(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】モータ制御装置、モータユニット、及びモータ制御方法
(51)【国際特許分類】
H02P 6/16 20160101AFI20240903BHJP
【FI】
H02P6/16
(21)【出願番号】P 2020114826
(22)【出願日】2020-07-02
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 光則
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 奈保
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-143316(JP,A)
【文献】特開2019-103267(JP,A)
【文献】特開2015-211479(JP,A)
【文献】特開2008-312420(JP,A)
【文献】特開2016-103889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3相の電機子コイルを備えるモータの回転子の回転位置を検出する位置検出部と、
前記回転子の目標の回転出力に応じた指令値を生成する指令生成部と、
前記指令値が、前記指令値と前記回転出力との関係の直線性が保たれるとともに、前記指令値としてのデューティ比が100%以下の領域である直線領域である場合に、当該指令値を出力指令値として出力し、前記指令値が、前記指令値と前記回転出力との関係が非直線性になるとともに、前記デューティ比が100%を超える領域である非直線領域である場合に、当該指令値を、予め取得された前記指令値と前記回転出力との間の特性を示す特性情報に基づいて、前記回転出力に直線性が得られるように変換し、前記出力指令値として出力する変換部と、
前記特性情報に基づいて生成された前記指令値を前記出力指令値に変換するマッピング情報であって、少なくとも前記非直線領域におけるマッピング情報を記憶するマッピング情報記憶部と、
前記出力指令値に基づいて、前記回転子の回転位置に応じた通電タイミングで、正弦波に3次高調波を重畳させた波形である通電波形の電圧が前記3相の電機子コイルに印加されるように、駆動信号を生成する駆動信号生成部と、
前記駆動信号に基づいて、スイッチング素子を駆動させて、前記通電波形に基づく印加電圧を前記3相の電機子コイルに印加するインバータと、
を備え、
前記変換部は、前記マッピング情報に基づいて、前記出力指令値を生成し、
前記インバータは、前記非直線領域である場合に、前記デューティ比が100%である前記印加電圧を前記3相の電機子コイルに印加するとともに、前記3相の前記
印加電圧の前記デューティ比が100%を超える場合には、3相のうちの2つの
印加電圧のデューティ比が97%~99%の約100%になるオーバーラップ通電区間が設けられている
モータ制御装置。
【請求項2】
前記マッピング情報記憶部は、前記直線領域におけるマッピング情報と、前記非直線領域におけるマッピング情報とを記憶し、
前記変換部は、
前記指令値が前記直線領域である場合に、前記直線領域におけるマッピング情報に基づいて、前記出力指令値を生成し、
前記指令値が前記非直線領域である場合に、前記非直線領域におけるマッピング情報に基づいて、前記出力指令値を生成する
請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記モータと、
請求項1又は請求項2に記載のモータ制御装置と
を備えるモータユニット。
【請求項4】
位置検出部が、3相の電機子コイルを備えるモータの回転子の回転位置を検出する位置検出ステップと、
指令生成部が、前記回転子の目標の回転出力に応じた指令値を生成する指令生成ステップと、
変換部が、前記指令値が、前記指令値と前記回転出力との関係の直線性が保たれるとともに、前記指令値としてのデューティ比が100%以下の領域である直線領域である場合に、当該指令値を出力指令値として出力し、前記指令値が、前記指令値と前記回転出力との関係が非直線性になるとともに、前記デューティ比が100%を超える領域である非直線領域である場合に、当該指令値を、予め取得された前記指令値と前記回転出力との間の特性を示す特性情報に基づいて、前記回転出力に直線性が得られるように変換し、前記出力指令値として出力する変換ステップと、
駆動信号生成部が、前記出力指令値に基づいて、前記回転子の回転位置に応じた通電タイミングで、正弦波に3次元高調波を重畳させた波形である通電波形の電圧が前記3相の電機子コイルに印加されるように、駆動信号を生成する駆動信号生成ステップと、
インバータが、前記駆動信号に基づいて、スイッチング素子を駆動させて、前記通電波形に基づく印加電圧を前記3相の電機子コイルに印加する印加ステップと、
を含み、
前記変換ステップにおいて、前記変換部が、前記特性情報に基づいて生成された前記指令値を前記出力指令値に変換するマッピング情報であって、少なくとも前記非直線領域におけるマッピング情報を記憶するマッピング情報記憶部に記憶されている前記マッピング情報に基づいて、前記出力指令値を生成し、
前記印加ステップにおいて、インバータが、前記非直線領域である場合に、前記デューティ比が100%である前記印加電圧を前記3相の電機子コイルに印加するとともに、前記3相の前記印加電圧の前記デューティ比が100%を超える場合には、3相のうちの2つの印加電圧のデューティ比が97%~99%の約100%になるオーバーラップ通電区間が設けられている
モータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置、モータユニット、及びモータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モータの制御において、低速作動と高速作動とで制御を変更する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載の従来技術では、低速作動において、正弦波制御を行い、高速作動では高出力を実現するために、進角・広角通電駆動による制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術では、高速作動での作動音や振動が問題になることがあり、高速作動において駆動制御を変更する必要があった。そのため、上述した従来技術では、静音化及び高出力を実現しつつ、低速作動から高速作動までシームレスにモータを制御することが困難であった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、静音化及び高出力を実現しつつ、低速作動から高速作動までシームレスにモータを制御することができるモータ制御装置、モータユニット、及びモータ制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明の一態様は、3相の電機子コイルを備えるモータの回転子の回転位置を検出する位置検出部と、前記回転子の目標の回転出力に応じた指令値を生成する指令生成部と、前記指令値が、前記指令値と前記回転出力との関係の直線性が保たれるとともに、前記指令値としてのデューティ比が100%以下の領域である直線領域である場合に、当該指令値を出力指令値として出力し、前記指令値が、前記指令値と前記回転出力との関係が非直線性になるとともに、前記デューティ比が100%を超える領域である非直線領域である場合に、当該指令値を、予め取得された前記指令値と前記回転出力との間の特性を示す特性情報に基づいて、前記回転出力に直線性が得られるように変換し、前記出力指令値として出力する変換部と、前記特性情報に基づいて生成された前記指令値を前記出力指令値に変換するマッピング情報であって、少なくとも前記非直線領域におけるマッピング情報を記憶するマッピング情報記憶部と、前記出力指令値に基づいて、前記回転子の回転位置に応じた通電タイミングで、正弦波に3次高調波を重畳させた波形である通電波形の電圧が前記3相の電機子コイルに印加されるように、駆動信号を生成する駆動信号生成部と、前記駆動信号に基づいて、スイッチング素子を駆動させて、前記通電波形に基づく印加電圧を前記3相の電機子コイルに印加するインバータと、を備え、前記変換部は、前記マッピング情報に基づいて、前記出力指令値を生成し、前記インバータは、前記非直線領域である場合に、前記デューティ比が100%である前記印加電圧を前記3相の電機子コイルに印加するとともに、前記3相の前記印加電圧の前記デューティ比が100%を超える場合には、3相のうちの2つの印加電圧のデューティ比が97%~99%の約100%になるオーバーラップ通電区間が設けられているモータ制御装置である。
【0007】
また、本発明の一態様は、位置検出部が、3相の電機子コイルを備えるモータの回転子の回転位置を検出する位置検出ステップと、指令生成部が、前記回転子の目標の回転出力に応じた指令値を生成する指令生成ステップと、変換部が、前記指令値が、前記指令値と前記回転出力との関係の直線性が保たれるとともに、前記指令値としてのデューティ比が100%以下の領域である直線領域である場合に、当該指令値を出力指令値として出力し、前記指令値が、前記指令値と前記回転出力との関係が非直線性になるとともに、前記デューティ比が100%を超える領域である非直線領域である場合に、当該指令値を、予め取得された前記指令値と前記回転出力との間の特性を示す特性情報に基づいて、前記回転出力に直線性が得られるように変換し、前記出力指令値として出力する変換ステップと、駆動信号生成部が、前記出力指令値に基づいて、前記回転子の回転位置に応じた通電タイミングで、正弦波に3次元高調波を重畳させた波形である通電波形の電圧が前記3相の電機子コイルに印加されるように、駆動信号を生成する駆動信号生成ステップと、インバータが、前記駆動信号に基づいて、スイッチング素子を駆動させて、前記通電波形に基づく印加電圧を前記3相の電機子コイルに印加する印加ステップと、を含み、前記変換ステップにおいて、前記変換部が、前記特性情報に基づいて生成された前記指令値を前記出力指令値に変換するマッピング情報であって、少なくとも前記非直線領域におけるマッピング情報を記憶するマッピング情報記憶部に記憶されている前記マッピング情報に基づいて、前記出力指令値を生成し、前記印加ステップにおいて、インバータが、前記非直線領域である場合に、前記デューティ比が100%である前記印加電圧を前記3相の電機子コイルに印加するとともに、前記3相の前記印加電圧の前記デューティ比が100%を超える場合には、3相のうちの2つの印加電圧のデューティ比が97%~99%の約100%になるオーバーラップ通電区間が設けられている制御方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、静音化及び高出力を実現しつつ、低速作動から高速作動までシームレスにモータを制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態によるモータユニットの一例を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態におけるMAP情報の一例を示す図である。
【
図3】本実施形態におけるDutyが100%以下の場合の通電信号の一例を示す図である。
【
図4】本実施形態におけるDutyが100%を超えるの場合の通電信号及び印加電圧の一例を示す図である。
【
図5】本実施形態における通電信号の生成動作の一例を示す図である。
【
図6】本実施形態によるモータ制御装置のモータ制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】本実施形態における通電信号及び印加電圧の変形例を示す図である。
【
図8】本実施形態の変形例におけるDutyが100%以下の場合の通電信号の一例を示す図である。
【
図9】本実施形態の変形例におけるDutyが100%を超える場合の通電信号及び印加電圧の一例を示す図である。
【
図10】本実施形態の変形例の通常通電区間における印加電流を説明する図である。
【
図11】本実施形態の変形例のオーバーラップ通電区間における印加電流を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態によるモータ制御装置、及びモータユニットについて、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本実施形態によるモータユニット100の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、モータユニット100は、モータ制御装置1と、モータ2と、バッテリ3とを備える。
