(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】加熱炉および加熱済体の判定方法
(51)【国際特許分類】
G01J 5/00 20220101AFI20240903BHJP
G01J 5/60 20060101ALI20240903BHJP
G01J 5/48 20220101ALI20240903BHJP
F27D 21/00 20060101ALI20240903BHJP
C22B 1/02 20060101ALI20240903BHJP
C22B 7/00 20060101ALI20240903BHJP
C22B 21/00 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
G01J5/00 101A
G01J5/60 C
G01J5/48 A
F27D21/00 A
F27D21/00 G
C22B1/02
C22B7/00 E
C22B21/00
(21)【出願番号】P 2019210846
(22)【出願日】2019-11-21
【審査請求日】2022-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】522160125
【氏名又は名称】MAアルミニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】谷口 兼一
(72)【発明者】
【氏名】檜高 祐生
【審査官】平田 佳規
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-226830(JP,A)
【文献】特開2015-023468(JP,A)
【文献】特開昭62-129685(JP,A)
【文献】国際公開第2017/221860(WO,A1)
【文献】特開2001-294943(JP,A)
【文献】特開平10-068024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 5/00 - G01J 5/90
G01J 1/02
G01J 1/42 - G01J 1/46
G01N 25/00 - G01N 25/72
B07C 5/342
B09B 1/00 - B09B 5/00
B09C 1/00 - B09C 1/10
C22B 1/00 - C22B 1/26
C22B 7/00 - C22B 7/04
C22B 21/00 - C22B 21/06
F27D 21/00 - F27D 21/04
H04N 5/222- H04N 5/257
H04N 7/18
H04N 23/00
H04N 23/40 - H04N 23/76
H04N 23/90 - H04N 23/959
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装やコーティングを有するアルミニウム缶である被加熱体を攪拌しながら加熱して焙焼し、焙焼後の加熱済体を連続的または間欠的に帯状搬送路に沿って搬出する加熱炉
であって、前記帯状搬送路は該帯状搬送路の幅方向左右両側に側壁を有する振動篩の一部として構成され、
前記帯状搬送路により搬出途中の加熱済体と前記加熱済体を搬送する帯状搬送路の搬送面を
前記側壁の内側面も含めて1つの画像内に納めて前記加熱済体と前記搬送面を連続的または間欠的に撮影するビデオカメラを備え、
前記ビデオカメラが撮影した前記帯状搬送路の搬送面と前記帯状搬送路による搬送途中の前記加熱済体
と前記側壁内側面の画像を解析し、前記帯状搬送路の搬送面
と前記側壁内側面に対し、前記搬送面の搬送方向任意の位置において、搬送方向に直交する幅方向に沿って
前記側壁内側面も含めてライン分析を行う機能を有し、
前記ライン分析位置に対応する前記画像の画素毎の輝度を算出する輝度算出手段と、この輝度算出手段が算出した輝度値を連続的または間欠的に記録する記録手段と、前記ライン分析位置に対応する各輝度値の分散を計算する計算手段と、前記計算手段によって求められた分散値に対し、特定のしきい値を基に前記分散値が前記しきい値を超えると、前記加熱済体がライン分析位置の全体に存在する領域であると判定する判定手段を備え、
更に、前記加熱済体が前記ライン分析位置の全体に存在する領域であると判定した領域における輝度値を監視し、前記輝度値に関し、あらかじめ定めておいた良好焙焼状態の前記加熱済体が有する輝度値の範囲に収まっていると焙焼充分と判断し、前記輝度値に関し、あらかじめ定めておいた良好焙焼状態の前記加熱済体が有する輝度値の範囲から外れていると異常と判断する予測手段を有
し、
前記輝度算出手段と前記記録手段と前記計算手段と前記判定手段がパーソナルコンピュータに設けられ、前記ビデオカメラが撮影した前記画像を前記記録手段が前記パーソナルコンピュータに設けられた記憶手段にビットマップ形式で保存する機能を有し、前記計算手段が前記ビットマップ形式のデータにおける画素毎のRGBの値から0.299×R+0.587×G+0.114×Bの計算式で求められる値を輝度として算出する機能を有することを特徴とする加熱炉。
【請求項2】
前記連続的または前記間欠的に求めたライン分析結果を検討し、前記特定のしきい値を超える前記分散値が連続的に検出された場合、対応する領域をアルミニウム缶が全体に存在する領域と判断して判断対象とし、
前記特定のしきい値を超える前記分散値が連続的に検出されない場合、対応する領域をアルミニウム缶が全体に存在しない領域と判断して判断対象から除外する機能を前記判定手段が有することを特徴とする請求項1に記載の加熱炉。
【請求項3】
前記帯状搬送路の搬送面に前記加熱済体が連続的または間欠的に任意量、搬送されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の加熱炉。
【請求項4】
前記輝度値から前記加熱済体の温度を演算する機能を前記計算手段に備えたことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の加熱炉。
