(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、システム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/46 20240101AFI20240903BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20240903BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20240903BHJP
A61B 6/50 20240101ALI20240903BHJP
【FI】
A61B6/46 536Q
A61B5/055 380
A61B6/03 570A
A61B6/03 577
A61B6/50 500B
(21)【出願番号】P 2020143280
(22)【出願日】2020-08-27
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂口 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】荒木田 和正
(72)【発明者】
【氏名】石井 秀明
(72)【発明者】
【氏名】西岡 昂彦
【審査官】佐藤 賢斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-057857(JP,A)
【文献】特開2018-027307(JP,A)
【文献】特開2014-128631(JP,A)
【文献】特開2020-058591(JP,A)
【文献】特表2017-512104(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0242857(US,A1)
【文献】T. Muroya et al.,Relationship between resting full-cycle ratio and fractional flow reserve in assessments of coronary stenosis severity,Catheterization and Cardiovascular Interventions,Society for Cardiovascular Angioggraphy & Interventions,2020年03月05日,Vol. 96, Issue 4,pp. E432-E438,DOI: 10.1002/ccd.28835
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58
A61B 5/055
G06T 7/00 - 7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の冠動脈における安静状態時の冠血流予備量比と、前記冠動脈における負荷状態時の冠血流予備量比とを取得する取得部と、
前記安静状態時の冠血流予備量比の数値と前記負荷状態時の冠血流予備量比の数値との比較に基づく数値を算出する算出部と、
前記
比較に基づく数値を、前記被検体の心筋機能に関する指標として表示させる表示制御部と、
を備える、医用画像処理装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記被検体の冠動脈を含む医用画像を用いた流体解析によって、前記安静状態時の冠血流予備量比と前記負荷状態時の冠血流予備量比とを取得する、請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記算出部は、前記安静状態時の冠血流予備量比の数値と前記負荷状態時の冠血流予備量比の数値との比率を算出する、請求項1又は2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記被検体の冠動脈の位置ごとに算出された前記
比較に基づく数値と閾値とを比較して、前記
比較に基づく数値が前記閾値を上回る前記冠動脈上の位置を特定し、特定した位置に対応する心筋上の支配領域を表示させる、請求項1~3のいずれか1つに記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記被検体の冠動脈の位置において、前記
比較に基づく数値が前記閾値を上回る最も起始部側の位置を特定し、特定した位置に対応する心筋上の支配領域を表示させる、請求項4に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、前記支配領域の面積が閾値を超えた場合に警告を表示させる、請求項5に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記被検体の冠動脈の位置ごとに算出された前記
比較に基づく数値と数値範囲とを比較して、前記
比較に基づく数値が前記数値範囲を上回る前記冠動脈上の位置、又は、前記
比較に基づく数値が前記数値範囲を下回る前記冠動脈上の位置を特定し、比較結果に基づく表示情報を表示させる、請求項1~3のいずれか1つに記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記表示制御部は、前記
比較に基づく数値が前記数値範囲を上回る場合と、前記
比較に基づく数値が前記数値範囲を下回る場合とで、それぞれに対応する疾患候補を表示させる、請求項7に記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
前記表示制御部は、前記
比較に基づく数値が前記数値範囲を上回る場合に心筋における疾患候補を表示させ、前記
比較に基づく数値が前記数値範囲を下回る場合に冠動脈における疾患候補を表示させる、請求項8に記載の医用画像処理装置。
【請求項10】
前記表示制御部は、前記安静状態時の冠血流予備量比または前記負荷状態時の冠血流予備量比と第1の閾値との比較結果、及び、前記
比較に基づく数値と第2の閾値との比較結果に基づいて、前記被検体の冠動脈に関する治療と心筋に関する治療との組み合わせを表示させる、請求項1~9のいずれか1つに記載の医用画像処理装置。
【請求項11】
前記取得部は、前記被検体における冠血流予備能を取得し、
前記表示制御部は、前記
比較に基づく数値と前記冠血流予備能とに基づいて、疾患に関する情報を表示させる、請求項1~10のいずれか1つに記載の医用画像処理装置。
【請求項12】
前記算出部は、前記
比較に基づく数値である第1の指標値と前記冠血流予備能とに基づいて、第2の指標値を算出する、請求項11に記載の医用画像処理装置。
【請求項13】
前記表示制御部は、前記第2の指標値に基づく疾患に関する情報を表示させる、請求項12に記載の医用画像処理装置。
【請求項14】
医用画像処理装置と、医用情報表示装置とを含む医用画像処理システムであって、
前記医用画像処理装置が、
被検体の冠動脈における安静状態時の冠血流予備量比と、前記冠動脈における負荷状態時の冠血流予備量比とを取得する取得部と、
前記安静状態時の冠血流予備量比の数値と前記負荷状態時の冠血流予備量比の数値との比較に基づく数値を算出する算出部と、
前記
比較に基づく数値を、前記被検体の心筋機能に関する指標として表示させる表示制御部と、
を備える、医用画像処理システム。
【請求項15】
医用画像処理装置の作動方法であって、
前記医用画像処理装置は、取得部と、算出部と、表示制御部とからなり、
前記取得部が、被検体の冠動脈における安静状態時の冠血流予備量比と、前記冠動脈における負荷状態時の冠血流予備量比とを取得
するステップと、
前記算出部が、前記安静状態時の冠血流予備量比の数値と前記負荷状態時の冠血流予備量比の数値との比較に基づく数値を算出
するステップと、
前記表示制御部が、前記
比較に基づく数値を、前記被検体の心筋機能に関する指標として表示させる
ステップと、
を含む
、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用画像処理装置、システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
労作性狭心症をはじめとする心筋虚血は、高齢化に伴う慢性疾患として膨大な患者数を有する疾患である。この心筋虚血の検査法・指標としては、Coronary Flow Reserve(CFR:冠血流予備能、冠状動脈血流予備能)が知られており、運動負荷や薬剤負荷を与えることにより測定されている。
