(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】避難時人員把握システム
(51)【国際特許分類】
G08B 27/00 20060101AFI20240903BHJP
H04M 11/00 20060101ALI20240903BHJP
H04W 4/33 20180101ALI20240903BHJP
H04W 64/00 20090101ALI20240903BHJP
【FI】
G08B27/00 B
H04M11/00 301
H04W4/33
H04W64/00 160
(21)【出願番号】P 2020014388
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】工藤 彰久
(72)【発明者】
【氏名】河村 一利
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-103517(JP,A)
【文献】特開2004-118387(JP,A)
【文献】特開2016-045579(JP,A)
【文献】特開2015-049632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 17/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視エリアに設置され標識となる電波を送信可能な複数の据付型の送信器と、
前記電波と同一周波数帯の標識電波を送信可能な可搬型の送信器と、
前記据付型の送信器と前記可搬型の送信器からの電波を受信可能な携帯端末と、
前記携帯端末と無線通信可能なサーバと、を備えた避難時人員把握システムであって、
前記携帯端末は、前記送信器からの電波を受信して当該送信器の識別情報を含む送信器情報を前記サーバへ送信可能であり、
前記サーバは、
前記携帯端末からの送信器情報に基づいて当該携帯端末の所在位置を特定し当該所在位置を示した地図情報を前記携帯端末へ送信可能であり、
前記携帯端末から受信した送信器情報が前記可搬型の送信器の情報である場合に、一時避難場所を示した地図情報および当該一時避難場所に所在する携帯端末に関する情報を所定の機器へ送信可能であることを特徴とする避難時人員把握システム。
【請求項2】
前記サーバは、
監視エリアに設置された感知器の検出信号に基づく異常情報を受信可能であり、
前記異常情報を受信した場合に、異常発生場所を特定し前記地図情報に異常発生場所に関する情報を付加して前記携帯端末へ送信可能であることを特徴とする請求項
1に記載の避難時人員把握システム。
【請求項3】
前記感知器は火災検知システムを構成する火災感知器であり、
前記火災検知システムは、前記火災感知器からの信号に基づいて火災の判定を行う火災受信機を備え、前記火災受信機は火災発生と判定した場合に前記異常情報として火災の発生場所に関する情報を前記サーバへ送信し、
前記サーバは、前記火災受信機からの火災の発生場所に関する情報を受信すると、前記地図情報に火災発生場所に関する情報を付加して前記携帯端末へ送信することを特徴とする請求項
2に記載の避難時人員把握システム。
【請求項4】
前記可搬型の送信器を複数個備え、
前記サーバは、複数の前記携帯端末から受信した送信器情報に複数の前記可搬型の送信器の情報が含まれる場合に、複数の一時避難場所を示した地図情報および各一時避難場所に所在する携帯端末に関する情報を送信可能であることを特徴とする請求項1~
3のいずれかに記載の避難時人員把握システム。
【請求項5】
前記可搬型の送信器は、標識電波の送信機能の他に、GPS電波を受信する機能と無線通信機能を有することを特徴とする請求項1~
4のいずれかに記載の避難時人員把握システム。
【請求項6】
前記サーバに接続された表示装置を備え、
前記サーバは、一時避難場所を示した地図情報および当該一時避難場所に所在する携帯端末に関する情報を前記表示装置に表示可能であることを特徴とする請求項1~
5のいずれかに記載の避難時人員把握システム。
【請求項7】
前記携帯端末は、表示部とユーザが操作可能な操作部を備え、前記操作部の操作により、前記地図情報に従い前記表示部に表示された地図内に表示されている一時避難場所を表わす記号の移動指示が入力された場合に、前記記号の移動を指示する情報を生成して前記サーバに送信可能であり、
前記サーバは、受信した前記移動を指示する情報に基づいて、前記記号を前記表示部に表示されている地図上で移動して表示させることを特徴とする請求項1~
6のいずれかに記載の避難時人員把握システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災や地震等の災害の発生時に建物内から屋外へ避難した人員を把握することが可能な避難時人員把握システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、火災発生時に火災受信機からの情報に基づいて火災発生位置などの情報や消防活動に関する指令を、自衛消防隊員が携帯する端末などへ送信して消防活動を支援する防災支援システムが実用化されつつある。
かかる防災支援システムに関する発明としては、支援装置と端末とを備え、支援装置は異状情報を受け付けると端末に対して位置問合情報を発信し、端末は位置問合情報を受け付けると衛星測位システムを用いて自端末の位置を測定して送信し、支援装置は端末の位置が施設内にあるか否かを判定して、端末を携帯する自衛消防隊員のIDと対応付けて判定結果情報を記憶部に記憶する。そして、記憶された情報が端末の位置が施設内にあることを示す場合に、異状に関する支援情報を端末へ送信し、端末は支援情報を受けると当該支援情報を表示部に表示させるようにしたものが知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
