(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】低酸素空気供給装置及びトレーニング装置
(51)【国際特許分類】
A63B 23/18 20060101AFI20240903BHJP
A63B 26/00 20060101ALI20240903BHJP
B01D 53/22 20060101ALI20240903BHJP
B01F 23/10 20220101ALI20240903BHJP
B01F 35/213 20220101ALI20240903BHJP
B01F 35/82 20220101ALI20240903BHJP
E04H 3/14 20060101ALI20240903BHJP
F17D 3/01 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
A63B23/18
A63B26/00
B01D53/22
B01F23/10
B01F35/213
B01F35/82
E04H3/14 Z
F17D3/01
(21)【出願番号】P 2020138504
(22)【出願日】2020-08-19
【審査請求日】2022-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】嶋 寿泰
(72)【発明者】
【氏名】乾 剛之
(72)【発明者】
【氏名】仙波 瑞妃
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 治樹
【審査官】遠藤 孝徳
(56)【参考文献】
【文献】特許第3245387(JP,B2)
【文献】特開2004-65376(JP,A)
【文献】特開2018-29750(JP,A)
【文献】特許第4721150(JP,B2)
【文献】特許第3455751(JP,B2)
【文献】特許第3903115(JP,B2)
【文献】特公平4-28642(JP,B2)
【文献】特許第5991875(JP,B2)
【文献】特開2019-48259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 23/00 - 23/20
A63B 26/00
B01D 53/22
B01F 23/00 - 23/80
B01F 35/00 - 35/95
E04H 3/00 - 3/30
F17D 3/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料空気よりも酸素濃度が低い低酸素空気を供給する低酸素空気供給装置であって、
特殊空気生成装置を有し、
前記特殊空気生成装置は、窒素と酸素とを分離可能な気体分離部材を有するものであって、空気導入口と、第1排出部と、第2排出部を有し、前記空気導入口から原料空気が導入され、前記第1排出部から前記原料空気よりも酸素濃度が低い低酸素原料空気が排出され、前記第2排出部から前記原料空気よりも酸素濃度が高い高酸素原料空気が排出されるものであり、
前記第1排出部から排出された前記低酸素原料空気と
前記第2排出部から排出された前記高酸素原料空気を混合して、前記原料空気よりも酸素濃度が低い低酸素混合空気を生成する混合部と、
前記第2排出部から排出された前記高酸素原料空気のうち余剰の高酸素原料空気を系外に排気する排気部と、
前記低酸素原料空気の酸素濃度、窒素濃度、圧力、又は流量のいずれかを検知する検知手段と、
第1群のいずれかの位置に設けられた流量制御手段と、
前記検知手段の検出値に基づき、前記流量制御手段を制御する制御手段と、を有することを特徴とする低酸素空気供給装置。
第1群
(1)前記第2排出部から前記排気部までの間。
(2)前記第2排出部から前記混合部までの間。
(3)前記混合部から前記低酸素空気の供給先までの間。
【請求項2】
原料空気よりも酸素濃度が低い低酸素空気を供給する低酸素空気供給装置であって、
特殊空気生成装置を有し、
前記特殊空気生成装置は、窒素と酸素とを分離可能な気体分離部材を有するものであって、空気導入口と、第1排出部と、第2排出部を有し、前記空気導入口から原料空気が導入され、前記第1排出部から前記原料空気よりも酸素濃度が低い低酸素原料空気が排出され、前記第2排出部から前記原料空気よりも酸素濃度が高い高酸素原料空気が排出されるものであり、
前記第1排出部から排出された前記低酸素原料空気と
前記第2排出部から排出された前記高酸素原料空気を混合して、前記原料空気よりも酸素濃度が低い低酸素混合空気を生成する混合部と、
前記第2排出部から排出された前記高酸素原料空気のうち余剰の高酸素原料空気を系外に排気する排気部と、
前記低酸素原料空気の窒素濃度又は圧力を検知する検知手段と、
前記第1排出部から前記混合部までの間に設けられた流量制御手段と、
前記検知手段の検出値に基づき、前記流量制御手段を制御する制御手段と、を有することを特徴とする低酸素空気供給装置。
【請求項3】
前記検知手段は、前記第1排出部から前記混合部に至るまでの間に設けられた酸素濃度検知手段であることを特徴とする請求項1に記載の低酸素空気供給装置。
【請求項4】
前記第2排出部から前記混合部に至る高酸素空気流路と、
前記高酸素空気流路から分岐されて前記排気部に至る排気路を有し、
前記流量制御手段は、前記排気路に設けられていることを特徴とする請求項1又は3に記載の低酸素空気供給装置。
【請求項5】
前記第2排出部から前記混合部に至る高酸素空気流路と、
前記高酸素空気流路を分岐する分岐部と、
前記分岐部で分岐されて前記排気部に至る排気路を有し、
前記流量制御手段は、前記第2排出部と前記分岐部の間に設けられていることを特徴とする請求項1又は3に記載の低酸素空気供給装置。
【請求項6】
前記低酸素原料空気に混合される前記高酸素原料空気の量を制御する混入流量制御手段を有し、
前記流量制御手段の開度と前記混入流量制御手段の開度が関連付けて制御されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の低酸素空気供給装置。
【請求項7】
前記低酸素原料空気に混合される前記高酸素原料空気の量を制御する混入流量制御手段を有し、
前記混入流量制御手段は、前記混合部以降の流路の酸素濃度に基づき制御されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の低酸素空気供給装置。
【請求項8】
人が内部で運動可能なトレーニングルームと、請求項1乃至7のいずれかに記載の低酸素空気供給装置を有し、前記トレーニングルーム内を前記原料空気よりも酸素濃度が低い低酸素環境にすることが可能であることを特徴とするトレーニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気を原料とし、外気よりも酸素濃度が低い低酸素空気を生成し、当該低酸素空気を他の機器に供給する低酸素空気供給装置に関するものである。また本発明は、模擬的な高地トレーニングを行うことができるトレーニング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常の室内環境や通常の屋外環境とは異なる環境を人工的に作り、その環境下でトレーニングを行うトレーニング装置が知られている。例えば高地を模した低酸素環境を創成し、その中でトレーニングを行うことによって持久力増強や心肺機能の向上を図る。
特許文献1に開示された低酸素ルームは、人工的に作り出した低酸素環境下でトレーニングを行うことができるものである。
【0003】
また特許文献2には高酸素濃度の第1特殊環境室と、低酸素濃度の第2特殊環境室を備えた空気供給装置が開示されている。
特許文献2の
図4には、一つの特殊環境室内を高酸素濃度の環境と低酸素濃度の環境に切り換える構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4721150号公報
【文献】特開2018-29750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トレーニングルーム内を低酸素環境にする方策として、例えば高分子分離膜方式の原料空気生成装置を使用する方法がある。高分子分離膜方式の原料空気生成装置は、窒素ガスを生成する装置として使用されることが多い装置であり、コンプレッサー等で空気を加圧し、当該加圧した空気を導入することによって酸素を分離し、外気に比べて窒素の割合が高い気体を生成するものである。
ここで原料空気生成装置によって生成される低酸素空気は、高地トレーニング用としては酸素濃度が低すぎることがあり、外気を混入して酸素濃度を調整した上でトレーニングルームに供給する場合がある。
【0006】
酸素濃度を調整する方策として、
図9に示す配管系統図の方法と、
図10に示す配管系統図の方法が考えられる。
