(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】疎水性深共晶溶媒を用いて廃電池からリチウムと遷移金属を選択的に分離する協同抽出法
(51)【国際特許分類】
C22B 7/00 20060101AFI20240903BHJP
C22B 26/12 20060101ALI20240903BHJP
C22B 23/00 20060101ALI20240903BHJP
C22B 47/00 20060101ALI20240903BHJP
C22B 3/04 20060101ALI20240903BHJP
C22B 3/26 20060101ALI20240903BHJP
C22B 3/38 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
C22B7/00 C
C22B26/12
C22B23/00 102
C22B47/00
C22B3/04
C22B3/26
C22B3/38
(21)【出願番号】P 2023573586
(86)(22)【出願日】2023-06-09
(86)【国際出願番号】 CN2023099256
(87)【国際公開番号】W WO2024001716
(87)【国際公開日】2024-01-04
【審査請求日】2023-11-29
(31)【優先権主張番号】202210750305.9
(32)【優先日】2022-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512122034
【氏名又は名称】北京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】陳 標華
(72)【発明者】
【氏名】郭 宇
(72)【発明者】
【氏名】于 剛強
(72)【発明者】
【氏名】代 成娜
(72)【発明者】
【氏名】劉 寧
(72)【発明者】
【氏名】徐 瑞年
(72)【発明者】
【氏名】王 寧
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/134515(WO,A1)
【文献】特表2020-515719(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112553481(CN,A)
【文献】特開2023-022934(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第115029556(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00-61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性深共晶溶媒を用いて廃電池からリチウムと遷移金属を選択的に分離する協同抽出法であって、
(1)水相の調製:廃リチウム電池浸出液の成分を模擬し、リチウム、ニッケル、コバルト、及びマンガンの金属イオンを含む水相を調製
し、その際、水相のpHは、2~6、有価金属含有量はそれぞれLi=300~400mg/L、Ni=1300~1500mg/L、Co=600~700mg/L、Mn=800~900mg/L
とする工程、
(2)疎水性深共晶溶媒の調製:リドカインとn-デカン酸とは、水素結合を介して結合し、その物質量の比は1:1となり、n-デカン酸を加熱溶解した後、前記リドカインに加え、50℃の水浴加熱条件下で混合して疎水性深共晶溶媒を得る工程、
(3)有機相の調製:前記工程(2)で得られた疎水性深共晶溶媒とリン酸トリブチルを混合して有機相を得
て、その際、有機相中のリン酸トリブチルと疎水性深共晶溶媒の体積比は6:4~4:6
とする工程、
(4)前記工程(1)で得られた水相に前記工程(3)で得られた有機相を添加して混合抽出し、遠心分離して相分離した後、ニッケル・コバルト・マンガンを担持した有機相及びリチウム含有ラフィネートを得る工程、
(5)前記工程(4)のリチウム含有ラフィネートに沈殿剤を添加して炭酸リチウム沈殿物を得る工程、及び、
(6)前記工程(4)のニッケル・コバルト・マンガンを担持した有機相に逆抽出剤を添加してニッケル・コバルト・マンガン逆抽出液及び再生有機相を得る工程
を含む
ことを特徴とする抽出法。
【請求項2】