【0003】
例えば、運動負荷では、トレッドミルとエコーを用いた測定が日常的におこなわれている。また、例えば、薬剤負荷では、CT(Computed Tomography)を用い、被検体にアデノシンを投与した負荷状態で心筋灌流(CT Myocardial Perfusion:CTP)を測定して血流量(Myocardial Blood Flow:MBF)を算出し、アデノシンを投与しない状態の値との比をとることで、CFRを測定する方法が知られている。
【0004】
また、薬剤負荷では、例えば、治療時に、流量計であるFlow Wireを冠動脈に挿入し、アデノシン負荷時の血流速度と、非負荷時の血流速度とを計測し、その比をとることにより、CFRを測定する方法も知られている。
【0005】
例えば、CTを用いたCFRの測定では、心筋細胞の酸素接書量が多くなるように、アデノシンを投与した負荷状態(アデノシン負荷状態、Hyperemia状態とも呼ばれる)でCTPのプロトコルで撮影を行い、得られた画像データから画像解析によって負荷状態の血流量(MBF)を算出する。同様に、安静状態(薬剤を投与しない通常の状態)で同様の画像データの収集と解析を行い、安静状態の血流量(MBF)を算出する。そして、CTを用いたCFRの測定では、負荷状態の血流量(MBF)と安静状態の血流量(MBF)との比を算出することで、CFRが取得される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、心筋機能に関する指標を提供することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置付けることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る医用画像処理装置は、取得部と、算出部と、表示制御部とを備える。取得部は、被検体の冠動脈における安静状態時の冠血流予備量比と、前記冠動脈における負荷状態時の冠血流予備量比とを取得する。算出部とは、前記安静状態時の冠血流予備量比と前記負荷状態時の冠血流予備量比との比較に基づく指標値を算出する。表示制御部は、前記指標値を、前記被検体の心筋機能に関する指標として表示させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る医用画像処理システム及び医用画像処理装置の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る心筋機能とINDEXとの関係について説明するための図である。
【
図3A】
図3Aは、第1の実施形態に係る表示制御機能による表示の一例を示す図である。
【
図3B】
図3Bは、第1の実施形態に係る表示制御機能による表示の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る表示制御機能による表示の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る表示制御機能による表示の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置の処理回路が有する各処理機能によって行われる処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、医用画像処理装置、システム及び方法の実施形態について詳細に説明する。なお、本願に係る医用情報処理装置及び医用情報処理方法は、以下に示す実施形態によって限定されるものではない。また、実施形態は、処理内容に矛盾が生じない範囲で他の実施形態や従来技術との組み合わせが可能である。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る医用画像処理システム及び医用画像処理装置の構成例を示す図である。
【0012】
例えば、
図1に示すように、本実施形態に係る医用画像処理システム100は、X線CT(Computed Tomography)装置110と、医用画像保管装置120と、医用情報表示装置130と、医用画像処理装置140とを含む。ここで、各装置及びシステムは、ネットワーク150を介して通信可能に接続されている。
【0013】
なお、医用画像処理システム100は、X線CT装置110の他に、磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置や超音波診断装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置等の他の医用画像診断装置をさらに含んでもよい。また、医用画像処理システム100は、電子カルテシステムや、HIS(Hospital Information System)やRIS(Radiology Information System)等の他のシステムをさらに含んでもよい。
【0014】
X線CT装置110は、被検体に関するCT画像を生成する。具体的には、X線CT装置110は、被検体を囲む円軌道上でX線管及びX線検出器を旋回移動させることで、被検体を透過したX線の分布を表す投影データを収集する。そして、X線CT装置110は、収集された投影データに基づいて、CT画像を生成する。
【0015】
医用画像保管装置120は、被検体に関する各種の医用画像を保管する。具体的には、医用画像保管装置120は、ネットワーク160を介してX線CT装置110からCT画像を取得し、当該CT画像を自装置内の記憶回路に記憶させて保管する。例えば、医用画像保管装置120は、サーバやワークステーション等のコンピュータ機器によって実現される。また、例えば、医用画像保管装置120は、PACS(Picture Archiving and Communication System)等によって実現され、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)に準拠した形式でCT画像を保管する。
【0016】
医用情報表示装置130は、被検体に関する各種の医用情報を表示する。具体的には、医用情報表示装置130は、ネットワーク150を介して医用画像保管装置120からCT画像や画像処理の処理結果等の医用情報を取得し、当該医用情報を自装置内のディスプレイに表示する。例えば、医用情報表示装置130は、ワークステーションやパーソナルコンピュータ、タブレット端末等のコンピュータ機器によって実現される。
【0017】
医用画像処理装置140は、被検体に関する各種の画像処理を行う。具体的には、医用画像処理装置140は、ネットワーク150を介してX線CT装置110又は医用画像保管装置120からCT画像を取得し、当該CT画像を用いて各種の画像処理を行う。例えば、医用画像処理装置140は、サーバやワークステーション等のコンピュータ機器によって実現される。
【0018】
例えば、医用画像処理装置140は、ネットワーク(NetWork:NW)インタフェース141と、記憶回路142と、入力インタフェース143と、ディスプレイ144と、処理回路145とを備える。
【0019】
NWインタフェース141は、医用画像処理装置140と、ネットワーク150を介して接続された他の装置との間で送受信される各種データの伝送及び通信を制御する。具体的には、NWインタフェース141は、処理回路145に接続されており、他の装置から受信したデータを処理回路145に出力、又は、処理回路145から出力されたデータを他の装置に送信する。例えば、NWインタフェース141は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現される。
【0020】
記憶回路142は、各種データ及び各種プログラムを記憶する。具体的には、記憶回路142は、処理回路145に接続されており、処理回路145から入力されたデータを記憶、又は、記憶しているデータを読み出して処理回路145に出力する。例えば、記憶回路142は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。
【0021】
