(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】サーボモータ装置、制御方法
(51)【国際特許分類】
H02P 29/024 20160101AFI20240903BHJP
B25J 11/00 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
H02P29/024
B25J11/00 Z
(21)【出願番号】P 2020126614
(22)【出願日】2020-07-27
【審査請求日】2021-11-11
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000201814
【氏名又は名称】双葉電子工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】598163064
【氏名又は名称】学校法人千葉工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 翔太朗
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康之
(72)【発明者】
【氏名】河野 騰
(72)【発明者】
【氏名】蔵本 凌成
(72)【発明者】
【氏名】村松 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】古田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】清水 正晴
(72)【発明者】
【氏名】大和 秀彰
【合議体】
【審判長】林 毅
【審判官】脇岡 剛
【審判官】大塚 俊範
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-195862(JP,A)
【文献】特開2005-291738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P29/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットが備える複数の関節の各々に対応して前記ロボットに設けられる関節ユニットとしてのサーボモータ装置であって、
駆動力を発生させるモータ部と、
前記モータ部の回転を減速して出力する減速機と、
前記モータ部の動作に関する検出情報を取得する検出部と、
前記検出情報を用いて算出したパラメータの時系列における推移に基づいて推定される前記パラメータの推移を示す曲線を生成し、前記生成した曲線に基づい
て自身の寿命予測情報を算出する演算部と、を備える
サーボモータ装置。
【請求項2】
所定数値範囲ごとに設けられた格納領域に前記検出情報が記録されるメモリ部を備え、
前記メモリ部には、格納領域のうち前記所定数値範囲に対応する記録領域に前記検出情報が記録される
請求項1に記載のサーボモータ装置。
【請求項3】
前記メモリ部には、前記対応する記録領域に既に記録された値との間で平均化処理が施された前記検出情報が記録される
請求項2に記載のサーボモータ装置。
【請求項4】
前記演算部は、前記パラメータとしてトルク定数、慣性モーメント、粘性抵抗、静摩擦係数、重力影響係数、バックラッシ量、エネルギー効率、高周波振動係数、固有振動数、発熱係数、放熱係数、及び前記減速機の最大静止摩擦力の何れかの値を算出する
請求項1から請求項3の何れかに記載のサーボモータ装置。
【請求項5】
ロボットが備える複数の関節の各々に対応して前記ロボットに設けられる関節ユニットとしてのサーボモータ装置であって、駆動力を発生させるモータ部と前記モータ部の回転を減速して出力する減速機とを備える前記サーボモータ装置の制御方法であって、
前記モータ部の動作に関する検出情報を取得する処理と、
前記検出情報を用いて算出したパラメータの時系列における推移に基づいて推定される前記パラメータの推移を示す曲線を生成し、前記生成した曲線に基づいて自身の寿命予測情報を算出する処理と、を前記サーボモータ装置が実行する
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーボモータ装置、及びその制御方法の分野に関し、特にサーボモータ装置の寿命予測の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば協働ロボットなどにおいてサーボモータ装置が用いられている。
特許文献1では、協働ロボットの動作の異常を検知すると、異常を検知する前の協働ロボットの動作情報に基づいて故障したサーボモータ装置を特定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
協働ロボットなどに搭載されたサーボモータ装置は、長期間使用されることで製品寿命を迎え故障してしまう。
サーボモータ装置が故障すると、ユーザは交換用の新しいサーボモータ装置を手配したり、協働ロボットの納入業者にサーボモータ装置の交換作業をしてもらうことになるが、このとき新しいサーボモータ装置を手配してから交換が完了するまでの間、協働ロボットが作業できない時間(ダウンタイム)が生じてしまう。
このようなダウンタイムを短縮するためには、サーボモータ装置が寿命を迎えるまでの期間を予測し、交換準備を進めておく必要がある。
【0005】
