特許 7548723 粘着シート及びその製造方法

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2024-09-02

(45)【発行日】2024-09-10

(54)【発明の名称】粘着シート及びその製造方法

(51)【国際特許分類】

   C09J 7/38 20180101AFI20240903BHJP

   C09J 7/24 20180101ALI20240903BHJP

   C09J 7/25 20180101ALI20240903BHJP

   C09J 133/00 20060101ALI20240903BHJP

   C09J 11/08 20060101ALI20240903BHJP

   C09J 201/00 20060101ALI20240903BHJP

   B32B 3/30 20060101ALI20240903BHJP

   B32B 27/00 20060101ALI20240903BHJP

【ＦＩ】

C09J7/38

C09J7/24

C09J7/25

C09J133/00

C09J11/08

C09J201/00

B32B3/30

B32B27/00 M

【請求項の数】 10

(21)【出願番号】P 2020086697

(22)【出願日】2020-05-18

(65)【公開番号】P2021109954

(43)【公開日】2021-08-02

【審査請求日】2023-05-09

(31)【優先権主張番号】P 2020004386

(32)【優先日】2020-01-15

(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP

(73)【特許権者】

【識別番号】505005049

【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー

(74)【代理人】

【識別番号】100099759

【弁理士】

【氏名又は名称】青木 篤

(74)【代理人】

【識別番号】100123582

【弁理士】

【氏名又は名称】三橋 真二

(74)【代理人】

【識別番号】100146466

【弁理士】

【氏名又は名称】高橋 正俊

(74)【代理人】

【氏名又は名称】胡田 尚則

(74)【代理人】

【識別番号】100202418

【弁理士】

【氏名又は名称】河原 肇

(72)【発明者】

【氏名】阿部 秀俊

(72)【発明者】

【氏名】加藤 圭祐

【審査官】川嶋 宏毅

(56)【参考文献】

【文献】特開平１０－１３０５９３（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１８－１７８０８０（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１８－０１２２１５（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｃ０９Ｊ １／００－２０１／１０

Ｂ３２Ｂ １／００－４３／００

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

８０μｍ以上５００μｍ以下の厚みを有する剛性樹脂フィルムと、
前記剛性樹脂フィルムの一方の面上又はその上方に配置された第１感圧接着層と
を含む粘着シートであって、
前記第１感圧接着層が、
前記剛性樹脂フィルムの近位に位置し、体積平均粒径１１０μｍ以上の弾性樹脂微小球と粘着性バインダーとを含む感圧接着基層と、
前記剛性樹脂フィルムの遠位に位置しかつ前記感圧接着基層の上に配置された、粘着性バインダーを含み弾性樹脂微小球を含まない感圧接着被覆層と
を含み、
前記第１感圧接着層が前記弾性樹脂微小球の存在に起因した凹凸表面を有し、
前記第１感圧接着層の最大厚みと最小厚みの差が５０μｍ未満であり、
前記剛性樹脂フィルムの降伏弾性率と厚みとの積が、０．９×１０ ^４ Ｎ／ｍ以上５×１０ ^４ Ｎ／ｍ以下であり、
前記粘着シートが、
前記剛性樹脂フィルムの他方の面に配置された第２感圧接着層と、
前記第２感圧接着層を介して前記剛性樹脂フィルムに接着された透明樹脂フィルムと、
前記透明樹脂フィルムの表面に印刷された、前記透明樹脂フィルムと前記第２感圧接着層との間に位置するグラフィック画像と
をさらに含み、
前記透明樹脂フィルムの前記グラフィック画像が印刷された面とは反対側の面の表面光沢度が６０度で５以下であるか、あるいは、前記粘着シートが前記透明樹脂フィルムの前記グラフィック画像が印刷された面とは反対側の面に積層されたマット層をさらに有し、前記マット層の表面光沢度が６０度で５以下である、粘着シート。

【請求項2】

前記第１感圧接着層の最大厚みと最小厚みの差が１０μｍ以上である、請求項１に記載の粘着シート。

【請求項3】

前記感圧接着基層の粘着性バインダーが水系アクリル系粘着剤である、請求項１又は２のいずれかに記載の粘着シート。

【請求項4】

前記感圧接着被覆層の粘着性バインダーが溶剤系アクリル系粘着剤である、請求項１～３のいずれか一項に記載の粘着シート。

【請求項5】

前記第１感圧接着層の単位面積あたりの質量が６０ｇ／ｍ^２以上２００ｇ／ｍ^２以下である、請求項１～４のいずれか一項に記載の粘着シート。

【請求項6】

前記弾性樹脂微小球の２５℃における圧縮弾性率が１ｋＰａ以上１００ｋＰａ以下である、請求項１～５のいずれか一項に記載の粘着シート。

【請求項7】

前記剛性樹脂フィルムの厚みが前記弾性樹脂微小球の体積平均粒径の０．２倍以上である、請求項１～６のいずれか一項に記載の粘着シート。

【請求項8】

前記第１感圧接着層が、前記弾性樹脂微小球のクラスターを含む島状構造を有する、請求項１～７のいずれか一項に記載の粘着シート。

【請求項9】

前記第２感圧接着層が白色顔料を含む、請求項１～８のいずれか一項に記載の粘着シート。

【請求項10】

８０μｍ以上５００μｍ以下の厚みを有する剛性樹脂フィルムを用意することと、
体積平均粒径１１０μｍ以上の弾性樹脂微小球と粘着性バインダーとを含む感圧接着基層組成物を用意することと、
前記剛性樹脂フィルムの一方の面上、又は前記剛性樹脂フィルムの上に任意に配置された他の層の上に前記感圧接着基層組成物を塗布して、感圧接着基層を形成することと、
粘着性バインダーを含み弾性樹脂微小球を含まない感圧接着被覆層組成物を用意することと、
前記感圧接着基層の上に前記感圧接着被覆層組成物を塗布して、感圧接着被覆層を形成することと
を含む、請求項１に記載の粘着シートの製造方法。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本開示は粘着シート及びその製造方法に関する。

【背景技術】

【0002】

粘着シートは様々な用途に使用されており、例えばグラフィック画像を有する粘着性のグラフィックシートは、外装及び内装の装飾、又は広告目的で使用されている。凹凸形状を有する基材表面に適用される一般的な粘着シートは、良好な接着を達成するために基材表面の形状に対して追従することができる柔軟性を有している。

【0003】

特許文献１（特開平６－２８７５２５号公報）は、「フィルム基材の表面に、粘着剤を塗布して成る装飾用粘着フィルムにおいて、該フィルムの硬さがＪＩＳＫ５４００に準拠する鉛筆引っかき試験においてＨから３Ｂの範囲であり、該粘着剤が、弾性率が１×１０^４～１×１０^６ｄｙｎ／ｃｍ^２の粘着性微小球を含有したことを特徴とする粘着フィルム」を記載している。

【0004】

特許文献２（特開平９－１５７６０６号公報）は、「Ｉ）支持体と、ＩＩ）上記支持体上に形成され、粘着性の粘着性微小球と粘着性ポリマーとを含んでなる粘着層とを有してなる粘着シートにおいて、ａ）上記粘着層は、上記粘着性微小球が少なくとも２個集まって形成されたクラスターと上記粘着性ポリマーとを含有する凸状粘着部を有し、ｂ）その粘着シートを１ｋｇ／ｃｍの圧力で平坦なガラス板表面に貼り付けて測定した場合、粘着層と板表面との面積接触率が２０～９０％である、粘着シート」を記載している。

【0005】

特許文献３（特開平８－１１３７６８号公報）は、「フィルム基材の表面に粘着剤を塗布して成る装飾用粘着フィルムにおいて、当該粘着剤が微小球を有し、その微小球の弾性率が１×１０^４～１×１０^７ｄｙｎ／ｃｍ^２であり、且つ粒径が１０～１００μｍ（体積平均直径として）であることを特徴とする粘着フィルム」を記載している。

【0006】

一方で、モルタル、コンクリート、サイディングボード、スタッコ、エンボス加工を施した壁紙などの粗面に接着した後でも平滑な外観を呈する粘着シートに対する要求がある。また、粘着シートは、金属板、樹脂フィルムなどの平滑面に対しても十分な接着力を有することが望ましい。例えば、そのような粘着シートをグラフィックシートとして用いると、グラフィック画像の品質を維持しつつ様々な表面にグラフィックシートを設置することができる。

【0007】

特許文献４（特開２０１８－１７８０８０号公報）は、「８０μｍ以上５００μｍ以下の厚みを有する剛性樹脂フィルムと、前記剛性樹脂フィルムの一方の面上又はその上方に配置された第１感圧接着層であって、体積平均粒径１１０μｍ以上の弾性樹脂微小球と粘着性バインダーとを含む第１感圧接着層とを含み、前記第１感圧接着層が前記微小球の存在に起因した凹凸表面を有する、粘着シート」を記載している。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0008】

【文献】特開平６－２８７５２５号公報

【文献】特開平９－１５７６０６号公報

【文献】特開平８－１１３７６８号公報

【文献】特開２０１８－１７８０８０号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0009】

引用文献４の粘着シートは、粒径の比較的大きい弾性樹脂微小球に起因した凹凸表面を有する第１感圧接着層と、剛性樹脂フィルム層とを組み合わせることにより、粗面に接着したときでも平滑な外観を呈することができる。そのような弾性樹脂微小球を含む感圧接着層は、粗面と剛性樹脂フィルム層との間のクッション層として機能して、粗面に接着した後の粘着シートの外観の平滑性を改善する。感圧接着層と粗面の接触部分では、主に弾性樹脂微小球の変形が接着に寄与している。しかし、弾性樹脂微小球は、接着初期において一旦変形した後、徐々にその形状を回復するため、粘着シートの接着力が経時で低下する傾向があった。

【0010】

本開示は、平滑面及び粗面のいずれにも長期間にわたって安定的に高い接着力で接着することができ、かつ適用する表面に拘らず接着後に平滑な外観を呈する粘着シートを提供する。

【課題を解決するための手段】

【0011】

本開示の一実施態様によれば、８０μｍ以上５００μｍ以下の厚みを有する剛性樹脂フィルムと、前記剛性樹脂フィルムの一方の面上又はその上方に配置された第１感圧接着層とを含む粘着シートであって、前記第１感圧接着層が、前記剛性樹脂フィルムの近位に位置し、体積平均粒径１１０μｍ以上の弾性樹脂微小球と粘着性バインダーとを含む感圧接着基層と、前記剛性樹脂フィルムの遠位に位置しかつ前記感圧接着基層の上に配置された、粘着性バインダーを含み弾性樹脂微小球を含まない感圧接着被覆層とを含み、前記第１感圧接着層が前記弾性樹脂微小球の存在に起因した凹凸表面を有し、前記第１感圧接着層の最大厚みと最小厚みの差が５０μｍ未満である、粘着シートが提供される。

【0012】

本開示の別の実施態様によれば、８０μｍ以上５００μｍ以下の厚みを有する剛性樹脂フィルムを用意することと、体積平均粒径１１０μｍ以上の弾性樹脂微小球と粘着性バインダーとを含む感圧接着基層組成物を用意することと、前記剛性樹脂フィルムの一方の面上、又は前記剛性樹脂フィルムの上に任意に配置された他の層の上に前記感圧接着基層組成物を塗布して、感圧接着基層を形成することと、粘着性バインダーを含み弾性樹脂微小球を含まない感圧接着被覆層組成物を用意することと、前記感圧接着基層の上に前記感圧接着被覆層組成物を塗布して、感圧接着被覆層を形成することとを含む、上記粘着シートの製造方法が提供される。

