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特許7548694熱硬化性複合材料を硬化させるための方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】熱硬化性複合材料を硬化させるための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/52 20060101AFI20240903BHJP
   B29C 43/34 20060101ALI20240903BHJP
   B29C 43/02 20060101ALI20240903BHJP
   B29C 70/06 20060101ALI20240903BHJP
   B29C 70/42 20060101ALI20240903BHJP
   B29K 101/10 20060101ALN20240903BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20240903BHJP
【FI】
B29C43/52
B29C43/34
B29C43/02
B29C70/06
B29C70/42
B29K101:10
B29K105:08
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019212920
(22)【出願日】2019-11-26
(65)【公開番号】P2020114660
(43)【公開日】2020-07-30
【審査請求日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】16/218,169
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(72)【発明者】
【氏名】マーク アール.マトスン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン エフ.スポルディング
(72)【発明者】
【氏名】ブレット アラン マクギネス ヴォス
(72)【発明者】
【氏名】アドリアーナ ダブリュ.ブロム-シーバー
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-128734(JP,A)
【文献】特開昭53-058577(JP,A)
【文献】米国特許第09277594(US,B2)
【文献】米国特許第08372327(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/52
B29C 43/34
B29C 43/02
B29C 70/06
B29C 70/42
B29K 101/10
B29K 105/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性複合材部品を硬化させるための方法であって、
加熱アセンブリ内に熱硬化性複合材部品を配置することと、
前記加熱アセンブリを用いて所定温度まで前記熱硬化性複合材部品を加熱することと、
加圧容器内に前記加熱アセンブリを配置することと、
前記加圧容器を用いて前記熱硬化性複合材部品に対して一体化圧力を加えることと、
前記加圧容器から前記加熱アセンブリを取り出すことと、
前記加熱アセンブリを用いて前記熱硬化性複合材部品を冷却することと、を含む方法。
【請求項2】
前記加熱アセンブリは、前記熱硬化性複合材部品を受けるように構成された硬化ツールを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加熱アセンブリは、前記硬化ツールに配置された前記熱硬化性複合材部品の少なくとも一部、又は、前記硬化ツールに配置された前記熱硬化性複合材部品の一部に対応する前記硬化ツールの一部を覆うように構成された1つ以上の加熱ブランケットをさらに含み、
前記1つ以上の加熱ブランケットは、前記所定温度まで前記熱硬化性複合材部品の少なくとも一部を加熱するように構成されている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記硬化ツールは、加熱要素を含み、前記硬化ツールに配置された前記熱硬化性複合材部品の少なくとも一部を前記所定温度まで加熱するように構成されている、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記硬化ツールは、熱伝導性のツール面を含み、
前記ツール面は、前記熱硬化性複合材部品の少なくとも一部に接触するように構成された第1面と、前記1つ以上の加熱ブランケットの少なくとも一部に接触するように構成された第2面と、を含み、
前記1つ以上の加熱ブランケットによって生成された熱は、前記ツール面を介して、前記ツール面に接触する前記熱硬化性複合材部品の少なくとも一部を前記所定温度まで加熱する、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項6】
前記一体化圧力は、前記熱硬化性複合材部品が前記所定温度に到達した後に前記熱硬化性複合材部品に加えられる、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記加熱アセンブリは、前記加圧容器内で前記熱硬化性複合材部品を加熱する、請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記加熱アセンブリは、当該加熱アセンブリが前記加圧容器内に配置される前に、前記所定温度まで前記熱硬化性複合材部品を加熱する、請求項1~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記加熱アセンブリは、当該加熱アセンブリが前記加圧容器内に配置された後に、前記所定温度まで前記熱硬化性複合材部品を加熱する、請求項1~8のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して熱硬化性複合材部品の製造に関し、より具体的には、熱硬化性複合材部品を加熱及び加圧により硬化させるための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー複合材料は、2つ以上の機能コンポーネントを組み合わせることによって作製される頑丈で軽量な材料であり、その一例として、ポリマー樹脂マトリクスに結合された強化繊維が挙げられる。熱硬化性複合材部品の製造には、通常、硬化及び一体化処理を完了するために、圧力及び熱の両方を加えることが必要である。例えば、熱硬化性複合材部品を処理するために、複数の異なる圧力及び温度プロファイル、すなわち、時間の関数としての変化を使用することができる。一般に、熱硬化性複合材部品の硬化は、加圧オートクレーブ内で行われ、当該オートクレーブ内において、熱硬化性複合材部品に対して一体化圧力(consolidation pressure)を加える前又はその間に、抵抗加熱要素などの熱源が、熱硬化性複合材料に熱を供給する。生産速度は、オートクレーブの温度を上げるのに必要な時間、及び、全体の硬化サイクルタイムにおいて、一体化圧力を加える前に熱硬化性複合材部品を加熱するのに必要な時間に大きく影響される。したがって、熱硬化性複合材部品を処理するためにより効率的なシステム及び方法を提供することにより、熱硬化性複合材部品の硬化サイクルタイムを短縮することが求められている。
【発明の概要】
【0003】
