(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20240903BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
H05K1/02 B
H05K1/02 C
G09F9/30 310
(21)【出願番号】P 2020051111
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 匠
【審査官】荒木 崇志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0104850(US,A1)
【文献】国際公開第2019/187568(WO,A1)
【文献】特開2017-118109(JP,A)
【文献】特開2018-066933(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0150641(US,A1)
【文献】特開2017-143257(JP,A)
【文献】特開2019-208081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/00 - 1/02
G09F 9/30 - 9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮可能な第1部分と、前記第1部分に隣接し伸縮可能な第2部分と、が一体的に形成された絶縁基材と、
前記第1部分及び前記第2部分にそれぞれ配置された複数の電気的素子と、
前記絶縁基材の下面に接触する第1伸縮部材と、
前記電気的素子を覆う第2伸縮部材と、を備え、
前記第1部分の第1伸長率は、前記第2部分の第2伸長率とは異な
り、
前記第1部分及び前記第2部分は、それぞれメッシュ状に形成され、
前記絶縁基材は、前記第1部分に位置する複数の第1開口部と、前記第2部分に位置する複数の第2開口部と、を有し、
前記第1開口部の形状は、前記第2開口部の形状とは異なり、
前記第2伸縮部材は、前記第1開口部及び前記第2開口部において、前記第1伸縮部材に接触し、
前記第1伸縮部材及び前記第2伸縮部材は、前記絶縁基材よりも弾性率が小さい樹脂で形成されている、電子機器。
【請求項2】
前記絶縁基材は、隣接する前記第1開口部の間に位置する第1帯状部と、隣接する前記第2開口部の間に位置する第2帯状部と、を備え、
前記第1帯状部の形状は、前記第2帯状部の形状とは異なる、請求項
1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記第1帯状部は蛇行し、前記第2帯状部は直線状に形成されている、請求項
2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記第1帯状部及び前記第2帯状部は、それぞれ蛇行し、
前記第1帯状部は、湾曲部を有し、
前記第2帯状部は、互いに異なる方向に延びる複数の直線部を有している、請求項
2に記載の電子機器。
【請求項5】
さらに、前記第1部分に配置された第1配線と、前記第2部分に配置された第2配線と、を備え、
前記第1配線の形状は、前記第2配線の形状とは異なる、請求項1に記載の電子機器。
【請求項6】
さらに、前記第1部分及び前記第2部分に亘って配置された第3配線を備え、
前記第3配線において、前記第1部分における形状は、前記第2部分における形状とは異なる、請求項1に記載の電子機器。
【請求項7】
前記第1伸長率と前記第2伸長率との差は、20%以上である、請求項1に記載の電子機器。
【請求項8】
前記第1部分と前記第2部分との境界は、物体の開裂を誘導する線状部に重なっている、請求項1に記載の電子機器。
【請求項9】
伸縮可能な第1部分と、前記第1部分に隣接し伸縮可能な第2部分と、が一体的に形成された絶縁基材と、
前記第1部分及び前記第2部分にそれぞれ配置された複数の電気的素子と、
前記絶縁基材の下面に接触する第1伸縮部材と、
前記電気的素子を覆う第2伸縮部材と、を備え、
前記絶縁基材は、前記第1部分において隣接する第1開口部の間に位置する第1帯状部と、前記第2部分において隣接する第2開口部の間に位置する第2帯状部と、を備え、
前記第1帯状部の形状は、前記第2帯状部の形状とは異な
り、
前記第1開口部の形状は、前記第2開口部の形状とは異なり、
前記第2伸縮部材は、前記第1開口部及び前記第2開口部において、前記第1伸縮部材に接触し、
前記第1伸縮部材及び前記第2伸縮部材は、前記絶縁基材よりも弾性率が小さい樹脂で形成されている、電子機器。
【請求項10】
前記電気的素子は、発光素子またはセンサである、請求項1乃至
9のいずれか1項に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、可撓性及び伸縮性を有したフレキシブル基板の利用が種々の分野で検討されている。一例を挙げると、マトリクス状に電気的素子が配列されたフレキシブル基板を電子機器の筐体や人体等の曲面に貼り付ける利用形態が考えられる。電気的素子としては、例えばタッチセンサや温度センサ等の各種センサや表示素子が適用され得る。
フレキシブル基板においては、屈曲や伸縮による応力で配線が損傷しないように対策を講じる必要がある。このような対策としては、例えば、配線を支持する基材にハニカム形状の開口を設けることや、配線を蛇行した形状(ミアンダ形状)とすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-198101号公報
【文献】特開2015-198102号公報
【文献】特開2017-118109号公報
【文献】特開2017-113088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本実施形態の目的は、部分的に異なる伸縮性を有するように構成された電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態の電子機器は、
