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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】試験問題作成支援システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G09B 7/06 20060101AFI20240903BHJP
   G09B 19/00 20060101ALI20240903BHJP
   G06Q 50/20 20120101ALI20240903BHJP
【FI】
G09B7/06
G09B19/00 Z
G06Q50/20
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2024004204
(22)【出願日】2024-01-15
【審査請求日】2024-01-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503128216
【氏名又は名称】株式会社フォーサイト
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩司
【審査官】鈴木 崇雅
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-205795(JP,A)
【文献】特開2022-141056(JP,A)
【文献】特開2015-197460(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0111819(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 5/00-7/12
G06Q 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々に文章により記述された所定肢数の選択肢から正解肢を選択させる多肢選択問題を含む本試験を模した模擬試験の問題を支援する試験問題作成支援システムであって、
選択肢を記述した文章である選択肢文について、該選択肢文に関連する学習事項が、過去所定回分の本試験における出題回数が所定の条件を満たす学習事項である、本試験に合格するために習得すべき事項であれば、該選択肢文に該学習事項の識別情報を関連付けて選択肢文管理データとして記憶する選択肢文管理部と、
要求される第1の難易度に応じて定まる個数だけ前記識別情報が付加されていない選択肢文が含まれるように、前記選択肢文管理データから前記所定肢数の選択肢文を抽出し、抽出した前記選択肢文の各々に基づく選択肢を含む問題を作成する問題作成部と、
を有し、
前記選択肢文管理部は、前記本試験の出題範囲を包含関係にある複数の階層による複数の分類に区分し、前記選択肢文管理データにおいて、前記選択肢文に、いずれの分類に属するかを示す分類情報を更に関連付け、
前記問題作成部は、要求される第2の難易度に応じて定まる階層の単一の分類に全ての選択肢文が含まれ、当該階層の下位の階層の単一の分類に全ての選択肢文が含まれないように、前記選択肢文管理データから前記所定肢数の選択肢文を抽出する、
試験問題作成支援システム。
【請求項2】
過去所定回分の本試験の各試験回で出題された過去問の選択肢を前記分類に類別し、前記分類を前記学習事項に対応付け、前記学習事項の各々から出題された前記選択肢の個数を試験回毎に出題選択肢数として計数し、前記出題選択肢数が所定の条件を満たす学習事項を、前記本試験に合格するために習得すべき事項とする分析部を更に有する、
請求項1に記載の試験問題作成支援システム。
【請求項3】
前記分析部は、更に、前記学習事項を、前記試験回毎の出題選択肢数に基づいて複数の頻度領域に仕分けし、
前記問題作成部は、前記選択肢文管理データから、頻度領域のそれぞれについて、当該頻度領域に含まれる学習事項の選択肢文を含む問題が、指定された割合または個数だけ含まれるように、所定の問題数だけ問題を作成する、
請求項2に記載の試験問題作成支援システム。
【請求項4】
前記選択肢文管理部は、過去所定回分の本試験の各試験回で出題された問題に含まれていた選択肢文について、前記選択肢文管理データにおいて、該問題が出題された最新の試験回に関する出題回情報を該選択肢文に更に関連付け、
前記問題作成部は、前記出題回情報に基づいて、前記選択肢文管理データから、指定された試験回に出題された問題から作成された選択肢文に基づく選択肢を含む問題が、指定された割合または個数だけ含まれるように、前記問題数だけ問題を作成する、
請求項3に記載の試験問題作成支援システム。
【請求項5】
前記選択肢文管理部は、前記過去問の各選択肢の文章を選択肢文とし、前記選択肢文における結論部分から、変更が可能な部分を可変箇所として特定し、前記可変箇所に対して、当該可変箇所の元の文言および該元の文言の代わりに当該可変箇所に入れることが可能な文言を関連付け、
前記問題作成部は、前記第2の難易度に応じて定まる個数だけ前記識別情報が付加されていない選択肢文が含まれ、かつ、前記第2の難易度に応じて定まる階層の1つの分類に全ての選択肢文が含まれ当該階層の下位の階層の1つの分類に全ての選択肢文が含まれないように、前記選択肢文管理データから前記所定肢数の選択肢文を抽出し、抽出された前記選択肢文のうち、いずれか1つが正解肢となり、残りが不正解肢となるように、前記選択肢文の前記可変箇所に関連付けられた文言のうちいずれか1つを選択する、
請求項2に記載の試験問題作成支援システム。
【請求項6】
前記選択肢文管理部は、互いに混合を生じさせる文言同士を類似語として関連づけた類似語データベースを作成しておき、前記可変箇所に対して、当該可変箇所の元の文言の類似語を前記類似語データベースから抽出し、前記可変箇所に対して関連付ける、
請求項5に記載の試験問題作成支援システム。
【請求項7】
前記選択肢文管理部は、互いに反対の意味を持つ反対語、および互いに類似する意味を持つ類義語を前記類似語として前記類似語データベースに登録する、
請求項6に記載の試験問題作成支援システム。
【請求項8】
前記本試験は出題範囲に法律を含む試験であり、
前記選択肢文管理部は、互いに同じ法律に登場する反対語および類義語を前記類似語として前記類似語データベースに登録する、
請求項7に記載の試験問題作成支援システム。
【請求項9】
前記本試験は複数の科目を含む試験であり、
前記選択肢文管理部は、互いに同じ科目における学習事項に登場する反対語および類義語を前記類似語として前記類似語データベースに登録する、
請求項7に記載の試験問題作成支援システム。
