する場合、NOドナー14から放出されたNOガスは、膜16を透過してチャンバー24に入る。本実施例においては、NOカートリッジ10’又はいくつかの例である10A又は10Bを使用する場合、NOドナー14から放出されたNOガスは、膜16’を透過してチャンバー24に入る。本実施例においては、NOカートリッジ10’’を使用する場合、NOドナー14から放出されたNOガスは、基材12’’を透過してチャンバー24に入る。
【0136】
図6に示すガス送達デバイス20Eにはまた、酸素含有ガスOCをチャンバー24に導入するために、チャンバー24に機能可能に接続された吸気性ガス導管28(例えば、入口32)が含まれる。吸気性ガス導管28、酸素含有ガスOC、及びガス源は、
図2を参照して言及される実施例のいずれであってもよい。酸素含有ガス源はまた、吸気性ガス導管28に入る酸素含有ガスOCの流量を調製する流量調整器を含むことができ、又は流量調整器に連結することができる。本明細書に記載するように任意の好適なガス流量を用いてもよい。
【0137】
チャンバー24において、酸素含有ガスOCは、光分解により放出されたNOガスと混合される。NOカートリッジ10’’を使用する場合、基材12’’はNOガス及び酸素ガス用のマイクロリアクターとして機能してよく、したがって、チャンバー24中で若干の二酸化窒素が形成されることもあってよい。このようにNO生成システム22Eの例の中には、チャンバー24中のガス混合物にNOガス、酸素含有ガスOC、及びNO2が含まれることがある。
【0138】
本デバイス20Eにおいては、チャンバー24中のガス混合物は、出口34を通じて出口導管30まで輸送される。出口導管30は、酸素含有ガスOC及び出力ガスOG中の一酸化窒素に対する透過性が低い又は透過性がないチューブであってよい。
【0139】
いくつかの実施例においては、ガス混合物をガス源からの圧力の結果として輸送してもよく、ガス源は流量を調整する調節装置を含んでもよい。他の実施例においては、ガス混合物は下流に配置された真空領域からの圧力の結果として輸送されてもよい。
【0140】
ガス送達デバイス20Eにおいては、出口導管30は、送達導管46であってもよく、又は送達導管46に機能可能に接続されてもよい。しかしながら、本実施例のデバイス20Eにおいては、二酸化窒素(NO2)フィルター50が2本の導管30、46の間に配置されている。NO2フィルター50は、ガス混合物を受け取り、全てのNO2を除去するかNO2の量を低減させて本デバイス20Eの出力ガスストリームOGを形成する。本明細書に記載されたNO2フィルター50の全ての実施例をガス送達デバイス20Eに使用してもよい。
【0141】
本実施例において、出力ガスストリームOGを、次いでNO
2フィルター50から、送達導管46を介して、吸入ユニット48まで輸送してよく、吸入ユニット48は出力ガスストリームOGを受容者/患者40に送達することができる。送達導管46及び吸入ユニット48は、
図2を参照して本明細書に記載された実施例のいずれであってもよい。
【0142】
ガス送達デバイス20Eはさらに、感知及びフィードバックシステムを含んでもよい。1つの実施例においては、この感知及びフィードバックシステムには、出力ガスOGがNO2フィルター50を通過した後の出力ガスOGの一酸化窒素レベル(すなわち、NO濃度)及び二酸化窒素レベル(すなわち、NO2濃度)をモニターするために、出力ガスストリームOGと接触するセンサー42を含む。この感知及びフィードバックシステムはさらに、センサー42及び光源26に機能可能に接続されたコントローラー44を含んでもよく、コントローラー44を用いるとセンサー42からの一酸化窒素レベル及び/又は二酸化窒素レベルに応じて光源26のパラメータを調整することができる。
【0143】
感知及びフィードバックシステム(センサー42、コントローラー44、及び電子回路を含む)は、
図2を参照して本明細書に記載された実施例のいずれであってもよい。センサーデータ(すなわち、出力ガスストリームOG中のNO濃度及び/又は出力ガスストリームOG中のNO
2濃度)は、例えばNO生成システム22EからのNO放出量を増加又は減少させるために、
図2を参照して記載されるように使用してもよい。
【0144】
例のNOカートリッジ10、10’、10’’、10A、又は10Bのいずれも、ガス送達デバイス20A~20EのいずれかからのNO放出量を増加させるために、並列配置に配列してもよいことが理解されよう。
【0145】
図2~