そこで本発明は、サーボモータ装置の寿命を予測することで、サーボモータ装置の交換の際に生じるダウンタイムを短縮させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るサーボモータ装置は、ロボットが備える複数の関節の各々に対応して前記ロボットに設けられる関節ユニットとしてのサーボモータ装置であって、駆動力を発生させるモータ部と、前記モータ部の回転を減速して出力する減速機と、前記モータ部の動作に関する検出情報を取得する検出部と、前記検出情報を用いて算出したパラメータの時系列における推移に基づいて推定される前記パラメータの推移を示す曲線を生成し、前記生成した曲線に基づいて自身の寿命予測情報を算出する演算部と、を備える。
これにより、サーボモータ装置が寿命となる前に、ユーザにサーボモータ装置の交換タイミングを通知することが可能となる。また、サーボモータ装置を搭載するロボット装置等のメインコントローラ側でなく、サーボモータ装置において自身の寿命予測が行われる。
ここで検出情報を用いて算出されるパラメータは、例えばトルク定数、慣性モーメント、粘性抵抗、静摩擦係数、重力影響係数、バックラッシ量、エネルギー効率、高周波振動係数、固有振動数、発熱係数、放熱係数、及び減速機の最大静止摩擦力などである。
また寿命予測情報とは、直近の検出情報を取得した時点からサーボモータ装置が寿命を迎えると予測される時点までの期間(以下、余寿命期間とも表記する。)を示す情報である。
【0007】
上記した本発明に係るサーボモータ装置において、所定数値範囲ごとに設けられた格納領域に前記検出情報が記録されるメモリ部を備え、前記メモリ部には、格納領域のうち前記所定数値範囲に対応する記録領域に前記検出情報が記録されることが考えられる。
これにより、所定数値範囲に含まれる複数の検出情報がまとめて記録される。
【0008】
上記した本発明に係るサーボモータ装置において、前記メモリ部には、前記対応する記録領域に既に記録された値との間で平均化処理が施された前記検出情報が記録されることが考えられる。
これにより、記録される検出情報の値が、格納領域の所定数値範囲の中央で検出される値に近づく。
【0009】
本発明に係る制御方法は、駆動力を発生させるモータ部と、前記モータ部の回転を減速して出力する減速機と、を備えた、ロボットの関節を駆動するための関節ユニットとしてのサーボモータ装置の制御方法であって、前記モータ部の動作に関する検出情報を取得する処理と、前記検出情報を用いて算出したパラメータの時系列における変化に基づいて推定される前記パラメータの推移を示す曲線を生成し、前記生成した曲線に基づいて自身の寿命予測情報を算出する処理と、をサーボモータ装置が実行する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、サーボモータ装置の取り換えの際に生じるダウンタイムを短縮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態におけるサーボモータ装置の構成を示す図である。
【
図2】本実施の形態のメモリ部の格納領域の概念図である。
【
図3】本実施の形態の制御装置の実行する処理のフローチャートを示す図である。
【
図4】本実施の形態の制御装置の実行する処理のフローチャートを示す図である。
【
図5】本実施の形態の寿命予測情報の算出機能についての概念図である。
【
図6】本実施の形態のメモリ部の格納領域の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を次の順序で説明する。
<1.サーボモータ装置の構成>
<2.検出情報の記録処理例>
<3.寿命予測情報の算出処理例>
<4.まとめ及び変形例>
【0013】
本実施の形態について
図1から
図6を参照して説明する。図面は、説明にあたり必要と認められる要部及びその周辺の構成を抽出して示している。また図面は模式的なものであり、図面に記載された各構造の寸法、比率等は一例に過ぎない。従って、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲であれば設計などに応じて種々な変更が可能である。
【0014】
<1.サーボモータ装置の構成>
図1は、本実施の形態のサーボモータ装置1の構成例を示している。
サーボモータ装置1は、例えば人と同じ空間で作業を行う協働ロボットの関節を駆動するための関節ユニットとして、協働ロボットに搭載される。サーボモータ装置1は、例えば協働ロボットのメインコントローラからの制御信号や、サーボモータ装置1に記録されたプログラムに基づいて動作する。
【0015】
なお、サーボモータ装置1は、協働ロボット等の関節アームロボットの他にも多様なロボットに搭載することができる。サーボモータ装置1は、例えばサービスロボットやホームロボット等、具体的には移動ロボットや搭乗型ロボット、運搬ロボット、サーボモータ装置1を1又は複数組み合わせて動作する動作ユニット、開閉装置など、様々なロボットに搭載することができる。
【0016】
サーボモータ装置1は、制御装置2、モータ部3、減速機4、各種センサ類5、及びメモリ部6を有する。
【0017】
制御装置2は、例えばCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えたマイクロコンピュータを有して構成され、CPUがプログラムに従った処理を実行することで制御装置2の動作を制御する。