一方、火災や地震等の災害の発生時には、建物内に逃げ遅れた滞在者がいないか確認したいことがある。かかる利用者所在管理システムに関する発明として、建物の部屋等の区画毎にビーコン装置を設置して区画IDを含むビーコン信号を繰り返し送信させ、建物を利用する利用者が携帯するスマートフォン等の端末が、ビーコン信号を受信した場合に、ビーコン信号から取り出した区画IDと自己の端末IDを含む位置通報をサーバへ送信する。そして、サーバは、利用者の端末から受信した位置通報に含まれた端末IDと区画IDに基づいて、端末が存在する区画を示す利用者所在情報を収集して管理し、火災受信機から火災検出信号を受信した場合に、利用者所在情報から火災発生区画に所在する利用者端末を検出して逃げ遅れた利用者の情報として出力するようにしたものが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-147439号公報
【文献】特開2019-032867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の防災支援システムでは、自衛消防隊の活動を支援できるものの、逃げ遅れた利用者に関する情報を取得することができなかった。一方、特許文献2の利用者所在管理システムは、逃げ遅れた利用者に関する情報を取得することができるものの、システムのある建物内から屋外へ避難した利用者の情報を取得することができない。また、屋外であれば利用者が携帯する端末のGPS機能を利用して位置を把握することも考えられるが、建物の近くの避難場所に避難することもあり、GPSの精度が低ければ避難確認には不向きである。また、避難した利用者が、携帯する端末のGPS機能を有効状態に設定しなければ、GPS情報を避難確認に利用できないという課題がある。
さらに、災害等からの避難時においては、予め設定された一時避難場所に避難した後に点呼をとる等で誰か逃げ遅れた人がいないかを確認することとなるが、人員が多かったり一時避難場所が狭かったりする場合、点呼をとる際に時間を要してしまい、一刻を争う状況にも関わらず、逃げ遅れた人の把握が遅れてしまう恐れがある。
【0006】
この発明は上記のような課題に着目してなされたものでその目的とするところは、屋内用の位置情報システムを活用して、火災や地震等の災害の発生時に建物内から屋外へ避難した人員を把握することが可能な避難時人員把握システムを提供することにある。
この発明の他の目的は、屋外に設定された任意の避難場所に所定の機能を有する装置を予め設置しておくことなく災害の発生時に避難した人員を把握することができるとともに、避難場所が変更になった場合にも容易に対応することができる避難時人員把握システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、
標識となる電波を送信可能な可搬型の送信器と、
前記可搬型の送信器からの電波を受信可能な携帯端末と、
前記携帯端末と無線通信可能なサーバと、を備えた避難時人員把握システムであって、
前記携帯端末は、前記送信器からの電波を受信して当該送信器の識別情報を含む送信器情報を前記サーバへ送信可能であり、
前記サーバは、
前記携帯端末から受信した送信器情報が前記送信器の情報である場合に、一時避難場所を示した地図情報および当該一時避難場所に所在する携帯端末に関する情報を所定の機器へ送信可能であるように構成したものである。
上記のような構成を有する避難時人員把握システムによれば、サーバが携帯端末からの送信器情報に基づいて当該携帯端末の所在位置を特定し所在位置を示した地図情報を携帯端末へ送信するため、表示部に地図情報を表示することによって携帯端末の保有者は、自己や他者の所在位置を把握することができる。
【0008】
より具体的には、
監視エリアに設置され標識となる電波を送信可能な複数の据付型の送信器と、
前記電波と同一周波数帯の標識電波を送信可能な可搬型の送信器と、
前記据付型の送信器と前記可搬型の送信器からの電波を受信可能な携帯端末と、
前記携帯端末と無線通信可能なサーバと、を備えた避難時人員把握システムであって、
前記携帯端末は、前記送信器からの電波を受信して当該送信器の識別情報を含む送信器情報を前記サーバへ送信可能であり、
前記サーバは、
前記携帯端末からの送信器情報に基づいて当該携帯端末の所在位置を特定し当該所在位置を示した地図情報を前記携帯端末へ送信可能であり、
前記携帯端末から受信した送信器情報が前記可搬型の送信器の情報である場合に、一時避難場所を示した地図情報および当該一時避難場所に所在する携帯端末に関する情報を所定の機器へ送信可能であるように構成したものである。
【0009】
ここで、「所定の機器」としては、スマートフォンやタブレット端末、PDA(personal digital assistant)のような携帯端末の他、PC(パーソナルコンピュータ)等のデータ処理装置がある。