この概要は、本開示の1つまたは複数の実施形態についてのいくつかの側面を簡単にまとめたものにすぎない。また、この概要は、本開示の包括的な概説ではなく、本開示のキーとなる要素や重要要素を特定するものでも、本開示の範囲を規定するものでもない。むしろ、その目的は単に、以下の詳細な説明の前置きとして、いくつかの概念を簡略化した形で提示することにすぎない。
【0004】
本開示において具体化される上記態様及び/又は他の態様並びに有用性は、熱硬化性複合材部品を硬化させるための方法によって達成することができる。この方法は、加熱アセンブリ内に熱硬化性複合材部品を配置することと、前記加熱アセンブリを用いて所定温度まで前記熱硬化性複合材部品を加熱することと、加圧容器内に前記加熱アセンブリを配置することと、前記熱硬化性複合材部品の硬化が完了するまで、前記加圧容器を用いて前記熱硬化性複合材部品に対して一体化圧力を加えることと、前記加圧容器から前記加熱アセンブリを取り出すことと、前記加熱アセンブリを用いて前記熱硬化性複合材部品を冷却することと、を含む。
【0005】
前記加熱アセンブリは、前記熱硬化性複合材部品を受けるように構成された硬化ツールを含みうる。
【0006】
前記加熱アセンブリは、前記硬化ツールに配置された前記熱硬化性複合材部品の少なくとも一部、又は、前記硬化ツールに配置された前記熱硬化性複合材部品の一部に対応する前記硬化ツールの一部を覆うように構成された1つ以上の加熱ブランケットをさらに含みうる。前記1つ以上の加熱ブランケットは、前記所定温度まで前記熱硬化性複合材部品の少なくとも一部を加熱するように構成されている。
【0007】
前記硬化ツールは、加熱要素を含みうる。また、前記硬化ツールは、当該硬化ツールに配置された前記熱硬化性複合材部品の少なくとも一部を前記所定温度まで加熱するように構成することができる。
【0008】
前記硬化ツールは、熱伝導性のツール面を含みうる。前記ツール面は、前記熱硬化性複合材部品の少なくとも一部に接触するように構成された第1面と、前記1つ以上の加熱ブランケットの少なくとも一部に接触するように構成された第2面と、を含み、前記1つ以上の加熱ブランケットによって生成された熱は、前記ツール面を介して、前記ツール面に接触する前記熱硬化性複合材部品の少なくとも一部を前記所定温度まで加熱する。
【0009】
前記1つ以上の加熱ブランケットのうちの少なくとも1つは、スマートサセプタを含む誘電加熱ブランケットであってもよく、前記スマートサセプタは、前記所定温度に対応するキュリー温度を有していてもよい。
【0010】
前記一体化圧力は、前記熱硬化性複合材部品が前記所定温度に到達した後に前記熱硬化性複合材部品に加えられる。
【0011】
前記加熱アセンブリは、前記加圧容器内で前記熱硬化性複合材部品を加熱してもよい。
【0012】
前記加熱アセンブリは、前記熱硬化性複合材部品を加熱するための加熱源であってもよい。
【0013】
前記加熱アセンブリは、前記熱硬化性複合材部品が冷却される前に前記加圧容器から取り出されてもよく、前記熱硬化性複合材部品の冷却は、前記加圧容器の外側で完了してもよい。
【0014】
前記加熱アセンブリは、当該加熱アセンブリが前記加圧容器内に配置される前に、前記所定温度まで前記熱硬化性複合材部品を加熱してもよい。
【0015】
前記加熱アセンブリは、当該加熱アセンブリが前記加圧容器内に配置された後に、前記所定温度まで前記熱硬化性複合材部品を加熱してもよい。
【0016】
前記所定温度は、前記熱硬化性複合材部品の硬化温度プロファイルに沿った1つ以上の温度であってもよい。また、前記一体化圧力は、前記熱硬化性複合材部品の硬化圧力プロファイルに沿って加えられる1つ以上の圧力であってもよい。
【0017】
本開示において具体化される上記態様及び/又は他の態様並びに有用性はまた、以下に述べる熱硬化性複合材部品を硬化させるための方法によっても達成することができる。この方法は、加熱アセンブリ内に熱硬化性複合材部品を配置して、前記熱硬化性複合材部品の温度プロファイルに従って前記熱硬化性複合材部品を加熱することと、前記熱硬化性複合材部品が所定温度に到達したときに、加圧容器内に前記熱硬化性複合材部品を配置して、前記熱硬化性複合材部品の圧力プロファイルに従って前記熱硬化性複合材部品に一体化圧力を加えることと、前記加圧容器から熱硬化性複合材部品を取り出して、前記熱硬化性複合材部品を冷却することと、を含む。
【0018】
前記加熱アセンブリは、前記熱硬化性複合材部品のための唯一の加熱源であってもよい。
【0019】
前記加熱アセンブリは、前記熱硬化性複合材部品の少なくとも一部を加熱するように構成された1つ以上の加熱ブランケットを含みうる。
【0020】
前記熱硬化性複合材部品の加熱は、前記加圧容器の外側で開始してもよく、前記熱硬化性複合材部品の冷却は、前記加圧容器の外側で完了してもよい。
【0021】
本開示において具体化される上記態様及び/又は他の態様並びに有用性はまた、熱硬化性複合材部品を硬化させるためのシステムによって達成することもできる。このシステムは、加熱アセンブリと、加圧容器と、を含み、前記加熱アセンブリは、熱硬化性複合材部品を受けて、所定温度まで前記熱硬化性複合材部品を加熱するように構成されており、前記加圧容器は、前記加熱アセンブリが前記加圧容器内に配置されると、前記熱硬化性複合材部品に対して一体化圧力を加えるように構成されている。
【0022】
前記加熱アセンブリは、硬化ツールを含みうる。当該硬化ツールは、前記熱硬化性複合材部品を受けるとともに、前記所定温度まで前記熱硬化性複合材部品の少なくとも一部を加熱する。
【0023】
前記硬化ツールは、加熱面を含みうる。当該加熱面は、前記熱硬化性複合材部品に接触するとともに、前記所定温度まで前記熱硬化性複合材部品の少なくとも一部を加熱するように構成されている。
【0024】
前記硬化ツールは、熱伝導性表面を含みうる。当該熱伝導性表面は、前記熱硬化性複合材部品に接触するとともに、熱を伝達することによって前記所定温度まで前記熱硬化性複合材部品の少なくとも一部を加熱するように構成されている。
【0025】
前記加熱アセンブリは、誘導加熱ブランケットをさらに含みうる。前記誘導加熱ブランケットは、前記硬化ツールに配置された前記熱硬化性複合材部品の少なくとも一部、又は、前記熱硬化性複合材部品の一部に対応する前記硬化ツールの一部を覆うとともに、前記所定温度まで前記熱硬化性複合材部品の少なくとも一部を加熱するように構成されている。
【0026】
前記加熱アセンブリは、前記加圧容器の外側及び内部で前記熱硬化性複合材部品を加熱するように構成されてもよい。
【0027】
前記加熱アセンブリは、当該加熱アセンブリが前記加圧容器内に配置される前に、前記所定温度まで前記熱硬化性複合材部品を加熱するように構成されてもよい。
【0028】
前記加熱アセンブリは、前記熱硬化性複合材部品が完全に冷却される前に前記加圧容器から取り出されるように構成されてもよく、前記熱硬化性複合材部品は、前記加圧容器の外側で前記加熱アセンブリによって冷却されてもよい。
【0029】
本開示を適用可能なさらなる分野は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。なお、詳細な説明及び具体例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、例示のみを目的とするものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付図面は、本開示の実施形態を説明するものであり、本明細書の記載と併せて、本開示の原理を説明することを目的とするものである。
