(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】自閉スペクトラム症および/またはてんかんの判定方法、急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異の判定方法、アレルギーおよび/またはアトピーの判定方法、自己免疫系異常の判定方法、プログラムおよびコンピュータ読み取り可能な記録媒体
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20240903BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20240903BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20240903BHJP
【FI】
A61B10/00 H
G01N33/48 M
C12Q1/6869 Z
(21)【出願番号】P 2024517115
(86)(22)【出願日】2023-11-09
(86)【国際出願番号】 JP2023040389
【審査請求日】2024-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2022180821
(32)【優先日】2022-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 一般財団法人 腸内フローラ移植臨床研究会第6回学術大会、令和4年9月18日 〔刊行物等〕 令和4年9月27日、https://fmt-japan.org/799および前記サイト内に埋め込まれたリンク先https://www.youtube.com/watch?v=kAXhiMiATLU&t=974s
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520460971
【氏名又は名称】シンバイオシス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112427
【氏名又は名称】藤本 芳洋
(72)【発明者】
【氏名】清水 真
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-116518(JP,A)
【文献】特開2019-045353(JP,A)
【文献】渡邉 邦友,自閉症と腸内細菌,腸内細菌学雑誌,日本,2014年,第28巻,第3号,p.121-128
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/00-10/06
G01N 33/48
C12Q 1/6869
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者から採取した検体としての糞便中の腸内細菌について、
装置によるプロファイリングとDNAシーケンサーを組み合わせて行う遺伝子解析方法により前記腸内細菌が属する腸内細菌群を特定し、前記腸内細菌群毎の腸内細菌数を測定する工程を含み、
前記装置は、下記(i)または/および(ii)
(i) 全腸内細菌数に対する、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数の比率
(ii) 1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Aと、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Bとの比率
に基づいて自閉スペクトラム症および/またはてんかんであるか否かの判定を行う自閉スペクトラム症および/またはてんかんの判定方法であって、
前記腸内細菌群は、
グループ1: others
グループ2: Enterobacterales
グループ3: Fusobacterium
グループ4: Clostridium cluster XIX
グループ5: Clostridium cluster XVIII
グループ6: Clostridium cluster XV
グループ7: Clostridium cluster XI
グループ8: Clostridium cluster IX
グループ9: Clostridium subcluster XIVab
グループ10: Clostridium cluster IV
グループ11: Clostridium cluster I&II&III
グループ12: Clostridium cluster Blautia
グループ13: Equolifaciens
グループ14: Prevotella
グループ15: Bacteroides
グループ16: Akkermansia
グループ17: Lactobacillales
グループ18: Bifidobacterium
であり、下記条件1-1~条件1-5
条件1-1:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ1~5に属する全腸内細菌数の比率が0.3%以上である
条件1-2:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ7に属する腸内細菌数の比率が0.1%以上である
条件1-3:グループ8に属する腸内細菌数とグループ9に属する腸内細菌数との比が1:3~1:5または、下記条件1-4が所定の条件を満たす場合には1:7~1:9である
所定の条件とはグループ11~13においてグループ12の腸内細菌数がグループ11とグループ13との腸内細菌数の合計よりも多いことである。
条件1-4:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ10に属する腸内細菌数が5%以上であり、かつ、グループ10に属する腸内細菌数とグループ11~13に属する全腸内細菌数との比が1:0.2~1:2.5である
条件1-5:グループ14に属する腸内細菌およびグループ15に属する腸内細菌のうち少なくとも一方が検出されないか、検出されても0.05%に満たない
のうち、少なくとも3つを満たす場合に前記被験者が自閉スペクトラム症および/またはてんかんであると判定する自閉スペクトラム症および/またはてんかんの判定方法。
【請求項2】
コンピュータを、
被験者から採取した検体としての糞便中の腸内細菌について、前記腸内細菌が属する腸内細菌群毎の腸内細菌数のデータを取得する取得手段と、
下記(i)または/および(ii)
(i) 全腸内細菌数に対する、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数の比率
(ii) 1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Aと、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Bとの比率
に基づいて自閉スペクトラム症および/またはてんかんであるか否かの判定を行う判定手段
として機能させるためのプログラムであって、
前記腸内細菌群は、
グループ1: others
グループ2: Enterobacterales
グループ3: Fusobacterium
グループ4: Clostridium cluster XIX
グループ5: Clostridium cluster XVIII
グループ6: Clostridium cluster XV
グループ7: Clostridium cluster XI
グループ8: Clostridium cluster IX
グループ9: Clostridium subcluster XIVab
グループ10: Clostridium cluster IV
グループ11: Clostridium cluster I&II&III
グループ12: Clostridium cluster Blautia
グループ13: Equolifaciens
グループ14: Prevotella
グループ15: Bacteroides
グループ16: Akkermansia
グループ17: Lactobacillales
グループ18: Bifidobacterium
であり、
前記判定手段は、下記条件1-1~条件1-5
条件1-1:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ1~5に属する全腸内細菌数の比率が0.3%以上である
条件1-2:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ7に属する腸内細菌数の比率が0.1%以上である
条件1-3:グループ8に属する腸内細菌数とグループ9に属する腸内細菌数との比が1:3~1:5または、下記条件1-4が所定の条件を満たす場合には1:7~1:9である
所定の条件とはグループ11~13においてグループ12の腸内細菌数がグループ11やグループ13の腸内細菌数の合計よりも多いことである。
条件1-4:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ10に属する腸内細菌数が5%以上であり、かつ、グループ10に属する腸内細菌数とグループ11~13に属する全腸内細菌数との比が1:0.2~1:2.5である
条件1-5:グループ14に属する腸内細菌およびグループ15に属する腸内細菌のうち少なくとも一方が検出されないか、検出されても0.05%に満たない
のうち、少なくとも3つを満たす場合に前記被験者が自閉スペクトラム症および/またはてんかんであると判定することを特徴とするプログラム。
【請求項3】
請求項2記載のプログラムが、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体に記録されてなるコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項4】
被験者から採取した検体としての糞便中の腸内細菌について、
装置によるプロファイリングとDNAシーケンサーを組み合わせて行う遺伝子解析方法により前記腸内細菌が属する腸内細菌群を特定し、前記腸内細菌群毎の腸内細菌数を測定する工程を含み、
前記装置は、下記(i)または/および(ii)
(i) 全腸内細菌数に対する、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数の比率
(ii) 1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Aと、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Bとの比率
に基づいて急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異であるか否かの判定を行う急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異の判定方法であって、
前記腸内細菌群は、
グループ1: others
グループ2: Enterobacterales
グループ3: Fusobacterium
グループ4: Clostridium cluster XIX
グループ5: Clostridium cluster XVIII
グループ6: Clostridium cluster XV
グループ7: Clostridium cluster XI
グループ8: Clostridium cluster IX
グループ9: Clostridium subcluster XIVab
グループ10: Clostridium cluster IV
グループ11: Clostridium cluster I&II&III
グループ12: Clostridium cluster Blautia
グループ13: Equolifaciens
グループ14: Prevotella
グループ15: Bacteroides
グループ16: Akkermansia
グループ17: Lactobacillales
グループ18: Bifidobacterium
であり、下記条件2-1~条件2-5
条件2-1:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ4に属する腸内細菌数の比率が0.2%以上である
条件2-2:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ7に属する腸内細菌数の比率が0.5%以上である
条件2-3:グループ11~13に属する全腸内細菌数に対するグループ12に属する腸内細菌数の比率が50%以上である
条件2-4:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ14に属する腸内細菌数が1%以下である、および/または、グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ15に属する腸内細菌数が30%以上である
条件2-5:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ16に属する腸内細菌数が0.05%以上である
のうち、少なくとも3つを満たす場合に前記被験者が急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異であると判定する急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異の判定方法。
【請求項5】
コンピュータを、
被験者から採取した検体としての糞便中の腸内細菌について、前記腸内細菌が属する腸内細菌群毎の腸内細菌数のデータを取得する取得手段と、
下記(i)または/および(ii)
(i) 全腸内細菌数に対する、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数の比率
(ii) 1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Aと、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Bとの比率
に基づいて急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異であるか否かの判定を行う判定手段
として機能させるためのプログラムであって、
前記腸内細菌群は、
グループ1: others
グループ2: Enterobacterales
グループ3: Fusobacterium
グループ4: Clostridium cluster XIX
グループ5: Clostridium cluster XVIII
グループ6: Clostridium cluster XV
グループ7: Clostridium cluster XI
グループ8: Clostridium cluster IX
グループ9: Clostridium subcluster XIVab
グループ10: Clostridium cluster IV
グループ11: Clostridium cluster I&II&III
グループ12: Clostridium cluster Blautia
グループ13: Equolifaciens
グループ14: Prevotella
グループ15: Bacteroides
グループ16: Akkermansia
グループ17: Lactobacillales
グループ18: Bifidobacterium
であり、
前記判定手段は、下記条件2-1~条件2-5
条件2-1:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ4に属する腸内細菌数の比率が0.2%以上である
条件2-2:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ7に属する腸内細菌数の比率が0.5%以上である
条件2-3:グループ11~13に属する全腸内細菌数に対するグループ12に属する腸内細菌数の比率が50%以上である
条件2-4:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ14に属する腸内細菌数が1%以下である、および/または、グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ15に属する腸内細菌数が30%以上である
条件2-5:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ16に属する腸内細菌数が0.05%以上である
のうち、少なくとも3つを満たす場合に前記被験者が急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異であると判定することを特徴とするプログラム。
【請求項6】
請求項5記載のプログラムが、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体に記録されてなるコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項7】
被験者から採取した検体としての糞便中の腸内細菌について、
装置によるプロファイリングとDNAシーケンサーを組み合わせて行う遺伝子解析方法により前記腸内細菌が属する腸内細菌群を特定し、前記腸内細菌群毎の腸内細菌数を測定する工程を含み、
前記装置は、下記(i)または/および(ii)
(i) 全腸内細菌数に対する、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数の比率
(ii) 1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Aと、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Bとの比率
に基づいてアレルギーおよび/またはアトピーであるか否かの判定を行うアレルギーおよび/またはアトピーの判定方法であって、前記腸内細菌群は、
グループ1: others
グループ2: Enterobacterales
グループ3: Fusobacterium
グループ4: Clostridium cluster XIX
グループ5: Clostridium cluster XVIII
グループ6: Clostridium cluster XV
グループ7: Clostridium cluster XI
グループ8: Clostridium cluster IX
グループ9: Clostridium subcluster XIVab
グループ10: Clostridium cluster IV
グループ11: Clostridium cluster I&II&III
グループ12: Clostridium cluster Blautia
グループ13: Equolifaciens
グループ14: Prevotella
グループ15: Bacteroides
グループ16: Akkermansia
グループ17: Lactobacillales
グループ18: Bifidobacterium
であり、下記条件3-1~条件3-5
条件3-1:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ2~8に属する腸内細菌数の比率が7%以下である、および/または、グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ2に属する全腸内細菌数の比率が0.3%以上である