入力インタフェース143は、利用者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付ける。具体的には、入力インタフェース143は、処理回路145に接続されており、利用者から受け取った入力操作を電気信号へ変換して処理回路145に出力する。例えば、入力インタフェース143は、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力インタフェース、及び音声入力インタフェース等によって実現される。なお、本明細書において、入力インタフェース143は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース143の例に含まれる。
【0022】
ディスプレイ144は、各種情報及び各種データを表示する。具体的には、ディスプレイ144は、処理回路145に接続されており、処理回路145から出力された各種情報及び各種データを表示する。例えば、ディスプレイ144は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、タッチパネル等によって実現される。
【0023】
処理回路145は、医用画像処理装置140の全体を制御する。例えば、処理回路145は、入力インタフェース143を介して利用者から受け付けた入力操作に応じて、各種処理を行う。例えば、処理回路145は、他の装置から送信されたデータをNWインタフェース141から入力し、入力したデータを記憶回路142に記憶する。また、例えば、処理回路145は、記憶回路142から入力したデータをNWインタフェース141に出力することで、当該データを他の装置に送信する。また、例えば、処理回路145は、記憶回路142から入力したデータをディスプレイ144に表示する。
【0024】
以上、本実施形態に係る医用画像処理システム100及び医用画像処理装置140の構成例について説明した。例えば、本実施形態に係る医用画像処理システム100及び医用画像処理装置140は、病院や診療所等の医療施設に設置され、医師等の利用者によって行われる心臓疾患に関する診断や治療計画の策定等を支援する。
【0025】
ここで、本実施形態に係る医用画像処理システム100及び医用画像処理装置140は、被検体のFractional Flow Reserve(FFR:冠血流予備量比)の値に基づいて、心筋機能に関する指標を提供する。具体的には、医用画像処理装置140は、安静状態のFFRと負荷状態のFFRとの比較に基づいて、心筋機能に関する指標を提供する。
【0026】
FFRは、「冠動脈に病変(例えば、狭窄)がある場合」と「冠動脈に病変(例えば、狭窄)が無い場合」の血流量比を示す指標であり、心筋に虚血があった場合に、その虚血の原因が、その病変であるかどうかを調べる指標として使われている。具体的には、冠動脈の治療前に、アデノシンの投与した負荷状態で、冠動脈に圧力センサー(Pressure wire)を挿入し、血管内の圧力(血圧)を測定することにより、圧力を得て、そこから理論式に基づいて血流量に変換し、FFRの値が算出される。また、FFRは、上述したアデノシンを投与しない安静状態において圧力センサーで計測された圧力に基づいて算出する手法も知られている。
【0027】
また、その他のFFRの測定としては、CTにより収集された画像データを解析することでFFRの値を算出する手法も知られている。具体的には、安静状態の被検体から収集されたCT画像を用いた解析により、FFRの値を算出する。
【0028】
本実施形態に係る医用画像処理システム100及び医用画像処理装置140におけるFFRの取得は、上記したいずれの手法も適用可能である。すなわち、本実施形態に係る心筋機能に関する指標に用いられるFFRの値は、どのような方法で取得されてもよい。
【0029】
以下、本実施形態に係る医用画像処理装置140の詳細について説明する。なお、以下では、CT画像を用いてFFRの値を算出し、算出したFFRの値に基づいて、心筋機能に関する指標を算出する場合の例を説明する。
【0030】
例えば、
図1に示すように、本実施形態では、医用画像処理装置140の処理回路145が、取得機能145aと、算出機能145bと、表示情報生成機能145cと、表示制御機能145dとを実行する。ここで、取得機能145aは、取得部の一例である。また、算出機能145bは、算出部の一例である。また、表示制御機能145dは、表示制御部の一例である。
【0031】
ここで、処理回路145は、例えば、プロセッサによって実現される。その場合に、上述した各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路142に記憶される。そして、処理回路145は、記憶回路142に記憶された各プログラムを読み出して実行することで、各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、処理回路145は、各プログラムを読み出した状態で、
図1に示した各処理機能を有することとなる。
【0032】
なお、処理回路145は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサがプログラムを実行することによって各処理機能を実現するものとしてもよい。また、処理回路145が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。また、処理回路145が有する各処理機能は、回路等のハードウェアとソフトウェアとの混合によって実現されても構わない。また、ここでは、各処理機能に対応するプログラムが単一の記憶回路142に記憶される場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、各処理機能に対応するプログラムが複数の記憶回路が分散して記憶され、処理回路145が、各記憶回路から各プログラムを読み出して実行する構成としても構わない。
【0033】
取得機能145aは、被検体の冠動脈における安静状態時の冠血流予備量比と、前記冠動脈における負荷状態時の冠血流予備量比とを取得する。具体的には、取得機能145aは、NWインタフェース141を介して、X線CT装置110又は医用画像保管装置120から被検体の冠動脈CT画像を取得する。ここで、取得機能145aは、FFRの算出に用いることができる3次元の冠動脈CT画像を取得する。
【0034】
そして、取得機能145aは、取得した被検体の冠動脈CT画像から、流体解析(Computational Fluid Dynamics:CFD)や人工知能(Artificial Intelligence:AI)等を用いた既知の手法によって、冠動脈の各位置における安静状態時のFFRと負荷状態時のFFRとを算出する。
【0035】
例えば、取得機能145aは、被検体の冠動脈を含むCT画像を用いた流体解析によって、安静状態時のFFRと負荷状態時のFFRとを取得する。一例を挙げると、取得機能145aは、安静状態の被検体から取得した冠動脈CT画像を取得する。そして、取得機能145aは、冠動脈CT画像に基づく血管形状データと解析条件とを用いた流体解析を実行し、血管の対象領域における安静状態時のFFRの値を算出する。さらに、取得機能145aは、取得した冠動脈CT画像から負荷状態を推定し、推定結果を用いて血管の対象領域における負荷状態時のFFRの値を算出する。以下、安静状態時のFFRを「Rest FFR」と記載し、負荷状態時のFFRを「Stress FFR」と記載する場合がある。
【0036】
算出機能145bは、安静状態時のFFRと負荷状態時のFFRとの比較に基づく指標値を算出する。具体的には、算出機能145bは、安静状態時のFFRと負荷状態時のFFRとの比率を算出する。
【0037】
ここで、まず、FFRの定義について説明する。上述したように、FFRは、病変が無い場合の流量と病変がある場合の流量との比で定義され、以下の式(1)により算出される。なお、式(1)における「Qn」は、病変(例えば、狭窄)が無い場合の流量を示し、「Qs」は、病変(例えば、狭窄)がある場合の流量を示す。
【0038】
【0039】