【0031】
図1】本開示の実施形態による熱硬化性複合材部品を硬化させるためのシステムを示す図である。
図2図1において「図2」で示された領域の断面図である。
図3】本開示の実施形態による加熱ブランケットを示す斜視図である。
図4図3の加熱ブランケット、及び、関連する電力及び制御システムを示す概略図である。
図5図4の断面図である。
図6図5において「図6」で示された領域の図である。
図7】本開示の実施形態による、熱硬化性複合材部品を硬化させるための方法を示す図である。
図8】本開示の実施形態による、熱硬化性複合材部品を硬化させるための方法を示す図である。
図9A-9D】本開示の実施形態による、熱硬化性複合材部品を硬化させるための方法を示す図である。
図10】航空機の製造及び保守方法を示すフロー図である。
図11】航空機を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
なお、図面においては、構造的精度、詳細、及び、縮尺を厳密に維持するのではなく、一部詳細を簡略化したり、本開示を理解し易くするように描いたりしているものもある。
【0033】
本開示の例示的な実施態様について、添付図面に示す実施例を参照して、以下に詳細に説明する。概して、図面全体に亘って同一又は類似した部分には同じ参照符号を使用している。
【0034】
熱硬化性複合材部品は、一般に、適用する圧力、温度、並びに、これらの圧力及び温度が維持される期間を指定する所定の硬化スケジュールに従って、当該部品に対して熱及び圧力を加えることによって硬化される。硬化スケジュールにおけるこれらの温度及び圧力は、硬化温度プロファイル及び一体化圧力プロファイルと呼ばれる場合もある。
【0035】
繊維強化熱硬化性ポリマー複合材部品に関して、硬化とは、一般に、繊維強化熱硬化性ポリマー複合材部品の繊維を架橋(crosslink)させて一体化するために熱及び/又は圧力を加えることを指す。熱硬化性樹脂は、圧力を加えずに部分的に硬化させる(すなわち、架橋させる)ことが可能であるが、この結果として、一体化が不十分な部品が形成される場合が多い。したがって、本書において、「硬化」は、本開示の熱硬化性複合材部品などの繊維強化熱硬化性ポリマー複合材部品に対して(硬化/架橋を目的として)加熱すること、及び、(一体化を目的として)加圧することの両方を含むものとする。
【0036】
後述するように、本願発明者は、加熱及び加圧の両方を必要とする、熱硬化性複合材部品を硬化させるための新しいシステム及び方法を開発した。なお、システム及び方法についての以下の説明は、熱硬化性複合材部品に関するものであるが、本開示はこれに限定されない。以下に説明するシステム及び方法は、硬化に際して加熱及び加圧を必要とする他の材料にも使用することが可能であり、例えば、構造物を接合する際に接着剤を硬化させるため、及び、熱可塑性繊維強化複合材料を一体化するために使用することが可能である。
【0037】
図1に示すように、本開示の一実施形態において、熱硬化性複合材部品100を硬化させるためのシステム1は、加熱アセンブリ200と、加圧容器300とを含みうる。加熱アセンブリ200は、熱硬化性複合材部品100を受けて、例えば、硬化温度などの所定温度まで、或いは、熱硬化性複合材部品100の硬化に要する硬化温度プロファイルに従って、当該熱硬化性複合材部品100を加熱するように構成することができる。加圧容器300は、例えば、熱硬化性複合材部品100が硬化温度、又は、硬化温度プロファイルの特定温度に到達した後、加熱アセンブリ200が加圧容器300に配置されると、熱硬化性複合材部品100に対して、一体化圧力、又は、一体化圧力プロファイルを適用するように構成することができる。
【0038】
熱硬化性複合材部品100は、硬化させるために予め選択された温度までの加熱を要する炭素繊維エポキシ樹脂又は他の熱硬化性樹脂などの繊維強化ポリマー樹脂の積層プライを含みうる。例えば、図1~2に示すように、熱硬化性複合材部品100は、内面シート160と外面シート180との間に挟まれたハニカムコア140のサンドイッチパネルを含む。一実施形態においては、ハニカムコア140は、所定温度で安定している。内面シート160及び外面シート180の各々は、炭素繊維エポキシ樹脂などの繊維強化熱硬化性樹脂の複数の積層プライ(図示略)を含みうる。なお、図1~2には1つのタイプの熱硬化性複合材部品100が示されているが、本開示はこれに限定されず、熱硬化性複合材部品100は、様々な他の構造及び形状を有しうる。
【0039】
一体化は、複合材製品の硬化処理における重要な工程である。一般に、複合材製品の処理においては、熱硬化性樹脂の架橋反応によって生じる捕捉空気や揮発性物質を除去するために、一体化圧力が加えられる。一体化処理はまた、最終的な硬化複合材製品における繊維及び樹脂を密接に接触させるのに役立つ。
【0040】
したがって、いくつかの実施形態においては、加圧容器300は、熱硬化性複合材部品100に対して所定圧力を加えるように構成されている。例えば、加圧容器300は、所定期間に亘って熱硬化性複合材部品100に対して一体化圧力を加えるように構成することができる。一実施形態においては、一体化圧力を加えるための所定期間は、例えば、硬化温度などの所定温度まで熱硬化性複合材部品100を加熱した後にのみ開始する。他の実施形態においては、一体化圧力を加えるための所定期間は、所定温度まで熱硬化性複合材部品100を加熱する前に開始する。いくつかの実施形態においては、温度及び圧力のプロファイルに従って、時間及び温度の関数として圧力レベルを増減することができる。
【0041】
一実施形態においては、一体化圧力は、500psi以下、400psi以下、又は、300psi以下である。他の実施形態においては、一体化圧力は、約100psiから約750psiであってもよい。また、ある実施形態においては、一体化圧力は、ほぼ大気圧から約500psiまでであってもよい。
【0042】
いくつかの実施形態においては、加熱アセンブリ200は、所定温度まで熱硬化性複合材部品100を加熱するように構成された唯一のコンポーネントである。したがって、いくつかの実施形態においては、加熱アセンブリは、熱硬化性複合材部品を加熱するための加熱源である。他の実施形態においては、加圧容器300は、熱硬化性複合材部品100を加熱するように構成されていない。また他の実施形態においては、加圧容器300は、硬化温度等、所定の温度まで熱硬化性複合材部品100を加熱しうる加熱要素は含んでいない。いくつかの実施形態においては、加圧容器300は、加熱機能を有するオートクレーブであってもよいが、この場合でも、加圧容器300は熱硬化性複合材部品100の加熱には使用されない。
【0043】
一実施形態においては、所定温度又は温度プロファイルは、室温よりも僅かに高い温度(80°F)から約820°Fまでであってもよい。他の実施形態においては、所定温度又は温度プロファイルは、室温よりも僅かに高い温度(80°F)から約350°Fまでであってもよい。
【0044】
加圧容器300は、加熱アセンブリ200を支持する硬化ラック(cure rack)310を含みうる。いくつかの実施形態においては、加圧容器300及び/又は硬化ラック310は、加圧容器300内の加熱アセンブリ200に電力を供給するための給電部330をさらに含みうる。
【0045】
複数の熱硬化性複合材料100の処理速度を上げるために、いくつかの実施形態においては、加圧容器300は、1つ以上すなわち1つまたは複数の加圧チャンバ350(図9に示す加圧チャンバ351~352を参照)を含む。
