(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】昇降小便器
(51)【国際特許分類】
E03D 13/00 20060101AFI20240903BHJP
【FI】
E03D13/00
(21)【出願番号】P 2020115758
(22)【出願日】2020-07-03
【審査請求日】2023-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】305056250
【氏名又は名称】原田 旭
(74)【代理人】
【識別番号】100104237
【氏名又は名称】鈴木 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】原田 旭
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】実開平4-130384(JP,U)
【文献】特表2014-501153(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0096070(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00-7/00;11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
男性用の小便器の一部が昇降可能な昇降小便器において、
使用者の放尿を受ける受尿面を有し、該受尿面で受けた尿を排出するための排尿部を底面側に設けた固定ベースと、
前記固定ベースに沿って昇降可能に設けられ、前記受尿面への放尿可能な範囲を区画する可動ユニットと、
前記可動ユニットに連結され、該可動ユニットを所望の位置に手動で昇降させるための昇降手段と、を備えたことを特徴とする昇降小便器。
【請求項2】
前記固定ベースは、その底面側で前記受尿面の下端側を囲む包囲部を有し、該包囲部の内側に前記排尿部を配置し、
前記可動ユニットは、前記固定ベースの受尿面を臨む開口部と、該開口部から下方の閉じた放尿制限部と、昇降させるときに手からの昇降力を受けるための操作部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の昇降小便器。
【請求項3】
前記昇降手段は、前記可動ユニットを最高位置に位置させたときに、前記放尿制限部の下端縁の位置が、前記固定ベースの包囲部の上端縁の位置以下となるように設定されていることを特徴とする請求項2に記載の昇降小便器。
【請求項4】
前記昇降手段は、前記固定ベースの背面側に設けられており、前記可動ユニットが自然降下しない重量のバランスウエイトを有することを特徴とする請求項2または3に記載の昇降小便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、男性用の小便器の一部が昇降可能な昇降小便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の男性用の小便器としては、便器の容器の高さは異なるものがあるが、高さ自体は固定されているものが大半であった。そのため、背の低い子ども等は、高さの低いものを使用するか、便器の開口部が床付近まで延びているものを使用していた。したがって、子ども等には使用しにくい高さの小便器は稀ではなかった。
【0003】
また、子ども等には使用しやすい高さの小便器は、背の高い大人が使用した場合に尿が小便器外に飛び散り易かったり、小便器の外にこぼしてしまうこともあったりするという問題があった。これらの問題を解消するものとして、小便器を昇降させるものなどが知られている。
【0004】
例えば、センサを用いて使用者に適切な便器容器の高さを計算して、モータによって便器容器を適切な高さに動かすことを行う特許文献1に記載された男性用便器が知られている。また、内管の上端に尿受け具を有し、検知手段によって検出した使用者に合わせてモータによって内管を上下させる特許文献2に記載された男子用トイレも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2003-531984号公報
【文献】特開2008-291619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、使用者を検出するセンサや便器容器を昇降させるためのモータが必要であり、構成が大掛かりになり、コストが嵩むという問題があった。
【0007】