図9に示す方策は、別途の送風機等で外気を取り込み、原料空気生成装置で生成される低酸素空気(以下、低酸素原料空気と称する場合がある)に外気を混入する方法である。
【0007】
図10に示す方策は、エアーコンプレッサーで加圧して原料空気生成装置に導入する流路を分岐し、原料空気生成装置で生成される低酸素原料空気に前記分岐流路を流れる空気を混入する方法である。即ち
図10に示す方策は、コンプレッサーで加圧後の空気を分岐し、原料空気生成装置の二次側流路に導入するものである。
【0008】
前者の別途の送風機を使用する方策は、エアーコンプレッサーとは別に送風機を設置する必要がある。また当該方策は、外気を取り込むダクト配管が必須である。
そのためこの方策では、トレーニングルームを含むシステムが大型になることが多い。
【0009】
後者の原料空気生成装置の一次側流路を分岐して原料空気生成装置の二次側に空気を流す方策は、原料空気生成装置に導入する空気と二次側に導入する空気の双方を一台のエアーコンプレッサーで供給するので、エアーコンプレッサーの負担が大きくなることがある。
そのため大型のエアーコンプレッサーを採用しなければならず、トレーニングルームを含むシステムが大型になる場合がある。
【0010】
なお特許文献2に開示された空気供給装置では、後者の原料空気生成装置に導入する一次側流路を分岐して原料空気生成装置の二次側に空気を流す方策が採用されている。
特許文献2の
図4に開示された空気供給装置では、特殊環境室内を低酸素濃度にする場合、原料空気生成装置の二次側に一次側流路から分岐した外気が導入される。
特許文献2の空気供給装置では、特殊環境室内に低酸素原料空気と、原料空気生成装置で生成された酸素濃度が高い高酸素空気(以下、高酸素原料空気と称する場合がある)が同時に供給されることはない。
【0011】
本発明は、従来技術の上記した点に注目し、従来に比べて小型化が可能な低酸素空気供給装置を提供することを課題とするものである。
また本発明は、従来技術に比べてトレーニングルームに付属する低酸素空気供給装置を小型化することが可能なトレーニング装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本出願人らは、窒素と酸素とを分離可能な気体分離膜を使用して、低酸素空気を製造することとした。
即ち、気体分離膜に空気を導入して当該空気よりも酸素濃度が低い低酸素原料空気と、前記空気よりも酸素濃度が高い高酸素原料空気を調製し、低酸素原料空気に高酸素原料空気を混ぜて、所望の低酸素空気を生成することとした。
本発明者らは、この構想に基づいて低酸素空気供給装置を試作したところ、低酸素空気の酸素濃度を安定して制御することが困難な場合があるという課題に直面した。
【0013】
上記した課題を解決するための態様は、原料空気よりも酸素濃度が低い低酸素空気を供給する低酸素空気供給装置であって、特殊空気生成装置を有し、前記特殊空気生成装置は、窒素と酸素とを分離可能な気体分離部材を有するものであって、空気導入口と、第1排出部と、第2排出部を有し、前記空気導入口から原料空気が導入され、前記第1排出部から前記原料空気よりも酸素濃度が低い低酸素原料空気が排出され、前記第2排出部から前記原料空気よりも酸素濃度が高い高酸素原料空気が排出されるものであり、前記低酸素原料空気と前記高酸素原料空気を混合して、前記原料空気よりも酸素濃度が低い低酸素混合空気を生成する混合部と、余剰の高酸素原料空気を系外に排気する排気部と、前記低酸素原料空気の酸素濃度、窒素濃度、圧力、又は流量のいずれかを検知する検知手段と、第1群のいずれかの位置に設けられた流量制御手段と、前記検知手段の検出値に基づき、前記流量制御手段を制御する制御手段と、を有することを特徴とする低酸素空気供給装置である。
第1群
(1)前記第2排出部から前記排気部までの間。
(2)前記第2排出部から前記混合部までの間。
(3)前記混合部から前記低酸素空気の供給先までの間。
(4)前記第1排出部から前記混合部までの間。
【0014】
「前記第2排出部から前記排気部までの間」には、「排気部」の位置が含まれる。即ち、排気部に流量制御手段が設けられていてもよい。
「検知手段の検出値に基づき、前記流量制御手段を制御する」具体的方策として、例えば、検知手段の検出値が一定の範囲となる様に、流量制御手段を制御することが考えられる。
「検知手段の検出値が一定の範囲となる様に」とは、目標値に幅を持たせてもよいという意味であり、幅の無い目標値を否定するものではない。例えば、検知手段の検出値が特定の値となる様に流量制御手段が制御されるものであってもよい。
また、低酸素原料空気の窒素濃度、圧力、又は流量に基づいて、低酸素原料空気の酸素濃度を演算等により求め、この値が所定の範囲となる様に、流量制御手段が制御されるものであってもよい。
同様に、低酸素原料空気の酸素濃度に基づいて、低酸素原料空気の窒素濃度、圧力、又は流量を演算等により求め、この値が所定の範囲となる様に、流量制御手段が制御されるものであってもよい。
「この値が所定の範囲となる様に」とは、目標値に幅を持たせてもよいという意味であり、幅の無い目標値を否定するものではない。
本態様の低酸素空気供給装置は、特殊空気生成装置で生成された低酸素原料空気に、同じく特殊空気生成装置で生成された高酸素原料空気を混合して、酸素濃度を調節する。
そのため、特殊空気生成装置に原料たる空気を供給するエアーコンプレッサー等の上流側装置の負担が小さく、当該上流側装置を小型化することができる。
また本態様の低酸素空気供給装置では、特殊空気生成装置に原料空気を供給する装置の他に、送風機やエアーコンプレッサー等を設ける必要がない。
そのため、本態様の低酸素空気供給装置は、従来のものに比べて小型化することが可能である。
また本態様の低酸素空気供給装置によって生成された低酸素空気は、酸素濃度が安定する。
本発明者らは、低酸素空気の酸素濃度を安定させるための前提として、低酸素原料空気の酸素濃度を安定させることが必要であると考え、低酸素原料空気の酸素濃度を安定させることを研究課題とした。
低酸素原料空気の酸素濃度を安定させるために、低酸素原料空気の酸素濃度を直接的に監視することとした。そして低酸素原料空気の酸素濃度が安定する様に、他の位置に設けた流量制御手段を制御することとした。
また大気中における酸素と窒素の割合が一定であることから、低酸素原料空気の窒素濃度を検知することによって、低酸素原料空気の酸素濃度を間接的に検知することができる。従って、低酸素原料空気の窒素濃度に基づき他の位置に設けた流量制御手段を制御しても、低酸素原料空気の酸素濃度が安定する。
また低酸素原料空気の酸素濃度は、低酸素原料空気の圧力や、低酸素原料空気の流量と相関関係があり、これらを監視することによっても、間接的に低酸素原料空気の酸素濃度変動を知ることができることも分かった。
従って低酸素原料空気の圧力を検知し、この圧力に基づき他の位置に設けた流量制御手段を制御しても、低酸素原料空気の酸素濃度が安定する。また、低酸素原料空気の流量を検知し、この流量に基づき他の位置に設けた流量制御手段を制御しても、低酸素原料空気の酸素濃度が安定する。
本態様の低酸素空気供給装置では、低酸素原料空気の酸素濃度、窒素濃度、圧力、又は流量のいずれかを検知する検知手段の検出値に基づいて、第1群に記載の流量制御手段が制御されるので、低酸素原料空気の酸素濃度が安定する。
上記した課題を解決するための具体的態様は、原料空気よりも酸素濃度が低い低酸素空気を供給する低酸素空気供給装置であって、特殊空気生成装置を有し、前記特殊空気生成装置は、窒素と酸素とを分離可能な気体分離部材を有するものであって、空気導入口と、第1排出部と、第2排出部を有し、前記空気導入口から原料空気が導入され、前記第1排出部から前記原料空気よりも酸素濃度が低い低酸素原料空気が排出され、前記第2排出部から前記原料空気よりも酸素濃度が高い高酸素原料空気が排出されるものであり、前記第1排出部から排出された前記低酸素原料空気と前記第2排出部から排出された前記高酸素原料空気を混合して、前記原料空気よりも酸素濃度が低い低酸素混合空気を生成する混合部と、前記第2排出部から排出された前記高酸素原料空気のうち余剰の高酸素原料空気を系外に排気する排気部と、前記低酸素原料空気の酸素濃度、窒素濃度、圧力、又は流量のいずれかを検知する検知手段と、第1群のいずれかの位置に設けられた流量制御手段と、前記検知手段の検出値に基づき、前記流量制御手段を制御する制御手段と、を有することを特徴とする低酸素空気供給装置である。
第1群
(1)前記第2排出部から前記排気部までの間。
(2)前記第2排出部から前記混合部までの間。
(3)前記混合部から前記低酸素空気の供給先までの間。