【請求項10】
前記本試験は出題範囲に法律を含む試験であり、
前記選択肢文管理部は、前記法律における改正前の文言と改正後の文言とを前記類似語として前記類似語データベースに登録する、
請求項7に記載の試験問題作成支援システム。
【請求項11】
前記所定肢数が4であり、
前記問題作成部は、前記第1の難易度を低い方からA、B、C、Dという4段階に定義し、前記第1の難易度Dが要求されれば、前記識別情報が付加されていない選択肢文を4個抽出し、前記第1の難易度Cが要求されれば、前記識別情報が付加されていない選択肢文を3個と前記識別情報が付加されている選択肢文を1個抽出し、前記第1の難易度Bが要求されれば、前記識別情報が付加されていない選択肢文を2個と前記識別情報が付加されている選択肢文を2個抽出し、前記第1の難易度Aが要求されれば、前記識別情報が付加されていない選択肢文を1個と前記識別情報が付加されている選択肢文を3個、または前記識別情報が付加されている選択肢文を4個抽出する、
請求項1に記載の試験問題作成支援システム。
【請求項12】
前記出題範囲は、大分類、中分類、小分類、細分類という4階層からなる分類に区分され、
前記問題作成部は、前記第2の難易度を低い方からA、B、C、Dという4段階に定義し、前記第2の難易度Dが要求されれば、全ての選択肢が単一の大分類に含まれかつ単一の中分類に含まれないように、前記所定肢数の選択肢文を抽出し、前記第2の難易度Cが要求されれば、全ての選択肢が単一の中分類に含まれかつ単一の小分類に含まれないように、前記所定肢数の選択肢文を抽出し、前記第2の難易度Bが要求されれば、全ての選択肢が単一の小分類に含まれかつ単一の細分類に含まれないように、前記所定肢数の選択肢文を抽出し、前記第2の難易度Aが要求されれば、全ての選択肢が単一の細分類に含まれるように、前記所定肢数の選択肢文を抽出する、
請求項1に記載の試験問題作成支援システム。
【請求項13】
前記出題範囲は、法令の階層に対応した大分類、中分類、小分類、細分類に区分される、
請求項12に記載の試験問題作成支援システム。
【請求項14】
各々に文章により記述された所定肢数の選択肢から正解肢を選択させる多肢選択問題を含む本試験を模した模擬試験の問題を支援するための試験問題作成支援方法であって、
コンピュータが、
選択肢を記述した文章である選択肢文について、該選択肢文に関連する学習事項が、過去所定回分の本試験における出題回数が所定の条件を満たす学習事項である、本試験に合格するために習得すべき事項であれば、該選択肢文に該学習事項の識別情報を関連付けて選択肢文管理データとして記憶し、
要求される第1の難易度に応じて定まる個数だけ前記識別情報が付加されていない選択肢文が含まれるように、前記選択肢文管理データから前記所定肢数の選択肢文を抽出し、抽出した前記選択肢文の各々に基づく選択肢を含む問題を作成する方法において、
前記コンピュータが、
前記本試験の出題範囲を包含関係にある複数の階層による複数の分類に区分し、前記選択肢文管理データにおいて、前記選択肢文に、いずれの分類に属するかを示す分類情報を更に関連付け、
要求される第2の難易度に応じて定まる階層の単一の分類に全ての選択肢文が含まれ、当該階層の下位の階層の単一の分類に全ての選択肢文が含まれないように、前記選択肢文管理データから前記所定肢数の選択肢文を抽出する、
試験問題作成支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試験問題の作成を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
国家試験等の資格試験の受験指導を行う予備校などでは、本試験に出題された問題(以下「過去問」と称す)を基にしながら模擬試験の問題を作成するという作業がある。模擬試験の問題作成では、予備校講師は、過去問を参考にして問題を作成したり、過去問の一部を変更したりして、過去問に類似した問題を作成するということを行っている。
【0003】
模擬試験の問題作成は多大な手間のかかる作業である。また、模擬試験の問題の品質は予備校講師の経験、能力、および労力に依存し、それらを他の予備校講師に引き継ぐことは難しい。
【0004】
そのため、作業軽減および品質確保のため試験問題の作成作業をシステムにより支援することが求められる。
【0005】
特許文献1には、複数の既存問題文のテキストデータを保持する記憶部と、既存問題文を分野毎にグループ化する分類部と、既存問題文の結論部分から、変更が可能な部分を可変箇所として特定し、可変箇所の原テキストの代わりに可変箇所に入れることのできる代替テキストの入力を促し、代替テキストが入力されると、可変箇所に原テキストと代替テキストとを関連付ける分析部と、指定された分野から所定肢数の既存問題文を選択し、選択された既存問題文のうち、いずれか1つが正解肢となり、残りが不正解肢となるように、選択された既存問題文の可変箇所のテキストとしてその可変箇所に関連付けられた原テキストまたは代替テキストのうちいずれか1つを選択する作成部と、を有する問題作成支援システムが開示されている。これにより問題の作成を容易にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-185126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
模擬試験の目的のひとつに、受験者は自分が全受験者の中でどの位置にいるか、自分が合格できる確率がどの程度あるかを知ることがある。そのため、模擬試験は、得点の分布がある程度分散されるように作成されることが求められる。また、模擬試験は、本試験を想定した試験であるので、本試験と同程度の難易度となるように作成されることが望ましい。しかしながら、特許文献1の問題作成支援システムでは、問題を作成する際に問題に適切な難易度を与えることが考慮されていない。
【0008】