条件3-2:グループ8および9に属する全腸内細菌数に対するグループ8に属する腸内細菌数の比率が50%以上である
条件3-3:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ7に属する腸内細菌数の比率が0.3%以上である
条件3-4:グループ10~13に属する全腸内細菌数に対するグループ10に属する腸内細菌数が60%以上である、および/または、グループ11~13に属する全腸内細菌数に対するグループ12に属する腸内細菌数の比率が50%以上である
条件3-5:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ14に属する腸内細菌数が1%以下である
のうち、少なくとも3つを満たす場合に前記被験者がアレルギーおよび/またはアトピーであると判定するアレルギーおよび/またはアトピーの判定方法。
【請求項8】
コンピュータを、
被験者から採取した検体としての糞便中の腸内細菌について、前記腸内細菌が属する腸内細菌群毎の腸内細菌数のデータを取得する取得手段と、
下記(i)または/および(ii)
(i) 全腸内細菌数に対する、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数の比率
(ii) 1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Aと、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Bとの比率
に基づいてアレルギーおよび/またはアトピーであるか否かの判定を行う判定手段
として機能させるためのプログラムであって、前記腸内細菌群は、
グループ1: others
グループ2: Enterobacterales
グループ3: Fusobacterium
グループ4: Clostridium cluster XIX
グループ5: Clostridium cluster XVIII
グループ6: Clostridium cluster XV
グループ7: Clostridium cluster XI
グループ8: Clostridium cluster IX
グループ9: Clostridium subcluster XIVab
グループ10: Clostridium cluster IV
グループ11: Clostridium cluster I&II&III
グループ12: Clostridium cluster Blautia
グループ13: Equolifaciens
グループ14: Prevotella
グループ15: Bacteroides
グループ16: Akkermansia
グループ17: Lactobacillales
グループ18: Bifidobacterium
であり、
前記判定手段は、下記条件3-1~条件3-5
条件3-1:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ2~8に属する全腸内細菌数の比率が7%以下である、および/または、グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ2に属する腸内細菌数の比率が0.3%以上である
条件3-2:グループ8および9に属する全腸内細菌数に対するグループ8に属する腸内細菌数の比率が50%以上である
条件3-3:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ7に属する腸内細菌数の比率が0.3%以上である
条件3-4:グループ10~13に属する全腸内細菌数に対するグループ10に属する腸内細菌数が60%以上である、および/または、グループ11~13に属する全腸内細菌数に対するグループ12に属する腸内細菌数の比率が50%以上である
条件3-5:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ14に属する腸内細菌数が1%以下である
のうち、少なくとも3つを満たす場合に前記被験者がアレルギーおよび/またはアトピーであると判定することを特徴とするプログラム。
【請求項9】
請求項8記載のプログラムが、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体に記録されてなるコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項10】
被験者から採取した検体としての糞便中の腸内細菌について、
装置によるプロファイリングとDNAシーケンサーを組み合わせて行う遺伝子解析方法により前記腸内細菌が属する腸内細菌群を特定し、前記腸内細菌群毎の腸内細菌数を測定する工程を含み、
前記装置は、下記(i)または/および(ii)
(i) 全腸内細菌数に対する、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数の比率
(ii) 1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Aと、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Bとの比率
に基づいて自己免疫系異常があるか否かの判定を行う自己免疫系異常の判定方法であって、前記腸内細菌群は、
グループ1: others
グループ2: Enterobacterales
グループ3: Fusobacterium
グループ4: Clostridium cluster XIX
グループ5: Clostridium cluster XVIII
グループ6: Clostridium cluster XV
グループ7: Clostridium cluster XI
グループ8: Clostridium cluster IX
グループ9: Clostridium subcluster XIVab
グループ10: Clostridium cluster IV
グループ11: Clostridium cluster I&II&III
グループ12: Clostridium cluster Blautia
グループ13: Equolifaciens
グループ14: Prevotella
グループ15: Bacteroides
グループ16: Akkermansia
グループ17: Lactobacillales
グループ18: Bifidobacterium
であり、下記条件4-1~条件4-5
条件4-1:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ2~8に属する全腸内細菌数の比率が10%以下である、および/または、グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ2に属する全腸内細菌数の比率が0.5%以上である
条件4-2:グループ8および9に属する全腸内細菌数に対するグループ9に属する腸内細菌数の比率が90%以上である
条件4-3:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ7に属する腸内細菌数の比率が1%以上である
条件4-4:グループ10~13に属する全腸内細菌数に対するグループ10に属する腸内細菌数が40%以下である、および/または、グループ11~13に属する全腸内細菌数に対するグループ12に属する腸内細菌数の比率が50%以上である
条件4-5:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ14に属する腸内細菌数が1%以下である、および/または、グループ14および15に属する全腸内細菌数に対するグループ15に属する腸内細菌数の比率が90%以上である
のうち、少なくとも3つを満たす場合に前記被験者に自己免疫系異常があると判定する自己免疫系異常の判定方法。
【請求項11】
コンピュータを、
被験者から採取した検体としての糞便中の腸内細菌について、前記腸内細菌が属する腸内細菌群毎の腸内細菌数のデータを取得する取得手段と、
下記(i)または/および(ii)
(i) 全腸内細菌数に対する、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数の比率
(ii) 1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Aと、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Bとの比率
に基づいて自己免疫系異常があるか否かの判定を行う判定手段
として機能させるためのプログラムであって、前記腸内細菌群は、
グループ1: others
グループ2: Enterobacterales
グループ3: Fusobacterium
グループ4: Clostridium cluster XIX
グループ5: Clostridium cluster XVIII
グループ6: Clostridium cluster XV
グループ7: Clostridium cluster XI
グループ8: Clostridium cluster IX
グループ9: Clostridium subcluster XIVab
グループ10: Clostridium cluster IV
グループ11: Clostridium cluster I&II&III
グループ12: Clostridium cluster Blautia
グループ13: Equolifaciens
グループ14: Prevotella
グループ15: Bacteroides
グループ16: Akkermansia
グループ17: Lactobacillales
グループ18: Bifidobacterium
であり、
前記判定手段は、下記条件4-1~条件4-5
条件4-1:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ2~8に属する全腸内細菌数の比率が10%以下である、および/または、グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ2に属する全腸内細菌数の比率が0.5%以上である
条件4-2:グループ8および9に属する全腸内細菌数に対するグループ9に属する腸内細菌数の比率が90%以上である
条件4-3:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ7に属する腸内細菌数の比率が1%以上である
条件4-4:グループ10~13に属する全腸内細菌数に対するグループ10に属する腸内細菌数が40%以下である、および/または、グループ11~13に属する全腸内細菌数に対するグループ12に属する腸内細菌数の比率が50%以上である
条件4-5:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ14に属する腸内細菌数が1%以下である、および/または、グループ14および15に属する全腸内細菌数に対するグループ15に属する腸内細菌数の比率が90%以上である
のうち、少なくとも3つを満たす場合に前記被験者に自己免疫系異常があると判定することを特徴とするプログラム。
【請求項12】
請求項11記載のプログラムが、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体に記録されてなるコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自閉スペクトラム症および/またはてんかんの判定方法、急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異の判定方法、アレルギーおよび/またはアトピーの判定方法、自己免疫系異常の判定方法、これらの判定方法に係るプログラムおよびコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自閉スペクトラム症(ASD)は発達障がいの一種であり、社会的コミュニケーションや対人的相互反応等に困難を生じたりする。近年、自閉スペクトラム症の発症割合は増加傾向にあるといわれている。
【0003】
自閉スペクトラム症の診断には、1歳半検診の際に例えばM-CHATと呼ばれるアンケートが第1次スクリーニングに用いられている。M-CHATは、養育者が子どもの行動についての質問項目について、はい/いいえで回答する方式が採られている。
【0004】
また、医師による問診により、DSM-5等の診断マニュアルを用いて所定の条件を満たした場合に自閉スペクトラム症であると診断される。ここで、身体疾患であれば生理検査・検体検査等により原因や病態を追求することができるが、DSM-5は、現れた症候に基づく操作的診断基準であり、医師が疾患に特徴的な複数の症候のうち何項目に該当するかに基づいて診断を行う。このような診断においては、たとえば、うつ病とASDとの症候とが類似する場合もあり、熟練した医師であっても判断に差異が生じる虞がある。
【0005】
そこで、上記操作的診断を補助するための生理的診断として、被験者の視線を解析して所定の条件により自閉スペクトラム症の診断を支援するための診断支援装置、診断支援方法が開発されているが(例えば、特許文献1参照)、さらなる診断の手法が求められている。
【0006】
また、他の疾患では糞便中の所定の種類の細菌を用いてアレルギー性疾患の検査を行うことや潰瘍性大腸炎のモニタリングを行う試みも行われているが、用いる細菌の種類が少ないため、精度に劣るものであった(例えば、特許文献2および3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-150669号公報
【文献】特開2009-232690号公報
【文献】特表2015-500792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、操作的診断以外の手法により自閉スペクトラム症の判定を行うことができる自閉スペクトラム症の判定方法、およびこれを用いたプログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供すること、また、自閉スペクトラム症と同様に脳神経における異常放電がみられるてんかんの判定方法についても提供することである。
【0009】
また、本発明の目的は、糞便を用いて高精度に判定を行うことのできる急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異の判定方法、アレルギーおよび/またはアトピーの判定方法、自己免疫系異常の判定方法、これらの判定方法に係るプログラムおよびコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討の結果、検体としての糞便中の腸内細菌が属する腸内細菌群および腸内細菌群毎の腸内細菌数を用いることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った
【0011】
即ち、本発明によれば、
(1) 被験者から採取した検体としての糞便中の腸内細菌について、前記腸内細菌が属する腸内細菌群を特定し、前記腸内細菌群毎の腸内細菌数を測定する工程を含み、下記(i)または/および(ii)
(i) 全腸内細菌数に対する、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数の比率(ii) 1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Aと、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Bとの比率
に基づいて自閉スペクトラム症および/またはてんかんであるか否かの判定を行う自閉スペクトラム症および/またはてんかんの判定方法、
(2) 前記腸内細菌群は、
グループ1: others
グループ2: Enterobacterales
グループ3: Fusobacterium
グループ4: Clostridium cluster XIX
グループ5: Clostridium cluster XVIII
グループ6: Clostridium cluster XV
グループ7: Clostridium cluster XI
グループ8: Clostridium cluster IX
グループ9: Clostridium subcluster XIVab
グループ10: Clostridium cluster IV
グループ11: Clostridium cluster I&II&III
グループ12: Clostridium cluster Blautia
グループ13: Equolifaciens
グループ14: Prevotella
グループ15: Bacteroides
グループ16: Akkermansia
グループ17: Lactobacillales
グループ18: Bifidobacterium
であり、下記条件1-1~条件1-5
条件1-1:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ1~5に属する腸内細菌数の比率が0.3%以上である
条件1-2:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ7に属する腸内細菌数の比率が0.1%以上である
条件1-3:グループ8に属する腸内細菌数とグループ9に属する腸内細菌数との比が1:3~1:5または、下記条件1-4が所定の条件を満たす場合には1:7~1:9である
所定の条件とはグループ11~13においてグループ12の腸内細菌数がグループ11とグループ13との腸内細菌数の合計よりも多いことである。
条件1-4:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ10に属する腸内細菌数が5%以上であり、かつ、グループ10に属する腸内細菌数とグループ11~13に属する全腸内細菌数との比が1:0.2~1:2.5である
条件1-5:グループ14に属する腸内細菌およびグループ15に属する腸内細菌のうち少なくとも一方が検出されないか、検出されても0.05%に満たない
のうち、少なくとも3つを満たす場合に前記被験者が自閉スペクトラム症および/またはてんかんであると判定する(1)記載の自閉スペクトラム症および/またはてんかんの判定方法、
(3) コンピュータを、被験者から採取した検体としての糞便中の腸内細菌について、前記腸内細菌が属する腸内細菌群毎の腸内細菌数のデータを取得する取得手段と、
下記(i)または/および(ii)
(i) 全腸内細菌数に対する、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数の比率
(ii) 1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Aと、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Bとの比率
に基づいて自閉スペクトラム症および/またはてんかんであるか否かの判定を行う判定手段
として機能させるためのプログラム、
(4) 前記腸内細菌群は、
グループ1: others
グループ2: Enterobacterales