【請求項5】
前記加熱済体が焙焼された使用済みのアルミニウム缶であることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の加熱炉。
【請求項6】
前記加熱済体の温度を演算した結果、予め設定しておいた許容温度範囲から外れた場合に警告を表示する表示手段を備えたことを特徴とする請求項4または
請求項4を引用する請求項5に記載の加熱炉。
【請求項7】
塗装やコーティングを有するアルミニウム缶である被加熱体を攪拌しながら加熱し、加熱後の加熱済体を連続的または間欠的に帯状搬送路に沿って搬出する加熱炉であって、前記帯状搬送路は該帯状搬送路の幅方向左右両側に側壁を有する振動篩の一部として構成される加熱炉に適用して該加熱炉から搬出される加熱済体の状態を判定する方法であって、
前記帯状搬送路に沿って搬出途中の加熱済体と前記加熱済体を搬送する前記帯状搬送路の搬送面を前記側壁の内側面も含めて1つの画像内に納めて前記加熱済体と前記搬送面を連続的または間欠的にビデオカメラにより撮影し、
前記ビデオカメラが撮影した前記帯状搬送路の搬送面と前記帯状搬送路による搬送途中の前記加熱済体と前記側壁内側面の画像を解析し、前記帯状搬送路の搬送面と前記側壁内側面に対し、前記搬送面の搬送方向任意の位置において、搬送方向に直交する幅方向に沿って前記側壁内側面も含めてライン分析を行い、これらのライン分析位置に対応する前記画像の画素毎の輝度値を算出し、
この輝度値を連続的または間欠的に記録し、前記ライン分析位置に対応する各輝度値の分散
値を計算し、前記分散値に対し、特定のしきい値を基に前記分散値が前記しきい値を超えると、前記加熱済体が前記ライン分析位置の全体に存在すると判定し、
更に、前記加熱済体が前記ライン分析位置の全体に存在する領域であると判定した領域における輝度値を監視し、前記輝度値に関し、あらかじめ定めておいた良好焙焼状態の前記加熱済体が有する輝度値の範囲に収まっていると焙焼充分と判断し、前記輝度値に関し、あらかじめ定めておいた良好焙焼状態の前記加熱済体が有する輝度値の範囲から外れていると異常と判断するとともに、
輝度算出手段
と記録手段
と計算手段
と判定手段をパーソナルコンピュータに設け、前記ビデオカメラが撮影した前記画像を前記記録手段が前記パーソナルコンピュータに設けられた記憶手段にビットマップ形式で保存し、前記計算手段が前記ビットマップ形式のデータにおける画素毎のRGBの値から0.299×R+0.587×G+0.114×Bの計算式で求められる値を輝度として算出することを特徴とする加熱済体の判定方法。
【請求項8】
前記連続的または前記間欠的に求めたライン分析結果を検討し、前記特定のしきい値を超える前記分散値が連続的に検出された場合、対応する領域をアルミニウム缶が全体に存在する領域と判断して判断対象とし、
前記特定のしきい値を超える前記分散値が連続的に検出されない場合、対応する領域をアルミニウム缶が全体に存在しない領域と判断して判断対象から除外することを特徴とする請求項7に記載の加熱済体の判定方法。
【請求項9】
前記帯状搬送路の搬送面に前記加熱済体が連続的または間欠的に搬送されることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の加熱済体の判定方法。
【請求項10】
前記輝度値から前記加熱済体の温度を演算することを特徴とする請求項7~請求項9のいずれか一項に記載の加熱済体の判定方法。
【請求項11】
前記加熱済体が焙焼された使用済みのアルミニウム缶であることを特徴とする請求項7~請求項10のいずれか一項に記載の加熱済体の判定方法。
【請求項12】
前記加熱済体の温度を演算した結果、予め設定しておいた許容温度範囲から外れた場合に警告を表示する表示手段を備えたことを特徴とする請求項10または
請求項10を引用する請求項11に記載の加熱済体の判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱炉および加熱済体の判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1のP859~860に記載されているように、使用済みアルミニウム缶は水分除去、塗装およびコーティングの除去のために、ロータリーキルン(焙焼炉)でこれらのものを蒸発または分解させている。
微細なアルミニウムは高温で発火の危険性があるので、焙焼炉において酸素濃度を抑えつつ蒸し焼きにする焙焼工程が行われる。
【0003】
焙焼炉の内部温度を直接計測することは、熱電対へのススの付着や異物の付着が生じるために極めて難しく、焙焼炉内での見通し距離が実質的にないことから、放射温度計を用いた測定も困難である。まして、焙焼炉において加熱されている最中の物体の温度を計測することも極めて困難である。
しかし、焙焼の成否は焙焼体の温度管理が重要な鍵であるということは言うまでも無く、安全面、あるいは後工程における溶解時の酸化物発生の抑制などの面からみても、焙焼体の温度測定を可能とする技術の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】「アルミはくとアルミキャップのリサイクル」:技術ノート(リサイクルテクノロジー):大賀誠他著:応用物理:第70巻:第7号:P859~860(2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
焙焼炉において焙焼後のアルミニウム缶は連続的に排出され、通常、静止している時間はないに等しく、ベルトコンベアー等で溶解炉に搬送される。また、焙焼炉から排出された使用済みアルミニウム缶は通常薄く、熱容量が小さいことから、接触による温度測定も困難である。更に、放射温度計などの非接触測定で焙焼炉から排出された使用済みアルミニウム缶の温度を計測しようとしても、非接触測定は輻射を利用した温度測定方法であるため、測定位置、測定角度等が一定しない場合は形態係数が大幅に変化し、安定した温度計測は困難であると考えられる。
