(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】医用情報処理装置、X線診断装置、および医用情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20240101AFI20240903BHJP
A61B 6/50 20240101ALI20240903BHJP
【FI】
A61B6/00 520Z
A61B6/00 570
A61B6/50 511E
(21)【出願番号】P 2020125570
(22)【出願日】2020-07-22
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長江 亮一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 翔
(72)【発明者】
【氏名】藤戸 智生
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-334186(JP,A)
【文献】特開2016-123719(JP,A)
【文献】特開2013-215277(JP,A)
【文献】国際公開第2016/121543(WO,A1)
【文献】特開2016-106848(JP,A)
【文献】特開平09-248297(JP,A)
【文献】特開2000-217809(JP,A)
【文献】特開2010-213798(JP,A)
【文献】特開2015-058077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58
A61B 5/055
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対する治療手技において使用される医用画像診断装置のシステム外部の状況を示す情報を取得する取得部と、
前記システム外部の状況を示す情報にもとづいて、前記医用画像診断装置の前記システムの好ましい運転モードを特定する特定部と、
を備え
、
前記運転モードは、
前記医用画像診断装置による医用画像の収集を優先し、収集した医用画像に関する処理と、収集した医用画像を外部の画像サーバに転送する転送処理との少なくとも1つを制限する運転モードである安全運転モードを含む、
医用情報処理装置。
【請求項2】
前記医用画像診断装置は、X線診断装置であり、
前記安全運転モードは、
X線撮像を優先して、当該X線撮像により生成されたX線画像に関する処理と、収集したX線画像を外部の画像サーバに転送する転送処理との少なくとも1つを制限する運転モードである、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項3】
前記安全運転モードで制限される処理は、
前記X線診断装置により生成されたX線画像に対する再生処理および計測処理、および、前記X線診断装置により生成されたX線画像を外部の画像サーバに転送する転送処理、の少なくとも1つを含む、
請求項2に記載の医用情報処理装置。
【請求項4】
前記安全運転モードで制限される前記他の処理は、
前記X線診断装置のCアームおよび寝台装置の移動処理、前記X線診断装置により生成された前記被検体の血管造影画像に対する再生処理および計測処理、および、前記X線診断装置により生成された前記被検体の血管造影画像を外部の画像サーバに転送する処理
、の少なくとも1つを含む、
請求項
2記載の医用情報処理装置。
【請求項5】
前記制限は、処理の部分的な制限であり、当該処理のうち前記部分的な制限の対象外の処理を制限しない、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項6】
被検体に対する治療手技において使用される
X線診断装置のシステム外部の状況を示す情報を取得する取得部と、
前記システム外部の状況を示す情報にもとづいて、前記
X線診断装置の前記システムの好ましい運転モードを特定する特定部と、
を備
え、
前記特定部は、
前記システム外部の状況を示す情報にもとづいて、複数の運転モードから前記
X線診断装置の前記システムの好ましい運転モードを特定
し、
前記複数の運転モードは、
X線撮影およびX線透視を優先して他の処理を制限する運転モードである安全運転モードを含
み、
前記安全運転モードで制限される前記他の処理は、
前記X線診断装置のCアームおよび寝台装置の移動処理、前記X線診断装置により生成された前記被検体の血管造影画像に対する再生処理および計測処理、および、前記X線診断装置により生成された前記被検体の血管造影画像を外部の画像サーバに転送する処理を含む、
医用情報処理装置。
【請求項7】
前記特定部により特定された運転モードで運転するよう、前記
X線診断装置の運転モードを自動設定する設定部、
をさらに備えた請求項
6記載の医用情報処理装置。
【請求項8】
前記特定部により特定された運転モードをユーザに通知する通知部、
をさらに備え、
前記設定部は、
前記通知部による通知を確認したユーザによる運転モードの設定指示を受け付けると、この指示に応じて運転モードを設定する、
請求項
7記載の医用情報処理装置。
【請求項9】
前記システム外部の状況を示す情報は、検査の状況を示す情報を含み、
前記検査の状況を示す情報は、
前記X線診断装置とともに前記被検体の検査で用いられる他の医用画像診断装置により生成された前記被検体の医用画像、または前記X線診断装置により生成された前記被検体の血管造影画像を含み、
前記特定部は、
前記他の医用画像診断装置により生成された前記被検体の医用画像と前記被検体の血管造影画像の少なくとも一方にもとづいて現在の前記検査の状況が手技の最中であると特定すると、好ましい運転モードを前記安全運転モードと特定する、
請求項
6ないし8のいずれか1項に記載の医用情報処理装置。
【請求項10】
前記システム外部の状況を示す情報は、検査の状況を示す情報を含み、
前記検査の状況を示す情報は、
前記被検体の検査中に前記X線診断装置のユーザが他のユーザへの指示のために発声した音声の音声データを含み、