上記のような構成を有する避難時人員把握システムによれば、サーバが携帯端末からの送信器情報に基づいて当該携帯端末の所在位置を特定し所在位置を示した地図情報を携帯端末へ送信するため、表示部に地図情報を表示することによって携帯端末の保有者は、自己や他者の所在位置を把握することができる。また、サーバが送信した一時避難場所に所在する携帯端末に関する情報を受信して、携帯端末やPC(パーソナルコンピュータ)の表示部に表示することによって、火災や地震等の災害の発生時に建物内から屋外へ避難した人員を把握することができる。なお、表示を行う機能は、所定の機器と一体の表示部の他、所定の機器に接続された液晶または有機ELディスプレイやCRT、デジタルサイネージ、プロジェクタ等であってもよい。
さらに、可搬型の送信器を備えているため、災害の発生時に送信器を、屋外に設定された任意の一時避難場所へ搬送して標識となる電波(ビーコン信号)の送信を開始させ、その電波を一時避難場所に所在する携帯端末で受信させることによって、災害の発生時に避難した人員を把握することができるとともに、避難場所が変更になった場合にも容易に対応することができる。
【0010】
ここで、望ましくは、前記サーバは、
前記監視エリアに設置された感知器の検出信号に基づく異常情報を受信可能であり、
前記異常情報を受信した場合に、異常発生場所を特定し前記地図情報に異常発生場所に関する情報を付加して前記携帯端末へ送信可能であるように構成する。
かかる構成によれば、監視エリアで異常が発生し感知器により検出された場合に、異常情報がサーバに伝達され、サーバから地図情報に異常発生場所に関する情報が付加されて携帯端末へ送信されるため、表示部に表示された地図上に異常発生場所を表示させることができ、携帯端末の保有者は避難方向を判断することができる。
なお、前記感知器は、火災や地震、津波等何らかの災害を検知するセンサのみならず、防犯用のセンサ等、避難を要する異常を検知して異常情報を発信する物であれば良い。
【0011】
さらに、望ましくは、前記感知器は火災検知システムを構成する火災感知器であり、
前記火災検知システムは、前記火災感知器からの信号に基づいて火災の判定を行う火災受信機を備え、前記火災受信機は火災発生と判定した場合に前記異常情報として火災の発生場所に関する情報を前記サーバへ送信し、
前記サーバは、前記火災受信機からの火災の発生場所に関する情報を受信すると、前記地図情報に火災発生場所に関する情報を付加して前記携帯端末へ送信するように構成する。
【0012】
かかる構成によれば、監視エリアで火災が発生した場合に、サーバから地図情報に火災発生場所に関する情報が付加されて携帯端末へ送信されるため、表示部に表示された地図上に火災発生場所を表示させることができ、携帯端末の保有者は避難方向を判断することができる。また、監視エリアが建物内部である場合、一般に火災感知器および火災受信機を備えた火災検知システムが設けられているため、既存の火災検知システムを利用して携帯端末の保有者に火災発生場所を知らせ、安全に避難させることができる。
【0013】
また、望ましくは、前記可搬型の送信器を複数個備え、
前記サーバは、複数の前記携帯端末から受信した送信器情報に複数の前記可搬型の送信器の情報が含まれる場合に、複数の一時避難場所を示した地図情報および各一時避難場所に所在する携帯端末に関する情報を送信可能であるように構成する。
かかる構成によれば、複数の一時避難場所が設定されている場合に、それぞれの一時避難場所における避難人員を把握することができる。
ここで、前記可搬型の送信器は、前記標識電波の送信機能の他に、GPS電波を受信する機能と無線通信機能を有するようにしても良い。これにより、一時避難場所を予め登録しなくても、あるいは一度設定した一時避難場所を後に変更して移動した場合にも、地図(マップ画面)の適切な位置に、一時避難場所を示すマークおよび避難人員に関する情報を表示することができる。
【0014】
また、望ましくは、前記サーバに接続された表示装置を備え、
前記サーバは、一時避難場所を示した地図情報および当該一時避難場所に所在する携帯端末に関する情報を前記表示装置に表示可能であるように構成する。
かかる構成によれば、表示装置を防災センター等に設置することによって、自衛消防隊長や防災センターが一時避難場所に避難した人員を把握することができるので、逃げ遅れた利用者の捜索など、より適切な活動を行うことが可能となる。なお、表示装置は、液晶または有機ELディスプレイの他、CRT、デジタルサイネージ、プロジェクタ等であってもよい。
【0015】
また、望ましくは、前記携帯端末は、表示部とユーザが操作可能な操作部を備え、前記操作部の操作により、前記地図情報に従い前記表示部に表示された地図内に表示されている一時避難場所を表わす記号の移動指示が入力された場合に、前記記号の移動を指示する情報を生成して前記サーバに送信可能であり、
前記サーバは、受信した前記移動を指示する情報に基づいて、前記記号を前記表示部に表示されている地図上で移動して表示させるように構成する。
かかる構成によれば、火災の延焼等により、既に設定されていた一時避難場所が避難場所として適切でなくなった場合に、携帯端末を用いて容易に一時避難場所の位置を変更することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の避難時人員把握システムによれば、火災や地震等の災害の発生時に建物内から屋外へ避難した人員を迅速に把握することが可能となる。また、屋外に設定された任意の避難場所に所定の機能を有する装置を予め設置しておくことなく災害の発生時に避難した人員を把握することができるとともに、避難場所が変更になった場合にも容易に対応することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態の避難時人員把握システムの一構成例を示すブロック図である。