伸縮可能な第1部分と、前記第1部分に隣接し伸縮可能な第2部分と、が一体的に形成された絶縁基材と、前記第1部分及び前記第2部分にそれぞれ配置された複数の電気的素子と、を備え、前記第1部分の第1伸長率は、前記第2部分の第2伸長率とは異なる。
本実施形態の電子機器は、
伸縮可能な第1部分と、前記第1部分に隣接し伸縮可能な第2部分と、が一体的に形成された絶縁基材と、前記第1部分及び前記第2部分にそれぞれ配置された複数の電気的素子と、を備え、前記絶縁基材は、前記第1部分において隣接する第1開口部の間に位置する第1帯状部と、前記第2部分において隣接する第2開口部の間に位置する第2帯状部と、を備え、前記第1帯状部の形状は、前記第2帯状部の形状とは異なる。
本実施形態の電子機器は、
伸縮可能な第1部分と、伸縮可能な第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間に位置し伸縮可能な第3部分と、が一体的に形成された絶縁基材と、前記第1部分、前記第2部分、及び、前記第3部分にそれぞれ配置された複数の電気的素子と、を備え、前記第1部分の第1伸長率、前記第2部分の第2伸長率、及び、前記第3部分の第3伸長率は、互いに異なり、前記第2伸長率と前記第3伸長率との差は、前記第1伸長率と前記第2伸長率との差とは異なる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る電子機器1の概略的な平面図である。
【
図2】
図2は、フレキシブル基板2を構成する絶縁基材10の概略的な平面図である。
【
図3】
図3は、絶縁基材10の第1部分10Aを拡大した平面図である。
【
図4】
図4は、絶縁基材10の第2部分10Bを拡大した平面図である。
【
図5】
図5は、電気的素子E1を駆動する駆動回路PCを説明するための図である。
【
図6】
図6は、島状部I1を含むフレキシブル基板2の概略的な断面図である。
【
図7】
図7は、帯状部BX1及びBY1を含むフレキシブル基板2の概略的な断面図である。
【
図8】
図8は、フレキシブル基板2を構成する絶縁基材10の他の構成例を示す平面図である。
【
図9】
図9は、フレキシブル基板2を構成する他の絶縁基材10の概略的な平面図である。
【
図10】
図10は、フレキシブル基板2を構成する他の絶縁基材10の概略的な平面図である。
【
図11】
図11は、フレキシブル基板2を構成する他の絶縁基材10の概略的な平面図である。
【
図12】
図12は、帯状部B10の基本構造を説明するための図である。
【
図14】
図14は、伸長率と抵抗変動率との関係を説明するための図である。
【
図15】
図15は、本実施形態の電子機器1の他の適用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0008】
図1は、本実施形態に係る電子機器1の概略的な平面図である。本実施形態においては、図示したように第1方向X、第2方向Y、及び、第3方向Zを定義する。第1方向X、第2方向Y、及び、第3方向Zは、互いに直交しているが、90度以外の角度で互いに交差していてもよい。第1方向X及び第2方向Yは、例えば電子機器1の主面に平行な方向に相当し、また、第3方向Zは、電子機器1の厚さ方向に相当する。
【0009】
電子機器1は、フレキシブル基板2と、回路基板3と、コントローラ4と、を備えている。回路基板3は、例えばフレキシブルプリント回路基板であり、フレキシブル基板2の端子領域TAにおいて各端子と電気的に接続されている。コントローラ4は、回路基板3に実装されているが、フレキシブル基板2に実装されていてもよい。
【0010】
フレキシブル基板2は、全体的に可撓性及び伸縮性を有するように構成されている。このようなフレキシブル基板2は、第1領域A1と、第1領域A1に隣接する第2領域A2と、を備えている。第1領域A1及び第2領域A2は、互いに伸縮性が異なる領域である。第1領域A1及び第2領域A2において、伸縮性が異なる構造を実現するための具体例については後述する。
図1に示す例では、第1領域A1及び第2領域A2は、第2方向Yに並んでいるが、第1方向Xに並んでいてもよいし、第2領域A2が第1領域を囲んでいてもよいし、これらの配置については図示した例に限らない。また、フレキシブル基板2は、互いに伸縮性が異なる3つ以上の領域を備えていてもよい。
【0011】
フレキシブル基板2は、第1ドライバDR1、第2ドライバDR2、X配線WX、Y配線WY、電気的素子Eなどを備えている。
第1ドライバDR1及び第2ドライバDR2は、例えばフレキシブル基板2に配置されているが、回路基板3、コントローラ4、あるいは、他の基板に配置されてもよい。X配線WXは、概ね第1方向Xに沿って延びる配線の総称であり、少なくとも一部のX配線WXは第1ドライバDR1と電気的に接続されている。複数のX配線WXは、第2方向Yに並んでいる。Y配線WYは、概ね第2方向Yに沿って延びる配線の総称であり、少なくとも一部のY配線WYは第2ドライバDR2と電気的に接続されている。複数のY配線WYは、第1方向Xに並んでいる。これらのX配線WX及びY配線WYとしては、走査線、信号線、電源線、種々の制御線など複数の種類の配線が含まれる。
【0012】
X配線WXは、第1領域A1に配置されるX配線WX1と、第2領域A2に配置されるX配線WX2と、を含んでいる。Y配線WYは、第1領域A1及び第2領域A2に亘って配置されている。
【0013】
電気的素子Eは、第1領域A1に配置される電気的素子E1と、第2領域A2に配置される電気的素子E2と、を含んでいる。複数の電気的素子E1は、第1領域A1において、第1方向X及び第2方向Yにマトリクス状に配列され、X配線WX1及びY配線WYと電気的に接続されている。複数の電気的素子E2は、第2領域A2において、第1方向X及び第2方向Yにマトリクス状に配列され、X配線WX2及びY配線WYと電気的に接続されている。