本開示に含まれるひとつの目的は、難易度を調整可能に試験の問題を作成することを支援する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に含まれるひとつの態様による試験問題作成支援システムは、各々に文章により記述された所定肢数の選択肢から正解肢を選択させる多肢選択問題を含む本試験を模した模擬試験の問題を支援する試験問題作成支援システムであって、選択肢を記述した文章である選択肢文について、該選択肢文に関連する学習事項が、前記本試験に合格するために習得すべき事項であれば、該選択肢文に該学習事項の識別情報を関連付けて選択肢文管理データとして記憶する選択肢文管理部と、要求される第1の難易度に応じて定まる個数だけ前記識別情報が付加されていない選択肢文が含まれるように、前記選択肢文管理データから前記肢数の選択肢文を抽出し、抽出した前記選択肢文の各々に基づく選択肢を含む問題を作成する問題作成部と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本開示のひとつの態様によれば、各々に文章により記述された所定肢数の選択肢から正解肢を選択させる多肢選択問題を含む本試験を模した模擬試験の問題を支援する試験問題作成支援システムが、選択肢を記述した文章である選択肢文について、該選択肢文に関連する学習事項が、前記本試験に合格するために習得すべき事項であれば、該選択肢文に該学習事項の識別情報を関連付けて選択肢文管理データとして記憶する選択肢文管理部と、要求される第1の難易度に応じて定まる個数だけ前記識別情報が付加されていない選択肢文が含まれるように、前記選択肢文管理データから前記肢数の選択肢文を抽出し、抽出した前記選択肢文の各々に基づく選択肢を含む問題を作成する問題作成部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】試験問題作成支援システムの処理構成を示すブロック図である。
図2】試験問題作成支援システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】試験問題作成支援システムの全体処理のフローチャートである。
図4】出題傾向分析処理のフローチャートである。
図5】過去の本試験の試験問題データの一例を示す図である。
図6】試験毎の問題の一例を示す図である。
図7】試験問題分析結果を示す図である。
図8】出題傾向データの概念図である。
図9】学習事項管理処理のフローチャートである。
図10】学習事項管理データを示す図である。
図11】選択肢文データ作成処理のフローチャートである。
図12】選択肢文管理データを示す図である。
図13】ひな型情報を示す図である。
図14】文言登録処理のフローチャートである。
図15】問題作成処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
本実施形態では、複数の肢(選択肢)の中から正解肢を選択する形式の問題(多肢選択式問題)の作成を支援するコンピュータシステムを例示する。
【0014】
本実施形態では、本試験において問題が出題されうる範囲(出題範囲)を、包含関係にある複数の階層からなる分類に区分する。なお、ここでいう分類は出題範囲を階層構造で区分できるものであればよく、どのような分類体系を用いるかは出題範囲や試験の内容を考慮して適切に選択すればよい。本実施形態では、一例として、大分類、中分類、小分類、細分類という4階層の分類体系が用いられる。具体例として、宅地建物取引士資格試験のように法律に関する試験であれば、出題範囲に含まれる法令の階層に対応した階層の分類に区分することにしてもよい。その場合、大分類のひとつとして「民法全般」があり、「民法全般」の大分類に含まれる中分類のひとつとして「民法総則」があり、「民法総則」の中分類に含まれる小分類のひとつとして「意思表示」があり、「意思表示」の小分類に含まれる細分類のひとつとして「詐欺」があるといったような分類体系が考えられる。
【0015】
多肢選択式問題は所定個の選択肢を含んでいる。1つの問題に含まれる選択肢の個数を、以下、肢数と呼ぶことにする。肢数は特に限定されないが、典型的には4あるいは5である。例えば、宅地建物取引士資格試験であれば、肢数は4である。各選択肢は文章で記述される。以下、選択肢の文章を選択肢文と呼ぶことにする。肢数の選択肢の中に1つの正解肢が含まれている。受験者は、選択肢文を読んでその内容が正しいか誤っているかを判断する。正解肢はその肢が選択されるとその問題が正解となる肢である。正解肢以外の肢は不正解肢である。多肢選択式問題では、正しい内容の選択肢が正解肢となる場合と、誤った内容の選択肢が正解肢となる場合とがある。
【0016】
図1は、試験問題作成支援システムの処理構成を示すブロック図である。
【0017】
図1を参照すると、試験問題作成支援システム10は、記憶部11、分析部12、学習事項管理部13、選択肢文管理部14、および問題作成部15を有している。
【0018】
記憶部11は、試験問題作成支援システム10にて用いられる各種データを保持する。記憶部11に保持されるデータには、過去の本試験で出題された問題のデータが含まれる。また、記憶部11に保持されるデータには、既存の問題から取り出された選択肢文のテキストデータが含まれる。ここでいう既存の問題には、過去所定回の本試験で出題された問題(過去問)が含まれる。ただし、既存の問題は、過去問に限らない。例えば、過去の模擬試験で出題された問題、出題されたことがない予想問題、などを含んでいてもよい。また、予め用意されたデータだけでなく試験問題作成支援システム10が処理を実行することで生成12したデータも記憶部11に記録してよい。
【0019】
分析部12は、過去所定回分の過去問の選択肢を上述した分類に類別し、分類を学習事項に対応づけ、各試験回および各学習事項の出題選択肢数を計数する。この試験回および学習事項毎の出題選択肢数は過去の本試験の出題傾向を表す。出題選択肢数が多い学習事項は、過去の本試験でよく出題される学習事項であると言える。
【0020】
学習事項管理部13は、本試験の出題範囲に含まれる学習事項に対して、本試験に合格するために習得すべき事項を識別する識別情報を付加し、学習事項管理データとして記憶する。本実施形態ではその識別情報をboxIDと呼ぶ。例えば、試験問題作成支援システム10が受講者に講義を提供する不図示の講義提供システムと連動する場合、講義提供システムは、boxIDが付与されている学習事項を網羅するように講義を構成することが考えられる。
【0021】
選択肢文管理部14は、記憶部11に記憶されている既存の問題から、模擬試験の問題を作成するための選択肢文のひな型を作成し、選択肢文管理データとして管理する。
【0022】
問題作成部15は、要求に応じた難易度の問題を作成する。本実施形態においては、問題の難易度として判別難易度と範囲難易度がある。判別難易度は、各選択肢が正しいか否かの判別に難易度を調整することにより問題に対して設定される難易度である。範囲難易度は、各選択肢が関連する学習事項の分類範囲を調整することにより問題に対して設定される難易度である。要求に応じた判別難易度あるいは範囲難易度の問題を作成する処理の詳細は後述する。
【0023】