工程(3)で調製された有機相には、次の構造式の物質:
【化1】
が含まれる
請求項1に記載の抽出法。
【請求項3】
前記工程(4)中の抽出プロセスパラメータは、添加した水相と有機相の体積比(A/O)=3:1~1:3、抽出温度10~30℃、抽出段数1段、混合均一撹拌時間20~30分、混合均一撹拌回転数200~500r/分であり、水相と有機相をよく混ぜた後遠心分離機に入れ、遠心分離回転数6000~8000r/分で10~30分間遠心分離した後相分離して、ニッケル・コバルト・マンガンを担持した有機相及びリチウム含有ラフィネートを得る
請求項1に記載の抽出法。
【請求項4】
工程(5)で添加する沈殿剤は、1.5mol/Lの炭酸ナトリウム溶液であり、添加する炭酸ナトリウムとリチウム含有ラフィネートの体積比は2である
請求項1に記載の抽出法。
【請求項5】
前記工程(6)の逆抽出プロセスでは、2mol/LのHClを逆抽出剤として使用し、逆抽出パラメータは添加する塩酸とニッケル・コバルト・マンガンを担持した有機相の体積比(A/O)=2:1、逆抽出温度24℃、逆抽出段数1段、混合均一撹拌時間30分、混合均一撹拌回転数300r/分であり、よく混ぜた後遠心分離機に入れ、遠心分離回転数8000r/分で10分間遠心分離した後相分離してニッケル・コバルト・マンガン逆抽出液及び再生有機相を得る
請求項1に記載の抽出法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式製錬の技術分野に属し、特に、疎水性深共晶溶媒とリン酸トリブチルの協同抽出剤、及び廃リチウム電池浸出液中のリチウムと遷移金属を抽出・分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギーと交通システムの脱炭素化が国際社会における最重要課題の一つとなっている時代において、リチウムイオン電池(LIB)は優れたエネルギー貯蔵能力により電子機器、電気自動車、再生可能エネルギーの貯蔵などに広く使用され、交通輸送業の化石燃料に対する依存度を低下させることができる。リチウムは、その軽さからリチウムイオン電池の主要金属元素として注目を集めており、炭酸リチウムの需要は2025年までに500万トンを超えると予想されている。世界の平均回収可能含有量(RC)データによると、遷移金属はすべてのリサイクル元素(特にニッケルとコバルト)リストのトップにあり、天然資源の枯渇につながる。車載用リチウムイオン電池だけの市場全体は、2024年までに2210億米ドルに達すると予想されている。しかし、リチウムイオン電池の生産量の増加は、リチウム、ニッケル、コバルトの資源不足が深刻になるだけでなく、廃リチウムイオン電池も環境汚染が深刻で、その中の有価金属の含有量と純度が自然界に存在するものよりも高く、回収しなければ、多大な資源の無駄となり、クリーンエネルギー及び資源利用の概念に反することになる。
【0003】
現在、廃リチウム電池の一般的な回収方法は、主に乾式製錬方及び湿式製錬法である。湿式製錬法は、高い選択性、低エネルギー消費、有害ガスを発生しないという特徴があり、乾式製錬法よりもグリーン環境保全の概念に沿っている。湿式製錬法では、まず電池をさまざまな物理的方法で前処理し、次に各種金属を酸に溶解し、精製後にLi、Co、Ni及びMnの酸浸出液が得られる。塩酸又は硫酸は他の浸出剤よりも経済的であり、通常湿式製錬プロセス中のリチウムイオン電池の金属の酸還元浸出に使用される。様々な金属回収法の中でも、溶媒抽出法は操作が簡単で回収率が高く、調整が容易なことから金属分離に広く用いられている。
【0004】
特許文献1には、ニッケル・コバルト・マンガンを含む電池からニッケル・コバルト・マンガンを分離する方法が開示されており、該方法はカルボン酸系抽出剤を使用した向流多段抽出により、ニッケル・コバルト・マンガンを段階的に分離する。特許文献2には、ジケトン化合物を抽出剤として、有機ホスフィン化合物を協同抽出剤として使用し、廃リチウム電池から金属を分離する方法が開示されており、向流多段抽出後のニッケル・コバルト・マンガンの抽出率は99%以上に達している。しかし、これらの抽出方法の多くは多段抽出を必要とするため、抽出剤のロスがある程度増加し、コストが高くなるだけでなく資源の無駄も生じまる。同時に、これらの従来の抽出剤を使用するのは抽出効果が限られているだけでなく、これらの抽出剤は揮発性、環境汚染性、有毒性などを有することにより制限され、したがって抽出効率が高いだけでなく、抽出方法が簡単で環境にも優しい「グリーン溶剤」の開発が明らかに重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】中国特許第CN112442596A号公報