前記特定部は、
前記音声データに含まれる文字列にもとづいて現在の前記検査の状況が手技の最中であると特定すると、好ましい運転モードを前記安全運転モードと特定する、
請求項
6ないし
9のいずれか1項に記載の医用情報処理装置。
【請求項11】
前記システム外部の状況を示す情報は、検査の状況を示す情報を含み、
前記検査の状況を示す情報は、
前記被検体の電子カルテに含まれた検査部位および検査目的の情報と、前記X線診断装置に設定された撮影プロトコルの情報と、の少なくとも一方を含み、
前記特定部は、
前記被検体の電子カルテに含まれた検査部位および検査目的の情報と、前記撮影プロトコルの情報と、の少なくとも一方にもとづいて好ましい運転モードを特定する、
請求項
6ないし
10のいずれか1項に記載の医用情報処理装置。
【請求項12】
前記システム外部の状況を示す情報は、前記被検体の状況を示す情報を含み、
前記取得部は、
前記被検体の生体情報を検出する生体センサの出力信号を含む前記被検体の状況を示す情報をさらに取得し、
前記特定部は、
前記生体センサの出力信号にもとづいて現在の前記被検体の状況が容体確認の必要な状況であると特定すると、好ましい運転モードを前記安全運転モードと特定する、
請求項
6ないし
11のいずれか1項に記載の医用情報処理装置。
【請求項13】
前記被検体の状況を示す情報は、
前記被検体の電子カルテに含まれた被検体情報をさらに含む、
請求項
12記載の医用情報処理装置。
【請求項14】
前記特定部は、
前記システム外部の状況を示す情報と前記複数の運転モードのそれぞれとを関連付けた情報を用いて好ましい運転モードを特定する、
請求項
1ないし
13のいずれか1項に記載の医用情報処理装置。
【請求項15】
前記特定部は、
時系列的な一連の手技の情報を入力されて好ましい運転モードを出力するように再帰型ニューラルネットワークを用いて構築された学習済みモデルを用いることで、好ましい運転モードを特定する、
請求項1ないし
14のいずれか1項に記載の医用情報処理装置。
【請求項16】
被検体に対する治療手技において使用されるX線診断装置であって、
システム外部の状況を示す情
報を取得する取得部と、
前記システム外部の状況を示す情報にもとづいて、前記システムの好ましい運転モードを特定する特定部と、
を備
え、
前記特定部は、
前記システム外部の状況を示す情報にもとづいて、複数の運転モードから前記
X線診断装置の前記システムの好ましい運転モードを特定
し、
前記複数の運転モードは、
X線撮影およびX線透視を優先して他の処理を制限する運転モードである安全運転モードを含
み、
前記安全運転モードで制限される前記他の処理は、
前記X線診断装置のCアームおよび寝台装置の移動処理、前記X線診断装置により生成された前記被検体の血管造影画像に対する再生処理および計測処理、および、前記X線診断装置により生成された前記被検体の血管造影画像を外部の画像サーバに転送する処理を含む、
X線診断装置。
【請求項17】
コンピュータに、
被検体に対する治療手技において使用される
X線診断装置のシステム外部の状況を示す情
報を取得するステップ、および
前記システム外部の状況を示す情報にもとづいて、前記
X線診断装置の前記システムの好ましい運転モードを特定するステップ、
を実行させるための医用情報処理プログラム
であって、
前記
X線診断装置の前記システムの好ましい運転モードを特定
するステップは、
前記システム外部の状況を示す情報にもとづいて、複数の運転モードから前記
X線診断装置の前記システムの好ましい運転モードを特定する
ステップを含み、
前記複数の運転モードは、
X線撮影およびX線透視を優先して他の処理を制限する運転モードである安全運転モードを含
み、
前記安全運転モードで制限される前記他の処理は、
前記X線診断装置のCアームおよび寝台装置の移動処理、前記X線診断装置により生成された前記被検体の血管造影画像に対する再生処理および計測処理、および、前記X線診断装置により生成された前記被検体の血管造影画像を外部の画像サーバに転送する処理を含む、
医用情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書および図面に開示の実施形態は、医用情報処理装置、X線診断装置、および医用情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
X線アンギオ装置やX線TV装置などのX線診断装置は、カテーテル治療などの治療手技を行う際に用いられることが多い。たとえば、カテーテル治療を行う際は、ユーザは、X線診断装置によるX線撮像にもとづくX線透視画像やX線撮影画像(以下、X線画像という)をリアルタイムに表示させ、透視画像などのX線画像に描出されるカテーテルやガイドワイヤなどのデバイスの位置を確認しながら手技を行うことができる。
【0003】
一方で、X線診断装置は、X線撮像を行う機能だけでなく、Cアームや寝台装置を移動させる機能や、X線診断装置で取得されたX線画像に対して再生処理や計測処理を行う機能、X線画像を外部の画像サーバに転送して蓄積させる機能などを有している。また、これらの機能は、異なるユーザによる同時並行的な入力に応じて同時並行的に処理可能とされる。たとえば、X線診断装置は一般に、医師がX線撮像を行い、医師を検査室内で補助する技師がカテーテル操作に最適な参照画像を表示させるために収集済みのX線撮像のコマ送り再生を行い、検査室とはことなる操作室においてX線画像を表示する装置の操作者がX線画像の画像サーバへの画像転送を行う、といった複数の処理を、平等に同時並行的に受け付けて同時並行的に実行することが可能である。
【0004】