【発明の効果】

【0013】

本開示の粘着シートは、粒径の比較的大きい弾性樹脂微小球に起因した凹凸表面を有する第１感圧接着層と、剛性樹脂フィルム層とを組み合わせることにより、平滑面及び粗面のいずれに対しても十分な接着力を示し、かつ適用する表面に拘らず接着後に平滑な外観を呈することができる。さらに、第１感圧接着層を構成する感圧接着被覆層が被着体表面上で濡れ広がることにより、一旦変形した弾性樹脂微小球がその形状を回復したときでも粘着シートの接着力の低下を軽減することができ、これにより長期間にわたって安定的に高い接着力を示すことができる。

【0014】

なお、上述の記載は、本発明の全ての実施態様及び本発明に関する全ての利点を開示したものとみなしてはならない。

【図面の簡単な説明】

【0015】

【図1A】本開示の一実施態様の粘着シートの概略断面図である。

【図1B】本開示の一実施態様の粘着シートの概略斜視図である。

【図2】本開示の一実施態様の粘着シートを、平滑面を有する基材に適用したときの概略断面図である。

【図3】本開示の別の実施態様の粘着シートの概略断面図である。

【図4】本開示のさらに別の実施態様の粘着シートの概略断面図である。

【図5】本開示のさらに別の実施態様の粘着シートの概略断面図である。

【図6】本開示のさらに別の実施態様の粘着シートの概略断面図である。

【図7】本開示のさらに別の実施態様の粘着シートの概略断面図である。

【図8】透明樹脂フィルムの表面がマット加工された一実施態様の粘着シートの概略断面図である。

【図9】透明樹脂フィルムにマット層が積層された一実施態様の粘着シートの概略断面図である。

【図10】透明樹脂フィルムの表面がマット加工された別の実施態様の粘着シートの概略断面図である。

【図11】透明樹脂フィルムにマット層が積層された別の実施態様の粘着シートの概略断面図である。

【図12】例１１の粘着シート（右下）及び比較例２の粘着シート（左上）のマスキング試験を示す写真である。

【図13】例１１の粘着シートを複数のタイルが目地を挟んで設置された表面に貼り付けたときの外観を示す写真である。

【図14】比較例３の粘着シートを複数のタイルが目地を挟んで設置された表面に貼り付けたときの外観を示す写真である。

【発明を実施するための形態】

【0016】

以下、本発明の代表的な実施態様を例示する目的でより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施態様に限定されない。

【0017】

本開示において「（メタ）アクリル」とはアクリル又はメタクリルを意味し、「（メタ）アクリレート」とはアクリレート又はメタクリレートを意味する。

【0018】

本開示において「感圧接着」とは、使用温度範囲で、例えば０℃以上、５０℃以下の範囲で恒久的に粘着性であり、軽い圧力で様々な表面に接着し、相変化（液体から固体へ）を呈さない材料又は組成物の特性を意味する。

【0019】

本開示において「粘着（性）」とは、常温で短時間わずかな圧力を加えただけで接着性を示す材料の性質を意味しており、「感圧接着」と相互に交換可能に使用される。

【0020】

一実施態様の粘着シートは、８０μｍ以上５００μｍ以下の厚みを有する剛性樹脂フィルムと、剛性樹脂フィルムの一方の面上又はその上方に配置された第１感圧接着層とを含む。第１感圧接着層は、剛性樹脂フィルムの近位に位置し、体積平均粒径１１０μｍ以上の弾性樹脂微小球と粘着性バインダーとを含む感圧接着基層と、剛性樹脂フィルムの遠位に位置しかつ感圧接着基層の上に配置された、粘着性バインダーを含み弾性樹脂微小球を含まない感圧接着被覆層とを含む。第１感圧接着層は弾性樹脂微小球の存在に起因した凹凸表面を有し、第１感圧接着層の最大厚みと最小厚みの差は５０μｍ未満である。第１感圧接着層の凹凸表面を被着体表面に接触させ、必要に応じて加圧することで、粘着シートが被着体に接着される。

【0021】

いくつかの実施態様では、第１感圧接着層の凹凸表面の間隙は空気抜け性に好適な形状及び深さを有しており、粘着シートを平滑面に容易に設置することができる。

【0022】

図１Ａ及び図１Ｂに、本開示の一実施態様による粘着シート１０の概略断面図及び概略斜視図をそれぞれ示す。粘着シート１０は、剛性樹脂フィルム１２と、剛性樹脂フィルム１２の一方の面（図１Ａでは下面）の上に配置された第１感圧接着層１４とを含む。第１感圧接着層１４は、弾性樹脂微小球１４２及び粘着性バインダー１４４を含む感圧接着基層１４０と、その上に配置された感圧接着被覆層１４８とを含む。

【0023】

剛性樹脂フィルムは、第１感圧接着層の支持体として機能し、かつ、粘着シートの適用時に微小球の変形により生じた応力に抵抗して粘着シートの変形を防止し、その結果、粘着シートの外観を平滑に保つことに寄与する。被着体が凹凸表面を有する場合は、剛性樹脂フィルムは接着時に粘着シートが凹凸表面に過度に追従することを抑制し、凹凸表面の突起が粘着シートを貫通することを防止できる。粘着シートを垂直面に適用した場合、剛性樹脂フィルムは粘着シートの変形を抑制して、自重による剥離を防止することができる。

【0024】

剛性樹脂フィルムの厚みは約８０μｍ以上、約５００μｍ以下である。いくつかの実施態様では、剛性樹脂フィルムの厚みは約１００μｍ以上又は約１５０μｍ以上、約４００μｍ以下又は約３００μｍ以下である。剛性樹脂フィルムの厚みを上記範囲とすることで、フィルム自身の有する剛性と組み合わされて、接着時に粘着シートの外観の平滑性を維持することができる。剛性樹脂フィルムの厚みが面内で異なる場合、本開示において剛性樹脂フィルムの厚みとは剛性樹脂フィルムの最小厚みを指す。

【0025】

いくつかの実施態様では、剛性樹脂フィルムの降伏弾性率は、約１０ＭＰａ以上、約１５ＭＰａ以上、又は約２０ＭＰａ以上、約３００ＭＰａ以下、約２５０ＭＰａ以下又は約２００ＭＰａ以下である。剛性樹脂フィルムの降伏弾性率を上記範囲とすることで、フィルムの厚みと組み合わされて、接着時に粘着シートの外観の平滑性を維持することができる。降伏弾性率は、剛性樹脂フィルムを幅１５ｍｍ、長さ１００ｍｍの長方形に切断して試験片を作製し、ＪＩＳ Ｋ ７１２７に準拠して試験片の伸び特性を、引張試験機を用いて２０℃、掴み間隔５０ｍｍ、引張速度３００ｍｍ／分の条件で測定したときの、降伏点における弾性率と定義される。

【0026】

いくつかの実施態様では、剛性樹脂フィルムの降伏弾性率と厚みの積は、約０．９×１０^４Ｎ／ｍ以上、約１．０×１０^４Ｎ／ｍ以上、又は約１．５×１０^４Ｎ／ｍ以上、約５×１０^４Ｎ／ｍ以下、約４×１０^４Ｎ／ｍ以下、又は約３×１０^４Ｎ／ｍ以下である。降伏弾性率と厚みの積は、剛性樹脂フィルムの曲げ剛性に比例する。剛性樹脂フィルムの降伏弾性率と厚みの積を上記範囲とすることで、剛性樹脂フィルムが接着時に粘着シートの外観の平滑性を維持するのに十分な曲げ剛性を有することができる。

【0027】

いくつかの実施態様では、剛性樹脂フィルムの２％引張強度は、約４０Ｎ／２５ｍｍ以上、約４５Ｎ／２５ｍｍ以上、又は約５０Ｎ／２５ｍｍ以上である。剛性樹脂フィルムの２％引張強度を上記範囲とすることで、接着時に粘着シートの外観の平滑性を維持することができ、粘着シートの破断又は破壊及びそれに伴う糊残りを生じさせずに粘着シートを除去することができる。２％引張強度は、剛性樹脂フィルムを幅２５ｍｍ、長さ１００ｍｍの長方形に切断して試験片を作製し、引張試験機を用いて２０℃、掴み間隔５０ｍｍ、引張速度３００ｍｍ／分の条件で測定したときの、２％伸びにおける引張強度と定義される。

【0028】

剛性樹脂フィルムの材料は特に限定されないが、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素樹脂などが挙げられる。高い降伏弾性率と強度を有し、耐候性に優れ、比較的安価であることから、剛性樹脂フィルムとしてポリエステルフィルムを用いることが有利である。

【0029】

剛性樹脂フィルムに、装飾等を目的としたエンボス処理、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理などの表面処理などが施されていてもよい。表面処理を行うことで第１感圧接着層及び／又は第２感圧接着層と剛性樹脂フィルムの密着性を高めることができる。表面処理により剛性樹脂フィルム表面の濡れ性を制御して、後述するように、微小球のクラスター形成を促進することもできる。

【0030】

剛性樹脂フィルムは延伸フィルムであってもよく非延伸フィルムであってもよい。剛性樹脂フィルムは延伸フィルム、特に２軸延伸フィルムであることが、フィルムの剛性及び引張強度を有利に高めることができる。

【0031】

剛性樹脂フィルムはその他の任意成分、例えばフィラー、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを含んでもよい。

【0032】

第１感圧接着層は剛性樹脂フィルムの上に直接配置されてもよく、剛性樹脂フィルムの上方に配置、すなわち剛性樹脂フィルム上の他の層、例えば印刷層、金属蒸着層などの装飾層、金属層、追加の樹脂フィルム層などの上に配置されてもよい。

【0033】

第１感圧接着層は、剛性樹脂フィルムの近位に位置する感圧接着基層と、剛性樹脂フィルムの遠位に位置しかつ感圧接着基層の上に配置された感圧接着被覆層とを含む。

【0034】

感圧接着基層は、体積平均粒径１１０μｍ以上の弾性樹脂微小球（以下、単に「微小球」ともいう。）と粘着性バインダーとを含む。本開示において「弾性樹脂微小球」とは、樹脂で形成された球状の材料であって、通常は微小球全体としてゴム弾性を示すものとして定義される。微小球の存在に起因して、第１感圧接着層は、その接着面（被着体表面と対向する面）に凹凸表面を有する。粘着シートの接着時に微小球は変形して、例えば粘着シートの厚み方向に潰れて、第１感圧接着層の被着体表面との接触面積が増大し、粘着シートが被着体表面に接着する。微小球の体積平均粒径は比較的大きいため、厚い感圧接着層が接着力に優れることに類似して、被着体との接触面積が比較的小さくても、微小球の有する弾性を利用して高い接着力を得ることができる。微小球及び／又は後述する微小球のクラスターにより形成される凹凸表面は、比較的大きな高低差を有していることから粗面との接触面積も大きくすることができ、それにより接着力を高めることができる。