【0014】
電気的素子Eは、例えば、センサ、半導体素子、又はアクチュエータなどである。例えばセンサとしては、可視光や近赤外光を受光する光学センサ、温度センサ、圧力センサ、又はタッチセンサなどを適用することができる。例えば半導体素子としては、発光素子、受光素子、ダイオード、又はトランジスタなどを適用することができる。なお、電気的素子Eは、ここで例示したものに限られず、その他にも種々の機能を有する素子を適用し得る。また、電気的素子Eは、コンデンサや抵抗などであってもよい。
【0015】
電気的素子E1は、電気的素子E2と同等の機能を有する素子であってもよいし、電気的素子E2とは異なる機能を有する素子であってもよい。例えば、電気的素子E1及びE2は、いずれも発光素子であってもよいし、いずれもセンサであってもよい。また、電気的素子E1が発光素子であり、電気的素子E2がセンサであってもよい。
【0016】
電気的素子Eが発光素子である場合、可撓性及び伸縮性を有するフレキシブルディスプレイを実現することができる。発光素子は、例えば、最長の一辺の長さが100μm以下のマイクロLED(Light Emitting Diode)であってもよいし、最長の一辺の長さが100μmより大きく300μm未満のミニLEDであってもよいし、最長の一辺の長さが300μm以上のLEDであってもよい。また、発光素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子などの他の自発光素子であってもよい。
【0017】
フレキシブル基板2は、後述する絶縁基材10を備えている。一例では、第1ドライバDR1、第2ドライバDR2、X配線WX、Y配線WY、及び、電気的素子Eは、いずれも絶縁基材10の上に配置されている。
【0018】
図2は、フレキシブル基板2を構成する絶縁基材10の概略的な平面図である。絶縁基材10は、伸縮可能な第1部分10Aと、第1部分10Aに隣接し伸縮可能な第2部分10Bと、を備えている。第1部分10A及び第2部分10Bは、一体的に形成されている。ここでの伸縮可能とは、伸び縮みすることができる性質、すなわち、常態である非伸長状態から伸長することができ、この伸長状態から解放したときに復元することができる性質をいう。非伸長状態とは、引張応力が付加されていないときの状態である。
【0019】
また、第1部分10Aの伸長率は、第2部分10Bの伸長率とは異なる。一例では、第1部分10Aの伸長率は、第2部分10Bの伸長率より高い。ここでの伸長率とは、引張試験を行うことにより得られる値である。引張試験では、配線を備えた試験片を作製し、この配線が破断するまで引っ張る。そして、引張応力が付加されていない状態の長さをL0とし、引張応力が付加されることで伸びた状態の長さをL1としたとき、長さの増加分(L1-L0)を長さL0で除した値が伸長率として算出される。つまり、伸長率は、(L1-L0)/L0で与えられる。例えば、伸長率50%とは、引張応力が付加されることで長さL0の1.5倍の長さL1まで弾性変形可能であることに相当する。例えば、第1部分10A及び第2部分10Bは、いずれも20%以上の伸長率を有している。
【0020】
第1部分10Aは
図1に示した第1領域A1に対応して形成され、第2部分10Bは
図1に示した第2領域A2に対応して形成されている。第1部分10A及び第2部分10Bは、例えばメッシュ状に形成されている。以下、第1部分10A及び第2部分10Bについて、より具体的に説明する。
【0021】
第1部分10Aは、概ね第1方向Xに沿って形成された複数の帯状部BX1と、概ね第2方向Yに沿って形成された複数の帯状部BY1と、複数の島状部I1と、を有している。複数の帯状部BX1は第2方向Yに並び、複数の帯状部BY1は第1方向Xに並んでいる。帯状部BX1及びBY1の各々は、伸縮可能である。一例では、帯状部BX1及びBY1は、蛇行している。島状部I1は、帯状部BX1と帯状部BY1との交差部に相当する。
複数の島状部I1は、第1方向X及び第2方向Yにマトリクス状に配列されている。第1方向Xに隣接する島状部I1は帯状部BX1によって接続され、第2方向Yに隣接する島状部I1は帯状部BY1によって接続されている。島状部I1は、正方形、長方形、ひし形などの四角形であってもよいし、他の多角形であってもよいし、円形あるいは楕円形など他の形状であってもよい。帯状部BX1及びBY1は、島状部I1の角部に接続されてもよいし、島状部I1の辺に接続されてもよい。
【0022】
換言すると、第1部分10Aは、絶縁基材10を貫通する複数の開口部OP1を有している。複数の開口部OP1は、マトリクス状に配列されている。1つの開口部OP1は、第2方向Yに隣接する2本の帯状部BX1と、第1方向Xに隣接する2本の帯状部BY1と、で囲まれている。つまり、帯状部BY1は第1方向Xに隣接する2つの開口部OP1の間に位置し、帯状部BX1は第2方向Yに隣接する2つの開口部OP1の間に位置している。
開口部OP1の各々の形状は、実質的に同一である。但し、
図2に示す例では、第1方向Xまたは第2方向Yに隣接する開口部OP1について、一方の開口部OP1は、他方の開口部OP1をX-Y平面内で90°回転させた形状とほぼ同等である。
【0023】
第2部分10Bは、第1方向Xに沿って形成された帯状部BX21及びBX22と、第2方向Yに沿って形成された帯状部BY21及びBY22と、その他の方向に沿って形成された帯状部B31乃至B34と、を有している。帯状部BX21及びBX22、帯状部BY21及びBY22、及び、帯状部B31乃至B34は、直線状に形成されている。第1部分10Aの帯状部(第1帯状部)BX1及びBY1の形状は、第2部分10Bの帯状部(第2帯状部)BX21及びBX22の形状、帯状部BY21及びBY22の形状、及び、帯状部B31乃至B34の形状のいずれとも異なる。