【0012】
モータ2は、例えば、3相4極形のブラシレスモータである。モータ2は、ステータ21と、ロータ22とを備える。
【0013】
ステータ21は、モータ2のケースの内周に固定されている。ステータ21は、3相の電機子コイル(21u、21v、21w)を備える。ステータ21は、電機子コイル(21u、21v、21w)が巻装されている。例えば、3相の電機子コイル(21u、21v、21w)は、一端の中性点で接続されるデルタ結線により接続される。
【0014】
デルタ結線において、電機子コイル21uと、電機子コイル21wとが、接続点21aにより接続され、電機子コイル21vと、電機子コイル21wとが、接続点21bにより接続され、電機子コイル21uと、電機子コイル21vとが、接続点21cにより接続されている。
なお、3相の電機子コイル(21u、21v、21w)は、デルタ結線に限らず、Y結線であってもよい。また、モータ2は、各電機子コイル(21u、21v、21w)が、正極及び負極の両方として機能するモータである。
【0015】
ロータ22は、ステータ21の内側に設けられている。ロータ22は、例えば、ロータ軸22aと、ロータ軸22aに取り付けた4極の永久磁石22bとを備える。モータ2のケース内には、複数の軸受(不図示)が設けられており、ロータ軸22aは、複数の軸受により回転可能に支持されている。
【0016】
バッテリ3は、例えば、鉛蓄電池やリチウムイオン電池などの直流電源であり、モータを駆動する電力を供給する。
【0017】
モータ制御装置1は、上述したモータ2を制御する制御装置であり、回転角検出部30と、制御部40と、インバータ50とを備える。
回転角検出部30は、ロータ22の回転に応じた信号を検出する。回転角検出部30は、例えば、3つのホールICを備え、ロータ軸22aを中心として磁気的に互いに120度となる位置に設けられている。これらの3つのホールICは、ロータ22が回転すると、それぞれ互いに120度位相のずれたパルス信号を制御部40に対して出力する。すなわち、回転角検出部30は、ロータ22の回転に伴い、ロータ軸22aに配置されたセンサマグネット(不図示)の磁極の変化に基づいたパルス信号を発生し、制御部40に出力する。
【0018】
制御部40は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などを含むプロセッサであり、モータ制御装置1を統括的に制御する。制御部40は、目標のロータ22の回転出力(例えば、目標回転数TRPM)に応じた駆動信号を生成して、生成した駆動信号をインバータ50に出力する。また、制御部40は、例えば、正弦波制御を行って、インバータ50を介して、モータ2の駆動を制御する。
また、制御部40は、位置検出部41と、指令生成部42と、変換部43と、駆動信号生成部44とを備える。
【0019】
位置検出部41は、回転角検出部30から供給されるパルス信号に基づいて、ロータ22の回転位置(θ)を検出する。位置検出部41は、検出したロータ22の回転位置を後述する駆動信号生成部44に出力する。また、位置検出部41は、回転角検出部30から供給されるパルス信号に基づいて、例えば、ロータ22の回転数(RPM)を検出し、検出したロータ22の回転数を後述する指令生成部42に出力する。
【0020】
指令生成部42は、ロータ22の目標の回転出力(例えば、目標回転数TRPM)に応じた指令値(例えば、PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御の指令値)を生成する。指令生成部42は、例えば、位置検出部41から取得した現在のロータ22の回転数(RPM)と、目標回転数TRPMとに応じて、PWM制御の指令値TOを生成し、生成した指令値TOを変換部43に出力する。
【0021】
変換部43は、指令生成部42が生成した指令値TOを、ロータ22の回転出力(例えば、回転数など)に直線性が得られるように変換し、出力指令値TRとして出力する。なお、
図2に示すように、指令値TOに対して、出力指令値TRが直線性(線形性)が保たれる直線領域LAと、出力指令値TRが非直線(非線形性)の特性になる非直線領域NLAとが存在する。変換部43は、例えば、
図2に示すようなMAP情報(マッピング情報)に基づいて、指令値TOから出力指令値TRを生成する。ここで、
図2を参照して、MAP情報について説明する。
【0022】
図2は、本実施形態におけるMAP情報の一例を示す図である。
図2に示すグラフは、横軸がPWM制御の指令値[%](PWMのDuty(ディユーティ比))である指令値TOを示し、縦軸が変換後のPWM制御の指令値[%](PWMのDuty)である出力指令値TRを示している。また、波形W1は、MAP情報を示している。なお、ここでのPWMのDutyは、印加電圧(出力電圧)のDutyである。
【0023】
MAP情報は、予め取得された指令値とモータ2の回転出力との間の特性を示す特性情報に基づいて、回転出力に直線性が得られるように生成されたマッピング情報である。MAP情報は、例えば、事前にDuty0~100%、及び100%超について、特性試験によりデータを測定し、モータ2の出力特性で直線性が確保されるように作成されたマッピング情報である。
【0024】
また、指令値TOが、Duty100%以下の領域は、直線領域LAであり、指令値TOと回転出力との関係の直線性が保たれる領域を示している。また、波形W1aは、直線領域LAにおけるマッピング情報を示している。ここで、「Duty100%」又は「Dutyが100%」とは、印加電圧のピーク電圧のバッテリ3の電圧に対する割合が100%であることを示す。
【0025】
また、指令値TOが、Duty100%を超える領域は、非直線領域NLAであり、指令値TOと回転出力との関係が非直線性になる領域を示している。また、波形W1bは、非直線領域NLAにおけるマッピング情報を示している。
【0026】
図1の説明に戻り、変換部43は、指令値TOが直線領域LAである場合に、波形W1aのMAP情報により、当該指令値TOを出力指令値TRとして出力する。また、変換部43は、非直線領域NLAである場合に、当該指令値TOを、波形W1bのMAP情報により、回転出力に直線性が得られるように変換し、出力指令値TRとして出力する。
【0027】
また、変換部43は、MAP記憶部431(マッピング情報記憶部の一例)を備え、MAP記憶部431は、上述した