同様の課題を解決するためのもう一つの態様は、原料空気よりも酸素濃度が低い低酸素空気を供給する低酸素空気供給装置であって、特殊空気生成装置を有し、前記特殊空気生成装置は、窒素と酸素とを分離可能な気体分離部材を有するものであって、空気導入口と、第1排出部と、第2排出部を有し、前記空気導入口から原料空気が導入され、前記第1排出部から前記原料空気よりも酸素濃度が低い低酸素原料空気が排出され、前記第2排出部から前記原料空気よりも酸素濃度が高い高酸素原料空気が排出されるものであり、前記第1排出部から排出された前記低酸素原料空気と前記第2排出部から排出された前記高酸素原料空気を混合して、前記原料空気よりも酸素濃度が低い低酸素混合空気を生成する混合部と、前記第2排出部から排出された前記高酸素原料空気のうち余剰の高酸素原料空気を系外に排気する排気部と、前記低酸素原料空気の窒素濃度又は圧力を検知する検知手段と、前記第1排出部から前記混合部までの間に設けられた流量制御手段と、前記検知手段の検出値に基づき、前記流量制御手段を制御する制御手段と、を有することを特徴とする低酸素空気供給装置である。
【0015】
上記した態様において、前記検知手段は、前記第1排出部から前記混合部に至るまでの間に設けられた酸素濃度検知手段であることが望ましい。
【0016】
本態様によると、低酸素原料空気の酸素濃度を検知手段で検知することができる。
【0017】
上記した課題を解決するためのもう一つの態様は、原料空気よりも酸素濃度が低い低酸素空気を供給する低酸素空気供給装置であって、特殊空気生成装置を有し、前記特殊空気生成装置は、窒素と酸素とを分離可能な気体分離部材を有するものであって、空気導入口と、第1排出部と、第2排出部を有し、前記空気導入口から原料空気が導入され、前記第1排出部から前記原料空気よりも酸素濃度が低い低酸素原料空気が排出され、前記第2排出部から前記原料空気よりも酸素濃度が高い高酸素原料空気が排出されるものであり、前記低酸素原料空気と前記高酸素原料空気を混合して、前記原料空気よりも酸素濃度が低い低酸素混合空気を生成する混合部と、余剰の高酸素原料空気を系外に排気する排気部と、前記高酸素原料空気の酸素濃度、窒素濃度、圧力、又は流量のいずれかを検知する検知手段と、第1群のいずれかの位置に設けられた流量制御手段と、前記検知手段の検出値に基づき、前記流量制御手段を制御する制御手段と、を有することを特徴とする低酸素空気供給装置である。
第1群
(1)前記第2排出部から前記排気部までの間。
(2)前記第2排出部から前記混合部までの間。
(3)前記混合部から前記低酸素空気の供給先までの間。
(4)前記第1排出部から前記混合部までの間。
【0018】
「前記第2排出部から前記排気部までの間」には、「排気部」の位置が含まれる。即ち、排気部に流量制御手段が設けられていてもよい。
「検知手段の検出値に基づき、前記流量制御手段を制御する」具体的方策として、例えば、検知手段の検出値が一定の範囲となる様に、流量制御手段を制御することが考えられる。
「検知手段の検出値が一定の範囲となる様に」とは、目標値に幅を持たせてもよいという意味であり、幅の無い目標値を否定するものではない。例えば、検知手段の検出値が特定の値となる様に流量制御手段が制御されるものであってもよい。
また、高酸素原料空気の酸素濃度、窒素濃度、圧力、又は流量に基づいて、低酸素原料空気の酸素濃度を演算等により求め、この値が所定の範囲となる様に、流量制御手段が制御されるものであってもよい。
同様に、高酸素原料空気の酸素濃度、窒素濃度、圧力、又は流量に基づいて、低酸素原料空気の酸素濃度、窒素濃度、圧力、又は流量を演算等により求め、この値が所定の範囲となる様に、流量制御手段が制御されるものであってもよい。
「この値が所定の範囲となる様に」とは、目標値に幅を持たせてもよいという意味であり、幅の無い目標値を否定するものではない。
気体分離部材によって分離された低酸素原料空気の酸素濃度は、高酸素原料空気の酸素濃度、高酸素原料空気の窒素濃度、高酸素原料空気の圧力、又は高酸素原料空気の流量、と相関があることが分かった。これらを監視して流量制御手段を制御することによっても、低酸素原料空気の酸素濃度を安定させることができることが分かった。
本態様の低酸素空気供給装置では、高酸素原料空気の酸素濃度、窒素濃度、圧力、又は流量のいずれかを検知する検知手段の検出値に基づいて、第1群に記載の流量制御手段が制御されるので、低酸素原料空気の酸素濃度が安定する。
【0019】
上記した各態様において、前記第2排出部から前記混合部に至る高酸素空気流路と、前記高酸素空気流路から分岐されて前記排気部に至る排気路を有し、前記流量制御手段は、前記排気路に設けられていることが望ましい。
【0020】
高酸素原料空気の排気量を増減することにより、低酸素原料空気の酸素濃度を変化させることができることが分かった。本態様は、この知見に基づくものであり、系外への排気量を調節することによって低酸素原料空気の酸素濃度を安定させることができる。
【0021】
上記した各態様において、前記第2排出部から前記混合部に至る高酸素空気流路と、前記高酸素空気流路を分岐する分岐部と、前記分岐部で分岐されて前記排気部に至る排気路を有し、前記流量制御手段は、前記第2排出部と前記分岐部の間に設けられていることが望ましい。
【0022】
本態様によると、高酸素原料空気の系外への排気量を増減することにより、低酸素原料空気の酸素濃度を変化させることができる。
【0023】
上記した各態様において、前記低酸素原料空気に混合される前記高酸素原料空気の量を制御する混入流量制御手段を有し、前記流量制御手段の開度と前記混入流量制御手段の開度が関連付けて制御されることが望ましい。
【0024】
本態様によると、低酸素原料空気の酸素濃度が変化した際、当該酸素濃度を迅速に安定化させることができる。
【0025】
上記した各態様において、前記低酸素原料空気に混合される前記高酸素原料空気の量を制御する混入流量制御手段を有し、前記混入流量制御手段は、前記混合部以降の流路の酸素濃度に基づき制御されることが望ましい。
【0026】
本態様によると、前記混合部以降の流路の酸素濃度を、所望の酸素濃度値に高精度に調整することができる。
【0027】
トレーニング装置の態様は、人が内部で運動可能なトレーニングルームと、上記した各態様のいずれかに記載の低酸素空気供給装置を有し、前記トレーニングルーム内を前記原料空気よりも酸素濃度が低い低酸素環境にすることが可能であることを特徴とするトレーニング装置である。
【0028】
本態様によると、トレーニングルームに付属する低酸素空気供給装置を小型化することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によると、低酸素空気供給装置を従来に比べて小型化することが可能である。また本発明によると、トレーニング装置を従来に比べて小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施形態のトレーニング装置の構成図である。
【
図2】トレーニング装置の低酸素空気供給装置で採用される原料空気生成装置の断面図である。
【
図3】本発明の他の実施形態のトレーニング装置の構成図である。
【
図4】本発明のさらに他の実施形態のトレーニング装置の構成図である。
【
図5】本発明のさらに他の実施形態のトレーニング装置の構成図である。
【
図6】本発明のさらに他の実施形態のトレーニング装置の構成図である。
【
図7】本発明のさらに他の実施形態のトレーニング装置の構成図である。
【
図8】本発明のさらに他の実施形態のトレーニング装置の構成図である。
【
図9】従来技術のトレーニング装置の構成図である。
【
図10】他の従来技術のトレーニング装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態のトレーニング装置1は、2室のトレーニングルーム2a、2bと、1台の低酸素空気供給装置3と、制御装置5を有している。
2室のトレーニングルーム2a、2bは、同じ構造である。トレーニングルーム2a、2bは、数名の者が運動するに足る容積を持った部屋である。本実施形態で採用するトレーニングルーム2a、2bは、内部の環境を任意に調節することができる。
【0032】
具体的には、トレーニングルーム2a、2b内の温度と湿度を調節することができる。また、本実施形態では、トレーニングルーム2a、2b内の酸素濃度を任意に調節することができる。
即ちトレーニングルーム2a、2bは、図示しない温度センサーと湿度センサーを有している。また、トレーニングルーム2a、2bは、第1酸素濃度センサー13a、13bと第2酸素濃度センサー15a、15bを有している。
第1酸素濃度センサー13は、トレーニングルーム2内の酸素濃度の制御用に使用するものであり、説明の都合上、「室内酸素濃度監視センサー13」と称する。
