(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】バイタルセンサ
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240903BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
H02J7/00 301E
H05K9/00 C
H02J7/00 302A
H02J7/00 S
(21)【出願番号】P 2020058255
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】東郷 諭
(72)【発明者】
【氏名】奥野 伸也
(72)【発明者】
【氏名】青木 利樹
【審査官】山口 大
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0150047(US,A1)
【文献】特開平05-329121(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0096539(US,A1)
【文献】特開平04-156819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
被検者の身体に装着可能かつケーブルを介して前記筐体と接続されるように構成されており、当該被検者のバイタルサインに対応する信号を出力するプローブと、
前記筐体に収容されており、少なくとも前記プローブに電力を供給するための給電回路と、
前記筐体に収容されており、前記給電回路と電気的に接続されているキャパシタと
、
前記筐体内で少なくとも前記給電回路と前記キャパシタを覆っており、電磁波をシールドするシールドケースと、
を備えている、
バイタルセンサ。
【請求項2】
前記キャパシタは、電気二重層現象を利用して充放電を行なう、
請求項1に記載の
バイタルセンサ。
【請求項3】
前記筐体内において少なくとも前記給電回路を支持している基板を備えており、
前記キャパシタは、円筒形状を有する蓄電部と、当該蓄電部を支持している基板部を備えたリチウムイオンキャパシタであり、
前記基板部は、前記蓄電部が前記基板の主面に沿って延びるように配置されている、
請求項2に記載の
バイタルセンサ。
【請求項4】
前記筐体に収容されており、前記筐体の外部から前記キャパシタを充電する電力を供給するためのコネクタと、
前記筐体内において少なくとも前記コネクタと前記キャパシタを支持している基板
と、
を備えており、
前記コネクタと前記キャパシタを接続している充電線路は、前記基板の内層に形成されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の
バイタルセンサ。
【請求項5】
前記シールドケースは、非磁性金属により形成されている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の
バイタルセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイタルセンサを動作させる電力を供給する給電装置に関連する。本発明は、当該給電装置を備えたバイタルセンサにも関連する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、被検者の身体に装着されて当該被検者のバイタルサインを取得するバイタルセンサを動作させるための電力を供給する給電装置の一例を開示している。充電池がセンサハウジングに対して着脱可能とされている。センサハウジングは、内部回路に対する電磁波シールド機能を有しているが、充電池が装着される箇所には電磁波シールドが施されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、バイタルセンサを動作させる電力を供給する給電装置の利便性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための一態様は、給電装置であって、
バイタルセンサに電力を供給するための給電回路と、
前記給電回路と電気的に接続されているキャパシタと、
前記キャパシタを充電する電力を供給するためのコネクタと、
少なくとも前記給電回路と前記キャパシタを覆っており、電磁波をシールドするシールドケースと、
を備えている。
【0006】
上記の目的を達成するための一態様は、バイタルセンサであって、
被検者の身体に装着可能であり、当該被検者のバイタルサインに対応する信号を出力するプローブと、
少なくとも前記プローブに電力を供給する給電回路と、
前記給電回路と電気的に接続されているキャパシタと、
前記キャパシタを充電する電力を供給するためのコネクタと、
少なくとも前記給電回路と前記キャパシタを覆っており、電磁波をシールドするシールドケースと、
を備えている。
【0007】
キャパシタは、二次電池と比較して充放電に伴う蓄電性能の劣化が少ないので、交換を想定する必要がない。したがって、コネクタを通じた外部電源からの充電経路を確保できれば、電磁波に対してより密閉性の高い構成を持たせたシールドケースで、給電回路とキャパシタを永続的に収納できる。これにより、給電装置の利便性を高めることができる。例えば、電磁波に対するシールド性が高められているので、磁気共鳴画像法(Magnetic Resonance Imaging;MRI)検査のような強い電磁波ノイズ環境下でもバイタルセンサを使用できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係るバイタルセンサの外観を例示している。