【0024】
換言すると、第2部分10Bは、複数の開口部OP21と、複数の開口部OP22と、を有している。これらの開口部OP21及びOP22は、いずれも絶縁基材10を貫通したものである。開口部OP21及びOP22は、いずれも多角形状に形成されているが、開口部OP21の形状は開口部OP22の形状とは異なる。また、第1部分10Aの開口部(第1開口部)OP1の形状は、第2部分10Bの開口部(第2開口部)OP21の形状、及び、開口部OP22の形状のいずれとも異なる。
【0025】
開口部OP21は、例えば、第2方向Yに隣接する帯状部BX21及びBX22と、第1方向Xに隣接する帯状部BY21及びBY22と、で囲まれた四角形状に形成されている。複数の開口部OP21は、マトリクス状に配列されている。帯状部B33または帯状部B34は、第1方向Xに隣接する開口部OP21の間に位置している。また、帯状部B31または帯状部B32は、第2方向Yに隣接する開口部OP21の間に位置している。
開口部OP22は、例えば、第1方向Xに隣接する帯状部B31及びB32と、第2方向Yに隣接する帯状部B33及びB34と、帯状部B31及びB33を接続する帯状部BX22と、帯状部B32及びB33を接続する帯状部BY21と、帯状部B32及びB34を接続する帯状部BX21と、帯状部B31及びB34を接続する帯状部BY22と、で囲まれた星型の八角形状に形成されている。複数の開口部OP22は、マトリクス状に配列されている。帯状部B31または帯状部B32は、第1方向Xに隣接する開口部OP22の間に位置している。また、帯状部B33または帯状部B34は、第2方向Yに隣接する開口部OP22の間に位置している。
なお、開口部OP21及び開口部OP22の形状は
図2に示す例に限られず、種々の形状を採用し得る。
【0026】
第1部分10Aと第2部分10Bとの境界B0においては、例えば、第1部分10Aの島状部I1と第2部分10Bの帯状部B31または帯状部B32とが接続されている。なお、第1部分10Aにおけるいずれかの帯状部と、第2部分10Bにおけるいずれかの帯状部とが接続されてもよい。このように、第1部分10Aの要素と第2部分10Bの要素とが接続される境界B0は、伸長率の変化点となる。
また、境界B0を含む領域は、第1方向Xに並んだ複数の開口部OP23を有している。開口部OP23は、帯状部BX1と、帯状部B31乃至B33と、で囲まれている。開口部OP23の形状は、開口部OP1の形状、開口部OP21の形状、及び、開口部OP22の形状のいずれとも異なる。
【0027】
上述したような開口部の形状、帯状部の形状、あるいは、伸長率が互いに異なる第1部分10A及び第2部分10Bを有する絶縁基材10は、例えばポリイミドによって形成されている。この場合において、第1部分10A及び第2部分10Bは、ポリイミド膜をパターニングすることにより一体的に形成することができる。なお、絶縁基材10の材料は、ポリイミドに限られず、他の樹脂材料を用いることもできる。
【0028】
図3は、絶縁基材10の第1部分10Aを拡大した平面図である。帯状部BX1及びBY1は、1つ以上の湾曲部Cを有している。
図3に示す例では、帯状部BX1及びBY1は、複数の湾曲部Cを有し、大きく3回屈曲している。このような形状は、ミアンダパターンと呼ばれることがある。但し、帯状部BX1及びBY1の形状は
図3の例に限られず、例えば、1回屈曲する形状、2回屈曲する形状、4回以上屈曲する形状など種々の形状を適用し得る。帯状部BX1及びBY1の形状は、互いに異なっていてもよい。
X配線WX1は、帯状部BX1の上に配置され、帯状部BX1と同様に蛇行している。Y配線WYは、帯状部BY1の上に配置され、帯状部BY1と同様に蛇行している。電気的素子E1は、島状部I1の上に配置され、X配線WX1及びY配線WYと電気的に接続されている。例えば、1つの島状部I1には、1個の電気的素子E1が配置されている。あるいは、1つの島状部I1には、最小単位(例えば表示装置における画素単位)の電気的素子E1が配置されている。
【0029】
このように絶縁基材10の第1部分10Aは、複数の島状部I1と、これらの島状部I1を接続する複数の帯状部BX1及びBY1と、で構成されることにより、第1部分10Aに伸縮性を与えることができる。すなわち、特定の方向への引張応力または圧縮応力が第1部分10Aに付加されると、引張応力または圧縮応力に応じて帯状部BX1及びBY1が伸縮する。これにより、第1部分10Aが引張応力または圧縮応力に応じた形状に変形する。
【0030】
図4は、絶縁基材10の第2部分10Bを拡大した平面図である。
X配線WX2は、帯状部BX21、帯状部BY22、及び、帯状部B34の上に配置されている。このようなX配線(第2配線)WX2の形状は、X配線(第1配線)WX1の形状とは異なる。Y配線WYは、帯状部B31、帯状部BX21、及び、帯状部BY21の上に配置されている。Y配線WYは、上記の通り、第1部分10A及び第2部分10Bに亘って配置されている。Y配線(第3配線)WYに関しては、第1部分10Aにおける形状は、第2部分10Bにおける形状とは異なる。電気的素子E2は、帯状部BX21と帯状部BY21との交差部に配置され、X配線WX2及びY配線WYと電気的に接続されている。
【0031】
このように絶縁基材10の第2部分10Bは、複数の帯状部BX21及びBX22、帯状部BY21及びBY22、及び、帯状部B31乃至B34によって構成されることにより、第2部分10Bに伸縮性を与えることができる。例えば、第2方向Yへの引張応力または圧縮応力が第2部分10Bに付加されると、引張応力または圧縮応力に応じて帯状部B31(またはB32)と帯状部BX21とのなす角度θ1が変化する。また、第1方向Xへの引張応力または圧縮応力が第2部分10Bに付加されると、引張応力または圧縮応力に応じて帯状部B34(またはB33)と帯状部BY22とのなす角度θ2が変化する。これにより、第2部分10Bが引張応力または圧縮応力に応じた形状に変形する。