制御装置2は、動作制御部21、検出部22、記録制御部23、及び演算部24としての機能を有する。
【0018】
本実施の形態では、制御装置2の有する各種機能が一のCPUとして構成される例について説明する。なお、制御装置2の有する各種機能の一部又は全部が、それぞれ異なるCPUとして構成されていてもよい。この場合、各CPUがそれぞれの処理を並列に行うことで本実施の形態が実現される。
【0019】
制御装置2における動作制御部21は、サーボモータ装置1を構成する各種機器の動作制御を実行する。動作制御部21は、例えば所定の目標軌跡に応じてモータ部3や減速機4の動作制御を実行する。また動作制御部21は、各種センサ類5からの検出情報に基づいてモータ部3や減速機4の動作制御を実行する。
動作制御部21による制御信号は、図示しない制御装置2のインバータを介してモータ部3や減速機4に出力される。
【0020】
モータ部3は、動作制御部21からの制御信号に応じて駆動する。モータ部3が駆動することで、サーボモータ装置1における駆動対象Tgの動作が制御される。減速機4はモータ部3の回転を減速する。モータ部3及び減速機4はモータの回転軸と出力軸が一致しているギヤードモータである。
【0021】
モータ部3は、例えばブラシレスDC(Direct Current)モータである。なお、モータ部3はブラシレスDCモータに限られず様々なモータを適用することができる。例えばモータ部3は、ブラシ付きDCモータであってもよい。
モータ部3で発生した駆動力は、モータ部3の回転を減速させる減速機4を介して協働ロボットにおける駆動対象Tgに伝達される。
【0022】
制御装置2における検出部22は、モータ部3の動作に関する検出情報(以下、単に検出情報とも表記する。)を取得する。検出部22は、サーボモータ装置1に設けられた各種センサ類5からの検出情報を取得する。
【0023】
各種センサ類5は、例えば入力電圧センサ51、入力電流センサ52、出力電圧センサ53、出力電流センサ54、モータ出力軸エンコーダ55、減速機出力軸エンコーダ56、温度センサ57、及びIMU(Inertial Measurement Unit)58である。
【0024】
入力電圧センサ51は、電源VDDから制御装置2に入力される電圧を検出する。入力電圧センサ51は、電源VDDと制御装置2の間に設けられている。入力電圧センサ51は例えば1つ設けられる。
【0025】
入力電流センサ52は、電源VDDから制御装置2に入力される電流を検出する。入力電流センサ52は、電源VDDと制御装置2の間に設けられている。入力電流センサ52は例えば1つ設けられている。
【0026】
出力電圧センサ53は、検出情報として制御装置2からモータ部3に出力される電圧を検出する。また出力電圧センサ53は、モータ部3の回転中にインバータの駆動を切断することで逆起電力を検出情報として検出する。
【0027】
出力電圧センサ53は、制御装置2とモータ部3の間に設けられている。
モータ部3がブラシレスDCモータの場合、出力電圧センサ53は3つ設けられる。なお、出力電圧センサ53の個数はモータ部3の種別により異なり、例えばモータ部3がブラシ付きDCモータの場合、出力電圧センサ53を1つ設ければよい。
【0028】
出力電流センサ54は、制御装置2からモータ部3に出力される電流を検出情報として検出する。
出力電流センサ54は、制御装置2とモータ部3の間に設けられている。モータ部3がブラシレスDCモータの場合、出力電流センサ54は3つ設けられる。なお、出力電流センサ54の個数はモータ部3の種別により異なり、例えばモータ部3がブラシ付きDCモータの場合、出力電流センサ54を1つ設ければよい。
【0029】
モータ出力軸エンコーダ55は、検出情報としてモータ部3の出力軸(以下、モータ出力軸とも表記する。)の回転角度及び角速度を検出する。モータ出力軸エンコーダ55は、モータ出力軸に設けられている。
【0030】
減速機出力軸エンコーダ56は、検出情報として減速機4の出力軸(以下、減速機出力軸とも表記する。)の回転角度及び角速度を検出する。減速機出力軸エンコーダ56は、減速機出力軸に設けられている。
【0031】
温度センサ57は、モータ部3に設けられており、検出情報としてモータ部3の温度を検出する。
【0032】
IMU58は、搭載された加速度センサやジャイロセンサからサーボモータ装置1の対地角度を検出情報として検出する。IMU58をサーボモータ装置1に搭載することで、サーボモータ装置1の協働ロボットへの取り付け角度に関わらずサーボモータ装置1の対地角度を検出することができる。
またIMU58は、モータ部3の回転から生じるサーボモータ装置1の振動を検出情報として検出する。
【0033】
各種センサ類5は、上記のような検出情報をセンサごとに取得し、当該取得した検出情報を制御装置2に供給する。即ち、外部機器等をサーボモータ装置1に取り付けることなく、サーボモータ装置1に設けられた各種センサ類5により寿命予測に用いられる検出情報を取得することができる。
【0034】
制御装置2における記録制御部23は、検出部22が取得した検出情報をメモリ部6に記録させる。メモリ部6は、例えばRAMとして構成される。