【文献】中国特許第CN111850302B号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点に着目して疎水性深共晶溶媒とリン酸トリブチルを用いて、廃リチウム電池中のニッケル・コバルト・マンガンを協同抽出し、ラフィネート中にリチウムを残し、一段抽出により、より高い抽出・分離効果を奏することができ、環境に優しく、運用コストも低いなどの特徴を有する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は次の技術的手段を採用する:
(1)水相の調製:廃リチウム電池浸出液の成分を模擬し、リチウム、ニッケル、コバルト、及びマンガンの金属イオンを含む水相を調製する工程、
(2)疎水性深共晶溶媒の調製:リドカインとn-デカン酸を加熱混合して疎水性深共晶溶媒を得る工程、
(3)有機相の調製:工程(2)で得られた疎水性深共晶溶媒とリン酸トリブチルを混合して有機相を得る工程、
(4)工程(1)で得られた水相に工程(3)で得られた有機相を添加して混合抽出し、遠心分離して相分離した後、ニッケル・コバルト・マンガンを担持した有機相及びリチウム含有ラフィネートを得る工程、
(5)工程(4)のリチウム含有ラフィネートに沈殿剤を添加して炭酸リチウム沈殿物を得る工程、
(6)工程(4)のニッケル・コバルト・マンガンを担持した有機相に逆抽出剤を添加してニッケル・コバルト・マンガン逆抽出液及び再生有機相を得る工程。
【0008】
さらに、工程(1)において、模擬廃電池浸出液の水相のpHは、2~6、有価金属含有量はそれぞれLi=300~400mg/L、Ni=1300~1500mg/L、Co=600~700mg/L、Mn=800~900mg/Lである。
【0009】
さらに、工程(2)で調製された疎水性深共晶溶媒中のリドカインとn-デカン酸とは、水素結合を介して結合し、その物質量の比は1:1となる。n-デカン酸を加熱溶解した後、リドカインに加え、50℃の水浴加熱条件下で混合して疎水性深共晶溶媒を得る。
【0010】
さらに、工程(3)で調製された有機相には、次の3つの構造式が含まれる。
【0011】
【0012】
さらに、工程(3)で調製された有機相中のリン酸トリブチルと疎水性深共晶溶媒の体積比は6:4~4:6である。
【0013】
さらに、工程(4)中の抽出プロセスパラメータは、添加した水相と有機相の体積比(A/O)=3:1~1:3、抽出温度10~30℃、抽出段数1段、混合均一撹拌時間20~30分、混合均一撹拌回転数200~500r/分であり、水相と有機相をよく混ぜた後遠心分離機に入れ、遠心分離回転数6000~8000r/分で10~30分間遠心分離した後相分離して、ニッケル・コバルト・マンガンを担持した有機相及びリチウム含有ラフィネートを得る。
【0014】
さらに、工程(5)で添加する沈殿剤は、1.5mol/Lの炭酸ナトリウム溶液であり、添加する炭酸ナトリウムとリチウム含有ラフィネートの体積比は2である。
【0015】
さらに、工程(6)の逆抽出プロセスでは、2mol/LのHClを逆抽出剤として使用し、逆抽出パラメータは添加する塩酸とニッケル・コバルト・マンガンを担持した有機相の体積比(A/O)=2:1、逆抽出温度24℃、逆抽出段数1段、混合均一撹拌時間30分、混合均一撹拌回転数300r/分であり、よく混ぜた後遠心分離機に入れ、遠心分離回転数8000r/分で10分間遠心分離した後相分離してニッケル・コバルト・マンガン逆抽出液及び再生有機相を得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明により提供される廃リチウム電池浸出液中の有価金属の抽出・分離方法のプロセスフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、下記の実施例は本発明の簡単な実施例に過ぎず、本発明の権利保護範囲を代表したり限定したりするものではなく、本発明の保護範囲は特許請求の範囲を基準とする。