しかし、これらの処理は、検査の場面によっては優先度が異なる。ステント留置やバルーン拡張など、検査の場面の中でも検査の結果を左右する重要な手技の場面では、透視や撮影の優先度が最も高く、画像転送などのその他の処理の優先度は低い。にもかかわらず、上述のとおり、X線診断装置は全ての処理を平等に同時並行的に受け付けて同時並行的に実行する。このため、この種の重要な手技の場面において、他の処理の負荷によってシステムの負荷が高まってしまう可能性があり、この場合、システムが不安定となって、透視や撮影といった優先度の高い処理の安定的な実行が難しくなってしまう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書および図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、システム外部の状況に応じてシステムの好ましい運転モードを特定することである。ただし、本明細書および図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る医用情報処理装置は、取得部と、特定部とを備える。取得部は、被検体に対する治療手技において使用される医用画像診断装置のシステム外部の状況を示す情報を取得する。特定部は、システム外部の状況を示す情報にもとづいて、医用画像診断装置のシステムの好ましい運転モードを特定する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る医用情報処理装置を含む医用画像診断装置の一例を示す概念的な構成図。
【
図2】医用情報処理装置の処理回路のプロセッサによる実現機能例を示す概略的なブロック図。
【
図3】被検体の状況と検査の状況とを説明するための図。
【
図4】X線診断装置が有する複数の機能の優先度の一例を示す説明図。
【
図5】X線診断装置のシステムがとりうる複数の運転モードの一例を示す説明図。
【
図6】(a)は特定機能により好ましいと特定された運転モードを通知するための通知画像の一例を示す説明図、(b)はユーザによる運転モード切り替えを受け付けるための設定受付画像の一例を示す説明図。
【
図7】
図1に示す医用情報処理装置の処理回路のプロセッサにより、X線診断装置のシステム外部の状況に応じて、システムの複数の運転モードから好ましい運転モードを特定して動的に切り替える際の手順の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、医用情報処理装置、X線診断装置、および医用情報処理プログラムの実施形態について詳細に説明する。
【0010】
(構成の概略)
図1は、実施形態に係る医用情報処理装置20を含む医用画像診断装置の一例を示す概念的な構成図である。また、
図2は、医用情報処理装置20の処理回路25のプロセッサによる実現機能例を示す概略的なブロック図である。
【0011】
医用情報処理装置20を含む医用画像診断装置は、被検体に対する治療手技において使用されるものである。この、被検体に対する治療手技において使用される医用画像診断装置としては、たとえばX線診断装置や超音波診断装置などを用いることができる。
【0012】
本実施形態では、医用画像診断装置の一例としてX線診断装置10を用いる場合の例を示した。また、X線診断装置10としては、X線アンギオ装置や、X線TV装置などを用いることができる。本実施形態では、X線診断装置10としてCアームを有するX線アンギオ装置を用いる場合の一例を示した(
図1参照)。しかしながら、X線診断装置10としてのX線アンギオ装置は、Cアームを有するシングルプレーンのX線アンギオ装置には限定されず、CアームとΩアームとを備えるバイプレーンタイプのX線アンギオ装置であってもよい。
【0013】
図1に示すように、被検体に対する治療手技において使用される医用画像診断装置の一例としてのX線診断装置10(X線アンギオ装置)は、撮影装置11、ディスプレイ12、コンソール13、および医用情報処理装置20を有する。
【0014】
撮影装置11は、ディスプレイ12およびコンソール13とともに検査室に設置され、被検体に関する画像データを生成する。医用情報処理装置20は、検査室に隣接する操作室に設置され、画像データにもとづくX線画像を生成して表示を行なう。なお、コンソール13は、たとえば検査室の床面上を移動自在なサテライトコンソールであってもよい。
【0015】
撮影装置11は、X線検出器14、X線発生器15、Cアーム16、および寝台装置17を有する。寝台装置17は、寝台18および天板19を有する。
【0016】
X線検出器14は、天板(たとえばカテーテルテーブルなど)19に支持された被検体を挟んでX線発生器15と対向配置されるようCアーム16の一端に設けられる。X線検出器14は、2次元に配列された複数のX線検出素子を有する平面検出器(FPD:Flat Panel Detector)により構成され、被検体を透過してX線検出器14に照射されたX線を検出し、この検出したX線にもとづいてX線撮影により生成した透視データや撮影データなどの画像データをコンソール13に与える。なお、X線検出器14は、イメージインテンシファイア、TVカメラなどを含むものであってもよいし、X線の入射量に応じた信号電荷を蓄積する半導体素子により構成されたX線検出素子を複数有するCMOS-FPDであってもよい。
【0017】
X線発生器15は、Cアーム16の他端に設けられ、X線管球やX線絞りを有する。X線絞りは、たとえば複数枚の鉛羽で構成されるX線可動絞りである。Cアーム16は、X線検出器14とX線発生器15とを一体として保持する。
【0018】
X線診断装置10がX線アンギオ装置として用いられる場合、X線診断装置10は、X線撮像系を2系統有するバイプレーン式であってもよい。バイプレーン式の場合、X線診断装置10は、床置き式Cアームを有するF(Frontal)側と、天井走行式Ωアームを有するL(Lateral)側の2方向からX線ビームを個別に照射させて、バイプレーン画像(F側画像およびL側画像)を取得することができる。
【0019】
寝台装置17の寝台18は、床面に設置され、天板19を有する。寝台18は、コンソール13により制御されて、天板19を水平方向、上下方向に移動させたり回転(ローリング)させたりする。
【0020】