図2に示すようなMAP情報(波形W1)を記憶する。変換部43は、MAP記憶部431が記憶するMAP情報に基づいて、指令値TOを出力指令値TRに変換し、変換した出力指令値TRを、駆動信号生成部44に出力する。
【0028】
駆動信号生成部44は、変換部43が出力した出力指令値TRに基づいて、ロータ22の回転位置に応じた通電タイミングで、正弦波に基づく通電波形の電圧が3相の電機子コイル(21u、21v、21w)に印加されるように、駆動信号を生成する。駆動信号生成部44は、例えば、回転位置情報(θ)に基づいて、3相の通電タイミング信号を生成し、出力指令値TRに基づくPWM制御により、後述するインバータ50のスイッチング素子(51a~51f)を駆動(導通/非導通)させる駆動信号(3相の駆動信号)を生成し、生成した駆動信号(3相の駆動信号)をインバータ50に出力する。なお、駆動信号の詳細については、後述する。
【0029】
インバータ50は、駆動信号生成部44が生成した駆動信号に基づいて、スイッチング素子(51a~51f)を駆動させて、通電波形に基づく印加電圧を3相の電機子コイル(21u、21v、21w)に印加する。インバータ50は、例えば、PWMのDutyが100%以下である場合に、
図3に示すような通電波形の信号(通電信号)をモータ2に出力する。
【0030】
図3は、本実施形態におけるDutyが100%以下の場合の通電信号の一例を示す図である。
図3において、横軸は、電気角[度]を示し、縦軸は、印加電圧のDuty[%]を示している。また、波形W2uは、Dutyが100%の場合のU相の通電信号及び印加電圧波形を示している。また、波形W2vは、Dutyが100%の場合のV相の通電信号及び印加電圧波形を示している。また、波形W2wは、Dutyが100%の場合のW相の通電信号及び印加電圧波形を示している。
【0031】
また、インバータ50は、例えば、PWMのDutyが100%を超える場合に、
図4に示すような通電信号及び印加電圧を出力する。
図4は、本実施形態におけるDutyが100%を超えるの場合の通電信号及び印加電圧の一例を示す図である。
【0032】
図4において、横軸は、電気角[度]を示し、縦軸は、印加電圧のDuty[%]を示している。また、波形W3uは、Dutyが100%を超える場合のU相の通電信号を示し、波形W4uは、この場合のU相の印加電圧波形を示している。また、波形W3vは、Dutyが100%を超える場合のV相の通電信号を示し、波形W4vは、この場合のV相の印加電圧波形を示している。また、波形W3wは、Dutyが100%を超える場合のW相の通電信号を示し、波形W4wは、この場合のW相の印加電圧波形を示している。
【0033】
図4に示すように、インバータ50は、Dutyが100%を超える場合(非直線領域NLAである場合)に、通電波形(通電信号の波形)の頂点が潰れる領域を有する印加電圧(波形W4u、波形W4v、波形W4Wを参照)を3相の電機子コイル(21u、21v、21w)に印加する。
【0034】
図1の説明に戻り、インバータ50は、3相ブリッジ接続された6個のスイッチング素子51a~51fと、ダイオード52a~52fとを備える。
スイッチング素子51a~51fは、例えば、NチャネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であり、3相のブリッジ回路を構成している。
【0035】
スイッチング素子51aとスイッチング素子51dとは、バッテリ3の正極端子と負極端子との間に、直列に説明されて、U相のブリッジ回路を構成している。スイッチング素子51aは、ドレイン端子がバッテリ3の正極端子に、ソース端子がノードN1に、ゲート端子がU相の上側の駆動信号の信号線に、それぞれ接続されている。また、スイッチング素子51dは、ドレイン端子がノードN1に、ソース端子がバッテリ3の負極端子に、ゲート端子がU相の下側の駆動信号の信号線に、それぞれ接続されている。また、ノードN1は、モータ2の接続点21aに接続されている。
【0036】
スイッチング素子51bとスイッチング素子51eとは、バッテリ3の正極端子と負極端子との間に、直列に説明されて、V相のブリッジ回路を構成している。スイッチング素子51bは、ドレイン端子がバッテリ3の正極端子に、ソース端子がノードN2に、ゲート端子がV相の上側の駆動信号の信号線に、それぞれ接続されている。また、スイッチング素子51eは、ドレイン端子がノードN2に、ソース端子がバッテリ3の負極端子に、ゲート端子がV相の下側の駆動信号の信号線に、それぞれ接続されている。また、ノードN2は、モータ2の接続点21bに接続されている。
【0037】
スイッチング素子51cとスイッチング素子51fとは、バッテリ3の正極端子と負極端子との間に、直列に説明されて、W相のブリッジ回路を構成している。スイッチング素子51cは、ドレイン端子がバッテリ3の正極端子に、ソース端子がノードN3に、ゲート端子がW相の上側の駆動信号の信号線に、それぞれ接続されている。また、スイッチング素子51fは、ドレイン端子がノードN3に、ソース端子がバッテリ3の負極端子に、ゲート端子がW相の下側の駆動信号の信号線に、それぞれ接続されている。また、ノードN3は、モータ2の接続点21cに接続されている。
【0038】
また、ダイオード52aは、アノード端子がノードN1に、カソード端子がバッテリ3の正極端子に、それぞれ接続されている。また、ダイオード52dは、アノード端子がバッテリ3の負極端子に、カソード端子がノードN1に、それぞれ接続されている。
【0039】
また、ダイオード52bは、アノード端子がノードN2に、カソード端子がバッテリ3の正極端子に、それぞれ接続されている。また、ダイオード52eは、アノード端子がバッテリ3の負極端子に、カソード端子がノードN2に、それぞれ接続されている。
【0040】
また、ダイオード52cは、アノード端子がノードN3に、カソード端子がバッテリ3の正極端子に、それぞれ接続されている。また、ダイオード52fは、アノード端子がバッテリ3の負極端子に、カソード端子がノードN3に、それぞれ接続されている。
【0041】
なお、本実施形態において、スイッチング素子51a~51fのうちの任意のスイッチング素子を示す場合、又は特に区別しない場合には、スイッチング素子51として説明する。また、ダイオード52a~52fとのうちの任意のダイオードを示す場合、又は特に区別しない場合には、ダイオード52として説明する。