【0035】

一実施態様では微小球は粘着性である。粘着性の微小球を用いることで接着力をより高めることができる。

【0036】

微小球の体積平均直径は１１０μｍ以上である。いくつかの実施態様では、微小球の体積平均直径は、約１２５μｍ以上又は約１３０μｍ以上であり、約５００μｍ以下又は約３００μｍ以下である。体積平均直径が上記範囲の微小球を含む感圧接着基層は、被着体表面に対して良好に追従して高い接着力を示す第１感圧接着層を形成することができる。微小球の体積平均粒径は、レーザー回折粒度分析装置、例えばＢｅｃｋｍａｎ Ｃｏｕｌｔｅｒ ＬＳ２３０を用いて測定される。

【0037】

微小球の圧縮弾性率は、２５℃において、約１ｋＰａ以上、約１００ｋＰａ以下であることが望ましい。微小球の圧縮弾性率を上記範囲とすることで、粗面への接着に有利なように、微小球又は微小球のクラスターを変形させることができる。微小球の圧縮弾性率は、微小球を所定の形状、例えばシリンダー状に成形した試料を作製し、粘弾性測定装置、例えばレオメトリックス社製ＲＳＡＩＩ粘弾性スペクトロメーターを用いて、周波数１ｒａｄ／秒、圧縮歪みモード、測定温度範囲－８０℃～１５０℃、昇温速度５．０℃／分で測定したときの２５℃での測定値である。

【0038】

微小球は、アクリル系樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン、酢酸ビニル系樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、スチレン－ブタジエン－スチレンブロックコポリマー、スチレン－エチレン－ブチレン－スチレンブロックコポリマー、スチレン－イソプレン－スチレンブロックコポリマー、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、又は天然ゴムを含むことができる。アクリル系樹脂は高い耐候性を有しており、粘着性の制御が容易であることから有利に使用される。

【0039】

微小球は、架橋樹脂を含んでもよく、非架橋樹脂を含んでもよい。一実施態様では、微小球は架橋樹脂を含む。架橋樹脂を含む微小球は形状保持性及び耐久性に優れていることから、粘着シートの接着及び脱着を繰り返すことができる。

【0040】

微小球は、中実粒子、１つ若しくは複数の空隙を内部に有する中空粒子、又はこれらの混合物を含むことができる。一実施態様では微小球は中実粒子である。

【0041】

微小球は、例えば懸濁重合、乳化重合、シード重合などの公知の重合方法により製造することができる。例えば、アクリル系樹脂を含む微小球は、以下の手順で懸濁重合により製造することができる。脱イオン水、モノマー混合物、ラジカル重合開始剤、任意の添加剤を機械式撹拌機付き反応装置に入れ、反応装置内を窒素ガスなどの不活性ガスでパージし、撹拌しながら所定温度に加熱してアクリル系モノマーの重合反応を行う。撹拌速度は通常１０～７００ｒｐｍであり、反応温度は通常３０～１２０℃であり、反応時間は通常数時間から数十時間である。

【0042】

モノマー混合物は、一般にアルキルアクリレート（例えば、エチルアクリレート、ｎ－ブチルアクリレート、ｎ－ヘキシルアクリレート、２－エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレート等）と、エチレン性不飽和結合を有するカルボン酸（例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等）とを含む。アルキルアクリレート及びエチレン性不飽和結合を有するカルボン酸はそれぞれ１種であってもよく、２種以上を組み合わせてもよい。エチレン性不飽和結合を有するカルボン酸は、アルキル（メタ）アクリレート１００質量部に対して、一般に約１質量部以上、約１０質量部以下の量で使用される。１，４－ブタンジオールジアクリレート、ジビニルベンゼンなどの多官能性モノマーを架橋剤として混合物に添加して、アクリル系樹脂を架橋してもよい。架橋剤の使用量は、モノマー混合物１００質量部に対して、一般に約０．０１質量部以上、又は約０．０２質量部以上、約０．５質量部以下、又は約０．１質量部以下の量で使用される。アクリル系樹脂を含む微小球の製造方法は、例えば米国特許４，９９４，３２２号明細書に開示されている。重合して得られた微小球は、濾過により分離してもよく、反応終了後の微小球を含む水性分散液の状態で使用してもよい。

【0043】

微小球に含まれる樹脂のガラス転移温度（Ｔｇ）は一般に室温より低く、例えば約－９０℃以上、約－７０℃以上、又は約－５０℃以上、約０℃以下、約－１０℃以下又は約－２０℃以下である。ガラス転移温度は、モノマー混合物に含まれるモノマーの種類及び配合比により調節することができる。

【0044】

粘着性バインダーは、厚みに起因する接着性を感圧接着基層に付与し、粘着シートからの微小球の脱落を抑制する。図１Ａ及び図１Ｂでは、微小球１４２又は後程詳述する微小球１４２のクラスター１４６はバインダー１４４中に分散し、バインダー１４４を介して粘着シート１０に固定されている。

【0045】

粘着性バインダーとしてアクリル系樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエステル、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等の公知の樹脂を使用することができる。粘着性バインダーは、水系樹脂であってもよく、溶剤系樹脂であってもよい。水系樹脂とは、樹脂の合成又は重合が、必要に応じて乳化剤などを使用し、水中で行われたものである。溶剤系樹脂とは、樹脂の合成又は重合が、有機溶剤中で行われたものである。粘着性バインダーは粘着付与剤を含んでもよく、架橋されていてもよい。一実施態様ではバインダーはアクリル系粘着剤である。バインダーがアクリル系粘着剤であり、微小球がアクリル系樹脂を含む場合、バインダーと微小球の化学親和性が高いため、微小球の脱落をより確実に防止することができる。感圧接着基層の粘着性バインダーは、弾性樹脂微小球が一般に水系エマルション又は分散液の形態で得られることから、弾性樹脂微小球を含むエマルション又は分散液と有利に混和する水系アクリル系粘着剤であることが好ましい。

【0046】

一実施態様では、微小球は粘着性バインダー１００質量部に対して約５質量部以上、約１０質量部以上、又は約１５質量部以上、約２００質量部以下、約１８０質量部以下、又は約１６０質量部以下の量で、感圧接着基層に含まれる。微小球の含有量を上記範囲とすることで、粗面に対しても良好な接着性を示す凹凸表面を第１感圧接着層上に形成することができる。

【0047】

一実施態様では、感圧接着基層における粘着性バインダーと微小球の質量比は、４０：６０以上、９０：１０以下である。粘着性バインダーと微小球の質量比を上記範囲とすることで、粗面に対しても良好な接着性を示す凹凸表面を第１感圧接着層上に形成することができる。

【0048】

感圧接着基層は、その他の任意成分、例えばフィラー、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを含んでもよい。これらの任意成分は粘着性バインダー中に溶解又は分散させることができる。一実施態様では感圧接着基層は酸化チタンなどの白色顔料を含む。この実施態様では被着体表面を隠蔽することができる。

【0049】

一実施態様では、感圧接着基層は、複数の微小球が凝集して形成された、微小球のクラスターを含む島状構造を有する。本開示において「微小球のクラスター」とは２個以上の微小球が凝集した塊であり、第１感圧接着層に不規則な形状及び不規則な配置の凸部を形成する、微小球の集合体である。クラスターは、粘着シートの平面方向に配列した複数の微小球を含んでもよく、粘着シートの厚み方向に積み重なった複数の微小球を含んでもよく、これらの組み合わせを含んでもよい。クラスターにより形成される島状構造には粘着性バインダーが含まれてもよい。島状構造の周囲には、クラスターを含まず粘着性バインダーのみを含む、比較的平坦な海部分が存在する。図１Ａ及び図１Ｂでは複数の微小球１４２が凝集して形成されたクラスター１４６を感圧接着被覆層１４８が被覆しており、これらのクラスター（図１Ａでは３つ）により粘着性の凸部として機能する島状構造が描かれている。

【0050】

粘着シートの被着体への貼り付け操作中にクラスター内の微小球が圧力で変形することで、粘着性の凸部は被着体表面に接着するのに適した形状に変形する。変形の程度は、感圧接着基層の厚み及び塗布重さ、微小球の圧縮弾性率、微小球及び粘着性バインダーの配合比などにより制御することができる。

【0051】

一実施態様では、クラスターは微小球を２個以上、約５個以上、又は約１０個以上、約２００個以下、約１５０個以下又は約１００個以下含む。クラスターに含まれる微小球の個数が上記範囲であることにより、被着体表面に対する追従性を高めつつ、粘着性の面内ばらつきを抑制することができる。クラスター全数のうち、上記個数の微小球を含むクラスターの数が８０％以上であることが望ましい。感圧接着基層における微小球のクラスターの形成、その形状、サイズなどは、光学顕微鏡の反射光を用いて、通常１０～１００倍の倍率にて確認することができる。

【0052】

感圧接着被覆層は、粘着性バインダーを含み弾性樹脂微小球を含まない。感圧接着被覆層は、被着体表面に濡れることにより、第１感圧接着層の接着力の長期安定性の向上に寄与する。

【0053】

粘着性バインダーとしてアクリル系樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエステル、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等の公知の樹脂を使用することができる。粘着性バインダーは、水系樹脂であってもよく、溶剤系樹脂であってもよい。粘着性バインダーは粘着付与剤を含んでもよく、架橋されていてもよい。

【0054】

感圧接着被覆層の粘着性バインダーは、感圧接着基層の粘着性バインダーと同じであってもよく、異なっていてもよい。一実施態様では、感圧接着被覆層の粘着性バインダーは、感圧接着基層の粘着性バインダーと異なる。

【0055】

感圧接着被覆層の粘着性バインダーは、溶剤系アクリル系粘着剤であることが、被着体表面の汚染防止の観点から好ましい。特に、感圧接着基層の粘着性バインダーが水系アクリル系粘着剤などの水系樹脂である場合、溶剤系アクリル系粘着剤を感圧接着被覆層の粘着性バインダーとして用いることにより、感圧接着被覆層が感圧接着基層の少なくとも一部を外部から遮蔽するバリア層として機能して、感圧接着基層に含まれる乳化剤などが被着体表面に移行することを抑制し、これにより被着体表面の汚染を低減することができる。このことは、同じ又は異なる粘着シートを被着体に繰り返し貼り剥がしする用途において、被着体表面の原状復帰を容易にすることができる点で有利である。

【0056】

感圧接着被覆層は、その他の任意成分、例えばフィラー、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを含んでもよい。これらの任意成分は粘着性バインダー中に溶解又は分散させることができる。一実施態様では感圧接着被覆層は酸化チタンなどの白色顔料を含む。この実施態様では被着体表面を隠蔽することができる。

【0057】

いかなる理論に拘束される訳ではないが、想定される接着の機構を説明する目的で、図２に、本開示の一実施態様の粘着シート１０を、平滑面を有する基材２００に適用したときの概略断面図を示す。微小球１４２は弾性を有するため基材２００に適用したときに変形し、第１感圧接着層１４の基材２００との接触面積が増大する。さらに、感圧接着被覆層１４８が基材２００の表面上で徐々に濡れ広がることで、第１感圧接着層１４の基材２００との接触面積はさらに増大する。このことにより、一旦変形した微小球１４２がその形状を回復したときでも、粘着シート１０の接着力の低下を軽減することができ、これにより長期間にわたって安定的に高い接着力を得ることができる。