【
図2】実施形態の避難時人員把握システムを構成する携帯端末が実行する位置情報表示処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図3】(a)は位置情報サーバが実行する平常時処理の手順の一例を示すフローチャート、(b)は位置情報サーバが実行する火災時処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図4】火災が発生していない場合に一般ユーザの携帯端末の表示部に表示されるマップ画面の一例を示す図である。
【
図5】火災が発生している場合に管理者権限端末または一般端末の表示部に表示されるマップ画面の一例を示す図である。
【
図6】火災が発生している場合に一般ユーザの携帯端末の表示部に表示されるマップ画面の一例を示す図である。
【
図7】携帯端末に表示される管理者用操作画面の一例を示す図である。
【
図8】管理者用操作画面において一時避難場所を移動する機能を示す画面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明に係る避難時人員把握システムの実施形態について説明する。
図1は、本発明を適用した避難時人員把握システムの一実施形態の概略構成を示すブロック図である。なお、
図1において、実線Bで囲まれた領域は建物の内部空間を、また符号E1,E2が付された領域は各フロアや壁で仕切られたエリアの空間を示している。本実施形態の避難時人員把握システムは、
図1に示すように、建物内部の所定エリア内の複数の箇所に配設されている据付型のビーコン(送信器)10Aと、可搬型のビーコン10Bと、ビーコン10Aまたは10Bからの信号(電波)を受信可能な携帯端末20と、携帯電話基地局30及びインターネット等の通信ネットワークNを介して携帯端末20との間でデータ通信を行う位置情報サーバ40を備える。
【0019】
また、本実施形態の避難時人員把握システムは、建物内部の所定エリア内の複数の箇所に配設されている火災感知器50からの火災検出信号を受信可能な火災受信機60と、ゲートウェイ(中継器)70及びインターネット等の通信ネットワークNを介して火災受信機60との間でデータ通信を行う火災情報サーバ80とを備える。
上記複数の火災感知器50と火災受信機60とによって火災検知システムが構成されており、火災受信機60はいずれかの火災感知器50からの火災検出信号を受信する火災の判定を行い、火災と判定すると火災発報を行う。位置情報サーバ40と火災情報サーバ80は通信ネットワークNを介してデータ通信を行うことができる。なお、位置情報サーバ40と火災情報サーバ80は1つの支援サーバとして構成しても良い。
【0020】
携帯端末20へ無線信号(機器IDや設備情報などの固有情報)を発信するビーコン10の通信方式としては、例えばBluetooth(登録商標)通信やIEEE 802.11規格に従ったWiFi等の無線LAN、赤外線通信、可視光通信など公知の通信方式を利用することができる。ビーコン10Aを配置する間隔は特に限定されないが、以下の説明では、建物内の空間を網羅できるよう、隣接するそれぞれのビーコン10Aの通信範囲が互いに重なるような距離をおいて配置されているものとする。
【0021】
具体的には、もともと建物内には所定の間隔をおいて火災感知器50やスプリンクラーヘッドが設置されているので、ビーコン10Aとして、それらの機器に内蔵もしくは付加する形態で取り付けたビーコン、あるいは、それらの機器の近傍に設置する形態で取り付けたビーコンを利用することができる。
ビーコン10Aと10B(以下、10A,10Bを区別しないときはビーコン10と記す)は、同一周波数帯の信号(標識電波)を送信する機能を有しており、自己の識別情報(機器ID)を無線信号に乗せて定期的に周囲に発信する発信部を備えるものであれば良い。ビーコン10が無線で発信する信号(ビーコン信号)には、少なくとも当該ビーコン10の識別情報(機器ID)が含まれていれば良く、さらに、設置されているエリアに関する情報が含まれていても良い。ビーコン10Aが電源スイッチを有する場合、ビーコン10Bとしてビーコン10Aと同一仕様のものを使用することができる。
【0022】
携帯端末20は、例えばスマートフォンやタブレット端末、PDA(personal digital assistant)などの携帯型の情報端末であり、それぞれ制御部と、記憶部、表示部、操作部(例えば、表示部の表示画面に設けられたタッチパネル)や、ビーコン10からの信号を受信するビーコン信号受信部、通信ネットワークNを介して位置情報サーバ40等の外部機器との間で各種情報の送受信を行う無線通信部などを備えて構成される。
【0023】
携帯端末20の記憶部には、定期的にビーコン10から無線で発信されるビーコン信号を受信して、当該ビーコン信号に含まれる識別情報(機器ID)等を抽出するとともに当該ビーコン信号の受信電波強度を検出し、識別情報等と受信電波強度とを含むビーコン情報を、携帯電話基地局30及び通信ネットワークNを介して位置情報サーバ40へ送信する処理と、通信ネットワークN及び携帯電話基地局30を介して位置情報サーバ40から送信されたマップ情報に基づいて自己の位置や火災発生位置を示すマーク等を含むフロア図画像を表示部に表示する処理と、を実行するアプリケーション・プログラム(位置情報アプリ)が格納されている。