【0046】
加圧容器300は、上記1つ以上の加圧チャンバ350間においてエアロック(図9に示すエアロック353、354、355)をさらに含んでもよく、これにより、各々が熱硬化性複合材部品100を支持する様々な加熱アセンブリ200が、加圧容器300内を容易に移動することができる。例えば、この処理については、後述する方法900の説明を参照のこと。
【0047】
一実施形態においては、加熱アセンブリ200は、硬化ツール210と、1つ以上の加熱ブランケット220とを含む。加熱アセンブリは、加圧容器300内に移動するように構成することができる。また、加圧容器300は、加圧容器300内で加熱アセンブリ200を支持するための硬化ラック310を含みうる。
【0048】
いくつかの実施形態においては、システム1は、加圧容器300内へ、及び/又は、当該容器内で加熱アセンブリ200を搬送するためのカート400(図示略)を含む。カート400は、例えば、加熱アセンブリ200を支持することや、当該加熱アセンブリ200に対して電力を供給するための搭載電源(on-board power source)、例えば交流電源364を提供することが可能である。他の実施形態においては、カート400は、加圧容器300の給電部330に接続するように構成されていてもよい。これにより、当該カートが加圧容器300内にあるときに、加熱アセンブリ200に対する電力供給が可能となる。他の実施形態においては、カートは、加熱アセンブリに対して搭載真空源(on-board source of vacuum)を提供することができる。カートは、レール、又は、架空軌道(overhead tracts)に支持されて移動するように構成することができ、加圧容器300は、当該加圧容器300内へ及び/又は当該容器内で、カート400が移動するのを許容するように構成することができる。いくつかの実施形態においては、カート400は自走式であってもよい。
【0049】
硬化ツール210は、硬化処理中、熱硬化性複合材部品100を受けて支持するように構成することができる。例えば、硬化ツール210は、熱硬化性複合材部品100の形状に実質的に一致する形状を有する受け面211を有しうる。
【0050】
いくつかの実施形態においては、硬化ツール210は、加熱されてもよい。例えば、硬化ツール210は、加熱ツール面214を含む。加熱ツール面214は、受け面211に設けられてもよいし、受け面211の少なくとも一部を覆ってもよい。加熱ツール面214は、硬化ツール210に支持される熱硬化性複合材部品100の少なくとも一部に接触するように構成することができる。
【0051】
加熱ツール面214は、たとえば、エポキシ又はビスマレイミド(BMI)などの適切な樹脂からなる剛性層を含んでおり、この剛性層中に誘導加熱回路215が収容された構成とされる。樹脂の剛性層は、加熱ツール面214の上面を形成してもよく、硬化ツール210に設けられる熱硬化性複合材部品100の下面に適合するように構成されてもよい。他の実施形態においては、例えば、限定するものではないが、ポリベンゾオキサジン(BXA)などの他の樹脂を用いて加熱ツール面214を形成することも可能である。
【0052】
誘導加熱回路215は、複数の誘導コイル回路を含んでもよく、加熱ツール面214は、例えば、硬化温度又は温度プロファイルなどの所定の温度まで熱硬化性複合材部品100の少なくとも一部を加熱するように構成することができる。いくつかの実施形態においては、誘導加熱を用いて硬化ツール210を加熱するが、本開示はこれに限定されず、例えば、抵抗加熱、強制空気、加熱油などの他の加熱方法を用いて硬化ツール210を加熱してもよい。
【0053】
いくつかの実施形態においては、加熱ツール面214は、熱伝導性ツール面であって、加熱ツール面214に接触して配置された加熱ブランケット220によって加熱される。例えば、加熱ツール面214の第1面は、熱硬化性複合材部品100の少なくとも一部に接触していてもよく、これとは反対側の加熱ツール面214の第2面は、1つ以上の加熱ブランケット220の少なくとも一部に接触していてもよい。このようにすると、1つ以上の加熱ブランケット220からの熱が、加熱ツール面214を介して伝達され、熱硬化性複合材部品100の少なくとも一部を加熱することができる。
【0054】
図1~2に示すように、熱硬化性複合材部品100は、硬化ツール210に配置される。そして、加熱ツール面214と接触する熱硬化性複合材部品100の少なくとも一部が、加熱ツール面214において、1つ以上の加熱ブランケット220によって直接的又は間接的に加熱される。
【0055】
1つ以上の加熱ブランケット220は、硬化ツール210に支持された熱硬化性複合材部品100の少なくとも一部を加熱するために使用される。例えば、図1~2に示すように、1つ以上の加熱ブランケット220は、硬化ツール210の上面に配置された熱硬化性複合材部品100に接触して直接当該部品を加熱するために、熱硬化性複合材部品100上に直接配置してもよい。他の実施形態においては、1つ以上の加熱ブランケット220は、熱硬化性複合材部品100を間接的に加熱するために、硬化ツール210の露出した外面を加熱するように配置されてもよい。
【0056】
以下に詳述するように、1つ以上の加熱ブランケット220は、電気誘導により熱を生成し、生成された熱は、主に伝導により熱硬化性複合材部品100、及び/又は、硬化ツール210に伝達される。ただし、熱硬化性複合材部品100の形状、硬化ツール210、及び/又は、1つ以上の加熱ブランケット220の配置によっては、熱は、対流及び放射によっても伝達される場合がある。一実施形態においては、1つ以上の加熱ブランケット220のうちの少なくとも1つは、誘導加熱ブランケットである。
【0057】
1つ以上の加熱ブランケット220は、これらのブランケットが、熱硬化性複合材部品100又は硬化ツール210の形状に実質的に一致することが可能な柔軟材料で形成されてもよい。
【0058】
1つ以上の加熱ブランケット220は、様々な加熱技術のうち任意のものを用いて、硬化温度又は温度プロファイルなどの所定温度まで熱硬化性複合材部品を加熱するのに必要な熱を生成することができる。例えば、図3~6には、加熱ブランケット220の1つの適切な実施形態の詳細が示されており、この実施形態においては、熱を生成するために、高周波交流電力の印加と組み合わせて磁性材料の磁気特性が採用されている。この例示的な実施形態においては、加熱ブランケット220は、ハウジング242を形成する上側及び下側の表面シート246、248を含み、当該ハウジングの内部244は、熱伝導性マトリクス250(図5)が充填されている。上側及び下側の表面シート246、248は、好ましくは、比較的高い熱伝導率及び比較的低い電気伝導率を有する可撓性の弾性材料で形成される。例えば、上側及び下側の表面シート246、248は、加熱ブランケット220が、凹凸のある表面や起伏のある表面を含む、熱硬化性複合材部品100の表面の少なくとも一部、及び/又は、硬化ツール210の少なくとも一部に一致するのに十分な可撓性を維持しつつ、ハウジング242に寸法安定性を与えることができるシリコーン、ゴム、ポリウレタン、又は、他の適切なエラストマーを含む。一実施形態においては、マトリクス250は、誘導加熱要素252の周りに成型されたエラストマーを含む。しかしながら、さらに他の実施形態においては、加熱ブランケット220は、可撓性を有しておらず、ハウジング242は、特定の用途又は熱硬化性複合材部品100に適合する永久的な非可撓性形状に形成されてもよい。