そこで、本願発明者は、輻射率を温度算出に用いるサーモグラフィー装置を利用し、ベルトコンベアーによって搬送される焙焼後のアルミニウム缶の温度を正確に計測可能な技術について研究開発を行っている。この研究により、サーモグラフィ装置を用いて、ある程度正確にベルトコンベア上のアルミニウム缶の温度を計測できる見込みがついている。
【0006】
しかしながら、焙焼炉において焙焼温度が大幅に変動した場合、焙焼後のアルミニウム缶に大幅な色味の変化を生じることがあり、色味が変化すると輻射率が変化する。このため、輻射率を利用し、サーモグラフィ装置で温度計測する場合に測定誤差が大きくなる問題がある。
アルミニウム缶の焙焼後の色味変化は作業者が目視判断でチェックできる項目ではあるものの、作業者の感覚に近い値の定量化が必要であり、作業者の目視確認に頼ることなく焙焼後のアルミニウム缶の色味変化を判断できる技術の登場が望まれている。
【0007】
本発明は、これらの課題に鑑みなされたものであり、焙焼炉などの加熱炉から排出された使用済みアルミニウム缶などの移動中の加熱済体であっても色味変化の判断が可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の加熱炉は、塗装やコーティングを有するアルミニウム缶である被加熱体を攪拌しながら加熱して焙焼し、焙焼後の加熱済体を連続的または間欠的に帯状搬送路に沿って搬出する加熱炉であって、前記帯状搬送路は該帯状搬送路の幅方向左右両側に側壁を有する振動篩の一部として構成され、前記帯状搬送路により搬出途中の加熱済体と前記加熱済体を搬送する帯状搬送路の搬送面を前記側壁の内側面も含めて1つの画像内に納めて前記加熱済体と前記搬送面を連続的または間欠的に撮影するビデオカメラを備え、前記ビデオカメラが撮影した前記帯状搬送路の搬送面と前記帯状搬送路による搬送途中の前記加熱済体と前記側壁内側面の画像を解析し、前記帯状搬送路の搬送面と前記側壁内側面に対し、前記搬送面の搬送方向任意の位置において、搬送方向に直交する幅方向に沿って前記側壁内側面も含めてライン分析を行う機能を有し、前記ライン分析位置に対応する前記画像の画素毎の輝度を算出する輝度算出手段と、この輝度算出手段が算出した輝度値を連続的または間欠的に記録する記録手段と、前記ライン分析位置に対応する各輝度値の分散を計算する計算手段と、前記計算手段によって求められた分散値に対し、特定のしきい値を基に前記分散値が前記しきい値を超えると、前記加熱済体がライン分析位置の全体に存在する領域であると判定する判定手段を備え、更に、前記加熱済体が前記ライン分析位置の全体に存在する領域であると判定した領域における輝度値を監視し、前記輝度値に関し、あらかじめ定めておいた良好焙焼状態の前記加熱済体が有する輝度値の範囲に収まっていると焙焼充分と判断し、前記輝度値に関し、あらかじめ定めておいた良好焙焼状態の前記加熱済体が有する輝度値の範囲から外れていると異常と判断する予測手段を有し、前記輝度算出手段と前記記録手段と前記計算手段と前記判定手段がパーソナルコンピュータに設けられ、前記ビデオカメラが撮影した前記画像を前記記録手段が前記パーソナルコンピュータに設けられた記憶手段にビットマップ形式で保存する機能を有し、前記計算手段が前記ビットマップ形式のデータにおける画素毎のRGBの値から0.299×R+0.587×G+0.114×Bの計算式で求められる値を輝度として算出する機能を有することを特徴とする。
【0009】
(2)本発明の加熱炉において、前記連続的または前記間欠的に求めたライン分析結果を検討し、前記特定のしきい値を超える前記分散値が連続的に検出された場合、対応する領域をアルミニウム缶が全体に存在する領域と判断して判断対象とし、前記特定のしきい値を超える前記分散値が連続的に検出されない場合、対応する領域をアルミニウム缶が全体に存在しない領域と判断して判断対象から除外する機能を前記判定手段が有することが好ましい。
【0010】
(3)本発明の加熱炉において、前記帯状搬送路の搬送面に前記加熱済体が連続的または間欠的に任意量、搬送されることを特徴とする。
(4)本発明の加熱炉において、前記輝度値から前記加熱済体の温度を演算する機能を前記計算手段に備えたことが好ましい。
(5)本発明の加熱炉において、前記加熱済体が焙焼された使用済みのアルミニウム缶であることが好ましい。
(6)本発明の加熱炉において、前記加熱済体の温度を演算した結果、予め設定しておいた許容温度範囲から外れた場合に警告を表示する表示手段を備えたことが好ましい。
【0011】
(7)本発明に係る加熱済体の判定方法は、塗装やコーティングを有するアルミニウム缶である被加熱体を攪拌しながら加熱し、加熱後の加熱済体を連続的または間欠的に帯状搬送路に沿って搬出する加熱炉であって、前記帯状搬送路は該帯状搬送路の幅方向左右両側に側壁を有する振動篩の一部として構成される加熱炉に適用して該加熱炉から搬出される加熱済体の状態を判定する方法であって、前記帯状搬送路に沿って搬出途中の加熱済体と前記加熱済体を搬送する前記帯状搬送路の搬送面を前記側壁の内側面も含めて1つの画像内に納めて前記加熱済体と前記搬送面を連続的または間欠的にビデオカメラにより撮影し、前記ビデオカメラが撮影した前記帯状搬送路の搬送面と前記帯状搬送路による搬送途中の前記加熱済体と前記側壁内側面の画像を解析し、前記帯状搬送路の搬送面と前記側壁内側面に対し、前記搬送面の搬送方向任意の位置において、搬送方向に直交する幅方向に沿って前記側壁内側面も含めてライン分析を行い、これらのライン分析位置に対応する前記画像の画素毎の輝度値を算出し、この輝度値を連続的または間欠的に記録し、前記ライン分析位置に対応する各輝度値の分散値を計算し、前記分散値に対し、特定のしきい値を基に前記分散値が前記しきい値を超えると、前記加熱済体が前記ライン分析位置の全体に存在すると判定し、更に、前記加熱済体が前記ライン分析位置の全体に存在する領域であると判定した領域における輝度値を監視し、前記輝度値に関し、あらかじめ定めておいた良好焙焼状態の前記加熱済体が有する輝度値の範囲に収まっていると焙焼充分と判断し、前記輝度値に関し、あらかじめ定めておいた良好焙焼状態の前記加熱済体が有する輝度値の範囲から外れていると異常と判断するとともに、輝度算出手段と記録手段と計算手段と判定手段をパーソナルコンピュータに設け、前記ビデオカメラが撮影した前記画像を前記記録手段が前記パーソナルコンピュータに設けられた記憶手段にビットマップ形式で保存し、前記計算手段が前記ビットマップ形式のデータにおける画素毎のRGBの値から0.299×R+0.587×G+0.114×Bの計算式で求められる値を輝度として算出することを特徴とする。