【0018】
本発明をより良く説明し、本発明の技術的手段の理解を容易にするため、本発明の典型的だが非限定的な実施例を以下に示す。
【実施例1】
【0019】
本実施例により提供される疎水性深共晶溶媒とリン酸トリブチルの協同抽出剤及び廃リチウム電池浸出液中のリチウムと遷移金属を抽出・分離する方法のフローチャートは、
図1に示される。
【0020】
本実施例の模擬廃リチウム電池の酸性浸出液の成分は、以下の通りである。
【0021】
【0022】
本実施例の前記抽出・分離方法によれば、調製された模擬廃リチウム電池の水相は、pH=2であり、
本実施例の前記抽出・分離方法によれば、調製された疎水性深共晶溶媒中のリドカインとn-デカン酸とが水素結合を介して結合し、その物質量の比は1:1となり、n-デカン酸を加熱溶解した後、リドカインに加え、50℃の水浴加熱条件下で混合して疎水性深共晶溶媒を得、
本実施例の前記抽出・分離方法によれば、調製された疎水性深共晶溶媒をリン酸トリブチルに添加し、添加したリン酸トリブチルと疎水性深共晶溶媒の体積比は6:4で、有機相を得、
本実施例の前記抽出・分離方法によれば、水相に調製された有機相を添加し、抽出プロセスパラメータは水相と有機相の体積比(A/O)=2:1、抽出温度10℃、抽出段数1段、混合均一撹拌時間20分、回転数200r/分であり、よく混ぜた後遠心分離機に入れ、遠心分離回転数6000r/分で10分間遠心分離した後相分離してニッケル・コバルト・マンガンを担持した有機相及びリチウム含有ラフィネートを得た。
【0023】
本実施例の前記抽出・分離方法によれば、リチウム含有ラフィネートに濃度1.5mol/Lの炭酸ナトリウム溶液を添加し、添加した炭酸ナトリウム溶液とリチウム含有ラフィネートの体積比は2:1であり、沈殿をよく洗浄した後炭酸リチウム溶液を得た。
【0024】
本実施例の前記抽出・分離方法によれば、逆抽出プロセスでは、2mol/LのHClを逆抽出剤として使用し、逆抽出パラメータは添加した塩酸とニッケル・コバルト・マンガンを担持した有機相の体積比(A/O)=2:1、逆抽出温度24℃、逆抽出段数1段、混合均一撹拌時間30分、混合均一撹拌回転数300r/分であり、よく混ぜた後遠心分離機に入れ、遠心分離回転数8000r/分で10分間遠心分離した後相分離してニッケル・コバルト・マンガン逆抽出液及び再生有機相を得た。
【0025】
実施例1の抽出実験結果は、以下の通りである。
【0026】
【0027】
本実施例において、一段抽出を経た後、ニッケル・コバルト・マンガンの抽出率がいずれも92%以上に達し、同時にラフィネート中で高純度のリチウム塩溶液が得られ、廃リチウム電池中のリチウムと遷移金属の有効な分離を実現した。
【実施例2】
【0028】
本実施例により提供される疎水性深共晶溶媒とリン酸トリブチルの協同抽出剤及び廃リチウム電池浸出液中のリチウムと遷移金属を抽出・分離する方法のフローチャートは、
図1に示される。
【0029】
本実施例の模擬廃リチウム電池の酸性浸出液の成分は、以下の通りである。
【0030】
【0031】
本実施例の前記抽出・分離方法によれば、調製された模擬廃リチウム電池の水相は、pH=6であり、
本実施例の前記抽出・分離方法によれば、調製された疎水性深共晶溶媒中のリドカインとn-デカン酸とが水素結合を介して結合し、その物質量の比は1:1となり、n-デカン酸を加熱溶解した後、リドカインに加え、50℃の水浴加熱条件下で混合して疎水性深共晶溶媒を得、
本実施例の前記抽出・分離方法によれば、調製された疎水性深共晶溶媒をリン酸トリブチルに添加し、添加したリン酸トリブチルと疎水性深共晶溶媒の体積比は4:6で、有機相を得、
本実施例の前記抽出・分離方法によれば、水相に調製された有機相を添加し、抽出プロセスパラメータは水相と有機相の体積比(A/O)=2:1、抽出温度30℃、抽出段数1段、混合均一撹拌時間30分、回転数500r/分であり、よく混ぜた後遠心分離機に入れ、遠心分離回転数8000r/分で30分間遠心分離した後相分離してニッケル・コバルト・マンガンを担持した有機相及びリチウム含有ラフィネートを得た。
【0032】
本実施例の前記抽出・分離方法によれば、リチウム含有ラフィネートに濃度1.5mol/Lの炭酸ナトリウム溶液を添加し、添加した炭酸ナトリウム溶液とリチウム含有ラフィネートの体積比は2:1であり、沈殿をよく洗浄した後炭酸リチウム溶液を得た。