なお、メモリ部6は、メモリカードや光ディスク、磁気テープ等のように着脱可能な記録メディアであってもよく、固定タイプのHDD(Hard Disk Drive)や半導体メモリモジュール等であってもよい。またメモリ部6は、制御装置2に設けられていてもよい。例えば制御装置2のRAMがメモリ部6として機能してもよい。
【0035】
メモリ部6には、検出情報を記録するための格納領域が、検出情報の種別に応じた多次元配列に設けられている。当該格納領域には、検出情報が所定数値範囲ごとに記録される。
【0036】
メモリ部6の格納領域は、例えば
図2に示すような二次元配列にて形成される。
図2では、例えば列をモータ軸の角加速度として約333rad/s
2ごとに分割し、行をモータ軸の角速度として約166rad/sごとに分割する。そして分割された各セルには、各セルの角加速度と角速度の所定数値範囲に対応する電流値が記録される。
このような手法により、各種センサ類5から取得した検出情報はメモリ部6に記録される。検出情報の記録手法の詳細については後述する。
なお、
図2では一例として二次元配列の例を示したが、メモリ部6の格納領域は、検出情報の数に応じて三次元配列以上の多次元配列として形成することもできる。
【0037】
制御装置2における演算部24は、各種センサ類5による検出情報をメモリ部6から取得する。演算部24は、取得した検出情報に基づいて、サーボモータ装置1の寿命予測に用いられる寿命予測用パラメータを算出(同定)する。
【0038】
寿命予測用パラメータは、例えばトルク定数、慣性モーメント、粘性抵抗、静摩擦係数、重力影響係数、バックラッシ量、エネルギー効率、高周波振動係数、固有振動数、発熱係数、放熱係数、及び減速機4の最大静止摩擦力などの物理量により示される値である。各種寿命予測用パラメータの算出手法の詳細については後述する。
【0039】
また演算部24は、算出した寿命予測用パラメータに基づいてサーボモータ装置1の寿命予測情報を算出する。
演算部24は、上記した寿命予測用パラメータに基づいてサーボモータ装置1の寿命予測情報を算出する。なお、演算部24は、上記した各種寿命予測用パラメータのうち、少なくとも1つの値を算出すればサーボモータ装置1の寿命予測を行うことができる。
【0040】
制御装置2は、例えば協働ロボットのメインコントローラに無線通信又は有線通信を介して算出した寿命予測情報を送信する。
メイコントローラは、制御装置2から受信した寿命予測情報に基づいて、サーボモータ装置1が製品寿命を迎える前に、そろそろサーボモータ装置1が寿命となること(交換推奨タイミングであること)をユーザが認識できるように提示させる。
【0041】
交換推奨タイミングからサーボモータ装置1の寿命までにはある程度の期間が設けられているため、交換推奨タイミングであることを確認したユーザは、交換対象となるサーボモータ装置1を手配するなどの交換準備を行う。これによりサーボモータ装置1の交換までの期間を確保することができるので、サーボモータ装置1が寿命を迎える前に代わりのサーボモータ装置1を用意することができる。これにより、サーボモータ装置1を取り換える際に生じうるダウンタイムを短縮することができる。
【0042】
<2.検出情報の記録処理例>
本実施の形態を実現するために制御装置2が実行する検出情報の記録処理例について
図3を参照して説明する。
【0043】
まずステップS101において、制御装置2は、上述した各種センサ類5から検出情報を取得する。各種センサ類5と取得する検出情報の対応関係は例えば以下の通りである。
・入力電圧センサ51 制御装置2に入力される電圧
・入力電流センサ52 制御装置2に入力される電流
・出力電圧センサ53 逆起電力、及びモータ部3に出力される電圧
・出力電流センサ54 モータ部3に出力される電流
・モータ出力軸エンコーダ55 モータ出力軸の回転角度及び角速度
・減速機出力軸エンコーダ56 減速機出力軸の回転角度及び角速度
・温度センサ57 モータ部3の温度
・IMU58 サーボモータ装置1の対地角度、及びサーボモータ装置1の振動
【0044】
次のステップS102において、制御装置2は、メモリ部6の格納領域における検出情報を記録するための記録領域を設定する。格納領域は、
図2に示すように所定数値範囲ごとに区切られた複数のセルを有している。制御装置2は、格納領域のうち、検出情報が含まれる所定数値範囲のセルを記録領域として設定する。
【0045】
続いてステップS103において、制御装置2は、設定した記録領域に記録されていた検出情報と、これから記録する検出情報とについて平均化処理を施す。
そしてステップS104において、制御装置2は、平均化処理を施した検出情報を記録領域に記録する。
【0046】
ステップS104の処理の後、制御装置2は
図3の処理を終了する。制御装置2は、
図3の処理を協働ロボットの動作中に繰り返し実行する。
以上により、メモリ部6に各種センサ類5による検出情報が記録される。
【0047】
<3.寿命予測情報の算出処理例>
本実施の形態を実現するために制御装置2が実行する寿命予測情報の算出処理例について
図4を参照して説明する。
【0048】
まずステップS201において、制御装置2は、各種センサ類5による検出情報をメモリ部6から取得する。そしてステップS202において、制御装置2は、取得した検出情報に基づいて、サーボモータ装置1の寿命予測に用いられる寿命予測用パラメータを算出(同定)する。
【0049】