【0032】
上述したように、本実施形態の電子機器1は、開口部の形状、帯状部の形状、あるいは、伸長率が互いに異なる第1部分10A及び第2部分10Bを有する絶縁基材10を用いて形成されている。このため、部分的に異なる伸縮性を有するように構成された電子機器1を提供することができる。
【0033】
また、異なる伸長率を有する第1部分10A及び第2部分10Bが接続されている。第1部分10Aの伸長率が第2部分10Bの伸長率より大きい場合、絶縁基材10に対して、所定方向、特に第1部分10Aと第2部分10Bとが並ぶ方向に引張応力が付加されると、第2部分10Bが伸長限界に達し、第1部分10Aと第2部分10Bとの境界B0で破断される。これにより、絶縁基材10に対して過度の引張応力が付加されたことを報知することができる。
【0034】
また、電子機器1が物体に貼り付けられた状態において、物体が過度に膨張した場合、あるいは、物体が開裂した場合、このような物体の変形に追従して、絶縁基材10に引張応力が付加され、第1部分10Aと第2部分10Bとの境界B0で破断される。つまり、物体の膨張あるいは物体の開裂を許容することができる。
【0035】
第1部分10Aの伸長率と第2部分10Bの伸長率との差が大きいほど、境界B0で破断しやすい。つまり、電子機器1の所望の位置での破断が要求される場合、第1部分10Aと第2部分10Bとの境界B0を所望の位置に形成し、伸長率の差を大きく設定すればよい。一例では、伸長率の差は、20%以上であることが望ましい。
【0036】
図5は、電気的素子E1を駆動する駆動回路PCを説明するための図である。図示した等価回路は、一例であって、この例に限らない。ここでは、電気的素子E1が発光素子(マイクロLED)である場合について説明する。なお、電気的素子E2が電気的素子E1と同等の発光素子である場合、電気的素子E2を駆動する駆動回路は、
図5に示す等価回路を適用することができる。
【0037】
駆動回路PCは、映像信号線VLに供給される映像信号Vsigに応じて電気的素子E1を制御する。このような制御を実現するために、本実施形態における駆動回路PCは、リセットスイッチRST、画素スイッチSST、初期化スイッチIST、出力スイッチBCT、駆動トランジスタDRT、保持容量Cs、及び、補助容量Cadを備えている。補助容量Cadは、発光電流量を調整するために設けられる素子であり、場合によっては不要となることもある。リセットスイッチRST、画素スイッチSST、初期化スイッチIST、出力スイッチBCT、及び、駆動トランジスタDRTは、薄膜トランジスタ(TFT)によって構成されている。これらの薄膜トランジスタの構成については、特に限定されるものではない。
【0038】
駆動トランジスタDRT及び出力スイッチBCTは、電源線SLaと電源線SLbの間で電気的素子E1と直列に接続されている。出力スイッチBCTのドレイン電極は、電源線SLaに接続されている。出力スイッチBCTのソース電極は、駆動トランジスタDRTのドレイン電極に接続されている。出力スイッチBCTのゲート電極は、走査線Sgbに接続されている。これにより、出力スイッチBCTは、走査線Sgbに与えられる制御信号BGによりオン、オフされる。ここで、オンは導通状態を表し、オフは非導通状態を表す。出力スイッチBCTは、制御信号BGに基づき電気的素子E1の発光時間を制御する。駆動トランジスタDRTのソース電極は、電気的素子E1の一方の電極(ここでは陽極)に接続されている。電気的素子E1の他方の電極(ここでは陰極)は、電源線SLbに接続されている。駆動トランジスタDRTは、映像信号Vsigに応じた駆動電流を電気的素子E1に出力する。
【0039】
画素スイッチSSTのソース電極は、映像信号線VLに接続されている。画素スイッチSSTのドレイン電極は、駆動トランジスタDRTのゲート電極に接続されている。画素スイッチSSTのゲート電極は、信号書き込み制御用のゲート配線として機能する走査線Sgcに接続されている。画素スイッチSSTは、走査線Sgcから供給される制御信号SGによりオン、オフされ、駆動回路PCと映像信号線VLの接続および非接続を切り替える。すなわち、画素スイッチSSTがオンされることにより、映像信号線VLの映像信号Vsigが駆動回路PCに取り込まれる。
【0040】
初期化スイッチISTのソース電極は、初期化配線Sgiに接続されている。初期化スイッチISTのドレイン電極は、駆動トランジスタDRTのゲート電極に接続されている。初期化スイッチISTのゲート電極は、走査線Sgaに接続されている。初期化スイッチISTは、走査線Sgaから供給される制御信号IGによりオン、オフされ、駆動回路PCと初期化配線Sgiの接続および非接続を切り替える。すなわち、初期化スイッチISTがオンされることにより、初期化配線Sgiの初期化電位Viniが駆動回路PCに取り込まれる。
【0041】
リセットスイッチRSTのソース電極は、リセット配線Sgrに接続されている。リセットスイッチRSTのゲート電極は、リセット制御用ゲート配線として機能する走査線Sgdに接続されている。リセットスイッチRSTは、走査線Sgdから供給される制御信号RGによりオン、オフされる。リセットスイッチRSTがオンに切り替えられることにより、駆動トランジスタDRTのソース電極の電位をリセット配線Sgrのリセット電位Vrstにリセットすることができる。
【0042】
保持容量Csは、駆動トランジスタDRTのゲート電極とソース電極の間に接続されている。補助容量Cadは、駆動トランジスタDRTのソース電極と電源線SLaの間に接続されている。
【0043】
以上のような構成においては、走査線Sga,Sgb,Sgc,Sgdに供給される制御信号IG,BG,SG,RGによって駆動回路PCが制御され、映像信号線VLの映像信号Vsigに応じた輝度で電気的素子E1が発光する。
【0044】