【0058】

粘着シートは、例えば必要に応じて表面処理を行った剛性樹脂フィルム又は剛性樹脂フィルム上のその他の層の表面に、微小球及び粘着性バインダー、並びに任意成分である溶媒、その他の添加剤などを含む感圧接着基層組成物を塗布し、必要に応じて溶媒を乾燥することにより感圧接着基層を形成した後、感圧接着基層の上に、粘着性バインダー及び任意成分である溶媒、その他の添加剤などを含むが弾性樹脂微小球を含まない感圧接着被覆層組成物を塗布し、必要に応じて溶媒を乾燥することにより形成することができる。感圧接着基層組成物及び感圧接着被覆層組成物の調製は、ホモミキサー、プラネタリーミキサー等の混合装置を用いて成分を混合することにより行うことができる。感圧接着基層組成物及び感圧接着被覆層組成物の塗布は、例えばナイフコーター、グラビコーター、ロールコーター、ダイコーター、バーコーター等により行うことができる。塗布後の溶媒の乾燥は、例えば温度６０℃～１２０℃で数十秒～１０分間行うことができる。

【0059】

感圧接着基層組成物の溶媒として水、有機溶媒又はこれらの混合物である水系溶媒を用いることができる。クラスター形成には水又は水系溶媒を用いることが有利である。水系溶媒として、例えば３－メチル－３－メトキシブチルアセテート等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルエステルと水との混合物が挙げられる。

【0060】

感圧接着被覆層組成物の溶媒として、有機溶媒、水、又はこれらの混合物である水系溶媒を用いることができる。感圧接着基層中に形成されたクラスターの解離又は脱落を効果的に防止する観点からは、溶媒として非水系溶媒を用いることが有利である。非水系溶媒として、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、メタノール、エタノール、ｎ－プロパノール、イソプロパノール、ｎ－ブタノールなどのアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン、及び酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステルが挙げられる。

【0061】

感圧接着基層組成物及び感圧接着被覆層組成物の添加剤として、本発明の効果を損なわない範囲において公知のものが使用でき、例えば粘度調製剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料等が挙げられる。

【0062】

感圧接着基層組成物の粘度、及び／又は感圧接着基層組成物が塗布される表面の濡れ性を調整することで、微小球のクラスターの形成を促進し、クラスターの形状、配置及び大きさを制御することができる。微小球は溶媒と粘着性バインダーを含む組成物中に分散しており、溶媒乾燥時に微小球が溶媒に溶解した粘着性バインダー成分に引きずられて移動し、凝集してクラスターが形成される。

【0063】

感圧接着基層組成物の粘度を約１００ｍＰａ・ｓ以上、又は約１５０ｍＰａ・ｓ以上、約６０００ｍＰａ・ｓ以下、又は約５０００ｍＰａ・ｓ以下とすることが、クラスター形成の促進に有利である。

【0064】

感圧接着基層組成物が塗布される表面の濡れ性は、コロナ放電処理、プラズマ処理、プライマー処理、酸又はアルカリ処理等の表面処理により、あるいは剛性樹脂フィルムに含まれる添加剤の種類及び量により、組成物の塗布ムラを抑制しつつクラスターが形成されるように制御することができる。

【0065】

感圧接着基層の単位面積あたりの質量は、約１５ｇ／ｍ^２以上、約２０ｇ／ｍ^２以上、又は約２５ｇ／ｍ^２以上、約１８０ｇ／ｍ^２以下、約１５０ｇ／ｍ^２以下、又は約１２０ｇ／ｍ^２以下とすることができる。感圧接着基層の単位面積あたりの質量を上記範囲とすることで、感圧接着基層の厚みに起因する接着力を第１感圧接着層に付与することができる。

【0066】

感圧接着被覆層組成物の粘度は、特に限定されないが、例えば約１００ｍＰａ・ｓ以上、又は約１５０ｍＰａ・ｓ以上、約６０００ｍＰａ・ｓ以下、又は約５０００ｍＰａ・ｓ以下とすることができる。

【0067】

感圧接着被覆層の単位面積あたりの質量は、約１０ｇ／ｍ^２以上、約１５ｇ／ｍ^２以上、又は約２０ｇ／ｍ^２以上、約１５０ｇ／ｍ^２以下、約１２０ｇ／ｍ^２以下、又は約１００ｇ／ｍ^２以下とすることができる。感圧接着被覆層の単位面積あたりの質量を上記範囲とすることで、接着力の経時安定性を高め、かつ再配置性に優れた第１感圧接着層を形成することができる。

【0068】

第１感圧接着層の単位面積あたりの質量、すなわち感圧接着基層と感圧接着被覆層の合計の単位面積あたりの質量は、約６０ｇ／ｍ^２以上、約７０ｇ／ｍ^２以上、又は約８０ｇ／ｍ^２以上、約２００ｇ／ｍ^２以下、約１８０ｇ／ｍ^２以下、又は約１６０ｇ／ｍ^２以下とすることができる。第１感圧接着層の単位面積あたりの質量を上記範囲とすることで、高い接着力を有しつつ再配置性に優れた第１感圧接着層を形成することができる。

【0069】

一実施態様では、感圧接着基層の粘着性バインダーと感圧接着被覆層の粘着性バインダーとは同じである。この実施態様では、感圧接着基層と感圧接着被覆層との層間接着を高めることができる。

【0070】

第１感圧接着層の表面を剥離ライナーにより保護してもよい。第１感圧接着層の接着力に応じて、剥離ライナーの表面に剥離処理を施してもよく、非処理の剥離ライナーを使用することもできる。例えば、剥離ライナーとして厚み８０～２００μｍの非処理ポリエチレンフィルムを使用することができる。

【0071】

第１感圧接着層の厚みは、第１感圧接着層表面にフィルムを貼り付けて微小球が変形した状態で測定した場合に、一般に約６５μｍ以上、約７０μｍ以上、又は約７５μｍ以上、約２２０μｍ以下、約２００μｍ以下、又は約１８０μ以下である。第１感圧接着層の厚みを上記範囲とすることで、被着体表面への接着力を高めることができる。

【0072】

第１感圧接着層は凹凸表面を有し面内の厚みは不均一であるため、第１感圧接着層は最大厚みと最小厚みを有する。第１感圧接着層の最小厚みは一般に微小球が存在しない粘着性バインダー領域の厚みである。第１感圧接着層の最大厚みと最小厚みの差は、第１感圧接着層の凹凸表面のトポグラフィー（表面の形状又は特徴）を示す指標の一つであり、特に粗面に対する接着性に関係する。第１感圧接着層の最大厚みと最小厚みの差は、約５０μｍ未満である。いくつかの実施態様では、第１感圧接着層の最大厚みと最小厚みの差は、約４５μｍ以下、又は約４０μｍ以下、約１０μｍ以上、約１５μｍ以上、又は約２０μｍ以上である。第１感圧接着層の最大厚みと最小厚みの差を上記範囲とすることで、例えば高さ１～２ｍｍの突起を有する粗面に対しても粘着シートを接着することができ、かつ感圧接着被覆層の濡れによる接着力の安定化効果を有効に得ることができる。

【0073】

第１感圧接着層の凹凸表面の６０度光沢度は、第１感圧接着層の凹凸表面のトポグラフィーを示すもう一つの指標であり、特に粗面に対する接着性に関係する。いくつかの実施態様では、第１感圧接着層の６０度光沢度は、約３以上、約４以上、又は約５以上、約６０以下、約５５以下、又は約５０以下である。第１感圧接着層の６０度光沢度を上記範囲とすることで、例えば高さ１～２ｍｍの突起を有する粗面に対しても高い接着力で粘着シートを接着することができる。６０度光沢度は、ＪＩＳ Ｚ８７４１に準拠して測定した値と定義される。

【0074】

いくつかの実施態様では、剛性樹脂フィルムの厚みは微小球の体積平均粒径の約０．２倍以上、約０．２５倍以上、又は約０．３倍以上、約７倍以下、約６．５倍以下、又は約６倍以下である。上記条件を満たすように剛性樹脂フィルムの厚みを選択することで、粘着シートの適用時に微小球の変形により生じた応力に対して、粘着シートの変形を十分に防止して、粘着シートの外観をより平滑に保つことができる。

【0075】

粘着シートは公知の方法で被着体表面に適用することができる。適用時に粘着シートをローラーなどで被着体表面に対して押し付けてもよく、手で擦ってもよい。粘着シートは適用時に一旦変形することがあるが、経時で形状を復元して平滑な表面を提供することができる。一実施態様では、粘着シートはモルタル、コンクリートなどの粗面に適用され、適用された後に平滑な外観を呈する。

【0076】

粘着シートの接着力は被着体表面によって様々であるが、１８０度剥離力で表したときに、例えば約０．５Ｎ／２５ｍｍ以上、又は約１Ｎ／２５ｍｍ以上、約５０Ｎ／２５ｍｍ以下、又は約２５Ｎ／２５ｍｍ以下である。粘着シートは剛性樹脂フィルムを有することから曲げ方向に変形しにくく、粘着シートの剥離を開始するのに必要な力が剥離開始位置に集中しない。そのため、１８０度剥離力が小さい場合であっても、粘着シートを被着体表面に保持することができる。１８０度剥離力は、粘着シートを幅２５ｍｍ、長さ１５０ｍｍの長方形に切断して試験片を作製し、ＪＩＳ Ｚ ０２３７ ８．２．３．に準拠して被着体表面の上に２０℃で貼り付けた後、２０℃で２４時間放置し、引張試験機を用いて２０℃、３００ｍｍ／分の剥離速度で１８０度剥離を行ったときの接着力として定義される。

【0077】

粘着シートと被着体を貼りあわせた構造における剪断力は被着体表面によって様々であるが、例えば約０．０５ＭＰａ以上、又は約０．１０ＭＰａ以上、約１．５ＭＰａ以下、又は約１．０ＭＰａ以下である。粘着シートは特に粗面に対して適用したときに高い剪断力を示すことができる。いかなる理論に拘束される訳ではないが、これは第１感圧接着層の凹凸表面と粗面の凹凸とが噛み合うためであると考えられる。高い剪断力は粘着シートを垂直面に適用するときに粘着シートの自重によるずれを防止するのに有利である。剪断力は、粘着シートを幅２５ｍｍ、長さ６０ｍｍの長方形に切断して試験片を作製し、接触領域が２５ｍｍ×１２ｍｍとなるように、試験片を幅２５ｍｍ、長さ６０ｍｍ、厚み１ｍｍのアルミニウムパネルの上に２０℃でローラーを用いて貼り付けた後、２０℃で２４時間放置し、引張試験機を用いて２０℃、引張速度５０ｍｍ／分で測定したときの接着力として定義される。

【0078】

一実施態様の粘着シートは再配置性を有する。微小球の存在に起因した凹凸表面を有する第１感圧接着層は、粘着シートに再配置性を付与することができる。

【0079】

粘着シートは、任意の構成要素、例えば剛性樹脂フィルムの一方の面上若しくは他方の面上、又はそれらの上方に設けられた表面保護層、印刷層、金属蒸着層などの装飾層、これらの層を接着する接着層、追加の樹脂フィルム層などをさらに有してもよい。