寿命予測用パラメータは、例えばトルク定数、慣性モーメント、粘性抵抗、静摩擦係数、重力影響係数、バックラッシ量、エネルギー効率、高周波振動係数、固有振動数、発熱係数、放熱係数、及び減速機4の最大静止摩擦力などである。
以下、各パラメータの同定手法について説明する。
【0050】
(1)トルク定数
制御装置2は、出力電圧センサ53により検出した逆起電力と、モータ出力軸エンコーダ55により検出したモータ出力軸の角速度とを検出情報としてメモリ部6から取得する。制御装置2は、下記[式1]により値ω+を定義し、トルク定数を同定する。
【0051】
【0052】
上記[式1]における各記号の意味は以下の通りである。
・Vrms 逆起電力
・ω モータ出力軸の角速度
・kv 逆起電力定数
・kt トルク定数
【0053】
制御装置2は、複数の異なる角速度と逆起電力の測定データセットに基づき、疑似逆行列を用いることで逆起電力定数を同定する。逆起電力定数とトルク定数は同値となるため、制御装置2は、逆起電力定数を同定することでトルク定数を同定する。
なお、値ωについては、モータ出力軸の角速度の代わりに減速機出力軸エンコーダ56により検出された減速機出力軸の角速度を用いることができる。これによっても同様にトルク定数を同定することができる。
【0054】
(2)慣性モーメント、粘性抵抗、静摩擦係数、重力影響係数の同定
制御装置2は、出力電圧センサ53により検出した逆起電力と、出力電流センサ54により検出した電流と、モータ出力軸エンコーダ55により検出したモータ出力軸の回転角度及び角速度と、IMU58により検出したサーボモータ装置1の対地角度とを検出情報としてメモリ部6から取得する。
【0055】
また制御装置2は、上記[式1]によりトルク定数を同定する。
制御装置2は、下記[式2]を変形した[式3]に基づいて慣性モーメント、粘性抵抗、静摩擦係数、重力影響係数を同定する。
【0056】
【0057】
【0058】
上記[式2]及び[式3]における各記号の意味は以下の通りである。
・ω モータ出力軸の角速度
・kt トルク定数
・sign(ω) 角速度の値に対しその符号に応じて1、-1、0の何れかを返す関数
・θ モータ出力軸の対地角度
・J 慣性モーメント
・B 粘性抵抗
・C 静摩擦係数
・D,E 重力影響係数
・I モータ部3に流れる電流
【0059】
ここでモータ出力軸の対地角度は、モータ出力軸の回転角度とサーボモータ装置1の対地角度とを加算することで算出される。
また上記[式2]及び[式3]における(d/dt)ωは、モータ出力軸エンコーダ55で検出されるモータ出力軸の角速度の時間微分により算出される。なお、測定された角速度のノイズ成分を除去せずに微分すると(d/dt)ωの値が真値とかけ離れてしまう。そのため、制御装置2は、測定された角速度のデータを例えばSG(Savitzky Golay)法によるノイズ処理を行いながら微分する。
なお、値ωについては、モータ出力軸の角速度の代わりに減速機出力軸エンコーダ56により検出された減速機出力軸の角速度を用いることもできる。これによっても同様にトルク定数を同定することができる。このとき値θは、減速機出力軸の回転角度とサーボモータ装置1の対地角度とを加算することで算出される。
【0060】
値J,B,C,D,Eは、モータ部3固有のパラメータであり未知であるため、複数の測定データから下記[式4]によりこれらが同定される。
【0061】
【0062】
トルク定数の値ktは上記[式1]から既知であるため、制御装置2は、上記[式4]により値W,X,W+を定義し、値J,B,C,D,Eを同定する。
【0063】
(3)バックラッシ量
制御装置2は、モータ出力軸エンコーダ55により検出したモータ出力軸の回転角度と、減速機出力軸エンコーダ56により検出した減速機出力軸の回転角度とを検出情報としてメモリ部6から取得する。
制御装置2は、下記[式5]によりバックラッシ量を同定する。
【0064】
【0065】
上記[式5]における各記号の意味は以下の通りである。
・θL 減速機出力軸の回転角度
・θM モータ出力軸の回転角度
・jθ バックラッシ量
・n 減速比
回転角度の測定は複数の角度で行い、最小二乗法で一意の値に決定する。
【0066】
(4)エネルギー効率
ここでのエネルギー効率は、制御装置2のインバータ効率とモータ部3のモータ効率である。
まずインバータ効率の同定手法について説明する。
制御装置2は、インバータ効率を同定するにあたり、入力電圧センサ51により検出された制御装置2への入力電圧と、入力電流センサ52により検出された制御装置2への入力電流と、出力電圧センサ53により検出されたモータ部3への出力電圧と、出力電流センサ54により検出されたモータ部3への出力電流とを検出情報としてメモリ部6から取得する。
【0067】
制御装置2は、制御装置2への入力電圧及び入力電流からインバータ入力エネルギーを算出する。また制御装置2は、モータ部3ヘの出力電圧及び入力電流からインバータ出力エネルギーを算出する。
そして制御装置2は、下記[式6]により値W+
inを定義し、インバータ効率を同定する。なお、インバータ効率は出力値によって変化するため、制御装置2は、出力エネルギーが任意の値のときの入力エネルギーを複数回測定する。
【0068】
【0069】
上記[式6]における各記号の意味は以下の通りである。
・Win インバータ入力エネルギー
・Wout_inv インバータ出力エネルギー
・ηinv インバータ効率