例えば、一点鎖線で囲む電気的素子E1及び駆動回路PCは、
図3に示した島状部I1の上に配置される。また、二点鎖線で囲む走査線Sga、Sgb、Sgc、Sgd、映像信号線VL、電源線SLa、SLb、リセット配線Sgr、及び、初期化配線Sgiは、
図3に示したX配線WX1及びY配線WYのいずれかに相当し、
図3に示した帯状部BX1または帯状部BY1の上に配置される。
【0045】
図6は、島状部I1を含むフレキシブル基板2の概略的な断面図である。フレキシブル基板2は、電気的素子E1の他に、第1電極14と、接続層15と、絶縁層16と、第2電極17と、を備えている。第1電極14は、島状部I1の上に配置されている。第1電極14は、
図5に示した電源線SLaと電気的に接続されている。第1電極14と島状部I1の間には、他の絶縁層や他の導電層が介在してもよい。接続層15は、例えば半田であり、第1電極14の上面に接触している。電気的素子E1は、接続層15の上に配置されている。
電気的素子E1は、陽極ANと、陰極CAと、陽極ANと陰極CAとの間に配置された発光層LIと、を備えている。陽極ANは、接続層15の上面に接触している。絶縁層16は、第1電極14、接続層15、及び、電気的素子E1を覆っている。陰極CAは、絶縁層16から露出している。第2電極17は、陰極CA及び絶縁層16の上に配置され、陰極CAと接触している。第2電極17は、
図5に示した電源線SLbと電気的に接続されている。発光層LIは、陽極ANと陰極CAとの電位差に応じて光を放つ。
絶縁基材10の下面10Lは、伸縮部材EM1に接触している。島状部I1、第1電極14、絶縁層16、及び、第2電極17は、伸縮部材EM2によって覆われている。島状部I1が無い領域においては、伸縮部材EM2は、伸縮部材EM1の上面EMAに接触している。これらの伸縮部材EM1及びEM2は、例えば伸縮可能な透明の樹脂材料によって形成することができる。
【0046】
なお、第2部分10Bにおける電気的素子E2を含む断面構造は、
図6に示す断面構造を適用することができる。
【0047】
図7は、帯状部BX1及びBY1を含むフレキシブル基板2の概略的な断面図である。X配線WX1は帯状部BX1の上に配置され、Y配線WYは帯状部BY1の上に配置されている。X配線WX1と帯状部BX1との間、及び、Y配線WYと帯状部BY1との間には、それぞれ他の絶縁層が介在してもよい。X配線WX1及びY配線WYは、同一層に位置していてもよいし、異なる層に位置していてもよい。X配線WX1及びY配線WYは、それぞれ絶縁層16によって覆われている。
帯状部BX1、帯状部BY1、及び、絶縁層16は、伸縮部材EM2によって覆われている。帯状部BX1及びBY1が無い領域においては、伸縮部材EM2は、伸縮部材EM1の上面EMAに接触している。
【0048】
第1電極14は、例えば金属材料で形成されているが、インジウム錫酸化物(ITO)などの透明導電材料で形成されてもよい。第2電極17は、ITOなどの透明導電材料で形成されている。絶縁層16は、感光性アクリル樹脂などの有機絶縁材料で形成されている。絶縁層16は、無機絶縁層を含んでいてもよい。X配線WX1及びY配線WYは、金属材料で形成されている。金属材料としては、例えばチタン系(Ti)及びアルミニウム系(Al)の積層体を適用することができる。第1電極14、X配線WX1及びY配線WYは、同一材料で形成されてもよい。伸縮部材EM1及びEM2は、例えば、絶縁基材10よりも弾性率(ヤング率)が小さい樹脂で形成されている。
【0049】
なお、第2部分10BにおけるX配線WX2及びY配線WYを含む断面構造は、
図7に示す断面構造を適用することができる。
【0050】
次に、他の構成例について説明する。
【0051】
図8は、フレキシブル基板2を構成する絶縁基材10の他の構成例を示す平面図である。
図8には、絶縁基材10の一部に相当する第3部分10Cが示されている。このような第3部分10Cは、
図2などに示した第1部分10Aと置換されてもよいし、第2部分10Bと置換されてもよいし、第1部分10A及び第2部分10Bの他に追加されてもよい。
【0052】
第3部分10Cは、概ね第1方向Xに沿って形成された複数の帯状部BX3と、概ね第2方向Yに沿って形成された複数の帯状部BY3と、複数の島状部I3と、を有している。複数の帯状部BX3は第2方向Yに並び、複数の帯状部BY3は第1方向Xに並んでいる。帯状部BX3及びBY3の各々は、伸縮可能である。一例では、帯状部BX3及びBY3は、蛇行している。島状部I3は、帯状部BX3と帯状部BY3との交差部に相当する。
複数の島状部I3は、第1方向X及び第2方向Yにマトリクス状に配列されている。第1方向Xに隣接する島状部I3は帯状部BX3によって接続され、第2方向Yに隣接する島状部I3は帯状部BY3によって接続されている。
【0053】
帯状部BX3は、複数の直線部BX31乃至BX33を有している。これらの直線部BX31乃至BX33は、第1方向X及び第2方向Yとは異なる方向に延びている。また、直線部BX32は、直線部BX31及びBX33とは異なる方向に延びている。つまり、直線部BX31及びBX32は互いに交差し、また、直線部BX32及びBX33は互いに交差している。直線部BX31及びBX33は、それぞれ直線部BX32と島状部I3とを接続している。
帯状部BY3は、複数の直線部BY31乃至BY33を有している。これらの直線部BY31乃至BY33は、第1方向X及び第2方向Yとは異なる方向に延びている。また、直線部BY32は、直線部BY31及びBY33とは異なる方向に延びている。つまり、直線部BY31及びBY32は互いに交差し、また、直線部BY32及びBY33は互いに交差している。直線部BY31及びBY33は、それぞれ直線部BY32と島状部I3とを接続している。
【0054】