【0059】
上述したように、誘導加熱要素252は、マトリクス250に埋め込まれていてもよい。誘導加熱要素252は、たとえば、導電体254およびその周囲のサセプタスリーブ256を含み、これらが同軸状となるように構成されている。導電体254は、例えば限定するものではないが、リッツ線であり、その周りに螺旋型サセプタがスリーブとして設けられている。サセプタスリーブ256は、実質的に導電体254の長さ全体に亘って延在していてもよい。軸方向に沿って導電体254とサセプタスリーブ256とが互いに離間することで、導電体254とサセプタスリーブ256とが電気的に絶縁されている。開示された実施形態においては、誘導加熱要素252は、略平行な複数のレッグ部を有する蛇行パターンに配置されているが、他のパターンやレイアウト配置も可能である。例示的な実施形態においては、1つの誘導加熱要素252のみが示されているが、他の実施形態は、複数の誘導加熱要素252を含んでいてもよい。サセプタスリーブ256は、導電体254を流れる交流電流により誘導加熱される。誘導加熱サセプタスリーブ256が、マトリクス250に熱を伝達すると、当該マトリクスは、ハウジング242を介して、加熱ブランケット220に接触する熱硬化性複合材部品100及び/又は硬化ツール210(図1及び2)に対して熱を伝達する。
【0060】
マトリクス250は、当該マトリクス250の加熱を助けるために、強磁性又は超常磁性の粒子(図示略)を含みうる。強磁性粒子を使用する場合、マトリクス250は、当該強磁性粒子のキュリー温度よりも実質的に低い温度まで当該強磁性粒子のヒステリシス加熱を行うことにより加熱される。超常磁性粒子がマトリクス250に組み込まれる場合、マトリクス250を介して伝達される熱は、超常磁性粒子のサイズ又は直径に関連するキュリー温度範囲に対応する超常磁性粒子の緩和加熱(relaxation heating)によって生成される。
【0061】
特に図4を参照すると、適切な配線258により、可搬型又は固定型の給電部である交流給電部264に加熱要素252が接続される。給電部264は、例えば限定するものではないが、従来の60Hz、110ボルト又は220ボルトのコンセント(図示略)などの電源に接続されている。給電部264は、約1000Hzから約300000Hzの範囲の交流電流を導体254に供給することが望ましいが、これより高い周波数も可能である。導電体254に供給される交流電流の大きさ又は周波数を調節し易くするために、加熱ブランケット220と、当該ブランケットが設けられる構造物との間に1つ以上の熱センサ262を設けて、当該構造物の温度を監視することも可能である。熱センサ262により監視された温度に基づいて、適切なコントローラ260によって給電部264を調節することができる。
【0062】
図5及び6に示すように、サセプタスリーブ256は、キュリー温度を有する磁性材料で形成される。サセプタスリーブ256は、円筒状の一体的又は単一のコンポーネントとして形成することができるが、加熱ブランケット220の可撓性を高めるために、導電体254の周囲のスリーブ構成を有する編組材料で形成することがより好ましい。
【0063】
交流が導電体254を流れることにより、サセプタスリーブ256を囲む磁場268が生成される。磁場268に導電体254を曝すことによって当該導電体に渦電流270が生成され、これらの渦電流270によりサセプタスリーブ256の誘導加熱が生じる。その後、サセプタスリーブ256からの熱がマトリクス材料250に伝達され、ハウジング242から熱硬化性複合材部品100及び/又は硬化ツール210(図1及び2)、或いは、他の構造体に伝達される。サセプタスリーブ256を形成する磁性材料は、高い透磁率を有することが好ましく、また、加熱ブランケット220によって熱硬化性複合材部品100を加熱する際の目標温度、すなわち、熱硬化性複合材部品100の硬化温度に対応するキュリー温度を有することが好ましい。サセプタスリーブ256及び導電体254の寸法及び構成は、サセプタスリーブ256のキュリー温度よりも低い温度において、その透磁率により、磁場268が、サセプタスリーブ256に集中するように決定するのが好ましい。
【0064】
交流電流の印加中、サセプタスリーブ256の加熱は、当該サセプタスリーブ256を形成する磁性材料がキュリー温度に到達するまで継続する。サセプタスリーブ256は、キュリー温度に到達すると非磁性になり、この時点で、磁場268はサセプタスリーブ256に集中しなくなる。誘導された渦電流270、及び、関連する抵抗加熱は、キュリー温度でサセプタスリーブ256の温度を維持するのに十分なレベルまで減少する。この結果、熱硬化性複合材部品100及び/又は硬化ツール210は、硬化サイクルの期間において所望温度に加熱された状態で維持され、この時点で導電体254から交流電流が除去される。
【0065】
図3~6には、加熱ブランケット220のいくつかの可能な構成のうちの1つのみが示されている。なお、他の構成も可能である。例えば、限定するものではないが、サセプタスリーブ256は、リッツ線(導電体254)に巻き付けられたバネ形状のコイルを含んでもよい。これに代えて、加熱ブランケット220は、編組設計を採用してもよく、この場合、編組体は一方向においてリッツ線254を含み、当該編組体の他方向において、スマートサセプタワイヤを含んでいてもよい。さらに、他の実施形態においては、スマートサセプタ256が、リッツ線で形成されたフラットなソレノイドコイル(図示せず)に収容されていてもよい。
【0066】
図1~2に示すように、いくつかの実施形態においては、熱硬化性複合材部品100を、硬化ツール210上に配置し、1つ以上の加熱ブランケット220を、熱硬化性複合材部品100の真上に配置するか、或いは、熱硬化性複合材部品100を支持する硬化ツール210の一部に接触させて配置し、これによって、1つ以上の加熱ブランケット220と直接、或いは、間接的に接触する熱硬化性複合材部品100の少なくとも一部が、1つ以上の加熱ブランケット220によって加熱されるようにしてもよい。
【0067】
加熱アセンブリ200は、真空バッグアセンブリ290(図示せず)を含みうる。いくつかの実施形態においては、真空バッグアセンブリ290は、1つ以上の加熱ブランケット220の上方に取り付けることができる。例えば、真空バッグアセンブリ290は、1つ以上の加熱ブランケット220のうちの少なくとも1つを覆うためのバギングフィルムを含んでもよく、当該フィルムは、封止剤によって、硬化ツール210及び/又は熱硬化性複合材部品100の上面に封止されてもよい。いくつかの実施形態においては、真空バッグアセンブリ290を真空引きして負圧を印加することにより、熱硬化性複合材部品100の硬化処理で生成されうる揮発性物質や他のガスを引き出す。他の実施形態においては、1つ以上の加熱ブランケット220のうちの少なくとも1つに対して真空バッグアセンブリ290を配置及び封止し、硬化処理において、硬化ツール210に対して熱硬化性複合材部品100を押し固める。他の実施形態においては、真空バッグアセンブリ290は、熱硬化性複合材部品100に直接取り付けられてもよく、1つ以上の加熱ブランケット220を覆わなくてもよい。
【0068】
いくつかの実施形態においては、カート400は、真空バッグアセンブリ290のための真空源を提供する。
【0069】
図7には、本開示の実施形態による、熱硬化性複合材部品を硬化させるための方法が示されている。
【0070】