【0042】
次に、図面を参照して、本実施形態のよるモータ制御装置1及びモータユニット100の動作について説明する。
まず、
図5を参照して、モータ制御装置1の駆動信号生成部44及びインバータ50の動作について説明する。
【0043】
図5は、本実施形態における通電信号の生成動作の一例を示す図である。なお、
図5に示す例では、PWMのDutyが100%以下である場合の一例を示している。
図5において、横軸は、電気角[度]を示し、縦軸は、3相(U相、V相、W相)の通電タイミング信号と、3相(U相、V相、W相)のスイッチング素子51の駆動信号及びモータ2への通電信号とを示している。
【0044】
波形W5uは、U相の通電タイミング信号を示し、波形W5vは、V相の通電タイミング信号を示し、波形W5wは、W相の通電タイミング信号を示している。駆動信号生成部44は、位置検出部41が検出したロータ22の回転位置に基づいて、各相(U相、V相、W相)の通電タイミング信号(波形W5u、波形E5v、波形W5w)を生成する。
【0045】
また、
図5において、波形W6uは、U相のスイッチング素子51a用の駆動信号であり、波形W7uは、U相のスイッチング素子51d用の駆動信号である。駆動信号生成部44は、上述したU相の通電タイミング信号(波形W5u)による通電タイミングで、波形W6u及び波形W7uのようなU相の駆動信号を生成し、インバータ50に出力する。インバータ50は、U相の駆動信号(波形W6u及び波形W7u)によって、スイッチング素子51a及びスイッチング素子51dがスイッチング(駆動)されて、正弦波の導通信号(波形W8u)をノードN1に生成し、導通信号(波形W8u)の電圧波形を接続点21aに印加する。
【0046】
また、
図5において、波形W6vは、V相のスイッチング素子51b用の駆動信号であり、波形W7vは、V相のスイッチング素子51e用の駆動信号である。駆動信号生成部44は、上述したV相の通電タイミング信号(波形W5v)による通電タイミングで、波形W6v及び波形W7vのようなV相の駆動信号を生成し、インバータ50に出力する。インバータ50は、V相の駆動信号(波形W6v及び波形W7v)によって、スイッチング素子51b及びスイッチング素子51eがスイッチング(駆動)されて、正弦波の導通信号(波形W8v)をノードN2に生成し、導通信号(波形W8v)の電圧波形を接続点21bに印加する。
【0047】
また、
図5において、波形W6wは、W相のスイッチング素子51c用の駆動信号であり、波形W7wは、W相のスイッチング素子51f用の駆動信号である。駆動信号生成部44は、上述したW相の通電タイミング信号(波形W5w)による通電タイミングで、波形W6w及び波形W7wのようなW相の駆動信号を生成し、インバータ50に出力する。インバータ50は、W相の駆動信号(波形W6w及び波形W7w)によって、スイッチング素子51c及びスイッチング素子51fがスイッチング(駆動)されて、正弦波の導通信号(波形W8w)をノードN3に生成し、導通信号(波形W8w)の電圧波形を接続点21cに印加する。
【0048】
このように、モータ制御装置1は、
図5に示す正弦波に基づく3相(U相、V相、W相)の通電信号を生成して、モータ2の3相の電機子コイル(21u、21v、21w)に印加して、モータ2のロータ22を回転させる。
【0049】
次に、
図6を参照して、本実施形態によるモータ制御装置1のモータ制御処理について説明する。
図6は、本実施形態によるモータ制御装置1のモータ制御処理の一例を示すフローチャートである。
【0050】
図6に示すように、モータ制御装置1における制御部40の指令生成部42は、目標の回転出力に応じた目標指令値を生成する(ステップS101)。指令生成部42は、例えば、位置検出部41から取得した現在のロータ22の回転数(RPM)と、目標回転数TRPMとに応じて、PWM制御の指令値TOを、目標指令値として生成し、生成した指令値TOを変換部43に出力する。
【0051】
次に、変換部43は、目標指令値を出力指令値に変換する(ステップS102)。変換部43は、例えば、
図2に示すようなMAP情報(波形W1)をMAP記憶部431から取得し、当該MAP情報(波形W1)に基づいて、指令生成部42が生成した指令値TOから出力指令値TRを生成する。変換部43は、生成した出力指令値TRを駆動信号生成部44に出力する。
【0052】
次に、駆動信号生成部44は、出力指令値TRに基づいて、回転位置に応じた駆動信号を生成する(ステップS103)。駆動信号生成部44は、変換部43が出力した出力指令値TRに基づいて、ロータ22の回転位置に応じた通電タイミングで、正弦波に基づく通電波形の電圧が3相の電機子コイル(21u、21v、21w)に印加されるように、駆動信号を生成する。
【0053】
駆動信号生成部44は、例えば、
図5の示す波形W6u及び波形W7uのようなU相の駆動信号を生成し、当該U相の駆動信号をインバータ50に出力する。また、駆動信号生成部44は、例えば、
図5の示す波形W6v及び波形W7vのようなV相の駆動信号を生成し、当該V相の駆動信号をインバータ50に出力する。また、駆動信号生成部44は、例えば、
図5の示す波形W6w及び波形W7wのようなW相の駆動信号を生成し、当該W相の駆動信号をインバータ50に出力する。
【0054】
次に、インバータ50は、駆動信号により、通電信号に基づく印加電圧をモータ2に印加する(ステップS104)。インバータ50は、例えば、
図5の示す波形W6u及び波形W7uのようなU相の駆動信号に基づいて、波形W8uに示すようなU相の通電信号を生成する。また、インバータ50は、例えば、
図5の示す波形W6v及び波形W7vのようなV相の駆動信号に基づいて、波形W8vに示すようなV相の通電信号を生成する。また、インバータ50は、例えば、
図5の示す波形W6w及び波形W7wのようなW相の駆動信号に基づいて、波形W8wに示すようなW相の通電信号を生成する。インバータ50は、生成した3相(U相、V相、W相)の通電信号に基づく印加電圧を3相の電機子コイル(21u、21v、21w)に印加する。
【0055】
なお、インバータ50は、出力指令値TRのDutyが100%以下である場合(直線領域LAである場合)に、