ディスプレイ12は、1または複数の表示領域により構成され、コンソール13に制御されて、X線画像などを表示する。ディスプレイ12は、たとえば液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイなどの一般的な表示出力装置により構成される。ディスプレイ12は、たとえば天井レールに沿って移動可能なように、天井レールに台車を介して懸垂される。
【0021】
コンソール13は、入力インターフェースと、ディスプレイと、記憶回路と、プロセッサとを有する。入力インターフェースは、たとえばジョイスティックやトラックボール、トラックボールマウス、キーボード、タッチパネル、テンキー、音声入力回路、視線入力回路などの一般的なポインティングデバイスや、X線ばく射タイミングを指示するためのハンドスイッチなどにより構成され、ユーザの操作に対応した操作信号をプロセッサに与える。ディスプレイは、たとえば液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイなどの一般的な表示出力装置により構成され、プロセッサの制御に従って各種情報を表示する。コンソール13は医用情報処理装置20の機能を有してもよく、この場合、コンソール13は医用情報処理装置の一例である。
【0022】
記憶回路は、磁気的もしくは光学的記録媒体または半導体メモリなどの、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有し、これら記憶媒体内のプログラムおよびデータの一部または全部は電子ネットワークを介してダウンロードされるように構成してもよい。
【0023】
医用情報処理装置20は、入力インターフェース21、ディスプレイ22、記憶回路23、ネットワーク接続回路24および処理回路25を有する。医用情報処理装置20は、医用情報処理装置の一例である。
【0024】
入力インターフェース21は、たとえばジョイスティックやトラックボール、トラックボールマウス、キーボード、タッチパネル、テンキー、音声入力回路、視線入力回路などの一般的な入力装置により構成され、ユーザの操作に対応した操作入力信号を処理回路25に出力する。たとえば、ユーザは、入力インターフェース21を介して撮影プロトコルを設定することができるとともに、運転モードの切り替え指示をシステムに与えることができる。
【0025】
ディスプレイ22は、たとえば液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイなどの一般的な表示出力装置により構成される。ディスプレイ22は、X線画像(X線透視にもとづくX線透視画像やX線撮影にもとづくX線撮影画像)や、運転モード特定結果の通知画像などの各種画像を表示する。
【0026】
記憶回路23は、磁気的もしくは光学的記録媒体または半導体メモリなどの、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有し、これら記憶媒体内のプログラムおよびデータの一部または全部は電子ネットワークを介してダウンロードされるように構成してもよい。
【0027】
ネットワーク接続回路24は、たとえば所定のプリント回路基板を有するネットワークカードなどにより構成され、ネットワークの形態に応じた種々の情報通信用プロトコルを実装する。ネットワーク接続回路24は、この各種プロトコルに従って医用情報処理装置20と他の機器とを接続する。この接続には、電子ネットワークを介した電気的な接続などを適用することができる。ここで電子ネットワークとは、電気通信技術を利用した情報通信網全般を意味し、無線/有線の病院基幹LAN(Local Area Network)やインターネット網のほか、電話通信回線網、光ファイバ通信ネットワーク、ケーブル通信ネットワークおよび衛星通信ネットワークなどを含む。
【0028】
処理回路25は、記憶回路23に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、医用画像診断装置の一例としてのX線診断装置10のシステム外部の状況に応じて、システムの好ましい運転モードを特定するための処理を実行するプロセッサである。また、処理回路25は、X線診断装置10の各コンポーネントを統括制御する。
【0029】
処理回路25のプロセッサは、
図2に示すように、撮影制御機能31、画像生成機能32、外部情報取得機能33、特定機能34、設定機能35、および通知機能36を実現する。これらの各機能はそれぞれプログラムの形態で記憶回路23に記憶されている。なお、処理回路25の機能31-36の一部は、X線診断装置10にデータ送受信可能に接続された外部のプロセッサやコンソール13のプロセッサにより実現されてもよい。
【0030】
撮影制御機能31は、たとえば入力インターフェース21を介してユーザにより選択された撮影プロトコルに従って撮影装置11を制御することにより、被検体のX線撮像を制御する。撮影プロトコルは、所望の画像データの収集に係る一連の手順が定義されたものであり、撮影部位の情報や、X線発生器15に対して印加される管電流、管電圧を含む撮影条件などが含まれる。
【0031】
画像生成機能32は、X線撮像により得られた画像データにもとづいて、血管造影画像(アンギオ画像)などのX線画像を生成する。
【0032】
外部情報取得機能33は、被検体に対する治療手技において使用される医用画像診断装置のシステム外部の状況を示す情報を取得する。本実施形態では、X線診断装置10のシステム外部の状況を示す情報を取得する。以下の説明では、医用情報処理装置20が、システム外部の状況として被検体の状況と検査の状況とを扱う場合の例を示す。この場合、外部情報取得機能33は、被検体の検査の状況を示す情報を取得する。外部情報取得機能33はさらに、被検体の生体情報を検出する生体センサ40の出力信号を含む被検体の状況を示す情報を取得してもよい。外部情報取得機能33は、取得部の一例である。検査の状況を示す情報および被検体の状況を示す情報については、
図3を用いて後述する。
【0033】