【
図2】
図1のバイタルセンサにおけるプローブの一例を示している。
【
図3】
図1のバイタルセンサにおけるプローブの別例を示している。
【
図4】
図1のバイタルセンサにおける給電装置の機能構成を例示している。
【
図7】円筒型のリチウムイオンキャパシタの配置を例示している。
【
図8】円筒型のリチウムイオンキャパシタの配置を例示している。
【
図9】箱型のリチウムイオンキャパシタの配置を例示している。
【
図10】箱型のリチウムイオンキャパシタの配置を例示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付の図面を参照しつつ、実施形態の例を以下詳細に説明する。各図面においては、説明対象の各要素を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0010】
図1は、一実施形態に係るバイタルセンサ1の外観を例示している。バイタルセンサ1は、プローブ2、筐体3、およびケーブル4を備えている。
【0011】
プローブ2は、被検者の二酸化炭素濃度に対応する信号を出力するように構成されている。具体的には、プローブ2は、発光素子と受光素子を備えている。プローブ2は、
図2に例示されるように、アダプタ5に装着されうる。アダプタ5は、被検者6の顔面に装着される。アダプタ5は、被検者6の呼気が通過する通路51を備えている。プローブ2は、発光素子と受光素子が通路51を挟んで対向するように配置される。発光素子から出射された光は、通路51を通過する際に被検者6の呼気に含まれる二酸化炭素による吸収を受ける。したがって、受光素子における受光強度は、二酸化炭素濃度に応じて変化する。二酸化炭素濃度は、バイタルサインの一例である。顔面は、被検者の身体の一例である。
【0012】
図1に例示されたプローブ2に代えて、
図3に例示されるプローブ2が使用されうる。プローブ2は、被検者6の経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)に対応する信号を出力するように構成されている。プローブ2は、発光素子と受光素子を備えている。プローブ2は、被検者6の指先に装着される。発光素子から出射された光は、指先の組織を通過して受光素子に入射する。受光素子における入射強度は、被検者6の動脈血に含まれる酸化ヘモグロビン濃度に応じて変化する。SpO2は、酸化ヘモグロビン濃度に対応している。SpO2は、バイタルサインの一例である。指先は、被検者の身体の一例である。
【0013】
プローブ2に関して本明細書で用いられる「被検者の身体に装着される」という表現は、
図2に例示されるようにアダプタを介して間接的に被検者の身体に装着される場合と、
図3に例示されるように直接的に被検者の身体に装着される場合とを含む意味である。
【0014】
図1に例示されるように、筐体3は、給電装置7を収容している。給電装置7は、バイタルセンサ1を動作させるための電力を供給するように構成されている。ケーブル4は、プローブ2と給電装置7を電気的に接続している。したがって、当該電力の一部は、ケーブル4を介してプローブ2に供給され、上記の発光素子などを動作させる。
【0015】
図示を省略するが、筐体3は、信号処理装置を収容している。信号処理装置は、プローブ2から出力された信号を処理し、処理された信号をバイタルモニタ装置などの外部機器へ送信するように構成されている。信号処理装置は、適宜の信号変換回路、マイクロコントローラ、通信回路などを備えている。外部機器への信号送信は、有線通信を介してなされてもよいし、無線通信を介してなされてもよい。
【0016】
図4は、給電装置7の機能構成を例示している。給電装置7は、基板70、給電回路71、キャパシタ72、コネクタ73、およびシールドケース74を備えている。
【0017】
キャパシタ72は、充放電が可能な電子部品である。キャパシタ72は、基板70に支持された給電回路71と電気的に接続されている。キャパシタ72に蓄積された電気エネルギーは、給電回路71に供給される。給電回路71は、当該電気エネルギーに適宜の処理を行ない、バイタルセンサ1の各部を動作させる電力Pとして出力する。
【0018】
コネクタ73は、充電線路731を介してキャパシタ72と電気的に接続されている。コネクタ73は、筐体3の外面に露出可能に配置される。外部電源に接続されたコネクタ100がコネクタ73に接続されると、外部電源からの電力Cが充電線路731を通じてキャパシタ72に供給される。これにより、キャパシタ72が充電される。
【0019】
シールドケース74は、給電回路71とキャパシタ72を覆うことにより、外部より到来する電磁波をシールドし、当該電磁波から給電回路71とキャパシタ72を保護可能な構成を有している。
【0020】