【0012】
(8)本発明に係る加熱済体の判定方法は、前記連続的または前記間欠的に求めたライン分析結果を検討し、前記特定のしきい値を超える前記分散値が連続的に検出された場合、対応する領域をアルミニウム缶が全体に存在する領域と判断して判断対象とし、前記特定のしきい値を超える前記分散値が連続的に検出されない場合、対応する領域をアルミニウム缶が全体に存在しない領域と判断して判断対象から除外することを特徴とする。
(9)本発明に係る加熱済体の判定方法において、前記帯状搬送路の搬送面に前記加熱済体が連続的または間欠的に搬送されることを特徴とする。
【0013】
(10)本発明に係る加熱済体の判定方法において、前記輝度値から前記加熱済体の温度を演算することができる。
(11)本発明に係る加熱済体の判定方法において、前記加熱済体として焙焼された使用済みのアルミニウム缶を提供することができる。
(12)本発明に係る加熱済体の判定方法において、前記加熱済体の温度を演算した結果、予め設定しておいた許容温度範囲から外れた場合に警告を表示する表示手段を備えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、焙焼炉などの加熱炉から帯状搬送路に沿って塊となって不定形状態で搬出される加熱済体の色味変化を熟練作業者を要せずともビデオカメラとコンピュータを用いて正確に把握できるようになる。また、加熱済体が不定形状態で連続的にあるいは間欠的に搬送されているいずれの状態であっても、正確な把握ができる。更に、加熱済体の色味変化を把握することで、加熱炉における加熱状態の変化を把握することができる。
このため、加熱済体が例えば使用済みのアルミニウム缶である場合、加熱炉を用いて使用済みアルミニウム缶を目的の温度に加熱することによって、アルミニウム缶表面の水分除去、塗膜除去、コーティング除去が満足にできているか否か確実に把握できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】焙焼炉を利用するアルミニウム缶リサイクル工程の一例を示す説明図。
【
図2】
図1に示すリサイクル工程の一例に備えられるコンピュータの要部を示す構成図。
【
図3】
図1に示すリサイクル工程の一例に備えられる焙焼炉の一例を示す構成図。
【
図4】焙焼炉から帯状搬送路に沿って搬送される加熱済体が連続的に排出されている状態の一例を示す斜視図。
【
図5】焙焼炉から帯状搬送路に沿って搬送される加熱済体が間欠的に排出されている状態の一例を示す斜視図。
【
図6】帯状搬送路の近傍に設置されるビデオカメラの一例を示す斜視図。
【
図7】
図6に示すビデオカメラが捉えたビデオ画像をコンピュータの表示装置に表示した状態の一例を示す図。
【
図8】
図7に示すコンピュータに接続されて加熱済体の状態に応じて警告を表示する装置の一例を示す図。
【
図9】ビデオカメラが撮影した画像についてライン分析を行う位置について示す説明図。
【
図10】帯状搬送路に沿って搬送されている加熱済体の塊が密集している位置を含めてビデオカメラが撮影する場合の一例を示す斜視図。
【
図11】帯状搬送路に沿って搬送されている加熱済体の塊が前後に分散し、それらの間の部分をビデオカメラが撮影する場合の一例を示す斜視図。
【
図12】帯状搬送路に沿って搬送されている加熱済体の塊が分散して少ない状態の場所をビデオカメラが撮影する場合の一例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に基づき、本発明に係る加熱炉の第1実施形態について詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは図示した例に限らない。
図1に示す回収再生設備は、トラック等の搬送手段によって搬入されてきた塊状の使用済みアルミニウム缶(加熱済体)を主体とする回収物を受け入れる受入設備1を備えている。また、回収再生設備は、前記回収物を破砕する破砕機(ブレーカー)2と、この破砕機2によって破砕された回収物から磁力、風力を用いて非アルミニウム材を分離する選別手段3と、この選別手段3を経たアルミニウム缶(被加熱体)を焙焼処理するロータリーキルン(加熱炉:焙焼炉)4を備えている。
【0017】
選別手段3は磁選機3aと風力選別機3bを備え、一次ストックホッパー11を介し焙焼炉4にアルミニウム缶が搬送される。破砕機2から焙焼炉4までの各設備間にはベルトコンベアー10a~10dが設けられ、各設備で処理された使用済みアルミニウム缶が搬送される。
更に、回収再生設備は、焙焼炉4から排出されたアルミニウム缶を溶解処理する溶解炉5と、この溶解炉5において得られたアルミニウムを溶解状態に保持するとともに合金調整する保持炉6と、この保持炉6において合金調整された溶湯からスラブを得る鋳造機7を備えて概略構成されたものであり、これらを含む装置類が、同一の敷地8内に配設されている。
【0018】
焙焼炉4の下流側には、ベルトコンベアー10eを介し帯状搬送路12Aを構成する振動篩12が配設され、この振動篩12を経たアルミニウム缶がベルトコンベアー10fによって溶解炉5に導入されるようになっている。この溶解炉5の排出側には、トラフ13を介して溜め炉14が設けられ、この溜め炉14の吐出側がトラフ15aによって保持炉6の投入側に連結されている。なお、
図3に示すように焙焼炉4の近傍に再燃焼炉4Aが設けられ、再燃焼炉4Aから焙焼炉4に送る熱風の温度調節を行うことで焙焼炉4の内部温度を調整することができる。