図6には示していないが、ガス生成デバイス20A~20Eは、やはり電子回路、ユーザーインターフェースパネル、センサー、フィルター、ガスポンプ等を含むことができる携帯用又は据え付け型の筐体に組み込んでもよい。2個の例示的な携帯型デバイス構成を、
図8A及び
図8Bに示す。
【0146】
本開示をさらに説明するために、本明細書に実施例を示している。これらの実施例は例示することのみを目的としており、本開示の範囲を限定するものとして解釈してはならないことが理解されよう。
【実施例】
【0147】
実施例1
【0148】
本実施例では、2個の異なるNOドナー、すなわちS-ニトロソ-N-アセチルペニシラミン(SNAP)結晶又は固体S-ニトロソグルタチオン(GSNO)を、それぞれポリジメチルシロキサン(PDMS)薄膜にドープした。これらの実施例は
図1Cに示されるNOカートリッジ10’’を表した。
【0149】
結晶又は固体粉末をそれぞれ未硬化シリコーンゴムと混ぜ合わせ、この混合物を薄膜に注型し、次いで硬化した。薄膜中のSNAP結晶濃度又は固体GSNO濃度は13重量%であり、この薄膜の直径は3mmだった。
【0150】
光分解を起こさせてNOガスを生成させるために、表示波長が385nm、470nm、及び565nmであるLED光源を使用して薄膜を光に曝露した。各光源について、光パワー面密度を51mW/cm2に設定した。アンペロメトリックセンサーを使用してNOレベルを検出した。
【0151】
図9Aは、a)385nm、b)470nm、及びc)565nm光に曝露した場合におけるPDMS-SNAP薄膜の気相のNOレベルの反応速度を示し、
図9Bは、a)385nm、b)470nm、及びc)565nm光に曝露した場合におけるPDMS-SNAP薄膜の累積NO放出量を示す。
図10Aは、a)385nm、b)470nm、及びc)565nm光に曝露した場合におけるPDMS-GSNO薄膜の気相のNOレベルの反応速度を示し、
図10Bは、a)385nm、b)470nm、及びc)565nm光に曝露した場合におけるPDMS-GSNO薄膜の累積NO放出量を示す。
【0152】
図9A、
図9B、
図10A、及び
図10Bの曲線は平均値を表し、エラーバーは3回の平行測定の平均値の標準誤差に対応する。
図9A~
図10Bの結果から、NOガスを生成させるためにSNAP及びGSNOを光分解することは、いくつかの異なる光源を用いて実現できることが示される。この結果からはまた、両NOドナーには表示波長385nmのLEDが最も効果を発揮できることも示される。
【0153】
実施例2
【0154】
図9A~
図10Bの結果から、PDMS-SNAP薄膜及びPDMS-GSNO薄膜を一定の光パワー面密度で照射しても、これらの薄膜からのNO放出量は安定しないことが明らかとなった。したがって、追加の薄膜を調製し、
図7に示されるものと同様のフィードバックシステムで試験した。
【0155】
本実施例においては、S-ニトロソ-N-アセチルペニシラミン(SNAP)をポリジメチルシロキサン(PDMS)薄膜にドープした。これらの実施例は、
図1Cに示されるNOカートリッジ10’’を表す。
【0156】
SNAP結晶を未硬化シリコーンゴムと混ぜ合わせ、この混合物を薄膜に注型し、次いで硬化した。薄膜中のSNAP結晶濃度は13重量%であり、この薄膜の直径は6mmだった。
【0157】
光分解を起こさせてNOガスを生成させるために、表示波長が385nm、470nm、及び565nmであるLED光源を使用して薄膜を光に曝露した。各光源について、光パワー面密度を51mW/cm2に設定した。スイープガス(受容者ガス)は、流量200SCCMの窒素とした。本実施例において、アンペロメトリックNOセンサーを使用して送達されたガス中のNOレベルを連続的にモニターした。目標NOレベルは1000ppbとし、センサーからのフィードバックに基づいて必要であれば光パワー面密度を調整した。
【0158】
図11Aは、送達されたガスストリーム中のNOレベル(極太線)及び385nm、470nm、及び565nm光に曝露したPDMS-SNAP薄膜の累積NO放出量(細線)を示す。
図11Bは、385nmLED光源、470nmLED光源、及び565nmLED光源のパルス幅変調(PWM)のデューティサイクルを示す。
【0159】