第2酸素濃度センサー15は、トレーニングルーム2内の酸素濃度が過度に低下していないことを監視するものであり、説明の都合上、「最低酸素濃度監視センサー15」と称する。
【0033】
トレーニングルーム2a、2bには図示しない換気装置が設けられ、当該換気装置の下流に、二酸化炭素濃度センサー17a、17bが設けられている。
【0034】
トレーニングルーム2a、2b内には図示しない公知の空調装置があり、当該空調装置に温度センサーと湿度センサーの信号が入力され、トレーニングルーム2a、2b内の温度及び湿度が所望の環境となる様に空調装置が制御される。
【0035】
本実施形態のトレーニング装置1では、一台の低酸素空気供給装置3があり、一台の低酸素空気供給装置3によって二つのトレーニングルーム2a、2bに低酸素空気が供給される。
なお後記する様に、低酸素空気供給装置3の原料空気生成装置26(特殊空気生成装置)によって酸素濃度を低下させた低酸素空気が生成され、その後に酸素量の多い空気が混合されて酸素濃度が調整されるが、混合後の空気は外気(原料空気)よりも酸素濃度の低い低酸素空気である。
酸素濃度が異なる二種類の低酸素空気を区別するため、原料空気生成装置26で生成される低酸素空気を「低酸素原料空気」と称し、混合後の低酸素空気を「低酸素混合空気」と称する。
【0036】
低酸素空気供給装置3は、
図1の様にエアーコンプレッサー25と原料空気生成装置26を有している。
原料空気生成装置26は、公知の高分子分離膜方式の窒素ガス発生装置であり、エアーコンプレッサー25で加圧された空気を導入することによって酸素を分離し、導入された空気に比べて窒素の割合が高い低酸素原料空気と、導入された空気に比べて酸素の割合が高い高酸素原料空気を排出するものである。
【0037】
原料空気生成装置26は、
図1、
図2の様に、空気導入口30と、低酸素原料空気を排出する第1排出部31と、高酸素原料空気を排出する第2排出部32を有している。
原料空気生成装置26の空気導入口30から外気を導入すると、内部で、酸素濃度が低い低酸素原料空気と、酸素濃度が高い高酸素原料空気が生成される。そして低酸素原料空気が第1排出部31から排出され、高酸素原料空気が第2排出部32から排出される。
原料空気生成装置26の具体的構造については後記する。
【0038】
トレーニング装置1は、前記した様に一台の低酸素空気供給装置3で二つのトレーニングルーム2a、2bに低酸素混合空気を供給するものであり、配管が途中から2系統に分岐しているが、分岐配管の構成は同じである。そのため代表してエアーコンプレッサー25から一方のトレーニングルーム2aに至る流路について説明する。
図1では、第1トレーニングルーム2aに至る流路を太線で示し、第2トレーニングルーム2bに至る流路は細線で示している。
【0039】
低酸素空気供給装置3は、主流路23と高酸素空気流路36を有している。主流路23は、エアーコンプレッサー25から原料空気生成装置26に入り、原料空気生成装置26の第1排出部31から混合部33aを経て第1トレーニングルーム2aに至る流路である。高酸素空気流路36は、原料空気生成装置26の第2排出部32から混合部33aに至る流路である。混合部33aは、主流路23と高酸素空気流路36との合流部及びその下流側の管路である。
【0040】
主流路23は、原料空気導入路37と低酸素空気流路38によって構成されている。原料空気導入路37は、エアーコンプレッサー25と原料空気生成装置26の空気導入口30を繋ぐ流路である。低酸素空気流路38は、原料空気生成装置26の第1排出部31からトレーニングルーム2aに至る流路である。
低酸素空気流路38であって、第1排出部31から混合部33aの間には、酸素濃度センサー41が設けられている。酸素濃度センサー41は、原料空気生成装置26で生成される低酸素原料空気の酸素濃度を監視するものであり、説明の都合上、「低酸素濃度監視センサー41」と称する場合がある。
【0041】
低酸素濃度監視センサー41の下流側から混合部33a側に至る間に定流量手段(ニードル弁)61aが設けられている。そのため、原料空気発生装置26の第1排出部31から排出される低酸素原料空気の流量の変動を小さくすることができる。また、当該位置に定流量手段61aが設けられているので、混合部33aの内圧が低く、高酸素原料空気が低酸素原料空気に円滑に混入される。
【0042】
高酸素空気流路36は、前記した様に原料空気生成装置26の第2排出部32から混合部33aに至る流路である。高酸素空気流路36には、混入流量制御手段42aが設けられている。混入流量制御手段42aは具体的にはモータバルブであり、開度を調整することができる。
また高酸素空気流路36には、酸素濃度センサー43が設けられている。酸素濃度センサー43は、原料空気生成装置26で生成される高酸素原料空気の酸素濃度を監視するものであり、説明の都合上、「高酸素濃度監視センサー43」と称する。
【0043】
高酸素空気流路36には、さらに排気流路(排気路)45が設けられている。本実施形態では、高酸素空気流路36に分岐部65があり、排気流路(排気路)45が分岐されている。
排気流路45は、分岐部65と排気部48を繋ぐものであり、余剰の高酸素原料空気を排気部48から系外に排気する流路である。本実施形態では、第2排出部32から排出された高酸素原料空気の一部が、排気部48から系外に排気されて大気中に廃棄される。
排気流路45には、排気流量制御手段46が設けられている。排気流量制御手段46は具体的にはモータバルブであり、開度を調整することができる。排気流量制御手段46は、排気流路45の末端に設けられていてもよい。
【0044】
第2トレーニングルーム2bに至る配管系統は、前記した第1トレーニングルーム2aに至る配管系統と同様であるから、同一の部材に同一の数字を付し、且つ両者を区別するために符番bを付すことによって、重複する説明を省略する。
【0045】
前記した様に、排気流路45に排気流量制御手段46が設けられている。排気流量制御手段46の開度を開き方向に変化させると、系外に排出される高酸素原料空気の量が増加し、代わって、第1排出部31から排出される低酸素原料空気の排出量が減少傾向となり、低酸素原料空気の酸素濃度が低下する。排気流量制御手段46の開度を絞り方向に変化させると、系外に排出される高酸素原料空気の量が減少し、代わって、第1排出部31から排出される低酸素原料空気の排出量が増加傾向となり、低酸素原料空気の酸素濃度が上昇する。
【0046】
制御装置5は、公知のコンピュータであり、本実施形態においては、酸素濃度を設定する設定手段と、低酸素原料空気の酸素濃度を制御する低酸素原料空気の濃度制御手段と、トレーニングルーム2a、2bの酸素濃度を制御する酸素濃度制御手段として機能する。
具体的に説明すると、制御装置5は、酸素濃度設定部と、低酸素原料空気制御部と、酸素濃度制御部を有している。これらはコンピュータプログラムによって実現されている。
低酸素原料空気制御部は、酸素濃度検知部(低酸素原料空気の酸素濃度検知部)と、比較部と、排気流量制御部を有している。また、酸素濃度制御部は、酸素濃度検知部(トレーニングルームの酸素濃度検知部)と、混入流量制御部を有している。
【0047】
制御装置5には、全てのセンサーの信号が入力され、制御装置5によってすべての流量制御手段が制御される。
特に本態様に関連する入力信号は、
図1に示す様に、低酸素濃度監視センサー41の検知信号と、室内酸素濃度監視センサー13の検知信号である。
また特に本態様に関連する制御対象は、排気流量制御手段46と、混入流量制御手段42a、42bである。
【0048】
制御装置5には、前記した様に低酸素濃度監視センサー41の検知信号が入力され、当該低酸素濃度監視センサー41で検知された低酸素原料空気の酸素濃度が一定値または一定の範囲に収まる様に、排気流量制御手段46の開度が制御される。
制御装置5の低酸素原料空気制御部では、酸素濃度検知部(低酸素原料空気の酸素濃度検知部)に低酸素濃度監視センサー41の信号が入力され、低酸素原料空気の現実の酸素濃度が認識される。
そして、比較部で、あらかじめ設定された低酸素原料空気の酸素濃度と、現実の低酸素原料空気の酸素濃度が比較され、排気流量制御部で、両者の差に応じた出力が演算される。
即ち本実施形態では、低酸素原料空気の酸素濃度が排気流量制御手段46の開度にフィードバックされ、排気部48から系外に廃棄される高酸素原料空気の量にフィードバックされる。
【0049】
本実施形態では、低酸素濃度監視センサー41で検知された低酸素原料空気の酸素濃度が設定値より高い場合は、排気流量制御手段46の開度が開かれ、低酸素原料空気の酸素濃度を低下させる。
逆に、酸素濃度センサー41で検知された低酸素原料空気の酸素濃度が設定値より低い場合は、排気流量制御手段46の開度を小さくして、低酸素原料空気の酸素濃度を上昇させる。