【0019】
図1に示す回収再生設備において、焙焼炉4は内部に使用済みアルミニウム缶(被加熱体)を攪拌する攪拌装置(図示略)を有するとともに、目的の温度に加熱焙焼した後の塊状のアルミニウム缶Sを連続的にあるいは間欠的に搬出する
図4、
図5に示すコンベアー10eを介し接続された振動篩12を有している。そして、この振動篩12の近傍、例えば、振動篩12の周囲に立設されている門型フレームや支柱などに支持されるように、振動篩12の前方側斜め上方に、
図1、
図6を基に以下に説明するビデオカメラ20が設置されている。
【0020】
ビデオカメラ20はカメラ本体21と送信装置22とからなり、送信装置22はパーソナルコンピュータなどからなるデータ解析装置23に撮影データを送信することができる。
図6にカメラ本体21の概要を示すが、カメラ本体20は、円筒状の把持可能な本体部21aの前部にズーム式のレンズ21bを備え、本体部21aの内部に撮像素子を備えた一般的なビデオ撮影装置である。本体部21aの内部に送信装置22が組み込まれ、撮像素子が捉えた撮影データを逐次データ解析装置23に送信することができる。なお、カメラ本体21の構成は
図6に示す構成に限るものでは無く、カラーで動画を撮影可能な装置であればいずれの構成のビデオカメラを用いても良い。
【0021】
カメラ本体21の底部側に基台21cが設けられている。この基台21cを前述の門型フレームなどに取り付け、レンズ21bの向きを調整するとともに、本体部21aの側部に設けられている小型モニター21dを利用し、撮影画像を見ながらズームレンズ21bの拡大倍率を調整する。これにより、
図7に示すように振動篩12の先端部分の全体を表示装置30の画面中央部に拡大表示できるようにカメラ本体21が設置されている。
また、振動篩12の帯状搬送路12Aに対しビデオカメラ20が撮影する範囲を照らす照明装置は、蛍光灯などのように経年劣化の激しい照明装置では無く、LED照明装置のように照度の経年劣化が少ない照明装置を適用することが好ましい。
【0022】
図4と
図5に振動篩12の帯状搬送路12Aに沿って搬送される途中の塊状のアルミニウム缶(加熱済体)Sの概要を示す。
振動篩12は常に振動し、高速、例えば数m/secの速度で塊状のアルミニウム缶Sを帯状搬送路12Aに沿って搬送し、焙焼炉4から排出される塊状のアルミニウム缶Sの形状と量は時々刻々変化する。
塊状のアルミニウム缶Sは、複数の押し潰されたアルミニウム缶が個別に、あるいは、複数が連結されて一体化され、それぞれ不定形のもので、
図4に示すように塊状のアルミニウム缶Sが連続して繋がるように排出される状態と、
図5に示すように塊状のアルミニウム缶Sが不連続に間欠的に排出される状態が不定期かつランダムに出現する。このように振動し、移動中の不定形の塊状のアルミニウム缶Sについて本実施形態では色味判定の対象物とする。
【0023】
焙焼炉4の内部温度が高すぎると塊状のアルミニウム缶Sの一部が燃えるおそれがあり、温度が低すぎると、塗装やコーティングの除去が不十分となり、場合によっては塊状のアルミニウム缶Sに塗装やコーティングなどがチャーとして付着したまま排出される。このチャー付着量が増加すると塊状のアルミニウム缶Sの色が黒色に近い色となる。塗装やコーティングの除去が十分であれば、塊状のアルミニウム缶Sの色は白色に近い色となる。
【0024】
図2は、データ解析装置23の要部の一例を示す構成図であり、この例のデータ解析装置23は、所謂コンピュータであって、主として入力手段24と、制御部25と、記憶手段26と、出力手段27を備えている。
入力手段24は、例えば、文字や数字を入力するキーボードなどであり、これによって種々の情報を記憶手段26または制御部25に入力することができる。
制御部25は、所謂CPU(中央演算処理装置)やRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などで構成されており、プログラムによって様々な数値計算や情報処理、機器制御などを行うことができる。
【0025】
記憶手段26は、例えば、HDD(ハードディスクドライブ)やSSD(ソリッドステートドライブ)などの情報記録媒体であり、必要なプログラムや、算出手段28、予測手段29の実行に必要な、例えば、画面キャプチャソフトや表計算ソフトによる処理や計算とそれらの結果などの各種情報、これらによって得られた結果などを必要に応じて記憶させたり読み出したりすることができる。
出力手段27は、例えば、モニターやプリンターなどであり、必要なプログラムから得られる各種の情報に加え、後述するチャー付着などの情報を必要に応じて表示することができる。
図2、
図7に示すデータ解析装置23は出力手段27として表示モニター型の表示装置30を有している。
【0026】
なお、記憶手段26には、基本的なオペレーティングシステム(OS)に加え、画面キャプチャソフトや表計算ソフトなどのプログラムや、後記する算出手段28、予測手段29の実行に必要な各種の情報が記憶され、プログラム実行前に予め必要な情報が記憶されている。これらの情報やプログラムを任意に読み出し、操作することができる。また、当該プログラムを実行することによって得られた算出結果などを必要に応じて記憶させたり読み出したりすることが可能である。
本実施形態のデータ解析装置23においては、記憶手段26に画面キャプチャソフトと表計算ソフトがインストールされている。
【0027】
図6に示すビデオカメラ20は、カメラ本体21が撮影した振動篩12の先端部の画像情報をデータ解析装置23に送り、データ解析装置23は表示装置30に
図7に示すように振動篩12の先端部の画像情報を表示する。
データ解析装置23の記憶手段26には画面キャプチャソフトと表計算ソフトがインストールされている。画面キャプチャソフトは例えばwoodybells氏作成のフリーソフトwinshotを用いることができ、表計算ソフトは、例えば、Microsoft 社製Excel(商品名)を用いることができる。なお、ここで示した画面キャプチャソフトと表計算ソフトは本実施形態に適用可能な一つの例であって、これらのソフトに限るものでは無い。