図7に示すように、熱硬化性複合材部品100を硬化させるための方法800は、工程810において、加熱アセンブリ200に熱硬化性複合材部品100を配置することで開始する。
【0071】
工程810は、硬化ツール210に対して未硬化の熱硬化性複合材部品100を配置することを含みうる。いくつかの実施形態においては、1つ以上のブランケット220もまた、熱硬化性複合材部品100の少なくとも一部の真上に配置されるか、或いは、熱硬化性複合材部品100を支持する硬化ツール210の少なくとも一部に接触して配置される。いくつかの実施形態においては、熱硬化性複合材部品100の少なくとも一部は、硬化ツール210の加熱ツール面214に配置される。
【0072】
工程820においては、加熱アセンブリ200を用いて、熱硬化性複合材部品100が所定温度まで加熱される。いくつかの実施形態においては、所定温度は、熱硬化性複合材部品100の組成に対応する硬化温度である。他の実施形態においては、所定温度は、熱硬化性複合材部品100の硬化温度プロファイルに沿った温度に対応する。
【0073】
工程830においては、一体化圧力が加えられる。いくつかの実施形態においては、熱硬化性複合材部品100が所定温度に到達すると、加圧容器300内で加熱アセンブリ200が移動され、加圧容器300によって一体化圧力が加えられる。他の実施形態においては、熱硬化性複合材部品100が所定温度に到達する前に、加圧容器300内で加熱アセンブリ200が移動され、加圧容器300内において、加熱アセンブリ200によって所定温度まで当該熱硬化性複合材部品が加熱される。所定温度まで到達すると、加圧容器300によって一体化圧力が加えられる。
【0074】
いくつかの実施形態においては、加熱アセンブリ200による熱硬化性複合材部品100の加熱は、その全体が、加圧容器300の外側で行われる。他の実施形態においては、加熱アセンブリ200による熱硬化性複合材部品100の加熱は、その一部が、加圧容器300の外側で行われる。例えば、いくつかの実施形態においては、加圧容器300内に加熱アセンブリ200を配置する前に、熱硬化性複合材部品100を、樹脂が容易に流れる時点まで(すなわち、樹脂の粘度が低下するまで)加熱する。
【0075】
工程840において、熱硬化性複合材部品100は、加熱アセンブリ200により、所定期間に亘って所定温度に維持される。例えば、一実施形態においては、熱硬化性複合材部品100は、加圧容器300内における一体化圧力の印加に対応する期間に亘って所定温度に維持される。他の実施形態においては、熱硬化性複合材部品100は、加圧容器300の外側に位置する間、加圧容器300内における一体化圧力の印加中、及び、一体化圧力の印加の後、所定温度に維持される。
【0076】
工程850において、熱硬化性複合材部品100は、加熱アセンブリ200で冷却され、当該加熱アセンブリ200から取り外される。例えば、一実施形態においては、加熱アセンブリ200は、熱硬化性複合材部品100に加えられる熱を徐々に下げて、当該部品の温度を所定温度から下げていく。いくつかの実施形態においては、この温度を下げる作業は、加熱アセンブリが加圧容器300内に配置されている間に行われる。熱硬化性複合材部品100の温度が十分に下がると、加圧容器300から加熱アセンブリ200を取り出して、熱硬化性複合材部品100をさらに完全に冷却させてもよい。他の実施形態においては、熱硬化性複合材部品100がまだ所定温度であるか、或いはそれに近い温度であるときに加圧容器300から加熱アセンブリ200を取り出して、加圧容器300の外側で当該加熱アセンブリを冷却させてもよい。例えば、いくつかの実施形態においては、熱硬化性複合材部品100は、所定温度、或いはそれに近い温度で安定している。したがって、熱硬化性複合材部品100の温度が高い間に加圧容器300から当該部品を取り出して、加圧容器300の外側で冷却させてもよい。
【0077】
図8及び図9A~Dには、本開示の実施形態による、熱硬化性複合材部品を硬化させるための方法が示されている。図8~9に示すように、熱硬化性複合材部品100の処理速度を高めるために、複数のチャンバを有する加圧容器300を使用してもよい。
【0078】
方法900は、工程910(図9Aを参照)において、第1加熱アセンブリ201に第1熱硬化性複合材部品101を配置することで開始する。
【0079】
工程920において、第1熱硬化性複合材部品101は、第1加熱アセンブリ201によって所定温度まで加熱され、加圧容器300の第1加圧チャンバ351内に配置される(図9Bを参照)。一実施形態においては、第1加熱アセンブリ201は、第1熱硬化性複合材部品101が第1加圧チャンバ351内に移動される前に当該部品を所定温度まで加熱する。他の実施形態においては、第1加熱アセンブリ201は、第1熱硬化性複合材部品101が第1加圧チャンバ351内に移動された後に当該部品を所定温度まで加熱する。
【0080】
工程930においては、第1加圧チャンバ351内で、第1熱硬化性複合材部品101に対して一体化圧力が加えられる。これと同時に、第2熱硬化性複合材部品102が第2加熱アセンブリ202に配置されて、加圧容器300の外側で加熱される(図9Bを参照)。
【0081】
工程940においては、エアロック353~355を用いて、第1熱硬化性複合材部品101が第2加圧チャンバ352に移動され、第2熱硬化性複合材部品102が第1加圧チャンバ351に移動される(図9Cを参照)。
【0082】
一実施形態においては、第2加熱アセンブリ202は、第2熱硬化性複合材部品102が第1加圧チャンバ351内に移動される前に当該部品を所定温度まで加熱する。他の実施形態においては、第2加熱アセンブリ202は、第2熱硬化性複合材部品102が第1加圧チャンバ351内に移動された後に当該部品を所定温度まで加熱する。
【0083】
工程940においては、第1加圧チャンバ351内で、第2熱硬化性複合材部品102に対して一体化圧力が加えられる。これと同時に、第2加圧チャンバ352内で、第1加熱アセンブリ201によって第1熱硬化性複合材部品101が冷却される。
【0084】
いくつかの実施形態においては、第1加圧チャンバ351及び第2加圧チャンバ352のうちの少なくとも一方によって、第1熱硬化性複合材部品101及び第2熱硬化性複合材部品102に対して所定期間に亘って加圧圧力(pressurization pressure)が加えられる。他の実施形態においては、第1加圧チャンバ351及び第2加圧チャンバ352のうちの一方によって、所定期間に亘って加圧圧力が加えられる。
【0085】
工程950においては、第1熱硬化性複合材部品が、加圧容器300の第2加圧チャンバ352から取り出されて冷却される(図9Dを参照)。例えば、いくつかの実施形態においては、第1熱硬化性複合材部品101は、十分に冷却されてから第2加圧チャンバ352から取り出され、加圧容器300の外側で完全に冷却される。これと同時に、加圧容器300内に加熱された次の熱硬化性複合材部品を配置するために、第2熱硬化性複合材部品102が第2加圧チャンバ352に移動される(図9Dを参照)。いくつかの実施形態においては、エアロック353~355を使用することにより、圧力の上げ下げを繰り返すことなく、加圧容器300内で熱硬化性複合材部品を移動させることができる。すなわち、いくつかの実施形態においては、第1及び第2の熱硬化性複合材部品が加圧容器300内を移動する間、及び、加熱した次の熱硬化性複合材部品が加圧容器300に配置される間、加圧容器300内は、一体化圧力に維持されるか、或いは、硬化圧力プロファイルに沿った圧力に維持される。