他の観点では、第3部分10Cは、絶縁基材10を貫通する複数の開口部OP3を有している。複数の開口部OP3は、マトリクス状に配列されている。1つの開口部OP3は、第2方向Yに隣接する2本の帯状部BX3と、第1方向Xに隣接する2本の帯状部BY3と、で囲まれた多角形状(例えば、十二角形状)に形成されている。帯状部BY3は第1方向Xに隣接する2つの開口部OP3の間に位置し、帯状部BX3は第2方向Yに隣接する2つの開口部OP3の間に位置している。開口部OP3の各々の形状は、実質的に同一である。なお、開口部OP3の形状は、
図8に示す例に限られない。
【0055】
X配線WXは、帯状部BX3の上に配置され、帯状部BX3と同様に蛇行している。Y配線WYは、帯状部BY3の上に配置され、帯状部BY3と同様に蛇行している。電気的素子Eは、島状部I3の上に配置され、X配線WX及びY配線WYと電気的に接続されている。
【0056】
このように絶縁基材10の第3部分10Cは、複数の島状部I3と、複数の帯状部BX3及びBY3と、で構成されることにより、第3部分10Cに伸縮性を与えることができる。すなわち、特定の方向への引張応力または圧縮応力が第3部分10Cに付加されると、引張応力または圧縮応力に応じて帯状部BX3及びBY3が伸縮する。これにより、第3部分10Cが引張応力または圧縮応力に応じた形状に変形する。
【0057】
図9は、フレキシブル基板2を構成する他の絶縁基材10の概略的な平面図である。
図9に示す構成例は、
図2に示した構成例の第2部分10Bを
図8に示した第3部分10Cに置換したものに相当する。すなわち、絶縁基材10は、伸縮可能な第1部分10Aと、第1部分10Aに隣接し伸縮可能な第3部分10Cと、を備えている。第1部分10A及び第3部分10Cは、一体的に形成されている。第1部分10Aの伸長率は、第3部分10Cの伸長率とは異なる。一例では、第1部分10Aの伸長率は、第3部分10Cの伸長率より高い。
【0058】
第1部分10Aにおける帯状部BX1及びBY1、及び、第3部分10Cにおける帯状部BX3及びBY3は、蛇行している。帯状部BX1の形状は帯状部BX3の形状とは異なり、帯状部BY1の形状は帯状部BY3の形状とは異なる。帯状部BX1及びBY1は、
図3を参照して説明したように、湾曲部を有している。また、帯状部BX3及びBY3は、
図8を参照して説明したように、互いに異なる方向に延びる複数の直線部を有している。
【0059】
第1部分10Aにおける開口部OP1の形状は、第3部分10Cにおける開口部OP3の形状とは異なる。
【0060】
第1部分10Aと第3部分10Cとの境界B0においては、例えば、第1部分10Aの島状部I1と第3部分10Cの帯状部BY3とが接続されている。なお、第1部分10Aにおけるいずれかの帯状部と、第3部分10Cにおけるいずれかの帯状部とが接続されてもよい。
また、境界B0を含む領域は、第1方向Xに並んだ複数の開口部OP31を有している。開口部OP31は、第2方向Yに隣接する帯状部BX1及びBX3と、第1方向Xに隣接する帯状部BY3と、で囲まれている。開口部OP31の形状は、開口部OP1の形状、及び、開口部OP3の形状のいずれとも異なる。
【0061】
このような構成例においても、上記の構成例と同様の効果が得られる。
【0062】
図10は、フレキシブル基板2を構成する他の絶縁基材10の概略的な平面図である。
図10に示す構成例は、
図2に示した構成例の第1部分10Aを
図8に示した第3部分10Cに置換したものに相当する。すなわち、絶縁基材10は、伸縮可能な第3部分10Cと、第3部分10Cに隣接し伸縮可能な第2部分10Bと、を備えている。第3部分10C及び第2部分10Bは、一体的に形成されている。第3部分10Cの伸長率は、第2部分10Bの伸長率とは異なる。一例では、第3部分10Cの伸長率は、第2部分10Bの伸長率より高い。
【0063】
第2部分10Bにおける開口部OP21の形状、開口部OP22の形状、及び、第3部分10Cにおける開口部OP3の形状は、互いに異なる。
【0064】
第2部分10Bと第3部分10Cとの境界B0においては、例えば、第2部分10Bの帯状部BX21と第3部分10Cの帯状部BY3とが接続されている。なお、第2部分10Bにおけるいずれかの帯状部と、第3部分10Cにおけるいずれかの帯状部とが接続されてもよい。
また、境界B0を含む領域は、第1方向Xに並んだ複数の開口部OP32を有している。開口部OP32は、帯状部BX21と、帯状部B33と、帯状部BX3と、第1方向Xに隣接する帯状部BY3と、で囲まれている。開口部OP32の形状は、開口部OP21の形状、開口部OP22の形状、及び、開口部OP3の形状のいずれとも異なる。
【0065】
このような構成例においても、上記の構成例と同様の効果が得られる。
【0066】
図11は、フレキシブル基板2を構成する他の絶縁基材10の概略的な平面図である。
図11に示す構成例では、絶縁基材10は、伸縮可能な第1部分10Aと、伸縮可能な第2部分10Bと、第1部分10Aと第2部分10Bとの間に位置し伸縮可能な第3部分10Cと、備えている。第1部分10A、第2部分10B、及び、第3部分10Cは、一体的に形成されている。第1部分10Aの第1伸長率、第2部分10Bの第2伸長率、及び、第3部分10Cの第3伸長率は、互いに異なる。一例では、第1伸長率は第3伸長率より高く、第3伸長率は第2伸長率より高い。また、第2伸長率と第3伸長率との差は、第1伸長率と第2伸長率との差より大きい。
【0067】
第1部分10Aの帯状部BX1及びBY1、及び、第3部分10Cの帯状部BX3及びBY3は、蛇行している。第2部分10Bの帯状部BX21、BY22、B33等は、直線状に形成されている。これらの帯状部の各々の形状については、上記の通りである。
【0068】
第1部分10Aと第3部分10Cとの境界B1においては、例えば、第1部分10Aの島状部I1と第3部分10Cの帯状部BY3とが接続されている。第2部分10Bと第3部分10Cとの境界B2においては、例えば、第2部分10Bの帯状部BX21と第3部分10Cの帯状部BY3とが接続されている。