【0028】
これらの画面キャプチャソフトと表計算ソフトを用い、表示装置30に表示されている帯状搬送路12Aの先端部から所定の距離(例えば先端から100mm程度後方)離れた位置を帯状搬送路12Aの幅方向に沿って以下に説明するようにライン分析する。
画面キャプチャソフトは、ライン分析範囲を含む矩形領域をビットマップ形式にて定期的あるいは連続的に記憶手段26に送り記憶できるように設定されている。画面キャプチャソフトがキャプチャする画面情報は24bitカラーが好ましい。
【0029】
記憶手段26に記憶する情報量の一部を削減するために、例えば、ライン分析範囲を含む矩形範囲の画素のRGBの値を3秒間隔でビットマップ形式で記憶するように設定することが好ましい。ここで採用した3秒間隔は一例であって、3秒間隔に限らず他の時間間隔、例えば1~5秒間隔などであっても良く、コンピューターの性能やカメラとコンピューター間の伝送速度などデータの処理化が間に合うような範囲の短い間隔で画素を構成するRGBの値を記録しても良い。
【0030】
カメラ本体21のレンズ21bを調整し、表示装置30の画面に表示する帯状搬送路12Aの先端部の幅を調整し、矩形幅として例えば(70画素×134画素)程度に設定し、バイナリデータを直に読み出し可能なビットマップ形式のデータとして保存する。矩形幅について上述の画素数は一例であり画素数は上述の数には限らない。数10画素から数100画素の範囲を適宜選択すれば良い。
この矩形状範囲の設定は、画面キャプチャソフトが(70画素×134画素)の静止画の情報を記憶手段26に3秒間隔で連続的に記録することとなる。このビットマップ形式のデータで記憶手段26に記録される静止画のバイナリデータを行列と見立て、行毎のデータ解析を以下のように行うことが、本実施形態においてライン分析を行うこととなる。
【0031】
図9(A)~(D)は、加熱済体の塊状のアルミニウム缶Sが種々の状態で帯状搬送路12Aの先端部を通過する場合をパターン分けして例示し、各図の中央部を横切る位置にライン分析位置を設定した状態を示す説明図である。
図9(A)は加熱済体が密集して帯状搬送路12Aを通過している状態の中央部がライン分析位置となった状態を示し、
図9(B)は加熱済体が密集して帯状搬送路12Aを通過した直後の位置がライン分析位置となった状態を示す。
図9(B)において、密集した加熱済体としての塊状のアルミニウム缶Sが通過した後は加熱済体がほんど存在しない状態となるため、帯状搬送路12Aが露出されている。
図9(C)は加熱済体が密集して帯状搬送路12Aを通過した後、次の加熱済体の密集部分がライン分析位置に到達せず、帯状搬送路12Aがライン分析位置となった状態を示す。
図9(D)は帯状搬送路12Aの上に小数の加熱済体がランダムに分散して存在し、それらを横切る位置がライン分析位置となった状態を示す。
【0032】
図9(A)~(D)に示すように帯状搬送路12Aに沿って加熱済体が移動する方向に対し直交するように、即ち、帯状搬送路12Aの幅方向に沿ってライン分析位置を規定すると、いずれの場合であってもライン分散位置に沿う方向(画素データが蓄積される行方向)の分散に差を生じることとなる。塊状のアルミニウム缶Sが存在しない領域は、帯状搬送路12Aの上面が露出するので、その場合の輝度は照明装置に照らされた帯状搬送路12Aの上面が示す概ね均一の輝度となる。
画面キャプチャソフトが記録したビットマップ画像のバイナリデータから1行毎のデータの分散を取ることは、帯状搬送路12Aの幅方向に沿って画素単位でライン分析を行い、ライン分析位置での分散を取ることと同義となる。
【0033】
より具体的に、画面キャプチャソフトは、上述の矩形範囲に相当する画素に応じてRGBの値を記憶手段26に策定した表のセルを埋めるように3秒おきに連続的に数値記録する。ビットマップのバイナリデータはヘッダーと画素(ピクセル)ごとのRGBの数値からなるのでこれらの値を記憶手段26に記憶することができる。
記憶手段26に記憶される文字列の一部を一例として以下の表1~表5に示す。表1~表5の例は、33画素(行)×110画素(列)に相当する画素情報を記録したデータを示す。なお、この実施形態において画面キャプチャソフトは55画素×110画素の情報を記録しているが、表1~表5に示したのは、そのうち、33画素×110画素に相当する分のビットマップのバイナリーデータを0.299×R+0.587×G+0.114×Bの計算式で輝度に変換したデータである。
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
次に、表計算ソフトは前述の記憶手段26に記憶されているRGBの数値に対し、以下の(1)式に従い輝度を算出する機能を有する。この輝度算出は、許される範囲で連続的に行っても良いし、表計算ソフトのタイマー機能を利用し、5秒おきなどのように定期的に行っても良い。
また、以下の(1)式のRGBにかかる係数は人間の輝度の間隔に近いとされる感覚的な係数であって、この値に近いものが好ましいが、この値を必ずしも使う必要はない。
【0040】
【0041】
表計算ソフトはこのように算出した輝度を記憶手段26に策定した表のセルを埋めるように数値記録する。続いて表計算ソフトは画面キャプチャソフトが定期的に画面をキャプチャして記録したビットマップのバイナリデータを定期的に読み込んで上述の(1)式から輝度を算出し、読み込んだ時間当たりの輝度を連続的に記憶手段26に記憶し、各行毎の平均輝度を算出し、平均輝度を記憶手段26に記憶する機能を有する。また、表計算ソフトは、表1~表6に示した各行毎の分散を計算する機能を有する。
分散は、以下の(2)式により示すことができる。(2)式において、s2は分散、nが測定値の数、x1,x2,x3…xnが1つ1つの測定値(xの添字は測定したデータの番号を示す)、xのオーバーバーは測定値の平均を示す。
【0042】
【0043】