【0070】
次にモータ効率の同定手法について説明する。
まず制御装置2は、下記[式7]によりモータ出力エネルギーを算出する。
【0071】
【0072】
上記[式7]における各記号の意味は以下の通りである。
・Wout モータ出力エネルギー
・Kt トルク定数
・I モータ部3に流れる電流
・ω モータ出力軸の角速度
トルク定数Ktは上記[式1]と同様の手法により算出される。
【0073】
またモータ入力エネルギーはインバータ出力エネルギーと同値であるため、制御装置2は、下記[式8]及び[式9]により値W+
in_motを定義し、モータ入力エネルギーを算出する。
【0074】
【0075】
上記[式8]における各記号の意味は以下の通りである。
・Wout モータ出力エネルギー
・Win_mot モータ入力エネルギー
モータ出力エネルギーの値Woutは、上記[式7]により算出される。
【0076】
制御装置2は、複数回測定したモータ出力エネルギーとモータ入力エネルギーを用いて、下記[式9]によりモータ効率を同定する。
【0077】
【0078】
上記[式9]における各記号の意味は以下の通りである。
・Wout モータ出力エネルギー
・Win_mot モータ入力エネルギー
・ηmot インバータ効率
モータ出力エネルギーの値Woutは、上記[式7]から算出される。またモータ入力エネルギーの値Win_motは、上記[式8]から算出される。
【0079】
(5)高周波振動係数、固有振動数
制御装置2は、高周波振動係数及び固有振動数を同定するにあたり、IMU58から検出されたサーボモータ装置1の振動情報を検出情報としてメモリ部6から取得する。
【0080】
制御装置2は、取得した振動情報についてFFT(Fast Fourier Transform)解析を行うことで、回転数に対しての振動周波数の高波長の振幅から、それぞれの高波長に対する振動係数(高波長振動係数)を同定する。
【0081】
また制御装置2は、モータ部3の回転数を変化させながら振動を測定することで、負荷を含めたサーボモータ装置1の固有振動数を推定する。
【0082】
(6)発熱係数、放熱係数
制御装置2は、モータ部3の発熱係数及び放熱係数を同定するにあたり、温度センサ57から検出されたモータ部3の温度を検出情報としてメモリ部6から取得する。
【0083】
モータ部3の発熱要因は、主にモータの銅損と鉄損、そして減速機4での摩擦による発熱である。そのため、発熱量を決定する要因は電流とモータの回転速度となる。またモータの鉄損のヒステリシス損と渦電流損は、コイルに流れる電流の周波数により変化し、当該コイルに流れる周波数はブラシレスDCモータ(モータ部3)においてはモータの回転数と比例する。従って、制御装置2は、下記[式10]により、モータ部3の発熱係数及び放熱係数を同定する。
【0084】
【0085】
上記[式10]における各記号の意味は以下の通りである。
・Tn 現在のモータ部3の温度
・Tn-1 前回検出されたモータ部3の温度
・T0 大気温度
・Ra モータの抵抗値
・Ke 渦電流損係数
・Ka 速度比例損失係数
・Kb モータ部3の放熱係数
ここでの大気温度は、モータが停止した状態で十分な時間が経過した後のモータ部3の温度である。また速度比例損失係数の値Kaは、摩擦による損失とヒステリシス損とを加算した値である。
なお、摩擦による発熱が支配的である場合には、上記[式10]において値Ke,値Kbの項のみでも近似することができる。また同様に使用領域の回転数が低く電流による発熱が支配的である場合には、値Ra,値Kbの項のみで近似することができる。
【0086】
(7)減速機4の最大静止摩擦力
制御装置2は、出力電流センサ54、減速機出力軸エンコーダ56、温度センサ57、IMU58などからの検出情報を取得する。なお、制御装置2は、減速機出力軸エンコーダ56の代わりにモータ出力軸エンコーダ55からの検出情報を取得してもよい。
【0087】
制御装置2は、モータ部3に出力する電流(モータ電流)を慣性の影響を無視できるほど穏やかに「0」の値から上昇させる。そして制御装置2は、減速機出力軸エンコーダ56が回転し始めるまでモータ電流を上昇させる。このとき制御装置2は、減速機出力軸エンコーダ56の回転の開始時のモータ電流値を出力電流センサ54から取得し、メモリ部6に記録させる。
制御装置2は、上記の一連の処理を複数の減速機出力軸の位置で、出力軸の正転方向及び逆転方向の両方向で実行し、出力軸の角度θごとにおけるモータ電流値を取得し、メモリ部6に記録させる。
【0088】
制御装置2は、下記[式11]により、減速機4の最大静止摩擦力を同定する。このとき制御装置2は、減速機4の最大静止摩擦力を同定するにあたり、メモリ部6に記録された角度θ、電流値やトルク定数を用いる。なお、トルク定数は、例えば上記[式1]から同定される。
【0089】
【0090】
上記[式11]における各記号の意味は以下の通りである。
・τsmax 最大静止摩擦力
・τmot 回転開始時のモータトルク
・τg 偏心負荷により発生した鉛直下向きの力
【0091】
以上の手法により、制御装置2はステップS202において、各種の寿命予測用パラメータを同定する。なお、制御装置2は、各種寿命予測用パラメータの全てを同定してもよいし、任意の一部のパラメータのみを同定することとしてもよい。何れの寿命予測用パラメータを同定するかは、あらかじめ任意に設定することができる。