図2は、試験問題作成支援システムのハードウェア構成を示すブロック図である。図2を参照すると、試験問題作成支援システム10、プロセッサ21、メインメモリ22、記憶装置23、入力装置24、および表示装置25がバス26を介いて相互に接続されたコンピュータにより構成されている。
【0024】
記憶装置23は、書込みおよび読み出しが可能にデータを記憶するものであって、この記憶装置23によって、図1に示した記憶部11が実現される。プロセッサ21は、記憶装置23に記憶されたデータをメインメモリ22に読み出し、メインメモリ22を利用してソフトウェアプログラムの処理を実行するプロセッサである。プロセッサ21によって、図1に示した分析部12、学習事項管理部13、選択肢文管理部14、および問題作成部15が実現される。入力装置24は、キーボードやマウスなどオペレータによる操作入力による情報を受け付ける装置である。入力装置24から入力された情報はプロセッサ21にてソフトウェア処理に利用される。例えば、過去問等の各種データは入力装置24を介して記憶装置23に入力される。表示装置25は、プロセッサ21によるソフトウェア処理に伴って画像やテキストの情報をディスプレイ画面に表示する装置である。
【0025】
図3は、試験問題作成支援システムの全体処理のフローチャートである。
【0026】
図3を参照すると、試験問題作成支援システム10は、分析部12により出題傾向分析処理を実行する(ステップ101)。出題傾向分析処理は、過去の本試験で出題された問題の各選択肢を学習事項毎および試験回毎に集計する処理である。出題傾向分析処理の詳細は後述する。
【0027】
次に、試験問題作成支援システム10は、学習事項管理部13により学習事項管理処理を実行する(ステップ102)。学習事項管理処理は、各学習事項の過去の本試験における出題された回数あるいは頻度を基に、本試験に合格するために習得すべき学習事項に対して識別情報(boxID)を付加する処理である。学習事項管理処理の詳細は後述する。
【0028】
次に、試験問題作成支援システム10は、選択肢文管理部14により、選択肢文データ作成処理を実行する(ステップ103)。選択肢文データ作成処理は、問題を作成するための選択肢文のひな型を生成する処理である。選択肢文データ作成処理を行うと、データベースに蓄積された選択肢文を基に問題を作成できるようになる。選択肢文データ作成処理の詳細は後述する。
【0029】
次に、試験問題作成支援システム10は、問題作成部15により問題作成処理を実行する(ステップ104)。問題作成処理は、選択肢文管理データのデータベースから肢数の選択肢文を抽出し、各選択肢文の可変箇所の文言を選択することにより、問題を作成する処理である。問題作成処理の詳細は後述する。
【0030】
図4は、出題傾向分析処理のフローチャートである。上述した通り、出題傾向分析処理は、過去の本試験で出題された問題の各選択肢を学習事項毎および試験回毎に集計する処理である。
【0031】
図5は、過去の本試験の試験問題データの一例を示す図である。図5の試験問題データ30は一例として宅地建物取引士資格試験の問題のデータである。本試験は、1年に1回実施される試験であり、4つの肢から正解の肢を選択する四肢択一式問題が50問出題される。試験問題データ30には、2010年~2023年の各試験の問題のデータ(試験回毎試験問題データ31)が含まれている。
【0032】
試験回毎試験問題データ31には、各問題の問題文と、問題に含まれる各選択肢の選択肢文と、問題の正解肢を示す情報と、各選択肢に関する解説文とが含まれている。問題文は、当該問題における共通部分であり、例えば、複数の選択肢の中から正解肢を選択することを指示する文章である。
【0033】
図6は、試験毎の問題の一例を示す図である。図6には、2023年の問題が示されている。例示された問17を見ると、試験の問題32は、複数の選択肢に共通の問題文33と、4つの選択肢それぞれ毎の選択肢文34とを含んでいる。
【0034】
図4において、ステップ201では、分析部12は、試験回毎試験問題データ31から1つの問題を処理の対象として選択する。
【0035】
続いて、ステップ202では、分析部12は、試験回毎試験問題データ31の各問題32の問題文33および選択肢文34に対して形態素解析を行い、形態素を抽出する。形態素はそのまま単語であるものもあるが、連続する複数の単語が複合されて単語となるものもある。
【0036】
ステップ203では、分析部12は、必要に応じて連続する複数の形態素を複合し、単語を抽出する。形態素を複合するとき、本試験の専門分野の辞書を用い、専門用語を生成するようにしてもよい。一般に問題には専門用語が使われる場合があるので、専門分野の辞書を用いて当該専門分野の専門用語を正しく抽出することが有効である。
【0037】
ステップ204では、分析部12は、問題文33と選択肢文34とから抽出された単語に基づいて選択肢文34を複数の学習事項に類別する。例えば、各学習事項に対して、その学習事項の問題に登場する専門用語などの単語を対応付けておき、問題文および選択肢文にどの学習事項に対応する単語が登場したかによって選択肢文34を学習事項毎に類別してもよい。分析部12は、1つの選択肢について、その選択肢を含む問題の問題文とその選択肢の選択肢文とその肢の解説文とに含まれる語句からその選択肢文の特徴量を算出し、その特徴量に基づいて、その選択肢文の学習事項を特定することにしてもよい。各選択肢の学習事項のデータは試験問題分析結果として記録される。
【0038】
図7は、試験問題分析結果を示す図である。試験問題分析結果35には、試験回毎に各問題の問題番号36とその問題に含まれる選択肢の選択肢番号37とに対応付けてその選択肢の学習事項38が記録される。
【0039】
ステップ205では、分析部12は、未処理の問題が残っているか否か判定する。未処理の問題が残っていれば、分析部12は、ステップ201に戻り、未処理の問題を対象として処理を繰り返す。
【0040】
ステップ205の判定で未処理の問題が残っていなければ、分析部12は、ステップ206にて、試験問題分析結果35に基づいて、試験回毎および学習事項毎の選択肢文34の個数を集計し、集計結果に基づいて出題傾向データを作成し、記録する。
【0041】
図8は、出題傾向データの概念図である。出題傾向データ39には、学習事項40毎および試験回(試験実施年)41毎に、出題された問題および選択肢の集計結果が記号で示されている。〇(丸印)は、全ての選択肢が当該学習事項に関するものである問題を示し、△(三角形印)は、1つ以上3つ以下の選択肢が当該学習事項に関するものである問題を示している。例えば、2010年の本試験において、全ての選択肢が学習事項Aに関するものである問題が1問と、1つ以上3つ以下の選択肢が学習事項Aに関するものである問題が1問とが出題されたことが示されている。