低酸素原料空気の酸素濃度の設定値は、使用者が直接設定するようにしてもよい。また、低酸素原料空気の酸素濃度の設定値は、トレーニングルームの酸素濃度設定値に関連付けて自動又は手動によって設定するようにしてもよい。例えば、トレーニングルームの酸素濃度設定値から所定の値を引いた値を、低酸素原料空気の酸素濃度の設定値とすることができる。また、低酸素原料空気の酸素濃度設定値は、トレーニングルームの酸素濃度の制御量に関連付けて自動的に変更されるように制御されていてもよい。
低酸素原料空気制御部の制御は、PID制御であってもよい。
【0050】
排気流量制御手段46の開度を変化させることにより、原料空気生成装置26内の流量バランスが変化し、低酸素原料空気に含まれる酸素濃度が変化する。
即ち、排気流量制御手段46の開度が小さくなると、排気部48から系外に廃棄される高酸素原料空気の量が減少する。
一方、第1排出部31からの低酸素原料空気の排出量が増加傾向となる。その結果、低酸素原料空気の酸素濃度が上昇する。
【0051】
逆に、排気流量制御手段46の開度が大きくなると、排気部48から系外に廃棄される高酸素原料空気の量が増加する。一方、第1排出部31からの低酸素原料空気の排出量が減少傾向となる。その結果、低酸素原料空気の酸素濃度が低下する。
【0052】
次にトレーニング装置1及び低酸素空気供給装置3の機能について説明する。
トレーニング装置1の使用に先立って、制御装置5に、各トレーニングルーム2a、2b内の酸素濃度が設定される。
低酸素空気供給装置3では、エアーコンプレッサー25で加圧された空気が、原料空気導入路37を経由して原料空気生成装置26の空気導入口30に導入される。
原料空気生成装置26の内部で酸素と窒素が分離され、第1排出部31から酸素濃度が8パーセント程度の低酸素原料空気が排出される。
また第2排出部32からは、酸素濃度が38パーセント程度の高酸素原料空気が排出される。
【0053】
即ち大気中の酸素割合は約21パーセントであるが、原料空気生成装置26を通過させることによって酸素割合が約8パーセントに低下した低酸素原料空気が第1排出部31から排出され、酸素濃度が38パーセント程度に上昇した高酸素原料空気が第2排出部32から排出される。
【0054】
低酸素原料空気の酸素濃度が低酸素濃度監視センサー41で検知され、制御装置5に入力される。
本実施形態では、原料空気生成装置26から排出される低酸素原料空気の酸素濃度が、概ね上記した水準で安定する様に、上流側のエアーコンプレッサー25から原料空気生成装置26に導入される空気の量や圧力が、図示しない制御弁等によって調節される。
【0055】
特に本実施形態では、制御装置5(低酸素原料空気制御部)によって、低酸素濃度監視センサー41で検知された低酸素原料空気の酸素濃度が、排気流量制御手段46にフィードバックされ、原料空気生成装置26から排出される低酸素原料空気の酸素濃度が安定する。
【0056】
本実施形態の低酸素空気供給装置3では、主流路23(低酸素空気流路38)を流れる低酸素原料空気に、高酸素空気流路36を通過する原料空気生成装置26で生成された高酸素原料空気が混合されて、適度の酸素濃度に調整された低酸素混合空気が作られ、各トレーニングルーム2a、2bに供給される。
【0057】
そして制御装置5(酸素濃度制御部)によって、各トレーニングルーム2a、2b内の酸素濃度が設定値となる様に、混入流量制御手段42a、42bの開度が制御される。
具体的には、制御装置5(酸素濃度制御部)の酸素濃度検知部(トレーニングルームの酸素濃度検知部)に室内酸素濃度監視センサー13a、13bの信号が入力され、各トレーニングルーム2a、2bの現実の酸素濃度が認識される。そして、図示しない比較部で、あらかじめ設定された各トレーニングルーム2a、2bの酸素濃度と、現実の各トレーニングルーム2a、2bの酸素濃度が比較され、混入流量制御部で、両者の差に応じた出力が演算される。
即ち本実施形態では、室内酸素濃度監視センサー13a、13bで監視した各トレーニングルーム2a、2bの酸素濃度が、混入流量制御手段42a、42bにフィードバックされる。
仮にトレーニングルーム2a内の酸素濃度が設定値を下回っておれば、混入流量制御手段42aの開度を大きくし、主流路23(低酸素空気流路38)を流れる低酸素原料空気により多くの高酸素原料空気を混入し、低酸素混合空気に含まれる酸素濃度を上昇させる。この低酸素混合空気をトレーニングルーム2aに供給し、トレーニングルーム2a内の酸素濃度を上昇させる。
トレーニングルーム2b内の酸素濃度が設定値を下回っておれば、混入流量制御手段42bの開度を大きくする。
【0058】
逆に各トレーニングルーム2a、2b内の酸素濃度が設定値よりも高い場合には、混入流量制御手段42a、42bの開度を小さくし、主流路23(低酸素空気流路38)を流れる低酸素原料空気に混入する高酸素原料空気の混入量を減らして、低酸素混合空気の酸素濃度を下げる。この低酸素混合空気をトレーニングルーム2a、2bに供給し、トレーニングルーム2a、2b内の酸素濃度を低下させる。
【0059】
このように制御装置5では、低酸素原料空気の酸素濃度が一定値または一定の範囲に収まる様に排気流量制御手段46の開度が制御され、同時に、各トレーニングルーム2a、2bの酸素濃度が設定値となるように混入流量制御手段42a、42bの開度が制御される。
そして、混合部33a、33bに混入された高酸素原料空気と低酸素原料空気との混合は、これらの空気が混合部33a、33bからトレーニングルーム2a、2bに至るまでの配管を通過する内に進む。混合された空気は、略均一の濃度の低酸素混合空気となってトレーニングルーム2a、2bに入る。
本実施形態で採用する原料空気生成装置26では、原料空気生成装置26から排出される低酸素原料空気の酸素濃度が安定するから、トレーニングルーム2a、2bに供給される低酸素混合空気の酸素濃度が安定する。また、当該安定した低酸素原料空気に高酸素原料空気が混合されるので、トレーニングルーム2a、2bに供給される低酸素混合空気の酸素濃度を所望の酸素濃度値に高精度に調整することができる。
【0060】
本実施形態のトレーニング装置1では、トレーニングルーム2a、2b内を低酸素状態とし、例えば標高2000mから6000mといった高地と同等の環境を人工的に創出することができる。
トレーニングルーム2a、2b内には、トレッドミル(ランニングマシン)等のトレーニングマシンが設置される。
使用者は、トレーニングルーム2a、2b内に入り、低酸素環境下でトレーニングマシンを使用し、擬似的な高地トレーニングを行うことができる。
【0061】
トレーニングルーム2a、2b内の二酸化炭素濃度は、二酸化炭素濃度センサー17a、17bで監視されている。トレーニングルーム2a、2b内の二酸化炭素濃度が過度に上昇した場合には、混入流量制御手段42a、42bの開度を開き、主流路23を流れる低酸素原料空気により多くの高酸素原料空気を混入する。このように、低酸素混合空気に含まれる酸素濃度を上げて、トレーニングルーム2a、2b内の酸素濃度を上昇させる。
【0062】
トレーニングルーム2a、2bの酸素濃度は、最低酸素濃度監視センサー15a、15bでも監視されている。最低酸素濃度監視センサー15a、15bは安全装置の一つであり、何らかの事情によってトレーニングルーム2a、2b内の酸素濃度が健康を害するおそれがある程度まで低下すると、図示しない報知手段で報知する。
トレーニングルーム2a、2b内の酸素濃度が過度に低下したことが最低酸素濃度監視センサー15a、15bで検知された場合は、安全を確保するために低酸素空気供給装置3を停止し、換気装置を駆動してトレーニングルーム2a、2b内の酸素濃度を大気状態に戻してもよい。
【0063】
図1に示す実施形態では、高酸素空気流路36に酸素濃度センサー43が設けられているが、酸素濃度センサー43は、設けられなくてもよい。また以下の実施形態において、酸素濃度センサー43の検知信号を利用しない態様においても同様であり、酸素濃度センサー43は、設けられなくてもよい。
【0064】
本実施形態の低酸素空気供給装置3は、エアーコンプレッサー25等の加圧装置を空気導入装置として利用し、原料空気生成装置26に空気を導入している。本実施形態の低酸素空気供給装置3では、エアーコンプレッサー25に要求される空気供給能力は、原料空気生成装置26が必要とする空気量で足り、混合用の空気を加圧する必要はない。そのためエアーコンプレッサー25の容量は小さいもので足りる。
本実施形態の低酸素空気供給装置3では、別途のエアーコンプレッサー等を設置する必要はない。
そのため本実施形態の低酸素空気供給装置3は、同規模の容量を有する従来のものに比べて、小型化することができる。
【0065】
次に、原料空気生成装置26の構造について
図2を参照しつつ補足説明する。