図3に示す波形W2u、波形W2v、及び波形W2wのような正弦波の印加電圧を、3相の電機子コイル(21u、21v、21w)に印加する。
また、インバータ50は、出力指令値TRのDutyが100%を超える場合(非直線領域NLAである場合)に、
図4に示す波形W4u、波形W4v、及び波形W4wのような印加電圧(正弦波の通電波形の頂点が潰れる領域を有する印加電圧)を、3相の電機子コイル(21u、21v、21w)に印加する。
【0056】
ステップS104の処理後に、制御部40は、処理をステップS101に戻し、ステップS101からステップS104の処理を繰り返す。
【0057】
次に、
図7から
図11を参照して、本実施形態によるモータ制御装置1の変形例について説明する。ここでは、正弦波に基づく通電波形の通電信号として、正弦波そのものの代わりに、正弦波に3次高調波を重畳させた波形を適用する変形例について説明する。
【0058】
図7は、本実施形態における通電信号及び印加電圧の変形例を示す図である。
図7において、横軸は、電気角[度]を示し、縦軸は、印加電圧のDuty[%]を示している。
【0059】
また、波形W9は、Dutyが100%以下である場合における正弦波に3次高調波を重畳させた通電信号及び印加電圧を示している。本変形例では、駆動信号生成部44は、Dutyが100%以下である場合に、波形W9に示すような、正弦波に3次高調波を重畳させた通電信号及び印加電圧になるように、PWM制御により駆動信号を生成する。その結果、インバータ50が、波形W9に示すような通電信号を生成して印加電圧をモータ2に印加する。
【0060】
また、波形W10は、Dutyが100%を超える場合における正弦波に3次高調波を重畳させた通電信号を示し、波形W11は、この場合にモータ2に印加される印加電圧を示している。本変形例では、駆動信号生成部44は、Dutyが100%を超える場合に、波形W10に示すような、正弦波に3次高調波を重畳させた通電信号になるように、PWM制御により駆動信号を生成し、インバータ50が、波形W10に示すような通電信号を生成する。結果として、インバータ50は、波形W11に示すような広角台形波の印加電圧をモータ2に印加する。
【0061】
また、
図8は、本実施形態の変形例におけるDutyが100%以下の場合の通電信号の一例を示す図である。
図8において、横軸は、電気角[度]を示し、縦軸は、印加電圧のDuty[%]を示している。また、波形W12uは、Dutyが100%の場合のU相の通電信号及び印加電圧波形を示している。また、波形W12vは、Dutyが100%の場合のV相の通電信号及び印加電圧波形を示している。また、波形W12wは、Dutyが100%の場合のW相の通電信号及び印加電圧波形を示している。
【0062】
本実施形態の変形例において、波形W12u、波形W12v、及び波形W12wの各相の通電信号は、正弦波に3次高調波が重畳された波形(以下、3次高調波重畳波と言う)を有する。3次高調波重畳波は、その波形の山における印加電圧のDuty(ピーク電圧)が一定区間約100%(97~99%)となり、谷における印加電圧のDutyが一定区間約0%(1~3%)となる。
また、区間Tonは、各相の1相の印加電圧のDutyのみが約100%(97~99%)である通常通電区間を示している。
【0063】
また、
図9は、本実施形態の変形例におけるDutyが100%を超える場合の通電信号及び印加電圧の一例を示す図である。
図9において、横軸は、電気角[度]を示し、縦軸は、印加電圧のDuty[%]を示している。また、波形W13uは、Dutyが100%を超える場合のU相の通電信号を示し、波形W14uは、U相の印加電圧波形を示している。また、波形W13vは、Dutyが100%を超える場合のV相の通電信号を示し、波形W14vは、V相の印加電圧波形を示している。また、波形W13wは、Dutyが100%を超える場合のW相の通電信号を示し、波形W14wは、W相の印加電圧波形を示している。
【0064】
本実施形態の変形例において、波形W13u、波形W12v、及び波形W13wの各相の通電信号は、正弦波に3次高調波が重畳された波形(3次高調波重畳波)を有するが、実際の印加電圧の波形は、波形W14u、波形W14v、及び波形W14wに示すような広角台形波となる。
【0065】
また、区間Tonwは、W相の印加電圧のDutyのみが約100%(97~99%)である通常通電区間を示し、区間Tonuは、U相の印加電圧のDutyのみが約100%(97~99%)である通常通電区間を示している。また、区間Tolは、W相の印加電圧及びU相の印加電圧である2相の印加電圧のDutyが約100%(97~99%)であるオーバーラップ通電区間を示している。このように、本実施形態の変形例において、Dutyが100%を超える場合には、3相のうちの2つの相印加電圧のDutyが約100%(97~99%)になるオーバーラップ通電区間が設けられている。
【0066】
次に、
図10及び
図11を参照して、オーバーラップ通電区間を設けることにより、モータの出力特性が向上する原理について説明する。
図10は、本実施形態の変形例の通常通電区間における印加電流を説明する図である。また、
図11は、本実施形態の変形例のオーバーラップ通電区間における印加電流を説明する図である。
【0067】
図10及び
図11において、抵抗RW、抵抗RU、抵抗RVは、それぞれ、インバータ502の各スイッチング素子51a~51fおよび3相の電機子コイル21u、21v,21wから構成される回路(抵抗回路とよぶ)における基準抵抗を示すものとする。また、
図10及び
図11に記す矢印の大きさは、各相への印加電流の値の大きさに比例している。
【0068】
図10は、
図9の電気角180度付近の通電状態における回路図である。通電角180度付近においては、接続点21aにはW相印加電圧のDutyが100%、接続点21bにはV相印加電圧のDutyが0%、接続点21cにはU相印加電圧のDutyが50%にて通電されている。
【0069】
図10に示すように、通常通電区間(3相通電)に駆動している際は、3相全てに通電されるため、抵抗回路における端子間抵抗Raは、抵抗RW(抵抗値R)と、抵抗RUと抵抗RVとの直列抵抗(抵抗値2R)とが、並列に配置された構成となるため、以下の式(1)によりRa=2R/3となる。
【0070】
Ra=R×2R/(R+2R)=(2/3)R ・・・ (1)
【0071】