FFRは、例えば、式(1)に示すように、「Qs」を「Qn」で除算する式により定義される。ここで、被検体に対してアデノシンを投与して負荷状態としたり、或いは、安静状態における心位相の所定期間を対象とすることで、血管内の流量と圧力との関係を比例関係にし、FFRを圧力の定義に置き換えることができる。すなわち、血管内の流量と圧力との関係を比例関係とすることで、式(1)を以下の式(2)のように表現することができる。なお、式(2)における「Pa」は、病変(例えば、狭窄)の上流側の圧力を示し、「Pd」は、病変(例えば、狭窄)の下流側の圧力を示す。また、「Pv」は、全身からの静脈血が流れ込む右心房の圧力を示す。
【0040】
【0041】
例えば、式(2)に示すように、「Qs」が「Pd-Pv」と表現され、「Qn」が「Pa-Pv」と表現される。すなわち、FFRは、病変の上流側の圧力及び下流側の圧力から血管のベースラインの圧力をそれぞれ差分した値の比によって表される。
【0042】
ここで、「Pa>>Pv」及び「Pd>>Pv」とみなすことができるため、式(2)を以下の式(3)のようにみなすことができる。
【0043】
【0044】
すなわち、式(3)に示すように、FFRは、「Pd」を「Pa」で除算する式によって算出される。例えば、取得機能145aは、式(3)を用いて、「Pa」と「Pd」から、血管の対象領域における位置ごとの「Rest FFR」及び「Stress FFR」を算出する。
【0045】
算出機能145bは、取得機能145aによって算出された「Rest FFR」及び「Stress FFR」の比率を算出する。例えば、算出機能145bは、以下の式(4)で示すように、「Stress FFR」を「Rest FFR」で除算することで、血管の対象領域における位置ごとに、心筋機能に関する指標「INDEX」を算出する。
【0046】
【0047】
上述したように、FFRは、「心筋に虚血があった場合に、その原因が狭窄であるかどうか」を示唆する指標であるが、現在の臨床においては、「狭窄の程度を示す指標」として使用されており、心筋機能に関する障害は直接的には反映されていない。そこで、算出機能145bは、上記した「INDEX」を算出することで、「Rest FFR」或いは「Stress FFR」だけでは出せない心筋機能に関する指標を算出する。
【0048】
以下、
図2を用いて、心筋機能とINDEXとの関係について説明する。
図2は、第1の実施形態に係る心筋機能とINDEXとの関係について説明するための図である。ここで、
図2においては、冠動脈と心筋の状態に応じたケースA~DのCFR、INDEXについて示す。なお、
図2における各指標の値は、説明の便宜上記載した値であり、実際に測定した値ではない。
【0049】
例えば、「ケースA」は、
図2に示すように、冠動脈の状態が「正常」であり、心筋の状態が「正常」である場合について示す。かかる場合には、例えば、「FFR」の値は「0.9」となり、CFR(Q
st/Q
re)の値は「2」となる。ここで、冠動脈の状態が「正常」であり、心筋の状態が「正常」である場合、「Stress FFR」の値と「Rest FFR」の値で変化がないため、「Stress FFR」/「Rest FFR」で算出される「INDEX」の値は、「0.9/0.9=1」として算出される。
【0050】
また、例えば、「ケースB」は、
図2に示すように、冠動脈の状態が「正常」であり、心筋の状態が「疾患」である場合について示す。すなわち、「ケースB」は、心筋の機能が低下している場合を示す。かかる場合には、例えば、CFR(Q
st/Q
re)の値は「1」となる。これは、心筋の機能が低下しているため、血流量を増加させるようにStress状態(負荷状態)とした場合でも、健常者と同様の血流量の増加がおこらず、CFR(Q
st/Q
re)の値が低下したものである。
【0051】
ここで、冠動脈の状態が「正常」であり、心筋の状態が「疾患」である場合、「Stress FFR」/「Rest FFR」で算出される「INDEX」の値は、「0.95/0.9=1.06」として算出される。これは、FFRの値が、安静状態時に比べて負荷状態時に血流の影響を受ける特性があるためである。したがって、「Stress FFR」は、わずかな心筋血流低下でも敏感に反応して値が変化する。その結果、「ケースB」における「INDEX:1.06」は、「ケースA」の「INDEX:1」よりも高い値を示すこととなる。
【0052】
このように、本実施形態に係る「INDEX」は、心筋機能の状態が反映された指標である。したがって、本実施形態に係る医用画像処理装置140は、この指標を用いることで、CFRの値を計測することなく、心筋機能に関する指標を提供することができる。例えば、これまでは、FFRの値とCFRの値をそれぞれ測定しなければ、「ケースB」の状態(冠動脈:正常、心筋:疾患)を診断することができない。また、「Stress FFR」の値(例えば、0.95)、或いは、「Rest FFR」の値(例えば、0.9)のどちらかの値のみを算出した場合では、そもそも心筋の状態を診断することができない。
【0053】
これに対して、本実施形態に係る医用画像処理装置140は、「Stress FFR」と「Rest FFR」を算出して、「INDEX」を算出するだけで、「ケースB」の状態(冠動脈:正常、心筋:疾患)を診断することを可能にする。すなわち、ユーザは、「FFR」の値が正常の範囲内にあり、「INDEX」の値が正常の範囲を上回った場合に、「ケースB」の状態(冠動脈:正常、心筋:疾患)を診断することができる。
【0054】
上述したように、本実施形態に係る取得機能145aは、安静状態の被検体から取得した冠動脈CT画像から「Stress FFR」と「Rest FFR」を取得することができる。したがって、本実施形態に係る医用画像処理装置140は、心筋機能に関する指標である「INDEX」を容易に算出して、提供することができる。
【0055】
また、本実施形態に係る医用画像処理装置140は、冠動脈の疾患の有無も同時に診断を行うことを可能にする。
【0056】
例えば、「ケースC」は、
図2に示すように、冠動脈の状態が「狭窄」であり、心筋の状態が「正常」である場合について示す。かかる場合には、例えば、CFR(Qst/Qre)の値は「1.5」となる。また、冠動脈の状態が「狭窄」であり、心筋の状態が「正常」である場合、「Stress FFR」の値が「0.5」となり、「Rest FFR」の値が「0.6」となるため、「Stress FFR」/「Rest FFR」で算出される「INDEX」の値は、「0.5/0.6=0.83」として算出される。
【0057】
したがって、ユーザは、「FFR」の算出結果(「0.5」及び「0.6」)と、「INDEX」の算出結果「0.83」とを参照することで、「ケースC」の状態(冠動脈:狭窄、心筋:正常)を診断することができる。すなわち、ユーザは、「FFR」の値が正常の範囲外(例えば、閾値を「0.8」とした場合にそれを下回る)にあり、「INDEX」の値の正常の範囲からの下回り度合いに応じて、「ケースC」の状態(冠動脈:狭窄、心筋:正常)を診断することができる。
【0058】
また、例えば、「ケースD」は、
図2に示すように、冠動脈の状態が「狭窄」であり、心筋の状態が「疾患」である場合について示す。すなわち、「ケースD」は、冠動脈に狭窄があり、心筋の機能が低下している場合を示す。かかる場合には、例えば、「Stress FFR」の値が「0.55」となり、「Rest FFR」の値が「0.6」となり、CFR(Qst/Qre)の値は「1」となる。なお、冠動脈に狭窄があり、心筋に疾患がある場合でも、血流を一定に保持するように働く機構「Auto Regulation」が働くため、CFRの値は「1」程度に保たれる。
【0059】
ここで、冠動脈の状態が「狭窄」であり、心筋の状態が「疾患」である場合、「Stress FFR」/「Rest FFR」で算出される「INDEX」の値は、「0.55/0.6=0.92」として算出される。したがって、ユーザは、「FFR」の算出結果(「0.55」及び「0.6」)と、「INDEX」の算出結果「0.92」とを参照することで、「ケースD」の状態(冠動脈:狭窄、心筋:正常)を診断することができる。すなわち、ユーザは、「FFR」の値が正常の範囲外(例えば、閾値を「0.8」とした場合にそれを下回る)にあり、「INDEX」の値の正常の範囲からの離れる度合いに応じて(例えば、ケースCよりも下回り度合いが小さいなど)、「ケースD」の状態(冠動脈:狭窄、心筋:正常)を診断することができる。
【0060】