【0092】
続いてステップS203において、制御装置2は、算出(同定)した寿命予測用パラメータの時系列における推移に基づいて近似曲線を生成する。そしてステップS204において、制御装置2は、生成した近似曲線に基づいて自身の寿命予測情報を算出する。
制御装置2は、同定した寿命予測用パラメータごとに、近似曲線を生成し、寿命予測情報を算出する。
【0093】
図5は寿命予測情報の算出機能についての概念図である。
図5に示すグラフは、右方向に進行する時間軸を横軸と、寿命予測用パラメータの値を縦軸として示している。
【0094】
まず制御装置2は、ステップS202で同定した寿命予測用パラメータを時系列ごとにマッピングする(データD1,D2,D3,・・・Dn)。ここでデータDnは同定された直近(最新)の寿命予測用パラメータである。
【0095】
制御装置2は、マッピングされた寿命予測用パラメータ(データD1から最新データDnまでのパラメータ)の推移から将来の寿命予測用パラメータの推移を推定した近似曲線を生成する。
【0096】
制御装置2は、最新データDnをマッピングした時点から、生成した近似曲線とサーボモータ装置1の寿命を示す寿命閾値thとの交わる時点までの余寿命期間RTを寿命予測情報として算出する。
【0097】
マッピングされた各寿命予測用パラメータには、同定の際に生じる誤差が含まれている。そのため制御装置2は、当該誤差を考慮した近似曲線AC1,AC2を生成する。
このとき近似曲線AC1が寿命閾値thとの交わる時点から、近似曲線AC2が寿命閾値thと交わる時点までの範囲を誤差範囲ERとする。この場合において、近似曲線AC1と近似曲線AC2の中央値となる近似曲線AC3に基づく寿命期間RTの確度が最も高い。しかしながら、寿命予測用パラメータの同定の際に生じる誤差を考慮すると、誤差範囲ERを含めて寿命予測情報を算出することが望ましい。
なお、近似曲線の次数等は、同定した寿命予測用パラメータの推移に近似するものに任意に設計される。
【0098】
以上より、近似曲線の推移に基づいて寿命予測情報を算出することで、機械学習を用いた寿命予測の手法と比べて開発段階で取得する必要があるデータ量を削減することができる。
【0099】
ステップS204の処理の後、制御装置2は
図4の処理を終了する。制御装置2は、
図3の処理を協働ロボットの動作中に繰り返し実行する。
なお、制御装置2は、
図4の処理を協働ロボットの作業中に実行してもよいし、協働ロボットの主電源をオンにした際の暖機運転などの準備運動期間中に当該処理を実行することとしてもよい。
【0100】
また制御装置2は、検出情報の記録処理(
図3)と寿命予測用パラメータの算出処理(
図4)を異なるタイミングで実行することができる。例えば制御装置2は、協働ロボットの作業中に検出情報の記録処理を実行し、協働ロボットの作業終了後や暖機運転などの準備運動期間中に寿命予測用パラメータの算出処理を実行することができる。また制御装置2は、検出情報の記録処理と寿命予測用パラメータの算出処理を例えば協働ロボットの動作中などに連続して実行することとしてもよい。
以上により、サーボモータ装置1の寿命予測時間(余寿命期間RT)が算出される。
【0101】
<4.まとめ及び変形例>
以上の実施の形態の駆動力を発生させるモータ部3と、モータ部3の回転を減速して出力する減速機4と、を備えるサーボモータ装置1において、制御装置2は、モータ部3の動作に関する検出情報を取得する検出部22と、当該検出情報を用いて算出した寿命予測用パラメータの時系列における推移に基づいて近似曲線を生成し、当該生成した近似曲線に基づいて自身の寿命予測情報(余寿命期間RT)を算出する演算部24と、を備える(
図4、
図5等参照)。
これにより、サーボモータ装置1が寿命となる前に、ユーザにサーボモータ装置1の交換タイミングを通知することが可能となる。
従って、ユーザは、交換タイミングを考慮してサーボモータ装置1の補修計画を設計することが可能となり、寿命となる前にあらかじめ交換用のサーボモータ装置1を手配することができるようになる。その結果、サーボモータ装置1の取り換えの際に生じるダウンタイムを短縮させることができる。
また、近似曲線の推移に基づいて寿命予測情報を算出することで、機械学習を使用した寿命予測と比べて、開発段階で取得する必要があるデータ量を削減することができる。
【0102】
また、サーボモータ装置1を搭載する協働ロボットのメインコントローラ側でなく、サーボモータ装置1側において自身の寿命予測が行われる。
これにより、協働ロボットのメインコントローラ側の処理負担を軽減することができる。これは、例えば協働ロボットの関節ユニットとして、複数のサーボモータ装置1が取り付けられているときなどに特に有効である。
【0103】
本実施の形態のサーボモータ装置1において、制御装置2は、例えばトルク定数、慣性モーメント、粘性抵抗、静摩擦係数、重力影響係数、バックラッシ量、エネルギー効率、高周波振動係数、固有振動数、発熱係数、放熱係数、及び減速機4の最大静止摩擦力の何れかの値を寿命予測用パラメータとして算出(同定)する(
図4のS202等参照)。
【0104】
例えば、モータ部3や減速機4の動作制御を実行する際に用いられるトルク定数、慣性モーメント、粘性抵抗、静摩擦係数、重力影響係数を寿命予測用パラメータとしても利用することで、動作制御処理と寿命予測情報算出処理の処理効率を向上させることができる。