携帯端末20の制御部は、ビーコン信号受信部が、通信範囲が互いに重なる複数のビーコン10Aから発信されるビーコン信号を受信した場合には、それぞれのビーコン情報を無線通信部から位置情報サーバ40へ送信する。
【0024】
火災感知器50は、例えば、熱、煙、炎、有害ガスなどの異常現象の発生を検出すると、火災検出信号(有害ガスの場合は異常検出信号)を、感知器回線51を介して火災受信機60に送信する。火災感知器50は、火災検出信号に自己の設置アドレスを付加するタイプの感知器であっても良いし、火災検出信号に自身の設置アドレスを付加しないタイプの感知器であっても良い。
【0025】
火災受信機60は、火災感知器50からの火災検出信号を受信した場合に、表示部に火災報知表示を行うとともに、地区ベル鳴動や防排煙連動などの制御を行う。さらに、火災受信機60は、火災の発生場所情報や発生時刻情報などを含む火災情報を、当該火災受信機60の識別情報(受信機ID)とともにゲートウェイ70及び通信ネットワークNを介して火災情報サーバ80に送信する。
なお、火災受信機60は、火災検出信号に火災感知器50の設置アドレスが付加されている場合には、当該設置アドレスに基づいて火災の発生場所を特定する。一方、火災検出信号に火災感知器50の設置アドレスが付加されていない場合には、当該火災検出信号を伝送した感知器回線51(警戒区域)に基づいて火災の発生場所を特定する。
【0026】
火災情報サーバ80は、データベース81を備えている。データベース81には、例えば、当該火災情報サーバ80が管理する建物の識別情報(ビル名や住所など)と、当該建物に設置されている火災受信機60の識別情報(受信機ID)とを対応付けて記憶するテーブル等が格納されている。
火災情報サーバ80は、火災受信機60からの火災情報を受信すると、当該火災情報と共に送信された識別情報(受信機ID)に対応する建物の識別情報(ビル名や住所など)をデータベース81から取得する。そして、取得した建物の識別情報を、火災受信機60からの火災情報とともに通信ネットワークNを介して位置情報サーバ40に送信する処理を実行可能である。
【0027】
位置情報サーバ40は、当該位置情報サーバ40が管理する各建物の情報や各携帯端末20の情報などを格納するデータベース41を備えている。サーバ(位置情報サーバ)は狭義のサーバの他、PC(パーソナルコンピュータ)などのデータ処理装置であっても良い。
ここで、建物の情報とは、当該建物の識別情報(ビル名や住所など)、当該建物の各フロア(各階)のマップ、当該建物の各フロアに設置されているビーコン10Aの識別情報及び設置場所情報、当該建物の各フロアに設置されている各種防災機器・設備の設置場所情報、当該建物の一時避難場所情報等を含む情報である。また、データベース41には、当該建物の各フロアに設置されていないが一時避難場所用のビーコンとして予め登録されている可搬型のビーコン10Bの識別情報も記憶されている。
【0028】
また、携帯端末20の情報とは、当該携帯端末20の識別情報(端末ID)、当該携帯端末20のユーザに関する情報(ユーザの名前など)等を含む情報である。例えば、携帯端末20に表示される位置情報アプリの設定画面においてユーザに関する情報を入力できるようになっており、その入力された情報が、当該携帯端末20の識別情報(端末ID)とともに位置情報サーバ40へ送信されてデータベース41に記憶されるようになっている。
【0029】
位置情報サーバ40は、携帯端末20が送信したビーコン情報を受信すると、受信したビーコン情報とデータベース41に記憶されている情報とに基づいて当該携帯端末20の所在位置を算出する。そして、データベース41から当該携帯端末20が位置しているフロアのマップを抽出し、抽出したマップに当該携帯端末20の所在位置をプロットしてマップ情報を生成し、生成したマップ情報を通信ネットワークN及び携帯電話基地局30を介して当該携帯端末20に送信する処理を実行可能である。これにより、携帯端末20の表示部には、当該携帯端末20の所在位置を示すフロア図画像が表示される。
【0030】
本実施形態においては、可搬型のビーコン10Bは、平時においては例えば防災センターなどに配備されており、災害の発生時に屋外または監視エリアの近傍に設定された一時避難場所へ搬送されて電源が投入されるとビーコン信号の送信を開始し、そのビーコン信号をその近傍に存在する携帯端末20が受信して位置情報サーバ40へビーコン情報を送信する。すると、ビーコン10Bが搬送された先の一時避難場所に、避難人員に関する情報を表わした画像が位置情報サーバ40によって生成され、携帯端末20へ送信されて表示部に表示される。
【0031】
さらに、位置情報サーバ40は、火災情報サーバ80からの火災情報を受信した場合には、当該火災情報に含まれる火災の発生場所情報等を反映させたマップ情報を生成し、生成したマップ情報を通信ネットワークN及び携帯電話基地局30を介して携帯端末20に送信する処理を実行可能である。これにより、携帯端末20の表示部には、火災の発生場所を示すフロア図画像が表示される。
また、位置情報サーバ40が防災センター等に配設されている場合に、
図1に破線で示すように、液晶ディスプレイのような表示装置42を設けて、この表示装置42の表示画面上に、火災の発生場所や携帯端末20の所在位置を示すフロア図画像を表示させるように構成しても良い。なお、表示装置42は、液晶または有機ELディスプレイの他、CRTやデジタルサイネージ、プロジェクタ等であってもよい。