なお、抵抗回路における端子間抵抗Raとは、
図1に示すバッテリ3の正極端子と負極端子との間の抵抗値をいう。
ここでは、抵抗RWに流れる電流と、抵抗RUと抵抗RVとの直列抵抗とに流れる電流の大きさを比較すると、抵抗RWに流れる電流の方が、抵抗RUと抵抗RVとの直列抵抗とに流れる電流よりも大きい。
【0072】
また、
図11は、
図9の電気角210度付近の通電状態における回路図である。
図11に示すように、オーバーラップ通電区間(2相通電)に駆動している際は、2相に通電されるため、抵抗回路における端子間抵抗Rbは、抵抗RW(抵抗値R)と、抵抗RU(抵抗値R)とが、並列に配置された構成となる。そのため、端子間抵抗Rbは、以下の式(2)によりRb=R/2となる。
【0073】
Rb=R×R/(R+R)=(1/2)R ・・・ (2)
【0074】
なお、抵抗回路における端子間抵抗Rbとは、
図1に示すバッテリ3の正極端子と負極端子との間の抵抗値をいう。
【0075】
ここでは、抵抗RWと抵抗RVとには電流が流れるが、抵抗RUには電流がほぼ流れない。言い換えると、接続点21aと接続点21cとにDutyが100%の印加電圧が印加され、かつ、接続点21bにDutyが0%の印加電圧が印加される。そのため、接続点21aと接続点21cは同電位となり、接続点21aと接続点21cとの間には電流が流れなくなる。また、接続点21aと接続点21bとの間の電位差と、接続点21cと接続点21bとの間の電位差とが等しくなり、接続点21aと接続点21bとの間に流れる電流と、接続点21cと接続点21bとの間に流れる電流とが等しくなる。その結果、抵抗RWに流れる電流の大きさと抵抗RVに流れる電流の大きさは、ほぼ同じであるが、抵抗RUには電流がほぼ流れなくなり、モータ2は抵抗RUの抵抗値としての影響を受けなくなる。
【0076】
このように、オーバーラップ通電区間に切り替えることで、通電される回路が3相から2相となり、抵抗計算結果が2R/3からR/2になることで、以下の式(3)に示すように、モータ内部抵抗を、1/4(25%)低減することが可能となる。
【0077】
(2R/3-R/2)/(2R/3)=1/4 ・・・ (3)
【0078】
つまり、モータ2の内部抵抗が下がることで、銅損低減の効果によりモータ2の出力特性が向上する。
【0079】
以上説明したように、本実施形態によるモータ制御装置1は、位置検出部41と、指令生成部42と、変換部43と、駆動信号生成部44と、インバータ50とを備える。位置検出部41は、3相の電機子コイル(21u、21v、21w)を備えるモータ2のロータ22(回転子)の回転位置を検出する。指令生成部42は、ロータ22の目標の回転出力に応じた指令値(例えば、PWM制御(パルス幅変調制御)の指令値)を生成する。変換部43は、指令生成部42が生成した指令値が、指令値と回転出力との関係の直線性が保たれる直線領域LAである場合に、当該指令値を出力指令値として出力する。また、変換部43は、指令値が、指令値と回転出力との関係が非直線性になる非直線領域NLAである場合に、当該指令値を、予め取得された指令値と回転出力との間の特性を示す特性情報に基づいて、回転出力に直線性が得られるように変換し、出力指令値として出力する。駆動信号生成部44は、変換部43が出力した出力指令値に基づいて、ロータ22の回転位置に応じた通電タイミングで、正弦波に基づく通電波形の電圧が3相の電機子コイル(21u、21v、21w)に印加されるように、駆動信号を生成する。インバータ50は、駆動信号生成部44が生成した駆動信号に基づいて、スイッチング素子を駆動させて、通電波形に基づく印加電圧を3相の電機子コイル(21u、21v、21w)に印加する。
【0080】
これにより、本実施形態によるモータ制御装置1は、非直線領域NLAにおける出力指令値が、変換部43により回転出力に直線性が得られるように変換されて使用されて、正弦波制御を行うため、静音化及び高出力を実現しつつ、低速作動から高速作動までシームレスにモータ2を制御することができる。
本実施形態によるモータ制御装置1では、例えば、出力0%から最大出力までの範囲を1つの制御パラメータ(1つの指令値)で制御することが可能となる。
【0081】
また、本実施形態では、直線領域LAは、PWM制御の指令値としてのデューティ比(Duty)が100%以下の領域であり、非直線領域NLAは、PWM制御の指令値としてのデューティ比(Duty)が100%を超える領域である。インバータ50は、非直線領域NLAである場合に、通電波形の頂点が潰れる領域を有する印加電圧を3相の電機子コイル(21u、21v、21w)に印加する。
これにより、本実施形態によるモータ制御装置1は、非直線領域NLAとなる100%を超える高出力時においても、シームレスにモータ2を制御することができる。
【0082】
また、本実施形態によるモータ制御装置1は、特性情報に基づいて生成された指令値TOを出力指令値TRに変換するマッピング情報であって、少なくとも非直線領域NLAにおけるマッピング情報(MAP情報))を記憶するMAP記憶部431(マッピング情報記憶部)を備える。変換部43は、MAP記憶部431が記憶するマッピング情報(MAP情報)に基づいて、出力指令値を生成する。
これにより、本実施形態によるモータ制御装置1は、マッピング情報(MAP情報)という簡易な手法により、シームレスにモータ2を制御することができる。
【0083】
また、本実施形態では、MAP記憶部431は、直線領域LAにおけるマッピング情報(MAP情報)と、非直線領域NLAにおけるマッピング情報(MAP情報)とを記憶する。変換部43は、指令値TOが直線領域LAである場合に、MAP記憶部431が記憶する直線領域LAにおけるマッピング情報(MAP情報)に基づいて、出力指令値TRを生成する。また、変換部43は、指令値TOが非直線領域NLAである場合に、MAP記憶部431が記憶する非直線領域NLAにおけるマッピング情報(MAP情報)に基づいて、出力指令値TRを生成する。
これにより、本実施形態によるモータ制御装置1は、マッピング情報(MAP情報)という簡易な手法により、直線領域LAから非直線領域NLAまで、シームレスにモータ2を制御することができる。
【0084】
また、本実施形態では、通電波形(通電信号の波形)は、正弦波に3次高調波を重畳させた波形であってもよい。
これにより、本実施形態によるモータ制御装置1は、上述した
図10及び