特定機能34は、システム外部の状況にもとづいて、医用画像診断装置のシステムの好ましい運転モードを特定する。本実施形態では、特定機能34は、システム外部の状況にもとづいてX線診断装置10のシステムの好ましい運転モードを特定する。たとえば、特定機能34は、システム外部の状況にもとづいて、複数の運転モードからX線診断装置10のシステムの好ましい運転モードを特定するとよい。
【0034】
本実施形態では、特定機能34は、検査の状況を示す情報にもとづいて、複数の運転モードからX線診断装置10のシステムの好ましい運転モードを特定する場合の例について説明する。また、外部情報取得機能33がさらに被検体の状況を示す情報を取得する場合は、特定機能34は、さらに被検体の状況を示す情報にもとづいてシステムの好ましい運転モードを特定する。特定機能34は、特定部の一例である。システムの好ましい運転モードの特定方法については、
図4および
図5を用いて後述する。
【0035】
設定機能35は、特定機能34により好ましいと特定された運転モードで運転するよう、医用画像診断装置の運転モードを自動設定する。本実施形態では、設定機能35は、たとえば特定機能34によって複数の運転モードから好ましいと特定された運転モードで運転するよう、X線診断装置10の運転モードを自動設定する。設定機能35は、設定部の一例である。
【0036】
通知機能36は、特定機能34により好ましいと特定された運転モードを、当該運転モードをユーザに通知するための通知画像を生成してディスプレイ12や医用情報処理装置20のディスプレイに表示し、あるいは図示しないスピーカを介した音声出力することにより、ユーザに通知する。通知機能36は、通知部の一例である。好ましいと特定された運転モードの通知方法については、
図6を用いて後述する。
【0037】
(システム外部の状況)
図3は、被検体の状況と検査の状況とを説明するための図である。
【0038】
外部情報取得機能33は、システム外部の状況を示す情報を取得する。特定機能34は、システム外部の状況に応じて好ましい運転モードを特定し、運転モードを自動的に(ダイナミックに)切り替える。本実施形態では、上述の通り、医用情報処理装置20が、システム外部の状況として被検体の状況と検査の状況とを扱う場合の例を示す。
【0039】
生体センサ40は、被検体の生体情報に応じた信号を出力するセンサである。生体センサ40は、被検者の生体情報を検出し、検出した生体情報に応じた出力信号をリアルタイムに外部情報取得機能33に与える(
図2参照)。
【0040】
本実施形態では、生体センサ40が心電センサ41、呼吸センサ42、および血圧計43を有し、これらが被検体に取り付けられる場合の例を示した。この場合、心電センサ41が出力する心電センサ信号(ECG(Electro Cardio Gram)信号)、呼吸センサ42が出力する呼吸センサ信号、および血圧計43が出力する血圧信号は、処理回路25に与えられる。
【0041】
外部情報取得機能33は、心電センサ信号にもとづいて心拍および心波形の情報を取得する。また、外部情報取得機能33は、呼吸センサ信号から呼吸動の情報を、血圧信号から血圧の情報を、それぞれ取得する。生体情報は、被検体の状況を示す情報の一例である(
図3参照)。特定機能34は、これらの生体情報にもとづいて被検体の状況が容体確認の必要な状況であるか否かを特定することができる。容体確認の必要な状況は、透視や撮影が最優先されるべき状況であると考えられる。
【0042】
超音波診断装置50は、医用画像診断装置の一例としてのX線診断装置10の外部に設けられた他のモダリティ(他の医用画像診断装置)の一例である。X線診断装置10は、被検体の検査において他のモダリティとともに用いられることがある。本実施形態では、この種のモダリティとして超音波診断装置50を用い、他のモダリティが生成する医用画像が超音波画像(UL画像)である場合の例を示す。
【0043】
外部情報取得機能33は、医用画像診断装置の一例としてのX線診断装置10の外部装置である超音波診断装置50が生成する超音波画像(UL画像)をリアルタイムに取得する。超音波画像は、検査の状況を示す情報の一例である(
図3参照)。特定機能34は、超音波画像を解析することで、画像に含まれた穿刺針などのデバイスの有無により現在手技中なのか否か、手技のどの場面か、の情報を得ることができる。手技中は、透視や撮影が最優先されるべき状況であると考えられる。また、そもそもX線診断装置10と同じ検査室に設置された他のモダリティの医用画像が取得されていれば、検査中かつ手技中である、と特定されてもよい。
【0044】
また、医用情報処理装置20の入力インターフェース21やコンソール13の入力インターフェースが音声入力回路を有する場合は、外部情報取得機能33は、入力インターフェースの音声入力回路から、被検体の検査中に医師が補助者への指示のために発声した音声の音声データを取得する。音声データは、検査の状況を示す情報の一例である(
図3参照)。たとえば、医師が「ここでバルーンを拡張してください」との指示を行った場合、特定機能34は、当該指示の音声データに含まれる文字列を解析することで、現在手技中であり、かつバルーンの拡張を行っている場面であるとの情報を得ることができる。
【0045】
また、X線診断装置10が生成する血管造影画像(アンギオ画像)を解析することで、アンギオ画像に含まれたカテーテルやガイドワイヤ等のデバイスの有無により現在手技中なのか否か、手技のどの場面か、の情報を得ることができる。したがって、画像生成機能32が生成するアンギオ画像もまた、外部情報取得機能33が取得する検査の状況を示す情報の一例である(
図3参照)。
【0046】
このように、検査の状況を示す情報のうち、他の医用画像診断装置が生成する医用画像、音声データ、およびX線診断装置10が生成するアンギオ画像の少なくとも1つにもとづいて、ステント留置、バルーン拡張、造影撮影中など、手技の詳細な場面の情報を取得することができる。
【0047】