【0080】

一実施態様では、粘着シートは透明樹脂フィルムを含み、透明樹脂フィルムはその表面に印刷されたグラフィック画像を有する。

【0081】

剛性樹脂フィルムは、他方の面に第２感圧接着層を有してもよい。第２感圧接着層により剛性樹脂フィルムと、透明樹脂フィルム又は他の層例えば金属層とを接着することができる。グラフィック画像は透明樹脂フィルムと第２感圧接着層の間に位置してもよい。このことによりグラフィック画像を透明樹脂フィルムで保護することができる。

【0082】

図３に、本開示の別の実施態様による粘着シート１０の概略断面図を示す。粘着シート１０は、剛性樹脂フィルム１２の他方の面（図３では上面）の上に配置された第２感圧接着層２４と、透明樹脂フィルム２２とを含む。透明樹脂フィルム２２の表面（図３では下面）には、グラフィック画像２６が印刷されている。グラフィック画像２６は透明樹脂フィルム２２と第２感圧接着層２４の間に位置している。

【0083】

透明樹脂フィルムの材料は特に限定されないが、例えばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素樹脂などが挙げられる。耐候性及び透明性に優れていることから、透明樹脂フィルムとしてアクリル系樹脂フィルムを用いることが有利である。

【0084】

透明樹脂フィルムの厚みは様々であってよく、例えば約２５μｍ以上又は約４０μｍ以上、約５００μｍ以下又は約３００μｍ以下とすることができる。

【0085】

透明樹脂フィルムに、装飾等を目的としたマット処理、エンボス処理、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理などの表面処理などが施されていてもよい。透明樹脂フィルムはその表面にレセプター層を有してもよく、レセプターフィルムであってもよい。レセプター層を有する又はレセプターフィルムである透明樹脂フィルムを用いることで、インクジェット印刷などを用いてグラフィック画像を透明樹脂フィルム上に直接形成することができる。透明樹脂フィルムはその他の任意成分、例えばフィラー、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを含んでもよい。透明樹脂フィルムは表面保護層を有してもよい。表面保護層は透明であることが好ましい。

【0086】

透明樹脂フィルムは無色であってもよく、着色されていてもよい。いくつかの実施態様では、透明樹脂フィルムの全光線透過率は、波長範囲４００～７００ｎｍにおいて、約８５％以上、又は約９０％以上である。本開示における全光線透過率はＪＩＳ Ｋ ７３６１－１：１９９７（ＩＳＯ １３４６８－１：１９９６）に準拠して決定することができる。

【0087】

グラフィック画像は、インクジェット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、静電印刷などを用いて透明樹脂フィルムに印刷されたものであってよい。

【0088】

第２感圧接着層は、アクリル系樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエステル、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等の公知の樹脂を含有する感圧接着剤組成物を用いて形成することができる。第２感圧接着層は粘着付与剤を含んでもよく、架橋されていてもよい。一実施態様では第２感圧接着層は酸化チタンなどの白色顔料を含む。この実施態様では被着体表面を隠蔽することができる。

【0089】

第２感圧接着層の厚みは様々であってよく、例えば約１０μｍ以上、約２０μｍ以上又は約３０μｍ以上、約２００μｍ以下又は約１００μｍ以下とすることができる。

【0090】

このようなグラフィック画像を有する粘着シートは、例えば以下の手順で製造することができる。剛性樹脂フィルム及び第１感圧接着層を有する粘着シートを用意する。次に、必要に応じて剛性樹脂フィルムの表面又は剛性樹脂フィルム上のその他の層の表面を表面処理し、これらの表面に感圧接着層組成物を塗布し、乾燥することにより第２感圧接着層を形成する。透明樹脂フィルムの一方の表面にインクジェット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷などを用いてグラフィック画像を印刷する。透明樹脂フィルムのグラフィック画像印刷面と第２感圧接着層が対向するように、透明樹脂フィルムと粘着シートを積層する。必要に応じて透明樹脂フィルムの非印刷面にバッキングを配置してもよく、第１感圧接着層の上に剥離ライナーを配置してもよい。必要に応じて第２感圧接着層と透明樹脂フィルムの間の密着性を高めるため、透明樹脂フィルムの表面にコロナ処理、プライマー処理などを施してもよい。

【0091】

グラフィック画像を有する粘着シートは以下の手順で製造することもできる。剛性樹脂フィルムの表面上に第２感圧接着層を形成し、第２感圧接着層上に剥離ライナーを貼り合わせる。次に、剛性樹脂フィルムの反対面に第１感圧接着層を形成し、第１感圧接着層の上に剥離ライナーを貼り合わせる。第２感圧接着層上の剥離ライナーを除去した後、グラフィック画像が印刷された透明樹脂フィルムを第２感圧接着層上に積層する。

【0092】

透明樹脂フィルムが剛性樹脂フィルムであってもよい。図４に、本開示のさらに別の実施態様による粘着シート１０の概略断面図を示す。粘着シート１０は、透明樹脂フィルム２２でもある剛性樹脂フィルム１２と、剛性樹脂フィルム１２上に印刷されたグラフィック画像２６と、接着層３４と、追加の樹脂フィルム層３２と、第１感圧接着層１４とを含む。接着層３４は第２感圧接着層と同様のものであってよく、酸化チタンなどの白色顔料を含んでもよい。追加の樹脂フィルム層として、例えばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素樹脂などのフィルムが挙げられ、その厚みは様々であってよく、例えば約２５μｍ以上又は約４０μｍ以上、約５００μｍ以下又は約３００μｍ以下とすることができる。透明樹脂フィルムと追加の樹脂フィルムの合計厚みが８０μｍ以上５００μｍ以下であることで、これらのフィルムが協働して剛性樹脂フィルムとして機能してもよい。

【0093】

剛性樹脂フィルムはその表面にレセプター層を有してもよく、レセプターフィルムであってもよい。一実施態様ではレセプター層又はレセプターフィルムはアクリル系樹脂を含む。レセプター層を有する又はレセプターフィルムである剛性樹脂フィルムを用いることで、インクジェット印刷などを用いてグラフィック画像を剛性樹脂フィルム上に直接形成することができる。レセプター層は接着層を介して剛性樹脂フィルムに積層されていてもよい。

【0094】

図５に、本開示のさらに別の実施態様による粘着シート１０の概略断面図を示す。粘着シート１０は、透明樹脂フィルム２２と、透明接着層３６と、グラフィック画像２６と、グラフィック画像２６を受容するレセプター層３８と、剛性樹脂フィルム１２と、第１感圧接着層１４とを含む。透明接着層３６は透明であることを条件として第２感圧接着層と同様のものであってよい。

【0095】

図６に、本開示のさらに別の実施態様による粘着シート１０の概略断面図を示す。粘着シート１０は、透明樹脂フィルム２２と、透明接着層３６と、グラフィック画像２６と、グラフィック画像２６を受容するレセプター層３８と、接着層３４と、剛性樹脂フィルム１２と、第１感圧接着層１４とを含む。接着層３４は第２感圧接着層と同様のものであってよく、酸化チタンなどの白色顔料を含んでもよい。透明接着層３６は透明であることを条件として第２感圧接着層と同様のものであってよい。レセプター層３８は透明なアクリル系樹脂フィルムであってよい。

【0096】

粘着シートは金属層をさらに含んでもよい。金属層を用いることにより、粘着シートに低燃焼性、難燃性又は不燃性（以下、合わせて「不燃性」という。）を付与することができる。いかなる理論に拘束される訳ではないが、金属層は、それ自体が高い不燃性を有しており、粘着シートの構成要素の少なくとも一部を火炎、熱、酸素などから保護又は遮蔽できることから、粘着シートを全体として不燃性にすることができると考えられる。

【0097】

金属層は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、スチール、スチール合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、又はこれらの２種以上の組み合わせを含んでもよい。金属層は複数の金属層の積層体であってもよい。一実施態様では金属層は金属箔又は金属シートの形態で使用される。入手しやすく不燃性にも優れていることから、金属層はアルミニウム又はスチールを含むことが望ましく、安価で実用的な不燃性が得られることから、金属層はアルミニウムを含むことがより望ましい。

【0098】

いくつかの実施態様では、金属層の厚みは、約８μｍ以上、約１０μｍ以上又は約１５μｍ以上、約２００μｍ以下、約１５０μｍ以下又は約１００μｍ以下とすることができる。金属層の厚みを約８μｍ以上とすることで良好な不燃性を得ることができる。金属層の厚みを約２００μｍ以下とすることで粘着シートの製造コストの不要な増大を避けることができる。

【0099】

金属層がアルミニウムを含む場合、金属層の厚みは、約１２μｍ以上、約１５μｍ以上又は約２５μｍ以上とすることができ、約３０μｍ以上、約４０μｍ以上又は約５０μｍ以上とすることでより優れた不燃性を得ることができる。

【0100】

一実施態様では、金属層は剛性樹脂フィルムの他方の面上又はその上方に、すなわち、剛性樹脂フィルムの第１感圧接着層が配置された面とは反対側の面に直接接触して又は他の層を介して配置される。この実施態様では、粘着シートを基材に適用したときに剛性樹脂フィルムは金属層と基材の間に位置する。そのため、粘着シートの構成要素のうち厚みが比較的大きく燃焼しやすい剛性樹脂フィルムを、金属層の存在により、効果的に火炎、熱、酸素などから保護又は遮蔽して、粘着シートに高い不燃性を付与することができる。

【0101】

図７に、本開示のさらに別の実施態様による粘着シート１０の概略断面図を示す。粘着シート１０は、剛性樹脂フィルム１２の一方の面（図７では下面）の上に配置された第１感圧接着層１４と、剛性樹脂フィルム１２の他方の面（図７では上面）の上方に配置された金属層４２とを含む。金属層４２は第２感圧接着層２４を介して剛性樹脂フィルム１２に接着されている。粘着シート１０は、剛性樹脂フィルム１２の他方の面の上方に透明樹脂フィルム２２をさらに含み、透明樹脂フィルム２２の表面（図７では下面）には、グラフィック画像２６が印刷されている。透明樹脂フィルム２２は接着層３４を介して金属層４２に接着され、グラフィック画像２６は透明樹脂フィルム２２と接着層３４の間に位置している。粘着シート１０を基材に適用すると、剛性樹脂フィルム１２は金属層４２と基材の間に位置して、粘着シート１０の最表面（図７では透明樹脂フィルム２２の上面）が最初に暴露される火炎、熱、酸素などから金属層４２によって保護又は遮蔽され、厚みが比較的大きく燃焼しやすい剛性樹脂フィルム１２への延焼を防止又は抑制することができる。接着層３４は第２感圧接着層２４と同様のものであってよく、酸化チタンなどの白色顔料を含んでもよい。

【0102】

一実施態様では、金属層と装飾層の間に配置される接着層（図７では金属層４２とグラフィック画像２６の間に配置される接着層３４）は酸化チタンなどの白色顔料を含む。この実施態様では金属層の色調を隠蔽して装飾層の意匠性を維持する又は向上させることができる。

【0103】

いくつかの実施態様において、金属層を含む粘着シートの総発熱量は、２０分間の合計で例えば約１０ＭＪ／ｍ^２以下、好ましくは約８ＭＪ／ｍ^２以下、さらに好ましくは約６ＭＪ／ｍ^２以下である。本開示における総発熱量は、ＩＳＯ ５６６０－１に準拠してコーンカロリメータ法を用いて測定することができる。防火材料規格値によれば、粘着シートは、その総発熱量が、５分間の合計で８ＭＪ／ｍ^２以下であれば難燃材料、１０分間の合計で８ＭＪ／ｍ^２以下であれば準不燃材料、２０分間の合計で８ＭＪ／ｍ^２以下であれば不燃材料にそれぞれ分類される。