またエネルギー効率としてインバータ効率を同定することで、制御装置2のインバータの劣化度合いも推定することができる。
【0105】
本実施の形態のサーボモータ装置1は、所定数値範囲ごとに設けられた格納領域に検出情報が記録されるメモリ部6を備え、メモリ部6には、格納領域のうち所定数値範囲に対応する記録領域に検出情報が記録される(
図2、
図3のS102等参照)。
これにより、所定数値範囲に含まれる複数の検出情報がまとめて記録される。
従って、メモリ部6に記録されるデータ量を削減することができる。また、上記のように格納領域に検出情報を記録することで、測定した検出情報が既に記録してあるデータであるかを素早く判別することができ、多様な検出情報を最大データ数が決まった状態で記録することができる。
【0106】
なお、本実施の形態では、
図2に示した格納領域の一例においては、列をモータ軸の角加速度として約333rad/s
2ごとに、行をモータ軸の角速度として約166rad/sごとに、均等間隔により分割するものとしたが、格納領域の分割手法は必ずしも均等に限られない。
例えば、格納領域の配列の中央付近では、モータ軸の角加速度を約333rad/s
2よりも細分化して約222rad/s
2ごとに分割するものとしてもよい。このように、測定する検出情報の特徴に応じて柔軟に格納領域の分割間隔を設定することができる。
【0107】
本実施の形態のサーボモータ装置1において、メモリ部6には、格納領域のうち所定数値範囲に対応する記録領域に既に記録された値との間で平均化処理が施された検出情報が記録される(
図2、
図3のS103等参照)。
これにより、記録される検出情報の値が、格納領域の分割間隔の中央で検出される値に近づく。
従って、メモリ部6から取得される検出情報の質の向上を図ることができる。
【0108】
またサーボモータ装置1におけるメモリ部6は、格納領域のうち所定数値範囲に対応する記録領域に、該当する検出情報のデータ数がそれぞれ記録される多次元配列であってもよい。
【0109】
メモリ部6の格納領域は、例えば
図6に示すような二次元配列にて形成される。
図6では、例えば列をモータ軸の角加速度として約333rad/s
2ごとに分割し、行をモータ軸の角速度として約166rad/sごとに分割する。そして分割された各セル(記録領域)に、各セルの角加速度と角速度の所定数値範囲に該当した検出情報のデータ数が記録される。
【0110】
例えば
図6では、モータ軸の角加速度が-1000~-667rad/s
2、かつモータ軸の角速度が-500~-334rad/sに該当した検出情報のデータ数が2回として記録されている。ここでは、モータ軸の角加速度が1~333rad/s
2、かつモータ軸の角速度が1~166rad/sの記録領域が、該当したデータ数が18回であり最頻値とされる。
【0111】
メモリ部6に記録された各記録領域の該当データ数を取得することで、制御装置2は、最頻値の座標、標準偏差、相関係数、共分散などを算出することができる。このようにして算出された同一動作時、又は十分な回数のデータを取得したときの最頻値の座標、標準偏差、相関係数、共分散などの推移を観測することが可能となり、当該観測結果に基づいて他の寿命予測用パラメータと同様に寿命を予測することができる。
【0112】
なお、メモリ部6において、例えば三次元配列に格納されたデータ群を二次元平面的に解析する際に、制御装置2は、三次元配列のそれぞれの平面に平行に解析することも、平面に対して斜めに定義した平面で解析することもできる。
【0113】
本実施の形態におけるサーボモータ装置1の制御方法は、駆動力を発生させるモータ部3と、モータ部3の回転を減速して出力する減速機器4と、を備えるサーボモータ装置1の制御方法であって、モータ部3の動作に関する検出情報を取得する処理と当該記検出情報を用いて算出した寿命予測用パラメータの時系列における推移に基づいて近似曲線を生成し、当該生成した近似曲線に基づいて自身の寿命予測情報(余寿命期間RT)を算出する処理と、をサーボモータ装置1が実行する。
このような実施の形態としての制御方法によっても上記した実施の形態としてのサーボモータ装置1と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0114】
最後に、本開示に記載された効果は例示であって限定されるものではなく、他の効果を奏するものであってもよいし、本開示に記載された効果の一部を奏するものであってもよい。
また本開示に記載された実施の形態はあくまでも一例であり、本発明の技術的範囲が上述の実施の形態に限定されることはない。従って、上述した実施の形態以外であっても本発明の技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計などに応じて種々の変更が可能なことはもちろんである。なお、実施の形態で説明されている構成の組み合わせの全てが課題の解決に必須であるとは限らない。
【符号の説明】
【0115】
1 サーボモータ装置
2 制御装置
3 モータ部
4 減速機
5 各種センサ類
6 メモリ部
21 動作制御部
22 検出部
23 記録制御部
24 演算部
51 入力電圧センサ
52 入力電流センサ
53 出力電圧センサ
54 出力電流センサ
55 モータ出力軸エンコーダ
56 減速機出力軸エンコーダ
57 温度センサ