また、X線診断装置10がX線TV装置である場合は、内視鏡を使用した治療手技等においてX線診断装置10が生成するX線画像を解析してデバイスの位置や有無の情報を取得することで、手技の場面の情報を取得することができる。
【0048】
なお、上述の通り、医用情報処理装置20を含み被検体に対する治療手技において使用される医用画像診断装置として、X線診断装置10にかえて超音波診断装置を用いてもよい。医用画像診断装置として超音波診断装置を用いる場合、医用画像診断装置を使用して実行される治療手技としては、たとえば、冠動脈インターベンションや心臓弁に対する形成術、置換術などが挙げられる。具体的には、冠動脈インターベンションでは、血管内超音波カテーテル(IVUS:intravascular ultrasound)などが利用される。また、心臓弁に対する形成術、置換術では、経食道超音波プローブ(TEE:transesophageal echocardiography)などが利用される。
【0049】
図2に戻って、医用情報処理装置20は、画像サーバ101、HIS(病院情報システム、Hospital Information System)102などとネットワーク100を介して互いにデータ送受信可能に接続される。
【0050】
画像サーバ101は、たとえばPACS(Picture Archiving and Communication System:医用画像保管通信システム)に備えられる画像の長期保管用のサーバであり、たとえばX線診断装置10で生成されたアンギオ画像を、医用情報処理装置20から転送されて記憶する。
【0051】
HIS102は、電子カルテサーバを有する。電子カルテサーバは、被検体の氏名、性別、年齢、身長、体重などの被検体情報と、被検体に対して過去に行われた検査種別や検査部位などの検査情報とが含まれる電子カルテを記憶する。また、電子カルテサーバは、検査オーダを記憶し、当該検査オーダと各検査部門で作成された検査結果とを関連付けて記憶する。外部情報取得機能33は、HIS102から検査対象の被検体の電子カルテを取得することができる(
図2参照)。電子カルテの被検体情報は、被検体の状況を示す情報の一例である(
図3参照)。たとえば、同じ心拍数、同じ血圧数であっても、被検体の年齢や性別、既往歴等の被検体情報によって、被検体の容体確認が必要な状況か否かの判断結果は異なる。また、電子カルテの検査情報は、検査の状況を示す情報の一例である(
図3参照)。検査情報から、被検体の検査において手技が行われるか否かの情報を得ることができる。
【0052】
また、たとえばHIS102に属する診察室端末等で検査予約が発生して検査オーダが発行されると、検査オーダは、電子カルテサーバに記憶されるとともに、外部情報取得機能33に与えられる。検査オーダは、予約時間帯、被検体情報、および検査情報を含む。検査情報には、検査部位および検査目的が含まれる。X線診断装置10のユーザは、検査情報にもとづいて撮影プロトコルを選択して設定する。撮影プロトコルは、検査部位などの検査情報を含む。このため、設定された撮影プロトコルも、電子カルテと同様、検査の状況を示す情報の一例である(
図3参照)。
【0053】
このように、検査の状況を示す情報のうち、電子カルテや撮影プロトコルから取得される検査情報にもとづいて、被検体の検査において手技が行われるか否かを予測することができる。
【0054】
(好ましい運転モードの特定と運転モードの動的切り替え)
図4は、X線診断装置10が有する複数の機能の優先度の一例を示す説明図である。
【0055】
本実施形態では、優先度が最高の処理をX線撮像(透視および撮影)とする場合の例について説明する。
【0056】
Cアーム16を駆動し移動させる処理や、寝台装置17を駆動し天板19を移動させる処理など、撮影装置11のハードウェアの駆動による移動処理は、検査のために必要な処理である。したがって、撮影装置11のハードウェアを駆動する処理は、X線撮像に次ぐ優先度を与えられるとよい。
【0057】
アンギオ画像をコマ送り再生する処理や、アンギオ画像に含まれる注目箇所を計測する処理などの、アンギオ画像に対する処理は、検査中に手技の補助のために行われることがある。このため、アンギオ画像に対する処理は、X線撮像に次ぐ優先度を与えられるとよい。本実施形態では、アンギオ画像に対する処理が撮影装置11のハードウェアを駆動する処理に次ぐ優先度を与えられる場合の例について説明する。
【0058】
画像サーバ101へのアンギオ画像の転送処理(画像転送処理)は、検査中に行う必要性が低い処理である。このため、上述した3つの処理よりも低い優先度が与えられる。
【0059】
図5は、X線診断装置10のシステムがとりうる複数の運転モードの一例を示す説明図である。
図5には、X線診断装置10のシステムが「安全運転モード」、「ハードウェア優先運転モード」、「ポストプロセス優先運転モード」、および「通常運転モード」の4つの運転モードをとりうる場合の例を示したが、X線診断装置10のシステムがとりうる運転モードの数は5以上であってもよい。
【0060】
特定機能34は、システム外部の状況にもとづいて、すなわち本実施形態では検査の状況および被検体の状況にもとづいて、好ましい運転モードを特定する。たとえば、特定機能34は、これらの運転モードから最適の運転モードを特定するとよい。設定機能35は、特定機能34により最適と特定された運転モードで運転するよう、X線診断装置10の運転モードを動的に設定することができる。
【0061】
「安全運転モード」は、優先度が最高の処理を優先し、他の処理を制限する運転モードである。安全運転モードでは、手技に必要な処理以外の処理の全てを制限することが好ましい。本実施形態では、上述の通り、優先度が最高の処理はX線撮像である。
【0062】
「ハードウェア優先運転モード」は、X線撮像に加えてハードウェアを駆動する処理を優先し、他の処理を制限する運転モードである。
【0063】
「ポストプロセス優先運転モード」は、さらにアンギオ画像に対する処理を優先し、他の処理を制限する運転モードである。画像転送処理は、これらの3つの運転モードのいずれでも制限される。