【0032】
次に、
図2に示すフローチャートを用いて、携帯端末20の制御部が実行する位置情報表示処理の手順の一例を説明する。なお、この位置情報表示処理は、火災発生時(火災感知器50の作動時)であるか、平常時(火災感知器50の非作動時)であるかにかかわらず、位置情報アプリが起動されている間、一定の周期で繰り返し実行される。
【0033】
携帯端末20の制御部は、位置情報アプリが起動されると、まず、ビーコン信号受信部がビーコン10から発信されるビーコン信号を受信したかを判定し(ステップS11)、ビーコン信号を受信していない(No)の場合には、ステップS13へ移行する。
一方、ビーコン信号を受信した場合(ステップS11;Yes)には、当該ビーコン信号に含まれるビーコン10の識別情報(機器ID)等と当該ビーコン信号の受信電波強度とを含むビーコン情報を、自己の識別情報(端末ID)とともに携帯電話基地局30及び通信ネットワークNを介して位置情報サーバ40へ送信する(ステップS12)。
【0034】
次いで、無線通信部が位置情報サーバ40から送信されるマップ情報を受信したかを判定する(ステップS13)。そして、マップ情報を受信していない場合(ステップS13;No)には、当該位置情報表示処理を終了する。
一方、マップ情報を受信した場合(ステップS13;Yes)には、当該マップ情報に基づく画像(フロア図画像)を表示部に表示して(ステップS14)、位置情報表示処理を終了する。これにより、位置情報アプリの起動後最初のステップS14では、最新のフロア図画像が表示部に表示され、位置情報アプリの起動後2回目以降のステップS14では、表示部に表示中のフロア図画像が最新のフロア図画像に更新されることとなる。
【0035】
なお、携帯端末20は、ビーコン信号を受信する度にビーコン情報を位置情報サーバ40へ送信するのではなく、例えば、前回受信したビーコン信号に含まれるビーコン10の識別情報と、今回受信したビーコン信号に含まれるビーコン10の識別情報とが異なる場合に、今回受信したビーコン信号に基づくビーコン情報を位置情報サーバ40へ送信するようにしても良い。
【0036】
次に、
図3(a)に示すフローチャートを用いて、位置情報サーバ40の制御部が実行する平常時処理の手順の一例を説明する。
なお、以下の説明では、出火建物(火災感知器50が作動している建物)内に存在する携帯端末20のうち管理者が保有する管理者権限端末を「特別端末」と称し、出火建物内に存在する携帯端末20のうち管理者権限端末以外の携帯端末20を「一般端末」と称し、一般端末を所持する者を「一般端末ユーザ」と称する。ここで、「管理者権限端末」は、自衛消防隊長が所持する携帯端末20の他、防災センターに配備されている設置型のPC端末であっても良い。なお、説明上「管理者権限端末」と「一般端末」の2つのグループに分けているが、2つのグループだけでなくても良い。例えば、自衛消防隊員が所持する「自衛消防隊員端末」等である。
【0037】
情報端末に位置情報アプリをインストールするときに、ログインIDとパスワードを設定するようになっており、その設定された情報は、当該端末の識別情報(端末ID)とともに位置情報サーバ40へ送信されてデータベース41に記憶されるようになっている。自衛消防隊長や防災センターには事前に管理者権限用のログインIDとパスワードを通知しておき、インストール時に管理者権限用のログインIDとパスワードを設定した携帯端末20は管理者権限端末として登録される。インストール時に管理者権限用以外のログインIDとパスワードを設定した携帯端末20は、管理者権限端末以外の携帯端末20として登録される。
【0038】
本実施形態の避難時人員把握システムにおいては、火災情報サーバ80は、火災受信機60からの火災情報(火災の発生場所情報や発生時刻情報などを含む情報)を受信すると、当該火災情報とともに送信された火災受信機60の識別情報(受信機ID)に対応する建物の識別情報(ビル名や住所など)をデータベース81から取得し、当該火災情報を、取得した建物の識別情報とともに位置情報サーバ40へ送信する。
位置情報サーバ40は、管理する複数の建物のいずれかで火災が発生した場合(火災感知器50が作動している場合)に、携帯端末20からのビーコン情報に基づいて出火建物(火災感知器50が作動している建物)に位置する携帯端末20を特定する。
【0039】
図3(a)に示す平常時処理は、特別端末及び一般端末以外の携帯端末20に向けて実行される処理である。したがって、位置情報サーバ40が管理する複数の建物のいずれかで火災が発生しても、火災が発生していない建物に対しては平常時処理が一定の周期で繰り返し実行され、位置情報サーバ40が管理する複数の建物のいずれかで火災が発生した場合には、後述の火災時処理(
図3(b))が実行されて、この火災時処理において平常時処理(ステップS36)が実行される。
【0040】
平常時処理では、まず、特別端末及び一般端末以外の携帯端末20からのビーコン情報を受信したかを判定する(ステップS21)。ビーコン情報を受信していない場合(ステップS21;No)には、平常時処理を終了する。
一方、ビーコン情報を受信した場合(ステップS21;Yes)には、受信したビーコン情報とデータベース41に記憶されている情報とに基づいて当該携帯端末20の所在位置を算出し(ステップS22)、データベース41から当該携帯端末20が位置するフロア(現在階)のマップを抽出する(ステップS23)。
【0041】