原料空気生成装置26は、気体分離部材として気体分離膜51を内蔵するものであり、窒素ガス発生装置としても使用されるものである。
原料空気生成装置26は、容器状の本体部50を有し、その内部に気体分離膜(気体分離部材)51で作られた複数の管路53が内蔵されている。
本体部50の内部空間では、互いに間隔をあけて一対の支持部52が配置され、その一対の支持部52によって管路53が支持されている。また本体部50には、空気導入口30と、低酸素原料空気を排出する第1排出部31と、高酸素原料空気を排出する第2排出部32が設けられている。
本体部50の空気導入口30は管路53に繋がっており、本体部50内に導入された空気は、管路53を流れ、その間に高酸素原料空気と低酸素原料空気に分離される。
【0066】
気体分離膜(気体分離部材)51は、空気から窒素と酸素とを分離可能な分離膜であり、高分子を用いた有機膜と、無機材料を用いた無機膜が知られている。
本実施形態では、高分子有機膜が採用されている。気体分離膜の種類や原理は公知であるから詳細な説明を省略する。
【0067】
以上説明した実施形態では、排気流量制御手段46の開度が、低酸素濃度監視センサー41で検知された低酸素原料空気の酸素濃度によって決定されるが、酸素濃度に代えて低酸素原料空気の窒素濃度を検知し、当該窒素濃度によって排気流量制御手段46の開度を調整してもよい。
例えば、
図1に示す低酸素濃度監視センサー41に代えて、窒素濃度センサーを設け、窒素濃度センサーによって間接的に低酸素原料空気の酸素濃度を検知する。
窒素濃度センサーが検知する窒素濃度が降下傾向にある場合は、第1排出部31から排出される低酸素原料空気の酸素濃度が上昇傾向となっている。
そのため、窒素濃度センサーが検知する窒素濃度が低下した際には、排気流量制御手段46の開度を開き方向に変化させ、低酸素原料空気の酸素濃度を低下させる。
逆に、窒素濃度センサーが検知する窒素濃度が上昇傾向にある場合は、第1排出部31から排出される低酸素原料空気の酸素濃度が低下傾向となっている。
そのため、窒素濃度センサーが検知する窒素濃度が上昇した際には、排気流量制御手段46の開度を絞り方向に変化させ、低酸素原料空気の酸素濃度を上昇させる。
【0068】
以上説明した実施形態では、低酸素原料空気の組成の変化を検知して、排気流量制御手段46の開度を調整するものであるが、他の検出値によって排気流量制御手段46の開度を調節してもよい。
【0069】
例えば、低酸素原料空気の圧力を検知し、当該圧力に応じて、排気流量制御手段46の開度を補正してもよい。
本発明者らの研究によると、低酸素原料空気の排出量が多い場合には、当該低酸素原料空気に含まれる酸素濃度が高い。逆に、低酸素原料空気の排出量が減少すると、当該低酸素原料空気に含まれる酸素濃度が低下する。
また、第1排出部31から排出される低酸素原料空気の酸素濃度と流量は、空気導入口30に供給される供給側空気の圧力と第1排出部31の出口圧力の差に依存する。
第1排出部31の出口圧力と、第2排出部32の出口圧力は、異なるものとなる。
第2排出部32から排出される高酸素原料空気量が増えると、第1排出部31から排出される低酸素原料空気の排出量が減少し、当該低酸素原料空気の酸素濃度も低下する。
逆に、第2排出部32から排出される高酸素原料空気量が減少すると、第1排出部31から排出される低酸素原料空気の排出量が増加し、当該低酸素原料空気の酸素濃度が上昇する。
従って、低酸素原料空気の圧力を検知し、当該圧力に応じて排気流量制御手段46の開度を補正することによっても、低酸素原料空気の酸素濃度を安定させることができる。
【0070】
図3に示すトレーニング装置82では、低酸素空気流路38であって、第1排出部31から混合部33aの間に、圧力センサー60が設けられている。圧力センサー60は、原料空気生成装置26で生成された低酸素原料空気の圧力を監視するものであり、説明の都合上、「低酸素圧力監視センサー60」と称する。本実施形態では、低酸素圧力監視センサー60によって、原料空気生成装置26における第1排出部31の出口圧力が監視される。
【0071】
第1排出部31からの低酸素原料空気の排出量が多い場合には、第1排出部31の出口圧力が低下傾向となる。この場合は、前記した様に、低酸素原料空気の酸素濃度が高い。
逆に、第1排出部31からの低酸素原料空気の排出量が減少すると、第1排出部31の出口圧力が上昇傾向となる。この場合には、低酸素原料空気の酸素濃度が低下する。
【0072】
図3に示す配管系統においても、高酸素空気流路36から排気流路(排気路)45が分岐され、当該排気流路45の排気部48に至るまでの間に、排気流量制御手段46が設けられている。排気流量制御手段46はモータバルブであり、開度を調整することができる。
そのため、排気流路(排気路)45は、断面積が排気流量制御手段46によって変わり、排気流量制御手段46を閉じ方向に変化させると、排気流路(排気路)45に繋がる高酸素空気流路36の第2排出部32の出口圧力が上昇傾向となる。即ち排気流量制御手段46を閉じ方向に変化させると、系外に排出される高酸素原料空気の量が減少し、代わって、第1排出部31から排出される低酸素原料空気の排出量が増加傾向となり、第1排出部31の出口圧力は低くなる。また第1排出部31から排出される低酸素原料空気の酸素濃度が増加する。
【0073】
要点をまとめると、第1排出部31の空気圧(出口圧力、以下同じ)と、低酸素原料空気に含まれる酸素濃度の間に相関関係があり、第1排出部31の空気圧が上昇すると、低酸素原料空気の酸素濃度が低下傾向となり、第1排出部31の空気圧が低下すると、低酸素原料空気の酸素濃度が上昇傾向となる。
また、低酸素原料空気を排出する第1排出部31の圧力及び低酸素原料空気の酸素濃度と、排気流量制御手段46の開度には相関関係があり、排気流量制御手段46の開度を小さくすると、低酸素原料空気の酸素濃度が上昇し、排気流量制御手段46の開度を大きくすると、低酸素原料空気の酸素濃度が低下する。
【0074】
本実施形態では、低酸素圧力監視センサー60で検知された低酸素原料空気の圧力があらかじめ設定された低酸素原料空気の圧力よりも低い場合(酸素濃度が高い場合)は、排気流量制御手段46の開度が大きくなり、高酸素原料空気を排出する第2排出部32の圧力が低下傾向となり、低酸素原料空気を排出する第1排出部31の圧力が上昇して、低酸素原料空気の酸素濃度が低下する。
逆に、低酸素圧力監視センサー60で検知された低酸素原料空気の圧力があらかじめ設定された低酸素原料空気の圧力よりも高い場合(酸素濃度が低い場合)は、排気流量制御手段46の開度が小さくなり、高酸素原料空気を排出する第2排出部32の圧力が上昇傾向となり、低酸素原料空気を排出する第1排出部31の圧力が低下して、低酸素原料空気の酸素濃度が上昇する。
【0075】
低酸素原料空気の圧力変化は、低酸素原料空気の酸素濃度変化に対して遅れが少ない。また低酸素原料空気の圧力は、検出が容易である。そのため、低酸素原料空気の圧力は、低酸素原料空気の酸素濃度変化を検知する指標として好適である。
【0076】
図3に示す実施形態においては、低酸素濃度監視センサー41及び高酸素濃度監視センサー43が設けられていなくてもよい。
【0077】
さらに、低酸素原料空気の圧力以外にも、低酸素原料空気の酸素濃度と相関関係にある数値があり、当該低酸素原料空気の酸素濃度と相関関係にある数値を、低酸素濃度監視センサー41で検知された低酸素原料空気の酸素濃度に代えて採用してもよい。
例えば、以下の項目は、いずれも低酸素原料空気の酸素濃度と相関がある。
(1)高酸素原料空気の圧力。
(2)低酸素原料空気の流量。
(3)高酸素原料空気の流量。
(4)高酸素原料空気の酸素濃度。
(5)高酸素原料空気の窒素濃度。
従って、これらを前記した各実施形態の低酸素圧力監視センサー60の検知信号に代えて、制御装置5に入力してもよい。
【0078】
図4は、他の実施形態のトレーニング装置の配管系統等を示している。
図4に示すトレーニング装置80では、高酸素空気流路36の第2排出部32と分岐部65の間に、高酸素圧力監視センサー70が設けられており、当該高酸素圧力監視センサー70で、高酸素原料空気の圧力が検知される。
本実施形態では、高酸素圧力監視センサー70の信号が、制御装置5に入力される。
【0079】
高酸素原料空気の圧力は低酸素原料空気の酸素濃度と相関があり、低酸素原料空気の酸素濃度が上昇すると、高酸素原料空気の圧力が上昇し、逆に、低酸素原料空気の酸素濃度が低下すると、高酸素原料空気の圧力が低下する。
【0080】
本実施形態では、低酸素原料空気の酸素濃度が高く、高酸素圧力監視センサー70で検知された高酸素原料空気の圧力があらかじめ設定された高酸素原料空気の圧力よりも高い場合は、排気流量制御手段46の開度が増大され、高酸素原料空気を排出する第2排出部32の出口圧力が低下傾向となり、低酸素原料空気の酸素濃度が低下する。