グループ3: Fusobacterium
グループ4: Clostridium cluster XIX
グループ5: Clostridium cluster XVIII
グループ6: Clostridium cluster XV
グループ7: Clostridium cluster XI
グループ8: Clostridium cluster IX
グループ9: Clostridium subcluster XIVab
グループ10: Clostridium cluster IV
グループ11: Clostridium cluster I&II&III
グループ12: Clostridium cluster Blautia
グループ13: Equolifaciens
グループ14: Prevotella
グループ15: Bacteroides
グループ16: Akkermansia
グループ17: Lactobacillales
グループ18: Bifidobacterium
であり、
前記判定手段は、下記条件1-1~条件1-5
条件1-1:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ1~5に属する腸内細菌数の比率が0.3%以上である
条件1-2:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ7に属する腸内細菌数の比率が0.1%以上である
条件1-3:グループ8に属する腸内細菌数とグループ9に属する腸内細菌数との比が1:3~1:5または、下記条件1-4が所定の条件を満たす場合には1:7~1:9である
条件1-4:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ10に属する腸内細菌数が5%以上であり、かつ、グループ10に属する腸内細菌数とグループ11~13に属する全腸内細菌数との比が1:0.2~1:2.5である
所定の条件とはグループ11~13においてグループ12の腸内細菌数がグループ11とグループ13との腸内細菌数の合計よりも多いことである。
条件1-5:グループ14に属する腸内細菌およびグループ15に属する腸内細菌のうち少なくとも一方が検出されないか、検出されても0.05%に満たない
のうち、少なくとも3つを満たす場合に前記被験者が自閉スペクトラム症および/またはてんかんであると判定することを特徴とする(3)記載のプログラム、
(5) (3)または(4)記載のプログラムが、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体に記録されてなるコンピュータ読み取り可能な記録媒体、
(6) 被験者から採取した検体としての糞便中の腸内細菌について、前記腸内細菌が属する腸内細菌群を特定し、前記腸内細菌群毎の腸内細菌数を測定する工程を含み、下記(i)または/および(ii)
(i) 全腸内細菌数に対する、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数の比率
(ii) 1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Aと、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Bとの比率
に基づいて急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異であるか否かの判定を行う急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異の判定方法、
(7) 前記腸内細菌群は、
グループ1: others
グループ2: Enterobacterales
グループ3: Fusobacterium
グループ4: Clostridium cluster XIX
グループ5: Clostridium cluster XVIII
グループ6: Clostridium cluster XV
グループ7: Clostridium cluster XI
グループ8: Clostridium cluster IX
グループ9: Clostridium subcluster XIVab
グループ10: Clostridium cluster IV
グループ11: Clostridium cluster I&II&III
グループ12: Clostridium cluster Blautia
グループ13: Equolifaciens
グループ14: Prevotella
グループ15: Bacteroides
グループ16: Akkermansia
グループ17: Lactobacillales
グループ18: Bifidobacterium
であり、下記条件2-1~条件2-5
条件2-1:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ4に属する腸内細菌数の比率が0.5%以上である
条件2-2:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ7に属する腸内細菌数の比率が0.1%以上である
条件2-3:グループ11~13に属する全腸内細菌数に対するグループ12に属する腸内細菌数の比率が50%以上である
条件2-4:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ14に属する腸内細菌数が1%以下である、および/または、グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ15に属する腸内細菌数が30%以上である
条件2-5:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ16に属する腸内細菌数が0.05%以上である
のうち、少なくとも3つを満たす場合に前記被験者に急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異があると判定する(6)記載の急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異の判定方法、
(8) コンピュータを、被験者から採取した検体としての糞便中の腸内細菌について、前記腸内細菌が属する腸内細菌群毎の腸内細菌数のデータを取得する取得手段と、下記(i)または/および(ii)
(i) 全腸内細菌数に対する、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数の比率
(ii) 1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Aと、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Bとの比率
に基づいて急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異であるか否かの判定を行う判定手段として機能させるためのプログラム、
(9) 前記腸内細菌群は、
グループ1: others
グループ2: Enterobacterales
グループ3: Fusobacterium
グループ4: Clostridium cluster XIX
グループ5: Clostridium cluster XVIII
グループ6: Clostridium cluster XV
グループ7: Clostridium cluster XI
グループ8: Clostridium cluster IX
グループ9: Clostridium subcluster XIVab
グループ10: Clostridium cluster IV
グループ11: Clostridium cluster I&II&III
グループ12: Clostridium cluster Blautia
グループ13: Equolifaciens
グループ14: Prevotella
グループ15: Bacteroides
グループ16: Akkermansia
グループ17: Lactobacillales
グループ18: Bifidobacterium
であり、
前記判定手段は、下記条件2-1~条件2-5
条件2-1:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ4に属する腸内細菌数の比率が0.2%以上である
条件2-2:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ7に属する腸内細菌数の比率が0.5%以上である
条件2-3:グループ11~13に属する全腸内細菌数に対するグループ12に属する腸内細菌数の比率が50%以上である
条件2-4:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ14に属する腸内細菌数が1%以下である、および/または、グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ15に属する腸内細菌数が30%以上である
条件2-5:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ16に属する腸内細菌数が0.05%以上である
のうち、少なくとも3つを満たす場合に前記被験者に急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異があると判定することを特徴とする(8)記載のプログラム、
(10) (8)または(9)記載のプログラムが、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体に記録されてなるコンピュータ読み取り可能な記録媒体、
(11) 被験者から採取した検体としての糞便中の腸内細菌について、前記腸内細菌が属する腸内細菌群を特定し、前記腸内細菌群毎の腸内細菌数を測定する工程を含み、下記(i)または/および(ii)
(i) 全腸内細菌数に対する、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数の比率
(ii) 1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Aと、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Bとの比率
に基づいてアレルギーおよび/またはアトピーであるか否かの判定を行うアレルギーおよび/またはアトピーの判定方法であって、前記腸内細菌群は、
グループ1: others
グループ2: Enterobacterales
グループ3: Fusobacterium
グループ4: Clostridium cluster XIX
グループ5: Clostridium cluster XVIII
グループ6: Clostridium cluster XV
グループ7: Clostridium cluster XI
グループ8: Clostridium cluster IX
グループ9: Clostridium subcluster XIVab
グループ10: Clostridium cluster IV
グループ11: Clostridium cluster I&II&III
グループ12: Clostridium cluster Blautia
グループ13: Equolifaciens
グループ14: Prevotella
グループ15: Bacteroides
グループ16: Akkermansia
グループ17: Lactobacillales
グループ18: Bifidobacterium
であり、下記条件3-1~3-5
条件3-1:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ2~8に属する全腸内細菌数の比率が7%以下である、および/または、グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ2に属する腸内細菌数の比率が0.3%以上である
条件3-2:グループ8および9に属する全腸内細菌数に対するグループ8に属する腸内細菌数の比率が50%以上である
条件3-3:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ7に属する腸内細菌数の比率が0.3%以上である
条件3-4:グループ10~13に属する全腸内細菌数に対するグループ10に属する腸内細菌数が60%以上である、および/または、グループ11~13に属する全腸内細菌数に対するグループ12に属する腸内細菌数の比率が50%以上である
条件3-5:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ14に属する腸内細菌数が1%以下である
のうち、少なくとも3つを満たす場合に前記被験者がアレルギーおよび/またはアトピーであると判定するアレルギーおよび/またはアトピーの判定方法、
(12) コンピュータを、被験者から採取した検体としての糞便中の腸内細菌について、前記腸内細菌が属する腸内細菌群毎の腸内細菌数のデータを取得する取得手段と、下記(i)または/および(ii)
(i) 全腸内細菌数に対する、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数の比率
(ii) 1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Aと、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Bとの比率
に基づいてアレルギーおよび/またはアトピーであるか否かの判定を行う判定手段として機能させるためのプログラムであって、前記腸内細菌群は、
グループ1: others
グループ2: Enterobacterales
グループ3: Fusobacterium
グループ4: Clostridium cluster XIX
グループ5: Clostridium cluster XVIII
グループ6: Clostridium cluster XV
グループ7: Clostridium cluster XI
グループ8: Clostridium cluster IX
グループ9: Clostridium subcluster XIVab
グループ10: Clostridium cluster IV
グループ11: Clostridium cluster I&II&III
グループ12: Clostridium cluster Blautia
グループ13: Equolifaciens
グループ14: Prevotella
グループ15: Bacteroides
グループ16: Akkermansia
グループ17: Lactobacillales
グループ18: Bifidobacterium
であり、
前記判定手段は、下記条件3-1~3-5
条件3-1:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ2~8に属する全腸内細菌数の比率が7%以下である、および/または、グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ2に属する腸内細菌数の比率が0.3%以上である
条件3-2:グループ8および9に属する全腸内細菌数に対するグループ8に属する腸内細菌数の比率が50%以上である
条件3-3:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ7に属する腸内細菌数の比率が0.3%以上である
条件3-4:グループ10~13に属する全腸内細菌数に対するグループ10に属する腸内細菌数が60%以上である、および/または、グループ11~13に属する全腸内細菌数に対するグループ12に属する腸内細菌数の比率が50%以上である
条件3-5:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ14に属する腸内細菌数が1%以下である
のうち、少なくとも3つを満たす場合に前記被験者がアレルギーおよび/またはアトピーであると判定することを特徴とするプログラム、
(13) (12)記載のプログラムが、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体に記録されてなるコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
(14) 被験者から採取した検体としての糞便中の腸内細菌について、前記腸内細菌が属する腸内細菌群を特定し、前記腸内細菌群毎の腸内細菌数を測定する工程を含み、下記(i)または/および(ii)
(i) 全腸内細菌数に対する、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数の比率
(ii) 1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Aと、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Bとの比率
に基づいて自己免疫系異常があるか否かの判定を行う自己免疫系異常の判定方法であって、前記腸内細菌群は、
グループ1: others
グループ2: Enterobacterales
グループ3: Fusobacterium
グループ4: Clostridium cluster XIX
グループ5: Clostridium cluster XVIII
グループ6: Clostridium cluster XV
グループ7: Clostridium cluster XI
グループ8: Clostridium cluster IX
グループ9: Clostridium subcluster XIVab
グループ10: Clostridium cluster IV
グループ11: Clostridium cluster I&II&III
グループ12: Clostridium cluster Blautia
グループ13: Equolifaciens
グループ14: Prevotella
グループ15: Bacteroides
グループ16: Akkermansia
グループ17: Lactobacillales
グループ18: Bifidobacterium
であり、下記条件4-1~条件4-5
条件4-1:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ2~8に属する全腸内細菌数の比率が10%以下である、および/または、グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ2に属する全腸内細菌数の比率が0.5%以上である
条件4-2:グループ8および9に属する全腸内細菌数に対するグループ9に属する腸内細菌数の比率が90%以上である
条件4-3:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ7に属する腸内細菌数の比率が1%以上である
条件4-4:グループ10~13に属する全腸内細菌数に対するグループ10に属する腸内細菌数が40%以下である、および/または、グループ11~13に属する全腸内細菌数に対するグループ12に属する腸内細菌数の比率が50%以上である