次に、抽出したマップに当該携帯端末20の所在位置をプロットしてマップ情報を生成する(ステップS24)。
続いて、ステップS24で生成したマップ情報(現在階フロア図情報)を通信ネットワークN及び携帯電話基地局30を介して当該携帯端末20へ送信し(ステップS25)、平常時処理を終了する。これにより、携帯端末20の表示部に、
図4に示すような当該携帯端末20が位置するフロア(現在階)のマップ(フロア図)に、当該携帯端末20の現在位置に相当する部位に当該携帯端末20を示すマークMが表記されたフロア図画像が表示されることとなる。なお、
図4において、マークMに付記された丸付き数字はその場所にいる人数(携帯端末の数)を表わす。
【0042】
次に、
図3(b)に示すフローチャートを用いて、位置情報サーバ40の制御部が実行する火災時処理の手順の一例を説明する。
図3(b)の火災時処理は、例えば火災情報サーバ80が火災受信機60から火災の発生を知らせる情報を受信し、位置情報サーバ40へ火災情報を送信することで開始される。なお、このフローチャートのステップS31~S35は、特別端末及び一般端末に向けて実行される処理であり、火災時処理のステップS36は、それ以外の携帯端末20(特別端末及び一般端末以外の携帯端末20)に向けて実行される処理である。
【0043】
図3(b)の火災時処理では、先ず、データベース41から出火階のマップを抽出し(ステップS31)、抽出したマップに火災の発生場所をプロットする(ステップS32)。
次いで、特別端末及び一般端末からのビーコン情報とデータベース41に記憶されている情報とに基づいて特別端末及び一般端末のそれぞれの所在位置を算出し(ステップS33)、火災の発生場所がプロットされたマップに、出火階に位置する端末の所在位置をプロットしてマップ情報を生成する(ステップS34)。この際、当該携帯端末には他の端末とは区別可能にマークを付けたマップ情報を生成しても良い。また、各マークは何人がその場にいるかということを示すために、同一のビーコン情報を送信してきた携帯端末20の数に該当する数字を付加して表示をさせても良い。
【0044】
続いて、ステップS34で生成したマップ情報(出火階フロア図情報)を通信ネットワークN及び携帯電話基地局30を介して特別端末及び一般端末へ送信する(ステップS35)。これにより、特別端末及び一般端末の表示部に、例えば
図5に示すような火災の発生場所と端末の所在位置に火災マークFと端末マークM1,M2等が付された出火階のフロア図画像が表示されることとなる。なお、
図5において、円が太いマーク(M2)は自身がいる場所を示す。
その後、
図3(a)に示す平常時処理と同様な処理を実行して(ステップS36)、ステップS32へ戻る。ステップS36の平常時処理により、一般端末の表示部には、自端末の所在位置のマークMが示された
図4に示すようなフロア図画像が表示されることとなる。なお、同一フロアで火災が発生している時は、自端末の所在位置マークMの他、避難方向の情報や火災マークを付加したマップ情報を送信して表示させるようにしても良い。
【0045】
また、本実施形態の避難時人員把握システムにおいては、火災が発生すると、特別端末及び一般端末以外の携帯端末の所在位置のマークMが示されたフロア図画像において、
図6に示すように、屋外または監視エリア外における一時避難場所Gと避難完了者の数が表示されるようになっている。さらに、一時避難場所が複数ある場合に、各一時避難場所とそこに搬入された可搬型ビーコンとを紐付けて位置情報サーバ40のデータベース41に登録することによって、マップ上に一時避難場所ごとの避難完了者の数を把握可能に表示させることができる。
【0046】
なお、上記一時避難場所Gは、例えば位置情報サーバ40の管理者用操作画面(
図7参照)にて任意に設定できる。
具体的には、先ず、位置情報サーバ40の操作部を操作して、位置情報サーバ40の表示部に、一時避難場所を設定する管理者用操作画面を表示させる。そして、この管理者用操作画面において「一時避難場所設定モード」を選択すると、例えば
図7に示すように、一時避難場所設定モードに切り替わる。
ここで、一時避難場所となるフロアを選択すると、選択したフロアのフロア図画像が表示されるため、そのフロア図画像内の所望領域を一時避難場所Gとして指定する。
【0047】
続いて、指定した場所の名称を入力し、問題なければ「完了」ボタンをクリックする。これにより、指定及び入力された情報が当該建物の一時避難場所情報として、データベース41に記憶される。
このように、本実施形態の避難時人員把握システムにおいて、位置情報サーバ40(または火災情報サーバ80)は、ユーザによって任意設定可能な一時避難場所を記憶し、一時避難場所を報知する情報を対象の携帯端末20に送信可能である。したがって、携帯端末20を所持する者(一般端末ユーザや自衛消防隊長、自衛消防隊員等)に一時避難場所を周知させることができる。
【0048】
さらに、
図8に示すように、一時避難場所Gに指でスワイプ操作等を行うことで、一時避難場所を示すマークを移動させることができるようになっている。これにより、火災の延焼等によって最初に設定した設定した一時避難場所が利用できなくなったとしても、一時避難場所を変更することができる。そして、一時避難場所ごとに避難完了者の数を表示することで、建物に対してどのあたりにどのくらいの人員が避難しているか視覚的に把握することが可能となる。
また、一時避難場所Gを指でタップすると当該一時避難場所Gに集合している避難者の氏名等の情報を吹き出しなどで表示させることができるように構成しても良い。