表示情報生成機能145cは、表示用の各種情報を生成する。具体的には、表示情報生成機能145cは、表示用の画像や、診断用の参照情報を生成する。例えば、表示情報生成機能145cは、冠動脈CT画像における冠動脈の血管領域を三次元的に再構成することで、冠動脈の三次元画像を生成する。例えば、表示情報生成機能145cは、VR画像、SR画像、CPR(Curved Planer Reconstruction)画像、MPR(Multi Planer Reconstruction)画像、SPR(Stretched Multi Planer Reconstruction)画像などを生成する。
【0061】
また、例えば、表示情報生成機能145cは、診断用の参照情報として、冠動脈に対する治療に関する情報と、心筋に対する治療に関する情報とを生成する。具体的には、表示情報生成機能145cは、FFRの値と、INDEXの値とに基づいて、冠動脈に対する治療と心筋に対する治療の内容を判別し、判別結果を示す情報を生成する。
【0062】
表示制御機能145dは、表示情報生成機能145cによって生成された表示用の各種情報を、ディスプレイ144に表示させる。具体的には、表示制御機能145dは、表示用の画像や、診断用の参照情報をディスプレイ144に表示させる。ここで、表示制御機能145dは、算出機能145bによって算出されたINDEXを、被検体の心筋機能に関する指標として表示させる。
【0063】
例えば、表示制御機能145dは、被検体の冠動脈の位置ごとに算出されたINDEXと閾値とを比較して、INDEXが閾値を下回る、或いは、上回る冠動脈上の位置を特定し、特定した位置に対応する心筋上の支配領域を表示させる。一例を挙げると、表示制御機能145dは、被検体の冠動脈の位置において、INDEXが閾値を下回る、或いは、上回る最も起始部側の位置を特定し、特定した位置に対応する心筋上の支配領域を表示させる。
【0064】
図3Aは、第1の実施形態に係る表示制御機能145dによる表示の一例を示す図である。例えば、表示制御機能145dは、
図3Aに示すように、被検体の冠動脈の位置ごとに算出されたINDEXと閾値とを比較して、INDEXが閾値を下回る、或いは、上回る冠動脈上の位置P1を特定し、特定した位置P1より末梢側の血管領域によって血液が供給される支配領域R1を抽出する。なお、支配領域の抽出は、例えば、ボロノイ法などの既知の手法を用いて実行される。
【0065】
そして、表示制御機能145dは、冠動脈CT画像における支配領域R1をカラーで示した表示用画像をディスプレイ144に表示させる。ここで、INDEXは、例えば、「1.00」の周辺を正常範囲とする値範囲が設定される。一例を挙げると、INDEXは、「0.95-1.05」を正常範囲として設定される。
【0066】
表示制御機能145dは、被検体の冠動脈の位置ごとに算出されたINDEXと数値範囲とを比較して、INDEXが数値範囲を上回る冠動脈上の位置、又は、INDEXが数値範囲を下回る冠動脈上の位置を特定し、比較結果に基づく表示情報を表示させる。具体的には、表示制御機能145dは、INDEXが数値範囲を上回る場合と、INDEXが数値範囲を下回る場合とで、それぞれに対応する疾患候補を表示させる。例えば、表示制御機能145dは、INDEXが数値範囲を上回る場合に心筋における疾患候補を表示させ、指標値が数値範囲を下回る場合に冠動脈における疾患候補を表示させる。
【0067】
例えば、表示制御機能145dは、設定された正常範囲「0.95-1.05」を上回る場合、或いは、下回る場合に疾患の可能性有と判定して、判定結果に基づく情報を表示させる。例えば、表示制御機能145dは冠動脈の各位置におけるINDEXの値と正常範囲「0.95-1.05」とを比較して、INDEXの値が「0.95」を下回る血管の位置、および/又は、INDEXの値が「1.05」を上回る血管の位置を特定する。
【0068】
なお、正常範囲「0.95-1.05」は、あくまでも一例であり、正常範囲の値は任意に設定することができる。また、INDEXが正常か否かを判定する値は、範囲で設定される場合に限られず、2つの閾値のみ(例えば、0.95と1.05)で設定される場合でもよい。
【0069】
ここで、表示制御機能145dは、
図3Aに示す位置P1として、INDEXが「0.95」を下回る最も起始部側の位置、或いは、INDEXが「1.05」を上回る最も起始部側の位置を特定することができる。INDEXは、
図2において説明したように、心筋に疾患がある場合に高い値を示し、冠動脈に疾患がある場合に低い値を示す。すなわち、INDEXが正常範囲を上回る場合には、心筋側の疾患の可能性が示唆され、INDEXが正常範囲を下回る場合には、冠動脈側の疾患(血液供給機能の低下)の可能性が示唆される。
【0070】
そこで、表示制御機能145dは、INDEXが正常範囲を下回る場合と、INDEXが正常範囲を上回る場合とで提示する情報を変更する。例えば、INDEXが正常範囲「0.95-1.05」を下回る場合、表示制御機能145dは、
図3Aに示すように、INDEXが「0.95」を下回る最も起始部側の位置P1を特定して、位置P1から末梢側の血管領域の支配領域R1を抽出して、支配領域R1を疾患の可能性のある支配領域としてカラー表示させる。ここで、表示制御機能145dは、心筋に生じる疾患名の候補を合わせて表示させることもできる。
【0071】
一方、INDEXが正常範囲「0.95-1.05」を上回る場合、表示制御機能145dは、INDEXが「1.05」を上回る最も起始部側の位置P1を特定して、位置P1を含む血管枝を疾患の可能性のある血管枝として強調表示させる。また、表示制御機能145dは、INDEXが正常範囲を下回る場合と同様に位置P1の支配領域R1を抽出して、支配領域R1を、冠動脈の疾患によって影響を受ける可能性がある領域としてカラー表示させることもできる。また、表示制御機能145dは、冠動脈に生じる疾患名の候補を合わせて表示させることもできる。
【0072】
上述した例では、上限及び下限についてそれぞれ単一の閾値を用いる場合について説明した。しかしながら、表示制御機能145dは、上限及び下限についてそれぞれ複数の閾値を用いることができる。例えば、上限を判定する閾値として「1.05」と「1.10」が用いられてもよい。かかる場合には、表示制御機能145dは、冠動脈の各位置におけるINDEXの値と「1.05」及び「1.10」とを比較して、INDEXの値が「1.05」を上回る血管の位置と、INDEXの値が「1.10」を上回る血管の位置とを特定する。
【0073】
ここで、表示制御機能145dは、上述した例と同様に、INDEXが「1.05」を上回る最も起始部側の位置と、INDEXが「1.10」を上回る最も起始部側の位置とをそれぞれ特定する。そして、表示制御機能145dは、INDEXが「1.05」を上回る最も起始部側の位置から末梢側の血管領域の支配領域と、INDEXが「1.10」を上回る最も起始部側の位置から末梢側の血管領域の支配領域とを抽出して、各支配領域を疾患の可能性のある支配領域としてそれぞれカラー表示させる。
【0074】
図3Bは、第1の実施形態に係る表示制御機能145dによる表示の一例を示す図である。例えば、表示制御機能145dは、
図3Bに示すように、INDEXが閾値「1.05」を上回る最も起始部側の位置P1と、INDEXが「1.10」を上回る最も起始部側の位置P2とをそれぞれ特定する。
【0075】
そして、表示制御機能145dは、INDEXが「1.05」を上回る最も起始部側の位置P1から末梢側の血管領域の支配領域R1と、INDEXが「1.10」を上回る最も起始部側の位置P2から末梢側の血管領域の支配領域R2とを抽出して、各支配領域を疾患の可能性のある支配領域としてそれぞれカラー表示させる。ここで、表示制御機能145dは、例えば、支配領域R1より支配領域R2の方が疾患の可能性が高いことを示すように表示させる。
【0076】
同様に、例えば、下限を判定する閾値として「0.95」と「0.9」が用いられてもよい。かかる場合には、表示制御機能145dは、冠動脈の各位置におけるINDEXの値と「0.95」及び「0.90」とを比較して、INDEXの値が「0.95」を下回る血管の位置と、INDEXの値が「0.90」を下回る血管の位置とを特定する。
【0077】