【0042】
なお、本実施形態では、出題傾向分析処理として、問題文および選択肢文を解析して選択肢文を類別する方法を例示したが、他の方法も可能である。他の方法はデータ登録者による判断を利用する方法であってもよい。例えば、分析部12は、問題文および選択肢文を画面に表示するとともに選択肢文が該当する学習事項の指定あるいは入力をデータ登録者に促すことにより、選択肢文の学習事項の情報を取得することにしてもよい。
【0043】
図9は、学習事項管理処理のフローチャートである。学習事項管理処理は、上述したように、本試験に合格するために習得すべき学習事項に対して識別情報(boxID)を付加する処理である。学習事項管理処理により、学習事項管理データが得られる。
【0044】
図10は、学習事項管理データを示す図である。本実施形態においては、図10の学習事項管理データ43に示すように、学習事項は、出題範囲の分類体系における細分類に対応するものとしている。学習事項管理データ43において、学習事項のうち、本試験に合格するために習得すべき学習事項に対して識別情報(boxID)が付加されている。
【0045】
図10の例では、大分類が「1」で中分類が「2」で小分類が「1」で細分類が「2」の学習事項にはboxIDが付加されておらず、本試験に合格するために習得すべき学習事項には該当しないことが分かる。
【0046】
図9を参照すると、学習事項管理部13は、処理の対象とする学習事項をひとつ選択する(ステップ301)。そして、学習事項管理部13は、出題傾向データ39を参照し、選択された学習事項が直近の5回の本試験のうち3回以上の本試験で出題されたか否か判定する(ステップ302)。選択された学習事項が直近の5回の本試験のうち3回以上の本試験で出題されていれば、学習事項管理部13は、その学習事項にboxID(識別情報)を付与する(ステップ303)。
【0047】
一方、選択された学習事項が直近の5回の本試験のうち3回以上の本試験で出題されていなければ、学習事項管理部13は、その学習事項は直近の5回の本試験で出題がゼロ回であるか否か判定する(ステップ304)。その学習事項は直近の5回の本試験で出題がゼロ回であれば、学習事項管理部13は、学習事項管理データ43を参照し、その学習事項に識別情報が付加されているか否か判定する(ステップ305)。その学習事項に識別情報が付加されていれば、学習事項管理部13は、その学習事項から識別情報を削除する(ステップ306)。
【0048】
ステップ303またはステップ306の後、あるいはステップ305の判定で学習事項に識別情報が付加されていなかった場合、学習事項管理部13は、未処理の学習事項が残っているか否か判定する(ステップ307)。未処理の学習事項が残っていれば、学習事項管理部13は、ステップ301に戻り、次の学習事項を選択して処理を繰り返す。未処理の学習事項が残っていなければ、学習事項管理部13は、学習事項管理処理を終了する。
【0049】
図11は、選択肢文データ作成処理のフローチャートである。選択肢文データ作成処理は、上述したように、問題を作成するための選択肢文のデータベースを生成する処理である。具体的には、過去問等の蓄積された既存の問題から抽出された選択肢文に各種情報を関連づけ、更に各選択肢文の可変箇所に複数の文言を関連付ける。
【0050】
図12は、選択肢文管理データを示す図である。選択肢文管理データ44には、ひな型情報45、出題回情報46、分類情報47、識別情報48、および根拠条文情報49が互いに関連付けて登録されている。ひな型情報45は、多肢選択式問題に含まれる選択肢を作成するためのひな型となる情報である。ひな型情報45は、過去問を含む既存の問題の選択肢を基に作成される。ひな型情報45の詳細は後述する。出題回情報46は、ひな型情報45の元となった問題が出題された本試験の最新の試験回を示す情報である。本試験が1年に1回行われる場合、試験回と試験年とが1対1で対応するので、試験回を試験が行われた年によって示してもよい。分類情報47は、ひな型情報45を基に作成される選択肢文が属する分類を示す情報である。図12の例では、分類情報47は、上述した4階層の分類を4桁の数字で表すものとなっている。識別情報48は、ひな型情報45を基に作成される選択肢文が属する学習事項を識別する情報である。根拠条文情報49は、ひな型情報45を基に作成される選択肢文が正しいか誤っているかを判定するための根拠となる法令の条文を示す情報である。
【0051】
図13は、ひな型情報を示す図である。ひな型情報50には、前提部分51と結論部分52とを含む選択肢の文章と、結論部分52に含まれる可変箇所53に入る複数の文言54、55とが含まれている。複数の文言のうちひとつが可変箇所53に入ると正しい文章ができ、他の文言が可変箇所53に入ると誤った文章ができる。可変箇所53は複数であってもよい。
【0052】
図11を参照すると、選択肢文管理部14は、記憶部11に格納されている選択肢文の中から、以下の処理をまだ行っていない選択肢文を1つ選択する(ステップ401)。次に、選択肢文管理部14は、選択した選択肢文から結論部分を抽出する(ステップ402)。その際、選択肢文管理部14は、一例として、選択肢文から、「の場合」と「ならば」という所定表現を検出し、選択肢文の先頭からその所定表現までを前提部分とし、その所定表現よりも後ろの部分を結論部分とする。上記所定表現を見つけられない場合には、選択肢文管理部14は、選択肢文の全体を結論部分とすればよい。
【0053】
次に、選択肢文管理部14は、結論部分から所定の規則に該当する可変箇所を特定する(ステップ403)。その際、選択肢文管理部14は、一例として、結論部分における「誰が」、「いつ」または「いつまで」、「どこで」、「何を」、「どのように」に相当する箇所を可変箇所として特定してもよい。また、選択肢文管理部14は、「~場合もある」、「~こともある」、「~ことはない」、「~に限られる」、「~に限って、~する」、「~に限って、~できる」「有無にかかわらず~できる」、「直ちに~しなければならない」、「直ちに~できる」という文末の特定表現の箇所を可変箇所としてもよい。また、選択肢文管理部14は、「常に」、「すべて」、「必ず」、「または」、「かつ」という文中の特定表現の箇所を可変箇所としてもよい。結論部分には可変箇所の規則に該当する部分が複数ある場合がある。その場合には全ての該当箇所を可変箇所とすればよい。
【0054】