【0086】
したがって、いくつかの実施形態においては、加熱アセンブリ200を使用して、加圧容器300の外側で熱硬化性複合材部品100の加熱及び冷却を行うことにより、熱硬化性複合材部品100の硬化サイクル時間を最適化して、加圧容器300内で当該部品が費やす時間を最小限に抑えることができる。
【0087】
さらに、本開示は、以下に列挙する付記に記載する例を含む。
【0088】
付記A1.熱硬化性複合材部品(100)を硬化させるための方法(800,900,1000)であって、加熱アセンブリ(200)内に熱硬化性複合材部品(100)を配置することと、前記加熱アセンブリ(200)を用いて所定温度まで前記熱硬化性複合材部品(100)を加熱することと、加圧容器(300)内に前記加熱アセンブリ(200)を配置することと、前記加圧容器(300)を用いて前記熱硬化性複合材部品(100)に対して一体化圧力を加えることと、前記加圧容器(300)から前記加熱アセンブリ(200)を取り出すことと、前記加熱アセンブリ(200)を用いて前記熱硬化性複合材部品(100)を冷却することと、を含む方法。
【0089】
付記A2.前記加熱アセンブリ(200)は、前記熱硬化性複合材部品(100)を受けるように構成された硬化ツール(210)を含む、付記A1に記載の方法(800,900,1000)。
【0090】
付記A3.前記加熱アセンブリ(200)は、前記硬化ツール(210)に配置された前記熱硬化性複合材部品(100)の少なくとも一部、又は、前記硬化ツール(210)に配置された前記熱硬化性複合材部品(100)の一部に対応する前記硬化ツール(210)の一部を覆うように構成された1つ以上の加熱ブランケット(220)をさらに含み、前記1つ以上の加熱ブランケット(220)は、前記所定温度まで前記熱硬化性複合材部品(100)の少なくとも一部を加熱するように構成されている、付記A2に記載の方法(800,900,1000)。
【0091】
付記A4.前記硬化ツール(210)は、加熱要素(252)を含み、前記硬化ツール(210)に配置された前記熱硬化性複合材部品(100)の少なくとも一部を前記所定温度まで加熱するように構成されている、付記A2又はA3に記載の方法(800,900,1000)。
【0092】
付記A5.前記硬化ツール(210)は、熱伝導性のツール面(214)を含み、前記ツール面(214)は、前記熱硬化性複合材部品(100)の少なくとも一部に接触するように構成された第1面(214)と、前記1つ以上の加熱ブランケット(220)の少なくとも一部に接触するように構成された第2面(214)と、を含み、前記1つ以上の加熱ブランケット(220)によって生成された熱は、前記ツール面(214)を介して、前記ツール面(214)に接触する前記熱硬化性複合材部品(100)の少なくとも一部を前記所定温度まで加熱する、付記A2~A4のいずれか1つに記載の方法(800,900,1000)。
【0093】
付記A6.前記加熱ブランケット(220)は、スマートサセプタを含む誘電加熱ブランケット(220)であり、前記スマートサセプタは、前記所定温度に対応するキュリー温度を有する、付記A3~A5のいずれか1つに記載の方法(800,900,1000)。
【0094】
付記A7.前記一体化圧力は、前記熱硬化性複合材部品(100)が前記所定温度に到達した後に前記熱硬化性複合材部品に加えられる、付記A1~A6のいずれか1つに記載の方法(800,900,1000)。
【0095】
付記A8.前記加熱アセンブリ(200)は、前記加圧容器(300)内で前記熱硬化性複合材部品(100)を加熱する、付記A1~A7のいずれか1つに記載の方法(800,900,1000)。
【0096】
付記A9.前記加圧容器(300)は、加熱要素(252)を有しておらず、前記加熱アセンブリ(200)は、前記熱硬化性複合材部品(100)を加熱するための唯一の加熱源である、付記A1~A8のいずれか1つに記載の方法(800,900,1000)。
【0097】
付記A10.前記加熱アセンブリ(200)は、前記熱硬化性複合材部品(100)が冷却される前に前記加圧容器(300)から取り出され、前記熱硬化性複合材部品(100)の冷却は、前記加圧容器(300)の外側で完了する、付記A1~A9のいずれか1つに記載の方法(800,900,1000)。
【0098】
付記A11.前記加熱アセンブリ(200)は、当該加熱アセンブリ(200)が前記加圧容器(300)内に配置される前に、前記所定温度まで前記熱硬化性複合材部品(100)を加熱する、付記A1~A10のいずれか1つに記載の方法(800,900,1000)。
【0099】
付記A12.前記加熱アセンブリ(200)は、当該加熱アセンブリ(200)が前記加圧容器(300)内に配置された後に、前記所定温度まで前記熱硬化性複合材部品(100)を加熱する、付記A1に記載の方法(800,900,1000)。
【0100】
付記B1.熱硬化性複合材部品(100)を硬化させるためのシステム(1)であって、加熱アセンブリ(200)と、加圧容器(300)と、を含み、前記加熱アセンブリ(200)は、熱硬化性複合材部品(100)を受けて、所定温度まで前記熱硬化性複合材部品(100)を加熱するように構成されており、前記加圧容器(300)は、前記加熱アセンブリ(200)が前記加圧容器(300)内に配置されると、前記熱硬化性複合材部品(100)に対して一体化圧力を加えるように構成されている、システム。
【0101】
付記B2.前記加熱アセンブリ(200)は、硬化ツールを含み、当該硬化ツールは、前記熱硬化性複合材部品(100)を受けるとともに、前記所定温度まで前記熱硬化性複合材部品(100)の少なくとも一部を加熱する、付記B1に記載のシステム(1)。
【0102】
付記B3.前記硬化ツールは、加熱面(214)を含み、当該加熱面は、前記熱硬化性複合材部品(100)に接触するとともに、前記所定温度まで前記熱硬化性複合材部品(100)の少なくとも一部を加熱するように構成されている、付記B2に記載のシステム(1)。
【0103】
付記B4.前記硬化ツールは、熱伝導性表面(214)を含み、当該熱伝導性表面は、前記熱硬化性複合材部品(100)に接触するとともに、熱を伝達することによって前記所定温度まで前記熱硬化性複合材部品(100)の少なくとも一部を加熱するように構成されている、付記B2又はB3に記載のシステム(1)。
【0104】
付記B5.前記加熱アセンブリ(200)は、誘導加熱ブランケット(220)をさらに含み、前記誘導加熱ブランケットは、前記硬化ツールに配置された前記熱硬化性複合材部品(100)の少なくとも一部、又は、前記熱硬化性複合材部品(100)の一部に対応する前記硬化ツールの一部を覆うとともに、前記所定温度まで前記熱硬化性複合材部品(100)の少なくとも一部を加熱するように構成されている、付記B2~B4のいずれか1つに記載のシステム(1)。
【0105】
付記B6.前記加熱アセンブリ(200)は、前記加圧容器(300)の外側及び内部で前記熱硬化性複合材部品(100)を加熱するように構成されている、付記B1~B5のいずれか1つに記載のシステム(1)。
【0106】
付記B7.前記加熱アセンブリ(200)は、当該加熱アセンブリ(200)が前記加圧容器(300)内に配置される前に、前記所定温度まで前記熱硬化性複合材部品(100)を加熱するように構成されている、付記B1~B6のいずれか1つに記載のシステム(1)。
【0107】