目標NOレベルを1000ppb、2500ppb、及び5000ppbに設定して、追加のPDMS-SNAP薄膜を試験した。この試験では、表示波長が385nmの光源を使用し、スイープガス(受容者ガス)は、流量200SCCMの窒素とした。アンペロメトリックNOセンサーを使用して送達されたガス中のNOレベルを連続的にモニターし、センサーからのフィードバックに基づいて必要であれば光パワー面密度を調整した。
【0160】
図12Aは、送達されたガスストリーム中のNOレベル(極太線)及び385nm光に曝露したPDMS-SNAP薄膜の累積NO放出量(細線)を示す。
図12Bは、各種目標NOレベルでの385nmLED光源のパルス幅変調(PWM)のデューティサイクルを示す。
【0161】
これらの結果から、本明細書に開示されたフィードバックシステムを用いるとNO放出量を比較的むらがなく安定させることができることが示される。
【0162】
目標NOレベルを500ppb、1000ppb、1500ppb、2000ppb、2500ppb、及び5000ppbに段階的に変化させ、次いで逆方向に戻して、さらに他のPDMS-SNAP薄膜を試験した。この試験では、表示波長が385nmの光源を使用し、スイープガス(受容者ガス)は、流量200SCCMの窒素とした。アンペロメトリックNOセンサーを使用して送達されたガス中のNOレベルを連続的にモニターし、センサーからのフィードバックに基づいて必要であれば光パワー面密度を調整した。
【0163】
図13Aは、385nm光に曝露したPDMS-SNAP薄膜のNO設定値及び実際に測定されたNOレベルを示す。
図13Bは、各種目標NOレベルでの385nmLED光源のパルス幅変調(PWM)のデューティサイクルを示す。
【0164】
目標NOレベルを2500ppbに設定して、さらに他のPDMS-SNAP薄膜を試験した。この試験では、表示波長が385nmの光源を使用し、スイープガス(受容者ガス)は、各種流量の窒素とした。アンペロメトリックNOセンサーを使用して送達されたガス中のNOレベルを連続的にモニターし、センサーからのフィードバックに基づいて必要であれば光パワー面密度を調整した。
【0165】
図14は、窒素ガス流量の逸脱に対するシステムの応答を示す。窒素ガス流量の複数の変化を中央に示し、NO放出量に対する効果を上部に示し、385nmLED光源のパルス幅変調(PWM)のデューティサイクルに対する効果を下部に示す。
【0166】
実施例3
【0167】
一酸化窒素が生成される時を測定するために、窒素ガス及び空気を用いてPDMS-SNAP薄膜を試験した。
【0168】
本実施例においては、S-ニトロソ-N-アセチルペニシラミン(SNAP)をポリジメチルシロキサン(PDMS)薄膜にドープした。これらの実施例は、
図1Cに示されるNOカートリッジ10’’を表す。
【0169】
SNAP結晶を未硬化シリコーンゴムと混ぜ合わせ、この混合物を薄膜に注型し、次いで硬化した。薄膜中のSNAP結晶濃度は13重量%であり、この薄膜の直径は6mmだった。
【0170】
光分解を起こさせてNOガスを生成させるために、表示波長が385nmであるLED光源を使用して薄膜を光に曝露した。光パワー面密度を51mW/cm2に設定した。いくつかの試験では、スイープガス(受容者ガス)は、流量200SCCMの窒素とした。他の試験では、スイープガス(受容者ガス)は、流量200SCCMの空気とした。本実施例において、アンペロメトリックNOセンサーを使用して送達されたガス中のNOレベルを連続的にモニターした。目標NOレベルは1000ppbとし、センサーからのフィードバックに基づいて必要であれば光パワー面密度を調整した。
【0171】
図15Aは、送達されたN
2又は空気ガスストリーム中のNOレベル(極太線)及び385nm光に曝露したPDMS-SNAP薄膜の累積NO放出量(細線)を示す。
図15Bは、N
2ガスストリーム又は空気ガスストリームと共に使用した場合の385nmLED光源のパルス幅変調(PWM)のデューティサイクルを示す。
【0172】
図15A及び
図15Bの結果から、空気ガスストリームを使用すると二酸化窒素が形成されているのが分かる。NO
2の形成は、酸素とNOの両者を非常に溶解しやすいので、PDMS薄膜で生じてもよい。そのため、本明細書に開示されたNOドナーをドープした薄膜と共にNO
2フィルター又は真空チャンバーを使用してもよい。
【0173】
実施例4
【0174】
実施例3の結果を基にして、以下の試験を実行した。本実施例においては、S-ニトロソ-N-アセチルペニシラミン(SNAP)をポリジメチルシロキサン(PDMS)薄膜にドープした。これらの実施例は、
図1Cに示されるNOカートリッジ10’’を表す。