次に、選択肢文管理部14は、特定した各可変箇所について、文言登録処理を実行する(ステップ404)。文言登録処理は、各可変箇所に対して、当該可変箇所に入れることのできる文言を登録する処理である。文言登録処理を行うことで、登録された中から文言を選択することにより正しい内容の選択肢文あるいは誤った内容の選択肢文を作成することが可能となる。
【0055】
図14は、文言登録処理のフローチャートである。文言登録処理にて、まず、選択肢文管理部14は、選択肢文の可変箇所を表示し(ステップ501)、可変箇所の元の文言が正しい文言でなければ(ステップ502のNo)、正しい文言の入力を受け付け(ステップ503)、入力された文言を正しい文言とし、元の文言を誤った文言として可変箇所に関連付ける(ステップ504)。可変箇所の元の文言が正しい場合(ステップ502のYes)、またはステップ504の後、選択肢文管理部14は、可変箇所の正しい文言に対する類似語(反対語および類義語を含む)を表示し(ステップ505)、データ登録者による登録すべき文言の選択を受け付ける(ステップ506)。
【0056】
その際、一例として、選択肢文管理部14は、類似語データベースを予め作成しておき、その正しい文言により類似語データベースを検索して類似語を抽出し、表示する。
【0057】
類似語データベースの作成について説明する。
【0058】
類似語は、受験者に混同させて不正解に誘導するための文言である。そのため、互いに反対の意味を持つ反対語、および互いに類似する意味を持つ類義語は、共に類似語に含まれる。
【0059】
受験者は、選択肢文に今まで覚えたことがない文言に入れ替えられた箇所があると、強烈な違和感を感じ、間違えることが少ない。そのため、例えば、大学受験等の本試験に複数の科目が含まれる試験においては、同じ科目の学習事項に登場する文言の中から類似語を抽出する。また、宅地建物取引士資格試験のような法律系の資格試験においては同じ法律に登場する文言の中から類似語を抽出する。
【0060】
法律の改正があった場合、受験者の頭の中では改正前の法律に関する知識と改正後の法律に関する知識が混在し、勘違いしやすい。そこで、法律が改正された後の文言と法律が改正される前の文言とを類似語とする。
【0061】
図14に戻り、選択肢文管理部14は、選択された文言を、可変箇所に対して、誤った文言として関連付ける(ステップ507)。更に、選択肢文管理部14は、データ登録者による誤った文言の入力を受け付け(ステップ508)、入力された文言を誤った文言として可変箇所に関連付ける(ステップ509)。
【0062】
図15は、問題作成処理のフローチャートである。問題作成部15は、肢数の指定を受け付け(ステップ601)、更に、過去問構成、判別難易度構成、および範囲難易度構成の指定を受け付ける(ステップ602)。
【0063】
過去問構成は、過去問を基に作成された選択肢を、本試験におけるその過去問の出題回についてどのような割合で模擬試験に含めるかを指定する。例えば、直近4回すなわち1回前から4回前までの本試験の問題から作成された選択肢の割合と、5回前から7回前までの間の本試験の問題から作成された選択肢の割合と、8回前から10回前までの本試験の問題から作成された選択肢の割合とを指定できるようにしてもよい。直近4回すなわち1回前から4回前までの本試験の問題から作成された選択肢の割合を増やせば最近の本試験に近い模擬試験を作成することができる。8回前から10回前までの本試験の問題から作成された選択肢の割合を増やせばオーソドックスな問題が多い模擬試験を作成することができる。
【0064】
判別難易度構成は、本試験に合格するために習得すべき学習事項を習得していれば真偽が判別できる選択肢とそれでは判別できない選択肢との割合により定まる難易度(判別難易度)について、どの程度の難易度の問題をどれだけ模擬試験に含めるかを指定する。例えば、正解肢を1つの選択肢に絞ることができる問題の割合と、2つの選択肢まで絞ることができるがその2つのどちらが正解肢か絞り切れない問題の割合と、3つの選択肢まで絞ることができるがその3つのどれが正解肢か絞り切れない問題の割合と、4つのどれが正解肢か絞り切れない問題の割合とを指定し、4段階の難易度の割合を指定できるようにしてもよい。
【0065】
識別情報が付加されていない選択肢文を1個と識別情報が付加されている選択肢文を3個含むように、または識別情報が付加されている選択肢文を4個含むようにすれば、正解肢を1つの選択肢に絞ることができる問題を構成できる。識別情報が付加されていない選択肢文を2個と識別情報が付加されている選択肢文を2個含むようにすれば、2つの選択肢まで絞ることができるがその2つのどちらが正解肢か絞り切れない問題を構成できる。識別情報が付加されていない選択肢文を3個と識別情報が付加されている選択肢文を1個含むようにすれば、3つの選択肢まで絞ることができるがその3つのどれが正解肢か絞り切れない問題を構成できる。識別情報が付加されていない選択肢文を4個含むようにすれば、4つのどれが正解肢か絞り切れない問題を構成できる。
【0066】
範囲難易度構成は、問題に含まれる選択肢の分野が広さにより定まる難易度(範囲難易度)について、どの程度の難易度の問題をどれだけ模擬試験に含めるかを指定する。例えば、全ての選択肢が同一の細分類の範囲内である問題の割合と、全ての選択肢が同一の細分類の範囲内ではないが同一の小分類の範囲内である問題の割合と、全ての選択肢が同一の小分類の範囲内ではないが同一の中分類の範囲内である問題の割合と、全ての選択肢が同一の中分類の範囲内ではないが同一の大分類の範囲内である問題の割合とを指定し、4段階の難易度の割合を指定できるようにしてもよい。
【0067】
例えば、宅地建物取引士資格試験の出題範囲を、法令の階層に対応した大分類、中分類、小分類、細分類に区分することとし、大分類のひとつとして「民法全般」があり、「民法全般」の大分類に含まれる中分類のひとつとして「民法総則」があり、「民法総則」の中分類に含まれる小分類のひとつとして「意思表示」があり、「意思表示」の小分類に含まれる細分類のひとつとして「詐欺」があるとした場合を考える。難易度の低い方から、全ての選択肢が同一の細分類である「詐欺」の範囲内である問題、全ての選択肢が同一の細分類の範囲内ではないが同一の小分類である「意思表示」の範囲内である問題、全ての選択肢が同一の小分類の範囲内ではないが同一の中分類である「民法総則」の範囲内である問題、全ての選択肢が同一の中分類の範囲内ではないが同一の大分類である「民法全般」の範囲内である問題という順番になる。
【0068】
図15に戻り、ステップ603にて、問題作成部15は、最終的に模擬試験における過去問構成、判別難易度構成、および範囲難易度構成が指定された値となるように、次に作成する問題について、過去問出題回、分類、判定難易度、および範囲難易度を決定する。