付記B8.前記加熱アセンブリ(200)は、前記熱硬化性複合材部品(100)が完全に冷却される前に前記加圧容器(300)から取り出されるように構成されており、前記熱硬化性複合材部品(100)は、前記加圧容器(300)の外側で前記加熱アセンブリ(200)によって冷却される、付記B1~B7のいずれか1つに記載のシステム(1)。
【0108】
本開示の実施形態は、様々な用途において使用可能であり、特に、航空宇宙、船舶、自動車を例とする輸送業における用途やその他の用途において熱硬化性複合材料を熱硬化させる場合に使用可能である。したがって、ここで図10及び11を参照すると、本開示の実施形態は、図10に示すような航空機の製造及び保守方法1000、及び、図11に示すような航空機2000に用いることができる。生産開始前の工程として、例示的な方法1000は、航空機2000の仕様決定及び設計1102と、材料調達1104とを含む。生産中の工程として、航空機2000の部品および小組立品の製造1106及びシステムインテグレーション1108とが行われる。その後、航空機2000は、認可及び納品1110の工程を経て、就航1112に入る。顧客による就航中、航空機2000は、定例の整備及び保守1114のスケジュールに組み込まれるが、これは改良、再構成、改修なども含みうる。
【0109】
方法1000の各工程は、システムインテグレータ、第三者、及び/又は、オペレータ(例えば、顧客)によって実行または実施することができる。なお、システムインテグレータは、限定するものではないが、航空機メーカ及び主要システム下請業者をいくつ含んでいてもよい。第三者は、限定するものではないが、売主、下請業者、供給業者をいくつ含んでいてもよい。オペレータは、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス組織などであってもよい。
【0110】
図11に示すように、例示的な方法1000によって製造された航空機2000は、複数のシステム2118及び内装2120を備える機体2116を含みうる。高水準システム2118の例としては、推進系2122、電気系2124、油圧系2126、環境系2128の内の1つ又は複数が挙げられる。また、その他のシステムをいくつ含んでいてもよい。航空宇宙産業に用いた場合を例として説明したが、本開示の原理は、例えば船舶及び自動車産業などの他の産業に適用してもよい。
【0111】
本明細書において具現化されているシステム及び方法は、製造及び保守方法1000における1つ又はそれ以上の何れの段階においても採用することができる。例えば、製造工程1106に対応する部品又は小組立品は、航空機2000の就航期間中に製造される部品又は小組立品と同様に組み立て又は製造することができる。また、1つ又はそれ以上の装置の実施形態、1つ又はそれ以上の方法の実施形態、或いは、それらの組み合わせを、製造段階1106及び1108で用いることによって、例えば、航空機2000の組み立て速度を実質的に速めたり、コストを削減したりすることができる。同様に、1つ又はそれ以上の装置の実施形態、1つ又はそれ以上の方法の実施形態、或いは、それらの組み合わせを、航空機2000の就航期間中に、例えば、限定するものではないが、整備及び保守1114に用いてもよい。
【0112】
本開示の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータは概算であるが、具体例における数値は可能な限り正確に記載している。しかしながら、いずれの数値も、これらの試験測定値にみられる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を本質的に含む。さらに、本明細書に開示される全ての範囲は、これらに包含される全ての部分範囲を含むと理解されるべきである。例えば、「10未満」の範囲は、最小値0と最大値10との間(及び、これらを含む)の全ての部分範囲、すなわち、1~5の範囲など、0以上の最小値及び10以下の最大値を含む全ての部分範囲を含みうる。場合によっては、パラメータとして記載した数値は負の値をとることもある。その場合、「10未満」と記載した範囲の例示的な値として、-1、-2、-3、-10、-20、-30などの負の値を想定することができる。
【0113】
本開示は1つ以上の実施形態を用いて説明されているが、添付の請求の範囲の思想及び範囲から逸脱することなく、説明された例に対して変更及び/又は修正を加えることができる。例えば、処理は、一連の行為又は事象として説明されているが、本開示は、そのような行為又は事象の順序によって限定されない。いくつかの行為は、異なる順序で起こる場合、及び/又は、本明細書に記載されたものとは異なる他の行為又は事象と同時に起こる場合がある。また、本開示の1つ以上の態様や実施形態に従って方法を実施するのに、全ての処理工程が必要でない場合もある。なお、構成要素及び/又は処理工程を追加したり、既存の構成要素及び/又は処理工程を排除又は変更したりしてもよい。さらに、本明細書で説明する行為のうちの1つ又は複数は、1つ以上の別個の処理及び/又は段階で実行することができる。さらに、詳細な説明及び請求の範囲において、「含み」、「含む」、「有し」、「有する」、「備える」等、種々の表現が用いられているが、これらは、他の要素が排除されず、包括的に具備されることを意図したものである。「少なくとも1つ」なる表現は、列挙された項目のうちの1つ以上が選択されうることを意味する。本明細書において、「のうちの1つ又は複数」なる表現が、例えばA及びBからなる項目のリストについて用いられる場合、当該表現は、Aのみ、Bのみ、或いは、A及びBであることを意味する。さらに、本明細書の記載及び請求の範囲において、一方が他方の上にある2つの材料について「上に」なる表現が用いられている場合、当該表現は、材料間の少なくとも一部の接触を意味しており、「上方に」なる表現が用いられている場合、当該表現は、これらの材料が互いに近接して配置されてはいるが、必ずしも接触しているとは限らず、間に介在する1つ以上の追加の材料が配置されている可能性があることを意味する。本明細書においては、「上」及び「上方」の何れも方向性を示すものではない。「コンフォーマル(conformal)」なる用語は、下方に設けられた材料の角度を維持することができるコーティング材料を表す。「約」なる用語は、列挙された値が、説明した実施形態の処理や構造体に適合する範囲で変更可能であることを示している。最後に、「例示的な」とは、その説明が理想的であることを意味するのではなく、単なる一例として用いられていることを示している。本明細書及び本開示の実施に鑑みれば、本開示の他の実施形態も当業者には明らかであろう。
【0114】
本願で用いられる相対位置の用語は、ワーク(workpiece)の配向に関わらず、ワークの標準面(conventional plane)又は作業面に平行な平面に基づいて規定される。本願で用いられる「水平」又は「横方向」なる用語は、ワークの配向に関わらず、ワークの標準面又は作業面に平行な平面として規定される。「垂直」なる用語は、水平方向に対して直交する方向を指す。「上」、「側(例えば、「側壁」)」、「高」、「低」、「上方」、「頂」、及び、「下側」などの用語は、ワークの配向に関わらず、ワークの標準面又は作業面をワークの頂面として、当該頂面に対して規定される。
【0115】
本明細書及び実施例は、あくまでも例示的なものであり、本開示の真の範囲及び思想は、以下の請求の範囲に示されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10
図11