条件4-5:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ14に属する腸内細菌数が1%以下である、および/または、グループ14および15に属する全腸内細菌数に対するグループ15に属する腸内細菌数の比率が90%以上である
のうち、少なくとも3つを満たす場合に前記被験者に自己免疫系異常があると判定する自己免疫系異常の判定方法、
(15) コンピュータを、被験者から採取した検体としての糞便中の腸内細菌について、前記腸内細菌が属する腸内細菌群毎の腸内細菌数のデータを取得する取得手段と、
下記(i)または/および(ii)
(i) 全腸内細菌数に対する、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数の比率
(ii) 1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Aと、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Bとの比率
に基づいて自己免疫系異常があるか否かの判定を行う判定手段として機能させるためのプログラムであって、前記腸内細菌群は、
グループ1: others
グループ2: Enterobacterales
グループ3: Fusobacterium
グループ4: Clostridium cluster XIX
グループ5: Clostridium cluster XVIII
グループ6: Clostridium cluster XV
グループ7: Clostridium cluster XI
グループ8: Clostridium cluster IX
グループ9: Clostridium subcluster XIVab
グループ10: Clostridium cluster IV
グループ11: Clostridium cluster I&II&III
グループ12: Clostridium cluster Blautia
グループ13: Equolifaciens
グループ14: Prevotella
グループ15: Bacteroides
グループ16: Akkermansia
グループ17: Lactobacillales
グループ18: Bifidobacterium
であり、
前記判定手段は、下記条件4-1~条件4-5
条件4-1:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ2~8に属する全腸内細菌数の比率が10%以下である、および/または、グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ2に属する全腸内細菌数の比率が0.5%以上である
条件4-2:グループ8および9に属する全腸内細菌数に対するグループ9に属する腸内細菌数の比率が90%以上である
条件4-3:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ7に属する腸内細菌数の比率が1%以上である
条件4-4:グループ10~13に属する全腸内細菌数に対するグループ10に属する腸内細菌数が40%以下である、および/または、グループ11~13に属する全腸内細菌数に対するグループ12に属する腸内細菌数の比率が50%以上である
条件4-5:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ14に属する腸内細菌数が1%以下である、および/または、グループ14および15に属する全腸内細菌数に対するグループ15に属する腸内細菌数の比率が90%以上である
のうち、少なくとも3つを満たす場合に前記被験者に自己免疫系異常があると判定することを特徴とするプログラム、
(16) (15)記載のプログラムが、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体に記録されてなるコンピュータ読み取り可能な記録媒体
が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、操作的診断以外の手法により自閉スペクトラム症および/またはてんかんの判定を行うことができる自閉スペクトラム症の判定方法、およびこれを用いたプログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することができる。
【0013】
また、本発明によれば、糞便を用いて高精度に判定を行うことのできる急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異の判定方法、アレルギーおよび/またはアトピーの判定方法、自己免疫系異常の判定方法、これらの判定方法に係るプログラムおよびコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例1における腸内細菌群の比率を示すグラフである。
【
図2】実施例2における腸内細菌群の比率を示すグラフである。
【
図3】実施例3における腸内細菌群の比率を示すグラフである。
【
図4】実施例4における腸内細菌群の比率を示すグラフである。
【
図5】実施例5における腸内細菌群の比率を示すグラフである。
【
図6】実施例6における腸内細菌群の比率を示すグラフである。
【
図7】実施例7における腸内細菌群の比率を示すグラフである。
【
図8】実施例8における腸内細菌群の比率を示すグラフである。
【
図9】実施例9における腸内細菌群の比率を示すグラフである。
【
図10】実施例10における腸内細菌群の比率を示すグラフである。
【
図11】実施例11における腸内細菌群の比率を示すグラフである。
【
図12】実施例12における腸内細菌群の比率を示すグラフである。
【
図13】実施例13における腸内細菌群の比率を示すグラフである。
【
図14】実施例14における腸内細菌群の比率を示すグラフである。
【
図15】実施例15における腸内細菌群の比率を示すグラフである。
【
図16】実施例16における腸内細菌群の比率を示すグラフである。
【
図17】実施例17における腸内細菌群の比率を示すグラフである。
【
図18】参考例1における腸内細菌群の比率を示すグラフである。
【
図19】参考例2における腸内細菌群の比率を示すグラフである。
【
図20】参考例3におけるSRS-2での診断による人数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<自閉スペクトラム症および/またはてんかん>
以下、本発明の第1の判定方法に係る自閉スペクトラム症および/またはてんかんの判定方法について説明する。本発明は、被験者から採取した検体としての糞便中の腸内細菌について、前記腸内細菌が属する腸内細菌群を特定し、前記腸内細菌群毎の腸内細菌数を測定する工程を含み、下記(i)または/および(ii)
(i) 全腸内細菌数に対する、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数の比率
(ii) 1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Aと、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Bとの比率
に基づいて自閉スペクトラム症および/またはてんかんであるか否かの判定を行うものである。
【0016】
本発明においては、自閉スペクトラム症および/またはてんかんの判定に用いる腸内細菌群として、具体的には以下に示すグループ1~18にグループ分けされた腸内細菌群を用いることが好ましい。
【0017】
グループ1: others
グループ2: Enterobacterales
グループ3: Fusobacterium
グループ4: Clostridium cluster XIX
グループ5: Clostridium cluster XVIII
グループ6: Clostridium cluster XV
グループ7: Clostridium cluster XI
グループ8: Clostridium cluster IX
グループ9: Clostridium subcluster XIVab
グループ10: Clostridium cluster IV
グループ11: Clostridium cluster I&II&III
グループ12: Clostridium cluster Blautia
グループ13: Equolifaciens
グループ14: Prevotella
グループ15: Bacteroides
グループ16: Akkermansia
グループ17: Lactobacillales
グループ18: Bifidobacterium
ここで、グループ1~18の特徴等について下記表1に示す。
【0018】
【0019】
なお、表1におけるグループ1「others」は、上記グループ2~18に属さない全ての腸内細菌を含む。さらに、その他の細菌、真菌、ウイルス等、検体としての糞便中に存在する「グループ2~18に属する腸内細菌」以外の全ての微生物をも含む概念である。したがって、本発明において「腸内細菌」はグループ1「others」に分類される微生物をも含む概念である。
【0020】
(腸内細菌群の特定および腸内細菌数の測定)
本発明において、被験者から採取した検体としての糞便中の腸内細菌の種類の特定(すなわち、どの腸内細菌群に属するかの特定)および、腸内細菌群毎の腸内細菌数の測定は、遺伝子解析方法により行うことができる。
【0021】
本発明において用いる遺伝子解析方法としては、公知の「リボソームプロファイリング(16SリボソームRNA(rRNA)シーケンス)」と、公知の「次世代シーケンサー(NextGenerationSequencer:NGS)」を組み合わせて用いる方法が好ましい。
【0022】
プロファイリング手法としては、「リボソームプロファイリング」のほか、検体中に存在する全ての微生物の全遺伝子を包括的に解析する、「ショットガンメタゲノミクスシーケンス」等を用いることもできるが、シーケンス量が少なく低コストで実施可能な「リボソームプロファイリング」が好ましい。
【0023】
(リボソームプロファイリング)
「リボソームプロファイリング」とは、近年、微生物種等の特定や分類等において広く利用されている方法であり、翻訳処理をされている遺伝子転写産物の同定を利用する手法である。ほとんどの微生物中に存在する「16S rRNA遺伝子」をシーケンスすることで、検体中に存在する微生物種を同定し、その存在比率を推定することができるため、これまで分析が困難とされてきた菌叢(微生物叢:微生物の集団)の解析に適する。中でも腸内細菌叢(腸内フローラ)を構成する腸内細菌は約100兆~1000兆個近く存在すると言われ、腸内フローラの解析等に適する。
【0024】
(次世代シーケンサー(NGS))
「次世代シーケンサー」は、2000年頃に米国で開発されたもので、塩基配列を並行して読み出せるDNA断片の数が、従来のDNAシーケンサーに比べて桁違いに多い機器である。このような機器は、例えば米国のイルミナ(Illumina)社等により開発された。
【0025】
本発明においては、イルミナ株式会社製の次世代シーケンサーとして、例えば、DNAシーケンサー「MiSeqシリーズ」、「NextSeqシリーズ」、「HiSeqシリーズ」等を用いることができるが、その原理や使用方法等については、下記に開示されている。
https://jp.illumina.com/landing/s/metagenome.html
【0026】
(自閉スペクトラム症および/またはてんかんの判定)
本発明においては、上記のように腸内細菌群毎に測定された腸内細菌数を用いて、下記(i)または/および(ii)
(i) 全腸内細菌数に対する、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数の比率
(ii) 1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Aと、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Bとの比率に基づき自閉スペクトラム症および/またはてんかんであるか否かの判定を行う。
【0027】
具体的には、次に示す条件1-1~条件1-5のうち、少なくとも3つを満たす場合に、自閉スペクトラム症および/またはてんかんであると判断することが好ましい。また、次に示す条件1-1~条件1-5のうち、少なくとも4つを満たす場合に、自閉スペクトラム症であると判断することがより好ましい。
【0028】
条件1-1:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ1~5(others、Enterobacterales、Fusobacterium、Clostridium cluster XIXおよびClostridium cluster XVIII)に属する腸内細菌数の比率が0.3%以上である
条件1-2:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ7(Clostridium cluster XI)に属する腸内細菌数の比率が0.1%以上である
条件1-3:グループ8(Clostridium cluster IX)に属する腸内細菌数とグループ9(Clostridium subcluster XIVab)に属する腸内細菌数との比が1:3~1:5または、下記条件1-4が所定の条件を満たす場合には1:7~1:9である
所定の条件とはグループ11~13においてグループ12の腸内細菌数がグループ11とグループ13との腸内細菌数の合計よりも多いことである。
条件1-4:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ10(Clostridium cluster IV)に属する腸内細菌数が5%以上であり、かつ、グループ10(Clostridium cluster IV)に属する腸内細菌数とグループ11~13(Clostridium cluster I&II&III、Clostridium cluster BlautiaおよびEquolifaciens)に属する全腸内細菌数との比が1:0.2~1:2.5である
条件1-5:グループ14(Prevotella)に属する腸内細菌およびグループ15(Bacteroide
s)に属する腸内細菌のうち少なくとも一方が検出されないか、検出されても0.05%
に満たない
【0029】
以下、各条件について説明する。なお、本明細書における各条件(第2~第4の判定方法も含む)において、「検出されない」とは、検出限界を下回ることを意味するものであるが、検出限界の有意性を考慮すると、0.05%未満であることが好ましく、0.03%未満がより好ましく、0.01%未満がより好ましい。
【0030】
また、下記(第2~第4の判定方法も含む)において、「グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループnに属する腸内細菌数の比率」を「グループnに属する腸内細菌の比率」と略記することがある(ただし、nは、1~18のうちから選ばれる、単一のまたは複数の整数を示す)。下記の第2~第4の判定方法や実施例においてもこの略記を用いることがある。
【0031】
(条件1-1)
条件1-1に関して、自閉スペクトラム症でもてんかんでもない場合にはグループ1~5に属する腸内細菌は、ほとんど検出されない傾向となる。一方、グループ1~5に属する腸内細菌数の比率が0.3%以上、好ましくは0.5%以上、より好ましくは1%以上、さらに好ましくは2%以上、特に好ましくは3%以上である場合、自閉スペクトラム症および/またはてんかんであると判断するための条件の1つとして用いることができる。
【0032】
(条件1-2)
条件1-2に関して、自閉スペクトラム症でもてんかんでもない場合にはグループ7に属する腸内細菌は、ほとんど検出されない傾向となる。一方、グループ7に属する腸内細菌数の比率が0.1%以上、好ましくは0.3%以上、より好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは1%以上である場合、自閉スペクトラム症および/またはてんかんであると判断するための条件の1つとして用いることができる。
【0033】
(条件1-3)
条件1-3に関して、自閉スペクトラム症でもてんかんでもない場合にはグループ8に属する腸内細菌数とグループ9に属する腸内細菌数との比が1:4程度となる傾向にある。一方、グループ8に属する腸内細菌数とグループ9に属する腸内細菌数との比が1:3~1:5である場合、または、下記条件4が所定の条件を満たす場合には1:7~1:9である場合、自閉スペクトラム症および/またはてんかんであると判断するための条件の1つとして用いることができる。ここで、条件1に記載したように自閉スペクトラム症および/またはてんかんの場合、グループ1~5に属する腸内細菌が存在し、自然免疫系による対処が行われる。この際、グループ8に属する腸内細菌が消費される。そのため、自閉スペクトラム症および/またはてんかんの場合には、異常がない場合に比べて、相対的にグループ8に属する腸内細菌が少ない傾向となる。
なお、下記条件1-4において、グループ10~13に属する腸内細菌数のうち、グループ12の腸内細菌数がグループ11とグループ13との腸内細菌数の合計よりも多い場合、例えばグループ12に属する腸内細菌数が1:1.05:1~1:3.00:1のように有意に多い場合、自然免疫系腸内細菌数の消費による獲得免疫系腸内細菌群の動員が考えられ、その場合には、グループ8に属する腸内細菌数とグループ9に属する腸内細菌数との比が1:7~1:9である場合に自閉スペクトラム症および/またはてんかんであると判断するための条件の1つとして用いることができる。
【0034】
(条件1-4)
条件1-4に関して、自閉スペクトラム症でもてんかんでもない場合、グループ10に属する腸内細菌数と、グループ11に属する腸内細菌数と、グループ12に属する腸内細菌数と、グループ13に属する腸内細菌数との比が3:1:1:1程度となる傾向にある。即ち、グループ10に属する腸内細菌数とグループ11~13に属する腸内細菌数との比が1:1程度となる傾向にある。一方、グループ10に属する腸内細菌数とグループ11~13に属する腸内細菌数との比が1:0.2~1:2.5、好ましくは1:0.4~1:2にある場合、自閉スペクトラム症および/またはてんかんであると判断するための条件とすることができる。
【0035】
また、上記条件1-3にて記載したように自閉スペクトラム症および/またはてんかんの場合、グループ8に属する腸内細菌が消費され、これを補うために獲得免疫系が使われる。そのため、グループ11~13のうち、1以上の腸内細菌群が増殖する。さらに、これによる免疫暴走を抑制するためにグループ10に属する腸内細菌が有意に増殖する。そのため、グループ10に属する腸内細菌数の比率は、好ましくは8%以上であり、より好ましくは8.5%以上となる。
【0036】
以上から、条件1-4として、グループ10に属する腸内細菌数とグループ11~13に属する腸内細菌数との比が1:0.2~1:2.5、好ましくは1:0.4~1:2にあり、かつ、グループ10に属する腸内細菌数の比率が、好ましくは8%以上であり、より好ましくは8.5%以上である場合、自閉スペクトラム症および/またはてんかんであると判断するための条件の1つとして用いることができる。
【0037】
(条件1-5)