また、特許文献2に記載された技術では、尿受け具で尿を受けることになるので、従来の小便器と比べると尿を受ける部分の面積が狭くなり、この点では尿を便器外にこぼすことを防ぐことには効果的でなく、また、使用感が従来の小便器と大きく異なるので使用しにくいという問題が有った。
【0008】
本発明は、以上のような従来の技術が有する問題点に着目してなされたもので、簡易な構成でコスト高を招くことがなく、小便器の外への尿のこぼれや跳ねを低減でき、使用感を良くすることができる昇降小便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するための本発明の要旨とするところは、以下の各項の発明に存する。
[1]男性用の小便器の一部が昇降可能な昇降小便器(1)において、
使用者の放尿を受ける受尿面(11)を有し、該受尿面(11)で受けた尿を排出するための排尿部(12)を底面側に設けた固定ベース(10)と、
前記固定ベース(10)に沿って昇降可能に設けられ、前記受尿面(11)への放尿可能な範囲を区画する可動ユニット(20)と、
前記可動ユニット(20)に連結され、該可動ユニット(20)を所望の位置に手動で昇降させるための昇降手段(30)と、を備えたことを特徴とする昇降小便器(1)。
【0010】
[2]前記固定ベース(10)は、その底面側で前記受尿面(11)の下端側を囲む包囲部(13)を有し、該包囲部(13)の内側に前記排尿部(12)を配置し、
前記可動ユニット(20)は、前記固定ベース(10)の受尿面(11)を臨む開口部(21)と、該開口部(21)から下方の閉じた放尿制限部(22)と、昇降させるときに手からの昇降力を受けるための操作部(23)と、を有することを特徴とする項[1]に記載の昇降小便器(1)。
【0011】
[3]前記昇降手段(30)は、前記可動ユニット(20)を最高位置に位置させたときに、前記放尿制限部(22)の下端縁(22a)の位置が、前記固定ベース(10)の包囲部(13)の上端縁(13a)の位置以下となるように設定されていることを特徴とする項[2]に記載の昇降小便器(1)。
【0012】
[4]前記昇降手段(30)は、前記固定ベース(10)の背面側に設けられており、前記可動ユニット(20)が自然降下しない重量のバランスウエイト(31)を有することを特徴とする項[2]または[3]に記載の昇降小便器(1)。
【0013】
次に、前述した解決手段に基づく作用を説明する。
前記項[1]に記載の昇降小便器(1)によれば、可動ユニット(20)は昇降手段(30)に連結されており、手動で昇降させることができるので、使用者が適宜に自分にあった高さに調整することができ、尿が昇降小便器の外にこぼれたり跳ねたりすることを防止できる。
【0014】
ここで可動ユニット(20)を、どのような高さにしても、全体の形状は従来の小便器と類似した形状であるので、可動ユニット(20)から固定ベース(10)の受尿面(11)に排尿する際の使用感は、従来の小便器における使用感と変わらないものとなる。
【0015】
前記項[2]に記載の昇降小便器(1)によれば、固定ベース(10)の受尿面(11)および包囲部(13)の形状は、従来の小便器にも見られる形状であり、違和感がない上に尿が小便器の外にこぼれたり跳ねたりすることを、よりいっそう防止できる。
【0016】
さらに、操作部(23)を介して、可動ユニット(20)を手動で容易に昇降させることかできる。可動ユニット(20)は、どの高さにあっても、固定ベース(10)の包囲部(13)から連続する放尿制限部(22)の形状が、従来の小便器と大きく変わることはない。
【0017】
そのため、使用者は、放尿制限部(22)の上方にある開口部(21)から受尿面(11)に向けて放尿する際に、何の違和感も無く排尿することができる。しかも、放尿制限部(22)によって、確実に尿のこぼれや跳ねを少なくすることができる。
【0018】
前記項[3]に記載の昇降小便器(1)によれば、昇降手段(30)は、可動ユニット(20)を最高位置に位置させたときに、放尿制限部(22)の下端縁(22a)位置が前記固定ベース(10)の包囲部(13)の上端縁(13a)の位置以下となるように設定されている。したがって、包囲部(13)と放尿制限部(22)との間に間隙が生じることがない。
【0019】