逆に、低酸素原料空気の酸素濃度が低く、高酸素圧力監視センサー70で検知された高酸素原料空気の圧力があらかじめ設定された高酸素原料空気の圧力よりも低い場合は、排気流量制御手段46の開度が小さくなり、高酸素原料空気を排出する第2排出部32の出口圧力が上昇傾向となり、低酸素原料空気の酸素濃度が上昇する。
【0081】
図4に示す実施形態においては、低酸素濃度監視センサー41及び高酸素濃度監視センサー43が設けられていなくてもよい。
【0082】
他の実施形態として、
図1の実施形態の低酸素原料空気の酸素濃度を利用する形態や、
図3の実施形態の低酸素原料空気の圧力を利用する形態に代えて、低酸素原料空気の流量を利用する形態としてもよい。
具体的には、トレーニング装置1において、低酸素空気流路38の第1排出部31と混合部33との間に設けられた低酸素濃度監視センサー41や低酸素圧力監視センサー60に代えて、流量センサーを設ける実施形態としてもよい。当該実施形態では、流量センサーで、原料空気生成装置26から排出される低酸素原料空気の流量が検知される。
本実施形態では、流量センサーの信号が、制御装置5の酸素濃度検知部や圧力検知部に代えて流量検知部に入力される。
【0083】
低酸素原料空気の流量は低酸素原料空気の酸素濃度と相関があり、低酸素原料空気の酸素濃度が上昇すると、低酸素原料空気の流量が増加傾向となる。逆に、低酸素原料空気の酸素濃度が低下すると、低酸素原料空気の流量が減少傾向となる。
【0084】
本実施形態では、流量センサーで検知された低酸素原料空気の流量があらかじめ設定された流量よりも多い場合(低酸素原料空気の酸素濃度が高い場合)は、排気流量制御手段46の開度が大きくなり、低酸素原料空気の酸素濃度が低下する。
逆に、流量センサーで検知された低酸素原料空気の流量があらかじめ設定された流量よりも少ない場合(低酸素原料空気の酸素濃度が低い場合)は、排気流量制御手段46の開度が小さくなり、低酸素原料空気の酸素濃度が上昇する。
【0085】
また高酸素原料空気の流量は低酸素原料空気の酸素濃度と相関があり、低酸素原料空気の酸素濃度が上昇すると、高酸素原料空気の流量が減少し、逆に、低酸素原料空気の酸素濃度が低下すると、高酸素原料空気の流量が増加する。
この現象を利用した他の実施形態として、
図4の実施形態の高酸素原料空気の圧力を利用する形態に代えて、高酸素原料空気の流量を利用する形態としてもよい。
具体的には、トレーニング装置80において、高酸素空気流路36の第2排出部32と分岐部65の間に設けられた高酸素圧力監視センサー70に代えて、流量センサーを設ける実施形態としてもよい。当該実施形態では、流量センサーで高酸素原料空気の流量が検知される。
本実施形態では、流量センサーの信号が、制御装置5の圧力検知部に代えて図示しない流量検知部に入力される。
【0086】
本実施形態では、流量センサーで検知された高酸素原料空気の流量があらかじめ設定された流量より少ない場合(低酸素原料空気の酸素濃度が高い場合)は、排気流量制御手段46の開度が大きくなり、高酸素原料空気の流量が増加傾向となり、低酸素原料空気の酸素濃度が低下する。
逆に、流量センサーで検知された高酸素原料空気の流量が多い場合(低酸素原料空気の酸素濃度が低い場合)は、排気流量制御手段46の開度が小さくなり、高酸素原料空気の流量が減少傾向となり、低酸素原料空気の酸素濃度が上昇する。
【0087】
さらに他の実施形態として、低酸素原料空気の酸素濃度に代えて、高酸素原料空気の酸素濃度を利用してもよい。
低酸素原料空気の酸素濃度が高い場合は、高酸素原料空気の酸素濃度が低くなり、低酸素原料空気の酸素濃度が低い場合は、高酸素原料空気の酸素濃度が高くなる。
高酸素原料空気の酸素濃度を利用する場合は、高酸素空気流路36に設けられた酸素濃度センサー43の信号が、制御装置5に入力される。
【0088】
本実施形態では、酸素濃度センサー43で検知された高酸素原料空気の酸素濃度があらかじめ設定された酸素濃度よりも低い場合は、排気流量制御手段46の開度が大きくなり、高酸素原料空気の酸素濃度が上昇傾向となり、低酸素原料空気の酸素濃度が低下する。
逆に、酸素濃度センサー43で検知された高酸素原料空気の酸素濃度があらかじめ設定された酸素濃度よりも高い場合は、排気流量制御手段46の開度が小さくなり、高酸素原料空気の酸素濃度が低下傾向となり、低酸素原料空気の酸素濃度が上昇する。
【0089】
高酸素原料空気の酸素濃度に代えて、高酸素原料空気の窒素濃度を利用してもよい。
即ち、上記した実施形態では、排気流量制御手段46の開度が、高酸素空気流路36に設けられた酸素濃度センサー43で検知された高酸素原料空気の酸素濃度によって決定されるが、酸素濃度に代えて高酸素原料空気の窒素濃度を検知し、当該窒素濃度によって排気流量制御手段46の開度を調整してもよい。
例えば、
図1に示す高酸素空気流路36に設けられた酸素濃度センサー43に代えて、窒素濃度センサーを設け、窒素濃度センサーによって間接的に高酸素原料空気の酸素濃度を検知する。
高酸素空気流路36に設けられた窒素濃度センサー(図示せず)が検知する窒素濃度が低下傾向にある場合は、第1排出部31から排出される低酸素原料空気の酸素濃度が低下傾向となっている。
そのため、高酸素空気流路36に設けられた窒素濃度センサーが検知する窒素濃度があらかじめ設定された窒素濃度よりも低下した際には、排気流量制御手段46の開度を小さくする方向に変化させ、低酸素原料空気の酸素濃度を上昇させる。
逆に、高酸素空気流路36に設けられた窒素濃度センサーが検知する窒素濃度が上昇傾向にある場合は、第1排出部31から排出される低酸素原料空気の酸素濃度が上昇傾向となっている。
そのため、高酸素空気流路36に設けられた窒素濃度センサーが検知する窒素濃度があらかじめ設定された窒素濃度よりも上昇した際には、排気流量制御手段46の開度を大きくし、低酸素原料空気の酸素濃度を低下させる。
【0090】
以上説明した実施形態では、排気流量制御手段46の開度が、低酸素濃度監視センサー41等で検知された低酸素原料空気の酸素濃度等によって決定されるが、他の要素を加味して排気流量制御手段46の開度を補正してもよい。
【0091】
例えば、排気流量制御手段46の開度と混入流量制御手段42a、42bの開度が、関連付けられて制御されるものであってもよい。
具体的には、前記した低酸素濃度監視センサー41で検知された低酸素原料空気の酸素濃度による排気流量制御手段46の開度調節を行う。さらに、混入流量制御手段42a、42bの開度が大きくなると、排気流量制御手段46が絞られる様に排気流量制御手段46の開度が補正される。また、混入流量制御手段42a、42bの開度が小さくなると、排気流量制御手段46を開く様に排気流量制御手段46の開度が補正される。
即ち、排気流量制御手段46の開度を、低酸素濃度監視センサー41で検知された低酸素原料空気の酸素濃度に加え、混入流量制御手段42a、42bの開度によっても制御する。
【0092】
例えば、排気流量制御手段46の開度を決定するための演算項目として、低酸素原料空気の酸素濃度に基づく制御量と、混入流量制御手段42a、42bの開度に基づく制御量があり、両者の合計によって、排気流量制御手段46の開度が決定される。
混入流量制御手段42a、42bの開度に基づく排気流量制御手段46の開度の制御量は、混入流量制御手段42a、42bの開度に対して反比例的に増減する。即ち混入流量制御手段42a、42bの開度が開き方向に変化すると、排気流量制御手段46の開度は閉じ方向に変化し、混入流量制御手段42a、42bの開度が閉じ方向に変化すると、排気流量制御手段46の開度が開く方向に変化する。
その結果、余剰の高酸素原料空気が排気流路45から適度に排気され、原料空気生成装置26内に掛かる背圧が適度に制御される。
【0093】
低酸素原料空気の窒素濃度、低酸素原料空気の圧力、低酸素原料空気の流量、高酸素原料空気の圧力、高酸素原料空気の流量、高酸素原料空気の酸素濃度、高酸素原料空気の窒素濃度等によって排気流量制御手段46を調整する場合も同様であり、他の要素を加味して排気流量制御手段46の開度を補正してもよい。
【0094】
以上説明した各実施形態は、いずれも、余剰の高酸素原料空気を系外に排気するものであり、高酸素原料空気の排気量を増減することによって、低酸素原料空気の酸素濃度を調節するものである。以上説明した各実施形態では、高酸素原料空気の排気量を調節する手段として、排気流路45に排気流量制御手段46が設けられている。
本発明は、この構成に限定されるものではなく、低酸素原料空気の酸素濃度と相関関係にある他の流路に流量制御手段を設けることも可能である。
例えば、以下の部位の流量は、いずれも低酸素原料空気の酸素濃度と相関がある。
(1)第2排出部32から混合部33a、33bまでの間。