条件1-5に関して、自閉スペクトラム症でもてんかんでもない場合、グループ14に属する腸内細菌およびグループ15に属する腸内細菌がどちらも検出される。一方、自閉スペクトラム症および/またはてんかんの場合、グループ14に属する腸内細菌およびグループ15に属する腸内細菌の少なくとも一方が検出されないか、検出されても0.05%に満たない。ここで、条件1-1~条件1-4を満たす腸内細菌群毎の腸内細菌数の比率・バランスとなる結果、恒常性を維持するために代謝系に偏りが生じる。その結果、糖質代謝の指標となるグループ14に属する腸内細菌の消失、または/および、脂質代謝の指標となるグループ15に属する腸内細菌の消失か、検出されても0.05%に満たない状態が生じる。
【0038】
本発明によれば、自閉スペクトラム症の判定において、判定者による判定のブレを防ぐことができる。また、自閉スペクトラム症と同様に脳神経に以上放電がある場合の疾患としてのてんかんの判定についても精度よく行うことができる。
なお、本発明者の検討によれば、うつの症状を示す場合には、上記条件1-1~条件1-5のうちの少なくとも3つを満たすことはないと考えられるため、自閉スペクトラム症とうつ他の精神性疾患を明確に区別することが可能であると考えられる。
【0039】
(腸内フローラ移植)
上記にて自閉スペクトラム症および/またはてんかんと判定された場合には、所定の腸内細菌群の比率を有する腸内細菌を、自閉スペクトラム症および/またはてんかんと判定された被験者に移植することができる。ここで、腸内フローラ移植は、たとえば、特許第7104435号に記載の方法により行うことができる。
【0040】
腸内フローラ移植を行うことにより、自閉スペクトラム症でもてんかんでもない腸内細菌群の比率(腸内フローラ)に近づけることができ、自閉スペクトラム症および/またはてんかんの症状も改善すると考えられる。
【0041】
(プログラムおよびコンピュータ読み取り可能な記録媒体)
上述の実施の形態において、腸内細菌群毎に測定された腸内細菌数を用いて、下記(i)または/および(ii)
(i) 全腸内細菌数に対する、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数の比率
(ii) 1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Aと、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Bとの比率
に基づき自閉スペクトラム症および/またはてんかんの判定を行う判定プログラムをインターネット等のネットワークを介してダウンロードし、コンピュータに組み込むことによって、上述の判定処理が行うことができるようにコンピュータを機能させるようにしてもよい。ここで、この分析プログラムは、ネットワーク上またはコンピュータ上に記憶されている腸内細菌群毎の腸内細菌数を用いて、自閉スペクトラム症および/またはてんかんの分析に用いてもよい。
具体的には、上記した条件1-1~条件1-5のうち、少なくとも3つを満たす場合、より好ましくは4つを満たす場合に、自閉スペクトラム症および/またはてんかんであると判定するプログラムであることが好ましい。
【0042】
また、当該プログラムはフレキシブルディスク、CD-ROM、DVD、Blu-Ray等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。即ち、コンピュータ読み取り可能な記録媒体から読み取り、コンピュータに組み込むことによって、上述の自閉スペクトラム症の判定を行うことができるようにコンピュータを機能させるようにしてもよい。
【0043】
<急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異>
次に、本発明の第2の判定方法に係る急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異の判定方法について説明する。本発明は、被験者から採取した検体としての糞便中の腸内細菌について、前記腸内細菌が属する腸内細菌群を特定し、前記腸内細菌群毎の腸内細菌数を測定する工程を含み、下記(i)または/および(ii)
(i) 全腸内細菌数に対する、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数の比率
(ii) 1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Aと、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Bとの比率
に基づいて急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異であるか否かの判定を行うものである。
ここで、急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異の具体的な疾患・症状としては、がん、胃潰瘍などの消化管潰瘍全般および急性膵炎などの炎症性疾患等が挙げられる。また、がんについては、ステージ毎の変化について検出し、判定を行ってもよい。
【0044】
本発明においては、急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異の判定に用いる腸内細菌群としては、具体的には上記の第1の判定方法(自閉スペクトラム症および/またはてんかんの判定)に用いる腸内細菌群と同様に、上記したグループ1~18にグループ分けされた腸内細菌群を用いることが好ましい。なお、グループ1~18の特徴等は、上記表1に示したものである。
【0045】
(腸内細菌群の特定および腸内細菌数の測定)
本発明において、被験者から採取した検体としての糞便中の腸内細菌の種類の特定(すなわち、どの腸内細菌群に属するかの特定)および、腸内細菌群毎の腸内細菌数の測定は、遺伝子解析方法により行うことができる。具体的には、上記の第1の判定方法(自閉スペクトラム症および/またはてんかんの判定)において記載した方法を用いることができる。
【0046】
(急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異の判定)
本発明においては、上記のように被験者から採取した検体としての糞便中の腸内細菌について、前記腸内細菌が属する腸内細菌群を特定し、前記腸内細菌群毎の腸内細菌数を測定する工程を含み、下記(i)または/および(ii)
(i) 全腸内細菌数に対する、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数の比率
(ii) 1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Aと、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Bとの比率
に基づいて急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異があるか否かの判定を行う。
【0047】
具体的には、次に示す条件2-1~条件2-5のうち、少なくとも3つを満たす場合に、急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異であると判断することが好ましい。また、次に示す条件2-1~条件2-5のうち、少なくとも4つを満たす場合に、急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異があると判断することがより好ましい。
【0048】
条件2-1:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ4(Clostridium cluster XIX)に属する腸内細菌数の比率が0.2%以上である
条件2-2:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ7(Clostridium cluster XI)に属する腸内細菌数の比率が0.5%以上である
条件2-3:グループ11~13(Clostridium cluster I&II&III、Clostridium cluster BlautiaおよびEquolifaciens)に属する全腸内細菌数に対するグループ12(Clostridium cluster Blautia)に属する腸内細菌数の比率が50%以上である
条件2-4:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ14(Prevotella)に属する腸内細菌数が1%以下である、および/または、グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ15(Bacteroides)に属する腸内細菌数が30%以上である
条件2-5:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ16(Akkermansia)に属する腸内細菌数が0.05%以上である
【0049】
以下、各条件について説明する。
(条件2-1)
条件2-1に関して、急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異である場合には、グループ4に属する腸内細菌数が増加する傾向となる。例えば、放射線治療により放射性耐性を有するとされるDeinococcus Radioduransが増加する。また、一部抗がん剤によっても増加するものと考えられる。グループ4に属する腸内細菌の比率が0.2%以上、好ましくは0.3%以上、より好ましくは0.5%以上である場合、急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異があると判断するための条件の1つとして用いることができる。
【0050】
(条件2-2)
条件2-2に関して、急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異である場合には、炎症によりグループ7に属する腸内細菌数が増加する傾向となる。例えば、分泌腺がんにおいて増加するケースが非常に多くなる。グループ7に属する腸内細菌の比率が0.5%以上、好ましくは0.8%以上、より好ましくは1%以上である場合、急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異があると判断するための条件の1つとして用いることができる。
【0051】
(条件2-3)
条件2-3に関して、急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異である場合には、グループ11~13のそれぞれに属する腸内細菌数がアンバランスになる傾向となる。具体的には、獲得免疫系腸内細菌群であるグループ11~13に属する腸内細菌の中ではグループ12に属する腸内細菌の数が増加する傾向となる。グループ11~13に属する全腸内細菌数に対するグループ12に属する腸内細菌数の比率が50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上である場合、急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異があると判断するための条件の1つとして用いることができる。
【0052】
(条件2-4)
条件2-4に関して、急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異である場合には、例えば、がん細胞へのエネルギーとしてのブドウ糖供給を阻止するためにグループ14に属する腸内細菌数が減少する傾向となる結果、検出されない、または、消失するケースもある。また、ブドウ糖供給に代えて、蓄積した脂肪をエネルギー源とするためにグループ15に属する腸内細菌数が増加する傾向となる。グループ14に属する腸内細菌の比率が1%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは検出限界(例えば0.05%)以下である場合、および/または、グループ15に属する腸内細菌の比率が30%以上、好ましくは33%以上、より好ましくは35%以上である場合、急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異があると判断するための条件の1つとして用いることができる。
【0053】
(条件2-5)
条件2-5に関して、急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異である場合には、免疫の最後の砦として、グループ16に属する腸内細菌が出現する傾向となる。グループ16に属する腸内細菌の比率が検出限界(例えば好ましくは0.05%、より好ましくは0.03%、より好ましくは0.01%)以上、好ましくは1%以上、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは5%以上である場合、急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異があると判断するための条件の1つとして用いることができる。
【0054】
本発明の第2の判定方法によれば、糞便を用いて急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異の判定を精度よく行うことができる。
【0055】
(腸内フローラ移植)
上記にて急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異があると判定された場合には、所定の腸内細菌群の比率を有する腸内細菌を、急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異があると判定された被験者に移植することができる。ここで、腸内フローラ移植は、たとえば、特許第7104435号に記載の方法により行うことができる。
【0056】
腸内フローラ移植を行うことにより、急性炎症も組織・細胞の遺伝子変異もない腸内細菌群の比率(腸内フローラ)に近づけることができ、急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異に関する症状も改善すると考えられる。
【0057】
(プログラムおよびコンピュータ読み取り可能な記録媒体)
上述の実施の形態において、腸内細菌群毎に測定された腸内細菌数を用いて、下記(i)または/および(ii)
(i) 全腸内細菌数に対する、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数の比率
(ii) 1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Aと、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Bとの比率に基づき急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異の判定を行う判定プログラムをインターネット等のネットワークを介してダウンロードし、コンピュータに組み込むことによって、上述の判定処理が行うことができるようにコンピュータを機能させるようにしてもよい。ここで、この分析プログラムは、ネットワーク上またはコンピュータ上に記憶されている腸内細菌群毎の腸内細菌数を用いて、急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異の分析に用いてもよい。
具体的には、上記した条件2-1~条件2-5のうち、少なくとも3つを満たす場合、より好ましくは4つを満たす場合に、急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異があると判定するプログラムであることが好ましい。
【0058】
また、当該プログラムはフレキシブルディスク、CD-ROM、DVD、Blu-Ray等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。即ち、コンピュータ読み取り可能な記録媒体から読み取り、コンピュータに組み込むことによって、上述の急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異の判定を行うことができるようにコンピュータを機能させるようにしてもよい。
【0059】
<アレルギーおよび/またはアトピー>
次に、本発明の第3の判定方法に係るアレルギーおよび/またはアトピー判定方法について説明する。本発明は、被験者から採取した検体としての糞便中の腸内細菌について、前記腸内細菌が属する腸内細菌群を特定し、前記腸内細菌群毎の腸内細菌数を測定する工程を含み、下記(i)または/および(ii)
(i) 全腸内細菌数に対する、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数の比率
(ii) 1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Aと、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Bとの比率
に基づいてアレルギーおよび/またはアトピーであるか否かの判定を行うものである。
【0060】
本発明においては、アレルギーおよび/またはアトピーの判定に用いる腸内細菌群としては、具体的には上記の第1の判定方法(自閉スペクトラム症および/またはてんかんの判定)に用いる腸内細菌群と同様に、上記したグループ1~18にグループ分けされた腸内細菌群を用いることが好ましい。なお、グループ1~18の特徴等は、上記表1に示したものである。
【0061】
(腸内細菌群の特定および腸内細菌数の測定)
本発明において、被験者から採取した検体としての糞便中の腸内細菌の種類の特定(すなわち、どの腸内細菌群に属するかの特定)および、腸内細菌群毎の腸内細菌数の測定は、遺伝子解析方法により行うことができる。具体的には、上記の第1の判定方法(自閉スペクトラム症および/またはてんかんの判定)において記載した方法を用いることができる。
【0062】
(アレルギーおよび/またはアトピー)
本発明においては、上記のように被験者から採取した検体としての糞便中の腸内細菌について、前記腸内細菌が属する腸内細菌群を特定し、前記腸内細菌群毎の腸内細菌数を測定する工程を含み、下記(i)または/および(ii)
(i) 全腸内細菌数に対する、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数の比率
(ii) 1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Aと、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Bとの比率
に基づいてアレルギーおよび/またはアトピーであるか否かの判定を行う。
【0063】
具体的には、次に示す条件3-1~条件3-5のうち、少なくとも3つを満たす場合に、アレルギーおよび/またはアトピーであると判断することが好ましい。また、次に示す条件3-1~条件3-5のうち、少なくとも4つを満たす場合に、アレルギーおよび/またはアトピーであると判断することがより好ましい。
【0064】