【0064】
「通常運転モード」は、画像転送処理を含め、全ての処理を平等に並行処理する運転モードである。
【0065】
たとえば、手技中や、被検体の容体確認が必要なときは、他のどの機能よりもX線撮像が優先されることが好ましい。したがって、システム外部の状況からX線撮像が優先されるべき状況であると考えられる場合は、特定機能34は、X線撮像を安定して実行するために、他の機能の実行は制限されることが好ましい。
【0066】
この点、本実施形態に係る医用情報処理装置20は、X線撮像など優先度が最高の処理をシステム外部の状況に応じて優先し、他の機能の実行が制限される。このため、本実施形態に係る医用情報処理装置20によれば、システム外部の状況からX線撮像が優先されるべき状況であると考えられる場合に、他の機能を並行処理することによりシステムの負荷が上昇してしまうことによる弊害を未然に防ぐことができる。
【0067】
したがって、医用情報処理装置20によれば、医療シーンが重要な局面のときなどシステムの安定稼働の重要性が高まっているときは、一部の機能を犠牲にするようシステムの運転モードをダイナミックに切り替えることでシステムの安定性を高めることができる。
【0068】
また、医用情報処理装置20は、システム外部の状況に応じて、たとえば複数の運転モードから好ましい運転モードを特定して運転モードを動的に切り替えることができる。
【0069】
たとえば、被検体が検査受付を済ませるまでは、通常運転モードとしておく。被検体が検査受付を済ませた後、手技開始までの間は、素早い手技開始のためにハードウェア駆動を優先すべくハードウェア優先運転モードとするとよい。手技が開始されると安全運転とし、手技が中断されるとハードウェア駆動を許可するためハードウェア優先運転モードとするか、手技位置の確認を支援するためポストプロセス優先運転モードとするとよい。手技終了後、問診がある場合は、問診までの間の画像生成を促進するためにポストプロセス優先運転モードとするとよい。そして、検査が終了した後は再び、通常運転モードとするとよい。
【0070】
また、手技中ではなくても、被検体の状況の情報にもとづいて、被検体の容体確認が必要な場合は、容体確認のため撮影や透視を安全に実行できるよう、安全運転モードに切り替えることができる。
【0071】
このため、医用情報処理装置20によれば、検査の状況や被検体の状況などのシステム外部の状況に応じて、画像転送処理して問題ない場合は当然に画像転送が許容されるなど、状況に応じてシステムのリソースを各処理に適切に分配することができる。したがって、医用情報処理装置20によれば、状況に応じた適応的なシステムリソースの割り当てが可能であり、どのような状況でも、安定した稼働とユーザの利便性とを両立させることができる。
【0072】
なお、特定機能34は、システム外部の状況を示す情報にもとづいてシステム外部の状況を特定し、特定したシステム外部の状況から好ましい運転モードを特定してもよいし、システム外部の状況を示す情報(
図3参照)から、直接に好ましい運転モードを特定してもよい。
【0073】
また、いずれの場合にも、特定機能34は、システム外部の状況にもとづいて好ましい運転モードを特定する方法として、ルールベースの特定方法を用いてもよいし、時系列的な一連の手技の情報を入力されて好ましい運転モードを出力するよう再帰型ニューラルネットワーク(RNN、Recurrent Neural Network)を用いて構築された学習済みモデルを用いてもよい。ルールベースの特定方法を用いる場合であってシステム外部の状況を示す情報から直接に好ましい運転モードを特定する場合は、システム外部の状況を示す情報と複数の運転モードのそれぞれとを関連付けた情報を用いて好ましい運転モードを特定するとよい。
【0074】
なお、各運転モードにおいて「処理を制限する」とは、処理の実行禁止であってもよいし、処理の部分的な制限であってもよい。たとえば、画像転送処理を制限する場合は、実行禁止としてもよいし、転送速度の上限に制限を設ける、あるいは同時転送画像数に制限を設けるなどの部分的な制限であってもよい。また、警告画面の表示による制限を行ってもよい。たとえば安全運転中にアンギオ画像のコマ送り指示が入力されると、コマ送り処理の前に「手技中です。システムの負荷が上がりX線撮像に影響を及ぼすおそれがあります。コマ送りを実行しますか」と再考を促す警告画面を出し、それでもなおコマ送りが再度指示されたらコマ送り処理を許容してもよい。
【0075】
どのように制限するかの制限方法の情報は、あらかじめ運転モードごとに定められてもよい。また、ユーザによる制限方法の変更要求を受け付けてもよい。
【0076】
また、ユーザによる要求に応じて、制限されている処理を一時的に許可してもよい。たとえば、検査の状況を示す情報から手技中であると特定されて安全運転モードに自動的に遷移しているとき、ユーザが手技中にCアームの駆動を所望した場合は、ユーザによる要求に応じてCアームの駆動を許可してもよい。
【0077】
(運転モードの手動切り替え支援)
図6(a)は、特定機能34により好ましいと特定された運転モードを通知するための通知画像61の一例を示す説明図であり、(b)はユーザによる運転モード切り替えを受け付けるための設定受付画像62の一例を示す説明図である。
図6(a)には、通知画像61が特定機能34により最適と特定された運転モードを通知するための画像である場合の例を示した。
【0078】
通知機能36は、
図6(a)に示すように、特定機能34により好ましいと特定された運転モードを推奨モードとして通知するための通知画像61を生成してディスプレイ12や医用情報処理装置20のディスプレイに表示してもよい。この場合、設定機能35は、設定受付画像62を生成して、ディスプレイ12や医用情報処理装置20のディスプレイに表示するとよい。通知画像61を確認したユーザは、設定受付画像62を介して運転モードの設定を行う。設定機能35は、この指示に応じて運転モードを設定する。
【0079】