図11により説明したように、静音化及び高出力を実現しつつ、さらに高出力を実現することができる。
【0085】
また、本実施形態によるモータユニット100は、上述したモータ2と、モータ制御装置1とを備える。
これにより、本実施形態によるモータユニット100は、上述したモータ制御装置1と同様の効果を奏し、静音化及び高出力を実現しつつ、低速作動から高速作動までシームレスにモータ2を制御することができる。
【0086】
また、本実施形態によるモータ制御方法は、位置検出ステップと、指令生成ステップと、変換ステップと、駆動信号生成ステップと、印加ステップとを含む。位置検出ステップにおいて、位置検出部41が、3相の電機子コイル(21u、21v、21w)を備えるモータ2のロータ22の回転位置を検出する。指令生成ステップにおいて、指令生成部42が、ロータ22の目標の回転出力に応じた指令値(例えば、PWM制御の指令値)を生成する。変換ステップにおいて、変換部43が、指令生成ステップによって生成された指令値が、指令値と回転出力との関係の直線性が保たれる直線領域LAである場合に、当該指令値を出力指令値として出力し、指令値が、指令値と回転出力との関係が非直線性になる非直線領域NLAである場合に、当該指令値を、予め取得された指令値と回転出力との間の特性を示す特性情報に基づいて、回転出力に直線性が得られるように変換し、出力指令値として出力する。駆動信号生成ステップにおいて、駆動信号生成部44が、変換ステップによって出された出力指令値に基づいて、ロータ22の回転位置に応じた通電タイミングで、正弦波に基づく通電波形の電圧が3相の電機子コイル(21u、21v、21w)に印加されるように、駆動信号を生成する。印加ステップにおいて、インバータ50が、駆動信号生成ステップによって生成された駆動信号に基づいて、スイッチング素子を駆動させて、通電波形に基づく印加電圧を3相の電機子コイル(21u、21v、21w)に印加する。
【0087】
これにより、本実施形態によるモータ制御方法は、上述したモータ制御装置1と同様の効果を奏し、静音化及び高出力を実現しつつ、低速作動から高速作動までシームレスにモータ2を制御することができる。
【0088】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、上記の実施形態において、変換部43は、
図2に示すようなMAP情報に基づいて出力指令値を生成する例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、予め特性試験により、演算により、出力指令値を生成できる場合には、変換部43は、演算処理により、出力指令値を生成するようにしてもよい。
【0089】
また、上記の実施形態において、変換部43は、Duty100%以下の直線領域LAである場合においても、MAP情報を用いて出力指令値を生成する例を説明したが、非直線領域NLAである場合のみMAP情報を用いて出力指令値を生成するようにしてもよい。
【0090】
また、上記の実施形態において、正弦波に基づく通電波形の一例として、正弦波そのものを用いる例と、正弦波に3次高調波を重畳させた波形を用いる例とを説明したが、これらに限定されるものではない。駆動信号生成部44は、例えば、正弦波そのものに対応する駆動信号と、正弦波に3次高調波を重畳させた波形に対応する駆動信号とを切り替えて生成するようにしてもよい。駆動信号生成部44は、例えば、低速作動時には、正弦波での駆動を行い、高速作動時に正弦波に3次高調波を重畳させた波形での駆動を行うなど、使用モードや用途に応じて、切り替えて使用するようにしてもよい。
【0091】
また、上記の実施形態において、スイッチング素子51の一例としてNチャネルMOSFETを用いる例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、PチャネルMOSFETやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)など、他のスイッチング素子を用いるようにしてもよい。
【0092】
また、上記の実施形態において、モータ2は、3相4極形のブラシレスモータである例を説明したが、これに限定されるものではなく、他の相数、又は極数のモータであってもよい。
【0093】
なお、上述したモータ制御装置1が備える各構成は、内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述したモータ制御装置1が備える各構成の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述したモータ制御装置1が備える各構成における処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD-ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。
【0094】
また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部又は外部に設けられた記録媒体も含まれる。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後にモータ制御装置1が備える各構成で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0095】
また、上述した機能の一部又は全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。上述した各機能は個別にプロセッサ化してもよいし、一部、又は全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、又は汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【符号の説明】
【0096】
1 モータ制御装置
2 モータ
3 バッテリ
21 ステータ
21u、21v、21w 電機子コイル
22 ロータ
22a ロータ軸
22b 永久磁石
30 回転角検出部
40 制御部
41 位置検出部
42 指令生成部
43 変換部
44 駆動信号生成部
50 インバータ
51、51a~51f スイッチング素子
52、52a~52f ダイオード
100 モータユニット
431 MAP記憶部