【0049】
さらに、可搬型ビーコン10Aや据付型ビーコン10Bのそれぞれの識別情報と、識別情報を送信してきた携帯端末20の情報から、避難完了済携帯端末(ユーザ)リストと避難未完了携帯端末(ユーザ)リストを表示できるようにしても良い。これにより、一時避難場所が複数となっている場合の避難者の把握や、誰が避難未完了といった情報を素早く把握できる。ここで、監視対象がオフィスビルの場合においては、位置情報サーバ40に勤怠システムを接続して出勤/休暇情報を取得可能に構成するようにしても良い。
これによって、前記避難未完了携帯端末(ユーザ)リストから、休暇や外出等で社外にいる社員を誤って逃げ遅れ者として把握するのを回避することができる。なお、各ユーザは、携帯端末を用いて、自己や他者の心身の状態情報(無事、軽い怪我、救急搬送待、救急搬送済等)を入力できるようにしても良い。これによって、フロア図上や前記避難完了済携帯端末(ユーザ)リスト上等にて、各人員の状態を把握することができ、迅速な応急手当や作業の優先順位の決定等に活用することができる。
【0050】
以上、本発明を実施形態及び変形例に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、携帯端末20に自端末の位置表示機能および災害発生時の一時避難場所での人員の把握機能を有する位置情報アプリを搭載したものについて説明したが、前記位置情報アプリの位置表示機能や一時避難場所での人員把握機能は、消防隊長が隊員に対して役割を設定して火災の確認や消火活動を指令したり、指令を受けた隊員が報告を行なったりするなどの自衛消防隊の活動を支援する機能を備えた防災支援アプリの機能の一部として実現するようにしても良い。また、位置情報アプリに、端末保有者が心身の状態(無事、軽いけが、緊急搬送待ちなど)の情報を入力することができる入力画面を表示する機能を設けて、より精緻な情報を取得できるようにしても良い。
【0051】
また、上記実施形態では、可搬型ビーコン10Bとして据付型ビーコン10Aと同じ機能を有するものを使用したシステムを説明したが、可搬型ビーコン10Bには、ビーコン信号の送信機能の他に、GPS電波を受信する機能と無線通信機能を有するものを使用して、一時避難場所を予め登録しなくても、あるいは一度設定した一時避難場所を後に変更して移動した場合にも、マップ画面の適切な位置(建物に対する可搬型ビーコンの正確な位置)に、一時避難場所を示すマークおよび避難人員に関する情報を表示して避難した人員を把握できるように構成しても良い。
また、上記実施形態では、可搬型の送信器を据置型の送信器と同一構成を有するものと説明したが、携帯端末で送信器を代用することも可能である。この場合、所定の携帯端末を一時避難場所と紐付け、その所定の携帯端末と通信を行った携帯端末は一時避難場所にいると判断することができる。
【0052】
さらに、上記実施形態では、ビーコン10はビーコン信号を送信する機能のみ有していると説明したが、携帯端末20等からの無線信号や電波を受信する機能および受信した情報を無線や有線を介してサーバへ送信する機能をビーコンに持たせるようにしても良い。そして、この場合、利用者あるいは物に電波発信タグを携帯もしくは貼付させて、ビーコンによってタグの情報を受信して位置情報サーバ40へ送信しても良い。また、携帯端末の電波を受信して、位置情報サーバ40へ送信させても良い。
また、上記実施形態では、避難時人員把握システムとして、ビーコンによる測位を利用したシステムを例示したが、これに限定されず、例えばIMES(Indoor MEssaging System)等のその他の方式による測位を利用した避難時人員把握システムであっても良い。すなわち、送信器は、ビーコン10に限定されず、例えばIMES送信器等であっても良い。
【0053】
また、上記実施形態及び変形例では、一時避難場所での人員把握を行うシステムとして説明したが、一時避難場所の代わりに広域避難場所に対して利用されても良い。これにより、広域避難場所への移動時や到着時、一緒に行動している避難人員を把握することや、可搬型ビーコンが複数ある時、広域避難場所内で、避難人員が誰と共にいるかを把握すること、可搬型ビーコンが複数あり、複数の広域避難場所が設定されている時、それぞれの広域避難場所における避難人員を把握することが可能となる。さらに、自衛消防隊長や防災センターが広域避難場所に避難した人員を把握することができるので、逃げ遅れた利用者の捜索など、より適切な活動を行うことが可能となる。
【0054】
なお、一時避難場所は、駐車場や公園、学校の校庭等、避難者が一時的に集合する場所であり、広域避難場所は、大規模な公園、大学等の施設といった地域全体が危険になった際に避難する場所である。これらの場所の多くは屋外であるが、本避難時人員把握システムを用いることで、予め位置情報を取得するための機器を設置することなく、また、設置されている位置情報を取得するための機器が停電等により使用できない場合においても、予め携帯端末の20の情報を登録しておくことで、避難時の人員把握を迅速に行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0055】
10A 据付型ビーコン(据付型送信器)
10B 可搬型ビーコン(可搬型送信器)
20 携帯端末
40 位置情報サーバ(サーバ)
41,81 データベース
42 表示装置
50 火災感知器
60 火災受信機
70 ゲートウェイ
80 火災情報サーバ(サーバ)