【0069】
第1部分10Aの開口部OP1の形状、第3部分10Cの開口部OP3の形状、第2部分10Bの開口部OP21及びOP22の形状、境界B1を含む領域の開口部OP31の形状、及び、境界B2を含む領域の開口部OP32の形状は、互いに異なる。
【0070】
このような構成例においても、上記の構成例と同様の効果が得られる。
【0071】
なお、上記の
図9乃至
図11においては、電気的素子、X配線、Y配線等の図示を省略している。
【0072】
上記の例では、絶縁基材10が互いに異なる平面形状を有する複数の部分を備え、各部分の伸長率が異なる場合について説明したが、帯状部が互いに異なる積層構造を有する複数の部分を備え、各部分の伸長率が調整されてもよい。
【0073】
以下に、帯状部Bの伸長率を調整する一手法について説明する。ここでは、以下に説明する基本構造のサンプルを用意し、引張試験を実施して伸長率を算出した。
【0074】
図12は、帯状部B10の基本構造を説明するための図である。島状部I11と島状部I12との間を接続する帯状部B10は、S字型に蛇行している。配線Wは、島状部I11、帯状部B10、及び、島状部I12に亘って形成されている。帯状部B10に形成された配線Wは、帯状部B10の形状に応じて蛇行している。帯状部B10は、湾曲部B11乃至B13と、直線部B14と、を有している。
湾曲部B11乃至B13の各々の内周に沿った曲率半径をそれぞれr1乃至r3とする。また、直線部B14の線幅をW1とする。
【0075】
図13は、帯状部Bの断面図である。
図13の(A)は、帯状部B10の上に配線Wが形成された第1構造体C1を示し、
図13の(B)は、帯状部B10と配線Wとの間に有機絶縁層20が介在した第2構造体C2を示している。有機絶縁層20は、絶縁基材10とは異なる材料で形成されており、例えば、絶縁基材10よりも弾性率(ヤング率)が大きい有機絶縁材料で形成されている。これらの第1構造体C1及び第2構造体C2について、上記の引張試験を行い、伸長率を算出するとともに、配線Wの抵抗値を測定した。
【0076】
図14は、伸長率と抵抗変動率との関係を説明するための図である。
図中のC11乃至C14は、第1構造体C1を適用した場合の測定結果である。C11は、曲率半径R*が30μmであり、幅W1が15μmである場合の測定結果を示している。C12は、曲率半径R*が37.5μmであり、幅W1が25μmである場合の測定結果を示している。C13は、曲率半径R*が37.5μmであり、幅W1が20μmである場合の測定結果を示している。C14は、曲率半径R*が37.5μmであり、幅W1が15μmである場合の測定結果を示している。
図中のC21は、第2構造体C2を適用した場合の測定結果である。C21は、曲率半径R*が37.5μmであり、幅W1が25μmである場合の測定結果を示している。
なお、ここに示す曲率半径R*は、r1=r2=r3を意味するものである。
【0077】
第1構造体C1を適用した場合には、第2構造体C2を適用した場合と比較して、伸長率が増加しても配線Wの抵抗値の上昇が抑制されることが確認された。換言すると、同等の抵抗変動率となる伸長率を比較すると、第1構造体C1を適用した場合には、第2構造体C2を適用した場合と比較して、高い伸長率が得られる。このことから、第1構造体C1は、第2構造体C2よりも高い延伸性を有することが確認された。
【0078】
以上の結果から、帯状部B10の伸長率は、帯状部B10の断面構造によって調整できることが確認された。
【0079】
図15は、本実施形態の電子機器1の他の適用例を示す図である。物体100は、例えば、衝突等の緊急時に作動するエアバッグ装置110を内蔵するものである。一点鎖線で示すエアバッグ装置110は、緊急時にユーザを保護するために、膨張展開するエアバッグを備えている。
図15の(A)はエアバッグ装置110が作動する前の状態を示し、
図15の(B)はエアバッグ装置110が作動した後の状態を示している。
【0080】
図15の(A)に示すように、物体100の表面100Aに形成された線状部TLは、エアバッグが膨張展開する際に物体100の開裂を誘導するものであり、ティアラインと称される場合がある。線状部TLは、部分的に薄い厚さに形成されたものである。
電子機器1は、表面100Aに貼り付けられている。電子機器1の絶縁基材10が例えば
図2に示したように構成された場合、第1部分10Aと第2部分10Bとの境界Bは、線状部TLに重なっている。
【0081】
図15の(B)に示すように、エアバッグ装置110が作動した際には、エアバッグ装置110に収容されていたエアバッグ120にガスが供給されることによってエアバッグ120が膨張展開する。物体100は、線状部TLにおいて、膨張展開したエアバッグ120の押圧力によって開裂し、開口APを形成する。また、電子機器1は、物体100の開裂に伴って、境界において破断する。これにより、点線で示すエアバッグ120は、物体100から外部に飛び出してさらに膨張展開し、ユーザの物体100への衝突を抑制する。
【0082】
このように、電子機器1が物体100に貼り付けられた状態において、電子機器1の絶縁基材10は、物体100の開裂に伴って破断される。このため、物体100の内部に収容されたエアバッグ120の膨張展開が阻害されず、ユーザを保護することが可能となる。
【0083】
以上説明したように、本実施形態によれば、部分的に異なる伸縮性を有するように構成された電子機器を提供することができる。
【0084】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0085】
1…電子機器 A1…第1領域 A2…第2領域 2…フレキシブル基板
10…絶縁基材 10A…第1部分 10B…第2部分 I…島状部 B…帯状部
E…電気的素子 WX…X配線 WY…Y配線