キャパシタは、二次電池と比較して充放電に伴う蓄電性能の劣化が少ないので、交換を想定する必要がない。したがって、コネクタ73を通じた外部電源からの充電経路を確保できれば、電磁波に対してより密閉性の高い構成を持たせたシールドケース74で、給電回路71とキャパシタ72を永続的に収納できる。これにより、給電装置7の利便性を高めることができる。例えば、電磁波に対するシールド性が高められているので、磁気共鳴画像法(Magnetic Resonance Imaging;MRI)検査のような強い電磁波ノイズ環境下でもバイタルセンサ1を使用できるようになる。
【0021】
MRI検査のような強い電磁波ノイズ環境下での使用が想定される場合、シールドケース74は、非磁性金属により形成されることが好ましい。非磁性金属の例としては、洋白(銅、亜鉛、ニッケルの合金)、銅、アルミニウム、ステンレス鋼などが挙げられる。
【0022】
図4においては、給電回路71のみが基板70に支持されている。しかしながら、同図に破線で示されるように、キャパシタ72も基板70に支持されてもよい。
【0023】
あるいは、
図5に例示されるように、キャパシタ72に加えてコネクタ73が基板70に支持されてもよい。この場合、コネクタ73とキャパシタ72を電気的に接続している充電線路731は、基板70の内層に形成されうる。
【0024】
このような構成によれば、コネクタ73がシールドケース74の外側に配置されていても、充電線路731が電磁波に直接曝されないようにできるので、バイタルセンサ1全体の電磁波に対するシールド性をさらに高めることができる。
【0025】
なお、基板70にシールドケース74と同電位となる部位を設けることにより、電磁波に対するシールド性をさらに高めることができる。
【0026】
あるいは、
図6に例示されるように、給電回路71とキャパシタ72に加えて、コネクタ73もシールドケース74内に収容されるように構成されうる。この場合、
図4に例示された構成と同様のシールド性を得るにあたって、充電線路731を基板70の内層に形成する必要がない。したがって、基板70の製造コストの上昇を抑制できる。
【0027】
図6に例示される構成においては、キャパシタ72は、基板70に支持されていてもよいし、基板70に支持されることなくシールドケース74内に配置されてもよい。
【0028】
本実施形態においては、電気二重層現象を利用して充放電を行なうキャパシタが、キャパシタ72として用いられている。いわゆる従来のコンデンサと比較してエネルギー密度が著しく高いので、給電装置7の大型化を抑制できる。
【0029】
より具体的には、
図7と
図8に例示される円筒型のリチウムイオンキャパシタが、キャパシタ72としてシールドケース74に覆われている。円筒型のリチウムイオンキャパシタは、蓄電部721と基板部722を有している。蓄電部721は、円筒形状を有しており、内部に複数の電極シートと電解液を収容している。基板部722は、蓄電部721を支持するとともに、給電回路71およびコネクタ73との電気的接続を確保するための接点が設けられている。
【0030】
図7と
図8に例示されるように、基板部722は、蓄電部721が基板70の主面701に沿って延びるように配置されている。換言すると、基板部722は、蓄電部721の円筒形状の軸方向が、基板70の主面701に沿って延びるように配置されている。本明細書で用いられる「基板の主面」という語は、基板における最も広い面積を有する面を意味している。
【0031】
このような構成によれば、シールドケース74内の空間利用効率を高めることができる。換言すると、シールドケース74により区画される収容空間内で許容されうる範囲で、蓄電部721のサイズを大きくすることができる。これにより、キャパシタ72のエネルギー密度を高めることができる。
【0032】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための例示にすぎない。上記の実施形態に係る構成は、本発明の趣旨を逸脱しなければ、適宜に変更・改良されうる。
【0033】
上記の実施形態においては、円筒型のリチウムイオンキャパシタが、キャパシタ72として用いられている。しかしながら、
図9および
図10に例示されるように、箱型あるいは積層型と称されるリチウムイオンキャパシタが、キャパシタ72として用いられてもよい。
【0034】
この種のリチウムイオンキャパシタは、扁平形状を有しているので、面積が最大となる面723を特定できる。
図9および
図10に例示されるように、この面723が基板70の主面701に対向するように配置することによって、シールドケース74により区画される収容空間の利用効率を高めることができる。
【0035】
シールドケース74は、
図4、
図5、
図7、および
図8に例示されるように、その少なくとも一部が基板70に支持されることを要しない。
図6に例示されるように、基板70の全体がシールドケース74内に配置されてもよい。
【0036】
プローブ2により取得される被検者6のバイタルサインは、呼吸気における二酸化炭素濃度やSpO2に限られない。プローブ2の仕様に応じて、脈拍、血圧、呼吸気における酸素濃度、動脈血における吸光物質濃度などが取得されうる。
【符号の説明】
【0037】
1:バイタルセンサ、7:給電装置、70:基板、701:主面、71:給電回路、72:キャパシタ、721:蓄電部、722:基板部、73:コネクタ、731:充電線路、74:シールドケース、C、P:電力