【0175】
SNAP結晶を未硬化シリコーンゴムと混ぜ合わせ、この混合物を薄膜に注型し、次いで硬化した。薄膜中のSNAP結晶濃度は31.1mgであり、この薄膜の直径は6mmだった。
【0176】
光分解を起こさせてNOガスを生成させるために、表示波長が385nmであるLED光源を使用して薄膜を光に曝露した。光パワー面密度を51mW/cm2に設定した。この試験では、スイープガス(受容者ガス)は、流量40SCCMの窒素とした。一度スイープガスがNOと混合したら、80%O2ストリーム中2500ppbでNOガスを送達するために、スイープガスを酸素ガス(流量160SCCM)と混合させた。2個のガスストリームを混合した後にNO濃度を測定した。
【0177】
図16Aは、混ぜ合わせたストリーム中のNOレベル(実線)及び385nm光に曝露したPDMS-SNAP薄膜の累積NO放出量(破線)を示す。
図16Bは、混ぜ合わせたストリームと共に使用した場合の385nmLED光源のパルス幅変調(PWM)のデューティサイクルを示す。
【0178】
図16A及び
図16Bの結果から、窒素は適切なスイープガスであり、続けて酸素を加えるとNO
2の形成量が減少しやすくなることが示される。
【0179】
実施例5
【0180】
実施例3の結果を基にして、以下の試験を実行した。本実施例においては、固体S-ニトロソグルタチオン(GSNO)をポリジメチルシロキサン(PDMS)薄膜にドープした。これらの実施例は
図1Cに示されるNOカートリッジ10’’を表す。
【0181】
固体GSNOを未硬化シリコーンゴムと混ぜ合わせ、この混合物を薄膜に注型し、次いで硬化した。薄膜中の固体GSNO濃度は13重量%であり、この薄膜の直径は6mmだった。
【0182】
光分解を起こさせてNOガスを生成させるために、表示波長が470nmであるLED光源を使用して薄膜を光に曝露した。光パワー面密度を51mW/cm2に設定した。この試験では、スイープガス(受容者ガス)は、流量200SCCMの窒素又は流量200SCCMの空気とした。ある窒素ストリームはそのままで試験し、別の窒素ストリームは調整済シリカゲルNO2スクラバーを通過した後に試験し、空気ストリームは調整済シリカゲルNO2スクラバーを通過した後に試験した。
【0183】
図17Aは、窒素ストリーム中のNOレベル及びNO
2レベルを示し、
図17Bは、調整済シリカゲルNO
2スクラバーを通過した後の窒素ストリーム中のNOレベル及びNO
2レベルを示し、
図17Cは、調整済シリカゲルNO
2スクラバーを通過した後の空気ストリーム中のNOレベル及びNO
2レベルを示す。このNO
2スクラバーを使用しても薄膜から得られるNO収量が変化することはないが、酸素存在下で生成されるNO
2が除去される。これらの試験の全てにおいて放出された装填物量はゼロに近く、したがって、
図17A~
図17Cでは見えない。
【0184】
実施例6
【0185】
基材の反対側の両面に粘着剤(クリスタルクリアゴリラ(登録商標)テープ)を貼り付け、S-ニトロソグルタチオン(GSNO)固形物を両面上にある粘着剤に塗布した。トラックエッチポリカーボネート薄膜をこの固形物の上に配置し、基材の両面に接着させた。本実施例は、
図1A及び
図2に示されるNOカートリッジ10を表した。
【0186】
光分解を起こさせて、ポリカーボネート膜を透過するNOガスを生成させるために、表示波長が470nmであるLED光源を使用してNOドナーを光に曝露した。各光源について、光パワー面密度を51mW/cm2に設定した。この試験では、スイープガス(受容者ガス)は、流量4L/分の空気とした。送達されたガス中のNOレベルとNO2レベルの両方を測定した。目標NOレベル1000ppb、2000ppb、4000ppb及び8000ppbで試験を実行し、センサーからのフィードバックに基づいて光強度を調節した。
【0187】
図18A~
図18Dは、各種目標レベルでの空気ストリーム中のNOレベル及びNO
2レベルを示す。これらのNOレベルは順調に目標レベルをたどり、NO
2レベルは、たとえNO
2が存在したとしても最小だった(
図18D)。
【0188】
実施例7
【0189】
4個のNOカートリッジを含むシステムを作成した。
【0190】
各NOカートリッジについて、キャビティが含まれるよう異なるパターン化された粘着剤作成した。各パターン化された粘着剤について、カッティングプロッタを用いて厚さ200μm、直径47mmである3M(商標)Optically Clear Adhesiveの円形ピースに面積6.25mm