前記項[4]に記載の昇降小便器(1)によれば、昇降手段(30)は、可動ユニット(20)が自然降下しない重量のバランスウエイト(31)を有するので、可動ユニット(20)を容易に昇降できる上に所望の高さに安定して位置させておくことができる。また、小さい力で可動ユニット(20)を昇降させることが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る昇降小便器によれば、簡易な構成でコスト高を招くことがなく、小便器の外への尿のこぼれや跳ねを少なくすることができるとともに、従来の小便器と同様の使用感で使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る昇降小便器において可動ユニットを高くした状態を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施の形態に係る昇降小便器において可動ユニットを低くした状態を示す斜視図である。
【
図3】
図1の状態における昇降小便器の昇降手段を示す背面図である。
【
図4】
図2の状態における昇降小便器の昇降手段を示す背面図である。
【
図5】
図1の状態における昇降手段を示す斜視図である。
【
図6】
図2の状態における昇降手段を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づき、本発明の好適な一実施の形態を説明する。
図1から
図6は、本発明の一実施の形態を示している。
図1は、可動ユニット20が最上位置にあるときの昇降小便器1を示す斜視図であり、
図2は、可動ユニット20が最下位置にあるときの昇降小便器1を示す斜視図である。
図1および
図2に示すように、昇降小便器1は、男性用の小便器である。
【0023】
図1に示すように、昇降小便器1は、壁際に立設された固定側の固定ベース10と、該固定ベース10の外側に可動可能に組み合わされた可動ユニット20と、を備えている。固定ベース10は、使用者の放尿を受ける受尿面11を有している。また、受尿面11で受けた尿を固定ベース10の外部へ排出するための排尿部12が、底面側に設けられている。なお、排尿部12には、図示省略したが床から延びる排水管が接続されている。
【0024】
固定ベース10の底面側を含む下部には、受尿面11の下端側を囲む包囲部13が設けられている。これらの構成は、従来の男性用小便器の相当する部分の構成と同様である。なお、受尿面11を洗い流すための水が流出する流水部は、受尿面11の上部に設けられているが、これも従来の男性用小便器の相当する部分と同様に設けられているので、図示を省略してある。
【0025】
可動ユニット20は、固定ベース10の外側で固定ベース10に沿って昇降可能に立設されている。この可動ユニット20は、従来の男性用便器に類似した形状を有しており、固定ベース10の受尿面11を臨む開口部21の下縁から可動ユニット20の下端部までは、固定ベース10の包囲部13と同様の閉じた形状を有する放尿制限部22が形成されている。可動ユニット20は、固定ベース10の外側で固定ベース10を囲むように形成されているので、放尿制限部22の内側面は、包囲部13の外側面との間に僅かな間隙ができるような形状に形成されている。
【0026】
また、可動ユニット20の側面には、横方向に突設された操作部としての昇降グリップ23が設けられている。この昇降グリップ23は、可動ユニット20を昇降させるときに握持するためのものである。
図1~4においては、昇降グリップ23を、両側面それぞれに水平方向に延びるように設けているが、両側面のうち片側にだけ設けてもよく、延びる方向も水平方向に限らず、斜め上方又は斜め下方に延びたものでもよい。また、形状も例示したような棒状のものに限られず、握持し易いものであればどのような形状であってもよい。
【0027】
図3~
図6は、それぞれ可動ユニット20を所望の高さに手動で昇降させるための昇降手段30を示している。
図3は、可動ユニット20が最上位置にあるときの昇降手段30と固定ベース10及び可動ユニット20との状態を示し、
図4は、可動ユニット20が最下位置にあるときの昇降手段30と固定ベース10及び可動ユニット20との状態を示している。
図5は、
図3における昇降手段30のみを示した斜視図であり、
図6は、
図4における昇降手段30のみを示した斜視図である。
【0028】
この昇降手段30は、固定ベース10の背面側に設けられている。
図3及び
図4では、昇降手段30が固定ベース10の背面に設けられている。昇降手段30は、バランスウエイト31に一端を連結したケーブル32を滑車33に掛けて、もう一方の端部が取付部34に連結されている。この取付部34には、可動ユニット20の連結部が固定されている。
【0029】
バランスウエイトは、可動ユニット20の重量とバランスをとっており、可動ユニット20はどのような高さに有っても自然落下しないようになっている。バランスウエイト31は、例えばガイドレールに沿って昇降する。ガイドレールとしては、例えばバランスウエイト31の両側縁部が嵌入する凹溝である。