(2)混合部33a、33bから低酸素空気の供給先(トレーニングルーム2a、2b)までの間。
(3)第1排出部31から混合部33a、33bまでの間。
【0095】
図5は、第2排出部32から混合部33a、33bまでの間であって、第2排出部32から分岐部65までの間に、流量制御手段75を設けた例である。
図5に示すトレーニング装置83では、流量制御手段75の開度を調節すると、第2排出部32の出口圧力が変化し、低酸素原料空気の酸素濃度が変わる。
図5に示す実施形態では、混入流量制御手段42a、42b及び排気流量制御手段46よりも上流側に流量制御手段75があるので、混入流量制御手段42a、42b及び排気流量制御手段46の開度に影響を受けることなく、第2排出部32の出口圧力を調整することができる。よって、低酸素原料空気の酸素濃度や圧力を安定させることができる。
【0096】
図6は、第2排出部32から混合部33a、33bまでの間であって、分岐部65から混入流量制御手段42a、42bまでの間に、流量制御手段76を設けた例である。
図6に示すトレーニング装置85では、流量制御手段76の開度を調節すると、第2排出部32の圧力が変化し、低酸素原料空気の酸素濃度が変わる。
図6に示す実施形態では、混入流量制御手段42a、42bよりも上流側に流量制御手段76があるので、混入流量制御手段42a、42bの開度に影響を受けることなく、第2排出部32の出口圧力を調整することができる。よって、低酸素原料空気の酸素濃度や圧力を安定させることができる。
【0097】
図7は、混合部33a、33bから低酸素空気の供給先(トレーニングルーム2a、2b)までの間に、流量制御手段77a、77bを設けた例である。
図7に示すトレーニング装置86では、流量制御手段77a、77bの開度を調節すると、低酸素原料空気の酸素濃度が変わる。
【0098】
図8は、第1排出部31から混合部33a、33bまでの間に、流量制御手段78を設けた例である。
図8に示すトレーニング装置87では、流量制御手段78の開度を調節すると、低酸素原料空気の酸素濃度が変わる。
図8に示す実施形態では、低酸素空気流路38であって、二つのトレーニングルーム2a、2bに分岐される前の位置に、共通の流量制御手段78が設けられているが、分岐後の位置に、それぞれ個別に流量制御手段78を設けてもよい。
【0099】
図5乃至
図8には、高酸素濃度監視センサー43が図示されているが、高酸素濃度監視センサー43は無くてもよい。
【0100】
図5乃至
図8に示す実施形態では、低酸素原料空気の酸素濃度を低酸素濃度監視センサー41で直接的に検知したが、以下のような低酸素原料空気の酸素濃度と相関関係にある数値を、低酸素濃度監視センサー41の検知濃度に代えて利用してもよい。
(1)低酸素原料空気の圧力。
(2)高酸素原料空気の圧力。
(3)低酸素原料空気の流量。
(4)高酸素原料空気の流量。
(5)高酸素原料空気の酸素濃度。
(6)低酸素原料空気の窒素濃度。
(7)高酸素原料空気の窒素濃度。
【0101】
上記した番号(1)乃至(7)のいずれかの検出値を利用して低酸素原料空気の酸素濃度を調整する場合には、他の検知手段は無くてもよい。例えば、上記した番号(1)乃至(7)のいずれかの検出値を利用して低酸素原料空気の酸素濃度を調整する場合には、低酸素濃度監視センサー41は設けられなくてもよい
【0102】
図5乃至
図8に示す実施形態及びこれの変形例の構成を採用する場合には、排気流路45に排気流量制御手段46が設けられていなくてもよい。ただし、排気部48を完全に開放状態とすることは好ましくないので、手動式の絞りの様な開度を変更可能な部材を設けることが望ましい。排気部48に固定式の絞りを設けてもよい。
【0103】
流量制御手段75、76、77a、77b、78を
図5乃至
図8に示す位置に配置した場合においても、当該流量制御手段75、76、77a、77b、78の開度を、混入流量制御手段42a、42bの開度に関連付けて制御してもよい。
例えば、前記した低酸素濃度監視センサー41で検知された低酸素原料空気の酸素濃度によって排気流量制御手段75、76、77a、77b、78の開度調節を行う。さらに、混入流量制御手段42a、42bの開度に応じて、排気流量制御手段75、76、77a、77b、78の開度が補正される。
即ち、排気流量制御手段75、76、77a、77b、78の開度を、低酸素濃度監視センサー41等で検知された情報に加え、混入流量制御手段42a、42bの開度によっても制御する。
【0104】
以上説明した実施形態では、検知手段(低酸素濃度監視センサー41、窒素濃度センサー、圧力センサー60、高酸素濃度監視センサー43、高酸素圧力監視センサー70、流量センサー等)が検知した検出値が、一定値または一定の範囲に収まる様に、流量制御手段(排気流量制御手段46、流量制御手段75、流量制御手段76、流量制御手段77a、77b、流量制御手段78等)の開度が制御される。即ち上記した実施形態では、検知手段の検出値をそのまま利用し、当該検出値が一定値または一定の範囲に収まる様に、流量制御手段の開度が制御される。
しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではなく、特定の検知手段で検知された物理量から他の物理量を演算または推定し、この値が一定値または一定の範囲に収まる様に、流量制御手段の開度が制御されてもよい。
例えば、圧力センサー60で検知される低酸素原料空気の圧力(検知された物理量)に基づいて、低酸素原料空気の酸素濃度(他の物理量)を演算し、この値が一定値または一定の範囲に収まる様に、流量制御手段の開度が制御されるものであってもよい。
【0105】
以上説明した実施形態では、低酸素空気流路38に定流量手段(ニードル弁)61a、61bが設けられているが、定流量手段(ニードル弁)61a、61bは、設けられなくてもよい。また、定流量手段はニードル弁に限らず開度調整可能なダンパ等であってもよい。また、定流量手段は、二つのトレーニングルーム2a、2bに分岐した配管にそれぞれ備えられているがこれに限定されず、分岐前の配管に一つ設けられていてもよい。
【0106】
以上説明した実施形態では、管路内で高酸素原料空気と低酸素原料空気を混合したが、より容積の大きい混合部を設け、混合部内に高酸素原料空気と低酸素原料空気を導入してもよい。
またトレーニングルーム2a、2b内に高酸素原料空気と低酸素原料空気を個別に導入し、トレーニングルーム2a、2b内で高酸素原料空気と低酸素原料空気を混合してもよい。即ちトレーニングルーム2a、2bを混合部として利用してもよい。
【0107】
以上説明した実施形態では、高酸素空気流路36に混入流量制御手段42a、42bを設け、排気流路45に排気流量制御手段46を設けて、原料空気生成装置26で生成された高酸素原料空気を主流路23に混合するものと系外に排気するものに振り分けた。
他の方策として、高酸素空気流路36と排気流路45の分岐部65に開度を調整可能なダンパー(流量制御手段)等を設け、高酸素原料空気を主流路23に混合するものと排気するものに振り分けてもよい。
【0108】
以上説明した実施形態では、低酸素空気供給装置3からの低酸素混合空気の供給先は、トレーニングルーム2a、2bの二箇所であるが、一つのトレーニングルーム2だけに低酸素混合空気を供給してもよく、より多くのトレーニングルーム2に低酸素混合空気を供給してもよい。
以上説明した実施形態は、低酸素空気供給装置3の使用例としてトレーニングルーム2a、2bに低酸素混合空気を供給するものであるが、低酸素混合空気の供給先はトレーニングルーム2a、2bに限定されるものではない。例えば吸引マスクや試験装置に低酸素混合空気を供給してもよい。
【0109】
また低酸素空気供給装置3に二酸化炭素除去装置を設けてもよい。二酸化炭素除去装置は、高酸素空気流路36に設けることが望ましい。本実施形態によると、高酸素原料空気から二酸化炭素を除去し、二酸化炭素量を低減することができる。
【符号の説明】
【0110】
1、80、82、83、85、86、87 トレーニング装置
2a 第1トレーニングルーム
2b 第2トレーニングルーム
3 低酸素空気供給装置
5 制御装置
13 室内酸素濃度監視センサー
26 原料空気生成装置(特殊空気生成装置)
30 空気導入口
31 第1排出部
32 第2排出部
33a、33b 混合部
36 高酸素空気流路
38 低酸素空気流路
41 低酸素濃度監視センサー
42a 混入流量制御手段
42b 混入流量制御手段
43 高酸素濃度監視センサー
45 排気流路
46 排気流量制御手段
48 排気部
51 気体分離膜(気体分離部材)
60 低酸素圧力監視センサー
65 分岐部
70 高酸素圧力監視センサー
75 流量制御手段
76 流量制御手段
77a、77b 流量制御手段
78 流量制御手段