条件3-1:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ2~8(Enterobacterales、Fusobacterium、Clostridium cluster XIX、Clostridium cluster XVIII、Clostridium cluster XV、Clostridium cluster XIおよびClostridium cluster IX)に属する全腸内細菌数の比率が7%以下である、および/または、グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ2(Enterobacterales)に属する腸内細菌数の比率が0.3%以上である
条件3-2:グループ8および9(Clostridium cluster IXおよびClostridium subcluster XIVab)に属する全腸内細菌数に対するグループ8(Clostridium cluster IX)に属する腸内細菌数の比率が50%以上である
条件3-3:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ7(Clostridium cluster XI)に属する腸内細菌数の比率が0.3%以上である
条件3-4:グループ10~13(Clostridium cluster IV、Clostridium cluster I&II&III、Clostridium cluster BlautiaおよびEquolifaciens)に属する全腸内細菌数に対するグループ10(Clostridium cluster IV)に属する腸内細菌数が60%以上である、および/または、グループ11~13(Clostridium cluster I&II&III、Clostridium cluster BlautiaおよびEquolifaciens)に属する全腸内細菌数に対するグループ12(Clostridium cluster Blautia)に属する腸内細菌数の比率が50%以上である
条件3-5:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ14(Prevotella)に属する腸内細菌数が1%以下である
【0065】
条件3-1に関して、アレルギーおよび/またはアトピーである場合には、自然免疫系腸内細菌群であるグループ2~8に属する腸内細菌が消費され、減少する傾向となる。これらのなかで、グループ2に属する腸内細菌数の比率は相対的に増加する傾向となる。グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ2~8に属する全腸内細菌の比率が7%以下、好ましくは6%以下、より好ましくは5%以下である場合、および/または、グループ2に属する腸内細菌の比率が0.3%以上、好ましくは0.4%以上、より好ましくは0.5%以上である場合、アレルギーおよび/またはアトピーであると判断するための条件の1つとして用いることができる。
【0066】
条件3-2に関して、アレルギーおよび/またはアトピーではない場合にはグループ8に属する腸内細菌数とグループ9に属する腸内細菌数との比が1:4程度となる傾向にある。一方、アレルギーおよび/またはアトピーである場合には、グループ8に属する腸内細菌がグループ9に属する腸内細菌よりも相対的に増加する傾向となる。グループ8および9に属する全腸内細菌数に対するグループ8に属する腸内細菌数の比率が50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上である場合、アレルギーおよび/またはアトピーであると判断するための条件の1つとして用いることができる。
【0067】
条件3-3に関して、アレルギーおよび/またはアトピーである場合には、炎症によりグループ7に属する腸内細菌数が増加する傾向となる。グループ7に属する腸内細菌の比率が0.3%以上、好ましくは0.5%以上、より好ましくは1%以上である場合、アレルギーおよび/またはアトピーであると判断するための条件の1つとして用いることができる。
【0068】
条件3-4に関して、アレルギーおよび/またはアトピーである場合には、免疫寛容さが亢進するため、グループ10~13に属する腸内細菌のうち、グループ10に属する腸内細菌の数が増加する傾向となる。また、脆弱になった皮膚バリアを補うために獲得免疫系腸内細菌群であるグループ11~13に属する腸内細菌が減少したり消失したりはしないが、グループ11~13のそれぞれに属する腸内細菌数がアンバランスになる傾向となる。具体的には、獲得免疫系腸内細菌群であるグループ11~13に属する腸内細菌の中ではグループ12および13に属する腸内細菌の数が有意に増える傾向にあり、特にグループ12に属する腸内細菌の数が増加する傾向となる。グループ10~13に属する全腸内細菌数に対するグループ10に属する腸内細菌数が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上である場合、および/またはグループ11~13に属する全腸内細菌数に対するグループ12に属する腸内細菌数の比率が50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上である場合、アレルギーおよび/またはアトピーであると判断するための条件の1つとして用いることができる。
【0069】
条件3-5に関して、アレルギーおよび/またはアトピーである場合には、脂質代謝が糖質代謝よりも優位となる結果、グループ14に属する腸内細菌数が減少する傾向となる。グループ14に属する腸内細菌の比率が1%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは検出限界(例えば好ましくは0.05%、より好ましくは0.03%、より好ましくは0.01%)以下である場合、アレルギーおよび/またはアトピーであると判断するための条件の1つとして用いることができる。
【0070】
本発明の第3の判定方法によれば、糞便を用いてアレルギーおよび/またはアトピーの判定を精度よく行うことができる。
【0071】
(腸内フローラ移植)
上記にてアレルギーおよび/またはアトピーであると判定された場合には、所定の腸内細菌群の比率を有する腸内細菌を、アレルギーおよび/またはアトピーであると判定された被験者に移植することができる。ここで、腸内フローラ移植は、たとえば、特許第7104435号に記載の方法により行うことができる。
【0072】
腸内フローラ移植を行うことにより、アレルギーおよび/またはアトピーではない腸内細菌群の比率(腸内フローラ)に近づけることができ、アレルギーおよび/またはアトピーの症状も改善すると考えられる。
【0073】
(プログラムおよびコンピュータ読み取り可能な記録媒体)
上述の実施の形態において、腸内細菌群毎に測定された腸内細菌数を用いて、下記(i)または/および(ii)
(i) 全腸内細菌数に対する、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数の比率
(ii) 1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Aと、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Bとの比率
に基づきアレルギーおよび/またはアトピーの判定を行う判定プログラムをインターネット等のネットワークを介してダウンロードし、コンピュータに組み込むことによって、上述の判定処理が行うことができるようにコンピュータを機能させるようにしてもよい。ここで、この分析プログラムは、ネットワーク上またはコンピュータ上に記憶されている腸内細菌群毎の腸内細菌数を用いて、アレルギーおよび/またはアトピーの分析に用いてもよい。
具体的には、上記した条件3-1~条件3-5のうち、少なくとも3つを満たす場合、より好ましくは4つを満たす場合に、アレルギーおよび/またはアトピーであると判定するプログラムであることが好ましい。
【0074】
また、当該プログラムはフレキシブルディスク、CD-ROM、DVD、Blu-Ray等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。即ち、コンピュータ読み取り可能な記録媒体から読み取り、コンピュータに組み込むことによって、上述のアレルギーおよび/またはアトピーの判定を行うことができるようにコンピュータを機能させるようにしてもよい。
【0075】
<自己免疫系異常>
次に、本発明の第4の判定方法に係る自己免疫系異常の判定方法について説明する。本発明は、被験者から採取した検体としての糞便中の腸内細菌について、前記腸内細菌が属する腸内細菌群を特定し、前記腸内細菌群毎の腸内細菌数を測定する工程を含み、下記(i)または/および(ii)
(i) 全腸内細菌数に対する、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数の比率
(ii) 1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Aと、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Bとの比率
に基づいて自己免疫系異常があるか否かの判定を行うものである。
ここで、自己免疫系異常に係る具体的な疾患・症状としては、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群、リウマチ、クローン病等が挙げられる。
【0076】
本発明においては、自己免疫系異常の判定に用いる腸内細菌群としては、具体的には上記の第1の判定方法(自閉スペクトラム症および/またはてんかんの判定)に用いる腸内細菌群と同様に、上記したグループ1~18にグループ分けされた腸内細菌群を用いることが好ましい。なお、グループ1~18の特徴等は、上記表1に示したものである。
【0077】
(腸内細菌群の特定および腸内細菌数の測定)
本発明において、被験者から採取した検体としての糞便中の腸内細菌の種類の特定(すなわち、どの腸内細菌群に属するかの特定)および、腸内細菌群毎の腸内細菌数の測定は、遺伝子解析方法により行うことができる。具体的には、上記の第1の判定方法(自閉スペクトラム症および/またはてんかんの判定)において記載した方法を用いることができる。
【0078】
(自己免疫系異常)
本発明においては、上記のように被験者から採取した検体としての糞便中の腸内細菌について、前記腸内細菌が属する腸内細菌群を特定し、前記腸内細菌群毎の腸内細菌数を測定する工程を含み、下記(i)または/および(ii)
(i) 全腸内細菌数に対する、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数の比率
(ii) 1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Aと、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Bとの比率
に基づいて自己免疫系異常があるか否かの判定を行う。
【0079】
具体的には、次に示す条件4-1~条件4-5のうち、少なくとも3つを満たす場合に、自己免疫系異常があると判断することが好ましい。また、次に示す条件4-1~条件4-5のうち、少なくとも4つを満たす場合に、自己免疫系異常があると判断することがより好ましい。
【0080】
条件4-1:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ2~8(Enterobacterales、Fusobacterium、Clostridium cluster XIX、Clostridium cluster XVIII、Clostridium cluster XV、Clostridium cluster XIおよびClostridium cluster IX)に属する全腸内細菌数の比率が10%以下である、および/または、グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ2(Enterobacterales)に属する全腸内細菌数の比率が0.5%以上である
条件4-2:グループ8および9(Clostridium cluster IXおよびClostridium subcluster XIVab)に属する全腸内細菌数に対するグループ9(Clostridium subcluster XIVab)に属する腸内細菌数の比率が90%以上である
条件4-3:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するループ7(Clostridium cluster XI)に属する腸内細菌数の比率が1%以上である
条件4-4:グループ10~13(Clostridium cluster IV、Clostridium cluster I&II&III、Clostridium cluster BlautiaおよびEquolifaciens)に属する全腸内細菌数に対するグループ10(Clostridium cluster IV)に属する腸内細菌数が40%以下である、および/または、グループ11~13(Clostridium cluster I&II&III、Clostridium cluster BlautiaおよびEquolifaciens)に属する全腸内細菌数に対するグループ12(Clostridium cluster Blautia)に属する腸内細菌数の比率が50%以上である
条件4-5:グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ14(Prevotella)に属する腸内細菌数が1%以下である、および/または、グループ14および15(PrevotellaおよびBacteroides)に属する全腸内細菌数に対するグループ15(Bacteroides)に属する腸内細菌数の比率が90%以上である
【0081】
条件4-1に関して、自己免疫系異常がある場合には、自然免疫系腸内細菌群であるグループ2~8に属する腸内細菌は、グループ2に属する腸内細菌を除いて、ほとんど検出できない傾向となる。グループ1~18に属する全腸内細菌数に対するグループ2~8に属する全腸内細菌の比率が10%以下、好ましくは9%以下、より好ましくは7%以下である場合、および/または、グループ2に属する腸内細菌の比率が0.2%以上、好ましくは0.5%以上、より好ましくは0.8%以上である場合、自己免疫系異常があると判断するための条件の1つとして用いることができる。
【0082】
条件4-2に関して、自己免疫系異常ではない場合にはグループ8に属する腸内細菌数とグループ9に属する腸内細菌数との比が1:4程度となる傾向にある。一方、自己免疫系異常がある場合には、グループ9に属する腸内細菌がグループ8に属する腸内細菌よりも相対的に増加する傾向となる。グループ8および9に属する全腸内細菌数に対するグループ9に属する腸内細菌数の比率が90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上である場合、自己免疫系異常があると判断するための条件の1つとして用いることができる。
【0083】
条件4-3に関して、自己免疫系異常がある場合には、炎症によりグループ7に属する腸内細菌数が増加する傾向となる。グループ7に属する腸内細菌の比率が1%以上、好ましくは3%以上、より好ましくは5%以上である場合、自己免疫系異常があると判断するための条件の1つとして用いることができる。
【0084】
条件4-4に関して、自己免疫系異常がある場合には、免疫寛容さが不足するため、グループ10~13に属する腸内細菌のうち、グループ10に属する腸内細菌の数が減少する傾向となる。また、グループ11~13のそれぞれに属する腸内細菌数がアンバランスになる傾向となる。具体的には、獲得免疫系腸内細菌群であるグループ11~13に属する腸内細菌の中ではグループ12に属する腸内細菌の数が増加する傾向となる。グループ10~13に属する全腸内細菌数に対するグループ10に属する腸内細菌数が40%以下、好ましくは45%以下、より好ましくは40%以下である場合、および/またはグループ11~13に属する全腸内細菌数に対するグループ12に属する腸内細菌数の比率が50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上である場合、自己免疫系異常があると判断するための条件の1つとして用いることができる。
【0085】
条件4-5に関して、自己免疫系異常がある場合には、ブドウ糖代謝を阻止する結果、グループ14に属する腸内細菌の数が減少する傾向となる。また、蓄積脂肪をエネルギー源とするため、グループ15に属する腸内細菌の数が増加する傾向となる。グループ14に属する腸内細菌の比率が1%以下、好ましくは0.1%以下、より好ましくは検出限界(例えば0.05%)以下である場合、および/または、グループ14および15に属する全腸内細菌数に対するグループ15に属する腸内細菌の比率が90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上である場合、自己免疫系異常があると判断するための条件の1つとして用いることができる。
【0086】
本発明の第4の判定方法によれば、糞便を用いて自己免疫系異常の判定を精度よく行うことができる。
【0087】
(腸内フローラ移植)
上記にて自己免疫系異常があると判定された場合には、所定の腸内細菌群の比率を有する腸内細菌を、自己免疫系異常があると判定された被験者に移植することができる。ここで、腸内フローラ移植は、たとえば、特許第7104435号に記載の方法により行うことができる。
【0088】
腸内フローラ移植を行うことにより、自己免疫系異常ではない腸内細菌群の比率(腸内フローラ)に近づけることができ、自己免疫系異常の症状も改善すると考えられる。
【0089】
(プログラムおよびコンピュータ読み取り可能な記録媒体)
上述の実施の形態において、腸内細菌群毎に測定された腸内細菌数を用いて、下記(i)または/および(ii)
(i) 全腸内細菌数に対する、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数の比率
(ii) 1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Aと、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Bとの比率
に基づきアレルギーおよび/またはアトピーの判定を行う判定プログラムをインターネット等のネットワークを介してダウンロードし、コンピュータに組み込むことによって、上述の判定処理が行うことができるようにコンピュータを機能させるようにしてもよい。ここで、この分析プログラムは、ネットワーク上またはコンピュータ上に記憶されている腸内細菌群毎の腸内細菌数を用いて、自己免疫系異常の分析に用いてもよい。
具体的には、上記した条件4-1~条件4-5のうち、少なくとも3つを満たす場合、より好ましくは4つを満たす場合に、自己免疫系異常があると判定するプログラムであることが好ましい。
【0090】
また、当該プログラムはフレキシブルディスク、CD-ROM、DVD、Blu-Ray等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。即ち、コンピュータ読み取り可能な記録媒体から読み取り、コンピュータに組み込むことによって、上述の自己免疫系異常の判定を行うことができるようにコンピュータを機能させるようにしてもよい。