【0030】
昇降手段30は、バランスウエイト31の最低位置を制限するための低位置ストッパ35と、バランスウエイト31の最高位置を制限する高位置ストッパ36とが設けられている。高位置ストッパ36は、例えば可動ユニット20を最高位置に位置させたときに、放尿制限部22の下端縁22aの位置が固定ベース10の包囲部13の上端縁13aの位置以下となるように配設されている。
【0031】
上記のように
図3及び
図4では、昇降手段30を固定ベース10の背面に設けた例を示したが、固定ベース10の背面が対面する壁に設けてもよい。
【0032】
次に、本実施形態に係る昇降小便器1の作用を説明する。
昇降小便器1では、可動ユニット20を固定ベース10に対して、
図1に示した最も高い位置に引き上げられた状態から、
図2に示した最も低い位置に下げられた状態の任意の位置状態にしておくことができる。
【0033】
図1において、可動ユニット20は最も高い位置にあり、背丈の高い使用者に適している。このとき、
図3及び
図5に示したように、昇降手段30のバランスウエイト31は、下端が高位置ストッパ36に当接して止められている。このとき、放尿制限部22の下端縁22aの位置が、固定ベース10の包囲部13の上端縁13aの位置よりも僅かに下方にある。
【0034】
したがって、包囲部13と放尿制限部22とは上下方向に隙間が無い状態となっている。このように、背丈の高い使用者が使用する場合は
図1に示したような位置に可動ユニット20を揚げて使用することによって放尿時の尿が昇降小便器1の外にこぼれたり、跳ね出たりすることを防止できる。
【0035】
可動ユニット20が
図1の状態にある昇降小便器1を、背丈の低い使用者が使用する場合は、昇降グリップ23を手で握持して可動ユニット20を下げればよい。
図2は、可動ユニット20を最も低い位置に下げた状態である。この状態は、子ども等の背丈の低い使用者に適している。背丈の低い使用者は、可動ユニット20をこの状態にして使用することによって、放尿時の尿が昇降小便器1の外にこぼれたり、跳ね出たりすることを防止できる。なお、昇降手段30のバランスウエイト31の効果によって、子供でも容易に可動ユニット20を下げることができる。
【0036】
使用者の背丈は様々であり、
図1に示した状態の昇降小便器1では可動ユニット20の位置が高くて使用感が悪く感じる一方、
図2に示した状態の昇降小便器1では可動ユニット20の位置が低くて放尿時の尿が昇降小便器1の外にこぼれ易くなったり、跳ねやすくなったりする使用者もいる。このようなときは、使用者は昇降グリップ23を手で握って可動ユニット20を昇降させ、使用感の良い高さで使用することによって、放尿時の尿が昇降小便器1の外にこぼれたり、跳ね出たりすることを防止できる。
【0037】
以上のように、本願発明に係る昇降小便器1によれば、使用者の背丈の高低にかかわらず、使用者が可動ユニット20の高さを自由に調整することができる。したがって、可動ユニット20を、使用者各自がそれぞれ使用感の良好な高さに位置させて使用することが可能となり、放尿時の尿が昇降小便器1の外にこぼれたり、跳ね出たりすることを防止できる。
【0038】
なお、上記の実施の形態では、放尿制限部22の下端縁22aの位置が、固定ベース10の包囲部13の上端縁13aの位置よりも僅かに下方にある例を説明したが、放尿制限部22の下端縁22aの位置が、固定ベース10の包囲部13の上端縁13aの位置よりも高くできるようにして、放尿制限部22の内側面及び包囲部13の内側面を掃除し易くしてもよい。
【0039】
この場合、放尿制限部22の下端縁22aの位置と、固定ベース10の包囲部13の上端縁13aの間に間隙が出来るので使用者の用便時には、この状態にならないようにしておく必要がある。このため、高位置ストッパ36を解除可能なものにして、清掃のときだけに解除することにより、使用時の最高位置よりもさらに高い位置まで放尿制限部22を揚げられるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本願発明に係る昇降小便器1は、建造物内の男子用便器における実施に限らず、仮設トイレにおいても実施することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…昇降小便器
10…固定ベース
11…受尿面
12…排尿部
13…包囲部
20…可動ユニット
21…開口部
22…放尿制限部
23…昇降グリップ
30…昇降手段
31…バランスウエイト
32…ケーブル
33…滑車
34…取付部
35…低位置ストッパ
36…高位置ストッパ