【0104】

不燃性を有する粘着シートの厚みをより薄くすることでその不燃性をより高めることができる。いくつかの実施態様では、不燃性を有する粘着シートの厚みを約５００μｍ以下、約３００μｍ以下、又は約１５０μｍ以下とすることができる。

【0105】

粘着シートを構成する層は不燃性添加剤を含有してもよい。不燃性添加剤として、臭素化合物、リン化合物、塩素化合物、アンチモン化合物、金属水酸化物、窒素化合物などが挙げられる。臭素化合物として、ペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル（ＤＢＤＰＥ、ＤＢＤＰＯ）、テトラブロモビスフェノールＡ（ＴＢＢＰＡ）、ヘキサブロモシクロドデカン（ＨＢＣＤ）、ヘキサブロモベンゼンなどを使用することができる。リン化合物として、トリフェニルホスフェートなどの芳香族のリン酸エステル、赤リン、ハロゲンを含むリン酸エステルなどを使用することができる。塩素化合物として、塩素化パラフィンなどを使用することができる。アンチモン化合物として、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンなどを使用することができる。金属水酸化物として、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどを使用することができる。窒素化合物として、メラミンシアヌレートなどを使用することができる。不燃性添加剤の配合量は、粘着シートに所望される特性、例えば接着性、意匠性、透明性などを損なわない範囲で適宜決定することができる。

【0106】

一実施態様では、剛性樹脂フィルムの一方の面（第１感圧接着層が配置された側の面）とは反対側の面の表面光沢度が６０度で５以下である。表面光沢度は４以下、又は２以下であることが好ましい。本開示において、６０度光沢度は、ＪＩＳ Ｚ ８７４１：１９９７に準拠して測定される。レンガ、タイル又はモルタルパネルと目地の境界では、深さ方向に大きな段差、例えば数ｍｍ程度の段差が生じることが多い。また、複数のレンガ、タイル又はモルタルパネルの表面が、完全に同一平面上に位置するようにこれらを設置することは難しい。このように局所的に大きな段差を有する、又は同一平面上にない複数の物品表面を有する被着体表面に粘着シートを適用する場合、第１感圧接着層が段差を完全に吸収できずにそのような段差に粘着シートが追従してしまう、あるいは個々のレンガ、タイル又はモルタルパネルの表面に粘着シートが追従して粘着シートに比較的大きなうねりが生じてしまうことがある。その結果、粘着シート全体の平滑性が失われて、様々な角度から粘着シートを観察したときに局所的に異なる外観を呈する箇所が発生してしまう。剛性樹脂フィルムの上記面の表面光沢度を６０度で５以下とすることにより、粘着シート全体の平滑性が失われることに起因する光の反射を抑えて、様々な角度から観察したときの粘着シートの外観を均質なものとすることができる。

【0107】

別の実施態様では、透明樹脂フィルムのグラフィック画像が印刷された面とは反対側の面の表面光沢度が６０度で５以下である。表面光沢度は４以下、又は２以下であることが好ましい。この実施態様においても、局所的に大きな段差を有する、又は同一平面上にない複数の物品表面を有する被着体表面に粘着シートを適用したときに、粘着シート全体の平滑性が失われることに起因する光の反射を抑えて、様々な角度から観察したときのグラフィック画像の質感を維持することができる。

【0108】

剛性樹脂フィルム又は透明樹脂フィルムの表面光沢度を６０度で５以下とする方法として、特に限定されないが、これらのフィルムの表面をマット加工すること、又はこれらのフィルムに上記表面光沢度を有するマット層を積層することが挙げられる。

【0109】

フィルム表面のマット加工として、例えば、剛性樹脂フィルム又は透明樹脂フィルムの原料又は前駆体を含む樹脂組成物を用意すること、樹脂組成物をバーコート、ドクターコート、ナイフコート、キャストコートなどにより離型性を有するマット層の上に塗布すること、樹脂組成物を乾燥及び必要に応じて硬化又は架橋することにより、剛性樹脂フィルム又は透明樹脂フィルムを形成すること、及び剛性樹脂フィルム又は透明樹脂フィルムをマット層から剥離することにより、離型性を有するマット層の表面形状がこれらのフィルムの表面に転写された、すなわち表面がマット加工されたフィルムを得ることを含む方法が挙げられる。上記方法によれば、剛性樹脂フィルム又は透明樹脂フィルムに、マット性付与を目的としてフィラーを混合する必要はなく、フィラーを含有するマット層を別途設ける必要もないことから、フィラーの存在に起因する場合がある光学特性、耐久性、加工性などの低下が生じない。

【0110】

離型性を有するマット層は、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、アルキド樹脂、ホルムアルデヒド－尿素樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などのバインダーと、シリカ粒子などのフィラーとを含む樹脂組成物をバーコート、ドクターコート、ナイフコート、キャストコートなどにより支持体、例えばポリエステルフィルムの上に塗布し、乾燥及び必要に応じて硬化又は架橋することにより形成することができる。一実施態様では、フィラーの体積平均粒径は、メジアン径Ｄｖ_５０として、約１００ｎｍ以上、約５００ｎｍ以上、又は約１μｍ以上、約１８μｍ以下、約１５μｍ以下、又は約１０μｍ以下である。本開示において、フィラーの体積平均粒径は、動的光散乱法（ＤＬＳ）によって測定された値である。一実施態様では、フィラーの含有量は、バインダー１００質量部を基準として、約８質量部以上、約１０質量部以上、又は約１２質量部以上、約３０質量部以下、約２５質量部以下、又は約２０質量部以下である。

【0111】

図８に透明樹脂フィルム２２の表面がマット加工５０を有する粘着シート１０の概略断面図を示す。

【0112】

フィルムに積層されるマット層は、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、アルキド樹脂、ホルムアルデヒド－尿素樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などのバインダーと、シリカ粒子などのフィラーとを含む樹脂組成物をバーコート、ドクターコート、ナイフコート、キャストコートなどによりフィルムに直接、又はフィルムに積層される支持体例えばポリエステルフィルムの上に塗布し、乾燥及び必要に応じて硬化又は架橋することにより形成することができる。一実施態様では、フィラーの体積平均粒径は、メジアン径Ｄｖ_５０として、約１００ｎｍ以上、約５００ｎｍ以上、又は約１μｍ以上、約１８μｍ以下、約１５μｍ以下、又は約１０μｍ以下である。一実施態様では、フィラーの含有量は、バインダー１００質量部を基準として、約８質量部以上、約１０質量部以上、又は約１２質量部以上、約３０質量部以下、約２５質量部以下、又は約２０質量部以下である。支持体の上にマット層が形成される実施態様では、支持体のマット層が形成された面とは反対側の面に、直接又は接着剤を介して剛性樹脂フィルム又は透明樹脂フィルムを積層することができる。

【0113】

図９に透明樹脂フィルム２２にマット層５２が積層された粘着シート１０の概略断面図を示す。

【0114】

剛性樹脂フィルムの一方の面とは反対側の面の表面光沢度、又は透明樹脂フィルムのグラフィック画像が印刷された面とは反対側の面の表面光沢度が６０度で５以下である実施態様において、第１感圧接着層は感圧接着基層のみであり、感圧接着被覆層を含まなくてもよい。すなわち、これらの実施態様において、第１感圧接着層は、体積平均粒径１１０μｍ以上の弾性樹脂微小球と粘着性バインダーとを含む。これらの実施態様においても、局所的に大きな段差を有する、又は同一平面上にない複数の物品表面を有する被着体表面に粘着シートを適用したときに、粘着シート全体の平滑性が失われることに起因する光の反射を抑えて、様々な角度から観察したときのグラフィック画像の質感を維持することができる。

【0115】

第１感圧接着層が感圧接着基層のみである実施態様の第１感圧接着層については、以下の点を除き、感圧接着基層及び第１感圧接着層に関する上記説明が適用される。粘着シートの構造及び特性、並びに粘着シートの第１感圧接着層以外の構成要素、例えば剛性樹脂フィルム、透明樹脂フィルム、グラフィック画像、第２感圧接着層、レセプター層、金属層、及びその他の任意の構成要素については上記説明が適用される。

【0116】

第１感圧接着層の単位面積あたりの質量は、約１５ｇ／ｍ^２以上、約２０ｇ／ｍ^２以上、又は約２５ｇ／ｍ^２以上、約３００ｇ／ｍ^２以下、約２５０ｇ／ｍ^２以下、又は約２００ｇ／ｍ^２以下とすることができる。第１感圧接着層の単位面積あたりの質量を上記範囲とすることで、高い接着力を有しつつ再配置性に優れた第１感圧接着層を形成することができる。

【0117】

第１感圧接着層の最大厚みと最小厚みの差は、約５０μｍ以上、約７０μｍ以上、又は約９０μｍ以上、約４００μｍ以下、約３５０μｍ以下、又は約３００μｍ以下とすることができる。第１感圧接着層の最大厚みと最小厚みの差を上記範囲とすることで、例えば高さ１～２ｍｍの突起を有する粗面に対しても粘着シートを接着することができる。

【0118】

第１感圧接着層が感圧接着基層のみである実施態様について、図１０に透明樹脂フィルム２２の表面がマット加工５０を有する粘着シート１０の概略断面図、及び図１１に透明樹脂フィルム２２にマット層５２が積層された粘着シート１０の概略断面図をそれぞれ示す。図１０及び図１１では、第１感圧接着層１４は弾性樹脂微小球１４２及び粘着性バインダー１４４を含み、弾性樹脂微小球１４２又はクラスター１４６の表面は粘着性バインダー１４４により被覆されたものとして示されている。一実施態様では、微小球１４２の被着体表面と対向する領域の少なくとも一部が粘着性バインダー１４４で被覆されていることが、バインダーの有する高い接着力を利用できる点で有利である。

【0119】

粘着シートは様々な用途及び表面に使用することができる。一例として、建築物などの壁面、床面、天井面などに貼り付けて使用されるグラフィックシートが挙げられる。特に、粘着シートが、モルタル、コンクリート、壁紙等で表面が覆われ、凹凸の程度が大きく、凹凸の形状及び寸法が不規則な表面と平滑な表面のいずれにも適用される場合に有用である。

【0120】

粘着シートは、照明看板用のグラフィックシートとしても好適に使用することができる。照明看板に使用される粘着シートは、粘着シートの背面に位置する照明からの光の少なくとも一部を透過する領域を含む。ガラス、プラスチックなどで作られた照明看板のパネルの上に粘着シートを取り付けることで、照明の消灯時及び点灯時に観察できる装飾を照明看板に付与することができる。粘着シートが再配置性を有する場合は、不要になった粘着シートを照明看板から容易に除去し、必要に応じて新たな粘着シートを照明看板に貼り付けることができる。

【0121】

いくつかの実施態様では、粘着シートの全光線透過率は、粘着シート全面で平均して約５％以上、約７％以上、又は約１０％以上、約９０％以下、約６０％以下、又は約３０％以下とすることができる。