【0069】
ステップ604にて、問題作成部15は、ステップ603で決定した過去問出題回、分類、判定難易度、および範囲難易度を制約条件として、選択肢文管理データ44から、ステップ601で指定された肢数の選択肢文を抽出する。続いて、ステップ605にて、問題作成部15は、問題種別を決定する。ここでいう問題種別は、正しい内容の選択肢を選択させる問題か、誤った内容の選択肢を選択させる問題かという種別である。問題種別の決定方法は特に限定されない。正しい内容の選択肢を選択させる問題か、誤った内容の選択肢を選択させる問題かをランダムに決めてもよいし、模擬試験の中で正しい内容の選択肢を選択させる問題と誤った内容の選択肢を選択させる問題が所定の割合になるように決めてもよい。
【0070】
宅地建物取引士資格試験のように出題範囲に法律が含まれる試験の場合、その法令に改正があれば改正後の模擬試験に対処が必要となる。例えば、改正前の法律に基づく選択肢文を改正後の模擬試験にそのまま利用できず修正や削除をすべき場合がある。そこで、選択肢文管理部14は、選択肢文管理データ44から、データ登録者から要求された条文を根拠条文とする選択肢文を抽出し、その選択肢文のひな型情報45を編集可能に表示することにしてもよい。
【0071】
また、法律が改正された直後には、改正前の文言と改正後の文言とは混同が生じやすい類似語であったものが期間が経つと混同は生じなくなる。そこで、選択肢文管理部14は、類似語データベースから、法律が改正されたために類似語として登録された文言を、改正から所定期間(例えば2年)が経過したら削除することにしてもよい。
【0072】
以上説明した本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明が本実施形態に限定されることはない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【0073】
上述した本実施形態には以下に示す事項が含まれている。ただし、本実施形態に含まれる事項が以下に示すもののみに限定されることはない。
【0074】
(事項1)
各々に文章により記述された所定肢数の選択肢から正解肢を選択させる多肢選択問題を含む本試験を模した模擬試験の問題を支援する試験問題作成支援システムであって、選択肢を記述した文章である選択肢文について、該選択肢文に関連する学習事項が、前記本試験に合格するために習得すべき事項であれば、該選択肢文に該学習事項の識別情報を関連付けて選択肢文管理データとして記憶する選択肢文管理部と、要求される第1の難易度に応じて定まる個数だけ前記識別情報が付加されていない選択肢文が含まれるように、前記選択肢文管理データから前記肢数の選択肢文を抽出し、抽出した前記選択肢文の各々に基づく選択肢を含む問題を作成する問題作成部と、を有する。これにより、難易度を意図的に与えて多肢選択問題を作成することを支援することができる。
【0075】
(事項2)
事項1に記載の試験問題作成支援システムにおいて、前記選択肢文管理部は、前記本試験の出題範囲を包含関係にある複数の階層による複数の分類に区分し、前記選択肢文管理データにおいて、前記選択肢文に、いずれの分類に属するかを示す分類情報を更に関連付け、前記問題作成部は、要求される第2の難易度に応じて定まる階層の単一の分類に全ての選択肢文が含まれ、当該階層の下位の階層の単一の分類に全ての選択肢文が含まれないように、前記選択肢文管理データから前記肢数の選択肢文を抽出する。これにより、多肢選択問題に多様な難易度を与えることが可能となる。
【0076】
(事項3)
事項2に記載の試験問題作成支援システムにおいて、過去所定回分の本試験の各試験回で出題された過去問の選択肢を前記分類に類別し、前記分類を前記学習事項に対応付け、前記学習事項の各々から出題された前記選択肢の個数を試験回毎に出題選択肢数として計数し、前記出題選択肢数が所定の条件を満たす学習事項を、前記本試験に合格するために習得すべき事項とする分析部を更に有する。これにより、過去の本試験における出題頻度の高い学習事項は多くの受験者が習得しており正解がされやすい学習事項であり、出題頻度の低い学習事項は多くの受験者が習得しておらず正解されにくい学習事項であるという傾向である。本態様によれば、本試験の出題傾向に基づいて各学習事項に識別情報が付加されるか否かが決まるので、出題傾向を基に難易度をコントロールすることができる。
【0077】
(事項4)
事項1に記載の試験問題作成支援システムにおいて、前記肢数が4であり、前記問題作成部は、前記識別情報が付加されていない選択肢文を2つまたは3つ含むように前記問題を作成する場合、正解肢を3つ目または4つ目に配置し、1つ目および2つ目に前記識別情報が付加されていない選択肢文を配置する。
【0078】
(事項5)
事項1に記載の試験問題作成支援システムにおいて、前記肢数が5であり、前記問題作成部は、前記識別情報が付加されていない選択肢文を2つまたは3つ含むように前記問題を作成する場合、正解肢を4つ目または5つ目に配置し、1つ目および2つ目に前記識別情報が付加されていない選択肢文を配置する。
【0079】
(事項6)
事項3に記載の試験問題作成支援システムにおいて、前記分析部は、更に、前記学習事項を、前記試験回毎の出題選択肢数に基づいて複数の頻度領域に仕分けし、前記問題作成部は、前記選択肢文管理データから、頻度領域のそれぞれについて、当該頻度領域に含まれる学習事項の選択肢文を含む問題が、指定された割合または個数だけ含まれるように、所定の問題数だけ問題を作成する。これにより、過去の本試験において出題された頻度に応じて学習事項からの問題を作成するので、過去の出題傾向と同等にしたり、過去の出題されていない学習事項の問題を増やしたり等、出題傾向を所望によりコントロールすることが可能となる。
【0080】
(事項7)
事項6に記載の試験問題作成支援システムにおいて、前記選択肢文管理部は、過去所定回分の本試験の各試験回で出題された問題に含まれていた選択肢文について、前記選択肢文管理データにおいて、該問題が出題された最新の試験回に関する出題回情報を該選択肢文に更に関連付け、前記問題作成部は、前記出題回情報に基づいて、前記選択肢文管理データから、指定された試験回に出題された問題から作成された選択肢文に基づく選択肢を含む問題が、指定された割合または個数だけ含まれるように、前記問題数だけ問題を作成する。これにより、模擬試験と最新の本試験の出題との重複の度合いを調整することができる。
【0081】
(事項8)