この場合、ユーザは、通知画像61を確認することにより、特定機能34により好ましいと特定された運転モードを容易に知ることができる。また、ユーザは、通知画像61を確認して、運転モードの設定指示を行うことができる。したがって、通知機能36によって、ユーザによる適切な運転モードの設定を支援することができる。
【0080】
また、通知機能36によるユーザ支援は、上述した動的な運転モード切り替え処理と同時に行ってもよい。この場合、特定機能34により好ましいと特定された運転モードが誤りであった場合やユーザの所望とは異なる場合に、ユーザは容易に所望の運転モードに切り替えることができる。この場合、ユーザが手動で運転モードを切り替えた後に、システム外部状況が変化した場合は、運転モードを自動的に切り替えて通知画像61を更新してもよいし、自動的に切り替えようとしている旨の画像とともにユーザの確認を受け付ける画像を表示し、ユーザの確認がない場合は動的な切り替えを行わずに、ユーザが手動で切り替えた運転モードを維持してもよい。
【0081】
また、特定機能34は、さらにシステム負荷状況と組み合わせて好ましい運転モード特定してもよい。たとえば、システム外部の状況を示す情報から、ハードウェア優先運転モードが相当と特定される場合であっても、システムの負荷が高いときは、安全運転に切り替えてもよい。
【0082】
(動作)
図7は、
図1に示す医用情報処理装置20の処理回路25のプロセッサにより、X線診断装置10のシステム外部の状況に応じて、システムの複数の運転モードから好ましい運転モードを特定して動的に切り替える際の手順の一例を示すフローチャートである。
図7において、Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。なお、
図7にはシステム外部の状況として被検体の状況と検査の状況とを扱う場合の手順の一例を示した。
【0083】
まず、ステップS1において、外部情報取得機能33は、検査の状況を示す情報を取得する。次に、ステップS2において、外部情報取得機能33は、被検体の状況を示す情報を取得する(
図3参照)。ステップS1とS2は、逆順に実行されてもよいし並行に実行されてもよい。
【0084】
次に、ステップS3において、特定機能34は、検査の状況を示す情報と被検体の状況を示す状況とにもとづいて、複数の運転モードからX線診断装置10のシステムの好ましい運転モードを特定する(
図4、
図5参照)。
【0085】
次に、ステップS4において、設定機能35は、特定機能34が最適と特定した運転モードが現在の運転モードと異なるか否かを判定する。特定機能34が最適と特定した運転モードが現在の運転モードと異なる場合は(ステップS4のYES)、設定機能35は、システムの運転モードを、ステップS3で特定機能34により最適と特定された運転モードに自動的に切り替えてステップS6に進む。一方、特定機能34が最適と特定した運転モードと現在の運転モードとが同じである場合は、運転モードを切り替えずにステップS6に進む。
【0086】
次に、ステップS6において、設定機能35は、一連の手順を終了すべきか否かを判定する。ユーザによる指示やシステムへのシャットダウン要求などにより一連の手順を終了すべき場合は、一連の手順は終了となる。一方、一連の手順を終了すべきでない場合は、ステップS1に戻り、システム外部の状況を示す情報をリアルタイムに取得することを繰り返す。
【0087】
以上の手順により、X線診断装置10のシステム外部の状況に応じて、システムの複数の運転モードから好ましい運転モードを特定して動的に切り替えることができる。
【0088】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、システム外部の状況に応じてシステムの好ましい運転モードを特定することができる。
【0089】
なお、上記実施形態において、「プロセッサ」という文言は、たとえば、専用または汎用のCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、または、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(たとえば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、およびフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサがたとえばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出して実行することにより、各種機能を実現する。また、プロセッサがたとえばASICである場合、記憶回路にプログラムを保存するかわりに、当該プログラムに相当する機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行するハードウェア処理により各種機能を実現する。あるいはまた、プロセッサは、ソフトウェア処理とハードウェア処理とを組み合わせて各種機能を実現することもできる。
【0090】
また、上記実施形態では処理回路の単一のプロセッサが各機能を実現する場合の例について示したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサが各機能を実現してもよい。また、プロセッサが複数設けられる場合、プログラムを記憶する記憶回路は、プロセッサごとに個別に設けられてもよいし、1つの記憶回路が全てのプロセッサの機能に対応するプログラムを一括して記憶してもよい。
【0091】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0092】
10 X線診断装置(医用画像診断装置)
16 Cアーム
17 寝台装置
20 医用情報処理装置
25 処理回路
31 撮影制御機能
32 画像生成機能
33 外部情報取得機能
34 特定機能
35 設定機能
36 通知機能
40 生体センサ
50 超音波診断装置(他の医用画像診断装置)
101 画像サーバ