【実施例】

【0122】

以下の実施例において、本開示の具体的な実施態様を例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。部及びパーセントは全て、特に明記しない限り質量による。

【0123】

粘着シートの作製に使用した材料を表１に示す。

【0124】

【表1-1】

【0125】

【表1-2】

【0126】

＜弾性樹脂微小球１の調製－ＬＳＡ１＞
弾性樹脂微小球１（ＬＳＡ１）を以下の手順で調製した。１リットルのバッフル板付きガラスフラスコに１．５ｇのポリビニルアルコール（ケン化度約８８ｍｏｌ％、粘度約４４ｍＰａ・ｓ、ｐＨ約６）及び２７９ｇの脱イオン水を加えて、ＩＲ撹拌機を用いて４５℃に昇温して撹拌機で混合した。ポリビニルアルコールの粒子が完全に水に溶解した後、１４１ｇの２－エチルヘキシルアクリレート、９ｇのアクリル酸、及び０．０３７５ｇの１，４－ブタンジオールジアクリレートをジャーに入れたプレミックスをフラスコに流し入れ、撹拌速度３５０ｒｐｍで４５ｍｍサイズのインペラーブレードを用いて撹拌し、窒素ガスを混合物中にバブリングしながらフラスコを再度４５℃に加熱した。４５℃になった時点で、０．４５ｇの２，２’－アゾビス（２，４－ジメチルバレロニトリル）（ＡＶＮ）を混合物に添加した。ＡＶＮを添加してから約１時間で重合は開始しており、発熱反応に伴って温度が上昇していた。温度上昇が停止したら、温度設定を６５℃に上げて、重合開始から３時間その温度を保持した。その後冷却して、得られたポリマー懸濁液を＃１６金属メッシュを通して濾過した。得られた微小球の体積平均粒径は、Ｂｅｃｋｍａｎ Ｃｏｕｌｔｅｒ ＬＳ２３０レーザー回折粒度分析装置を用いて測定した。ＬＳＡ１の体積平均粒径は約１３７マイクロメートルであった。レオメトリックス社製ＲＳＡＩＩ粘弾性スペクトロメーター（Ａｄｖａｎｃｅｄ Ｒｈｅｏｍｅｔｒｉｃ Ｅｘｐａｎｓｉｏｎ Ｓｙｓｔｅｍ（ＡＲＥＳ））を用いて、ＬＳＡ１の粘弾性測定を行なった。２５℃における剪断貯蔵弾性率は７×１０^５ｄｙｎ／ｃｍ^２であり、圧縮弾性率としては約２．３×１０^４Ｐａであった。

【0127】

＜例１＞
白色顔料Ｐ１、分散剤Ｄ１及びメチルエチルケトンを混合して白色顔料分散溶液（プレミックス）を調製した。Ｐ１とＤ１の質量比は固形分で５：１であった。白色顔料分散溶液の固形分は約６６％であった。白色顔料分散溶液と粘着剤Ａ２を混合して白色感圧接着剤溶液を調製した。Ａ２は１００質量部、Ｐ１は５０質量部及びＤ１は１０質量部であった。白色感圧接着剤溶液に架橋剤ＣＬ１をＡ２が１００質量部に対してＣＬ１を０．２０質量部の量で添加した。溶液の固形分は約５８％であった。白色感圧接着剤溶液をポリエステルフィルムＰＥＴ１上にナイフコーターで塗布した。塗布層を９５℃で５分間乾燥して、厚み３０μｍの白色感圧接着層を得た。白色感圧接着層を３８μｍ厚シリコーン処理ポリエステルライナーのシリコーン処理面と貼り合わせた。

【0128】

弾性樹脂微小球ＬＳＡ１と粘着剤Ａ１を混合して感圧接着基層組成物を調製した。ＬＳＡ１とＡ１の質量比は固形分比で５０：１００（３３：６７）であった。感圧接着基層組成物の固形分は約４６％であった。感圧接着基層組成物と架橋剤ＣＬ１を混合した。Ａ１とＣＬ１の質量比は固形分比で１００：０．０９であった。混合物をＰＥＴ１の白色感圧接着層の反対面にナイフコーターで塗布した。塗布された感圧接着基層を９５℃で５分間乾燥した。乾燥後の感圧接着基層の厚みは７６μｍであり、感圧接着基層の表面は凹凸形状を有していた。感圧接着基層の単位面積あたりの質量は５３ｇ／ｍ^２であった。

【0129】

上記の白色感圧接着剤溶液を感圧接着被覆層組成物として感圧接着基層上にナイフコーターで塗布した。塗布された感圧接着被覆層を９５℃で５分間乾燥した。乾燥後の感圧接着被覆層と感圧接着基層の総厚み（第１感圧接着層の厚み）は１０４μｍであり、第１感圧接着層の表面は凹凸形状を有していた。第１感圧接着層の単位面積あたりの質量は１２９ｇ／ｍ^２であった。第１感圧接着層の凹凸表面を剥離ライナー（無処理ポリエチレンフィルム、厚み１００μｍ）と貼り合わせた。ポリエステルキャリアに積層された厚み５０μｍの透明アクリルフィルムを準備した。透明アクリルフィルムの露出面に溶剤インクジェットインクをインクジェット印刷した後、印刷面と白色感圧接着層を貼り合わせ、ポリエステルキャリアを剥離して、例１の粘着シートを得た。

【0130】

＜例２＞
粘着剤Ａ１と架橋剤ＣＬ１を混合して感圧接着被覆層組成物を調製した。Ａ１とＣＬ１の質量比は固形分比で１００：０．０９であった。感圧接着被覆層組成物の固形分は約５５％であった。得られた感圧接着被覆層組成物を用いて、第１感圧接着層の単位面積あたりの質量を８８ｇ／ｍ^２に変更した以外は例１と同様にして例２の粘着シートを作製した。

【0131】

＜例３＞
第１感圧接着層の単位面積あたりの質量を１０４ｇ／ｍ^２に変更した以外は例２と同様にして例３の粘着シートを作製した。

【0132】

＜例４＞
第１感圧接着層の単位面積あたりの質量を８２ｇ／ｍ^２に変更した以外は例２と同様にして例４の粘着シートを作製した。

【0133】

＜例５＞
粘着剤Ａ２と分散剤Ｄ１を混合して感圧接着被覆層組成物を調製した。Ａ２とＤ１の質量比は固形分比で１００：５であった。感圧接着被覆層組成物の固形分は約５２％であった。感圧接着被覆層組成物と架橋剤ＣＬ１を混合した。Ａ２とＣＬ１の質量比は固形分比で１００：０．１８であった。得られた感圧接着被覆層組成物を用いて、第１感圧接着層の単位面積あたりの質量を９９ｇ／ｍ^２に変更した以外は例１と同様にして例５の粘着シートを作製した。

【0134】

＜例６＞
第１感圧接着層の単位面積あたりの質量を１０５ｇ／ｍ^２に変更した以外は例５と同様にして例６の粘着シートを作製した。

【0135】

＜例７＞
第１感圧接着層の単位面積あたりの質量を９８ｇ／ｍ^２に変更した以外は例５と同様にして例７の粘着シートを作製した。

【0136】

＜比較例１＞
感圧接着被覆層を形成しなかった以外は例１と同様にして比較例１の粘着シートを作製した。

【0137】

第１感圧接着層、剛性樹脂フィルム及び粘着シートを以下の手順で試験して評価した。

【0138】

＜厚み＞
サンプルの第１感圧接着層面を厚み５０μｍのポリエステルフィルムと貼り合わせて試験片とした。テスター産業株式会社製厚さ測定機ＴＨ－１０４で試験片全体の厚みを測定し、第１感圧接着層以外の厚みを差し引いて第１感圧接着層の厚みとした。厚みの測定は３点で行い、平均値をもって代表値とした。

【0139】

＜最大厚み－最小厚み＞
サンプルを約５０ｍｍ×約２５ｍｍに切断し、ライナーを剥がして第１感圧接着層面を露出させた。Ｌａｓｅｒｔｅｃ社製ＯＰＴＥＬＩＣＳ ＨＹＢＲＩＤ顕微鏡で第１感圧接着層面を観測し、第１感圧接着層の最大厚みと最小厚みの差を測定した。観測倍率は２０倍であった。

【0140】

＜接着力＞
試験片を幅２５ｍｍ、長さ１５０ｍｍの長方形に切断して試験片を作製した。試験片をメラミン塗装パネル（株式会社パルテック（日本国神奈川県平塚市））、モルタルパネル（株式会社パルテック（日本国神奈川県平塚市））、及びセラミックタイル（株式会社ＬＩＸＩＬ（日本国東京都江東区））の上に２０℃で貼り付けた。貼り付け方法はＪＩＳ Ｚ ０２３７ ８．２．３．に準拠した。試験片を２０℃で２４時間放置した。引張試験機（テンシロン万能試験機、型番：ＲＴＣ－１２１０Ａ、株式会社エー・アンド・デイ（日本国東京都豊島区））を用いて２０℃、３００ｍｍ／分の剥離速度で１８０度剥離を行ったときの接着力を測定した。

【0141】

＜空気抜け性＞
粘着シートを約１５０ｍｍ角に切断して試験片を作製した。試験片をメラミン塗装パネル（株式会社パルテック（日本国神奈川県平塚市））の上に２３℃で２ｋｇのローラーを用いて貼り付けた。基材と試験片の界面に気泡が観察されない場合に空気抜け性を「良好」とした。基材と試験片の界面に気泡が観察された場合に空気抜け性を「不良」とした。

【0142】

【表2】

【0143】

＜例８＞
１．ＢＳＰＣ（Ｂａｃｋ Ｓｉｄｅ Ｐｒｉｎｔａｂｌｅ Ｃｌｅａｒ）ユニットの作製
樹脂Ｒ１及び樹脂Ｒ２を含むプレサイズ溶液を調製した。Ｒ１とＲ２の比は固形分で１００：３５であった。プレサイズ溶液とフィラーＦ１を混合した。樹脂合計（Ｒ１及びＲ２）とＦ１の比は固形分で１００：１８であった。プレサイズ溶液をポリエステルフィルムＰＥＴ２の上にナイフコーターで塗布した。塗布層を９５℃で３分間、１５５℃で３分間乾燥して、ＰＥＴ２の上に積層された厚み約５μｍのプレサイズ層を得た。

【0144】

フッ素樹脂及びアクリル樹脂を含む保護クリア溶液を調製した。保護クリア溶液をプレサイズ層の上にグラビアコーターで塗布した。塗布層を１５５℃で２分間乾燥して、厚み約３μｍの保護クリア層を得た。

【0145】

ポリマーＰＬ１、ポリマーＰＬ２及び架橋剤ＣＬ１を含むアクリルポリマー溶液を調製した。Ｐ１とＰ２とＣＬ１の比は固形分で１００：５０：１．５であった。アクリルポリマー溶液を保護クリア層の上にナイフコーターで塗布した。塗布層を９５℃で３分間、１５５℃で２分間乾燥して、厚み７６μｍのＢＳＰＣ（透明樹脂フィルム）をインク受容層として有するＢＳＰＣユニットを得た。