【実施例】
【0091】
以下の実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
腸内細菌(本発明においては、上述のように微生物をも含む概念である。)の種類の特定(すなわち、いずれの腸内細菌群に属するかの特定)および腸内細菌群毎の腸内細菌数の測定は以下のように行った。
【0092】
(腸内細菌の種類の特定および腸内細菌群毎の腸内細菌数の測定)
腸内細菌の種類の特定および腸内細菌の数の測定は、上述の「リボソームプロファイリング(16SリボソームRNA(rRNA)シーケンス)」と、公知の「次世代シーケンサー(NextGenerationSequencer:NGS)」を組み合わせて用いることにより行った。具体的には、「MiSeqシリーズ(イルミナ社製)」を用いた。
【0093】
<自閉スペクトラム症および/またはてんかん>
得られた測定結果をもとに、上記において示した条件1-1~条件1-5に基づき、自閉スペクトラム症および/またはてんかんの判定を行った。
以下、被験者A~Jについて説明する。被験者A~Jは3~11歳の男女である。
【0094】
(実施例1:被験者A)
被験者Aについて、腸内細菌の種類の特定および腸内細菌の数の測定を行い、腸内細菌群毎の存在比率を求めた。結果を
図1に示す。測定結果から以下のことが示された。
・条件1-1に関して、グループ1~5に属する腸内細菌数の比率は9.5%であった。
・条件1-2に関して、グループ7に属する腸内細菌数の比率が6.0%であった。
・条件1-3に関して、グループ8に属する腸内細菌数の比率は6.0%、グループ9に属する腸内細菌数は17.0%であった。すなわち、グループ8に属する腸内細菌数とグループ9に属する腸内細菌数との比は1:2.8であった。
・条件1-4に関して、グループ10に属する腸内細菌数の比率は21.0%、グループ11に属する腸内細菌数の比率は1.0%、グループ12に属する腸内細菌数の比率は6.5%、グループ13に属する腸内細菌数の比率は2.0%であった。また、グループ10に属する腸内細菌数とグループ11~13に属する全腸内細菌数との比は、1:0.45であった。
・条件1-5に関して、グループ14に属する腸内細菌は検出されず、グループ15に属する腸内細菌数の比率は12.0%であった。
以上から、条件1-1~条件1-5のうち少なくとも3つの条件を満たし、被験者Aは自閉スペクトラム症および/またはてんかんであると判定することができた。
【0095】
なお、被験者Aについて心理検査(SRS-2 対人応答性尺度)を行ったところ、T得点(総合得点)は、74点であった。この心理検査においては、T得点が60点以上65点未満では軽度の自閉スペクトラム症、65点以上75点未満では中等度の自閉スペクトラム症、75点以上では重度の自閉スペクトラム症と評価することができる。したがって、被験者Aは中程度の自閉スペクトラム症と評価することができる。
【0096】
また、Gazefinder(登録商標、JVCケンウッド社製)による特定のエリアへの注視率によって、自閉スペクトラム症の重症度に関する変化量を評価することができる。
なお、Gazefinder(登録商標、JVCケンウッド社製)は、「社会的コミュニケーションの障害」及び「限定した興味と反復行動に関連する症状」を含む中核症状の重症度を客観的・定量的に示すものである。
【0097】
(実施例2:被験者B)
被験者Bについて、腸内細菌の種類の特定および腸内細菌の数の測定を行い、腸内細菌群毎の存在比率を求めた。結果を
図2に示す。測定結果から以下のことが示された。
・条件1-1に関して、グループ1~5に属する腸内細菌数の比率は9.0%であった。
・条件1-2に関して、グループ7に属する腸内細菌数の比率が3.0%であった。
・条件1-3に関して、グループ8に属する腸内細菌数の比率は4.0%、グループ9に属する腸内細菌数は12.0%であった。すなわち、グループ8に属する腸内細菌数とグループ9に属する腸内細菌数との比は1:3であった。
・条件1-4に関して、グループ10に属する腸内細菌数の比率は8.5%、グループ11に属する腸内細菌数の比率は0.5%、グループ12に属する腸内細菌数の比率は16.0%、グループ13に属する腸内細菌数の比率は1.0%であった。また、グループ10に属する腸内細菌数とグループ11~13に属する全腸内細菌数との比は、1:1.95であった。
・条件1-5に関して、グループ14に属する腸内細菌は検出されず、グループ15に属する腸内細菌数の比率は31.5%であった。
以上から、条件1-1~条件1-5のうち少なくとも3つの条件を満たし、被験者Bは自閉スペクトラム症および/またはてんかんであると判定することができた。
【0098】
なお、被験者Bについて心理検査(SRS-2 対人応答性尺度)を行ったところ、T得点(総合得点)は、72点であった。したがって、「被験者A」の項目にて説明した基準により、心理検査において被験者Bは中程度の自閉スペクトラム症と評価することができる。
【0099】
また、Gazefinder(登録商標、JVCケンウッド社製)による特定のエリアへの注視率によって、自閉スペクトラム症の重症度に関する変化量を評価することができる。
【0100】
(実施例3:被験者C)
被験者Cについて、腸内細菌の種類の特定および腸内細菌の数の測定を行い、腸内細菌群毎の存在比率を求めた。結果を
図3に示す。測定結果から以下のことが示された。
・条件1-1に関して、グループ1~5に属する腸内細菌数の比率は9.0%であった。
・条件1-2に関して、グループ7に属する腸内細菌数の比率が2.5%であった。
・条件1-3に関して、グループ8に属する腸内細菌数の比率は15.0%、グループ9に属する腸内細菌数は11.0%であった。すなわち、グループ8に属する腸内細菌数とグループ9に属する腸内細菌数との比は1:0.73であった。
・条件1-4に関して、グループ10に属する腸内細菌数の比率は9.0%、グループ11に属する腸内細菌数の比率は0.2%、グループ12に属する腸内細菌数の比率は16.0%、グループ13に属する腸内細菌数の比率は0.5%であった。また、グループ10に属する腸内細菌数とグループ11~13に属する全腸内細菌数との比は、1:1.86であった。
・条件1-5に関して、グループ14に属する腸内細菌は検出されず、グループ15に属する腸内細菌数の比率は24.0%であった。
以上から、条件1-1~条件1-5のうち少なくとも3つの条件を満たし、被験者Cは自閉スペクトラム症および/またはてんかんであると判定することができた。
【0101】
なお、被験者Cについて心理検査(SRS-2 対人応答性尺度)を行ったところ、T得点(総合得点)は、90点であった。したがって、「被験者A」の項目にて説明した基準により、心理検査において被験者Cは重度の自閉スペクトラム症と評価することができる。
【0102】
また、Gazefinder(登録商標、JVCケンウッド社製)による特定のエリアへの注視率によって、自閉スペクトラム症の重症度に関する変化量を評価することができる。
【0103】
(実施例4:被験者D)
被験者Dについて、腸内細菌の種類の特定および腸内細菌の数の測定を行い、腸内細菌群毎の存在比率を求めた。結果を
図4に示す。測定結果から以下のことが示された。
・条件1-1に関して、グループ1~5に属する腸内細菌数の比率は5.0%であった。
・条件1-2に関して、グループ7に属する腸内細菌数の比率が0.6%であった。
・条件1-3に関して、グループ8に属する腸内細菌数の比率は10.6%、グループ9に属する腸内細菌数は18.0%であった。すなわち、グループ8に属する腸内細菌数とグループ9に属する腸内細菌数との比は1:1.70であった。
・条件1-4に関して、グループ10に属する腸内細菌数の比率は9.9%、グループ11に属する腸内細菌数の比率は0%、グループ12に属する腸内細菌数の比率は4.3%、グループ13に属する腸内細菌数の比率は0.6%であった。また、グループ10に属する腸内細菌数とグループ11~13に属する全腸内細菌数との比は、1:0.49であった。
・条件1-5に関して、グループ14に属する腸内細菌の比率は0%、グループ15に属する腸内細菌数の比率は37.0%であった。
以上から、条件1-1~条件1-5のうち少なくとも3つの条件を満たし、被験者Dは自閉スペクトラム症および/またはてんかんであると判定することができた。
【0104】
なお、被験者Dについて心理検査(SRS-2 対人応答性尺度)を行ったところ、T得点(総合得点)は、83点であった。したがって、「被験者A」の項目にて説明した基準により、心理検査において被験者Dは重度の自閉スペクトラム症と評価することができる。
【0105】
また、Gazefinder(登録商標、JVCケンウッド社製)による特定のエリアへの注視率によって、自閉スペクトラム症の重症度に関する変化量を評価することができる。
【0106】
(実施例5:被験者E)
被験者Eについて、腸内細菌の種類の特定および腸内細菌の数の測定を行い、腸内細菌群毎の存在比率を求めた。結果を
図5に示す。測定結果から以下のことが示された。
・条件1-1に関して、グループ1~5に属する腸内細菌数の比率は3.6%であった。
・条件1-2に関して、グループ7に属する腸内細菌数の比率は0.6%であった。
・条件1-3に関して、グループ8に属する腸内細菌数の比率は4.2%、グループ9に属する腸内細菌数は22.3%であった。すなわち、グループ8に属する腸内細菌数とグループ9に属する腸内細菌数との比は1:5.31であった。
・条件1-4に関して、グループ10に属する腸内細菌数の比率は21.7%、グループ11に属する腸内細菌数の比率は0%、グループ12に属する腸内細菌数の比率は4.2%、グループ13に属する腸内細菌数の比率は2.4%であった。また、グループ10に属する腸内細菌数とグループ11~13に属する全腸内細菌数との比は、1:0.30であった。
・条件1-5に関して、グループ14に属する腸内細菌の比率は1.8%、グループ15に属する腸内細菌数の比率は22.9%であった。
以上から、条件1-1~条件1-5のうち少なくとも3つの条件を満たし、被験者Eは自閉スペクトラム症および/またはてんかんであると判定することができた。
【0107】
なお、被験者Eについて心理検査(SRS-2 対人応答性尺度)を行ったところ、T得点(総合得点)は、90点であった。したがって、「被験者A」の項目にて説明した基準により、心理検査において被験者Eは重度の自閉スペクトラム症と評価することができる。
【0108】
また、Gazefinder(登録商標、JVCケンウッド社製)による特定のエリアへの注視率によって、自閉スペクトラム症の重症度に関する変化量を評価することができる。
【0109】
(実施例6:被験者F)
被験者Fについて、腸内細菌の種類の特定および腸内細菌の数の測定を行い、腸内細菌群毎の存在比率を求めた。結果を
図6に示す。測定結果から以下のことが示された。
・条件1-1に関して、グループ1~5に属する腸内細菌数の比率は3.54%であった。
・条件1-2に関して、グループ7に属する腸内細菌数の比率は2.15%であった。
・条件1-3に関して、グループ8に属する腸内細菌数の比率は0.55%、グループ9に属する腸内細菌数は12.94%であった。すなわち、グループ8に属する腸内細菌数とグループ9に属する腸内細菌数との比は1:23.5であった。
・条件1-4に関して、グループ10に属する腸内細菌数の比率は16.2%、グループ11に属する腸内細菌数の比率は0.11%、グループ12に属する腸内細菌数の比率は3.15%、グループ13に属する腸内細菌数の比率は0.96%であった。また、グループ10に属する腸内細菌数とグループ11~13に属する全腸内細菌数との比は、1:0.26であった。
・条件1-5に関して、グループ14に属する腸内細菌の比率は0%、グループ15に属する腸内細菌数の比率は18.42%であった。
以上から、条件1-1~条件1-5のうち少なくとも3つの条件を満たし、被験者Fは自閉スペクトラム症であると判定することができた。
【0110】
(実施例7:被験者G)
被験者Gについて、腸内細菌の種類の特定および腸内細菌の数の測定を行い、腸内細菌群毎の存在比率を求めた。結果を
図7に示す。測定結果から以下のことが示された。
・条件1-1に関して、グループ1~5に属する腸内細菌数の比率は1.25%であった。
・条件1-2に関して、グループ7に属する腸内細菌数の比率は3.56%であった。
・条件1-3に関して、グループ8に属する腸内細菌数の比率は1.69%、グループ9に属する腸内細菌数は23.1%であった。すなわち、グループ8に属する腸内細菌数とグループ9に属する腸内細菌数との比は1:13.7であった。
・条件1-4に関して、グループ10に属する腸内細菌数の比率は11.6%、グループ11に属する腸内細菌数の比率は0.02%、グループ12に属する腸内細菌数の比率は12.95%、グループ13に属する腸内細菌数の比率は3.51%であった。また、グループ10に属する腸内細菌数とグループ11~13に属する全腸内細菌数との比は、1:1.42であった。
・条件1-5に関して、グループ14に属する腸内細菌の比率は0%、グループ15に属する腸内細菌数の比率は18.7%であった。
以上から、条件1-1~条件1-5のうち少なくとも3つの条件を満たし、被験者Gは自閉スペクトラム症であると判定することができた。
【0111】
(実施例8:被験者H)
自閉スペクトラム症およびてんかんの所見がある被験者Hについて、腸内細菌の種類の特定および腸内細菌の数の測定を行い、腸内細菌群毎の存在比率を求めた。結果を
図8に示す。測定結果から以下のことが示された。
・条件1-1に関して、グループ1~5に属する腸内細菌数の比率は2.47%であった。
・条件1-2に関して、グループ7に属する腸内細菌数の比率は5.60%であった。
・条件1-3に関して、グループ8に属する腸内細菌数の比率は1.90%、グループ9に属する腸内細菌数は24.23%であった。すなわち、グループ8に属する腸内細菌数とグループ9に属する腸内細菌数との比は1:12.8であった。
・条件1-4に関して、グループ10に属する腸内細菌数の比率は16.1%、グループ11に属する腸内細菌数の比率は0.51%、グループ12に属する腸内細菌数の比率は5.30%、グループ13に属する腸内細菌数の比率は4.04%であった。また、グループ10に属する腸内細菌数とグループ11~13に属する全腸内細菌数との比は、1:0.61であった。
・条件1-5に関して、グループ14に属する腸内細菌の比率は0.06%、グループ15に属する腸内細菌数の比率は7.58%であった。
以上から、条件1-1~条件1-5のうち少なくとも3つの条件を満たし、被験者Hは自閉スペクトラム症および/またはてんかんであると判定することができた。
なお、被験者Hは、医師による所見では自閉スペクトラム症およびてんかんと診断されている。
【0112】
(実施例9:被験者I)
被験者Iについて、腸内細菌の種類の特定および腸内細菌の数の測定を行い、腸内細菌群毎の存在比率を求めた。結果を
図9に示す。測定結果から以下のことが示された。
・条件1-1に関して、グループ1~5に属する腸内細菌数の比率は0.57%であった。
・条件1-2に関して、グループ7に属する腸内細菌数の比率は0.46%であった。
・条件1-3に関して、グループ8に属する腸内細菌数の比率は7.83%、グループ9に属する腸内細菌数は28.53%であった。すなわち、グループ8に属する腸内細菌数とグループ9に属する腸内細菌数との比は1:3.64であった。
・条件1-4に関して、グループ10に属する腸内細菌数の比率は24.09%、グループ11に属する腸内細菌数の比率は0.00%、グループ12に属する腸内細菌数の比率は6.66%、グループ13に属する腸内細菌数の比率は0.84%であった。また、グループ10に属する腸内細菌数とグループ11~13に属する全腸内細菌数との比は、1:0.31であった。
・条件1-5に関して、グループ14に属する腸内細菌の比率は0.00%、グループ15に属する腸内細菌数の比率は20.28%であった。
以上から、条件1-1~条件1-5のうち少なくとも3つの条件を満たし、被験者Iは自閉スペクトラム症および/またはてんかんであると判定することができた。
なお、被験者Iは、医師による所見では自閉スペクトラム症およびてんかんと診断されている。
【0113】
(実施例10:被験者J)
被験者Jについて、腸内細菌の種類の特定および腸内細菌の数の測定を行い、腸内細菌群毎の存在比率を求めた。結果を
図10に示す。測定結果から以下のことが示された。
・条件1-1に関して、グループ1~5に属する腸内細菌数の比率は2.3%であった。
・条件1-2に関して、グループ7に属する腸内細菌数の比率が0.4%であった。
・条件1-3に関して、グループ8に属する腸内細菌数の比率は0.4%、グループ9に属する腸内細菌数は26.7%であった。すなわち、グループ8に属する腸内細菌数とグループ9に属する腸内細菌数との比は1:66.8であった。
・条件1-4に関して、グループ10に属する腸内細菌数の比率は25.7%、グループ11に属する腸内細菌数の比率は0.2%、グループ12に属する腸内細菌数の比率は11.3%、グループ13に属する腸内細菌数の比率は2.0%であった。また、グループ10に属する腸内細菌数とグループ11~13に属する全腸内細菌数との比は、1:0.66であった。
・条件1-5に関して、グループ14に属する腸内細菌の比率は0%、グループ15に属する腸内細菌数の比率は24.3%であった。
以上から、条件1-1~条件1-5のうち少なくとも3つの条件を満たし、被験者Jは自閉スペクトラム症および/またはてんかんであると判定することができた。
【0114】
なお、被験者Jについて心理検査(SRS-2 対人応答性尺度)を行ったところ、T得点(総合得点)は、120点であった。したがって、「被験者A」の項目にて説明した基準により、心理検査において被験者Jは重度の自閉スペクトラム症と評価することができる。
【0115】
上記の結果から、被験者から採取した検体としての糞便中の腸内細菌について、前記腸内細菌が属する腸内細菌群を特定し、前記腸内細菌群毎の腸内細菌数を測定する工程を含み、下記(i)または/および(ii)
(i) 全腸内細菌数に対する、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数の比率
(ii) 1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Aと、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Bとの比率
に基づいて自閉スペクトラム症および/またはてんかんであるか否かの判定を行うことができることが示された。
【0116】
<急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異>
「腸内細菌の種類の特定および腸内細菌群毎の腸内細菌数の測定」にて得られた測定結果をもとに、上記において示した条件2-1~条件2-5に基づき、急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異に係る疾患の判定を行った。
以下、被験者K~Lについて説明する。なお、被験者K~Lは20~60歳の女性である。
(実施例11:被験者K)
被験者Kについて、腸内細菌の種類の特定および腸内細菌の数の測定を行い、腸内細菌群毎の存在比率を求めた。結果を
図11に示す。測定結果から以下のことが示された。