2の六角形状の複数のキャビティを切断した。パターン化された粘着剤及び個々のキャビティの幾何学的形状は、
図1Fに示されるものと同様とした。ライナーのうち1つをパターン化された粘着剤の各々から取り外し、パターン化された粘着剤の2つをガラス基材に接着させ、パターン化された粘着剤の他の2つを別のガラス基材に接着させた。SNAP280mgをパターン化された粘着剤の各々のキャビティにスクリーン印刷した。ライナーの残りをパターン化された粘着剤の各々から取り外し、トラックエッチポリカーボネート薄膜/膜をパターン化された粘着剤の各々の上に配置し、パターン化された粘着剤の各々に接着させた。
【0191】
このシステムを作成するために、複数のガラス基材(各々がNOカートリッジのうち2つを含む)を上部と下部で共に封止し、各カートリッジの膜(16又は16’)が互いに面し、かつ空気が膜間を流れることができるようにした。このシステムの上面図を
図20A(NOカートリッジのうち2つを示す)に略図的に示し、システムの上部(
図20Aに示される)からシステムの下部までの線に沿って切り取ったシステムの断面図を
図20Bに示す。
図20Bでは、キャビティ21及びNOドナー14と記された断面部が略図的に示されるが、図は実際には、そこに配置されたいくつかの個々のキャビティ及びNOドナーを含んでもよいことが理解されよう。
【0192】
この特定の実施例には使用されていないが、
図20Cには、いくつかのNOカートリッジを含む別の実施例が示されている。この実施例においては、1つのガラス基材(12又は12’)が使用され、パターン化された粘着剤がこのガラス基材の反対側の両面に接着されている。各パターン化された粘着剤のキャビティには、NOドナーが充填され、膜(16又は16’)がパターン化された粘着剤の上に配置され、NOドナーをキャビティ内部に配置させる。
【0193】
この実施例では、光分解を起こさせて、ポリカーボネート膜を透過するNOガスを生成させるために、表示波長が470nmであるLED光源を使用してキャビティ中のNOドナーを光に曝露した。この試験では、スイープガス(受容者ガス)は、流量4L/分の空気とした。アンペロメトリックガスセンサーを使用して送達されたガス中のNOレベルとNO
2レベルの両方を測定した(
図19でiNOと記されたデータ)。光パワーを、アンペロメトリックNOガスセンサー信号及び参照信号としての目標NOレベルに基づいてフィードバック制御した。出力ガスストリームのNOレベルとNO
2レベルを、オゾン化学発光NO及びNOx分析計により検証した(
図19でNOAと記されたデータ)。
【0194】
図19は、空気ストリーム中のNOレベル及びNO
2レベルを示す。NOレベルは順調に目標レベルをたどり、NO
2レベルは、たとえNO
2が存在したとしても最小だった。これらの結果から、低用量(10ppm)のNO送達では、NO
2スクラバーがなくても
図1D及び
図1Eに示される一酸化窒素カートリッジを使用できることが分かる。
【0195】
本明細書に記載する範囲は、記載範囲内の値又は小範囲を明確に示したものとして、記載範囲及び記載範囲内のすべての値又は小範囲を含むことが理解されよう。例えば、約300nm~約600nmの範囲は、約300nm~約600nmと明示された限界のみならず、約375nm、約520.5nm、450nm、599nmなどの数値、及び約395nm~約595nmなどの小範囲も含むと解釈すべきである。さらに、ある値を説明するのに「約」が用いられている場合は、記載値とのわずかな差(±10%まで)も含むことが意図されている。
【0196】
本明細書全体を通して「一実施例」、「別の実施例」、「ある実施例」等への言及は、当該実施例に関連して説明される特定の要素(特徴、構造、特性)が、本明細書で説明される少なくとも一つの実施例に含まれ、その他の実施例には存在する場合もしない場合もあることを意味する。また、文脈上明確に別途示されない限り、いずれかの実施例において説明された要素を、様々な実施例において適切な方法で組み合わせてもよいことが理解されよう。
【0197】
本明細書に開示された実施例を説明し、主張する際、単数形「1つの(a)」「1つの(an)」「1つの(the)」には、文脈上明確に別途示されない限り、複数形の指示対象が含まれることとする。
【0198】
いくつかの実施例を詳細に説明したが、開示した実施例を変更してもよいことが理解されよう。したがって上述の説明は、非限定的であると考えられるべきである。