【0146】

２．両面接着ユニットの作製
例１で使用した白色感圧接着剤溶液をポリエステルフィルムＰＥＴ１上にナイフコーターで塗布した。塗布層を９５℃で５分間乾燥して、厚み３０μｍの白色感圧接着層を得た。白色感圧接着層を３８μｍ厚シリコーン処理ポリエステルライナーのシリコーン処理面と貼り合わせた。

【0147】

弾性樹脂微小球ＬＳＡ１と粘着剤Ａ１を混合して感圧接着層組成物を調製した。ＬＳＡ１とＡ１の質量比は固形分比で５０：１００（３３：６７）であった。感圧接着層組成物の固形分は約４６％であった。感圧接着層組成物と架橋剤ＣＬ１を混合した。Ａ１とＣＬ１の質量比は固形分比で１００：０．０９であった。混合物をＰＥＴ１の白色感圧接着層の反対面にナイフコーターで塗布した。塗布された感圧接着層を９５℃で５分間乾燥した。乾燥後の感圧接着層の厚みは２００μｍであり、感圧接着層の表面は凹凸形状を有していた。感圧接着層の単位面積あたりの質量は１６１ｇ／ｍ^２であった。感圧接着層の凹凸表面を剥離ライナー（無処理ポリエチレンフィルム、厚み１００μｍ）と貼り合わせた。

【0148】

３．粘着シートの作製
ＢＳＰＣユニットの露出面と両面接着ユニットの白色感圧接着層を貼り合わせ、ＰＥＴ２を剥離して、例８の粘着シートを得た。例８の粘着シートは、プレサイズ層のマット表面が保護クリア層に転写されて形成された低光沢表面を有していた。

【0149】

＜例９＞
ＢＳＰＣの厚みを２３μｍに変更した以外は、例８と同様の手順で例９の粘着シートを得た。

【0150】

＜例１０＞
ＢＳＰＣユニットの構造を変更した以外は、例８と同様の手順で例１０の粘着シートを作製した。具体的には、例８の手順に従いプレサイズ層をＰＥＴ２の上に形成した。例８と同じアクリルポリマー溶液を調製した。アクリルポリマー溶液を、ＰＥＴ２のプレサイズ層の形成面とは反対側の面にナイフコーターで塗布した。塗布層を９５℃で３分間、１５５℃で２分間乾燥して、厚み５０μｍのＢＳＰＣをインク受容層として有するＢＳＰＣユニットを得た。得られたＢＳＰＣユニットを用いて、例８と同様の手順で例１０の粘着シートを得た。

【0151】

＜例１１＞
印刷画像層を有する以外は、例８と同様の手順で例１１の粘着シートを作製した。具体的には、ＪＶ５プリンター及びＳＳ２１インク（株式会社ミマキエンジニアリング、日本国長野県東御市）を用いて印刷画像をＢＳＰＣの露出面に印刷した。ＢＳＰＣユニットの印刷画像層と両面接着ユニットの白色感圧接着層を貼り合わせ、ＰＥＴ２を剥離して、例１１の粘着シートを得た。インク濃度はＣ６７、Ｍ６７、Ｙ６７及びＫ１００であった。

【0152】

＜例１２＞
例１で使用した厚み５０μｍの透明アクリルフィルムを例１１で使用したＢＳＰＣユニットに変更し、ＢＳＰＣユニットの印刷画像層と白色感圧接着層を貼り合わせた以外は、例１と同様の手順で例１２の粘着シートを作製した。

【0153】

＜例１３＞
ＢＳＰＣユニットに印刷画像層を設けないこと以外は、例１２と同様の手順で例１３の粘着シートを作製した。

【0154】

＜比較例２＞
フィラーＦ１をフィラーＦ２に変更し、樹脂合計（Ｒ１及びＲ２）とＦ２の比を固形分で１００：５０とし、ＢＳＰＣの厚みを１４２μｍに変更した以外は、例１０と同様の手順で比較例２の粘着シートを作製した。

【0155】

＜比較例３＞
樹脂合計（Ｒ１及びＲ２）とＦ１の比を固形分で１００：６とし、ＢＳＰＣの厚みを５３μｍに変更した以外は、例１１と同様の手順で比較例２の粘着シートを作製した。

【0156】

粘着シートを以下の手順で試験して評価した。

【0157】

＜６０度光沢度＞
粘着シート表面の６０度光沢度を携帯用光沢計ＧＭＸ－２０３（株式会社村上色彩研究所、日本国東京都中央区）で測定した。光沢度の測定は３点で行い、平均値をもって代表値とした。

【0158】

＜アンチグレア＞
粘着シートを約５０ｍｍ角に切り出して試験片とした。試験片をスタッコ印刷パネルの上に設置した。表面粗さはピーク－ボトムで約１ｍｍであった。試験片の表面のグレアが目視で認識されなかった場合を「Ａ」と評価した。試験片の表面のグレアが目視で認識された場合を「Ｂ」と評価した。

【0159】

＜マスキング＞
３Ｍ（登録商標）スコッチカル（登録商標）フィルムＳＣ５０１（黒色）を漢字の「春秋」に打ち抜いた。漢字に打ち抜かれたフィルムをアルミニウム板の上に貼り付けた。粘着シートを漢字に打ち抜かれたフィルムの上に貼り付けた。漢字が目視で認識されなかった場合を「Ａ」と評価した。漢字が目視で認識された場合を「Ｂ」と評価した。図１２は、例１１の粘着シート（右下）及び比較例２の粘着シート（左上）のマスキング試験を示す写真である。

【0160】

【表3】

【0161】

図１３は、例１１の粘着シートを複数のタイルが目地を挟んで設置された表面に貼り付けたときの外観を示す写真であり、図１４は、比較例３の粘着シートを複数のタイルが目地を挟んで設置された表面に貼り付けたときの外観を示す写真である。本発明の実施態様の一部を以下記載する。
［態様１］
８０μｍ以上５００μｍ以下の厚みを有する剛性樹脂フィルムと、
前記剛性樹脂フィルムの一方の面上又はその上方に配置された第１感圧接着層と
を含む粘着シートであって、
前記第１感圧接着層が、
前記剛性樹脂フィルムの近位に位置し、体積平均粒径１１０μｍ以上の弾性樹脂微小球と粘着性バインダーとを含む感圧接着基層と、
前記剛性樹脂フィルムの遠位に位置しかつ前記感圧接着基層の上に配置された、粘着性バインダーを含み弾性樹脂微小球を含まない感圧接着被覆層と
を含み、
前記第１感圧接着層が前記弾性樹脂微小球の存在に起因した凹凸表面を有し、
前記第１感圧接着層の最大厚みと最小厚みの差が５０μｍ未満である、粘着シート。
［態様２］
前記第１感圧接着層の最大厚みと最小厚みの差が１０μｍ以上である、態様１に記載の粘着シート。
［態様３］
前記感圧接着基層の粘着性バインダーが水系アクリル系粘着剤である、態様１又は２のいずれかに記載の粘着シート。
［態様４］
前記感圧接着被覆層の粘着性バインダーが溶剤系アクリル系粘着剤である、態様１～３のいずれか一態様に記載の粘着シート。
［態様５］
前記第１感圧接着層の単位面積あたりの質量が６０ｇ／ｍ ^２ 以上２００ｇ／ｍ ^２ 以下である、態様１～４のいずれか一態様に記載の粘着シート。
［態様６］
前記弾性樹脂微小球の２５℃における圧縮弾性率が１ｋＰａ以上１００ｋＰａ以下である、態様１～５のいずれか一態様に記載の粘着シート。
［態様７］
前記剛性樹脂フィルムが１０ＭＰａ以上３００ＭＰａ以下の降伏弾性率を有する、態様１～６のいずれか一態様に記載の粘着シート。
［態様８］
前記剛性樹脂フィルムの降伏弾性率と厚みとの積が、０．９×１０ ^４ Ｎ／ｍ以上５×１０ ^４ Ｎ／ｍ以下である、態様１～７のいずれか一態様に記載の粘着シート。
［態様９］
前記剛性樹脂フィルムの２％引張強度が４０Ｎ／２５ｍｍ以上である、態様１～８のいずれか一態様に記載の粘着シート。
［態様１０］
前記剛性樹脂フィルムがポリエステルフィルムである、態様１～９のいずれか一態様に記載の粘着シート。
［態様１１］
前記剛性樹脂フィルムの厚みが前記弾性樹脂微小球の体積平均粒径の０．２倍以上である、態様１～１０のいずれか一態様に記載の粘着シート。
［態様１２］
前記第１感圧接着層が、前記弾性樹脂微小球のクラスターを含む島状構造を有する、態様１～１１のいずれか一態様に記載の粘着シート。
［態様１３］
前記剛性樹脂フィルムの前記一方の面とは反対側の面の表面光沢度が６０度で５以下である、態様１～１２のいずれか一態様に記載の粘着シート。
［態様１４］
前記剛性樹脂フィルムの前記一方の面とは反対側の面に積層されたマット層をさらに有し、前記マット層の表面光沢度が６０度で５以下である、態様１～１２のいずれか一態様に記載の粘着シート。
［態様１５］
前記剛性樹脂フィルムの他方の面に配置された第２感圧接着層と、
前記第２感圧接着層を介して前記剛性樹脂フィルムに接着された透明樹脂フィルムと、
前記透明樹脂フィルムの表面に印刷された、前記透明樹脂フィルムと前記第２感圧接着層との間に位置するグラフィック画像と
をさらに含む、態様１～１２のいずれか一態様に記載の粘着シート。
［態様１６］
前記第２感圧接着層が白色顔料を含む、態様１５に記載の粘着シート。
［態様１７］
前記透明樹脂フィルムの前記グラフィック画像が印刷された面とは反対側の面の表面光沢度が６０度で５以下である、態様１５又は１６のいずれかに記載の粘着シート。
［態様１８］
前記透明樹脂フィルムの前記グラフィック画像が印刷された面とは反対側の面に積層されたマット層をさらに有し、前記マット層の表面光沢度が６０度で５以下である、態様１５又は１６のいずれかに記載の粘着シート。
［態様１９］
８０μｍ以上５００μｍ以下の厚みを有する剛性樹脂フィルムを用意することと、
体積平均粒径１１０μｍ以上の弾性樹脂微小球と粘着性バインダーとを含む感圧接着基層組成物を用意することと、
前記剛性樹脂フィルムの一方の面上、又は前記剛性樹脂フィルムの上に任意に配置された他の層の上に前記感圧接着基層組成物を塗布して、感圧接着基層を形成することと、
粘着性バインダーを含み弾性樹脂微小球を含まない感圧接着被覆層組成物を用意することと、
前記感圧接着基層の上に前記感圧接着被覆層組成物を塗布して、感圧接着被覆層を形成することと
を含む、態様１に記載の粘着シートの製造方法。

【符号の説明】

【0162】

１０ 粘着シート
１２ 剛性樹脂フィルム
１４ 第１感圧接着層
１４０ 感圧接着基層
１４２ 弾性樹脂微小球
１４４ 粘着性バインダー
１４６ クラスター
１４８ 感圧接着被覆層
２２ 透明樹脂フィルム
２４ 第２感圧接着層
２６ グラフィック画像
３２ 追加の樹脂フィルム層
３４ 接着層
３６ 透明接着層
３８ レセプター層
４２ 金属層
５０ マット加工
５２ マット層
２００ 基材

【図1A】

【図1B】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】