表1~表5に入力データの一部を示し、表6に計算結果の一例を示す。
表6は矩形範囲の全ての行ごとの分散をそれぞれ計算し、その分散の値の最小値を求め、その値を「行毎分散min」に入力した結果を示す。これを撮影した画像ごとに行うため、3秒間隔で行えば3秒に一回データが記録される。その値が閾値以上であれば有無輝度の欄に記載され、しきい値以下なら表6の該当欄は空白となる。表1~表5の全ての入力データから表6の一行分のデータが得られる。
表計算ソフトの一例としてMicrosoft 社製Excel(商品名)を用いる場合は、各行を独立した母集団と見立ててMicrosoft 社製Excel(商品名)に備えられているVARPA関数を用いて計算することができる。
【0044】
【0045】
表6の計算結果は複数の列をまとめて行ったものである。
表6に示す輝度の欄には、算出した輝度を表示し、行毎分散minには列ごとに計算した分散の最小値を表示し、有無輝度は分散がしきい値より大きいものだけを表示したものであり、しきい値以下の場合は空白を記入するように処理する。
【0046】
以下の表7~表12に他の入力例を示し、表13にその計算例を示す。
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
例えば、表計算ソフトは、分散値の値を検証し、表13に示すデータである場合は、しきい値を400~600の範囲内において、一例として500を入力しておくと、しきい値の500を境界として該当する領域がどのような領域であるのか、判断する機能を有する。
同様に表計算ソフトは、分散値がしきい値の500未満である行はアルミニウム缶の存在しない領域と判断し、分散値が500未満の行が連続する領域はアルミニウム缶の無い領域と判断する機能を有する。
更に、表計算ソフトは、分散値がしきい値の500を超える行はアルミニウム缶の存在する領域と判断し、分散値が500を超える行が連続する領域は該当領域の全体がアルミニウム缶であると判断する機能を有する。
【0055】
表13に示す行1~行25のように、しきい値の500を超える行が連続して存在する領域の場合、対応する領域をアルミニウム缶が全体に存在する領域と判断する。
表13に示す行26~行27、行31~行32のように、しきい値の500を下回る行が連続して存在する領域の場合、対応する領域をアルミニウム缶が存在しない領域と判断する。
【0056】
前述の如くしきい値の500を下回る分散値となってアルミニウム缶が存在しない領域と見なした行について制御部25の予測手段29は本実施形態における判断から除外し、これらの行の輝度値を用いた判断は行わない。
制御部25の予測手段29は、前述の如くしきい値の500を超えた分散値となってアルミニウム缶が存在する領域と見なした領域の輝度値からのみ、塊状のアルミニウム缶Sの状態を判断する機能を有する。
例えば、輝度値を監視し、焙焼が良好になされている状態の塊状のアルミニウム缶Sが本来有する範囲の輝度値になっていれば、焙焼が十分になされていると判断し、予測手段は正常な状態と把握する。
これに対し、輝度値が望ましい範囲からはずれて輝度値が低下すると、焙焼炉において半焼け状態のアルミニウム缶が増加していると判断する。例えば、輝度値が上昇すると発火の危険が近づいていると判断する。
輝度値の範囲で判断する場合、本実施形態では一例として、輝度値、170~190の範囲が良好と判断する。なお、170を下回っても、190を超えても問題ありと判断する。例えば、180を中央値として、±10を良、±20を注意、±30を警告,それら以外を緊急の対処が必要と判断する。
【0057】
本実施形態では、カメラ本体21が撮影した帯状搬送路12Aを含む動画の画面から画面キャプチャソフトがビットマップ画像を定期的に取り出し、ビットマップ画像のバイナリデータに含まれている行毎のRGBの値から輝度を算出し、行毎の輝度の分散を求めて塊状のアルミニウム缶Sの状態を把握するというライン分析を行った。このライン分析を行うことで、分析位置を塊状のアルミニウム缶Sがどのような状態で通過しているか判断できた。
【0058】
図10は、帯状搬送路12Aの先端部を通過する塊状のアルミニウム缶35と、この塊状のアルミニウム缶35の後部に位置し、塊状のアルミニウム缶35が存在しない帯状搬送路12Aも含めた矩形状の領域K1をカメラ本体21で撮影した状態を示す。
この領域K1の全体をカメラ本体21で撮影して動画にすると、塊状のアルミニウム缶35の領域に相当する画素からの輝度と帯状搬送路12Aの表面領域に相当する画素からの輝度が混合されてしまい、塊状のアルミニウム缶35がどのような状態であるのか、判別が付かなくなる。
【0059】
図11は、帯状搬送路12Aの先端部を通過する塊状のアルミニウム缶36Aと、この塊状のアルミニウム缶36Aの後方に間隔をあけて位置する別の塊状のアルミニウム缶36Bが存在し、塊状のアルミニウム缶36Aと塊状のアルミニウム缶36Bの間に他の塊状のアルミニウム缶36Cが低い密度で分散して存在する状態において、帯状搬送路12Aも含めた矩形状の領域K2をカメラ本体21で撮影した状態を示す。
この領域K2の全体をカメラ本体21で撮影して動画にすると、塊状のアルミニウム缶36A、36B、36Cの領域に相当する画素からの輝度と帯状搬送路12Aの表面領域に相当する画素からの輝度が混合されてしまい、塊状のアルミニウム缶36A、36B、36Cがどのような状態であるのか、判別が付かなくなる。
【0060】
図12は、帯状搬送路12Aの先端部を通過する少数の塊状のアルミニウム缶37Aと、この塊状のアルミニウム缶37Aの後方に間隔をあけて位置する少量の別の塊状のアルミニウム缶37Bが存在し、塊状のアルミニウム缶37Aと塊状のアルミニウム缶37Bの間に他の塊がほとんど存在しない帯状搬送路12Aが存在する状態において、帯状搬送路12Aも含めた矩形状の領域K3をカメラ本体21で撮影した状態を示す。
この領域K3の全体をカメラ本体21で撮影して動画にすると、塊状のアルミニウム缶37A、37Bの領域に相当する画素からの輝度と帯状搬送路12Aの表面領域に相当する画素からの輝度が混合されてしまい、塊状のアルミニウム缶37A、37Bがどのような状態であるのか、判別が付かなくなる。