・条件2-1に関して、グループ4に属する腸内細菌数の比率は0.01%であった。
・条件2-2に関して、グループ7に属する腸内細菌数の比率は1.12%であった。
・条件2-3に関して、グループ11に属する腸内細菌数の比率は0.26%、グループ12に属する腸内細菌数の比率は3.58%、グループ13に属する腸内細菌数の比率は1.69%であった。すなわち、グループ11~13に属する全腸内細菌数に対するグループ12に属する腸内細菌数の比率は、64.7%であった。
・条件2-4に関して、グループ14に属する腸内細菌の比率は0.04%、グループ15に属する腸内細菌数の比率は34.42%であった。
・条件2-5に関して、グループ16に属する腸内細菌の比率は5.76%であった。
以上から、条件2-1~条件2-5のうち少なくとも3つの条件を満たし、被験者Kはがん等の急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異に係る疾患であると判定することができた。
なお、被験者Kは、医師による所見では乳がんと診断されている。
【0117】
(実施例12:被験者L)
乳がんの所見がある被験者Lについて、腸内細菌の種類の特定および腸内細菌の数の測定を行い、腸内細菌群毎の存在比率を求めた。結果を
図12に示す。測定結果から以下のことが示された。
・条件2-1に関して、グループ4に属する腸内細菌数の比率は0.02%であった。
・条件2-2に関して、グループ7に属する腸内細菌数の比率は0.87%であった。
・条件2-3に関して、グループ11に属する腸内細菌数の比率は0.05%、グループ12に属する腸内細菌数の比率は7.12%、グループ13に属する腸内細菌数の比率は2.32%であった。すなわち、グループ11~13に属する全腸内細菌数に対するグループ12に属する腸内細菌数の比率は、75.0%であった。
・条件2-4に関して、グループ14に属する腸内細菌の比率は0.53%、グループ15に属する腸内細菌数の比率は34.42%であった。
・条件2-5に関して、グループ16に属する腸内細菌の比率は0%であった。
以上から、条件2-1~条件2-5のうち少なくとも3つの条件を満たし、被験者Lはがん等の急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異に係る疾患であると判定することができた。
なお、被験者Lは、医師による所見では乳がんと診断されている。
【0118】
上記の結果から、被験者から採取した検体としての糞便中の腸内細菌について、前記腸内細菌が属する腸内細菌群を特定し、前記腸内細菌群毎の腸内細菌数を測定する工程を含み、下記(i)または/および(ii)
(i) 全腸内細菌数に対する、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数の比率
(ii) 1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Aと、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Bとの比率
に基づいて急性炎症および/または組織・細胞の遺伝子変異に係る疾患であるか否かの判定を行うことができることが示された。
【0119】
<アレルギーおよび/またはアトピー>
「腸内細菌の種類の特定および腸内細菌群毎の腸内細菌数の測定」にて得られた測定結果をもとに、上記において示した条件3-1~条件3-5に基づき、アレルギーおよび/またはアトピーの判定を行った。
以下、被験者M~Nについて説明する。なお、被験者M~Nは10~60歳の男女である。
【0120】
(実施例13:被験者M)
被験者Mについて、腸内細菌の種類の特定および腸内細菌の数の測定を行い、腸内細菌群毎の存在比率を求めた。結果を
図13に示す。測定結果から以下のことが示された。
・条件3-1に関して、グループ2~8に属する腸内細菌数の比率は5.46%であった。また、グループ2に属する腸内細菌数の比率は0.60%であった。
・条件3-2に関して、グループ8に属する腸内細菌数の比率は1.90%、グループ9に属する腸内細菌数は37.67%であった。すなわち、グループ8および9に属する全腸内細菌数に対するグループ8に属する腸内細菌数の比率は4.8%であった。
・条件3-3に関して、グループ7に属する腸内細菌数の比率は1.19%であった。
・条件3-4に関して、グループ10に属する腸内細菌数の比率は33.54%、グループ11に属する腸内細菌数の比率は0.00%、グループ12に属する腸内細菌数の比率は6.79%、グループ13に属する腸内細菌数の比率は0.18%であった。すなわち、グループ10~13に属する全腸内細菌数に対するグループ10に属する腸内細菌数の比率は82.8%、グループ11~13に属する全腸内細菌数に対するグループ12に属する腸内細菌数の比率は97.4%であった。
・条件3-5に関して、グループ14に属する腸内細菌の比率は0.02%であった。
以上から、条件3-1~条件3-5のうち少なくとも3つの条件を満たし、被験者Mはアレルギーおよび/またはアトピーであると判定することができた。
なお、被験者Mは、医師による所見ではアトピーと診断されている。
【0121】
(実施例14:被験者N)
被験者Nについて、腸内細菌の種類の特定および腸内細菌の数の測定を行い、腸内細菌群毎の存在比率を求めた。結果を
図14に示す。測定結果から以下のことが示された。
・条件3-1に関して、グループ2~8に属する腸内細菌数の比率は4.03%であった。また、グループ2に属する腸内細菌数の比率は0.07%であった。
・条件3-2に関して、グループ8に属する腸内細菌数の比率は3.16%、グループ9に属する腸内細菌数は35.33%であった。すなわち、グループ8および9に属する全腸内細菌数に対するグループ8に属する腸内細菌数の比率は8.2%であった。
・条件3-3に関して、グループ7に属する腸内細菌数の比率は0.37%であった。
・条件3-4に関して、グループ10に属する腸内細菌数の比率は15.12%、グループ11に属する腸内細菌数の比率は0.01%、グループ12に属する腸内細菌数の比率は6.30%、グループ13に属する腸内細菌数の比率は0.19%であった。すなわち、グループ10~13に属する全腸内細菌数に対するグループ10に属する腸内細菌数の比率は69.9%、グループ11~13に属する全腸内細菌数に対するグループ12に属する腸内細菌数の比率は96.9%であった。
・条件3-5に関して、グループ14に属する腸内細菌の比率は0.01%であった。
以上から、条件3-1~条件3-5のうち少なくとも3つの条件を満たし、被験者Nはアレルギーおよび/またはアトピーであると判定することができた。
なお、被験者Nは、医師による所見ではアレルギーに係る疾患を有すると診断されている。
【0122】
上記の結果から、被験者から採取した検体としての糞便中の腸内細菌について、前記腸内細菌が属する腸内細菌群を特定し、前記腸内細菌群毎の腸内細菌数を測定する工程を含み、下記(i)または/および(ii)
(i) 全腸内細菌数に対する、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数の比率
(ii) 1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Aと、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Bとの比率
に基づいてアレルギーおよび/またはアトピーであるか否かの判定を行うことができることが示された。
【0123】
<自己免疫異常>
「腸内細菌の種類の特定および腸内細菌群毎の腸内細菌数の測定」にて得られた測定結果をもとに、上記において示した条件4-1~条件4-5に基づき、自己免疫異常の判定を行った。
以下、被験者O~Qについて説明する。なお、被験者O~Qは10~60歳の男女である。
【0124】
(実施例15:被験者O)
被験者Oについて、腸内細菌の種類の特定および腸内細菌の数の測定を行い、腸内細菌群毎の存在比率を求めた。結果を
図15に示す。測定結果から以下のことが示された。
・条件4-1に関して、グループ2~8に属する腸内細菌数の比率は9.35%であった。また、グループ2に属する腸内細菌数の比率は0.23%であった。
・条件4-2に関して、グループ8に属する腸内細菌数の比率は4.13%、グループ9に属する腸内細菌数は4.51%であった。すなわち、グループ8および9に属する全腸内細菌数に対するグループ9に属する腸内細菌数の比率は52.2%であった。
・条件4-3に関して、グループ7に属する腸内細菌数の比率は1.11%であった。
・条件4-4に関して、グループ10に属する腸内細菌数の比率は17.57%、グループ11に属する腸内細菌数の比率は0.20%、グループ12に属する腸内細菌数の比率は12.52%、グループ13に属する腸内細菌数の比率は3.26%であった。すなわち、グループ10~13に属する全腸内細菌数に対するグループ10に属する腸内細菌数の比率は52.4%、グループ11~13に属する全腸内細菌数に対するグループ12に属する腸内細菌数の比率は79.3%であった。
・条件4-5に関して、グループ14に属する腸内細菌の比率は0.00%、グループ15に属する腸内細菌数の比率は37.75%であった。すなわち、グループ14および15に属する全腸内細菌数に対するグループ15に属する腸内細菌数の比率は100%であった。
以上から、条件4-1~条件4-5のうち少なくとも3つの条件を満たし、被験者Oは自己免疫異常があると判定することができた。
なお、被験者Oは、医師による所見では潰瘍性大腸炎であると診断されている。
【0125】
(実施例16:被験者P)
被験者Pについて、腸内細菌の種類の特定および腸内細菌の数の測定を行い、腸内細菌群毎の存在比率を求めた。結果を
図16に示す。測定結果から以下のことが示された。
・条件4-1に関して、グループ2~8に属する腸内細菌数の比率は6.89%であった。また、グループ2に属する腸内細菌数の比率は0.87%であった。
・条件4-2に関して、グループ8に属する腸内細菌数の比率は0.50%、グループ9に属する腸内細菌数は35.55%であった。すなわち、グループ8および9に属する全腸内細菌数に対するグループ9に属する腸内細菌数の比率は98.6%であった。
・条件4-3に関して、グループ7に属する腸内細菌数の比率は5.50%であった。
・条件4-4に関して、グループ10に属する腸内細菌数の比率は21.74%、グループ11に属する腸内細菌数の比率は0.01%、グループ12に属する腸内細菌数の比率は10.36%、グループ13に属する腸内細菌数の比率は1.29%であった。すなわち、グループ10~13に属する全腸内細菌数に対するグループ10に属する腸内細菌数の比率は65.1%、グループ11~13に属する全腸内細菌数に対するグループ12に属する腸内細菌数の比率は88.9%であった。
・条件4-5に関して、グループ14に属する腸内細菌の比率は0.01%、グループ15に属する腸内細菌数の比率は17.34%であった。すなわち、グループ14および15に属する全腸内細菌数に対するグループ15に属する腸内細菌数の比率は99.9%であった。
以上から、条件4-1~条件4-5のうち少なくとも3つの条件を満たし、被験者Pは自己免疫異常があると判定することができた。
なお、被験者Pは、医師による所見では潰瘍性大腸炎であると診断されている。
【0126】
(実施例17:被験者Q)
被験者Qについて、腸内細菌の種類の特定および腸内細菌の数の測定を行い、腸内細菌群毎の存在比率を求めた。結果を
図17に示す。測定結果から以下のことが示された。
・条件4-1に関して、グループ2~8に属する腸内細菌数の比率は3.3%であった。また、グループ2に属する腸内細菌数の比率は0.01%であった。
・条件4-2に関して、グループ8に属する腸内細菌数の比率は2.76%、グループ9に属する腸内細菌数は28.72%であった。すなわち、グループ8および9に属する全腸内細菌数に対するグループ9に属する腸内細菌数の比率は91.2%であった。
・条件4-3に関して、グループ7に属する腸内細菌数の比率は0.23%であった。
・条件4-4に関して、グループ10に属する腸内細菌数の比率は4.45%、グループ11に属する腸内細菌は検出されず、グループ12に属する腸内細菌数の比率は16.58%、グループ13に属する腸内細菌数の比率は0.33%であった。すなわち、グループ10~13に属する全腸内細菌数に対するグループ10に属する腸内細菌数の比率は14.2%、グループ11~13に属する全腸内細菌数に対するグループ12に属する腸内細菌数の比率は98.0%であった。
・条件4-5に関して、グループ14に属する腸内細菌の比率は2.38%、グループ15に属する腸内細菌数の比率は38.13%であった。すなわち、グループ14および15に属する全腸内細菌数に対するグループ15に属する腸内細菌数の比率は94.1%であった。
以上から、条件4-1~条件4-5のうち少なくとも3つの条件を満たし、被験者Qは自己免疫異常があると判定することができた。
なお、被験者Qは、医師による所見では過敏性腸症候群であると診断されている。
【0127】
上記の結果から、被験者から採取した検体としての糞便中の腸内細菌について、前記腸内細菌が属する腸内細菌群を特定し、前記腸内細菌群毎の腸内細菌数を測定する工程を含み、下記(i)または/および(ii)
(i) 全腸内細菌数に対する、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数の比率
(ii) 1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Aと、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Bとの比率
に基づいて自己免疫異常があるか否かの判定を行うことができることが示された。
【0128】
(参考例1:腸内フローラ移植後の被験者A)
被験者Aに関して、腸内フローラ移植後を行った。腸内フローラ移植開始から、おおよそ半年経過後の腸内細菌群の比率を参考例1として
図18の右側のグラフに示す。なお、
図18の左側のグラフは腸内フローラ移植前のグラフ、即ち実施例1と同一のグラフである。参考例1では
・条件1-1に関して、グループ1~5に属する腸内細菌数の比率は9.7%であった。
・条件1-2に関して、グループ7に属する腸内細菌は検出されなかった。
・条件1-3に関して、グループ8に属する腸内細菌数の比率は8.3%、グループ9に属する腸内細菌数は12.2%であった。すなわち、グループ8に属する腸内細菌数とグループ9に属する腸内細菌数との比は1:1.47であった。
・条件1-4に関して、グループ10に属する腸内細菌数の比率は26.7%、グループ11に属する腸内細菌数の比率は0.2%、グループ12に属する腸内細菌数の比率は7.6%、グループ13に属する腸内細菌数の比率は0.8%であった。また、グループ10に属する腸内細菌数とグループ11~13に属する全腸内細菌数との比は、1:0.32であった。
・条件1-5に関して、グループ14に属する腸内細菌の比率は0.6%、グループ15に属する腸内細菌数の比率は20.9%であった。
すなわち、条件1-2、条件1-3、条件1-5を満たさず、腸内フローラ移植後の参考例1における被験者Aは、自閉スペクトラム症でもてんかんでもないと判定することができる。
なお、参考例1-1において被験者Aは、医師による所見では自閉スペクトラム症であっても軽度であると診断されている。
【0129】
(参考例2:腸内フローラ移植後の被験者J)
被験者Jに関して、腸内フローラ移植後を行った。腸内フローラ移植開始から、およそ2か月経過後の腸内細菌群の比率を参考例1として
図19の右側のグラフに示す。なお、
図19の左側のグラフは腸内フローラ移植前のグラフ、即ち実施例10と同一のグラフである。参考例2では
・条件1-1に関して、グループ1~5に属する腸内細菌数の比率は0.21%であった。
・条件1-2に関して、グループ7に属する腸内細菌は0.09%であった。
・条件1-3に関して、グループ8に属する腸内細菌数の比率は1.5%、グループ9に属する腸内細菌数は28.2%であった。すなわち、グループ8に属する腸内細菌数とグループ9に属する腸内細菌数との比は1:18.8であった。
・条件1-4に関して、グループ10に属する腸内細菌数の比率は22.9%、グループ11に属する腸内細菌数の比率は0.23%、グループ12に属する腸内細菌数の比率は10.5%、グループ13に属する腸内細菌数の比率は1.6%であった。また、グループ10に属する腸内細菌数とグループ11~13に属する全腸内細菌数との比は、1:0.65であった。
・条件1-5に関して、グループ14に属する腸内細菌の比率は2.1%、グループ15に属する腸内細菌数の比率は24.7%であった。
すなわち、条件1-1、条件1-2、条件1-3、条件1-5を満たさず、腸内フローラ移植後の参考例2における被験者Jは、自閉スペクトラム症でもてんかんでもないと判定することができる。
【0130】
なお、被験者Jについて心理検査(SRS-2 対人応答性尺度)を行ったところ、T得点(総合得点)は、100点であった。したがって、「被験者A」の項目にて説明した基準により、心理検査において被験者Jは重度の自閉スペクトラム症と評価することができる。ここで、医師の所見では、腸内フローラ移植後において、自閉スペクトラム症について、中程度の改善が見られたと評価されている。
上記の腸内細菌の比率および医師の所見と、SRS-2とでは反映されるまでにタイムラグがあるため、腸内細菌の比率および医師の所見と、SRS-2との評価が異なる結果となったと考えられる。
【0131】
また、腸内フローラ移植後の医師の所見として、排便が毎日2回程度あり便の状態も改善した、前向きな発言が増えた、癇癪が減った、および指示が通りやすくなったというものがあった。さらに腸内フローラ移植後における被験者Jの保護者のコメントとして、人への思いやりや気遣いができるようになった、取りかかりが遅い、気分乗るのが遅かったが移植後は切り替え早くなった、ジョギングで疲れにくくなった(即ち、筋力が上がった)というものがあり、被験者J本人のコメントとしては、移植後、学習が捗るようになったというものがあった。
【0132】
(参考例3:腸内フローラ移植後のSRS-2データ)
図20に上記条件1-1~条件1-5のうち、少なくとも3つを満たす被験者30名について、腸内フローラ移植(以下、FMTということがある。)を行い、そのうちの24名についてSRS-2データを得た。FMT前、FMT直後、FMT後(10w)についてSRS-2データからは、FMTにより、重度の自閉スペクトラム症であると診断される人数が減少し、FMT後(10w)においては、正常であると診断されるケースも見られるようになった。
【要約】
被験者から採取した検体としての糞便中の腸内細菌について、前記腸内細菌が属する腸内細菌群を特定し、前記腸内細菌群毎の腸内細菌数を測定する工程を含み、
下記(i)または/および(ii)
(i) 全腸内細菌数に対する、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数の比率
(ii) 1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Aと、1または2以上の前記腸内細菌群の腸内細菌数Bとの比率
に基づいて自閉スペクトラム症および/またはてんかんであるか否かの判定を行う。