ここで、表示制御機能145dは、上述した例と同様に、INDEXが「0.95」を下回る最も起始部側の位置と、INDEXが「0.90」を下回る最も起始部側の位置とをそれぞれ特定する。そして、表示制御機能145dは、INDEXが「0.95」を下回る最も起始部側の位置を含む領域と、INDEXが「0.90」を下回る最も起始部側の位置を含む領域とを疾患の可能性のある領域として強調表示させる。ここで、表示制御機能145dは、例えば、INDEXが「0.95」を下回る最も起始部側の位置を含む領域よりINDEXが「0.90」を下回る最も起始部側の位置を含む領域の方が疾患の可能性が高いことを示すように表示させる。
【0078】
また、表示制御機能145dは、INDEXが正常範囲を下回る場合と同様に各位置の支配領域を抽出して、各支配領域を、冠動脈の疾患によって影響を受ける可能性がある領域としてカラー表示させることもできる。ここで、表示制御機能145dは、INDEXが「0.90」を下回る最も起始部側の位置の支配領域を、より影響を受ける可能性がある領域として表示させることもできる。
【0079】
また、表示制御機能145dは、支配領域の面積が閾値を超えた場合に警告を表示させることもできる。
図4は、第1の実施形態に係る表示制御機能145dによる表示の一例を示す図である。例えば、表示制御機能145dは、INDEXが閾値を上回る最も起始部側の位置P1から末梢側の血管領域によって血液が供給される心筋上の支配領域R1の面積を算出し、算出した面積と閾値とを比較する。そして、表示制御機能145dは、支配領域R1の面積が閾値を超えている場合に、
図4に示すように、警告「特定された領域のサイズが規定サイズを超えています」をディスプレイ144に表示させる。なお、INDEXが閾値を上回る最も起始部側の位置が血管の末梢に近く、支配領域の面積が閾値を超えていない場合は、健康上のリスクも低いため、警告が表示されなくてもよい。
【0080】
同様に、表示制御機能145dは、INDEXが閾値を下回る最も起始部側の位置の支配領域についても、支配領域の面積を算出し、算出した面積と閾値とを比較して、比較結果に基づいて警告を表示させることができる。
【0081】
なお、上述した各閾値は、任意に設定することができるが、冠動脈や心筋の位置に応じて設定されてもよい。例えば、INDEXの異常性を判別するための閾値(正常範囲)は、対象とする冠動脈の位置に応じてそれぞれ設定される場合でもよい。例えば、左心室に対応する心筋を栄養する冠動脈に対する閾値が、上限に対してより低い値、下限に対してより高い値が設定される場合でもよい。すなわち、左心室に対応する心筋を栄養する冠動脈においては、INDEXの値の正常値からの変化がより小さい場合でも異常として検出されるように、閾値(正常範囲)が設定される。
【0082】
また、例えば、支配領域の面積と比較される閾値は、支配領域の位置に応じてそれぞれ設定される場合でもよい。例えば、左心室に対応する心筋に対する閾値が、より低い値が設定される場合でもよい。すなわち、特定された支配領域が左心室に対応する心筋である場合においては、面積がより小さい場合でも疾患の可能性が高いものとして検出されるように、閾値が設定される。
【0083】
また、表示制御機能145dは、安静状態時のFFRまたは負荷状態時のFFRと第1の閾値との比較結果、及び、INDEXと第2の閾値との比較結果に基づいて、被検体の冠動脈に関する治療と心筋に関する治療との組み合わせを表示させることができる。具体的には、表示情報生成機能145cによって生成された判別結果を示す情報をディスプレイ144に表示させることができる。
【0084】
図5は、第1の実施形態に係る表示制御機能145dによる表示の一例を示す図である。例えば、表示制御機能145dは、
図5に示すように、FFRとINDEXの算出結果に基づく治療プランを示す情報をディスプレイ144に表示させる。一例を挙げると、表示制御機能145dは、
図5に示すように、FFRの値が「0.8」未満、かつ、INDEXの値が正常範囲を下回った場合に冠動脈に対するステント治療と心筋に対する薬剤治療を提示する治療プランの情報を表示させる。
【0085】
また、例えば、表示制御機能145dは、
図5に示すように、FFRの値が「0.8」以上、かつ、INDEXの値が正常範囲を上回った場合に心筋に対する薬剤治療を提示する治療プランの情報を表示させる。なお、
図5に示す治療プランを示す情報は、表示情報生成機能145cによって生成される。
【0086】
ここで、例えば、算出されたFFRの値が「0.6」であり、INDEXの値が「0.92」の場合、表示制御機能145dは、
図5に示すように、算出結果に対応する位置P3にマーカーを配置した治療プランの情報を表示させる。これにより、ユーザは、対象の被検体に対する治療プランとして、ステント治療及び薬剤治療が提案されていることを把握することができる。
【0087】
なお、
図5に示す治療プランの情報はあくまでも一例であり、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、
図5に示す領域をさらに細分化して、冠動脈に対するステント治療を提示する治療プランの情報が示される場合でもよい。
【0088】
次に、
図6を用いて、医用画像処理装置140の処理手順について説明する。
図6は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置140の処理回路145が有する各処理機能によって行われる処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0089】
例えば、
図6に示すように、取得機能145aは、入力インタフェース143を介して利用者から処理を開始する指示を受け付けた場合に、X線CT装置110又は医用画像保管装置120から被検体の冠動脈CT画像を取得する(ステップS101)。さらに、取得機能145aは、取得した被検体の冠動脈CT画像から「Stress FFR」と「Rest FFR」とを算出する(ステップS102)。この処理は、例えば、処理回路145が、取得機能145aに対応するプログラムを記憶回路142から呼び出して実行することにより実現される。
【0090】
続いて、算出機能145bは、取得機能145aによって算出された「Stress FFR」及び「Rest FFR」を用いて「INDEX」を算出する(ステップS103)。この処理は、例えば、処理回路145が、算出機能145bに対応するプログラムを記憶回路142から呼び出して実行することにより実現される。
【0091】
続いて、表示制御機能145dは、算出結果に基づく表示情報を表示させ(ステップS104)、FFR及びINDEXのうち、少なくとも1つが閾値を下回ったか否かを判定する(ステップS105)。ここで、FFR及びINDEXのうち少なくとも1つが閾値を下回った場合(ステップS105、肯定)、表示制御機能145dは、治療プランに関する情報を表示させる(ステップS106)。なお、FFR及びINDEXが閾値を下回っていない場合(ステップS105、否定)、表示制御機能145dは、治療プランに関する情報を表示させない。この処理は、例えば、処理回路145が、表示制御機能145dに対応するプログラムを記憶回路142から呼び出して実行することにより実現される。
【0092】
上述したように、第1の実施形態によれば、取得機能145aは、被検体の冠動脈における安静状態時のFFRと、冠動脈における負荷状態時のFFRとを取得する。算出機能145bは、安静状態時のFFRと負荷状態時のFFRとの比較に基づくINDEXを算出する。表示制御機能145dは、INDEXを、被検体の心筋機能に関する指標として表示させる。したがって、第1の実施形態に係る医用画像処理装置140は、狭窄の低緯度を示すFFRと、心筋機能に関する指標を同時に提示することができる。例えば、「INDEX」は、心筋の微小循環の影響を反映した指標であると考えられ、医用画像処理装置140は、わずかな微小循環障害(Micro Vascular Obstruction:MVO)を検出することができる。
【0093】