【0061】
以上の状態を勘案し、カメラ本体21が撮影する領域には塊状のアルミニウム缶のみが占めるように設定しないと、塊状のアルミニウム缶の正確な判別ができない問題がある。しかし、カメラ本体21が撮影する領域を矩形状に設定する限り、塊状のアルミニウム缶の輝度の正確な判別は困難と考えられる。また、帯状搬送路12Aを照明する照明装置からの光の照射状態によって帯状搬送路12Aの奥行き方向で位置毎の明るさにも差異を生じるため、輝度は不均一となる。
その上、帯状搬送路12Aを通過する塊状のアルミニウム缶の分布は一定ではなく、上述した如くばらつくこととなる。
【0062】
以上を勘案し、本実施形態では前述したようなライン分析を採用した。
前述のライン分析を採用し、行毎の輝度を求め、それらの分散値を求め、特定のしきい値を超える分散値である場合、ライン分析位置を通過しているのは塊状のアルミニウム缶が主体であると判断する。
この塊状のアルミニウム缶が主体の状態において、該当する輝度が前述の望ましい範囲からの上昇であるか、あるいは減少であるかを把握すると、白色に近い塊状のアルミニウム缶が多い分布であるのか、白色に近い塊状のアルミニウム缶の他に黒色に近い塊状のアルミニウム缶も存在する分布であるのかの判別ができる。
前述の領域の輝度の増減を把握することで、データ解析装置23の予測装置29が表示装置30の画面上に、注意、警告、緊急の対処が必要などの警告を表示する。例えば、黒色に近い塊状のアルミニウム缶の存在量が増加するとチャー付着量が増加したと判断し、予め設定した輝度範囲よりも低い場合にチャー付着量の増加が問題になったと解釈し、その程度により注意、警告、緊急の処理が必要などの警告を表示することができる。
【0063】
以上の表示に応じて焙焼炉4を監視する作業者は、焙焼炉4に付属されている再燃焼炉4Aを調整し、焙焼炉4に送る熱風の温度を調節するなどの手段により焙焼炉4の状態を制御し、焙焼炉4から排出されるアルミニウム缶の塊Sの加熱状態を調整できる。
以上の処理によると、従来、熟練作業者の目視観察によって塊状のアルミニウム缶Sの色味を逐次観察し、色味の変化に応じて塊状のアルミニウム缶の焙焼状態を把握し、焙焼炉4の運転状態を制御していた作業において、色味を判断する工程を省力化できる。このため、作業者はデータ分析装置23が表示装置30に示す塊状のアルミニウム缶を注視していれば良く、表示装置30に表示された注意、警告、緊急の対処が必要などの警告に合わせて焙焼炉4の制御作業を行えば良い。
本実施形態では、塊状のアルミニウム缶の色味の判断をデータ分析装置23が行うので、作業者の負担が少なくなるとともに、表示装置30の表示に合わせて作業者が焙焼炉の調整を行えば良いので作業者は色味の変化の応じ、迅速かつ正確に焙焼炉の調整作業に取りかかることができる。
【0064】
図8はデータ解析装置23に接続される表示装置の一例を示す斜視図である。
この例の表示装置40は、円盤状の基台41とその上面中央部に立設された棒状の表示部42を有している。この表示部42の上部側に、LED発光素子を備えた下部表示部43、中央表示部44、上部表示部45が設けられている。下部表示部43には緑色または青色を発光するLED発光素子が組み込まれ、中央表示部44には黄色を発光するLED発光素子が組み込まれ、上部表示部45には赤色を発光するLED発光素子が組み込まれている。
【0065】
これらの表示装置40をデータ解析装置23の出力手段27に接続し、上述したように制御部25が出力手段27を操作して警告を出す場合、警告の内容に合わせて下部表示部43、中央表示部44、上部表示部45を発光できるように構成される。
制御部25が出力手段27を操作して警告を出す場合、異常発生の場合は、上部表示部45を発光させて赤色表示を行い、注意の場合は中央表示部44を発光させて黄色表示を行い、正常の場合は下部表示部43を発光させて青色表示あるいは緑色表示を行う。
【0066】
表示装置40を用いて赤色表示、黄色表示、青色表示あるいは緑色表示の何れかを選択することで、焙焼炉を操作している作業者は塊状のアルミニウム缶の焙焼状態を表示装置40の発光色に応じて容易に把握することができる。表示装置40で赤色表示がなされた場合は、焙焼炉の異常と判断して作業者が焙焼炉による加熱条件を変更するなどの手段を採用し、焙焼不良のアルミニウム缶の非出を抑制できる。
【0067】
また、前述の輝度から逆演算して加熱済体の温度を計算することができる。
演算の際、「温度=525.64-0.5185×輝度」で表示される関係式を用いることができる。
【0068】
ところで、本実施形態においては、一般市販あるいはフリーソフトとなる特定の画面キャプチャーソフトと表計算ソフトを用いてビットマップ画像を記録し、ビットマップ画像のバイナリーデータから輝度を算出するようにしたが、輝度を算出するソフトは実施形態で用いた例に限らない。例えば、帯状搬送路12Aの先端側を表示装置30の画面に表示している場合において、表示画面の帯状搬送路12Aの先端部分に対し、ライン分析位置に対応する画素のRGBの値を順次計測して時間毎に記憶手段26に記録する手段と、行毎の輝度算出のための手段を備えた専用のソフトを開発し、本実施形態に適用しても良い。また、行毎の分散を求めるソフトについて表計算ソフトに限らず、行毎の分散を求める手段を備えた専用のソフトを開発し、本実施形態に適用しても良い。
【符号の説明】
【0069】
S…塊状のアルミニウム缶(加熱済体)、4…焙焼炉(ロータリーキルン:加熱炉)、4A…再燃焼炉、10e…コンベア、12…振動篩、12A…帯状搬送路、20…ビデオカメラ、21…カメラ本体、22…送信装置、23…データ解析装置(パーソナルコンピュータ)、24…入力手段、25…制御部、26…記憶手段、27…出力手段、28…算出手段、29…予測手段、30…表示装置、40…表示装置、43…下部表示部、44…中央表示部、45…上部表示部。