事項1に記載の試験問題作成支援システムにおいて、前記選択肢文管理部は、前記選択肢文管理データにおいて、前記選択肢文に該選択肢文の根拠条文を示す根拠条文情報を更に付加し、前記選択肢文管理データから、指定された条文を根拠条文とする選択肢文を抽出し、編集可能に提示する。これにより、法改正のあった条文を指定することにより、その条文を根拠条文とする選択肢文を抽出し、編集可能に提示するので、法改正に応じた必要な編集を容易に行うことができる。
【0082】
(事項9)
事項3に記載の試験問題作成支援システムにおいて、前記選択肢文管理部は、前記過去問の各選択肢の文章を選択肢文とし、前記選択肢文における結論部分から、変更が可能な部分を可変箇所として特定し、前記可変箇所に対して、当該可変箇所の元の文言および該元の文言の代わりに当該可変箇所に入れることが可能な文言を関連付け、前記問題作成部は、前記第2の難易度に応じて定まる個数だけ前記識別情報が付加されていない選択肢文が含まれ、かつ、前記第2の難易度に応じて定まる階層の1つの分類に全ての選択肢文が含まれ当該階層の下位の階層の1つの分類に全ての選択肢文が含まれないように、前記選択肢文管理データから前記肢数の選択肢文を抽出し、抽出された前記選択肢文のうち、いずれか1つが正解肢となり、残りが不正解肢となるように、前記選択肢文の前記可変箇所に関連付けられた文言のうちいずれか1つを選択する。
【0083】
(事項10)
事項9に記載の試験問題作成支援システムにおいて、前記選択肢文管理部は、互いに混合を生じさせる文言同士を類似語として関連づけた類似語データベースを作成しておき、前記可変箇所に対して、当該可変箇所の元の文言の類似語を前記類似語データベースから抽出し、前記可変箇所に対して関連付ける。
【0084】
(事項11)
事項10に記載の試験問題作成支援システムにおいて、前記選択肢文管理部は、互いに反対の意味を持つ反対語、および互いに類似する意味を持つ類義語を前記類似語として前記類似語データベースに登録する。
【0085】
(事項12)
事項11に記載の試験問題作成支援システムにおいて、前記本試験は出題範囲に法律を含む試験であり、前記選択肢文管理部は、互いに同じ法律に登場する反対語および類義語を前記類似語として前記類似語データベースに登録する。
【0086】
(事項13)
事項11に記載の試験問題作成支援システムにおいて、前記本試験は複数の科目を含む試験であり、前記選択肢文管理部は、互いに同じ科目における学習事項に登場する反対語および類義語を前記類似語として前記類似語データベースに登録する。
【0087】
(事項14)
事項11に記載の試験問題作成支援システムにおいて、前記本試験は出題範囲に法律を含む試験であり、前記選択肢文管理部は、前記法律における改正前の文言と改正後の文言とを前記類似語として前記類似語データベースに登録する。
【0088】
(事項15)
事項1に記載の試験問題作成支援システムにおいて、前記肢数が4であり、前記問題作成部は、前記第1の難易度を低い方からA、B、C、Dという4段階に定義し、前記第1の難易度Dが要求されれば、前記識別情報が付加されていない選択肢文を4個抽出し、前記第1の難易度Cが要求されれば、前記識別情報が付加されていない選択肢文を3個と前記識別情報が付加されている選択肢文を1個抽出し、前記第1の難易度Bが要求されれば、前記識別情報が付加されていない選択肢文を2個と前記識別情報が付加されている選択肢文を2個抽出し、前記第1の難易度Aが要求されれば、前記識別情報が付加されていない選択肢文を1個と前記識別情報が付加されている選択肢文を3個、または前記識別情報が付加されている選択肢文を4個抽出する。
【0089】
(事項16)
事項2に記載の試験問題作成支援システムにおいて、前記出題範囲は、大分類、中分類、小分類、細分類という4階層からなる分類に区分され、前記問題作成部は、前記第2の難易度を低い方からA、B、C、Dという4段階に定義し、前記第2の難易度Dが要求されれば、全ての選択肢が単一の大分類に含まれかつ単一の中分類に含まれないように、前記肢数の選択肢文を抽出し、前記第2の難易度Cが要求されれば、全ての選択肢が単一の中分類に含まれかつ単一の小分類に含まれないように、前記肢数の選択肢文を抽出し、前記第2の難易度Bが要求されれば、全ての選択肢が単一の小分類に含まれかつ単一の細分類に含まれないように、前記肢数の選択肢文を抽出し、前記第2の難易度Aが要求されれば、全ての選択肢が単一の細分類に含まれるように、前記肢数の選択肢文を抽出する。
【0090】
(事項17)
事項16に記載の試験問題作成支援システムにおいて、前記出題範囲は、法令の階層に対応した大分類、中分類、小分類、細分類に区分される。
【0091】
(事項18)
各々に文章により記述された所定肢数の選択肢から正解肢を選択させる多肢選択問題を含む本試験を模した模擬試験の問題を支援するための試験問題作成支援方法であって、コンピュータが、選択肢を記述した文章である選択肢文について、該選択肢文に関連する学習事項が、前記本試験に合格するために習得すべき事項であれば、該選択肢文に該学習事項の識別情報を関連付けて選択肢文管理データとして記憶し、要求される第1の難易度に応じて定まる個数だけ前記識別情報が付加されていない選択肢文が含まれるように、前記選択肢文管理データから前記肢数の選択肢文を抽出し、抽出した前記選択肢文の各々に基づく選択肢を含む問題を作成する。
【符号の説明】
【0092】
10…試験問題作成支援システム、11…記憶部、12…分析部、13…学習事項管理部、14…選択肢文管理部、15…問題作成部、21…プロセッサ、22…メインメモリ、23…記憶装置、24…入力装置、25…表示装置、26…バス
【要約】
【課題】難易度を調整可能に試験の問題を作成することを支援する。
【解決手段】各々に文章により記述された所定肢数の選択肢から正解肢を選択させる多肢選択問題を含む本試験を模した模擬試験の問題を支援する試験問題作成支援システムであって、選択肢を記述した文章である選択肢文について、該選択肢文に関連する学習事項が、前記本試験に合格するために習得すべき事項であれば、該選択肢文に該学習事項の識別情報を関連付けて選択肢文管理データとして記憶する選択肢文管理部と、要求される第1の難易度に応じて定まる個数だけ前記識別情報が付加されていない選択肢文が含まれるように、前記選択肢文管理データから前記肢数の選択肢文を抽出し、抽出した前記選択肢文の各々に基づく選択肢を含む問題を作成する問題作成部と、を有する。
【選択図】図15
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15