また、第1の実施形態によれば、取得機能145aは、被検体の冠動脈を含む医用画像を用いた流体解析によって、安静状態時のFFRと負荷状態時のFFRとを取得する。したがって、第1の実施形態に係る医用画像処理装置140は、「Stress FFR」及び「Rest FFR」を容易に取得することを可能にする。また、医用画像処理装置140は、安静状態の被検体から収集した冠動脈CT画像から「Stress FFR」及び「Rest FFR」を算出することができる。したがって、医用画像処理装置140は、被検体を負荷状態とすることなく、心筋機能に関する指標を算出することができ、CFRを算出する場合と比較して、被検体の負担を大きく低減することを可能にする。
【0094】
また、第1の実施形態によれば、算出機能145bは、安静状態時のFFRと負荷状態時のFFRとの比率を算出する。したがって、第1の実施形態に係る医用画像処理装置140は、心筋機能に関する指標を容易に算出することを可能にする。
【0095】
また、第1の実施形態によれば、表示制御機能145dは、被検体の冠動脈の位置ごとに算出されたINDEXと閾値とを比較して、INDEXが閾値を上回る冠動脈上の位置を特定し、特定した位置に対応する心筋上の支配領域を表示させる。したがって、第1の実施形態に係る医用画像処理装置140は、心筋における疾患の可能性がある領域を提示することを可能にする。
【0096】
また、第1の実施形態によれば、表示制御機能145dは、被検体の冠動脈の位置において、INDEXが閾値を上回る最も起始部側の位置を特定し、特定した位置に対応する心筋上の支配領域を表示させる。したがって、第1の実施形態に係る医用画像処理装置140は、疾患の可能性が疑われる心筋領域全体を提示することを可能にする。
【0097】
また、第1の実施形態によれば、表示制御機能145dは、支配領域の面積が閾値を超えた場合に警告を表示させる。したがって、第1の実施形態に係る医用画像処理装置140は、心筋機能に影響が高いことを提示することを可能にする。
【0098】
また、第1の実施形態によれば、表示制御機能145dは、被検体の冠動脈の位置ごとに算出されたINDEXと数値範囲とを比較して、INDEXが数値範囲を上回る冠動脈上の位置、又は、INDEXが数値範囲を下回る冠動脈上の位置を特定し、比較結果に基づく表示情報を表示させる。したがって、第1の実施形態に係る医用画像処理装置140は、正常を示す数値範囲からの外れ方に応じた情報を表示することを可能にする。
【0099】
また、第1の実施形態によれば、表示制御機能145dは、INDEXが数値範囲を上回る場合と、INDEXが数値範囲を下回る場合とで、それぞれに対応する疾患候補を表示させる。したがって、第1の実施形態に係る医用画像処理装置140は、正常を示す数値範囲からの外れ方に応じて、可能性のある疾患の情報を表示することを可能にする。
【0100】
また、第1の実施形態によれば、表示制御機能145dは、INDEXが数値範囲を上回る場合に心筋における疾患候補を表示させ、INDEXが数値範囲を下回る場合に冠動脈における疾患候補を表示させる。したがって、第1の実施形態に係る医用画像処理装置140は、INDEXの値に基づいて、心筋における疾患の可能性と、冠動脈における疾患の可能性とを判定して、情報を表示することを可能にする。
【0101】
また、第1の実施形態によれば、表示制御機能145dは、安静状態時のFFRまたは負荷状態時のFFRと第1の閾値との比較結果、及び、INDEXと第2の閾値との比較結果に基づいて、被検体の冠動脈に関する治療と心筋に関する治療との組み合わせを表示させる。したがって、第1の実施形態に係る医用画像処理装置140は、冠動脈及び心筋について、指標値に基づく治療プランを提示することを可能にする。
【0102】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、「INDEX」として「Stress FRR」と「Rest FFR」との比率を算出する場合について説明した。第2の実施形態では、FFRを算出せずにINDEXを算出する場合について説明する。なお、第2の実施形態に係る医用画像処理装置140は、第1の実施形態と比較して、算出機能145bによる処理内容が異なる。以下、この点を中心に説明する。
【0103】
第2の実施形態に係る算出機能145bは、FFRの算出に用いられる圧力情報に基づいてINDEXを算出する。上記した式(3)に示すように、FFRは、病変(例えば、狭窄)の上流側の圧力「Pa」と、病変(例えば、狭窄)の下流側の圧力「Pd」との比によって表現される。したがって、「INDEX」は、以下の式(5)で示すように、負荷状態時の下流側の圧力「Pdst」と、安静状態時の下流側の圧力「Pdre」との比によって表現することができる。
【0104】
【0105】
すなわち、式(5)に示すように、「INDEX」における「Stress FFR」は、式(3)に基づいて、負荷状態時の下流側の圧力「Pdst」を負荷状態時の上流側の圧力「Past」で除算した値に置き換えることができる。同様に、「INDEX」における「Rest FFR」は、式(3)に基づいて、安静状態時の下流側の圧力「Pdre」を安静状態時の上流側の圧力「Pare」で除算した値に置き換えることができる。
【0106】
さらに、上流側の圧力「Pa」は、負荷状態時と安静状態時で同じとみなせるため、負荷状態時の上流側の圧力「Past」と安静状態時の上流側の圧力「Pare」を削除することができる。その結果、「INDEX」は、式(5)に示すように、負荷状態時の下流側の圧力「Pdst」と、安静状態時の下流側の圧力「Pdre」との比によって算出することができる。
【0107】
そこで、第2の実施形態に係る算出機能145bは、式(5)に基づいて、負荷状態時の下流側の圧力「Pdst」と、安静状態時の下流側の圧力「Pdre」との比率を「INDEX」として算出する。
【0108】
上述したように、第2の実施形態によれば、算出機能145bは、FFRの算出に用いられる圧力情報に基づいてINDEXを算出する。したがって、第2の実施形態に係る医用画像処理装置140は、FFRの計算過程で算出される病変の下流側の圧力「Pd」を用いてINDEXを算出することができ、計算コストを低減することを可能にする。
【0109】
(第3の実施形態)
上述した第1の実施形態では、「INDEX」によって疾患を判定する場合について説明した。第3の実施形態では、「INDEX」と「CFR」とを組み合わせて疾患を判定する場合について説明する。なお、第3の実施形態に係る医用画像処理装置140は、第1の実施形態と比較して、取得機能145aによる処理内容と、算出機能145bによる処理内容とが異なる。以下、この点を中心に説明する。
【0110】
第3の実施形態に係る医用画像処理装置140は、「INDEX」と「CFR」とに基づいて疾患に関する情報を表示させる。かかる場合には、第3の実施形態に係る取得機能145aは、被検体における冠血流予備能を取得する。例えば、取得機能145aは、NWインタフェース141を介して、X線CT装置110又は医用画像保管装置120から画像データを取得し、取得した画像データに基づいてCFRを算出する。なお、CFRの算出は、既知の手法により適宜実行される。また、取得機能145aは、他の医用装置によって取得された被検体のCFRの値を、ネットワークを介して取得することもできる。
【0111】
第3の実施形態に係る表示制御機能145dは、「INDEX」と「CFR」とに基づいて、疾患に関する情報を表示させる。例えば、表示制御機能145dは、「INDEX」と正常範囲との比較結果と、「CFR」と基準値との比較結果に基づいて、疾患の可能性を判定し、判定結果を表示させる。
【0112】
例えば、表示制御機能145dは、CFRの値と基準値(閾値)とを比較して、CFRの値が基準値を下回った場合に、冠動脈又は心筋のどちらかに異常があると判定する。そして、表示制御機能145dは、CFRの値が基準値を下回る状況で、かつ、INDEXが正常範囲を上回る場合に、心筋に異常があると判定して、心筋に疾患の可能性があることを示す情報を表示する。また、表示制御機能145dは、CFRの値が基準値を下回る状況で、かつ、INDEXが正常範囲を下回る場合に、冠動脈に異常があると判定して、冠動脈に疾患の可能性があることを示す情報を表示する。
【0113】
なお、表示制御機能145dは、CFRの値が基準値を下回る状況で、かつ、INDEXが正常範囲にある場合には、心筋と冠動脈のどちらかに疾患の可能性があるが、判定できないことを示す情報を表示させる。
【0114】