【0033】
本実施例の前記抽出・分離方法によれば、逆抽出プロセスでは、2mol/LのHClを逆抽出剤として使用し、逆抽出パラメータは添加した塩酸とニッケル・コバルト・マンガンを担持した有機相の体積比(A/O)=2:1、逆抽出温度24℃、逆抽出段数1段、混合均一撹拌時間30分、混合均一撹拌回転数300r/分であり、よく混ぜた後遠心分離機に入れ、遠心分離回転数8000r/分で15分間遠心分離した後相分離してニッケル・コバルト・マンガン逆抽出液及び再生有機相を得た。
【0034】
実施例2の抽出実験結果は、以下の通りである。
【0035】
【0036】
本実施例において、一段抽出を経た後、ニッケル・コバルト・マンガンの抽出率がいずれも98%以上に達し、同時にラフィネート中で高純度のリチウム塩溶液が得られ、廃リチウム電池中のリチウムと遷移金属の有効な分離を実現した。
【実施例3】
【0037】
本実施例により提供される疎水性深共晶溶媒とリン酸トリブチルの協同抽出剤及び廃リチウム電池浸出液中のリチウムと遷移金属を抽出・分離する方法のフローチャートは、
図1に示される。
【0038】
本実施例の模擬廃リチウム電池の酸性浸出液の成分は、以下の通りである。
【0039】
【0040】
本実施例の前記抽出・分離方法によれば、調製された模擬廃リチウム電池の水相は、pH=3であり、
本実施例の前記抽出・分離方法によれば、調製された疎水性深共晶溶媒中のリドカインとn-デカン酸とが水素結合を介して結合し、その物質量の比は1:1となり、n-デカン酸を加熱溶解した後、リドカインに加え、50℃の水浴加熱条件下で混合して疎水性深共晶溶媒を得、
本実施例の前記抽出・分離方法によれば、調製された疎水性深共晶溶媒をリン酸トリブチルに添加し、添加したリン酸トリブチルと疎水性深共晶溶媒の体積比は4:6で、有機相を得、
本実施例の前記抽出・分離方法によれば、水相に調製された有機相を添加し、抽出プロセスパラメータは水相と有機相の体積比(A/O)=3:1、抽出温度24℃、抽出段数1段、混合均一撹拌時間30分、回転数300r/分であり、よく混ぜた後遠心分離機に入れ、遠心分離回転数8000r/分で10分間遠心分離した後相分離してニッケル・コバルト・マンガンを担持した有機相及びリチウム含有ラフィネートを得た。
【0041】
本実施例の前記抽出・分離方法によれば、リチウム含有ラフィネートに濃度1.5mol/Lの炭酸ナトリウム溶液を添加し、添加した炭酸ナトリウム溶液とリチウム含有ラフィネートの体積比は2:1であり、沈殿をよく洗浄した後炭酸リチウム溶液を得た。
【0042】
本実施例の前記抽出・分離方法によれば、逆抽出プロセスでは、2mol/LのHClを逆抽出剤として使用し、逆抽出パラメータは添加した塩酸とニッケル・コバルト・マンガンを担持した有機相の体積比(A/O)=2:1、逆抽出温度24℃、逆抽出段数1段、混合均一撹拌時間30分、混合均一撹拌回転数300r/分であり、よく混ぜた後遠心分離機に入れ、遠心分離回転数8000r/分で10分間遠心分離した後相分離してニッケル・コバルト・マンガン逆抽出液及び再生有機相を得た。
【0043】
実施例3の抽出実験結果は、以下の通りである。
【0044】
【0045】
本実施例において、一段抽出を経た後、ニッケル・コバルト・マンガンの抽出率がいずれも93%以上に達し、同時にラフィネート中で高純度のリチウム塩溶液が得られ、廃リチウム電池中のリチウムと遷移金属の有効な分離を実現した。
【実施例4】
【0046】
本実施例により提供される疎水性深共晶溶媒とリン酸トリブチルの協同抽出剤及び廃リチウム電池浸出液中のリチウムと遷移金属を抽出・分離する方法のフローチャートは、
図1に示される。
【0047】
本実施例の模擬廃リチウム電池の酸性浸出液の成分は、以下の通りである。
【0048】
【0049】
本実施例の前記抽出・分離方法によれば、調製された模擬廃リチウム電池の水相は、pH=3であり、
本実施例の前記抽出・分離方法によれば、調製された疎水性深共晶溶媒中のリドカインとn-デカン酸とが水素結合を介して結合し、その物質量の比は1:1となり、n-デカン酸を加熱溶解した後、リドカインに加え、50℃の水浴加熱条件下で混合して疎水性深共晶溶媒を得、