また、第3の実施形態に係る医用画像処理装置140は、「INDEX」と「CFR」とに基づいて、INDEXとは異なる別の指標値を算出して、算出した指標値に基づいて疾患に関する情報を表示させる。かかる場合には、取得機能145aは、上記と同様に、被検体におけるCFRの値を取得する。
【0115】
第3の実施形態に係る算出機能145bは、INDEXである第1の指標値とCFRとに基づいて、第2の指標値を算出する。例えば、算出機能145bは、以下の式(6)で示すように、係数「A」と係数「B」とを乗算することで、指標「INDEX2」を算出する。
【0116】
【0117】
なお、式(6)における係数「A」は、「CFR」と基準値との差分の絶対値を示す。また、係数「B」は、「INDEX」が正常範囲から離れる度合いを示す。ここで、「INDEX」が正常範囲から離れる度合いは、INDEXの値が正常範囲より下側の場合にはマイナスの値、INDEXの値が正常範囲より上側の場合にはプラスの値として定義される。
【0118】
表示制御機能145dは、「INDEX2」に基づく疾患に関する情報を表示させる。例えば、表示制御機能145dは、算出機能145bによって算出された「INDEX2」の値がプラスの大きな値の場合に、心筋に異常があると判定して、心筋に疾患の可能性があることを示す情報を表示する。一方、表示制御機能145dは、算出機能145bによって算出された「INDEX2」の値がマイナスの大きな値の場合に、冠動脈に異常があると判定して、冠動脈に疾患の可能性があることを示す情報を表示する。
【0119】
上述したように、第3の実施形態によれば、取得機能145aは、被検体のCFRの値を取得する。表示制御機能145dは、INDEXとCFRとに基づいて、疾患に関する情報を表示させる。したがって、第3の実施形態に係る医用画像処理装置140は、CFRとINDEXとを組み合わせて、疾患の可能性に関する情報を提示することを可能にする。
【0120】
また、第3の実施形態によれば、算出機能145bは、INDEXである第1の指標値とCFRとに基づいて、「INDEX2」を算出する。したがって、第3の実施形態に係る医用画像処理装置140は、CFRとINDEXとを組み合わせた指標を算出することを可能にする。
【0121】
また、第3の実施形態によれば、表示制御機能145dは、INDEX2に基づく疾患に関する情報を表示させる。したがって、第3の実施形態に係る医用画像処理装置140は、CFRとINDEXとを組み合わせた指標に基づいて疾患の可能性を判定し、判定結果を提示することを可能にする。
【0122】
(他の実施形態)
なお、上述した実施形態では、冠動脈に関する医用画像として、冠動脈CT画像を用いる場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、血管の形状、及び、血液の流速等の流れ情報が算出可能な種類の画像であれば、どのような種類の医用画像が用いられてもよい。例えば、超音波診断画像によって得られた超音波画像や、MRI装置によって得られたMR画像等が用いられてもよい。
【0123】
また、上述した実施形態では、安静状態の被検体から収集された冠動脈CT画像を用いて「Stress FFR」及び「Rest FFR」を取得する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものでなく、負荷状態の被検体から収集された冠動脈CT画像を用いて「Stress FFR」を取得し、安静状態の被検体から収集された冠動脈CT画像を用いて「Rest FFR」を取得する場合でもよい。
【0124】
また、「Stress FFR」及び「Rest FFR」は、Pressure Wireを冠動脈に挿入し、アデノシン負荷時の圧力と、非負荷時の圧力とを計測することで取得される場合でもよい。かかる場合には、取得機能145aは、Pressure Wireによって取得された圧力に基づいて、「Stress FFR」及び「Rest FFR」を算出する。
【0125】
また、上述した実施形態では、FFR及びINDEXに関する情報を医用画像処理装置140のディスプレイ144に表示させる場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、FFR及びINDEXに関する情報を医用情報表示装置130のディスプレイに表示させる場合でもよい。
【0126】
なお、上述した実施形態では、本明細書における取得部、算出部及び表示制御部を、それぞれ、処理回路の取得機能、算出機能及び表示制御機能によって実現する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、本明細書における取得部、算出部及び表示制御部は、実施形態で述べた取得機能、算出機能及び表示制御機能によって実現する他にも、ハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、又は、ハードウェアとソフトウェアとの混合によって同機能を実現するものであっても構わない。
【0127】
また、上述した実施形態の説明で用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又は、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。ここで、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合には、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。また、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて一つのプロセッサとして構成され、その機能を実現するようにしてもよい。
【0128】
ここで、プロセッサによって実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)や記憶回路等に予め組み込まれて提供される。なお、このプログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)-ROM、FD(Flexible Disk)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な非一過性の記憶媒体に記録されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることによって提供又は配布されてもよい。例えば、このプログラムは、上述した各処理機能を含むモジュールで構成される。実際のハードウェアとしては、CPUが、ROM等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、各モジュールが主記憶装置上にロードされて、主記憶装置上に生成される。
【0129】
また、上述した実施形態及び変形例において、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散又は統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散又は統合して構成することができる。更に、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0130】
また、上述した実施形態及び変形例において説明した各処理のうち、自動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行なうこともでき、或いは、手動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を公知の方法で自動的に行なうこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0131】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、心筋機能に関する指標を提供することができる。
【0132】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0133】
100 医用画像処理システム
130 医用情報表示装置
140 医用画像処理装置
145 処理回路
145a 取得機能
145b 算出機能
145d 表示制御機能