本実施例の前記抽出・分離方法によれば、調製された疎水性深共晶溶媒をリン酸トリブチルに添加し、添加したリン酸トリブチルと疎水性深共晶溶媒の体積比は4:6で、有機相を得、
本実施例の前記抽出・分離方法によれば、水相に調製された有機相を添加し、抽出プロセスパラメータは水相と有機相の体積比(A/O)=1:3、抽出温度24℃、抽出段数1段、混合均一撹拌時間30分、回転数300r/分であり、よく混ぜた後遠心分離機に入れ、遠心分離回転数8000r/分で10分間遠心分離した後相分離してニッケル・コバルト・マンガンを担持した有機相及びリチウム含有ラフィネートを得た。
【0050】
本実施例の前記抽出・分離方法によれば、リチウム含有ラフィネートに濃度1.5mol/Lの炭酸ナトリウム溶液を添加し、添加した炭酸ナトリウム溶液とリチウム含有ラフィネートの体積比は2:1であり、沈殿をよく洗浄した後炭酸リチウム溶液を得た。
【0051】
本実施例の前記抽出・分離方法によれば、逆抽出プロセスでは、2mol/LのHClを逆抽出剤として使用し、逆抽出パラメータは添加した塩酸とニッケル・コバルト・マンガンを担持した有機相の体積比(A/O)=2:1、逆抽出温度24℃、逆抽出段数1段、混合均一撹拌時間30分、混合均一撹拌回転数300r/分であり、よく混ぜた後遠心分離機に入れ、遠心分離回転数8000r/分で10分間遠心分離した後相分離してニッケル・コバルト・マンガン逆抽出液及び再生有機相を得た。
【0052】
実施例4の抽出実験結果は、以下の通りである。
【0053】
【0054】
本実施例において、一段抽出を経た後、ニッケル・コバルト・マンガンの抽出率がいずれも99%以上に達し、同時にラフィネート中で高純度のリチウム塩溶液が得られ、廃リチウム電池中のリチウムと遷移金属の有効な分離を実現した。
【実施例5】
【0055】
本実施例により提供される疎水性深共晶溶媒とリン酸トリブチルの協同抽出剤及び廃リチウム電池浸出液中のリチウムと遷移金属を抽出・分離する方法のフローチャートは、
図1に示される。
【0056】
本実施例の模擬廃リチウム電池の酸性浸出液の成分は、以下の通りである。
【0057】
【0058】
本実施例の前記抽出・分離方法によれば、調製された模擬廃リチウム電池の水相は、pH=3であり、
本実施例の前記抽出・分離方法によれば、調製された疎水性深共晶溶媒中のリドカインとn-デカン酸とが水素結合を介して結合し、その物質量の比は1:1となり、n-デカン酸を加熱溶解した後、リドカインに加え、50℃の水浴加熱条件下で混合して疎水性深共晶溶媒を得、
本実施例の前記抽出・分離方法によれば、調製された疎水性深共晶溶媒をリン酸トリブチルに添加し、添加したリン酸トリブチルと疎水性深共晶溶媒の体積比は4:6で、有機相を得、
本実施例の前記抽出・分離方法によれば、水相に調製された有機相を添加し、抽出プロセスパラメータは水相と有機相の体積比(A/O)=1:2、抽出温度24℃、抽出段数1段、混合均一撹拌時間30分、回転数300r/分であり、よく混ぜた後遠心分離機に入れ、遠心分離回転数8000r/分で10分間遠心分離した後相分離してニッケル・コバルト・マンガンを担持した有機相及びリチウム含有ラフィネートを得た。
【0059】
本実施例の前記抽出・分離方法によれば、リチウム含有ラフィネートに濃度1.5mol/Lの炭酸ナトリウム溶液を添加し、添加した炭酸ナトリウム溶液とリチウム含有ラフィネートの体積比は2:1であり、沈殿をよく洗浄した後炭酸リチウム溶液を得た。
【0060】
本実施例の前記抽出・分離方法によれば、逆抽出プロセスでは、2mol/LのHClを逆抽出剤として使用し、逆抽出パラメータは添加した塩酸とニッケル・コバルト・マンガンを担持した有機相の体積比(A/O)=2:1、逆抽出温度24℃、逆抽出段数1段、混合均一撹拌時間30分、混合均一撹拌回転数300r/分であり、よく混ぜた後遠心分離機に入れ、遠心分離回転数8000r/分で10分間遠心分離した後相分離してニッケル・コバルト・マンガン逆抽出液及び再生有機相を得た。
【0061】
実施例5の抽出実験結果は、以下の通りである。
【0062】
【0063】
本実施例において、一段抽出を経た後、ニッケル・コバルト・マンガンの抽出率がいずれも98%以上に達し、同時にラフィネート中で高純度のリチウム塩溶液が得られ、廃リチウム電池中のリチウムと遷移金属の有効な分離を実現した。